(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150353
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/44 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B29D30/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063735
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】明▲瀬▼ 智
【テーマコード(参考)】
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F215AH20
4F215VA11
4F215VD16
4F215VL08
4F215VL09
4F501TA11
4F501TC16
4F501TE08
4F501TE09
4F501TE29
4F501TV22
(57)【要約】
【課題】カーカスプライにおけるコードとコードとの間隔の不均一性を低減すること。
【解決手段】ここで開示されるタイヤの製造方法では、帯状のプライ片1を複数用意する工程と、複数のプライ片1のうち2つのプライ片1の端部を重ね合わせる工程と、重ね合わせる工程において重ね合わせられた部分を圧着させる工程と、を包含する。用意する工程では、第1方向に沿って延びた複数のコード11が、第2方向に沿って予め定められた間隔で並べられ、かつ、ゴム12で被覆されるとともに、重ね合わせる工程で重ね合わされる端部において、コード11とコード11との間隔が広げられた状態の、複数のプライ片1が用意される。重ね合わせる工程では、2つのプライ片1のうち一方のプライ片1におけるコード11と、他方のプライ片1におけるコード11とが重ならないように、2つのプライ片1の端部が重ね合わせられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のプライ片を複数用意する工程と、
前記複数のプライ片のうち2つのプライ片の端部を重ね合わせる工程と、
前記重ね合わせる工程において重ね合わせられた部分を圧着させる工程と、
を包含し、
前記用意する工程では、
予め定められた第1方向に沿って延びた複数のコードが、第2方向に沿って予め定められた間隔で並べられ、かつ、ゴムで被覆されるとともに、
前記重ね合わせる工程で重ね合わされる端部において、前記コードと前記コードとの間隔が広げられた状態の、複数のプライ片が用意され、
前記重ね合わせる工程では、
前記2つのプライ片のうち一方のプライ片における前記コードと、他方のプライ片における前記コードとが重ならないように、前記複数のコードが延びた前記第1方向を揃えて前記2つのプライ片の端部が重ね合わせられる、タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記用意する工程において、前記複数のプライ片の端部に含まれる前記コードと前記コードとの間隔が、前記複数のプライ片の中央領域に含まれる前記コードと前記コードとの間隔よりも大きくなるように、複数の前記コードを並べて、並べられた複数の前記コードをゴムでトッピングすることによって、前記複数のプライ片を用意する、請求項1に記載された製造方法。
【請求項3】
前記用意する工程は、プライ片の端部を前記第2方向に沿って引き延ばす工程を含む、請求項1に記載された製造方法。
【請求項4】
前記引き延ばす工程において、複数の爪部を有する第1部材と、複数の爪部を有する第2部材とを備える引き延ばし装置を用い、
前記第1部材と前記第2部材との間にプライ片の端部を挟み込むとともに、前記第1部材の爪部と前記第2部材の爪部とで当該プライ片の端部における前記コードを挟持し、
前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込まれた前記プライ片の端部を、前記第2方向に沿って引き延ばす、請求項3に記載された製造方法。
【請求項5】
前記引き延ばす工程において、前記プライ片の端部における前記コードと前記コードとの間隔を等間隔に引き延ばす、請求項4に記載された製造方法。
【請求項6】
前記引き延ばす工程において、前記プライ片の端部におけるゴムを柔らかくする、請求項3に記載された製造方法。
【請求項7】
前記重ね合わせる工程において、前記一方のプライ片における前記コードと、前記他方のプライ片における前記コードとが交互に配置される、請求項1に記載された製造方法。
【請求項8】
