IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日揚科技股▲分▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特開-防着オブジェクト 図1
  • 特開-防着オブジェクト 図2
  • 特開-防着オブジェクト 図3
  • 特開-防着オブジェクト 図4
  • 特開-防着オブジェクト 図5
  • 特開-防着オブジェクト 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150394
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】防着オブジェクト
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
C23C16/44 B
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003901
(22)【出願日】2024-01-15
(31)【優先権主張番号】112113323
(32)【優先日】2023-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】112144700
(32)【優先日】2023-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519404230
【氏名又は名称】日揚科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】陳建勳
(72)【発明者】
【氏名】孫世源
(72)【発明者】
【氏名】呉旻叡
(72)【発明者】
【氏名】方志強
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030KA47
(57)【要約】
【課題】防着オブジェクトを提供する。
【解決手段】防着オブジェクトは、主体構造と、フッ素コーティング層と、を含む。フッ素コーティング層は、主体構造の少なくとも一つの面を覆う。防着オブジェクトは、ある環境において、ある物質と接触し、且つフッ素コーティング層は、主体構造の表面に比べて、上記の物質に対してより高い水滴接触角を有する。フッ素コーティング層は、主体構造の表面に比べて、ほぼ同じ、又はより高い硬さを有する。フッ素コーティング層は、主体構造の表面に比べて、より低い粗さを有する。本発明に係る防着オブジェクトによれば、粒子などの物質の衝突による引っかき傷を防止することができ、セルフクリーニング効果とクリーニングしやすい効果も得られる。それにより、頻繁なメンテナンスのコストと人員が削減可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの表面を有する主体構造と、
前記主体構造の前記表面を覆い、ある環境において、ある物質と接触し、且つ前記主体構造の前記表面に比べて、前記物質に対してより大きい水滴接触角を有し、ほぼ同じ、又はより高い硬さを有し、そしてより低い粗さを有するフッ素コーティング層と、
を含むことを特徴とする防着オブジェクト。
【請求項2】
前記主体構造は、あるプロセス装置の出口チューブであり、又は前記プロセス装置の周辺機器のチューブ又は部材であることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項3】
前記フッ素コーティング層は、前記主体構造のある部位の前記表面に位置し、前記部位は、前記主体構造のある傾斜部位、ある平面部位、又はある屈曲部位であることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項4】
前記フッ素コーティング層は、前記主体構造の前記表面に比べて、より高い耐酸腐食性および耐プラズマエッチング性を有することを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項5】
前記主体構造の前記表面は、粗化処理後、粗い構造の粗面を形成し、表面粗さが増加することを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項6】
前記主体構造の前記表面は、酸洗い、レーザー又はサンドブラストによる粗面化を受けた後、表面粗さが増加することを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項7】
前記フッ素コーティング層の成分は、0.01~20%wtのフルオロカーボン(Fluoro-carbons)と、5~50%wtのアルコキシシランと、0.01%~20%wtの触媒添加剤と、10~90%wtの溶剤とから構成されることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項8】
前記フルオロカーボンは、パーフルオロアルカン物質(PFAS)、クロロフルオロカーボン (CFC)、セミフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロクロロカーボン (HCFC)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene,PTFE)、及びフッ素化エチレンプロピレン共重合体(Fluorinated ethylene propylene,FEP)からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の防着オブジェクト。
【請求項9】
前記フルオロカーボンは、1~20個の炭素原子を含む、フッ素含有モノマー、又はポリマーであることを特徴とする、請求項7に記載の防着オブジェクト。
【請求項10】
前記アルコキシシランは、アルコキシシランオリゴマー(Alkoxylsilane Oligomer)、アルコキシシラン化合物(Alkoxylsilane compound)、アルコキシシランポリマー(Alkoxylsilane polymer)、アルコキシルシロキサンオリゴマー(Alkoxylsiloxane Oligomer)、アルコキシルシロキサン化合物(Alkoxylsiloxane compound)、アルコキシルシロキサンポリマー(Alkoxylsiloxane polymer)、アルコキシルアミノシロキサンオリゴマー(Alkoxylaminosiloxane Oligomer)、アルコキシルアミノシロキサン化合物(Alkoxylaminosiloxane compound)、アルコキシルアミノシロキサンポリマー(Alkoxylaminosiloxane polymer)からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の防着オブジェクト。
