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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150312
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】空気調和装置の冷媒量推定方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20241016BHJP
   F24F 11/36 20180101ALI20241016BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20241016BHJP
   F24F 140/00 20180101ALN20241016BHJP
【FI】
F25B49/02 520E
F24F11/36
F24F11/64
F24F140:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063672
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 良輔
(72)【発明者】
【氏名】日和 航大
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 薫
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA04
3L260AB02
3L260BA52
3L260CB13
3L260CB14
3L260CB15
3L260EA07
3L260EA22
(57)【要約】
【課題】本開示は、冷媒量の不足の有無を適正に推定する空気調和装置の冷媒量推定方法を提供する。
【解決手段】空気調和装置20の冷媒量推定方法は、第2閾値TH2は、他の空気調和装置において、冷媒の充填率が所定範囲の状態における運転データにより収集された過熱度XMの分布に基づいて、標準化処理された閾値であり、空気調和装置20において、冷媒の充填率が前記所定範囲の状態での運転により得られた過熱度XMを収集する第1収集ステップと、過熱度XMの分布に基づいて、過熱度Xに標準化処理を施す第1標準化ステップと、標準化処理された過熱度XDと、第2閾値TH2と、を比較して、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を推定する第1推定ステップと、を含む。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め生成された冷媒量推定モデルを用いて、空気調和装置の冷媒量の不足の有無を推定する空気調和装置の冷媒量推定方法であって、
前記冷媒量推定モデルは、冷媒量の不足の有無を判定する閾値を含み、
前記閾値は、他の空気調和装置において、冷媒の充填率が所定範囲に含まれる状態における運転データにより収集された冷媒量指標値の分布に基づいて、標準化処理された閾値であり、
前記空気調和装置において、冷媒の充填率が前記所定範囲に含まれる状態での運転により得られた冷媒量指標値を収集する第1収集ステップと、
前記収集された冷媒量指標値の分布に基づいて、前記冷媒量指標値に標準化処理を施す第1標準化ステップと、
前記標準化処理された冷媒量指標値と、前記冷媒量推定モデルの前記閾値と、を比較して、前記空気調和装置における冷媒量の不足の有無を推定する第1推定ステップと、
を含む、空気調和装置の冷媒量推定方法。
【請求項2】
前記所定範囲は、冷媒の満充填状態に対応する範囲である、
請求項1に記載の空気調和装置の冷媒量推定方法。
【請求項3】
前記閾値は、前記他の空気調和装置において、前記運転データにより収集された冷媒量指標値の分布の平均値である第1平均値と、前記冷媒量指標値の分布の標準偏差である第1標準偏差とを用いて標準化処理された閾値であり、
前記第1収集ステップにおいて収集された冷媒量指標値の分布の平均値である第2平均値と、前記冷媒量指標値の分布の標準偏差である第2標準偏差を算出する第1算出ステップ、を更に含み、
前記第1標準化ステップにおいて、前記第2平均値、及び第2標準偏差を用いて、前記冷媒量指標値に標準化処理を施す、
請求項2に記載の空気調和装置の冷媒量推定方法。
【請求項4】
前記第1収集ステップでは、前記空気調和装置に冷媒が充填された時点から、冷媒が満充填状態である第1期間の間に、前記冷媒量指標値を収集し、
前記第1算出ステップでは、前記収集された冷媒量指標値に基づき、前記第2平均値、及び前記第2標準偏差を算出し、
前記空気調和装置に冷媒が充填された時点から前記第1期間が経過した後に、前記第1標準化ステップ、及び、前記第1推定ステップを実行する、
請求項3に記載の空気調和装置の冷媒量推定方法。
【請求項5】
前記空気調和装置に冷媒が満充填されている状態において、
冷媒量を推定する周期に対応する期間を示す第2期間における前記空気調和装置の冷媒量指標値を収集する第2収集ステップと、
前記収集された冷媒量指標値の平均値である第3平均値、および、前記収集された冷媒量指標値の標準偏差である第3標準偏差を算出する第2算出ステップと、
前記第1平均値と前記第3平均値との各々に所定の重みづけを行い、第4平均値を算出する第3算出ステップと、
前記第1標準偏差と前記第3標準偏差との各々に所定の重みづけを行い、第4標準偏差を算出する第4算出ステップと、
前記第4平均値と前記第4標準偏差とを用いて、前記空気調和装置の運転により得られた冷媒量指標値に標準化処理を施す第2標準化ステップと、
前記標準化処理された冷媒量指標値と、前記冷媒量推定モデルの前記閾値と、を比較して、前記空気調和装置における冷媒量の不足の有無を推定する第2推定ステップと、
前記第1平均値を前記第4平均値に更新し、前記第1標準偏差を前記第4標準偏差に更新する更新ステップと、
を前記第2期間が経過する度に繰り返し実行する、
請求項3に記載の空気調和装置の冷媒量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和装置の冷媒量推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷媒量を推定する冷媒量推定モデルと、診断対象となる空気調和装置の運転により得られたデータと、に基づき、空気調和装置の冷媒量を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-093691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、診断の対象である空気調和装置毎に冷媒量の指標となる冷媒量指標値に対する補正(例えば、標準化処理)を行った後に、冷媒量推定モデルを適用して、当該空気調和装置における冷媒量の不足の有無を適正に推定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における空気調和装置の冷媒量推定方法は、予め生成された冷媒量推定モデルを用いて、空気調和装置の冷媒量の不足の有無を推定する空気調和装置の冷媒量推定方法であって、前記冷媒量推定モデルは、冷媒量の不足の有無を判定する閾値を含み、前記閾値は、他の空気調和装置において、冷媒量が所定範囲に含まれる状態における運転データにより収集された冷媒量指標値の分布に基づいて、標準化処理された閾値であり、前記空気調和装置において、冷媒量が前記所定範囲に含まれる状態での運転により得られた冷媒量指標値を収集する第1収集ステップと、前記収集された冷媒量指標値の分布に基づいて、前記冷媒量指標値に標準化処理を施す第1標準化ステップと、前記標準化処理された冷媒量指標値と、前記冷媒量推定モデルの前記閾値と、を比較して、前記空気調和装置における冷媒量の不足の有無を推定する第1推定ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示における空気調和装置の冷媒量推定方法は、診断の対象である空気調和装置毎に冷媒量の指標となる冷媒量指標値に対する標準化処理を行った後に、冷媒量推定モデルを適用することで、当該空気調和装置の冷媒量の不足の有無を適正に推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態における空気調和システムの構成を示す図
図2】本実施形態における冷媒回路図
図3】本実施形態における冷媒量推定モデルに用いる教師データの分布図
