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特開2024-150359インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法
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  • 特開-インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150359
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20241016BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241016BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 112
B41J2/01 501
B41J2/01 125
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063758
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】井上 晴満
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056EA20
2C056EC14
2C056EC28
2C056EC29
2C056EC36
2C056FA10
2C056FA13
2C056FB01
2C056FC02
2C056FD13
2C056HA46
2H186AB12
2H186BA08
2H186DA08
2H186FB11
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB57
4J039AD09
4J039BC32
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA39
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 本発明の水性インクは、耐アルコール性とインクの保存安定性を両立することが可能である。
【解決手段】本発明のインクジェット記録用水性インクは、顔料、樹脂粒子、架橋剤、及び水を含み、前記樹脂粒子が、アクリル系樹脂を含む樹脂粒子であり、前記架橋剤が、乳化分散型または自己分散型のブロックイソシアネートであり、前記ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度が、120℃以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、樹脂粒子、架橋剤、及び水を含み、
前記樹脂粒子が、アクリル系樹脂を含む樹脂粒子であり、
前記架橋剤が、乳化分散型または自己分散型のブロックイソシアネートであり、
前記ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度が、120℃以下である、
インクジェット記録用水性インク。
【請求項2】
前記水性インク全量において、前記樹脂粒子の固形分含有量(A)と前記架橋剤の固形分含有量(B)との含有比(B/A)が、0.4以下である、請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項3】
前記水性インク全量において、
前記樹脂粒子の固形分含有量が、5.5重量%以上であり、
前記架橋剤の固形分含有量が、2.1重量%以上であり、
前記架橋剤が、自己分散型のブロックイソシアネートである、
請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項4】
前記水性インク全量において、
前記樹脂粒子の固形分含有量が、7.0重量%以上であり、
前記架橋剤の固形分含有量が、2.1重量%以上であり、
前記含有比(B/A)が、0.3以上であり、
前記架橋剤が、自己分散型のブロックイソシアネートである、
請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項5】
前記水性インク全量において、
前記樹脂粒子の固形分含有量(A)が、7.0重量%以上かつ8.5重量%以下であり、
前記含有比(B/A)が、0.3以上かつ0.4未満であり、
前記架橋剤が、自己分散型のブロックイソシアネートである、
請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項6】
前記樹脂粒子が、保護コロイド分散されたアクリルスチレン系樹脂を含む樹脂粒子であり、
前記水性インク全量において、
前記樹脂粒子の固形分含有量(A)が、7.0重量%以上かつ8.5重量%以下であり、
前記含有比(B/A)が、0.3以上かつ0.4未満であり、
前記架橋剤が、自己分散型のブロックイソシアネートである、
請求項1記載のインクジェット記録用水性インク。
【請求項7】
インク流路、及びインク吐出手段含み、
前記インク流路に供給された請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インクを、前記インク吐出手段によって画像形成する対象物に吐出する、
インクジェット記録装置。
【請求項8】
記録工程、定着工程を含み、
前記記録工程は、記録媒体に水性インクをインクジェット方式により付与して記録する工程であり、
前記定着工程は、前記付与した前記水性インクを、前記記録媒体に定着させる工程であり、
前記水性インクとして、請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェット記録用水性インクを用いる、
インクジェット記録方法。
【請求項9】
前記定着工程は、乾燥工程を含み、
