(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150374
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ガスベントユニットおよびこれを装着した成型金型
(51)【国際特許分類】
B29C 33/10 20060101AFI20241016BHJP
B29C 45/34 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B29C33/10
B29C45/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063788
(22)【出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】390015624
【氏名又は名称】浦谷商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 英樹
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ08
4F202AM12
4F202AM32
4F202AR12
4F202CA11
4F202CA30
4F202CB01
4F202CK43
4F202CK75
4F202CP03
4F202CP10
4F202CS02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】成型時にガスを排出するスリットの幅を制御することにより、様々な成型条件に対応でき、且つ分解洗浄が可能でメンテナンス性の高いガスベントユニット、およびこれを装着した成型金型の提供。
【解決手段】外郭体2と、外郭体に設けられた円筒状のシリンダ部4内に遊嵌される軸体3と、軸体を上下に移動自在に支持する支持体5を備えたガスベントユニット1であって、支持体下方に介装されたばね8によって成型品方向に付勢されたガスベントユニット、およびこのガスベントユニットを装着した成型金型であって、ガスベントユニットの支持体下方に介装されたばねの付勢力により、外郭体のシリンダ部内面と軸体の外面との間のガス流入部にスリットが設けられ、成型時に成型金型内部に充填される流体の圧力が、ばねの付勢力を上回ることで、スリットが閉鎖される機構を有することを特徴とする、成型金型。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型金型に形成された貫通孔に嵌入される外郭体と、前記外郭体に設けられた円筒状のシリンダ部内に遊嵌される軸体と、前記軸体を上下に移動自在に支持する支持体を備えたガスベントユニットであって、
前記軸体は、上部円柱部と、該上部円柱部から下方に延出すると共に、前記上部円柱部より小さい外径の中部円柱部と、該中部円柱部から下方に延出すると共に、前記中部円柱部より更に小さいか又は同じ外径で、且つ外ねじが形成された下部円柱部と、前記上部円柱部の上端に形成された逆円錐台状の逆円錐台部を備え、
前記シリンダ部内に備えられた前記支持体は、中央に設けられた貫通孔と前記下部円柱部とが当接する面に内ねじが形成され、前記下部円柱部と前記支持体が螺合されることで位置決めされており、
前記シリンダ部は、前記外郭体の一端側に形成されたガス流入部と、前記外郭体の他端側に形成されたガス排出部を備え、前記ガス流入部及び前記ガス排出部を通じて気体が通過可能な空隙を備えており、
前記支持体下方に介装されたばねによって成型品方向に付勢された、ガスベントユニット。
【請求項2】
前記軸体の外周面が、前記シリンダ部の内周面と接触しない第1の面と、前記シリンダ部の内周面と接触する第2の面からなり、
前記ガス流入部が、前記シリンダ部の内周面と前記第1の面との間に形成される、請求項1に記載のガスベントユニット。
【請求項3】
前記軸体を回転させることで、前記外郭体と前記軸体とが分離可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスベントユニット。
【請求項4】
前記軸体の前記上部円柱部の外面に、前記上部円柱部の半径方向に突出する球体突起部が設けられ、
前記球体突起部は、前記上部円柱部の内部に埋設されたばねと、該ばね先端に配設される球体とからなり、
前記シリンダ部の内周方向に連続的に且つ等間隔に形成されてなる嵌入溝が設けられ、該嵌入溝に前記球体突起部が嵌入し、
