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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150404
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】モータ装置を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H02P27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024041378
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】10 2023 108 145.4
(32)【優先日】2023-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン ネミッツ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ウェリング
(57)【要約】      (修正有)
【課題】キャパシタンスに蓄積されたエネルギーを散逸させるための代替的解決策を提案する。
【解決手段】本発明は、モータ装置(1)を動作させる方法に関する。モータ装置は、少なくとも1つの電気モータ(2)と、三相回転電流によってモータを動作させるための電気回路(3)とを備える。モータは、少なくとも3つのコイルを有する固定子を少なくとも1つと、回転子とを有している。回路は、第1電位接続(9)及び第2電位接続(10)を少なくとも有しており、第1電位接続及び第2電位接続は、DC電圧源の異なる電位と接続可能である。電位接続の間には3つのハーフブリッジ(12、13、14)が配置されており、3つのハーフブリッジはそれぞれ、回転電流の相に割り当てられている。コイルはそれぞれ、対応する第1の接続を介して、対応するハーフブリッジと導電接続されており、且つ、対応する第2の接続を介して、他のコイルと導電接続されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ装置(1)を動作させる方法であって、
前記モータ装置(1)は、少なくとも1つの電気モータ(2)と、三相回転電流(4)によって前記モータ(2)を動作させるための電気回路(3)とを備え、
前記モータ(2)は、少なくとも3つのコイル(6、7、8)を有する固定子(5)を少なくとも1つと、回転子とを有しており、
前記回路(3)は、第1電位接続(9)及び第2電位接続(10)を少なくとも有しており、
前記第1電位接続(9)及び前記第2電位接続(10)は、DC電圧源(11)の異なる電位と接続可能であり、
前記電位接続(9、10)の間には3つのハーフブリッジ(12、13、14)が配置されており、
前記3つのハーフブリッジ(12、13、14)はそれぞれ、前記回転電流(4)の相(15、16、17)に割り当てられており、
前記コイル(6、7、8)はそれぞれ、
対応する第1の接続(18)を介して、対応する前記ハーフブリッジ(12、13、14)と導電接続されており、且つ、
対応する第2の接続(19)を介して、前記他のコイル(6、7、8)と導電接続されており、
前記ハーフブリッジ(12、13、14)はそれぞれ、互いに直列に接続された上側スイッチ(20)及び下側スイッチ(21)と、前記スイッチ(20、21)の間の前記第1の接続(18)とを有し、
電気キャパシタンス(22)は、前記ハーフブリッジ(12、13、14)と並列に、前記電位接続(9、10)と接続されており、
前記スイッチ(20、21)はそれぞれ、前記スイッチ(20、21)を介して電流(24)が伝導可能な第1の位置(23)と、電流(24)の伝導が遮断される第2の位置(25)との間で切り換え可能であり、
該方法は、
a)前記回路(3)の第1のスイッチング状態(26)を生成するステップであって、
前記第1のスイッチング状態(26)においては、
前記上側スイッチ(20)のうちの或る上側スイッチ(20)のみが前記第1の位置(23)に配置され、
前記下側スイッチ(21)については、前記或る上側スイッチ(20)と同じハーフブリッジ(12、13、14)に割り当てられた前記下側スイッチ(21)のみが前記第2の位置(25)に配置される、ステップ
を少なくとも含む、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ステップa)は、前記電流(24)が前記電位接続(9、10)から前記或る上側スイッチ(20)に割り当てられた前記相(15、16、17)を介して前記モータ(2)に伝導されるときにのみ行われる、
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記ステップa)に続くステップb)において、
第2のスイッチング状態(27)が生成され、
前記第2のスイッチング状態(27)においては、
前記上側スイッチ(20)のうちの別の上側スイッチ(20)のみが前記第1の位置(23)に配置され、
前記下側スイッチ(21)については、前記別の上側スイッチ(20)と同じハーフブリッジ(12、13、14)に割り当てられた前記下側スイッチ(21)のみが前記第2の位置(25)に配置される、
方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記ステップa)及び前記ステップb)の間の任意の時間に、前記ハーフブリッジ(12、13、14)のうちの1つを介して、前記電位接続(9、10)の導電接続が止められる、
方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記ステップa)が前記第1のスイッチング状態(26)を伴って繰り返され、
その間に第3のスイッチング状態(28)が生成され、
前記第3のスイッチング状態(28)においては、
全ての上側スイッチ(20)が前記第2の位置(25)に配置され、
全ての下側スイッチ(21)が前記第1の位置(23)に配置される、
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記ステップa)及びステップc)がそれぞれ数回実行される期間内において、
前記ステップa)の実行と前記ステップc)の実行との継続時間の比率が最大で0.5である、
方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法であって、
少なくとも前記第1のスイッチング状態(26)は、少なくとも、前記キャパシタンス(22)の放電が必要とされるときに生成される、