前記乾燥工程は、乾燥手段により、前記記録媒体の記録部分を前記記録媒体に定着させる工程である、請求項8記載の記録方法。
【請求項10】
前記定着工程は、反応工程を含み、
前記反応工程は、前記記録媒体に定着させた水性インク中の架橋剤と樹脂粒子とを加熱により反応させる工程である、請求項8記載の記録方法。
【請求項11】
前記定着工程において、前記記録媒体の記録部分に対して109J/cm以上かつ414J/cm以下の熱量を与える加熱を含む、請求項8記載の記録方法。
【請求項12】
前記定着工程における加熱が、60℃以上かつ10時間以上の加熱を含む、請求項8記載の記録方法。
【請求項13】
前記記録媒体が、ロール状の記録媒体であり、
前記記録媒体が、ポリプロピレンもしくは塩化ビニルを含むフィルム媒体、又は感熱発色層を構成に含む媒体である、請求項8記載の記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録用水性インクとしては、例えば、特許文献1に記載のものがあげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-127351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、公衆衛生の観点から消費者の除菌意識等が高まり、印刷画像にも耐アルコール性が求められるケースが増えている。耐アルコール性を付与する手段としては、例えば、インクに架橋剤を添加する方法がある。一方で、インクに一般的な架橋剤を添加した場合、ポットライフが短くなることによって保存安定性に問題が生じる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、耐アルコール性とインクの保存安定性を両立する、インクジェット記録用水性インクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明のインクジェット記録用水性インクは、
顔料、樹脂粒子、架橋剤、及び水を含み、
前記樹脂粒子が、アクリル系樹脂を含む樹脂粒子であり、
前記架橋剤が、乳化分散型または自己分散型のブロックイソシアネートであり、
前記ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度が、120℃以下であることを特徴とする。
【0007】
本発明のインクジェット記録装置は、
インク流路、及びインク吐出手段を含み、
前記インク流路に供給された本発明のインクジェット記録用水性インクを、前記インク吐出手段によって画像形成する対象物に吐出することを特徴とする。
【0008】
本発明のインクジェット記録方法は、
記録工程、定着工程を含み、
前記記録工程は、記録媒体に水性インクをインクジェット方式により付与して記録する工程であり、
前記定着工程は、前記付与した前記水性インクを、前記記録媒体に定着させる工程であり、
前記水性インクとして、本発明のインクジェット記録用水性インクを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のインクジェット記録用水性インクは、耐アルコール性とインクの保存安定性を両立することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、「質量」という場合は、特に断らない限り「重量」と読み替えてもよいものとする。例えば、「質量比」は、特に断らない限り「重量比」と読み替えてもよく、「質量%」は、特に断らない限り「重量%」と読み替えてもよいものとする。
【0012】
また、以下の実施形態及び実施例においてメカニズムについて言及する場合、記載されたメカニズムはあくまで推定であり、記載されたメカニズムに限定されるものではない。
【0013】
<インクジェット記録用水性インク>
本発明のインクジェット記録用水性インク(以下、「水性インク」又は「インク」と言うことがある。)について説明する。本発明の水性インクは、顔料、樹脂粒子、架橋剤、及び水を含む。
【0014】
前記顔料は、特に限定されず、例えば、カーボンブラック、無機顔料及び有機顔料等があげられる。前記カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等があげられる。前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄系無機顔料及びカーボンブラック系無機顔料等をあげることができる。前記有機顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ顔料、酸性染料型レーキ顔料等の染料レーキ顔料;ニトロ顔料;ニトロソ顔料;アニリンブラック昼光蛍光顔料;等があげられる。また、その他の顔料であっても水相に分散可能なものであれば使用できる。これらの顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、6及び7;C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、15、16、17、55、74、78、150、151、154、180、185及び194;C.I.ピグメントオレンジ31及び43;C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、12、15、16、48、48:1、53:1、57、57:1、112、122、123、139、144、146、149、150、166、168、175、176、177、178、184、185、190、202、209、221、222、224及び238;C.I.ピグメントバイオレット19及び196;C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、22及び60;C.I.ピグメントグリーン7及び36;並びにこれらの顔料の固溶体等もあげられる。
