(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150282
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20241016BHJP
B60N 2/62 20060101ALI20241016BHJP
B60N 2/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/62
B60N2/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063627
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】深津 俊明
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 治
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD15
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】 ピンで発生する異音発生を抑制可能な乗物用シートの一例を開示する。
【解決手段】 貫通穴7Aの内周面とチルトピン25の外周面との間には、当該内周面及び当該外周面のうち少なくとも一方と滑り接触可能、かつ、弾性的に変形可能な樹脂製のカラー26が配置されている。これにより、当該乗物用シートでは、貫通穴7Aの内周面とチルトピン25の外周面とが衝突することが防止されるので、貫通穴7Aの内周面にチルトピン25が衝突することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動機構を備えるシートにおいて、
骨格を構成する金属製のフレームと、
前記フレームに設けられた穴の中でスライド可能なピンであって、前記可動機構の一部を構成する金属製のピンと、
前記穴の内周面と前記ピンの外周面との間に配置され、当該内周面及び当該外周面のうち少なくとも一方と滑り接触可能なカラーであって、弾性的に変形可能な樹脂製のカラーと
を備えるシート。
【請求項2】
前記カラーのうち前記ピンと接触する部位、及び前記ピンのうち前記カラーと接触する部位それぞれには、当該ピンの長手方向に対して傾斜した傾斜部が設けられている請求項1に記載のシート。
【請求項3】
前記ピンは、丸棒状のピン部及び当該ピン部の長手方向一端側に設けられた鍔状のフランジ部を有しており、
前記傾斜部は、前記ピン部と前記フランジ部との連結箇所に設けられている請求項2に記載のシート。
【請求項4】
前記カラーは、前記ピンに一体化された当該ピンとの一体品である請求項2又は3に記載のシート。
【請求項5】
前記穴の外縁部には、当該外縁部から前記長手方向と平行な方向に延出した壁面を有するバーリング部が設けられている請求項2又は3に記載のシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可動機構を備えるシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の乗物用シートでは、3節リンク機構を利用した可動機構を備える。そして、当該可動機構では、節をなす摺動ピンが長穴内でスライド変位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、長穴の内周面と当該摺動ピンとの間に隙間があるため、摺動ピンがスライド変位する場合や当該シートに加振力が作用した場合には、摺動ピンと長穴の内周面とが衝突して異音が発生する。本開示は、当該点に鑑み、異音発生を抑制可能なシートの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
可動機構(20)を備えるシートは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。すなわち、当該構成要件は、骨格を構成する金属製のフレーム(7)と、フレーム(7)に設けられた穴(7A)の中でスライド可能なピン(25)であって、可動機構(20)の一部を構成する金属製のピン(25)と、穴(7A)の内周面とピン(25)の外周面との間に配置され、当該内周面及び当該外周面のうち少なくとも一方と滑り接触可能なカラー(26)であって、弾性的に変形可能な樹脂製のカラー(26)とである。
【0006】
これにより、当該シートでは、穴(7A)の内周面とピン(25)の外周面とが衝突することが防止されるので、穴(7A)の内周面にピン(25)が衝突することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【0007】
なお、当該シートは、例えば、以下の構成であってもよい。
すなわち、カラー(26)のうちピン(25)と接触する部位、及びピン(25)のうちカラー(26)と接触する部位それぞれには、当該ピン(25)の長手方向に対して傾斜した傾斜部(26A、25C)が設けられていることが望ましい。
【0008】
これにより、ピン(25)の長手方向及び当該長手方向と直交する方向の成分を含む加振力がシートに作用した場合であっても、当該加振力に起因する異音の発生が抑制され得る。
【0009】
ピン(25)は、丸棒状のピン部(25A)及び当該ピン部(25A)の長手方向一端側に設けられた鍔状のフランジ部(25B)を有しており、傾斜部(26A、25C)は、ピン部(25A)とフランジ部(25B)との連結箇所に設けられていることが望ましい。カラー(26)は、ピン(25)に一体化された当該ピン(25)との一体品であることが望ましい。
【0010】
