(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150358
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ピアス用穿孔器
(51)【国際特許分類】
A44C 7/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A44C7/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063757
(22)【出願日】2023-04-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】520006735
【氏名又は名称】株式会社三鷹ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】羽澤 学
【テーマコード(参考)】
3B114
【Fターム(参考)】
3B114EA00
(57)【要約】
【課題】構成が簡単で穿孔時の痛みを軽減でき、ニードルの分離も容易なピアス用穿孔器を提供する。
【解決手段】ピアス用穿孔器2は、弾性変形可能なU字状の本体部4と、シリンジ10と、シリンジ10に挿入されるプランジャ12と、プランジャ12の挿入方向の先端部に後端部を収容して保持されるニードル14と、脚部8の自由端部に設けられ、プランジャ12で押し出されて耳たぶを貫通したニードル14の先端部14a-1を保持する留め具16と、シリンジ10の先端部に装着され、ニードル14の留め具16側への移動をガイドするガイド孔18を有するキャップ部材20と、を備えている。プランジャ12がシリンジ10に対する所定の挿入位置に挿入された状態で、ニードル14の先端部14a-1がガイド孔18から留め具16側へ突出するようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な材料で形成され、外力が作用しない状態で一対の脚部が非平行に外側に開いたU字状の本体部と、
前記本体部の一方の脚部の自由端部に設けられたシリンジと、
前記シリンジに前記本体部の他方の脚部側へ向けて挿入されるプランジャと、
前記プランジャの挿入方向先端部に後端部を収容して保持されるニードルと、
前記本体部の他方の脚部の自由端部に設けられ、前記プランジャで押し出されて身体の一部を貫通した前記ニードルの先端部を保持する留め具と、
前記シリンジの先端部に装着され、前記ニードルの前記留め具側への移動をガイドするガイド孔を有し、前記プランジャで押し出されて分離脱落するキャップ部材と、
を備え、
前記キャップ部材が前記シリンジに装着され、前記ニードルを保持した前記プランジャが前記シリンジに対する所定の挿入位置に挿入された状態で、前記ニードルの先端部が前記ガイド孔から前記留め具側へ突出していることを特徴とするピアス用穿孔器。
【請求項2】
前記ニードルが、断面が円形のニードル本体と、該ニードル本体の後端に一体に形成された球状のニードルヘッドと、を備え、前記プランジャの前記ニードルを収容する部分が、円形の収容孔と、該収容孔の径方向内方に突出して前記ニードルヘッドに接触する3つ以上の凸条と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のピアス用穿孔器。
【請求項3】
前記ガイド孔が、前記シリンジの後端部側に向かって径が緩やかに拡大する形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のピアス用穿孔器。
【請求項4】
前記ガイド孔が、前記ニードル本体に点接触する形状を有していることを特徴とする請求項3に記載のピアス用穿孔器。
【請求項5】
前記本体部の一方の脚部と他方の脚部の対向部位にこれらの脚部の接近移動を所定の間隔位置で止める接近規制部が一体に設けられ、前記接近規制部は、前記一方の脚部と他方の脚部とが接近する方向及び該接近する方向と略直交する2方向の位置決めが同時になされる構成を有していることを特徴とする請求項1に記載のピアス用穿孔器。
【請求項6】
前記本体部の他方の脚部の自由端部に前記留め具を着脱自在に収容する留め具収容部が設けられ、
前記本体部の一方の脚部と他方の脚部とが前記所定の間隔位置で接近移動を止められたときに、身体の一部を挟む前記キャップ部材と前記留め具収容部の対向面が共に平面でかつ平行となることを特徴とする請求項5に記載のピアス用穿孔器。
【請求項7】
前記プランジャが前記シリンジの後端に当接して前記所定の挿入位置で止めるストッパを有し、
