(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150362
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】密封装置および転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20241016BHJP
F16C 19/04 20060101ALI20241016BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20241016BHJP
F16C 33/80 20060101ALI20241016BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20241016BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20241016BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F16C33/78 Z
F16C19/04
F16C19/18
F16C33/80
F16J15/3232
F16J15/18 Z
F16J15/447
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063768
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】水貝 智洋
【テーマコード(参考)】
3J006
3J042
3J043
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE12
3J006AE16
3J006AE30
3J006AE34
3J006AE41
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3J216AA02
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3J701AA02
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3J701BA73
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3J701FA13
3J701GA03
(57)【要約】
【課題】外部から浸入する水などを軸受外部へ排出することが可能な密封装置、および、該密封装置を備える転がり軸受を提供する。
【解決手段】密封装置5は、軸受空間を密封する密封装置であって、シール部材7を有し、シール部材7において、少なくとも撥水処理面を有する表面処理面10が形成されており、表面処理面10は、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分を有しており、軸受内部側に撥水処理面と、軸受外部側に撥油処理面と、これらの中間部分に撥水処理面と撥油処理面とを混在させた混在面とを構成し、軸受内部側から軸受外部側に向かって撥水処理面の面積率が連続的または段階的に減少する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪または内輪のいずれか一方の軌道輪に固定され軸受空間を密封する密封装置であって、
前記密封装置はシール部材を有し、該シール部材において、少なくとも撥水処理面を有する表面処理面が形成されており、該表面処理面は、軸受内部側の前記撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分を有することを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記表面処理面は、軸受内部側に前記撥水処理面と、軸受外部側に撥油処理面と、これらの中間部分に前記撥水処理面と前記撥油処理面とを混在させた混在面とを構成し、軸受内部側から軸受外部側に向かって前記撥水処理面の面積率が連続的または段階的に減少することを特徴とする請求項1記載の密封装置。
【請求項3】
前記表面処理面は、前記撥水処理面として第1の撥水処理面と、該第1の撥水処理面よりも接触角の小さな第2の撥水処理面を有しており、軸受内部側に前記第1の撥水処理面と、軸受外部側に前記第2の撥水処理面と、これらの中間部分に前記第1の撥水処理面と前記第2の撥水処理面とを混在させた混在面とを構成し、軸受内部側から軸受外部側に向かって前記第1の撥水処理面の面積率が連続的または段階的に減少することを特徴とする請求項1記載の密封装置。
【請求項4】
前記撥水処理面が撥水親油処理面であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の密封装置。
【請求項5】
前記撥水処理面が撥水撥油処理面であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の密封装置。
【請求項6】
前記撥油処理面が親水撥油処理面であることを特徴とする請求項2記載の密封装置。
【請求項7】