さらに、前記圧着させる工程後に得られた、複数のプライ片の端部どうしが連結された連結物を成型ドラム上に配置し、前記連結物の前記第2方向における一方の端部と他方の端部とを重ね合わせて圧着させることによって円筒状に成型する工程を包含する、請求項1~7の何れか1項に記載された製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-119283号公報には、所定の間隔で配列されたテキスタイルコードと、テキスタイルコードに対して略直角方向に配列された横糸とが織り合わされたテキスタイル部材の両面に、ゴムが被覆されたカーカスプライが巻回された空気入りタイヤが開示されている。かかるタイヤは、巻回されてオーバーラップすることによりジョイントされたカーカスプライの始端部および終端部の少なくとも一方の端部において、配列されたテキスタイルコードの間に位置する前記横糸が切断されていることを特徴としている。同公報によれば、生産性に優れたオーバーラップジョイントを使用しながら、デントレベルを従来よりも改善させると共に、オープンジョイントの発生を低減させ、さらに、外観等の品質が優れた空気入りタイヤを提供することができると記載されている。
【0003】
特開2019-116236号公報には、引き揃えられた複数のカーカスコードがゴム被覆された帯状プライが、カーカスコードがタイヤ周方向に直交する方向に延びるようにトロイダル状に巻回されたカーカスプライを備える空気入りタイヤが開示されている。かかるタイヤにおいて、カーカスプライは、タイヤ周方向の両端部に位置しており、タイヤ周方向に所定長さにわたって互いに厚み方向に重ね合わされて接合されたジョイント部を構成する、一対のカーカスプライ周方向端部と、一対のカーカスプライ周方向端部の間に位置するカーカスプライ本体部とを備えると記載されている。また、一対のカーカスプライ周方向端部の少なくとも一方のカーカスプライの厚み方向の剛性は、カーカスプライ本体部の剛性に比して小さいと記載されている。そして、同公報によれば、加硫成型後の空気入りタイヤにおいてジョイント部に起因した凹みの発生を抑制でき、空気入りタイヤのユニフォミティの低下を抑制できると記載されている。
【0004】
特開2006-21514号公報には、トッピング工程と、裁断工程と、接合部形成工程と、接合工程とを有するタイヤ補強材の製造方法が開示されている。トッピング工程は、相互に平行に引き揃えた経糸と、経糸に実質的に直角方向に配置された緯糸で構成されたすだれ織物であって、緯糸はすだれ織物の両端部の経糸で折り返されるすだれ織物をゴム引きしてプライを形成する工程である。裁断工程は、プライを所定長さに裁断する工程である。接合部形成工程は、プライの両端部の経糸を1~5本引き抜き、接合部を形成する工程である。接合工程は、1のプライの接合部を他のプライの接合部を相互に接合し一体化する工程である。同公報には、かかる構成の製造方法によって、タイヤに成形加硫後に内圧を充填した場合、サイドウォール部分における凹部発生をより低減し、均一性を向上することができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-119283号公報
【特許文献2】特開2019-116236号公報
【特許文献3】特開2006-21514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カーカスプライにおけるコードとコードとの間隔の不均一性を低減したい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示されるタイヤの製造方法は、帯状のプライ片を複数用意する工程と、複数のプライ片のうち2つのプライ片の端部を重ね合わせる工程と、重ね合わせる工程において重ね合わせられた部分を圧着させる工程と、を包含する。ここで、用意する工程では、第1方向に沿って延びた複数のコードが、第2方向に沿って予め定められた間隔で並べられ、かつ、ゴムで被覆されるとともに、重ね合わせる工程で重ね合わされる端部において、コードとコードとの間隔が広げられた状態の、複数のプライ片が用意される。重ね合わせる工程では、2つのプライ片のうち一方のプライ片におけるコードと、他方のプライ片におけるコードとが重ならないように、複数のコードが延びた第1方向を揃えて2つのプライ片の端部が重ね合わせられる。かかる構成の製造方法によると、カーカスプライにおけるコードとコードとの間隔の不均一性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ここで開示されるタイヤの製造方法を、図面に基づいて説明する。