前記ストッパは、前記本体部の一方の脚部と他方の脚部とが前記所定の間隔位置で接近移動を止められて前記プランジャに所定以上の押圧力がかかったときに破断または変形して前記プランジャの移動を許容する強度を有していることを特徴とする請求項5に記載のピアス用穿孔器。
【請求項8】
前記プランジャが前記シリンジの外径よりも大きい径の押圧用フランジを有し、前記押圧用フランジの押圧面は中央部が凹む形状を有していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のピアス用穿孔器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耳たぶ等の身体の一部にピアス用の孔を開けるピアス用穿孔器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のピアス用穿孔器では、後端部に球状等のヘッド部を備えたニードルがシリンダ内に装着され、片手で穿孔器本体を把持して2つの可動部材を互いに近づくように移動させることによりニードルをプランジャで押圧し、ニードルを耳たぶに突き刺して貫通させる構成を有している。ニードルの先端部は留め具でキャッチされ、最終的にニードルと留め具とが穿孔器本体から分離して耳たぶに係合した状態で残るようになっている。穿孔器本体には、穿孔後にニードルと留め具とを分離し易くするために穿孔器本体を元の位置に復帰させるバネが備えられている。
【0003】
バネの付勢力を利用した方式では構成が複雑となることを避けられない。特許文献1には、プラスチックでU字状に形成された本体部を備えた「耳たぶに孔をあける装置」が開示されている。U字状の一方の脚にはニードル及びプランジャが挿入されたシリンダが固定され、他方の脚には留め具が設けられている。ニードルは、直線状に延びるニードル本体と、シリンダの内面を摺動する大きさの円柱状のニードルヘッドとからなり、プランジャでニードルヘッドを留め具に向けて押圧することにより穿孔動作がなされる。一対の脚の対向面には両脚の接近を所定の位置で規制する凸部と嵌合凹部とが相対的に形成されており、一対の脚の接近が止められた状態でプランジャのニードル押し込み移動が許容されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成では本体部の素材自体の弾性を利用しているのでバネが不要となり、構成の簡易化を図ることができる。ところで、ニードルで耳たぶを穿孔する場合、皮膚が痛みを感じるのは皮膚に痛みを感じる痛点があるからである。皮膚1平方センチメートルあたり100~200個の痛点が分布しているとされる。この痛点をニードルが通ることにより痛みを感じるわけであるから、穿孔時の痛みを最小限にするには、ニードルを細くするとともに、貫通領域を少なくする観点から皮膚面に対してニードルが斜めに進入しないようにすることが重要となる。ニードルが斜めに進入すると痛点を通る機会が多くなる確率が高くなるからである。所定の強度を保った状態でニードルを細くする点については、チタンを用いた放電加工等による精密チタン切削工法が既に確立されており、ニードルを細くすることによる痛みの低減課題は実質的に解消されている。
【0006】
ニードルを皮膚面に対して真っ直ぐに突き刺すという点から従来構成を考慮すると、特許文献1の構成では円柱状のニードルヘッドにニードル本体が支持されているだけである。穿孔後のシリンダからのニードルの分離を容易にするためにはシリンダとの摩擦を少なくする観点からニードルヘッドの軸方向の長さは短い方がよい。しかしながらニードルヘッドの軸方向の長さを短くすると、摺動時のニードル本体の支持が不安定となり、ニードル先端が皮膚に斜めに進入する可能性がある。ニードルヘッドを分割構成のガイドで挟み込んでシリンダ内に収容し、プランジャでガイドを押し出した後にガイドが分離して脱落する構成も知られているが、ガイドの脱落を容易にすればするほどニードルの支持は不安定となる。
【0007】