図4】冷媒量推定モデルの生成に用いた教師データの過熱度の分布と、診断の対象である空気調和装置の過熱度の分布とが一致する場合の過熱度分布の模式図
図5】冷媒量推定モデルの生成に用いた教師データの過熱度の分布と、診断の対象である空気調和装置の過熱度の分布と、が異なる場合の過熱度分布の模式図
図6】冷媒満充填での過熱度分布に基づき過熱度を標準化処理した場合において冷媒量の不足の有無を推定する方法を説明するための模式図
図7】本実施形態において、冷媒量推定モデルを生成する処理を示すフローチャート
図8】第1実施形態において、冷媒量不足の有無を推定する処理を示すフローチャート
図9】第2実施形態において、冷媒量不足の有無を推定する処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
特許文献1には、下記の技術が開示されている。即ち、空気調和装置の冷媒回路に充填される冷媒の所定量に対する冷媒不足率を推定する冷媒量推定モデルを有し、当該冷媒量推定モデルに空気調和機の運転データを適用して、空気調和装置の冷媒不足率を推定する技術が開示されている。
一方、空気調和装置毎に、設置される環境や冷媒配管長等が異なるため、冷媒量推定モデルを用いた冷媒量の推定を行う際に、診断の対象である空気調和装置に応じて、冷媒量の指標となる冷媒量指標値に対する標準化処理を行う必要があることを発明者らは見出した。
また、冷媒量推定モデルの生成に用いた空気調和装置と、診断の対象である空気調和装置と、の間における冷媒量指標値の分布の乖離度を算出し、当該乖離度を用いて診断の対象である空気調和装置の各々に対して、冷媒量指標値に対する標準化処理を行うことで、冷媒量推定モデルを用いて診断の対象である空気調和装置の冷媒量の不足の有無を適切に推定できることを発明者らは見出した。
その際に、空気調和装置が長期間に亘って運転している状態では、冷媒が徐々に抜け、空気調和装置内の残存冷媒量を特定することが難しい。一方で、空気調和装置を施工する時の冷媒充填後の所定期間(例:1か月)や、メンテナンスでの冷媒を再チャージした後の所定期間であれば、冷媒が満充填状態であると特定できる。そのため、冷媒量推定モデルの生成に用いた空気調和装置と、診断の対象である空気調和装置と、における冷媒満充填状態での冷媒量指標値の分布の乖離度を用いることで、診断の対象である空気調和装置の各々に対して、冷媒量指標値に対する標準化処理を行うことができることを発明者らは見出した。
本開示により、診断の対象である空気調和装置毎の各々に対して、冷媒量指標値に対する標準化処理を行った後に、冷媒量推定モデルを適用することで、当該空気調和装置の冷媒量を適正に推定することができる。
【0009】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0010】
[1―1.構成]
図1は、本実施形態における空気調和システム1の一例を示す図である。図1に示すように、空気調和システム1は、空気調和装置20と、サーバ装置3と、端末装置4と、を備える。
本実施形態は、第1実施形態と、第2実施形態と、を含む。第1実施形態と第2実施形態との共通する構成については、図1図7を参照して説明する。第1実施形態については、図8を参照して更に説明する。第2実施形態については、主に第1実施形態と相違する点について、図9を参照して説明する。
【0011】
[1―1―1.空気調和装置20の構成]
空気調和装置20は、例えば、ビルのオフィスに配置される。空気調和装置20は、冷媒配管220により接続される室外機200と、室内機210と、を備える。また、空気調和装置20は、空調通信部21と、空調制御部22と、を備える。
【0012】
図2は、本実施形態における空気調和装置20の冷媒回路の構成の一例を示す図である。
室外機200は、圧縮機201、四方弁202、室外熱交換器203、および、膨張弁204、を備える。圧縮機201は、冷媒を圧縮する装置である。四方弁202は、冷房運転時と暖房運転時とで、冷媒の流動経路を変更する装置である。室外熱交換器203は、室外の空気と、冷媒と、の間で熱を交換させる装置である。膨張弁204は、冷媒を減圧させる装置である。
【0013】
また、室外機200は、温度センサT1、室外熱交温度センサT2、吸込温度センサT3、吐出温度センサT4、および、室外温度センサT5を備える。温度センサT1は、室外熱交換器203の出口冷媒温度を検出する装置であり、室外熱交換器203と膨張弁204の間に設けられる。室外熱交温度センサT2は、室外熱交換器203に設けられ、室外熱交換器203内の冷媒温度を検出する。吸込温度センサT3は、圧縮機201の上流側に設けられ、圧縮機201の吸込冷媒温度を検出する。吐出温度センサT4は、圧縮機201の下流側に設けられ、圧縮機201の吐出温度を検出するセンサである。室外温度センサT5は、屋外温度を検出するセンサである。
【0014】
室内機210は、例えば、オフィスの室内の天井に配置される。室内機210は、室内熱交換器211と室内熱交温度センサT6を備える。室内熱交換器211は、被空調空間内の空気と、冷媒と、の間で熱を交換させる。室内熱交温度センサT6は、室内熱交換器211内の冷媒温度を検出するセンサである。室内機210は、室内送風ファン(図示せず)を駆動させることで、室内熱交換器211内を流れる冷媒と、空気と、の間で熱を交換し、熱交換された空気を吹出口(図示せず)から吹き出すことで、被空調空間の室温を調整する。
【0015】
図1に戻り、空気調和システム1の構成について説明する。
空調通信部21は、ネットワークNWと通信可能に構成される。空気調和装置20は、空調通信部21を介して、サーバ装置3へ運転データを送信する。ネットワークNWは、例えば、WAN(Wide Area Network)でも良いし、LAN(Local Area Network)でもよいし、インターネットでもよい。
【0016】
空調制御部22は、室外機200、室内機210、及び、空調通信部21を制御する装置である。空調制御部22は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等により構成される。
【0017】
尚、本実施形態では、空気調和装置20は、1台の室外機と1台の室内機とが冷媒配管によって接続される構成について説明しているが、本発明はこれに限らない。例えば、1台の室外機と複数台の室内機とが冷媒配管によって接続される構成であっても良いし、複数の室外機と複数の室内機とが冷媒配管によって接続される構成であっても良い。
【0018】
[1―1-2.サーバ装置3の構成]
サーバ装置3は、空気調和装置20から運転データを受信し、受信した運転データに基づき、空気調和装置20の冷媒量の不足の有無を推定する。
サーバ装置3は、サーバメモリ300及びサーバプロセッサ310を有するサーバ制御装置30と、サーバ通信部31と、を備える。サーバ通信部31は、ネットワークNWと通信する。
【0019】
サーバメモリ300は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリデバイスである。サーバメモリ300は、制御プログラム301と、データ記憶部302と、モデル記憶部303と、を備える。
制御プログラム301は、サーバプロセッサ310により実行されるプログラムである。データ記憶部302は、空気調和装置20の運転データ等を記憶する。モデル記憶部303は、後述する冷媒量推定モデルMを記憶する。
【0020】
サーバプロセッサ310は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等により構成され、制御プログラム301を読みだして、各種制御を実行する装置である。換言すれば、サーバプロセッサ310は、ハードウェア及びソフトウェアの協働により処理を実行する。
サーバプロセッサ310は、取得部311、データ処理部312、モデル生成部313、および、推論部314と、を備える。取得部311は、サーバ通信部31により受信された空気調和装置20の運転データを取得する。データ処理部312は、運転データを各種処理する。データ処理部312は、例えば、標準化処理を実行する。標準化処理については、図6を参照して説明する。モデル生成部313は、冷媒量推定モデルMを生成する。推論部314は、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を推定する。
【0021】
[1-1-3.端末装置4の構成]
端末装置4は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップ型のPC、および、デスクトップ型のPCなどで構成される。
