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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150342
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20241016BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20241016BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20241016BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C1/00 A
C08K3/36
C08L21/00
C08L101/02
C08L9/00
C08L7/00
C08L15/00
C08L9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063715
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】井貫 優里菜
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB09
3D131BB11
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC33
3D131DA43
3D131EA10V
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB27V
4J002AA032
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002AC111
4J002AF022
4J002BA012
4J002BC10X
4J002BK002
4J002CC052
4J002CE002
4J002DJ016
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】低燃費性、耐摩耗性及び氷雪上性能の総合性能を向上できるタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分と、シリカを含む充填剤と、樹脂とを含むゴム組成物により形成されるキャップトレッドを備えたタイヤであって、
前記樹脂が、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂を含有し、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、トレッドの厚みTt(mm)との比(Sc/Tt)が、5.0以上であるタイヤに関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分と、シリカを含む充填剤と、樹脂とを含むゴム組成物により形成されるキャップトレッドを備えたタイヤであって、
前記樹脂が、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂を含有し、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、トレッドの厚みTt(mm)との比(Sc/Tt)が、5.0以上であるタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量Ic(質量%)が15~45質量%であり、
前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)と、前記ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量Ic(質量%)との比(St/Ic)が、1.0以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム成分が、ガラス転移温度(Tg)が-25℃以下のスチレンブタジエンゴムを含む請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記Sc/Ttが7.8以上である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)が、15.0質量%以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ゴム組成物のアセトン抽出量AE(質量%)が、32.5質量%以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、前記ゴム組成物のアセトン抽出量AE(質量%)との比(Sc/AE)が、1.9以上である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)と、トレッドの厚みTt(mm)との積(St×Tt)が、120以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物のアセトン抽出量AE(質量%)と、トレッドの厚みTt(mm)との積(AE×Tt)が、300以下である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、前記トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)との積(Sc×D)が、450以上である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記シリカが、平均一次粒子径16nm以下のシリカを含有する請求項1に記載のタイヤ。
【請求項12】
前記樹脂が、窒素原子及び酸素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂である請求項1に記載のタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
冬用タイヤ(例えば、スタッドレスタイヤ)やオールシーズンタイヤなどのタイヤには、種々の性能が要求され、例えば、低燃費性、耐摩耗性、氷雪上性能などの付与が求められている。しかし、一般に、これらは背反する性能であるため、これらの性能をバランスよく向上することが望まれている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-249423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、耐摩耗性及び氷雪上性能の総合性能を向上できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ゴム成分と、シリカを含む充填剤と、樹脂とを含むゴム組成物により形成されるキャップトレッドを備えたタイヤであって、
前記樹脂が、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂を含有し、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、トレッドの厚みTt(mm)との比(Sc/Tt)が、5.0以上であるタイヤに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ゴム成分と、シリカを含む充填剤と、樹脂とを含むゴム組成物により形成されるキャップトレッドを備えたタイヤであって、前記樹脂が、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂を含有し、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、トレッドの厚みTt(mm)との比(Sc/Tt)が、5.0以上であるタイヤであるので、低燃費性、耐摩耗性及び氷雪上性能の総合性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
図2図1のタイヤ2のトレッド4の近辺が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のタイヤは、ゴム成分と、シリカを含む充填剤と、樹脂とを含むゴム組成物により形成されるキャップトレッドを備え、前記樹脂が、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂を含有し、かつ前記Sc/Tが5.0以上という関係を満たしている。
【0009】
前記作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
シリカは極性物質であり、自己凝集性が強く、ジエン系ゴム中へ分散しにくい材料であるが、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂を配合することで、該変性樹脂がシリカ表面に吸着し、ゴム成分への親和性が向上することで、シリカの分散性が良好になると考えられる。
更に、シリカの含有量Scとトレッドの厚みTとの比(Sc/T)が5.0以上を満たすようにトレッドの厚みに対してシリカを比較的多量に配合することで、路面と接触できるシリカの割合が増加し、かつ、高い補強性が確保される。高い補強性が確保されるため、高い耐摩耗性や、低温での硬さが確保される。
従って、上記関係を満たすことで、ゴム内での応力集中が起こりにくく、トレッドゴムが十分に補強され、路面と接触できるシリカの割合が増加する状態が得られることにより、低転がり抵抗を維持しつつ、耐摩耗性、氷雪上性能が向上するため、低燃費性、耐摩耗性及び氷雪上性能の総合性能が向上すると推察される。
【0010】
このように、本発明は、ゴム成分とシリカを含む充填剤と前記樹脂とを含むゴム組成物により形成されるキャップトレッドを備え、かつSc/Tが5.0以上を満たすタイヤの構成にすることにより、低燃費性、耐摩耗性及び氷雪上性能の総合性能を向上するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、Sc/Tが5.0以上のパラメータは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、低燃費性、耐摩耗性及び氷雪上性能の総合性能を向上することであり、そのための解決手段として前記パラメータを満たすような構成としたものである。
【0011】
本発明のタイヤは、キャップトレッドを備えている。
本明細書において、キャップトレッドとは、トレッドのうち、タイヤ径方向の最も外側に配され、路面と接地する部材を指す。すなわち、トレッドが単層構造トレッドの場合はその単層がキャップトレッドに相当し、表面層(キャップ部)及び中間層(ベース部)の2層構造のトレッドの場合は表面層がキャップトレッドに相当し、3層以上の構造を有するトレッドの場合は路面と接地する最表面層がキャップトレッドに相当する。
【0012】
キャップトレッドは、キャップトレッド用ゴム組成物により構成される。