このように、皮膚にニードルを真っ直ぐに突き刺すためのニードルの安定支持性と、ニードルの分離容易性とはトレードオフの関係にある。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、構成が簡単で穿孔時の痛みを軽減でき、ニードルの分離も容易なピアス用穿孔器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のピアス用穿孔器(2)は、弾性変形可能な材料で形成され、外力が作用しない状態で一対の脚部が非平行に外側に開いたU字状の本体部(4)と、本体部(4)の一方の脚部(6)の自由端部に設けられたシリンジ(10)と、シリンジ(10)に本体部(4)の他方の脚部(8)側へ向けて挿入されるプランジャ(12)と、プランジャ(12)の挿入方向先端部に後端部を収容して保持されるニードル(14)と、本体部(4)の他方の脚部(8)の自由端部に設けられ、プランジャ(12)で押し出されて身体の一部を貫通したニードル(14)の先端部(14a-1)を保持する留め具(16)と、シリンジ(10)の先端部に装着され、ニードル(14)の留め具(16)側への移動をガイドするガイド孔(18)を有し、プランジャ(12)で押し出されて分離脱落するキャップ部材(20)と、を備え、キャップ部材(20)がシリンジ(10)に装着され、ニードル(14)を保持したプランジャ(12)がシリンジ(10)に所定の挿入位置に挿入された状態で、ニードル(14)の先端部(14a-1)がガイド孔(18)から留め具(16)側へ突出していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るピアス用穿孔器によれば、構成の簡易化を実現できるとともに、ニードルがプランジャの先端部とキャップ部材のガイド孔との2点支持で移動するので、ニードルの直進移動を高精度に維持することができ、痛みを軽減することができる。
【0011】
また、上記のピアス用穿孔器(2)では、ニードル(14)が、断面が円形のニードル本体(14a)と、該ニードル本体(14a)の後端に一体に形成された球状のニードルヘッド(14b)と、を備え、プランジャ(12)のニードル(14)を収容する部分が、円形の収容孔(28a)と、該収容孔(28a)の径方向内方に突出してニードルヘッド(14b)に接触する3つ以上の凸条(28b)と、を備えていることを特徴とする。これによれば、ニードルを安定に保持できてニードルの直進移動に寄与するとともに、ニードルヘッドに対する凸条の点接触によってプランジャからニードルが離脱するときの抵抗を少なくすることができる。
【0012】
また、上記のピアス用穿孔器(2)では、ガイド孔(18)が、シリンジ(10)の後端部側に向かって径が緩やかに拡大する形状を有していることを特徴とする。これによれば、プランジャに対するニードルの保持が多少斜めになっていてもニードルの先端部がスムーズにガイド孔に誘導されてニードルの芯出しを容易に行うことができる。ユ-ザーが組み立てる構成においても熟練を要することなく、ニードルの芯出しを高精度に行うことができる。
【0013】
また、上記のピアス用穿孔器(2)では、ガイド孔(18)が、ニードル本体(14a)に点接触する形状を有していることを特徴とする。これによれば、ニードルの芯出しを高精度に行うことができ、ニードルの直進移動性を高めることができる。
【0014】
また、上記のピアス用穿孔器(2)では、本体部(4)の一方の脚部(6)と他方の脚部(8)の対向部位にこれらの脚部(6、8)の接近移動を所定の間隔位置で止める接近規制部(24、26)が一体に設けられ、接近規制部(24、26)は、一方の脚部(6)と他方の脚部(8)とが接近する方向(X方向)と略直交する2方向(Z方向、Y方向)の位置決めが同時になされる構成を有していることを特徴とする。これによれば、穿孔過程におけるニードルのブレを無くすことができ、高精度の直進刺しによって痛みを軽減できる。
【0015】
また、上記のピアス用穿孔器(2)では、本体部(4)の他方の脚部(8)の自由端部に留め具(16)を着脱自在に収容する留め具収容部(22)が設けられ、本体部(4)の一方の脚部(6)と他方の脚部(8)とが所定の間隔位置で接近移動を止められたときに、身体の一部(EL)を挟むキャップ部材(20)と留め具収容部(22)の対向面(20a、22d)が共に平面でかつ平行となることを特徴とする。これによれば、ニードルの斜め刺しを高精度に回避でき、痛みを軽減できる。
【0016】
また、上記のピアス用穿孔器(2)では、プランジャ(12)がシリンジ(10)の後端に当接して所定の挿入位置で止めるストッパ(28c)を有し、ストッパ(28c)は、本体部(4)の一方の脚部(6)と他方の脚部(8)とが所定の間隔位置で接近移動を止められてプランジャ(12)に所定以上の押圧力がかかったときに破断または変形してプランジャ(12)の移動を許容する強度を有していることを特徴とする。これによれば、ニードルが所定の間隔位置に達しない前に斜めに押し出されることを防止することができる。
【0017】