端末装置4は、端末通信部41、端末操作部42、端末表示部43、および、端末制御部44、を備える。
端末通信部41は、ネットワークNWと通信し、各種情報を送受信する。端末操作部42は、ユーザから各種操作を受け付ける。端末操作部42は、例えば、タッチパネル、キーボード、及びマウス等で構成される。端末表示部43は、各種情報を表示する。端末表示部43は、例えば、LED、ディスプレイ等で構成される。端末制御部44は、端末通信部41、端末操作部42、および、端末表示部43を制御する。端末制御部44は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)等で構成される。
【0022】
[1-2.空気調和装置20の動作]
次に、図2を参照して、空気調和装置20が冷房運転を実行する場合と、暖房運転を実行する場合との空気調和装置20の動作を説明する。
まず、空気調和装置20が冷房運転を実行する場合の動作を説明する。図2に示す実線の矢印は、空気調和装置20が冷房運転を実行する場合の冷媒の流れの方向を示す。
圧縮機201から流出した高温高圧の冷媒は、四方弁202によって、室外熱交換器203に供給される。室外熱交換器203は、高温高圧の冷媒の熱を外気へ放出して、冷媒を凝縮させる。即ち、室外熱交換器203は、凝縮器として機能する。室外熱交換器203で凝縮された冷媒は、膨張弁204に供給される。膨張弁204は、冷媒を減圧する。膨張弁204で減圧された冷媒は、室内熱交換器211へ供給される。室内熱交換器211は、冷媒と室内の空気とを熱交換させ、冷媒を気化させる。即ち、室内熱交換器211は、蒸発器として機能する。そして、気化された冷媒は、四方弁202によって、圧縮機201に供給される。
【0023】
次に、空気調和装置20を暖房運転として実行する場合の動作を説明する。図2に示す破線の矢印は、空気調和装置20が冷房運転を実行する場合の冷媒の流れの方向を示す。
圧縮機201から流出した高温高圧の冷媒は、四方弁202によって、室内熱交換器211に供給される。室内熱交換器211は、冷媒と室内の空気とを熱交換させ、冷媒を凝縮させる。即ち、室内熱交換器211は、凝縮器として機能する。室内熱交換器211で凝縮された冷媒は、膨張弁204に供給される。膨張弁204は、冷媒を減圧する。膨張弁204で減圧された冷媒は、室外熱交換器203に供給される。室外熱交換器203は、低圧の冷媒と外気とを熱交換させ、外気からの吸熱によって冷媒を気化する。即ち、室外熱交換器203は、蒸発器として機能する。気化された冷媒は、四方弁202によって、圧縮機201に供給される。
【0024】
図2では、空気調和装置20が、1台の室内機210と、1台の室外機200とで構成される場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、空気調和装置20が、複数台の室内機210と、1台の室外機200とで構成されてもよい。また、例えば、空気調和装置20が、複数台の室内機210と、複数台の室外機200とで構成されてもよい。
【0025】
[1-3.冷媒量不足の有無の推定]
図3図6を用いて、図1を参照して説明したサーバ装置3が、空気調和装置20の冷媒量不足の有無を推定する方法について説明する。
まず、本開示における冷媒不足の有無の推定方法の概要を説明する。第1に、冷媒量推定モデルMを作成し、冷媒量不足の有無を判別する閾値を決定する。第2に、診断の対象である空気調和装置20の運転によって得られた冷媒量指標値を、冷媒量推定モデルMに適用できるように補正する。第3に、補正された冷媒量指標値と閾値とを比較することによって、冷媒量不足の有無を推定する。
本実施形態では、「補正」は、例えば、「標準化処理」である。
【0026】
ここで、冷媒量指標値は、冷媒量の推定に用いる指標値である。本実施形態では、冷媒量指標値として過熱度Xを用いる。過熱度には、吸込過熱度と吐出過熱度とがある。吸込過熱度は、低圧飽和温度と、吸込温度センサT3により検出される圧縮機吸込冷媒温度と、の差により算出される。吐出過熱度は、高圧飽和温度と、吐出温度センサT4により検出される圧縮機の吐出冷媒温度と、の差により算出される。
【0027】
ここで、空気調和装置20が冷媒運転の場合には、低圧飽和温度は、室内熱交温度センサT6により検出される室内熱交換器211内の冷媒温度であり、高圧飽和温度は、室外熱交温度センサT2により検出される室外熱交換器203内の冷媒温度である。また、空気調和装置20が暖房運転の場合には、低圧飽和温度は、室外熱交温度センサT2により検出される室外熱交換器203内の冷媒温度であり、高圧飽和温度は、室内熱交温度センサT6により検出される室内熱交換器211内の冷媒温度である。
以下、本開示における冷媒不足の有無を推定する各工程について説明する。
【0028】
[1-3―1.冷媒量推定モデルMの生成]
図1を参照して説明したサーバ装置3のモデル生成部313は、冷媒量の不足の有無を判別する閾値を決定する冷媒量推定モデルMを生成する。以下、冷媒量推定モデルMの生成方法について説明する。
なお、本実施形態では、「冷媒量指標値」が過熱度Xである場合について説明する。
換言すれば、過熱度Xは、「冷媒量指標値」の一例に対応する。
【0029】
まず、冷媒量推定モデルMの教師データを収集するために、モデル生成部313は、冷媒量の不足が無い状態と、冷媒量の不足がある状態と、のそれぞれの状態において、種々の空気調和装置を長期間運転させ、運転により得られた大量の過熱度データを収集する。教師データは、冷媒量推定モデルMの学習に用いるデータである。すなわち、教師データは、「学習データ」の一例である。
「種々の空気調和装置」は、空気調和装置20とは異なる空気調和装置であって、室内機の台数、室外機の台数、および、配管長等が互いに相違する。「種々の空気調和装置」は、「他の空気調和装置」の一例に対応する。
【0030】
ここで、冷媒量の不足が無い状態とは、冷媒配管内における冷媒の充填率が閾値TH以上の状態であり、冷媒量の不足がある状態とは、冷媒配管内における冷媒の充填率が閾値TH未満の状態である。例えば、閾値THを70%とした場合には、冷媒量の不足が無い状態とは、冷媒配管内における冷媒の充填率が70%以上の状態であり、冷媒量の不足がある状態とは、冷媒配管内における冷媒の充填率が70%未満の状態である。
本発明はこれに限らず、例えば、閾値THを60%にしても良いし、閾値THを80%にしても良い。
【0031】
なお、教師データは、空気調和装置の冷媒量を調整可能な実験室環境などによる運転データを用いることが好ましい。また、空気調和装置の冷媒量を特定できる状態であれば、現場に設置された空気調和装置の実運転データを教師データとして用いても良い。また、教師データに偏りが生じないようにするために、室内機の台数、室外機の台数、および、配管長等などを変更させ、多種多様な態様の冷媒系統における教師データとしての過熱度データを、教師データとして収集することが好ましい。また、外気温や室内温度などの運転環境や運転条件も変更させながら、教師データとしての過熱度データを収集することが好ましい。
【0032】
本実施形態では、モデル生成部313が、冷媒量の不足が無い状態における教師データとして、N個の過熱度XP(XP0、XP1、・・・、XP(N-1))を収集する場合について説明する。また、モデル生成部313が、冷媒量の不足がある状態における教師データとしてM個の過熱度XN(XN0、XN1、・・・、XN(M-1))を収集する場合について説明する。N個は、例えば、100000個である。M個は、例えば、50000個である。
【0033】
図3は、第1実施形態における冷媒量推定モデルMに用いる教師データの分布図である。横軸は冷媒量指標値である過熱度Xの値を示している。縦軸は、各過熱度Xの出願頻度を示している。図3は、図3(a)と図3(b)とで構成される。
また、以下の説明では、冷媒量の不足が無い場合の過熱度XP分布が、冷媒量の不足がある場合の過熱度XNの分布と比べて低い値を取る場合について説明する。
【0034】
モデル生成部313は、収集した過熱度XNと過熱度XPの分布をもとに、冷媒量推定モデルMを作成する。本実施形態における冷媒量推定モデルMの作成とは、冷媒量の不足が無いか、冷媒量の不足があるかを判定する閾値TH1を算出することを意味する。即ち、診断の対象である空気調和装置20の運転により得られた過熱度Xが、閾値TH1よりも大きい場合には、サーバ装置3の推論部314は、冷媒量の不足があると判定し、サーバ装置3の推論部314は、閾値TH1よりも小さい場合には、冷媒量の不足が無いと判定する。
