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特開2024-150299可動子計数装置、駆動装置、可動子計数方法、記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150299
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】可動子計数装置、駆動装置、可動子計数方法、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20241016BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01D5/245 110L
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063651
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】岸 直樹
【テーマコード(参考)】
2F077
5H641
【Fターム(参考)】
2F077AA37
2F077NN04
2F077NN06
2F077NN17
2F077PP05
2F077QQ02
5H641BB06
5H641GG02
5H641GG26
5H641GG28
5H641HH03
5H641JA09
(57)【要約】
【課題】複数の可動子を適切に計数できる可動子計数装置等を提供する。
【解決手段】可動子計数装置6は、可動子C1、C2に取り付けられる磁気スケールを測位する複数の磁気センサS1~S5と、磁気スケールの測位主体の磁気センサS1~S5を切り替える測位主体切替部40と、測位主体切替部40による、前センサS3から計数センサS4への測位主体の切り替え、または、計数センサS4から後センサS5への測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、測位主体切替部40による、後センサS5から計数センサS4への測位主体の切り替え、または、計数センサS4から前センサS3への測位主体の切り替えに基づいて第1方向と反対の第2方向に計数する可動子計数部62と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該移動方向に沿って配置される三つ以上の位置検知部であって、その間隔が前記測位スケールの前記移動方向の長さより小さい複数の位置検知部と、
前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該測位スケールの測位主体を前記移動方向と反対側の移動元の位置検知部から前記移動方向側の移動先の位置検知部に切り替える測位主体切替部と、
複数の前記可動子が使用される場合、少なくとも一つの前記位置検知部を、当該可動子の計数用の可動子計数位置検知部として設定する可動子計数設定部と、
前記測位主体切替部による、前記可動子計数位置検知部と一方側において隣接する第1位置検知部から当該可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、前記可動子計数位置検知部から当該可動子計数位置検知部と前記一方側と反対の他方側において隣接する第2位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、前記測位主体切替部による、前記第2位置検知部から前記可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、前記可動子計数位置検知部から前記第1位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて前記第1方向と反対の第2方向に計数する可動子計数部と、
を備える可動子計数装置。
【請求項2】
前記測位スケールは、複数の磁気目盛りが設けられる磁気スケールであり、
前記位置検知部は、前記磁気目盛りを検出する磁気検出ヘッドを備える磁気センサである、
請求項1に記載の可動子計数装置。
【請求項3】
軌道に沿って駆動される複数の可動子と、
前記可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該移動方向に沿って配置される三つ以上の位置検知部であって、その間隔が前記測位スケールの前記移動方向の長さより小さい複数の位置検知部と、
前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該測位スケールの測位主体を前記移動方向と反対側の移動元の位置検知部から前記移動方向側の移動先の位置検知部に切り替える測位主体切替部と、
少なくとも一つの前記位置検知部を、前記複数の可動子の計数用の可動子計数位置検知部として設定する可動子計数設定部と、
前記測位主体切替部による、前記可動子計数位置検知部と一方側において隣接する第1位置検知部から当該可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、前記可動子計数位置検知部から当該可動子計数位置検知部と前記一方側と反対の他方側において隣接する第2位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、前記測位主体切替部による、前記第2位置検知部から前記可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、前記可動子計数位置検知部から前記第1位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて前記第1方向と反対の第2方向に計数する可動子計数部と、
を備える駆動装置。
【請求項4】
軌道に沿って駆動される複数の可動子と、前記可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該移動方向に沿って配置される三つ以上の位置検知部であって、その間隔が前記測位スケールの前記移動方向の長さより小さい複数の位置検知部と、を備える駆動装置において、
前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該測位スケールの測位主体を前記移動方向と反対側の移動元の位置検知部から前記移動方向側の移動先の位置検知部に切り替えることと、
少なくとも一つの前記位置検知部を、前記複数の可動子の計数用の可動子計数位置検知部として設定することと、
前記可動子計数位置検知部と一方側において隣接する第1位置検知部から当該可動子計数位置検知部への前記測位主体の切り替え、または、前記可動子計数位置検知部から当該可動子計数位置検知部と前記一方側と反対の他方側において隣接する第2位置検知部への前記測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、前記第2位置検知部から前記可動子計数位置検知部への前記測位主体の切り替え、または、前記可動子計数位置検知部から前記第1位置検知部への前記測位主体の切り替えに基づいて前記第1方向と反対の第2方向に計数することと、
を実行する可動子計数方法。
【請求項5】