【請求項11】
前記触媒添加剤は、白金、チタン、錫、亜鉛、アルミニウム、銀、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、ニッケル、クロム、モリブデン、バナジウム、銅、鉄、コバルト、ゲルマニウム、ハフニウム、ランタン、鉛、ルテニウム、タンタル、タングステン、ジルコニウムなどの金属、金属酸化物、リン酸ジルコニウム塩およびカルボン酸塩からなるグループから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の防着オブジェクト。
【請求項12】
前記溶剤は、アルコール、ケトン、エステル、フルオロアルコール、フルオロエーテルおよびエーテルからなるグループから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の防着オブジェクト。
【請求項13】
前記アルコキシシランに反応性官能基があり、前記反応性官能基は、室温で1日間から7日間で、自己縮合反応を行い、又は摂氏40~60度の温度で、1時間から24時間で、自己縮合反応を行うことを特徴とする、請求項7に記載の防着オブジェクト。
【請求項14】
前記環境は真空環境であり、前記物質はプロセス材料であり、前記防着オブジェクトは、前記真空環境において、プロセス装置と接触してプロセスを行うときに、使用され、又は排出される前記プロセス材料であり、前記プロセス装置で行われる前記プロセスは原子層積層(ALD)プロセスであり、前記プロセス材料は四塩化チタン(TiCl)であることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項15】
前記環境は真空環境であり、前記物質はプロセス材料であり、前記防着オブジェクトは、前記真空環境において、プロセス装置と接触してプロセスを行うときに、使用され、又は排出される前記プロセス材料であり、前記プロセス装置で行われる前記プロセスは、有機金属化学気相堆積(MOCVD)プロセスであり、前記プロセス材料は、プロセスガス又はプロセス排ガスであることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項16】
前記環境は真空環境であり、前記物質はプロセス材料であり、前記防着オブジェクトは、前記真空環境において、プロセス装置と接触してプロセスを行うときに、使用され、又は排出される前記プロセス材料であり、前記プロセス装置で行われる前記プロセスは、アルミパッド(Al-pad)プロセスであり、前記プロセス材料は、プロセスガス反応物またはプロセス排ガスであることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項17】
前記フッ素コーティング層の前記水滴接触角の範囲は、100度~120度であることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項18】
前記フッ素コーティング層の温度耐性は、摂氏600度に達することを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項19】
前記フッ素コーティング層の前記硬さの範囲は、8H~9Hであることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項20】
前記フッ素コーティング層と前記主体構造の前記表面との間にある付着力は、クロスカットテストによって得られた数値範囲は、4B~5Bであることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項21】
前記環境は、真空環境、気相環境、液相環境、又は気液混合環境であることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項22】
前記主体構造は、建築構造物、発電機器、交通手段などの主要な構造物、部品、部材、又は材料であることを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【請求項23】
前記環境はオゾン水環境であり、前記フッ素コーティング層は、前記オゾン水環境に応じて、フッ素含有量を増加することにより、前記オゾン水環境におけるオゾン水に対する安定度を増加することを特徴とする、請求項1に記載の防着オブジェクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトに関し、特に、防着オブジェクトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の絶え間ない精力的な発展により、技術製品は大きな進歩を遂げている。半導体チップのプロセスにおいて、半導体チップは、一般的にプロセス装置に置かれて、関連のプロセスが行われ、且つ真空ポンプを使用してプロセス装置内の空気やガスを抜き、プロセス装置を負圧状態に保ち、すなわち、ある程度の真空に達する。しかし、半導体プロセスにおいて、プロセスガスやプロセス排ガスなどのプロセス材料は、流体通路に堆積しやすく、ひいては修理周期がどんどん短くなる。これは製造コストとスケジュールに影響する。また、空気中には、さまざまなサイズの粉塵やさまざまな汚れ程度を有する湿気が多く含まれているため、空気と接触するオブジェクト(例えば、よく見られる、セラミック、ガラス、その他の構造物や材料)であれば、これらはどれも、ほこり、水垢、汚れが堆積しやすいため、かなり頻繁な清掃、メンテナンス、または交換が必要である。同じように、海水や淡水には多くの生物、微生物、物質が存在するため、よく海水と接触するオブジェクト(例えば、よく見られる船舶)は、色々な堆積(又は付着と称する)が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、真空部材または非真空部材に、高い硬さを有するフッ素コーティング層を塗布することにより、真空部材の粒子などのプロセス材料の衝突による引っかき傷を防止することができる防着オブジェクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る防着オブジェクトによると、少なくとも一つの表面を有する主体構造と、主体構造の表面を覆い、ある環境において、ある物質と接触し、且つ主体構造の表面に比べて、物質に対してより大きい水滴接触角を有し、ほぼ同じ、又はより高い硬さを有し、そしてより低い粗さを有するフッ素コーティング層と、を含むことを特徴とする。
