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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150301
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】巻付金具
(51)【国際特許分類】
   H02G 7/00 20060101AFI20241016BHJP
   H02G 1/02 20060101ALI20241016BHJP
   E04H 12/00 20060101ALI20241016BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
E04H12/00 C
F16B2/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063654
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】竹内 将喜
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】可知 靖典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 薪之介
(72)【発明者】
【氏名】秋山 立樹
【テーマコード(参考)】
3J022
5G352
5G367
【Fターム(参考)】
3J022DA15
3J022EA41
3J022EC02
3J022ED02
3J022FA01
3J022FB03
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA06
3J022GB43
3J022GB45
5G352AC01
5G367AD01
5G367AD02
5G367AD10
(57)【要約】
【課題】物体に所定の張力で巻き付けられたステンレスバンドが収縮した場合に、ステンレスバンドにかかる張力が所定の張力を超えないように変形し、ステンレスバンドの断裂を防止する。
【解決手段】ステンレスバンドの両端を保持し、前記ステンレスバンドを物体の外周面に所定の張力で巻き付ける巻付金具であって、前記物体の外周面側を向く前記ステンレスバンドの一方の面と接触し、前記ステンレスバンドが収縮したときに前記ステンレスバンドにかかる張力が前記所定の張力を超えないように変形する変形板、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレスバンドの両端を保持し、前記ステンレスバンドを物体の外周面に所定の張力で巻き付ける巻付金具であって、
前記物体の外周面側を向く前記ステンレスバンドの一方の面と接触し、前記ステンレスバンドが収縮したときに前記ステンレスバンドにかかる張力が前記所定の張力を超えないように変形する変形板
を含む巻付金具。
【請求項2】
請求項1に記載の巻付金具であって、
前記変形板は、
前記ステンレスバンドの一方の面に向かって突出して前記ステンレスバンドの一方の面に接触するように、前記ステンレスバンドの長手方向とは交差する方向に沿って折り曲げられ、前記ステンレスバンドが収縮したときに前記ステンレスバンドにかかる張力が前記所定の張力を超えないように、前記ステンレスバンドの長手方向に沿う力を受けて変形する折曲部
を含む巻付金具。
【請求項3】
請求項2に記載の巻付金具であって、
前記折曲部は、前記ステンレスバンドの一方の面に向かって湾曲した形状を呈する
巻付金具。
【請求項4】
請求項2に記載の巻付金具であって、
前記折曲部は、前記変形板の中間の位置に形成される
巻付金具。
【請求項5】
請求項2に記載の巻付金具であって、
前記変形板は、前記巻付金具と同一の金属材料を用いて前記巻付金具と一体に形成される
巻付金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレスバンドを物体(鉄塔、電柱等)の外周面に所定の張力で巻き付ける巻付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄塔や電柱に対して昇塔禁止等を警告するための標識板を取り付ける場合、長尺のステンレスバンドに標識板を予め固定し、鉄塔や電柱に近づく人が標識板に表示されている文字や絵柄等を認識することが可能な鉄塔や電柱の高さ位置において、このステンレスバンドを鉄塔や電柱の外周面に所定の張力で巻き付けている。