軌道に沿って駆動される複数の可動子と、前記可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該移動方向に沿って配置される三つ以上の位置検知部であって、その間隔が前記測位スケールの前記移動方向の長さより小さい複数の位置検知部と、を備える駆動装置において、
前記測位スケールが二つの隣接する前記位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該測位スケールの測位主体を前記移動方向と反対側の移動元の位置検知部から前記移動方向側の移動先の位置検知部に切り替えることと、
少なくとも一つの前記位置検知部を、前記複数の可動子の計数用の可動子計数位置検知部として設定することと、
前記可動子計数位置検知部と一方側において隣接する第1位置検知部から当該可動子計数位置検知部への前記測位主体の切り替え、または、前記可動子計数位置検知部から当該可動子計数位置検知部と前記一方側と反対の他方側において隣接する第2位置検知部への前記測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、前記第2位置検知部から前記可動子計数位置検知部への前記測位主体の切り替え、または、前記可動子計数位置検知部から前記第1位置検知部への前記測位主体の切り替えに基づいて前記第1方向と反対の第2方向に計数することと、
をコンピュータに実行させる可動子計数プログラムを記憶している記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可動子を軌道に沿って移動させる駆動装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可動子を軌道に沿って移動させる駆動装置としてのリニア搬送システムが開示されている。軌道に沿って配置された複数の磁気センサが、可動子に取り付けられた磁気スケールを測位する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-164396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の可動子が使用される場合、磁気センサによる各磁気スケール(すなわち、各可動子)の検知結果に基づいて、当該磁気センサ上を通過した可動子を計数できる。しかし、可動子は軌道上を双方向に移動しうるため、例えば局所的に往復移動する同じ可動子が累積的に計数されてしまう恐れがある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、複数の可動子を適切に計数できる可動子計数装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の可動子計数装置は、可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該移動方向に沿って配置される三つ以上の位置検知部であって、その間隔が測位スケールの移動方向の長さより小さい複数の位置検知部と、測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該測位スケールの測位主体を移動方向と反対側の移動元の位置検知部から移動方向側の移動先の位置検知部に切り替える測位主体切替部と、複数の可動子が使用される場合、少なくとも一つの位置検知部を、当該可動子の計数用の可動子計数位置検知部として設定する可動子計数設定部と、測位主体切替部による、可動子計数位置検知部と一方側において隣接する第1位置検知部から当該可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、可動子計数位置検知部から当該可動子計数位置検知部と一方側と反対の他方側において隣接する第2位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、測位主体切替部による、第2位置検知部から可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、可動子計数位置検知部から第1位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向と反対の第2方向に計数する可動子計数部と、を備える。
【0007】
本態様では、可動子計数部が、測位主体切替部による測位主体の切替方向に応じた第1方向(例えば、正方向)または第2方向(例えば、負方向)に計数する。このため、例えば局所的に往復移動する同じ可動子が(同じ方向に)累積的に計数されてしまうことがなくなる。
【0008】
本開示の別の態様は、駆動装置である。この装置は、軌道に沿って駆動される複数の可動子と、可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該移動方向に沿って配置される三つ以上の位置検知部であって、その間隔が測位スケールの移動方向の長さより小さい複数の位置検知部と、測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該測位スケールの測位主体を移動方向と反対側の移動元の位置検知部から移動方向側の移動先の位置検知部に切り替える測位主体切替部と、少なくとも一つの位置検知部を、複数の可動子の計数用の可動子計数位置検知部として設定する可動子計数設定部と、測位主体切替部による、可動子計数位置検知部と一方側において隣接する第1位置検知部から当該可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、可動子計数位置検知部から当該可動子計数位置検知部と一方側と反対の他方側において隣接する第2位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、測位主体切替部による、第2位置検知部から可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、可動子計数位置検知部から第1位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向と反対の第2方向に計数する可動子計数部と、を備える。
【0009】
本開示の更に別の態様は、可動子計数方法である。この方法は、軌道に沿って駆動される複数の可動子と、可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該移動方向に沿って配置される三つ以上の位置検知部であって、その間隔が測位スケールの移動方向の長さより小さい複数の位置検知部と、を備える駆動装置において、測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該測位スケールの測位主体を移動方向と反対側の移動元の位置検知部から移動方向側の移動先の位置検知部に切り替えることと、少なくとも一つの位置検知部を、複数の可動子の計数用の可動子計数位置検知部として設定することと、可動子計数位置検知部と一方側において隣接する第1位置検知部から当該可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、可動子計数位置検知部から当該可動子計数位置検知部と一方側と反対の他方側において隣接する第2位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、第2位置検知部から可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、可動子計数位置検知部から第1位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向と反対の第2方向に計数することと、を実行する。
