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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150380
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】水害防災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 31/00 20060101AFI20241016BHJP
   G08C 15/00 20060101ALI20241016BHJP
   G08C 17/00 20060101ALI20241016BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20241016BHJP
   G06Q 50/26 20240101ALI20241016BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G08B31/00 B
G08C15/00 E
G08C17/00 Z
G08B25/04 K
G06Q50/26
G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023071875
(22)【出願日】2023-04-10
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】523028596
【氏名又は名称】株式会社ソフト開発
(71)【出願人】
【識別番号】523028611
【氏名又は名称】一般社団法人日本シニア起業支援機構
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋之介
(72)【発明者】
【氏名】松崎 敦志
(72)【発明者】
【氏名】川添 明
(72)【発明者】
【氏名】福田 直三
(72)【発明者】
【氏名】新田 秀二
(72)【発明者】
【氏名】藤川 博巳
【テーマコード(参考)】
2F073
5C087
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AB01
2F073BB01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DD07
2F073FF01
2F073GG08
2F073GG09
5C087AA19
5C087DD02
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG14
5C087GG66
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】 従来の内水氾濫用水位検知システムは、水面到達を検知する浸水センサー、水面の高さを測定する水位センサーの二つに大別される。前者は信号により危険水位到達を知ることはできても、その前後の水位変化を知ることは難しい。後者は水位変化を追跡、予測することは出来るが、危険個所に応じて多数設置しようとすると費用、メンテナンスなどの面で課題があった。
【解決手段】 浸水センサー5による信号と、水位センサー2による信号の両方を、LPWA通信により同一クラウドに送信し、浸水表示に加えて、タンクモデルを基にした水位予測を行う水害防災システム。水位センサーと浸水センサー両方のデータを、同一クラウド上で統合して扱うことにより、水位予測を精度よく行えると共に、緊急時でも避難路の安全確認など的確な対応が容易となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸水センサーによる浸水有無信号と、水位センサーによる定量的水位信号の両方を、LPWA(Low Power Wide Area)通信により同一クラウドに送信し、浸水表示に加えて、タンクモデルを基にした水位予測を行う水害防災システム。
【請求項2】
浸水センサー信号と水位センサー信号の両方を、LPWA通信によりデータ収集サーバーに取り込み、次いで共有クラウドに転送して浸水表示、水位予測を行う請求項1の水害防災システム。
【請求項3】
浸水センサーからの信号を、水位センサー観測端末を経由して、LPWA通信によりデータ収集クラウドに送信する請求項1~2の防災システム。
【請求項4】
浸水センサーからの信号を、ブルートゥース信号で発信し、ゲートウェーでWiFi信号に変換した後、水位センサー観測端末に送り、次いでクラウドに送信する、請求項3の防災システム。
【請求項5】
浸水センサーからの信号をLPWA通信により水位センサー観測端末に送り、同観測端末により信号強度を増幅して、クラウドに送信する請求項3の防災システム。
【請求項6】
LPWA通信がSigfox(登録商標)、LoRa(登録商標)通信のいずれかである、請求項1~5の防災システム。
【請求項7】
観測場所を雨水貯留タンクとみなすタンクモデルに基づき、水位センサーデータを用いて、クラウド上で数時間先までの水位を予測、表示する請求項1~6の防災システム。
【請求項8】
観測場所を雨水貯留タンクと見なすタンクモデルにおいて、水位を予測するための1時刻先予測式として下記の式(1)を使用して、水位を予測する請求項7の防災システム。
