(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150389
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】プログラム、方法、情報処理システム、および排便シート
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20241016BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199781
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2023063612の分割
【原出願日】2023-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】506208908
【氏名又は名称】学校法人兵庫医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 勇規
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿行
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】患者による極めて簡単な操作により、疾患活動性の評価を継続的に行うことができるシステムを提供する。
【解決手段】
本開示の一形態は、プロセッサを有するサーバを備えた情報処理システムに実行させるプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、患者又は医療従事者が使用する端末装置により撮影された当該患者の便画像を取得するステップと、取得した便画像への画像処理により、患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定するステップと、推定された当該患者の疾患活動性指数を、端末装置に出力するステップと、を実行させる、プログラム。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを有するサーバを備えた情報処理システムに実行させるプログラムであって、前記プログラムは、前記プロセッサに、
患者又は医療従事者が使用する端末装置により撮影された当該患者の便画像を取得するステップと、
取得した前記便画像への画像処理により、前記患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定するステップと、
推定された前記疾患活動性指数を、前記端末装置に出力するステップと、を実行させる、プログラム。
【請求項2】
前記疾患活動性指数を推定するステップでは、前記プロセッサに、
前記便画像を入力データとし、前記疾患活動性指数を正解出力データとした学習用データを用いた機械学習により作成された活動性推定モデルに対して、取得した前記便画像を入力することで、前記患者の特定の疾患に関する前記疾患活動性指数の推定値を出力させるステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記疾患活動性指数を推定するステップでは、前記プロセッサに、
前記便画像を入力データとし、当該便中のカルプロクチンの含有量を正解出力データとした学習用データを用いた機械学習により作成された活動性推定モデルに対して、取得した前記便画像を入力することで、当該便中のカルプロクチンの含有量の推定値を出力させるステップと、
前記含有量の推定値を用いて、予め設定された前記含有量と、前記疾患活動性指数の推定値と、が対応づけられた判定基準に基づいて、前記疾患活動性指数の推定値を出力するステップと、を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記疾患活動性指数を推定するステップでは、さらに、
当該疾患における病変範囲の推定位置を出力する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記疾患活動性指数を推定するステップでは、さらに、
推定された前記疾患活動性指数の尤度を出力する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記プロセッサに、さらに、
前記患者の前記便画像、および当該便画像に相当する便の排泄時における実際の前記疾患活動性指数を学習用データとして、前記疾患活動性指数の推定に用いられる活動性推定モデルを再学習させるステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記プロセッサに、さらに、
前記端末装置に入力された排泄行動並びに服薬を含む食行動の履歴を示す行動履歴、および生体情報の少なくともいずれかを取得するステップを実行させ、
前記疾患活動性指数を推定するステップでは、前記便画像への画像処理とともに、取得された前記行動履歴および前記生体情報を用いて、予め設定された評価基準に基づいて、前記疾患活動性指数を推定する、請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
前記疾患活動性指数を推定するステップでは、前記患者が排泄時に用いた排便シートに記載された色基準又はサイズ基準を用いて、前記便画像への画像処理を行う、請求項1に記載のプログラム。
【請求項9】
前記便画像を取得するステップにおいて、
前記端末装置が撮影した画像に含まれる排泄物を検出するステップと、
当該画像に前記排泄物が検出された場合に、当該画像を前記端末装置に記憶させることなく、前記サーバに送信させるステップと、を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項10】
前記プロセッサに、さらに、
推定された前記疾患活動性指数が、予め設定された所定の閾値を超えた場合に、前記患者に対して、主治医による診療が必要である旨を通知するステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項11】
前記プロセッサに、さらに、
前記患者による前記便画像の取得頻度を集計するステップと、
集計された前記取得頻度が一定の基準を下回った際に、前記便画像の継続的な取得を促す通知を、前記端末装置に通知するステップと、を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項12】
前記プロセッサに、さらに、
前記患者による前記便画像の取得頻度を集計するステップと、
集計された前記取得頻度が一定の基準を上回った際に、前記便画像の継続的な取得を認定する通知を、前記端末装置に通知するステップと、を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項13】
前記プロセッサに、さらに、
推定された前記疾患活動性指数が、予め設定された所定の閾値を超えた場合に、前記患者の主治医が使用する端末に対して、その旨を通知するステップを実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項14】
前記プロセッサに、さらに、
取得した前記便画像を用いた画像処理により、当該便画像に係る便を排泄した際の前記患者の腸内の状態として推定される内視鏡相当画像を生成するステップと、
前記内視鏡相当画像を作成した旨を、前記患者の主治医が使用する端末に対して通知するステップと、を実行させる、請求項1に記載のプログラム。
【請求項15】
プロセッサを有するサーバを備えた情報処理システムが実行する方法であって、前記方法は、前記プロセッサが、
患者又は医療従事者が使用する端末装置により撮影された当該患者の便画像を取得するステップと、
取得した前記便画像への画像処理により、前記患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定するステップと、
推定された前記疾患活動性指数を、前記端末装置に出力するステップと、を実行する、方法。
【請求項16】
プロセッサを有するサーバを備えた情報処理システムであって、前記情報処理システムは、前記プロセッサが、
患者又は医療従事者が使用する端末装置により撮影された当該患者の便画像を取得する手段と、
取得した前記便画像への画像処理により、前記患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定する手段と、
推定された前記疾患活動性指数を、前記端末装置に出力する手段と、を備える、情報処理システム。
【請求項17】
請求項1から14のいずれか1項に記載のプログラムを実行する際に用いられる前記便画像の撮影に用いられる排便シートであって、
前記患者が排便を行うトイレ内の封水を覆う状態で使用され、撮影に要する時間において便が封水に流れこむのを防ぐための耐水性を備えたシート本体を備えている排便シート。
【請求項18】
前記シート本体は、少なくとも一部が有色であるとともに、その表面に前記便画像への画像処理において用いられる色基準およびサイズ基準の少なくとも一方が表示されている、請求項17に記載の排便シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、方法、情報処理システム、および排便シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザから入力される健康状態に関する情報を用いて、特定の疾患における現在
の疾患活動性を評価するシステムが知られている。
例えば、下記の非特許文献には、健康状態に関する複数の入力項目について、患者から
の日々の入力操作を受け付け、入力された情報を用いて独自の評価基準に沿ったスコアリ
ングを行い、当該患者の潰瘍性大腸炎についての疾患活動性を推定するシステムが開示さ
れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】My IBD Care:Crohn's & Colitis(https://play.google.com/store/apps/details?id=nhs.ibd.com.nhsibd&hl=ja&gl=US&pli=1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムでは、患者は日々の健康状態について、毎日複数の項目についての入力操作を行う必要がある。このため、患者が毎日の入力操作に負担を感じることで適切な入力操作を継続的に続けることできなくなり、疾患活動性の評価が適切に行えないことがあった。
【0005】
本開示は、患者による極めて簡便な操作により、疾患活動性の評価を継続的に行うことができるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、プロセッサを有するサーバを備えた情報処理システムに実行させるプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、患者又は医療従事者が使用する端末装置により撮影された当該患者の便画像を取得するステップと、取得した便画像への画像処理により、患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定するステップと、推定された当該患者の疾患活動性指数を、端末装置に出力するステップと、を実行させる、プログラム。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、患者による極めて簡単な操作により、疾患活動性の評価を継続的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の疾患活動性評価システムの概要を説明する図である。
【
図2】
図1に示す端末装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】
図2に示す端末装置の機能的構成を示す図である。
【
図4】
図1に示す評価サーバのハードウェア構成を示す図である。
【
図5】
図4に示す評価サーバの機能的構成を示す図である。
【
図6】評価サーバが記憶する各データベースの構造の一例を示す図である。
【
図7】
図1に示す医療情報管理サーバのハードウェア構成を示す図である。
【
図8】
図6に示す医療情報管理サーバの機能的構成を示す図である。
【
図9】医療情報管理サーバが記憶する各データベースの構造の一例を示す図である。
【
図11】本発明による疾患活動性の評価処理のフローを説明する図である。
【
図12】本発明による予約処理のフローを説明する図である。
【
図13】本発明による評価履歴の集計処理のフローを説明する図である。
【
図14】内視鏡相当画像の生成処理のフローを説明する図である。
【
図18】第1変形例に係るシステム1の疾患活動性の評価処理のフローを説明する図である。
【
図19】第2変形例に係るシステム1の疾患活動性の評価処理のフローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。従って、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0010】
<1.システム1の構成>
以下、システム1の構成について説明する。
【0011】
(1-1.全体構成)
本実施形態に係る情報処理システム1(以下、単にシステム1という)は、ユーザ(患者又は医療従事者)が撮影した便画像を用いて当該ユーザにおける特定の疾患における疾患活動性を評価するシステムである。以下の説明では、便画像とは、便を含む排泄物を被写体とする画像を指す。また、以下の説明では、特定の疾患として炎症性腸疾患を例に挙げる。
【0012】
ここで、疾患活動性とは、疾患の状態を定量的に示す指標である。疾患活動性は一般的には、複数の評価項目について状態に応じたスコアリングを行い、スコアの合計値と予め設定された基準と対比することで、疾患活動性の等級が割り振られる。炎症性腸疾患における疾患活動性として、例えば、以下の等級を設定することができる。
・Lv1:疾患が非常に良好である
・Lv2:軽度の病変があるが、疾患は安定している
・Lv3:中等度の病変があり、軽度から中等度の症状がある
・Lv4:重度の病変があり、中等度から重度の症状がある
