(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150403
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】低温用シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 77/08 20060101AFI20241016BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241016BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C08G77/08
C08K3/36
C08L83/04
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024039763
(22)【出願日】2024-03-14
(31)【優先権主張番号】23167067
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】523321637
【氏名又は名称】ヴェンチュリ ラブ エスア
【氏名又は名称原語表記】VENTURI LAB SA
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェドゥルコ,ミラン
(72)【発明者】
【氏名】シュムッツ,ローラン
(72)【発明者】
【氏名】デルフィーノ,アントニオ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メチル基及びエチル基を含有するポリシロキサンの製造方法、ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン、及びシリコーンゴム製造用組成物を提供する。
【解決手段】メチル基及びエチル基を含有するポリシロキサンの製造方法は、工程a)シラノール前駆体の加水分解、工程b)工程a)で得られたシラノール末端シロキサンオリゴマーの鎖を、トリフラート塩触媒を添加し、次いでパーフルオロボラン触媒を添加することによるルイス酸誘起重縮合によって延長することを含む。下記式(IIIa)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン、ポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサン、上記ポリマーを含むシリコーンゴム製造用組成物、前記組成物を硬化することにより得ることができるシリコーンゴム、及び航空宇宙産業における前記シリコーンゴムの使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程a)シラノール前駆体の加水分解反応;
工程b)工程a)で得られたシラノール末端シロキサンオリゴマーの鎖を、トリフラート塩触媒、特に、In(III)トリフラートを添加し、次いでパーフルオロボラン触媒、特に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを添加することによるルイス酸誘起重縮合によって延長すること
を含む、
メチル基及びエチル基を含有するポリシロキサンの製造方法。
【請求項2】
メチル基及びエチル基を含有する前記ポリシロキサンは、
- 下記式(I)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン又はポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサン:
【化1】
Aは、メチル基又は水素原子を表し、
m及びnは、それぞれ繰り返しモチーフ-O-Si(Me)(A)及び-O-Si(Et
2)のモル%を表し、
m=0.5~0.8であり、n=0.2~0.5であり、m+n=1であり、
pは、Aがメチル基を表す場合には20000g/molから150000g/molの範囲の重量平均分子量を得るための、Aが水素原子を表す場合には300g/mol~3500g/molの範囲の重量平均分子量を得るための、両方の繰り返しモチーフの数を表す
及び、
- 下記式(II)のポリ(エチルメチルシロキサン):
【化2】
qは繰り返しモチーフの数を表す
からなる群より選択されることを特徴とする、
請求項1の方法。
【請求項3】
工程a)の前記シラノール前駆体が、(R1)2エチルメチルシランと、(R1)2ジメチルシラン及び(R1)2ジエチルシランの混合物と、(R1)2メチルシラン及び(R1)2ジエチルシランの混合物と、の中から選択され、ここで、R1は、塩素原子、(C1-C6)アルコキシ基、アセトキシ基、又はオキシム基を表し、有利には、R1は、塩素原子、メトキシ基、又はエトキシ基を表すことを特徴とする、
請求項2の方法。
【請求項4】
前記In(III)トリフラート触媒は、オリゴマー1グラムあたり0.1mgから1mgの量で存在することを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程b)は、室温で実施されることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
工程b)は、溶媒を使用せずにバルクで行われることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
- 工程b)で得られる前記ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンは、20000g/mоlから150000g/mоlの範囲内の重量平均分子量を有し、
- 工程b)で得られる前記ポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンは、300g/mоlから3500g/mоlの範囲内の重量平均分子量を有し、及び
- 工程b)で得られる前記ポリ(エチルメチルシロキサン)は、1000g/mоlから200000g/mоlの範囲内の重量平均分子量を有する
ことを特徴とする、
請求項2から6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
溶媒を使用しないIn(III)トリフラート、又は溶媒としてのトルエン中、若しくは溶媒を使用しないB(C
6F
5)
3、又はIn(III)トリフラートとB(C
6F
5)
3との混合物のようなルイス酸触媒の存在下、20から70℃の温度における、工程b)で得られるポリマーの、ビニルジメチルメトキシシラン又はビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの反応によりビニル末端基を付加する工程c1)をさらに含み、
有利には、工程c1)は
- 下記式(III)を有するポリマー
【化3】
A、m、n及びpは式Iで定義したとおりであり、
R
2=-Si(CH
3)
2CH=CH
2:
又は
- 下記式(IV)を有するポリマー
【化4】
qは式IIで定義したとおりであり、
R
2=-Si(CH
3)
2CH=CH
2:
を得るためであることを特徴とする、
請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
- 工程c1)で得られるポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンが-130℃から-142℃の範囲内にガラス転移温度を有し、
- 工程c1)で得られるポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンが-130℃から-146℃の範囲内にガラス転移温度を有し、及び
- 工程c1)で得られるポリ(エチルメチルシロキサン)が-130℃から-142℃の範囲内にガラス転移温度を有すること:を特徴とする、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
溶媒としてのトルエン中のB(C
6F
5)
3のようなルイス酸触媒の存在下における、工程b)で得られるポリマーのトリアルキルシランとの反応によりトリアルキルシリル末端基を付加する工程c2)をさらに含み、
有利には、工程c2)は
下記式(V)を有するポリマー
【化5】
A、m、n及びpは式Iで定義されたとおりであり、
それぞれのR
3は互い独立して飽和、直鎖、又は分岐C
1-C
6アルキル基である:
又は
-下記式(VI)を有するポリマー
【化6】
qは式IIで定義されたとおりであり、
それぞれのR
3は互いに独立して飽和、直鎖、又は分岐C
1-C
6アルキル基である:
を得るためであることを特徴とする、
請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
50/50ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン又は50/50ポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンを製造するための方法であることを特徴とする、
請求項2から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
- 下記式(IIIa):
R
2、m、n及びpは、式IIIで定義したとおりである
- 20000g/mоlから150000g/mоlの範囲内の重量平均分子量、及び