x(k|k-1);時刻k-1までのデータに基づく時刻kにおける水位予測値
x(k-1|k-1):時刻k-1における水位予測値
k:時刻
d:流出パラメーター
q(k-1);流入による水位上昇パラメーター
u(k-1):時刻kにおける気象庁の降水予報値
【請求項9】
複数の浸水センサーが避難路に配置されている請求項1~8の防災システム。
【請求項10】
浸水センサーが下水溝、排水溝、用水路、小河川などの雨水通過ルートに設置されている請求項1~8の防災システム。
【請求項11】
雨水通過ルートに設置されている浸水センサーからの信号により、式(1)のパラメーターd、及び/またはq(k-1)の大きさを調整し、水位予測値を修正する請求項10の防災システム。
【請求項12】
浸水センサーがマンションなどの建物地下に配置され、水位センサー端末が建物近くの地上に配置されている、請求項1~8の防災システム。
【請求項13】
水位センサー観測端末にカメラが設置されている、請求項1~12の防災システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降雨時の水位センサーによる水位増減データと、浸水センサーによる水面検知有無の二値データの両方を、同一クラウド上で取り扱うことにより、低コストで信頼性の高い水害防災情報を提供するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自然環境変化による線状降水帯などの頻発と、市街地住宅密集などの社会環境の変化が相俟って水害が広域化・激甚化している。線状降水帯は、雨を降らせる積乱雲が次々に発生してほぼ同じ場所に停滞・通過することで作り出される、長さ50~300キロ、幅20~50キロの強い雨が降る細長い帯状の領域を指す。気温、湿度、地形などの条件が複雑に絡み合いその動きや、単位時間当たりの降雨量は、専門家でも予測が難しいと言われている。
【0003】
積乱雲が同じ場所に停滞すると、その場所に大量の雨が集中するために、河川(外水)氾濫や市街地の内水氾濫の危険性が急に高まる。内水氾濫の原因は、降雨量が排水溝や下水溝、小河川などの雨水通過ルートの排水能力を越えてしまうことにあると言われている。下水などの雨水通過ルートは市街地に網の目のように張り巡らされており、例えば流入したゴミや草木の堆積や、排水先の河川水位の上昇により排水能力が低下(バックウォーター現象)すると、内水氾濫のきっかけとなる。このような理由から、内水氾濫は河川の流域ではどこでも起き得るとされ、対策が難しいのが現状である。
【0004】
上記の状況からハザードマップだけに頼らず、防災のための情報提供の重要度が増している。その一つとして、例えばレーダー情報を取り込んだ気象情報の精緻化が進んでいる。しかしながら前述した線状降水帯の場合、降雨強度が急激に大きくなると、降雨予報値と実測値の間の相関性が低下する等の未解決課題も指摘されていて(非特許文献1)、気象情報だけに頼ることはできないのが現状である。
【0005】
特許文献1には水と接触して起電力を生じるセンサーを用いて、冠水の検知信号をクラウドに送信するシステムが開示されている。このセンサーは、消費電力が小さくメンテナンスが容易なため、多数のセンサーを配置することにより二次元的に地域全体の冠水状況を把握することができる。しかしながらこのような浸水センサーの場合、水面が到達したか否かのOn/Off情報は得られるが、その前後の水位変化の測定や、水位予測を行うことは困難である。
【0006】
特許文献2には、水位の測定は行わずに気象情報と地形データを基に、水位を計算、予測し、避難方法を示すシステムが示されている。この方法は計算のみでシミュレーションできる点で便利ではあるが、ゲリラ豪雨などの場合には気象情報そのものの信頼性が十分に高いとは言えず、また地図情報など膨大なデータベースを必要としていることも課題の一つである。
【0007】
特許文献3には、予測対象場所の降雨強度と下水管内水位の過去データから、内水氾濫に至るまでの時間を予測する装置が示されている。この方法では、降雨強度と下水管内の水位上昇速度の関係を予め測定しておき、次に来る降雨気象情報から、マンホール上部に到達する時間を予測している。しかしながら。水位上昇速度と降雨強度の比例関係は、例えば下水管内でのゴミなどの堆積、排水ポンプの運転状況、上流側の降雨状況によっても変動するものであり、その予測精度は必ずしも高いものとはいえない。また下水管内での水位を予測できたとしても、下水管の外に溢れ出した後の地上面での水位予測について、何ら示されていない。
【0008】
本願出願人による特許文献4には、水位を測定し、そのデータを送信する観測端末、観測データを記憶する観測情報記憶部、気象情報の記憶部、観測場所を雨水貯留タンクと見なすタンクモデルを使用して演算する水位予測部、クラウドサーバーを少なくとも構成要素として含む防災システムが示されている。
【0009】
特許文献4によれば、水位センサーによる時系列測定データと、気象情報を組み合わせることにより、水位予測を比較的簡単なシステム上で行えること、またクラウド上で自治体担当者、住民などが情報共有を行えること、更には水位予測計算のパラメーターをデータベース化することにより、システムの予測能力を改善できることが述べられている。