前記シール部材は相手部材と摺接するリップを有し、そのリップ表面の軸受内部側からシール部を経由し軸受外部側にかけた領域に前記表面処理面が形成されており、前記シール部において、軸受内部側の前記撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の密封装置。
【請求項8】
前記シール部材は前記リップとして、第1のリップと、該第1のリップよりも外側に設けられる第2のリップとを有し、
前記第2のリップに形成される前記表面処理面における前記シール部よりも軸受内部側の前記撥水処理面の面積率が、前記第1のリップに形成される前記表面処理面における前記シール部よりも軸受内部側の前記撥水処理面の面積率よりも大きいことを特徴とする請求項7記載の密封装置。
【請求項9】
前記シール部材は前記軌道輪とラビリンス隙間を介して対向するリップを有し、そのリップ表面の軸受内部側から軸受外部側にかけた領域に前記表面処理面が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の密封装置。
【請求項10】
内輪と、外輪と、該内輪および外輪の間に介在する複数の転動体と、前記外輪または前記内輪のいずれか一方の軌道輪に固定され軸受空間を密封する密封装置と、軸受空間に封入されるグリース組成物とを有する転がり軸受であって、
前記密封装置が請求項1または請求項2記載の密封装置であることを特徴とする転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受に封入されたグリースなどの潤滑剤の漏洩および外部からのダスト、水などの異物の浸入を防止する転がり軸受の密封装置、および該転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機械、装置の回転支持部に用いられる転がり軸受においては、転がり軸受の両側面に密封装置を配置し、その内部にグリースなどの潤滑剤を封入して、外部からの異物の浸入を防止するとともに、内部からの潤滑剤の漏洩を防止するようにした転がり軸受が広く用いられている。
【0003】
従来から、密封装置の構成要素などに撥水処理を施して、軸受内部への泥水などの浸入を防止する技術が知られている。例えば、特許文献1では、スリンガに、軸受外部側に傾斜する傾斜部が設けられており、このスリンガの傾斜部に撥水処理膜が形成されている。また、特許文献2では、スリンガの環状部の内輪の外周面に対する嵌合面および内輪の外周面のいずれかまたは双方と、芯金の環状部の外輪の内周面に対する嵌合面および外輪の内周面のいずれかまたは双方と、のうち少なくとも一方に、凹凸状の撥水性被膜が形成されている。
【0004】
また、特許文献3では、非接触形の密封装置を備える転がり軸受において、密封装置のうち一方の軌道輪に取り付けられる取付部と、一方の軌道輪のうち取付部が取り付けられる被取付部と、密封装置のうち他方の軌道輪に隙間を空けて対向するシール部と、他方の軌道輪の表面のうちシール部に対向する対向面と、のうち少なくとも一つに、母材の表面に撥水性および撥油性を付与する表面処理が施されている。これにより、潤滑剤の漏出が生じにくく異物の浸入を生じにくいとしている。
【0005】
一方、液滴を輸送する技術として、基板上面を、液滴が流れる際の上流側を第1の疎水面、その下流側を第1の疎水面より接触角が小さい第2の疎水面、これらの中間部分を第1の疎水面と第2の疎水面とを混在させて構成し、上流から下流に向け上記第2の疎水面の面積を連続的に増加させた微量液滴輸送デバイスが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-048147号公報
【特許文献2】特開2010-236622号公報
【特許文献3】特開2012-167765号公報
【特許文献4】特開2005-331410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1では、スリンガの軸受外部側に傾斜する傾斜部に撥水処理膜が形成されており、密封装置に水がかかっても、回転時の遠心力でフランジ傾斜部に沿って軸受外部側に振り飛ばされ、密封装置内部に水が浸入しにくくなっている。しかし、回転停止時には遠心力は作用せず、水などを軸受外部へ排出する機能は生じないことから、密封装置内部に水などが浸入するおそれがあった。
【0008】
また、特許文献2や特許文献3に図示されているようなラジアル接触する傾斜のない面では、潤滑剤を軸受内部へ戻す機能や外部からの水を排出する機能は、回転時を含めて生じない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、外部から浸入する水などを軸受外部へ排出することが可能な密封装置、および、該密封装置を備える転がり軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の密封装置は、外輪または内輪のいずれか一方の軌道輪に固定され軸受空間を密封する密封装置であって、上記密封装置はシール部材を有し、該シール部材において、少なくとも撥水処理面を有する表面処理面が形成されており、該表面処理面は、軸受内部側の上記撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の密封装置において、表面処理面は、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分を有するとは、表面処理面の任意の部分を基準としてみた場合、その部分における軸受内部側の撥水処理面の面積が、その部分における軸受外部側の撥水処理面の面積(ゼロの場合も含む)よりも大きいことをいう。また、撥水処理面は撥水作用(水をはじく作用)を有していればよく、例えば、油に対しては親油作用や撥油作用を有していてもよい。また、撥油処理面は撥油作用(油をはじく作用)を有していればよく、例えば、水に対しては親水作用や撥水作用を有していてもよい。