また、上記のピアス用穿孔器(2)では、プランジャ(12)がシリンジ(10)の外径よりも大きい径の押圧用フランジ(30)を有し、押圧用フランジ(30)の押圧面(30a)は中央部が凹む形状を有していることを特徴とする。これによれば、片手によるピアス用穿孔器の把持が容易となるとともに、プランジャの加圧が容易となり、プランジャの押圧操作に伴う指の痛みも軽減できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、構成が簡単で穿孔時の痛みを軽減でき、ニードルの分離も容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係るピアス用穿孔器の使用可能状態の斜視図である。
【
図2】
図1で示したピアス用穿孔器のシリンジ、ニードル、プランジャ及びキャップ部材の組付け構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2で示したキャップ部材のシリンジ側から見た正面図である。
【
図4】
図1のV1―V1線でのプランジャの拡大断面図である。
【
図5】
図1で示したピアス用穿孔器の要部を示す図で、(a)は
図1のV1―V1線でのシリンジ及びキャップ部材を含めた拡大断面図、(b)は(a)の円5の部位の拡大図、(c)は(a)のV2-V2線での断面図である。
【
図6】
図1で示したピアス用穿孔器の留め具収容部を示す分解斜視図である。
【
図8】
図1で示したピアス用穿孔器を手で保持した状態の斜視図である。
【
図9】
図5(a)に示す状態からプランジャを押し込んだ状態の断面図である。
【
図10】
図1で示したピアス用穿孔器による穿孔動作を示す工程図である。
【
図11】
図1で示したピアス用穿孔器による穿孔後の動作を示す工程図である。
【
図12】ニードルヘッドが小径の場合(変形例)の
図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るピアス用穿孔器2は、弾性変形可能な材料で形成され、外力が作用しない状態で一対の脚部6、8が非平行に外側に開いたU字状の本体部4と、本体部4の一方の脚部6の自由端部に設けられたシリンジ10と、シリンジ10に本体部4の他方の脚部8側へ向けて挿入されるプランジャ12と、プランジャ12の挿入方向(矢印S方向)の先端部に後端部を収容して保持されるニードル14と、本体部4の他方の脚部8の自由端部に設けられ、プランジャ12で押し出されて身体の一部を貫通したニードル14の先端部14a-1を保持する留め具16と、シリンジ10の先端部に装着され、ニードル14の留め具16側への移動をガイドするガイド孔18を有し、プランジャ12で押し出されて分離脱落するキャップ部材20と、を備えている。キャップ部材20がシリンジ10に装着され、ニードル14を保持したプランジャ12がシリンジ10に対する所定の挿入位置に挿入された状態で、ニードル14の先端部14a-1がガイド孔18から留め具16側へ突出するようになっている。
【0022】
本体部4の他方の脚部8の自由端部には留め具16を着脱自在に収容する留め具収容部22が設けられている。本体部4の一方の脚部6と他方の脚部8の対向部位には、これらの脚部6、8の接近移動を所定の間隔位置で止める接近規制部24、26が一体に設けられている。接近規制部24、26は、一方の脚部6と他方の脚部8とが接近する方向(矢印X方向)及び該接近する方向と略直交する2方向(矢印Z方向、矢印Y方向)の位置決めが同時になされる構成を有している。矢印Z方向をピアス用穿孔器2の縦方向(上下方向)とした場合、矢印X方向はピアス用穿孔器2の横方向、矢印Y方向はピアス用穿孔器2の奥行方向と称することもできる。
【0023】
一方の脚部6の接近規制部24には上下方向に間隔をおいて凹部24a、24bが形成され、矢印Y方向における奥行側には凸部24cが形成されている。他方の脚部8の接近規制部26には凹部24a、24bに嵌合する凸部26a、26bが形成され、奥行側には凸部24cに嵌合する凹部(不図示)が形成されている。これらの凹凸嵌合により、ピアス用穿孔器2の縦方向(矢印Z方向)、横方向(矢印X方向)及び奥行方向(矢印Y方向)の位置決めが同時になされる。これにより、穿孔過程においてニードル14はいずれの方向にもブレない状態で留め具16に向かって直進移動することになる。
【0024】
