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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150406
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】X線陰極シールド
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20241016BHJP
   H01J 35/10 20060101ALI20241016BHJP
   H01J 35/14 20060101ALI20241016BHJP
   H01J 35/16 20060101ALI20241016BHJP
   H05G 1/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01J35/06 E
H01J35/06 C
H01J35/10 A
H01J35/14
H01J35/16
H05G1/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024045806
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】18/296,943
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・エス・クルーズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】X線イメージングシステムの陰極のための様々な方法及びシステムが提供される。
【解決手段】一実施例では、陰極用のシールドアセンブリは、第1のシールド部及び第2のシールド部を含み、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、物理的に直接接触しないように互いに間隔を置いて配置される。一実施例では、第1のシールド部はディスクシールド(365)と陰極マスク(362)を含み、第2のシールド部(304)は陰極の下部延長体(420)を囲む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極用のシールドアセンブリであって、
第1のシールド部及び第2のシールド部を含み、
前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、物理的に直接接触しないように互いに間隔を置いて配置されている、シールドアセンブリ。
【請求項2】
前記第1のシールド部は、ディスクシールドと陰極マスクとを含み、前記第2のシールド部は前記陰極の下部延長体を囲む、請求項1に記載のシールドアセンブリ。
【請求項3】
前記ディスクシールドは、湾曲したリップを有する実質的に凹状のディスクを含み、前記陰極マスクは、陰極カップを受けるように構成された中央開口部を含む、請求項2に記載のシールドアセンブリ。
【請求項4】
前記ディスクシールドは第1の切り抜き部を含み、陰極カップが前記第1の切り抜き部から突出し、前記第1の切り抜き部は略長方形であり、前記ディスクシールドの中心からずれている、請求項2に記載のシールドアセンブリ。
【請求項5】
前記第2のシールド部は略リング形状である、請求項1に記載のシールドアセンブリ。
【請求項6】
前記陰極マスクは、長方形の延長部を有する柱形状である、請求項2に記載のシールドアセンブリ。
【請求項7】
前記第2のシールド部は、第1の円形開口部側にフレア状リップを有するとともに、対向する第2の円形開口部側に平坦なリムを有するリング状部材である、請求項1に記載のシールドアセンブリ。
【請求項8】
前記ディスクシールド及び前記陰極マスクは、一体的に形成された単一の連続部材である、請求項2記載のシールドアセンブリ。
【請求項9】
X線装置用の陰極アセンブリであって、
集束要素を収容する陰極カップ、
前記陰極カップを絶縁体に結合する下部延長体であって、電気リード線を囲む下部延長体、及び
第1のシールド部及び第2のシールド部を含む陰極シールドアセンブリであって、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、物理的に直接接触しないように互いに間隔を空けて配置されている、陰極シールドアセンブリ
を含む陰極アセンブリ。
【請求項10】
前記第1のシールド部はディスクシールド及び陰極マスクを含み、前記第2のシールド部は前記下部延長体を囲む、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項11】
前記第1のシールド部と前記第2のシールド部との間にギャップ間隔を含み、前記ギャップ間隔は、前記陰極カップの後面と前記下部延長体の一部を露出させる、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項12】
前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、電解研磨されたニッケルから形成されている、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項13】
前記陰極カップは、前記下部延長体に、傾斜するように取り付けられている、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項14】
前記集束要素は、2つ以上のコイル状フィラメントを含む、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項15】
前記ディスクシールドは、湾曲したリップを有する略凹状のディスクを含み、前記陰極マスクは、前記陰極カップを受け入れるように構成された中央開口部を有し、前記第2のシールド部は、略リング形状である、請求項10に記載の陰極アセンブリ。
【請求項16】
イメージングシステムであって、
集電極アセンブリ、
陽極アセンブリ、
電子ビームを前記陽極アセンブリに集束させるように構成された陰極アセンブリ、及び
フレームであって、前記集電極アセンブリ、前記陽極アセンブリ、及び陰極アセンブリの少なくとも一部を収容するフレーム
を含み、
前記陰極アセンブリは、下部延長体に取り付けられた陰極カップと、陰極シールドアセンブリとを含み、前記陰極シールドアセンブリは、第1のシールド部及び第2のシールド部を含み、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、接触しないように、互いに間隔を空けて配置されている、イメージングシステム。
【請求項17】
前記第1のシールド部はディスクシールド及び陰極マスクを含み、前記第2のシールド部は前記下部延長体を囲む、請求項16に記載のイメージングシステム。
【請求項18】
前記陰極シールドアセンブリは、前記陰極カップの、電界応力強度が強度の閾値より小さく、前記フレームに対するビューファクタが放射率の閾値より大きい部分を露出させる、請求項16に記載のイメージングシステム。
【請求項19】
前記集電極アセンブリは、前記陽極アセンブリによって生成されたX線が放出される窓と、前記イメージングシステム内で後方散乱電子を吸収するための電子コレクタとを含む、請求項16に記載のイメージングシステム。
【請求項20】
前記陽極アセンブリは、前記電子ビームが集束されるターゲット、ロータ、及び軸受アームを含む、請求項16に記載のイメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される対象の実施形態は、イメージングシステム(例えば、X線イメージングシステム)用の陰極に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管では、真空中において電子を電界で陰極から陽極に加速することによって電離放射線が発生する。電子は、電流が流れる陰極のフィラメントから発生する。フィラメントは、電流が流れることによって加熱され、陰極から電子を解放し、陽極に向かって電子を加速することができる。異なる電圧の電流によって加熱される追加のフィラメントを使用して、陽極に向かって電子ビームを集束させ、X線放出スポットのサイズと位置に影響を与えることができる。陰極は、高電圧の安定性を維持するために、外面にシールド要素(例えば、電解研磨されたシールドなど)を備えて構成することができる。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態では、陰極用のシールドアセンブリは、第1のシールド部及び第2のシールド部を含み、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、物理的に直接接触しないように互いに間隔を空けて配置されている。
【0004】
上記の概要は、発明を実施するための形態にさらに記載される概念を簡略化した形式で導入するために提供されていることを理解されたい。上記の概要は、特許請求される対象の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される対象の範囲は、発明を実施するための形態とは別の特許請求の範囲によって独自に画定される。さらに、特許請求される対象は、上記で指摘された欠点又は本開示のいずれかの部分で指摘された欠点を解決する実施態様に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明は、添付の図面を参照しながら、以下の非限定的な実施形態の説明を読むことにより、更に理解することができる。
図1】イメージングシステムの一例のブロック図を示す。
図2図1のイメージングシステムに含むことができるX線管の一部断面図の概略を示す。
図3図1のイメージングシステムに含むことができる陰極の第1の斜視図を示す。
図4図3の陰極の第1の断面図を示す。
図5図3の陰極の第2の斜視図を示す。
図6図3の陰極の第3の斜視図を示す。
図7図3の陰極の第2の断面図を示す。
図8図3の陰極に含まれるシールド部品の第1の例を示す。
図9A図3の陰極に含まれるシールド部品の第1の例の断面図を示す。
図9B図9Aに示されたシールド部品の断面の拡大図を示す。
図10図3の陰極に含まれるシールド部品の第2の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の記載は、X線管の陰極の様々な実施形態に関する。X線管は、X線イメージングシステムに含まれており、そのブロック図の一例が図1に示されている。X線イメージングシステムは、インターベンショナルX線イメージングシステム、X線透視イメージングシステム、マンモグラフィイメージングシステム、固定式又は移動式のX線撮影(RAD)イメージングシステム、断層撮影イメージングシステム、コンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステム等とすることができる。X線イメージングシステムは、照射X線ビームを発生するX線源(例えば、X線管)を含んでいる。X線管の断面概略図が図2に示されている。図2のX線管は、真空フレーム内に収容された陽極アセンブリと陰極アセンブリとを含んでいる。陰極アセンブリは、図3図10にさらに詳細に示すように、1つ又は複数の陰極のフィラメントを収容する陰極カップと、電気リード線によって陰極カップを高電圧電源に機械的に結合する下部延長体と、陰極シールドとを含んでいる。
【0007】