方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
少なくとも前記第1のスイッチング状態(26)は、前記電位接続(9、10)の間の電圧が限界値(34)未満に落ちるまで生成される、
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
満充電されたキャパシタンス(22)から開始して、前記第1のスイッチング状態(26)が最初に確立した後に、最大でも2秒後に前記限界値(34)に到達する、
方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するために設定された制御デバイス(29)であって、
該制御デバイス(29)は、アナログ電気スイッチング素子を独占的に有しており、
前記アナログ電気スイッチング素子によって前記少なくとも1つの第1のスイッチング状態(26)が生成可能である、
制御デバイス(29)。
【請求項11】
データ処理用のシステム(30)であって、
該システム(30)は、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法を実行するために適切に設定された手段を有する、
システム(30)。
【請求項12】
自動車(31)であって、
少なくともモータ装置(1)を備え、
前記モータ装置(1)は、
該自動車(31)用のトラクションドライブとしての電気モータ(2)を少なくとも1つと、
三相回転電流(4)によって前記モータ(2)を動作させるための電気回路(3)と
を有しており、
該自動車(31)は、請求項10に記載の制御デバイス(29)又は請求項10に記載のシステム(30)を有する、
自動車(31)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置を動作させる方法に関する。このモータ装置は、少なくとも1つの電気モータと、三相回転電流によってモータを動作させるための電気回路とを備える。モータは、少なくとも3つのコイルを有する固定子を少なくとも1つと、回転子とを有する。
【背景技術】
【0002】
原則として、電気モータは、モータとして、特に発電機として、公知の方式で動作可能である。したがってモータについての記述は、発電機としての動作に適用される。
【0003】
このような回路は、通常、第1電位接続と第2電位接続(例、正極及び接地)とを少なくとも有しており、それらはDC電圧源の異なる電位と接続することができる。電位接続の間に3つのハーフブリッジが配置され、これらのハーフブリッジのそれぞれが三相回転電流の相に割り当てられる。モータの各コイルは、第1の接続を介してハーフブリッジと導電接続されており、且つ、第2の接続を介してその他のコイルと導電接続されている。各ハーフブリッジは、直列に接続された上側スイッチ及び下側スイッチを有し、且つ、それらのスイッチの間に第1の接続を有する。各スイッチは、電流がスイッチを介して伝導可能な第1の位置と、電流の伝導が遮断される第2の位置との間で、切り換え可能である。
【0004】
電気回路の3つのハーフブリッジにより、三相回転電流システム又は多相矩形波電流を生成することが可能となる。このとき、位相は互いに120度ずれている。電流又は相電流のそれぞれは、第1の接続を介してコイルに伝導されるか又はコイルに印加される。コイルは、第2の接続を介して互いに接続されており、これにより、異なる相電流が、スターポイント(共通の第2の接続)で互いに打ち消し合うので、それぞれの他方の電位接続に対する帰線導体(return conductor)を必要としない。
【0005】
特に、公知の方法においては、ハーフブリッジは、上部トランジスタと下部トランジスタからなる装置から構成され、これを介して各電位接続が互いに接続されている。特に、ダイオードがそれぞれのトランジスタと並列に接続されている。この設計は、IGBT-バイポーラB、すなわち絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated-gate bipolar transistor)とも呼ばれる。或いは、両方の方向に電流を伝導可能な金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET、Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いてこの回路を実装することもできる。
【0006】
モータを動作させるために、通常はキャパシタンスが設けられ、このキャパシタンスは電位接続と接続されており且つハーフブリッジに対して並列に配置される。このキャパシタンスはDC電圧源を介して充電され、且つ、モータによって常に十分な電力が引き出され得ることを確実にするように働く。
【0007】
特に自動車において、こうした回路には安全規制が適用される。したがって、例えば自動車をスイッチオフした後又は衝突の後などには、電気部品を直ちに放電する必要があり、少なくともその部品の電圧を例えば60ボルトなどの限界値未満になるまで落とす必要がある。この放電は、所定の期間以内(例えば1.95秒)に行われる必要がある。次いで、おそらくは10ボルト未満までのさらなる放電が必要とされることがある。
【0008】
同時に、回路はスイッチング状態に移行され、ここではモータの各相が共に短絡される。この目的のために、全ての上側スイッチは第2の位置に切り換えられ、且つ、全ての下側スイッチは第1の位置に切り換えられる(これはアクティブ短絡(active short circuit、ASC)とも呼ばれる)。これによってモータを通じて電流が生成される(モータが発電機の役割をする)。この電流は回路に伝導されてモータに戻り、逆トルクが生成されるので、モータは自身を制動する。モータが静止しているときにもこのスイッチング状態が存在しており、その結果、トルクは生成されず、特定の状況下でモータが適切な位置に保持されることができる。
【0009】
キャパシタンスに蓄積されたエネルギーは、今のところは、電気抵抗器によって熱に変換される。この目的のために提供される抵抗器は、温度が過剰になってこの安全装置になんらかの損傷がもたらされないように監視される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、先行技術を関連して考察された問題を少なくとも部分的に解決することである。特に、キャパシタンスに蓄積されたエネルギーを散逸させるための代替的解決策を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の特徴による方法は、これに寄与する。有利なさらなる発展が、従属請求項の主題である。特許請求において個別に列挙された特徴については、技術的に有意な態様で互いに組み合わせることが可能であり、本明細書の説明事項及び図面の内容によって補足することが可能である。ここでは、本発明の更なる実施形態を示す。
