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  • 特開-仮締切構造体 図1
  • 特開-仮締切構造体 図2
  • 特開-仮締切構造体 図3
  • 特開-仮締切構造体 図4
  • 特開-仮締切構造体 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150351
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】仮締切構造体
(51)【国際特許分類】
   E02D 19/04 20060101AFI20241016BHJP
   E01D 19/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
E02D19/04
E01D19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063729
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】596109273
【氏名又は名称】株式会社高知丸高
(74)【代理人】
【識別番号】100129207
【弁理士】
【氏名又は名称】中越 貴宣
(72)【発明者】
【氏名】高野 広茂
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA03
(57)【要約】
【課題】水中作業を殆ど不要とし、作業効率の向上、工期の短縮化、低コスト化が図られた仮締切構造体を提供する。
【解決手段】橋脚Pの周りに構築される仮締切構造体1であって、止水締切部材が、平板状の矩形パネル10で形成される上段締切部材3と、矩形パネル10の下辺に沿って断面視三角形状の突出部11を備える最下段締切部材2とを含み、複数の最下段締切部材2を、橋脚を囲むように連結して最下段仮締切枠体22を形成し、これを吊下げ手段4によって所定深さまで降下させ、最下段仮締切枠体22の上に、複数の上段締切部材3を連結して新たな仮締切枠体23を組み立て、最下段仮締切枠体22とともに吊下げ手段4によって所定深さまで降下させ、順次、下側に位置する仮締切枠体23の上に、複数の上段締切部材3を連結して新たな仮締切枠体23を組み立て、最下段仮締切枠体22を所定深さまで沈めることによって構築される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚の周りに、複数の止水締切部材を連結して構築される仮締切構造体であって、
前記止水締切部材は、平板状の矩形パネルで形成される上段締切部材と、該矩形パネルの下辺に沿って断面視三角形状の突出部を備える最下段締切部材とを含み、
複数の前記最下段締切部材を、前記橋脚を囲むように連結して最下段仮締切枠体を形成し、
前記最下段仮締切枠体を吊下げ手段によって吊り下げて所定深さまで降下させ、
前記最下段仮締切枠体の上に、複数の前記上段締切部材を連結して新たな仮締切枠体を組み立て、前記最下段仮締切枠体とともに前記吊下げ手段によって所定深さまで降下させ、
順次、下側に位置する前記仮締切枠体の上に、複数の前記上段締切部材を連結して新たな仮締切枠体を組み立て、前記最下段仮締切枠体とともに前記吊下げ手段によって所定深さまで降下させ、
前記最下段仮締切枠体を所定深さまで沈めることによって、前記橋脚を囲むように構築されることを特徴とする仮締切構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚の周りに構築される仮締切構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や海等の水中に設置されている橋脚の補修工事や耐震補強工事を行う場合、以前は橋脚の周囲に鋼矢板や鋼管矢板等で仮締切構造体を構築し、この仮締切構造体と橋脚の間の水、土砂を排出することによって作業空間を形成していた。
【0003】
しかし、鋼矢板や鋼管矢板等で仮締切構造体を構築する工法は、工期が非常に長期になると共に、莫大な工事費も掛かることから、工期の短縮化、工事費の低コスト化が求められていた。
【0004】
そこで、鋼製パネルやライナープレートを使用した仮締切工法が種々、開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された仮締切構造体の施工方法は、橋脚周りに筒状仮締切構造体を構築する施工方法であって、前記橋脚の所要高さの全周囲に環状作業用プラットホームを設け、このプラットホームの外周部は、外縁から中心に向かって所要長さ切り離し可能となって、その外周部が切り離されたプラットホームは前記仮締切構造体の内側に納まってその仮締切構造体が通過し得る大きさとなり、前記プラットホーム上で前記仮締切構造体を構築し、その構築後、前記外周部を切り離し、前記仮締切構造体を前記プラットホームを通過・下降させて前記橋脚の基礎に固定することを特徴としている。
【0005】