以下では、先ず、キャップトレッド用ゴム組成物について説明する。
【0013】
キャップトレッド用ゴム組成物に含まれるゴム成分は、架橋に寄与する成分であり、一般的に、重量平均分子量(Mw)が1万以上のポリマーで、アセトンにより抽出されないポリマー成分がゴム成分に該当する。前記ゴム成分は、常温(25℃)で固体状態である。
【0014】
ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは5万以上、より好ましくは15万以上、更に好ましくは20万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0015】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0016】
キャップトレッド用ゴム組成物に使用可能なゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴムを使用できる。ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより得られる観点から、イソプレン系ゴム、BR、SBRが好ましい。また、これらのゴム成分は後述の変性処理、水素添加処理が行われていても良く、オイル、樹脂、液状ゴム成分などにより伸展された、伸展ゴムを用いても良い。
【0017】
上記ジエン系ゴムは、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0018】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0019】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
キャップトレッド用ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは9質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは16質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。また、サスティナブル材料比率を増加させることが可能となる。
【0021】
イソプレン系ゴムを上記範囲、特に15~45質量%含む場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
イソプレン系ゴムを所定量ブレンドすることで、非相溶の相構造制御ができ、シリカの偏在を抑制でき、かつ粘弾性バランスが良化するため、特に低燃費性や氷雪上性能が向上すると考えられる。
【0022】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRは、シス含量が90質量%以上のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%以上がより好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0023】
また、BRは、非変性BR、変性BRのいずれも使用可能である。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。また、BRは、水素添加ブタジエン重合体(水添BR)も使用可能である。
【0024】
キャップトレッド用ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0025】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できるが、効果がより良好に得られるという観点から、溶液重合スチレンブタジエンゴムが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0027】
SBRのビニル結合量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0028】
SBRのガラス転移温度(Tg)は、-25℃以下であることが好ましく、-30℃以下であることがより好ましく、-40℃以下であることが更に好ましく、-50℃以下であることが特に好ましい。該ガラス転移温度の下限は、-78℃以上であることが好ましく、-75℃以上であることがより好ましく、-72℃以上であることが更に好ましく、-70℃以上であることが特に好ましい。
なお、本明細書において、ガラス転移温度は、JIS K7121に従い、昇温速度10℃/分の条件で示差走査熱量測定(DSC)を行って測定される値である。
【0029】
Tg-25℃以下のSBRを含む場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、このようなSBRと前記変性基を有する樹脂を組み合わせることで、シリカを分散する効果が高まり、その結果、低燃費性、耐摩耗性及び氷雪上性能の総合性能を向上すると推察される。
【0030】
SBRは、非変性SBR、変性SBRのいずれも使用可能である。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。また、SBRとして、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体(水添SBR)も使用可能である。
【0031】
キャップトレッド用ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0032】
キャップトレッド用ゴム組成物は、充填剤として、シリカを含む。
使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、エボニックデグサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのシリカのほか、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたシリカを用いても良い。もみ殻シリカは、もみ殻を熱処理して得られたものでも構わないが、もみ殻を酸処理後に熱処理する、熱処理後の粗籾殻シリカを延期と反応させて水ガラスに変換した後、通常の湿式シリカ同様の製法でシリカ粒子として得られたものでも構わない。
【0033】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0034】
シリカの平均一次粒子径は、好ましくは24nm以下、より好ましくは17nm以下、更に好ましくは16nm以下、特に好ましくは15nm以下である。また、好ましくは6nm以上、より好ましくは9nm以上、更に好ましくは12nm以上である。上記範囲内であると、硬化がより良好に得られる傾向がある。
【0035】
上記「シリカの平均一次粒子径」は、粒子を透過型または走査型電子顕微鏡で写真撮影し、粒子の形状がほぼ球形の場合には球の直径を粒子径とし、針状または棒状の場合には短径を粒子径とし、不定型の場合には短径と直径の平均径を粒子径としたときの、粒子400個の粒子径の算術平均により求められる値である。
【0036】
キャップトレッド用ゴム組成物において、シリカの含有量は、好ましくは30質量部以上、より好ましくは58質量部以上、更に好ましくは75質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0037】
キャップトレッド用ゴム組成物は、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、ゴム分野で公知のものが使用可能であり、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、エボニックデグサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
キャップトレッド用ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0039】
キャップトレッド用ゴム組成物は、シリカ以外の充填剤を含んでもよい。
シリカ以外の充填剤としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー、バイオ炭(BIO CHAR);難分散性フィラー等が挙げられる。なかでも、カーボンブラックなどの炭素由来フィラー(炭素含有フィラー)が好ましい。
【0040】
キャップトレッド用ゴム組成物において、充填剤の含有量(シリカ、カーボンブラックなどのフィラーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上、特に好ましくは90質量部以上であり、また、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは150質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0041】
キャップトレッド用ゴム組成物に使用可能なカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、従来の鉱物油などを原料としたカーボンブラックのほか、リグニンなどのバイオマス材料を原料としたカーボンブラックを用いても良い。また、タイヤなどのカーボンブラックを含むゴム製品、プラスチック製品などを分解して得られたリサイクルカーボンブラックを適宜、上記カーボンブラックと等量置換して用いても良い。
【0042】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、30m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、70m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましく、120m/g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0043】
キャップトレッド用ゴム組成物がカーボンブラックを含む場合、カーボンブラックの含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは35質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0044】
難分散性フィラーとしては、例えば、ミクロフィブリル化植物繊維、短繊維状セルロース、ゲル状化合物等が挙げられる。なかでも、ミクロフィブリル化植物繊維が好ましい。
【0045】
上記ミクロフィブリル化植物繊維としては、良好な補強性が得られるという点から、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。これらのミクロフィブリル化植物繊維は、1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