なお、ここで開示される技術は、以下の実施形態に限定されない。図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいてここで開示される技術を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面における「L」、「R」、「F」、「Rr」、「U」、および「D」の表記は、それぞれ、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、および「下」を表す。また、本明細書において数値範囲を示す「X~Y」の表記は、特に言及されない限りにおいて「X以上Y以下」を意味する。
【0010】
〈タイヤの製造方法〉
ここで開示されるタイヤの製造方法は、例えば、用意工程と、並べる工程と、重ね合わせ工程と、圧着工程と、成型工程と、を包含する。
図1は、最終連結物10の斜視図である。
図1には、重ね合わせられた3つのプライ片1が示されている。本明細書における説明の便宜上、
図1に示された3つのプライ片1は、左側から第1プライ片1a、第2プライ片1b、および第3プライ片1cと称されることがある。
【0011】
-第1実施形態-
〈用意工程〉
用意工程は、例えば、帯状のプライ片1を複数用意する工程である。ここで、用意する工程では、予め定められた第1方向に沿って延びた複数のコード11が、第2方向に沿って予め定められた間隔で並べられ、かつ、ゴム12で被覆されるとともに、重ね合わせる工程で重ね合わされる端部(端部領域1Ra)において、コード11とコード11との間隔が広げられた状態の、複数のプライ片1が用意される。ここで用意されるコード11は、金属製(例えば、スチール製)のコードであるとよい。
【0012】
図1に示された形態では、この工程において、複数のコード11と、ゴム12とが用意される。ここでは、まず、複数のコード11は、延びる方向(第1方向)が揃えられ、予め定められた間隔を空けつつ、第2方向に沿って並べられる。「第1方向」は、
図1では、前(F)から後(Rr)に向かう方向である。また、「第2方向」は、
図2では、左(L)から右(R)に向かう方向である。この実施形態では、第1方向と第2方向とが略直交している。
図1に示されているように、プライ片1では、プライ片1の長手方向と第2方向とが揃えられる。また、プライ片1の短手方向と第1方向とが揃えられる。なお、本明細書において、「PとQとが略直交する」とは、PとQとが成す角度が90度±10度であることをいう。
【0013】
この工程では、端部において、コード11とコード11との間隔が広げられた状態の、複数のプライ片1が用意されるとよい。このため、
図1に示された形態では、プライ片1の端部(端部領域1Ra)におけるコード11とコード11との間隔Waは、中央領域1Rbにおけるコード11とコード11との間隔Wbよりも大きく設定されている。間隔Waは、例えば、コード11とコード11との間に少なくとも一つのコード11をさらに配置できる程度の大きさに設定されるとよい。ここでは、間隔Waは、間隔Wbの2倍~4倍に設定されうる。端部領域1Raでは、例えば、15本~25本/5cmのコード11が並べられるとよい。中央領域1Rbでは、例えば、30本~50本/5cmのコード11が並べられるとよい。
【0014】
なお、端部領域1Raは、例えば、第2方向におけるプライ片1の端部を構成する領域である。端部領域1Raは、ここでは、隣接する他のプライ片1と重ね合わせられる。
図1に示された形態では、端部領域1Raは、第2プライ片1bにおいて、第1プライ片1aと重ね合わせられた領域と、第3プライ片1cと重ね合わせられた領域と、である。中央領域1Rbは、例えば、プライ片1における、端部領域1Raを除いた領域である。
図1に示された形態では、中央領域1Rbは、第2プライ片1bにおいて、2つの端部領域1Raに挟まれた領域である。
【0015】
次いで、上述のように並べられた複数のコード11は、ゴム12で被覆(トッピング)される。トッピングに用いられる材料と手順とは、この種のプライ片(カーカスプライ)を作製する際に用いられる従来公知の材料と手順とを特に制限なく用いることができ、ここで開示される技術を特徴づけるものではないため、説明を省略する。次いで、トッピングされた複数のコード11を、例えば、必要に応じて所望する形状、サイズ等に裁断することによって、プライ片1が得られる。例えば、コード11が延びた方向および/またはコード11が延びた方向と直交する方向に沿って、トッピングされた複数のコード11を裁断するとよい。このようにして、用意工程では、予め定められた第1方向に沿って延びた複数のコード11が、第2方向に沿って予め定められた間隔で並べられ、かつ、ゴム12で被覆されるとともに、重ね合わせる工程で重ね合わされる端部(端部領域1Ra)において、コード11とコード11との間隔が広げられた状態の、複数のプライ片1が用意される。なお、この工程で用意されるプライ片1の数は、特に限定されず、製造対象となるタイヤのサイズ等によって適宜変更されうる。