【0012】
モータ装置を動作させる方法を提案する。モータ装置は、少なくとも1つの電気モータと、三相回転電流によってモータを動作させるための電気回路とを備える。モータは、少なくとも3つのコイルを有する固定子を少なくとも1つと、回転子とを有する。特に、本方法は、二相のシステムにも実装可能であるが、一般的に使用される三相のシステムをここでは参照する。
【0013】
回路は、第1電位接続及び第2電位接続を少なくとも有しており、第1電位接続及び第2電位接続は、DC電圧源の異なる電位(例、正極及び接地)と接続可能であるか、又は、接続されている。電位接続同士の間には3つのハーフブリッジが配置されており、3つのハーフブリッジはそれぞれ、回転電流の相に割り当てられている。モータ又は固定子のコイルはそれぞれ、第1の接続を介してハーフブリッジと導電接続されており、且つ、第2の接続(共通のスターポイント)を介して他のコイルと導電接続されている。ハーフブリッジはそれぞれ、互いに直列に接続された上側スイッチ及び下側スイッチと、スイッチの間の第1の接続(18)とを有する。
【0014】
電気キャパシタンスは、各電位接続と接続されており、ハーフブリッジに並列に配置されている。
【0015】
スイッチはそれぞれ、スイッチを介して電流が伝導可能な第1の位置と、電流の伝導が遮断される第2の位置との間で切り換え可能である。
【0016】
本方法は、a)回路の第1のスイッチング状態(26)を生成するステップであって、第1のスイッチング状態(26)においては、上側スイッチ(20)のうちの或る上側スイッチのみが第1の位置に配置され、下側スイッチについては、或る上側スイッチと同じハーフブリッジに割り当てられた下側スイッチのみが第2の位置に配置される、ステップを少なくとも含む。
【0017】
原則として、電気モータは、モータとして、特に発電機として、公知の方式で動作可能である。したがってモータについての記述は、発電機としての動作に適用される。モータは、いずれの特定の構成にも限定されない。
【0018】
特に、電気モータは10ワットから500キロワット(定格出力)の電力消費(すなわち最大駆動力)を有する。しかし、他のモータも、提案される方法と連携して使用可能である。
【0019】
電気回路の3つのハーフブリッジにより、特に三相回転電流システム又は多相矩形波電流を生成することが可能となる。このとき、位相は互いに120度ずれている。電流又は相電流のそれぞれは、第1の接続を介してコイルに伝導されるか又はコイルに印加される。コイルは、第2の接続を介して互いに接続されており、これにより、異なる相電流が、スターポイント(共通の第2の接続)で互いに打ち消し合うので、それぞれの他方の電位接続に対する帰線導体(return conductor)を必要としない。
【0020】
特に、ハーフブリッジは、上部トランジスタ(上側スイッチ)と下部トランジスタ(下側スイッチ)からなる装置から構成され、公知の方法においては、これを介して各電位接続が互いに接続されている。特に、ダイオードがそれぞれのトランジスタと並列に接続されている。この設計は、IGBT-バイポーラB、すなわち絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated-gate bipolar transistor)とも呼ばれる。或いは、両方の方向に電流を伝導可能な金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET、Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)を用いてこの回路を実装することもできる。また、記載される機能を果たす他のスイッチング素子を用いることができる。
【0021】
特に、各ハーフブリッジは第1のスイッチとしての少なくとも1つの上側トランジスタ(高圧側トランジスタ)と、下側スイッチとしての1つの下側トランジスタ(低圧側トランジスタ)とを有することによって、これらのトランジスタは互いに導電接続される。上側トランジスタは第1電位接続と導電接続されており、下側トランジスタは第2電位接続と導電接続されている。ハーフブリッジはそれぞれ、上側トランジスタと下側トランジスタとの間に接点を有しており、この接点を介して、対応する第1の接続がそれぞれのハーフブリッジと接続可能となる。
【0022】
したがって、この回路は、第1のハーフブリッジと、第2のハーフブリッジと、第3のハーフブリッジとを有する。
【0023】
キャパシタンスは、特に1つのコンデンサ又は複数のコンデンサによって実現される。例えば自動車において、キャパシタンスは、エンジンの性能と、目下の要件とに関連して設計される。キャパシタンスは、例えば200~1,000μF[マイクロファラド]とすることができ、好ましくは350~750μF、特に好ましくは約500μFとすることができる。
【0024】
例えば自動車用の、こうした回路に対する安全規制が存在する。したがって、例えば自動車をスイッチオフした後又は衝突の後などには、電気部品を直ちに放電する必要があり、少なくともその部品の電圧を例えば60ボルトなどの限界値未満になるまで落とす必要がある。この放電は、所定の期間以内(例えば1.95秒)に行われる必要がある。次いで、おそらくは10ボルト未満までのさらなる放電が必要とされることがある。特にこの放電は、例えば特に300ボルトより高い動作電圧から開始されて行われる。
【0025】
さらに、同時に、回路はスイッチング状態に移行されるべきであり、ここではモータの各相が共に短絡される(いわゆる安全状態)。公知の回路においては、全ての上側スイッチは第2の位置に切り換えられ、且つ、全ての下側スイッチは第1の位置に切り換えられる(又はその逆であり、すなわち全ての上側スイッチが第1の位置にされ、且つ、全ての下側スイッチが第2の位置にされる)。これによってモータを通じて電流が生成される(モータが発電機の役割をする)。この電流は回路(ハーフブリッジの下側スイッチ)に伝導されてモータに戻り、逆トルクが生成されるので、モータは自身を制動する。モータが静止しているときにもこのスイッチング状態が存在しており、その結果、トルクは生成されず、特定の状況下でモータが適切な位置に保持されることができる。
