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特開2024-150354養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150354
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20241016BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063748
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000211237
【氏名又は名称】ランデス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】河内 友一
(72)【発明者】
【氏名】関 健吾
(72)【発明者】
【氏名】取違 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 泰一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤木 昭宏
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA02
2G050BA04
2G050CA10
(57)【要約】
【課題】より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能な養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法を提供すること。
【解決手段】養生コンクリートCの炭酸化深さ評価方法は、所定の材料配合で製造された養生コンクリートCの温度補正係数Ktempと、湿度補正係数Khumと、二酸化炭素濃度補正係数KCO2と、材齢補正係数Kageと、を含む炭酸化速度関係性情報を取得する炭酸化速度関係性情報取得工程S10と、炭酸化深さ評価式を設定する炭酸化深さ評価式設定工程S11と、所定の材料配合で製造された養生コンクリートCの炭酸化養生が行われる養生空間10aを計測する計測工程S12と、炭酸化深さ評価式と、計測工程で計測された養生空間10aの温度、湿度及び二酸化炭素濃度と、養生開始材齢情報と、養生開始からの経過期間情報と、に基づいて炭酸化深さを算出する炭酸化深さ算出工程S13と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の材料配合で製造された第1のコンクリートの炭酸化養生における、温度と炭酸化速度との関係性情報と、湿度と炭酸化速度との関係性情報と、二酸化炭素濃度と炭酸化速度との関係性情報と、材齢と炭酸化速度との関係性情報と、を含む炭酸化速度関係性情報を取得する炭酸化速度関係性情報取得工程と、
前記炭酸化速度関係性情報取得工程で取得された前記炭酸化速度関係性情報に基づいて、前記所定の材料配合における炭酸化深さ評価式を設定する炭酸化深さ評価式設定工程と、
前記所定の材料配合により製造され、前記第1のコンクリートとは異なる第2のコンクリートが配置されて炭酸化養生が行われる養生空間の温度と、湿度と、二酸化炭素濃度と、を計測する計測工程と、
前記炭酸化深さ評価式と、前記計測工程で計測された前記養生空間の温度、湿度及び二酸化炭素濃度と、前記第2のコンクリートの養生開始時の養生開始材齢情報と、養生開始からの経過期間情報と、に基づいて前記第2のコンクリートの炭酸化深さを算出する炭酸化深さ算出工程と、を含む、養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法。
【請求項2】
前記養生空間内の二酸化炭素濃度は、5%以上である、請求項1に記載の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法。
【請求項3】
前記養生空間には、排気ガスが供給される、請求項1又は2に記載の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法。
【請求項4】
前記養生空間には、分離回収ガスが供給される、請求項1又は2に記載の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法。
【請求項5】
養生するコンクリートは、ポルトランドセメントを50kg/m以上含有する水硬化性材料である、請求項1又は2に記載の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法。
【請求項6】
前記炭酸化深さ算出工程では、前記養生空間における温度及び湿度及び二酸化炭素濃度の少なくともいずれかの変化が反映された炭酸化深さを算出する、請求項1又は2に記載の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法。
【請求項7】
前記計測工程は、所定期間毎に行われ、
前記炭酸化深さ算出工程は、
前記所定期間毎に、前記炭酸化深さ評価式と、直前の前記計測工程で計測された前記養生空間の温度、湿度及び二酸化炭素濃度と、前記第2のコンクリートの養生開始時の養生開始材齢情報と、養生開始からの経過期間情報と、に基づき前記第2のコンクリートの炭酸化深さを算出し、
前記所定期間毎の炭酸化深さを累積して炭酸化深さを算出することで、前記養生空間における温度及び湿度及び二酸化炭素濃度の少なくともいずれかの変化が反映された前記第2のコンクリートの炭酸化深さを算出する、請求項6に記載の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの中性化深さを予測する技術が知られている。この種の技術を示すものとして、例えば、特許文献1が挙げられる。特許文献1では、仕上げ塗材の材齢と仕上げ塗材の塗厚とから仕上げ塗材を塗布したコンクリート構造物の中性化抵抗を求め、求められた中性化抵抗を基にコンクリート構造物の中性化深さを予測することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-49192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コンクリートの周辺環境により炭酸化(中性化)速度は変化するが、特許文献1に記載の中性化深さの予測(評価)方法は、コンクリートの周辺環境について考慮しておらず、コンクリートを炭酸化養生する場合の炭酸化深さの評価精度には改善の余地があった。
【0005】
本発明は、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能な養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、所定の材料配合で製造された第1のコンクリートの炭酸化養生における、温度と炭酸化速度との関係性情報と、湿度と炭酸化速度との関係性情報と、二酸化炭素濃度と炭酸化速度との関係性情報と、材齢と炭酸化速度との関係性情報と、を含む炭酸化速度関係性情報を取得する炭酸化速度関係性情報取得工程と、前記炭酸化速度関係性情報取得工程で取得された前記炭酸化速度関係性情報に基づいて、前記所定の材料配合における炭酸化深さ評価式を設定する炭酸化深さ評価式設定工程と、前記所定の材料配合により製造され、前記第1のコンクリートとは異なる第2のコンクリートが配置されて炭酸化養生が行われる養生空間の温度と、湿度と、二酸化炭素濃度と、を計測する計測工程と、前記炭酸化深さ評価式と、前記計測工程で計測された前記養生空間の温度、湿度及び二酸化炭素濃度と、前記第2のコンクリートの養生開始時の養生開始材齢情報と、養生開始からの経過期間情報と、に基づいて前記第2のコンクリートの炭酸化深さを算出する炭酸化深さ算出工程と、を含む。
【0007】
(1)の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能である。
【0008】
(2) 本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法においては、前記養生空間内の二酸化炭素濃度は、5%以上であることが好ましい。
【0009】
(2)の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、効率的に養生コンクリートの炭酸化を行いつつ、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能である。