【0010】
本開示の更に別の態様は、記憶媒体である。この記憶媒体は、軌道に沿って駆動される複数の可動子と、可動子に取り付けられる測位スケールを測位するために当該移動方向に沿って配置される三つ以上の位置検知部であって、その間隔が測位スケールの移動方向の長さより小さい複数の位置検知部と、を備える駆動装置において、測位スケールが二つの隣接する位置検知部の検知範囲に跨がっている状態において、当該測位スケールの測位主体を移動方向と反対側の移動元の位置検知部から移動方向側の移動先の位置検知部に切り替えることと、少なくとも一つの位置検知部を、複数の可動子の計数用の可動子計数位置検知部として設定することと、可動子計数位置検知部と一方側において隣接する第1位置検知部から当該可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、可動子計数位置検知部から当該可動子計数位置検知部と一方側と反対の他方側において隣接する第2位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向に計数し、第2位置検知部から可動子計数位置検知部への測位主体の切り替え、または、可動子計数位置検知部から第1位置検知部への測位主体の切り替えに基づいて第1方向と反対の第2方向に計数することと、をコンピュータに実行させる可動子計数プログラムを記憶している。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本開示に包含される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、複数の可動子を適切に計数できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】リニア搬送システムの全体構造を示す斜視図である。
図2】リニア搬送システムにおける位置検知部等によって構成される測位切替装置を模式的に示す。
図3】特許文献1において磁気スケールの測位主体が移動元の磁気センサから移動先の磁気センサに切り替わる様子を模式的に示す。
図4】測位主体切替部による各磁気センサの切替制御の実施例を示す。
図5】測位主体切替部による各磁気センサの切替制御の実施例を示す。
図6】測位主体切替部による各磁気センサの切替制御の実施例を示す。
図7】測位主体切替部による各磁気センサの切替制御の実施例を示す。
図8】測位主体切替部による各磁気センサの切替制御の実施例を示す。
図9】リニア搬送システムにおける位置検知部等によって構成される可動子計数装置を模式的に示す。
図10】可動子計数装置による可動子の計数制御の実施例を示す。
図11】可動子計数装置による可動子の計数制御の実施例を示す。
図12】可動子計数装置による可動子の計数制御の実施例を示す。
図13】可動子計数装置による可動子の計数制御の実施例を示す。
図14】可動子計数装置による可動子の計数制御の実施例を示す。
図15】可動子計数装置による可動子の計数制御の実施例を示す。
図16】可動子計数装置による可動子の計数制御の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態(以下では実施形態とも表される)について詳細に記述する。記述および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する記述を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、記述の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本開示の範囲を何ら限定するものではない。実施形態において提示される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本開示の本質的なものであるとは限らない。実施形態は、便宜的に、それを実現する機能毎および/または機能群毎の構成要素に分解されて提示される。但し、実施形態における一つの構成要素が、実際には別体としての複数の構成要素の組合せによって実現されてもよいし、実施形態における複数の構成要素が、実際には一体としての一つの構成要素によって実現されてもよい。
【0015】
図1は、本開示に係る駆動装置の一態様であるリニア搬送システム1の全体構造を示す斜視図である。リニア搬送システム1は、環状のレールまたは軌道を構成する固定子2と、当該固定子2に対して駆動されレールに沿って移動可能な複数の可動子3A、3B、3C、3D(以下では総称して可動子3とも表される)を備える。固定子2に設けられる電磁石またはコイルと、可動子3に設けられる永久磁石が互いに対向することで、環状のレールに沿ってリニアモータが構成されている。なお、固定子2が形成するレールは環状に限らない任意の形状でよい。例えば、レールは直線状でもよいし、曲線状でもよいし、一つのレールが複数のレールに分岐してもよいし、複数のレールが一つのレールに合流してもよい。また、固定子2が形成するレールの設置方向も任意である、図1の例では水平面内にレールが配設されるが、レールは鉛直面内に配設されてもよいし、任意の傾斜角の平面内や曲面内に配設されてもよい。
【0016】
固定子2は、水平方向を法線方向とするレール面21を有する。レール面21はレールの形成方向に沿って帯状に延在し、図1の例のように環状のレールを形成する場合は(仮想的な)両端が連結された無端帯状となる。このように任意の形状のレールを形成可能なレール面21には、電磁石を備える複数の駆動モジュール(不図示)が、レールに沿って連続的または周期的に埋設または配置されている。駆動モジュールにおける電磁石は、可動子3の永久磁石および/または電磁石自体に対してレールに沿った推進力を及ぼす磁界を発生させる。具体的には、これらの多数の電磁石に三相交流等の駆動電流を流すと、永久磁石を備える可動子3をレールに沿う所望の接線方向に直線駆動する移動磁界が発生する。なお、図1の例では環状のレールを水平面内に形成するレール面21の法線方向が水平方向であったが、レール面21の法線方向は鉛直方向その他の任意の方向でもよい。
【0017】
固定子2において、レール面21に対して垂直な上面または下面に設けられる測位部22には、可動子3に取り付けられる測位対象または測位スケールとしての磁気スケール(図1では不図示)の位置を測定可能な複数の位置検知部としての磁気センサ(図1では不図示)が連続的にまたは周期的に埋設されている。一定ピッチの縞状の磁気パターンまたは磁気目盛りによって形成される磁気スケールを測位対象とする磁気センサは、一般的に複数の磁気検出ヘッドを備える。磁気スケールの磁気パターンのピッチまたは周期に対して、複数の磁気検出ヘッドの間隔をずらすことによって、磁気センサは磁気スケールの位置を高精度に測定できる。二つの磁気検出ヘッドが設けられる典型的な磁気センサでは、例えば、二つの磁気検出ヘッドの間隔が磁気スケールの磁気パターンに対して1/4ピッチずれている(位相が90度ずれている)。なお、以上とは逆に、可動子3に磁気センサを設け、固定子2に磁気スケールを設けてもよい。また、測位部22によって測定された可動子3の位置を時間で微分すれば可動子3の速度を検知でき、当該速度を時間で微分すれば可動子3の加速度を検知できる。