【0010】
以上、上記特許文献1~4を基に、浸水検知や水位予測機能の先行技術例について述べた。これらの文献を、危機管理者や地域住民の視点で見ると下記のようなことが言える。即ち、住民にとっての関心事項は、避難警報が発出される前には、水位がどの程度上昇しているのか、避難警報が何時頃出されるのか、また避難準備にどれだけ時間が残されているのか等である。また避難警報が出された住民の関心事項は、どの避難所が受け入れ可能なのか、またどの避難路が安全であるかを知ることである。そのような意味において上記文献を見ると、特許文献1の場合には、例えば避難路に浸水センサーを複数個配置することにより、二次元的に浸水有無の状況を把握することができるメリットはあるが、避難準備にどれだけ時間が残されているかなどの時間予測の面で期待に応えることはできない。
【0011】
特許文献2の場合、前述したように水位の実測を行わないので、信頼できる避難情報を提供できるとは言い難く、特許文献3の場合には、下水溝から水が噴出するまでの時間を予測できたとしても、その後の情報を提供することはできない。
【0012】
特許文献4のシステムは、水位予測情報を見ながら避難準備し、警報発出時に迅速に避難行動に移りやすい点でメリットがある。しかしながら水位センサー測定端末を有するシステムは、浸水センサーのシステムに比べコストが高く、また外部電源を必要とする場合が多いこと、また水位センサーへのゴミ付着防止などのメンテナンスも必要とされ、地域に多数台設置することは負担が大きい。そのため水位センサーによる水位測定と水位の予測は、防災上最も重要な機能を担うことはできても、避難路の安全確認など二次元的、面的な情報を得る上で十分な機能を有するとは言えない。
【0013】
以上述べた如く、水面検知型浸水センサーは二次元的に水位を捉える上で効果があるが、時間的な水位変化を追跡し、精度の高い予測することは容易ではない。逆に水位を連続的に測定するシステムは、水位追跡・予測の面でメリットあるものの、センサーを多数配置して面的に水位を把握することは、経済的な理由等で負担が大きい。このようなことから、住民のトータルなニーズに応えるシステムはまだ開発されていないのが実情である。
【0014】
本願発明者らは、上記の状況に鑑み鋭意検討した結果、上記二つのタイプのシステムを連携させて、それぞれの機能を互いに補完させることにより、住民等にとって最も望ましいシステムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【特許文献1】特許7194467公報
【特許文献2】特開2017-201243号公報
【特許文献3】特開2020-201704号公報
【特許文献4】特願2023-10552
【非特許文献】
【非特許文献1】雨量と土中水分量を用いた高速道路における斜面防災対策の高度化に関する研究、p14,学位論文、2018年9月25日、大阪大学、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的とする水害防災システムが広く社会に受け入れられ、機能発揮するためには、水面検知型浸水センサーのシステムと連続水位測定センサーの両方を単に併用するだけでは不十分であり、以下の課題を併せて解決し、組み合わせのシナジー効果を発揮させることが必要である。
(1)浸水センサー、水位センサーの各々のデータが、共通のクラウドにリンクされ、予測などの時間軸情報と、地域の面情報を連携させた防災情報を提示することが必要である。水位センサーデータと浸水センサーデータが送信されるクラウドがそれぞれ異なると、両情報の連携が難しくなり、エラーの発生や、緊急時の災害を誘発しやすい。
(2)観測端末からの電波出力、周波数帯域など、電波法などの法規制に抵触しないこと。またクラウドに送信するための基地局などが地域に整備されていること。
(3)外部電源の無い浸水センサーから発信される電波は強度が低く、特に地下などから発信されると途中で減衰しやすい。そのような場合でも、浸水センサーからの信号を中継・増幅して基地局に送信して、水位センサー情報と共に同一クラウド上で扱えること。
(4)システム導入コスト、通信コスト、使用電力、メンテナンスなどの維持コストを低くできるシステムであること。
(5)観測端末からのデータ、水位予測情報、警報発出状況、避難路、避難所関連情報を同一画面上で表示でき、自治体、住民などの間の情報共有が容易であること。
【0016】
本発明者らは、上記(1)~(5)の課題を解決するための方策を鋭意検討した結果、浸水センサーからの信号と、水位センサーからの信号を共通の通信規格に従って、インターネット経由でクラウドに接続することにより、下記に述べるようにそれぞれ単独のシステムの弱点を補完する最適なシステムを得ることができることを見出した。
【0017】
浸水センサーは一般に消費電力が小さいため、下水溝や用水路など外部電源を取りにくい場所や地下室に設置する場合に好適である。そこから発信される電波は微弱であり、中継機能が必要とされる場合が多い。一方、水位センサーの場合には外部電源を使用することも多く、そのような場合には、水位測定端末からクラウドに繋げることは電力的に容易である。
【0018】