上方の凹部24a及び凸部26aの矢印X方向の長さは、一方の脚部6と他方の脚部8との間を狭める穿孔前段動作において早い段階で位置決め機能が発現するように、下方の凹部24b及び凸部26bよりも長く設定されている。各凸部24c、26a、26bの角部は凹部24a、24b及び不図示の凹部への嵌合が円滑になされるように面取りされている。符号24d、26cは軽量化のための肉抜き部を示しており、これらは奥行側にも同様に形成されている。一方の脚部6の接近規制部24と他方の脚部8の接近規制部26との間における嵌合構成は凹凸逆配置でもよい。
【0025】
本実施形態では、本体部4、シリンジ10及び留め具収容部22はポリスチレン樹脂で一体成形されており、プランジャ12はポリアセタール樹脂で一体成形されている。
【0026】
図2に示すように、プランジャ12は、プランジャ本体28と、該プランジャ本体28の後端に一体に形成された円板状の押圧用フランジ30と、を備えている。ニードル14は、断面が円形の棒状ないし線状のニードル本体14aと、該ニードル本体14aの後端に一体に形成された球状のニードルヘッド14bと、を備え、ニードル本体14aの先端部14a-1は、くびれた後に拡径して尖るやじり状に形成されている。
【0027】
プランジャ12のニードル14を収容する部分は、円形の収容孔28aと、該収容孔28aの径方向内方に突出してニードルヘッド14bに接触する3つ以上の凸条28bと、を備えている。本実施形態では凸条28bは収容孔28aの周方向に90°間隔で4つ設けられている。ニードルヘッド14bは4点支持により収容孔28aに安定に保持される。凸条28bの先端は曲率の大きい円弧状に形成されており、球状のニードルヘッド14bの外面に点接触状態で接触している。このため、収容孔28a内での移動におけるニードルヘッド14bの摩擦抵抗は小さい。ニードルヘッド14bの4点支持による摩擦力は、留め具16によるニードル14の先端部14a-1を保持する保持力よりも小さく設定されている。
【0028】
プランジャ本体28の外面には、径方向の対向する位置にシリンジ10の後端に当接して所定の挿入位置で止める一対のストッパ28cが形成されているとともに、破断したストッパ28cを収容する一対の収容凹部28dが形成されている。ストッパ28cは、本体部4の一方の脚部6と他方の脚部8とが所定の間隔位置で接近移動を止められてプランジャ12に所定以上の押圧力がかかったときに破断または変形してプランジャ12の移動を許容する強度を有している。
【0029】
シリンジ10の先端にはキャップ部材20を嵌合するための一対の凹部10aが径方向の対向位置に形成されている。キャップ部材20は、キャップ部材20A、20Bからなる2分割構成を有している。キャップ部材20A、20Bにはそれぞれ、シリンジ10の先端面に当接する蓋部20aと、シリンジ10内に挿入される凸面部20bと、シリンジ10の凹部10aに嵌合する凸部20cと、シリンジ10の外面に係合する係合突片20dと、円柱状の嵌合凸部20eとを備えている。各キャップ部材20A、20Bの嵌合凸部20eに対応する部分には嵌合凸部20eが挿入される挿入孔20f(
図3参照)が形成されている。
【0030】
シリンジ10に対するキャップ部材20の装着は、シリンジ10に対する凸面部20b、凸部20cまたは係合突片20dによる締りばめで担われており、嵌合凸部20eとこれに対応する挿入孔20fとの嵌合は分割構成の分離をし易くするために緩めに設定されている。
【0031】
先端部にニードル14を収容保持したプランジャ12を、先端部にキャップ部材20が装着されたシリンジ10にその後端側から挿入し、ストッパ28cがシリンジ10の後端に当たるまで挿入することによりピアス用穿孔器2の組付けが完了する。
【0032】
図4は、
図1のV1-V1線におけるニードル14を収容保持したプランジャ12の断面図である。ニードル14は、上記のようにそのニードルヘッド14bが4つの凸条28bに点接触することによる摩擦力でプランジャ12の先端部に形成された収容孔28aに保持されている。すなわち、ニードルヘッド14bは4点接触でプランジャ12の先端部に保持されている。これにより、ニードル14はプランジャ12の先端部に安定かつプランジャ12から離脱し易い状態に保持されている。プランジャ12はシリンジ10の外径よりも大きい径の押圧用フランジ30を有し、押圧用フランジ30の押圧面30aは中央部が凹む形状を有している。これにより、穿孔時におけるピアス用穿孔器2の把持操作が安定するとともに、プランジャ12の押圧操作が容易となり指も痛くならない。
【0033】
本実施形態におけるニードル14は、アレルギーを引き起こしにくい金属であるチタンで形成されており、ニードル本体14aの径D1は0.8mm、ニードルヘッド14bの径D2は4mmである。また、ガイド孔18のニードル本体14aに接触する部位の径はニードル本体14aの径D1と同等に設定されている。