【0010】
(3) 本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法においては、前記養生空間には、排気ガスが供給されることが好ましい。
【0011】
(3)の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、火力発電所等で排気される排気ガスから温暖化の原因となる二酸化炭素を低減させ、炭酸化養生に使用する二酸化炭素の調達コストを削減しつつ、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能である。
【0012】
(4) 本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、前記養生空間には、分離回収ガスが供給されることが好ましい。
【0013】
(4)の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、養生コンクリートに供給される二酸化炭素をより効率的に使用しつつ、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能である。
【0014】
(5) 本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、養生するコンクリートは、ポルトランドセメントを50kg/m以上含有する水硬化性材料であることが好ましい。
【0015】
(5)の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、養生するコンクリートのコストを抑えつつ、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能である。
【0016】
(6) 本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、前記炭酸化深さ算出工程では、前記養生空間における温度及び湿度及び二酸化炭素濃度の少なくともいずれかの変化が反映された炭酸化深さを算出することが好ましい。
【0017】
(6)の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、養生コンクリートの炭酸化養生を行う養生空間の温度と湿度と二酸化炭素濃度とを考慮して炭酸化深さを評価可能であり、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能である。
【0018】
(7) 本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、前記計測工程は、所定期間毎に行われ、前記炭酸化深さ算出工程は、前記所定期間毎に、前記炭酸化深さ評価式と、直前の前記計測工程で計測された前記養生空間の温度、湿度及び二酸化炭素濃度と、前記第2のコンクリートの養生開始時の養生開始材齢情報と、養生開始からの経過期間情報と、に基づき前記第2のコンクリートの炭酸化深さを算出し、前記所定期間毎の炭酸化深さを累積して炭酸化深さを算出することで、前記養生空間における温度及び湿度及び二酸化炭素濃度の少なくともいずれかの変化が反映された前記第2のコンクリートの炭酸化深さを算出することが好ましい。
【0019】
(7)の養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、養生するコンクリートの炭酸化養生を行う養生空間の温度と湿度と二酸化炭素濃度とが変化した場合でも、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価可能な養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る炭酸化養生装置の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の炭酸化深さ評価方法の一例を示すフローチャートである。
図3】実施例に係る湿度と湿度補正係数との関係を示す図である。
図4】実施例に係る温度と温度補正係数との関係を示す図である。
図5】実施例に係る二酸化炭素濃度と所定の換算を行った炭酸化速度係数との関係を示す図である。
図6】実施例に係る炭酸化開始材齢と所定の換算を行った炭酸化速度係数との関係を示す図である。
図7】従来の評価式による炭酸化速度係数と実測値による炭酸化速度係数とのずれを評価した図である。
図8】本発明に係る評価式による炭酸化速度係数と実測値による炭酸化速度係数とのずれを評価した図である。
図9】別の実施例に係る評価式による炭酸化速度係数と実測値による炭酸化速度係数とのずれを評価した図である。
図10】炭酸化養生中の変化に対応可能な炭酸化深さ評価方法の一例を示すフローチャートである。
図11】変形例に係る炭酸化深さ評価方法による炭酸化深さの精度を評価した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る養生コンクリートCの炭酸化養生装置1について、図1を用いて説明する。養生コンクリートCは、ポルトランドセメントを50kg/m以上を含有する水硬化性材料であることが好ましい。炭酸化養生装置1は、炭酸化養生する養生コンクリートCを炭酸化養生するための構成である。炭酸化養生装置1は、養生槽10と、二酸化炭素供給装置20と、養生槽内測定装置30と、を有する。
【0023】
養生槽10は、その内部に養生空間10aが形成される。養生空間10aは、養生コンクリートCが配置可能である。また、養生空間10aは、二酸化炭素供給装置20から二酸化炭素が供給される供給流路F1と、養生槽内測定装置30へ気体を流通させる測定流路F2と、が連通する。本実施形態に係る養生空間10aは内圧上昇による破損を予防するために完全密閉構造としていない。供給流路F1と、測定流路F2と、は、例えばホース等で構成される。
【0024】
二酸化炭素供給装置20は、後述する供給流路F1を介して、養生コンクリートCに固定化させるための二酸化炭素を養生空間10a内に供給可能な装置である。二酸化炭素供給装置20は、供給流量調整部20aと、不図示の二酸化炭素ボンベと濃度調整用のガスボンベと、を有する。濃度調整用のガスは、例えば窒素ガスである。供給流量調整部20aは、内部に不図示のバルブを有し、バルブの開閉により二酸化炭素ボンベからの流量と濃度調整用のガスボンベからの流量とを調整し、二酸化炭素濃度を調整可能である。
【0025】
なお、本実施形態に係る二酸化炭素供給装置20は、二酸化炭素が貯蔵されたボンベからの二酸化炭素を供給するが、これに限らず、例えば排気ガスに含まれる二酸化炭素を供給してもよい。排気ガスとしては、火力発電所からの燃焼排気ガスを供給してもよいし、天然ガス採掘プラントからの排気ガスを供給してもよい。例えば、二酸化炭素供給装置20は、火力発電所や天然ガス採掘プラント等の排気ガス等から二酸化炭素を分離回収した分離回収ガスを供給してもよい。
【0026】
養生槽内測定装置30は、本発明の一実施形態に係る炭酸化深さの評価方法に用いる養生槽10内の温度と、湿度と、二酸化炭素濃度と、を測定するための装置であり、温度センサ30aと、湿度センサ30bと、二酸化炭素濃度センサ30cと、を有する。二酸化炭素濃度センサ30cは、養生空間10a内の二酸化炭素濃度を測定する。二酸化炭素濃度センサ30cは、例えばNDIR(Non-dispersive Infrared)式センサが用いられてもよい。
【0027】
なお、本実施形態に係る養生槽内測定装置30は、上述の測定流路F2から流通された養生槽10の気体を測定するが、この構成に限定されない。例えば、養生槽内測定装置30は、養生槽10内に温度センサ30aと、湿度センサ30bと、二酸化炭素濃度センサ30cと、を有してもよい。
【0028】
<炭酸化深さ評価方法>
次に、本実施形態の炭酸化深さの評価方法の一例について説明する。なお、以下の説明に用いる評価式等は、本発明の目的を達成させるための一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲で評価式等の変形等を行うことができる。炭酸化深さの評価方法は、以下に示す炭酸化深さ評価式(1)を用いて炭酸化深さを算出する方法である。
【数1】

