(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150310
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】屋根構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 7/00 20060101AFI20241016BHJP
E04H 6/02 20060101ALI20241016BHJP
E04B 1/343 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
E04B7/00 Z
E04H6/02 A
E04B1/343 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063665
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】砂澤 司
(72)【発明者】
【氏名】山内 初季
(57)【要約】
【課題】施工性に優れた屋根構造体の施工方法を提供する。
【解決手段】屋根と、前記屋根を支持する支柱と、前記支柱を支持する支持材と、を備えた屋根構造体の施工方法であって、前記支持材を配置する砕石の上に空練りのモルタルを敷くモルタル敷設工程と、前記支持材が有する平坦な下面を前記モルタルに当接させて当該支持材を前記モルタルの上に載置する載置工程と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根と、前記屋根を支持する支柱と、前記支柱を支持する支持材と、を備えた屋根構造体の施工方法であって、
前記支持材を配置する砕石の上に空練りのモルタルを敷くモルタル敷設工程と、
前記支持材が有する平坦な下面を前記モルタルに当接させて当該支持材を前記モルタルの上に載置する載置工程と、
を有することを特徴とする屋根構造体の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根構造体の施工方法であって、
前記砕石より上に土間コンクリートを打設して、前記支持材を埋設する打設工程を有することを特徴とする屋根構造体の施工方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の屋根構造体の施工方法であって、
前記載置工程の前に、前記支持材の前記下面とほぼ同じサイズであって当該支持材より軽量な治具を用いて水平調整及び転圧することを特徴とする屋根構造体の施工方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の屋根構造体の施工方法であって、
前記支持材の周囲を前記モルタルで囲むことを特徴とする屋根構造体の施工方法。
【請求項5】
請求項4に記載の屋根構造体の施工方法であって、
前記支持材は、前記下面を有するベース板部と、前記ベース板部の上方に突出して設けられ前記支柱が固定される支柱固定部と、を有しており、
前記支持材を囲む前記モルタルの高さは、前記ベース板部の上面と同じ高さであることを特徴とする屋根構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱により屋根が支持される屋根構造体の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋根構造体が構築される床面を形成する土間コンクリートより下方に位置する地中に、下端部が埋設された支柱により屋根が支持されているルーフ構造物(屋根構造体)は知られている(例えば、特許文献1参照)。このルーフ構造物は、支柱の下端部が挿入されて固定される筒状部と、当該筒状部の下端部から横方向に平面状に延びる板状部とを有する支持材により支持されており、支持材は土間コンクリートの下の地面を掘削した穴に砕石を敷き詰めた路盤上に載置され、筒状部の周囲と板状部の上とに、掘削した残土を埋め戻して設置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような屋根構造体では、支柱が支持材により支持されているので、たとえば支柱が挿入される筒状部が固定されている板状部が水平になるように支持材を設置しなければならない。