IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特開2024-150357絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム
<>
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図1
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図2
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図3
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図4
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図5
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図6
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図7
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図8
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図9
  • 特開-絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150357
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063752
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】横正 達也
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS13
5H730BB43
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730FF09
5H730FG05
5H730FG07
5H730FG12
5H730VV03
(57)【要約】
【課題】基準を満たすように、ノイズを抑制することができる絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラムを提供すること。
【解決手段】上下アームスイッチSp,Snのゲート駆動回路DRに電力を供給するスイッチング電源40は、低電圧バッテリ21に接続される入力巻線61と、コアを介して入力巻線61と磁気結合可能な出力巻線62と、オンされることにより、低電圧バッテリ21から入力巻線61に給電し、オフされることにより、低電圧バッテリ21から入力巻線61への給電を停止させる制御用スイッチ回路50と、制御用スイッチ回路50をオンオフ制御する電源IC41と、を備える。電源IC41は、電源システムが外部充電中であることを示す動作状態切替信号が入力されたとき、スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス(Sp,Sn)の駆動回路(DR)に電力を供給する絶縁型電源装置(40,140)において、
直流電源に接続される1次巻線(61)と、
コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線(62)と、
オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路(50)と、
前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部(41)と、を備え、
前記スイッチ制御部は、動作状態切替信号が入力されたとき、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御する、あるいはそのいずれか一方を実行してオンオフ制御する絶縁型電源装置。
【請求項2】
前記制御用スイッチ回路は、
前記1次巻線に接続され、前記1次巻線への給電及び給電停止を切り替える制御用スイッチ(51)と、
前記制御用スイッチのゲートと前記スイッチ制御部との間の電気経路に設けられた抵抗回路(52)と、を備え、
前記抵抗回路は、その抵抗値を変更可能に構成され、
前記スイッチ制御部は、
前記動作状態切替信号が入力されていない通常時においては、前記抵抗回路における抵抗値を予め決められた通常値に切り替えて、前記制御用スイッチにオンオフの切り替えを制御するためのスイッチング信号を入力する一方、
前記動作状態切替信号が入力されたときには、前記抵抗回路における抵抗値を前記通常値よりも大きい値に切り替えて、前記制御用スイッチに前記スイッチング信号を入力することにより前記スイッチング速度を遅くする請求項1に記載の絶縁型電源装置。
【請求項3】
前記制御用スイッチ回路は、
前記1次巻線に接続され、前記1次巻線への給電及び給電停止を切り替える制御用スイッチ(51)と、
コンデンサと抵抗の直列接続体により構成され、前記制御用スイッチに対して並列に接続されるスナバ回路(55)と、を備え、
前記スナバ回路は、その時定数を変更可能に構成され、
前記スイッチ制御部は、
前記動作状態切替信号が入力されていない通常時においては、前記スナバ回路における時定数を予め決められた通常値に切り替えて、前記制御用スイッチにオンオフの切り替えを制御するためのスイッチング信号を入力する一方、
前記動作状態切替信号が入力されたときには、前記スナバ回路における時定数を通常値よりも大きい値に切り替えて、前記制御用スイッチに前記スイッチング信号を入力することにより前記スイッチング速度を遅くする請求項1に記載の絶縁型電源装置。
【請求項4】
前記絶縁型電源装置は、外部電源(100)により蓄電装置(20)を充電する外部充電を実行可能な電源システム(10)に搭載されるものであり、
前記半導体デバイスは、前記蓄電装置からの電力を変換してモータに供給するインバータ(12)を構成する半導体スイッチング素子であり、
前記駆動回路は、前記インバータの前記半導体スイッチング素子のゲートに操作信号を入力するゲート駆動回路であり、
前記スイッチ制御部には、外部充電中、前記動作状態切替信号が入力される請求項1~3のうちいずれか1項に記載の絶縁型電源装置。
【請求項5】
前記インバータは、モータ(11)と前記蓄電装置との間の電源経路に設けられたものであり、
外部充電中、前記インバータの前記半導体スイッチング素子がオンオフされることにより、前記モータ及び前記インバータによって前記外部電源の電力は変換され、前記蓄電装置に供給される請求項4に記載の絶縁型電源装置。
【請求項6】
外部電源(100)により蓄電装置(20)を充電する外部充電を実行可能な電源システム(10)において、
モータ(11)と前記蓄電装置との間の電源経路に設けられたインバータ(12)と、
前記インバータを構成する半導体スイッチング素子(Sp,Sn)の駆動回路(DR)と、