・・・(1)
なお、炭酸化速度は、炭酸化していく速度を示し、時間の1/2乗に比例する。また、炭酸化速度係数とは、その比例定数を示し、本実施形態に係る炭酸化深さ評価式における炭酸化速度係数は、数式(1)に示されるように温度補正係数Ktempと、湿度補正係数Khumと、二酸化炭素濃度補正係数KCO2と、材齢補正係数Kageと、Kとを乗じたものである。
【0029】
なお、炭酸化速度の測定は、炭酸化深さを実測し、実測値から養生期間の1/2乗を除して行われる。また、炭酸化深さの測定は、JISA1152「コンクリートの中性化深さの測定方法」に準拠して行われる。
【0030】
humは湿度と炭酸化速度との関係性情報としての湿度補正係数であり、炭酸化速度係数は湿度40~50%で最大となる二次曲線で近似されることから(モルタルの中性化速度に及ぼす温度・湿度の影響に関する実験的研究,コンクリート工学論文集,1990.1より)、以下の式(2)により導き出される。同式のHは、平均湿度を示す。kh1、kh2、kh3は、コンクリートの材料配合等により変化する数値であり、後述する実験等により算出される。
【数2】

・・・(2)
【0031】
また、Ktempは温度と炭酸化速度との関係性情報としての温度補正係数であり、炭酸化速度係数は温度上昇により線形に大きくなることから(モルタルの中性化速度に及ぼす温度・湿度の影響に関する実験的研究,コンクリート工学論文集,1990.1より)、以下の式(3)により導き出される。式(3)のTは、平均温度を示す。kt1、kt2は、コンクリートの材料配合等により変化する数値であり、後述する実験等により算出される。
【数3】