なお、本明細書において、セルロースミクロフィブリルとは、典型的には、平均繊維径が10μm以下の範囲内であるセルロース繊維、より典型的には、セルロース分子の集合により形成されている平均繊維径500nm以下の微小構造を有するセルロース繊維を意味する。典型的なセルロースミクロフィブリルは、例えば、上記のような平均繊維径を有するセルロース繊維の集合体として形成されている。
【0047】
キャップトレッド用ゴム組成物が難分散性フィラーを含有する場合、難分散性フィラーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0048】
キャップトレッド用ゴム組成物は、可塑剤を含むことが望ましい。
本明細書において、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、常温(25℃)において液体であっても、固体であっても良い。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
キャップトレッド用ゴム組成物が可塑剤を含む場合、可塑剤の含有量(液体可塑剤、固体可塑剤などの可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは35質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、前述の伸展ゴムを用いる場合、その伸展ゴムに用いられた伸展成分量は可塑剤の含有量に含まれる。
【0050】
キャップトレッド用ゴム組成物が液体可塑剤を含む場合、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
キャップトレッド用ゴム組成物が固体可塑剤を含む場合、固体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは27質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは12質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
キャップトレッド用ゴム組成物に使用可能な可塑剤としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー、樹脂類などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、MES(Mild Extract Solvated)、DAE(Distillate Aromatic Extract)、TDAE(treated Distillate Aromatic Extract)、TRAE(treated Residual Aromatic Extract)、RAE(residual Aromatic Extract)などのパラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。またライフサイクルアセスメントの観点から上記したオイルとして、ゴム混合機やエンジンなどで用いられた潤滑油や調理店で使用された廃食用油を精製したものを用いても良い。
【0054】
キャップトレッド用ゴム組成物がオイルを含む場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0055】
液状ポリマーとしては、常温(25℃)において、液体状態の液状ジエン系ポリマーや液状ファルネセン系ポリマーなどが挙げられる。液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0056】
キャップトレッド用ゴム組成物は、樹脂を含む。
上記樹脂は、常温(25℃)において、固体であっても液体であっても良い。
【0057】
キャップトレッド用ゴム組成物は、上記樹脂として、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂を含む。
【0058】
キャップトレッド用ゴム組成物において、上記変性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは27質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは12質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0059】
前記変性樹脂の骨格を構成する樹脂は特に限定されず、公知の樹脂を使用可能である。
骨格を構成する樹脂としては、炭化水素樹脂が好ましい。炭化水素樹脂としては、炭化水素鎖を含む樹脂を使用することができ、例えば、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、C系樹脂、C-C系樹脂、C系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、アルキルフェノール系樹脂などの熱可塑性樹脂を好適に使用できる。なかでも、芳香族ビニル重合体が好ましい。
【0060】
芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0061】
クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0062】
クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0063】
インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0064】
系樹脂は、C系合成石油樹脂が挙げられ、例えば、石油化学工業のナフサの熱分解によって得られるC留分を、AlCl、BF等のフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる脂肪族系石油樹脂などが例示される。C留分には、通常、1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素;2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエン等のジオレフィン系炭化水素;等が含まれる。なお、C系樹脂は市販品を利用でき、T-REZ RA100(東燃化学社製)、エスコレッツ1000シリーズ(エクソンモービルケミカル社製)、クイントン100シリーズのA100、B170、M100、R100(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0065】
-C系樹脂は、C-C系合成石油樹脂が挙げられ、例えば、石油由来のC留分とC留分とを、AlCl、BF等のフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体が例示される。具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン等を主成分とする共重合体等が挙げられる。なお、C-C系樹脂は市販品を利用でき、T-REZ RD104(東燃化学社製)、ECR213(エクソンモービルケミカル社製)、クイントンG100B(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0066】
系樹脂は、石油化学工業のナフサの熱分解により、エチレン、プロピレン等の石油化学基礎原料と共に副生するC留分である、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデンを主要なモノマーとする炭素数9の芳香族を重合した樹脂などが挙げられる。C留分の具体例としては、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、γ-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、インデン等が挙げられる。C系樹脂は、C留分と共に、C留分であるスチレン等、C10留分であるメチルインデン、1,3-ジメチルスチレン等、更にはナフタレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、p-tert-ブチルスチレン等をも原料として用い、これらのC~C10留分等を混合物のまま、例えばフリーデルクラフツ型触媒により共重合して得ることができる。なお、C系樹脂は市販品を利用でき、C系石油樹脂としては、日石ネオポリマーL-90、日石ネオポリマー120、日石ネオポリマー130、日石ネオポリマー140(JX日鉱日石エネルギー社製)等が挙げられる。
【0067】
テルペン系樹脂は、マツ属の木からロジンを得る際に同時に得られるテレピン油、又は、これから分離した重合成分を配合し、フリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体状の樹脂などが挙げられる。具体的には、β-ピネン樹脂、α-ピネン樹脂等が挙げられる。テルペン系樹脂は市販品を利用でき、YSレジンシリーズ(ヤスハラケミカル社製)、ピコライトシリーズのA115、S115等(ハーキュリーズ社製)等が挙げられる。
【0068】
テルペン-芳香族化合物系樹脂は、代表例としてテルペン-フェノール樹脂などが挙げられる。該テルペン-フェノール樹脂は、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、又は更にホルマリンで縮合する方法で得ることができる。原料のテルペン類としては特に制限はなく、α-ピネンやリモネンなどのモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましい。テルペン-芳香族化合物系樹脂は市販品を利用でき、例えば、YSポリスターUシリーズ、YSポリスターTシリーズ、YSポリスターSシリーズ、YSポリスターGシリーズ、YSポリスターNシリーズ、YSポリスターKシリーズ、YSポリスターTHシリーズ(ヤスハラケミカル社製)、タマノル803L、タマノル901(荒川化学工業社製)等が挙げられる。
【0069】
ロジン系樹脂は、マツ科の植物の樹液である松脂(松ヤニ)等のバルサム類を集めてテレピン精油を蒸留した後に残る残留物で、ロジン酸(アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等)を主成分とする天然樹脂、及び、それらを変性、水素添加等で加工した変性樹脂、水添樹脂などが挙げられる。具体的には、天然樹脂ロジン、その重合ロジン及び部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジン、完全水添ロジン及び重合ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジン及び重合ロジン;等が挙げられる。天然樹脂ロジンとして、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等が例示される。ロジン系樹脂は市販品を利用でき、ポリペール及びペンタリンC(イーストマンケミカル社製)、ライムレジンNo.1、ペンセルA及びペンセルAD(荒川化学工業社製)、ネオトール105(ハリマ化成社製)、SNタック754(サンノプコ社製)、ハイロジンS(大社松精油社製)等が挙げられる。