【0016】
〈並べる工程〉
並べる工程は、例えば、2つのプライ片1を第2方向に沿って並べる工程である。
図1に示された形態では、第1プライ片1aと、第2プライ片1bとが、第2方向に沿って、図中の左側からこの順で並べられる。ここでは、第1プライ片1aの右側端部と第2プライ片1bの左側端部とが隣り合わせられる。
【0017】
〈重ね合わせ工程〉
重ね合わせ工程は、例えば、複数のプライ片1のうち2つのプライ片1の端部(ここでは、端部領域1Ra)を重ね合わせる工程である。ここで、重ね合わせる工程では、2つのプライ片1のうち一方のプライ片1におけるコード11と、他方のプライ片1におけるコード11とが重ならないように、複数のコード11が延びた第1方向をそろえて2つのプライ片1の端部が重ね合わせられる。
【0018】
図1に示された形態では、第1プライ片1aの右側の端部領域1Raと第2プライ片1bの左側の端部領域1Raとが重ね合わせられる。このとき、第1プライ片1aと第2プライ片1bとの2つのプライ片1のうち、一方のプライ片1(第1プライ片1a)におけるコード11と、他方のプライ片1(第2プライ片)におけるコード11とが重ならないように、2つのプライ片1の端部が重ね合わされるとよい。ここでは、第1プライ片1aの端部領域1Raにおけるコード11と、第2プライ片1bの端部領域1Raにおけるコード11とが、重ならないように、かかる2つのプライ片1の端部領域1Raどうしが重ね合わせられるとよい。
【0019】
〈圧着工程〉
圧着工程は、例えば、重ね合わせ工程で重ね合わせられた部分を圧着させる工程である。
図1に示された形態では、第1プライ片1aの右側の端部領域1Raと第2プライ片1bの左側の端部領域1Raとが圧着される。圧着工程は、例えば、搬送コンベヤ(図示なし)上で行われるとよい。圧着手段としては、特に限定するものではないが、例えば、平坦な押圧面を有する押圧部材、押圧ローラ等が挙げられる。
【0020】
第1プライ片1aと第2プライ片1bとが圧着により連結された後は、例えば、第1プライ片1aと第2プライ片1bとの連結物に、さらに第3プライ片1cが連結される。例えば、かかる連結物の右側の端部領域(ここでは、第2プライ片1bの右側の端部領域1Ra)に第3プライ片1cの左側の端部領域1Raが重ね合わせられ、圧着により連結される。順次、プライ片1が連結されていき、所望の数のプライ片1が連結された最終連結物10を得る。最終連結物10は、ここでは、タイヤの成型に用いられるカーカスプライである。
【0021】
〈成型工程〉
成型工程は、例えば、最終連結物10を成型ドラム上に配置し、円筒状に成型する工程である。この実施形態では、まず、最終連結物10がタイヤの成型ドラム上に沿うように配置される。次いで、最終連結物10の第2方向における一方の端部(ここでは、第1プライ片1aにおける左側の端部領域R1)と、他方の端部とが重ね合わせられ、圧着により連結される。「他方の端部」は、例えば、最終連結物10を構成する複数のプライ片1のうちの、最終連結物10の第2方向における、第1プライ片1aと反対側の端部を構成するプライ片1における端部領域1Raである。このとき、コード11が延びる方向(第1方向)は、円筒状の最終連結物10の径方向に対して略直交する。圧着手段としては、特に限定するものではないが、例えば、平坦な押圧面を有する押圧部材、押圧ローラ等が挙げられる。
【0022】
上述のとおり、ここで開示されるタイヤの製造方法では、帯状のプライ片1を複数用意する工程と、複数のプライ片1のうち2つのプライ片1の端部(ここでは、端部領域1Ra)を重ね合わせる工程と、重ね合わせる工程において重ね合わせられた部分を圧着させる工程と、を包含している。上述のように、用意する工程では、予め定められた第1方向に沿って延びた複数のコード11が、第2方向に沿って予め定められた間隔で並べられ、かつ、ゴム12で被覆されるとともに、重ね合わせる工程で重ね合わされる端部(端部領域1Ra)において、コード11とコード11との間隔が広げられた状態の、複数のプライ片1が用意される。また、重ね合わせる工程では、2つのプライ片1のうち一方のプライ片1におけるコード11と、他方のプライ片1におけるコード11とが重ならないように、2つのプライ片1の端部が重ね合わせられる。