・・・(3)
【0032】
また、KCO2は二酸化炭素濃度と炭酸化速度との関係性情報としての二酸化炭素濃度補正係数であり、炭酸化速度係数は二酸化濃度を上げても上昇効果は低く対数式で近似されることから(コンクリートの中性化速度に及ぼす炭酸化濃度の影響,生産研究43巻6号,1990.1、γCaOSiOを添加したセメント系材料の各種炭酸化養生条件における物理・化学特性,土木学会論文集E2,2012より)、以下の式(4)により導き出される。式(4)のCは、平均二酸化炭素濃度を示す。kc1、kc2は、コンクリートの材料配合等により変化する数値であり、後述する実験等により算出される。
【数4】

・・・(4)
【0033】
また、Kageは材齢と炭酸化速度との関係性情報としての材齢補正係数であり、本実施形態では、炭酸化開始材齢が一定以上になると開始材齢が炭酸化速度に与える影響は大きく変化しないと考えられることから、以下の式(5)により示される。式(5)のAは、炭酸化開始材齢を示す。kA1、kA2、KA3は、コンクリートの材料配合等により変化する数値であり、後述する実験等により算出される。
【数5】

・・・(5)
【0034】
本発明の一実施形態に係る炭酸化深さ評価式は、上述のように材料配合の異なるコンクリート(第1のコンクリート)毎に、評価式に用いる補正係数として湿度補正係数Khum、温度補正係数Ktemp、二酸化炭素濃度補正係数KCO2、材齢補正係数Kageを算出することにより設定される。そして、評価対象である第2のコンクリートを養生する養生空間の温度T、湿度H、二酸化炭素濃度C、養生時間t、養生コンクリートの炭酸化開始材齢Aから式(1)示される炭酸化深さdを算出することができる。
【0035】
本実施形態に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、炭酸化速度関係性情報取得工程(ステップS10)と、炭酸化深さ評価式設定工程(ステップS11)と、計測工程(ステップS12)と、炭酸化深さ算出工程(ステップS13)と、を含む。
【0036】
本実施形態では、上述の評価式を設定するための炭酸化速度関係性情報を予め取得する。まず、炭酸化速度関係性情報取得工程(ステップS10)について、説明する。炭酸化速度関係性情報取得工程(ステップS10)では、炭酸化深さを評価するための炭酸化深さの評価式を設定するために、予め評価対象の養生する第2のコンクリートとしての養生コンクリートCと同じ材料配合の第1のコンクリートとしての調査用コンクリートに対して、炭酸化速度関係性情報を取得する。炭酸化速度関係情報は、定数K、湿度補正係数Khum、温度補正係数Ktemp、二酸化炭素濃度補正係数KCO2、材齢補正係数Kageの各種の補正係数の情報であり、後述する実験により算出する。
【0037】
次に、炭酸化深さ評価式設定工程(ステップS11)を行う。炭酸化深さ評価式設定工程(ステップS11)では、炭酸化速度関係性情報取得工程(ステップS10)にて取得された炭酸化速度関係性情報に含まれる定数K、湿度補正係数Khum、温度補正係数Ktemp、二酸化炭素濃度補正係数KCO2、材齢補正係数Kageから評価対象の養生コンクリートCの炭酸化深さ評価式が設定される。
【0038】
次に、計測工程(ステップS12)を行う。計測工程(ステップS12)では、評価対象の養生コンクリートCに対して、上述の炭酸化養生装置1の養生槽内測定装置30による養生空間10a内の計測を行い、炭酸化情報を取得する。炭酸化情報は、養生期間中の平均温度及び平均湿度及び平均二酸化炭素濃度と、炭酸化開始材齢と、炭酸化速度係数と、である。
【0039】
平均温度、平均湿度、平均二酸化炭素濃度については、上述の炭酸化養生装置1を用いて炭酸化養生を行い、養生槽内測定装置30による測定結果を用いて算出する。例えば、平均温度は、所定の期間(例えば、1日)あたりの平均温度として算出される。また、平均湿度は、所定の期間(例えば、1日)あたりの平均湿度として算出される。また、平均二酸化炭素濃度は、所定の期間(例えば、1日)あたりの平均二酸化炭素濃度として算出される。
【0040】
次に、炭酸化深さ算出工程(ステップS13)を行う。炭酸化深さ算出工程(ステップS13)では、ステップS12で取得した、養生空間の温度、湿度、二酸化炭素濃度と、養生開始からの経過時間及び養生開始時の養生コンクリートCの材齢とを、ステップS11で設定した炭酸化評価式に代入して炭酸化深さを算出する。
【実施例0041】
以下、条件を変えて行った実験1~6の実施例に基づいて本発明の内容を更に詳細に説明する。本発明の内容は以下の実施例の記載に限定されない。
【0042】
炭酸化速度関係性情報取得工程(ステップS10)、炭酸化深さ評価式設定工程(ステップS11)についての実施例を説明する。上述のように炭酸化速度係数は二酸化炭素濃度以外にも温度、湿度、材料配合、炭酸化養生の開始材齢等に影響を受けることがわかっている。従って、実施例の試験結果をもとに、養生時の湿度・温度等の影響を考慮できる上記炭酸化深さの評価式を算出し、従来の二酸化炭素濃度を考慮した炭酸化速度係数の評価式と比較し評価した。
【0043】
評価式作成にあたり、試験用コンクリートの配合は、ブロック等の水結合材比が55又は60%の材料配合とした。ここで、水結合材比とは、水と結合材の重量比を示す。結合材は、砂や砂利等の骨材を結合するものであり、例えばC(ポルトランドセメント)、BFS(高炉スラグ微粉末)、γ-CS(γ-2CaO・SiO)、FA(フライアッシュ)等が挙げられる。試験用コンクリートの炭酸化速度評価試験を、条件を変えて複数行い、炭酸化速度関係性情報を取得した。試験における養生期間中の平均温度、平均湿度、平均二酸化炭素濃度、炭酸化開始材齢と炭酸化速度係数は以下の表1のとおりである。
【表1】