【0070】
ジシクロペンタジエン樹脂は、AlClやBF等のフリーデルクラフツ型触媒等を用い、ジシクロペンタジエンを重合して得られる樹脂などが挙げられる。ジシクロペンタジエン樹脂は市販品を利用でき、マルカレッツM-890A(丸善石油化学社製)、クイントン1920、クイントン1105(日本ゼオン社製)等が挙げられる。
【0071】
アルキルフェノール系樹脂は、アルキルフェノールとホルムアルデヒドとの触媒下における縮合反応によって得られるものなどが挙げられる。アルキルフェノール系樹脂は市販品を利用でき、タッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250-I(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250-III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、ヒタノール1502P(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、日立化成社製)、R7521P、SP1068、R7510PJ、R7572P及びR7578P(SI GROUP INC.製)等が挙げられる。
【0072】
上記変性樹脂の骨格を構成する樹脂の軟化点は、常温(25℃)において固体状態の樹脂である場合、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、効果がより良好に得られる傾向がある。
また、上記変性樹脂の骨格を構成する樹脂の軟化点は、常温(25℃)において液体状態の樹脂である場合には、25℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましく、0℃以下が更に好ましい。
上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
なお、樹脂の軟化点は通常、樹脂のガラス転移温度より50℃±5℃高い値となる。
【0073】
前記変性樹脂において、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基は、窒素原子、酸素原子、フッ素原子、塩素原子の少なくとも1つを含む基であれば特に限定されない。なかでも、窒素原子、酸素原子の少なくとも1種の原子を含む基が望ましい。
【0074】
前記変性基の具体例としては、SiORで表される基(Rは水素原子又は炭化水素基)、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、前記官能基は、置換基を有していてもよい。また、前記官能基は、1種でも、2種以上でもよい。
【0075】
なかでも、前記変性基は、置換基を有してもよい、SiORで表される基(Rは水素原子又は炭化水素基)、アルコキシシリル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基が好ましい。
【0076】
前記SiORで表される基としては、SiOH、SiOR(Rは炭化水素基)が挙げられる。Rの炭化水素基は、炭素数が1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。該炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。Rの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基などが挙げられる。
【0077】
アルコキシシリル基としては、-Si(OR(R3-kで表される基(R~Rは、水素又は炭化水素基を表し、同一であっても異なっていてもよい。kは、1、2又は3の整数を表す。)R~Rの炭化水素基は、炭素数が1~12が好ましく、1~8がより好ましく、1~4が更に好ましい。非置換又は置換アルコキシシリル基の具体例としては、モノアルコキシシリル基(モノメトキシシリル基、モノエトキシシリル基、モノプロポキシシリル基、モノブトキシシリル基など)、ジアルコキシシリル基(ジメトキシシリル基、ジエトキシシリル基、ジプロポキシシリル基、ジブトキシシリル基など)、トリアルコキシシリル基(トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリプロポキシシリル基、トリブトキシシリル基など)、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基、アミノアルコキシシリル基などが挙げられる。
【0078】
アミノ基としては、1級アミノ基(-NH)、2級アミノ基(-NHR11)、3級アミノ基(-NR1213)が挙げられる。ここで、R11~R13は、任意の有機基であり、結合して環を形成していてもよい。前記のとおり、アミノ基は置換基を有してもよい。R11~R13の炭素数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。非置換又は置換アミノ基の具体例としては、1級アミノ基(-NH)、アミノ基、アルキルアミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基等のモノ-C1-4アルキルアミノ基)、ジアルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等のジ-C1-4アルキルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、イソプロキシカルボニルアミノ基、tert-ブトキシカルボニルアミノ基等のC1-6アルコキシカルボニルアミノ基)等が例示される。
【0079】
前記変性基の導入には、該変性基の導入が可能な任意の化合物を使用でき、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0080】
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(-COOH)、メルカプト基(-SH)又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一又は異なって、水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは結合して窒素原子と共に環構造を形成してもよい。nは整数を表す。)
【0081】
、R及びRとしてはアルコキシ基が好適である(好ましくは炭素数1~8、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基)。R及びRとしてはアルキル基(好ましくは炭素数1~3のアルキル基)が好適である。nは、好ましくは1~5、より好ましくは2~4、更に好ましくは3である。また、R及びRが結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、4~8員環であることが好ましい。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等)も含まれる。
【0082】
前記式で表される化合物の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。なかでも、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
前記変性基の導入が可能な他の化合物として、以下の化合物も挙げられる。
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのエチレン性不飽和シラン化合物;
【0084】
エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;ジグリシジル化ビスフェノールA等の2個以上のフェノール基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;1,4-ジグリシジルベンゼン、1,3,5-トリグリシジルベンゼン、ポリエポキシ化液状ポリブタジエン等のポリエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジル-ジフェニルメチルアミン、4,4’-ジグリシジル-ジベンジルメチルアミン等のエポキシ基含有3級アミン;ジグリシジルアニリン、N,N’-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、ジグリシジルアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等のジグリシジルアミノ化合物;
【0085】
ビス-(1-メチルプロピル)カルバミン酸クロリド、4-モルホリンカルボニルクロリド、1-ピロリジンカルボニルクロリド、N,N-ジメチルカルバミド酸クロリド、N,N-ジエチルカルバミド酸クロリド等のアミノ基含有酸クロリド;1,3-ビス-(グリシジルオキシプロピル)-テトラメチルジシロキサン、(3-グリシジルオキシプロピル)-ペンタメチルジシロキサン等のエポキシ基含有シラン化合物;
【0086】
(トリメチルシリル)[3-(トリメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(トリブトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジメトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジエトキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジプロポキシシリル)プロピル]スルフィド、(トリメチルシリル)[3-(メチルジブトキシシリル)プロピル]スルフィド等のスルフィド基含有シラン化合物;
【0087】
エチレンイミン、プロピレンイミン等のN-置換アジリジン化合物;メチルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;4-N,N-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-N,N-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-ビス-(テトラエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有する(チオ)ベンゾフェノン化合物;4-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-N,N-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のアミノ基及び/又は置換アミノ基を有するベンズアルデヒド化合物;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-メチル-5-メチル-2-ピロリドン等のN-置換ピロリドン;N-メチル-2-ピペリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン等のN-置換ピペリドン;N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム、N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム等のN-置換ラクタム類;