尚、本発明において、冷媒量推定モデルMの作成は、閾値TH1を作成することに限られない。冷媒量推定モデルMが、過熱度Xに基づいて、冷媒量の不足の有無を判定するモデルであればよい。
【0035】
図3(a)において、分布30XPは、冷媒量の不足が無い状態で収集した過熱度XPの分布の一例である。また、分布30XNは、冷媒量の不足がある状態で収集した過熱度XN分布の一例である。
【0036】
図3(a)では、分布30XPと分布30XNが離間している。この場合には、モデル生成部313は、分布30XPと分布30XNとが離間している位置に第1閾値TH1を設定する。
【0037】
一方、図3(b)のように、過熱度XPの分布である分布31XPと、過熱度XN分布である分布31XNと、が一部重なる場合には、モデル生成部313は、以下のようにして、第1閾値TH1を設定する。すなわち、モデル生成部313は、過熱度XN0、XN1、・・・、XN(N-1)のそれぞれを診断したとした場合の誤報率FPと、過熱度XP0、XP1、・・・、XP(M-1)それぞれを診断したとした場合の失報率FNとを算出する。そして、モデル生成部313は、誤報率FPと失報率FNが一致する過熱度Xを第1閾値TH1として設定する。
【0038】
ここで、誤報率FPとは、空気調和装置の冷媒量の不足がない場合に、冷媒量推定モデルMが誤って、冷媒量の不足があると判定する確率である。また、失報率FNとは、空気調和装置の冷媒量の不足がある場合に、冷媒量推定モデルMが誤って、冷媒量の不足が無いと判定する確率である。誤報率FPは、分布31XPと分布31XNとが重なり合っている領域のうち、第1閾値TH1よりも右の領域、即ち、過熱度が第1閾値TH1よりも大きい領域の面積に対応する。失報率FNは、分布31XPと分布31XNとが重なり合っている領域のうち、第1閾値TH1よりも左側の領域、即ち、過熱度が第1閾値TH1以下の領域の面積に対応する。
【0039】
なお、図3(b)に示す領域TPは、分布31XPに含まれ、冷媒量の不足が無い状態の検出値であり、かつ、冷媒量推定モデルMが、冷媒量の不足が無いと正しく判定する確率に対応する。
また、図3(b)に示す領域TNは、分布31XNに含まれ、冷媒量の不足がある状態の検出値であり、かつ、冷媒量推定モデルMが、冷媒量の不足があると正しく判定する確率に対応する。
誤報率FPは、次の式(1)によって算出され、失報率FNは、次の式(2)によって算出される。
FP=(過熱度XPのうち値が第1閾値TH1よりも大であるものの個数)/N
(1)
FN=(過熱度XNのうち値が第1閾値TH1以下であるものの個数)/M
(2)
【0040】
図3(a)と図3(b)とは、便宜上、過熱度XNの分布形状と、過熱度XPの分布形状と、が同一である場合について説明する。この場合には、モデル生成部313は、過熱度XNの分布を示すグラフと、過熱度XPの分布を示すグラフとの交点における過熱度の値を第1閾値TH1として決定する。
分布310XPの平均値や標準偏差、分布310XNの平均値や標準偏差、および、第1閾値TH1は、モデル生成部313によって、モデル記憶部303に記憶される。
【0041】
[1-3―2 冷媒量指標値の補正]
室外機の台数、室内機の台数、型式、設置環境、および、配管長などの空気調和装置の構成によって、過熱度Xの分布が異なる。そのため、診断の対象である空気調和装置20に応じて過熱度Xを補正せずに、空気調和装置20の運転により得られた過熱度Xと、第1閾値TH1とを比較して冷媒量の不足の有無を推定する場合には、誤判定となる虞がある。
図4は、冷媒量推定モデルMを生成する際に用いた過熱度XPの分布が、診断の対象である空気調和装置20における過熱度XPの分布と一致し、且つ、冷媒量推定モデルMを生成する際に用いた過熱度XNの分布が、診断の対象である空気調和装置20における過熱度XNの分布と一致する場合の一例を示す模式図である。
なお、「分布が一致する」とは、例えば、分布を示す平均値、及び標準偏差が一致することを意味する。図4は、図4(a)と、図4(b)とで構成される。
すなわち、図4では、冷媒量推定モデルMを生成する際に用いた過熱度XPの平均値、及び標準偏差の各々が、診断の対象である空気調和装置20における過熱度XPの平均値、及び標準偏差分布と一致する。また、冷媒量推定モデルMを生成する際に用いた過熱度XNの平均値、及び標準偏差の各々が、診断の対象である空気調和装置20における過熱度XNの平均値、及び標準偏差分布と一致する。
【0042】
図4(a)において、破線で示す分布40XPは、冷媒量推定モデルMを生成する際に用いた過熱度XPの分布である。破線で示す分布40XNは、冷媒量推定モデルMを生成する際に用いた過熱度XNの分布である。第1閾値TH1は、[1-3―1]に記載の方法で算出した第1閾値TH1である。実線で示す分布41XPは、診断の対象である空気調和装置20における過熱度XPの分布である。実線で示す分布41XNは、診断の対象である空気調和装置20における過熱度XNの分布である。
図4(a)に示すように、分布40XPは、分布41XPと一致し、分布40XNは、分布41XNと一致する。
【0043】
図4(b)は、図4(a)から、分布41XP、分布41XN、および第1閾値TH1を抽出した模式図である。
図4(b)に示すように、診断の対象である空気調和装置20の分布41XPと分布41XNとが、第1閾値TH1によって分離できている。そこで、診断の対象である空気調和装置20で、過熱度Xを補正することなく、冷媒量の不足の有無を推定できる。
【0044】
図5は、冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データの過熱度Xの分布と、診断の対象である空気調和装置20の過熱度Xの分布異なる場合の過熱度分布の模式図である。
図5(a)において、破線で示す分布50XPは、冷媒量推定モデルMにおける過熱度XPの分布である。破線で示す分布50XNは、冷媒量推定モデルMにおける過熱度XNの分布である。第1閾値TH1は、[1-3―1]に記載の方法で算出した第1閾値TH1である。実線で示す分布51XPは、診断の対象である空気調和装置20における過熱度XPの分布である。実線で示す分布51XNは、診断の対象である空気調和装置20における過熱度XNの分布である。
【0045】
図5(a)に示すように、分布51XPの平均値は、分布50XPの平均値よりも大きい。また、分布51XPの標準偏差は、分布50XPの標準偏差よりも大きい。また、分布51XNの平均値は、分布50XNの平均値よりも大きい。また、分布51XNの標準偏差は、分布50XNの標準偏差よりも大きい。
【0046】
図5(b)は、図5(a)から、分布51XP、分布51XN、および第1閾値TH1を抽出した模式図である。
図5(a)に示すように、分布51XPの平均値は、分布50XPの平均値よりも大きい。また、分布51XPの標準偏差は、分布50XPの標準偏差よりも大きい。また、分布51XNの平均値は、分布50XNの平均値よりも大きい。また、分布51XNの標準偏差は、分布50XNの標準偏差よりも大きい。
【0047】
そのため、図5(b)において、分布51XPの一部が第1閾値TH1よりも右側に跨り、空気調和装置20における冷媒量は正常値であるが、冷媒量推定モデルMが誤って、冷媒量の不足があると判定する誤報エリアSが存在する。
この場合には、空気調和装置20の過熱度Xの分布を、冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データの過熱度Xの分布と一致するように補正する必要がある。
【0048】
ここで、空気調和装置20が設置から長期間(例えば、3年間)経過した状態では、冷媒配管内の冷媒が徐々に抜け、現状の残存冷媒量を特定することが難しい。一方、冷媒を充填した後の所定期間(例えば、1か月)であれば、冷媒が満充填されていると特定できる。発明者らは、その点に着目して、冷媒が満充填されている期間における空気調和装置20の過熱度XPの分布と、冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データにおいて冷媒が満充填されている状態における過熱度XPの分布と、の乖離度を用いて、空気調和装置20の過熱度XPの分布のズレを補正することを考案した。この補正によって、診断の対象である空気調和装置20の冷媒量の不足の有無を、冷媒量推定モデルMの閾値によって、適切に推定できる。
【0049】
[1-3―3.標準化]