前記嵌入溝に沿って前記軸体を回転させることにより、前記シリンダ部において前記上部円柱部及び前記逆円錐台部と相補的な形状の内面との間のスリット幅を調節可能であることを特徴とする、請求項3に記載のガスベントユニット。
【請求項5】
前記軸体の前記中部円柱部にばねが介装され、前記軸体を回転させることで、前記ばねの成型品方向への付勢力により、前記シリンダ部において前記上部円柱部及び前記逆円錐台部と相補的な形状の内面との間のスリット幅を調節可能であることを特徴とする、請求項3に記載のガスベントユニット。
【請求項6】
請求項1乃至5のガスベントユニットを、キャビティ及び/又はコアに設けた貫通孔に嵌入した成型金型であって、
前記ガスベントユニットの支持体下方に介装されたばねの付勢力により、外郭体のシリンダ部内面と軸体の外面との間のガス流入部にスリットが設けられ、
成型時に前記成型金型内部に充填される流体により、上部円柱部の上方に設けられた逆円錐台部の上面にかかる圧力が、前記ばねの付勢力を上回ることで、前記外郭体のシリンダ部と前記軸体との間のガス流入部のスリットが閉鎖される機構を有することを特徴とする、ガスベントユニットを装着したガス抜き機能付成型金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型時に発生するガスを排出するガスベントユニットおよびこれを装着したガス抜き機能を備える成型金型に関し、より詳細には、成型時に溶融樹脂から発生するガス等の気体排出量が成型条件により制御可能で、且つ分解洗浄が可能なガスベントユニットおよびこれを装着した成型金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
成型金型を用いて、加熱溶融した合成樹脂の成型をおこなう際、溶融樹脂からガスが発生する。溶融樹脂から発生したガスは成型不良の原因となるため、これを防止するために金型にガス抜き機構を設けて金型内部のガス(空気)を効率的に排出する必要がある。
【0003】
特許文献1には、金型に装着して用いるガス抜き機能付刻印装置が開示されている。特許文献1に開示されているガス抜き機能付刻印装置は、金型内部のキャビティ壁面に形成される嵌入穴に嵌入され、円筒形状の外殻体と、外殻体に挿入される指標体からなり、刻印装置の上面にガス流入部が形成され、下面にガス排出部が形成され、ガス流入部から前記ガス排出部までガス体が通過可能な内部構造を備えている。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているような従来のガス抜き機構においては、溶融樹脂から発生したガスが、外殻体と指標体の隙間に入り込むことでガスヤニが付着し、空気の通り道が狭くなるか埋まってしまい、ガス抜き機能が低下することで、焼け、ヒケ、充填不良、ウェルドライン等の成型不良を引き起こすという問題があった。
また、特許文献1のガス抜き機能付刻印装置は、分解洗浄が出来ないため、ガス抜き機能が低下することで、継続して成型不良を防止することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述したような問題点を解決すべくなされたものであって、成型時に溶融樹脂から発生するガスや金型内の空気を効率的に排出できるガスベントユニットであって、ガスを排出するスリットの幅を制御することにより、様々な成型条件に対応でき、且つ分解洗浄が可能でメンテナンス性の高いガスベントユニット、およびこれを装着した成型金型を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、成型金型に形成された貫通孔に嵌入される外郭体と、前記外郭体に設けられた円筒状のシリンダ部内に遊嵌される軸体と、前記軸体を上下に移動自在に支持する支持体を備えたガスベントユニットであって、
前記軸体は、上部円柱部と、該上部円柱部から下方に延出すると共に、前記上部円柱部より小さい外径の中部円柱部と、該中部円柱部から下方に延出すると共に、前記中部円柱部より更に小さいか又は同じ外径で、且つ外ねじが形成された下部円柱部と、前記上部円柱部の上端に形成された逆円錐台状の逆円錐台部を備え、
前記シリンダ部内に備えられた前記支持体は、中央に設けられた貫通孔と前記下部円柱部とが当接する面に内ねじが形成され、前記下部円柱部と前記支持体が螺合されることで位置決めされており、
前記シリンダ部は、前記外郭体の一端側に形成されたガス流入部と、前記外郭体の他端側に形成されたガス排出部を備え、前記ガス流入部及び前記ガス排出部を通じて気体が通過可能な空隙を備えており、