ステンレスバンドを鉄塔や電柱の外周面に所定の張力で巻き付けるには、例えば特許文献1に示すようなバンド締付具が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6-6712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ステンレスバンドが所定の張力で巻き付けられた鉄塔や電柱の周囲における気温が例えば氷点下まで低下すると、ステンレスバンドが収縮することに伴って、ステンレスバンドにかかる張力が所定の張力を超えてしまい、この結果、ステンレスバンドが断裂する虞があった。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、ステンレスバンドが収縮した場合に、ステンレスバンドにかかる張力が所定の張力を超えないようにして、ステンレスバンドの断裂を防止する巻付金具を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明のうちの1つは、ステンレスバンドの両端を保持し、前記ステンレスバンドを物体の外周面に所定の張力で巻き付ける巻付金具であって、前記物体の外周面側を向く前記ステンレスバンドの一方側の面に接触し、前記ステンレスバンドが収縮したときに前記ステンレスバンドにかかる張力が前記所定の張力を超えないように変形する変形板、を含む。
【0007】
本発明の巻付金具によれば、ステンレスバンドが収縮した場合に、変形板が変形することによってステンレスバンドの断裂を防止することが可能となる。
【0008】
また、上記の目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、巻付金具において、前記変形板は、前記ステンレスバンドの一方側の面に向かって突出するように、前記ステンレスバンドの長手方向とは交差する方向に沿って折り曲げられ、前記ステンレスバンドが収縮したときに前記ステンレスバンドにかかる張力が前記所定の張力を超えないように、前記ステンレスバンドの長手方向に沿う力を受けて変形する折曲部、を含む。
【0009】
本発明の巻付金具によれば、変形板の折曲部が変形することによってステンレスバンドの断裂を防止することが可能となる。
【0010】
また、上記の目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、巻付金具において、前記折曲部は、前記ステンレスバンドの一方側の面に向かって湾曲した形状を呈する。
【0011】
本発明の巻付金具によれば、ステンレスバンドの一方側の面が折曲部の角のない湾曲面と所定の張力で接触するので、ステンレスバンドにかかる張力が所定の張力を超えた場合でも、折曲部の変形によってステンレスバンドの断裂を確実に防止することが可能となる。
【0012】
また、上記の目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、巻付金具において、前記折曲部は、前記変形板の中間の位置に形成される。
【0013】
本発明の巻付金具によれば、折曲部は、ステンレスバンドの収縮に応じて確実に変形することが可能となる。
【0014】
また、上記の目的を達成するための本発明のうちの他の1つは、巻付金具において、前記変形板は、前記巻付金具と同一の金属材料を用いて前記巻付金具と一体に形成される。
【0015】
本発明の巻付金具によれば、変形板は、ステンレスバンドの収縮に応じて確実に変形することが可能となる。
【0016】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄の記載、及び図面の記載等により明らかにされる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、物体に所定の張力で巻き付けられたステンレスバンドが収縮した場合に、ステンレスバンドにかかる張力が所定の張力を超えないように変形し、ステンレスバンドの断裂を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】標識板200と一体になっているステンレスバンド300を、巻付金具100を用いて鉄塔400の外周面に巻き付けたときの一例を示す斜視図である。
図1B】標識板200が取り付けられた図1Aの鉄塔400を上空から垂直方向に見下ろしたときの上面図である。
図2A】巻付金具100を構成する第1金具101及び第2金具102が開いた状態を示す斜視図である。
図2B】巻付金具100を構成する第1金具101及び第2金具102が開いた状態を示す他の斜視図である。
図3A】巻付金具100を構成する第1金具101及び第2金具102が開いた状態を示す側面図である。
図3B】巻付金具100を構成する第1金具101及び第2金具102が閉じた状態を示す側面図である。