【0005】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記主体構造は、あるプロセス装置の出口チューブであり、又は前記プロセス装置の周辺機器のチューブ又は部材であることを特徴とする。
【0006】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フッ素コーティング層は、前記主体構造のある部位の前記表面に位置し、前記部位は、前記主体構造のある傾斜部位、ある平面部位、又はある屈曲部位であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フッ素コーティング層は、前記主体構造の前記表面に比べて、より高い耐酸腐食性および耐プラズマエッチング性を有することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記主体構造の前記表面は、粗化処理後、粗い構造の粗面を形成し、表面粗さが増加することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記主体構造の前記表面は、酸洗い、レーザー又はサンドブラストによる粗面化を受けた後、表面粗さが増加することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フッ素コーティング層の成分は、0.01~20%wtのフルオロカーボン(Fluoro-carbons)と、5~50%wtのアルコキシシランと、0.01%~20%wtの触媒添加剤と、10~90%wtの溶剤とから構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フルオロカーボンは、パーフルオロアルカン物質(PFAS)、クロロフルオロカーボン(CFC)、セミフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロクロロカーボン(HCFC)、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene,PTFE)、及びフッ素化エチレンプロピレン共重合体(Fluorinated ethylene propylene,FEP)からなるグループから選択されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フルオロカーボンは、1~20個の炭素原子を含む、フッ素含有モノマー、又はポリマーであることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記アルコキシシランは、アルコキシシランオリゴマー(Alkoxylsilane Oligomer)、アルコキシシラン化合物(Alkoxylsilane compound)、アルコキシシランポリマー(Alkoxylsilane polymer)、アルコキシルシロキサンオリゴマー(Alkoxylsiloxane Oligomer)、アルコキシルシロキサン化合物(Alkoxylsiloxane compound)、アルコキシルシロキサンポリマー(Alkoxylsiloxane polymer)、アルコキシルアミノシロキサンオリゴマー(Alkoxylaminosiloxane Oligomer)、アルコキシルアミノシロキサン化合物(Alkoxylaminosiloxane compound)、アルコキシルアミノシロキサンポリマー(Alkoxylaminosiloxane polymer)からなるグループから選択されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記触媒添加剤は、白金、チタン、錫、亜鉛、アルミニウム、銀、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、ニッケル、クロム、モリブデン、バナジウム、銅、鉄、コバルト、ゲルマニウム、ハフニウム、ランタン、鉛、ルテニウム、タンタル、タングステン、ジルコニウムなどの金属、金属酸化物、リン酸ジルコニウム塩およびカルボン酸塩からなるグループから選択されることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記溶剤は、アルコール、ケトン、エステル、フルオロアルコール、フルオロエーテルおよびエーテルからなるグループから選択されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記アルコキシシランに反応性官能基があり、前記反応性官能基は、室温で1日間から7日間で、自己縮合反応を行い、又は摂氏40~60度の温度で、1時間から24時間で、自己縮合反応を行うことを特徴とする。