【0088】
N,N-ビス-(2,3-エポキシプロポキシ)-アニリン、4,4-メチレン-ビス-(N,N-グリシジルアニリン)、トリス-(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン類、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルマレイミド、N,N-ジエチル尿素、1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、4-N,N-ジメチルアミノアセトフェン、4-N,N-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン;
【0089】
エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、N-メチルエチレンジアミン、N-メチルプロパンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルプロパンジアミン、N-アセチルエチレンジアミン、イソホロンジアミン;
【0090】
4-N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、3-N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、4-N,N-ジエチルアミノエチルスチレン、3-N,N-ジエチルアミノエチルスチレン、4-N,N-ジ-n-プロピルアミノエチルスチレン、3-N,N-ジ-n-プロピルアミノエチルスチレン、4-N,N-ジ-n-ブチルアミノエチルスチレン、
3-N,N-ジ-n-ブチルアミノエチルスチレン、4-N,N-ジアリルアミノエチルスチレン、3-N,N-ジアリルアミノエチルスチレン、4-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、3-N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、4-N,N-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノエチルスチレン、3-N,N-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)アミノエチルスチレン、4-アジリジニルエチルスチレン、3-アジリジニルエチルスチレン、4-ピロリジニルエチルスチレン、3-ピロリジニルエチルスチレン、4-ピペリジニルエチルスチレン、3-ピペリジニルエチルスチレン、4-ヘキサメチレンイミノエチルスチレン、3-ヘキサメチレンイミノエチルスチレン;
【0091】
前記官能基を持つ変性樹脂は、公知の方法で製造可能である。
具体的には、骨格を構成する樹脂に前記変性基を付与する方法としては、樹脂の重合中に前記変性基を有するモノマーを共重合させて末端及び/又は主鎖中に前記変性基を導入する方法、重合後又は一般市販の樹脂に前記変性基を有する化合物を付加して前記変性基を導入する方法などが挙げられるが、特に限定されない。
【0092】
具体的には、以下の方法が挙げられるが、これらの方法に限定されない。
(1)前記変性基を有する化合物が不飽和結合を有するものであって、前記樹脂にイオン的及び/又はラジカル的に付加させる。
(2)前記変性基を有する化合物に過酸化化合物等のラジカル発生剤を作用させて、前記樹脂に付加させる。
(3)前記樹脂がカルボキシル基、水酸基等の官能基を有するものであって、そこに更に前記変性基を有する化合物を反応させて、目的とする前記変性基を前記樹脂に導入する。
(4)前記樹脂を重合する際に、前記変性基を有するモノマーを共重合させる。
【0093】
可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業等の製品を使用できる。
【0094】
キャップトレッド用ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0095】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0096】
キャップトレッド用ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
【0097】
キャップトレッド用ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
キャップトレッド用ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~4質量部である。
【0098】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0099】
キャップトレッド用ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。
キャップトレッド用ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~3質量部である。
【0100】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0101】
キャップトレッド用ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。
キャップトレッド用ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0102】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0103】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0104】
キャップトレッド用ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な性能を付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
【0105】
キャップトレッド用ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.7質量部以上である。該含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。
【0106】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0107】
キャップトレッド用ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
キャップトレッド用ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは2.7質量部以上である。上限は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。
【0108】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、ベンゾチアゾール系加硫促進剤が好ましい。
【0109】
キャップトレッド用ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0110】
キャップトレッド用ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0111】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0112】
キャップトレッド用ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)と、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量Ic(質量%)との比(St/Ic)は、2.0以下であることが望ましい。
St/Icは、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下である。St/Icの下限は特に限定されないが、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.7以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0113】
St/Icを上記範囲、特に1.0以下に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
イソプレン系ゴムとジエン系をブレンドすることで、非相溶の相の構造制御ができるため、充填剤との補強性を高めることができ、特に耐摩耗性の向上に繋がると考えられる。
【0114】
キャップトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)が、好ましくは10.0質量%以上、より好ましくは11.0質量%以上、更に好ましくは12.0質量%以上、特に好ましくは12.5質量%以上である。総スチレン量の上限は、好ましくは18.1質量%以下、より好ましくは16.2質量%以下、更に好ましくは15.0質量%以下、特に好ましくは13.9質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0115】
総スチレン量Stを上記範囲、特に15.0質量%以下に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
総スチレン量を一定値以下にすることで、ジエン系ゴムの非相溶性の改善およびゴム組成物の発熱性を抑制することができ、特に低燃費性の向上に繋がると考えられる。
【0116】
ここで、ゴム成分100質量%中の総スチレン量は、ゴム成分全量中に含まれるスチレン部の合計含有量(単位:質量%)であり、Σ(各ゴム成分の含有量×各ゴム成分中のスチレン量/100)で算出できる。例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量:40質量%のSBRが85質量%、スチレン量:25質量%のSBRが5質量%、スチレン量:0質量%のBRが10質量%である場合、ゴム成分中の総スチレン量は、35.25質量%(=85×40/100+5×25/100+10×0/100)である。