前記支持体下方に介装されたばねによって成型品方向に付勢された、ガスベントユニットに関する。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記軸体の外周面が、前記シリンダ部の内周面と接触しない第1の面と、前記シリンダ部の内周面と接触する第2の面からなり、前記ガス流入部が、前記シリンダ部の内周面と前記第1の面との間に形成される、請求項1に記載のガスベントユニットに関する。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記軸体を回転させることで、前記外郭体と前記軸体とが分離可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスベントユニットに関する。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記軸体の前記上部円柱部の外面に、前記上部円柱部の半径方向に突出する球体突起部が設けられ、前記球体突起部は、前記上部円柱部の内部に埋設されたばねと、該ばね先端に配設される球体とからなり、前記シリンダ部の内周方向に連続的に且つ等間隔に形成されてなる嵌入溝が設けられ、該嵌入溝に前記球体突起部が嵌入し、前記嵌入溝に沿って前記軸体を回転させることにより、前記シリンダ部において前記上部円柱部及び前記逆円錐台部と相補的な形状の内面との間のスリット幅を調節可能であることを特徴とする、請求項3に記載のガスベントユニットに関する。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記軸体の前記中部円柱部にばねが介装され、前記軸体を回転させることで、前記ばねの成型品方向への付勢力により、前記シリンダ部において前記上部円柱部及び前記逆円錐台部と相補的な形状の内面との間のスリット幅を調節可能であることを特徴とする、請求項3に記載のガスベントユニットに関する。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のガスベントユニットを、キャビティ及び/又はコアに設けた貫通孔に嵌入した成型金型であって、
前記ガスベントユニットの支持体下方に介装されたばねの付勢力により、外郭体のシリンダ部内面と軸体の外面との間のガス流入部にスリットが設けられ、
成型時に前記成型金型内部に充填される流体により、上部円柱部の上方に設けられた逆円錐台部の上面にかかる圧力が、前記ばねの付勢力を上回ることで、前記外郭体のシリンダ部と前記軸体との間のガス流入部のスリットが閉鎖される機構を有することを特徴とする、ガスベントユニットを装着したガス抜き機能付成型金型に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、ガスベントユニットは、成型金型に形成された貫通孔に嵌入される外郭体と、外郭体に設けられた円筒状のシリンダ部内に遊嵌される軸体と、軸体を上下に移動自在に支持する支持体を備え、軸体は、上部円柱部と、上部円柱部から下方に延出すると共に、上部円柱部より小さい外径の中部円柱部と、中部円柱部から下方に延出すると共に、中部円柱部より更に小さいか又は同じ外径で、且つ外ねじが形成された下部円柱部と、上部円柱部の上端に形成された逆円錐台状の逆円錐台部を備え、シリンダ部内に備えられた支持体は、中央に設けられた貫通孔と下部円柱部とが当接する面に内ねじが形成され、下部円柱部と支持体が螺合されることで位置決めされており、シリンダ部は、外郭体の一端側に形成されたガス流入部と、外郭体の他端側に形成されたガス排出部を備え、ガス流入部及びガス排出部を通じて気体が通過可能な空隙を備えており、支持体下方に介装されたばねによって成型品方向に付勢されているため、本発明に係るガスベントユニットにおいて、シリンダ部内周面と軸体との間に所定幅のスリットが形成されており、成型金型に溶融樹脂を充填する過程で、溶融樹脂から発生するガス等をガス流入部(スリット)及びガス排出部を通じて排出し、溶融樹脂により軸体上部の逆円錐台部上面にかかる圧力がばねの成型品方向への付勢力を上回ることによりスリットが閉鎖され、外郭体と軸体の隙間への溶融樹脂流入を防止することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、軸体の外周面が、シリンダ部の内周面と接触しない第1の面と、シリンダ部の内周面と接触する第2の面からなり、ガス流入部が、シリンダ部の内周面と第1の面との間に形成されるガスベントユニットであるため、金型内部からのガス等の排出機能及び溶融樹脂