図3は陰極の斜視図であり、シールドアセンブリが含まれている。図4は、陰極の断面を示し、シールドアセンブリを構成するシールド部の位置及び形状が示されている。シールドアセンブリは、第1のシールド部と第2のシールド部とを含んでいる。第1のシールド部分及び第2のシールド部分は、第1のシールド部分と第2のシールド部分とが直接物理的に接触しないように、間隔を置いて配置されている。一実施例では、第1のシールド部分は陰極マスクとディスクシールドを含み、第2のシールド部分は陰極の下部延長体を囲んでいる。図5は、シールドアセンブリの背面斜視図であり、陰極のシールドされていない部分が示されている。背面図は、低電界強度の領域における陰極シールドの背面ギャップを示しており、このギャップによって、ビューファクタ(view factor)が増加し、陰極の全体的な温度が低下する。図6は、陰極マスクの例示的な集束部を含むシールドアセンブリの斜視図である。図7は、開示された陰極シールドアセンブリの一例の断面斜視図である。図8は、開示された陰極シールドの一例の斜視図である。図9Aは、開示された陰極シールドの一例の断面を示す。図9Bは、図9Aに示す断面の詳細を示す。図10は、陰極の下部延長体を囲むことができる第2のシールドの一例を示す。図3図10は大まかな縮尺で示されているが、他の相対寸法を用いてもよい。
【0008】
イメージングシステム(X線イメージングシステムなど)でスマート陰極を使用して、コイル状フィラメントに対して集束手段を実現し、電極の機能によって実質的に無数の焦点の形状及びサイズを実現することができる。スマート陰極は、様々な撮影サービスを提供するように構成することができる。例えば、スマート陰極は、診断の用途及び介入の用途のために構成することができる。後者では、比較的長い時間コイル状フィラメントに電流を流すことが行われる。スマート陰極は、1つ又は複数のコイル状フィラメントを含むことができ、各コイル状フィラメントは、用途に適した電流範囲が与えられるように異なるサイズを有している。一般的に、高電圧の安定性を維持するために、及び、望ましくない場所に発生する電子放出電界応力が低減されるようにするために、陰極シールド要素が備えられる。例えば、スマート陰極用の陰極アセンブリは、後方散乱電子が電気リード、コイル状フィラメント及び集束要素、並びに陰極アセンブリの電界応力の影響を受けやすい他の構成要素に到達するのを防止するように構成された一体型陰極シールドを含むことができる。
【0009】
しかし、従来のスマート陰極システムには課題がある。例えば、陰極を動作させると大量の熱が発生する。陰極の構成要素は、例えば、セラミック絶縁体及び電気リード線を含んでおり、温度の影響を受けやすく、陰極の構成要素が十分に劣化する恐れのある温度閾値を超える場合がある。一部の例では、陰極の出力密度と適切な陰極温度を維持することとの間にトレードオフが存在する。陰極を完全に覆うシールドでは、温度の影響を受けやすい構成要素の周囲に廃熱が集中することにより、問題が悪化する恐れがある。時間の経過とともに、熱ストレスによって部品を交換する又は装置を廃棄することにつながり、点検時間とオペレータコストを増加させる恐れがある。別の課題として、スマート陰極は1つ又は複数のコイル状フィラメントを含む場合があるため、1つ又は複数のコイル状フィラメントのそれぞれのサイズに対して陰極シールドを最適化しないと、複数のコイル状フィラメントのうちの1つ以上のコイル状フィラメントの電界が遮断され、集束能力が損失する恐れがある。同様に、過度に電界が集束すると、画質が損われる恐れがある。
【0010】
したがって、上述の問題に少なくとも部分的に対処するために、本明細書に陰極シールドが開示されている。一実施例では、陰極シールドアセンブリは、第1のシールド部と第2のシールド部とを含んでおり、第1のシールド部及び第2のシールド部は、第1のシールド部及び第2のシールド部が物理的に直接接触しないように互いに間隔を置いて配置されている。一例では、第1のシールド部は陰極マスク及びディスクシールドを含み、第2のシールド部は下部延長体を囲んでいる。ディスクシールドの形状によって、ターゲットが発生する熱及び高電圧が、影響を受けやすい構成要素(セラミック絶縁体及び電気リード線など)に到達するのを遮断する。陰極マスクは、陰極カップの構成要素(ボルト及び溶接部など)又は高電圧を安定にするための他の締結機構をシールドし、1つ又は複数のコイル状フィラメントから放出される電子を集束させる。下部延長体シールドは、影響を受けやすい構成要素(電気的機能部分及び溶接部など)を覆い、第2のシールド部と第1のシールド部との間のギャップの間隔を通じて放射伝熱を可能にしている。このようなシールドアセンブリによって高電圧の安定性が保証されるが、多くの放射熱がフレームに直接伝達されるようにすることができる。放射伝熱が増加すると、陰極の構成要素の温度が下がり、温度の影響を受けやすい構成要素(電気リード線及びセラミック絶縁体など)に伝達する伝導熱の量が減少する。熱の低減は、インターベンションの用途で特に価値があり、HVCの信頼性要件を長くし、フィラメントの「通電」時間を長くすることができる。
【0011】
別の実施例では、陰極カップを受け入れるように構成されたU字形中央開口部を含む陰極マスクを備えた陰極用シールドが開示されており、U字形中央開口部の外周縁は、丸みを帯びた縁部を含んでいる。一実施例では、開示された陰極マスクの中央開口部をU字形にする要因は、丸みを帯びた縁部と、陰極カップに配置された1つ又は複数のコイル状フィラメントとの間の差が同じような差(例えば、概ね同じような差)に維持されるからである。一実施例では、丸みを帯びた縁部は、陰極マスクの端部における局所的な電子放出電界応力を低減するように調整される端移行部である。このようなシールドは、スマート陰極に含むことができるコイル状フィラメントのサイズ及び強度に対して、高電圧の安定性を高め、集束場を増加させるという利点を有する。
【0012】
本明細書に開示されたスマート陰極用のシールドの技術的利点は、熱伝達を増加させることによって、陰極管の出力能を高めることができることである。本明細書に開示されるシールドの別の技術的利点は、陰極マスクの外周縁をコイル状フィラメントのサイズに調整することによって電子集束能力が向上することである。開示されたシールド部品の形状は、さらに、高電圧の信頼性の向上にも寄与する。商業的な利点としては、出力密度の向上による陰極管の低コスト化の可能性や、パッケージングの小型化の可能性が挙げられる。その他の利点としては、点検時間の短縮とそれに伴う作業者コストの削減が挙げられる。
【0013】
陰極とフレームとの間の放射熱伝達が増大するとともに集束部を有するシールドアセンブリを備えたスマート陰極システムについてさらに説明する前に、陰極を実装することができる例示的なイメージングシステムを示す。図1を参照すると、イメージングシステム10の一実施形態のブロック図が示されており、イメージングシステム10は、例示的な実施形態に従って、原画像データを取得することと、表示する及び/又は解析することができるように画像データを処理することとの両方を実行するように構成されている。様々な実施形態が、X線管を実装する多数のX線イメージングシステム(X線ラジオグラフィ(RAD)イメージングシステム、X線マンモグラフィイメージングシステム、透視イメージングシステム、断層イメージングシステム、又はCTイメージングシステムなど)に適用可能であることが理解される。イメージングシステム10に関する以下の説明は、そのような実装形態の一例に過ぎず、モダリティに関して限定することを意図するものではない。
【0014】
図1に示すように、イメージングシステム10は、物体16を透過するX線ビーム14を投射するように構成されたX線装置又はX線源12を含んでいる。物体16としては、被検体、手荷物、又は走査される他の物体を挙げることができる。X線源12は、典型的には30keVから200keVの範囲のエネルギースペクトルを有するX線14を発生する従来のX線管とすることができる。X線14は、物体16を透過し、減衰した後、検出器アセンブリ18に衝突する。検出器アセンブリ18の各検出器モジュールは、衝突するX線ビーム、したがって物体16を通過したときの減衰ビームの強度を表すアナログ電気信号を生成する。一実施形態では、検出器アセンブリ18は、シンチレータを使用した検出器アセンブリであるが、直接変換型の検出器(例えば、CdTe、CZT、Siの検出器など)が実装されることも考えられる。
【0015】
プロセッサ20は、検出器アセンブリ18からの信号を受け取り、スキャンされている物体16に対応する画像を生成する。コンピュータ22は、オペレータが、オペレータコンソール24を使用して、走査パラメータを制御し、生成された画像を見ることができるように、プロセッサ20とやり取りする。すなわち、オペレータコンソール24は、何らかの形態のオペレータインターフェース(キーボード、マウス、音声起動コントローラ、又は他の適切な入力装置であって、オペレータがイメージングシステム10を制御し、コンピュータ22からの再構成された画像又は他のデータを表示装置26で見ることができるようにするための任意の他の適切な入力装置など)を含む。さらに、オペレータコンソール24は、オペレータが、生成された画像を、ハードドライブ、フロッピーディスク、コンパクトディスク等を含むことができる記憶装置28に記憶することができるようにする。オペレータは、オペレータコンソール24を使用して、電力及びタイミング信号をX線源12に供給する線源コントローラ30を制御するための指令及び命令をコンピュータ22に供給することもできる。
【0016】
図2は、図1のイメージングシステムに含まれるX線装置又はX線源200の概略断面図を示す。例えば、X線源200は、図1のX線源12の例示的な実施形態であり、陽極アセンブリ42と、陰極アセンブリ44と、コレクタアセンブリ82とを含むX線管40によって形成することができる。示された複数の図の間で比べることができるように、基準軸のセット201が図示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。X線管40は、陽極アセンブリ42、陰極アセンブリ44、及びコレクタアセンブリ82によって構成され、筐体又はフレーム46内に支持されている。フレームは、陽極アセンブリ42、陰極アセンブリ44、及びコレクタアセンブリ82の少なくとも一部を収容する。フレーム46は、ターゲット66を有する陽極48と、軸受アセンブリ50と、陰極52とを収容する。フレーム46は、周囲に比べて比較的低圧(例えば真空)の領域を画定しており、この領域では高電圧が発生する。さらに、フレーム46は、冷却媒体(油など)で満たされたケーシング(図示せず)内に配置することができ、このケーシングも高電圧絶縁体を備えている。上記の説明では、ターゲット66を構成する陽極48は、X線管40の共通の構成要素であるとしたが、陽極48及びターゲット66は、X線管の代替の実施形態では別個の構成要素であってもよい。
【0017】
動作においては、電子ビームは、陰極アセンブリ44によって生成される。特に、陰極52は、一連の電気リード線56を通じて1つ又は複数の電気信号を受け取る。電子ビームは、陰極52と陽極48のターゲット66との間の空間54を進む。電気信号は、陰極52に1つ又は複数のエネルギー及び1つ又は複数の周波数の電子ビームを放出させるタイミング/制御信号とすることができる。電気信号は、陰極52と陽極48との間の電位を少なくとも部分的に制御することもできる。陰極52は主絶縁シェル(central insulating shell)58を含んでおり、絶縁シェル58からマスク60が延在している。マスク60は電気リード線56を囲み、この電気リード線56はマスク60の端部に取り付けられた陰極カップ62まで延在している。一部の例では、陰極カップ62は、陰極カップ62内のフィラメントから放出された電子を集束させて電子ビームを形成する静電レンズとして機能する。
【0018】