【0017】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記環境は真空環境であり、前記物質はプロセス材料であり、前記防着オブジェクトは、前記真空環境において、プロセス装置と接触してプロセスを行うときに、使用され、又は排出される前記プロセス材料であり、前記プロセス装置で行われる前記プロセスは原子層積層(ALD)プロセスであり、前記プロセス材料は四塩化チタン(TiCl)であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記環境は真空環境であり、前記物質はプロセス材料であり、前記防着オブジェクトは、前記真空環境において、プロセス装置と接触してプロセスを行うときに、使用され、又は排出される前記プロセス材料であり、前記プロセス装置で行われる前記プロセスは、有機金属化学気相堆積(MOCVD)プロセスであり、前記プロセス材料は、プロセスガス又はプロセス排ガスであることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記環境は真空環境であり、前記物質はプロセス材料であり、前記防着オブジェクトは、前記真空環境において、プロセス装置と接触してプロセスを行うときに、使用され、又は排出される前記プロセス材料であり、前記プロセス装置で行われる前記プロセスは、アルミパッド(Al-pad)プロセスであり、前記プロセス材料は、プロセスガス反応物またはプロセス排ガスであることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フッ素コーティング層の前記水滴接触角の範囲は、100度~120度であることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フッ素コーティング層の温度耐性は、摂氏600度に達することを特徴とする。
【0022】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フッ素コーティング層の前記硬さの範囲は、8H~9Hであることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記フッ素コーティング層と前記主体構造の前記表面との間にある付着力は、クロスカットテストによって得られた数値範囲は、4B~5Bであることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記環境は、真空環境、気相環境、液相環境、又は気液混合環境であることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記主体構造は、建築構造物、発電機器、交通手段などの主要な構造物、部品、部材、又は材料であることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る防着オブジェクトは、前記環境はオゾン水環境であり、前記フッ素コーティング層は、前記オゾン水環境に応じて、フッ素含有量を増加することにより、前記オゾン水環境におけるオゾン水に対する安定度を増加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る防着オブジェクトによれば、次のような効果がある。
(1)真空部材に、高い硬さを有するフッ素コーティング層を塗布することにより、真空部材の粒子などのプロセス材料の衝突による引っかき傷を防止することができる。
(2)真空部材に、より大きい水滴接触角を有するフッ素コーティング層を塗布することにより、真空部材での堆積の発生を防止することができ、且つ自己クリーニング効果とクリーニングしやすい効果を実現できる。
(3)フッ素コーティング層の主体構造に対する密着性が良いため、プロセスにおいて、剥離の発生を回避できる。
(4)フッ素コーティング層を有する防着オブジェクトにより、頻繁なメンテナンスにかかる費用と労力を節約できる。
(5)建築構造物、電気機器、交通手段などの主要構造物や部品、部材を、高硬度のフッコーティング層でコーティングすることで、環境中の物質との接触による堆積を回避することができ、且つ自己クリーニング効果とクリーニングしやすい効果を実現でき、環境中の物質の衝突による引っかき傷を回避することもできる。
【0028】
本発明の技術的特徴および達成し得る技術的効能の理解を深めるために、より良い実施例と詳細な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る防着オブジェクトの一部の構造を示す図である。
図2】本発明に係る防着オブジェクトがプロセス装置に適用されることを示す図である。
図3】本発明に係る防着オブジェクトの第1の実施例を示す断面構造図である。
図4】本発明に係る防着オブジェクトの第2の実施例を示す断面構造図である。
図5】本発明に係る防着オブジェクトの第3の実施例を示す断面構造図である。
図6】本発明に係る防着オブジェクトの第4の実施例の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施の形態の図面における各部材の比率は、説明を容易に理解するために示され、実際の比率ではない。また、図に示すアセンブリの寸法の比率は、各部品とその構造を説明するためのものであり、もちろん、本発明はこれに限定されない。一方、理解を便利にするために、以下の実施の形態における同じ部品については、同じ符号を付して説明する。
【0031】
さらに、明細書全体および請求の範囲で使用される用語は、特に明記しない限り、通常、この分野、本明細書に開示される内容、および特別な内容で使用される各用語の通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるいくつかの用語は、当業者に本発明の説明に関する追加のガイダンスを提供するために、本明細書の以下または他の場所で説明される。
【0032】
この説明での「第1」、「第2」、「第3」などの使用については、順序や順次を具体的に示すものではなく、本発明を制限するためにも使用されていない。これは、同じ専門用語で説明するコンポーネントまたは操作を区別するためだけに使用される。
【0033】
次に、この説明で「含む」、「備える」、「有する」、「含有する」などの用語が使用されている場合、それらはすべてオープンな用語である。つまり、これらは、含むがこれに限定されないことを意味する。
【0034】
図1から図6を参照する。図1は本発明に係る防着オブジェクトの一部の構造を示す図である。図2は本発明に係る防着オブジェクトがプロセス装置に適用されることを示す図である。図3は本発明に係る防着オブジェクトの第1の実施例を示す断面構造図である。図4は本発明に係る防着オブジェクトの第2の実施例を示す断面構造図である。図5は本発明に係る防着オブジェクトの第3の実施例を示す断面構造図である。図6は本発明に係る防着オブジェクトの第4の実施例の構造を示す斜視図である。
【0035】