【0117】
キャップトレッド用ゴム組成物のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量Sc(質量部)と、キャップトレッド用ゴム組成物のアセトン抽出量AE(質量%)との比(Sc/AE)は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上、更に好ましくは1.9以上、特に好ましくは2.5以上である。Sc/AEの上限は特に限定されないが、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは4.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0118】
Sc/AEを上記範囲、特に1.9以上に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
シリカの含有量と、アセトン抽出量との比を一定以下に保つことで、ゴム組成物中のシリカの分散性を向上させシリカの偏在を抑制でき、破壊の起点となる凝集塊が形成されることを防ぐことができるため、特に耐摩耗性の向上に繋がると考えられる。
【0119】
キャップトレッド用ゴム組成物は、アセトン抽出量AE(質量%)が、好ましくは12.0以上、より好ましくは14.0以上、更に好ましくは15.0以上である。AEの上限は特に限定されないが、好ましくは38.5以下、より好ましくは34.5以下、更に好ましくは32.5以下、特に好ましくは28.0以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0120】
アセトン抽出量AEを上記範囲、特に32.5質量%以下に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
アセトン抽出量を一定以下にすることで、可塑剤が染み出すことを抑制でき、かつ、キャップ部の硬度を担保することができるため、特に耐摩耗性の向上に繋がると考えられる。
また、上記以外のメカニズムとしては、樹脂などの成分を一定量以下配合することによってポリマーに溶けやすくなるため、シリカの偏在を固定することが可能となり、耐摩耗性向上に繋がると考えられる。
【0121】
本発明において、アセトン抽出量AEは、加硫後のゴム組成物(サンプル)について、JIS K 6229:2015に準拠したアセトン抽出量の測定方法により測定される(単位:加硫後のゴム組成物(サンプル)中の質量%)。
【0122】
アセトン抽出量AEを調整する方法としては、当業者に公知の方法を採用できる。例えば、AEは、ゴム組成物中の、オイル等の可塑剤量が増加すると、大きくなる傾向がある。
【0123】
本発明の適用が可能なタイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)、オールシーズンタイヤとして好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、オールシーズンタイヤに好適に適用できる。
なお、であることが望ましい。
なお、オールシーズンタイヤとは、春、夏、秋、冬のすべての季節に使用可能なタイヤであり、ドライ路面、ウェット路面、氷上路面、雪上路面のいずれの路面での使用可能なタイヤである。路面の温度は、例えば、-20℃~100℃で使用可能である。
【0124】
タイヤは、通常の方法により製造できる。例えば、公知の方法で、未加硫の状態で、キャップトレッドなどの各部材を作製し、各部材をタイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0125】
前記タイヤは、上記キャップトレッド用ゴム組成物により形成されるキャップトレッドを備え、キャップトレッド用ゴム組成物におけるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量Sc(質量部)と、トレッドの厚みTt(mm)との比(Sc/Tt)が、5.0以上を満たす。
Sc/Ttは、好ましくは6.0以上、より好ましくは7.3以上、更に好ましくは7.8以上である。Sc/Ttの上限は特に限定されないが、好ましくは13.0以下、より好ましくは10.7以下、更に好ましくは10.0以下、特に好ましくは9.4以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0126】
トレッドの厚みTtは、好ましくは5.0mm以上、より好ましくは7.0mm以上、更に好ましくは8.0mm以上であり、また、好ましくは12.0mm、より好ましくは11.0mm以下、更に好ましくは10.0mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0127】
前記タイヤは、キャップトレッド用ゴム組成物のゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)と、トレッドの厚みTt(mm)との積(St×Tt)が、145以下であることが望ましい。
St×Ttは、好ましくは120以下、より好ましくは113以下、更に好ましくは108以下、特に好ましくは102以下である。St×Ttの下限は特に限定されないが、好ましくは75以上、より好ましくは85以上、更に好ましくは89以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0128】
St×Ttを上記範囲、特に120以下に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
ゴム成分100質量%中の総スチレン量を低く、かつトレッドの厚みを薄くすることによって、ジエン系ゴムの相溶性の改善に加え、ポリマー鎖の運動により生じる熱を減少させることができ、かつ、生じた熱が蓄熱することを抑制することができるため、特に低燃費性の向上に繋がると考えられる。
【0129】
前記タイヤは、キャップトレッド用ゴム組成物のゴム成分100質量%中のアセトン抽出量AE(質量%)と、トレッドの厚みTt(mm)との積(AE×Tt)が、300以下であることが望ましい。
AE×Ttは、好ましくは276以下、より好ましくは260以下、更に好ましくは244以下、特に好ましくは224以下である。AE×Ttの下限は特に限定されないが、好ましくは80以上、より好ましくは100以上、更に好ましくは105以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0130】
AE×Ttを上記範囲、特に300以下に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
トレッドの厚みが大きいほど、キャップ部に働く遠心力が大きくなるため、アセトン抽出量と、トレッドの厚みとの積を一定以下にすることで、キャップ部からのアセトン抽出分が流出することを抑制し、特に耐摩耗性の向上に繋がると考えられる。
また、上記以外のメカニズムとしては、樹脂などの成分を一定量加えることにより、シリカの分散性が向上し、耐摩耗性の向上に繋がると考えられる。さらに、トレッド厚みを薄くすることによって、低発熱性の悪化も抑制することができると考えられる。
【0131】
本明細書において、「トレッドの厚み(Tt)」は、タイヤ半径方向断面におけるタイヤ赤道面上のトレッドの厚みを意味する。タイヤ赤道面上のトレッドの厚みは、タイヤ赤道面上におけるトレッド最表面からタイヤ赤道面に沿って計測される値である。そして、Ttは、タイヤの半径方向断面において、トレッド表面からベルト層、カーカス層などの他の繊維材料を含む補強層のタイヤ半径方向のタイヤ最表面側の界面までの直線距離であり、トレッドが赤道面上に溝を有する場合は、該溝のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線とタイヤ赤道面の交点からの直線距離である。
【0132】
前記タイヤにおいて、トレッドに形成された周方向溝の溝深さDは、好ましくは15mm以下、より好ましくは10mm以下、更に好ましくは8mm以下である。Dの下限は、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0133】
前記タイヤは、キャップトレッド用ゴム組成物のゴム成分100質量部に対するシリカの含有量Sc(質量部)と、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)との積(Sc×D)が、好ましくは400以上、より好ましくは450以上、更に好ましくは500以上、特に好ましくは525以上である。Sc×Dの上限は特に限定されないが、好ましくは3000以下、より好ましくは1500以下、更に好ましくは960以下、特に好ましくは700以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0134】
Sc×Dを上記範囲、特に450以上に調整した場合、より効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
シリカの含有量と、トレッドに形成された周方向の溝深さとの積を一定以下にすることにより、多量のシリカがポリマーの運動を抑制し、かつ、路面との接地部のゴムの動きを小さくすることができるため、キャップ部で生じる発熱を低下させることができ、特に低燃費性能を向上させることができると考えられる。
【0135】
本明細書において、周方向溝の溝深さDとは、トレッド最表面の接地面を形成する面を延長した面の法線に沿って計測され、該接地面を形成する面を延長した面から最深の溝底までの距離を意味し、備えられた周方向溝の溝深さのうち、最大の距離を指す。
【0136】
本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法は、正規状態で測定された値である。
本明細書において、「正規状態」とは、タイヤが正規リム(図示省略)にリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。
【0137】
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない場合、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの断面において、左右のビード間の距離を、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致させて、測定される。
【0138】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めているリムであり、例えばJATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける“標準リム”、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0139】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、「正規リム」の場合と同様にJATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250kPA以上)を指す。なお、250kPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0140】