【0026】
キャパシタンスに蓄積されたエネルギーは、今のところは、熱に変換されており、この変換は、この目的のために特別に設計された電気抵抗器を用いた公知の回路又は方法において行われる。この目的のために提供される抵抗器は、温度が過剰にならないように且つ安全装置を結果として損傷させることがないように確実にするために監視される必要がある。これまでにもモータ巻線を介した放電が可能であったが、上述の「安全状態」を同時に維持することを伴わないものではなかった。
【0027】
ここで、これらの電気抵抗器を特別な方法に置き換えること、又は、それらの機能を少なくとも部分的にこの特別な方法に引き継がせることが提案される。キャパシタンスに蓄積されたエネルギーは、モータによって、特にその電気抵抗又はインピーダンスによって変換される。この方法は、特にモータが回転しているとき(すなわち、固定子に対して回転子が回転しているとき)に用いられる。
【0028】
ステップa)によると、(特にモータの回転中に)回路の第1のスイッチング状態が生成され、それによってこの第1のスイッチング状態においては、例えば第1のハーフブリッジの上側スイッチのみが第1の位置に配置される。それ以外(第2及び第3)のハーフブリッジの上側スイッチは、第2の位置に配置される。この第1のスイッチング状態において、第1のハーフブリッジの下側スイッチのみが第2の位置に配置され、それ以外(第2及び第3)のハーフブリッジの下側スイッチは第1の位置に配置される。
【0029】
この第1のスイッチング状態の結果として(加えて、後に導入される第2のスイッチング状態の結果として)、エネルギーはキャパシタンスからモータへと連続的に散逸され得る。次いで、このエネルギーはモータによって連続的に変換され、この変換は、例えばモータが自身の速度を落とすための逆トルクを生成することや、モータの電気抵抗又はインピーダンスなどによって行われる。
【0030】
特に、ステップa)(又はステップb))は、(回転子又はモータの回転中に)電流が電位接続からこの上側スイッチに割り当てられた相を介してモータに伝導されるときにのみ行われる。特に、そうでないときには基本的に公知の第3のスイッチング状態が存在し、ここでは全ての上側スイッチが第2の位置にあり、且つ、全ての下側スイッチが第1の位置にある(又はその逆である)。特に、キャパシタンスからエネルギーを散逸させるために、第1のスイッチング状態と第3のスイッチング状態との間を行き来するスイッチングが行われる。
【0031】
特に、インバータとモータとの間に電流が流れるのは、例えば、車両が動いているときや、まだ動いているときに安全状態に切り換わってモータがまだ回転しているときのみである。
【0032】
モータが静止しているときは、モータとインバータとの間に電流が流れない。しかし、記載される方法はコンデンサとモータとの間のスイッチを開き、その電圧差によってコンデンサからモータに少量の電流が流される。
【0033】
特に、ステップa)に続くステップb)において、第2のスイッチング状態が生成され、第2のスイッチング状態においては、上側スイッチのうちの(第1のスイッチング状態とは)別の上側スイッチのみが第1の位置に配置され、下側スイッチについては、別の上側スイッチと同じハーフブリッジ(12、13、14)に割り当てられた下側スイッチのみが第2の位置に配置される。別の上側スイッチはそれぞれ第2の位置に配置され、且つ、別の下側スイッチはそれぞれ第1の位置(23)に配置される。
【0034】
したがってこの方法は、ステップa)の後にステップb)を実行することを含み、この第2のスイッチング状態において、例えば、第1のハーフブリッジの上側スイッチが第1のスイッチング状態で第1の位置に配置された場合、第2のハーフブリッジの上側スイッチのみが第1の位置に配置される。それ以外(第1及び第3)のハーフブリッジの上側スイッチは、第2の位置に配置される。さらに、この第2のスイッチング状態において、第2のハーフブリッジの下側スイッチのみが第2の位置に配置され、それ以外(第1及び第3)のハーフブリッジの下側スイッチは第1の位置に配置される。
【0035】
特に、ステップa)及びステップb)の間の時間では、ハーフブリッジのうちの1つを介して電位接続は行われない。したがって、ステップa)及びステップb)の間の任意の時間に、ハーフブリッジのうちの1つを介して、電位接続の導電接続が止められる。
【0036】
特に、ステップa)及びb)は繰り返し実行されるものであり、特に交互に実行される。特に、少なくとも2つ又は3つ全ての上側又は下側スイッチが記載のとおりに切り換えられる(第1及び第2の位置を行き来する)。
【0037】
第1のスイッチング状態と第2のスイッチング状態との間ごとに第3のスイッチング状態が生成される。第3のスイッチング状態においては、全ての上側スイッチが第2の位置に配置され、且つ、全ての下側スイッチが第1の位置に配置される。しかしながら、特に、第1のスイッチング状態と第2のスイッチング状態との間を行き来するスイッチングが行うことができる。
【0038】
特に、ステップa)は第1のスイッチング状態で繰り返され、すなわち(第2のスイッチング状態を確立せずに)数回連続して実行され、その間(すなわち第1のスイッチング状態同士の間)に、ある第3のスイッチング状態(又は前述の第3のスイッチング状態)が確立される。ここでは全ての上側スイッチが第2の位置に配置され、且つ、全ての下側スイッチが低い位置に配置される。
【0039】
特に、ステップa)及びc)、又は、ステップa)、b)、及びc)は、モータのそれぞれの(その時点の)回転速度(以後は電気モータ周波数とも呼ばれる)に依存するタイミングで、(特に交互に)実行される。特に、前述のステップは、モータの速度よりも少なくとも2倍、特に少なくとも5倍、好ましくは少なくとも8倍、又は10倍も高いクロック速度(周波数)にて実行される。これらのステップのクロック周波数は、例えば2~40kHz[キロヘルツ]の範囲、好ましくは8~20kHz、又は好ましくは約10kHzである。
【0040】
モータ相を介してキャパシタンスを放電すること(ステップa)及びb))と、モータ相のアクティブ短絡を維持すること(ステップc))との間において、クロック速度及び周波数の少なくとも一方が高いことにより、高いモータ速度においてもアクティブ短絡の電気的機能を維持することができる。
【0041】