本実施形態では、サーバ装置3のデータ処理部312は、冷媒が満充填状態での過熱度Xの分布に基づき、過熱度Xに対して標準化処理を施す。
図6は、冷媒が満充填状態での過熱度Xの分布に基づき、過熱度Xを標準化処理した場合において、冷媒量の不足の有無を推定する方法を説明するための模式図である。図6は、図6(a)と、図6(b)とで構成される。
【0050】
図6(a)は、冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データの過熱度の分布を示す模式図である。
分布70XMは、冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データのうち、空気調和装置の冷媒が満充填状態である場合の過熱度Xの分布である。平均値Aは、分布70XMを構成する過熱度Xの平均値である。標準偏差Bは、分布70XMを構成する過熱度Xの標準偏差である。
「冷媒が満充填状態」は、「冷媒の充填率が前記所定範囲に含まれる状態」の一例に対応する。換言すれば、以下の説明では、「所定範囲」が冷媒の満充填状態に対応する範囲である場合について説明する。
平均値Aは、「第1平均値」の一例に対応する。
標準偏差Bは、「第1標準偏差」の一例に対応する。
【0051】
本実施形態では、「所定範囲」が冷媒の満充填状態に対応する範囲である場合について説明するが、これに限定されない。例えば、「所定範囲」が冷媒量の不足がない範囲でもよい。冷媒量の不足がない範囲は、例えば、冷媒の充填率が70%以上の状態である。また、冷媒量の不足がない範囲は、例えば、冷媒の充填率が60%以上の状態でもよい。また、冷媒量の不足がない範囲は、例えば、冷媒の充填率が80%以上の状態でもよい。
【0052】
70XPは、冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データのうち、空気調和装置が冷媒量の不足が無い状態における過熱度Xの分布である。70XNは、冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データのうち、空気調和装置が冷媒量の不足がある状態における過熱度データの分布である。
【0053】
第1閾値TH1は、冷媒量推定モデルMにおいて、冷媒量の不足の有無を判定する閾値である。第1閾値TH1は、分布70XPと分布70XNを用いて、上述した[1-3―1]の方法により決定される。
分布DXは、分布70XMに対して標準化処理を施した分布を示す。換言すれば、分布70XMを構成する過熱度Xに対して、次の式(3)を用いて過熱度XDを算出することによって、過熱度XDの分布として分布DXが求められる。
XD=(X-A)/B (3)
分布DXの平均値は「0」であり、分布DXの標準偏差は「1」である。
第2閾値TH2は、第1閾値TH1を、分布70XMの平均値A、及び標準偏差Bによって標準化処理された閾値である。すなわち、第2閾値TH2は、次の式(4)によって、算出される。
TH2=(TH1-A)/B (4)
第2閾値TH2は、「標準化処理された閾値」の一例に対応する。
【0054】
図6(b)は、診断の対象である空気調和装置20における過熱度Xの分布を示す模式図である。
図6(b)において、分布71XMは、診断の対象である空気調和装置20において、冷媒が満充填状態での過熱度Xの分布である。平均値Cは、分布71XMを構成する過熱度Xの平均値である。標準偏差Dは、分布71XMを構成する過熱度Xの標準偏差である。
平均値Cは、「第2平均値」の一例に対応する。
標準偏差Dは、「第2標準偏差」の一例に対応する。
71XPは、診断の対象である空気調和装置20において、冷媒量の不足がない状態における過熱度Xの分布である。71XNは、診断の対象である空気調和装置20にいて、冷媒量の不足がある状態におけるの過熱度Xの分布である。
【0055】
過熱度Xは、診断の対象である空気調和装置20の運転により得られた過熱度Xである。過熱度XDは、過熱度Xを、71XMの平均値C、及び標準偏差Dによって標準化処理された値である。即ち、過熱度XDは、次の式(5)によって算出される。
XD=(X-C)/D (5)
【0056】
そして、サーバ装置3の推論部314は、過熱度XDを、第2閾値TH2と比較して、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を判定する。
このようにして、過熱度Xは、分布71XMを構成する過熱度Xの平均値C及び標準偏差Dによって、標準化処理される。分布71XMは、診断の対象である空気調和装置20において、冷媒が満充填状態での過熱度Xの分布である。一方、第1閾値TH1は、分布70XMを構成する過熱度Xの平均値A及び標準偏差Bによって、第2閾値TH2に、標準化処理される。分布70XMは、冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データのうち、空気調和装置の冷媒が満充填状態である場合の過熱度Xの分布である。
すなわち、冷媒充填率が同一条件、すなわち満充填状態における分布を用いて、第1閾値TH1と過熱度Xを補正(ここでは、標準化)することで、空気調和装置20毎の過熱度Xの分布の相違を補正でき、冷媒量の不足の有無を適正に判定できる。
【0057】
上記の標準化処理について、以下に具体例を用いて説明する。
冷媒量推定モデルMの生成に用いた教師データのうち、空気調和装置の冷媒が満充填状態である場合の過熱度Xの分布である分布70XMの平均値Aが、例えば、「500」であり、標準偏差Bが、例えば「1000」である。
また、診断の対象である空気調和装置20において、冷媒が満充填状態における過熱度Xの分布である分布71XMの平均値Cが、例えば、「800」であり、標準偏差Dが、例えば、「1300」である。
また、第1閾値TH1は、例えば、「5000」である。また、過熱度Xは、「6000」である。
【0058】
この場合には、第2閾値TH2は、上記の式(4)によって、「4.5」と算出される。また、過熱度XDは、上記の式(5)によって、「4」と算出される。
このように、過熱度Xは、第2閾値TH2より小さいため、サーバ装置3の推論部314は、冷媒量の不足が無いと判定する。
【0059】
一方、過熱度Xと第1閾値TH1とを標準化せずに比較した場合には、過熱度Xが、第1閾値TH1よりも大きいため、冷媒量の不足があると誤判定される。
このようにして、診断の対象である空気調和装置20の過熱度Xと、冷媒量推定モデルMの閾値THとを、冷媒が満充填状態でのデータで標準化処理することによって、冷媒量の不足の有無を適正に推定できる。
【0060】
[1-4.冷媒量不足の有無の判定制御]
以下、図7図9のフローチャートを参照して、本実施形態における冷媒量の推定制御について説明する。
【0061】
[1-4―1.冷媒量推定モデルの作成]
図7は、本実施形態において、サーバ装置3が冷媒量推定モデルを生成する処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS101において、実験室環境等で、冷媒量満充填時の空気調和装置を運転し、当該運転データをサーバ装置3へ送信する。そして、取得部311は、運転データを受信することによって、運転データを取得する。そして、データ処理部312は、受信した運転データに基づき、過熱度XMを算出し、データ記憶部302に記憶させる。このようにして、サーバ装置3は、冷媒量満充填時の空気調和装置における多数の過熱度XMを収集する。
ここで、教師データに偏りが生じないよう、室内機の台数、室外機の台数、および、配管長等などを変更させ、多種多様な態様の冷媒系統における教師データとしての過熱度XMを収集することが好ましい。また、外気温や室内温度などの運転環境や運転条件も変更させながら、教師データとしての過熱度XMを収集することが好ましい。
次に、ステップS102において、モデル生成部313は、ステップS101で収集した過熱度XMの平均値Aと標準偏差Bとを算出し、モデル記憶部303に記憶させる。
【0062】
次に、ステップS103において、実験室環境等で、冷媒量の不足が無い状態の空気調和装置を運転し、当該運転データをサーバ装置3へ送信する。そして、取得部311は、運転データを受信することによって、運転データを取得する。そして、データ処理部312は、受信した運転データに基づき、過熱度XPを算出し、データ記憶部302に記憶させる。このようにして、サーバ装置3は、冷媒量の不足が無い状態の空気調和装置における多数の過熱度XPを収集する。