穴(7A)の外縁部には、当該外縁部からピン(25)の長手方向と平行な方向に延出した壁面(7D)を有するバーリング部(7C)が設けられていることが望ましい。これにより、バーリング部(7C)により、ピン(25)の姿勢が保持され得るので、ピン(25)が安定的にスライド変位可能となる。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る乗物用シートの前端側を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る乗物用シートの前端側を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る乗物用シートの前端側を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係るチルトピンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0014】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るシートが適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0015】
したがって、当該乗物用シートは、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シートが車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0016】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位のうち少なくとも1つを備える。
【0017】
(第1実施形態)
<1.乗物用シートの概要>
乗物用シート1は、
図1に示されるように、シートクッション3及びシートバック4等を少なくとも備える。シートクッション3は着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック4は着席者の背部を支持するための部位である。
【0018】
シートクッション3は、クッションフレーム5及びウレタン等のクッションパッド(図示せず。)を有して構成されている。クッションフレーム5は、シートクッション3の骨格を構成する。そして、当該クッションフレーム5は、フレーム本体6及びチルトユニット20等を有して構成されている。
【0019】
フレーム本体6は、2つのサイドフレーム7及び連結部材9、10等を少なくとも有する。第1のサイドフレーム7は、クッションフレーム5のシート幅方向一端側(
図1では、左端側)に配置されてシート前後方向に延びる金属製の強度部材である。
【0020】
第2のサイドフレーム7は、クッションフレーム5のシート幅方向他端側(
図1では、右端側)に配置されてシート前後方向に延びる金属製の強度部材である。連結部材9、10は、シート幅方向(
図1では、左右方向)に延びて2つのサイドフレーム7を連結する。
【0021】
なお、本実施形態に係るフレーム本体6は、2つのスライド装置11を介して車体に固定されている。各スライド装置11は、乗物用シート1をシート前後方向に平行変位させるための装置である。
【0022】
チルトユニット20は、可動機構の一例であって、シートクッション3の前端側の傾斜角度を変更可能とする機構である。当該チルトユニット20は、フレーム本体6の前端側、つまりサイドフレーム7、8の前端側に装着されている。
【0023】
<2.チルトユニットについて>
<2.1 チルトユニットの構成>
チルトユニット20は、
図1に示されるように、2本のチルトアーム21、2本の揺動アーム23、2本のチルトピン25、フロントパネル29及び連結部材29A等を少なくとも有して構成されている。
【0024】
第1のチルトアーム21は、シート前後方向に延びているとともに、後端側が第1のサイドフレーム7に揺動可能に連結されている。第2のチルトアーム21もシート前後方向に延びているとともに、後端側が第2のサイドフレーム7に揺動可能に連結されている。
【0025】
このため、2本のチルトアーム21が各サイドフレーム7に対して揺動すると、シートクッション3のシート前端側であるフロントパネル29の傾斜角度が変更される。フロントパネル29及び連結部材29Aは、2本のチルトアーム21の前端側を連結する。
【0026】
2本の揺動アーム23は、
図2に示されるように、対応するチルトアーム21を揺動変位させるため部材である。そして、当該揺動アーム23は、前端側がチルトアーム21の前端側に揺動可能に連結され、後端側が対応するサイドフレーム7に揺動可能に連結されている。
【0027】
各チルトピン25は、対応する揺動アーム23を対応するサイドフレーム7に対して回転可能に連結する。当該チルトピン25は、サイドフレーム7とチルトアーム21との連結部より前方側に配置されてシート幅方向に延びている。
【0028】
なお、2本の揺動アーム23のうちいずれか一方(本実施形態では、は、シート幅方向他端側)の揺動アーム23は、セクター歯車にて構成されている。当該セクター歯車が連結されたチルトアーム21には、電動モータ(図示せず。)が固定されている。
【0029】
チルトピン25は、溶接等にてセクター歯車、つまりシート幅方向他端側の揺動アーム23に一体化されている。このため、電動モータが回転すると、セクター歯車は、チルトピン25を中心として回転する。
【0030】
そして、当該他端側の揺動アーム23が揺動すると、連結部材29A及びフロントパネル29を介して一端側の揺動アーム23も機械的に連動して揺動する。このとき、2本のチルトアーム21が2本の揺動アーム23に連動して揺動するため、シートクッション3の前端側の傾斜角度が変化する。
【0031】
<2.2 チルトピンの支持構造>
シート幅方向一端側のチルトピン25の支持構造とシート幅方向他端側のチルトピン25の支持構造とは同じである。以下の説明は、シート幅方向一端側のチルトピン25の支持構造に関する説明である。