特に、ステップa)及びb)の実行と、ステップc)の実行との比率は、最大で1対2、すなわち最大で0.5(よってステップc)が2倍長く存在する)、特に最大で1対4(すなわち最大で0.25)、好ましくは最大で1対5(すなわち最大で0.2)である。このとき、ステップa)及びb)の実行とは、すなわち、ステップa)及びb)の少なくとも一方によるスイッチング状態が存在する時間の合計の期間の範囲である。また、ステップc)の実行とは、すなわち、スイッチング状態c)が存在する時間の合計の期間の範囲である。特に、この比率は1対2(すなわち0.5)から1対10(すなわち0.1)の範囲であるか、好ましくは1対3(すなわち約0.33)から1対7(すなわち約0.14)の範囲であるか、特に好ましくは1対4(すなわち0.25)から1対5(すなわち0.2)の範囲である。この期間は特に、ステップa)又はステップb)又はその両方及びステップc)が数回実行され、特に各々が少なくとも5回実行されるか又は少なくとも10回も実行される期間である。
【0042】
特に、少なくとも第1のスイッチング状態は、少なくとも(又は独占的に)キャパシタンスの放電が必要とされるときに生成され、それは例えば自動車においてスイッチオフの後又は衝突の後に電気部品の即時放電を行う必要があるときなどである。特に、DC電圧源はもはや回路と接続されないので、キャパシタンスからのエネルギーのみがモータを介して散逸される(又は散逸される必要がある)。
【0043】
特に、電位接続の間の電圧が限界値未満に落ちるまで、少なくとも第1のスイッチング状態は(又は記載された方式の記載された別のスイッチング状態も)繰り返し生成される。限界値は特に100ボルト未満、好ましくは60ボルトである。
【0044】
特に、満充電されたキャパシタンス(少なくとも1つのコンデンサ等から形成されたもの)から開始して、少なくとも第1のスイッチング状態が最初に確立した後に、最大でも2秒後に、特に最大でも1.95秒後に限界値(34)に到達する。
【0045】
本方法は、モータの早い回転速度(回転子の回転速度が少なくとも9,000rpm、好ましくは少なくとも10,000rpm、特に好ましくは約10,500rpm)において、且つ、DC電圧源の接続/切断を問わず、実行可能であるので、部品の1つにおいて回路に許容できない温度上昇が起こらないことが示されている。
【0046】
また、本方法は、モータが静止している(回転子速度が0rpmに等しい)ときにも、DC電圧源の接続/切断を問わず実行可能であるので、任意の部品において回路に許容できない温度上昇が起こらないことが示されている。
【0047】
DC電圧源が切断されている場合、満充電されたキャパシタンスは、要求される時間内に限界値以下に低減することができる。
【0048】
さらに、本方法を実行するために設定された制御デバイスを提案する。制御デバイスは、アナログ電気スイッチング素子(信号発生器、増幅器、論理演算器、ゲート等)を独占的に有しており、アナログ電気スイッチング素子によって少なくとも1つの第1のスイッチング状態が生成可能である。特に、前述の第1のスイッチング状態はすべて、制御デバイスによって生成可能である。特に、制御デバイスは、固定子に対する回転子の回転によって生成された、モータからの信号を使用する。
【0049】
特に、回転子の位置、すなわち回転子が何回回転されたかによる位置が、決まっているか又は既知であることが必要である。これによって、相が互いに対して切り換えられる方向又は切り換えられる必要がある方向を定めることが可能になる。この目的のためにいくつかの信号が使用可能であり、例えばモータ(例、モータの位置)から取り出すことができる。例えば、(インバータとモータとの間の)相における電流も測定して使用することができる。他のシステムにおいてこれに対するさらなる可能性が存在し、それらは原則として公知である。
【0050】
特に、制御デバイスは、本方法に従って電気回路を動作可能な態様で、装備され、構成され、又は、プログラムされている。
【0051】
したがって、制御デバイスは、本方法がハードウェアによって独占的に実行されることを可能にする。
【0052】
また、データ処理用のシステムを提案する。このシステムは、本方法を実行するように適切に構成された手段を有する。
【0053】
この手段は、例えば、プロセッサと、プロセッサにより実行される命令を格納するメモリとを有する。さらに、データ伝送路又は伝送装置とを有し、これらは、命令、計測値、データ又は同様のものを、前述の構成要素間で伝送できるようにする。
【0054】
特に、「手段」については、コントローラ、マイクロコントローラ、データメモリ、データリンク、ディスプレイ装置(ディスプレイ等)、カウンター又はタイマー、少なくとも1つの他のセンサー、エネルギー源のうちの1つ又は複数が挙げられる。
【0055】
コンピュータにより実行する場合に、このコンピュータに前述の本方法又は前述の本方法のステップを実施させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体を、さらに提案する。
【0056】
特に、システムは、ソフトウェアによって、このように、本方法を少なくとも部分的に実行可能にする。特に、システムは、固定子に対する回転子の回転によって生成された、モータからの信号を使用する。
【0057】
上記で説明されたとおり、特に、回転子の位置、すなわち回転子が何回回転されたかによる位置が、決まっているか又は既知であることが必要である。これによって、相が互いに対して切り換えられる方向又は切り換えられる必要がある方向を定めることが可能になる。この目的のためにいくつかの信号が使用可能であり、例えばモータ(例、モータの位置)から取り出すことができる。例えば、(インバータとモータとの間の)相における電流も測定して使用することができる。他のシステムにおいてこれに対するさらなる可能性が存在し、それらは原則として公知である。
【0058】
自動車をさらに提案する。この自動車はモータ装置を少なくとも備えており、このモータ装置は、自動車用のトラクションドライブとしての電気モータを少なくとも1つと、三相回転電流によってモータを動作させるための電気回路とを有し、この自動車は、記載される制御デバイス又はシステムを有する。
【0059】
自動車は、特に、乗用車、トラック、列車、ロボット、ドローンなどとして設計可能である。
【0060】
本方法の実施形態は、特に、自動車、制御デバイス、データ処理用のシステム、コンピュータ実装方法(即ち、コンピュータプログラム及びコンピュータ可読記憶媒体)の少なくとも1つに転用可能であり、その逆も同様である。
【0061】