・Lv5:非常に重度の病変があり、非常に重度の症状がある
以下の説明では、上記の等級を疾患活動性の指数と呼ぶ。なお、疾患活動性の評価基準は任意に設定することができる。
【0013】
図1は、システム1の全体の構成を示す図である。
図1に示すように、システム1は、複数の端末装置10(
図1では、患者端末10Aおよび医療端末10Bを示している。以下、総称して「端末装置10」ということがある。)と、評価サーバ20と、医療機関サーバ30を含む。
【0014】
端末装置10は、システム1を利用する各ユーザが操作する情報処理装置である。端末装置10は、据え置き型のPC(Personal Computer)、ラップトップPC、又は、システム1に対応したスマートフォン、タブレット等の携帯端末などにより実現される。端末装置10は、ネットワーク80に接続されている。
【0015】
ここで、システム1のユーザには、以下の者が含まれる。
・特定の疾患への罹患歴がある患者
・患者への医療行為を行う医師を含む医療従事者
・システム1の保守、運用を行うシステム管理者
【0016】
以下の説明において、端末装置10を操作主体により以下のとおり区別する。
・患者端末10A:患者が使用する端末装置
・医療端末10B:医療従事者が使用する端末装置
・管理者端末:システム管理者が使用する端末装置(図示せず)
なお、これらの各端末について共通する構成については、端末装置10としてまとめて説明する。
【0017】
評価サーバ20は、主に患者端末10Aから送信された便画像を用いた画像処理により、当該患者の疾患活動性を評価する処理を実行する情報処理装置である。
評価サーバ20は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ(例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、又はそれらの組み合わせ)などの種々のコンピュータを含みえる。本実施形態では、評価サーバ20は、サーバコンピュータを例に挙げて説明する。
【0018】
医療機関サーバ30は、主に病院などの医療機関において、医療従事者による患者への日頃の医療行為に関する情報を管理する処理を実行する情報処理装置である。
医療機関サーバ30は、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ(例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバ、又はそれらの組み合わせ)などの種々のコンピュータを含みえる。本実施形態では、医療機関サーバ30は、サーバコンピュータを例に挙げて説明する。
【0019】
(1-2.端末装置10のハードウェア構成)
図2は、端末装置10のハードウェア構成を示す図である。
図2に示すように、端末装置10は、通信IF(Interface)12と、入力装置13と、出力装置14と、メモリ15と、記憶部16と、プロセッサ19と、を備える。
【0020】
端末装置10は、ネットワーク80を介して評価サーバ20および医療機関サーバ30と通信可能に接続される。端末装置10は、5G、LTE(Long Term Evolution)などの通信規格に対応した無線基地局81、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11などの無線LAN(Local Area Network)規格に対応した無線LANルータ82等の通信機器と通信することによりネットワーク80に接続される。
【0021】
通信IF12は、端末装置10が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。
入力装置13は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置(例えば、タッチパネル、タッチパッド、マウス等のポインティングデバイス、キーボード等)である。
【0022】
出力装置14は、ユーザに対し情報を提示するための出力装置(ディスプレイ、スピーカ等)である。
メモリ15は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
【0023】
記憶部16は、プログラムおよびデータを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0024】
プロセッサ19は、記憶部16に記憶されたプログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0025】
(1-3.端末装置10の機能的な構成)
図3は、端末装置10の機能的な構成を示す図である。
図3に示すように、端末装置10は、複数のアンテナ(アンテナ111、アンテナ112)と、各アンテナに対応する無線通信部(第1無線通信部121、第2無線通信部122)と、操作受付部130(タッチ・センシティブ・デバイス131およびディスプレイ132を含む)と、位置情報センサ150と、カメラ160と、記憶部170と、制御部180と、を含む。
【0026】
端末装置10は、
図3では特に図示していない機能および構成(例えば、電力を保持するためのバッテリー、バッテリーから各回路への電力の供給を制御する電力供給回路など)も有している。
図3に示すように、端末装置10に含まれる各ブロックは、バス等により電気的に接続される。
【0027】
アンテナ111は、端末装置10が発する信号を電波として放射する。また、アンテナ111は、空間から電波を受信して受信信号を第1無線通信部121へ与える。
アンテナ112は、端末装置10が発する信号を電波として放射する。また、アンテナ112は、空間から電波を受信して受信信号を第2無線通信部122へ与える。
【0028】
第1無線通信部121は、端末装置10が他の無線機器と通信するため、アンテナ111を介して信号を送受信するための変復調処理などを行う。
第2無線通信部122は、端末装置10が他の無線機器と通信するため、アンテナ112を介して信号を送受信するための変復調処理などを行う。
【0029】
第1無線通信部121と第2無線通信部122とは、チューナー、RSSI(Received Signal Strength Indicator)算出回路、CRC(Cyclic Redundancy Check)算出回路、高周波回路などを含む通信モジュールである。第1無線通信部121と第2無線通信部122とは、端末装置10が送受信する無線信号の変復調や周波数変換を行い、受信信号を制御部180へ与える。
【0030】
操作受付部130は、ユーザの入力操作を受け付けるための機構を有する。具体的には、操作受付部130は、タッチスクリーンとして構成され、タッチ・センシティブ・デバイス131と、ディスプレイ132とを含む。
【0031】
タッチ・センシティブ・デバイス131は、端末装置10のユーザの入力操作を受け付ける。タッチ・センシティブ・デバイス131は、例えば静電容量方式のタッチパネルを用いることによって、タッチパネルに対するユーザの接触位置を検出する。タッチ・センシティブ・デバイス131は、タッチパネルにより検出したユーザの接触位置を示す信号を入力操作として制御部180へ出力する。
【0032】
ディスプレイ132は、制御部180の制御に応じて、画像、動画、テキストなどのデータを表示する。ディスプレイ132は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイによって実現される。
【0033】
位置情報センサ150は、端末装置10の位置を検出するセンサであり、例えばGPS(Global Positioning System)モジュールである。GPSモジュールは、衛星測位システムで用いられる受信装置である。衛星測位システムでは、少なくとも3個又は4個の衛星からの信号を受信し、受信した信号に基づいて、GPSモジュールが搭載される端末装置10の現在位置を検出する。
カメラ160は、受光素子により光を受光して、撮影画像として出力するためのデバイスである。
【0034】
記憶部170は、例えばフラッシュメモリ等により構成され、端末装置10が使用するデータおよびプログラムを記憶する。記憶部170は、ユーザ情報171と、検出モデル172と、図示しない各種のプログラムと、を少なくとも記憶する。
【0035】
ユーザ情報171は、端末装置10を使用するユーザに関する情報である。ユーザ情報171には、端末装置10によりユーザがシステム1にログインする際に入力が要求されるアカウント情報(ユーザを識別するユーザID、パスワード)等が含まれる。その他、ユーザ情報171には、ユーザがシステム1を利用するために所定のアプリケーションを端末装置10にインストールしたときに登録したユーザの属性に関する各種の情報が含まれてもよい。
【0036】
ユーザIDは、ユーザに発行される顧客IDであってもよい。
ユーザIDとしては、メール、ビデオ通話、カレンダー、ストレージ、ドキュメント作成、スプレッドシート作成、ニュース配信など様々な機能をSaaS(Software as a Service)等の形式で提供するサービス(法人向けを含むこととしてもよい)のユーザアカウントであるとしてもよい。
【0037】
検出モデル172は、学習用データに基づき、モデル学習プログラムに従って機械学習モデルに機械学習を行わせることにより得られる。例えば、本実施形態において、検出モデル172は、入力される画像情報に対し、人体からの排泄物の位置・大きさ、および排泄物の種類を出力するように学習されている。排泄物の種類としては、固形状便、ドロ状便、水様性便、血液、粘液、混入物等が挙げられる。
【0038】
このとき、学習用データは、例えば、人体からの排泄物の画像情報を入力データとし、入力された画像情報に対して、排泄物の位置および大きさに関する情報と、当該排泄物の種類に関する情報と、を正解出力データとする。
【0039】
具体的には、検出モデル172は、様々な種類の排泄物の画像の特徴量(基準特徴量)と、評価対象である画像に写された排泄物の特徴量と、を比較して類似度を評価することで、いずれかの種類の排泄物があるかどうかを判定する。類似度の評価に際しては、評価対象である画像の特徴量が、基準特徴量に対して、予め設定された閾値の範囲内である場合に、当該排泄物の存在を検出する。なお、様々な種類の排泄物について、基準特徴量がそれぞれ設定されている。
【0040】
本実施形態に係る検出モデル172は、例えば、複数の関数が合成されたパラメータ付き合成関数である。パラメータ付き合成関数は、複数の調整可能な関数、およびパラメータの組合せにより定義される。本実施形態に係る検出モデル172は、上記の要請を満たす如何なるパラメータ付き合成関数であってもよいが、多層のニューラルネットワークモデル(以下「多層化ネットワーク」という。)であるとする。多層化ネットワークを用いる検出モデル172は、入力層と、出力層と、入力層と出力層との間に設けられる少なくとも1層の中間層あるいは隠れ層とを有する。検出モデル172は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての使用が想定される。
【0041】
本実施形態に係る多層化ネットワークとしては、例えば、深層学習(Deep Learning)の対象となる多層ニューラルネットワークである深層ニューラルネットワーク(Deep Neural Network:DNN)が用いられ得る。DNNとしては、例えば、画像を対象とする畳み込みニューラルネットワーク(Convolution Neural Network:CNN)を用いてもよい。
【0042】
制御部180は、記憶部170に記憶されるプログラムを読み込んで、プログラムに含まれる命令を実行することにより、端末装置10の動作を制御する。制御部180は、例えば予め端末装置10にインストールされているアプリケーションである。制御部180は、プログラムに従って動作することにより、入力受付部181と、送受信部182と、撮影部183と、検出部184と、データ処理部185と、表示制御部186としての機能を発揮する。
【0043】
入力受付部181は、タッチ・センシティブ・デバイス131等の入力装置13に対するユーザの入力操作を受け付ける処理を行う。
【0044】
送受信部182は、端末装置10が、評価サーバ20等の外部の装置と、通信プロトコルに従ってデータを送受信するための処理を行う。
【0045】
撮影部183は、患者からの操作に応答して、カメラ160を起動して被写体についての画像を撮影するための処理を行う。
【0046】
検出部184は、撮影部183が撮影した画像に含まれる便を検出する。この際、検出部184は、検出モデル172に評価対象となる画像データを入力し、検出モデル172から出力された情報に基づいて、当該画像に含まれる便などの排泄物を検出する。この処理については後述する。
【0047】
データ処理部185は、端末装置10が入力を受け付けたデータに対し、プログラムに従って演算を行い、演算結果をメモリ等に出力する処理を行う。例えば、データ処理部185は、撮影された画像についての記憶部170への記憶処理を制御する。データ処理部185は、画像中に便が検出された場合には、当該画像を端末装置10の記憶部170に記憶させることなく、評価サーバ20に送信させる。
【0048】
表示制御部186は、ディスプレイ132に情報を表示することで、ユーザに対し当該情報を提示する処理を行う。表示制御部186は、ウェブブラウザとしての機能を有し、評価サーバ20が、端末装置10との間の論理回線(TCPコネクション)に対して出力した情報にアクセスし、端末装置10のディスプレイ132に表示させる処理(レンダリング)を行う。
【0049】
(1-4.評価サーバ20のハードウェア構成)
図4は、評価サーバ20のハードウェア構成を示す図である。
図4に示すように、評価サーバ20は、通信IF22と、入出力IF23と、メモリ25と、ストレージ26と、プロセッサ29と、を備える。
【0050】
通信IF22は、評価サーバ20が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。
入出力IF23は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置、および、ユーザに対し情報を提示するための出力装置とのインタフェースとして機能する。