前記駆動回路に電力を供給する絶縁型電源装置(40,140)と、
前記絶縁型電源装置を制御する電源制御装置(31)と、を備え、
前記絶縁型電源装置は、
直流電源(21)に接続される1次巻線(61)と、
コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線(62)と、
オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路(50)と、
前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部(41)と、を備え、
外部充電中、前記インバータの前記半導体スイッチング素子がオンオフされることにより、前記モータ及び前記インバータによって前記外部電源の電力は変換され、前記蓄電装置に供給され、
前記電源制御装置は、外部充電中、動作状態切替信号を前記スイッチ制御部に入力し、
前記スイッチ制御部は、前記動作状態切替信号が入力されたとき、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御する、あるいはそのいずれか一方を実行してオンオフ制御する電源システム。
【請求項7】
半導体デバイス(Sp,Sn)の駆動回路(DR)に電力を供給する絶縁型電源装置(40,140)に実施させる電源制御プログラムにおいて、
前記絶縁型電源装置は、
直流電源に接続される1次巻線(61)と、
コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線(62)と、
オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路(50)と、
前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部(41)と、を備え、
前記絶縁型電源装置に動作状態切替信号が入力されたとき、前記スイッチ制御部に、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御させる、あるいはそのいずれか一方を実行させてオンオフ制御させる電源制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電源システムの外部に設けられる外部電源により蓄電装置を充電する外部充電が行われる際、蓄電装置とともに負荷駆動装置にも外部電源の電圧が印加される場合がある。この場合、負荷駆動装置に寄生容量が発生し、負荷駆動装置が意図せず作動する可能性がある。このような事態を回避するために、外部充電中に負荷駆動装置への通電を遮断するスイッチング素子をオフ状態に制御する場合がある。
【0003】
この場合、外部充電中に当該スイッチング素子を作動させるための駆動電力を供給する電源が必要となる。この電源がスイッチング電源により構成されている場合、外部充電中に当該スイッチング電源からノイズが発生する。外部充電中、このようなノイズは低減されることが好ましい。
【0004】
そこで、外部充電中にスイッチング電源を間欠的に作動させてノイズを低減させる電源システムが考えられている。このような電源システムは、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-118417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スイッチング電源を間欠的に作動させてノイズを低減させる場合、特定周波数帯域のノイズを低減することができるものの、それ以外の周波数帯域のノイズを低減することはできなかった。このため、特定周波数帯域以外の周波数帯域において予め決められたノイズの基準を満たすことができない場合があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、基準を満たすように、ノイズを抑制することができる絶縁型電源装置、電源システム、及び電源制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1の手段は、半導体デバイスの駆動回路に電力を供給する絶縁型電源装置において、直流電源に接続される1次巻線と、コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線と、オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路と、前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部と、を備え、前記スイッチ制御部は、動作状態切替信号が入力されたとき、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御する、あるいはそのいずれか一方を実行してオンオフ制御する。
【0009】
これにより、外部充電中、動作状態切替信号を入力することにより、ノイズを抑制することができる。若しくは、基準を満たすように、ノイズの周波数をシフトさせることができる。
【0010】
第2の手段は、外部電源により蓄電装置を充電する外部充電を実行可能な電源システムにおいて、モータと前記蓄電装置との間の電源経路に設けられたインバータと、前記インバータを構成する半導体スイッチング素子の駆動回路と、前記駆動回路に電力を供給する絶縁型電源装置と、前記絶縁型電源装置を制御する電源制御装置と、を備え、前記絶縁型電源装置は、直流電源に接続される1次巻線と、コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線と、オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路と、前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部と、を備え、外部充電中、前記インバータの前記半導体スイッチング素子がオンオフされることにより、前記モータ及び前記インバータによって前記外部電源の電力は変換され、前記蓄電装置に供給され、前記電源制御装置は、外部充電中、動作状態切替信号を前記スイッチ制御部に入力し、前記スイッチ制御部は、前記動作状態切替信号が入力されたとき、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御する、あるいはそのいずれか一方を実行してオンオフ制御する。
【0011】
これにより、外部充電中、動作状態切替信号を入力することにより、ノイズを抑制することができる。若しくは、基準を満たすように、ノイズの周波数をシフトさせることができる。
【0012】