陰極52の外面(例えば、マスク60及び陰極カップ62の表面)は、陰極52の高電位とフレーム46の接地面との間の高い電界応力に耐えることができるシールドで覆われている。一実施例では、シールドは第1のシールド部202と第2のシールド部204とを含んでいる。本実施例では、第1のシールド部202と第2のシールド部204は間隔を空けて配置され、物理的に直接には接触していない。一実施例では、第1のシールド部202はディスクシールドと陰極マスクを含むことができ、第2のシールド部204はマスク60を囲むことができる。第1のシールド部202及び第2のシールド部204の例が、図3図10に更に詳細に示されている。一実施例では、X線源200の概略図に示されているように、第1のシールド部202は一体的に形成された単一の連続部材である。例えば、第1のシールド部202を構成するディスクシールドと陰極マスクとを接合する溶接又は継ぎ目がないようにすることができる。第1のシールド部202はモノリシック構造とすることができる。他の例では、第1のシールド部202を構成するディスクシールドと陰極マスクは別々に形成され、陰極アセンブリに溶接されてもよい。
【0019】
電子ビームの高速電子は、陰極52とターゲット66との間の電位差(例えば、CT用途の場合には6万(60,000)ボルト以上の電位差)によって陰極52から陽極48に形成されたターゲット66に向かって進み、急激に減速したときに、X線64が生成される。集束電極アセンブリ82は、電子コレクタ84と窓68とを含むことができ、陽極アセンブリ42によって生成されたX線64は、窓68を通過して放出される。電子コレクタ84は、窓68をフレーム46の所定の位置に保持し、さらに後方散乱電子を吸収することができる。X線64は、フレーム46に形成された窓68を通過して、検出器アレイ(図1の検出器アセンブリ18など)に向かって放出される。
【0020】
陽極アセンブリ42は、ロータ72と、X線管40の外側に配置されたステータであって、動作中に陽極48の回転を引き起こすためのロータ72を囲むステータ(図示せず)とを含んでいる。陽極48は、軸受アーム又は軸受アセンブリ50によって回転できるように支持されており、この軸受アーム又は軸受アセンブリ50が回転すると、陽極48はその中心線70を中心に回転する。このように、中心線70は陽極48と軸受アセンブリ50の回転軸を定めている。図示のように、陽極48は環状の形状を有し、陽極48中心には軸受アセンブリ50を受け入れるための円形の開口部74が備えられている。
【0021】
陽極48は、複数の金属又は合金(タングステン、モリブデン、銅、又は電子が衝突したときに制動輻射(例えば、減速放射線)に寄与する任意の材料など)を含むように製造することができる。陽極48のターゲット66は、陽極48に衝突する電子によって発生する熱に耐えるように、比較的高い耐火率を有するように選択することができる。さらに、陰極アセンブリ44と陽極48との間の空間は、他の原子との電子衝突を最小にし、電位を最大にするために、真空にすることができる。
【0022】
電子が衝突したときの陽極48の過熱を回避するために、ロータ72は、中心線70を中心として陽極48を高速(例えば、90~250Hz)で回転する。フレーム46内での陽極48の回転に加えて、CTの用途では、X線管40の全体が、典型的には1Hz又はそれ以上の速度で、物体(図1のイメージングシステム10の物体16など)の周りを回転する。
【0023】
軸受アセンブリ50の異なる実施形態は、複数の適切なボール軸受などで形成することができるが、図示された例示的な実施形態では、軸受アセンブリ50は、図1のイメージングシステム10内での動作に適切な耐荷重性を有し音響ノイズレベルが許容可能な液体金属動圧軸受を含んでいる。
【0024】
一般に、軸受アセンブリ50は、静止構成要素(中央シャフト76など)と回転部分(陽極48が取り付けられるスリーブ78など)とを含んでいる。中央シャフト76は、軸受アセンブリ50の静止部品として図2で説明され、スリーブ78は、軸受アセンブリ50の回転部品として説明されるが、本開示の実施形態は、中央シャフト76が回転シャフトであり、スリーブ78が静止部品である実施形態にも適用可能である。このような構成では、中央シャフト76が回転すると陽極48が回転すると考えられる。
【0025】
中央シャフト76は、任意選択で、キャビティ又は冷媒流路80を含むことができ、キャビティ又は冷媒流路80には、油などの冷媒(図示せず)が流れて、軸受アセンブリ50を冷却することができる。このように、冷媒によって、X線管40の陽極48で発生した熱を陽極48から取り出し、X線管40の外部に移動させることができる。また、ストラドル形式で取り付けられるX線管の構成では、冷媒流路80は、X線管40の長手方向の長さに沿って(例えば、中心線70に沿って)延在している。代替的な実施形態では、X線管40をイメージングシステムに配置する場合にX線管40がカンチレバー形式で支持される構成などでは、冷媒流路80をX線管40の一部のみに形成することができる。
【0026】
上述したように、高電圧の安定性を維持し、フレームに伝達される熱が増加し、強度が異なる1つ以上のコイル状フィラメントに対して電子場の集束が最適化された陰極シールドが望まれる。本明細書に記載されるシールドは、従来のスマート陰極と比較して、高電圧の安定性が向上し、使用可能な寿命を長くすることができる。一例では、陰極シールドアセンブリは、第1のシールド部と第2のシールド部とを含み、第1のシールド部及び第2のシールド部は、第1のシールド部と第2のシールド部が物理的に直接接触しないように、間隔を空けて配置されている。このような陰極シールドは、低電界応力と高熱の影響を受けやすい陰極領域からの放射熱伝達を増加させながら、高電界応力領域をシールドする。一実施例では、第1のシールド部は陰極マスクとディスクシールドとを含んでおり、第2のシールド部は陰極の下部延長体を囲む。一実施例では、ディスクシールドは、湾曲したリップと切り抜き部とを有する実質的に凹状のディスクであり、陰極の一部(例えば、陰極カップ)が、その切り抜き部から突出している。切り抜き部は、ディスクシールドの中心からずれた実質的に長方形の切り抜き部とすることができる。陰極マスクは、陰極カップを受け入れるように構成されたU字形中央開口部を含んでいる。一実施例では、U字形中央開口部の外周縁は丸みを帯びた縁部を含んでいる。U字形中央開口部は、陰極の1つ以上のコイル状フィラメントを集束させるために形成された複数の半径による曲がった部分を含むことができる。丸みを帯びた縁部は、中央開口部の外周縁の電界応力を低減するように形成された曲げ角度を有することができる。
【0027】
シールド部の位置及び形状によって、電子放出電界応力が低い領域においてビューファクタを増加させると同時に、高電圧の安定性に寄与し、光学的観点と静電学的観点とのバランスがとられている。例えば、第1のシールド部の形状によって、電界応力をシールドのODに集中させ、第1のシールド部と第2のシールド部との間のギャップ間隔によって陰極の電界応力の低い部分を露出させることができる。したがって、本明細書に記載されたシステムでは、完全に覆われたシールドを有する従来の陰極と比較して、構成要素の温度が低下した陰極を得ることができ、高電圧の安定性が向上し、電界集束が調整されていることによって画質が向上する。従って、陰極の使用可能寿命が相対的に増加し、部品交換や点検時間を短縮することができる。
【0028】
図3は、陰極アセンブリ300の斜視図を示し、この陰極アセンブリ300は、図2の陰極アセンブリ44の一実施形態とすることができる。陰極アセンブリ300において、図2のX線管40の構成要素と等価な構成要素には、同様の符号が付されている。示された図の間で比較できるように基準軸のセット301が示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。x軸は横軸(lateral axis)と呼ばれることがあり、z軸は縦軸(vertical axis)と呼ばれることがあり、y軸は長軸(longitudinal axis)と呼ばれることがある。
【0029】
上述したように、陰極アセンブリ300は陰極から電子を放出し、電子は、陽極アセンブリ(例えば、図2の陽極アセンブリ42)によって受け取られ、X線を発生させる。陰極アセンブリ300は、大きい絶縁体358と、下部延長体405(図4参照)と、陰極カップ62を含む陰極52とを含むことができる。大きい絶縁体358は、中央絶縁シェル58と同等なものとすることができ、下部延長体405は、図3を参照して説明したようなマスク60と同等なものとすることができる。
【0030】
陰極カップ62は、集束要素と1つ又は複数のコイル状フィラメントとを含むことができる。一実施例では、集束要素は、少なくとも1つのチャネルであって、熱電子フィラメントがチャネルに配置できるような大きさを有する少なくとも1つのチャネルと、少なくとも1つのチャネルの横方向に位置する少なくとも1つの集束部とを有する単一の連続的な構造とすることができる。一実施例では、集束要素の集束部及びチャネルは、線形角度(linear angle)で接する角部とは対照的に、丸みを帯びた角部及び縁部、並びに滑らかな幾何学形状を有することができる。一実施例では、集束要素は複数のコイル状フィラメントを有することができる。図示の例では、集束要素375が、図3図4に簡略化して示されており、図6図7には詳細に示されており、集束要素375は、放出された電子を集束して単一の電子ビームにする幾何学的形状を有する少なくとも3つのチャネルの各チャネルに電子放出フィラメントが配置された連続的な単一構造(例えば、モノリシック構造)のグリッド電極として構成することができる。集束要素375には、第1のフィラメント376、第2のフィラメント378、及び第3のフィラメント380が組み込まれている。3つのフィラメントの間の間隔は、これらのフィラメントの各フィラメントのサイズと強度に基づいて調整することができる。一例では、集束要素375は、3つのフィラメントの間の間隔を考慮して、(例えば、Y軸から見下ろしたときに)実質的に長方形の形状を有する。集束要素375は、集束要素の側部が集束要素の中央部と比較して高くなるように、(例えば、z軸から見下ろしたときに)U字形状又は鉢形状を有していてもよい。図2を参照して先に説明したように、陰極アセンブリ300は、1つ又は複数のコイル状フィラメントの各コイル状フィラメントから、様々なエネルギーレベルで電子をターゲット(例えば、図2のターゲット66)に与えることができる。陰極カップ62は、陰極シールドアセンブリによって部分的に囲まれている。
【0031】
一実施例では、陰極シールドアセンブリは、第1のシールド部302と第2のシールド部304とを含んでおり、第1のシールド部302は、第2のシールド部304から間隔をあけて配置されており、第1のシールド部302と第2のシールド部304は接触していない。第1のシールド部302は、第1のシールド部202と同一又は類似のものとすることができ、第2のシールド部304は、(図2を参照して説明された)第2のシールド部204と同一又は類似のものとすることができる。第1のシールド部302と第2のシールド部304は、第1のシールド部302と第2のシールド部304との間のギャップ間隔だけ離れるようにすることができ、これについては後述の図4を参照して説明する。以下でさらに詳細に説明するように、第1のシールド部302は、ディスクシールド365と陰極マスク362とを有している。第2のシールド部304は、下部延長体405を囲んでいる。第2のシールド部304はリング形状とすることができる。一実施例では、ディスクシールド365は陰極カップ62を受け入れるための切り抜き部又は開口部を含み、ディスクシールド365の一部は下部延長体405に機械的に確実に結合されている。陰極カップ62は陰極マスク362によって部分的に囲まれている。第1のシールド部302と第2のシールド部304は、協働して、陰極52の構成要素(フィラメント、集束要素、電気リード線など)を高温及び後方散乱電子から保護し、高電圧の安定性を実現して、同時に、フレーム46への放射熱伝達を増加させることができる。