【0032】
サイドフレーム7の前端側には、
図3に示されるように、シート幅方向に当該サイドフレーム7を貫通した貫通穴7Aが設けられている。貫通穴7Aは、サイドフレーム7の前端7Bから後方側に窪んだ凹状又はU字状の貫通穴である。
【0033】
なお、本実施に係る貫通穴7Aは、長径方向がサイドフレーム7の延び方向と略一致する長穴状である。そして、チルトピン25が貫通穴7Aに貫通挿入されている。このため、チルトピン25は、貫通穴7A内において、長径方向にスライドしながら回転できる。
【0034】
サイドフレーム7の先端側には、脱落規制部材27が設けられている。脱落規制部材27は、貫通穴7Aの開口からチルトピン25が脱落すること規制する。貫通穴7Aの外縁部には、
図4に示されるように、延出部7Cが設けられている。
【0035】
延出部7Cは、当該外縁部からチルトピン25の長手方向と平行な方向に延出した壁面7Dを有するバーリング部の一例である。なお、当該延出部7Cは、貫通穴7Aを成形するためのプレス加工時と同時又は当該プレス加工後、バーリング加工によってサイドフレーム7に一体成形された一体部である。
【0036】
貫通穴7Aの内周面とチルトピン25の外周面との間には、
図4に示されるように、カラー26が配置されている。カラー26は、当該内周面及び当該外周面のうち少なくとも一方と滑り接触可能、かつ、弾性的に変形可能な樹脂製の部材である。
【0037】
すなわち、チルトピン25は、
図5に示されるように、丸棒状のピン部25A、及び鍔状のフランジ部25Bを有している。フランジ部25Bは、ピン部25Aの長手方向一端側に設けられている。
【0038】
ピン部25Aとフランジ部25Bとの連結箇所には、ピン部25Aの長手方向に対して傾斜した傾斜部25Cが設けられている。そして、カラー26は、少なくとも傾斜部25Cに設けられている。
【0039】
したがって、本実施形態では、カラー26のうちチルトピン25と接触する部位、及びチルトピン25のうちカラー26と接触する部位それぞれには、当該チルトピン25の長手方向に対して傾斜した傾斜部26A、25Cが設けられた構成となる。
【0040】
なお、本実施形態では、カラー26は、チルトピン25に一体化された当該チルトピン25との一体品である。具体的には、カラー26は、インサート成形法によりチルトピン25と一体化されている。
【0041】
<3.本実施形態に係る乗物用シート(特に、チルトピンの支持構造)の特徴>
貫通穴7Aの内周面とチルトピン25の外周面との間には、当該内周面及び当該外周面のうち少なくとも一方と滑り接触可能、かつ、弾性的に変形可能な樹脂製のカラー26が配置されている。
【0042】
これにより、当該乗物用シート1では、貫通穴7Aの内周面とチルトピン25の外周面とが衝突することが防止されるので、貫通穴7Aの内周面にチルトピン25が衝突することに起因する異音の発生が抑制され得る。
【0043】
カラー26のうちチルトピン25と接触する部位、及びチルトピン25のうちカラー26と接触する部位それぞれには、当該チルトピン25の長手方向に対して傾斜した傾斜部26A、25Cが設けられている。
【0044】
これにより、チルトピン25の長手方向(本実施形態では、シート幅方向)及び当該長手方向と直交する方向の成分を含む加振力が乗物用シート1に作用した場合であっても、当該加振力に起因する異音の発生が抑制され得る。
【0045】
貫通穴7Aの外縁部には、当該外縁部から長手方向と平行な方向に延出した壁面7Dを有する延出部7Cが設けられている。これにより、延出部7Cにより、チルトピン25の姿勢が保持され得るので、チルトピン25が安定的にスライド変位可能となる。
【0046】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は、チルトユニット20を可動機構とした例であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、チルトユニット20以外の可動機構にも適用可能である。
【0047】
上述の実施形態では、チルトピン25がスライド可能しながら回転する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ピンがスライド不可な構成又は回転不可な構成であってもよい。
【0048】
上述の実施形態では、傾斜部25Cにカラー26が設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、カラー26が単純な円筒状であってもよい。
【0049】
上述の実施形態に係る貫通穴7Aの外縁部には、当該外縁部から長手方向と平行な方向に延出した壁面7Dを有する延出部7Cが設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、当該延出部7Cが廃止された構成であってもよい。
【0050】
上述の実施形態に係るカラー26は、チルトピン25に一体化された当該チルトピン25との一体品であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、カラー26がチルトピン25と別部品であってもよい。
【0051】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0052】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1… 乗物用シート 3…シートクッション 4… シートバック
5… クッションフレーム 6…フレーム本体 7… サイドフレーム
7A… 貫通穴 7B…前端 7C… 延出部 7D… 壁面
20… チルトユニット 21…チルトアーム 23… 揺動アーム
25… チルトピン 25A…ピン部 25B… フランジ部
25C… 傾斜部 26…カラー 27… 脱落規制部材