第3の手段は、半導体デバイスの駆動回路に電力を供給する絶縁型電源装置に実施させる電源制御プログラムにおいて、前記絶縁型電源装置は、直流電源に接続される1次巻線と、コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線と、オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路と、前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部と、を備え、前記絶縁型電源装置に動作状態切替信号が入力されたとき、前記スイッチ制御部に、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、前記スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御させる、あるいはそのいずれか一方を実行させてオンオフ制御させる。
【0013】
これにより、外部充電中、動作状態切替信号を入力することにより、ノイズを抑制することができる。若しくは、基準を満たすように、ノイズの周波数をシフトさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】電源システムの構成図。
図2】制御装置の構成図。
図3】スイッチング電源の構成図。
図4】給電処理のフローチャート。
図5】ノイズの大きさと周波数の関係を示す図。
図6】第2実施形態のスイッチング電源の構成図。
図7】第2実施形態の給電処理のフローチャート。
図8】第2実施形態におけるノイズの大きさと周波数の関係を示す図。
図9】第3実施形態の給電処理のフローチャート。
図10】第3実施形態におけるノイズの大きさと周波数の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示に係る絶縁電源装置、電源システム及び電源制御プログラムの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態及び変形例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。本実施形態の絶縁電源装置は、例えば、電気自動車やハイブリッド車両を含む移動体の電源システムに搭載されている。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示すように、電源システム10は、回転電機としてのモータ11、電力変換装置としてのインバータ12、蓄電装置としての高電圧バッテリ20、及び制御装置30などを備えている。モータ11は、インバータ12に接続され、移動体の主機等の役割を果たす。また、インバータ12は、3相インバータであり、高電圧バッテリ20に接続されている。制御装置30は、インバータ12を制御することによりモータ11を制御する。以下、詳しく説明する。
【0017】
モータ11は、3相の同期機であり、星形結線されたU,V,W相の電機子巻線11a~11cと、図示しないロータとを備えている。各相の電機子巻線11a~11cは、電気角で120°ずつずれて配置されている。モータ11は、例えば永久磁石同期機である。ロータは、例えば移動体の駆動輪と動力伝達可能になっている。このため、モータ11は、移動体を走行させるトルクの発生源となる。
【0018】
インバータ12は、上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体(レグ)を3相分備えており、これらが並列に接続されている3相フルブリッジインバータである。上アームスイッチSpには、フリーホイールダイオードである上アームダイオードDpが逆並列(逆極性)に接続され、下アームスイッチSnには、フリーホイールダイオードである下アームダイオードDnが逆並列に接続されている。本実施形態において、各スイッチSp,Snは半導体スイッチ素子(半導体デバイス)であり、例えば、IGBTであるが、MOSFETであってもよい。なお、上アームスイッチSpと下アームスイッチSnを以下ではまとめて上下アームスイッチSp,Snと示す場合がある。
【0019】
インバータ12は、平滑コンデンサ13を備えている。平滑コンデンサ13の高電位側端子は、正極側電源経路H1に接続されている。平滑コンデンサ13の低電位側端子は、負極側電源経路L1に接続されている。なお、平滑コンデンサ13は、インバータ12の外部に設けられていてもよい。
【0020】
各相において、上アームスイッチSpの低電位側端子であるエミッタと、下アームスイッチSnの高電位側端子であるコレクタとの接続点には、バスバー等の導電部材14を介して、電機子巻線11a~11cの第1端が接続されている。そして、各相の電機子巻線11a~11cの第2端同士は、中性点で接続されている。
【0021】
各相の上アームスイッチSpのコレクタは、正極側電源経路H1に接続されている。各相の下アームスイッチSnのエミッタは、負極側電源経路L1が接続されている。これにより、インバータ12は、正極側電源経路H1及び負極側電源経路L1を介して高電圧バッテリ20に接続される。
【0022】
正極側電源経路H1及び負極側電源経路L1には、電源経路H1,L1における通電及び通電遮断を切り替えるメインスイッチSMRが設けられている。メインスイッチSMRは、機械式リレースイッチであるが、半導体スイッチでもよい。
【0023】
高電圧バッテリ20は、モータ11のロータを回転駆動させるための電力供給源となる。高電圧バッテリ20は、単電池である電池セルの直列接続体として構成された組電池である。高電圧バッテリ20の正極端子は正極側電源経路H1に接続され、負極端子は、負極側電源経路L1に接続されている。組電池を構成する各電池セルの端子間電圧(例えば定格電圧)は、例えば互いに同じに設定されている。電池セルは、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池である。
【0024】
また、電源システム10は、外部電源としての外部充電器100に接続されるための外部充電機構80を備える。外部充電機構80は、イントレット82と、リレー81とを含む。イントレット82は、高電圧バッテリ20とインバータ12との間の電源経路H1,L1にリレー81を介して接続されている。イントレット82は、メインスイッチSMR及びリレー81がオン状態(閉状態、通電状態)である外部充電中に、外部充電器100からの電力を高電圧バッテリ20に供給するように構成される。なお、図1に示すように、モータ11の中性点と接続し、中性点充電を実施可能にしてもよい。
【0025】
外部充電は、車両が外部充電器100に接続されたときに実施される。外部充電器100は、コネクタ110を備え、コネクタ110が、車両のイントレット82に接続可能に構成されている。外部充電器100は、例えば、直流電源であるが、交流電源であってもよい。この場合、外部充電器100又は電源システム10にAC/DCコンバータなどが必要となる。電源システム10にAC/DCコンバータを設ける場合、モータ11及びインバータ12を構成する回路素子の一部を流用してもよい。すなわち、モータ11を介して充電電力をインバータ12に供給し、インバータ12を動作させて、モータ11及びインバータ12によって電力を変換して、高電圧バッテリ20に充電することができるように構成されていてもよい。