【0023】
上述のような構成の製造方法では、端部(端部領域1Ra)においてコード11とコード11との間隔が広げられた状態の2つのプライ片1が重ね合わせられたときに、端部において、2つのプライ片1のうちの一方のプライ片1におけるコード11と、他方のプライ片1におけるコード11とが重ならない。このため、かかる2つのプライ片1の連結領域(
図1では、端部領域1Ra)におけるコード11とコード11との間隔の不均一性を低減させることができる。
【0024】
上述のとおり、用意工程において、複数のプライ片1の端部(端部領域1Ra)に含まれるコード11とコード11との間隔Waが、複数のプライ片1の中央領域1Rbに含まれるコード11とコード11との間隔Wbよりも大きくなるように複数のコード11を並べて、並べられた複数のコード11をゴム12でトッピングすることによって、複数のプライ片1を用意するとよい。かかる構成によると、プライ片1を用意した後に間隔Waを広げるためのプロセスを実施するのを省略することができる。
【0025】
また、この製造方法は、さらに、成型工程を包含するとよい。成型工程では、圧着させる工程後に得られた複数のプライ片1の端部どうしが連結された連結物(ここでは、最終連結物10)が成型ドラム上に配置される。また、最終連結物10の第2方向における一方の端部と他方の端部とが重ね合わせられて圧着されることによって、最終連結物10が円筒状に成型される。成形工程を実施することによって、コード11とコード11との間隔の不均一性が低減された円筒状成形物を得ることができる。
【0026】
-第2実施形態-
第2実施形態に係る製造方法は、用意工程において、引き延ばし工程を含んでいる。
図2~
図4は、プライ片2の部分断面図である。
図2および
図3には、引き延ばし工程におけるプライ片2の端部領域2Raが示されている。
図4には、重ね合わせ工程における2つのプライ片2の端部領域2Raが示されている。
【0027】
〈引き延ばし工程〉
引き延ばし工程は、例えば、用意工程において実施される。このため、用意工程では、まず、初めに用意されるプライ片2におけるコード21とコード21との間の間隔W1は、端部領域2Raと中央領域(図示なし)とのいずれにおいても同じであることが好ましい。ここでは、引き延ばし工程は、プライ片2の端部を第2方向に沿って引き延ばす工程である。
図2に示された形態では、まず、プライ片2における端部201が一対の第1治具100で挟持される。また、端部領域2Raが一対の第2治具200で挟持されている。そして、
図3に示されているように、端部201が固定された状態で、第2治具200が端部201と反対側に引っ張られる。そうすることで、端部領域2Raにおけるコード21とコード21との間隔が広げられる(
図3参照)。第1治具100に挟持された部分と第2治具200に挟持された部分とは、その他の部分よりも引き延ばされにくい。このため、ここでは、端部201に近いほど、コード21とコード21との間の間隔が大きくなる。
【0028】
なお、第1治具100の把持面と第2治具200の把持面とは、プライ片2を把持しやすくする観点から、粗面となっていることが好ましい。また、プライ片2の引き延ばしをより容易とする観点から、端部領域2Raは加温されながら引き延ばされるとよい。加温の際の温度は、例えば、50℃~100℃(例えば80℃程度)であるとよい。同様の観点から、有機溶剤(例えば、ナフサ)を用いて端部領域2Raのゴム22を柔らかくするとよい。また、引き延ばし工程における、第2治具200で挟持される部分の幅、引き延ばし速度、引き延ばす力の大きさ、引き延ばし量等は、適宜設定されうる。
【0029】
〈重ね合わせ工程〉
この実施形態では、重ね合わせ工程において、2つのプライ片2における引き延ばされた領域(ここでは、端部領域2Ra)どうしを重ね合わせる。例えば、引き延ばし工程における引き延ばしの諸条件を同じにしておくことによって、
図4に示されているように、一方のプライ片2においてゴム22が引き延ばされてコード21が存在しなくなった部分に、他方のプライ片2におけるコード21が存在する部分を重ね合わせることができる。
【0030】
重ね合わせ工程の後は、上記第1実施形態と同様にして、圧着工程と成型工程とが実施されうる。
【0031】
上述のとおり、この実施形態では、用意工程は、プライ片1の端部(端部領域2Ra)を第2方向に沿って外方に引き延ばす工程を含んでいる。引き延ばし工程を含むことによって、端部領域2Raの厚みが小さくなりうる。このため、カーカスプライにおけるコード21とコード21との間の間隔の不均一性を低減する効果に加えて、得られたカーカスプライの厚みの均一性を高める効果を実現することができる。