ここで、教師データに偏りが生じないよう、室内機の台数、室外機の台数、および、配管長等などを変更させ、他種多様な態様の冷媒系統における教師データとしての過熱度XPを収集することが好ましい。また、外気温や室内温度などの運転環境や運転条件も変更させながら、多様な過熱度XPを収集することが好ましい。
【0063】
次に、ステップS104において、実験室環境等で、冷媒量の不足がある状態の空気調和装置を運転し、当該運転データをサーバ装置3へ送信する。そして、取得部311は、運転データを受信することによって、運転データを取得する。そして、データ処理部312は、受信した運転データに基づき、過熱度XNを算出し、データ記憶部302に記憶させる。このようにして、冷媒量の不足がある状態の空気調和装置における多数の過熱度XNを収集する。
ここで、教師データに偏りが生じないよう、室内機の台数、室外機の台数、および、配管長等などを変更させ、他種多様な態様の冷媒系統における教師データとしての過熱度XNを収集することが好ましい。また、外気温や室内温度などの運転環境や運転条件も変更させながら、多様な過熱度XNを収集することが好ましい。
【0064】
次に、ステップS105において、モデル生成部313は、ステップS103で収集した過熱度XPと、ステップS104で収集した過熱度XNと、を用いて、冷媒量の不足の有無を判定する第1閾値TH1を決定し、モデル記憶部303に記憶させる。第1閾値TH1の決定方法は、上記[1-3―1]で記載している。
次に、ステップS106において、モデル生成部313は、ステップS105で決定した第1閾値TH1に対して、ステップS102で算出した平均値Aと標準偏差Bとを用いて標準化処理を施し、第2閾値TH2を算出し、第2閾値TH2をモデル記憶部303に記憶させる。その後、処理が終了する。
【0065】
(第1実施形態)
[2-1.冷媒量不足の有無の判定制御]
図8は、第1実施形態において、サーバ装置3が冷媒量不足の有無を推定する処理を示すフローチャートである。
まずステップS201において、空気調和装置20が新規に設置された場合や、冷媒を再充填する場合において、空気調和装置20へ冷媒が満充填される。
次にステップS202において、空気調和装置20は、空調通信部21を介して、所定周期で運転データをサーバ装置3へ送信する。そして、取得部311は、運転データを受信することによって、運転データを取得する。そして、データ処理部312は、受信した運転データに基づき、過熱度XMを算出し、データ記憶部302へ記憶させる。所定周期は、例えば、10秒間でもよいし、1分間でもよい。
【0066】
ここで、サーバ装置3のデータ処理部312は、クレンジング処理を実行しても良い。クレンジング処理とは、本実施形態では、冷媒量の不足の有無を推定する際に使用する運転データとして、不適切な運転データを削除する処理である。例えば、空気調和装置20が送風運転など、冷媒回路に冷媒が循環されていない運転を行っている場合には、データ処理部312は、当該運転データを削除しても良い。また、空気調和装置20の運転データの変動が大きい不安定な状態の場合には、データ処理部312は、当該運転データを削除しても良い。
【0067】
次にステップS203において、サーバ装置3は、冷媒を充填してから第1期間が経過したか否かを判定する。
ここで、第1期間は、冷媒量が満充填状態であると推定できる期間である。第1期間は、例えば、1か月間でも良いし、3か月間であっても良いし、10日間であっても良い。
冷媒を充填してから第1期間が経過していないとサーバ装置3が判定した場合(ステップS203:NO)には、処理がステップS202に戻る。冷媒を充填してから第1期間が経過したとサーバ装置3が判定した場合(S303:YES)には、処理がステップS204へ進む。
【0068】
次にステップS204において、データ処理部312は、ステップS202で収集された第1期間における過熱度XMの平均値Cと標準偏差Dを算出する。
次にステップS205において、取得部311は、空気調和装置20から運転データを取得する。そして、データ処理部312は運転データから過熱度Xを算出する。
次にステップS206において、データ処理部312は、ステップS204で算出された平均値Cと標準偏差Dとを用いて、過熱度Xに対して標準化処理を施し、過熱度XDを算出する。
【0069】
次にステップS207において、推論部314は、過熱度XDをステップS206で算出した第2閾値TH2と比較する。
次にステップS208において、推論部314は、ステップS207の比較結果に応じて、冷媒量の不足の有無を判定する。
冷媒量の不足がないと推論部314が判定した場合(S208:NO)には、処理がステップS205に戻る。冷媒量の不足があると推論部314が判定した場合(ステップS208:YES)には、処理がステップS209に進む。
ステップS209において、サーバ装置3は、端末装置4へ、冷媒量の不足があることを示す情報を送信する。端末装置4は、端末表示部43に、冷媒量の不足があることを表示する。その後、ステップS205に戻る。
【0070】
ステップS202は、「第1収集ステップ」の一例に対応する。ステップS204は、「第1算出ステップ」の一例に対応する。ステップS206は、「第1標準化ステップ」の一例に対応する。ステップS207-ステップS208は、「第1推定ステップ」の一例に対応する。
【0071】
(第2実施形態)
[2-2.冷媒量不足の有無の判定制御]
第1実施形態では、空気調和装置20に冷媒を充填してから第1期間で収集した過熱度データの平均値Cと標準偏差Dとを算出し、第1期間が経過した後に、冷媒量の不足の有無を推定する場合について説明した。第2実施形態では、第1実施形態の変形例として、空気調和装置20に冷媒を充填してから第1期間内においても、冷媒量の不足の有無を推定する場合について説明する。尚、冷媒量推定モデルMの作成については、[1-4―1]と同様であるので、その説明を省略する。
【0072】
図9は、第2実施形態において、サーバ装置3が冷媒量不足の有無を推定する処理を示すフローチャートである。
まずステップS301において、空気調和装置20が新規に設置された場合や、冷媒を再充填する場合に、空気調和装置20へ冷媒が充填される。
次にステップS302において、サーバ装置3は、タイマTM1とタイマTM2の計時を開始する。
【0073】
次にステップS303において、取得部311は、空気調和装置20の運転データを取得する。そして、データ処理部312は過熱度XMを算出する。ステップS303は、ステップS202と同様の処理である。
次にステップS304において、サーバ装置3は、タイマTM1が第2期間を経過しているか否か判定する。ここで、第2期間は、冷媒量の不足の有無を推定する周期である。第2期間は、例えば、1日である。
タイマTM1が第2期間を経過していないとサーバ装置3が判定した場合(ステップS304:NO)には、処理がステップS303に戻る。タイマTM1が第2期間を経過しているとサーバ装置3が判定した場合(ステップS304:YES)には、処理がステップS305に進む。
【0074】
次に、ステップS305において、データ処理部312は、ステップS303においてサーバ装置3が収集した過熱度XMの平均値Cと標準偏差Dとを算出する。
平均値Cは、「第2平均値」、及び「第3平均値」の一例に対応する。
標準偏差Dは、「第2標準偏差」、及び「第3標準偏差」の一例に対応する。
次にステップS306において、データ処理部312は、ステップS305で算出した平均値C及び標準偏差Dと、図7のステップS102で算出した平均値A及び標準偏差Bを用いて、下記の式(6)、及び式(7)を用いて、平均値AD及び標準偏差BDを算出する。
AD=α×C+(1-α)×A (6)
BD=β×D+(1-β)×B (7)
ここで、係数α及び係数βの各々は、重み係数であり、1未満の値である。
平均値ADは、「第4平均値」の一例に対応する。
標準偏差BDは、「第4標準偏差」の一例に対応する。
【0075】
また、ステップS306において、データ処理部312は、平均値Aを、ステップS306で算出した平均値ADに更新し、標準偏差Bを、ステップS306で算出した標準偏差BDに更新する。そして、データ処理部312は、更新された平均値Aと更新された標準偏差Bとを、モデル記憶部303に記憶させる。
次にステップS307において、データ処理部312は、空気調和装置20の運転データから過熱度Xを算出する。そして、データ処理部312は、ステップS306で算出した平均値ADと標準偏差BDとを用いて、過熱度Xを標準化し、過熱度XDを算出する。即ち、下記の式(8)を用いて、過熱度XDを算出する。