上記の理由から浸水センサーからの信号を、通信距離内にある水位センサー端末で受信し、必要により増幅した上で、観測端末からクラウドに向かって送信することにより、浸水センサー情報を遠くまで送信できる。そうすることにより、中継装置などの送受信に関する部材を節減しつつ、後述する実施形態で示されるように、浸水センサーと水位センサーそれぞれのデータを連携、補完させることにより、予測精度向上、避難準備、避難路確保など、住民の期待に応えることが可能なシステムの設計が可能になる。
【0019】
即ち、本発明の概要は下記の通りである。
(a)浸水センサーによる浸水有無信号と、水位センサーによる定量的水位信号の両方を、LPWA(Low Power Wide Area)通信により同一クラウドに送信し、浸水表示に加えて、タンクモデルを基にした水位予測を行う水害防災システム。
(b)浸水センサー信号と水位センサー信号の両方を、LPWA通信によりデータ収集サーバーに取り込み、次いで共有クラウドに転送して浸水表示、水位予測を行う上記(a)の水害防災システム。
(c)浸水センサーからの信号を、水位センサー観測端末を経由して。LPWA通信によりデータ収集クラウドに送信する上記(a)~(b)の防災システム。
(d)浸水センサーからの信号を、ブルートゥース信号で発信し、ゲートウェーでWiFi信号に変換した後、水位センサー観測端末に送り、次いでクラウドに送信する、上記(c)の防災システム。
(e)浸水センサーからの信号をLPWA通信により水位センサー観測端末装に送り、水位センサー観測端末により信号強度を増幅して、クラウドに送信する上記(c)の防災システム。
(f)LPWA通信がSigfox(登録商標)、LoRa(登録商標)通信のいずれかである、上記(a)~(e)の防災システム。
(g)観測場所を雨水貯留タンクとみなすタンクモデルに基づき、水位センサーデータを用いて、クラウド上で数時間先までの水位を予測、表示する上記(a)~(f)の防災システム。
(h)観測場所を雨水貯留タンクと見なすタンクモデルにおいて、水位を予測するための1時刻先予測式として下記の式(1)を使用して、水位を予測する上記(g)の防災システム。
x(k|k-1);時刻k-1までのデータに基づく時刻kにおける水位予測値
x(k-1|k-1):時刻k-1における水位予測値
k:時刻
d:流出パラメーター
q(k-1);流入による水位上昇パラメーター
u(k-1):時刻kにおける気象庁の降水予報値
(i)複数の浸水センサーが避難路に配置されている上記(a)~(h)の防災システム。
(j)浸水センサーが下水溝、排水溝、用水路、小河川などの雨水通過ルートに設置されている上記(a)~(h)の防災システム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記(a)により、水位センサーと浸水センサーの両方のデータを同一クラウド上で処理し、その結果を表示できる。同一クラウド上で両方のデータを扱うことにより、それぞれのデータを連携させつつ、機能を互いに補完させる統合化処理が可能となる。また(b)により、両者の信号が同一のクラウドにより収集されることにより、システムの統合が容易となる。また(c)~(d)により、通信規格の異なる浸水センサー信号であっても、水位センサー観測端末でLPWA通信規格に変換してクラウドに送信することにより、通信中継と統合が容易となる。(e)の場合、浸水センサーからのLPWA信号強度が弱い場合であっても、水位センサー観測端末で増幅可能となる。(f)の通信方式の基地局が日本国内でも広く整備されていることから、本システムの活用が広い地域で行える。また(g)~(h)により、地図情報などのデータベースに頼らずとも、精度の高い予測が可能なシステムとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のシステム構成の一例を示す図。
図2】本発明のシステム構成の第二の例を示す図。
図3】共有クラウドにおける水位演算・表示部の構成を示すブロックダイアグラム
図4】水位予測のためのタンクモデルを説明する図
図5】水位を予測するための手順の例を示す図
図6】タンクのパラメーター調整をして、水位予測を行う模式図
図7】水位センサーデータと、マンホール内浸水センサーデータの両方を用いて、水位予測精度を向上させるためのデータ通信方法の一例。
図8】マンホール内の浸水センサー情報から、水位予測のパラメーターを修正し、予想精度を上げる方法の一例を示す図。
図9】共有クラウドの情報を見て避難準備するための方法の一例を示す図
図10】水位予測、避難路の浸水状況表示など、本発明の方法を活かした防災活動のフローチャート
図11】ビルやマンションなどの建物の防災システムの一例を示す図
図12】水位センサーからの信号を収集クラウドに送信する観測端末筐体内の模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施態様について図面を参照しながら説明する。
【第1の実施形態】
【0023】