【0018】
固定子2に設けられる位置検知部および可動子3に取り付けられる測位対象または測位スケールは以上のような磁気式に限らず、光学式その他の方式でもよい。光学式の場合、可動子3には一定ピッチの縞模様または目盛りによって形成される光学スケールが取り付けられ、固定子2には光学スケールの縞模様を光学的に読み取り可能な光学センサが設けられる。磁気式や光学式では、位置検知部が測位対象(磁気スケールや光学スケール)を非接触で測定するため、可動子3が搬送する被搬送物が飛散して測位箇所(固定子2の上面)に入り込んだ場合の位置検知部の故障等のリスクを低減できる。但し、光学式では測位箇所に入り込んだ液体や粉体等の被搬送物によって光学スケールが覆われると測位精度が悪化してしまうため、磁性が無視できる被搬送物であれば測位箇所に入り込んでも測位精度を悪化させない磁気式とするのが好ましい。
【0019】
可動子3は、固定子2のレール面21に対向する可動子本体31と、可動子本体31の上部から水平方向に張り出して固定子2の測位部22に対向する被測位部32と、被測位部32とは反対側(固定子2から遠い側)に可動子本体31から水平方向に張り出して被搬送物が載置または固定される搬送部33を備える。可動子本体31は、レールに沿って固定子2のレール面21に埋設されている複数の電磁石と対向する一または複数の永久磁石(不図示)を備える。固定子2の電磁石が発生させる移動磁界が可動子3の永久磁石および/または電磁石自体にレールの接線方向の直線動力または推進力を加えるため、可動子3は固定子2に対してレール面21に沿って直線駆動される。
【0020】
可動子3の被測位部32には、測位対象または測位スケールとしての磁気スケールや光学スケールが、固定子2の測位部22に設けられる位置検知部(磁気センサや光学センサ)と対向するように設けられる。位置検知部が固定子2の上面に設けられる図1の例では、磁気スケール等の測位対象が可動子3の被測位部32の下面に取り付けられる。測位部22および被測位部32が磁気式の場合、レール面21の電磁石および可動子本体31の永久磁石の間の磁界が、測位部22および被測位部32の磁気測位に影響しないように、固定子2においてはレール面21と測位部22を異なる面または離れた箇所に形成し、可動子3においては可動子本体31と被測位部32を異なる面または離れた箇所に形成するのが好ましい。
【0021】
図1では四つの可動子3A、3B、3C、3Dが例示されたが、例えば少量の被搬送物を多数搬送するリニア搬送システム1では、1,000を超える数の可動子3が必要になることも想定される。
【0022】
図2は、リニア搬送システム1における位置検知部等によって構成される測位切替装置4を模式的に示す。測位切替装置4は、一または複数(図示の例では一つ)の可動子Cに取り付けられる測位スケールとしての磁気スケール(以下では便宜的に磁気スケールCとも表される)を測位するために、固定子2の軌道方向または可動子Cの移動方向(図2における左右方向)に沿ってレール面21に埋設または配置される複数(図示の例では四つ)の位置検知部としての磁気センサS0~S3を備える。
【0023】
各磁気センサS0~S3の移動方向の間隔は互いに等しくてもよいが、本実施形態では全ての間隔が異なる例を説明する。具体的には、第0磁気センサS0と第1磁気センサS1の間隔X0/1を例えば30mmとし、第1磁気センサS1と第2磁気センサS2の間隔X1/2を例えば26mmとし、第2磁気センサS2と第3磁気センサS3の間隔X2/3を例えば24mmとする。このように、間隔X0/1、間隔X1/2、間隔X2/3は互いに異なる。なお、磁気センサの間隔は可能な限り一定とすることが好ましいが、レールの曲線部、分岐部、合流部等では磁気センサを等間隔に配置することが現実的でない場合もある。本実施形態は、このような場合に好適である。
【0024】
以上の各磁気センサS0~S3の間隔X0/1、X1/2、X2/3に対して、磁気スケールCの移動方向の長さは例えば48mmである。このように本実施形態では、各磁気センサS0~S3の移動方向の間隔(30mm, 26mm, 24mm)が、磁気スケールCの移動方向の長さ(48mm)より小さい。
【0025】
磁気スケールCは、移動方向における両端部EL、ERと、当該両端部EL、ERに移動方向の両側から挟まれた長尺のスケール本体ABを有する。スケール本体ABには、移動方向に沿って等間隔に設けられる多数の磁気目盛りまたは磁気パターンが形成されている。スケール本体ABにおける磁気目盛りを検知した各磁気センサS0~S3は、公知のリニアエンコーダにおいて一般的なA相およびB相のパルスを出力する。典型的には、A相のパルスとB相のパルスは位相が互いに90度異なっている。なお、磁気スケールCの両端部EL、ERにも、スケール本体ABと同様の磁気目盛りが形成されていてもよい。
【0026】
磁気スケールCの各端部EL、ERの移動方向の長さは例えば8mmである。この場合のスケール本体ABの移動方向の長さは、磁気スケールCの長さ48mmから両端部EL、ERの合計の長さ16mmを引いた32mmである。このように本実施形態では、各磁気センサS0~S3の移動方向の間隔(30mm, 26mm, 24mm)が、磁気スケールCのスケール本体AB移動方向の長さ(32mm)より小さい。
【0027】
可動子Cおよび/または磁気スケールCには基準マークとしてのリファレンスマークZが設けられる。最初にリファレンスマークZを磁気的に検知した各磁気センサS0~S3は、公知のリニアエンコーダにおいて一般的なZ相のパルスを出力する。リファレンスマークZに応じて出力されるZ相のパルスは可動子Cの基準位置の特定に利用される。具体的には、リファレンスマークZを最初に検知してZ相のパルスを最初に出力した磁気センサが、後述する計数部による磁気スケールCのA/B相の磁気目盛りの計数を開始する基準センサとなる。以下では、第0磁気センサS0が磁気スケールCにとっての基準センサとなる場合について説明する。図示の状態は、基準センサとしての第0磁気センサS0の上にリファレンスマークZがあり、当該リファレンスマークZを検知した第0磁気センサS0の計数部50が、計数値「0」から磁気スケールCのA/B相の磁気目盛りの計数を開始する状態である。
【0028】
以上の磁気スケールCについての説明は、他の不図示の可動子に取り付けられる他の磁気スケールにも同様に当てはまる。但し、以上の各部の寸法やリファレンスマークの位置は磁気スケール毎に任意に決められる。以下でも特に言及しない限り、磁気スケールCについての説明は他の磁気スケールにも同様に当てはまるものとする。
【0029】
各磁気センサS0~S3は、磁気スケールCのスケール本体ABおよび/または両端部EL、ERに形成されているA/B相の磁気目盛りを計数する計数部50~53を備える。各計数部50~53における計数値の増減の方向は、各磁気センサS0~S3が検知する磁気スケールC(すなわち可動子C)の移動方向に対応する。例えば、可動子Cが図2における左側から右側に移動する場合に各計数部50~53における計数値が、各磁気センサS0~S3が出力するA/B相のパルスの数に応じて増加し、可動子Cが図2における右側から左側に移動する場合に各計数部50~53における計数値が、各磁気センサS0~S3が出力するA/B相のパルスの数に応じて減少する。