【0015】
前記顔料は、例えば、樹脂分散剤によって溶媒中に分散されるものであってもよい(樹脂分散顔料ともいう)。前記樹脂分散剤としては、例えば、一般的な高分子分散剤(顔料分散用樹脂や樹脂分散剤等ともいう)等を用いてよく、自家調製してもよい。また、本発明の水性インクにおいて、前記顔料は、高分子によりカプセル化されたものであってもよい。前記樹脂分散剤としては、例えば、メタクリル酸及びアクリル酸の少なくとも一方をモノマーとして含むものを用いることができ、例えば、市販品を用いてもよい。前記樹脂分散剤は、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等の疎水性単量体、又は、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマル酸、フマル酸誘導体からなる群から選ばれる2つ以上の単量体からなるブロック共重合体、グラフト共重合体、あるいはランダム共重合体、又はこれらの塩等であってもよい。前記市販品としては、例えば、ジョンソンポリマー(株)製の「ジョンクリル(登録商標)611」、「ジョンクリル(登録商標)60」、「ジョンクリル(登録商標)586」、「ジョンクリル(登録商標)687」、「ジョンクリル(登録商標)63」及び「ジョンクリル(登録商標)HPD296」;ビックケミー社製の「Disperbyk190」及び「Disperbyk191」;ゼネカ社製の「ソルスパース20000」及び「ソルスパース27000」;等があげられる。
【0016】
前記顔料分散用樹脂を用いた前記顔料の分散方法としては、例えば、分散装置を使用して顔料を分散させることがあげられる。前記顔料の分散に使用する分散装置は、一般的な分散機であれば特に限定はされないが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル(例えば、高速型)等があげられる。
【0017】
前記顔料は、例えば、自己分散型顔料であってもよい。前記自己分散型顔料は、例えば、顔料粒子にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基及びこれらの塩の少なくとも一種が、直接又は他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。前記自己分散型顔料は、例えば、特開平8-3498号公報、特表2000-513396号公報、特表2008-524400号公報、特表2009-515007号公報、特表2011-515535号公報等に記載の方法によって顔料が処理されたものを用いることができる。前記自己分散型顔料の原料としては、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。また、前記処理を行うのに適した顔料としては、例えば、三菱化学(株)製の「MA8」及び「MA100」等のカーボンブラック等があげられる。前記自己分散型顔料は、例えば、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、キャボット・コーポレーション社製の「CAB-O-JET(登録商標)200」、「CAB-O-JET(登録商標)250C」、「CAB-O-JET(登録商標)260M」、「CAB-O-JET(登録商標)270Y」、「CAB-O-JET(登録商標)300」、「CAB-O-JET(登録商標)400」、「CAB-O-JET(登録商標)450C」、「CAB-O-JET(登録商標)465M」及び「CAB-O-JET(登録商標)470Y」;オリエント化学工業(株)製の「BONJET(登録商標)BLACK CW-2」及び「BONJET(登録商標)BLACK CW-3」;東洋インク製造(株)製の「LIOJET(登録商標)WD BLACK 002C」等があげられる。
【0018】
前記水性インク全量における前記顔料の固形分含有量(顔料固形分量)は、特に限定されず、例えば、所望の光学濃度及び彩度等により、適宜決定できる。前記顔料固形分量は、例えば、0.1質量%~20質量%、1質量%~15質量%、2質量%~10質量%である。
【0019】
前記樹脂粒子は、アクリル系樹脂を含む樹脂粒子である。前記樹脂粒子は、例えば、ポリマーエマルションに含まれるものであってもよい。前記ポリマーエマルションは、例えば、前記樹脂粒子と、分散媒(例えば、水等)とで構成されるものであり、前記樹脂粒子は、前記分散媒に対して溶解状態ではなく、特定の粒子径を持って分散している。前記樹脂粒子は、例えば、乳化分散又は保護コロイド分散された樹脂粒子であってもよい。また、前記樹脂粒子は、保護コロイド分散されたアクリルスチレン系樹脂を含む樹脂粒子であってもよい。
【0020】
前記樹脂粒子としては、例えば、さらに、酢酸ビニル系樹脂、カーボネート型樹脂、ポリカーボネート型樹脂、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びこれらの共重合体樹脂等を含んでもよいし、含まなくてもよい。前記樹脂粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
前記樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、5nm~500nm、20nm~300nm、30nm~200nmである。前記平均粒子径は、例えば、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置「LB-550」を用いて、算術平均径として測定可能である。
【0022】
前記水性インク全量における前記樹脂粒子の固形分含有量は、例えば、1.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、5.5質量%以上、又は7.0質量%以上であってもよく、30.0質量%以下、20.0質量%以下、11.0質量%以下、9.0質量%以下、又は8.5質量%以下であってもよい。前記樹脂粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