【0051】
メモリ25は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
【0052】
ストレージ26は、プログラムおよびデータを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0053】
プロセッサ29は、ストレージ26に記憶されたプログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0054】
(1-5.評価サーバ20の機能的な構成)
図5は、評価サーバ20の機能的な構成を示す図である。
図5に示すように、評価サーバ20は、通信部201と、記憶部202と、制御部203としての機能を発揮する。
【0055】
通信部201は、評価サーバ20が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0056】
記憶部202は、評価サーバ20が使用するデータおよびプログラムを記憶する。記憶部202は、例えば以下のデータを記憶する。
・ユーザデータベース(ユーザDB)2021
・画像データベース(画像DB)2022
・オブジェクトデータベース(オブジェクトDB)2023
・タグデータベース(タグDB)2024
・コメントデータベース(コメントDB)2025
・評価履歴データベース(評価履歴DB)2026
・活動性推定モデル2027
・画像合成モデル2028
【0057】
ユーザDB2021は、患者としてシステム1を使用するユーザに関する情報を管理するデータベースである。ユーザDB2021のデータ構造の詳細は後述する。
【0058】
画像DB2022は、端末装置10により取得した画像に関する情報を管理するデータベースである。画像DB2022のデータ構造の詳細は後述する。
【0059】
オブジェクトDB2023は、画像から検出された排泄物を構成するオブジェクトに関する情報を管理するデータベースである。排泄物を構成するオブジェクトとは、例えば、便、血液、粘液、混入物などが含まれる。オブジェクトDB2023のデータ構造の詳細は後述する。
【0060】
タグDB2024は、便の撮影時に患者が選択したタグに関する情報を管理するデータベースである。システム1では、健康状態や排泄行為の履歴にする複数の項目がタグとして設定されており、ユーザは便の撮影時に、該当する項目についてのタグを選択することができる。タグDB2024のデータ構造の詳細は後述する。
【0061】
コメントDB2025は、ユーザが便の撮影時に任意に入力したコメントに関する情報を管理するデータベースである。コメントDB2025のデータ構造の詳細は後述する。
【0062】
評価履歴DB2026は、システム1による疾患活動性の評価結果の履歴を管理するデータベースである。評価履歴DB2026のデータ構造の詳細は後述する。
【0063】
活動性推定モデル2027は、学習用データに基づき、モデル学習プログラムに従って機械学習モデルに機械学習を行わせることにより得られる。例えば、本実施形態において、活動性推定モデル2027は、入力される便画像に対し、当該便を排泄した者(患者)における炎症性腸疾患についての疾患活動性指数の推定値を出力するように学習されている。また、活動性推定モデル2027は、入力された便画像と、学習したデータセットとを比較して、疾患活動性指数の推定値の尤もらしさを示す尤度を出力する。
【0064】
このとき、学習用データは、例えば、人体からの排泄物の画像情報を入力データとし、入力された画像情報に対して、当該便を排泄した者(患者)について、同時期に医師により下された炎症性腸疾患についての疾患活動性指数の値を正解出力データとする。
【0065】
また、活動性推定モデル2027は、入力される便画像に対し、当該疾患における病変範囲の推定位置をさらに出力してもよい。この場合には、排泄物の画像情報を入力データとし、当該便を排泄した者(患者)の炎症性腸疾患の病変範囲に関する情報を正解出力データとすることになる。
【0066】
本実施形態に係る活動性推定モデル2027は、例えば、複数の関数が合成されたパラメータ付き合成関数である。パラメータ付き合成関数は、複数の調整可能な関数、およびパラメータの組合せにより定義される。本実施形態に係る活動性推定モデル2027は、上記の要請を満たす如何なるパラメータ付き合成関数であってもよいが、多層のニューラルネットワークモデル(以下「多層化ネットワーク」という。)であるとする。多層化ネットワークを用いる活動性推定モデル2027は、入力層と、出力層と、入力層と出力層との間に設けられる少なくとも1層の中間層あるいは隠れ層とを有する。活動性推定モデル2027は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての使用が想定される。
【0067】
画像合成モデル2028は、学習用データに基づき、モデル学習プログラムに従って機械学習モデルに機械学習を行わせることにより得られる。例えば、本実施形態において、画像合成モデル2028は、入力される便画像に対し、当該便を排泄した者(患者)の腸内の状態として推定される内視鏡相当画像を出力するように学習されている。
【0068】
このとき、学習用データは、例えば、人体からの排泄物の画像情報を入力データとし、入力された画像情報に対して、当該便を排泄した者(患者)について同時期に内視鏡検査により撮影された腸内の内視鏡画像を正解出力データとする。
【0069】
本実施形態に係る画像合成モデル2028は、例えば、複数の関数が合成されたパラメータ付き合成関数である。パラメータ付き合成関数は、複数の調整可能な関数、およびパラメータの組合せにより定義される。本実施形態に係る画像合成モデル2028は、上記の要請を満たす如何なるパラメータ付き合成関数であってもよいが、多層のニューラルネットワークモデル(以下「多層化ネットワーク」という。)であるとする。多層化ネットワークを用いる画像合成モデル2028は、入力層と、出力層と、入力層と出力層との間に設けられる少なくとも1層の中間層あるいは隠れ層とを有する。画像合成モデル2028は、人工知能ソフトウェアの一部であるプログラムモジュールとしての使用が想定される。
【0070】
制御部203は、評価サーバ20のプロセッサ29がプログラムに従って処理を行うことにより、各種モジュールとして示す機能を発揮する。制御部203は、送受信制御モジュール2031と、取得モジュール2032と、評価モジュール2033と、判定モジュール2034と、集計モジュール2035と、画像生成モジュール2036と、出力モジュール2037としての機能を発揮する。
【0071】
送受信制御モジュール2031は、評価サーバ20が外部の装置との間で通信プロトコルに従って信号を送受信する処理を制御する。
【0072】
取得モジュール2032は、患者の操作に応答して患者端末10Aから送信された便画像に関する情報を取得する。取得モジュール2032は、取得した便画像に関する情報を所定の記憶領域に記憶させたうえで、画像DB2022、オブジェクトDB2023、およびコメントDB2025のうち、更新すべきデータベースについて、新たなレコードを記録する。
【0073】
評価モジュール2033は、取得された便画像を用いた画像処理により、患者の疾患活動性を評価する。具体的には、評価モジュール2033は、活動性推定モデル2027に対して便画像を入力することで、活動性推定モデル2027から出力された疾患活動性指数の推定値を取得する。評価モジュール2033は、取得した疾患活動性指数の推定値を評価履歴DB2026の新たなレコードとして記録する。
なお、評価モジュール2033は、活動性推定モデル2027に対して便画像から検出された排泄物に関するオブジェクトのデータを入力してもよい。
【0074】
判定モジュール2034は、評価モジュール2033が行った疾患活動性の評価結果に基づいて、予め設定された予約の要否に関する判定条件を用いて、当該患者が医師による診察を必要としている状態かどうかを判定する。判定モジュール2034は、当該患者が医師による診察を必要としていると判断した場合には、その旨を患者および主治医に対して通知する。
【0075】
集計モジュール2035は、予め設定された頻度に応じて、評価履歴の集計を行う。集計モジュール2035は、評価履歴DB2026を参照して、集計対象となる患者について、疾患活動性の評価履歴として、例えば以下の情報を集計する。
・集計対象期間における便画像の取得した日の割合
・集計対象期間における評価結果の推移
・集計対象期間における患者又は医師からのコメント内容
【0076】
画像生成モジュール2036は、取得された便画像を用いた画像処理により、当該便画像に係る便を排泄した際の患者の内視鏡相当画像を生成する。内視鏡相当画像とは、当該患者の腸内の状態を、実際に内視鏡による撮影した場合に撮影されることが想定される、内視鏡画像に相当する画像として表現した情報である。
画像生成モジュール2036は、画像合成モデル2028に対して便画像を入力することで、画像合成モデル2028から出力された内視鏡相当画像を取得する。画像生成モジュール2036は、内視鏡相当画像を所定の記憶領域に記憶されたのちに、当該記憶領域を示すアドレス情報(例えばURL情報)を作成する。
【0077】
出力モジュール2037は、患者又は医療従事者の操作に応答して、実行した処理により得られた各種の情報を出力する。出力モジュール2037は、例えば以下の情報を出力する。
・患者端末10Aおよび医療端末10Bに対して、疾患活動性の評価結果に関する情報
・患者端末10Aおよび医療端末10Bに対して、評価履歴の集計結果に関する情報
・患者端末10Aに対して、診察予約を提案する旨の情報
・医療端末10Bに対して、生成した内視鏡相当画像を作成した旨の情報
【0078】
(1-6.評価サーバ20が管理する各データベースのデータ構造)
次に、
図6を用いて、評価サーバ20の記憶部202に記憶される各データベースのデータ構造の一例について説明する。
【0079】
(1-6-1.ユーザDB2021)
図6Aは、ユーザDB2021のデータ構造の一例を示す図である。
図6Aに示すように、ユーザDB2021は、患者としてシステム1を使用するユーザに関する情報を記憶している。ユーザDB2021は、患者によるシステム1の使用開始時のユーザ登録操作により、新たなレコードが記録される。
【0080】
ユーザDB2021は、項目「ユーザID」と、項目「氏名」と、項目「生年月日」と、項目「性別」と、項目「患者ID」と、を含む。
【0081】
項目「ユーザID」には、患者としてシステム1を使用するユーザを特定可能なユーザの識別情報が格納される。
【0082】
項目「氏名」には、ユーザIDに対応するユーザの氏名に関する情報が格納される。
【0083】
項目「生年月日」には、ユーザIDに対応するユーザの生年月日に関する情報が格納される。
【0084】
項目「性別」には、ユーザIDに対応するユーザの性別に関する情報が格納される。
【0085】
項目「患者ID」には、ユーザIDに対応するユーザの医療機関サーバ30において管理されている患者としての識別情報が格納される。なお、特定の医療機関のみで管理される患者IDに代えて、健康保険証の被保険者番号やマイナンバーなどを用いてもよい。
なお、
図6Aに示すユーザDB2021の構造はあくまで例示であり、ユーザDB2021は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0086】
(1-6-2.画像DB2022)
図6Bは、画像DB2022のデータ構造の一例を示す図である。
図6Bに示すように、画像DB2022は、撮影された便画像に関する情報を記憶している。画像DB2022は、便画像が評価サーバ20に送信されて取得モジュール2032により取得された際に、新たなレコードが記録される。
【0087】
画像DB2022は、項目「画像ID」と、項目「ユーザID」と、項目「撮影日時」と、項目「撮影端末」と、項目「撮影場所」と、項目「タグID」と、項目「保存領域」とを含む。
【0088】
項目「画像ID」には、評価サーバ20により取得された便画像を特定可能な便画像の識別情報が格納される。
【0089】
項目「ユーザID」には、画像IDに対応する便画像に係る便を排泄した患者のユーザIDが格納される。
【0090】
項目「撮影日時」には、画像IDに対応する便画像が撮影された日時に関する情報が格納される。
【0091】
項目「撮影端末」には、画像IDに対応する便画像を撮影した端末を特定可能な端末装置10の識別情報が格納される。
【0092】
項目「撮影場所」には、画像IDに対応する便画像が撮影された場所に関する情報が格納される。撮影場所に関する情報は、撮影を行った端末装置10において、位置情報センサ150が取得した位置情報を撮影画像と紐づけることで取得できる。
【0093】
項目「タグID」には、画像IDに対応する便画像に対して、撮影時にユーザが該当する項目として選択したタグの識別情報が格納される。
【0094】
項目「保存領域」には、画像IDに対応する便画像が保存される記憶領域のアドレス情報(例えばURL情報)が格納される。システム1は、画像データを記憶する外部の記憶領域を利用してもよい。
なお、
図6Bに示す画像DB2022の構造はあくまで例示であり、画像DB2022は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0095】
(1-6-3.オブジェクトDB2023)
図6Cは、オブジェクトDB2023のデータ構造の一例を示す図である。
図6Cに示すように、オブジェクトDB2023は、便画像に含まれる排泄物を構成するオブジェクトに関する情報を記憶している。オブジェクトDB2023は、患者端末10Aの検出部184により検出された排泄物に関する情報が、便画像とともに評価サーバ20に送信されて取得モジュール2032により取得された際に、新たなレコードが記録される。
【0096】
オブジェクトDB2023は、項目「オブジェクトID」と、項目「画像ID」と、項目「オブジェクト種別」と、項目「オブジェクトの位置および範囲」と、を含む。
【0097】
項目「オブジェクトID」には、便画像中に含まれることが検出された排泄物を構成するオブジェクトを特定可能な当該オブジェクトの識別情報が格納される。