【0030】
可動子Cがレール上を移動すると、その磁気スケールCを測位する磁気センサS0~S3が順次切り替わる。図3は、特許文献1において、左側から右側に移動する磁気スケールCの測位主体が移動元の磁気センサS0から移動先の磁気センサS1に切り替わる様子を模式的に示す。図示されるように、磁気センサS0、S1の切り替えは、磁気スケールCのスケール本体ABが二つの隣接する磁気センサS0、S1の検知範囲に跨がっている状態で行われる。図示の例では、磁気センサS0、S1が磁気スケールCの移動方向の中央(リファレンスマークZの位置)に関して対称な位置SW1、SW2にあるタイミングで、磁気スケールCの測位主体が磁気センサS0から磁気センサS1に切り替えられる。
【0031】
第1切替位置SW1は、左端部ELとスケール本体ABの境界から所定距離のスケール本体AB内の位置であり、第2切替位置SW2は、右端部ERとスケール本体ABの境界から所定距離のスケール本体AB内の位置である。図示の例では、第1切替位置SW1のスケール本体ABの左端からの距離と、第2切替位置SW2のスケール本体ABの右端からの距離は例えば1mmである。この場合、第1切替位置SW1のスケール本体ABの中央からの距離と、第2切替位置SW2のスケール本体ABの中央からの距離は15mmであり、その和(30mm)が磁気センサS0、S1の間隔X0/1と一致する。
【0032】
磁気スケールCの測位主体が磁気センサS0から磁気センサS1に切り替わる際、移動元の磁気センサS0の計数部50の計数値が、移動先の磁気センサS1の計数部51の計数値に引き継がれる。以下では、各磁気センサS0~S3が磁気スケールCの中央(リファレンスマークZの位置)を検知する場合の各計数部50~53の計数値を零、各磁気センサS0~S3が磁気スケールCの中央より可動子Cの移動方向と反対側(図3における左側)において磁気目盛りを検知する場合の各計数部50~53の計数値を正、各磁気センサS0~S3が磁気スケールCの中央より可動子Cの移動方向側(図3における右側)において磁気目盛りを検知する場合の各計数部50~53の計数値を負とする。
【0033】
図示の例では、リファレンスマークZの位置が計数値「0」に対応し、第1切替位置SW1が例えばリファレンスマークZとの距離(15mm)に相当する正の計数値「+15,000」に対応し、第2切替位置SW2が例えばリファレンスマークZとの距離(15mm)に相当する負の計数値「-15,000」に対応する。なお、物理的な距離(15mm)に対する計数値の変化の絶対値(15,000)の比をセンサ分解能Rともいい、本実施形態ではR=1,000(=15,000/15)で一定とする。また、第1切替位置SW1の計数値を切替計数値ともいい、第2切替位置SW2の計数値を開始計数値ともいう。図示の例では、切替計数値と開始計数値は正負の符号のみが異なる。図示の状態のように磁気スケールCの第1切替位置SW1が磁気センサS0の上に来ると、その計数部50の切替計数値「+15,000」が第2切替位置SW2にある磁気センサS1の計数部51の開始計数値「-15,000」に変換される。以降は磁気センサS1が磁気スケールCの測位主体となって、その計数部51が開始計数値「-15,000」から次の磁気センサへの切替計数値「+15,000」まで計数する。
【0034】
以上のように磁気センサS0、S1を切り替える際に計数値が反転(「+15,000」→「-15,000」)されて引き継がれる特許文献1の技術は、磁気センサの間隔が一定であることを前提としており、図2のように各磁気センサS0~S3の間隔X0/1、X1/2、X2/3が変化する場合は適用できない。以下では、各磁気センサS0~S3の間隔X0/1、X1/2、X2/3が変化する場合であっても、適切に各磁気センサS0~S3を切り替えられる測位主体切替部40について説明する。
【0035】
図2における測位主体切替部40は、計数値変換部41と位置演算部42を備える。計数値変換部41は、磁気スケールCのスケール本体ABが二つの隣接する磁気センサS0/S1、S1/S2、S2/S3の検知範囲に跨がっている状態において、当該スケール本体ABの測位主体を移動方向と反対側の移動元の磁気センサS0、S1、S2から移動方向側の移動先の磁気センサS1、S2、S3に切り替える際、各磁気センサS0~S3の間隔X0/1、X1/2、X2/3に基づいて、当該移動元の磁気センサS0、S1、S2の計数部50、51、52の切替計数値を、当該移動先の磁気センサS1、S2、S3の計数部51、52、53の開始計数値に変換する。位置演算部42は、各磁気センサS0~S3の間隔X0/1、X1/2、X2/3に基づいて、移動先の磁気センサS1、S2、S3の計数部51、52、53の計数値から、移動元の磁気センサS0、S1、S2に対する磁気スケールCの相対位置を演算する。以下では、位置演算部42が演算する基準センサとしての第0磁気センサS0に対する磁気スケールCのリファレンスマークZの相対位置を、磁気スケールCのリファレンスマークZの絶対位置または単に磁気スケールCの絶対位置ともいう。
【0036】
図4図8は、測位主体切替部40による各磁気センサS0~S3の切替制御の実施例を示す。図4図2と同じ状態を示し、リファレンスマークZを検知した基準センサとしての第0磁気センサS0の計数部50が、計数値「0」から磁気スケールCのA/B相の磁気目盛りの計数を開始する。この時の磁気スケールCの(第0磁気センサS0に対する)絶対位置は、計数部50の計数値「0」と等しい。
【0037】
図5は、図4の状態から移動した磁気スケールCの移動方向の中央(リファレンスマークZの位置)が、第0磁気センサS0および第1磁気センサS1の中点に来た状態を示す。この時、磁気センサS0、S1は磁気スケールCの中央に関して対称な第1切替位置SW1、第2切替位置SW2にあり、磁気スケールCの測位主体が磁気センサS0から磁気センサS1に切り替えられる。なお、磁気センサS0から磁気センサS1への切り替えは、スケール本体ABが磁気センサS0、S1の検知範囲に跨がっている状態において行われればよく、必ずしも磁気スケールCの中央に関して対称な第1切替位置SW1、第2切替位置SW2において行う必要はない(後述するように、図示の位置から左右に1mm以内ずれた位置で行ってもよい)。但し、以下に示すように第1切替位置SW1、第2切替位置SW2を磁気スケールCの中央に関して対称な位置とすることで、計数値変換部41や位置演算部42における演算を簡素化できる。
【0038】
図5における第1切替位置SW1は、左端部ELとスケール本体ABの境界から1mmのスケール本体AB内の位置であり、第2切替位置SW2は、右端部ERとスケール本体ABの境界から1mmのスケール本体AB内の位置である。この場合、第1切替位置SW1のスケール本体ABの中央からの距離と、第2切替位置SW2のスケール本体ABの中央からの距離は15mmであり、その和(30mm)が磁気センサS0、S1の間隔X0/1と一致する。センサ分解能Rが「1,000」で一定の本実施例において、図4の状態から15mm分のA/B相の磁気目盛りを検知した第0磁気センサS0の計数部50の計数値は「+15,000」になっており、これが切替計数値Cとなる。
【0039】