図4A】変形板104にステンレスバンド300を取り付ける作業手順の一例を示す図である。
図4B】変形板104にステンレスバンド300を取り付ける図4Aに続く作業手順の一例を示す図である。
図4C】変形板104にステンレスバンド300を取り付ける図4Bに続く作業手順の一例を示す図である。
図5A】巻付金具100を用いて鉄塔400にステンレスバンド300を巻き付けた後、ステンレスバンド300には所定の張力をまだ与えていない様子を示す上面図である。
図5B】巻付金具100を用いてステンレスバンド300に所定の張力を与えた様子を示す上面図である。
図5C】巻付金具100を用いてステンレスバンド300に所定の張力を与えた後、第1金具101の突起107B,107Cと第2金具102の嵌合穴109B,109Cとを嵌合させた様子を示す上面図である。
図6】ステンレスバンド300が収縮したときの変形板104の変形の様子を示す図である。
図7】変形板104の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、巻付金具100を用いて、例えば送電所の敷地内に敷設された鉄塔400に標識板200を取り付ける場合の一例ついて説明する。
【0020】
<鉄塔400への標識板200の装着例>
図1Aは、標識板200と一体になっているステンレスバンド300(300A,300B)を、鉄塔400に近づく作業員等が標識板200に記された文字や絵柄等の表示内容を確認可能な鉄塔400の高さ位置において、巻付金具100(100A,100B)を用いて鉄塔400の外周面に巻き付けたときの一例を示す斜視図である。また、図1Bは、標識板200が取り付けられた図1Aの鉄塔400を上空から垂直方向に見下ろしたときの上面図である。尚、図1Bでは、巻付金具100A及びステンレスバンド300Aは見えているが、巻付金具100B及びステンレスバンド300Bは見えていない。
【0021】
鉄塔400は、送電所の敷地内に敷設された鉄製の骨組み構造からなる建造物の中で、基礎(不図示)から上空に向かって垂直方向に立ち上がる塔である。また、鉄塔400は、図1Bに示すように、上空から垂直方向に向かって見下ろすと、L字形の形状を呈している。
【0022】
ステンレスバンド300は、例えばオーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系等のうち何れかのステンレス鋼を素材として形成され、折り曲げたり湾曲させたりすることが可能な厚みを有する長尺のバンドである。
【0023】
標識板200は、例えば強化繊維(ガラス繊維、カーボン繊維等)と樹脂(不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂等)とを組み合わせた素材であるFRP(Fiber Reinforced Plastics)で形成された板部材の一方側の面に対して、昇塔禁止を示す文字や絵柄等が一色以上の色を用いて記された、鉄塔400に近づく作業員等に注意を促すための板である。本実施形態では、標識板200は、縦長の長方形状を呈し、鉄塔400とは反対側を向く一方側の面には、例えば「あぶないから のぼらないでください」の縦文字が、例えば赤色の背景色の中に白文字で目立つように記されている。
【0024】
標識板200の基礎から遠い側となる短辺210Aには、ステンレスバンド300Aを挿通する2個の挿通穴220Aが突出して設けられ、標識板200の基礎に近い側となる短辺210Bには、ステンレスバンド300Bを挿通する2個の挿通穴220Bが突出して設けられている。
【0025】
巻付金具100Aは、挿通穴220Aに挿通されて標識板200と一体になったステンレスバンド300Aを、鉄塔400の外周面に対して所定の張力で巻き付ける金具である。また、巻付金具100Bは、挿通穴220Bに挿通されて標識板200と一体になったステンレスバンド300Bを、鉄塔400の外周面に対してステンレスバンド300Aにかかる張力と同様の張力で巻き付ける金具である。このように、ステンレスバンド300A,300Bに所定の張力を与えることにより、標識板200は鉄塔400に安定的に取り付けられる。巻付金具100A,100Bは、例えばオーステナイト系、マルテンサイト系、フェライト系等のうち何れかのステンレス鋼を素材として形成される。
【0026】