前記架橋剤は、乳化分散型または自己分散型のブロックイソシアネートである。ここで、「乳化分散型」とは、化合物を乳化剤と混合させることにより乳化させ、分散させたものである。「自己分散型」とは、化合物にカルボニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性官能基及びそれらの塩の少なくとも一種が、直接又は他の基を介して化学結合により導入されていることによって、分散剤を使用しなくても水に分散可能なものである。なお、「強制分散型」とは、疎水性の化合物をホモジナイザー等により機械的に乳化させ、分散させたものである。したがって、本発明において、乳化分散型及び自己分散型のブロックイソシアネートと、強制分散型のブロックイソシアネートは異なるものである。前記樹脂粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
前記ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度は、120℃以下であり、例えば、110℃以下であってもよく、80℃以上、90℃以上、又は100℃以上であってもよい。
【0025】
前記水性インク全量における前記架橋剤の固形分含有量は、例えば、0.3質量%以上、0.8質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、又は2.1質量%以上であってもよく、30.0質量%以下、20.0質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3.5質量%以下、3.0質量%以下、又は2.5質量%以下であってもよい。前記樹脂粒子は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の水性インクは、前記水性インク全量において、前記樹脂粒子の固形分含有量(A)と前記架橋剤の固形分含有量(B)との含有比(B/A)が、0.4以下であり、例えば、0.4未満であってもよく、0.1以上、0.2以上、又は0.3以上であってもよい。
【0027】
前記水は、イオン交換水、純水等であってもよい。
【0028】
前記水は、主溶媒であってもよい。本発明において、「主溶媒」とは、溶媒を構成する成分のうち、最も多い成分を言う。前記水性インク全量に対する前記水の配合量(水割合)は、所望のインク特性等に応じて適宜決定される。前記水割合は、例えば、他の成分の残部としてもよい。前記水の配合量は、例えば、50質量%~95質量%、好ましくは55質量%~90質量%、より好ましくは60質量%~80質量%である。
【0029】
前記水性インクは、例えば、さらに、湿潤剤を含んでもよい。
【0030】
前記湿潤剤は、特に限定されず、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の低級アルコール;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトン等のケトン;ジアセトンアルコール等のケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;ポリアルキレングリコール等のポリエーテル;アルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;2-ピロリドン;N-メチル-2-ピロリドン;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン;等があげられる。前記ポリアルキレングリコールは、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等があげられる。前記アルキレングリコールは、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール等があげられる。これらの湿潤剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これらの中で、アルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコールが好ましい。
【0031】
前記水性インクは、例えば、さらに、界面活性剤を含んでもよい。
【0032】
前記界面活性剤は、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販品を用いてもよい。具体的に、前記界面活性剤は、例えば、シリコーン系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等があげられる。
【0033】
前記シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製の「シルフェイス(登録商標)SAG002」、「シルフェイス(登録商標)SAG005」、「シルフェイス(登録商標)SAG503A」等があげられる。
【0034】
前記アセチレン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業(株)製の「オルフィン(登録商標)E1004」、「オルフィン(登録商標)E1008」及び「オルフィン(登録商標)E1010」;エアープロダクツアンドケミカルズ社製の「サーフィノール(登録商標)440」、「サーフィノール(登録商標)465」及び「サーフィノール(登録商標)485」;川研ファインケミカル(株)製の「アセチレノール(登録商標)E40」及び「アセチレノール(登録商標)E100」;等があげられる。
【0035】