【0032】
ディスクシールド365は、実質的に凹状且つ実質的にディスク形状とすることができる。ディスクシールド365は、第1の外面322を有することができる。第1の外面322は、湾曲したリップ310と、平坦領域312と、湾曲したリップ310と平坦領域312との間の傾斜移行部314とを含むことができる。一例では、湾曲したリップ310及び傾斜移行部314は、平坦領域312に向かって、z軸に対して下方に傾斜している。また、湾曲したリップ310は、z軸に関して下方に進み、表面316を形成することができる。表面316は湾曲したリップ310の一部であり、中心軸317の周りに半径方向に広がる。第1の外面322は、中心軸317を中心とした面とすることができる。一実施例では、ディスクシールド365は第1の切り抜き部を含むことができ、第1の切り抜き部は、第1の外面322の開口部、第1の内面404の開口部(図4参照)、及び第1の切り抜き面324によって画定することができる。一実施例では、第1の切り抜き部は、ディスクシールド365の中心からずれた実質的に長方形の切り抜き部とすることができる。例えば、第1の切り抜き部は、陰極アセンブリ300を長手方向に二等分する第1の中心線315の上方に位置することができる。ディスクシールド365の形状は、図4図7を参照して以下に更に詳細に記載されている。
【0033】
一実施例では、陰極カップ62は、第1の切り抜き部を貫通して突出することができ、陰極マスク362は陰極カップ62を受け入れることができる。陰極マスク362は、長方形の延長部326を有する実質的に柱状の形状を有することができる。陰極マスク362は、第2の外面330及び第2の内面434を含んでいる(図4参照)。一実施例では、第2の外面330と第1の外面322は、第1のシールド部302の連続した一体の面を形成する。一実施例では、実質的に柱状で長方形の延長部326は、前面パネル332に対して垂直に配置された複数の側壁328を含んでおり、側壁328と前面パネル332は鋭いエッジにならないように接している。言い換えれば、陰極マスクの形状は、側壁と、前面パネルと、長方形の延長部との間の移行部において丸みを帯びた縁部を有している。陰極マスク362は、第2の外面330の開口部と、第2の内面434の開口部(図4参照)と、リップ又は外周縁338とによって画定することができる中央開口部340を有している。
【0034】
一実施例では、陰極マスク362は、陰極カップ62の集束要素375とコイル状フィラメントとを収容するように形成されている。例えば、長方形の延長部326は集束要素375を囲っている。陰極マスク362は、集束要素375に配置された複数のコイル状フィラメント(例えば、第1のフィラメント376、第2のフィラメント378、及び第3のフィラメント380など)の各コイル状フィラメントと中央開口部340の外周縁338との間を同等の距離に維持するように形成することができる。一実施例では、中央開口部340は、(例えば、z軸から見下ろしたときに)U字形状で構成され、外周縁338は丸みを帯びた縁部を構成することができる。U字形状及び丸みを帯びた縁部は、光学及び電気静電のバランスをとるように調整することができる陰極マスク362の集束部の一例である。陰極マスク362の形状及び集束部については、図4図9Bを参照して以下でさらに詳細に記載される。
【0035】
図4は、図3の破線4-4に沿うラテラル切断によって形状が示された図3の陰極アセンブリ300の断面図400を示す。同様の構成要素には、図3と同様の符号が付されている。示された複数の図の間で比べることができるように、基準軸のセット401が図示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。
【0036】
断面図400は、陰極カップ62と、大きい絶縁体358と、下部延長体405と、陰極52を部分的に囲み第1のシールド部302及び第2のシールド部304を含む陰極シールドとを示している。陰極カップ62は、複数の電気リード(図示せず)を含んでいる。下部延長体405は、陰極カップ62を大きい絶縁体358に結合し、複数の高電圧ケーブル56(概略的に示す)を囲んでいる。複数の高電圧ケーブル56は、複数の電気リード線を高圧電源に結合する。ディスクシールド365は、下部延長体405の面462に結合することができ、陰極マスク362は、陰極カップ62に結合することができるとともに、陰極カップ62を部分的にシールドすることができ、第2のシールド部304は、下部延長体405の周りにスリーブ又はリングを形成することができる。
【0037】
陰極カップ62は、更に、ベース444、絶縁体446、及び溶接パッド448を含むことができる。陰極カップ62は、絶縁体446を(例えば、ろう付けによって)ベース444及び溶接パッド448にそれぞれ結合するために使用することができる1つ又は複数のろう付けホイルを含むことができる。一実施例では、絶縁体446はセラミック絶縁体(例えば、セラミックで形成された絶縁体)とすることができる。他の例では、絶縁体446は、溶接パッド448からベース444を十分に絶縁する材料で形成することができる。絶縁体446は、中央が空洞で長方形のリング形状を有することができる。例えば、絶縁体446は、縁部が湾曲した長方形の形状を有し、絶縁体446の中心に、湾曲した縁部を有する長方形の切り抜き部を有することができる。ベース444は金属(例えば、ニッケル、鋼、コバール、又はニオブなど)で形成することができ、第1のレベル444aと第2のレベル444bとを含む連続的な段付き構造を有することができる。複数の電気リード線は、ベース444の後面426に結合する。溶接パッド448は、直線状の縁部を接続する丸みを帯びた角部と中空部とを有するリング形状とすることができる。溶接パッド448も同様に金属(例えば、ニッケル、鋼、コバール、又はニオブなど)で形成することができる。絶縁体446及び溶接パッド448のリング状構造によって、ベース444の第2のレベル444bが絶縁体446及び溶接パッド448の中央部を貫通することができる。絶縁体446は、ベース444の第2のレベル444bを円周方向に囲むことができる。
【0038】
溶接パッド448、ベース444、ろう付け箔、及び絶縁体446は、トーチろう付け、誘導ろう付け、抵抗ろう付け、又は溶接パッド448、ベース444、及び絶縁体が溶加材(例えば、ろう付け箔)によって接合される別のろう付け方法を使用して、一緒にろう付けすることができる。例えば、溶加材を使用して、絶縁体をろう付けによりベース444及び溶接パッド448に結合することができる。
【0039】
一実施例では、陰極カップ62のベース444は、傾いた状態で下部延長体405の取付け壁460に結合することができる。例えば、下部延長体405の取付け壁460は、第2の中心線458に対して略垂直に配置することができる。第2の中心線458は、中心軸317と略同一直線上にあってもよいし、中心軸317から形成されていてもよい。第2の中心線458は、陰極アセンブリ300を長手方向に二等分する。第2の破線464は、取付け壁460が略垂直であることを示している。陰極カップ62の後面426は、第2の破線464に対して傾斜角度466で傾斜することができる。一実施例では、陰極カップ62及び下部延長体405は、傾斜角度を+/-0.25°に制御する公差を有する。
【0040】
一例では、下部延長体405は1つ又は複数の窓450を含むことができ、窓450は、下部延長体の外面452の開口部、下部延長体の内面454の開口部、及び下部延長体の窓面456によって画定される。窓450は、陰極カップ62に収容された複数のコイル状フィラメントのうちの1つ以上のコイル状フィラメント(例えば、第3のフィラメント380)を高電圧ケーブル56に結合する、陰極カップの後面426に配置された複数の電気リード(例えば、リボン、ワイヤ、ケーブル、ピン又は他の電気接続部品)などの陰極構成要素の冷却に寄与することができる。下部延長体405と小さい絶縁体428との間にスリーブ部品468を介在させることができる。
【0041】
図示の例では、ディスクシールド365は、外側部分406と内側部分408とを有している。外側部分406と内側部分408との間の距離は、y軸に対するディスクシールド幅412を画定することができる。湾曲したリップ310は、ディスクシールド365と一体の円弧状表面を画定することができる。湾曲したリップ310は、ディスクシールド365の外側部分406と外周縁416との間に延在している。湾曲したリップ310は、線4-4の断面図400上で複数の曲率変化点を有することができる。1つの曲率変化点は表面316に位置することができ、湾曲したリップ310は外側部分406又は外周縁に向かって湾曲することができる。別の曲率変化点は、外側部分406の近くに位置することができ、当該別の曲率変化点で、湾曲したリップ310は、外周縁416の方向に曲がり、傾斜移行部314を形成することができる。別の曲率変化点は、外周縁416の近くに位置することができ、湾曲したリップ310が外側部分406の方向に湾曲することができる。前述の曲率変化点で湾曲した後、湾曲したリップ310は、外側部分406と外周縁416との間において軸方向の領域で終端部を有し、第2の中心線458を中心として半径方向に広がることができる。前述の複数の曲率変化点は、湾曲したリップ310の、第2の中心線458の反対側の部分に反映することができる。前述の複数の曲率変化点は、湾曲したリップ310の三次元空間に投影したとき、第2の中心線458に対して半径方向に配置されるリング又は他の関数の一部とすることができる。
【0042】
傾斜移行部314は、外側部分406と平坦領域312との間に延在する。傾斜移行部314は、半径の変化する部分422にわたって軸方向の長さ420に対して傾斜角度418で傾斜している。平坦領域312は、内側部分408から第1のオフセット424だけずれている。一実施例では、ディスクシールド365は下部延長体405に溶接することができる。例えば、平坦領域312は取付け壁460の面462にレーザ溶接することができる。
【0043】
一実施例では、陰極カップ62は、ディスクシールド365の第1の切り抜き部を貫通して突出している。陰極マスク362は、陰極カップ62を受け入れるように構成されている。中央開口部340は、陰極マスク362の開口面480とは反対側に配置される。陰極カップ62は、開口面480で受け入れることができる。一実施例では、第2の内面434は陰極カップ62のベース444と面共有接触することができ、第2の内面434と陰極カップ62の集束要素375、絶縁体446、及び溶接パッド448との間にエアギャップ440を形成することができる。一実施例では、陰極マスク362は陰極カップ62に溶接することができる。例えば、陰極マスク362はベース444にレーザ溶接することができる。陰極カップ62の集束要素375は、陰極マスク362の中央開口部340によって部分的に露出することができ、複数の側壁328及び外周縁338は、陰極カップ62に配置された集束要素375及びフィラメント(例えば、第3のフィラメント380)を囲む。陰極カップ62の後面426は、陰極マスク362の開口面480によって露出する(又は部分的に露出する)ことができる。ディスクシールド365の湾曲したリップ310は、陰極カップ62の後面426を部分的にシールドすることができる。例えば、湾曲したリップ310は、後面426の、高い電界強度を有する部分(例えば、陰極マスク362と第1のレベル444aとの間の接触部分の近く)をシールドすることができる。
【0044】