【0012】
上記表面処理面は、軸受内部側に上記撥水処理面と、軸受外部側に撥油処理面と、これらの中間部分に上記撥水処理面と上記撥油処理面とを混在させた混在面とを構成し、軸受内部側から軸受外部側に向かって上記撥水処理面の面積率が連続的または段階的に減少することを特徴とする。
【0013】
上記表面処理面は、上記撥水処理面として第1の撥水処理面と、該第1の撥水処理面よりも接触角の小さな第2の撥水処理面を有しており、軸受内部側に上記第1の撥水処理面と、軸受外部側に上記第2の撥水処理面と、これらの中間部分に上記第1の撥水処理面と上記第2の撥水処理面とを混在させた混在面とを構成し、軸受内部側から軸受外部側に向かって上記第1の撥水処理面の面積率が連続的または段階的に減少することを特徴とする。
【0014】
上記撥水処理面が撥水親油処理面または撥水撥油処理面であることを特徴とする。ここで、撥水親油とは水をはじいて油になじむ性質をいい、撥水撥油とは水も油もはじく性質をいう。
【0015】
上記撥油処理面が親水撥油処理面であることを特徴とする。ここで、親水撥油とは水になじんで油をはじく性質をいう。
【0016】
上記シール部材は相手部材と摺接するリップを有し、そのリップ表面の軸受内部側からシール部を経由し軸受外部側にかけた領域に上記表面処理面が形成されており、上記シール部において、軸受内部側の上記撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている。接触形の密封装置において、シール部材のシール部とは、シール部材が相手部材(スリンガや軌道輪など)と摺接する部分をいう。
【0017】
上記シール部材は上記リップとして、第1のリップと、該第1のリップよりも外側に設けられる第2のリップとを有し、上記第2のリップに形成される上記表面処理面における上記シール部よりも軸受内部側の上記撥水処理面の面積率が、上記第1のリップに形成される上記表面処理面における上記シール部よりも軸受内部側の上記撥水処理面の面積率よりも大きいことを特徴とする。
【0018】
上記シール部材は上記軌道輪とラビリンス隙間を介して対向するリップを有し、そのリップ表面の軸受内部側から軸受外部側にかけた領域に上記表面処理面が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の密封装置はシール部材を有し、該シール部材において、少なくとも撥水処理面を有する表面処理面が形成されており、該表面処理面は、軸受内部側の上記撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分を有しており、当該部分では、軸受内部側の方が軸受外部側よりも撥水機能が高くなっている。そのため、軸受内部側から軸受外部側に向けて水などが流れやすくなり、外部から浸入する水などを軸受外部へ排出することが可能となる。
【0020】
具体的な形態として、表面処理面は、軸受内部側に撥水処理面と、軸受外部側に撥油処理面と、これらの中間部分に撥水処理面と撥油処理面とを混在させた混在面とを構成し、軸受内部側から軸受外部側に向かって撥水処理面の面積率が連続的または段階的に減少しており、この場合、軸受内部側は撥水機能が高く、軸受外部側に向けて撥水機能が低くなる一方、軸受外部側は撥油機能が高く、軸受内部側に向けて撥油機能が低くなる。そのため、軸受内部側から軸受外部側に向けて水などが流れやすくなるとともに、軸受外部側から軸受内部側に向けて油が流れやすくなる。その結果、軸受外部から浸入、付着した水、泥水などを軸受外部側へ排出し、軸受内部やシールリップ間に封入されたグリースやグリースから離油した潤滑油を軸受内部側へ戻す作用が生じ、外部からの水、泥水などの浸入、およびグリースの漏洩を防止できる。
【0021】
また、別の形態として、表面処理面は、軸受内部側に第1の撥水処理面と、軸受外部側に第1の撥水処理面よりも接触角の小さな第2の撥水処理面と、これらの中間部分に第1の撥水処理面と第2の撥水処理面とを混在させた混在面とを構成し、軸受内部側から軸受外部側に向かって第1の撥水処理面の面積率が連続的または段階的に減少している。この場合、軸受内部側に比べて軸受外部側の撥水処理面のはじきが低下することになり、その結果、軸受内部側から軸受外部側に向けて水などが流れやすくなる。
【0022】