【0098】
項目「画像ID」には、オブジェクトIDに対応するオブジェクトが検出された便画像の画像IDが格納される。
【0099】
項目「オブジェクト種別」には、オブジェクトIDに対応するオブジェクトが該当する排泄物としての種別が格納される。排泄物の種別としては、例えば以下が挙げられる。
・固形状便
・ドロ状便
・水様性便
・血液
・粘液
・混入物
【0100】
項目「オブジェクトの位置および範囲」には、オブジェクトIDに対応するオブジェクトが検出された画像における、当該オブジェクトの位置および範囲を特定可能な情報が格納される。
なお、
図6Cに示すオブジェクトDB2023の構造はあくまで例示であり、オブジェクトDB2023は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0101】
(1-6-4.タグDB2024)
図6Dは、タグDB2024のデータ構造の一例を示す図である。
図6Dに示すように、タグDB2024は、便の撮影時に患者により入力されるタグに関する情報を記憶している。タグに関する情報は予め複数用意され、システム1の利用開始の際に既に記憶されている。
【0102】
タグDB2024は、項目「タグID」と、項目「タグ名称」と、項目「タグの説明」と、を含む。
【0103】
項目「タグID」には、タグを特定可能なタグの識別情報が格納される。
【0104】
項目「タグ名称」には、タグIDに対応するタグの名称が格納される。
【0105】
項目「タグの説明」には、タグIDに対応するタグについての説明が格納される。ここで、タグの名称および説明の具体例を例示する。
・腹痛タグ:排泄当日又は前日に腹痛を感じた場合に選択するタグ
・出血タグ:排泄時に出血を伴う場合に選択するタグ
・食欲不振:排泄当日又は前日に食欲不振に該当する場合に選択するタグ
・発熱:排泄当日又は前日に発熱がある場合に選択するタグ
なお、
図6Dに示すタグDB2024の構造はあくまで例示であり、タグDB2024は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0106】
(1-6-5.コメントDB2025)
図6Eは、コメントDB2025のデータ構造の一例を示す図である。
図6Eに示すように、コメントDB2025は、便の撮影時に患者により入力されたコメントに関する情報を記憶している。オブジェクトDB2023は、便画像とともに評価サーバ20に送信されて取得モジュール2032により取得された際に、新たなレコードが記録される。
【0107】
コメントDB2025は、項目「コメントID」と、項目「画像ID」と、項目「患者コメント」と、を含む。
【0108】
項目「コメントID」には、コメントを特定可能なコメントの識別情報が格納される。
【0109】
項目「画像」には、コメントIDに対応するコメントが入力された便画像の画像IDが格納される。
【0110】
項目「患者コメント」には、コメントIDに対応するコメントの内容が格納される。
なお、
図6Eに示すコメントDB2025の構造はあくまで例示であり、コメントDB2025は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0111】
(1-6―6.評価履歴DB2026)
図6Fは、評価履歴DB2026のデータ構造の一例を示す図である。
図6Fに示すように、評価履歴DB2026は、システム1による疾患活動性についての評価結果の履歴を記憶している。評価履歴DB2026は、評価モジュール2033による疾患活動性の評価が行われた際に、新たなコードが記録される。
【0112】
評価履歴DB2026は、項目「評価履歴ID」と、項目「画像ID」と、項目「評価日時」と、項目「評価結果」と、項目「尤度」と、項目「主治医コメント」と、項目「診察要否」とを含む。
【0113】
項目「評価履歴ID」には、システム1の処理により得られた評価結果を特定可能な評価履歴の識別情報が格納される。
【0114】
項目「画像ID」には、評価履歴IDに対応する評価の対象となった便画像の画像IDが格納される。
【0115】
項目「評価日時」には、評価履歴IDに対応する評価が行われた日時に関する情報が格納される。評価日時として、評価対象となった便の撮影日時を管理してもよい。
【0116】
項目「評価結果」には、評価履歴IDに対応する評価履歴における疾患活動性指数の評価結果に関する情報が格納される。
【0117】
項目「尤度」には、評価履歴IDに対応する評価履歴における疾患活動性の評価結果の尤度が格納される。評価結果の尤度とは、評価結果に対する蓋然性を定量的に示した値であり、評価結果の信憑性を示唆する値である。
【0118】
項目「主治医コメント」には、評価履歴IDに対応する評価履歴、および当該評価の対象となった便画像に対して、主治医が入力したコメントが格納される。
【0119】
項目「診察要否」には、評価履歴IDに対応する評価履歴に基づいて、システム1による当該評価の対象となった患者に対する、医療機関での医師による診察の要否についての判定結果が格納される。
なお、
図6Fに示す評価履歴DB2026の構造はあくまで例示であり、評価履歴DB2026は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0120】
(1-7.医療機関サーバ30のハードウェア構成)
図7は、医療機関サーバ30のハードウェア構成を示す図である。
図7に示すように、医療機関サーバ30は、通信IF32と、入出力IF33と、メモリ35と、ストレージ36と、プロセッサ39と、を備える。
【0121】
通信IF32は、医療機関サーバ30が外部の装置と通信するため、信号を入出力するためのインタフェースである。
入出力IF33は、ユーザからの入力操作を受け付けるための入力装置、および、ユーザに対し情報を提示するための出力装置とのインタフェースとして機能する。
【0122】
メモリ35は、プログラム、および、プログラム等で処理されるデータ等を一時的に記憶するためのものであり、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリである。
【0123】
ストレージ36は、プログラムおよびデータを保存するための記憶装置であり、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)である。
プログラムは、例えば、以下のプログラムを含む。
・OS(Operating System)のプログラム
・情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラム
データは、例えば、以下のデータを含む。
・情報処理において参照されるデータベース
・情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)
【0124】
プロセッサ39は、ストレージ36に記憶されたプログラムに記述された命令セットを実行するためのハードウェアであり、演算装置、レジスタ、周辺回路などにより構成される。
【0125】
(1-8.医療機関サーバ30の機能的な構成)
図8は、医療機関サーバ30の機能的な構成を示す図である。
図5に示すように、医療機関サーバ30は、通信部301と、記憶部302と、制御部303としての機能を発揮する。
【0126】
通信部301は、医療機関サーバ30が外部の装置と通信するための処理を行う。
【0127】
記憶部302は、医療機関サーバ30が使用するデータおよびプログラムを記憶する。記憶部302は、例えば以下のデータを記憶する。
・患者データベース(患者DB3021)3021
・医師データベース(医師DB3023)3022
・診療履歴データベース(診療履歴DB3022)3023
・診療時間枠データベース(診療時間枠DB3024)3024
・予約データベース(予約DB3025)3025
【0128】
患者DB3021は、医療機関において医療行為を受ける患者に関する情報を管理するデータベースである。患者DB3021のデータ構造の詳細は後述する。
【0129】
医師DB3023は、医療機関に所属する医師に関する情報を管理するデータベースである。医師DB3023のデータ構造の詳細は後述する。
【0130】
診療履歴DB3022は、医療機関において行われた診療の履歴に関する情報を管理するデータベースである。診療履歴DB3022のデータ構造の詳細は後述する。
【0131】
診療時間枠DB3024は、医療機関において予定されている診療時間枠に関する情報を管理するデータベースである。診療時間枠DB3024のデータ構造の詳細は後述する。
【0132】
予約DB3025は、医療機関における診療の予約に関する情報を管理するデータベースである。予約DB3025のデータ構造の詳細は後述する。
【0133】
制御部303は、医療機関サーバ30のプロセッサ39がプログラムに従って処理を行うことにより、各種モジュールとして示す機能を発揮する。制御部303は、送受信制御モジュール3031と、入力受付モジュール3032と、照会モジュール3033と、予約モジュール3034と、出力モジュール3035としての機能を発揮する。
【0134】
送受信制御モジュール2031は、医療機関サーバ30が外部の装置との間で通信プロトコルに従って信号を送受信する処理を制御する。
【0135】
入力受付モジュール3032は、端末装置10からの操作に応答して、入力された情報を受け付ける処理を行う。入力受付モジュール3032は、例えば医療機関における医師による日々の診療において入力された診療履歴を受け付けて、診療履歴DBの新たなレコードとして記録する。
【0136】
照会モジュール3033は、予約リクエストに含まれる予約希望日について、診療時間枠DB3024および予約DB3025を参照して、予約可能枠の照会を行う。
【0137】
予約モジュール3034は、端末装置10からの操作に応答して、予約可能枠についての予約希望を受け付けて、予約希望を予約DB3025の新たなレコードとして記録することで、診察の予約を行う。
【0138】
出力モジュール3035は、患者又は医療従事者の操作に応答して、実行した処理により得られた各種の情報を出力する。出力モジュール3035は、例えば以下の情報を出力する。
・患者端末10Aに対して予約可能枠に関する情報
・患者端末10Aに対して予約完了通知
・医療端末10Bに対して診療対象となる患者についての過去の診療履歴
【0139】
(1-9.医療機関サーバ30が管理する各データベースのデータ構造)
次に、
図9を用いて、医療機関サーバ30の記憶部302に記憶される各データベースのデータ構造の一例について説明する。
【0140】
(1-9-1.患者DB3021)
図9Aは、患者DB3021のデータ構造の一例を示す図である。
図9Aに示すように、患者DB3021は、医療機関を利用する患者に関する情報を記憶している。患者DB3021は、医療機関における初診時の患者登録により、新たなレコードが記録される。
【0141】
患者DB3021は、項目「患者ID」と、項目「氏名」と、項目「生年月日」と、項目「性別」と、項目「住所」と、項目「電話番号」と、項目「被保険者情報」と、項目「主治医」とを含む。
【0142】
項目「患者ID」には、医療機関において患者を特定可能な患者の識別情報が格納される。
【0143】
項目「氏名」には、患者IDに対応する患者の氏名に関する情報が格納される。
【0144】
項目「生年月日」には、患者IDに対応する患者の生年月日に関する情報が格納される。
【0145】
項目「性別」には、患者IDに対応する患者の性別に関する情報が格納される。
【0146】
項目「住所」には、患者IDに対応する患者の住所に関する情報が格納される。
【0147】
項目「電話番号」には、患者IDに対応する患者の電話番号に関する情報が格納される。
【0148】
項目「被保険者番号」には、患者IDに対応する患者の健康保険証における被保険者番号が格納される。
【0149】
項目「主治医」には、患者IDに対応する患者を担当する主治医に識別情報が格納される。
なお、
図9Aに示す患者DB3021の構造はあくまで例示であり、患者DB3021は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0150】
(1-9-2.医師DB3023)
図9Bは、医師DB3023のデータ構造の一例を示す図である。
図9Bに示すように、医師DB3023は、医療機関に所属する医師に関する情報を記憶している。医師DB3023は、医療機関への医師の配属の際に新たなレコードが記録される。
【0151】
医師DB3023は、項目「医師ID」と、項目「氏名」と、項目「診療科」と、項目「資格」と、項目「役職」と、項目「連絡先」と、を含む。
【0152】
項目「医師ID」には、医療機関において医師を特定可能な医師の識別情報が格納される。
【0153】
項目「氏名」には、医師IDに対応する医師の氏名に関する情報が格納される。
【0154】
項目「診療科」には、医師IDに対応する医師が所属する診療科に関する情報が格納される。
【0155】
項目「資格」には、医師IDに対応する医師が保有する専門医資格などの資格に関する情報が格納される。
【0156】
項目「役職」には、医師IDに対応する医師における診療科での役職に関する情報が格納される。
【0157】
項目「連絡先」には、医師IDに対応する医師の連絡先として、電話番号又はメールアドレス等の情報が格納される。
なお、
図9Bに示す医師DB3023の構造はあくまで例示であり、医師DB3023は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0158】
(1-9-3.診療履歴DB3022)
図9Cは、診療履歴DB3022のデータ構造の一例を示す図である。
図9Cに示すように、診療履歴DB3022は、医療機関での診療の履歴に関する情報を記憶している。診療履歴DB3022は、医療機関において行った診療の内容を、医師を含む医療従事者が入力した際に新たなレコードが記録される。
【0159】
診療履歴DB3022は、項目「診療履歴ID」と、項目「患者ID」と、項目「担当医」と、項目「診療日時」と、項目「診療内容」と、項目「診療内容」と、項目「検査結果」と、項目「処方内容」と、項目「処置、手術情報」と、を含む。