第1のシールド部302の形状によって、第1の外面322及び第2の外面330に電界応力が集中し、陽極のターゲット(例えば、図2の陽極48のターゲット66)で発生した熱が、例えば、大きい絶縁体358、小さい絶縁体428、及び複数の電気リードを含む温度の影響を受けやすい構成要素に到達するのを阻止する。また、第1のシールド部302によって高電圧の安定性も向上する。例えば、陰極マスク362は、陰極カップ62を構成する溶接部(例えば、溶接パッド448)、ろう付け部、締結部、又は他のタイプの締結機構をシールドすることによって、高電圧の安定性に寄与する。加えて、複数の側壁328と前面パネル332との間に丸みを帯びた滑らかな移行部を有することによる形状が、高電圧の安定性に寄与する。加えて、中央開口部340の形状によって、陰極マスク362の端部における電界応力を低減し、コイル状フィラメントの集束場を増大させることができる。これについては以下でさらに詳細に説明する。別の例として、ディスクシールド365の形状は高電圧の安定性に寄与する。例えば、傾斜移行部314は、鋭い角部のない滑らかな移行によって、湾曲したリップ310になり、外周縁416の電界応力を低減する。例えば、温度の影響を受けやすい構成要素を第1のシールド部302でシールドすることによって、陰極カップ62の後面426を(例えば、シールドせずに)露出させることができる。陰極マスク362の開口面480は、高電圧の安定性を損なうことなく、より多くの輻射熱を陰極カップ62からフレーム46に伝達させることができる。
【0045】
第1のシールド部302の第1の外面322及び第2の外面330に電界応力が集中し、温度の影響を受けやすい構成要素が陽極で発生する高温に晒されることを阻止することによって、開示された陰極シールドは、同時に、陰極52の、従来は囲まれていた部分を露出させることができる。例えば、開示された陰極シールドは、陰極52の、電界強度が低く、温度が高く、フレーム46に対するビューファクタの部分を露出させる。このように選択的にシールドすることによって、陰極構成要素の温度が十分に低下し、複数の高電圧ケーブル56に伝導する熱の伝達量を減少させることができる。第1のシールド部302については、以下でさらに詳細に説明する。
【0046】
第2のシールド部304は、下部延長体405を囲む、開口を有するシリンダ又はリング形状の部材である。第2のシールド部304は環状内面430及び環状外面432を有している。一実施例では、環状内面430は下部延長体の外面452と面接触する。一実施例では、第2のシールド部304は下部延長体の外面452に溶接することができる。一実施例では、第2のシールド部304は、第1の円形開口部の側にフレア状リップ472を有し、反対側の第2の円形開口部の側に平坦なリム474を有することができる。フレア状リップ472は、小さい絶縁体428に接することができる。一実施例では、第2のシールド部304は、y軸に対して第3の長さ476を有することができる。一実施例では、第2のシールド部304は、第1のシールド部302からy軸に対してギャップ間隔478だけ離れて配置することができる。第3の長さ476及びギャップ間隔478は、第2の中心線458に対して軸方向とすることができる。
【0047】
一実施例では、第2のシールド部304は、下部延長体405内に収容され本来ならば高電圧の不安定性を増大させる構成要素を、できるだけ多くの放射熱伝達ができるようにしながらシールドするように形成される。例えば、第2のシールド部304の第3の長さ476及びギャップ間隔478は、溶接部を覆うこと、グランドに近いこと、陰極構成要素の温度、及びフレーム46に対するビューファクタのバランスをとるように最適化することができる。一実施例では、ギャップ間隔478は25mm~30mmとすることができる。第2のシールド部304については、以下でさらに詳細に説明する。
【0048】
一実施例では、第1のシールド部302のディスクシールド365及び陰極マスク362は、図2を参照して説明したような、一体的に形成された単一の連続部材である。別の実施例では、ディスクシールド365と陰極マスク362は別個の要素として形成される。第1のシールド部302及び第2のシールド部304は、金属(例えば、ニッケル、鋼、コバール、又はニオブなど)で形成することができる。シールド表面は電解研磨仕上げが施されていてもよい。一例では、第1のシールド部302と第2のシールド部304をニッケルとし、第1の外面322、第2の外面330、及び環状内面430は電解研磨ニッケルとすることができる。
【0049】
図5は、図3の陰極アセンブリ300の背面図500を示す。図3と同様の構成要素には、同様の番号が付されており、同様の構成要素としては、第1のシールド部302、第2のシールド部304、陰極カップ62、及びフレーム46が挙げられる。示された複数の図の間で比べることができるように、基準軸のセット501が図示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。
【0050】
第1のシールド部302及び第2のシールド部304の位置及び形状によって、開口しているビューファクタ領域の電界応力は小さくなる。例えば、点線502は、陰極カップ62の高電界応力領域をシールドする第1のシールド部302の曲率を示す。一例では、曲率及び高研磨ニッケル表面は、1メートル当たり1*10ボルト(V/m)程度の高い電界強度をシールドすることができる。ギャップ間隔478及び後面426のシールドされていない領域の電界強度は、十分に低くすることができる(例えば0~2.5*10V/mの範囲)。一実施例では、ギャップ間隔478及び後面426のシールドされていない領域のフレーム46に対するビューファクタは、0.4から0.7の範囲の放射率とすることができる。一実施例では、第1のシールド部302及び第2のシールド部304は、陰極カップ62の、電界応力強度が強度の閾値よりも小さく(例えば、2.5*10V/mよりも小さく)、フレームに対するビューファクタが放射率の閾値よりも大きい(例えば、0.4の放射率よりも大きい)部分を露出する。
【0051】
シールドの開放部によって、ビューファクタが増加し、陰極52からフレーム46までの対応する放射熱伝達が増加する。加えて、第2のシールド部304と第1のシールド部302との間のギャップ間隔478によって、下部延長体405の窓450をシールドしないままで、部品の冷却を増進することができる。その結果、陰極の全体的な温度が低下する。例えば、高温の影響を受けやすい構成部品(コイル状フィラメントに電流を流す複数の電気リード線(図示せず)、及び陰極カップ絶縁体(例えば、図4の絶縁体446)など)は、十分に温度が低下し、構成部品の信頼性を向上することができる。
【0052】
図6は、図3の陰極アセンブリ300の正面図600を示す。同様の構成要素には、図3と同様に番号が付されており、第1のシールド部302を構成する陰極マスク362及びディスクシールド365、陰極カップ62、並びに第2のシールド部304が示されている。示された複数の図の間で比べることができるように、基準軸のセット601が図示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。
【0053】
一例では、陰極カップ62は、第1のチャネル602に配置された中フィラメント、第2のチャネル604に配置された小フィラメント、及び第3のチャネル606に配置された大フィラメントを含むことができる。フィラメントは、図3を参照して説明した第1のフィラメント376、第2のフィラメント378、及び第3のフィラメント380とすることができる。他の例では、これらのフィラメントは同じサイズであってもよいし、異なるサイズであってもよい。フィラメントはそれぞれ、ベース444(図4参照)の背面に対してそれぞれのチャネル内で異なる高さに配置することができる。第1のチャネル602のフィラメント、第2のチャネル604のフィラメント、及び第3のチャネル606のフィラメントの各フィラメントは、隣接するフィラメントに対して横方向に間隔を有することができ、横方向の間隔は、第1のフィラメントの直径の中心点と第2のフィラメントの直径の中心点との間の、水平軸(例えば、x軸)に対する横方向の距離として定義される。
【0054】
各フィラメントの横方向の間隔、サイズ、及び相対的な高さに適合するために、陰極マスク362は、フィラメントから放出された電子を単一の電子ビームに集束させる形状を有するように構成することができる。一実施例では、中央開口部340及び中央開口部340の外周縁338は、様々な曲がった部分を含むことができる。例えば、中央開口部340はU字形状を有し、外周縁338は丸みを帯びた縁部を含むことができる。このような曲がった部分によって、外周縁と各フィラメントとの間を同様の距離に維持することができ、電界強度を高くすることができる。例えば、曲がった部分は、複数の曲がった部分、様々な曲げ半径による複数の曲がった部分、及び様々な寸法の複数の曲がった部分を含むことができる。
【0055】
曲がった部分の第1の例として、第1の曲がった部分680は、x軸と平行に配置された第1の軸608及び第2の軸610を含み、第2の曲がった部分682は、y軸と平行に配置された第3の軸612及び第4の軸614を含んでいる。外周縁338は、第1の曲がった部分680までは第1の軸608に収束していく。一例では、第1の曲がった部分680は、2ミリメートル(mm)から6mmの範囲の第1の曲げ半径と、4.1mmから4.7mmの範囲の第1の曲げ寸法676とを有することができる。第1の曲がった部分680は、y軸方向の縦曲げ(longitudinal bend)とすることができる。外周縁338は、第2の曲がった部分682では第2の軸610に収束していく。第2の曲がった部分682は、第2の曲げ半径を有することができる。一例では、第1の曲がった部分680の第1の曲げ半径と、第2の曲がった部分682の第2の曲げ半径は、異なる寸法とすることができる。例えば、第2の曲がった部分682は、12mmから14mmの範囲の第2の曲げ半径と、3mmから5mmの範囲の第2の曲げ寸法674とを有することができる。第2の曲がった部分は、x軸方向の横曲げ(lateral bend)とすることができる。図示の例では、外周縁338は、第2の曲がった部分682を反映した第3の曲がった部分684と、第1の曲がった部分680を反映した第4の曲がった部分686とを含んでいる。第1の曲がった部分680、第2の曲がった部分682、第3の曲がった部分684、及び第4の曲がった部分686は、z軸から見るとU字形を形成する。一実施例では、第1の曲がった部分680、第2の曲がった部分682、第3の曲がった部分684、及び第4の曲がった部分686は、寸法及び半径に基づくプロファイル公差を有する。一例では、プロファイル公差は±1mmである。
【0056】
本明細書で開示されるように、曲がった部分を陰極マスクの中央開口部に組み込んで、1つ又は複数のフィラメントの各フィラメントのサイズ、強度、及び位置に対して集束場を調整することによって、X線画質が向上する。もう一つの利点として、曲がった部分によって陰極カップの終端部での電界応力が減少し、したがって、それに対応して高電圧の安定性が向上する。曲がった部分の別の例については、以下で詳しく説明する。
【0057】
図7は、図6の破線7-7のラテラル切断によって示された図3の陰極アセンブリ300の断面図700を示す。同様の構成要素には、図3と同様の番号が付されている。示された複数の図の間で比べることができるように、基準軸のセット701が図示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。
【0058】
断面図700は、陰極カップ62の後面426に対する、第1のチャネル602の第1のフィラメント376及び第2のチャネル604の第2のフィラメント378の高さを示す。図6を参照して説明したようなU字形の曲がった部分は、外周縁とフィラメントとの間の距離を同一に維持することができる。逆に言えば、従来の円形陰極カップシールド(又は陰極マスク)又は均一な長方形シールドが使用されたと仮定すると、フィラメント周囲の電界強度は、最小になってしまう恐れがある(特に、最小のフィラメント及び/又は均一な外周縁から最も遠くに離れたフィラメントの周囲で)。