しかしながら支持材を設置する路盤は、粒度が大きく形状が様々な砕石が敷き詰められているので、板状部が水平になるように設置するための調整が煩雑で手間がかかり施工性が悪いという課題があった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工性に優れた屋根構造体の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための主たる発明は、屋根と、前記屋根を支持する支柱と、前記支柱を支持する支持材と、を備えた屋根構造体の施工方法であって、前記支持材を配置する砕石の上に空練りのモルタルを敷くモルタル敷設工程と、前記支持材が有する平坦な下面を前記モルタルに当接させて当該支持材を前記モルタルの上に載置する載置工程と、を有することを特徴とする屋根構造体の施工方法である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施工性に優れた屋根構造体の施工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る屋根構造体の施工方法により施工されるカーポートの一例を示す外観斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る屋根構造体の施工方法に用いる支持材を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る屋根構造体の施工方法の手順を示す図であり、
図2におけるA側から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の屋根構造体の施工方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態においては、屋根構造体として、建物から独立して屋外の駐車スペースをなす土間に設置されるカーポートを例に挙げて説明する。
【0010】
まず、本実施形態のカーポートについて説明する。
本実施形態のカーポート1は、
図1に示すように、駐車スペースに土間コンクリート2aが打設されて設けられた土間2に構築されている。土間2は、砕石が敷かれて転圧された地盤3上に土間コンクリート2aが打設されて形成された平坦なコンクリート層である。土間2の内部には、鉄筋などの補強材が埋設されていてもよい。
【0011】
本実施形態のカーポート1は、土間2に立設される4本の支柱10と、4本の支柱10に支持される屋根11と、各支柱10を支持する支持材12と、を有している。4本の支柱10は、平面視がほぼ矩形状をなす屋根11の四隅近傍にそれぞれ接合されている。各支持材12は、各支柱10の下端部が接続されて土間2に埋設されている。
【0012】
4本の支柱10は、断面が矩形状をなし長手方向に貫通する中空部を有する押し出し形材であり、同一の部材である。各支柱10を支持する4つの支持材12は、鉄などの金属により形成された同一の部材である。
【0013】
各支持材12は、
図2に示すように、平板状をなすベース板部13と、ベース板部13の上面13aに設けられた支柱固定部14と、を有している。
【0014】
ベース板部13は、長方形状をなす鋼板で形成されており、平坦な下面13bを有している。ベース板部13には、長方形の短手方向における中央であって長手方向における中央よりも一方側に偏った位置に、支柱固定部14が設けられている。また、ベース板部13の上面13aには、四隅近傍にそれぞれ、アンカーをなすボルト15が上方に突出させて螺合されている。
【0015】
支柱固定部14は、断面が矩形状をなし、上下方向に貫通する中空部を有する角筒状の部材であり、ベース板部13上に鉛直に配置された状態で溶接されて接合されている。矩形状をなす支柱固定部14の外側寸法は、矩形状をなす支柱10の内側寸法より僅かに小さく形成されており、支柱固定部14の外側を支柱10が囲むように、支柱固定部14の上方から支柱10を挿通させることができるように構成されている。このため、支柱固定部14に支柱10が挿通された状態では、支柱固定部14の外周面が支柱10の内周面と近接するように構成されている。
【0016】
支柱10には、支柱固定部14に挿通されて当該支柱固定部14と対面する部位に、ボルト4(
図3)が挿通される挿通孔が設けられており、支柱固定部14には、挿通孔に挿通されたボルト4が螺合される螺合孔が設けられている。すなわち、支柱10は、挿通孔に挿通され螺合孔に螺合されたボルト4が締め込まれることにより支柱固定部14に固定されている。
【0017】
次に、本実施形態のカーポート1の施工方法について説明する。
カーポート1を設置する領域には、
図3(a)に示すように、砕石が敷かれて転圧された地盤3が造成され、土間2をなす土間コンクリート2aを打設する領域を囲う型枠(不図示)が設けられている。
【0018】
カーポート1の施工は、まず、
図3(b)に示すように、支持材12を配置する位置に凹部3aを形成する。本実施形態では、カーポートが4本の支柱10を有するので、各支柱10が配置される4箇所に凹部3aを形成する。各凹部3aは、支持材12のベース板部13の厚みよりも十分深い窪みであり、ベース板部13の面積よりも十分広く、例えば、ベース板部13の全周と凹部3aの周面との間に間隔が空くように凹部3aを形成する。