【0160】
項目「診療履歴ID」には、医療機関において行われた診療を特定可能な診療履歴の識別情報が格納される。
【0161】
項目「患者ID」には、診療履歴IDに対応する診療が行われた患者の識別情報が格納される。
【0162】
項目「担当医」には、診療履歴IDに対応する診療を担当した医師の識別情報が格納される。
【0163】
項目「診療日時」には、診療履歴IDに対応する診療が行われた日時に関する情報が格納される。
【0164】
項目「診療内容」には、診療履歴IDに対応する診療の内容が格納される。診療の内容としては、例えば以下の内容が含まれる。
・患者が医師に対して訴えた自覚症状に関する情報
・医師が当該診療において下した医学的所見(診療時点における疾患活動性の指数を含む)
【0165】
項目「検査結果」には、診療履歴IDに対応する診療において行われた検査の結果に関する情報が格納される。
【0166】
項目「処方内容」には、診療履歴IDに対応する診療において、医師が患者に処方した医薬に関する情報が格納される。
【0167】
項目「処置、手術情報」には、診療履歴IDに対応する診療において行われた処理又は手術に関する情報が格納される。
なお、
図9Cに示す診療履歴DB3022の構造はあくまで例示であり、診療履歴DB3022は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0168】
(1-9-4.診療時間枠DB3024)
図9Dは、診療時間枠DB3024のデータ構造の一例を示す図である。
図9Dに示すように、診療時間枠DB3024は、医療機関における診療科ごとの診療の予定に関する情報を記憶している。診療時間枠DB3024は、医療機関において設定される診療時間帯に基づいて設定され、対象期間における担当医師の勤務シフトが設定された際に新たなレコードが記録される。
【0169】
診療時間枠DB3024は、項目「診療時間枠ID」と、項目「診療科」と、項目「担当医」と、項目「診療日時」と、項目「診療時間帯」と、を含む。
【0170】
項目「診療時間枠ID」には、医療機関における診療時間枠を特定可能な診療時間枠の識別情報が格納される。
【0171】
項目「診療科」には、診療時間枠IDに対応する診療時間枠に対応する診療科に関する情報が格納される。
【0172】
項目「担当医」には、診療時間枠IDに対応する診療を担当する医師の識別情報が格納される。
【0173】
項目「診療日時」には、診療時間枠IDに対応する診療の日時に関する情報が格納される。
【0174】
項目「診療時間帯」には、診療時間枠IDに対応する診療の時間帯に関する情報が格納される。
なお、
図9Dに示す診療時間枠DB3024の構造はあくまで例示であり、診療時間枠DB3024は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0175】
(1-9-5.予約DB3025)
図9Eは、予約DB3025のデータ構造の一例を示す図である。
図9Eに示すように、予約DB3025は、医療機関における診療の予約に関する情報を記憶している。予約DB3025は、患者による診療の予約が行われた際に新たなレコードが記録される。
【0176】
予約DB3025は、項目「予約ID」と、項目「患者ID」と、項目「担当医」と、項目「予約時間枠」と、を含む。
【0177】
項目「予約ID」には、医療機関において診療の予約を特定可能な予約の識別情報が格納される。
【0178】
項目「患者ID」には、予約IDに対応する診療の予約において、診療を受ける患者の識別情報が格納される。
【0179】
項目「担当医」には、予約IDに対応する診療の予約において、診療を担当する医師の識別情報が格納される。
【0180】
項目「予約時間枠」には、予約IDに対応する診療の予約が該当する診療時間枠の識別情報が格納される。
なお、
図9Eに示す予約DB3025の構造はあくまで例示であり、予約DB3025は、その他のデータ項目が格納されるカラムを含んでいてもよい。
【0181】
<2.実施形態の概要>
以下、
図10を参照しながら、本発明の実施形態の概要を説明する。
図10は、本発明の実施形態の概要を示す図である。
【0182】
図10に示すように、システム1では、患者による便の撮影が行われる。便の撮影は例えば患者の自宅で定期的に(例えば毎日)行われる。便の撮影には、患者が日常生活で使用するスマートフォンなどの端末装置10(患者端末10A)が用いられる。便の撮影は、その日の最初の排泄便に対して行うことが好ましい。
【0183】
次に、取得された便画像は、評価サーバ20に送信され、評価サーバ20により、患者の疾患活動性の判定が行われる。評価サーバ20は、評価結果を患者端末10Aに対して通知する。ユーザはその日の便の状態から自身の疾患活動性を把握することができる。
【0184】
評価サーバ20はまた、評価結果を主治医が使用する医療端末10Bに対して通知する。主治医は、通知された患者の疾患活動性を必要に応じて確認する。この際、評価サーバ20は、疾患活動性が悪化している患者について、主治医に対してその旨のアラートを出してもよい。
【0185】
評価サーバ20はまた、医療機関サーバ30とのAPI連携を行い、診療予約に関する連携を行う。評価サーバ20は、予め設定した所定の判定基準を満たしている場合に、患者に対して医師による診療が必要である旨の通知を行う。ここで、診療を必要とする判定基準には、例えば以下のパターンが想定される。
・当日の疾患活動性が、閾値となる指数を超えている場合(当日の評価結果で判定)
・一定期間の推移において悪化している傾向が顕著に確認される場合
【0186】
このようにして、システム1では、特定の疾患に罹患歴のある患者に対して、日常的かつ継続的な行為である排泄行為を利用して、疾患活動性の評価を行い、本人および医療機関に通知することで、当該疾患の治療をサポートする。
このようなシステム1の処理について、以下に詳述する。
【0187】
<3.システム1の動作>
以下、システム1により行う各種の処理について説明する。
【0188】
(3-1.疾患活動性の評価処理)
まず、システム1のメインの機能である疾患活動性の評価処理について説明する。
図11は、システム1による疾患活動性の評価処理を示すフローチャートである。
【0189】
図11に示すように、疾患活動性の評価処理では、まず、患者が、患者端末10Aが操作して自身が排泄した便の撮影を行う(ステップS101)。
具体的には、患者端末10Aの撮影部183は、ユーザからの操作に応答してカメラ160を起動し、被写体となる便を撮影する。この時の画面例を第1画面例P1として後述する。また、患者は必要に応じてタグを選択し、コメントを入力することができる。
データ処理部185は、撮影部183が撮影した画像データを検出部184に入力する。
【0190】
ステップS101の後に、患者端末10Aは、撮影された画像から便の検出を行う(ステップS102)。
具体的には、患者端末10Aの検出部184は、ステップS101において撮影部183から入力された画像を検出モデル172に入力することで、検出モデル172から出力される当該画像に含まれる排泄物に関するオブジェクトの検出結果を取得する。検出部184は、取得したオブジェクトの検出結果を、データ処理部185に入力する。
【0191】
ステップS102の後に、患者端末10Aは、便画像を評価サーバ20に向けて送信する(ステップS103)。
具体的には、患者端末10Aのデータ処理部185は、以下の情報を評価サーバ20に送信する。
・便画像データ
・ステップS102において検出部184から入力された検出オブジェクトに関する情報
・便画像の撮影時に入力されたタグデータおよびコメントデータ
すなわち、データ処理部185は排泄物に関するオブジェクトが検出されたことをトリガーとして、該当する画像(便画像)を、送受信部182を介して評価サーバ20に送信する。このため、撮影された画像から排泄物に関するオブジェクトが検出されない場合は、データ処理部185は、該当する画像の評価サーバ20への送信は行わない。
【0192】
また、ステップS103の後に、患者端末10Aは、便画像を削除する(ステップS104)。
具体的には、患者端末10Aのデータ処理部185は、ステップS102において排泄物に関するオブジェクトが検出された画像については、患者端末10Aの記憶領域に記憶させることなく、そのデータを削除する。また、データ処理部185は、日常的に患者が使用しているクラウドサーバなど、撮影画像が格納される外部の記憶領域にも、便画像を記憶させることなく、そのデータを削除する。
【0193】
また、ステップS103の後に、評価サーバ20は、便画像を取得する(ステップS201)。
具体的には、評価サーバ20の送受信制御モジュール2031は、端末装置10から送信された各種の入力データを受信し、取得モジュール2032に入力する。取得モジュール2032は、入力データを取得し、それぞれの記憶領域に保存するとともに、画像DB2022に新たなレコードを記録する。
【0194】
ここで、ステップS201において新たに記録されるデータの種類と保存領域について説明する。
・便画像データ:画像記憶領域(外部サーバ)
・便画像に関する属性情報:画像DB2022
・検出オブジェクトに関する情報:オブジェクトDB2023
・患者から入力されたタグデータ:画像DB2022
・患者から入力されたコメント:コメントDB2025
【0195】
ステップS201の後に、評価サーバ20は、患者における特定の疾患についての疾患活動性指数を推定する(ステップS202)。
具体的には、評価サーバ20の評価モジュール2033は、ステップS201において新たに記録された画像データを活動性推定モデル2027に入力し、活動性推定モデル2027から出力された疾患活動性指数の推定値を、その尤度とともに取得する。評価モジュール2033は、取得した疾患活動性の推定値を用いて、評価結果DBにおける新たなレコードに記録する。
【0196】
また、ステップS202において、判定モジュール2034は、評価結果DBにおける新たなレコードを参照し、該当する患者が医師による診察を必要とする状態かどうかを判定する。判定モジュール2034は、判定結果を評価結果DBにおける項目「診療要否」を更新する
【0197】
ステップS202の後に、評価サーバ20は、患者端末10Aに向けて評価結果を出力する(ステップS203)。
具体的には、評価サーバ20の出力モジュール2037は、以下の情報を患者端末10Aに向けて出力する。
・疾患活動性の評価結果(推定値)
・医師による診療の要否
・診療予約に関するアドレス情報
【0198】
すなわち、ステップS202において判定モジュール2034により医師による診療が必要と判定された場合には、出力モジュール2037は、ステップS203において医療機関サーバ30とのAPI連携を行う。出力モジュール2037は、医療機関サーバ30が提供する診察予約に関するサイトについてのアドレス情報(例えばURL情報)を取得し、患者端末10Aに向けて出力する。
【0199】
ステップS203の後に、患者端末10Aは、患者に対して評価結果を提示する(ステップS105)。
具体的には、患者端末10Aの表示制御部186は、送受信部182が受信した評価サーバ20から出力された情報を患者端末10Aのディスプレイ132に表示する。これにより、患者に対して便画像を用いた疾患活動性の評価結果が提示される。評価結果には、診療予約に関するアドレス情報が含まれる。この際の画面例を、第3画面例P3として後述する。
【0200】
また、ステップS203の後に、評価サーバ20は、評価結果を主治医が使用する医療端末10Bに向けて送信する(ステップS204)。
具体的には、評価サーバ20の出力モジュール2037は、医療機関サーバ30に対して患者DB3021および医師DB3023の照会をかけ、患者の主治医として登録されている医師に対して、以下の情報を送信する。
・評価対象となった便の画像データ
・便画像に関する属性データ(画像DB2022に含まれる項目)
・患者が入力したタグデータ、およびコメントデータ
・疾患活動性の評価結果(推定値)
【0201】
この際、医師は、実際の医療機関での診察に先立って、患者に対するコメントを入力することができる。医師が医療端末10Bを操作して入力されたコメントは、評価履歴DB2026の項目「主治医コメント」に格納される。
【0202】
なお、ステップS204の処理は、ステップS202において推定された疾患活動性指数により病状が懸念される状態である場合(言い換えれば、患者の病態が悪化していると判断できる場合)にのみ、主治医が使用する端末に対してその旨を通知してもよい。医師に疾患活動性の評価結果を通知する場合としては、例えば以下のいずれかが該当する。
・疾患活動性指数が所定の閾値よりも悪い場合
・疾患活動性指数が前回の評価結果よりも悪い場合
・疾患活動性指数が評価期間において悪化している傾向が認められている場合
主治医が複数の患者を担当している場合に、問題のない評価結果を全て主治医に通知すると、膨大な量となることが懸念されるため、通知対象を選別することで、重要な通知のみを主治医に対して送信することができる。
以上により、システム1による疾患活動性の評価処理が終了する。
【0203】
(3-2.予約処理)
次に、システム1による予約処理について説明する。
図12は、システム1による予約処理を示すフローチャートである。
【0204】
図12に示すように、予約処理ではまず、患者端末10Aが予約リクエストを行う(ステップS111)。
具体的には、患者端末10Aの入力受付部181は、評価サーバ20から送信された診療予約に関するアドレス情報を患者がクリックする操作を受け付ける。そして、患者端末10Aは、医療機関サーバ30が提供する診察予約に関するサイトにアクセスをすることで、診療予約に関するリクエストを医療機関サーバ30に対して送信する。予約リクエストには、患者の医療機関における患者IDが含まれていてもよい。
【0205】
ステップS111の後に、医療機関サーバ30は、予約リクエストを受領する(ステップS311)。
具体的には、医療機関サーバ30の入力受付モジュール3032は、患者端末10Aから送信された予約リクエストを受け付けて、予約リクエストに含まれる患者IDを照会モジュール3033に入力する。照会モジュール3033は、入力された患者IDを用いて患者DB3021を参照し、主治医を特定したうえで診療時間枠DB3024および予約DB3025を参照し、予約可能枠を抽出する。