本発明に係る防着オブジェクトは、主体構造の表面を覆うフッ素コーティング層を有することにより、その表面が環境中の物質と接触して堆積を発生する現象を回避でき、且つ自己クリーニング効果とクリーニングしやすい効果を得ることができ、環境中の物質の衝突による引っかき傷を回避することもできる。上記の環境は、例えば真空環境、気相環境、液相環境または気液混合環境である。換言すると、本発明に係る防着オブジェクトの適用は、真空環境に限定されず、真空環境ではない環境に適用することもでき、堆積を防止できる效果を得ることができれば、全てが本発明の特許請求の範囲に属する。
【0036】
図1から図6を参照する。本発明に係る防着オブジェクト10は、主体構造20と、フッ素コーティング層30と、を含む。フッ素コーティング層30は主体構造20を覆う。本発明に係る防着オブジェクト10は、例えば真空環境または真空環境ではない環境に適用可能であり、真空環境への適用を例とする場合、防着オブジェクト10は、例えば真空環境において、プロセス装置100と接触してプロセスを行うときに、使用され、又は排出される物質110(プロセス材料と称することもある)である。上記の真空環境は、特定の真空度に限定されず、プロセス装置100の必要によって決めてもよい。上記の環境は、例えば気相環境、液相環境、又は気液混合環境などの真空環境ではない環境でもよい。本発明に係る防着オブジェクト10は、上記の環境における物質110と接触する。フッ素コーティング層30は、主体構造20の少なくとも一つの表面22を覆う。本発明に係る防着オブジェクト10のフッ素コーティング層30は、例えば主体構造20の全部または一部の表面を覆い、例えば主体構造20の部位24の表面22を覆う。また、この部位24は、プロセス材料の堆積がよく発生する位置でもよく、例えば屈曲箇所または傾斜箇所などの平面ではない箇所であり、且つ例えば裏壁面に限定されない。このため、本発明では、上記の部位24は、例えば主体構造20の図3に示す屈曲部位、又は図4に示す傾斜部位であるが、本発明はこれらに限定されない。本発明に係るフッ素コーティング層30は、主体構造20の図5に示す平面部位を覆ってもよい。また、本発明に係る防着オブジェクト10の主体構造20は、例えば、図3から図5に示すようなプロセス装置100の出口管であり、又は図3から図5に示すようなプロセス装置100の周辺機器(例えば真空ポンプ)のチューブであり、又は例えば図6に示す、スパイラル分流トラフ26を有するHolweck社製のポンプの部品などの部材である。上記に多くの種類の防着オブジェクト10の主体構造20の態様を例として挙げたが、本発明はこれらに限定されず、真空環境への適用が可能なオブジェクトの全ての態様は、本発明の特許請求の範囲に属する。例えば、本発明に係る防着オブジェクト10とその主体構造20は、例えば真空ポンプのチャンバーや部品などでもよく、例えばターボ分子真空ポンプ(TMP)のローター羽根及び/又はステーター羽根である。例えば、本発明に係る防着オブジェクト10とその主体構造20は、例えばバルブ構造のチャンバーや部品などである。簡単に説明すると、本発明では、物質110と接触可能な全てのオブジェクトの表面に、フッ素コーティング層30を選択的に形成されてもよい。
【0037】
本発明に係る防着オブジェクトの特徴の一つは、主体構造20の表面22にフッ素コーティング層30を覆うことにより、フッ素コーティング層30は、主体構造20の表面22の代わりとして、プロセス装置100がプロセスを行うときに、使用され、又は排出される物質110と接触することにある。フッ素コーティング層30は、例えば、塗布により、主体構造20の表面22を覆う。塗布の方式は、例えばスプレー、ブラッシング、浸漬、または拭き取りなどの方式を採用するが、これらに限定されない。本発明は、例えば、主体構造20の表面22に、液相であるフッ素コーティング層30を直接に塗布し、又は主体構造20の表面22に、液相であるフッ素コーティング層30を塗布する前に、まず、主体構造20の表面22に対してラフ化加工(粗化処理)を行うことにより、表面粗さを増加する。ラフ化加工は、例えば酸洗、レーザー、サンドブラストなどの加工を採用するが、これらに限定されない。主体構造20の表面22に、溝や切り込みなどのラフ構造120のラフ表面を多く形成することにより、フッ素コーティング層30と主体構造20の表面22の密着性を増加することができる。本発明は、特定の酸洗、レーザー、サンドブラストなどの加工に限定されず、すなわち、ラフ化加工は、何れかの技術手段を採用しても、主体構造20の表面粗さを増加することができれば、全て本発明の特許請求の範囲に属するため、その説明を省略した。
【0038】
一方、空気に多くの粉塵や水が含有し、且つ海水や淡水には多くの生物、微生物、物質が存在するため、空気、海水や淡水に接触するオブジェクトであれば、色々な堆積(又は付着と称する)が発生しやすいため、かなり頻繁な洗浄、メンテナンス、または交換を必要とする。本発明に係る防着オブジェクト10によれば、図1に示すように、フッ素コーティング層30が主体構造20の表面22を覆うことにより、表面22は、環境における物質と接触して、色々な堆積が発生することを回避することができるため、自己クリーニング効果とクリーニングしやすい効果とを得ることができ、環境における物質の衝突による引っかき傷を回避することもできる。例えば、上記の環境は、真空環境、気相環境、液相環境または気液混合環境であるが、これらに限定されない。上記の物質は、防着オブジェクト10が置かれている環境によって異なるため、その説明を省略した。例えば、本発明に係る防着オブジェクト10の主体構造20は、例えば屋内または屋外の建築構造、発電機器や交通手段の主要な構造、部品、部材または材料である。これにより、主体構造20の原本の機能および効果を発揮すると共に、フッ素コーティング層30により、追加の機能や効果を提供することもでき、例えば堆積防止または引っかき傷防止などの效果を得ることができ、これにより、清掃および修理の頻度を減少することができ、メンテナンスのサイクルを延びることもできる。建築構造を例として説明すると、本発明に係る防着オブジェクト10の主体構造20は、例えば構造材料、装飾材料および専用材料などの屋内または屋外の建築構造の主な構造、部品、部材または材料であるが、これらに限定されない。例えば、建築構造の構造材料は、例えば金属、木材、石材、セメント、コンクリート、石材、セラミックス、ガラス、エンジニアリングプラスチック、複合材料またはそれらの組み合わせなど、屋内または屋外の建築構造の主要な構造、部品、部材または材料であるが、これらに限定されない。