この特許文献1に記載された仮締切工法によると、水上のプラットホームにおいて安定した体勢で仮締切構造体に係る分割構造体を順々に製作し、プラットホームを通過・下降させて、橋脚のフーチング又は水中に設置済みの分割構造体上に固定することができる。従って、潜水作業員による水中での作業が少なくなると共に、分割構造体を製作するための機材も水上のプラットホーム上へ運搬すればよく、その荷下ろしも水平方向となり、作業時間も短縮される、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4625532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された仮締切構造体の施工方法によると、従来の鋼矢板や鋼管矢板等で仮締切構造体を構築する工法に比べて、工期短縮、低コスト化が図られるものと思料する。また、分割構造体はプラットホーム上で製作でき、水中での作業も少なくなるため、鋼製パネルやライナープレートを使用した従来の仮締切工法と比較しても、作業効率の向上及び低コスト化が図られるものと思料する。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載された仮締切構造体の施工方法では、プラットホーム上で製作された分割構造体を通過・下降させる度にプラットホームの外周部を切り離す必要がある。従って、連続的に分割構造体の製作・通過・下降を行うことができず、作業が煩雑となる。
【0009】
また、特許文献1の図2b等に示されるように、橋脚に設置されたプラットホームには機材台船や作業台船から機材が運搬される。しかし、沿岸部等の干満によって水位差が生じる現場では、プラットホームと機材台船等とに高低差が発生し、作業ヤードの一面性を確保することができなくなる。
【0010】
更に、プラットホーム上で製作された分割構造体は、プラットホームを通過・下降させた後、水中に設置済みの分割構造体上に固定しなければならず、その都度、水中作業が必要となる。
【0011】
そこで本願発明者は、上記の問題点に鑑み、水中作業を殆ど不要とし、作業効率の向上、工期の短縮化、低コスト化が図られた仮締切構造体を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、橋脚の周りに、複数の止水締切部材を連結して構築される仮締切構造体であって、前記止水締切部材は、平板状の矩形パネルで形成される締切部材と、該矩形パネルの下辺に沿って断面視三角形状の突出部を備える最下段締切部材とを含み、複数の前記最下段締切部材を、前記橋脚を囲むように連結して最下段仮締切枠体を形成し、前記最下段仮締切枠体を吊下げ手段によって吊り下げて所定深さまで降下させ、前記最下段仮締切枠体の上に、複数の前記締切部材を連結して新たな仮締切枠体を組み立て、前記最下段仮締切枠体とともに前記吊下げ手段によって所定深さまで降下させ、順次、下側に位置する前記仮締切枠体の上に、複数の前記締切部材を連結して新たな仮締切枠体を組み立て、前記最下段仮締切枠体とともに前記吊下げ手段によって所定深さまで降下させ、前記最下段仮締切枠体を所定深さまで沈めることによって、前記橋脚を囲むように構築されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の仮締切構造体は、止水締切部材を連結して仮締切枠体を組み立て、組み立てた仮締切枠体を順次吊り下げて所定深さまで沈めることによって容易に構築することができるため、作業効率が格段に向上され、工期の大幅な短縮化、低コスト化も図られる。
【0014】
また、上側の仮締切枠体の組み立ては、水面上で組み立てた下側の仮締切枠体を吊り下げて所定深さまで沈めた状態で行うため、仮締切枠体の連結作業を水中で行う必要がなく、水中作業の大幅な削減、作業者の負担軽減、作業効率の向上を図ることができる。
【0015】
更に、本発明の仮締切構造体において使用する止水締切部材は再利用することができ、低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る仮締切構造体の施工状態を示す概略正面図。
図2】本実施形態に係る最下段締切部材の三面図。
図3】本実施形態に係る上段締切部材の三面図。
図4】本実施形態に係る仮締切構造体の平面図。
図5】本実施形態の仮締切構造体の施工手順を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の仮締切構造体の実施形態について、図面に基づいて詳述する。図1は、本発明の一実施形態に係る仮締切構造体1の施工状態を示す概略正面図、図4は、仮締切構造体1の概略平面図、図5は、本実施形態の仮締切構造体の施工手順を示す概略説明図である。
【0018】
本発明は、橋脚Pの周りに、複数の止水締切部材を連結して構築される仮締切構造体1であって、まず、本実施形態に係る複数の止水締切部材は、上段締切部材3と、最下段締切部材2とを含んで構成される。
【0019】
本実施形態に係る上段締切部材3は、図3に示すように、平板状の矩形パネル10で形成されている。上段締切部材3を形成する矩形パネル10の上面には、上部吊手12及び係合突起13が配設され、複数のボルト孔14が形成されている。また、図3(b)の正面図に示すように、矩形パネル10の裏面側側縁部にも複数のボルト孔15が形成されている。更に、矩形パネル10の裏面側には、上段締切部材3を吊り下げるための側面吊手16が配設されており、矩形パネル10の上面及び裏面側側縁部には、遮水ゴム板17が配設されている。なお、図3には図示されていないが、矩形パネル10の下面には、矩形パネル10の上面に形成されているボルト孔14と同様のボルト孔が複数形成されるとともに、下側に位置する上段締切部材3が備える係合突起13を挿入可能な係合凹部が形成されている。
【0020】