【0206】
ステップS311の後に、医療機関サーバ30は、予約可能枠を患者端末10Aに対して出力する。(ステップS312)
具体的には、医療機関サーバ30の出力モジュール3035は、ステップS311において抽出された予約可能枠を患者端末10Aに向けて出力する。
【0207】
ステップS312の後に、患者端末10Aは、予約可能枠を患者に対して提示する(ステップS112)。
具体的には、患者端末10Aの表示制御部186は、送受信部182が受信した予約可能枠に関する情報をディスプレイ132に表示する。これにより、患者に対して予約可能枠が提示される。患者は提示された予約可能枠から、自身が診療を希望する時間帯を検討する。
【0208】
ステップS112の後に、患者端末10Aは、予約枠の選択指示を行う(ステップS113)。
具体的には、患者端末10Aの入力受付部181は、患者が入力した診療の希望時間帯の指定を受け付け、送受信部182を介して評価サーバ20に送信する。
【0209】
ステップS113の後に、医療機関サーバ30は、予約設定を行う(ステップS313)。
具体的には、医療機関サーバ30の予約モジュール3034は、ステップS113において患者端末10Aから受信した診療の希望時間帯について、予約DB3025の新たなレコードとして記録する。これにより、診療の予約がされた状態となる。
【0210】
ステップS313の後に、医療機関サーバ30は、予約完了通知を患者端末10Aに対して送信する(ステップS314)。
具体的には、医療機関サーバ30の出力モジュール3035は、予約完了に関する情報を作成し、患者端末10Aに向けて送信する。
【0211】
ステップS314の後に、患者端末10Aは、予約完了通知を受領する(ステップS114)。
具体的には、患者端末10Aの表示制御部186は、送受信部182が受信した予約完了通知に関する情報をディスプレイ132に表示する。これにより、患者に対して診療予約が管完了した旨が提示される。
以上により、システム1による予約処理が終了する。
【0212】
(3-3.評価履歴の集計処理)
次に、システム1による評価履歴の集計処理について説明する。
図13は、システム1による評価履歴の集計処理を示すフローチャートである。
【0213】
図13に示すように、評価履歴の集計処理では、まず、評価サーバ20が、評価履歴DB2026を参照して、疾患活動性の評価履歴の集計を行う(ステップS221)。
具体的には、評価サーバ20の集計モジュール2035は、評価対象とする患者について、所定の評価対象期間における評価履歴を集計する。集計モジュール2035は、予め設定された期間の頻度ごとに集計処理を実行してもよい。また、集計モジュール2035は、患者本人又は主治医を含む医療従事者の操作に応答して、評価履歴の集計を行ってもよい。
【0214】
ステップS221の後に、評価サーバ20は集計結果を出力する(ステップS222)。
具体的には、評価サーバ20の出力モジュール2037は、以下の情報を含む集計レポートを作成すし、患者端末10Aに向けて出力する。
・評価対象期間における疾患活動性の評価頻度(便画像の取得頻度)
・評価結果としての疾患活動性指数の時系列に沿った推移
【0215】
ステップS222の後に、患者端末10Aは、評価履歴の集計結果を患者に対して提示する(ステップS122)。
具体的には、患者端末10Aの表示制御部186は、送受信部182が受信した集計レポートをディスプレイ132に表示する。これにより、患者に対して評価結果の集計レポートが提示される。集計レポートには、以下の情報が含まれる。
・便画像の取得頻度が一定の基準を上回った際に、便画像の継続的な取得を認定する通知
・便画像の取得頻度が一定の基準を下回った際に、便画像の継続的な取得を促す通知
【0216】
すなわち、システム1では、患者が毎日便画像の撮影を行い、継続的に疾患活動性の評価している状態が維持できている場合には、その旨を評価し、患者の健康管理に関する姿勢が適切であるとして褒章する。
一方、システム1では、患者が日々の便画像の撮影を怠り、継続的な疾患活動性の評価ができていない場合には、その旨を指摘し、患者の健康管理に関する姿勢が不適切であるとして改善を要求する。以上により、システム1による予約処理が終了する。
【0217】
(3-4.内視鏡相当画像の生成処理)
次に、システム1による内視鏡相当画像の生成処理を説明する。この処理は副次的な処理であり、例えば医師の判断により選択的に実行される処理である。具体的には、
図11に示すステップS204において、疾患活動性の評価結果の通知を受けた医師が、患者の腸内の様子を確認する目的で内視鏡相当画像の作成指示を評価サーバ20に入力したことをトリガーとしてこの処理が実行される。
図14は、内視鏡相当画像の生成処理を示すフローチャートである。
【0218】
図14に示すように、内視鏡相当画像の生成処理では、まず、評価サーバ20が内視鏡相当画像を生成する(ステップS241)。
具体的には、評価サーバ20の画像生成モジュール2036は、医師が指定した便画像を画像合成モデル2028に入力することで、画像合成モデル2028から出力される指定腸内画像を取得する。画像生成モジュール2036は、内視鏡相当画像を所定の記憶領域に記憶されたのちに、当該記憶領域を示すアドレス情報(例えばURL情報)を作成する。
【0219】
ステップS241の後に、出力モジュール2037は、内視鏡相当画像を医療端末10Bに向けて出力する(ステップS242)。
具体的には、評価サーバ20の出力モジュール2037は、ステップS241において画像生成モジュール2036が生成した内視鏡相当画像についてのアドレス情報を、医療端末10Bに対して出力する。医師は、出力されたアドレス情報にアクセスすることで、患者の内視鏡相当画像を確認することができる。これにより、医師は患者の腸内の状態を推測することができる。
以上により、システム1による内視鏡相当画像の生成処理が終了する。
【0220】
<4.画面例>
以下、システム1における画面例を説明する。
【0221】
(4-1.第1画面例P1)
図15は、第1画面例P1を示す図である。第1画面例P1は、
図11に示すステップS101の際に、患者端末10Aに表示される画面であり、便の撮影操作を示す図である。
【0222】
図15に示すように、第1画面例P1では、撮影される被写体としての便が表示されている。患者は、排便の後に患者端末10Aからカメラ160を起動し、便の撮影を行う。便器が画角に収まるように調整し、撮影ボタンB1を撮影することで、便画像が撮影される。
【0223】
また、撮影前に設定ボタンB2を押下して表示される設定画面において、撮影した画像の保存処理についての設定を選択することができる。撮影した画像の保存処理には、以下のパターンが含まれる。
・端末装置10の記憶領域に保存するか否か(デフォルト設定は保存しない)
・端末装置10が使用するクラウドサーバの記憶領域に保存するか否か(デフォルト設定は保存しない)
例えば、医療機関においてタブレットなどの医療端末10Bを用いて撮影が行われる場合には、撮影された便画像を医療端末10Bに記憶させてもよい。
【0224】
(4-2.第2画面例P2)
図16は、第2画面例P2を示す図である。第2画面例P2は、
図11に示すステップS101の際に、患者端末10Aに表示される画面であり、疾患活動性の評価に用いる便画像の登録操作を示す図である。言い換えれば、疾患活動性の評価の実行操作を示す図である。
【0225】
図16に示すように、第2画面例P2では、撮影された便画像とともに、画像の属性に関する情報(撮影日、撮影時刻、ユーザID)が属性欄C1に表示されている。
また、第2画面例P2には、自身の体調などに該当するタグを選択可能なタグ入力欄C2が表示されている。
【0226】
また、第2画面例P2には、患者が入力したい内容をテキストデータで入力可能な患者コメント欄C3が表示されている。
患者が、評価実行ボタンB3を押下することで、この内容を用いて疾患活動性の評価として、
図11に示すステップS102以降の処理が実行される。
【0227】
(4-3.第3画面例P3)
図17は、第3画面例P3を示す図である。第3画面例P3は、
図11に示すステップS105の際に、患者端末10Aに表示される画面であり、疾患活動性の評価結果を患者に対して提示する状態を示す図である。
【0228】
図17に示すように、第3画面例P3には、疾患活動性の評価結果を示す評価結果欄C5が表示されている。評価結果欄C5には、以下の情報が併記されている。
・評価日:評価を行った日
・患者氏名:患者の氏名(患者端末10Aに表示する際は省略してもよい)
・疾患活動性(推定値):評価結果となる疾患活動性指数の推定値
・尤度:推定値の尤もらしさを示す指数
・診療要否:医師による診療を要するかどうかの判定結果
・評価詳細:入力されたタグやコメントに関する情報
【0229】
ここで、診療要否の表示において、疾患活動性指数の評価結果により病状が懸念される状態である場合には、次回の診療日の期限を通知してもよい。診療日の期限を通知する例としては、例えば以下のいずれかが該当する。
・疾患活動性指数が所定の閾値よりも悪い場合
・疾患活動性指数が前回の評価結果よりも悪い場合
・疾患活動性指数が評価期間において悪化している傾向が認められている場合
【0230】
これらの場合には、診療が必要であることを患者に通知するだけではなく、次回の診療日の期限を区切って診療を促すことで、効果的に医療機関への来訪を促すことができる。また、疾患活動性指数の評価結果に応じて、すなわち推定される病状の程度に応じて、次回の診療日の期限までの日数を調整してもよい。例えば、推定される病状が特に悪い場合には、少し悪い場合よりも短い期限が設定される。
【0231】
また、疾患活動性指数の評価結果に応じて、事前に処方していた薬効の強い薬の使用を促す通知を表示してもよい。一般的に、薬効の強い薬には、一定の副作用を伴うものや、例えば座薬等のように、患者によっては使用を躊躇うものが含まれる。このような薬効の強い薬は、医師が診療において処方をし、日常生活における病状の変化に応じて、頓用の薬剤として投与期間に制限を設けた上で使用されることがある。このようなケースにおいて、評価結果の表示画面において、疾患活動性指数の評価結果から推定される病状が懸念される状態である場合には、当該薬効の強い薬の使用を促すことで、患者が時宜を得た使用を行うことができる。
【0232】
また、推定された尤度が閾値を下回る場合には、その旨を評価結果として表示し、推定結果の信憑性が低い旨を患者に通知してもよい。
また、推定された尤度が高く、かつ疾患活動性指数が高い(病状が悪い)場合には、その旨を評価結果として表示し、医療機関での診療を強く促す旨の通知を行ってもよい。また、尤度と疾患活動性指数とに応じて、次回の診療予定日までの期限を設定してもよい。
【0233】
また、第3画面例P3には、診療予約を行うための診療予約欄C6が表示されている。診療予約欄C6は、予約サイトにアクセス可能な当該患者専用のアドレス情報が表示されている。すなわち、評価サーバ20と医療機関サーバ30とのAPI連携により、当該アドレス情報から予約サイトにアクセスすることで、患者IDの入力などを省略して、予約可能枠の照会を受けることができる。
【0234】
また、第3画面例P3には、アドバイス欄C7が表示されている。アドバイス欄C7を患者がクリックすることで、当該患者への助言として、現状の疾患活動性の状態において日常生活で留意すべき一般的な事項が表示される。
【0235】
また、第3画面例P3には、主治医コメント欄C8が表示されている。主治医コメント欄C8を患者がクリックすることで、当該患者の主治医から入力されたコメントの内容が表示される。
【0236】
なお、
図17に示す評価結果の表示画面では、以下の情報を表示してもよい。
・当日又は過去日の便回数
・当日又は過去日の血便の回数
・次の診療予定までの日数
【0237】
<5.小括>
以上説明したように、システム1では、患者が患者端末10Aを用いて撮影した便画像への画像処理により、患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定し、患者端末10Aに対して出力する。
このため、従来のシステムのように、健康状態や自覚症状の有無など、複数の評価項目について患者自身が入力するといった操作が必要なく、患者による極めて簡単な操作により、疾患活動性の評価を継続的に行うことができる。
【0238】
また、システム1では、疾患活動性指数を推定する際に、便画像を入力データとし、疾患活動性指数を正解出力データとした学習用データを用いた機械学習により作成された活動性推定モデル2027を用いて、疾患活動性指数の推定値を出力させる。このため、大量の学習用データを用いた機械学習を行うことで、疾患活動性指数の推定の精度を確保することができる。
【0239】
また、システム1では、疾患活動性指数を推定する際に、当該疾患における病変範囲の推定位置を出力する。このため、システム1による評価結果を主治医が確認したい際に、治療に資する情報を医師に対して提供することができる。
【0240】
また、システム1では、疾患活動性指数を推定する際に、推定された疾患活動性指数の尤度を出力する。このため、評価結果である疾患活動性の推定値が、どの程度尤もらしい値であるかについて言及することで、評価結果をどのように扱うかについての判断を促すことができる。
【0241】
また、システム1では、患者が撮影した画像に便が検出された場合に、当該画像を端末装置10に記憶させることなく、評価サーバ20に送信させる。このため、一般的に、患者にとって自身の端末装置10に保存したくない便の画像を自動的に端末装置10から削除することができ、患者のシステム1の利便性を向上することができる。
【0242】
また、システム1では、推定された疾患活動性指数が、予め設定された所定の閾値を超えた場合に、患者に対して、主治医による診療が必要である旨を通知する。このため、医師による時宜を得た診療を行うことが可能になり、医療機関による治療をサポートすることができる。
【0243】