- -130℃から-142℃の範囲内のガラス転移温度
を有し、
有利には、請求項8、9及び11のいずれか1つに記載の方法によって得ることができる、
ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン。
【請求項13】
- 下記式(IIIb):
R
2、m、n及びpは、式IIIで定義したとおりである、
- 300g/mоlから3500g/mоlの範囲内の重量平均分子量、及び
- -130℃から-146℃の範囲内のガラス転移温度
を有し、
有利には、請求項8、9及び11のいずれか1つに記載の方法によって得ることができる、
ポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサン。
【請求項14】
- 下記式(V):
R
3、A、m、n及びpは、請求項10で定義したとおりである
- 500g/mоlから150000g/mоlの範囲内の重量平均分子量、及び
- -130℃から-145℃の範囲内のガラス転移温度
を有し、
有利には、請求項10及び11のいずれか1つに記載の方法によって得ることができる、
ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン。
【請求項15】
- (A)請求項12に記載の式(IIIa)のビニル末端ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン60~94重量%;
- (B):補強充填材、有利には焼成シリカ5~35重量%;
- (C):Tg<-130℃であり、有利には請求項13に記載の式(IIIb)を有する架橋剤1~5重量%;
- (D):適量の硬化触媒、有利には、メチルビニルシクロシロキサンに溶解した白金(0)-2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサンのようなPt(0)触媒、及び
- (E):任意で、1-エチニル-1-シクロヘキサノールのような阻害剤
を含む、
シリコーンゴム製造用組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物の硬化によって得ることができ、及び
-130℃から-142℃の範囲内のガラス転移温度を有し、-140℃から+250℃の範囲内に結晶化/溶融転移を有さず、100%超の破断伸びを有する、
シリコーンゴム。
【請求項17】
請求項15に記載のシリコーンゴム又は請求項14に記載の式(V)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンの航空宇宙産業、特に宇宙探査車における使用。
【請求項18】
請求項13に記載の式(IIIb)を有するポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンのシリコーンゴムの製造のための架橋剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空宇宙用途に要求される極低温に耐えることができる強化シリコーンゴム及びシリコーンオイル組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンはシロキサンの構造を有する有機ケイ素ポリマーであり、ケイ素原子がエチル基若しくはメチル基などのアルキル基、トリフルオロメチル基、アリール基、又は他の官能基と結合しているのが特徴である。一般にPDMSとして知られるポリ(ジメチルシロキサン)由来のシリコーンゴム組成物は、-60℃までの温度に耐えることが知られている。しかし、宇宙探査ミッションのような多くの宇宙用途では、-100℃をはるかに下回る温度に耐え、引張降伏強度(>3MPa)及び300%を超える破断伸びを有するシリコーン材料が必要とされる。
【0003】
ポリ(ジエチルシロキサン)(PDIES)は、ガラス転移温度が-142℃である唯一のポリマー材料である。しかし、純粋なPDIESは、-142℃から0℃の間でいくつかの結晶化/融解転移を示すため、そのような用途には適さない。シリコーンの結晶化は、通常、その硬化、脆化、及び弾性の喪失を伴う。これにより、宇宙探査車のような自動車用途の物体の機械的特性が劣化あるいは致命的に損なわれる可能性がある。ポリ(ジメチルシロキサン)中に少量のフェニル基、ビフェニル基、又はジエチル基(10mоl%未満)を添加すると、ジメチルポリシロキサンコポリマーの冷結晶化が防止されることは、従来技術から知られている。実際、現在市販されている宇宙用途シリコーン(Momentive社、Elkem社、Nusil社、Dow Corning社、IOTA社など)の大部分は、ポリ(ビフェニル-co-ジメチルシロキサン)又はポリ(メチルフェニル-co-ジメチルシロキサン)のファミリーに属している。興味深いことに、このようなコポリマー中のビフェニル又はメチルフェニルの含有量が10mol%を超えると、ガラス転移が高温側にシフトするため、極低温での用途(-150℃まで)は制限される。例えば、Momentive社から販売されているRTV 560、RTV 566、RTV 567(メチル-フェニルシリコーン)は、ガラス転移温度Tg=-115℃であるため、これらの材料は月の南極でのミッションには適していない。RTV 566の25%ひずみ条件下での冷結晶化、及び-80℃での長時間待機(60時間)により、弾性率が5MPaから240MPaに増加したことに注意することが重要であり、おそらくこれが機械的な不具合及び望遠鏡の位置ずれの主な原因であると考えられる。
【0004】
現在のところ、比較的高い引張強度(すなわち4MPa以上)、100%以上の破断伸び、及び-120℃以下の耐低温性を有する市販のシリコーンはない。市販されている唯一のシリコーンは、18~22mol%のポリ(ジエチル)-及び78~82mol%のポリ(ジメチルシロキサン)を含み、Tg=-131℃である、Gelest社から販売されている(EDV-2022)。しかし、この材料は比較的低分子量(10,000~12,000g/mol)であり、この材料を脆くする環状シロキサンオリゴマーを含んでいる可能性があるため、航空宇宙用途には適さない。
【0005】
シリコーン合成の古典的な方法は、ジメチルジクロロシランの加水分解に依拠し、その結果、ジシラノールH[O-Si(CH3)2]n-OH、塩酸、及び様々な量の環状シロキサンが生成される。その後、塩酸は触媒として作用し、ジシラノールが縮合してポリジメチルシロキサンとなる。そこから、シラノール末端シリコーンは、最終製品の所望の特性に応じてさまざまな方法で重合される。
【0006】
米国特許4,960,850号には、シラノール末端基を有するポリジオルガノシロキサンオリゴマーを、真空を用いて重縮合水を連続的に除去しながら、触媒的に有効な量のトリフルオロメチルスルホン酸の存在下、密閉反応ゾーン内で、20℃から160℃の温度で重縮合させること、そして触媒中和量のシクロポリジオルガノシラザン又はジオルガノアミノシリル末端基を有するポリジオルガノシラザンを反応液に添加することによって重縮合反応を終了させることが記載されている。しかしトリフルオロメチルスルホン酸の沸点は162℃であり、高真空下で水を除去しながら蒸留することができる。
【0007】
分子量が調整されたシリコーンは、環状シロキサンの開環重合(ROP)から得られる。これは、高度に制御された方法であり、工業における主要な方法でもある。上記の方法は、単一のシクロシロキサンの重合の場合は比較的容易であるが、2つのシクロシロキサン、例えば、デカメチルシクロシロキサン(D5Me10)及びヘキサエチルシクロシロキサン(D3Et6)を共重合して1:1のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンを調整しようとすると、制御が難しくなる。後者は、D3Et6とD5Me10とではモノマー分子の歪みが異なり、そして開環速度が異なることに起因する。開環には、比較的高い反応温度95~160℃、適切なアニオン開始剤、末端封止剤、添加剤、圧力処理反応器などが必要である。シリコーンは通常、ある程度の分解(back biting)を受け、その結果、高粘度シリコーンから除去するのが困難になり得るさまざまな量(又は変動する量)の環状シロキサンが生成される。さらに、ヘキサエチルシクロシロキサンはそれ自体が優先的に重合して架橋ゴム中に脆い領域を形成し、その結果得られる材料の機械的特性を低下させることが知られている。
【0008】