シール部材は相手部材と摺接するリップを有し、そのリップ表面の軸受内部側からシール部を経由し軸受外部側にかけた領域に表面処理面が形成されており、シール部において、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっているので、密封装置において、特に水などが浸入しやすい箇所において、外部からの水などを軸受外部へ排出できる。また、第2のリップに形成される表面処理面における軸受内部側の撥水処理面の面積率が、第1のリップに形成される表面処理面における軸受内部側の撥水処理面の面積率よりも大きいので、外部からの水などの浸入を防止する役割を主に担う外側のリップに、より高い排出機能を持たせることで、軸受内部への水などの浸入を好適に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の密封装置を備えた転がり軸受の一例の一部断面図である。
【
図3】表面処理面の構成の一例を説明するための模式図である。
【
図4】表面処理面の構成の他の例を説明するための模式図である。
【
図5】本発明の密封装置の他の形態を示す一部断面図である。
【
図6】本発明の密封装置を備えた転がり軸受の他の例を示す縦断面図である。
【
図7】
図6のアウトボード側の密封装置を示す拡大断面図である。
【
図8】本発明の密封装置を備えた転がり軸受の他の例の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の転がり軸受の一例を示す一部断面図である。転がり軸受1は、外周面に内輪軌道面2aを有する内輪2と内周面に外輪軌道面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪軌道面2aと外輪軌道面3aとの間に複数個の転動体4が配置されている。この転動体4は、保持器(図示省略)によって保持される。また、内輪2と外輪3との間に形成される軸受空間の軸方向両端開口部には、密封装置5が装着されている。密封装置5によって、軸受内に封入されたグリース(図示省略)やグリースから離油した潤滑油の漏洩と、外部から雨水やダストなどが軸受内に浸入するのを防止している。
【0025】
密封装置5は、冷間圧延鋼鈑などをプレス加工にて形成された円板状の芯金6と、この芯金6に一体に加硫接着されたシール部材7とで構成される。シール部材7の材質には、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴムなどが用いられる。
【0026】
図1において、シール部材7は、内輪2側の端部において、先端が二股状に分岐して形成されたメインリップ8と、そのメインリップ8よりも軸受空間の外方側に位置するダストリップ9とを有する。シール部材7は、その一部が、外輪3の端部内周の周方向溝3bに固定されるとともに、各シールリップが、内輪2の端部外周に形成された断面略U字形の周方向溝2bなどに摺接する。
【0027】
ここで、本発明の密着装置では、シール部材において、少なくとも撥水処理面を有する表面処理面が形成されており、該表面処理面は、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分を有する。シール部材における当該部分の形成箇所は、特に限定されず、例えば、シールリップにおいては、シール部よりも外側のみの部分でもよく、シール部を含む部分(例えば、シール部を境とした軸受内部側および軸受外部側を含む部分)でもよく、シール部よりも内側のみの部分でもよい。また、シールリップ以外の部分でもよく、例えば、ラビリンス隙間部(
図5、
図7参照)や、回転軸と平行な遠心力が作用しない部分でもよい。後者の場合、当該部分に上記表面処理面を形成することで、遠心力が作用する部分まで、水を輸送する効果が期待できる。
【0028】
そして、上記の部分において軸受内部側の領域と軸受外部側の領域とした場合に、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側の撥水処理面の面積率よりも大きくなっている。この具体的な態様について、以下に説明する。
【0029】
図2は、
図1の要部拡大図であり、シール部材7の摺接側の周辺部を示している。メインリップ8は、周方向溝2bの軸受内部側の立ち上がり面に摺接し、ダストリップ9は、内輪2の小径部(周方向溝の畝部)2cに摺接する。シールリップ8、9において、内輪2と摺接する部分がシール部8a、9aを構成している。
【0030】
シール部材7において、シールリップ8、9には、それぞれ表面処理面10(クロスハッチングの箇所)が形成されている。
図2では、シールリップ8、9において、そのリップ表面の軸受内部側からシール部8a、9aを経由し軸受外部側にかけた領域に表面処理面10が形成されている。表面処理面10は、少なくとも撥水処理面を有している。
【0031】
図2において、例えば、メインリップ8の表面処理面10において、シール部8aよりも軸受内部側r
1の撥水処理面の面積率が、軸受外部側r
2よりも大きくなっていてもよい。また、ダストリップ9の表面処理面10において、シール部9aよりも軸受内部側r
3の撥水処理面の面積率が、軸受外部側r
4よりも大きくなっていてもよい。この場合、表面処理面10は、少なくともシール部8a、9aよりも軸受内部側r