の流出防止機能を果たすことができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、軸体を回転させることで、外郭体と軸体とが分離可能であるため、シリンダ部内周面と軸体との間のガス流入部(スリット)及びガス排出部に付着したガスヤニ等の汚れを分解洗浄することができ、容易にメンテナンスが可能となる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、軸体の上部円柱部の外面に、上部円柱部の半径方向に突出する球体突起部が設けられ、球体突起部は、上部円柱部の内部に埋設されたばねと、ばね先端に配設される球体とからなり、シリンダ部の内周方向に連続的に且つ等間隔に形成されてなる嵌入溝が設けられ、嵌入溝に球体突起部が嵌入し、嵌入溝に沿って前記軸体を回転させることにより、シリンダ部において上部円柱部及び逆円錐台部と相補的な形状の内面との間のスリット幅を調節可能であるため、所望の位置で確実にスリットの幅を制御することができる。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、軸体の中部円柱部にばねが介装され、軸体を回転させることで、ばねの成型品方向への付勢力により、シリンダ部において上部円柱部及び逆円錐台部と相補的な形状の内面との間のスリット幅を調節可能であるため、所望の位置で確実にスリットの幅を制御することができる。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、請求項1乃至5のガスベントユニットを、キャビティ及び/又はコアに設けた貫通孔に嵌入した成型金型であって、ガスベントユニットの支持体下方に介装されたばねの付勢力により、外郭体のシリンダ部内面と軸体の外面との間のガス流入部にスリットが設けられ、成型時に成型金型内部に充填される流体により、上部円柱部の上方に設けられた逆円錐台部の上面にかかる圧力が、ばねの付勢力を上回ることで、外郭体のシリンダ部と軸体との間のガス流入部のスリットが閉鎖される機構を有することを特徴とする、ガスベントユニットを装着したガス抜き機能付成型金型であるため、ガスベントユニットの外郭体と軸体の隙間へ溶融樹脂が流入することを防止でき、所望の位置で確実にスリットの幅を制御することができ、且つメンテナンス作業が容易である成型金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るガスベントユニットの一実施形態を示す図である。(a)はガスベントユニットを上方から見た図であり、(b)はガスベントユニットの縦断面図である。
【
図2】本発明に係るガスベントユニットの一実施形態において、外郭体のシリンダ部から軸体を分離した状態を示す図である。(a)は外郭体の縦断面図であり、(b)は軸体の縦断面図である。
【
図3】本発明に係るガスベントユニットの別の実施形態を示す図である。(a)はガスベントユニットを上方から見た図であり、(b)はガスベントユニットの縦断面図である。
【
図4】本発明に係るガスベントユニットの別の実施形態において、スリット幅を調節するための機構についての説明図である。(a)は外郭体のシリンダ部から軸体を分離した状態における嵌入溝形成部を上方から見た断面図であり、(b)は外郭体と軸体の間のスリットが閉じた状態のガスベントユニットの縦断面図であり、(c)は軸体を回転させて、外郭体と軸体の間のスリットを開いた状態のガスベントユニットの縦断面図である。
【
図5】本発明に係るガスベントユニットの更に別の実施形態を示す図である。(a)はガスベントユニットを上方から見た図であり、(b)はガスベントユニットの縦断面図である。
【
図6】本発明に係るガスベントユニットを成型金型に装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るガスベントユニットの実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明に係るガスベントユニットの一実施形態を示す図である。
図1(a)はガスベントユニット(1)を上方から見た図であり、(b)はガスベントユニット(1)の縦断面図を示す。
尚、
図1、3、5に示す実施形態においては、ガスベントユニット(1)を上方から見た図(a)の中央にある長方形の窪み部分にマイナスドライバを差込み、軸体(3)を回転させる。
【0021】