疑義を回避するために言えば、本明細書において使用する序数詞(「第1」、「第2」、等)は、主として、幾つかの同じような対象物、数値、ステップを区別するため(のみ)に供されるものであり、即ち、特に、これらの序数詞が、これら対象物、数値、ステップの、互いに対する任意の依存関係や順序を必ずしも定めるものでない。依存関係や順序が必要である場合には、このことは本明細書に明記されるか、又は、実際に記載されている構成を精査することにより、当業者にとって明らかになる。
【0062】
以下で、図を参照して、本発明及び技術的背景をより詳細に説明する。例示する実施形態により本発明が限定されることを意図したものではないことに留意すべきである。特段の記載のない限り、特に、図で説明する技術内容の部分的特長を抽出し、それらを他の構成要素及び本明細書から得られる知見と組み合わせることも可能である。同一の参照符号は同一の対象を指し、したがって、他の図からの説明を併せて利用してもよい。図は概略的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】公知のモータ装置及び公知の動作方法を概略的に示した図である。
図2図1によるモータ装置の簡略化した表現を概略的に示した図である。
図3】回路が第1のスイッチング状態であるモータ装置を概略的に示した図である。
図4図3におけるモータ装置の別の表現を概略的に示した図である。
図5】第1の図表を概略的に示した図である。
図6】第2の図表を概略的に示した図である。
図7】回路が第2のスイッチング状態である、図3及び図4におけるモータ装置を、概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、公知のモータ装置1及び公知の動作方法を示す。図2は、図1によるモータ装置1の簡略化した表現を示す。以下においては、図1及び図2をともに説明する。
【0065】
モータ装置1は、電気モータ2と、電気回路3とを備え、この電気モータ2は、3つのコイル6、7、8を有する固定子5と、回転子(図示せず)とを有する。モータ2は、電気回路3を介して動作可能である。
【0066】
電気モータ2を駆動するための公知の電気回路3は、第1電位接続9及び第2電位接続10を有しており、これらの電位接続はDC電圧源11の異なる電位(例、正極及び接地)と接続されている。電位接続9、10の間には3つのハーフブリッジ12、13、14が設けられている。電気モータ2のコイル6、7、8はそれぞれ、対応する第1の接続18を介して、対応するハーフブリッジ12、13、14と導電接続されており、且つ、対応する第2の接続19を介して、他のコイル6、7、8と導電接続されている。
【0067】
電気回路3の3つのハーフブリッジ12、13、14は、三相回転電流システム、すなわち、三相電流4を生成することが可能とする。このとき、位相15、16、17は互いに120度ずれている。位相15、16、17はそれぞれ、第1の接続18を介してコイル6、7、8に伝送される。コイル6、7、8は、第2の接続19を介して互いに接続されており、これにより、三相電流4の異なる位相15、16、17がスターポイントにおいて互いに打ち消し合うので、他方の電位接続9、10に対する帰線導体(return conductor)を必要としない。
【0068】
ハーフブリッジ12、13、14は、公知の方法においては、上側スイッチ20としての上部トランジスタと、下側スイッチ21としての下部トランジスタとからなる装置から構成され、これを介して各電位接続9、10が互いに接続されている。ダイオードがそれぞれのトランジスタと並列に接続されている(図1を参照)。第1の接続18は、それぞれのハーフブリッジ12、13、14と電気的に接続されている。
【0069】
図2の例示(さらに図3及び図7)においては、トランジスタ及びダイオード、又は、上側スイッチ20及び下側スイッチ21は、個々のスイッチとして簡略化された形態で示される。コイル6、7、8はそれぞれ、電気抵抗器R及び電気的インダクタンスLによって形成される。
【0070】
モータ2を動作させるために、通常はキャパシタンス22が設けられ、このキャパシタンス22はハーフブリッジ12、13、14と並列に、電位接続9、10と接続されている。このキャパシタンス22はDC電圧源11を介して充電され、且つ、モータ2によって常に十分な電力が引き出され得ることを確実にするように働く。
【0071】
特に自動車31において、こうした回路3には安全規制が適用される。したがって、例えば自動車31をスイッチオフした後又は衝突の後などには、例えばキャパシタンス22などの電気部品の即時放電を行う必要があり、少なくともその部品の電圧33(図6を参照)が例えば60ボルトなどの限界値34未満に落ちるまで行う必要がある。この放電は、所定の期間以内に行われる必要がある。
【0072】
同時に、回路3は(第3の)スイッチング状態28に移行され、ここではモータ2の各位相15、16、17が共に短絡される。この目的のために、全ての上側スイッチ20は第2の位置25に切り換えられ、且つ、全ての下側スイッチ21は第1の位置23に切り換えられ、それによってモータ2の位相15、16、17が短絡される。これによってモータ2を通じて電流24が生成される(モータ2が発電機の役割をする)。この電流24は回路3に伝導されてモータ2に戻り、逆トルクが生成されるので、モータ2は自身を制動する。
【0073】
キャパシタンス22に蓄積されたエネルギーは、以前は、電気抵抗器(ここでは不図示、少なくとも1つの抵抗器がキャパシタンス22と並列に接続されている)によって熱に変換される。この目的のために提供される抵抗器は、温度が過剰になってこの安全装置になんらかの損傷がもたらされないように監視される必要がある。
【0074】
図1及び図2に示される第3のスイッチング状態28において、全ての上側スイッチ20は第2の位置25にあり、且つ、全ての下側スイッチ21は第1の位置23にある。
【0075】
図3は、回路3が第1のスイッチング状態26であるモータ装置1を示している。図4は、異なる位置における、図3によるモータ装置1を示している。以下においては、図3及び図4をともに説明する。図1及び図2の説明を参照する。
【0076】
図3の例示においては、トランジスタ及びダイオード、又は、上側スイッチ20及び下側スイッチ21は、個々のスイッチとして簡略化された形態で示される。
【0077】
モータ装置1は、電気モータと、三相回転電流4によってモータ2を動作させるための電気回路3とを備える。モータ2は、3つのコイル6、7、8を有する固定子5と、回転子(図示せず)とを有する。
【0078】