図1は、本発明の第一の実施形態に係るシステム構成図である。浸水センサーからのデータは、水位センサー端末からの水位データと共にデータ収集クラウドに集められる。データ収集クラウドのデータは、例えばWebAPIなどを用いて、共有サーバーに転送される。転送されたデータは共有サーバーにより水位表示、演算、予測などが行われ、共有クラウドにアップされる。ここにおいて、データ収集サーバーに集められたデータは直接共有クラウドに送られて水位表示や予測が行われてもよい。
【0024】
図2は、第一の実施形態の別の例である。浸水センサーからの信号は、水位センサー観測端末を経由してLPWA方式でデータ収集クラウドに集められる。浸水センサーデータと水位センサーデータは、共有クラウドに転送されて水位表示、予測などの処理、表示が行われ、住民との情報共有等がなされる。浸水センサー5からの信号は、必要により水位センサー観測端末上のゲートウェー12により信号変換される。図2における観測端末1は、複数のセンサーからの信号送受を行う点で、多点観測端末としての機能を果たしている。
【0025】
前述の図1の場合、浸水センサーからの電波強度が弱く中継器が必要となる場合や、浸水センサーからの通信方式が、データ収集サーバーの通信フォーマットと異なる場合がある。それに対して図2の場合、浸水センサーの電波を水位センサー観測端末で一旦受信し、そこから収集クラウドに送信するために、中継器を不要とすることが出来る。ここにおいて、浸水センサーからの信号がWiFiのようにLPWAとは異なる方式の場合、観測端末のゲートウェーでLPWA通信への変換と信号増幅を行うことができる。
【0026】
浸水センサーは水への浸漬を検知するものであり、特許文献1で示されるような浸水により起電力を発生する接触式、浸水により吸水材が膨張して光ファイバを変形させ光伝達率低下させる圧力式、静電容量式、フロート式など各種方式があり、それぞれ数年以上の電池寿命を実現できていると言われている。本発明では、これらの中から適宜選択して使用することができる。
【0027】
浸水センサーは浸水前後の水位変化の測定はできないが、低コストで低消費電力の特性を生かして、外部電源を取りにくい場所や、面的に数多くのセンサーの配置が必要な場合に好適に使用される。その信号は例えば図1のように、LPWA通信方式により直接データ収集クラウドに送信することができる。この場合、浸水センサーからLPWA以外の通信方式、例えばブルートゥース信号で発信し、WiFiに変換した後、中継器を介して例えばLPWAクラウドに送る方法を取ることもできる。
【0028】
本防災システムための水位を定量的に測定する水位センサーとしては、電波式、超音波方式、静電容量式、圧力式などの各種方式がある。その中でも圧力式と超音波式が好ましく、特に圧力式センサーは設置スペースが狭い場所でも取り付けやすく、また流入水中の浮遊物の影響受けにくい等の点でも好ましい。圧力式水位センサーは、液位による液圧の変化をダイヤフラムが捉えて水位を検出する。検出信号はLPWA通信方式によりデータ収集サーバーに送信される。
【0029】
図1には、水位センサー端末にカメラ4が設置されている例が示されている。センサー信号のみでは現地の様子が分かりづらいが、カメラを併用することによりリモートで現地の状況を的確に把握することができる。その場合、赤外線カメラなどを使用すれば、夜間でも現地の状態を見ながら非常時の対応を行うことができる。但し、周囲に防犯カメラなどが設置されて使用可能な場合には、カメラは無くともよい。
【0030】
観測端末からクラウドに送信する方式としては、LPWA方式はその通信距離が大きく、また通信コストが低い点で特に好ましい。LPWA方式としていくつかの通信方式が提案されているが、使用する電波としてはサブギガヘルツ帯のものが多く、特に920MHzを使用しているものが多い。そのような例として、民間企業によるSigfox(登録商標)、LoRa(登録商標)、ELTERS(登録商標)等が知られており、それらいずれも本発明に使用することができる。本発明では、Sigfox方式が通信免許不要、低い通信コストとエネルギー消費量が小さい点で、特に好ましい。
【0031】
浸水センサー及び水位センサーからのデータをデータ収集クラウドに一旦集めた後、共有サーバーに転送する主な理由は、多数の信号源の情報を同一クラウドに集めることにより、情報の統合管理を行いやすいことにある。水位センサーを備えた観測端末は地域の必要な場所に必要な数だけ配置される。またそれに応じた形で必要な数の浸水センサーが水位センサーの周囲に配置される。場合によっては、通信規格の異なる信号で発信する既設の浸水センサーからの信号を、図2の方式により活用することもある。それら通信方式、電波強度が異なる信号が、別々のルートでデータ共有サーバーに集められると、データ管理が大変複雑となる。それに対して、種々の信号をLPWA回線専用の収集サーバーに集めることにより、データフォーマットが統一され、データの統合管理が容易となる。その結果、緊急時に混乱を招くことなく的確な対応を行いやすい。
【0032】
図3は共有クラウドの主要な部分の構成を示すブロック図である。水位センサーと浸水センサーの両方を、収集クラウドから取り込み記憶する観測情報記憶部、気象庁の気象情報(降雨量データ、降水予報)を記憶する気象情報記憶部、浸水センサーによる浸水データを地域情報部の地図上に表示する浸水データ表示部、タンクモデルを用いて水位を演算・予測する予測部、それらの結果をネットワークを介してクラウド外に出力する出力部を有する。共有サーバーにより気象情報を取り込み、水位予測パラメーター設定、演算・予測を行うに際し、後述するように浸水センサーのデータは水位予測精度を高め、もしくは避難路などの面情報の表示等に使用される。そのようなプロセスを通じて、水位センサーと浸水センサーが連携し、防災活動に貢献する。