【0034】
図5(a)は、
図1のV1-V1線でのシリンジ10やキャップ部材20を含めた断面図である。先端部にニードル14を収容保持したプランジャ12をシリンジ10の後端側から挿入すると、ニードル14の先端部14a-1がガイド孔18を貫通し、キャップ部材20の外方に突出する。プランジャ12はそのストッパ28cがシリンジ10の後端に当接することにより、それ以上の挿入が止められる。ストッパ28cがシリンジ10の後端に当接した位置がシリンジ10に対するプランジャ12の所定の挿入位置である。この状態がピアス用穿孔器2の組付け完了状態、すなわちピアス用穿孔器2の使用可能状態である。
【0035】
図5(b)に拡大して示すように、ガイド孔18はシリンジ10の後端部側に向かって径が緩やかに拡大する形状を有している。このため、先端部にニードル14を収容保持したプランジャ12をシリンジ10の後端側から挿入するとき、ニードル14が多少斜めに保持されていてもニードル14の先端部14a-1はガイド孔18の湾曲面18aで円滑に案内され、ガイド孔18の中心に誘導されてキャップ部材20の外方に突出する。ニードル14の支持は、プランジャ12の先端部とガイド孔18とによる2点支持となり、ニードル14の高精度の芯出しができるようになっている。ニードル14が2点支持された状態で、ニードル14はキャップ部材20の外面である平板状の蓋部20aの外面に垂直となる。また、ガイド孔18は、ニードル本体14aに点接触する形状を有している。すなわち、プランジャ12を押圧するときのガイド孔18におけるニードル14の移動抵抗を極力少なくしている。
図5(c)は
図5(a)におけるV2-V2線での断面図である。
【0036】
上記のようにニードル14がプランジャ12に斜めに保持されていてもガイド孔18により高精度の芯出しができるため、ピアス用穿孔器2の各要素が滅菌パックされた組み立て方式であっても熟練を要することなく一定の品質で組み立てることができる。
【0037】
図6に示すように、留め具収容部22は、留め具16を収容する上面開放の収容凹部22aと、該収容凹部22aの背面側に設けられたガイドブロック22bと、ニードル14に対向する前面側に設けられ、ニードル14の進入及び上方への抜けを許容するU字状の開口22cとを備えている。留め具16は、
図7に示すように、収容凹部22aに収容されるカバー16aと、カバー16a内に配置された一対のリング状のバネ16bとを備え、カバー16aの前面側にはニードル14の先端部14a-1の進入を許容する開口16cが形成されている。ニードル14の先端部14a-1がバネ16b間に進入した後は弾性で挟持され、抜け止めされる。符号22dはキャップ部材20の蓋部20aに対する留め具収容部22の対向面を示している。
【0038】
図8は、ピアス用穿孔器2を使用する際の片手Hで把持した状態を示している。親指H1を留め具収容部22の背面にあてがい、人差し指H2をプランジャ12の押圧用フランジ30にあてがって一対の脚部6、8が接近するように加圧する。耳たぶELの人差し指H2側が顔側である。一対の脚部6、8が接近すると、接近規制部24の凹部24a、24bと接近規制部26の凸部26a、26b、接近規制部24の凸部24cとこれに対応する凹部とが嵌合し、それ以上の接近が規制される。これらの凹凸嵌合が完了して接近が規制される位置が所定の間隔位置である。本実施形態における本体部4の開度(角度θ)は15°である。
【0039】
プランジャ12のストッパ28cは所定の挿入位置に達するまではストッパ機能を維持する強度を有している。またストッパ28cは、一対の脚部6、8の接近が規制されて所定の間隔位置で止まった状態でプランジャ12に所定以上の押圧力がかかったときに破断または変形してプランジャ12の移動を許容する強度を有している。所定以上の押圧力がかかると、
図9に示すように、ストッパ28cは破断して収容凹部28dに収容され、ストッパ機能が消失してシリンジ10に対するプランジャ12の更なる挿入移動が許容される。プランジャ12の移動によってニードル14の突出量も増加し、最終的にはプランジャ12の先端がキャップ部材20に当接してキャップ部材20をシリンジ10の先端部から押し出す。
【0040】
ストッパ28cが破断することにより、シリンジ10に対してプランジャ12を所定の挿入位置で止めることができなくなってピアス用穿孔器2の再使用が不可能となる。これにより、ピアス用穿孔器2を再使用することによる穿孔器を媒介とした感染を防止することができる。