前記水性インクは、前記シリコーン系界面活性剤や前記アセチレン系界面活性剤に加え/代えて、他の界面活性剤を含んでもよい。前記他の界面活性剤としては、例えば、花王(株)製のノニオン界面活性剤「EMULGEN(登録商標)」シリーズ、「RHEODOL(登録商標)」シリーズ、「EMASOL(登録商標)」シリーズ、「EXCEL(登録商標)」シリーズ、「EMANON(登録商標)」シリーズ、「AMIET(登録商標)」シリーズ及び「AMINON(登録商標)」シリーズ等;東邦化学工業(株)製のノニオン界面活性剤「ソルボン(登録商標)」シリーズ等;ライオン(株)製のノニオン界面活性剤「DOBANOX(登録商標)」シリーズ、「LEOCOL(登録商標)」シリーズ、「LEOX(登録商標)」シリーズ、「LAOL,LEOCOL(登録商標)」シリーズ、「LIONOL(登録商標)」シリーズ、「CADENAX(登録商標)」シリーズ、「LIONON(登録商標)」シリーズ及び「LEOFAT(登録商標)」シリーズ等;花王(株)製のアニオン界面活性剤「EMAL(登録商標)」シリーズ、「LATEMUL(登録商標)」シリーズ、「VENOL(登録商標)」シリーズ、「NEOPELEX(登録商標)」シリーズ、NS SOAP、KS SOAP、OS SOAP及び「PELEX(登録商標)」シリーズ等;ライオン(株)製のアニオン界面活性剤「LIPOLAN(登録商標)」シリーズ、「LIPON(登録商標)」シリーズ、「SUNNOL(登録商標)」シリーズ、「LIPOTAC(登録商標) TE,ENAGICOL」シリーズ、「LIPAL(登録商標)」シリーズ及び「LOTAT(登録商標)」シリーズ等;第一工業製薬(株)製のカチオン界面活性剤「カチオーゲン(登録商標)ES-OW」及び「カチオーゲン(登録商標)ES-L」等;があげられる。
【0036】
前記界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
前記水性インクは、さらに、前記水以外の溶媒として、例えば、有機溶媒を含んでいてもよい。
【0038】
前記水性インクは、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。前記添加剤としては、例えば、pH調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、防カビ剤等があげられる。前記粘度調整剤は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等があげられる。
【0039】
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置について説明する。
【0040】
本発明のインクジェット記録装置は、前述のとおり、インク流路、及びインク吐出手段を含み、前記インク流路に供給された本発明の水性インクを、前記インク吐出手段によって画像形成する対象物に吐出することを特徴とする。
【0041】
図1の模式図に、本発明のインクジェット記録装置の一例の構成を示す。図1に示すように、このインクジェット記録装置100は、巻出部101、ローラ等の搬送機構(図示せず)、記録機構、プラテン103、乾燥手段104、巻取部105、並びに、インクカートリッジ又はインクタンク等のインク収容部(図示せず)を備えている。なお、図1においてはプラテン103を含むインクジェット記録装置を示したが、これに限定されず、例えば、プラテン103を含まないインクジェット記録装置であってもよい。また、本発明のインクジェット記録装置は、例えば、メンテナンスユニット(図示せず)を備えていてもよい。巻出部101は、ロール状の記録媒体Pをセット可能である。また、図示していないが、前記インク収容部と、インク吐出手段(インクジェットヘッド102B)とは、インク流路により接続されており、前記水性インクが収容された前記インクカートリッジから、前記インク流路に前記水性インクが供給され、前記インク付与手段は、前記水性インクを画像形成する対象物(記録媒体)Pに付与する。
【0042】
インクジェット記録装置100内部には、ガイド部材により搬送経路(図示せず)が形成されている。記録媒体Pは、図1の矢印で示すように、前記搬送機構及び前記搬送経路により、巻出部101から巻取部105に向けて搬送される。
【0043】
前記記録機構は、キャリッジ102Aと、インクジェットヘッド(インク吐出手段)102Bと、を備えている。キャリッジ102Aは、記録媒体Pの搬送方向と垂直に延設された2本のガイドレール(図示せず)に支持されている。前記2本のガイドレールは、インクジェット記録装置100の筐体(図示せず)に支持されている。キャリッジ102Aは、前記2本のガイドレールに設けられた公知のベルト機構(図示せず)に連結されている。このベルト機構は、キャリッジモータ(図示せず)によって駆動される。前記ベルト機構に連結されたキャリッジ102Aは、前記キャリッジモータの駆動によって、記録媒体Pの搬送方向と垂直方向に往復移動する。
【0044】
また、キャリッジ102Aからは、前記インク収容部及びインクジェットヘッド102Bを接続する4本のインクチューブ(図示せず)と、制御基板(図示せず)及びインクジェットヘッド102Bを電気的に接続するフレキシブルフラットケーブル(図示せず)とが延出されている。前記4本のインクチューブは、前記インク収容部に収容されたイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色の水性インクをインクジェットヘッド102Bに供給する。前記4色の水性インクのうちの少なくとも1つが、本発明のインクジェット記録用水性インクである。前記フレキシブルフラットケーブルは、前記制御基板から出力される制御信号をインクジェットヘッド102Bに伝達する。
【0045】