XD=(X-AD)/BD (8)
【0076】
次にステップS308において、推論部314は、ステップS307で算出した過熱度XDを、図7のステップS106で算出した第2閾値TH2と比較する。
次にステップS309において、推論部314は、ステップS308の比較結果に応じて、冷媒量の不足の有無を判定する。冷媒量の不足が無いと推論部314が判定した場合(ステップS309:NO)には、処理がステップS311へ進む。冷媒量の不足があると推論部314が判定した場合(ステップS309:YES)には、処理がステップS310に進む。
次にステップS310において、サーバ装置3は、端末装置4の端末表示部43に冷媒量が不足していることを表示させる。
次にステップS312において、サーバ装置3は、タイマTM1をリセットし、計時を再開する。その後、処理がステップS303に戻る。
【0077】
ステップS309でNOの場合には、ステップS311において、サーバ装置3は、タイマTM2が第1期間を経過したか否かを判定する。ここで、第1期間は、冷媒量が満充填状態であると推定できる期間である。第1期間は、例えば、1か月間でも良いし、3か月間であっても良いし、10日間であっても良い。
タイマTM2が第1期間を経過していないとサーバ装置3が判定した場合(ステップS311:NO)には、処理がステップS312に進む。
そして、ステップS312において、サーバ装置3は、タイマTM1をリセットして、計時を再開する。そして、処理がステップS303に戻る。
タイマTM2が第1期間を経過したとサーバ装置3が判定した場合(ステップS311:YES)には、処理がステップS313へ進む。
【0078】
次にステップS313において、取得部311は、第3期間における空気調和装置20の運転データを取得する。そして、データ処理部312は、運転データから過熱度Xを算出する。ここで、第3期間とは、冷媒量の不足の有無を推定する周期である。第3期間は、例えば、1日である。第3期間は、第2期間と同一であっても良いし、異なっていても良い。
次にステップS314において、データ処理部312は、平均値ADと標準偏差BDとを用いて、過熱度Xを標準化し、過熱度XDを算出する。
【0079】
次にステップS315において、推論部314は、過熱度XDを第2閾値TH2と比較する。
次にステップS316において、推論部314は、ステップS315の比較結果に応じて、冷媒量の不足の有無を判定する。冷媒量の不足が無いと推論部314が判定した場合(ステップS316:NO)には、処理がステップS313に戻る。冷媒量の不足があると推論部314が判定した場合(ステップS316:YES)の場合には、処理がステップS317へ進む。
次にステップS317において、サーバ装置3は、端末装置4の端末表示部43に冷媒の不足があることを示す情報を送信する。その後、処理がステップS313に戻る。
【0080】
ステップS303は、「第1収集ステップ」、及び「第2収集ステップ」の一例に対応する。ステップS305は、「第1算出ステップ」、及び「第2算出ステップ」の一例に対応する。ステップS306は、「第3算出ステップ」、「第4算出ステップ」、及び「更新ステップ」の一例に対応する。ステップS307は、「第1標準化ステップ」、及び「第2標準化ステップ」の一例に対応する。ステップS308-ステップS309は、「第1推定ステップ」、及び「第2推定ステップ」の一例に対応する。
【0081】
[構成と効果]
以上説明したように、本実施形態に係る空気調和装置20の冷媒量推定方法は、予め生成された冷媒量推定モデルMを用いて、空気調和装置20の冷媒量の不足の有無を推定する空気調和装置20の冷媒量推定方法であって、冷媒量推定モデルMは、冷媒量の不足の有無を判定する第2閾値TH2を含み、第2閾値TH2は、他の空気調和装置において、冷媒の充填率が所定範囲に含まれる状態における運転データにより収集された過熱度Xの分布に基づいて、標準化処理された閾値であり、空気調和装置20において、冷媒の充填率が前記所定範囲に含まれる状態での運転により得られた過熱度Xを収集する第1収集ステップと、前記収集された冷媒量指標値の分布に基づいて、過熱度Xに標準化処理を施す第1標準化ステップと、前記標準化処理された過熱度XDと、冷媒量推定モデルMの第2閾値TH2と、を比較して、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を推定する第1推定ステップと、を含む。
【0082】
この構成によれば、過熱度XDは、空気調和装置20において、冷媒の充填率が所定範囲に含まれる状態における運転により得られた過熱度XMの分布に基づいて、標準化処理された過熱度である。また、第2閾値TH2は、他の空気調和装置において、冷媒の充填率が前記所定範囲に含まれる状態における運転データにより収集された過熱度XMの分布に基づいて、標準化処理された閾値である。すなわち、過熱度XD、及び第2閾値TH2の各々は、冷媒の充填率が前記所定範囲に含まれる状態における運転データにより収集された過熱度XMの分布に基づいて、標準化処理されたものである。
したがって、冷媒の充填率が前記所定範囲に含まれる状態における運転データに基づいて、標準化処理された過熱度XDと、標準化処理された第2閾値TH2と、を比較して、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を推定するため、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を適正に推定できる。
【0083】
また、空気調和装置20の冷媒量推定方法において、前記所定範囲は、冷媒の満充填状態に対応する範囲である。
【0084】
この構成によれば、過熱度XDは、空気調和装置20において、冷媒の満充填状態における運転により得られた過熱度XMの分布に基づいて、標準化処理された過熱度である。また、第2閾値TH2は、他の空気調和装置において、冷媒の満充填状態における運転データにより収集された過熱度XMの分布に基づいて、標準化処理された閾値である。すなわち、過熱度XD、及び第2閾値TH2の各々は、冷媒の満充填状態における運転データにより収集された過熱度XMの分布に基づいて、標準化処理されたものである。
したがって、冷媒の満充填状態における運転データに基づいて、標準化処理された過熱度XDと、標準化処理された第2閾値TH2と、を比較して、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を推定するため、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を適正に推定できる。
【0085】
また、空気調和装置20の冷媒量推定方法において、前記閾値は、前記他の空気調和装置において、前記運転データにより収集された過熱度XMの分布の平均値Aと、過熱度XMの分布の標準偏差Bとを用いて標準化処理された閾値であり、前記第1収集ステップにおいて収集された過熱度XMの分布の平均値Cと、過熱度XMの分布の標準偏差Dと、を算出する第1算出ステップ、を更に含み、前記第1標準化ステップにおいて、前記平均値C、及び標準偏差Dを用いて、過熱度XMに標準化処理を施す。
【0086】
この構成によれば、前記閾値は、過熱度XMの分布の平均値A、及び標準偏差Bを用いて標準化処理された閾値であり、前記第1収集ステップにおいて収集された過熱度XMの分布の平均値C及び標準偏差Dを用いて、過熱度XMに標準化処理を施す。
よって、標準化処理された第2閾値TH2、及び標準化処理された過熱度XDを適正に算出できる。したがって、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を適正に推定できる。
【0087】
また、空気調和装置20の冷媒量推定方法において、前記収集ステップでは、空気調和装置20に冷媒が充填された時点から、冷媒が満充填状態である第1期間の間に、過熱度XMを収集し、前記第1算出ステップでは、前記収集された過熱度XMに基づき、第2平均値C、及び第2標準偏差Dを算出し、空気調和装置20に冷媒が充填された時点から前記第1期間が経過した後、前記第1標準化ステップ、及び、前記第1推定ステップを実行する。
【0088】
この構成によれば、空気調和装置20に冷媒が充填された時点から、冷媒が満充填状態である第1期間の間に、過熱度XMを収集されるため、過熱度XMを適正に収集できる。したがって、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を適正に推定できる。