モノマーシラン前駆体からポリシロキサンを合成する別の方法は、B(C6F5)3のようなパーフルオロアリールボラン触媒の存在下でのシランモノマー又はオリゴマーの重縮合に依拠する(Michael A. Brooks, J.B. Grande, F. Ganachaud, New Synthetic Strategies for Structured Silicones Using B(C6F5)3. Adv. Polym. Sci. 2011, 235, 161-183)。Piers-Rubinsztajn反応として知られるこの方法の利点の1つは、ROP(環状モノマーに依拠)と比較して、室温で行うことができ、高温ROP合成よりも環状生成物の生成がはるかに少ないことである。しかし、この方法の主な欠点は、少量のシリコーン(mmol量)の合成には使用できるが、kg量のジメチル-co-ジエチル(1:1)ポリシロキサンの合成にはほとんど使用できないという事実に起因する。これは、このような反応が極めて発熱性であり、大量のガス状生成物(典型的には、シリコーン1kgあたり100リットル以上のH2、CH4またはCH3-CH3)を生成するからである。この反応をスケールアップしようとすると、深刻な爆発の危険が伴うことは明らかである。さらに、Piers-Rubinsztajn反応を使用するもう一つの欠点は、水が触媒の劣化を引き起こすため、ボラン触媒をトルエンのような溶媒に溶解させなければならない(ヘプタンは触媒の沈殿を引き起こす)という事実によるものである。無溶媒シリコーン合成の粘度は、ポリマーの粘度をいつでも目視又は粘度計によって調べることができるため、非常に簡単であるが、トルエンのような有機溶媒中では、反応の進行をモニターするのが難しい場合がある。さらに、シラン前駆体の構造(すなわち、-OH、-OCH3又は-OCH2CH3)によっては、モノマーを重合するために反応温度を上げる必要がある。例えば、ジメトキシジメチルシランのジエチルシランとの-OCH3基反応は22~23℃で起こるが、B(C6F5)3存在下での-OCH2CH3のエタンへの変換には70℃が必要である。
【0009】
シランの加水分解の速度は、その電子構造、使用する溶媒、触媒の有無、及び反応温度に依存することが従来技術から知られている。例えば、水中でのジクロロジメチルシランの加水分解はゼロに近い温度でも起こるが、ジエトキシジメチルシランは25℃で安定しており、その加水分解には50℃以上の温度が必要であり、最終的には適切な酸又は塩基触媒の存在が必要である。
【発明の概要】
【0010】
本出願人は、低温(1~7℃)でジエチル/ジメチル/エチルメチルクロロシランを加水分解する方法により、平均分子量Mwが~1000(粘度が33~36mPa.s)のシラノール末端ポリ(ジメチル-co-ジエチル)シロキサン又はポリメチルエチルシロキサンが再現性よく生成されることを発見した。上記シロキサンは、適切なルイス酸触媒の存在下で、ガラス転移温度が非常に低く低温で結晶化/溶融転移を起こさない高分子量PDIES又はPEMS(Mw-50000~100000)に、簡便に重合することができる。この方法は、高い反応温度(100℃以上)を必要とせず、環状シリコーンの副生成物を最小限(ppm量)に抑えながら、比較的迅速に(数分以内に)粘度を上昇させる。PDIES/PEMS合成の本発明の方法は、Piers-Rubinsztajn反応で経験されるような大量のガス状生成物(H2、メタン又はエタン)の形成の問題を解決し、したがって、上述のような高い発熱性と爆発の危険性を抑える。
【0011】
さらに、解決すべき別の課題は、ビニル末端PDIESとの架橋剤の相溶性である。一般に、フェニルシリコーンの架橋には、古典的なメチルヒドロポリシロキサン架橋剤(PHMS)又はジメチル-cо-メチルヒドロポリシロキサン架橋剤を使用すると相分離及び発泡の増加が発生するため、フェニル含有架橋剤が必要である。本出願人は、ジメチル-co-ジエチルポリシロキサンの場合にも同様の現象があることに気付いた。シリカの非存在下または存在下で、PDIES/PHMS混合物に真空を適用した場合、広範な発泡が観察された。このような架橋剤/ジエチルシリコーン不適合性の問題を解決するために、本出願人は、PDIESとの適合性に優れた新しいタイプのメチルヒドロ-co-ジエチルシロキサン架橋剤を合成した。
【0012】
したがって、本発明は、メチル基及びエチル基を含むポリシロキサンの製造方法に関するものであり、当該方法は、
工程a)シラノール前駆体の加水分解反応;
工程b)工程a)で得られたシラノール末端シロキサンオリゴマーの鎖を、トリフラート塩触媒、特に、In(III)トリフラートを添加し、次いでパーフルオロボラン触媒、特に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを添加することによるルイス酸誘起重縮合によって延長すること
を含む。
【0013】
有利には、メチル基およびエチル基を含むポリシロキサンは、下記からなる群より選択される:
-下記式(I)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン又はポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサン:
【化1】
Aは、メチル基又は水素原子を表し、
m及びnは、それぞれ繰り返しモチーフ-O-Si(Me)(A)及び-O-Si(Et
2)のモル%を表し、
m=0.5~0.8であり、n=0.2~0.5であり、m+n=1であり、
pは、Aがメチル基を表す場合には20000g/mol~150000g/molの範囲の重量平均分子量を得るための、Aが水素原子を表す場合には300g/mol~3500g/molの範囲の重量平均分子量を得るための、両方の繰り返しモチーフの数を表す
及び、
-下記式(II)のポリ(エチルメチルシロキサン):
【化2】
qは繰り返しモチーフの数を表す。
【0014】
より有利には、工程a)におけるシラノール前駆体は、(R1)2エチルメチルシラン、(R1)2ジメチルシランと(R1)2ジエチルシランとの混合物、及び(R1)2メチルシランと(R1)2ジエチルシランとの混合物の中から選択され、ここで、R1は塩素原子、(C1-C6)アルコキシ基(有利にはメトキシ基又はエトキシ基)、アセトキシ基、又はオキシム基を表し、有利には、R1は塩素原子、メトキシ基又はエトキシ基を表し、より有利には、R1は塩素原子を表す。
【0015】
本発明の式中、Meはメチル基であり、Etはエチル基である。
【0016】
本発明において、「xからyの間に含まれる」、「x~yの範囲内」、「=x~y」、「xからy」という用語は、範囲の限界であるx及びyが含まれることを意味するものとする。
【0017】
本発明において、「(C1-C6)アルコキシ基」という用語は、1から6の炭素原子を有する任意の直鎖状又は分岐鎖状の飽和アルコキシ基、具体的にはOCH3(メトキシ)基及びOCH2CH3(エトキシ)基を意味するものとする。
【0018】
したがって、本発明の方法は、メチル基及びエチル基を含むポリシロキサン、好ましくは、下記式(I)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン又はポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンを製造するためのものである:
【化3】
ここで、Aは、メチル基又は水素原子を表し、
m及びnは、それぞれ繰り返しモチーフ-O-Si(Me)(A)及び-O-Si(Et
2)のモル%を表し、
m=0.5~0.8であり、n=0.2~0.5であり、m+n=1であり、
pは、Aがメチル基を表す場合には20000g/molから150000g/molの範囲の重量平均分子量を得るための両方の繰り返しモチーフの数を表し、Aが水素原子を表す場合には300g/molから3500g/molの範囲の重量平均分子量を得るための両方の繰り返しモチーフの数を表す。ポリマーの重量平均分子量は、粘度測定法(2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠)、1H NMR、及びFTIRを用いて測定することができる。
【0019】
有利には、m=0.5~0.7、n=0.3~0.5、かつm+m=1であり、より有利には、m=0.5~0.6、n=0.4~0.5、かつm+m=1であり、さらに有利には、m=n=0.5である。
【0020】
具体的には、本発明におけるポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンは、下記式Iaを有する:
【化4】
ここで、m、n、及びpは、上記で定義したとおりである。
【0021】
本発明における式Iaのポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンは、有利には、具体的には2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が20000g/mоlから150000g/mоlの範囲内であり、より有利には、30000g/mоlから100000g/mоlの間、さらに有利には40000g/mоlから80000g/mоlの間、特に45000g/mоlから60000g/mоlの間である。
【0022】
具体的には、本発明におけるポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンは、下記式Ibを有する:
【化5】
ここで、m、n、及びpは、上記で定義したとおりである。
【0023】
本発明における式Ibのポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンは、有利には、具体的には2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が300g/mоlから3500g/mоlの範囲内であり、より有利には、500g/mоlから3000g/mоlの間、さらに有利には1000g/mоl及び2000g/mоlの間である。
【0024】
本発明の方法はまた、有利には、下記式(II)のポリ(エチルメチルシロキサン)を製造するためのものである:
【化6】
ここで、qは繰り返しモチーフの数を表す。
【0025】