また、システム1では、患者による便画像の取得頻度を集計し、集計された取得頻度が一定の基準を下回った際に、便画像の継続的な取得を促す通知を、患者端末10Aに通知する。このため、患者が継続的な疾患活動性の評価のための便画像の撮影を怠っている場合に、その旨を患者に対して指摘することができる。
【0244】
また、システム1では、集計された取得頻度が一定の基準を上回った際に、便画像の継続的な取得を認定する通知を、端末装置10に通知する。このため、継続的に便画像を撮影して自身の健康状態を適切に把握している患者に対して、その姿勢を評価して継続的に取り組む動機付けを与えることができる。
【0245】
また、システム1では、患者の主治医が使用する端末装置10に対して、評価結果を通知する。
このため、自身が担当する患者の病態が悪化したおそれがあることを主治医に対して円滑に共有することができ、その後の医療機関での診療に資することができる。
【0246】
また、システム1では、予め設定された所定の閾値を超えた場合にのみ、主治医にその旨を通知する構成を採用してもよい。この場合には、主治医が複数の患者を担当している場合であっても、主治医に対して通知すべき評価結果を自動で取捨選択し、主治医が受け取る通知が膨大な量になることを抑えることができる。
【0247】
また、システム1では、取得した便画像を用いた画像処理により、当該便画像に係る便を排泄した際の患者の腸内の状態として推定される内視鏡相当画像を生成し、その旨を主治医が使用する端末に対して通知する。これにより、患者の病態の変化により医師が患者の腸内の状態を確認したい場合において、内視鏡の検査を行う前に、推定される患者の腸内の状態を示す画像を医師に提供することができる。
【0248】
<6.変形例>
本実施形態の変形例について説明する。
以下の説明では、前述の実施形態と同様の構成についてはその説明を省略する。
【0249】
(6-1)第1変形例:特定のたんぱく質の含有量の推定を経由した評価手法
システム1の第1変形例では、疾患活動性指数の推定の手法が、上記の実施形態と異なっている。すなわち、この変形例では、評価サーバ20は、便画像の入力に対して、疾患活動性指数の推定値を出力するのではなく、当該便中の特定のたんぱく質の含有量の推定したうえで、含有量の推定値から、疾患活動性指数を推定する。このような処理について、
図18を用いて説明する。
【0250】
図18は、第1変形例に係る疾患活動性指数の推定処理のフローを説明する図である。この図は、
図11に示すステップS202に対応する処理のみを説明している。そして、その前後の処理については
図11に示す内容と同じであり、その説明を省略する。
【0251】
図18に示すように、第1変形例では、
図11に示すステップS201の後に、評価サーバ20は、便に含まれる特定のたんぱく質であるカルプロクチンの含有量を推定する(ステップS2021)。
具体的には、評価モジュール2033は、含有量推定モデルに対して画像を入力することで、含有量推定モデルから出力されたカルプロクチンの含有量を取得する。
【0252】
ここで、第1変形例に係るシステム1では、前述した活動性推定モデル2027に代えて含有量推定モデルを有している。含有量推定モデルは、便画像(又は検出された排泄物に関するオブジェクトデータ)を入力データとし、当該便中のカルプロクチンの含有量を正解出力データとした学習用データを用いた機械学習により作成されている。評価モジュール2033は、取得したカルプロクチンの含有量を判定モジュール2034に入力する。
【0253】
ステップS2021の後に、評価サーバ20は、カルプロクチンの含有量の推定値から、疾患活動性の判定を行う(ステップS2022)。
具体的には、判定モジュール2034は、ステップS2021において評価モジュール2033から入力されたカルプロクチンの含有量の推定値を用いて、予め記憶されている疾患活動性指数の判定基準と対比することで、患者の疾患活動性指数の判定を行う。この際用いられる判定基準には、カルプロクチンの含有量の範囲と、当該範囲において推定される疾患活動性指数と、が互いに対応づけられて、含有量の範囲ごとに設定されている。このようにして、疾患活動性指数の推定値が判定される。
【0254】
このように、第1変形例に係るシステム1では、含有量推定モデルに対して、取得した便画像を入力することで、当該便中のカルプロクチンの含有量の推定値を出力させる。そして、第1変形例に係るシステム1では、含有量の推定値を用いて、予め設定された含有量と、疾患活動性指数の推定値と、が対応づけられた判定基準に基づいて、疾患活動性指数の推定値を判定する。このため、炎症性腸疾患の疾患活動性と関連性が深いといわれる特定のたんぱく質(カルプロクチン)の含有量の推定を経て、疾患活動性指数の推定値を評価することができ、高い精度での評価を行うことが期待できる。
【0255】
(6-2)第2変形例:ルールベースでの判定の併用
システム1の第2変形例では、疾患活動性指数の推定の手法が、さらに、前述した2つのパターンとは異なっている。すなわち、この変形例では、まず、便画像の撮影の際に、患者から、以下の行動履歴および生体情報のうち、少なくとも一方の入力を受け付ける。
【0256】
1)排泄行動の履歴に関する情報(行動履歴)
・前日又は当日の便回数
・排便時刻
・便の性状
・血便の程度
・便失禁の画像データなど
【0257】
2)服薬を含む食行動の履歴に関する情報(行動履歴)
・服用履歴(止痢剤、鎮痛薬の使用の有無)
・前日又は当日の食事内容(食事画像を含む)など
【0258】
3)生体情報
・身長、体重、BMI
・体温
・脈拍
・腹痛の程度など
【0259】
そして、第2変形例に係るシステム1では、便画像を用いた疾患活動性指数の推定とともに、患者から入力された行動履歴および生体情報を用いた判定により、疾患活動性指数を推定する。このような処理について
図19を用いて説明する。
【0260】
図19は、第2変形例に係る疾患活動性指数の推定処理のフローを説明する図である。この図は、
図11に示すステップS202に対応する処理のみを説明している。そして、その前後の処理については
図11に示す内容と同じであり、その説明を省略する。
【0261】
図10に示すように、第3変形例では、
図11に示すステップS201の後に、評価サーバ20は、便画像を用いた疾患活動性指数の推定を行う(ステップS2023)
具体的には、評価サーバ20の評価モジュール2033は、
図11に示すステップS202と同様に、活動性推定モデル2027に対して便画像を入力することで、活動性推定モデル2027から出力される疾患活動性指数の推定値を取得する。
【0262】
ステップS2023の後に、評価サーバ20は、患者からのその他の入力を用いてルールベースでの疾患活動性指数の判定を行う(ステップS2024)。
具体的には、評価サーバ20の判定モジュール2034は、患者が入力した行動履歴および生体情報と、予め設定された評価基準とを対比して、患者の疾患活動性指数を判定する。この際用いられる評価基準には、行動履歴および生体情報それぞれの数値範囲と、当該範囲において推定される疾患活動性指数と、が互いに対応づけられて、数値範囲ごとに設定されている。このようにして、疾患活動性指数の判定値が得られる。
【0263】
ステップS2024の後に、評価サーバ20は、便画像から推定された第1の疾患活動性指数と、行動履歴および生体情報から判定された第2の疾患活動性指数と、を比較して総合評価を行う(ステップS2025)。
具体的には、評価モジュール2033は、第1の疾患活動性指数および第2の疾患活動性指数が同じ等級である場合には、当該等級を採用する。
【0264】
一方、評価モジュール2033は、第1の疾患活動性指数および第2の疾患活動性指数が同じ等級でない場合には、疾患状態として悪い方の値を採用する。なお、必ずしも悪い値を採用する判断手法に限定されない。例えば、第1の疾患活動性指数および第2の疾患活動性指数が同じ等級でない場合には、その間に位置するいずれかの値(例えば、双方の算術平均値)を採用してもよい。このような二つの指数を用いた総合評価の手法としては、任意に設定することができる。
【0265】
このように、第2変形例に係るシステム1では、患者から入力された行動履歴、および生体情報の少なくともいずれかを取得し、便画像を用いた疾患活動性指数の推定とともに、行動履歴および生体情報を用いた疾患活動性指数の判定を行う。そして、第2変形例に係るシステム1では、得られた2つの疾患活動性指数を用いて総合評価を行う。
このため、過去に蓄積された各種の判定基準の知見を用いてより信頼性の高い疾患活動性の評価を行うことができる。また、活動性推定モデル2027による推定結果と、ルールベースでの判定結果とを比較することで、活動性推定モデル2027の再学習に利用可能な情報を得ることができ、便画像からの疾患活動性の推定処理の精度向上につなげることができる。
【0266】
なお、前述したルールベースでの判定には、患者端末10Aから入力された便画像および入植情報、並びに過去の医療機関での診療履歴を用いてもよい。例えば、以下に示す判定ルールを用いてもよい。
1)排便回数(ユーザの入力情報)
・正常回数:+0点
・正常回数より1~2回/日多い:+1点
・正常回数より3~4回/日多い:+2点
・正常回数より5回/日以上多い:+3点
【0267】
2)血便(ユーザの入力情報又は便画像から判定)
・血便なし:+0点
・排便時の半数以下でわずかに血液が付着(縞状)する:+1点
・ほとんどの排便時に明らかな血液の混入が見られる:+2点
・大部分が血液である:+3点
【0268】
3)粘膜所見(直近の内視鏡検査の結果を利用)
・正常又は非活動性所見:+0点
・軽症(発赤、血管透見像の減少、軽度脆弱) :+1点
・中等症(著明に発赤、血管透見像の消失、脆弱、びらん) :+2点
・重症(自然出血、潰瘍) :+3点
【0269】
4)医師による全般的評価(直近の医師による診察結果)
・正常:+0点
・軽症:+1点
・中等症:+2点
・重症:+3点
【0270】
5)総合判断
上記1)~4)のスコアの集計値により第2の疾患活動性指数が判定される。
・0点:Lv1
・1~2点:Lv2
・3~5点:Lv3
・6~10点:Lv4
・11~12点:Lv5
【0271】
(6-3)第3変形例:患者ごとの活動性推定モデル2027の再学習
システム1の第3変形例では、患者ごとに活動性推定モデル2027を再学習する点が前述した実施形態等と異なっている。すなわち、この変形例では、患者ごとに活動性推定モデル2027がカスタマイズされる。
【0272】
具体的には、システム1の管理者は、患者自身の便画像、および当該便画像に相当する便の排泄時における実際の疾患活動性指数を学習用データとして、活動性推定モデル2027に学習用データの再学習をさせることができる。ここで、実際の疾患活動性指数とは、医師による診療により得られた疾患活動性指数を指す。
【0273】
この場合には、活動性推定モデル2027は、患者ごとに固有の最適化がされていくことになり、炎症性腸疾患という症状の個人差が大きい疾患について、便の状態と現在の疾患活動性との対応関係を活動性推定モデル2027に学習させることができる。これにより、より精度の高い疾患活動性の評価を行うことができる。
【0274】
<7.その他の変形例>
以下に、その他の変形例について説明する。
【0275】
上記実施形態では、トイレに排出した便を撮影する構成を示したが、この限りではない。例えばシステム1は、専用の排便シートを用いて撮影を行ってもよい。排便シートは、トイレ内の封水に浮かべた状態で使用され、撮影に要する時間において便が封水に流れこむのを防ぐシートである。すなわち、排便シートは、一定の耐水性を備えつつ、その後に排泄物とともに流すことができる親水性を備えることが好ましい。また、排便シートを構成するシート本体の表面は、少なくとも一部が有色であることが好ましい。シート本体の表面が有色であることで、排泄物に含まれる白色の粘液が識別しやすくなる。
【0276】
また、排便シートのシート本体には、色基準又はサイズ基準が表示されていてもよい。色基準とは、便画像に対する画像処理において用いられる色の基準となる標識であり、便画像への画像処理において用いられる。例えば便中の血液の検出、又は粘液と水様性便の識別などに色基準を用いることができる。
【0277】
色基準を用いた画像処理では、便画像に含まれる排泄物に関するオブジェクトの色相・彩度・明度などの特徴量を色基準に基づいて抽出し、オブジェクトの種別を判定する。また、カラーヒストグラムを用いる手法として、色基準を用いて便画像のピクセルの色分布を解析することで、便画像に含まれるオブジェクトの種別を判定してもよい。
【0278】
色基準の色は、排泄物に関するオブジェクトと同等の色、その補色と同等の色、又は明度が対照となる色を採用してもよい。検出したオブジェクトと、対応する色基準の候補の例を以下に示す。
・血液(赤)を検出する場合(赤系の色、又は補色となる緑系の色)
・便(茶)を検出する場合(茶系の色、又は補色となる青紫系の色)
・粘液(白)を検出する場合(明度が対照となる黒)
【0279】
サイズ基準とは、色基準とは、便画像に対する画像処理において用いられる大きさの基準となる表示であり、便画像への画像処理において用いられる。例えば便および出血の量の検出などにサイズ基準を用いることができる。
【0280】
サイズ基準を用いた画像処理では、予めサイズ基準が写された排泄物に関する画像を学習した学習済みモデル(検出モデル172、活動性推定モデル2027、又は含有量推定モデル)を用いて、便画像に含まれるオブジェクトのサイズや位置を、サイズ基準のサイズや位置と比較することで、オブジェクトの実際のサイズや位置を正確に推定する。
【0281】
すなわち、このような排便シートに記載された色基準又はサイズ基準を用いた画像解析を行う場合には、学習済みモデルの学習用データとして、色基準およびサイズ基準が排泄物とともに写された画像を入力データとする学習を行ってもよい。
このように、排便シートに記載された色基準およびサイズ基準を用いて、便画像への画像処理を行うことにより、活動性推定モデル2027による推定の精度を向上することが期待できる。
【0282】
また、システム1では、推定された疾患活動性指数の値に応じて、