1、r
3に撥水処理面を有していればよく、軸受外部側r
2、r
4に撥水処理面を有していなくてもよい。
【0032】
次に、表面処理面10の構成の一例を
図3に示す。
図3は、表面処理面の全体を模式的に平面で示した図であり、図左側が軸受内部側、図右側が軸受外部側を表す。
図3において、表面処理面10は、軸受内部側に撥水処理面として撥水親油処理面11を有している。また、軸受外部側に撥油処理面として親水撥油処理面12を有している。より具体的には、表面処理面10は、軸受内部側に撥水親油処理面11と、軸受外部側に親水撥油処理面12と、これらの中間部分に撥水親油処理面11と親水撥油処理面12とを混在させた混在面13とを構成している。さらに、軸受内部側から軸受外部側に向かって撥水親油処理面11の面積が連続的に減少するように構成している。
【0033】
混在面13において、撥水親油処理面11は、面積が軸受内部側から軸受外部側に向けて減少する楔形状の部分を複数有しており、これらが周方向に沿って配置されている。また、親水撥油処理面12は、面積が軸受外部側から軸受内部側に向けて減少する楔形状の部分を複数有しており、これらが周方向に沿って配置されている。混在面13では、周方向に沿って撥水親油処理面11と親水撥油処理面12とが交互に配置されている。なお、例えば、シール部8a、9a(
図2参照)における表面処理面が混在面13の部分で構成される場合、当該シール部において、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなる。
【0034】
図3に示すように、表面処理面10は、軸受内部側の撥水処理面(撥水親油処理面11)の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分(例えばA部)を有する。例えば、A部において、軸受内部側の撥水親油処理面11の面積率([A部の軸受内部側の撥水親油処理面11の面積/A部の軸受内部側の面積]×100;%)は、軸受外部側の撥水親油処理面11の面積率([A部の軸受外部側の撥水親油処理面11の面積/A部の軸受外部側の面積]×100;%)よりも大きくなっている。
【0035】
図3の構成では、軸受内部側は撥水親油処理面11の面積率が大きいことから撥水機能が高く、軸受外部側に向けて撥水機能が低くなる。その結果、
図3に示すように、軸受内部側から軸受外部側(右側)に向けて水滴が流れやすくなる。これにより、外部から水などが浸入するような状況であっても、水などを軸受外部へ排出することができる。
【0036】
一方、軸受外部側は親水撥油処理面12の面積率が大きいことから撥油機能が高く、軸受内部側に向けて撥油機能が低くなる。その結果、
図3に示すように、軸受外部側から軸受内部側に向けて油滴が流れやすくなる。これにより、軸受内部に封入されたグリースなどが流出するような状況であっても、グリースなどを軸受内部へ戻すことができる。
【0037】
図3では、撥水処理面として撥水親油処理面11を構成していることから、当該処理面が軸受内部側で油になじむことになり、軸受内部側から流出しようとした油がこの撥水親油処理面で溜まり、軸受外部への流出を防止できる。
【0038】
撥水親油処理面11は、例えば、撥水親油性樹脂を塗布することによって形成できる。撥水親油性樹脂としては、シリコーン樹脂などを用いることができる。
【0039】
親水撥油処理面12は、例えば、親水撥油樹脂を塗布することによって形成できる。親水撥油樹脂としては、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂やセルロースなどが挙げられる。ポリビニルアセタール系樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒド類で架橋した重合体であってもよい。また、両性型含窒素フッ素系化合物などの親水撥油剤なども用いることができる。
【0040】
また、撥水面や撥油面は、表面テクスチャによっても形成でき、例えば金型表面にレーザを照射することなどによってテクスチャを加工し、シールに転写することにより形成できる。
【0041】
ここで、表面処理面の構成は特に限定されず、例えば下記の表1に示す構成を適宜採用することができる。
【0042】
【0043】
表1において、「構成例1」は上記
図3に示した構成である。
【0044】
「構成例2」は、「構成例1」の軸受外部側の親水撥油処理面を省略した構成である。すなわち、親水撥油処理は施さず、撥水親油処理の面積のみを連続的に変化させている。この構成でも、軸受内部側から軸受外部側へ水滴が流れやすくなり、水滴の輸送方向を制御することができる。
【0045】
「構成例3」は、「構成例2」の撥水親油処理面に代えて、撥水撥油処理面を採用した構成であり、外部からの浸入防止を重視している。この構成でも、軸受内部側から軸受外部側へ水滴が流れやすくなり、水滴の輸送方向を制御することができる。また、油滴についても、軸受内部側から軸受外部側へ流れやすくなる。なお、撥水撥油処理面は、例えばフッ素系化合物、シリコーン系化合物などの撥水撥油樹脂を塗布することなどによって形成できる。
【0046】
「構成例4」を模式的に示した図を