ここで、図1Bを見ると、ステンレスバンド300A,300Bは、標識板200を鉄塔400に安定した状態で取り付けるために、鉄塔400の外周面の他に、鉄塔400の角部400A,400B,400Cにも所定の張力で接触している。そのため、鉄塔400の周囲の気温が例えば氷点下まで低下すると、ステンレスバンド300A,300Bが収縮を起こし、ステンレスバンド300A,300Bにかかる張力が所定の張力を超えると、ステンレスバンド300A,300Bは断裂する虞がある。特に、鉄塔400の角部400A,400B,400Cではステンレスバンド300A,300Bは断裂しやすい傾向がある。そこで、ステンレスバンド300A、300Bが収縮した場合でも、ステンレスバンド300A,300Bにかかる張力が所定の張力を超えないようにして、ステンレスバンド300A,300Bの断裂を防止する必要がある。巻付金具100A,100Bは、夫々、ステンレスバンド300A,300Bにかかる張力が所定の張力を超えないようにして、ステンレスバンド300A,300Bの断裂を防止する構造を備えている。この巻付金具100A,100Bの具体的な構造については後述する。尚、巻付金具100A,100Bは同じ種類の金具であるため、巻付金具100A,100Bを区別して説明する必要がない限り、巻付金具100として説明する。また、ステンレスバンド300A,300Bも同じ種類のバンドであるため、ステンレスバンド300A,300Bを区別して説明する必要がない限り、ステンレスバンド300として説明する。
【0027】
<巻付金具100の構成>
図2Aは、巻付金具100を構成する第1金具101及び第2金具102が開いた状態を示す斜視図である。図2Aでは、第1金具101及び第2金具102の互いに向かい合う側の面が見える状態となっている。図2Bは、巻付金具100を構成する第1金具101及び第2金具102が開いた状態を示す他の斜視図である。図2Bでは、第1金具101及び第2金具102の互いに向かい合う側とは反対側の面が見える状態となっている。図3Aは、巻付金具100を構成する第1金具101及び第2金具102が開いた状態を示す側面図である。図3Bは、巻付金具100を構成する第1金具101及び第2金具102が閉じた状態を示す側面図である。尚、巻付金具100を説明する際に、補足的にX軸、Y軸、Z軸を用いることがある。
【0028】
巻付金具100は、第1金具101、第2金具102、ラチェット構造体103、変形板104を含んで構成される。
【0029】
第1金具101は、長尺形状を呈する部材である。尚、説明の便宜上、第1金具101の長手方向をY軸に沿う方向とする。第1金具101は、底板部105Aと、一対の側板部105B,105Cとを有する。底板部105Aは、Z軸の方向に沿って見た場合の平面であるXY平面に対して平行である。一方の側板部105Bは、X軸の方向に沿って見た場合の平面であるYZ平面と平行であり、底板部105Aの+X側の端から+Z方向に立ち上がっている。他方の側板部105Cは、YZ平面と平行であり、底板部105Aの-X側の端から+Z方向に立ち上がっている。一対の側板部105B,105Cは、底板部105Aを境に対称な形状を呈している。例えば、底板部105Aと一対の側板部105B,105Cは、第1金具101を形成する前の例えばステンレス鋼等の平板部材を折り曲げ加工することによって形成することができる。
【0030】
側板部105B,105Cの+Y側の端における側板部105B,105Cの間には、第1金具101に対して第2金具102を回動自在に連結する回動軸106がX軸の方向に沿って設けられている。更に、回動軸106の周りには、回動軸106と同軸となる円筒形状のラチェット構造体103が設けられている。ラチェット構造体103を-X側から+X側に向かって見た場合、ラチェット構造体103は反時計方向のみに回転する。つまり、ラチェット構造体103は、ラチェット構造体103を反時計方向のみに回転させるような歯車と歯止めの構造(不図示)を有している。ラチェット構造体103の円筒形状の部分には、ステンレスバンド300の他端が挿入されるスリット103Aが、円筒形状の外周面を貫通するように設けられている。スリット103AのX軸に沿う方向は、ステンレスバンド300の幅に対応する方向となる。
【0031】
側板部105Bの-Y側の端(ラチェット構造体103が取り付けられる側とは反対側の端)には、第2金具102を第1金具101と結合するための突起107Bが+X方向(側板部105Cから遠ざかる方向)に向かって突出している。同様に、側板部105Cの-Y側の端には、第2金具102を第1金具101と結合するための突起107Cが-X方向(側板部105Bから遠ざかる方向)に向かって突出している。つまり、突起107B,107Cは、X軸に沿う方向において、互いに遠ざかる方向に突出している。突起107B,107Cの形状は、夫々、側板部105B,105Cから遠ざかるにつれて径が小さくなる例えば半球、角錐、円錐等の形状を呈している。
【0032】