【0026】
図2に示すように、制御装置30は、マイコン31(マイクロコントローラ:Microcontroller Unit)を主体として構成され、直流電源としての低電圧バッテリ21から供給される電力により駆動する。マイコン31は、CPUを備えている。マイコン31が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。
【0027】
例えば、マイコンがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコンは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0028】
マイコン31は、図示しない各種センサ(電圧センサ、電流センサ、回転角度センサなど)の検出値に基づいて、モータ11のトルクを指令トルクTrq*に制御すべく、インバータ12を操作する。詳しくは、制御装置30は、インバータ12を構成する各スイッチSp,Snをオンオフすべく、操作信号を生成し、インターフェース部32を介して、各スイッチSp,Snのゲート駆動回路DR(駆動回路)に対して出力する。
【0029】
低電圧バッテリ21は、出力電圧が高電圧バッテリ20の出力電圧よりも低い蓄電池であり、例えば、鉛蓄電池である。本実施形態において、低電圧バッテリ21が「直流電源」に相当する。
【0030】
インターフェース部32は、モータ11、インバータ12、及び高電圧バッテリ20を備える高圧領域と、制御装置30及び低電圧バッテリ21を備える低圧領域との間を電気的に絶縁しつつ、これらシステム間の信号の伝達を行う機能を有する。インターフェース部32は、例えばフォトカプラである。
【0031】
続いて、図2及び図3を用いて、絶縁型電源装置としてのスイッチング電源40について説明する。スイッチング電源40は、高圧領域と低圧領域との間を絶縁しつつ、各スイッチSp,Snを駆動するゲート駆動回路DRに対して駆動電力を供給する機能を有する。本実施形態では、スイッチング電源40は、フライバック式のスイッチング電源である。
【0032】
図3に示すように、スイッチング電源40は、電源IC41及び制御用スイッチ回路50を備えている。電源IC41及び制御用スイッチ回路50は、低圧領域に設けられている。電源IC41は、スイッチング信号によって、制御用スイッチ回路50をオンオフ制御する。したがって、電源IC41は、スイッチ制御部である。制御用スイッチ回路50は、オンされることにより、低電圧バッテリ21から各トランス60に給電し、オフされることにより、低電圧バッテリ21から各トランス60への給電を停止させる。制御用スイッチ回路50の構成については後述する。
【0033】
次に、トランス60の構成について説明する。スイッチング電源40は、各スイッチSp,Snのゲート駆動回路DRに電力を供給するトランス60を備えている。トランス60は、ゲート駆動回路DRごとに設けられていてもよいし、1部又は全部を共通化してもよい。
【0034】
トランス60は、1次巻線である入力巻線61、2次巻線である出力巻線62及び帰還巻線63を備えている。トランス60は、各巻線61,62,63が巻回された共通のコアを備え、各巻線61,62,63が共通のコアにより磁気結合している。なお、入力巻線61及び帰還巻線63は、低圧領域に設けられている。出力巻線62は、高圧領域に設けられている。
【0035】
トランス60には、複数の端子が設けられている。トランス60の出力端子には、対応する出力巻線62が接続されている。トランス60の第1端子T1は、入力巻線61を介して、トランス60の第2端子T2に接続されている。トランス60の第3端子T3は、帰還巻線63を介して、トランス60の第4端子T4に接続されている。トランス60の第2端子T2に対する第1端子T1の電位が高くなる場合、帰還巻線63には、トランス60の第3端子T3よりも第4端子T4の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。
【0036】
トランス60の出力端子は、出力ダイオード64及び出力コンデンサ65を介して、ゲート駆動回路DRに接続されている。トランス60の第1端子T1は、配線を介して低電圧バッテリ21の正極端子に接続されている。なお、低電圧バッテリ21の負極側はグランドに接続されている。トランス60の第2端子T2は、配線を介して制御用スイッチ回路50に接続されている。
【0037】
トランス60の第3端子T3は、帰還ダイオード71のアノードに接続されている。帰還ダイオード71のカソードは、帰還コンデンサ72を介してグランドに接続されている。また、トランス60の第4端子T4は、配線を介してグランドに接続されている。
【0038】
次に、制御用スイッチ回路50について図3を参照して説明する。制御用スイッチ回路50は、制御用スイッチ51を備えている。制御用スイッチ51は、電圧制御型の半導体スイッチであり、具体的にはNチャネルMOSFETである。この制御用スイッチ51のドレインは、トランス60の第2端子T2に接続されている。また、制御用スイッチ51のソースは、グランドに接続されている。
【0039】
この制御用スイッチ51のゲートは、電気経路L10を介して電源IC41に接続されており、電気経路L10を介して電源IC41からそのゲートに、オンオフの切り替えを制御するためのスイッチング信号が入力可能に構成されている。また、この電気経路L10には、スイッチング信号がハイレベル状態からローレベル状態又はローレベル状態からハイレベル状態に切り替わる際のスイッチング速度を変更するための抵抗回路52が設けられている。
【0040】
この抵抗回路52は、その抵抗値を変更可能に構成されている。詳しく説明すると、抵抗回路52は、第1抵抗素子としての第1抵抗R11と、第1抵抗R11に直列接続された第1スイッチSW11と、第2抵抗素子としての第2抵抗R12と、第1抵抗R11に直列接続された第2スイッチSW12と、を備える。第1抵抗R11と第1スイッチSW11の直列接続体は、電気経路L10に設けられており、第2抵抗R12と第2スイッチSW12の直列接続体は、第1抵抗R11と第1スイッチSW11の直列接続体に対して並列に接続されている。第1抵抗R11の抵抗値と第2抵抗R12の抵抗値は異なっており、具体的には、第2抵抗R12の抵抗値の方が、第1抵抗R11の抵抗値よりも大きくなっている。
【0041】
そして、電源IC41は、第1スイッチSW11と第2スイッチSW12のいずれか一方をオンしてスイッチング信号を出力するようになっている。このため、第2スイッチSW12をオンした場合、第1スイッチSW11をオンした場合よりも、制御用スイッチ51に入力されるスイッチング信号のスイッチング速度を遅くすることが可能となっている。
【0042】