【0033】
図3の機能を説明する前に先ず、タンクモデルを用いて水位を予測する方法について述べる。図4は、タンクモデルを模式的に示した図である。以下に使用する記号、用語の定義を表1に示す。ここでは、気象庁発表の気象情報として最も典型的な速報版降水短時間予報、及び速報版解析雨量(時間当たりの降雨量)を示しているが、本発明においては、必ずしもこれらに限定されるものではない。目的や使用環境によって、適宜他のデータを選択することも可能である。
【0034】
ここで、浸水などの被害が懸念される観測場所を一つのタンクとして捉え、そのタンクに時刻kにおいてu(k)の降雨が直接に入る。それと共に、当該場所の外から降雨強度u(k)に比例した雨水が流入、水位を上昇(流入パラメーターq)させ、一方水位x(k)に比例して貯留雨水は外部に流出する。時刻k-1からkに遷移する時のタンク内水位予測値の計算は、タンクの底面積をAとしたとき、下記の1時刻先予測式として表される
ここで、x(k|k-1)は、時刻k-1までのデータに基づく時刻kにおける水位予測値であり、x(k-1|k-1)は時刻k-1における水位予測値である。またu(k-1)、q(k-1)はそれぞれ時刻k-1における降雨強度、流入パラメーターである。
上記(2)式においてRは流出抵抗を示すものであり、水位が高い程、また抵抗Rが低い程、タンクからの流出量が大きくなる。-1/AR=d(d<0)と置き換えると次の漸化式(3)式が得られる。
【0035】
前述の非特許文献1では、レーダー・アメダス解析雨量予報(時間当たりの予測降雨強度)と当該時刻における実測降雨強度の相関が、降雨強度が例えば10mm/時以上に高まると、相関性が著しく低下することを示している。更に同文献では、解析雨量予報値を累積した雨量と実測の累積雨量の比較を行ったところ、その相関が著しく高くなることを示した。
【0036】
非特許文献(1)から考察するに、上記(3)式が意味する重要な点として、下記の二点が指摘される。
(a)u(k-1)という降水強度情報を水位x(k)という累積情報に変換することにより、次の時刻の水位予測がなされることがあげられる。強度情報を累積情報に変換し、相関性の小さかった予測雨量データを水位(累積情報)に変換することにより、信頼性を高めることが出来る。
(b)更に、降雨強度を水位に変換するパラメーターとして、時刻その他に依存する変数q,dを導入することにより、刻々と変化する状況に応じて予測式を柔軟に更新できる。
これらの特徴により。低雨量の場合に限らず、線状降水帯などの大雨の際にも、その高い精度を維持できる点で、本システムのタンクモデルは非常に有効である。
【0037】
具体的な水位予測手順は、以下の通りである。即ち、時刻kでの水位x(k)を(1+d)倍した値と、降水強度予測値u(k)を{1+q(k)}倍したものを加えたものが時刻k+1の水位となる。この漸化式を用いて、x(k+1)の計算結果を次のx(k)として次々と計算する。dは負値であり、(1+d)x(k)は1時刻あたりの減水の大きさ、{1+q(k))u(k)は1時刻あたりの増水を示す。
ここで、q(k)、dは管理者の経験、システムのデータベースで検索した過去値などを参照して設定される。
【0038】
このタンクモデルを基に、気象庁発表の速報版降水短時間予報を用いて、6時間先までの長時間予測をおこなう手順は図5に示される。即ち、上記(3)式におけるx(k-1|k-1)として実測水位値、u(k-1)として気象庁発表の速報版降水短時間予報値を使用し、また過去の知見などを基にパラメーターd、qを設定し、式(3)を計算することにより、次の時刻kでの水位予測値が得られる。次いで、降水予報値を見て必要に応じてパラメーターを調整した上で、上記(3)の漸化式を繰り返し計算することにより、数時間先までの予測が可能になる。気象庁発表の速報版降水短時間予報値は、その更新時間間隔10分のため、1時刻は10分となる。この計算を36回繰り返すと6時間先まで10分ごとの水位が得られる。降水強度u(k)は短時間降水予報値をmm/10minに換算して得られる。
【0039】
図5において最初の数時間先までの水位予測を行った後、次の時刻が来た時に更新処理が行われる。新たに取得した気象情報と、その時刻における水位実測値を基に上記の漸化式による計算を基に、6時間先までの予測値が更新される。実測水位値を用いたこの更新処理を行うことにより、水位予測のズレを補正することができ、水位予測の高い精度が担保され、信頼性の高い防災システム構築が可能になる。
【0040】
図5においては、測定開始後に得た実測値を水位初期値として計算しているが、強風による水面の揺動(波)等の影響を受けて、その水位測定値に大きなノイズが含まれる場合がある。そのような場合には、そのノイズをキャンセルするフィルタリング処理を行うことも好ましい。そのようなフィルタリング処理の方法としては、カルマンフィルターによる処理などが行われる。