本発明に係るガスベントユニット(1)は、成型金型に形成された貫通孔に嵌入される外郭体(2)と、外郭体(2)に設けられた円筒状のシリンダ部(4)内に遊嵌される軸体(3)と、軸体(3)を上下に移動自在に支持する支持体(5)を備えている。軸体(3)は、上部円柱部(32)と、上部円柱部(32)から下方に延出すると共に、上部円柱部(32)より小さい外径の中部円柱部(33)と、中部円柱部(33)から下方に延出すると共に、中部円柱部(33)より更に小さいか又は同じ外径で、且つ外ねじ(9)が形成された下部円柱部(34)と、上部円柱部(32)の上端に形成された逆円錐台状の逆円錐台部(31)を備えている。シリンダ部(4)内に備えられた支持体(5)は、中央に設けられた貫通孔と下部円柱部(34)とが当接する面に内ねじ(9)が形成され、下部円柱部(34)と支持体(5)が螺合されることで位置決めされている。シリンダ部(4)は、外郭体(2)の一端側に形成されたガス流入部(6)と、外郭体(2)の他端側に形成されたガス排出部(7)を備えており、ガス流入部(6)及びガス排出部(7)を通じて気体が通過可能な空隙を備えている。さらに、支持体(5)下方に介装されたばね(8)によって成型品方向に付勢力が働いている。
【0022】
この発明において、成型品方向とは、ガスベントユニット(1)を装着した成型金型を用いて成型をおこなう際、溶融樹脂等の流体を成型金型内部の空隙に充填し、硬化させ成型品とするが、この成型品に向かう方向のことをいう。
【0023】
軸体(3)は、外径の異なる3つの部分に分けられ、上から上部円柱部(32)、中部円柱部(33)及び下部円柱部(34)が形成されている。中部円柱部(33)は上部円柱部(32)の径よりも小さい外径を有しており、下部円柱部(34)は中部円柱部(33)よりも小さいか同じ外径を有している。
【0024】
図6は、ガスベントユニット(1)を成型金型(11)に装着した状態を示す断面図である。
成型金型(11)は、固定型のキャビティ(12)と、このキャビティ(12)に接離する可動型のコア(13)とからなり、このキャビティ(12)とコア(13)との間に溶融樹脂等を充填し成型をおこなう。ガスベントユニット(1)は、キャビティ(12)及び/又はコア(13)に装着される。
【0025】
成型金型(11)に装着するガスベントユニット(1)の位置及び数は特に限定されておらず、成型条件に合わせてキャビティ(12)及び/又はコア(13)に1個又は複数箇所装着してもよい。
【0026】
図6は、ガスベントユニット(1)を、キャビティ(12)及び/又はコア(13)に設けた貫通孔に嵌入した成型金型(11)の一例を示しており、ガスベントユニット(1)の支持体(5)下方に介装されたばね(8)の付勢力により、外郭体(2)のシリンダ部(4)内面と軸体(3)の外面との間のガス流入部(6)にスリット(10)が設けられ、成型時に成型金型(11)内部に充填される流体により、上部円柱部(32)の上方に設けられた逆円錐台部(31)の上面にかかる圧力が、ばね(8)の付勢力を上回ることで、外郭体(2)のシリンダ部(4)と軸体(3)との間のガス流入部(6)のスリット(10)が閉鎖される機構を有している。
図6の成型金型(11)は、内部への流体の充填が進み、ガスベントユニット(1)の外郭体(2)のシリンダ部(4)と、軸体(3)との間のガス流入部(6)のスリット(10)が閉鎖された状態を示している。
【0027】
本発明に係るガスベントユニット(1)を装着した成型金型(11)の内部に充填する流体は、溶融樹脂を想定しているが、その他の流体を用いても良く、溶融したアルミニウム、ゴム等、当業者が通常金型成型に使用する流体であればこれに限定されない。
【0028】
図1乃至
図5の実施形態において、外郭体(2)の形状は円柱状であるが、例えば角柱としてもよい。外郭体(2)の形状は、成型金型(11)のキャビティ(12)及び/又はコア(13)に設けられた貫通孔の形状に合わせて自由に選択可能である。
一方で、外郭体(2)に設けられたシリンダ部(4)とシリンダ部(4)内に遊嵌される軸体(3)の形状は、円筒状とすることが好ましい。軸体(3)を回転させ、シリンダ部(4)において、上部円柱部(32)及び逆円錐台部(31)と相補的な形状の内面との間のスリット(10)幅を調節する必要があるためである。
【0029】
図2は、本発明に係るガスベントユニット(1)の一実施態において、外郭体(2)のシリンダ部(4)から軸体(3)を分離した状態を示している。(a)は外郭体(2)の縦断面図であり、(b)は軸体(3)の縦断面図である。