【0019】
次に、
図3(c)に示すように、凹部3a内の砕石の上に空練りのモルタル5を敷く(モルタル敷設工程)。このとき、モルタル5は、ベース板部13の面積よりも十分広い範囲に敷いておく。より具体的には、敷いたモルタル5の上に支持材12を載置したときに、水平方向においてベース板部13の外側に全周にわたってモルタル5が存在するようにモルタル5を敷いておく。
【0020】
その後、敷いたモルタル5を、治具6を用いて転圧し、モルタル5の上面5aの水平を調整する。治具6は、例えば、ベース板部13と同様に平坦な下面6aを有し、ベース板部13と同じ寸法に形成された木製の板である。治具6は、地盤3上に敷いたモルタル5の上であって、支持材12を載置する位置に合わせて配置する。
【0021】
このとき、ベース板部13と同様に長方形状をなす治具6は、長手方向をカーポート1において矩形状をなす屋根11の長手方向に沿わせて配置する。その後、配置した治具6が水平になるように水準器で確認しつつ治具6をハンマー等により上方から叩くなどして水平を調整する。また、載置する支持材12が、凹部3aの底よりも高くなるようにモルタル5の上面5aを調整する。すなわち、支持材12が凹部3aの周囲の地盤2よりも十分に低い位置に配置されるようにモルタル5の高さを調整する。
【0022】
次に、
図3(d)に示すように、治具6を取り除いたモルタル5の上に、ベース板部13の位置を合わせて支持材12を載置する(載置工程)。このとき、
図1に示すように、ベース板部13の長手方向に隣り合う2つの支持材12において、各々のベース板部13の偏った位置に設けられている支柱固定部14の間隔がより広くなるように各支持材を配置する。
【0023】
支持材を載置した後に、
図3(e)に示すように、ベース板部13の外周側に全周にわたって空練りモルタル5を配置する。このとき、モルタル5を、凹部3aの内周面3bとベース板部13の外周面13cとの間に充填し、モルタル5の上面5aと、ベース板部13の上面13aとが同面となるように、換言すると、ベース板部13を囲むモルタル5の高さが、ベース板部13の上面13aと同じ高さになるようにモルタル5を充填する。
【0024】
次に、
図3(f)に示すように、各支持材12の支柱固定部14に支柱10を挿通させ、ボルト4により各支持材12に各支柱10を固定する。
【0025】
次に、
図3(g)に示すように、砕石が敷き詰められた地盤3上に設けられた型枠内に土間コンクリート2aを打設して、支持材12を、支柱10の下端部とともに土間2に埋設する(打設工程)。これにより、4本の支柱10が支持材12に支持されて土間2に立設される。
【0026】
最後に、4本の支柱10の上端部に屋根11を取り付け、4本の支柱10により屋根11を支持する。
【0027】
本実施形態のカーポート1の施工方法によれば、屋根11を支持する支柱10を支持する支持材12を、当該支持材12のベース板部13が有する平坦な下面13bを当接させて配置する位置は、砕石上に砕石よりも粒度が小さな空練りのモルタル5を敷くので、支持材12を配置する位置をより平坦にすることが可能であり、支持材12の水平調整が容易である。また、空練りのモルタル5を敷いた上に支持材12が有する平坦な下面13bを載置するので、屋根11を支持する支柱10を容易に精度良く立設することが可能となる。このため施工性に優れたカーポート1の施工方法を提供することが可能となる。
【0028】
また、砕石より上に土間コンクリート2aを打設して、支持材12を埋設するので、土間2を形成すべく土間コンクリート2aを打設するだけで支持材12を土間コンクリート2aによって固定することができる。このため、支持材12及び支柱10を容易に安定した状態に設置することが可能となる。
【0029】
また、砕石上に敷かれた空練りモルタル5の上に支持材12を載置する前に、治具6を用いて水平調整及び転圧するので、支持材12を載置する位置をより確実に平坦な状態とすることが可能となる。このとき、治具6は、支持材12の下面13bとほぼ同じサイズなので、支持材12を載置する領域、すなわち平坦にすべき領域が明確となり、且つ、治具6は支持材12より軽量なので取り扱いやすい。このため、支持材12を載置する領域を容易に且つ確実に水平に均すことが可能となる。
【0030】
また、支持材12の周囲をモルタル5で囲むので、支持材12の水平方向の移動を規制することが可能となる。このため、支持材12が水平方向に移動し難いのでより施工性に優れている。
【0031】
また、支持材12を囲むモルタル5の高さを、支持材12のベース板部13の上面13aの高さと同じにするので、ベース板部13の上方に突出する支柱固定部14まで埋設するよりもモルタル5の使用量を少なく抑えることができる。また、ベース板部13の周りには、確実にモルタル5が存在するので、ベース板部13の水平方向の移動がより確実に規制されるため施工がし易い。このため、コストを抑えつつも施工性に優れたカーポート1の施工方法を提供することが可能となる。