有利には、本発明におけるポリ(エチルメチルシロキサン)は、具体的には2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が1000g/mоlから2000000g/mоlの範囲である。
【0026】
本発明の方法における工程a)は、シラノール前駆体の加水分解反応からなる。
【0027】
有利には、シラノール前駆体は、(R1)2エチルメチルシラン、(R1)2ジメチルシランと(R1)2ジエチルシランとの混合物、及び(R1)2メチルシランと(R1)2ジエチルシランとの混合物の中から選択され、ここで、R1は塩素原子、(C1-C6)アルコキシ(有利にはメトキシ基又はエトキシ基)、アセトキシ基、又はオキシム基を表し、有利には、R1は塩素原子、メトキシ基、又はエトキシ基を表し、より有利には、R1は塩素原子を表す。
【0028】
したがって、有利には、シラノール前駆体は、塩素化又はエトキシ化シラノール前駆体、具体的には塩素化シラノール前駆体である。より有利には、それらは、ジクロロエチルメチルシラン、ジエトキシエチルメチルシラン、ジクロロジメチルシランとジクロロジエチルシランとの混合物、ジクロロメチルシランとジクロロジエチルシランとの混合物、ジエトキシジメチルシランとジエトキシジエチルシランとの混合物、及びジエトキシメチルシランとジエトキシジエチルシランとの混合物の中から選択され、より有利には、ジクロロエチルメチルシラン、ジクロロジメチルシランとジクロロジエチルシランとの混合物、及びジクロロメチルシランとジクロロジエチルシランとの混合物の中から選択される。
【0029】
工程a)の後に得られる生成物は、メチル基及びエチル基を含むシロキサンのオリゴマー、具体的には、(ジメチル-co-ジエチル)シロキサン又は(メチルヒドロ-co-ジエチル)シロキサン又はエチルメチルシロキサンのオリゴマーである。これらのオリゴマーは、有利には、具体的には2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が500g/molから3000g/molの間、より有利には、Aがメチルである場合に重量平均分子量が1000~3000g/molである。
【0030】
工程a)の可能な反応スキーム(scheme1及び2)は以下のとおりである:
【化7】
【化8】
ここで、A、m、及びnは、上記で定義されたとおりであり、R1は塩素原子、C1-C6アルコキシ基(具体的にはメトキシ基又はエトキシ基)、アセトキシ基、又はオキシム基を表し、有利には、R1は塩素原子、メトキシ基、又はエトキシ基を表し、より有利には、R1は塩素原子を表す。
【0031】
有利な実施形態では、工程a)は、0℃から40℃の温度で行われ、より有利には5℃から35℃の温度で行われる。
【0032】
有利な態様では、反応は最初に0℃から7℃、有利には5℃から7℃の温度で行われ、続いて温度を30~40℃、有利には30~35℃の範囲に上昇させる。
【0033】
より有利には、反応は撹拌しながら行われ、さらに有利には、シラノール前駆体を水に添加することにより行われ、添加は具体的には滴下であり、より有利には1滴/秒から5滴/秒の速度、具体的には3滴/秒の速度で添加することによって行われる。
【0034】
有利な実施形態では工程a)は1から2時間続く。
【0035】
有利な実施形態では、水のモル濃度(w)は、両方のシラノール前駆体のモル濃度(a+b)よりも高い:w>a+b
【0036】
さらなる実施形態において、工程a)で得られたオリゴマーは、本発明による方法の工程b)で使用される前に、工程a)を実施した後に得られるHR1、具体的にはHClを含む水相から、有利にはヘプタン抽出によって分離される。
【0037】
本発明の方法における工程b)は、工程a)で得られたシラノール末端シロキサンオリゴマー、有利にはポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンオリゴマー又はポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンオリゴマー又はエチルメチルシロキサオリゴマーの鎖を、トリフラート塩触媒を添加し、続いてパーフルオロボラン触媒を添加することによるルイス酸誘起重縮合によって延長することからなる。有利には、工程b)の後に得られるポリマーは、上記で詳述した式I又はIIのポリマーである。
【0038】
有利には、トリフラート塩触媒は、In(III)トリフラート、Bi(III)トリフラート、Al(III)トリフラート、及びこれらの混合物の中から選択され、より有利には、トリフラート塩触媒はIn(III)トリフラートである。
【0039】
有利には、パーフルオロボラン触媒はトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0040】
In(III)トリフラート及びパーフルオロボラン触媒を用いた工程b)の反応スキーム(scheme3及び4)は以下のとおりである:
【化9】
ここで、A、m、n、及びpは上記で定義したとおりである。
【化10】
ここで、qは上記で定義したとおりである。
【0041】
式(I)のポリマーは交互コポリマーである。
【0042】
式(II)のポリマーはホモポリマーである。
【0043】
有利には、工程(b)は室温(20~25℃)で実施される。
【0044】
有利な実施形態では:
-まず、トリフラート塩触媒、具体的にはIn(III)トリフラートを撹拌しながら添加し(工程b1)、その後、撹拌せずに有利には少なくとも1~12時間放置して反応を進行させる。
-その後、パーフルオロボラン触媒、具体的にはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを撹拌しながら添加し(工程b2)、その後、撹拌せずに有利には少なくとも1~12時間放置して反応を進行させる。
【0045】
有利には、工程(b)は溶媒を使用せずにバルクで行われる。
【0046】
有利な実施形態では、トリフラート塩触媒、具体的にはIn(III)トリフラートは、オリゴマー1グラムあたり0.1mgから1mgの量で存在する。
【0047】
別の有利な実施形態では、パーフルオロボラン触媒、具体的にはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランは、オリゴマー1グラムあたり0.1mgから1mgの量で存在する。
【0048】
特定の実施形態では、工程b)は不活性雰囲気下、有利には窒素下で行われる。
【0049】
本発明の方法は、溶媒を使用しないIn(III)トリフラート、又は溶媒としてのトルエン中、若しくは溶媒を使用しないのB(C
6F
5)
3のようなルイス酸触媒の存在下、20から60℃の温度における、工程b)で得られたポリマーの、ビニルジメチルメトキシシラン又はビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの反応によりビニル末端基を付加する工程c1)をさらに含むことができ、有利には、工程c1)は、下記式(III)を有するポリマー:
【化11】
A、m、n及びpは式Iで定義したとおりであり、
R
2=-Si(CH
3)
2CH=CH
2:
又は
-下記式(IV)を有するポリマー
【化12】
qは式IIで定義したとおりであり、R
2=-Si(CH
3)
2CH=CH
2:
を得るためである。
【0050】
式(III)のポリマーは交互コポリマーである。
【0051】
式(IV)のポリマーはホモポリマーである。
【0052】
したがって、工程c1)で得られるポリマーは、
下記式(IIIa)を有するポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン:
【化13】
R
2、m、n及びpは、式IIIで定義したとおりである
又は、
下記式(IIIb)を有するポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサン:
【化14】
R
2、m、n及びpは、式IIIで定義したとおりである
であり得る。
【0053】
式(IIIa)及び式(IIIb)のポリマーは交互コポリマーである。
【0054】
有利には、式(IIIa)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンは、2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度(Tg)が、-130℃から-142℃の範囲内、具体的には-135℃から-141℃の範囲内、より具体的には-139℃である。
【0055】
式(IIIa)のポリシロキサンは、より有利には、具体的には2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が20000g/mоlから150000g/mоlの範囲内であり、さらに有利には、30000g/mоlから100000g/mоlの間、さらになおより有利には40000g/mоl及び80000g/mоlの間であり、特に45000g/mоlから50000g/mоlの間である。
【0056】
有利には、式(IIIb)のポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンは、2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度(Tg)が、-130℃から-146℃の範囲内である。
【0057】