【0041】
図10及び
図11を参照して、ピアス用穿孔器2の使用動作を説明する。
図10(a)は、一対の脚部6、8の接近が規制されて所定の間隔位置で止まった状態を示している。本体部4の一方の脚部6と他方の脚部8とが所定の間隔位置で接近移動を止められたときに、身体の一部である耳たぶELを挟むキャップ部材20と留め具収容部22の対向面20a、22dは共に平面でかつ平行となるように設定されている。本実施形態ではこの状態での隙間g1は6mmである。ストッパ28cが破断してプランジャ12の直進移動が進行すると、
図10(b)に示すように、ニードル本体14aが耳たぶELを貫通する。この場合、上記のようにキャップ部材20の蓋部(対向面)20aに対してニードル14は垂直となっているので、蓋部20aと平行となった留め具収容部22の対向面22dで受け止められた耳たぶELに対してもニードル14は垂直に(真っ直ぐに)貫通する。ニードル14は上記のようにプランジャ12の先端部とキャップ部材20のガイド孔18との2点支持で移動するため、耳たぶELに対して安定した状態で真っ直ぐに進入する。このため、ニードル14の細さとも相まって痛点に当たる確率も少なく痛みを軽減できる。
【0042】
プランジャ12の移動がさらに進行すると、
図10(c)に示すように、キャップ部材20がプランジャ12で押し出され、ニードル14の先端部14a-1は留め具16に保持(キャッチ)される。最終的には
図10(d)に示すように、プランジャ12の押圧用フランジ30がシリンジ10の後端に当接し、キャップ部材20がシリンジ10から完全に押し出される。この間のプランジャ12の移動は瞬時になされるので、キャップ部材20は分離することなく耳たぶELにあてがわれプランジャ12で押し込まれる。本実施形態における押し込み完了後の隙間g2は4.8mmである。耳たぶELは留め具収容部22とキャップ部材20の平行な平面同士で挟み付けられるので、穿孔途中での斜め刺しの不具合も生じない。これにより、穿孔過程全体に亘って痛みを軽減できる。
【0043】
図11は、穿孔完了後のピアス用穿孔器2の弾性による復元動作を示す拡大断面図である。
図11(a)は一対の脚部6、8間の開度が1.0度の状態を示している。上記のように、プランジャ12の収容孔28aにおけるニードルヘッド14bの保持力(摩擦力)は留め具16によるニードル14の先端部14a-1を保持する保持力よりも小さく設定されているので、本体部4の一対の脚部6、8間が弾性で開くと、これに伴ってニードルヘッド14bが収容孔28a内を移動する。キャップ部材20はプランジャ12による押圧から解放されるので、分離して落下する。
【0044】
図11(b)は一対の脚部6、8間の開度が3.0度の状態を示している。開度がさらに進むと、ニードルヘッド14bは完全にプランジャ12の先端部から外れる。この場合、ニードルヘッド14bは球状で、かつ収容孔28aに形成されている凸条28bの長さはプランジャ12の先端に達せず、その先端側角部28b-1は湾曲状に形成されているので、ニードルヘッド14bは収容孔28aからガタつくことなくスムーズに離脱する。これにより離脱時のニードル14の振れによる痛みも抑制される。
【0045】
図11(c)に示すように、ニードルヘッド14bがプランジャ12から完全に離脱した後でピアス用穿孔器2を下方に下げると、留め具16が留め具収容部22からスムーズに分離され、耳たぶELにはニードル14と留め具16のみが残る。耳たぶELに穿孔したピアス用の穴が安定するまで例えば1カ月ほどニードル14と留め具16は耳たぶELに付けたままとなる。
【0046】
図12は、ニードル14のニードルヘッド14bの径D2を2.5mmとした例である。この場合には収容孔28eの深さdが浅く、凸条28fの軸方向の長さhが短くなるとともに径方向の突出量nが大きくなる。また、収容孔28eの底面にニードルヘッド14bの一部を収容する窪み28e-1が形成されている。この構成によれば、ニードルヘッド14bの保持を安定にしつつ、穿孔後のプランジャ12からのニードルヘッド14bの離脱をより一層スムーズにすることができる。この例ではキャップ部材20のガイド孔18にニードルヘッド14bが当接すると同時にプランジャ12の先端がキャップ部材20に当接し、ニードルヘッド14b及びプランジャ12によりキャップ部材20が押し出される。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では収容孔28aにおける凸条28bの数を4つとしたが、120°間隔で3つ設けてもよい。上記の各構成要素における材質、形状及びキャップ部材20の分離脱落構成も上記に限定されない。また、ストッパ28cが完全に破断して分離する例を示したが、変形して薄肉で繋がった状態で収容凹部28dに収容されるようにしてもよい。また、穿孔対象として耳たぶELを例示したが、耳たぶEL以外の身体の一部においても同様に穿孔することができる。