回路3は、第1電位接続9及び第2電位接続10を有しており、これらの電位接続はDC電圧源11の異なる電位(例、正極及び接地)と接続される。電位接続9、10の間には3つのハーフブリッジ12、13、14が配置されており、これらのハーフブリッジそれぞれは、三相電流4の相15、16、17に割り当てられている。モータ2又は固定子5の各コイル6、7、8は、第1の接続18を介して、それぞれが対応するハーフブリッジ12、13、14と導電接続されており、且つ、それぞれの第2の接続19(共通のスターポイント)を介して、その他のコイル6、7、8と導電接続されている。各ハーフブリッジ12、13、14は、互いに直列に接続された上側スイッチ20及び下側スイッチ21と、これらのスイッチ20、21の間の第1の接続18とを有する。
【0079】
電気キャパシタンス22(コンデンサ)は、ハーフブリッジ12、13、14と並列に、電位接続9、10と接続されている。
【0080】
各スイッチ20、21は、スイッチ20、21を介して電流24が伝導可能な第1の位置23と、電流4の伝導が遮断される第2の位置25との間で切り換え可能である。
【0081】
ここでは、図1及び図2に関連して記載される電気抵抗器を特別な方法に置き換えること、又はそれらの機能を少なくとも部分的にこの特別な方法に引き継がせることが提案される。キャパシタンス22に蓄積されたエネルギーは、モータ2によって、特にその電気抵抗又はインピーダンスによって変換される。
【0082】
ステップa)によると、回路3の第1のスイッチング状態26が生成され、それによってこの第1のスイッチング状態26においては、第3のハーフブリッジ14の上側スイッチ20のみが第1の位置23に配置される。それ以外の第1及び第2のハーフブリッジ12、13の上側スイッチ20は、第2の位置25に配置される。さらに、この第1のスイッチング状態26において、下側スイッチ21については、第3のハーフブリッジ14の下側スイッチ21のみが第2の位置25に配置され、それ以外の第1及び第2のハーフブリッジ12、13の下側スイッチ21は第1の位置20に配置される。
【0083】
この第1のスイッチング状態26の結果として(加えて、図7に示す第2のスイッチング状態27も通じて)、エネルギーはキャパシタンス22からモータ2へと連続的に散逸され得る。次いで、このエネルギーはモータ2によって連続的に変換され、この変換は、例えばモータ2が自身の速度を落とすための逆トルクを生成することや、モータ2の電気抵抗又はインピーダンスなどによって行われる。
【0084】
図4は、モータ装置1が自動車31の一部であることを示しており、このモータ装置1は、自動車31に対するトラクションドライブとしての電気モータ2を少なくとも1つと、三相回転電流4によってモータ2を動作させるための電気回路3とを有しており、それによって自動車31は制御デバイス29又はシステム30を有する。
【0085】
制御デバイス29を介して、アナログ電気スイッチング素子を独占的に介して、スイッチ20、21を始動することができ、それによって異なるスイッチング状態26、27、28を生成可能である。制御デバイス29は、固定子5に対する回転子の回転によって生成されるモータ2からの信号を用いる。
【0086】
図5は第1の図表を示している。縦軸には三相電流4がアンペアにてプロットされている。横軸には時間32が秒にてプロットされている。示される曲線は第1の相15、第2の相16、及び第3の相17を表す。
【0087】
図3及び図4に示されるモータ装置1の第1のスイッチング状態26の間の相15、16、及び17の曲線が示されている。これらの信号(相15、16、17の曲線)は、特に、インバータとモータ2との間の相15、16、17において検出可能であり、例えば接続18などにおいて検出可能である。
【0088】
電気回路3の3つのハーフブリッジ12、13、14により、三相回転電流4又は多相矩形波電流を生成することが可能となる。このとき、相15、16、17は互いに対して120度ずれている。電流4又は相電流それぞれは、第1の接続18を介してコイル6、7、8に伝導されるか、又は、コイル6、7、8に印加されるか、又は、その両方である。
【0089】
ステップa)による第1のスイッチング状態26は、電流24が電位接続8、9から第1のハーフブリッジ12のこの上側スイッチ20に割り当てられた第1の相15を介してモータ2に伝導されるときに、回転子又はモータ2の回転中にのみ生じる。特に、そうでないときには基本的に公知の第3のスイッチング状態28が存在し、ここでは全ての上側スイッチ20が第2の位置25に配置され、且つ全ての下側スイッチ21が第1の位置23に配置される。したがって、キャパシタンス22からエネルギーを散逸させるために、第1のスイッチング状態26と第3のスイッチング状態28との間を行き来するスイッチングが行われる。散逸されたエネルギー、又は、キャパシタンス22からモータ2に散逸された電流4は、ここではそれぞれ斜線区域として示される。
【0090】
図6は第2の図表を示す。縦軸には電圧33がボルトにてプロットされている。横軸には時間32が秒にてプロットされている。示される曲線は、第1のスイッチング状態26が最初に及び次いで繰り返し生成されてすぐの電圧33の降下を表す。60ボルトの限界値34は0.34秒以内に到達されることが分かる。
【0091】
電圧33は、キャパシタンス22において、すなわち電位接続9、10の間で決まる(DC電圧源11は切断されている)。
【0092】
図7は、回路が第2のスイッチング状態27である、図3及び図4におけるモータ装置を示している。図1~6、特に図3及び図4に関する記載を参照する。
【0093】
ステップb)において、第2のスイッチング状態27が生成され、それによって上側スイッチ20のうちの(第1のスイッチング状態26とは)別の上側スイッチ20のみ、ここでは第2のハーフブリッジ13の上側スイッチ20のみが第1の位置23に配置され、下側スイッチ21については、第2のハーフブリッジ13に割り当てられた下側スイッチ21のみが第2の位置25に配置される。第1及び第3のハーフブリッジ12、14に対応する別の上側スイッチ20はそれぞれ第2の位置25に配置され、且つ、第1及び第3のハーフブリッジ12、14に対応する別の下側スイッチ21はそれぞれ第1の位置25に配置される。
【符号の説明】
【0094】
1 モータ装置
2 モータ
3 回路
4 三相電流
5 固定子
6 第1のコイル
7 第2のコイル
8 第3のコイル
9 第1電位接続
10 第2電位接続
11 DC電圧源
12 第1のハーフブリッジ
13 第2のハーフブリッジ
14 第3のハーフブリッジ
15 第1の相
16 第2の相
17 第3の相
18 第1の接続