上記試験において、養生空間10a内の二酸化炭素濃度は、5%以上とした。
【0044】
次に、試験における養生期間中の平均温度、平均湿度、平均二酸化炭素濃度、炭酸化開始材齢と炭酸化速度係数に基づいて、温度補正係数、湿度補正係数、二酸化炭素濃度補正係数、材齢補正係数を求めた。
【0045】
まずは、湿度補正係数を算出した。上述のように通常のコンクリートの炭酸化速度係数は湿度40~50%で最大となる二次曲線で近似できる。本実施例では、実験1、2の結果に基づき試験用コンクリートの炭酸化速度係数が40%で最大となる二次曲線で近似した。即ち、実験1、2の結果を湿度40%で1.0となるように正規化すると、図3に示すように二次曲線上に近似でき、近似された二次曲線から補正係数は以下の式(6)のように算出された。
【数6】

・・・(6)
【0046】
次に、温度補正係数を算出した。上述のように通常のコンクリートの炭酸化速度係数は温度上昇により線形に大きくなる。実験1、2の結果は、温度の上昇に伴い試験用コンクリートの炭酸化速度係数も増加した。従って、実験1、2の結果を温度50℃で1.0になるように正規化し、図4に示すように線形近似でき、近似された直線から温度補正係数は以下の式(7)のように算出された。
【数7】

・・・(7)
【0047】
次に、二酸化炭素濃度補正係数を算出した。上述のように通常のコンクリートの炭酸化速度係数は対数式で近似できる。従って、図5で示すように二酸化炭素濃度15%を1.0となるように正規化し、近似した対数式から二酸化炭素濃度補正係数を以下の式(8)のように算出された。
【数8】

・・・(8)
【0048】
次に、材齢補正係数を求めるための式を設定した。実験1の結果では、炭酸化開始材齢が大きいと炭酸化速度が低下した。また、実験3の結果では、炭酸化開始材齢が11日や39日と大きい場合があったが、その速度係数は大きく変化しない結果であった。このことから、炭酸化開始材齢が一定以上になると開始材齢が炭酸化速度に与える影響は大きく変化しないと考えられる。従って、実験の結果を図6に示すように炭酸化開始材齢1日で1.0になるように正規化し、正規化したグラフから炭酸化開始材齢補正係数を以下の式(9)のように算出された。
【数9】

・・・(9)
【0049】
次に、上述のように炭酸化速度関係性情報取得工程で取得した炭酸化速度関係性情報から式(1)の評価式を設定する。次に、設定した本発明に係る評価式による炭酸化深さの評価精度について、以下の式(10)に示す従来の評価式による炭酸化深さの評価精度と比較して評価を行う。なお、従来の評価式は、式(10)に示されるように二酸化炭素濃度のみを考慮した式である。
【数10】