【符号の説明】
【0048】
2 ピアス用穿孔器
4 本体部
6 一方の脚部
8 他方の脚部
10 シリンジ
12 プランジャ
14 ニードル
14a ニードル本体
14a-1 先端部
14b ニードルヘッド
16 留め具
18 ガイド孔
20 キャップ部材
20a 蓋部(対向面)
20a、22d 対向面
22 留め具収容部
24、26 接近規制部
28a 収容孔
28b 凸条
28c ストッパ
30 押圧用フランジ
30a 押圧面
EL 耳たぶ(身体の一部)
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な材料で形成され、外力が作用しない状態で一対の脚部が非平行に外側に開いたU字状の本体部と、
前記本体部の一方の脚部の自由端部に設けられたシリンジと、
前記シリンジに前記本体部の他方の脚部側へ向けて挿入されるプランジャと、
前記プランジャの挿入方向先端部に後端部を収容して保持されるニードルと、
前記本体部の他方の脚部の自由端部に設けられ、前記プランジャで押し出されて身体の一部を貫通した前記ニードルの先端部を保持する留め具と、
前記シリンジの先端部に装着され、前記ニードルの前記留め具側への移動をガイドするガイド孔を有し、前記プランジャで押し出されて分離脱落するキャップ部材と、を備え、
前記キャップ部材が前記シリンジに装着され、前記ニードルを保持した前記プランジャが前記シリンジに対する所定の挿入位置に挿入された状態で、前記ニードルの先端部が前記ガイド孔から前記留め具側へ突出しており、
前記ニードルが前記身体の一部を貫通した後に、前記シリンジの前記先端部から突出した前記プランジャによって前記シリンジから押し出された前記キャップ部は、前記プランジャによる押圧が解放されたときに、分離脱落する
ことを特徴とするピアス用穿孔器。
【請求項2】
前記ニードルが、断面が円形のニードル本体と、該ニードル本体の後端に一体に形成された球状のニードルヘッドと、を備え、前記プランジャの前記ニードルを収容する部分が、円形の収容孔と、該収容孔の径方向内方に突出して前記ニードルヘッドに接触する3つ以上の凸条と、を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載のピアス用穿孔器。
【請求項3】
前記ガイド孔が、前記シリンジの後端部側に向かって径が緩やかに拡大する形状を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のピアス用穿孔器。
【請求項4】
前記ガイド孔が、前記ニードルに点接触する形状を有している
ことを特徴とする請求項3に記載のピアス用穿孔器。
【請求項5】
前記本体部の一方の脚部と他方の脚部の対向部位にこれらの脚部の接近移動を所定の間隔位置で止める接近規制部が一体に設けられ、前記接近規制部は、前記一方の脚部と他方の脚部とが接近する方向及び該接近する方向と略直交する2方向の位置決めが同時になされる構成を有している
ことを特徴とする請求項1に記載のピアス用穿孔器。
【請求項6】
前記本体部の他方の脚部の自由端部に前記留め具を着脱自在に収容する留め具収容部が設けられ、
前記本体部の一方の脚部と他方の脚部とが前記所定の間隔位置で接近移動を止められたときに、身体の一部を挟む前記キャップ部材と前記留め具収容部の対向面が共に平面でかつ平行となる
ことを特徴とする請求項5に記載のピアス用穿孔器。
【請求項7】
前記プランジャが前記シリンジの後端に当接して前記所定の挿入位置で止めるストッパを有し、
前記ストッパは、前記本体部の一方の脚部と他方の脚部とが前記所定の間隔位置で接近移動を止められて前記プランジャに所定以上の押圧力がかかったときに破断または変形して前記プランジャの移動を許容する強度を有している
ことを特徴とする請求項5に記載のピアス用穿孔器。
【請求項8】
前記プランジャが前記シリンジの外径よりも大きい径の押圧用フランジを有し、前記押圧用フランジの押圧面は中央部が凹む形状を有している
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のピアス用穿孔器。