第2金具102は、長尺形状を呈し、第1金具101を覆うように第1金具101と結合される部材である。第2金具102は、天板部108Aと、一対の側板部108B,108Cとを有する。一方の側板部108Bは、YZ平面と平行であり、第2金具102が第1金具101と結合したときに、第1金具101の側板部105Bの+X側の位置で側板部105Bと隣接するように、天板部110Aの+X側の端から立ち上がっている。他方の側板部108Cは、YZ平面と平行であり、第2金具102が第1金具101と結合したときに、第1金具101の側板部105Cの-X側の位置で側板部105Cと隣接するように、天板部110Aの-X側の端から立ち上がっている。一対の側板部108B,108Cは、天板部108Aを境に対称な形状を呈している。例えば、天板部108Aと一対の側板部108B,108Cは、第2金具102を形成する前の例えばステンレス鋼等の平板部材を折り曲げ加工することによって形成することができる。
【0033】
第2金具102の長手方向における一対の側板部108B,108Cの一端は回動軸106に連結される。つまり、回動軸106を-X側から+X側に向かって見たときに、第2金具102は、回動軸106を中心に第1金具101から遠ざかる方向(時計方向)及び第1金具101に近づく方向(反時計方向)に自在に回動するように、第1金具101と連結される。また、一対の側板部108B,108Cの一端は、回動軸106と同軸であるラチェット構造体103の軸とも結合される。つまり、回動軸106を-X側から+X側に向かって見たときに、第2金具102を反時計方向に回動させると、ラチェット構造体103は反時計方向に回転し、一方、第2金具102を時計方向に回動させるときは、ラチェット構造体103は回転を停止する。言い換えると、第2金具102の反時計方向及び時計方向の回動を交互に繰り返すと、ラチェット構造体103は反時計方向への回転を継続する。例えば、ラチェット構造体103のスリット103Aにステンレスバンド300の他端を挿入した状態で、第2金具102の反時計方向及び時計方向への回動を交互に繰り返すと、ステンレスバンド300は、ラチェット構造体103の反時計方向への回転に伴ってラチェット構造体103の円筒形状部分の周りに巻き付けられることとなる。従って、巻付金具100を用いて鉄塔400の外周面にステンレスバンド300を巻き付けると、ステンレスバンド300に所定の張力をかけることができる。
【0034】
第2金具102の長手方向における側板部110Bの他端であって、第2金具102を第1金具101と結合したときに突起107BとX軸に沿う方向において対向することとなる位置には、突起107Bと嵌合する嵌合穴109Bが開口している。同様に、第2金具102の長手方向における側板部110Cの他端であって、第2金具102を第1金具101と結合したときに突起107CとX軸に沿う方向において対向することとなる位置には、突起107Cと嵌合する嵌合穴109Cが開口している。図3A及び図3Bに示すように、第2金具102を第1金具101に近づく方向に回動させ、第2金具102を第1金具101に向かって押し込んで、嵌合穴109B,109Cに突起107B,107Cが嵌合すると、第1金具101及び第2金具102は結合した状態となる。
【0035】
変形板104は、ステンレスバンド300が気温の低下等の影響を受けて収縮した場合に、ステンレスバンド300にかかる張力が所定の張力を超えないように変形する板である。変形板104は、第1金具101の回動軸106が設けられる側(+Y側)とは反対側(-Y側)で、第1金具101と一体に形成されている。
【0036】
変形板104は、+Z方向に向かって突出するように折り曲げられた折曲部104Aを有する。折曲部104Aは、変形板104を形成する前の例えばステンレス鋼等の平板部材を折り曲げ加工することによって形成することができる。具体的には、折曲部104Aは、変形板104を形成する前の平板部材を、第1金具101の長手方向とは直交するX軸に沿う方向となっているX1-X1線とX2-X2線の2つの線上で、-Z方向に角部ができるように折り曲げるとともに、X1-X1線とX2-X2線との間に存在する平板部材を、+Z方向に向かって突出するように湾曲させた半筒部104Bを有する。折曲部104Aは、第1金具101の長手方向において、変形板104の中間付近の位置に形成される。
【0037】
変形板104は、第1金具101の長手方向において、折曲部104Aの第1金具101から遠ざかる-Y側にはXY平面と平行な平板部104Cを有し、折曲部104Aの第1金具101に近い+Y側にはXY平面と平行な平板部104Dを有する。また、平板部104Dには、ステンレスバンド300の一端を挿入する挿入穴104Eが設けられている。