【0059】
図示の例では、第1の面702は、中央開口部340の外周縁338と第2のチャネル604の第2のフィラメント378とを切断したy-z面を示す。後面426に対して、破線矢印710で示される第2のフィラメント378の高さと、破線矢印708で示される外周縁338の高さは、破線矢印712で示される第1の差を有している。第1の差は、第1の面702において測定された深さであって、第2のフィラメント378に対応したx-z面と外周縁338に対応したx-z面との間の深さとすることができる。第2の面704は、外周縁338及び第1のチャネル602の第1のフィラメント376を切断するy-z面を示す。後面426に対して、破線矢印706で示される第1のフィラメント376の高さと、破線矢印714で示される外周縁338の高さは、破線矢印716で示される第2の差を有している。同様に、第2の差は、第2の面704において測定された深さであって、第1のフィラメント376に平行なx-z面と外周縁338に平行なx-z面との間の深さとすることができる。破線矢印714及び破線矢印706は後面426まで延びているが、部分的にしか図示されていないことに留意されたい。一実施例では、第1の差及び第2の差は同じであってもよい。一実施例では、第1の差及び第2の差は閾値だけ違っていてもよい。言い換えれば、各コイル状フィラメントは、陰極マスクの丸みを帯びた縁部から、閾値以内の深さに配置することができる。一実施例では、開示された陰極マスクの形状を決める要因は、中央開口部の外周縁と1つ又は複数のコイル状フィラメントの各フィラメントとの間の差を概ね同じような差に維持することである。
【0060】
断面図700は、丸みを帯びた縁部718を示している。丸みを帯びた縁部718は、陰極マスクの端部(例えば、中央開口部340の外周縁338)の局所的な電子放出電界応力を低減するように調整することができる。一例では、丸みを帯びた縁部を、z軸に垂直に曲げることができる。丸みを帯びた縁部の形状を含む陰極マスクの一例を、図8及び図9A図9Bを参照してより詳細に説明する。
【0061】
図8は、陰極用の陰極シールドアセンブリの一部である陰極マスク800の一例の斜視図を示す。陰極マスク800は、図3図7を参照して説明した陰極マスク362と同じもの又は類似のものとすることができる。示された複数の図の間で比べることができるように、基準軸のセット801が図示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。
【0062】
開示された陰極シールドアセンブリの一実施例では、陰極マスク800は、長方形の延長部811を有する柱形状である。陰極マスク800は、ラテラル対称線802を基準にした鏡面対称である。開示された陰極シールドアセンブリの他の実施例では、陰極マスクは横方向に対称でなくてもよい。陰極マスク800は、第1の側壁804、第2の側壁806、及び第3の側壁808を有している。第1の側壁804は第2の側壁806に対向しており、第3の側壁808は、第1の側壁804及び第2の側壁806に対して垂直に配置されており、第1の側壁804と第2の側壁806との間に存在している。陰極マスク800は、第1の側壁804、第2の側壁806、及び第3の側壁808に対して垂直に配置される前面パネル812を有している。陰極マスク800は、前面パネル812から延在する短い延長部810であって、第3の側壁808と平行な延長部810を有している。第1の側壁804、第2の側壁806、第3の側壁808、及び前面パネル812は、鋭角にならないように接している。例えば、第1の側壁804から前面パネル812までの間の移行面814は、前面パネル812のx-zの広がりから第1の側壁804のy-zの広がりへとなだらかに丸くしてもよいし、面取りしてもよい。
【0063】
図示の例では、長方形の延長部811を除くと、陰極マスク800の全体的な寸法は、第1の高さ822、第1の深さ826、及び第1の幅838である。前面パネル812は、第1の深さ826よりも短い第2の深さ840まで広がり、第1の深さ826の約半分とすることができる。短い延長部810は、第1の高さ822よりも短い第2の高さ846を有している。
【0064】
長方形の延長部811は、陰極マスク800の水平中心線803に対して上半分に配置されている。長方形の延長部811は、第1のセグメント816、第2のセグメント818、第3のセグメント832、及び第4のセグメント834を有することができる。第1のセグメント816は第1の側壁804の延長部であり、第2のセグメント818は第2の側壁806の延長部であり、第3のセグメント832は第3の側壁808の延長部である。第4のセグメント834は、前面パネル812とほぼ垂直に交差し、このようにして短い壁を形成する。第1のセグメント816及び第2のセグメント818は、第1の深さ826よりも短い第3の長さ830を有することができる。第3のセグメント832及び第4のセグメント834は、陰極マスク800の全体的な寸法の第1の幅838と略同じ長さを有することができる。
【0065】
長方形の延長部811は、ラテラル対称線802に対して実質的にU字形状とすることができる。例えば、長方形の延長部811は、第2の高さ842を有する高い側部と、第3の高さ844を有する低い中央部とを有することができる。第1のセグメント816及び第2のセグメント818は、略第2の高さ842とすることができる。第3のセグメント832及び第4のセグメント834は、第1のセグメント816及び第2のセグメント818の端部付近では略第2の高さ842とすることができ、ラテラル対称線802の方向に向かうと、第3の高さ844まで低くなる。長方形の延長部の形状は、集束要素の寸法及び集束要素のコイル状フィラメントの配置の影響を受ける。
【0066】
第1のセグメント816、第2のセグメント818、第3のセグメント832、及び第4のセグメント834は、延長面848を有することができる。延長面848は、外側シールド面850の一部とすることができる。第1の側壁804、第2の側壁806、第3の側壁808、及び短い延長部810は、柱状の外周面825を有することができる。陰極マスク800の中央開口部は、延長面848の開口部、内側シールド面852の開口部、及び外周面824によって画定することができる。このようにして、延長面848は、中央開口部の外周縁又は枠部を形成することができる。
【0067】
一実施例では、延長面848は丸みを帯びた縁部を有している。例えば、延長面848は、内部シールド面852に向かって内側に曲がる又は内側に巻かれ、開口部の周りに、曲がった端移行部を形成する。例えば、延長面848は、実施例において陰極マスク800のx-y面に略垂直な平面から、x-y平面に略平行な平面に曲がることができる。陰極アセンブリが組み立てられたとき、中央開口部は陰極カップを受け入れることができ、柱状の外周面825は陰極カップの後面と略面一とすることができ、延長面848は集束要素(図2図7を参照して説明した陰極カップ62の後面426及び集束要素375など)を囲うことができる。
【0068】
図9Aは、図8の破線9-9のラテラル切断によって示された図8の陰極マスク800の断面図900を示す。断面図900は、陰極マスク800の集束部の一例を示す。集束部は、陰極マスクの中央開口部の端移行部である。この例では、端移行部は、丸みを帯びた縁部を含む外周縁とすることができる。図9Bは、図9Aに示す断面の詳細図950である。同様の構成要素には、図8と同様の番号が付されている。図9A図9Bとの間で比べることができるように、基準軸のセット901が図示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。
【0069】
断面図900は、第3の側壁808の第3のセグメント832及び前面パネル812の第4のセグメント834を横断しており、丸みを帯びた縁部902を示している。陰極マスク800の壁904は、丸みを帯びた縁部902が形成されるように曲げることができる。例えば、長方形の延長部811の領域内の壁904は、z軸に垂直に曲げられるように形成することができ、内側の部分は、中央開口部の中心線911に向かっている。壁904の曲がった部分は、長手方向軸に十分に丸みを帯びるようにすることができる。丸みを帯びた縁部902は、実質的に丸い延長面848と、中心線911に面する外周縁906とを含むことができる。
【0070】
丸みを帯びた縁部902の曲がった部分は、長方形の延長部811の各端部で同じようにすることができ、第1のセグメント816、第2のセグメント818(図8参照)、第3のセグメント832、及び第4のセグメント834は同じ寸法で曲がることができる。丸みを帯びた縁部902によって、外周縁906が電界応力から保護され、1つ又は複数のコイル状フィラメントが十分な集束場を実現することができる。
【0071】
図9Bは、丸みを帯びた縁部902の寸法例を詳細に示す。丸みを帯びた縁部902は、静電学的に有利であり、シールド領域のkV/mmを制限する。丸みを帯びた特徴によって、グリッド電極(例えば、集束要素375)に向かって「更に下方に」延在しなくても、より大きな半径と同じkV/mmが与えられる。更に下方に延在しないことによって、開口部を大きくすることができ、このため、集束場を大きくし、電子の放出を増加させることができる。
【0072】
図示の例では、丸みを帯びた縁部902は、第1の長さ910にわたって第1の軸908と略平行とすることができる。交差する第2の軸914と第1の軸908は直角になっている。第3の軸916は、外周縁906、第1の軸908、及び第2の軸914と交差する。交差する第3の軸916と第2の軸914は、曲げ角度912を形成している。一実施例では、曲げ角度912は、角度の下限の閾値を69°とし、角度の上限の閾値を75°とすることができる。
【0073】
第1の曲がった部分918は第1の曲げ半径920を有している。一実施例では、第1の曲げ半径920は、半径の下限の閾値を1.5mmとし、半径の上限の閾値を2.5mmとすることができる。第2の曲がった部分922は第2の曲げ半径924を有している。一例では、第2の曲げ半径924は、半径の下限の閾値を1.9mmとし、半径の上限の閾値を2.5mmとすることができる。一実施例では、第1の曲げ半径920と第2の曲げ半径924は異なる寸法であってもよい。丸みを帯びた縁部902は、第2の軸914と第4の軸926との間において、y軸に関する第1の曲がった部分918及び第2の曲がった部分922の長さである第1の曲げ長さ928を含む。丸みを帯びた縁部902は、z軸に関する第1の曲がった部分918及び第2の曲がった部分922の長さである第2の曲げ長さ930を含む。一実施例では、第1の曲げ長さ928は、第2の曲げ長さ930より長くすることができる。
【0074】
したがって、少なくとも一部の実施例では、本明細書に開示される陰極マスクは、様々な曲がった部分を含むことができる。すなわち、端移行部(例えば、丸みを帯びた縁部902)の曲がった部分、及び中央開口部(例えば、中央開口部340)のU字形に曲がった部分である。陰極マスク(例えば、陰極マスク800)のこのような集束部は、全体が協働して、強度が異なる及び/又は寸法が異なる1つ又は複数のコイル状フィラメントの集束場を増大させ、高電圧の不安定性を低減することができる。
【0075】
図10は、陰極用の陰極シールドアセンブリの一部である第2のシールド部1000の一例の斜視図を示す。第2のシールド部1000は、図3図7を参照して説明した第2のシールド部304と同じもの又は類似しているものとすることができる。示された複数の図の間で比べることができるように、基準軸のセット1001が図示されており、x軸、y軸、及びz軸が示されている。
【0076】