【0041】
図6は、過去の事例を参考にした仮想的な降雨強度予報曲線(1)、及び前述の(3)式を基にq(k)、d(k)を変化させたときの、水位の変化を、図5の方法により計算し、模式的に示したものである。ここで降雨強度予報曲線(1)は、気象庁発表の速報版降水短時間予報を時間的につなぎ合わせて30時間まで演算したものである。予測水位曲線(2)~(5)で分るように、流入雨量が多く(q増加)なると水位が増加し、流出水量が大きくなると水位が低下する。
【0042】
実際に台風などの豪雨を経験した際の気象情報、6時間先までの予測データ、実測水位値、予測に使用したパラメーターq、dをデータベースに保存しておくことにより、次の豪雨などの際にそのデータを検索して、より精度の高い予測をすることが容易となる。
【0043】
前述したように、本発明のシステムの特徴は、降雨強度情報u(k)を累積情報に変換するタンクモデルを使用することにある。それに加えて、降雨予報値、雨水流入にともなう水位上昇を表す流入パラメーターq(k)、流出パラメーターdを用いることにより、豪雨などの際でも高い予測精度を維持できる。またu(k)、q(k)、dのみの線形方程式というシンプルなモデルで、演算、制御、更新を行える。そのために低価格のシステムとなり、更にその学習効果により予測精度が向上する点で、大きな効果を有する。
【0044】
以下に、水位センサーデータと、浸水センサーからの浸水データの両方を用いて、緊急時にどのように対応するか、述べる。
【0045】
図7は、マンホール31内に浸水センサー5、地上の道路脇に水位センサー2を設けた観測端末1が設置された図である。道路脇に設けられた水位センサーは、路面の水位を測定して内水氾濫に備えるもので、水位測定データはLPWA通信により基地局経由でクラウドに送られる。一方、マンホールで浸水を感知した浸水センサーの信号は、例えばLPWA通信により送信されるが、その電波はマンホール蓋などにより大きく減衰される。そのため、この水位センサー観測端末は、下水管から送られる浸水センサーからの信号を受信し、必要により増幅し、水位センサーデータと共に基地局、収集クラウドへ送信される。
【0046】
収集クラウドからのデータを受けた共有クラウド上では、前述の方法により、水位予測が行われる。その様子を示したのが図8であり、豪雨が接近し、時刻k=6においてマンホール内の浸水センサーからの信号を受信し、水位がマンホール上面に近づいていることを知ったサーバー管理人は、前述のパラメーターd、qを調整する。マンホール内の浸水センサーからの信号を受けるタイミングで、水位予想曲線を修正することにより地上で何時、どの程度の水位となるかその予測精度が向上する。また、マンホールから雨水が溢れ出すのを見て慌てることなく、その前に避難するなどの対策を適切にとることができる。浸水センサーからの信号がないと何時、どの時点でパラメーターを修正するか判断が難しいが、マンホール内の浸水センサーからの信号を得ることより、路面水位の急増が間近であることを知り、緊急対応への切り替えが容易となる。尚、図8において浸水センサー検知前にq=0.1,d=-0.5とし、検知後にq=0.7、d=-0.05とした理由は、検知前に下水管へ流れ込んでいた雨水が、検知後に逆にあふれ出すという考えを基にしている。
【第2の実施形態】
【0047】
図9は、水位センサーを備えた観測端末1を用水路44近くの道路脇に設置し、浸水センサー5を用水路の土手壁面上部、および地域の道路要所に設置した様子を簡易的に示している。用水路土手壁面上部に設置された浸水センサーが水面検知すると、その信号は水位センサー観測端末を経由して基地局に送信される。この場合、浸水センサー信号を、浸水センサー送信機から基地局へ直接送信してもよい。
【0048】
地域の自治体などの危機管理担当者は、用水路近くの水位センサー端末の情報から、実施形態1で述べた方法で水位予測更新を行いつつ、避難勧告などの準備を行う。用水路の土手壁面に配置した浸水センサーから増水の信号を受けた危機管理担当者は、内水氾濫が近いと判断し、水位予測パラメーターを切り替えて水位予測を行うと共に、地域の要所に設置した浸水センサー情報を基に、避難路の浸水状況を共有クラウド上に表示する。その時の対応の方法の一例を、フローチャートにより図10に示す。
【0049】
用水路近くの住民は、情報端末などを共有クラウドに接続し、水位予測曲線などから、避難準備のための時間がどの程度残されているか、また周囲の水位の状況を屋外に出ることなく把握できる。更に避難路の浸水状況を知ることにより、安全な避難路を確認しつつ避難所に避難することが可能となる。
【第3の実施形態】
【0050】
図11は、マンションやオフィスビルなどの近くに水位センサー端末を設置した水位予測システムの例を示す。マンションや住宅が密集する市街地では、道路が舗装されて雨水が土中に浸透しづらいため、排水溝などの排水能力が限界を越えると一気に増水し、ビルやマンションなどの地下に流れ込みやすい。その災害を予防、もしくは最小化するために水位センサー端末をマンション近くに設置することが好ましい。更に、例えばマンション地下の電気制御室、地下エレベータ設置個所、地下駐車場などの要所に浸水センサーを設置して、それらの信号を水位センサー観測端末経由で、基地局に送信する。マンション地下からの浸水センサーの信号は、前述のマンホールと同様に途中で強度が減衰しやすいため、必要に応じて水位センサー観測端末で増幅し、基地局に送信する。