19 第2の接続
20 上側スイッチ
21 下側スイッチ
22 キャパシタンス
23 第1の位置
24 電流
25 第2の位置
26 第1のスイッチング状態
27 第2のスイッチング状態
28 第3のスイッチング状態
29 制御デバイス
30 システム
31 自動車
32 時間
33 電圧
34 限界値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ装置(1)を動作させる方法であって、
前記モータ装置(1)は、少なくとも1つの電気モータ(2)と、三相回転電流(4)によって前記モータ(2)を動作させるための電気回路(3)とを備え、
前記モータ(2)は、少なくとも3つのコイル(6、7、8)を有する固定子(5)を少なくとも1つと、回転子とを有しており、
前記回路(3)は、第1電位接続(9)及び第2電位接続(10)を少なくとも有しており、
前記第1電位接続(9)及び前記第2電位接続(10)は、DC電圧源(11)の異なる電位と接続可能であり、
前記電位接続(9、10)の間には3つのハーフブリッジ(12、13、14)が配置されており、
前記3つのハーフブリッジ(12、13、14)はそれぞれ、前記回転電流(4)の相(15、16、17)に割り当てられており、
前記コイル(6、7、8)はそれぞれ、
対応する第1の接続(18)を介して、対応する前記ハーフブリッジ(12、13、14)と導電接続されており、且つ、
対応する第2の接続(19)を介して、前記他のコイル(6、7、8)と導電接続されており、
前記ハーフブリッジ(12、13、14)はそれぞれ、互いに直列に接続された上側スイッチ(20)及び下側スイッチ(21)と、前記スイッチ(20、21)の間の前記第1の接続(18)とを有し、
電気キャパシタンス(22)は、前記ハーフブリッジ(12、13、14)と並列に、前記電位接続(9、10)と接続されており、
前記スイッチ(20、21)はそれぞれ、前記スイッチ(20、21)を介して電流(24)が伝導可能な第1の位置(23)と、電流(24)の伝導が遮断される第2の位置(25)との間で切り換え可能であり、
該方法は、
a)前記回路(3)の第1のスイッチング状態(26)を生成するステップであって、
前記第1のスイッチング状態(26)においては、
前記上側スイッチ(20)のうちの或る上側スイッチ(20)のみが前記第1の位置(23)に配置され、
前記下側スイッチ(21)については、前記或る上側スイッチ(20)と同じハーフブリッジ(12、13、14)に割り当てられた前記下側スイッチ(21)のみが前記第2の位置(25)に配置される、ステップ
を少なくとも含む、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ステップa)は、前記電流(24)が前記電位接続(9、10)から前記或る上側スイッチ(20)に割り当てられた前記相(15、16、17)を介して前記モータ(2)に伝導されるときにのみ行われる、
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記ステップa)に続くステップb)において、
第2のスイッチング状態(27)が生成され、
前記第2のスイッチング状態(27)においては、
前記上側スイッチ(20)のうちの別の上側スイッチ(20)のみが前記第1の位置(23)に配置され、
前記下側スイッチ(21)については、前記別の上側スイッチ(20)と同じハーフブリッジ(12、13、14)に割り当てられた前記下側スイッチ(21)のみが前記第2の位置(25)に配置される、
方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記ステップa)及び前記ステップb)の間の任意の時間に、前記ハーフブリッジ(12、13、14)のうちの1つを介して、前記電位接続(9、10)の導電接続が止められる、
方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記ステップa)が前記第1のスイッチング状態(26)を伴って繰り返され、
その間に第3のスイッチング状態(28)が生成され、
前記第3のスイッチング状態(28)においては、
全ての上側スイッチ(20)が前記第2の位置(25)に配置され、
全ての下側スイッチ(21)が前記第1の位置(23)に配置される、
方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記ステップa)及びステップc)がそれぞれ数回実行される期間内において、
前記ステップa)の実行と前記ステップc)の実行との継続時間の比率が最大で0.5である、
方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の方法であって、
少なくとも前記第1のスイッチング状態(26)は、少なくとも、前記キャパシタンス(22)の放電が必要とされるときに生成される、
方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
少なくとも前記第1のスイッチング状態(26)は、前記電位接続(9、10)の間の電圧が限界値(34)未満に落ちるまで生成される、
方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
満充電されたキャパシタンス(22)から開始して、前記第1のスイッチング状態(26)が最初に確立した後に、最大でも2秒後に前記限界値(34)に到達する、
方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法を実行するために設定された制御デバイス(29)であって、
該制御デバイス(29)は、アナログ電気スイッチング素子を独占的に有しており、
前記アナログ電気スイッチング素子によって前記少なくとも1つの第1のスイッチング状態(26)が生成可能である、
制御デバイス(29)。
【請求項11】
データ処理用のシステム(30)であって、
該システム(30)は、請求項に記載の方法を実行するために適切に設定された手段を有する、
システム(30)。
【請求項12】
自動車(31)であって、
少なくともモータ装置(1)を備え、
前記モータ装置(1)は、
該自動車(31)用のトラクションドライブとしての電気モータ(2)を少なくとも1つと、
三相回転電流(4)によって前記モータ(2)を動作させるための電気回路(3)と
を有しており、
該自動車(31)は、請求項10に記載の制御デバイス(29)又は請求項11に記載のシステム(30)を有する、
自動車(31)。
【外国語明細書】