式(IIIb)のポリシロキサンは、より有利には、具体的には2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が300g/mоlから3500g/mоlの範囲内であり、より有利には、500g/mоlから3000g/mоlの間、なおより有利には1000g/mоl及び2000g/mоlの間である。
【0058】
有利には、式(IV)のポリ(エチルメチルシロキサン)シロキサンは、2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度(Tg)が、-130℃から-142℃の範囲内である。
【0059】
式(IV)のポリシロキサンは、より有利には、具体的には2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が20000g/mоlから200000g/mоl、有利には、20000g/mоlから150000g/mоlの範囲内である。
【0060】
工程c1)の反応スキーム(scheme5及び6)は以下のとおりである:
【化15】
ここで、R
2、A、m、n及びpは、上記で定義したとおりである。
【化16】
ここで、R
2及びqは、上記で定義したとおりである。
【0061】
特定の実施形態では、ルイス酸触媒はトリフラート塩であり、有利にはIn(III)トリフラート、Bi(III)トリフラート、Al(III)トリフラート、及びそれらの混合物の中から選択され、より有利にはIn(III)トリフラートであり、工程c1)は溶媒を使用せずに行われ、より有利には50℃から70℃の間の温度で行われ、さらに有利には、ポリマー1グラムあたり触媒は0.1mgから2mgの量で存在する。
【0062】
別の特定の実施形態では、ルイス酸触媒はB(C6F5)3のようなパーフルオロボラン触媒であり、工程c1)は溶媒を使用せずに、又は溶媒としてトルエンを用いて、より有利には室温(20~25℃)で行われ、さらに有利には、ポリマー1グラムあたり触媒は0.1mg~1mgの量で存在する。
【0063】
さらに特定の実施形態では、ルイス酸触媒はトリフラート塩とパーフルオロボランとの混合物、有利にはIn(III)トリフラートとB(C6F5)3との混合物であり、工程c1)は溶媒を使用せずに行われ、より有利には室温(20~25℃)で行われ、さらに有利には、ポリマー1グラムあたり触媒は0.1mg~1mgの量で存在する。
【0064】
さらに特定の実施形態では、工程c1)が行われるとき、工程b)で用いられる触媒は除去されず、かつパーフルオロボラン、具体的にはB(C6F5)3がさらに添加される。有利には、工程c1)は溶媒を使用せず、より有利には室温で行われる。
【0065】
本発明の方法は、溶媒としてのトルエン中のB(C
6F
5)
3のようなルイス酸触媒の存在下における、工程b)で得られたポリマーの、トリアルキルシラン、具体的にはトリメチルシラン又はトリエチルシラン、より具体的にはトリエチルシランとの反応により、トリアルキルシリル末端基を付加する工程c2)を含むことができ、工程c2)は、有利には、下記式(V)を有するポリマー:
【化17】
A、m、n及びpは式Iで定義されたとおりであり、
それぞれのR
3は互い独立して飽和、直鎖、又は分岐C
1-C
6アルキル基、有利にはエチル基である:
又は
-下記式(VI)を有するポリマー
【化18】
qは式IIで定義されたとおりであり、
それぞれのR
3は互いに独立して飽和、直鎖、又は分岐C
1-C
6アルキル基である:
を得るためである。
【0066】
本発明において、「(C1-C6)アルキル基」という用語は、1から6個の炭素原子を有する任意の直鎖状又は分岐鎖状の飽和アルキル基、具体的にはCH3(メチル)基及びCH2CH3(エチル)基を意味するものとする。
【0067】
式(V)のポリマーはシリコーンオイルであり、交互コポリマーである。式(VI)のポリマーはシリコーンオイルであり、ホモポリマーである。
【0068】
有利には、式(IVa)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンは、2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度(Tg)が、-130℃から-145℃の範囲内、具体的には-135℃から-142℃の範囲内、より具体的には-136℃である。
【0069】
より有利には、上記シロキサンは、2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が40000g/mоlから65000g/mоlの範囲内、さらに有利には45000g/mоlから55000g/mоlの間である。
【0070】
有利には、式(VI)のポリ(エチルメチル)シロキサンは、2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度(Tg)が、-130℃から-142℃の範囲内である。
【0071】
より有利には、上記シロキサンは、2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が20000g/mоlから150000g/mоlの範囲内である。
【0072】
工程c2)の反応スキーム(scheme7及び8)は以下のとおりである:
【化19】
ここで、R
3、A、m、n及びpは上記で定義したとおりである。
【化20】
ここで、R
3及びqは上記で定義したとおりである。
【0073】
別の特定の実施形態では、ルイス酸触媒はB(C6F5)3のようなパーフルオロボラン触媒であり、工程c2)は溶媒を使用せずに、又は溶媒としてトルエンを用いて、より有利には室温(20~25℃)で行われ、さらに有利には、ポリマー1グラムあたり触媒は0.1mg~1mgの量で存在する。
【0074】
別の特定の実施形態では、本発明の方法は、工程c1)又はc)の後に、工程b)及びc1)、又は工程c)で用いた触媒を、有利には酸化アルミニウムを用いて除去する工程d)をさらに含む。
【0075】
有利には、本発明の方法は、50/50ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン又は50/50ポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンを製造するためのものである。
【0076】
本発明はまた、上述した式(IIIa)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンに関するものであり、当該シロキサンは有利には本発明の方法によって得られ、より有利には以下を有する:
- 2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が20000g/mоlから150000g/mоlの範囲内、より有利には30000g/mоlから100000g/mоlの間、さらに有利には40000g/mоlから80000g/mоlの間、特に45000g/mоlから50000g/mоlの間であり、及び/又は、
- 2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度が、-130℃から-142℃の範囲内、具体的には-135℃から-141℃の範囲内、より具体的には-139℃である。
【0077】
式(IIIa)のポリマーは、交互コポリマーである。
【0078】
本発明はまた、上述した式(IIIb)のポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンに関するものであり、当該シロキサンは有利には本発明の方法によって得られ、より有利には以下を有する:
- 2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が300g/mоlから3500g/mоlの範囲内、より有利には500g/mоlから3000g/mоlの間、さらに有利には1000g/mоlから2000g/mоlの間であり、及び/又は、
- 2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度が、-130℃から-146℃の範囲内である。
【0079】
式(IIIb)のポリマーは、交互コポリマーである。
【0080】
本発明はまた、上述した式(V)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンに関するものであり、当該シロキサンは有利には本発明の方法によって得られ、より有利には以下を有する:
- 2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度測定法を用いた重量平均分子量が500g/mоlから150000g/mоlの範囲内、有利には1000g/mоlから3000g/mоlの間であり、及び/又は、
- 2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度が、-130℃から-145℃の範囲内、具体的には-135℃から-142℃の範囲内、より具体的には-139℃である。
【0081】
式(V)のポリマーは、交互コポリマーである。
【0082】
式(V)のポリマーは、シリコーンオイルである。
【0083】
本発明はまた、シリコーンゴム製造用組成物に関するものであり、当該組成物は以下を含む:
- (A)本発明による式(IIIa)のビニル末端ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン60~94重量%;
- (B)補強充填材、有利には焼成シリカ5~35重量%;
- (C)Tg<-130℃であり、有利には本発明の式(IIIb)を有する架橋剤1~5重量%;
- (D)適量の硬化触媒、有利には、メチルビニルシクロシロキサンに溶解した白金(0)-2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサンのようなPt(0)触媒、及び
- (E)任意で、1-エチニル-1-シクロヘキサノールのようなPt阻害剤
【0084】
本明細書において、「シリコーンゴム」の用語は、200~-140℃の温度範囲で弾性を維持する能力を有する物質を意味するものと理解される。
【0085】
本発明の組成物における化合物(A)(式(IIIa)のビニル末端ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン)及び化合物(C)(架橋剤)のそれぞれの量は、単位(R'HSiO2/2)の数及びアルケニル基の数との比によって決まり、化合物(A)中のアルケニル部分の相対的割合及び化合物(C)中の単位(R'HSiO2/2)の相対的割合を考慮して調整される。
【0086】
本発明のシリコーンゴム組成物の本質的な特徴は、シリコーンベース組成物に導入される化合物(C)における単位(R'HSiO2/2)の数とゴム組成物に導入される化合物(A)におけるジエチル基の数との比である。本発明によれば、単位(R'HSiO2/2)の数とアルケニル基の数とのこの比は3より大きい。この比の値が3以下の場合、ステンレス鋼又はチタン等の金属表面への自己接着性PDIESシリコーンとして使用するには機械的特性及び接着特性が不十分な組成物となる。
【0087】
有利には、この比は4より大きく25より小さい。
【0088】
硬化触媒は、ヒドロシリル化触媒、具体的には白金Pt(0)触媒であり、より具体的には、メチルビニルシクロシロキサンに溶解した白金(0)-2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサンのように、ジビニルテトラアルキルシロキサン配位子、好ましくは1,3-ジビニルテトラメチルシロキサンと錯体を形成している。このような触媒は、例えば文献WO0142258A1に記載されている。Karstedt触媒が最も特に適している。従来のヒドロシリル化反応と同様に、組成物中の触媒の量は触媒量である。触媒量とは、組成物中に存在するオレフィン二重結合型不飽和物の量に対して、白金が1モル当量未満であること意味する。一般に、化合物(A)及び化合物(C)の総質量に対して、1000ppm未満、好ましくは30ppmを超える白金を導入すれば十分である。
【0089】
化合物(C)の反応設計(R'HSiO2/2)及び化合物(A)のアルケニル基のヒドロシリル化により、オルガノポリシロキサンの架橋が起こり、架橋シリコーンゴム組成物を製造することができる。架橋は、通常、シリコーンゴム組成物を、ヒドロシリル化反応を起こすのに十分な温度にすることにより開始される。架橋は、一般的には、15℃から200℃の間、例えば20℃から150℃の間、さらに好ましくは50℃から150℃の間の温度で行われる。
【0090】
公知の方法では、架橋性シリコーン組成物は、一般に阻害剤を含む。阻害剤は、一般に、ヒドロシリル化架橋反応の温度及び時間を制御し、それによって架橋反応、特にその開始及び速度をさらに制御するために使用される。架橋阻害剤が使用される場合、使用される阻害剤の量は、化合物(A)及び化合物(C)の総質量に対して、好ましくは1から50,000ppmであり、より好ましくは20から2000ppmであり、特に100から1000ppmである。阻害剤としては、アセチレンアルコール、例えば1-エチニル-1-シクロヘキサノール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ドデシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オールが挙げられる。好ましくは、本発明におけるシリコーンゴム組成物は、阻害剤を含む。
【0091】
本発明におけるシリコーンゴム組成物は、補強充填剤、有利には疎水性シリカ、具体例には焼成シリカを含むという本質的な特徴も有する。公知の方法では、疎水性シリカは、表面の一部がアルキル基などの有機基で被覆されたシリカである。シリカは、当業者に公知の任意の補強シリカ、具体的には任意の沈降シリカ又は焼成シリカであり得る。好ましくは、シリカは、450m2/g未満、好ましくは80から400m2/g、特に好ましくは100から300m2/g、有利には150から250m2/gの範囲内のBET比表面積を有する。また、例えば、Evonik社のAerosil R 8200、Aerosil R 812 S、Aerosil E 9200、またはCabot社のCab-O-Sil TS 530など、複数のシリカの混合物を使用することも可能である。
【0092】
シリカを疎水性にするために、シリカの表面を改質することがよく知られている。シリカの表面の改質は、トリアルキルシリル基、具体的にはトリメチルシリル基などの疎水性基を有する化合物とシリカとを反応させることによって、公知の方法で達成することができる。特に適しているのは、トリメチルシリル基によって表面修飾されたシリカである。例えば、ヘキサメチルジシラザンで修飾されたシリカを挙げることができる。
【0093】
疎水性シリカの含有量は、その比表面積及びシリコーンゴム組成物の用途に応じて当業者によって調整される。好ましくは、シリコーンゴム組成物における疎水性シリカの含有量は、シリカ、化合物(A)、及び化合物(C)の総重量の5%以上かつ35%以下である。シリカ、化合物(A)、及び化合物(C)の総重量の5%未満では、組成物の補強特性が特定の用途には不十分となる可能性がある。シリカ、化合物(A)、及び化合物(C)の総重量の35%を超えると、シリコーンゴムの配合が不可能になる可能性がある(Wacker社のシリカ HDK H2000を使用した場合、又はCab-O-Sil TS 530、Aerosil R 8200、若しくはAerosil E 9200を20重量%より多く使用した場合に得られる固体ペースト)。
【0094】
本発明によるシリコーンゴム組成物は、疎水性シリカを化合物(A)に配合し、次いで混合しながら化合物(C)を添加し、最後に触媒を添加することによって調製することができる。阻害剤を使用する場合、通常は化合物(C)を配合する前に、疎水性シリカと化合物(A)との混合物に阻害剤を添加する。
【0095】
本発明はまた、本発明による組成物の硬化によって得られ、上述のように、2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定されるガラス転移温度が-130℃から-142℃の範囲、有利には-135℃から-140℃の範囲、具体的には-138℃である、及び/又は、2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCにより測定される-140℃から+250℃の範囲において結晶化/溶融転移を有しない、シリコーンゴムにも関する。
【0096】
より有利には、本発明によるシリコーンゴムは、破断伸び(1988年9月、H2、AFNOR NF T 46002規格を用いたINSTRON 34TM-10,Franceにより測定)が100%以上、具体的には200%以上、より具体的には300%以上であり、例えば348%である。
【0097】
さらに有利には本発明によるシリコーンゴムは、1988年9月のAFNOR NF T 46002規格に準拠したフランスのINSTRON 34TM-10により測定される弾性率が>1MPa、有利には>3MPaである。
【0098】
さらに有利には本発明によるシリコーンゴムは、2021年7月23日のASTM D2240規格に準拠したデュロメータ硬度により測定されるショアAが35~40の範囲にある。
【0099】
本発明はまた、航空宇宙産業、特に宇宙探査車での本発明におけるシリコーンゴム又は式(V)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンの使用に関する。より具体的には、本発明はまた、低温、具体的には-100℃未満での本発明における式(V)のポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサンの電気モーター用シリコーンオイルとしての使用に関する。
【0100】
本発明は、最終的に、シリコーンゴムを調製するための架橋剤としての本発明による式(IIIb)を有するポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンの使用に関する。
【0101】
本発明の前述の特徴、及びその他の特徴は、例示のために限定することなく与えられる、以下の本発明のいくつかの例示的な実施形態についての説明を読むことで、よりよく理解されるであろう。
【実施例0102】
[実施例1:ポリ(ジエチル-cо-ジメチル)シロキサン(50/50)の合成(PDIES-50/50)]
<工程1(工程a)>
まず、ドライアイスを用いて-79℃まで冷却した2Lフラスコに、ジクロロジエチルシラン(SID3402.0-1KG,Gelest,USA)1kgを40~50℃/真空度20mbarで蒸留した。得られたシランは透明な液体であった。