インクジェットヘッド102Bは、図1に示すように、キャリッジ102Aに搭載されている。インクジェットヘッド102Bの下面には、複数のノズル102Cが形成されている。複数のノズル102Cの先端は、キャリッジ102A及びインクジェットヘッド102Bの下面から露出されている。インクジェットヘッド102Bは、前記インク収容部から前記インクチューブを介してインクジェットヘッド102Bに供給された水性インクを吐出する力を付与するためのアクチュエータ(図示せず)を有している。前記アクチュエータは、圧電素子方式、サーマルインク方式、静電吸引方式等、いかなる方式であってもよい。キャリッジ102Aが記録媒体Pの搬送方向と垂直方向に往復移動する過程において、インクジェットヘッド102Bは、複数のノズル102Cから水性インクを微小なインク滴として吐出する。これにより、記録媒体Pに画像が記録される。プラテン103は、前記記録機構と対向するように配置されており、巻出部101から搬送されてきた記録媒体Pを支持する。なお、図1に示す装置では、ロールトゥロール方式を採用するが、本発明は、これに限定されない。前記インクジェット記録装置は、ライン型インクジェットヘッドやシリアル型インクジェットヘッドを採用する装置であってもよい。なお、前記ロールトゥロール方式は、ロール状の記録媒体を繰り出して印刷し、再びロール状に巻き取る方式である。ライン型インクジェットヘッドは、記録媒体の幅方向全体をカバーするインクジェットヘッドである。前記シリアル型インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドを記録媒体の幅方向に往復させつつ印刷するインクジェットヘッドである。
【0046】
乾燥手段104は、記録媒体Pの記録部分を乾燥する。例えば、記録媒体Pが非吸収性の記録媒体である場合、乾燥手段104により記録媒体Pの記録部分が加熱乾燥されることで、ロール状に巻き取った場合に吐出された水性インクが記録面の背面に転着しなくなる。また、水性インクに含まれる樹脂粒子と架橋剤との間で一部反応(後述する、反応工程)が起こり得る。この乾燥時の記録媒体P上の温度は、例えば、前記樹脂粒子のTgの0.1倍~10倍、0.2倍~8倍の温度、0.5倍~5倍の温度であってもよい。乾燥手段104は、前記記録部分を乾燥可能なものであればいかなるものであってもよい。すなわち、乾燥手段104は、前記記録部分を乾燥可能であれば、加熱を伴わなくてもよい。また、乾燥手段104として加熱を用いる場合の加熱方式は、特に制限されず、例えば、伝熱、対流、輻射等のいかなるものであってもよい。乾燥手段104としては、例えば、ドライヤー(送風、温風)、オーブン、ベルトコンベアオーブン、アイロン、ホットプレス機、プレートヒーター、IRヒーター、マイクロウェーブ等があげられ、ドライヤー、オーブン、ベルトコンベアオーブン、IRヒーター、マイクロウェーブ等の記録媒体Pの記録部分に接触することなく前記記録部分を加熱乾燥する非接触乾燥手段が好ましい。
【0047】
図1に示す装置では、インクジェットヘッド102B側に記録媒体Pの記録部分と対向するように配置された乾燥手段104により記録媒体Pの記録部分を加熱乾燥する一例を示したが、これに限定されない。乾燥手段104は、記録媒体Pの記録部分を加熱乾燥できればよく、例えば、記録媒体Pの記録部分と反対側、すなわち、インクジェットヘッド102Bのノズル102Cと対向する側に配置されてもよい。
【0048】
記録・乾燥後の記録媒体Pは、巻取部105へと搬送される。
【0049】
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法について説明する。
【0050】
本発明のインクジェット記録方法は、記録工程、定着工程を含み、前記記録工程は、記録媒体に水性インクをインクジェット方式により付与して記録する工程であり、前記定着工程は、前記付与した前記水性インクを、前記記録媒体に定着させる工程であり、前記水性インクとして、本発明のインクジェット記録用水性インクを用いることを特徴とする。
【0051】
前記記録工程及び前記定着工程、例えば、図1に示すインクジェット記録装置を用いて実施できる。
【0052】
本発明のインクジェット記録方法においては、例えば、最初に画像記録する記録媒体として中間転写体を用い、中間転写体上に凝集液吐出工程と水性インク吐出工程を設け、中間転写体上に画像を形成した後に中間転写体に形成された画像を所望とする最終の記録媒体に転写する転写工程を設けた方法であってもよい。
【0053】
本発明のインクジェット記録方法において、前記記録媒体としては、例えば、ロール状の記録媒体があげられる。前記記録媒体は、例えば、フィルム媒体、又は感熱発色層を構成に含む媒体等があげられる。前記フィルム媒体は、例えば、二軸延伸PET樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性が高いフィルム媒体や、ポリプロピレン、塩化ビニルを含む耐熱性が低いフィルム媒体等があげられる。前記耐熱性が低いフィルム媒体としては、例えば、ポリプロピレン、塩化ビニルの他に、無延伸PET樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、PVA樹脂、ナイロン樹脂、ポリウレタン樹脂等があげられる。前記記録媒体は、例えば、コート紙であってもよい。本発明において、「コート紙」とは、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙等のパルプを構成要素とした普通紙に、平滑性、白色度、光沢度等の向上を目的として、コート剤を塗布したものをいい、具体的には、上質コート紙、中質コート紙等があげられる。
【0054】