開示された陰極シールドアセンブリの一実施例では、第2のシールド部1000は、実質的にリング形状とすることができる。第2のシールド部1000は、半径方向対称線1002を基準として半径方向に対称である。第2のシールド部1000は環状壁1004を有している。環状壁1004は、環状外面1006と環状内面1008とを有している。第2のシールド部1000は中央中空部を有し、中央中空部は、内面1014の第1の円形開口部と、外面1016の第2の円形開口部と、環状内面1008とによって画定される。一例では、第2のシールド部1000は、内面1014に平坦なリム1012を有し、外面1016にフレア状リップ1010を有することができる。陰極アセンブリに組み付けられると、中央中空部は、下部延長体(図4の下部延長体405など)を囲むことができる。フレア状リップ1010は、セラミック絶縁体(図4の小さい絶縁体428など)に接することができる。平坦なリム1012は、下部延長体の嵌合部に設けることができる。一例では、平坦なリム1012の環状内面1008は、下部延長体の1つ又は複数の窓の表面(図4の窓450の下部延長体窓面456など)と面接触することができる。
【0077】
第2のシールド部1000は、y軸に対してリング長1018を有することができる。第2のシールド部は、半径方向対称線1002に対して第1の内径1020及び第2の内径1022を有することができる。第1の内径1020は、例えば、下部延長体(例えば、下部延長体405)の寸法に基づいて決定することができる。第2の内径1022は、フレア状リップ1010の形状(例えば、外側に向かって開く角度)に基づいて決定することができる。リング長1018は、いくつかの要因に基づいて決定することができる。例えば、第1のシールド部(例えば、第1のシールド部302)と第2のシールド部1000との間のギャップ空間(例えば、図4に示すギャップ間隔478)をできるだけ広く保つことによって、輻射熱伝達を増加させることができる。しかしながら、第2のシールドの長さを短くしすぎると、接地されている陰極構成要素のシールド効果が低下する。加えて、低温部品をシールドする効果が低下すると、冷却に十分には寄与しない恐れがある。適切な長さを決めるには、高電圧の安定性の妨げとなる溶接部を覆うことと、できるだけ放射熱伝達が可能となるようにすることとの間で、トレードオフを考慮することができる。
【0078】
X線システムで一般的な一体型陰極シールディングとは対照的に、シールドを、第1のシールド部と第2のシールド部とに分離することによって、開示されたシールドは、フレームへの放射熱伝達を促進し、全体的な陰極温度を低下させる。陰極マスクの開示された曲がった部分は、1つ又は複数のコイル状フィラメント(例えば、図3図7に示される例示的な3フィラメント構成)の集束力を増加させ、陰極マスクの終端部の電界応力を低減させるという追加の利点を有する。陰極シールドアセンブリは、スマート陰極システムで使用される場合、様々なX線用途に対して、高電圧の安定性を向上させ、X線管の寿命を延長し、解像度及び精度を向上させることができる。
【0079】
一部の例では、開示された陰極シールドは、別の形状の中央開口部及び外周縁を有する陰極マスクを含むことができる。一例として、陰極アセンブリは、単一のコイル状フィラメントのみを有する陰極カップを含むことができる。このような陰極アセンブリの場合、一例として、陰極マスクは、長方形の延長部ではなく、正方形の延長部を有することができ、中央開口部の外周縁は、丸みを帯びた縁部を含むことができる。あるいは、延長部は卵形又は円形で、外周縁は曲がった端移行部を有する。別の例として、陰極アセンブリは、例示的なU字形状ではなく、直線状の側面が電界集束に適するように、陰極カップ内に配置されたコイル状フィラメントを含むことができる。このような例では、開口部を含む陰極シールドによって(例えば、ギャップ間隔と、大きいビューファクタによって)、陰極カップとコイル状フィラメントの様々な構成をサポートしながら、放射熱伝達を促進するという利点を得ることができる。
【0080】
他の実施例では、開示された陰極シールドは、中央開口部を有し1つ又は複数の曲がった部分が形成された外周縁を有する陰極マスク(例えば、陰極マスク800)であって、異なる構成の相補的なシールド部と組み合わせて使用される陰極マスクを含むことができる。一例として、U字形中央開口部と丸みを帯びた縁部とを有する陰極マスクを、別の形状のディスクシールドと一緒に使用することができる。例えば、ディスクシールドは、別の形状のフレームに対するビューファクタを増加させるため、及び/又は、より大きな絶縁体又は異なるように位置合わせされた絶縁体をシールドするために、別の形状にすることができる。このような例では、中央開口部及び外周縁の開示された曲がった部分を組み込んだ陰極マスクによって、様々なX線管設計をサポートしながら、1つ以上のコイル状フィラメントを有するスマート陰極の集束場を大きくすることができる。
【0081】
このように、電界応力の高い領域で選択的なシールドを使用し、他の領域は開放状態に保つことによって、温度の影響を受けやすい陰極構成要素及びその周辺に熱が伝導すること及び熱が集中することを低減できる。1つ又は複数のコイル状フィラメントによる集束が調整されるように陰極マスクシールドを形成することにより、スマート陰極は、集束力を損失することなく、診断用途や介入用途に適した電流範囲を実現することができる。この技術的効果は、X線管の寿命が長くなる、X線管の信頼性が向上する、及びX線ビームの放出性能が向上することである。
【0082】
また、本開示は、陰極用シールドアセンブリのサポートを提供する。陰極用のシールドアセンブリは、第1のシールド部及び第2のシールド部を含み、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、物理的に直接接触しないように互いに間隔を置いて配置されている。システムの第1の実施例では、前記第1のシールド部は、ディスクシールドと陰極マスクとを含み、前記第2のシールド部は前記陰極の下部延長体を囲む。システムの第2の実施例では、任意選択で第1の実施例を含み、前記ディスクシールドは、湾曲したリップを有する実質的に凹状のディスクを含み、前記陰極マスクは、陰極カップを受けるように構成された中央開口部を含む。システムの第3の実施例では、第1及び第2の実施例の一方の実施例又は両方の実施例を任意選択で含み、前記ディスクシールドは第1の切り抜き部を含み、陰極カップが前記第1の切り抜き部から突出し、前記第1の切り抜き部は実質的に長方形であり、前記ディスクシールドの中心からずれている。システムの第4の実施例では、第1から第3の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を任意選択で含み、前記第2のシールド部は実質的にリング形状である。システムの第5の実施例において、第1から第4の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を任意選択で含み、前記陰極マスクは、長方形の延長部を有する柱形状である。システムの第6の実施例では、第1から第5の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を任意選択で含み、前記第2のシールド部は、第1の円形開口部側にフレア状リップを有するとともに、対向する第2の円形開口部側に平坦なリムを有するリング状部材である。システムの第7の実施例では、第1から第6の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を任意選択で含み、前記ディスクシールド及び前記陰極マスクは、一体的に形成された単一の連続部材である。
【0083】
本開示は、X線装置用の陰極アセンブリのサポートも提供する。X線装置用の陰極アセンブリは、集束要素を収容する陰極カップ、前記陰極カップを絶縁体に結合する下部延長体であって、電気リード線を囲む下部延長体、及び第1のシールド部及び第2のシールド部を含む陰極シールドアセンブリであって、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、物理的に直接接触しないように互いに間隔を空けて配置されている、陰極シールドアセンブリを含む。システムの第1の実施例では、前記第1のシールド部はディスクシールド及び陰極マスクを含み、前記第2のシールド部は前記下部延長体を囲む。システムの第2の実施例では、第1の実施例を任意選択で含み、システムは、前記第1のシールド部と前記第2のシールド部との間にギャップ間隔を含み、前記ギャップ間隔は、前記陰極カップの後面と前記下部延長体の一部を露出させる。システムの第3の実施例では、第1の実施例及び第2の実施例のうちの一方又は両方の実施例を任意選択で含み、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、電解研磨されたニッケルから形成されている。システムの第4の実施例では、第1から第3の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を任意選択で含み、前記陰極カップは、前記下部延長体に、傾斜するように取り付けられている。システムの第5の実施例では、第1から第4の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を任意選択で含み、前記集束要素は、2つ以上のコイル状フィラメントを含む。システムの第6の実施例では、第1から第5の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を任意選択で含み、前記ディスクシールドは、湾曲したリップを有する実質的に凹状のディスクを含み、前記陰極マスクは、前記陰極カップを受け入れるように構成された中央開口部を有し、前記第2のシールド部は、実質的にリング形状である。
【0084】
また、本開示は、イメージングシステムのサポートを提供する。イメージングシステムは、集電極アセンブリ、陽極アセンブリ、電子ビームを前記陽極アセンブリに集束させるように構成された陰極アセンブリ、及びフレームであって、前記集電極アセンブリ、前記陽極アセンブリ、及び陰極アセンブリの少なくとも一部を収容するフレームを含み、前記陰極アセンブリは、下部延長体に取り付けられた陰極カップと、陰極シールドアセンブリとを含み、前記陰極シールドアセンブリは、第1のシールド部及び第2のシールド部を含み、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、接触しないように、互いに間隔を空けて配置されている。システムの第1の実施例では、前記第1のシールド部はディスクシールド及び陰極マスクを含み、前記第2のシールド部は前記下部延長体を囲む。システムの第2の実施例では、第1の実施例を任意選択で含み、前記陰極シールドアセンブリは、前記陰極カップの、電界応力強度が強度の閾値より小さく、前記フレームに対するビューファクタが放射率の閾値より大きい部分を露出させる。システムの第3の実施例では、第1の実施例及び第2の実施例のうちの一方又は両方の実施例を任意選択で含み、前記集電極アセンブリは、前記陽極アセンブリによって生成されたX線が放出される窓と、前記イメージングシステム内で後方散乱電子を吸収するための電子コレクタとを含む。システムの第4の実施例では、第1から第3の実施例のうちの1つ以上の実施例又は各実施例を任意選択で含み、前記陽極アセンブリは、前記電子ビームが集束されるターゲット、ロータ、及び軸受アームを含む。
【0085】