【0103】
ポリ(ジエチル-cо-ジメチル)シロキサン(50/50)の合成は、事前に水から酸素を除去することなく行われた。8Lガラスシリンダーを氷浴(ポリプロピレンボックス)に入れ、0~5℃に冷却した。上記反応器には、最終的なガス発生を確認するためのバブラーが取り付けられていた。氷浴で5℃まで冷却した上記ガラス製反応器に、脱イオン水(3.7L)を加えた。撹拌は200rpmに設定した。次に、ジエチルジクロロシラン306g及びジクロロジメチルシラン(ThermoScientific、ロットA0439125)251.37gを、テフロンバルブを備えたガラスカラムに加えた(ガラスは真空下100℃で乾燥し、わずかなN2フロー下に維持した)。これらのシランを、テフロンバーを用いて混合し、そして毎秒約3滴の速度で上記の3.7L水に滴下した。反応液の温度は5~7℃に維持した。シラン加水分解は300rpmで2時間実施した。
【0104】
続いて、40℃に加熱したポリプロピレン製ウォーターバスに反応器を入れ、反応液の温度が30~35℃になるようにした。シラノールを300rpmでさらに2時間撹拌した。その後、1.5Lのヘプタンを加え、シラノールを水相から分離し、シリコンチューブ(わずかに真空)を用いてHCl(aq)溶液をシラノールオリゴマー層の下に送り出した。シラノールオリゴマーを1Lのヘプタンで抽出し、さらに1.5Lのヘプタンで反応器及び分離漏斗(500ml漏斗)を洗浄した。25gのMgSO4を加え、200rpmで撹拌することでシラノールオリゴマーを乾燥させた。湿ったMgSO4をろ過し、シラノールオリゴマーを窒素下、2Lのヘプタン中で一晩保持した。真空下、ロータリーエバポレーターを用いて有機溶媒を90℃で留去した。シラノールオリゴマー313.2g(理論値369.4g)が得られ、収率は85%であった。2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度:35mPa.s(Viscosimeter Model:VSC-N4(Bioevopeak,China)測定範囲:20~2,000,000mPa.s)。
【0105】
シラノールを2Lのガラスフラスコに入れ、145℃で120分間加熱した(空気、真空なし)。145℃2時間後、25℃まで冷却して(thermostat)、粘度を測定した。粘度は38mPa.sであった。シラノールを窒素でパージし、1L容器内にシリコーン製セプタムで密閉し、-20℃で保存した(水とのさらなる凝縮を防ぐため)。
【0106】
<工程2(工程b)>
工程1で得られたシラノールオリゴマー298gを145℃で15分間加熱し、熱いうちに、気泡の形成が観察されなくなるまで真空(真空度<2mbar)に30分間曝した。次に、シラノールオリゴマーを、シリコンセプタム、マグネチックスターラー、窒素フローを備えた乾燥1Lフラスコに、熱いまま注いだ。続いて、窒素フロー下で、シラノールオリゴマー100gあたり35mgのインジウム(III)トリフレートを添加した。500rpmで攪拌することにより、触媒をシラノールオリゴマー中に分散させた。その後、攪拌せずに、密閉容器内で一晩(17時間)反応を進行させた。粘度の上昇が観察された。翌日、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン触媒(Sigma-Aldrich、#442593)57mgを窒素下で添加し、500rpmで5分間混合して、さらに24時間反応を進行させた。
【0107】
<工程3(工程c)>
トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン触媒(Sigma-Aldrich、#442593)35mgを反応液に加え、続いてビニルジメチルメトキシシラン(AB106075,ABCR-Germany)1.5mlを加えた。反応液を5分間攪拌した後、攪拌せずにさらに5時間反応を続けた。最後に、反応生成物をロータリーエバポレーターに移し、余分なビニルジメチルメトキシシラン及びその他揮発分を95℃/真空度30mbarで留去した。
【0108】
<工程4.触媒除去(工程d)>
工程3で得られたシロキサンポリマーを室温まで冷却し、中性酸化アルミニウム(#199974、Sigma Aldrich)150gをヘプタン600mlとともに加えた。懸濁液を300rpmで20分間撹拌した。次いで、固形分を、セラミックフィルター多孔度2、次に多孔度4、最後に0.45umPTFEフィルターでろ過することで除去した。ロータリーエバポレーターを使用して95℃まで加熱、30mbarの真空まで下げることで溶媒を留去した。最後に、シロキサンポリマーを真空度<1mbar、150℃で1時間加熱した(真空オーブン)。DSCによって-80から200℃の間に有意な質量損失は測定されなかった。
【0109】
2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度:4012mPa.s、Mw=45000g/mоl(Viscosimeter Model:VSC-N4(Bioevopeak、China)測定範囲:20~2,000,000mPa.s)。
【0110】
この材料の2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSCでは、Tg=-139℃(2℃/分、N2)であった(Model:DSC 3,Mettler Toledo,Switzerland)。
【0111】
GPCによる多分散指数(PD)は1.63であった。
【0112】
GPCの条件は以下の通り:
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー):390-MDS検出器(Agilent,USA)に接続されたAgilent 1260 Infinity
屈折率検出器:1260 Infinity RID(Agilent,USA)
加熱ユニットはMistralカラムオーブン(Spark,Netherland)
カラムセットの構成:
1xプレカラム PSS SDV(PSS/Agilent)
2xカラム PSS SDV分析用リニアXL(PSS/Agilent)
ポリマーサンプルは注入前に1mLのトルエンに溶解した。
トルエン,HPLC Plus,HPLC用(#650579-1L,Merck)
実験条件:
- 溶離液:トルエン
- 流速:1mL/分
- 温度:35℃
【0113】
校正は、682~130,000g/molのポリスチレン狭幅標準物質の従来の校正であった。
【0114】
Mw計算に使用したソフトウェアはCirrus GPC Software(Agilent,USA)であった。
【0115】
[実施例2:シリコーンゴムの製造のためのシリコーン配合例]
50g Mw45500g/mоlのシロキサンポリマー(上記工程1~4で合成)
15g SiO2(HDK H2000,Wacker Germany)
7g 1-エチニル-1-シクロヘキサノール,99%(E51406,Sigma-Aldrich)(Pt阻害剤)
140mg Pt触媒*(白金(0)-2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン錯体溶液(Sigma Aldrich,#479543)
1.35g HMS-H271架橋剤(Gelest,USA)(25~30%メチルヒドロ)-ジメチルシロキサンコポリマー、水素化物末端,24~60cSt)
【0116】
ミキサーを用いて成分を2000rpmで混合し、150℃/1時間、または室温で24時間硬化させた。
【0117】
弾性架橋シリコーンゴム(30wt%SiO2)は、Tg=-138℃を有し、2014年5月15日のASTM E1356規格に準拠したDSC(Model:DSC 3,Mettler Toledo,Switzerland)で測定した-150から+250℃の間で結晶化又は融解を示さなかった。ショアA硬度:35~40(2021年7月23日のASTM D2240-15規格に準拠したHBA100-0(Kern,Switzerland)を用いて測定)。破断伸び:348%(1988年9月、H2、AFNOR NF T 46002規格を用いたINSTRON 34TM-10,Franceを用いて測定)。
【0118】
[実施例3:トリエチルシリル末端ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン(50/50)シリコーンオイル]
工程(a):加水分解
4つのインレット、コンデンサー、サイドアーム、ガス抜き用アウトレット、及び,マグネチックスターラー撹拌子を備えた1Lフラスコに、370mlの脱イオン水を満たした。次いで、装置を5℃に冷却し、30.0gのジクロロジエチルシラン(Gelest,SID3402.0,Gelest)及び24.6gのジクロロジメチルシラン(ThermoScientific,#113312500)を、ともに5℃に冷却して混合し、1時間かけて(毎秒3滴の速度で)滴下添加した。反応液を600rpmで撹拌した。その後、反応温度を30℃に上げ、さらに1時間撹拌した。500mlのヘプタンを加え、分離漏斗で水相からシリコーンを分離した。有機相を、pHが中性になるまで脱イオン水で洗浄した。
【0119】