また、制御用スイッチ回路50では、制御用スイッチ51に対して、スナバ回路55が並列に接続されている。スナバ回路55は、その時定数を変更可能に構成されている。詳しく説明すると、スナバ回路55は、第1スナバ回路53と第2スナバ回路54とが並列に接続されて構成されている。第1スナバ回路53及び第2スナバ回路54は、それぞれスイッチの遮断時に生じる過渡的な高電圧を吸収するためのRCスナバ回路である。
【0043】
詳しく説明すると、第1スナバ回路53は、第1スナバ抵抗R21と第1スナバコンデンサC21の直列接続体により構成されている。この第1スナバ回路53の高電位側端子(第1スナバ抵抗R21側の端子)は、制御用スイッチ51の高電位側端子側(ドレイン側)に接続されている。一方、この第1スナバ回路53の低電位側端子(第1スナバコンデンサC21側の端子)は、制御用スイッチ51の低電位側端子側(ソース側、つまり、グランド)に接続されている。
【0044】
第2スナバ回路54は、第2スナバ抵抗R22と第2スナバコンデンサC22の直列接続体により構成されている。この第2スナバ回路54の高電位側端子(第2スナバ抵抗R22側の端子)は、制御用スイッチ51の高電位側端子側(ドレイン側)に接続されている。一方、この第2スナバ回路54の低電位側端子(第2スナバコンデンサC22側の端子)は、スナバ切替スイッチとしての第3スイッチSW13を介して、制御用スイッチ51の低電位側端子側(ソース側、つまり、グランド)に接続されている。
【0045】
すなわち、第2スナバ回路54には、第3スイッチSW13が直列に接続されており、第3スイッチSW13がオンされることにより、制御用スイッチ51に対して電気的に接続され、オフされることにより、切断されることとなる。そして、電源IC41は、この第3スイッチSW13のオンオフを制御可能となっており、第3スイッチSW13をオンした場合、オフの場合よりも、スナバ回路55の時定数を大きくし、スイッチング速度を遅くすることが可能となっている。
【0046】
なお、第3スイッチSW13をオンした場合、スナバ回路55の時定数が大きくなるならば、第1スナバ抵抗R21の抵抗値、第2スナバ抵抗R22の抵抗値、第1スナバコンデンサC21の容量、第2スナバコンデンサC22の容量は任意に設定してもよい。例えば、第2スナバ抵抗R22の抵抗値を、第1スナバ抵抗R21の抵抗値よりも大きくし、第2スナバコンデンサC22の容量を、第1スナバコンデンサC21の容量よりも大きくしてもよい。
【0047】
電源IC41は、集積回路であり、電源IC41が提供する機能は、マイコン31と同様に、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。
【0048】
例えば、電源IC41は、予め決められた電源制御プログラムに従って、制御用スイッチ回路50をオンオフ制御する。具体的には、電源IC41は、低電圧バッテリ21とゲート駆動回路DRの間を電気的に絶縁しつつ、低電圧バッテリ21からゲート駆動回路DRと電力を供給すべく、制御用スイッチ回路50をオンオフ制御する。
【0049】
本実施形態では、電源IC41は、制御用スイッチ回路50における1スイッチング周期をTswとし、オン時間をTonとした場合の時比率Ton/Tswを設定する。そして、設定した時比率に応じたスイッチング信号を制御用スイッチ回路50に出力する。本実施形態において、電源IC41が「スイッチ制御部」に相当する。スイッチング信号が制御用スイッチ回路50に入力されると、制御用スイッチ51は、そのゲートに入力されたスイッチング信号に従ってオンオフが制御される。
【0050】
制御用スイッチ51がオンされる場合に、低電圧バッテリ21から入力巻線61の給電が行われる。この間に、帰還巻線63には、トランス60の第3端子T3よりも第4端子T4の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。この場合、帰還巻線63に電流が流れることが帰還ダイオード71により規制され、トランス60に磁気エネルギが蓄積される。なお、帰還巻線63の場合と同様に、出力巻線62に電流が流れることが出力ダイオード64により規制される。
【0051】
一方、制御用スイッチ51がオフされる場合に、低電圧バッテリ21から入力巻線61への給電が停止される。この間に、帰還巻線63には、トランス60の第4端子T4よりも第3端子T3の電位が高くなるような誘起電圧が発生する。これにより、帰還巻線63に電流が流れる。また、帰還巻線63の場合と同様にして出力巻線62に電流が流れ、ゲート駆動回路DRに駆動電力が供給される。
【0052】
ところで、電源システム10には、外部充電器100が接続されて、外部充電可能に構成されている。そして、外部充電が行われる際、高電圧バッテリ20とともにモータ11にも外部充電器100の充電電圧が印加されると、モータ11に寄生容量が発生し、モータ11が意図せず作動する可能性がある。このような事態を回避するため、外部充電中、モータ11への通電を遮断するように、インバータ12を構成する上下アームスイッチSp,Snをオフ状態に制御する必要がある。また、外部充電中、インバータ12等を用いて外部充電器100から供給された交流電流を直流電流に変換する等、インバータ12を構成する上下アームスイッチSp,Snを相補的にオンオフ制御する可能性もある。
【0053】
これらの場合、スイッチング電源40は、外部充電中に上下アームスイッチSp,Snを作動させるための駆動電力をゲート駆動回路DRに供給する必要がなる。しかしながら、スイッチング電源40は、動作中、スイッチの切り替えに伴い、ノイズが発生する。外部充電中、このようなノイズは低減されることが好ましい。具体的には、周波数帯域ごとにノイズ閾値Thが定められており、ノイズがノイズ閾値Thを超えないようにすることが法律や規則などによって要求されている。特に、移動体の停止中、すなわち外部充電中には、要求が厳しくなり、移動体の移動中に比較してノイズをより抑制する必要があるのが一般的である。そこで、本実施形態のスイッチング電源40は、外部充電中、次のような処理を実行する。以下、詳しく説明する。
【0054】
図1図2に示すように上位ECUや、電池制御ECU等の上位制御装置200は、始動スイッチ(イグニッションスイッチ、パワースイッチなど)がオンされると、制御装置30にその旨を通知する。制御装置30のマイコン31は、始動スイッチがオンされた場合、スイッチング電源40の電源IC41に駆動指示信号を出力する。また、上位制御装置200は、外部充電器100が接続され、外部充電中(若しくは外部充電可能状態)となると、外部充電中であることを制御装置30に通知する。そして、制御装置30のマイコン31は、外部充電中、電源IC41に対して動作状態切替信号を出力する。このため、マイコン31は、電源制御装置としての機能を有する。
【0055】
電源IC41は、駆動指示信号を入力すると、所定周期ごとに図4に示す給電処理を実施する。まず、電源IC41は、動作状態切替信号を入力しているか否か、すなわち、外部充電中であるか否かを判定する(ステップS101)。この判定結果が否定の場合、電源IC41は、第1スイッチSW11をオンし、第2、第3スイッチSW12,SW13をオフする(ステップS102)。また、電源IC41は、制御用スイッチ回路50における1スイッチング周期をTswとし、オン時間をTonとした場合の時比率Ton/Tswを設定する(ステップS103)。