また、上記のガラスは、例えば屋内ガラス(例えば浴室ガラス)、又は屋外ガラス(例えば窓)などである。これにより、スケールや粉塵の付着を防ぐことができる。建築構造の装飾材料は、例えばコーティング、ペイント、ボード、セラミックタイル、ガラス、複合材料またはそれらの組み合わせなど、屋内または屋外の建築構造の主要な構造、部品、部材または材料であるが、これらに限定されない。建築構造の専用材料は、例えば防水、防湿、防食、防火、難燃、遮音、断熱、保温、シールまたはそれらの組み合わせの機能を有する、屋内または屋外の建築構造の主要な構造、部品、部材または材料であるが、これらに限定されない。上記の複合材料は、例えば発泡プラスチック(例えばポリエチレン、PETなど)サンドイッチパネル、木芯と軽量硬材の表面材(例えばバルサなど)を組み合わせた複合パネル、又はアルミニウム複合パネル(例えばアルミニウム-プラスチック パネルなど)が、徐々に建物で広く使用されており、装飾および家具分野における建築用複合材料としての材料であるが、これらに限定されず、これにより、その効果を発揮でき、例えば、建物に複合材料を使用すると、建物全体の重量を軽減し、建物の耐震レベルを効果的に向上させることができる。発電機器を例として説明すると、本発明に係る防着オブジェクト10の主体構造20は、例えば、風力発電機器、水力発電機器、波力発電機器、又は太陽光発電機器などの発電機器の主な構造、部品、部材、又は材料である。例えば、主体構造20は発電機器の羽根などであるが、これに限定されない。交通手段を例として説明すると、本発明に係る防着オブジェクト10の主体構造20は、例えば、各種類の交通手段(例えば船舶、車両、航空機など)の主な構造、部品、部材、又は材料であって、主な構造は、例えば船舶の船体、車両の胴体、航空機の胴体などであるが、これに限定されず、部品、部材または材料は、例えば船舶、車両または飛行機の各種類の構成要素または材料であるが、これに限定されない。例えば、本発明に係る防着オブジェクト10の主体構造20は、船舶の主な構造、部品、部材または材料であれば、水面上や水面下でフジツボなどの生物や微生物の付着防止や海水の腐食防止に使用できる。簡単に説明すると、本発明に係る防着オブジェクト10によれば、置かれている環境(例えば真空環境、気相環境、液相環境または気液混合環境)における各種類の物質と接触して、物理的反応(例えば引っかき傷など)または化学的反応(例えば堆積または錆びなど)の発生を回避することができる。本発明は、考えられるアプリケーション例をリストするために最善を尽くしているが、本発明に係る防着オブジェクトは、既存の建築構造物、発電機器、交通手段の主要な構造、部品、部材、または材料を置き換えるために使用することができるため、上記の用途は単なる例であり、この明細書で主張される保護範囲を制限することを意図したものではない。真空環境、気相環境、液相環境または気液混合環境で使用可能なオブジェクトの全ての態様は、全部が本発明の特許請求の範囲に属する。
【0039】
本発明は、主体構造20の表面22に、液相であるフッ素コーティング層30を塗布した後、室温で、凡そ1から7日間で、自己縮合反応を行い、又は摂氏40度から摂氏60度の温度で、凡そ1時間から24時間で、自己縮合反応を行う。すなわち、主体構造20の表面22にフッ素コーティング層30を固まって、硬化した状態にあるフッ素コーティング層30を形成する。フッ素コーティング層30の厚さの範囲は、1μmから3,000μmでもよいし、この範囲における任意の数値の区間、又は上、下限エンドポイン値でもよく、例えば10μmから300μmである。フッ素コーティング層30の物理的特性および科学的特性は、主体構造20の表面22の本来の物理的特性および科学的特性に比べて、より良い。例えば、真空環境において、フッ素コーティング層30は、主体構造20の表面22に比べて、物質110に対する水滴接触角θがより大きく、すなわち、フッ素コーティング層30と物質110との間の水滴接触角(範囲は、凡そ100度から140度でもよいし、この範囲における任意の数値の区間、又は上、下限エンドポイン値でもよく、例えば106.5度である。)は、表面22と物質110との間の水滴接触角(範囲は、凡そ89から95度である。)より大きい。本発明は、真空部材に、より大きい水滴接触角を有するフッ素コーティング層30を塗布することにより、真空部材での堆積の発生を防止でき、且つ自己クリーニング効果とクリーニングしやすい効果とを得ることができる。フッ素コーティング層30の硬さは、主体構造20の表面22の硬さに比べて、ほぼ同じ、又はより高い。すなわち、フッ素コーティング層30の硬さ(範囲は、凡そ8Hから9Hでもよいし、この範囲における任意の数値の区間、又は上、下限エンドポイン値でもよい。)は、主体構造20の表面22の硬さ(範囲は、凡そ4Hから6.5Hである。)に比べて、ほぼ同じ、同じ、又はより高い。本発明は、真空部材に、高い硬さを有するフッ素コーティング層30を塗布することにより、真空部材が粒子などのプロセス材料に衝突されて引っかき傷を生じることを防止できる。フッ素コーティング層30と主体構造20の表面22との間の付着力(クロスカットテスト(Cross-Cut test)の範囲は、凡そ4Bから5Bである。)は、物質110のフッ素コーティング層30に加える接触力(例えば、物質110が排出されるときに、フッ素コーティング層30に衝突する外力や吸着力)より大きい。これにより、本発明に係るフッ素コーティング層30の主体構造20に対する密着性は良いため、プロセスにおいて、剥離の発生を回避することができる。フッ素コーティング層30は、主体構造20の表面22に比べて、酸腐食やプラズマエッチングに対して高い耐性を持っているため、本発明に係るフッ素コーティング層30によれば、真空部材を酸エッチングやフリーラジカル浸食から保護することができる。フッ素コーティング層30は、主体構造20の表面22に比べて、より低い粗さを有し、すなわち、フッ素コーティング層30の粗さ(凡そ0.2)は、主体構造20の表面22の粗さに比べて、より低く、更に、フッ素コーティング層30によれば、主体構造20の表面22にある溝またはノッチなどのラフ構造120を充填または浸透させる效果を得ることができ、これにより、平滑化効果を得ることができる。