前記定着工程は、例えば、反応工程を含む。前記反応工程は、例えば、前記記録媒体に定着させた水性インク中の架橋剤と樹脂粒子とを加熱により反応させる工程である。前記反応工程は、例えば、図1に示すインクジェット記録装置における乾燥手段104により実施してもよい。前述のとおり、乾燥手段104により前記記録媒体の記録部分が加熱乾燥されることで、水性インクに含まれる樹脂粒子と架橋剤との間で一部反応が起こり得る。また、前記反応工程は、乾燥手段104以外の他の加熱手段により実施してもよいし、乾燥手段104及び前記他の加熱手段を併用して実施してもよい。なお、乾燥手段104及び前記他の加熱手段を併用して実施する場合は、後述する加熱温度及び加熱期間ならびに熱量は、乾燥手段104及び前記他の加熱手段で実施した加熱の累積条件とすることができる。
【0055】
前記定着工程は、例えば、前記記録媒体の記録部分に対して一定の熱量を与える加熱を含んでもよい。前記熱量は、例えば、109J/cm以上、152J/cm以上、又は196J/cm以上であってもよく、414J/cm、370J/cm以下、239J/cm以下又は以下であってもよい。
【0056】
前記定着工程における加熱温度は、例えば、60℃以上、70℃以上、又は80℃以上であってもよく、120℃以下、110℃以下、100℃以下、又は90℃以下であってもよい。また、前記定着工程における加熱期間は、例えば、下限値が10時間以上、又は12時間以上であってもよく、上限値は特に限定されず、例えば、1か月以下、2週間以下、1週間以下、5日以下、3日以下、又は1日以下であってもよい。
【0057】
本発明のインクジェット記録方法は、例えば、本発明のインクジェット記録装置を用いて実施可能である。前記記録は、印字、印画、印刷等を含む。
【0058】
本発明の水性インク、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法によれば、前記架橋剤として前記ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度が120℃以下であるものを用いること、さらには低温長時間のエイジング(前記加熱)を行うことにより、耐アルコール性を担保しつつも、耐熱性の低い媒体のカールや収縮等の不具合が起こりづらくなる。また、乾燥工程を挟んでインクを乾燥させた場合には、ロールトゥロールの媒体を巻き取った場合においても、前記媒体の記録側反対面にインクが転着しにくくなる。
【実施例0059】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例及び比較例により限定及び制限されない。
【0060】
(実施例1~20、比較例1~13)
水性インク組成(表1~3)における、色材(顔料)を除く成分を、均一に混合し、インク溶媒を得た。次に、色材を前記インク溶媒に加え、均一に混合した。その後、得られた混合物を、東洋濾紙(株)製のセルロースアセテートタイプメンブレンフィルタ(孔径3.00μm)でろ過することで、表1~3に示す実施例1~20、比較例1~13のインクジェット記録用水性インクを得た。
【0061】
実施例1~20及び比較例1~13の水性インクについて、(a)耐アルコール性評価、及び(b)保存安定性評価を下記方法により実施した。
【0062】
(a)耐アルコール性評価
感熱合成紙(日榮新化(株)製、商品名:FTS80-X43375(10)DG)に対して、実施例1~20及び比較例1~13のいずれかの水性インクを用いて、インクジェットプリンタ(ブラザー工業(株)製、商品名:MFC-J6995CDW)で印刷を行った。その後、(1)120℃で3分間乾燥させたもの(以下、「条件1」という場合がある。)、及び(2)60℃で1分間乾燥させたのち、60℃で12時間静置させたもの(以下、「条件2」という場合がある。)、の2種類について、記録面の耐アルコール性を評価した。耐アルコール性は、水で70%の濃度に希釈したエタノールを含ませた綿棒を用いて、1kgの荷重で10回擦過した前後のOD値の変化率を、下記評価基準に従って評価した。
【0063】
耐アルコール性評価 評価基準
A:擦過した前後のOD値の変化率が10%未満
B:擦過した前後のOD値の変化率が10%以上、50%未満
C:擦過した前後のOD値の変化率が50%以上
【0064】
(b)保存安定性評価
粘度を測定した調製直後の水性インクを、密閉容器に入れ、温度60℃、相対湿度40%の環境下に1週間保存した。このようにして作製した評価サンプルの粘度を測定し、下記評価基準に従って保存安定性を評価した。前記粘度は、粘度計(東機産業(株)製のTVE-25形)を用いて、25℃で測定した。
【0065】
保存安定性評価 評価基準
A:60℃1週間後の粘度変化率が5%未満
B:60℃1週間後の粘度変化率が5%以上、10%未満
C:60℃1週間後の粘度変化率が10%以上
【0066】
実施例1~20、比較例1~13の水性インクの水性インク組成及び評価結果を、表1~3に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
表1~2に示すように、実施例1~20は、条件1の耐アルコール性評価及び保存安定性評価がすべて「B」以上であった。
【0071】
また、自己分散型のブロックイソシアネートを使用し、かつ、樹脂粒子を5.5重量%以上、架橋剤を6.8重量%以上とした、実施例1~13は、条件2の耐アルコール性評価がすべて「B」以上であった。これは、例えば、自己分散型のブロックイソシアネートを使用した場合は、乳化型のブロックイソシアネートのような残存分子(乳化剤)が塗膜中にないため、残存分子を起点としてアルコール分子が塗膜に侵入しないためであると考えられる。また、樹脂粒子の量が一定以上である場合には膜の主要な構成要素が充足され、架橋剤の量が一定以上である場合には架橋構造を十分に取るため、耐アルコール性が向上したと考えられる。
【0072】
さらに、樹脂粒子を7.0重量%以上とし、かつ、前記含有比(B/A)を0.3以上とした、実施例4~13は、条件1の耐アルコール性評価がすべて「A」以上であった。これは、例えば、前記含有比(B/A)を一定以上、すなわち樹脂粒子に対して架橋剤の量を一定以上とすれば、架橋構造を十分に取るため、耐アルコール性が向上したと考えられる。