【0056】
そして、電源IC41は、第1スイッチSW11をオンしたまま、ステップS103で設定した時比率に応じたスイッチング信号を制御用スイッチ回路50に出力する(ステップS104)。これにより、スイッチング信号が制御用スイッチ51のゲートに入力され、スイッチング信号に従って制御用スイッチ51がオンオフされる。そして、制御用スイッチ51がオンオフされると、前述したように、ゲート駆動回路DRに駆動電力が供給される。
【0057】
一方、ステップS101の判定結果が肯定の場合、電源IC41は、第1スイッチSW11をオフし、第2、第3スイッチSW12,SW13をオンする(ステップS105)。また、電源IC41は、制御用スイッチ回路50における1スイッチング周期をTswとし、オン時間をTonとした場合の時比率Ton/Tswを設定する(ステップS106)。
【0058】
そして、電源IC41は、第2、第3スイッチSW12,SW13をオンしたまま、ステップS106で設定した時比率に応じたスイッチング信号を制御用スイッチ回路50に出力する(ステップS107)。これにより、ステップS104と同様に、制御用スイッチ51がオンオフされ、ゲート駆動回路DRに駆動電力が供給される。
【0059】
このとき、第2、第3スイッチSW12,SW13をオンして、電源IC41は、スイッチング信号を出力している。これにより、抵抗回路52では、第1抵抗R11よりも抵抗値が大きい第2抵抗R12に切り替えられ、抵抗回路52の抵抗値が通常値(第1抵抗R11の抵抗値)よりも大きくなる。また、制御用スイッチ51に対しては第1スナバ回路53に加えて第2スナバ回路54も接続され、スナバ回路55における時定数が通常値(第1スナバ回路53だけの時定数)よりも大きくなる。したがって、スイッチング速度を遅くすることができる。この結果、制御用スイッチ51が、オンからオフ又はオフからオンに切り替える際のスピードを遅くすることができる。
【0060】
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0061】
図5にスイッチング電源40の動作中にスイッチング電源40から生じるノイズを示す。縦軸にノイズの大きさ[dBμV]を示し、横軸にノイズの周波数[MHz]を示す。また、図5では、周波数帯域ごとに法規などで定められたノイズ閾値Thを、図示している。なお、ノイズ閾値Thは、移動体の停止中、つまり、外部充電中における閾値である。また、図5に示すように、ノイズ閾値Thが設定される周波数の範囲は、上限と下限が定められている。また、周波数帯域ごとにノイズ閾値Thが異なっている。例えば、低周波数帯域のノイズ閾値Th1は、高周波数帯域のノイズ閾値Th2に比較して、大きい。すなわち、低周波数帯域においては、高周波数帯域に比較して大きなノイズであっても許容される。
【0062】
そして、図5では、動作状態切替信号が入力されていない場合(つまり、外部充電中でない場合)におけるノイズを破線で図示し、動作状態切替信号が入力されている場合(つまり、外部充電中である場合)におけるノイズを実線で図示している。
【0063】
図5に示すように、外部充電中でない場合、すなわち、通常時において、スイッチング電源40の動作に基づくノイズは、周波数帯域によってはノイズ閾値Thを超えてしまう場合がある。一方、外部充電中である場合、電源IC41は、制御用スイッチ51のスイッチング速度を遅くして、制御用スイッチ51をオンオフさせている。この結果、図5に示すように、ノイズ閾値Thを超えないように、ノイズの大きさを抑えることができる。
【0064】
ところで、スイッチング電源40を間欠的に作動させても特定の周波数帯域のノイズを低減させることができる。しかしながら、それ以外の周波数帯域のノイズを低減することはできない。すなわち、全体的にノイズの大きさを抑えることができず、周波数帯域によってはノイズ閾値Thを超えてしまう可能性がある。一方、第1実施形態のスイッチング電源40では、スイッチング速度を遅くすることにより全体的にノイズの大きさを抑える。すなわち、全ての周波数帯域において満遍なくノイズの大きさを小さくすることができ、ノイズ閾値Thよりもノイズの大きさを小さくすることを容易にできる。
【0065】
電源IC41は、動作状態切替信号が入力されていない通常時においては、抵抗回路52における抵抗値を予め決められた通常値に切り替えて、制御用スイッチ51にオンオフの切り替えを制御するためのスイッチング信号を入力する。一方、電源IC41は、動作状態切替信号が入力されたときには、抵抗回路52における抵抗値を通常値よりも大きい値に切り替えて、制御用スイッチ51にスイッチング信号を入力することによりスイッチング速度を遅くしている。より具体的には、電源IC41は、通常時には、第1スイッチSW11をオンし、第1抵抗R11を介して制御用スイッチ51にスイッチング信号を入力する。一方、電源IC41は、動作状態切替信号が入力されているときには、第2スイッチSW12をオンし、第2抵抗R12を介してスイッチング信号を入力する。これにより、簡単な回路構成で、スイッチング速度を遅くすることができる。
【0066】
電源IC41は、通常時においては、スナバ回路55における時定数を予め決められた通常値に切り替えて、制御用スイッチ51にオンオフの切り替えを制御するためのスイッチング信号を入力する。一方、電源IC41は、動作状態切替信号が入力されたときには、スナバ回路55における時定数を通常値よりも大きい値に切り替えて、制御用スイッチ51にスイッチング信号を入力する。すなわち、電源IC41は、通常時には、第1スナバ回路53を制御用スイッチ51に対して並列接続した状態で、制御用スイッチ51にスイッチング信号を入力する。そして、電源IC41は、動作状態切替信号が入力されているときには、第1スナバ回路53及び第2スナバ回路54を制御用スイッチ51に対して並列接続した状態で、スイッチング信号を入力する。これにより、簡単な回路構成で、スイッチング速度を遅くすることができる。
【0067】
<第2実施形態>
次に、第1実施形態におけるスイッチング電源40の構成を変更した第2実施形態について説明する。
【0068】
図6に示すように、第2実施形態のスイッチング電源140では、第1実施形態のスイッチング電源40とは異なり、スイッチング速度を遅くするための構成、具体的には、第2抵抗R12及び第2スナバ回路54を有していない。すなわち、図6に示すように、電源IC41は、第1抵抗R11を介して制御用スイッチ51のゲートに接続されているが、第2抵抗R12を有しておらず、切替できない。また、制御用スイッチ51には、第1スナバ回路53だけが並列に接続されており、第2スナバ回路54を追加して並列接続するような構成となっていない。
【0069】