計数値変換部41は、磁気スケールCの測位主体を移動元の第0磁気センサS0から移動先の第1磁気センサS1に切り替える際、第0磁気センサS0と第1磁気センサS1の間隔X0/1(30mm)に対応する計数値(30,000:以下では「間隔X0/1」を計数値「30,000」の意味でも用いる)に基づいて、第0磁気センサS0の計数部50の切替計数値C「+15,000」を、第1磁気センサS1の計数部51の開始計数値Cに、C=-X0/1/2=-C、によって変換する。具体的には、C=-30,000/2=-15,000、が第1磁気センサS1の開始計数値Cとなる。このように本実施例では、各磁気センサの間隔によらず、移動先の磁気センサS1の開始計数値C「-15,000」が、移動元の磁気センサS0の切替計数値C「+15,000」を単純に正負反転したものになる。
【0040】
なお、可動子Cが図5とは反対側(左側)に動く場合、第0磁気センサS0の切替計数値をCとし、不図示の第-1磁気センサS-1の開始計数値をC-1とすれば、C-1=X-1/0/2=-C、となる。ここで、X-1/0は第-1磁気センサS-1と第0磁気センサS0の間隔である。例えば、X-1/0を28mmとすれば、C-1=28,000/2=14,000、かつ、C=-C-1=-14,000、となる。
【0041】
位置演算部42は、移動先の磁気センサS1の計数部51の計数値C(-15,000~)から磁気スケールCの絶対位置を演算する際、間隔X0/1「30,000」を単純に加算すればよい。具体的には、磁気スケールCの絶対位置は、磁気センサS1の磁気センサS0に対する絶対位置(計数値)をP(=X0/1=30,000)として、P+C、と演算され、図5の状態(C=-15,000)では、30,000-15,000=15,000、と正しく演算される。また、可動子Cが図5とは反対側(左側)に動く場合は、磁気センサS-1の磁気センサS0に対する絶対位置(計数値)をP-1(=-X-1/0=-28,000)として、P-1+C-1、と演算され、C-1=14,000の状態では、-28,000+14,000=-14,000、と正しく演算される。
【0042】
図6は、図5の状態から移動した磁気スケールCの移動方向の中央(リファレンスマークZの位置)が、第1磁気センサS1の上に来た状態を示す。磁気スケールCは図5の状態から15mm移動しているため、第1磁気センサS1の計数部51の計数値Cは、図5における「-15,000」に移動分の「+15,000」を加算した「0」になっている。このように、本実施例では、基準センサとしての第0磁気センサS0以外の磁気センサS1~S3でも、磁気スケールCの中央を検知している状態における計数部51~53の計数値が常に「0」となる。また、位置演算部42は前記の式、P+C、によって磁気スケールCの絶対位置を、30,000+0=30,000、と正しく演算する。
【0043】
図7は、図6の状態から移動した磁気スケールCの移動方向の中央(リファレンスマークZの位置)が、第1磁気センサS1および第2磁気センサS2の中点に来た状態を示す。この時、磁気センサS1、S2は磁気スケールCの中央に関して対称な第1切替位置SW1、第2切替位置SW2にあり、磁気スケールCの測位主体が磁気センサS1から磁気センサS2に切り替えられる。なお、磁気センサS1から磁気センサS2への切り替えは、スケール本体ABが磁気センサS1、S2の検知範囲に跨がっている状態において行われればよく、必ずしも磁気スケールCの中央に関して対称な第1切替位置SW1、第2切替位置SW2において行う必要はない(後述するように、図示の位置から左右に3mm以内ずれた位置で行ってもよい)。但し、以下に示すように第1切替位置SW1、第2切替位置SW2を磁気スケールCの中央に関して対称な位置とすることで、計数値変換部41や位置演算部42における演算を簡素化できる。
【0044】
図7における第1切替位置SW1は、左端部ELとスケール本体ABの境界から3mmのスケール本体AB内の位置であり、第2切替位置SW2は、右端部ERとスケール本体ABの境界から3mmのスケール本体AB内の位置である。この場合、第1切替位置SW1のスケール本体ABの中央からの距離と、第2切替位置SW2のスケール本体ABの中央からの距離は13mmであり、その和(26mm)が磁気センサS1、S2の間隔X1/2と一致する。センサ分解能Rが「1,000」で一定の本実施例において、図6の状態(C=0)から13mm分のA/B相の磁気目盛りを検知した第1磁気センサS1の計数部51の計数値Cは「+13,000」になっており、これが切替計数値Cとなる。
【0045】
計数値変換部41は、磁気スケールCの測位主体を移動元の第1磁気センサS1から移動先の第2磁気センサS2に切り替える際、第1磁気センサS1と第2磁気センサS2の間隔X1/2(26mm)に対応する計数値(26,000:以下では「間隔X1/2」を計数値「26,000」の意味でも用いる)に基づいて、第1磁気センサS1の計数部50の切替計数値C「+13,000」を、第2磁気センサS2の計数部51の開始計数値Cに、C=-X1/2/2=-C、によって変換する。具体的には、C=-26,000/2=-13,000、が第2磁気センサS2の開始計数値Cとなる。このように本実施例では、各磁気センサの間隔によらず、移動先の磁気センサS2の開始計数値C「-13,000」が、移動元の磁気センサS1の切替計数値C「+13,000」を単純に正負反転したものになる。なお、X0/1(30mm)とX1/2(26mm)が互いに異なる本実施例では、第1磁気センサS1の図5における開始計数値「-15,000」と、図7における切替計数値「+13,000」が単純に正負反転したものにはならない。
【0046】
位置演算部42は、移動先の磁気センサS2の計数部52の計数値C(-13,000~)から磁気スケールCの絶対位置を演算する際、当該磁気センサS2の基準センサとしての第0磁気センサS0からの距離を表す間隔X0/1「30,000」および間隔X1/2「26,000」の単純和を加算すればよい。具体的には、磁気スケールCの絶対位置は、磁気センサS2の磁気センサS0に対する絶対位置(計数値)をP(=X0/1+X1/2=56,000)として、P+C、と演算され、図7の状態(C=-13,000)では、56,000-13,000=43,000、と正しく演算される。
【0047】
図8は、図7の状態から移動した磁気スケールCの移動方向の中央(リファレンスマークZの位置)が、第2磁気センサS2の上に来た状態を示す。磁気スケールCは図7の状態から13mm移動しているため、第2磁気センサS2の計数部52の計数値Cは、図7における「-13,000」に移動分の「+13,000」を加算した「0」になっている。このように、本実施例では、基準センサとしての第0磁気センサS0以外の磁気センサS1~S3でも、磁気スケールCの中央を検知している状態における計数部51~53の計数値が常に「0」となる。また、位置演算部42は前記の式、P+C、によって磁気スケールCの絶対位置を、56,000+0=56,000、と正しく演算する。
【0048】