また、本明細書において、「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を指し、前記した「正規リム」や「正規内圧」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は以下の計算により、正規荷重Wを求める。
V={(Dt/2)-(Dt/2-Ht)}×π×Wt
=0.000011×V+175
:正規荷重(kg)
V:タイヤの仮想体積(mm
Dt:タイヤ外径(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
【0141】
タイヤの「断面幅Wt(mm)」は正規状態において、タイヤ側面に模様または文字などがある場合にはそれらを除いたものとしてのサイドウォール外面間の最大幅である。
【0142】
タイヤの「外径Dt(mm)」は正規状態におけるタイヤの外径を指す。
【0143】
タイヤの「断面高さHt(mm)」はタイヤの半径方向断面における、タイヤ半径方向の高さを指し、タイヤのリム径をR(mm)としたとき、タイヤの外径Dtとリム径Rとの差の半分に相当する。言い換えると、断面高さHtは(Dt-R)/2により求めることが可能である。
【0144】
また、本明細書において、タイヤの「扁平率」とは、タイヤの断面幅Wt(mm)に対するタイヤの断面高さHt(mm)の比を百分率で表したものであり、Ht/Wt×100により求めることができる。
【0145】
以下、図を用いて本発明のタイヤの一例を説明するが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0146】
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。タイヤ2は、左右対称である。トレッド4は、キャップ層30(キャップトレッド)及びベース層28(ベーストレッド)を備えている。
【0147】
なお、図1では、キャップ層30及びベース層28からなる2層構造トレッド4の例が示されているが、単層構造トレッド、3層以上の構造を有するトレッドでもよい。
【0148】
タイヤ2において、それぞれのサイドウォール6は、トレッド4の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6の半径方向外側部分は、トレッド4と接合されている。このサイドウォール6の半径方向内側部分は、クリンチ10(クリンチエイペックスと)と接合されている。このサイドウォール6は、カーカス14の損傷を防止できる。また、サイドウォール6とトレッド4の端部との接合において、サイドウォール6のタイヤ半径方向外側端部がトレッド4のタイヤ半径方向外側に覆いかぶさる形で接合されていても良い。
【0149】
図1のタイヤ2は、キャップ層30が前記キャップトレッド用ゴム組成物で構成されている。
【0150】
図1のそれぞれのウィング8は、トレッド4とサイドウォール6との間に位置している。ウィング8は、トレッド4及びサイドウォール6のそれぞれと接合している。
【0151】
それぞれのクリンチ10は、サイドウォール6の半径方向略内側に位置している。クリンチ10は、軸方向において、ビード12及びカーカス14よりも外側に位置している。
【0152】
それぞれのビード12は、クリンチ10の軸方向内側に位置している。ビード12は、コア32と、このコア32から半径方向外向きに延びるエイペックス34とを備えている。コア32はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含むことが望ましい。エイペックス34は、半径方向外向きに先細りである。
【0153】
カーカス14は、カーカスプライ36を備えている。このタイヤ2では、カーカス14は1枚のカーカスプライ36からなるが、2枚以上で構成されてもよい。
【0154】
このタイヤ2では、カーカスプライ36は、両側のビード12の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6に沿っている。カーカスプライ36は、それぞれのコア32の周りにて、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ36には、主部36aと一対の折り返し部36bとが形成されている。すなわち、カーカスプライ36は、主部36aと一対の折り返し部36bとを備えている。
【0155】
図示されていないが、カーカスプライ36は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°が好適である。換言すれば、このカーカス14はラジアル構造を有することが好ましい。
【0156】
図1のベルト層16は、トレッド4の半径方向内側に位置している。ベルト層16は、カーカス14と積層されている。ベルト層16は、カーカス14を補強する。ベルト層16は、内側層38及び外側層40からなる。図1から明らかなように、軸方向において、内側層38の幅は外側層40の幅よりも若干大きいことが望ましい。このタイヤ2では、ベルト層16の軸方向幅はタイヤ2の断面幅の0.6倍以上が好ましく、0.9倍以下が好ましい。
【0157】
図示されていないが、内側層38及び外側層40のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなることが望ましい。言い換えれば、ベルト層16は並列された多数のコードを含んでいる。それぞれのコードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の一般的な絶対値は、10°以上35°以下である。内側層38のコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層40のコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。
【0158】
図1のバンド18は、ベルト層16の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド18はベルト層16の幅と同等の幅を有している。このバンド18が、このベルト層16の幅よりも大きな幅を有していてもよい。
【0159】
図示されていないが、バンド18は、コードとトッピングゴムとからなることが望ましい。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド18は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下であることが好ましい。このコードによりベルト層16が拘束されるので、ベルト層16のリフティングが抑制される。
【0160】
図1のベルト層16及びバンド18は、補強層を構成している。ベルト層16のみから、補強層が構成されてもよい。
【0161】
図2は、図1のトレッド4付近の拡大図である。
図2のタイヤは、タイヤ赤道面上(CL上)に溝26を有するタイヤ2である。この場合、トレッドの厚み(Tt)は、タイヤの半径方向断面において、溝26のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線で形成される面におけるタイヤ赤道面上の厚みで、タイヤ赤道面上においてトレッド表面24の法線に沿って計測される値であり、具体的には、タイヤ赤道面上に溝26の端部間を繋いだ直線からバンド18のタイヤ最表面側の界面までのタイヤの半径方向の直線距離を指す。
【0162】
インナーライナー20は、カーカス14の内側に位置している。インナーライナー20は、カーカス14の内面に接合されている。インナーライナー20の典型的な基材ゴムは、ブチルゴム又はハロゲン化ブチルゴムである。インナーライナー20は、タイヤ2の内圧を保持する。
【0163】
それぞれのチェーファー22は、ビード12の近傍に位置している。この実施形態では、チェーファー22は布とこの布に含浸したゴムとからなることが望ましい。このチェーファー22が、クリンチ10と一体とされてもよい。
【0164】
このタイヤ2では、トレッド4は溝26として主溝42を備えている。図1に示されているように、このトレッド4には、複数本、詳細には、3本の主溝42が刻まれている。これらの主溝42は、軸方向に間隔をあけて配置されている。このトレッド4には、3本の主溝42が刻まれることにより、周方向に延在する4本のリブ44が形成されている。つまり、リブ44とリブ44との間が主溝42である。
【0165】
それぞれの主溝42は、周方向に延在している。主溝42は、周方向に途切れることなく連続している。主溝42は、例えば雨天時において、路面とタイヤ2との間に存在する水の排水を促す。このため、路面が濡れていても、タイヤ2は路面と十分に接触することができる。
【0166】
図2のDは、トレッド4に形成された周方向の主溝42の主溝深さを示している。
【0167】
そして、図1、2のタイヤ2は、キャップ層30におけるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量Sc(質量部)と、トレッドの厚みTt(mm)との比(Sc/Tt)が、5.0以上である。また、トレッドの厚みTt、St×T、AE×Tt、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD、Sc×Dは、前述の範囲が望ましい。
【実施例0168】
以下に示す各種配合材料に基づくキャップトレッド用ゴム組成物から成形されるトレッドと、その他のゴム部材からなるタイヤ(サイズ195/65R15)を検討し、検討結果を表1に示す。なお、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0169】
以下の方法で、SBR1および変性樹脂を製造する。
【0170】
<SBR1の製造>
窒素置換されたオートクレーブ反応器に、ヘキサン600mL、1,3-ブタジエン75g、スチレン25g、テトラヒドロフラン60mLを投入し、40℃で撹拌する。0.1mоl/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液を0.5mLずつ添加しスカベンジ処理をした後、0.1mоl/Lのn-ブチルリチウム/ヘキサン溶液4mLを添加し、撹拌速度を130rpm、ジャケット温度を80℃にして撹拌する。GPCでMwが100万 の重合物の生成を確認した後、重合溶液を4Lのエタノールに注ぎ、沈殿を回収する。得られた沈殿を送風乾燥した後、80℃/10Pa以下で乾燥減量が0.1%になるまで減圧乾燥を行い、SBR1を得る。