その一方で、電源IC41は、スイッチング周波数を変更可能に構成されている。詳しく説明すると、第2実施形態の電源IC41は、駆動指示信号を入力すると、所定周期ごとに図7に示す給電処理を実施する。まず、電源IC41は、動作状態切替信号を入力しているか否かを判定する(ステップS201)。この判定結果が否定の場合、電源IC41は、スイッチング周波数(動作周波数)を予め決められた第1周波数f1に設定する(ステップS202)。そして、電源IC41は、第1周波数f1からスイッチング周期Tsw1を特定して、時比率Ton1/Tsw1を設定する(ステップS203)。
【0070】
そして、電源IC41は、ステップS203で設定した時比率に応じたスイッチング信号を制御用スイッチ回路50に出力する(ステップS204)。このとき、ステップS202で設定したスイッチング周波数(第1周波数f1)にて、スイッチング信号を動作させる。これにより、スイッチング信号が制御用スイッチ51のゲートに入力され、スイッチング信号に従って制御用スイッチ51がオンオフされる。そして、制御用スイッチ51がオンオフされると、前述したように、ゲート駆動回路DRに駆動電力が供給される。
【0071】
一方、ステップS201の判定結果が肯定の場合、電源IC41は、スイッチング周波数を第1周波数f1とは異なる第2周波数f2に設定する(ステップS205)。第2周波数f2は、第1周波数f1と比較して、低周波数である。そして、電源IC41は、第2周波数f2からスイッチング周期Tsw2を特定して、時比率Ton2/Tsw2を設定する(ステップS206)。そして、電源IC41は、ステップS206で設定した時比率に応じたスイッチング信号を制御用スイッチ回路50に出力する(ステップS207)。このとき、ステップS205で設定したスイッチング周波数(第2周波数f2)にて、スイッチング信号を動作させる。これにより、制御用スイッチ51がオンオフされ、ゲート駆動回路DRに駆動電力が供給される。
【0072】
第2実施形態のスイッチング電源140による作用及び効果について説明する。
【0073】
図5と同様に、図8に第2実施形態のスイッチング電源140の動作に基づくノイズを示す。図8に示すように、ノイズ閾値Thが設定される周波数の範囲は、上限と下限が定められている。また、周波数帯域ごとにノイズ閾値Thが異なっている。例えば、低周波数帯域のノイズ閾値Th1は、高周波数帯域のノイズ閾値Th2に比較して、大きい。すなわち、低周波数帯域においては、高周波数帯域に比較して大きなノイズであっても許容される。
【0074】
そこで、第2実施形態の電源IC41は、外部充電中、スイッチング周波数として通常時の第1周波数f1よりも低周波数である第2周波数f2を設定する。すなわち、電源IC41は、外部充電中、スイッチング周波数(動作周波数)を下げて、ノイズ周波数を全体的に低周波数側(左側)にシフトさせている。これにより、高周波数帯域に存在したノイズを低周波帯域に移動させ、ノイズ閾値Thを下回るようにすることができる。若しくは、ノイズ閾値Thが設定されていない低周波帯域(閾値Thの下限よりも低周波帯域)に移動させて、ノイズ要求を満たすようにしている。
【0075】
なお、第2実施形態では、スイッチング速度を遅くしているわけではないので、スイッチング速度の低下に伴う発熱を抑え、消費電力を抑制することができる。
【0076】
<第3実施形態>
次に、第1実施形態におけるスイッチング電源40の構成を変更した第3実施形態について説明する。
【0077】
第3実施形態のスイッチング電源140の回路構成は、第2実施形態(図6参照)であるため、その説明を省略する。そして、第3実施形態の電源IC41は、第2実施形態と同様に、スイッチング周波数を変更可能に構成されている。
【0078】
詳しく説明すると、第3実施形態の電源IC41は、駆動指示信号を入力すると、所定周期ごとに図9に示す給電処理を実施する。図9に示す給電処理において、ステップS301~ステップS304の処理は、ステップS201~ステップS204と同様であるため、省略する。
【0079】
一方、ステップS301の判定結果が肯定の場合、電源IC41は、スイッチング周波数を第1周波数f1とは異なる第3周波数f3に設定する(ステップS305)。第3周波数f3は、第1周波数f1と比較して、高周波数である。そして、電源IC41は、第3周波数f3からスイッチング周期Tsw3を特定して、時比率Ton3/Tsw3を設定する(ステップS306)。そして、電源IC41は、ステップS306で設定した時比率に応じたスイッチング信号を制御用スイッチ回路50に出力する(ステップS307)。このとき、ステップS305で設定したスイッチング周波数(第3周波数f3)にて、スイッチング信号を動作させる。これにより、制御用スイッチ51がオンオフされ、ゲート駆動回路DRに駆動電力が供給される。
【0080】
第3実施形態のスイッチング電源140による作用及び効果について説明する。
【0081】
図5図8と同様に、図10に第2実施形態のスイッチング電源40の動作に基づくノイズを示す。第3実施形態の電源IC41は、外部充電中、スイッチング周波数として通常時の第1周波数f1よりも高周波数である第3周波数f3を設定する。すなわち、第3実施形態の電源IC41は、外部充電中、スイッチング周波数(動作周波数)を上げて、ノイズ周波数を全体的に高周波数側(右側)にシフトさせている。その際、通常時においてノイズ閾値Thを超えていたノイズNs1を、ノイズ閾値Thが設定されている周波数範囲の上限から外れるようにシフトさせている。これにより、ノイズ要求を満たすようにしている。
【0082】
なお、第3実施形態では、スイッチング速度を遅くしているわけではないので、スイッチング速度の低下に伴う発熱を抑え、消費電力を抑制することができる。
【0083】
(変形例)
上記実施形態の電源システムの構成の一部を変更した変形例について説明する。
【0084】
・上記実施形態において、電源IC41は、帰還巻線63からの電流値を入力し、当該電流値に基づいてフィードバック制御を実施してもよい。
【0085】
・上記実施形態において、帰還巻線63を設けなくてもよい。
【0086】
・上記第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。すなわち、電源IC41は、第2、第3スイッチSW12,SW13をオンして、スイッチング速度を遅くするとともに、スイッチング周波数(動作周波数)を下げてもよい。
【0087】
・上記第1実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。すなわち、電源IC41は、第2、第3スイッチSW12,SW13をオンして、スイッチング速度を遅くするとともに、スイッチング周波数を上げてもよい。
【0088】
・上記第1実施形態において、第2抵抗R12及び第2スナバ回路54のうちいずれか一方だけ備えるようにしてもよい。いずれか一方だけでもスイッチ切替速度を遅くすることができる。
【0089】