【0038】
変形板104は、例えば第1金具101及び第2金具102と同一のステンレス鋼を用いて形成される。また、変形板104はステンレスバンド300にかかる張力に応じて変形する必要があることから、変形板104の厚みは、第1金具101の厚みよりも薄くなっている。そのため、変形板104と第1金具101は、例えば溶接加工によって一体に形成することができる。特に、変形板104と第1金具101を同一のステンレス鋼で形成すれば、変形板104と第1金具101を溶接加工によって確実に一体とすることができる。
【0039】
図4A図4Cは、変形板104にステンレスバンド300を取り付ける作業手順の一例を示す図である。
【0040】
先ず、ステンレスバンド300の一端を変形板104の半筒部104Bが形成されている側(+Z側)から反対側(-Z側)に向かって挿入穴104Eに挿入する。
【0041】
次に、ステンレスバンド300の一端が平板部104Cの位置に到達するまでステンレスバンド300の一端を挿入穴104Eに挿入し、ステンレスバンド300の一端を平板部104Cの-Z側の面から+Z側の面に向かって実質的に180度折り曲げる。次に、ステンレスバンド300の一端の折り曲げ部分で平板部104Cを挟持し、ステンレスバンド300の一端を変形板104に固定する。
【0042】
次に、変形板104の半筒部104Bが形成されている側(+Z側)に存在するステンレスバンド300を、半筒部104Bの表面と、ステンレスバンド300の一端の折り曲げ部分104Gとに張力をもって接触するように、変形板104の+Z側の面から-Z側の面に向かって移動させる。ここまでの作業を行うことにより、変形板104に対するステンレスバンド300の取り付けが完了する。
【0043】
尚、変形板104の-Z側に存在するステンレスバンド300の他端は、ラチェット構造体103のスリット103Aに挿入されることとなる。
【0044】
<鉄塔400に対する巻付金具100の巻付作業手順の一例>
図5Aは、巻付金具100を用いて鉄塔400にステンレスバンド300を巻き付けた後、ステンレスバンド300には所定の張力をまだ与えていない様子を示す上面図である。図5Bは、巻付金具100を用いてステンレスバンド300に所定の張力を与えた様子を示す上面図である。図5Cは、巻付金具100を用いてステンレスバンド300に所定の張力を与えた後、第1金具101の突起107B,107Cと第2金具102の嵌合穴109B,109Cとを嵌合させた様子を示す上面図である。尚、図5A図5Cでは、巻付金具100B及びステンレスバンド300Bは見えないため、巻付金具100A及びステンレスバンド300Aのみを記すこととする。
【0045】
先ず、標識板200の文字が記された側の面が鉄塔400の外周面とは反対側を向く状態として、標識板200の挿通穴220Aにステンレスバンド300Aを挿通し、その後、図4A図4Cに示す作業手順で、ステンレスバンド300の一端を変形板104に取り付けて固定する。
【0046】
次に、標識板200の巻付金具100Aとは反対側から延びるステンレスバンド300Aを、鉄塔400を取り囲むように巻き付けた後、ステンレスバンド300Aの他端を巻付金具100Aのラチェット構造体103に設けたスリット103Aに挿入する。ここまでの作業を行うことにより、図5Aに示す状態となる。
【0047】
次に、鉄塔400における紙面縦方向の外周面に標識板200を押し当てるとともに、鉄塔400における紙面横方向の外周面に巻付金具100Aを押し当てながら、巻付金具100Aにおける第2金具102を第1金具101に近づく方向に回動させる作業と、第2金具102を第1金具101から遠ざかる方向に回動させる作業とを、ステンレスバンド300Aが所定の張力で鉄塔400の外周面に巻き付けられるまで交互に繰り返す。この作業を行うことにより、図5Bに示す状態となる。
【0048】
次に、第2金具102を第1金具101に向けて押し込み、突起107B,107Cを嵌合穴109B,109Cに嵌合させる。この作業を行うことにより、第2金具102が第1金具101から遠ざかる方向に回動することができない図5Cの状態となる。
【0049】
尚、巻付金具100Bを用いて、ステンレスバンド300Bを鉄塔400の外周面に巻き付けて、標識板200を鉄塔400の外周面に取り付ける作業については、巻付金具100Aを用いて、ステンレスバンド300Aを鉄塔400の外周面に巻き付けて、標識板200を鉄塔400の外周面に取り付ける作業と同様に行えばよい。これにより、標識板200を鉄塔400に取り付ける作業が完了する。
【0050】
<ステンレスバンド300が収縮した場合の変形板104の変形の一例>