図4に示す。表面処理面14は、軸受内部側に撥水処理面を有するとともに、軸受外部側にも撥水処理面を有している。この場合も、表面処理面14において、軸受内部側の撥水処理面(主に第1の撥水処理面)の面積率は、軸受外部側の撥水処理面(主に第2の撥水処理面)の面積率よりも大きくなっている。
図4では、表面処理面14は、軸受内部側に第1の撥水処理面15と、軸受外部側に第1の撥水処理面よりも接触角の小さな第2の撥水処理面16と、これらの中間部分に第1の撥水処理面15と第2の撥水処理面16とを混在させた混在面17とを構成している。さらに、軸受内部側から軸受外部側に向かって第1の撥水処理面15の面積が連続的に減少するように構成している。
【0047】
混在面17において、第1の撥水処理面15は、面積が軸受内部側から軸受外部側に向けて減少する楔形状の部分を複数有しており、これらが周方向に沿って配置されている。また、第2の撥水処理面16は、面積が軸受外部側から軸受内部側に向けて減少する楔形状の部分を複数有しており、これらが周方向に沿って配置されている。混在面17では、周方向に沿って第1の撥水処理面15と第2の撥水処理面16とが交互に配置されている。なお、例えば、シール部8a、9a(
図2参照)における表面処理面が混在面17の部分で構成される場合、当該シール部において、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなる。
【0048】
図4に示すように、表面処理面14は、軸受内部側の撥水処理面(第1の撥水処理面15)の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分(例えばB部)を有する。例えば、B部において、軸受内部側の第1の撥水処理面15の面積率([B部の軸受内部側の第1の撥水処理面15の面積/B部の軸受内部側の面積]×100;%)は、軸受外部側の第1の撥水処理面15の面積率([B部の軸受外部側の第1の撥水処理面15の面積/B部の軸受外部側の面積]×100;%)よりも大きくなっている。
【0049】
ここで、接触角は、液面と固体面とのなす角度である。第1の撥水処理面15に滴下された水滴の接触角をθa、第2の撥水処理面16に滴下された水滴の接触角をθbとすると、接触角θa、θbはいずれも90°以上(水をはじく性質)であり、θa>θbの関係を満たす。この場合、軸受内部側よりも軸受外部側の方が水のぬれ性がよい。そのため、表面処理面14では、軸受内部側から軸受外部側へ水滴が流れやすくなり、水滴の輸送方向を制御することができる。
【0050】
「構成例5」は、「構成例2」の撥水親油処理面に代えて、基本的な撥水面を採用した例である。この撥水面は、一般的な撥水処理を施すことによって形成される。この構成でも、軸受内部側から軸受外部側へ水滴が流れやすくなり、水滴の輸送方向を制御することができる。
【0051】
なお、「構成例1」~「構成例5」では、軸受内部側から軸受外部側に向かって撥水処理面の面積が連続的に減少するように構成したが、これに限らず、段階的に減少するように構成してもよい。
【0052】
図2に示すように、シール部材7において、シールリップ8、9には、表面処理面10がそれぞれ設けられているが、これらのリップ間で、表面処理面10の構成を互いに同じとしてもよく、また異ならせてもよい。メインリップ8は、主にダストリップを通過した水や異物の内部への浸入を防止し、ダストリップ9は、主に外部から内部への水や異物の流入、および外部へのグリースの流出を防止する役割を担っている。
【0053】
ダストリップは、リップ内側には塗布したグリースが存在するが、リップ外側にはグリースを塗布していないためグリースが存在せず、状況によっては多量の水が存在する場合もある。一方、メインリップは、リップの両側にグリースが存在し。リップ外側に存在する水はダストリップと比較すると通常は少ない。ダストリップ内側のグリースは、運転時間の経過とともにグリース中の基油が蒸発および外部への漏れ出しにより減少する場合がある。グリース中の基油が減少すると、リップの摺接部分の油膜が不十分となり水の浸入を防止できないおそれがある。
【0054】
そこで、各シールリップの状況、役割を考慮して、例えば、メインリップ8の表面処理面10に上記「構成例3」を採用し、ダストリップ9の表面処理面10に上記「構成1」~「構成例2」のいずれかを採用するようにしてもよい。すなわち、水の浸入およびグリースの流出を防止する役割を主に担うダストリップ9の表面処理面では、水滴を外部へ、油滴を内部へ輸送制御させる一方で、水の浸入を防止する役割を主に担うメインリップ8の表面処理面では、水滴の外部への輸送に加え、油滴も外部すなわちダストリップ側へ輸送することで、ダストリップ近傍のグリースに基油が供給され、ダストリップ近傍のグリース中の基油成分の減少を抑制し、長期にわたって密封性を維持することができる。
【0055】
また、ダストリップ9の表面処理面10におけるシール部9aよりも軸受内部側r3の撥水処理面の面積率を、メインリップ8の表面処理面10におけるシール部8aよりも軸受内部側r1の撥水処理面の面積率よりも大きくするようにしてもよい。これにより、軸受外部側に位置するダストリップ9の水などの排出機能をより高めることができる。