【0032】
-第3実施形態-
第3実施形態において、用意工程は、引き延ばし工程を包含する。
図5~
図7は、プライ片3の部分断面図である。
図5および
図6には、引き延ばし工程におけるプライ片3の端部領域3Raが示されている。
図7には、重ね合わせ工程における2つのプライ片3の端部領域3Raが示されている。
【0033】
図5に示された形態では、引き延ばし工程において、引き延ばし装置300が用いられる。
図5に示されているように、引き延ばし装置300は、第1部材310と、第2部材320とを備えている。第1部材310は、複数の爪部311と、複数の保持部312とを備えている。爪部311は、例えば、後述する爪部321とともにコード31を挟持する部位である。保持部312は、例えば、爪部311を保持する部位である。保持部312は、ここでは、第2方向に沿って伸縮するように構成されている。第2部材320は、複数の爪部321と、複数の保持部322とを備えている。爪部321は、例えば、爪部311とともにコード31を挟持する部位である。保持部322は、例えば、爪部321を保持する部位である。保持部322は、ここでは、第2方向に沿って伸縮するように構成されている。
【0034】
引き延ばし工程では、まず、
図5に示されているように、第1部材310と第2部材320との間に端部領域3Raが挟み込まれる。このとき、第1部材310の爪部311と、第2部材320の爪部321とで端部領域3Raにおけるコード31が挟持される。このとき、後述する端部領域3Raの引き延ばしにおいてゴム32のみが引き延ばされ、コード31とコード31との間の間隔が大きくなるため、爪部311と爪部321との間に所定の圧力を加え、挟持されたコード31を固定するとよい。次いで、例えば、第1部材310と第2部材320との間に挟み込まれた端部領域3Raが、第2方向に沿って引き延ばされる。例えば、第1部材310の保持部312と、第2部材320の保持部322とは、予め、それぞれの一部が互いに重なり合った状態にされておくとよい。
図6に示されているように、保持部312と保持部322とのうちの互いに重なり合った部分がスライドして同方向に伸びることによって、端部領域3Raが引き延ばされる。例えば、エアシリンダー、ボールねじ等を用いることによって、保持部312と保持部322とが上述のようにスライドできるようにしておくとよい。また、かかるスライドの度合いによって、端部領域3Raにおける引き延ばされる長さ(後述の引き延ばし量)が調整されるとよい。
【0035】
なお、プライ片3の引き延ばしをより容易とする観点から、端部領域3Raを加温しながら引き延ばすことが好ましい。加温の際の温度は、例えば、50℃~100℃(例えば80℃程度)であるとよい。同様の観点から、有機溶剤(例えば、ナフサ)を用いて端部領域3Raのゴム32を柔らかくするとよい。また、引き延ばし工程における、爪部311間の幅、引き延ばし速度、引き延ばし量、第1部材310と第2部材320との間における端部領域3Raに対する押圧力の大きさ等は、適宜設定されうる。
【0036】
引き延ばし工程の後は、
図7に示されているように、重ね合わせ工程において、2つのプライ片3における引き延ばされた領域(ここでは、端部領域3Ra)どうしが重ね合わせられる。重ね合わせ工程の後は、上記第1実施形態と同様にして、圧着工程と成型工程とが実施されるとよい。
【0037】
この実施形態では、引き延ばす工程において、複数の爪部311を有する第1部材310と、複数の爪部321を有する第2部材320とを備える引き延ばし装置300を用いられている。ここでは、第1部材310と第2部材320との間に2つのプライ片1の端部(端部領域3Ra)が挟み込まれるとともに、第1部材310の爪部311と第2部材320の爪部321とで2つのプライ片1の端部におけるコード31が挟持される。そして、第1部材310と第2部材320との間に挟み込まれた2つのプライ片1の端部が、第2方向に沿って引き延ばされる。かかる構成の製造方法では、爪部311と爪部321とでコード31が挟持されつつ、端部領域3Raが引き延ばされている。このため、引き延ばされた後のコード31とコード31との間の間隔が等間隔になりやすくなる。また、カーカスプライにおけるコード31とコード31との間の間隔の不均一性を低減することができる。
【0038】