図6は、ステンレスバンド300が収縮したときの変形板104の変形の様子を示す図である。尚、図4Cは、ステンレスバンド300が収縮していないときの変形板104の様子を示していることとする。
【0051】
ステンレスバンド300が周囲の気温の低下等に伴って収縮すると、ステンレスバンド300にかかる張力は、図5B及び図5Cに示すように鉄塔400に標識板200を取り付けたときのステンレスバンド300にかかる所定の張力よりも大きくなる。すると、平板部104Cの折曲部104Aとは反対側(-Y側)の端と平板部104Dの挿入穴104Eとの間に存在するステンレスバンド300の張力も所定の張力よりも大きくなることから、平板部104Cはステンレスバンド300によって半筒部104Bに向かって+Y側に押圧され、半筒部104BのY軸に沿う方向の間隔(平板部104Cと平板部104Dとの間の間隔)が狭くなるように、半筒部104Bは変形する。これにより、半筒部104BのY軸に沿う方向の間隔は、図4Cのaからa‘まで狭くなり、ステンレスバンド300にかかる張力が所定の張力を超えることを防止し、ステンレスバンド300が断裂することを防止することが可能となる。
【0052】
尚、本実施形態では、折曲部104Aは、X1-X1線及びX2-X2線から+Z方向に向かって突出するように湾曲する半筒部104Bを含むが、これに限定されない。例えば、図7に示す変形板104の斜視図のように、X1-X1線とX2-X2線との間でX軸に沿うX3-X3線で+Z方向に突出するように折り曲げた斜面部104Fを、半筒部104Bの代わりに設けてもよい。
【0053】
以上説明したように、ステンレスバンド300の両端を保持し、ステンレスバンド300を鉄塔400の外周面に所定の張力で巻き付ける巻付金具100であって、鉄塔400の外周面側を向くステンレスバンド300の一方の面と接触し、ステンレスバンド300が収縮したときにステンレスバンド300にかかる張力が所定の張力を超えないように変形する変形板104、を含む。
【0054】
巻付金具100によれば、ステンレスバンド300が収縮した場合に、変形板104が変形することによってステンレスバンド300の断裂を防止することが可能となる。
【0055】
また、巻付金具100において、変形板104は、ステンレスバンド300の一方の面に向かって突出してステンレスバンド300の一方の面に接触するように、ステンレスバンド300の長手方向とは直交する方向に沿って折り曲げられ、ステンレスバンド300が収縮したときにステンレスバンド300にかかる張力が所定の張力を超えないように、ステンレスバンド300の長手方向に沿う力を受けて変形する折曲部104A、を含む。
【0056】
巻付金具100によれば、変形板104の折曲部104Aが変形することによってステンレスバンド300の断裂を防止することが可能となる。
【0057】
また、巻付金具100において、折曲部104Aは、ステンレスバンド300の一方の面に向かって湾曲した形状の半筒部104Bを含む。
【0058】
巻付金具100によれば、ステンレスバンド300の一方の面が角のない半筒部104Bと所定の張力で接触するので、ステンレスバンド300にかかる張力が所定の張力を超えた場合でも、半筒部104Bの変形によってステンレスバンド300の断裂を確実に防止することが可能となる。
【0059】
また、巻付金具100において、折曲部104Aは、変形板104の中間の位置に形成される。
【0060】
巻付金具100によれば、折曲部104Aは、ステンレスバンド300の収縮に応じて確実に変形することが可能となる。
【0061】
また、巻付金具100において、変形板104は、巻付金具100と同一の金属材料を用いて巻付金具100と一体に形成される。
【0062】
巻付金具100によれば、変形板104は、ステンレスバンド300の収縮に応じて確実に変形することが可能となる。
【0063】
尚、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
100,100A,100B 巻付金具
101 第1金具
102 第2金具
103 ラチェット構造体
104 変形板
104A 折曲部
104B 半筒部
104C,104D 平板部
104E 挿入穴
104F 斜面部
105A 底板部
105B,105C,108B,108C 側板部
106 回動軸
107B,107C 突起
109B,109C 嵌合穴
200 標識板
210A,210B 短辺
220A,220B 挿通穴
300,300A,300B ステンレスバンド
400 鉄塔
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7