【0032】
上記実施形態においては、モルタル5を、凹部3aの内周面3bとベース板部13の外周面13cとの間に充填する例について説明したが、モルタル5は、支持材12の水平方向の移動を規制すべくベース板部13の周囲に配置されていれば、凹部3aの内周面3bとベース板部13の外周面13cとの間を埋めていなくとも構わない。
【0033】
また、上記実施形態においては、屋根構造体をカーポートとして説明したがこれに限るものではない。例えば、テラスの上方を覆うテラス屋根など、屋根を支柱により支持する構成であれば構わない。
【0034】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0035】
本実施形態には、少なくとも以下の発明が含まれる。
態様1:屋根と、前記屋根を支持する支柱と、前記支柱を支持する支持材と、を備えた屋根構造体の施工方法であって、前記支持材を配置する砕石の上に空練りのモルタルを敷くモルタル敷設工程と、前記支持材が有する平坦な下面を前記モルタルに当接させて当該支持材を前記モルタルの上に載置する載置工程と、を有することを特徴とする屋根構造体の施工方法である。
【0036】
態様1の屋根構造体の施工方法によれば、屋根を支持する支柱を支持する支持材を、当該支持材が有する平坦な下面を当接させて配置する位置は、砕石上に空練りのモルタルを敷くので、支持材を配置する位置をより平坦にすることが可能であり、支持材の水平調整が容易である。また、空練りのモルタルを敷いた上に支持材が有する平坦な下面を載置するので、屋根を支持する支柱を容易に精度良く立設することが可能となる。このため施工性に優れた屋根構造体の施工方法を提供することが可能となる。
【0037】
態様2:態様1に記載の屋根構造体の施工方法であって、前記砕石より上に土間コンクリートを打設して、前記支持材を埋設する打設工程を有することを特徴とする。
【0038】
態様2の屋根構造体の施工方法によれば、砕石より上に土間コンクリートを打設して、支持材を埋設するので、土間を形成すべく土間コンクリートを打設するだけで支持材を土間コンクリートによって固定することができる。このため、支持材及び支柱を容易に安定した状態に設置することが可能となる。
【0039】
態様3:態様1または態様2に記載の屋根構造体の施工方法であって、前記載置工程の前に、前記支持材の前記下面とほぼ同じサイズであって当該支持材より軽量な治具を用いて水平調整及び転圧することを特徴とする。
【0040】
態様3の屋根構造体の施工方法によれば、砕石上に敷かれた空練りモルタルの上に支持材を載置する前に、治具を用いて水平調整及び転圧するので、支持材を載置する位置をより確実に平坦な状態とすることが可能となる。このとき、治具は、支持材の下面とほぼ同じサイズなので、支持材を載置する領域、すなわち平坦にすべき領域が明確となり、且つ、治具は支持材より軽量なので取り扱いやすい。このため、支持材を載置する領域を容易に且つ確実に水平に均すことが可能となる。
【0041】
態様4:態様1乃至態様3のいずれかに記載の屋根構造体の施工方法であって、前記支持材の周囲を前記モルタルで囲むことを特徴とする。
【0042】
態様4の屋根構造体の施工方法によれば、支持材の周囲をモルタルで囲むので、支持材の水平方向の移動を規制することが可能となる。このため、支持材が移動し難いのでより施工性に優れている。
【0043】
態様5:態様4に記載の屋根構造体の施工方法であって、前記支持材は、前記下面を有するベース板部と、前記ベース板部の上方に突出して設けられ前記支柱が固定される支柱固定部と、を有しており、前記支持材を囲む前記モルタルの高さは、前記ベース板部の上面と同じ高さであることを特徴とする。
【0044】
態様5の屋根構造体の施工方法によれば、支持材を囲むモルタルの高さを、支持材のベース板部の上面の高さと同じにするので、ベース板部の上方に突出する支柱固定部まで埋設するよりもモルタルの使用量を少なく抑えることができる。また、ベース板部の周りには、確実にモルタルが存在するので、ベース板部の水平方向の移動がより確実に規制されるため施工がし易い。このため、コストを抑えつつも施工性に優れた屋根構造体の施工方法を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 カーポート(屋根構造体)、2 土間、2a 土間コンクリート、
3 地盤(砕石)、5 モルタル(空練り)、6 治具、
10 支柱、11 屋根、12 支持材、13 ベース板部、
13a ベース板部の上面、13b ベース板部の下面(支持材の下面)、
14 支柱固定部、