・・・(10)
【0050】
評価式の炭酸化深さの評価精度は、図7、8のように表1で示す炭酸化情報を評価式に代入して算出する炭酸化速度係数を縦軸、実測した炭酸化深さから算出した炭酸化速度係数を横軸、となるようにプロットして確認される。図7、8に示されるように、実測による炭酸化深さと評価式による炭酸化深さが等しくなる直線に近いほど評価精度が良く、当該直線から離れるほど評価精度が悪い。なお、図7、8では、比較のために炭酸化深さに対するずれの割合が40%となる直線を挿入している。
【0051】
従来の評価式では、図7に示す実測による炭酸化深さと評価式による炭酸化深さとのずれが40%過大評価直線から大きく超えるという結果となった。一方、本発明に係る評価式では、図8に示す実測による炭酸化深さと評価式による炭酸化深さとのずれが40%過大評価直線の内側に収まり、最大40%程度の誤差で炭酸化深さが評価できていることがわかった。
【0052】
<品質管理係数を導入した炭酸化深さ評価方法>
なお、上述した炭酸化深さ評価式に、以下の式(11)に示されるように品質管理用係数fqcを導入することで所定の品質を確保することができる。
【数11】

・・・(11)
【0053】
本品質管理用係数fqcは、上述の評価式に乗ずることで上述の誤差により現物の炭酸化深さよりも大きく算出される炭酸化深さをより現物に近い数値に修正するものである。これにより、当該誤差によって炭酸化深さが十分でないコンクリート製品が合格となることを抑制できる。以下に、本実施形態に係る品質管理用係数fqcについて、説明する。
【0054】
表1について、上述の評価式におけるずれ量をXとして、以下の式(12)のように算出される。
【数12】

・・・(12)
【0055】
算出したXとXとを挿入した表を以下に示す。
【表2】
【0056】
表2からずれ量Xの平均値μ、分散σは、以下の式(13)、(14)のように算出できる。
【数13】
・・・(13)
【数14】
・・・(14)
【0057】
従って、信頼率95.0%の場合のずれ量Xの最小値は、以下の式(15)のように算出される。
【数15】
・・・(15)
【0058】
この場合の実測値X1と評価値X2との関係は、以下の式(16)のように算出される。
【数16】
・・・(16)
即ち、評価値X2に0.61を乗ずることで実測値X1と同じになる。
【0059】
一方、信頼率99.7%の場合のずれ量Xの最小値は、以下の式(17)のように算出される。
【数17】
・・・(17)
【0060】
この場合の実測値X1と評価値X2との関係は、以下の式(18)のように算出される。
【数18】
・・・(18)
即ち、評価値X2に0.38を乗ずることで実測値X1と同じになる。
【0061】
従って、上記の数値に基づいて、以下の式(19)のように品質管理用係数fqcを設定する。
【数19】