【0051】
マンション管理人など担当者は、水位データとその後の水位予測データを見ながら、浸水防止板の設置、地下排水ポンプの能力アップ、駐車場の自動車移動の注意喚起などを行う。その後、地下電気室の浸水センサーが浸水を検知すると、非常時対応としてエレベータの地下停止禁止、地下立ち入り禁止などの非常時対策を行う。
【0052】
上述の例では、マンション地下からの信号発信をLPWA通信により行う例を示したが、通信方式はそれに限定されない。例えば、浸水センサーからの信号をブルートゥース方式で行い、ルーターを介してWiFi通信に変換して水位センサー端末装置に送信するなど、状況に応じて種々の形態をとることも可能である。
【第4の実施形態】
【0053】
前述の第3の実施形態では、マンション地下などの浸水センサーからのLPWA通信信号を、水位センサー観測端末経由で収集クラウドに送信する例を示したが、通信方式はそれに限定されない。例えば、浸水センサーからの信号をブルートゥース方式で行い、ルーターを介してWiFi通信に変換して水位センサー端末装置に送信することも可能である。また浸水センサーと水位センサー観測端末の距離が近い場合には、浸水センサー信号をブルートゥース方式で直接水位センサー観測端末に送信するなど、状況に応じて種々の形態をとることも可能である。
【0054】
図12は、浸水センサーからの信号を受信し、収集クラウドに中継する機能を有する水位観測端末筐体内の模式図を示す。水位センサーと観測端末は1:1で有線接続され、その信号は変調されてLPWA通信により送信される。例えば、水位信号は10秒間隔でSigfox(商標登録)データ収集クラウドに送信される。一方、浸水センサーからの信号は、例えばブルートゥース信号などの無線通信で接続され、観測端末のアンテナとゲートウェーを介して、同じくLPWA通信により収集クラウドに向けて送信される。浸水センサーからのn系列(nは1以上の整数)の信号を受信することが可能であり、LPWA通信規格に変換し、必要により増幅されて収集クラウドに送信される。
【0055】
上記の説明では、浸水センサーからの信号をブルートゥース通信で送信する例を示したが、その信号強度が弱い場合には、一旦ブルートゥースからルーターを介してWiFiのような無線LAN信号に変換して水位センサー観測端末に送信するなど、状況に応じて最も好ましい方法を適宜採用することができる。
【0056】
図12の水位センサー観測端末の筐体中には電子カメラが設置されている。このカメラによる画像信号の情報量(帯域幅)は、LPWAで送信するには大きすぎるため、例えば携帯電話用通信規格の一つであるLTE方式により送信される。LTE通信網は広く整備されているため、データ収集サーバーもしくは共有サーバーにより容易に受信される。
【0057】
以上、実施形態1~3により本発明を具体的に示したが、それらの効果は以下のように要約される。
(1)水位センサーによる水位測定、予測を行うに際し、下水管や用水路などの危険個所に配置した浸水センサーからの信号を基に、水位予測パラメーターを最適化することにより危険到達迄の時間を見積もり、避難勧告などの危機管理体制に入る等、タイムリーに対策を取ることができる。
(2)地域住民は水位予測データを見ることにより、避難準備のために残された時間を見積もることができる。それと同時に、地域要所に配置された浸水センサーデータから避難路の安全を確認できる。
(3)マンションやビルの近くの路面上に水位センサー端末を配置し、地下室などに浸水センサーを配置することにより、ビル管理者は水位センサーによる水位予測データを見ながら、路上と地下両方の危険回避のための対策を適切に行うことが出来る。
(4)水位センサーデータと浸水センサーデータを同一の通信方式により、データ収集クラウドに送信することにより、データを一元化、統合して扱うことが容易となり、危機管理者、住民、ビル・マンション管理者などが混乱することなく防災を迅速・的確に行うことが容易となる。
【符号の説明】
【0058】
1 観測端末、 2 水位センサー、3 雨水桝、4 カメラ、 5 浸水センサー、6 データ収集クラウド、 7 データ収集サーバー、 8 気象情報、 9 共有クラウド、10 共有サーバー、 11 情報端末、 12 ゲートウェー、 21 ネットワーク、 22 観測情報記憶部、 23 地域情報記憶部、24 出力部、 25 タンクモデルを用いた水位予測部、 26 浸水データ表示部、27 気象情報記憶部、31 マンホール、 32 送信機、 33 下水管、 34 LPWA通信基地局、 44 用水路、 45 住民、46 避難所、 51 マンション、52 電気室、53 通信基板、54 非常用電源、 55 防水コネクタ、 56 ACアダプタ、 57 電源コード、 58 SIMカード、59 画像通信アンテナ、 60 LPWA通信用アンテナ、 61 浸水センサー信号受信アンテナ、62 ゲートウェー、 63 マイコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12