【0056】
なお、シール部材において、複数のリップのうち全てのリップに、上述の表面処理面が形成されていなくてもよい。例えば、
図2において、ダストリップ9には表面処理面を設けず、メインリップ8にのみ上述の表面処理面を設けてもよい。これにより、表面処理に伴うコストの増大を抑えつつ、水などの浸入を効果的に抑制することができる。
【0057】
図1では転がり軸受として玉軸受について例示したが、本発明の密封装置は、上記以外の円筒ころ軸受、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受、針状ころ軸受、スラスト円筒ころ軸受、スラスト円すいころ軸受、スラスト針状ころ軸受、スラスト自動調心ころ軸受などでも使用できる。
【0058】
図5には、本発明の密封装置の他の形態を示す。
図5に示すように、密封装置21は、外輪に内嵌され、断面L字状に形成された芯金22と、この芯金22に一体に加硫接着されたシール部材23と、内輪に外嵌され、断面L字状に形成されたスリンガ27とを備えている。スリンガ27は、内輪に嵌合されるスリーブ27aと、スリーブ27aから径方向外側に広がるフランジ27bとを有する。なお、スリンガ27には一体に接着された弾性部材28が設けられている。スリンガ27および芯金22は、オーステナイト系ステンレス鋼鈑(JIS規格のSUS304系など)、または、防錆処理された冷間圧延鋼鈑(JIS規格のSPCC系など)をプレス加工にて形成されている。
【0059】
シール部材23は、上述したゴムなどの弾性部材からなり、内側から順に、グリースリップ24、メインリップ25、サイドリップ26を有している。グリースリップ24は、主に軸受空間内部からのグリースの流出を防止する役割を担い、その先端をスリンガ27のスリーブ27aに摺接させている。一方、メインリップ25およびサイドリップ26は、主に外部から軸受空間内部への異物の流入を防止する役割を担っている。メインリップ25およびサイドリップ26は、その先端をスリンガ27のフランジ27bに摺接させている。
【0060】
シール部材23において、シールリップ24、25、26には、それぞれ表面処理面29(各リップのクロスハッチングの箇所)が形成されている。
図5では、シールリップ24、25、26において、そのリップ表面の軸受内部側からシール部を経由して軸受外部側にかけた領域に表面処理面29が形成されている。表面処理面29は、少なくとも撥水処理面を有している。この形態においても、シールリップ24、25、26の表面処理面29は、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分を有しており、軸受内部側から軸受外部側に向けて水などが流れやすくなっている。
【0061】
表面処理面29の構成については、上記表1で示した各構成例などを適宜採用できる。また、シールリップ24、25、26間で表面処理面の構成(表面処理面の形成の有無も含む)を互いに異ならせてもよい。
【0062】
また、密封装置21の軸受外部側にラビリンス隙間Cが形成されている。
図5の密封装置21では、このラビリンス隙間Cに面したシール部材23の表面にも表面処理面29が形成されている。具体的には、ラビリンス隙間Cの入口端部からサイドリップ26の根本付近までにかけて、表面処理面29が形成されている。シールリップに加えて、さらにラビリンス隙間Cを形成する部分にも表面処理面29を形成することで、ラビリンス隙間Cから水などが浸入することを防止でき、水などの浸入防止効果を一層高めることができる。この表面処理面29の構成についても、上記表1で示した各構成例などを適宜採用できる。
【0063】
図6は、本発明の密封装置を備えた転がり軸受の他の例として車輪用軸受(ハブベアリング)を示す縦断面図である。
図6に示す車輪用軸受は、車軸を回転可能に支持する駆動輪側の車軸用軸受装置でもある。
【0064】
図6に示すように、ハブベアリング31は、外周に車体(図示省略)に取り付けられる車体取付フランジ32bを一体に有し、内周に複列の外側軌道面32a、32aが形成された外方部材(外輪)32と、一端部に車輪(図示省略)が取り付けられる車輪取付フランジ34bを一体に有し、外周に上記複列の外側軌道面32a、32aに対向する一方の内側軌道面34a、および該内側軌道面34aから軸方向に延びる円筒状の小径段部34cが形成され、内周にトルク伝達用のセレーション36が形成されたハブ輪34と、小径段部34cに圧入され、外周に他方の内側軌道面35aが形成された内輪35とを備えている。
【0065】
回転側部材となる内方部材33は、内側軌道面34a、35aを有し、固定側部材となる外方部材32は、複列の外側軌道面32a、32aを有する。複列の外側軌道面32a、32aと、これらに対向する内側軌道面34a、35a間には複列の転動体(ボール)37が保持器38によって転動自在に収容されている。また、ハブ輪34と内輪35とからなる内方部材33と、外方部材32との間に形成される環状空間には密封装置40、41がそれぞれ装着され、軸受空間39に封入されたグリースなどの漏洩と、外部から雨水やダストなどが軸受空間39に浸入するのを防止している。