一方、本発明に係るフッ素コーティング層30は、かなりの高温に耐えることができ、動作温度範囲が広く、温度許容範囲は摂氏約600度にも達する。フッ素コーティング層30の動作温度範囲は、例えば、約摂氏600度より低く、又は約摂氏600度であり、例えば、約摂氏260度~摂氏600度であることが好ましく、且つ摂氏600度より低く、又は摂氏600度である、任意の数値の区間または上、下限エンドポイン値でもよい。逆に、従来の撥水コーティングや防汚コーティングでは通常高温に耐えることができず、例えば従来のテフロン(登録商標)の使用温度は摂氏260度より低い。更に、従来の撥水コーティングや防汚コーティングの硬さは、僅か約1H~3Hであり、例えば従来のテフロンの硬さは1H~2Hである。このため、従来の撥水コーティングや防汚コーティングは、プロセス装置100で半導体プロセスを行うときの高温、高真空、高腐食性、高衝撃性および高堆積性の環境に耐えることができない。換言すると、本発明に係る防着オブジェクト10は、フッ素コーティング層30と主体構造20を結合することにより、頻繁なメンテナンスによるコスト及び人員を節約できる。
【0040】
本発明に係るフッ素コーティング層30の成分は、例えば、約0.01~20%wtのフルオロカーボン(Fluoro-carbons)と、約5~50%wtのアルコキシシランと、約0.01%~20%wtの触媒添加剤と、約10~90%wtの溶剤から構成される。フルオロカーボンは、例えば1~20個の炭素原子を含む、フッ素含有モノマーまたはポリマーである。フルオロカーボンは、例えば約3個~20個の炭素原子と少なくとも一つの末端トリフルオロメチルとを含むフッ素含有モノマーである。フルオロカーボンは、例えば、パーフルオロアルカン物質(PFAS)、クロロフルオロカーボン(CFC)、セミフルオロカーボン(HFC)、フルオロポリマー(PTFEなど)、およびハイドロフルオロクロロカーボン(HCFC)からなるグループから選択される。アルコキシシランは、例えば、アルコキシシランオリゴマー(Alkoxylsilane Oligomer)、アルコキシシラン化合物(Alkoxylsilane compound)、アルコキシシランポリマー(Alkoxylsilane polymer)、アルコキシルシロキサンオリゴマー(Alkoxylsiloxane Oligomer)、アルコキシルシロキサン化合物(Alkoxylsiloxane compound)、アルコキシルシロキサンポリマー(Alkoxylsiloxane polymer)、アルコキシルアミノシロキサンオリゴマー(Alkoxylaminosiloxane Oligomer)、アルコキシルアミノシロキサン化合物(Alkoxylaminosiloxane compound)、アルコキシルアミノシロキサンポリマー(Alkoxylaminosiloxane polymer)からなるグループから選択される。触媒添加剤は、白金、チタン、錫、亜鉛、アルミニウム、銀、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、ニッケル、クロム、モリブデン、バナジウム、銅、鉄、コバルト、ゲルマニウム、ハフニウム、ランタン、鉛、ルテニウム、タンタル、タングステン、ジルコニウムなどの金属、金属酸化物、リン酸ジルコニウム塩およびカルボン酸塩からなるグループから選択される。触媒添加剤は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化カルシウムおよび塩化カルシウムからなるグループから選択され、且つ例えばナノメートルサイズを有するが、本発明はこれらに限定されない。マイクロナノサイズ、さらにはミクロンサイズの触媒添加剤または成分も、本発明の特許請求の範囲内に含まれる。溶剤は、例えばエタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコールであるが、本発明はこれらに限定されず、本発明に係る溶剤は、アルコール、ケトン、エステル、フルオロアルコール、フルオロエーテルおよびエーテルからなるグループから選択される。本発明に係るアルコキシシランは反応性官能基を持っており、反応性官能基は、室温で1から7日間(例えば7日間)で自己縮合反応を行い、又は摂氏40~60度温度で、1~24時間(例えば24時間)で、自己縮合反応を行う。また、上記の反応性官能基は、例えば、シリコーン水素化反応性官能基(アルケニル、アクリル、ケイ素原子に結合した水素原子など)、縮合反応性官能基(ヒドロキシル、アルコキシ、アシルオキシなど)または過酸硬化反応性官能基(アルキル、アルケニル、アクリル、ヒドロキシルなど)である。この他、ある実施の態様では、本発明に係るフッ素コーティング層30の成分は、例えば、フッ素、ナノチタン、シリコン、シリコーンエラストマーからなる有機・無機高分子共重合体である。本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であれば、本開示の上記の内容に基づいて、本発明の効果を得られるフッ素コーティング層30を有する防着オブジェクト10を選択および調整する方法を知っているはずであるため、その説明を省略した。一方、本発明に係る防着オブジェクト10のフッ素コーティング層30は、防着オブジェクト10が置かれている環境(例えば、蒸気オゾン剥離(VOS)プロセス又はその応用などのオゾン水環境)に応じて、フッ素コーティング層30のフッ素化度を増加することもでき、例えば、パーフルオロアルキル物質(Per/Poly fluoro alkyl substances,PFAS)(例えば、パーフルオロオクタン酸(Perflurooctanoic acid,PFOA)又はパーフルオロオクタンスルホン酸(Perflurooctane sulfonic acid,PFOS))、ポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroet Hylene,PTFE)又はフッ素化エチレンプロピレン共重合体(Fluorinated ethylene propylene,FEP)を添加する。本発明は、各種の応用の態様の防着オブジェクト10にフッ素化度を増加することにより、環境におけるオゾン水の安定度を向上することができる。
【0041】