図2に示す如く、軸体(3)を回転させることで、外郭体(2)と軸体(3)とが分離可能であるため、外郭体(2)と軸体(3)との間に付着したガスヤニ等の汚れを洗浄しやすく、メンテナンスが容易である。
【0030】
図3は、本発明に係るガスベントユニット(1)の別の実施形態を示す図である。
(a)はガスベントユニット(1)を上方から見た図であり、(b)はガスベントユニット(1)の縦断面図を示している。
軸体(3)の上部円柱部(32)の外面には、上部円柱部(32)の半径方向に突出する球体突起部(35)が設けられており、球体突起部(35)は、上部円柱部(32)の内部に埋設されたばねと、ばね先端に配設される球体(36)とからなり、シリンダ部(4)内部の嵌入溝(41)に球体突起部(35)が嵌入し、嵌入溝(41)に沿って軸体(3)を回転させることにより、シリンダ部(4)において上部円柱部(32)及び逆円錐台部(31)と相補的な形状の内面との間のスリット(10)幅を調節可能である。
【0031】
図4は、本発明に係るガスベントユニットの別の実施形態において、スリット(10)幅を調節するための機構についての説明図である。(a)は外郭体(2)のシリンダ部(4)から軸体(3)を分離した状態における嵌入溝(41)形成部を上方から見た断面図であり、(b)は外郭体(2)と軸体(3)の間のスリット(10)が閉じた状態のガスベントユニット(1)の縦断面図であり、(c)は軸体(3)を回転させて、外郭体(2)と軸体(3)の間のスリット(10)を開いた状態のガスベントユニット(1)の縦断面図を示している。(a)に示す如く、シリンダ部(4)内壁には、複数の嵌入溝(41)が形成されている。嵌入溝(41)は、シリンダ部(4)の内周方向に連続的に且つ等間隔に形成されている。
図4で例示した実施形態において、嵌入溝(41)はシリンダ部(4)内周方向に連続的に且つ等間隔に形成され、上部円柱部(32)の内部に埋設されたばねと、ばね先端に配設される球体により構成された球体突起部(35)と相補的な形状に形成されており、嵌入溝(41)に球体突起部(35)が嵌入し、ばねによる球体に対する外郭体(2)方向の付勢力により固定されている。
【0032】
嵌入溝(41)の割り出し箇所は、特に限定されないが、1~50箇所の範囲が好ましく、12箇所がより好ましい。
嵌入溝(41)1箇所分の回転角は7.2°~360°の範囲が好ましく、30°がより好ましい。
【0033】
図4(a)のように12箇所の嵌入溝(41)の割り出し箇所を設けており、シリンダ部(4)の内周360°を12分割し、1箇所で30°毎の回転角となる。この場合、1/12回転毎に約0.2mmずつスリット(10)幅を調整することができる。
図4(b)に例示したガスベントユニット(1)は、軸体(3)を回転させず、外郭体(2)と軸体(3)の間のスリット(10)が閉じた状態であり、
図4(c)に例示したガスベントユニット(1)は軸体(3)を2回転させて、外郭体(2)と軸体(3)の間のスリット(10)幅を0.4mm開いた状態を示している。
【0034】
図5は、本発明に係るガスベントユニット(1)の更に別の実施形態を示す図である。(a)はガスベントユニット(1)を上方から見た図であり、(b)はガスベントユニット(1)の縦断面図を示す。
図5に例示したガスベントユニット(1)は、軸体(3)の中部円柱部(33)にばね(8)が介装され、軸体(3)を回転させることで、ばね(8)の成型品方向への付勢力により、シリンダ部(4)において上部円柱部(32)及び逆円錐台部(31)と相補的な形状の内面との間のスリット幅を調節可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るガスベントユニットは、成型時に発生するガスや金型内の空気等を効率的に排出するため、成型金型に装着することで好適に利用される。
また、本発明に係るガスベントユニットを装着した成型金型は、溶融樹脂等の流体から成型品を成型する際に、成型条件に合わせてガス流入部のスリット幅を調節でき、且つガスベントユニットは分解洗浄が可能でメンテナンス性が高いことから、成型不良を継続的に防止でき、溶融樹脂から発生したガスや金型内の空気等を長期間効率的に排出させることが可能であるため好適に利用される。
【符号の説明】
【0036】
1 ガスベントユニット
2 外郭体
3 軸体
31 逆円錐台部
32 上部円柱部
33 中部円柱部
34 下部円柱部
35 球体突起部
36 球体
4 シリンダ部
41 嵌入溝
5 支持体
6 ガス流入部
7 ガス排出部
8 ばね
9 ねじ
10 スリット
11 成型金型
12 キャビティ
13 コア