図17に示す評価結果の表示画面において、評価結果の表示態様を変更させてもよい。すなわち、推定された疾患活動性指数が閾値よりも悪い場合、前回の評価結果よりも悪い場合、又は評価期間において悪化している傾向が認められている場合に、その旨を強調する表示態様を採用してもよい。そのような表示態様の変更パターンの一例を以下に列挙する。
・表示画面の背景色を変える
・表示画面の文字の色を変える
・表示画面の文字の大きさを変える
・表示画面の表示とともに、アラート音を発生させる
・表示画面の表示とともに、患者端末10Aを振動させる
【0283】
また、システム1では、患者から、排泄物に関する匂いの程度に関する情報の入力を受け付けてもよい。匂いの情報は、患者の主観により例えば以下の5段階などにより判定されて、患者端末10Aに対して入力される。
・通常の便臭
・強烈な(又は異質な)な便臭
・極めて強烈な(又は極めて異質な)便臭
【0284】
このような便臭を用いた疾患活動性指数の推定を行い場合には、例えば、便画像と、当該便画像に写る便の匂いの程度と、を入力データとし、入力された画像情報および匂いの程度の情報に対して、疾患活動性指数の値を正解出力データとする学習用データを用いた機械学習により得られた推定モデルを用いることができる。
また、前述した活動性推定モデル2027又は含有量推定モデルによる推定結果に対して、においの程度と想定される疾患活動性指数とが対応づけられた補正基準を用いて、疾患活動性指数の総合的な判定を行ってもよい。
【0285】
また、上記実施形態では、特定の疾患として、炎症性腸疾患を例に挙げて説明したが、このような態様に限られない。システム1が疾患活動性を評価する疾患としては、炎症性腸疾患以外の疾患であってもよい。
【0286】
また、上記実施形態では、患者が、自身が排泄した排泄物について、患者端末10Aを用いて撮影する構成を示したが、この限りではない。例えば、医療機関の医療従事者、又は介護施設の職員などが、患者の排泄した排泄物をそれぞれが使用する端末装置10により撮影することで、便画像の取得を行ってもよい。
【0287】
例えば、入院患者に対してシステム1により疾患活動性の評価を行うことができる。この場合には、看護師、又は看護師から医療端末10Bの貸与を受けた患者本人が、医療端末10Bを用いて便画像を撮影してもよい。
このような入院患者に対する疾患活動性の評価では、評価結果に応じて、当直の医師に対してその旨と通知してもよい。具体的には、当直の医師が使用する医療端末10B又は当直の医師の連絡先に対して、疾患活動性の評価結果が通知される。
【0288】
例えば、以下の局面において、当直の医師に対して疾患活動性の評価結果を通知することとしてもよい。
1)疾患活動性指数の評価結果により病状が懸念される状態である場合
・疾患活動性指数が所定の閾値よりも悪い場合
・疾患活動性指数が前回の評価結果よりも悪い場合
・疾患活動性指数が評価期間において悪化している傾向が認められている場合
2)推定された尤度が高く、かつ病状が懸念される状態である場合
【0289】
また、システム1による疾患活動性の評価結果に応じて、すなわち病状が懸念される状態である場合などにおいて、看護師が当直の医師を呼ぶ必要性がある旨の案内を、医療端末10Bに対して通知してもよい。これにより、看護師が医療端末10Bに表示された当該案内を確認することで、システム1による疾患活動性の評価結果を踏まえて、即座に医師の判断を仰ぐべきかどうかの意思決定を円滑に行うことができる。
【0290】
また、システム1では、便回数と排便時間の自動記録を行うことができる。すなわち、患者が便画像を取得した際に、便画像の撮影時刻を排便時間とみなすことで、患者が排便の度に画像を撮影するだけで、以下の情報を経時的に記録することができる。
・1日の便回数
・日中の便回数
・夜間の便回数
【0291】
また、前述した排泄物の検出結果を踏まえると、さらに以下の情報を経時的に記録することができる。
・普通便の回数
・下痢便の回数および具体的な性状
・血便の回数
・顕血便100の回数
・顕血便50%以上の回数
・顕血便50%未満の回数
医師は、これらの経時的に蓄積される患者の排便に関する履歴を参照し、実際の病態を判断することで診療活動に利用することができる。
【0292】
また、医療端末10Bでは
図17に示す評価結果の画面から、
図9Cに示す診療履歴DB3022に記録された診療履歴の情報にアクセスできてもよい。すなわち、システム1による疾患活動性の評価結果を確認した医療従事者の必要に応じて、過去の診療結果、および直近の診療において実際された採血などの各種検査の結果を、医療端末10Bに表示させることができる。
【0293】
また、
図6Fに示す評価履歴DB2026に蓄積されるシステム1による疾患活動性指数の評価結果は、医療端末10Bに表示される当該患者の電子カルテからアクセスできてもよい。この場合おいて、電子カルテには、主に
図9Cに示す診療履歴DB3022に記録された診療履歴の情報が表示されている。そして、電子カルテの内容を確認した医療従事者の必要に応じて、システム1による疾患活動性指数の評価履歴を、医療端末10Bに表示させることができる。
【0294】
また、システム1では、内視鏡相当画像を患者端末10Aに対して出力してもよい。一般的に、炎症性腸疾患の治療は長期間に及ぶ傾向がある。そして、継続的に治療を続けていくためには、患者自身が現在の病状を直感的に把握することが有効である。このため、推定した疾患活動性指数に加えて、視覚的に病状を把握できる内視鏡相当画像を患者に対して提示することで、当該疾患に関する自身の自覚症状と、推定される実際の状態と、のすり合わせを患者が行うことができ、継続的に治療を続ける動機付けを患者に対して与えることができる。
【0295】
また、システム1は、複数の評価時期それぞれにおいて生成された内視鏡相当画像を時系列に沿って合成し、表示指示に応じて経時的に画像が変化する動画を生成することで、腸内の状態についての時系列に沿った推移を確認可能な内視鏡相当動画を生成してもよい。これにより、治療活動による病状の変化を医療従事者又は患者が把握することができる。
【0296】
また、システム1は、医師による診療に対して一定の示唆を与える情報を提供してもよい。具体的には、診療履歴に記録された処方および処置に関する情報を用いて、例えば薬を変更したタイミング、又は手術を行ったタイミングの前後において推定された疾患活動性の評価結果を、時系列に沿って分析してもよい。これにより、新たに処方した薬の非劣性の評価、および治療方針の変更のタイミングの見極めに資する情報を提供することができる。
【0297】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態および変形例は、組合せ可能、又はその一部を省略可能である。
【0298】
<8.付記>
実施形態および変形例で説明した事項を、以下に付記する。
【0299】
(付記1)
プロセッサを有するサーバを備えた情報処理システムに実行させるプログラムであって、プログラムは、プロセッサに、
患者又は医療従事者が使用する端末装置により撮影された当該患者の便画像を取得するステップ(ステップS201)と、
取得した便画像への画像処理により、患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定するステップ(ステップS202)と、
推定された疾患活動性指数を、端末装置に出力するステップ(ステップS203)と、を実行させる、プログラム。
【0300】
(付記2)
疾患活動性指数を推定するステップ(ステップS202)では、プロセッサに、
便画像を入力データとし、疾患活動性指数を正解出力データとした学習用データを用いた機械学習により作成された活動性推定モデルに対して、取得した便画像を入力することで、患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数の推定値を出力させるステップを実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0301】
(付記3)
疾患活動性指数を推定するステップ(ステップS202)では、プロセッサに、
便画像を入力データとし、当該便中のカルプロクチンの含有量を正解出力データとした学習用データを用いた機械学習により作成された活動性推定モデルに対して、取得した便画像を入力することで、当該便中のカルプロクチンの含有量の推定値を出力させるステップと、
含有量の推定値を用いて、予め設定された含有量と、疾患活動性指数の推定値と、が対応づけられた判定基準に基づいて、疾患活動性指数の推定値を出力するステップと、を実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0302】
(付記4)
疾患活動性指数を推定するステップ(ステップS202)では、さらに、
当該疾患における病変範囲の推定位置を出力する、付記1に記載のプログラム。
【0303】
(付記5)
疾患活動性指数を推定するステップ(ステップS202)では、さらに、
推定された疾患活動性指数の尤度を出力する、付記1に記載のプログラム。
【0304】
(付記6)
プロセッサに、さらに、
患者の便画像、および当該便画像に相当する便の排泄時における実際の疾患活動性指数を学習用データとして、前記疾患活動性指数の推定に用いられる活動性推定モデルを再学習させるステップを実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0305】
(付記7)
プロセッサに、さらに、
端末装置に入力された排泄行動並びに服薬を含む食行動の履歴を示す行動履歴、および生体情報の少なくともいずれかを取得するステップを実行させ、
疾患活動性指数を推定するステップ(ステップS202)では、便画像への画像処理とともに、取得された行動履歴および生体情報を用いて、予め設定された評価基準に基づいて、疾患活動性指数を推定する、付記1に記載のプログラム。
【0306】
(付記8)
疾患活動性指数を推定するステップ(ステップS202)では、患者が排泄時に用いた排便シートに記載された色基準又はサイズ基準を用いて、便画像への画像処理を行う、付記1に記載のプログラム。
【0307】
(付記9)
便画像を取得するステップ(ステップS201)において、
端末装置が撮影した画像に含まれる排泄物を検出するステップ(ステップS102)と、
当該画像に排泄物が検出された場合に、当該画像を端末装置に記憶させることなく、サーバに送信させるステップ(ステップS103)と、を実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0308】
(付記10)
プロセッサに、さらに、
推定された疾患活動性指数が、予め設定された所定の閾値を超えた場合に、患者に対して、主治医による診療が必要である旨を通知するステップを実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0309】
(付記11)
プロセッサに、さらに、
患者による便画像の取得頻度を集計するステップ(ステップS221)と、
集計された取得頻度が一定の基準を下回った際に、便画像の継続的な取得を促す通知を、端末装置に通知するステップ(ステップS222)と、を実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0310】
(付記12)
プロセッサに、さらに、
患者による便画像の取得頻度を集計するステップ(ステップS221)と、
集計された取得頻度が一定の基準を上回った際に、便画像の継続的な取得を認定する通知を、端末装置に通知するステップ(ステップS222)と、を実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0311】
(付記13)
プロセッサに、さらに、
推定された疾患活動性指数が、予め設定された所定の閾値を超えた場合に、患者の主治医が使用する端末に対して、その旨を通知するステップ(ステップS204)を実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0312】
(付記14)
プロセッサに、さらに、
取得した便画像を用いた画像処理により、当該便画像に係る便を排泄した際の患者の腸内の状態として推定される内視鏡相当画像を生成するステップ(ステップS241)と、
内視鏡相当画像を作成した旨を、患者の主治医が使用する端末に対して通知するステップ(ステップS242)と、を実行させる、付記1に記載のプログラム。
【0313】
(付記15)
プロセッサを有するサーバを備えた情報処理システムが実行する方法であって、方法は、プロセッサが、
患者又は医療従事者が使用する端末装置により撮影された当該患者の便画像を取得するステップ(ステップS201)と、
取得した便画像への画像処理により、患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定するステップ(ステップS202)と、
推定された疾患活動性指数を、端末装置に出力するステップ(ステップS203)と、を実行する、方法。
【0314】
(付記16)
プロセッサを有するサーバを備えた情報処理システムであって、情報処理システムは、プロセッサが、
患者又は医療従事者が使用する端末装置により撮影された当該患者の便画像を取得する手段と、
取得した便画像への画像処理により、患者の特定の疾患に関する疾患活動性指数を推定する手段と、
推定された疾患活動性指数を、端末装置に出力する手段と、を備える、情報処理システム。
【0315】
(付記17)
付記1から14のいずれか1項に記載のプログラムを実行する際に用いられる便画像の撮影に用いられる排便シートであって、
患者が排便を行うトイレ内の封水を覆う状態で使用され、撮影に要する時間において便が封水に流れこむのを防ぐための耐水性を備えたシート本体を備えている排便シート。
【0316】
(付記18)
シート本体は、少なくとも一部が有色であるとともに、その表面に便画像への画像処理において用いられる色基準およびサイズ基準の少なくとも一方が表示されている、付記17に記載の排便シート。
【符号の説明】
【0317】
1 システム1
10 端末装置
12 通信IF
13 入力装置
14 出力装置
15 メモリ
16 記憶部
19 プロセッサ
20 評価サーバ20
20 端末装置
22 通信IF
23 入力装置
24 出力装置
25 メモリ
26 記憶部
29 プロセッサ
80 ネットワーク