・・・(19)
品質管理用係数fqcを評価式に乗ずることで設定した信頼率に基づいて実測値により近い炭酸化深さを得ることができ、上述した誤差により十分でない炭酸化深さコンクリート製品が合格となることを抑制できる。
【0062】
以上説明した本実施形態に係るコンクリート製造方法によれば、以下の効果が得られる。近年では、カーボンニュートラル目標達成に向けて、コンクリート中への二酸化炭素の固定に注目が集まっている。コンクリート内へ二酸化炭素を強制的に固定させる方法として炭酸化養生方法が確立されている。また、コンクリートを炭酸化養生槽で強制的に炭酸化させる場合、養生層内の環境である温度、湿度、二酸化炭素濃度及びコンクリートの材齢により炭酸化される速さは変化する。
【0063】
炭酸化養生槽で強制的に炭酸化させる場合、温度、湿度、二酸化炭素濃度、コンクリートの材齢の違いによる炭酸化時間と炭酸化深さとの関係の把握が難しく、従来では炭酸化深さの品質管理は、製造後に一部のサンプルを破壊する破壊試験に限定されていた。
【0064】
そこで、予め評価対象のコンクリートの材料配合毎に温度、湿度、二酸化炭素濃度、コンクリートの材齢を様々に変化させた実験を実施し、温度と炭酸化速度の関係、湿度と炭酸化速度の関係、二酸化炭素濃度と炭酸化速度の関係、材齢と炭酸化速度との関係が明らかとして、本発明に係る炭酸化深さの予測式を作成する。作成した予測式により、炭酸化養生した時の温度、湿度、二酸化炭素濃度及びコンクリート材齢と炭酸化養生期間をもとに、サンプルを破壊することなく炭酸化深さを評価できる。
【0065】
即ち、本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、所定の材料配合で製造された試験用コンクリートの炭酸化養生における、温度補正係数Ktempと、湿度補正係数Khumと、二酸化炭素濃度補正係数KCO2と、材齢補正係数Kageと、を含む炭酸化速度関係性情報を取得する炭酸化速度関係性情報取得工程S10と、炭酸化速度関係性情報取得工程S10で取得された炭酸化速度関係性情報に基づいて、所定の材料配合における炭酸化深さ評価式を設定する炭酸化深さ評価式設定工程S11と、所定の材料配合により製造され、試験用コンクリートとは異なる養生コンクリートCが配置されて炭酸化養生が行われる養生空間10aの温度と、湿度と、二酸化炭素濃度と、を計測する計測工程S12と、炭酸化深さ評価式と、計測工程S12で計測された養生空間10aの温度、湿度及び二酸化炭素濃度と、養生コンクリートCの養生開始時の養生開始材齢情報と、養生開始からの経過期間情報と、に基づいて養生コンクリートCの炭酸化深さを算出する炭酸化深さ算出工程S14と、を含む。
【0066】
上述のように本発明に係る評価式により評価された炭酸化深さは、従来の評価式に比べて精度が高い。即ち、本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価できる。
【0067】
更に、上述のように品質管理係数等を導入することで所定の品質を確保することができる。また、本発明に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、温度・湿度等の要求性能、可能生産量の予測といった様々な型式や条件の養生槽の設計にも利用可能である。
【0068】
また、炭酸化養生の途中で温度、湿度、二酸化炭素濃度が変化した場合でも同式を用いて逐次計算を行い、炭酸化深さを評価できる。また、この結果を用いて、養生コンクリートの必要な炭酸化深さを達成するための品質管理を行うことができる。そのため、例えば、製造途中で別の製品を取り出すなどして養生槽を開けた場合にも適用できる。また、本発明に係る評価式により評価された炭酸化深さの利用目的としては、品質管理に限らない。例えば、コンクリートへの二酸化炭素固定量の推測に用いてもよい。
【0069】
<異なる材料配合での適用性>
上述した実施例では、水結合材比が55又は60%の養生コンクリートCに対して評価していた。一般コンクリートでは水結合材比が小さいほど炭酸化速度係数が小さいことが知られ、水結合材比が異なると炭酸化速度係数が異なる。本発明に係る炭酸化深さ評価式は、上述の実施形態と異なる材料配合における炭酸化深さも一定の精度で評価できる。即ち、本実施形態に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、上述の実施形態の材料配合とは異なるコンクリートに対しても適用可能である。
【0070】
以下に、材料配合が異なる場合における炭酸化深さ評価を説明する。なお、既に説明した構成と共通又は同様の構成については同じ名称をつけて詳細な説明を省略する場合がある。材料配合が異なる場合の評価式の適用性を確認するために、下表に示す水結合材比45%の材料配合の試験用コンクリートによる結果で検証する。
【表3】
【0071】
水結合材比45%の材料配合の試験用コンクリートの炭酸化深さの評価結果を図9にまとめた。表3のとおり温度、湿度、二酸化炭素濃度の異なる実験結果であったが、実験2、3の評価式による炭酸化深さと実測による炭酸化深さとのずれ量が40%過大評価直線のほぼ内側に位置しており、従来の評価式よりも精度が良かった。従って、本発明に係る評価式は、コンクリートの材料配合が異なる場合でも適用可能である。
【0072】
[変形例]
なお、炭酸化養生環境は養生途中に変化する場合がある。その場合、湿度・温度等が変化した履歴を考慮して炭酸化深さを評価できることが望ましい。以下に、変形例に係る炭酸化養生環境が変化する場合に対応した炭酸化深さ評価方法について説明する。なお、既に説明した構成と共通又は同様の構成については同じ名称をつけて詳細な説明を省略する場合がある。
【0073】
本変形例に係る炭酸化深さ評価式は、以下の式(20)を用いて養生環境が変化した場合に日毎に計算され、1日の炭酸化深さの増分を累積していくことを繰り返すことで、養生環境の履歴を考慮した炭酸化深さを評価することが可能である。
【数20】