【0089】
また、空気調和装置20の冷媒量推定方法において、空気調和装置20に冷媒が満充填されている状態において、冷媒量を推定する周期に対応する期間を示す第2期間における空気調和装置20の過熱度XMを収集する第2収集ステップと、収集された過熱度XMの平均値C、および、収集された過熱度XMの標準偏差Dを算出する第2算出ステップと、平均値Aと平均値Cとの各々に所定の重みづけを行い、平均値ADを算出する第3算出ステップと、標準偏差Bと標準偏差Dとの各々に所定の重みづけを行い、標準偏差BDを算出する第4算出ステップと、平均値ADと標準偏差BDとを用いて、空気調和装置20の運転により得られた過熱度XMに標準化処理を施す第2標準化ステップと、標準化処理された過熱度XDと、冷媒量推定モデルMの標準化処理された第2閾値TH2と、を比較して、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を推定する第2推定ステップと、平均値Aを平均値ADに更新し、標準偏差Bを標準偏差BDに更新する更新ステップと、を前記第2期間が経過する度に繰り返し実行する。
【0090】
この構成によれば、空気調和装置20において、冷媒が満充填状態での運転により得られた過熱度XMの分布の平均値C、及び標準偏差Dを用いて、平均値A、及び標準偏差Bを補正した平均値AD及び標準偏差BDを算出する。そして、平均値ADと標準偏差BDとを用いて、過熱度XMを標準化して過熱度XDを算出する。また、第2閾値TH2は、他の空気調和装置において、冷媒が満充填状態における運転データにより収集された過熱度XMの分布の平均値である第1平均値Aと、過熱度XMの分布の標準偏差である第1標準偏差Bとを用いて標準化処理された閾値である。すなわち、過熱度XD、及び第2閾値TH2の各々は、冷媒が満充填状態における運転データにより収集された過熱度XMの分布の平均値、及び標準偏差を用いて標準化処理されたものである。
したがって、冷媒が満充填状態における運転データに基づいて、標準化処理された過熱度XDと、標準化処理された第2閾値TH2と、を比較して、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を推定するため、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を適正に推定できる。
また、冷媒が満充填状態での運転により得られた過熱度XMが、充分な個数になるまで収集されていない場合であっても、過熱度XMを平均値AD及び標準偏差BDによって標準化するため、過熱度Xを適正に標準化できる。したがって、空気調和装置20における冷媒量の不足の有無を適正に推定できる。
【0091】
[他の実施の形態]
以上のように、本出願において開示する例示として、上記実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0092】
本実施形態では、空気調和装置20は、1台の室外機と1台の室内機とが冷媒配管によって接続される構成について説明するが、本開示はこれに限らない。例えば、1台の室外機と複数台の室内機とが冷媒配管によって接続される構成であっても良いし、複数の室外機と複数の室内機とが冷媒配管によって接続される構成であっても良い。
【0093】
本実施形態では、「所定範囲」が冷媒の満充填状態に対応する範囲である場合について説明するが、本開示はこれに限定されない。例えば、「所定範囲」が冷媒量の不足がない範囲でもよい。「所定範囲」は、例えば、冷媒の充填率が70%以上の状態である。また、「所定範囲」は、例えば、冷媒の充填率が60%以上の状態でもよい。また、「所定範囲」は、例えば、冷媒の充填率が80%以上の状態でもよい。
【0094】
本実施形態では、「冷媒量指標値」として過熱度Xを用いる場合について説明したが、本開示はこれに限らない。例えば、冷媒量指標値として過冷却度を用いても良いし、膨張弁の開度を用いて良い。要するに、空気調和装置の運転により得られた値であり、かつ、冷媒量の推定に活かせる指標であれば良い。
【0095】
本実施形態では、冷媒満充填状態での運転データを標準化処理に用い、冷媒量が正常時での運転データを第1閾値TH1の決定に用いた。即ち、標準化処理に用いる運転データの対象と、第1閾値TH1の決定に用いる運転データの対象が一致していない場合について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、冷媒が満充填状態での運転データを用いて、標準化処理を行うとともに、冷媒が満充填状態での運転データを用いて、第1閾値TH1を決定しても良い。即ち、標準化処理に用いる運転データの対象と、第1閾値TH1の決定に用いる運転データの対象が一致していても良い。
【0096】
本実施形態では、サーバ装置3が「空気調和装置の冷媒量推定方法」を実行する場合について説明するが、本開示はこれに限定されない。例えば、空調制御部22が、「空気調和装置の冷媒量推定方法」を実行してもよい。また、空調制御部22と通信可能に接続されたパーソナルコンピューター、タブレット端末、スマートフォン等が、「空気調和装置の冷媒量推定方法」を実行してもよい。でもよい。
【0097】
本実施形態では、サーバ装置3が、冷媒漏れの有無の推定結果を、パーソナルコンピューターで構成された端末装置4へ送信する場合について説明するが、本開示はこれに限定されない。サーバ装置3が、冷媒漏れの有無の推定結果を、例えば、スマートフォン、タブレット端末等に送信してもよい。
【0098】
また、例えば、図8図9に示す動作のステップ単位は、サーバ装置3の処理の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものであり、処理単位の分割の仕方や名称によって、本発明が限定されることはない。処理内容に応じて、さらに多くのステップ単位に分割してもよい。また、1つのステップ単位がさらに多くの処理を含むように分割してもよい。また、そのステップの順番は、本発明の趣旨に支障のない範囲で適宜に入れ替えてもよい。
【0099】
また、空気調和装置20の冷媒量推定方法は、サーバ装置3が備えるサーバプロセッサ310に、制御プログラム301を実行させることで実現できる。また、この制御プログラム301は、コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体に記録しておくことも可能である。記録媒体としては、磁気的、光学的記録媒体又は半導体メモリデバイスを用いることができる。
具体的には、フレキシブルディスク、HDD、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD、Blu-ray(登録商標) Disc、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、カード型記録媒体等の可搬型、或いは固定式の記録媒体が挙げられる。また、記録媒体は、サーバ装置3が備える内部記憶装置であるRAM、ROM等の不揮発性記憶装置であってもよい。
また、制御プログラム301を他のサーバ装置等に記憶させておき、他のサーバ装置からサーバ装置3に、制御プログラム301を送信することで空気調和装置20の冷媒量推定方法を実現することもできる。
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、本開示に係る空気調和装置の冷媒量推定方法は、診断の対象である空気調和装置において、冷媒量の不足の有無を推定する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 空気調和システム
3 サーバ装置
4 端末装置
20 空気調和装置
21 空調通信部
22 空調制御部
30 サーバ制御装置
31 サーバ通信部
41 端末通信部
42 端末操作部
43 端末表示部
44 端末制御部
200 室外機
210 室内機
211 室内熱交換器
220 冷媒配管
300 サーバメモリ
301 制御プログラム
302 データ記憶部
303 モデル記憶部
310 サーバプロセッサ
311 取得部
312 データ処理部
313 モデル生成部
314 推論部
M 冷媒量推定モデル
TH、TH1、TH2 閾値
X、XD、XM、XN、XP 過熱度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9