本発明の表面硬さテスト方法は、硬い鉛筆でフッ素コーティング層30の表面硬さをテストする。例えば、硬い鉛筆(三菱スタンダード鉛筆)を45度の角度で一定の荷重を有する台車に積載して、防着オブジェクト10のフッ素コーティング層30の表面をスライドするように、手で台車を押すことにより、鉛筆による引っかき傷を生じたときの表面硬さを確認する。本発明に係る防着オブジェクト10では、主体構造20の表面22を覆うフッ素コーティング層30の表面硬さのテスト結果は、全て8Hで荷重1Kg~9Hで荷重500g範囲にある。
【0042】
本発明のクロスカットテスト(Cross-Cut test)は、ASTM D3359方法B(クロスカット方式)テストによって、グリッドナイフを使用して、テスト様本の表面に10×10個(100個)1mm×1mmの小さなグリッド線を10×10(100)描く。各線は防着オブジェクト10のフップライム層30の最下層に付くのに十分な深さを有する。ブラシを使ってテストエリアの破片を取り除いて、スタンダードテープ(3M 600番のテープ)又は同じ効果を有するテープを使って、テストされたグリッド線に貼り付けて、消しゴムに力を入れてテープを拭くことにより、テープとテストエリアの接触面積および力の大きさを増加して、手でテープの一端を掴んで、1.5分±30秒以内に、テープを180度の角度で素早く引き剥がした後、フッ素コーティング層30の剥離状態を観察する。本発明に係る防着オブジェクト10では、本発明に係るフッ素コーティング層30が主体構造20の表面22を覆うもののクロスカットテストの結果は、全て5B(切り込みのエッジは完全に滑らかで、グリッドのエッジに剥離はない。)~4B(カットの交差点に小さな破片が剥がれており、クロスハッチ領域の実際の損傷は≦5%である。)範囲にある。このため、本発明に係るフッ素コーティング層30の主体構造20の表面22に対する付着力(密着性)が極めて高いことは分かる。
【0043】
本発明の耐酸腐食性テストでは、5%HCl(塩酸)0.05mlをテストサンプルに滴下し、HCl溶液が蒸発するまで24時間放置する。蒸発の過程中に、HClエリアの濃度が上昇して、腐食の拡散効果を高める。24時間を過ごした腐食拡散面積を観察する。テストの結果は、フッ素コーティング層30を塗布しなかった主体構造20の表面22の腐食面積(mm)が約45.13mmであるが、フッ素コーティング層30を塗布した主体構造20の表面22の腐食面積(mm)が僅か約19.4mmである。
【0044】
また、本発明もプラズマ エッチングテストを行った。その結果は、同じエッチング条件(CHF3:Arは1:1であり、60分間を掛け、酸化物をエッチングする速度は750nm/30minである。)である場合に、本発明に係るフッ素コーティング層30は、主体構造20の表面22(アルマイト処理されたアルミニウム素材)に比べて、プラズマエッチングに対する耐性は確かにより良い。熱安定性テスト(Thermogravimetric Analyzer,TGAテスト)に関する限り、温度の上昇速度が摂氏5度/分間およびテスト雰囲気がN2であるテスト環境において、本発明に係るフッ素コーティング層30の重量は、テストの温度範囲(摂氏600度)内に、安定的で徐々に降下し、重量の突然な変化がない。これは、本発明に係る防着オブジェクト10のフッ素コーティング層30がクラッキング(cracking)しなったことを示す。
【0045】
プロセス装置100で行われるプロセスは、例えば半導体プロセスである。例えば、プロセス装置100で行われるプロセスは原子層積層(ALD)プロセスであり、プロセス材料は四塩化チタン(TiCl)であって、防着オブジェクト10の主体構造20は、例えば流体輸送管であるが、これらに限定されない。例えば、プロセス装置100で行われるプロセスは、有機金属化学気相堆積(MOCVD)プロセスであり、プロセス材料はプロセスガスまたはプロセス排ガスであって、防着オブジェクト10の主体構造20は、例えば真空ポンプの出口管であるが、これらに限定されない。例えば、プロセス装置100で行われるプロセスはアルミパッド(Al-pad)プロセスであり、プロセス材料は、プロセスガス反応物またはプロセス排ガスであり、例えば、N、O、Ar、SF、He、HBr、CF、CH、Cl、BCl及CHFからなるグループから選択される。防着オブジェクト10の主体構造20は、例えばフローガイドスパイラル溝を備えたポンプ部品および出口管であるが、これらに限定されない。本発明に係る防着オブジェクトは、実際にテストを受け、結果として、上記のプロセスにおいて、全て效果が良く、例えばアルミパッド(Al-pad)プロセスにおいて、本発明に係る防着オブジェクトによれば、メンテナンスサイクルを約20%に延びることができるため、頻繁なメンテナンスにかかる資金と人員を削減できる。
【0046】
本発明に係る防着オブジェクトによれば、次のような効果がある。
(1)真空部材に、高い硬さを有するフッ素コーティング層を塗布することにより、真空部材の粒子などのプロセス材料の衝突による引っかき傷を防止することができる。
(2)真空部材に、より大きい水滴接触角を有するフッ素コーティング層を塗布することにより、真空部材での堆積の発生を防止することができ、且つ自己クリーニング効果とクリーニングしやすい効果を実現できる。
(3)フッ素コーティング層の主体構造に対する密着性が良いため、プロセスにおいて、剥離の発生を回避できる。
(4)フッ素コーティング層を有する防着オブジェクトにより、頻繁なメンテナンスにかかる費用と労力を節約できる。
(5)建築構造物、電気機器、交通手段などの主要構造物や部品、部材を、高硬度のフッコーティング層でコーティングすることで、環境中の物質との接触による堆積を回避することができ、且つ自己クリーニング効果とクリーニングしやすい効果を実現でき、環境中の物質の衝突による引っかき傷を回避することもできる。
【0047】
以上の記述は例を挙げたものにすぎず、限定するものではない。本発明の精神及び範疇から逸脱しない、それに対して行ういかなる同等効果の修正又は変更も、請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10 防着オブジェクト
20 主体構造
22 表面
24 部位
26 スパイラル分流トラフ
30 フッ素コーティング層
100 プロセス装置
110 物質
120 ラフ構造
θ 水滴接触角
図1
図2
図3
図4
図5
図6