・上記実施形態において、第2抵抗R12に切り替えることにより、スイッチング速度を遅くしたが、抵抗値を変更可能な構成であるならば、抵抗回路52の回路構成を任意に変更してもよい。
【0090】
・上記実施形態において、第2スナバ回路54を接続することにより、スイッチング速度を遅くしたが、時定数を変更可能な構成であるならば、スナバ回路55の回路構成を任意に変更してもよい。
【0091】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0092】
以下、上述した各実施形態から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
半導体デバイス(Sp,Sn)の駆動回路(DR)に電力を供給する絶縁型電源装置(40)において、
直流電源に接続される1次巻線(61)と、
コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線(62)と、
オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路(50)と、
前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部(41)と、を備え、
前記スイッチ制御部は、動作状態切替信号が入力されたとき、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御する、あるいはそのいずれか一方を実行してオンオフ制御する絶縁型電源装置。
[構成2]
前記制御用スイッチ回路は、
前記1次巻線に接続され、前記1次巻線への給電及び給電停止を切り替える制御用スイッチ(51)と、
前記制御用スイッチのゲートと前記スイッチ制御部との間の電気経路に設けられた抵抗回路(52)と、を備え、
前記抵抗回路は、その抵抗値を変更可能に構成され、
前記スイッチ制御部は、
前記動作状態切替信号が入力されていない通常時においては、前記抵抗回路における抵抗値を予め決められた通常値に切り替えて、前記制御用スイッチにオンオフの切り替えを制御するためのスイッチング信号を入力する一方、
前記動作状態切替信号が入力されたときには、前記抵抗回路における抵抗値を前記通常値よりも大きい値に切り替えて、前記制御用スイッチに前記スイッチング信号を入力することにより前記スイッチング速度を遅くする構成1に記載の絶縁型電源装置。
[構成3]
前記制御用スイッチ回路は、
前記1次巻線に接続され、前記1次巻線への給電及び給電停止を切り替える制御用スイッチ(51)と、
コンデンサと抵抗の直列接続体により構成され、前記制御用スイッチに対して並列に接続されるスナバ回路(55)と、を備え、
前記スナバ回路は、その時定数を変更可能に構成され、
前記スイッチ制御部は、
前記動作状態切替信号が入力されていない通常時においては、前記スナバ回路における時定数を予め決められた通常値に切り替えて、前記制御用スイッチにオンオフの切り替えを制御するためのスイッチング信号を入力する一方、
前記動作状態切替信号が入力されたときには、前記スナバ回路における時定数を通常値よりも大きい値に切り替えて、前記制御用スイッチに前記スイッチング信号を入力することにより前記スイッチング速度を遅くする構成1又は2に記載の絶縁型電源装置。
[構成4]
前記絶縁型電源装置は、外部電源(100)により蓄電装置(20)を充電する外部充電を実行可能な電源システム(10)に搭載されるものであり、
前記半導体デバイスは、前記蓄電装置からの電力を変換してモータに供給するインバータ(12)を構成する半導体スイッチング素子であり、
前記駆動回路は、前記インバータの前記半導体スイッチング素子のゲートに操作信号を入力するゲート駆動回路であり、
前記スイッチ制御部には、外部充電中、前記動作状態切替信号が入力される構成1~3のうちいずれか1項に記載の絶縁型電源装置。
[構成5]
前記インバータは、モータ(11)と前記蓄電装置との間の電源経路に設けられたものであり、
外部充電中、前記インバータの前記半導体スイッチング素子がオンオフされることにより、前記モータ及び前記インバータによって前記外部電源の電力は変換され、前記蓄電装置に供給される構成4に記載の絶縁型電源装置。
[構成6]
外部電源(100)により蓄電装置(20)を充電する外部充電を実行可能な電源システム(10)において
モータ(11)と前記蓄電装置との間の電源経路に設けられたインバータ(12)と、
前記インバータを構成する半導体スイッチング素子(Sp,Sn)の駆動回路(DR)と、
前記駆動回路に電力を供給する絶縁型電源装置(40)と、
前記絶縁型電源装置を制御する電源制御装置(31)と、を備え、
前記絶縁型電源装置は、
直流電源(21)に接続される1次巻線(61)と、
コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線(62)と、
オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路(50)と、
前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部(41)と、を備え、
外部充電中、前記インバータの前記半導体スイッチング素子がオンオフされることにより、前記モータ及び前記インバータによって前記外部電源の電力は変換され、前記蓄電装置に供給され、
前記電源制御装置は、外部充電中、動作状態切替信号を前記スイッチ制御部に入力し、
前記スイッチ制御部は、前記動作状態切替信号が入力されたとき、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御する、あるいはそのいずれか一方を実行してオンオフ制御する電源システム。
[構成7]
半導体デバイス(Sp,Sn)の駆動回路(DR)に電力を供給する絶縁型電源装置(40)に実施させる電源制御プログラムにおいて、
前記絶縁型電源装置は、
直流電源に接続される1次巻線(61)と、
コアを介して前記1次巻線と磁気結合可能な2次巻線(62)と、
オンされることにより、前記直流電源から前記1次巻線に給電し、オフされることにより、前記直流電源から前記1次巻線への給電を停止させる制御用スイッチ回路(50)と、
前記制御用スイッチ回路をオンオフ制御するスイッチ制御部(41)と、を備え、
前記絶縁型電源装置に動作状態切替信号が入力されたとき、前記スイッチ制御部に、スイッチング周波数を通常時とは異ならせ、かつ、前記スイッチング速度を通常時よりも遅くしてオンオフ制御させる、あるいはそのいずれか一方を実行させてオンオフ制御させる電源制御プログラム。
【符号の説明】
【0093】
10…電源システム、11…モータ、12…インバータ、20…高電圧バッテリ、21…低電圧バッテリ、31…マイコン、40,140…スイッチング電源、41…電源IC、50…制御用スイッチ回路、51…制御用スイッチ、61…入力巻線、62…出力巻線、100…外部充電器、DR…ゲート駆動回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10