・・・(20)
以下に、式(20)を用いた炭酸化深さの評価方法について、図10を用いて説明する。
【0074】
<炭酸化養生の条件変化に対応可能な炭酸化深さ評価方法>
本変形例に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、まず、炭酸速度関係性情報取得工程を行う(ステップS20)。上述の実施形態と同様に予め試験用コンクリートで行った試験による炭酸化速度関係性情報を取得する。次に、炭酸化深さ評価式設定工程を行う(ステップS21)。次に、計測工程を行う(ステップS22)。
【0075】
次に、養生初日か確認する(ステップS23)。養生初日の場合(ステップS23:YES)、炭酸化深さ算出工程を行う(ステップS27)。炭酸化深さ評価式設定工程で設定した炭酸化深さ評価式に計測工程で計測した養生空間10aの炭酸化情報を代入して炭酸化深さを算出して、ステップS28に移行する。
【0076】
一方、養生初日でない場合(ステップS23:NO)、途中炭酸化速度関係性情報取得工程を行う(ステップS24)。途中炭酸化速度関係性情報取得工程では、計測工程(ステップS22)で計測した養生空間10aの炭酸化情報に基づいて前日までの所定期間の炭酸化速度関係情報を取得する。
【0077】
次に、途中炭酸化深さ評価式設定工程を行う(ステップS25)。途中炭酸化深さ評価式設定工程では、途中炭酸化速度関係性情報取得工程で取得した前日までの所定期間の炭酸化速度関係情報に基づいて、前日までの所定期間における炭酸化深さ評価式を設定する。
【0078】
次に、炭酸化深さ増分算出工程を行う(ステップS26)。炭酸化深さ増分算出工程では、前日までの所定期間における炭酸化深さ評価式に基づいて前日からの炭酸化深さ増分を算出する。次に、炭酸化深さ算出工程を行う(ステップS27)。この場合の炭酸化深さ算出工程では、前日までの炭酸化深さに炭酸化深さ増分算出工程(ステップS26)で算出した炭酸化深さ増分を累積する。
【0079】
次に、養生開始から所定期間である1日が経過したか否かを確認する(ステップS28)。所定期間が経過した場合(ステップS28:YES)、再び計測工程(ステップS22)、途中炭酸化速度関係性情報取得工程(ステップS24)、途中炭酸化深さ評価式設定工程(ステップS25)、炭酸化深さ増分算出工程(ステップS26)を行い、所定期間内の炭酸化深さ増分を算出して、前日までの炭酸化深さに累積していく。
【0080】
一方、所定期間が経過していない場合(ステップS28:No)、炭酸化養生が完了したか判断する(ステップS29)。炭酸化養生が完了していないと判断する場合(ステップS29:NO)、再び所定期間が経過したか確認する(ステップS28)。炭酸化養生が完了したと判断した場合(ステップS29:YES)、本変形例に係る炭酸化深さ評価方法が終了する。
【0081】
次に、上記式(20)により、養生環境が変化した場合でも精度よく炭酸化深さを算出できたかを評価した。即ち、計測工程を所定期間毎に行い、炭酸化深さ算出工程は、所定期間経過毎に、炭酸化深さ評価式と、直前の計測工程で計測された養生空間10aの温度、湿度及び二酸化炭素濃度と、養生コンクリートCの養生開始時の養生開始材齢と、養生開始からの経過情報と、に基づき炭酸化深さを算出し、所定期間毎の炭酸化深さを累積して炭酸化深さを算出し、精度よく炭酸化深さを算出できたか否かを確認した。なお、本変形例では、所定期間は、1日である。しかし、所定期間の設定は、これに限らない。
【0082】
具体的には、炭酸化20日以後急激に湿度が30%程度低下し、温度が10%程度変化したという条件において、実測値による炭酸化深さと、本変形例に係る炭酸化深さ評価方法による炭酸化深さと、全期間で炭酸化速度一定として算出した炭酸化深さと、を図11に示す評価を行った。
【0083】
本変形例に係る炭酸化深さ評価方法により算出した炭酸化深さは、図11に示すように、養生期間中に環境が変化した場合でも、実測値による炭酸化深さと同等の結果となることが示された。
【0084】
更に、本変形例に係る炭酸深さ評価方法により算出した炭酸化深さは、全養生期間で炭酸化速度係数を一定として本発明に係る評価式により算出した炭酸化深さに対しても、実測値による炭酸化深さにより近い結果となった。
【0085】
以上により、本変形例に係る養生コンクリートの炭酸化深さ評価方法は、計測工程S22は、所定期間毎に行われ、炭酸化深さ算出工程S23は、所定期間毎に、炭酸化深さ評価式と、直前の計測工程S22で計測された養生空間10aの温度、湿度及び二酸化炭素濃度と、コンクリートCの養生開始時の養生開始材齢情報と、養生開始からの経過期間情報と、に基づき炭酸化深さを算出し、所定期間毎の炭酸化深さを累積して炭酸化深さを算出することで、養生空間10aにおける温度及び湿度及び二酸化炭素濃度の少なくともいずれかの変化が反映された炭酸化深さを算出する。
【0086】
これにより、養生コンクリートに対する炭酸化養生の条件の変化に関わらず、より正確に養生コンクリートの炭酸化深さを評価できる。
【0087】
[その他の変形例]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
C 第1のコンクリート、第2のコンクリート
S10 炭酸化速度関係性情報取得工程
S11 炭酸化深さ評価式設定工程
S12 計測工程
S13 炭酸化深さ算出工程
10a 養生空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11