以上のような実施例によれば、各磁気センサの間隔によらず、移動先の磁気センサの開始計数値が、移動元の磁気センサの切替計数値を単純に正負反転したものになる。また、本実施例では、基準センサ以外の磁気センサでも、磁気スケールCの中央を検知している状態における計数部の計数値が常に「0」となる。更に、本実施例では、位置演算部42が磁気スケールCの絶対位置を演算する際、測位主体の磁気センサの計数部の計数値に対して、当該磁気センサと基準センサの間の距離を表す計数値を単純に加算すればよい。
【0049】
続いて、本実施形態に係る可動子計数装置6について説明する。図9は、リニア搬送システム1における位置検知部等によって構成される可動子計数装置6を模式的に示す。可動子計数装置6は、図2における測位切替装置4と同様に、一または複数(図示の例では二つ)の可動子C1、C2に取り付けられる測位スケールとしての磁気スケール(以下では便宜的に磁気スケールC1、C2とも表される)を測位するために、固定子2の軌道方向または可動子C1、C2の移動方向(図9における左右方向)に沿ってレール面21に埋設または配置される複数(図示の例では五つ)の位置検知部としての磁気センサS1~S5を備える。
【0050】
各磁気センサS1~S5は、図2における各磁気センサS0~S3と同様に構成される。各磁気センサS1~S5の移動方向の間隔は互いに異なっていてもよいが、本実施形態では全ての間隔が等しい例を説明する。この場合の各磁気センサS1~S5の移動方向の間隔は例えば30mmである。また、各磁気スケールC1、C2の移動方向の長さも互いに異なっていてもよいが、本実施形態では全ての長さが等しい例を説明する。この場合の各磁気スケールC1、C2の移動方向の長さは、例えば図2における磁気スケールCと同じ48mmである。このように、本実施形態では、各磁気センサS1~S5の移動方向の間隔(30mm)が、各磁気スケールC1、C2の移動方向の長さ(48mm)より小さい。
【0051】
各磁気スケールC1、C2の構成は、図2における磁気スケールCと同様である。すなわち、磁気スケールC1は、移動方向における両端部E1L(図2におけるELと同様)、E1R(図2におけるERと同様)と、当該両端部E1L、E1Rに移動方向の両側から挟まれた長尺のスケール本体AB1(図2におけるスケール本体ABと同様)と、リファレンスマークZ1(図2におけるリファレンスマークZと同様)を有する。また、磁気スケールC2は、移動方向における両端部E2L(図2におけるELと同様)、E2R(図2におけるERと同様)と、当該両端部E2L、E2Rに移動方向の両側から挟まれた長尺のスケール本体AB2(図2におけるスケール本体ABと同様)と、リファレンスマークZ2(図2におけるリファレンスマークZと同様)を有する。なお、各磁気スケールの各部の配置や寸法は、磁気スケール毎に異なっていてもよい。
【0052】
図9では二つの可動子C1、C2が例示されるが、これらに加えてレール面21上には多数の他の可動子(例えば、可動子C1、C2を含めて最大で2048台)が存在しうる。以下では、レール面21上に存在する典型的には多数の可動子が、便宜的に可動子Cと総称される。本実施形態に係る可動子計数装置6は、これらの典型的には多数の可動子Cを適切に計数することを主な目的とする。
【0053】
可動子計数装置6は、図2に関して説明された測位主体切替部40と、可動子計数設定部61と、可動子計数部62を備える。
【0054】
測位主体切替部40は、磁気スケールC1、C2が二つの隣接する磁気センサの検知範囲に跨がっている状態において、当該磁気スケールC1、C2の測位主体を、移動元の磁気センサから移動先の磁気センサに切り替える。測位主体切替部40による各磁気センサの切替制御の実施例は、図4図8に関して前述された。
【0055】
可動子計数設定部61は、複数(例えば、最大で2048台)の可動子Cが使用される場合、少なくとも一つの磁気センサを、当該可動子Cの計数用の可動子計数位置検知部または可動子計数磁気センサ(以下では便宜的に計数センサとも表される)として設定する。図示の例では、可動子計数設定部61が、第4磁気センサS4を計数センサとして設定する。このように、可動子計数設定部61は、一または複数の磁気センサを固定的に計数センサとして設定してもよい。あるいは、可動子計数設定部61は、状況に応じて異なる一または複数の磁気センサを柔軟に計数センサとして設定してもよい。
【0056】
以下では、可動子計数設定部61によって設定された計数センサS4と一方側(図9における左側)において隣接する第1位置検知部としての第3磁気センサS3が便宜的に前センサS3と表され、可動子計数設定部61によって設定された計数センサS4と一方側と反対の他方側(図9における右側)において隣接する第2位置検知部としての第5磁気センサS5が便宜的に後センサS5と表される。ここでの「前」や「後」の語は、レール面21における磁気センサS3~S5の配置を便宜的に表すものであり、可動子Cの移動方向を表すものではない。
【0057】
可動子計数部62は、測位主体切替部40による、前センサS3から計数センサS4への可動子測位主体の切り替えに基づいて第1方向(本実施形態では正方向とされるが負方向とされてもよい)に計数する。すなわち、測位主体切替部40による正方向(図9における右方向)への可動子測位主体の切り替え(S3→S4)に応じて、可動子計数部62は正方向にカウントアップ(または、インクリメント)する。
【0058】
可動子計数部62は、測位主体切替部40による、計数センサS4から前センサS3への可動子測位主体の切り替えに基づいて第1方向と反対の第2方向(本実施形態では負方向とされるが正方向とされてもよい)に計数する。すなわち、測位主体切替部40による負方向(図9における左方向)への可動子測位主体の切り替え(S4→S3)に応じて、可動子計数部62は負方向にカウントダウン(または、デクリメント)する。
【0059】
図10図16は、可動子計数装置6による可動子C(図9と同様に、二つの可動子C1、C2が例示される)の計数制御の実施例を示す。図10図15は、二つの可動子C1、C2の移動例を示し、図16は、当該移動例における可動子C1、C2の使用センサ(測位主体となる磁気センサ)の番号と、可動子計数部62による計数値の変化を模式的に示す。
【0060】
図10の初期状態では、第1可動子C1が第3磁気センサS3(前センサ)を使用しており、第2可動子C2が第1磁気センサS1を使用している。図16に示されるように、この時点では可動子計数部62による計数が開始しておらず、計数の有効/無効を示す計数フラグが「無効」となっている。このように、図10の初期状態では、可動子計数部62による計数が無効になっているため、計数値は任意の初期値(例えば「0」)に設定可能である。
【0061】
図10から可動子C1、C2が正方向(右方向)に移動した図11の状態では、測位主体切替部40によって、第1可動子C1の測位主体が、前センサとしての第3磁気センサS3から計数センサとしての第4磁気センサS4に切り替えられる。このように、計数センサS4への可動子測位主体の初回の切り替えに応じて、可動子計数部62による計数が開始する。具体的には、計数フラグが「無効」から「有効」に変わり、可動子計数部62による計数値が「0」の状態から計数が開始される。ここで、計数値「0」は、計数センサS4を正方向に通過した正味の可動子が「1」台目(本実施例では第1可動子C1)であることを表す。なお、本実施例では、第1可動子C1の正方向の移動に伴う、前センサとしての第3磁気センサS3から計数センサとしての第4磁気センサS4への可動子測位主体の初回の切り替えに応じて可動子計数部62による計数が開始したが、可動子Cの負方向の移動に伴う、計数センサとしての第4磁気センサS4から前センサとしての第3磁気センサS3への可動子測位主体の初回の切り替えに応じて可動子計数部62による計数が開始してもよい。