図2図10は、様々な要素の相対的な位置関係の例示的な構成を示している。要素が、互いに直接的に接触している、又は直接的に結合しているように図示されている場合、これらの要素は、少なくとも1つの実施例では、それぞれ、直接的に接触している要素又は直接的に結合している要素と呼ぶことができる。同様に、互いに連続する又は隣接するように示された要素は、少なくとも一実施例では、それぞれ、互いに連続する要素又は互いに隣接する要素と呼ぶことができる。一例として、互いに面接触している要素は、面接触している要素と呼ぶことができる。別の例として、互いに離れて配置された要素が、要素と要素との間にスペースが存在するが他の要素が存在しない場合、少なくとも一例において、互いに離れている要素と呼ぶことができる。また、別の例として、互いに上下、互いに反対側、又は互いに左右に示される要素は、互いに、上下の要素、反対側の要素、又は左右の要素と呼ぶことができる。更に、図に示すように、少なくとも1つの例では、最上部の要素又は要素の最上点は、要素の「上部」と呼ぶことができ、最下部の要素又は要素の最下点は、要素の「下部」と呼ぶことができる。本明細書では、上部/底部、上側/下側、上/下は、図の垂直軸に対する相対的なものを表しており、図の要素の互いの相対的な位置を説明するために使用される。このように、他の要素の上に示される要素は、一例では、他の要素の上に垂直に配置される。更に別の例として、図に示された要素の形状は、それらの形状(例えば、円形、直線、平面、曲線、丸みのある、面取りされた、角度が付けられた、など)を有していると言うことができる。更に、互いに交差するように示された要素は、少なくとも一つの例では、交差する要素又は互いに交差する要素と呼ぶことができる。更に、別の要素内に示された要素、又は別の要素の外側に示された要素は、一例では、別の要素内に示されている又は別の要素の外側に示されている要素と呼ぶことができる。
【0086】
本明細書において、単数形で記載され、単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」が先行する要素又はステップは、除外することが明示的に記載されていない限り、複数の当該要素又はステップを除外しないものとして理解されるべきである。更に、本発明の「一実施形態」に言及することは、記載された特徴も組み込んだ追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈されることを意図するものではない。更に、反対のことを明示的に述べない限り、特定の特性を有する1つの要素又は複数の要素を「含む、有する、備える(comprising)」、「含む、有する、備える(including)」、又は「含む、有する、備える(having)」実施形態は、当該特性を有していない追加の要素を含むことができる。用語 「including」及び「in which」は、それぞれの用語「comprising」及び「wherein」の平易な文言の均等語として使用されている。更に、「第1の」、「第2の」、及び「第3の」などの用語は、単にラベルとして使用され、対象に対して数値要件又は特定の位置的順位を課すことを意図するものではない。
【0087】
本明細書において、「約」という用語は、特に指定されない限り、その範囲の±5%を意味すると解釈され、「実質的に凹状」という用語は、要素が、完全な凹状でなくても、当業者が凹状であるとみなすのに十分に足りる形状であることを意味する。本明細書おいて「実質的に長方形」という用語は、要素が、完全な長方形でなくても、当業者が長方形であるとみなすのに十分に足りる形状であることを意味する。本明細書において、「実質的に柱状」という用語は、要素が、完全な柱状でなくても、当業者が柱状であるとみなすのに十分に足りる形状であることを意味する。
【0088】
ここに記載された説明は、実施例を用いて本発明(最良の態様を含む)を開示し、また、当業者が本発明を実施すること(任意の装置又はシステムを製造すること及び使用すること、並びに組み込まれた任意の方法を実行することを含む)ができるようにするものである。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって画定され、当業者が思い浮かぶ他の実施例を含むことができる。そのような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異なっていない構造要素を含む場合、又は特許請求の範囲の文言と実質的に異なっていない均等な構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0089】
10 イメージングシステム
12 X線源
14 X線ビーム
16 物体
18 検出器アセンブリ
20 プロセッサ
22 コンピュータ
24 オペレータコンソール
26 表示装置
28 記憶装置
30 線源コントローラ
40 X線管
42 陽極アセンブリ
44 陰極アセンブリ
46 フレーム
48 陽極
50 軸受アセンブリ
52 陰極
54 空間
58 中央絶縁シェル
60 マスク
62 陰極カップ
64 X線
66 ターゲット
68 窓
70 中心線
72 ロータ
74 開口部
76 中央シャフト
78 スリーブ
80 冷媒流路
82 集束電極アセンブリ
84 電子コレクタ
200 X線源
202 第1のシールド部
204 第2のシールド部
300 陰極アセンブリ
302 第1のシールド部
304 第2のシールド部
310 リップ
312 平坦領域
314 傾斜移行部
315 第1の中心線
316 表面
317 中心軸
322 第1の外面
324 面
326 延長部
328 側壁
330 第2の外面
332 前面パネル
338 外周縁
340 中央開口部
358 大きい絶縁体
362 陰極マスク
365 ディスクシールド
375 集束要素
376 第1のフィラメント
378 第2のフィラメント
380 第3のフィラメント
404 第1の内面
405 下部延長体
406 外側部分
408 内側部分
412 ディスクシールド幅
416 外周縁
418 傾斜角度
420 長さ
424 第1のオフセット
426 後面
428 小さい絶縁体
440 エアギャップ
444 ベース
446 絶縁体
448 溶接パッド
460 取付け壁
462 面
464 第2の破線
466 傾斜角度
468 スリーブ部品
472 フレア状リップ
474 リム
476 第3の長さ
478 ギャップ間隔
480 開口面
502 点線
602 第1のチャネル
604 第2のチャネル
606 第3のチャネル
608 第1の軸
610 第2の軸
612 第3の軸
614 第4の軸
674 第2の曲げ寸法
676 第1の曲げ寸法
680 第1の曲げ部
682 第2の曲げ部
684 第3の曲げ部
686 第4の曲げ部
702 第1の面
704 第2の面
718 縁部
800 陰極マスク
802 対称線
803 水平中心線
804 第1の側壁
806 第2の側壁
808 第3の側壁
810 延長部
811 長方形の延長部
812 前面パネル
814 移行面
816 第1のセグメント
818 第2のセグメント
822 第1の高さ
824 周辺面
825 外周面
826 第1の深さ
830 第3の長さ
832 第3のセグメント
834 第4のセグメント
838 第1の幅
840 第2の深さ
842 第2の高さ
844 第3の高さ
846 第2の高さ
848 延長面
850 外側シールド面
852 内側シールド面
852 内部シールド面
904 壁
906 外周縁
908 第1の軸
910 第1の長さ
911 中心線
912 曲げ角度
914 第2の軸
916 第3の軸
918 第1の曲げ部
920 第1の曲げ半径
922 第2の曲げ部
924 第2の曲げ半径
926 第4の軸
928 第1の曲げ長さ
930 第2の曲げ長さ
1000 第2のシールド部
1002 半径方向対称線
1004 環状壁
1006 環状外面
1008 環状内面
1010 フレア状リップ
1012 縁部
1014 内面
1016 外面
1018 環状長さ
1020 第1の内径
1022 第2の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極用のシールドアセンブリであって、
第1のシールド部(202)及び第2のシールド部(204)を含み、
前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、物理的に直接接触しないように互いに間隔を置いて配置されている、シールドアセンブリ。
【請求項2】
前記第1のシールド部(302)は、ディスクシールド(365)と陰極マスク(362)とを含み、前記第2のシールド部(304)は前記陰極の下部延長体(405)を囲む、請求項1に記載のシールドアセンブリ。
【請求項3】
前記ディスクシールド(365)は、湾曲したリップ(310)を有する実質的に凹状のディスクを含み、前記陰極マスクは、陰極カップ(62)を受けるように構成された中央開口部(340)を含む、請求項2に記載のシールドアセンブリ。
【請求項4】
前記ディスクシールド(365)は第1の切り抜き部を含み、陰極カップ(62)が前記第1の切り抜き部から突出し、前記第1の切り抜き部は略長方形であり、前記ディスクシールドの中心からずれている、請求項2に記載のシールドアセンブリ。
【請求項5】
前記第2のシールド部(304)は略リング形状である、請求項1に記載のシールドアセンブリ。
【請求項6】
前記陰極マスク(362)は、長方形の延長部を有する柱形状である、請求項2に記載のシールドアセンブリ。
【請求項7】
前記第2のシールド部(304)は、第1の円形開口部側にフレア状リップ(472)を有するとともに、対向する第2の円形開口部側に平坦なリム(474)を有するリング状部材である、請求項1に記載のシールドアセンブリ。
【請求項8】
前記ディスクシールド及び前記陰極マスクは、一体的に形成された単一の連続部材(202)である、請求項2記載のシールドアセンブリ。
【請求項9】
X線装置用の陰極アセンブリであって、
集束要素(375)を収容する陰極カップ(62)、
前記陰極カップを絶縁体(58)に結合する下部延長体(405)であって、電気リード線(56)を囲む下部延長体、及び
第1のシールド部(202)及び第2のシールド部(204)を含む陰極シールドアセンブリであって、前記第1のシールド部及び前記第2のシールド部は、物理的に直接接触しないように互いに間隔を空けて配置されている、陰極シールドアセンブリ
を含む陰極アセンブリ。
【請求項10】
前記第1のシールド部(302)はディスクシールド(365)及び陰極マスク(362)を含み、前記第2のシールド部(304)は前記下部延長体を囲む、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項11】
前記第1のシールド部と前記第2のシールド部との間にギャップ間隔(478)を含み、前記ギャップ間隔は、前記陰極カップの後面(426)と前記下部延長体の一部を露出させる、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項12】
前記第1のシールド部(302)及び前記第2のシールド部(304)は、電解研磨されたニッケルから形成されている、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項13】
前記陰極カップ(62)は、前記下部延長体(405)に、傾斜するように取り付けられている(466)、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項14】
前記集束要素(375)は、2つ以上のコイル状フィラメントを含む、請求項9に記載の陰極アセンブリ。
【請求項15】
前記ディスクシールド(365)は、湾曲したリップ(310)を有する略凹状のディスクを含み、前記陰極マスク(362)は、前記陰極カップ(62)を受け入れるように構成された中央開口部(340)を有し、前記第2のシールド部(304)は、略リング形状である、請求項10に記載の陰極アセンブリ。
【外国語明細書】