【0073】
加えて、樹脂粒子を7.0重量%以上かつ8.5重量%以下とし、前記含有比(B/A)を0.3以上かつ0.4未満とした、実施例8~13は、保存安定性評価がすべて「A」以上であった。これは、例えば、樹脂粒子の量が一定の範囲内であれば、樹脂粒子間が相互作用しないことにより増粘が発生しないため、保存安定性が良化したと考えられる。また、前記含有比(B/A)が一定の範囲内であれば、樹脂粒子と架橋剤との反応の進行を一定に保つことができるため、保存安定性が良化したと考えられる。
【0074】
樹脂粒子として保護コロイド分散型のものを使用した、実施例9及び12は、条件1及び2の耐アルコール性、並びに保存安定性のすべてが「A」以上であった。
【0075】
一方で、表3に示すように、本発明の要件を満たさない比較例1~13は、条件1の耐アルコール性評価、及び保存安定性評価の少なくとも一方が「C」評価であった。
【0076】
上記実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載し得るが、以下には限定されない。
(付記1)
顔料、樹脂粒子、架橋剤、及び水を含み、
前記樹脂粒子が、アクリル系樹脂を含む樹脂粒子であり、
前記架橋剤が、乳化分散型または自己分散型のブロックイソシアネートであり、
前記ブロックイソシアネートのブロック剤の解離温度が、120℃以下である、
インクジェット記録用水性インク。
(付記2)
前記水性インク全量において、前記樹脂粒子の固形分含有量(A)と前記架橋剤の固形分含有量(B)との含有比(B/A)が、0.4以下である、付記1記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記3)
前記水性インク全量において、
前記樹脂粒子の固形分含有量が、5.5重量%以上であり、
前記架橋剤の固形分含有量が、2.1重量%以上であり、
前記架橋剤が、自己分散型のブロックイソシアネートである、
付記1又は2記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記4)
前記水性インク全量において、
前記樹脂粒子の固形分含有量が、7.0重量%以上であり、
前記架橋剤の固形分含有量が、2.1重量%以上であり、
前記含有比(B/A)が、0.3以上であり、
前記架橋剤が、自己分散型のブロックイソシアネートである、
付記1から3のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記5)
前記水性インク全量において、
前記樹脂粒子の固形分含有量(A)が、7.0重量%以上かつ8.5重量%以下であり、
前記含有比(B/A)が、0.3以上かつ0.4未満であり、
前記架橋剤が、自己分散型のブロックイソシアネートである、
付記1から4のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記6)
前記樹脂粒子が、保護コロイド分散されたアクリルスチレン系樹脂を含む樹脂粒子であり、
前記水性インク全量において、
前記樹脂粒子の固形分含有量(A)が、7.0重量%以上かつ8.5重量%以下であり、
前記含有比(B/A)が、0.3以上かつ0.4未満であり、
前記架橋剤が、自己分散型のブロックイソシアネートである、
付記1から5のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インク。
(付記7)
インク流路、及びインク吐出手段含み、
前記インク流路に供給された付記1から6のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクを、前記インク吐出手段によって画像形成する対象物に吐出する、
インクジェット記録装置。
(付記8)
記録工程、定着工程を含み、
前記記録工程は、記録媒体に水性インクをインクジェット方式により付与して記録する工程であり、
前記定着工程は、前記付与した前記水性インクを、前記記録媒体に定着させる工程であり、
前記水性インクとして、付記1から6のいずれかに記載のインクジェット記録用水性インクを用いる、
インクジェット記録方法。
(付記9)
前記定着工程は、乾燥工程を含み、
前記乾燥工程は、乾燥手段により、前記記録媒体の記録部分を前記記録媒体に定着させる工程である、付記8記載の記録方法。
(付記10)
前記定着工程は、反応工程を含み、
前記反応工程は、前記記録媒体に定着させた水性インク中の架橋剤と樹脂粒子とを加熱により反応させる工程である、付記8又は9記載の記録方法。
(付記11)
前記定着工程において、前記記録媒体の記録部分に対して109J/cm以上かつ414J/cm以下の熱量を与える加熱を含む、付記8から10のいずれかに記載の記録方法。
(付記12)
前記定着工程における加熱が、60℃以上かつ10時間以上の加熱を含む、付記8から11のいずれかに記載の記録方法。
(付記13)
前記記録媒体が、ロール状の記録媒体であり、
前記記録媒体が、ポリプロピレンもしくは塩化ビニルを含むフィルム媒体、又は感熱発色層を構成に含む媒体である、付記8から12のいずれかに記載の記録方法。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明の水性インクは、耐アルコール性とインクの保存安定性を両立することが可能である。本発明の水性インクの用途は、各種記録媒体へのインクジェット記録に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
100 インクジェット記録装置
101 巻出部
102A キャリッジ
102B インクジェットヘッド(インク吐出手段)
102C ノズル
103 プラテン
104 乾燥手段
105 巻取部
図1