【0062】
図11から可動子C1、C2が正方向に移動した図12の状態では、測位主体切替部40によって、第2可動子C2の測位主体が、前センサとしての第3磁気センサS3から計数センサとしての第4磁気センサS4に切り替えられる。図16に示されるように、図12における第2可動子C2についての前センサS3から計数センサS4への測位主体の切り替えが発生したため、可動子計数部62は計数値を正方向に増加させる。具体的には、可動子計数部62は、図11における計数値「0」を「1」にカウントアップする。ここで、計数値「1」は、計数センサS4を正方向に通過した正味の可動子が「2」台目(本実施例では第2可動子C2)であることを表す。
【0063】
図12から可動子C1、C2が正方向に移動した図13の状態では、第2可動子C2が第5磁気センサS5(後センサ)を使用している。本実施例では、この後、第1可動子C1(図13では不図示)および第2可動子C2が、移動方向を正方向から負方向(左方向)に反転する。
【0064】
図13から可動子C1、C2が負方向に移動した図14の状態では、測位主体切替部40によって、第2可動子C2の測位主体が、計数センサとしての第4磁気センサS4から前センサとしての第3磁気センサS3に切り替えられる。図16に示されるように、図14における第2可動子C2についての計数センサS4から前センサS3への測位主体の切り替えが発生したため、可動子計数部62は計数値を負方向に増加させる。具体的には、可動子計数部62は、図12および図13における計数値「1」を「0」にカウントダウンする。ここで、計数値「0」は、計数センサS4を正方向に通過した正味の可動子が「1」台目(本実施例では第1可動子C1)であることを表す。なお、第2可動子C2についての正方向の測位主体の切り替え(S3→S4)によって計数値が「0」から「1」にカウントアップした図12と、第2可動子C2についての負方向の測位主体の切り替え(S4→S3)によって計数値が「1」から「0」にカウントダウンした図14において、カウントアップおよびカウントダウンの原因となった当該第2可動子C2は同じ物理的に位置にある。
【0065】
図14から可動子C1、C2が負方向に移動した図15の状態では、測位主体切替部40によって、第1可動子C1の測位主体が、計数センサとしての第4磁気センサS4から前センサとしての第3磁気センサS3に切り替えられる。図16に示されるように、図15における第1可動子C1についての計数センサS4から前センサS3への測位主体の切り替えが発生したため、可動子計数部62は計数値を負方向に増加させる。具体的には、可動子計数部62は、図14における計数値「0」を「-1」にカウントダウンする。ここで、計数値「-1」は、計数センサS4を正方向に通過した正味の可動子が「0」台目であることを表す。なお、第1可動子C1についての正方向の測位主体の切り替え(S3→S4)によって計数が開始した図11と、第1可動子C1についての負方向の測位主体の切り替え(S4→S3)によって計数値が「0」から「-1」にカウントダウンした図15において、計数開始(実質的なカウントアップ)およびカウントダウンの原因となった当該第1可動子C1は同じ物理的に位置にある。
【0066】
なお、図示は省略するが、図15から可動子Cが負方向に移動して、第1可動子C1の正側(右隣)にある不図示の第N可動子CN(Nは最大2048の任意の自然数)の測位主体が、計数センサとしての第4磁気センサS4から前センサとしての第3磁気センサS3に切り替えられた場合、可動子計数部62は、図15における計数値「-1」を「-2」にカウントダウンする。ここで、計数値「-2」は、計数センサS4を正方向に通過した正味の可動子が「-1」台目(本実施例では第N可動子CN)であることを表す。このように、計数値「-2」は、レール面21上に存在する最大番号Nの第N可動子CNを表す。
【0067】
また、可動子計数部62による計数値が、レール面21上に存在する可動子Cの総数Nに応じて巡回するようにしてもよい。例えば、Nが「2048」である場合、可動子計数部62による計数値の最小値を「-2048」とし最大値を「2047」とする。計数値が最大値「2047」の状態から更に正方向の可動子測位主体の切り替えが発生した場合、計数値は最小値「-2048」に遷移し、計数値が最小値「-2048」の状態から更に負方向の可動子測位主体の切り替えが発生した場合、計数値は最大値「2047」に遷移する。このような最大値と最小値の間の直接的な遷移は、同じ可動子Cが同じ方向に環状のレールを周回したことを表す。そこで、このような遷移回数を計数するカウンタが、周回数カウンタとして設けられてもよい。
【0068】
以上の実施例では、可動子Cの正方向の移動に伴う、前センサとしての第3磁気センサS3から計数センサとしての第4磁気センサS4への可動子測位主体の切り替えに応じて可動子計数部62による計数値がカウントアップし、可動子Cの負方向の移動に伴う、計数センサとしての第4磁気センサS4から前センサとしての第3磁気センサS3への可動子測位主体の切り替えに応じて可動子計数部62による計数値がカウントダウンしたが、可動子Cの正方向の移動に伴う、計数センサとしての第4磁気センサS4から後センサとしての第5磁気センサS5への可動子測位主体の切り替えに応じて可動子計数部62による計数値がカウントアップし、可動子Cの負方向の移動に伴う、後センサとしての第5磁気センサS5から計数センサとしての第4磁気センサS4への可動子測位主体の切り替えに応じて可動子計数部62による計数値がカウントダウンしてもよい。
【0069】
本実施形態では、可動子計数部62が、測位主体切替部40による測位主体の切替方向に応じた第1方向(例えば、正方向)または第2方向(例えば、負方向)に計数する。このため、例えば局所的に往復移動する同じ可動子Cが(同じ方向に)累積的に計数されてしまうことがなくなる。
【0070】
また、本実施形態によれば、可動子Cの測位のために設けられている磁気センサ(位置検知部)を、可動子計数部62による可動子Cの計数のために利用できるため、可動子Cの計数のための専用のセンサを追加的に設ける必要がない。
【0071】
以上、本開示を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本開示の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0072】
実施形態では、可動子に設けられる永久磁石と固定子に設けられる電磁石の間の磁力に基づいて可動子を駆動するリニア搬送システムを例示したが、本開示は磁気以外の任意の原理(例えば電気や流体)に基づく任意の駆動装置に適用できる。
【0073】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 リニア搬送システム、2 固定子、3 可動子、4 測位切替装置、6 可動子計数装置、40 測位主体切替部、61 可動子計数設定部、62 可動子計数部。
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