ヘプタン中の反応生成物を1Lフラスコに移し、残留水を50gの無水MgSO4を用いて乾燥させた。生成物を多孔度P4セラミックフィルター及び0.45umPTFEマイクロフィルターを用いてろ過した。ロータリーエバポレーターを使用して、90℃/真空度18mbarまででヘプタン及び揮発分を除去した。室温でさらに1mbarまで真空にしたところ、揮発物は見られなかった。
【0120】
工程(b):鎖延長
生成物を、窒素フロー下でマグネチックスターラー撹拌子を備えた乾燥した100ml丸底フラスコに移した。次に、14mgのIn(III)トリフラートを加え、30分間撹拌した。続いて、2mlの無水トルエン(Sigma Aldrich,#244511)に溶解した14mgのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン触媒(Sigma-Aldrich,#442593)を加えた。反応液をさらに30分間撹拌した。
【0121】
工程(c2):
最後に、トリエチルシラン(Sigma 230197-25G)5ml及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン6.5mgをトルエン1mlに溶解させた。溶液を、泡の発生が止まるまで30分間撹拌した。触媒を400rpmの一定速度で攪拌しながら25gの中性Al2O3に吸着させた。反応液を10分間攪拌した後、ヘプタン200mlを添加し、懸濁液をセラミックP2及びP4フィルターろ過し、次いで0.45umPTFEマイクロフィルターでろ過した。溶媒を90℃/真空度20mbarで留去した後、続いて室温で真空度<1mbarにした。生成物はFTIR及びラマン分光法によって同定された。ガラス転移Tg=-140℃は、窒素フロー下、2℃/分の速度でDSCにより測定した。
【0122】
[実施例4:トリエチルシリル末端ポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサン(50/50)シリコーンオイル(架橋剤)]
工程a):加水分解
4つのインレット、コンデンサー、サイドアーム、ガス抜き用アウトレット、及びマグネチックスターラー撹拌子を備えた1Lフラスコを25℃にてわずかな窒素フローでパージした。次に、22gのジエチルジエトキシシラン(Gelest,SID3404)、そして16.8gのメチルジエトキシシラン(Sigma-Aldrich,#66612)を400rpmの一定速度で攪拌しながら添加した。
【0123】
工程b)及びc1)
最後に、7.5mgのIn(III)トリフラート触媒を、パスツールピペットを用いてモノマー混合物に直接添加し、続いて29℃、400rpmで撹拌しながら、ピペットで脱イオン水11mlを10分間隔で添加した(3×3ml+2ml)。1時間の攪拌後、反応生成物を250mlフラスコに移し、25gの無水MgSO4を加えて水を乾燥させた。生成物を100mlのヘプタンに溶解させ、0.45umのPTFEフィルターを用いて濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて80℃/真空度35mbarまでで揮発分/溶媒を除去した。さらに室温で真空度1mbarまで減圧したところ、揮発物は見られなかった。
【0124】
前工程で得られた反応生成物に、1mlの無水トルエン(Sigma Aldrich,#244511)及び5mlトリエチルシラン(Sigma 230197-25G)に溶解させた4mgのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン触媒(Sigma-Aldrich,#442593)をN2フロー下、400rpmの一定速度で攪拌しながら添加した。溶液は泡の発生が止まるまで30分間撹拌された。ボラン触媒を25gの中性Al2O3に吸着させた。反応液を10分間攪拌(マグネチックテフロン撹拌子)した後、100mlのヘプタンを添加し、懸濁液をセラミックP2及びP4フィルター、次いで0.45umPTFEマイクロフィルターでろ過した。溶媒を90℃/真空度20mbarで留去し、室温で真空度<1mbarにした。生成物(透明な液体)は、FTIR及びラマン分光法によって同定された。ガラス転移Tg=-144.7℃は、窒素フロー下、2℃/分の速度でDSCにより測定した。
【0125】
[実施例5:ポリ(エチル-cо-メチルシロキサン)-PEMSの合成]
工程a(加水分解)
エチルメチルジクロロシラン(#AB111135,ABCR Germany)をそのまま使用した(純度97%)。その外観は透明なピンク色の液体であった。
【0126】
この合成は空気雰囲気で行われた。20Lガラス製反応器を5℃に冷却した。シランの滴下添加に用いた1Lのサイドアームはバブラーを備え、シラン添加中はわずかな窒素フロー下に維持された。脱イオン水(1.4L)は冷却され、クロロシラン添加中は4~6℃に維持された。攪拌は200rpmに設定した。まず、エチルメチルジクロロシラン213.0g(210gの代わりに)を1.4Lの水に滴下した(毎秒3滴)。その後、反応液の温度を30℃まで徐々に上げ、200rpmで2時間30分撹拌した。水面に透明なシラノール層が形成された。
【0127】
シラノールを1.25Lのヘプタンで抽出し、そして250gのMgSO4を用いて乾燥させた。ロータリーエバポレーターを用いて90~95℃でヘプタンを留去し、その後室温でさらに1mbarまで真空にした。得られたシラノールの粘度は31.7mPa.sであった。その後、1Lの丸底フラスコ中のシラノールを145℃のオーブンに20分間入れた。シラノールを室温まで冷却した。続いて、200rpmの一定速度で攪拌しながら100mgのインジウム(III)トリフラートを添加した。その後、週末の間シラノールを重合させた。シリコーン115.0g(理論値131.83g)が得られ、収率は87%であった。
【0128】
工程b(鎖延長)
工程a)で得られたPEMSシラノール50gをIn(III)トリフラート(#422151,Sigma-Aldrich)50mgと混合し、5分間200rpmで撹拌してから週末の間重合させた(撹拌なし)。次いで、真空度30mbar、95℃にてロータリーエバポレーターを用いてシリコーンから水及び揮発分を除去した。次に、シラノールを125gの無水MgSO4と混合して、400mlのヘプタンに溶解した。固体をP4セラミックフィルターで濾過し、95℃でヘプタンを留去した。シラノールを145℃で10分間、真空度1mbarで加熱した。次いで、シラノールを室温まで冷却して、25mgのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、続いて2mlのトルエンを添加して、2分間混合し、N2雰囲気下、シリコンセプタムで密閉した1Lフラスコ内に保持した(攪拌なし)。シラノールを一晩放置して重合させた。
【0129】
工程c1
工程bで得られたシラノールを真空度25mbarで95℃に加熱して、水及び揮発分を除去した。次いで、0.33gのビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン98%(SIV9097.5,Gelest,USA)及び25mgのトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン95%(♯442593,Sigma Aldrich)、続いて2mlのトルエンを添加した。シリコーンを5分間200rpmで混合し、25℃で2時間反応させた。最後に、真空ラインを接続して、95℃、真空度30mbarで揮発分を留去した。シリコーンを200mlのヘキサンで希釈し、25gのAl2O3(中性アルミナ)と混合し、懸濁液を10分間撹拌した。セラミックP4フィルターでろ過し、次いで0.45umPTFEマイクロフィルターでろ過することでアルミナに吸着した触媒を除去した。ロータリーエバポレーターを用いて95℃で溶媒を留去し、乾燥した250mlガラスフラスコにポリマーを移して、真空度1mbarの150℃、次いで170℃に曝した(各20分)。粘度は5500mPa.sであった。
【0130】
得られた物質をDSCで測定した。N2下、2℃/分でTg=-141℃と測定された。FTIR及びラマン測定では、環状生成物は存在しないことが示された。生成物のFTIR及びラマンスペクトルは、B3LYP/6-311G(d,p)レベル)(Gaussian16)で計算されたPEMSスペクトルと一致した。
【0131】
2018年1月25日のASTM E3116-18規格に準拠した粘度:25mPa.s、Mw=2000g/mоl(Viscosimeter Model:VSC-N4(Bioevopeak,China)-測定範囲:20~2,000,000mPa.s)。
【0132】
GPCによる多分散指数(PD)は2.41であった。GPC条件は実施例1と同じである。
【0133】
架橋:PEMSシリコーン5g(工程c1)、SiO2(HDK H2000)1.5g、Pt(0)テトラビニルシクロテトラシロキサン(Sigma Aldrich,#479543)14mg、HMS H271(Gelest,USA)135mgを、35℃/一晩、次いで150℃で20分間。
【0134】
弾性架橋シリコーンゴムは、Tg=-139℃が得られ、-139から+250℃の間では結晶化も融解も起こらなかった。
【0135】
+25から-130℃まで、N2雰囲気下2℃/分で、シリコーンの結晶化は観察されなかった。
50/50ポリ(ジメチル-cо-ジエチル)シロキサン又は50/50ポリ(メチルヒドロ-cо-ジエチル)シロキサンを製造するための方法であることを特徴とする、
請求項2に記載の方法。