本実施形態に係る最下段締切部材2は、上述した上段締切部材3と同様、主に平板状の矩形パネル10で形成されているが、図2に示すように、矩形パネル10の下辺に沿って断面視三角形状の突出部11を備えることを特徴とする。その他の構成は上述した上段締切部材3と同様であって、最下段締切部材2を形成する矩形パネル10の上面には、上部吊手12及び係合突起13が配設され、複数のボルト孔14が形成されている。また、図2(b)の正面図に示すように、矩形パネル10の裏面側側縁部にも複数のボルト孔15が形成されている。更に、最下段締切部材2に係る矩形パネル10の裏面側には、最下段締切部材2を吊り下げるための側面吊手16が配設されており、矩形パネル10の上面及び裏面側側縁部にも、遮水ゴム板17が配設されている。なお、最下段締切部材2に係る矩形パネル10の下方には突出部11を備え、最下段締切部材2の下側に止水締切部材が連結されることはないため、突出部11にボルト孔や係合凹部は形成されていない。
【0021】
本実施形態の仮締切構造体1は、これら最下段締切部材2と上段締切部材3とを含む止水締切部材を複数連結することによって、橋脚Pの周りに構築されるものである。まず、図5(a)に示すように、吊下げ手段4によって橋脚Pの周りにおける水面上に、止水締切部材に係る最下段締切部材2を吊り下げる。本実施形態では、図4に示すように、橋脚Pの周りを4枚の最下段締切部材2で囲み、最下段締切部材2同士をボルトで連結することによって最下段仮締切枠体22を形成する。
【0022】
次に、図5(b)に示すように、最下段仮締切枠体22を吊下げ手段4によって吊り下げて水中Wの所定深さ、より具体的には、最下段仮締切枠体22を構成する最下段締切部材2の上面が水面上に露出した状態まで降下させ、この最下段仮締切枠体22の上に止水締切部材に係る上段締切部材3を複数連結することによって、最下段仮締切枠体22の上側に仮締切枠体23を組み立てる。最下段仮締切枠体22の上側への仮締切枠体23の組み立ては、最下段仮締切枠体22を構成する最下段締切部材2と上段締切部材3とをボルトで連結するとともに、隣接する上段締切部材3同士をボルトで連結することによって容易に行える。
【0023】
ここで、図5(a)では、最下段仮締切枠体22を構築するための最下段締切部材2を吊り下げる際、吊下げ手段4を最下段締切部材2が備える上部吊手12に取り付けている。しかし、最下段締切部材2を連結して最下段仮締切枠体22を組み立て、最下段仮締切枠体22を所定深さまで降下させる際は、最下段締切部材2の裏面側に配設された側面吊手16に吊下げ手段4を取り付けて吊り下げることが好ましい。吊下げ手段4による吊り下げ位置を上面から裏面側に変更することによって、最下段仮締切枠体22を降下させた後、最下段締切部材2の上面に上段締切部材3を連結する作業にすぐに取り掛かることができる。また、吊り下げ位置の変更を水面よりも高い位置で行うことができ、作業性もよい。
【0024】
そして、最下段仮締切枠体22の上側に仮締切枠体23を組み立てたら、最下段仮締切枠体22及び仮締切枠体23を吊下げ手段4によって所定深さ、具体的には、仮締切枠体23を構成する上段締切部材3の上面が水面上に露出した状態まで降下させ、順次、下側に位置する仮締切枠体23の上に、複数の上段締切部材3を連結して新たな仮締切枠体23を組み立てた後、図5(c)に示すように、吊下げ手段4で更に所定深さまで降下させていく。
【0025】
最終的に、最下段仮締切枠体22及び仮締切枠体23を吊下げ手段4によって所定深さまで降下させ、図5(d)に示すように、最下段仮締切枠体22を所定深さ、本実施形態では掘削部5の下層の水底部6まで沈めることによって、橋脚Pを囲むように最下段仮締切枠体22及び仮締切枠体23が連結された仮締切構造体1が構築されることとなる。 なお、本実施形態の仮締切構造体1が橋脚Pの周りに構築された後は、仮締切構造体1の内側の水や土砂を排出することによって作業空間を形成することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態の仮締切構造体1によると、止水締切部材(最下段締切部材2及び上段締切部材3)を連結して最下段仮締切枠体22及び仮締切枠体23を順次組み立て、組み立てたこれら最下段仮締切枠体22及び仮締切枠体23を吊り下げて所定深さまで沈めることによって容易に仮締切構造体1を構築することができ、作業効率を格段に向上することができ、工期の大幅な短縮化、低コスト化も図られる。
【0027】
また、上側の仮締切枠体23の組み立ては、水面上で組み立てた下側の最下段仮締切枠体22又は仮締切枠体23を吊り下げて所定深さまで沈めた状態で行うため、仮締切枠体23の連結作業を水中で行う必要がなく、水中作業の大幅な削減、作業者の負担軽減、作業効率の向上を図ることができる。
【0028】
更に、本実施形態の仮締切構造体1において使用する止水締切部材(最下段締切部材2及び上段締切部材3)は再利用することができ、低コスト化が図られる。
【0029】
以上、本発明の実施形態に係る仮締切構造体について詳述したが、本発明の技術的思想を実質的に限定するものと解してはならない。本発明はその要旨を逸脱しない範囲で、当業者の創意と工夫により、適宜に改良、変更又は追加をしながら実施できる。
【符号の説明】
【0030】
1:仮締切構造体
2:最下段締切部材(止水締切部材)
3:上段締切部材(止水締切部材)
4:吊下げ手段
10:矩形パネル
11:突出部
12:上部吊手
13:係合突起
14,15:ボルト孔
16:側面吊手
17:遮水ゴム板
22:最下段仮締切枠体
23:仮締切枠体
図1
図2
図3
図4
図5