【0171】
<変性樹脂1の製造>
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム及びトルエンを添加し、スチレン及びαメチルスチレンを滴下する。その後、反応液を、スラリー法によってアリルトリエトキシシランが付加されたイソプレン/トルエン溶液を滴下し、反応液に水を添加し反応を停止させる。分液によって水層を取り除く工程を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させ、減圧乾燥し、変性スチレンα-メチルスチレン樹脂(変性樹脂1)を得る。
【0172】
<変性樹脂2の製造>
不活性ガス置換したガラス製フラスコに塩化アルミニウム及びトルエンを添加し、スチレびαメチルスチレンを滴下する。その後、反応液を、スラリー法によって3-アミノプロピルトリエトキシシランが付加されたイソプレン/トルエン溶液を滴下し、反応液に水を添加し反応を停止させる。分液によって水層を取り除く工程を繰り返した後、分液によって得られた有機層を送風乾燥しトルエンを揮発させ、減圧乾燥し、変性スチレンα-メチルスチレン樹脂(変性樹脂2)を得る。
【0173】
以下、実施例及び比較例で使用する各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
SBR1:上記方法により製造されるS-SBR(Tg:-50℃、スチレン量:25質量%、ビニル量:25質量%、Mw:100万、非油展)
SBR2:旭化成(株)製のタフデン3830(Tg:-30℃、スチレン量:35質量%、ビニル量:30質量%、Mw:42万、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
SBR3:ZSエラストマー(株)製のN9541(Tg:-23℃(-25℃超)、スチレン量:46質量%、ゴム固形分100質量部に対してオイル分37.5質量部含有)
BR:LANXESS社製のBuna CB24(Nd系触媒を用いて合成されたBR、シス量:96質量%、ビニル量:0.7質量%)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN134(NSA:148m/g)
シリカ1:ソルベイジャパン(株)製のZEOSIL 195GR(NSA:180m/g、平均一次粒子径:18nm)
シリカ2:エボニックデグサ社製のULTRASIL 9100GR(NSA:230m/g、平均一次粒子径:15nm)
シランカップリング剤:エボニックデグサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
樹脂:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(αメチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点:85℃)
変性樹脂1:上記方法により製造される変性α-メチルスチレン樹脂1
変性樹脂2:上記方法により製造される変性α-メチルスチレン樹脂2
オイル:H&R社製のVIVATEC500(アロマ系プロセスオイル)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン)
加工助剤:Performance Additives社製のULTRA-FLOW 440(脂肪酸亜鉛)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0174】
<試験用タイヤの製造>
表1の配合に従い、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を混練し混練物を得る。
前記混練物に、表1の配合に従い、硫黄及び加硫促進剤を投入して70℃で8分間混練し、未加硫ゴム組成物を得る。
前記未加硫ゴム組成物をキャップ層の形状に押出し成形し、タイヤ成形機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の条件下で20分間プレス加硫し、図1、2に示す試験用タイヤ(サイズ195/65R15、仕様:表1)を得る。
【0175】
表1に従って配合を変化させた組成物により得られる試験用タイヤを想定して、下記評価方法に基づいて算出した結果を表1に示す。
なお、基準比較例は、以下とする。
表1:比較例2
【0176】
<アセトン抽出量(AE)>
試験用タイヤのキャップトレッドから300mgのゴム試験片を採取する。該ゴム試験片について、JIS K 6229:2015に準拠したアセトン抽出量の測定方法により、該試験片中に含まれるアセトンにより抽出される物質の量(質量%)を測定する。
アセトン抽出成分量(質量%)=(抽出前のサンプルの質量-抽出後のサンプルの質量)/抽出前のサンプルの質量×100
【0177】
<低燃費性>
転がり抵抗試験機を用い、各試験用タイヤを時速80kmで走行させたときの転がり抵抗を測定し、基準比較例を100として指数表示する。指数が大きいほど、転がり抵抗が小さく、低燃費性が良好である。
【0178】
<氷雪路面上でのグリップ性能>
試験用タイヤを国産FF車に装着し、アイス路面のテストコースで実車走行を行なう。その際における制動距離の逆数について、基準比較例を100として指数表示する。指数が大きいほど制動距離が短く、氷雪上性能が良好である。
(氷雪路面でのグリップ性能指数)=(基準比較例の制動距離)/(各試験用タイヤの制動距離)×100
【0179】
<耐摩耗性>
試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、次の式により指数化する。指数が大きいほど耐摩耗性が良好である。
(耐摩耗性指数)=(各試験用タイヤの1mm溝深さが減るときの走行距離)/(基準比較例のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0180】
<総合性能>
前記低燃費性の評価、前記氷雪路面上でのグリップ性能の評価、耐摩耗性の評価で得られる3つの指数の合計により、低燃費性、耐摩耗性及び氷雪上性能の総合性能を評価する。数値が大きいほど、総合性能が良好である。
【0181】
【表1】
【0182】
本発明(1)は、ゴム成分と、シリカを含む充填剤と、樹脂とを含むゴム組成物により形成されるキャップトレッドを備えたタイヤであって、
前記樹脂が、窒素原子、酸素原子、フッ素原子及び塩素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂を含有し、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、トレッドの厚みTt(mm)との比(Sc/Tt)が、5.0以上であるタイヤである。
【0183】
本発明(2)は、前記ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量Ic(質量%)が15~45質量%であり、
前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)と、前記ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量Ic(質量%)との比(St/Ic)が、1.0以下である本発明(1)に記載のタイヤである。
【0184】
本発明(3)は、前記ゴム成分が、ガラス転移温度(Tg)が-25℃以下のスチレンブタジエンゴムを含む本発明(1)又は(2)に記載のタイヤである。
【0185】
本発明(4)は、前記Sc/Ttが7.8以上である本発明(1)~(3)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0186】
本発明(5)は、前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)が、15.0質量%以下である本発明(1)~(4)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0187】
本発明(6)は、前記ゴム組成物のアセトン抽出量AE(質量%)が、32.5質量%以下である本発明(1)~(5)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0188】
本発明(7)は、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、前記ゴム組成物のアセトン抽出量AE(質量%)との比(Sc/AE)が、1.9以上である本発明(1)~(6)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0189】
本発明(8)は、前記ゴム成分100質量%中の総スチレン量St(質量%)と、トレッドの厚みTt(mm)との積(St×Tt)が、120以下である本発明(1)~(7)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0190】
本発明(9)は、前記ゴム組成物のアセトン抽出量AE(質量%)と、トレッドの厚みTt(mm)との積(AE×Tt)が、300以下である本発明(1)~(8)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0191】
本発明(10)は、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量Sc(質量部)と、前記トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)との積(Sc×D)が、450以上である本発明(1)~(9)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0192】
本発明(11)は、前記シリカが、平均一次粒子径16nm以下のシリカを含有する本発明(1)~(10)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【0193】
本発明(12)は、前記樹脂が、窒素原子及び酸素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む変性基を持つ変性樹脂である本発明(1)~(11)のいずれかとの任意の組合せのタイヤである。
【符号の説明】
【0194】
2 空気入りタイヤ
4 トレッド部
6 サイドウォール
8 ウィング
10 クリンチ(クリンチエイペックス)
12 ビード
14 カーカス
16 ベルト層
18 バンド
20 インナーライナー
22 チェーファー
24 トレッド面
26 溝
28 ベース層(ベーストレッド)
30 キャップ層
32 コア
34 エイペックス
36 カーカスプライ
36a 主部
36b 折り返し部
38 内側層
40 外側層
42 主溝
44 リブ
CL タイヤ2の赤道面
Tt トレッドの厚み
D トレッド部に形成された周方向の主溝の主溝深さ
図1
図2