また、引き延ばす工程において、2つのプライ片1の端部(端部領域3Ra)におけるコード31とコード31との間隔を等間隔に引き延ばすことが好ましい。これによって、カーカスプライにおいて、コード31とコード31との間隔の不均一性をよりよく低減させることができる。
【0039】
また、重ね合わせる工程において、一方のプライ片3におけるコード31と、他方のプライ片3におけるコード31とが交互に配置されるとよい。これによって、カーカスプライにおいて、コード31とコード31との間隔の不均一性をよりよく低減させることができる。
【0040】
また、上述のとおり、ここで開示される製造方法が引き延ばし工程を含む場合、引き延ばし工程において、2つのプライ片2,3の端部(端部領域2Ra,3Ra)におけるゴムを柔らかくすることが好ましい。これによって、より容易に引き延ばし工程を実施することができる。
【0041】
以上、ここで開示されるタイヤの製造方法について説明したが、ここで開示されるタイヤの製造方法は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、上述した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【0042】
本発明(1)は、タイヤの製造方法に関する。ここで、本発明(1)におけるタイヤの製造方法は、
帯状のプライ片を複数用意する工程と、
前記複数のプライ片のうち2つのプライ片の端部を重ね合わせる工程と、
前記重ね合わせる工程において重ね合わせられた部分を圧着させる工程と、
を包含し、
前記用意する工程では、
予め定められた第1方向に沿って延びた複数のコードが、第2方向に沿って予め定められた間隔で並べられ、かつ、ゴムで被覆されるとともに、
前記重ね合わせる工程で重ね合わされる端部において、前記コードと前記コードとの間隔が広げられた状態の、複数のプライ片が用意され、
前記重ね合わせる工程では、
前記2つのプライ片のうち一方のプライ片における前記コードと、他方のプライ片における前記コードとが重ならないように、前記複数のコードが延びた前記第1方向を揃えて前記2つのプライ片の端部が重ね合わせられる、タイヤの製造方法である。
【0043】
本発明(2)は、
前記用意する工程において、前記複数のプライ片の端部に含まれる前記コードと前記コードとの間隔が、前記複数のプライ片の中央領域に含まれる前記コードと前記コードとの間隔よりも大きくなるように複数の前記コードを並べて、並べられた複数の前記コードをゴムでトッピングすることによって、前記複数のプライ片を用意する、本発明(1)に記載された製造方法である。
【0044】
本発明(3)は、
前記用意する工程は、プライ片の端部を前記第2方向に沿って引き延ばす工程を含む、本発明(1)または(2)に記載された製造方法である。
【0045】
本発明(4)は、
前記引き延ばす工程において、複数の爪部を有する第1部材と、複数の爪部を有する第2部材とを備える引き延ばし装置を用い、
前記第1部材と前記第2部材との間にプライ片の端部を挟み込むとともに、前記第1部材の爪部と前記第2部材の爪部とで当該プライ片の端部における前記コードを挟持し、
前記第1部材と前記第2部材との間に挟み込まれた前記プライ片の端部を、前記第2方向に沿って引き延ばす、本発明(3)に記載された製造方法である。
【0046】
本発明(5)は、
前記引き延ばす工程において、前記プライ片の端部における前記コードと前記コードとの間隔を等間隔に引き延ばす、本発明(3)または(4)に記載された製造方法である。
【0047】
本発明(6)は、
前記引き延ばす工程において、前記プライ片の端部におけるゴムを柔らかくする、本発明(3)~(5)の何れか一つに記載された製造方法である。
【0048】
本発明(7)は、
前記重ね合わせる工程において、前記一方のプライ片における前記コードと、前記他方のプライ片における前記コードとが交互に配置される、本発明(1)~(5)の何れか一つに記載された製造方法である。
【0049】
本発明(8)は、
さらに、前記圧着させる工程後に得られた、複数のプライ片の端部どうしが連結された連結物を成型ドラム上に配置し、前記連結物の前記第2方向における一方の端部と他方の端部とを重ね合わせて圧着させることによって円筒状に成型する工程を包含する、本発明(1)~(7)の何れか一つに記載された製造方法である。
【符号の説明】
【0050】
1 プライ片
1Ra 端部領域
1Rb 中央領域
10 最終連結物
11 コード
12 ゴム
2 プライ片
2Ra 端部領域
21 コード
22 ゴム
100 第1治具
200 第2治具
3 プライ片
3Ra 端部領域
31 コード
32 ゴム
300 引き延ばし装置