【0066】
インボード側(図中右側)の密封装置40は、外輪に内嵌され、断面L字状に形成された芯金と、この芯金に一体に加硫接着されたシール部材と、内輪に外嵌され、断面L字状に形成されたスリンガとを備えており、基本的な構成は、
図5で示した密封装置21と同様である。
【0067】
アウトボード側(図中左側)の密封装置41の拡大断面図を
図7に示す。
図7に示すように、密封装置41は、外方部材32の軸方向端部に装着される芯金42と、この芯金42に一体に加硫接着されたシール部材43とで構成される。シール部材43はニトリルゴムなどの弾性部材からなり、3本のシールリップ44、45、46を有する。シールリップ44、45、46は、それぞれの先端をハブ輪34の表面、具体的には、車輪取付フランジのインボード側基部の円弧状に形成された摺接面に直接摺接させている。
【0068】
シール部材43において、シールリップ44、45、46には、それぞれ表面処理面47(各リップのクロスハッチングの箇所)が形成されている。
図7では、シールリップ44、45、46において、そのリップ表面の軸受内部側から軸受外部側にかけた領域に表面処理面47が形成されている。表面処理面47は、少なくとも各シール部(図示省略)よりも軸受内部側に撥水処理面を有している。この形態においても、シールリップ44、45、46の表面処理面47は、軸受内部側の撥水処理面の面積率が軸受外部側よりも大きくなっている部分を有しており、軸受内部側から軸受外部側に向けて水などが流れやすくなっている。
【0069】
表面処理面47の構成については、上記表1で示した各構成例などを適宜採用できる。また、シールリップ44、45、46間で表面処理面の構成(表面処理面の形成の有無も含む)を互いに異ならせてもよい。
【0070】
また、密封装置41の軸受外部側にラビリンス隙間Cが形成されている。低トルク化のため、シールリップの外側にラビリンス隙間を設けて、密封性を維持しつつ低トルク化を図ることができる。このラビリンス隙間Cに面したシール部材43の表面にも表面処理面47が形成されている。具体的には、ラビリンス隙間Cの入口端部から径方向に沿って表面処理面47が形成されている。シールリップに加えて、さらにラビリンス隙間Cを形成する部分にも表面処理面47を形成することで、ラビリンス隙間Cから水などが浸入することを防止でき、水などの浸入防止効果を一層高めることができる。
【0071】
図8には、本発明の転がり軸受の他の例の一部断面図を示す。転がり軸受51は、非接触形の転がり軸受である。密封装置55は、芯金56と芯金56に装着されたシール部材57とで構成される。シール部材57は、その一部が、外輪53の端部内周の周方向溝に固定されるとともに、リップ57aが内輪52に対して非接触となっている。リップ57aは、内輪52の端部外周に形成された断面略U字形の周方向溝とラビリンス隙間Cを介して対向している。
【0072】
このリップ57aの表面の軸受内部側から軸受外部側にかけた領域に上述した表面処理面として表面処理面58(クロスハッチングの箇所)が形成されている。ラビリンス隙間Cのシール面に上述した表面処理を施すことで、外部から浸入、付着した水、泥水などを軸受外部側へ排出し、軸受内部に封入されたグリースやグリースから離油した潤滑油を軸受内部側へ戻す輸送作用を生じさせることができる。
【0073】
本発明の密封装置は、上述した
図1~
図8の形態に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の密封装置は、外部から浸入する水などを軸受外部へ排出することが可能であり、さらに、軸受外部から浸入、付着した水、泥水などを軸受外部側へ排出し、軸受内部やシールリップ間に封入されたグリースやグリースから離油した潤滑油を軸受内部側へ戻す輸送作用を有することから、シール性の向上、潤滑油の漏れ出しが低減でき、軸受寿命の低下を防止、リップ枚数の削減やリップ接触力の低減によりトルクを低減でき、転がり軸受の密封装置として広く利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 転がり軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 密封装置
6 芯金
7 シール部材
8 メインリップ
9 ダストリップ
10 表面処理面
11 撥水親油処理面
12 親水撥油処理面
13 混在面
14 表面処理面
15 第1の撥水処理面
16 第2の撥水処理面
17 混在面
21 密封装置
22 芯金
23 シール部材
24 グリースリップ
25 メインリップ
26 サイドリップ
27 スリンガ
28 弾性部材
29 表面処理面
31 ハブベアリング(車両用軸受)
32 外方部材(外輪)
33 内方部材
34 ハブ輪
35 内輪
36 セレーション
37 転動体
38 保持器
39 軸受空間
41 密封装置
42 芯金
43 シール部材
44 シールリップ
45 シールリップ
46 シールリップ
47 表面処理面
51 転がり軸受
52 内輪
53 外輪
54 転動体
55 密封装置
56 芯金
57 シール部材
58 表面処理面