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特開2024-150416支持体及び装飾インサートを備える時計又は宝飾品アイテムのための支持体
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  • 特開-支持体及び装飾インサートを備える時計又は宝飾品アイテムのための支持体 図1
  • 特開-支持体及び装飾インサートを備える時計又は宝飾品アイテムのための支持体 図2
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  • 特開-支持体及び装飾インサートを備える時計又は宝飾品アイテムのための支持体 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150416
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】支持体及び装飾インサートを備える時計又は宝飾品アイテムのための支持体
(51)【国際特許分類】
   A44C 17/02 20060101AFI20241016BHJP
   G04B 45/00 20060101ALI20241016BHJP
   G04B 47/04 20060101ALI20241016BHJP
   A44C 17/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A44C17/02
G04B45/00 E
G04B47/04 A
A44C17/04
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024059255
(22)【出願日】2024-04-01
(31)【優先権主張番号】23166956
(32)【優先日】2023-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ロペス
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム レイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造が容易であり、装飾インサートの輝きにできるだけ影響を与えず、高品質の圧着を保証する支持体を提案する。
【解決手段】支持体(20)は、前面(22)と、後面(23)と、装飾インサートを受け入れるように意図された少なくとも1つの貫通ハウジング(21)であって、前面(22)に設けられた露出開口部(211)、後面(23)に設けられた挿入開口部(212)、及び装飾インサート(10)を位置決めするためのマウント(24)、を備える貫通ハウジング(21)と、を備え、支持体(20)は、装飾インサートの圧着を生成するために、マウント(24)に当接して位置決めされた装飾インサート上で塑性変形されるように意図された被圧着部分(25)を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計又は宝飾品アイテムのための支持体(20)であって、前記時計又は前記宝飾品アイテムが、前記支持体(20)と、前記支持体(20)に圧着された宝石用原石などの装飾インサート(10)とを備える、支持体(20)であって、
-ユーザに見えるように配置された前面(22)と、
-後面(23)と、
-前記前面(22)と前記後面(23)との間に配置され、前記装飾インサート(10)を受け入れるように意図された少なくとも1つの貫通ハウジング(21)であって、
-前記装飾インサート(10)を前記観察者に見えるようにするために前記前面(22)に設けられた露出開口部(211)と、
-前記装飾インサート(10)を前記貫通ハウジング(21)内に導入するために前記後面(23)に設けられた挿入開口部(212)と、
-前記装飾インサート(10)を前記貫通ハウジング(21)内に位置決めするためのマウント(24)、
を備える、貫通ハウジング(21)と、を備え、
前記支持体(20)は、前記装飾インサート(10)の圧着を生成するために、前記マウント(24)に当接して位置決めされた前記装飾インサート(10)上で塑性変形されるように意図された被圧着部分(25)を備えることを特徴とする、支持体。
【請求項2】
前記後面(23)に配置された支承面(26)であって、前記装飾インサート(10)上の前記被圧着部分(25)を変形させるように意図された圧着ツール(120)のための圧着終了支承を提供するように意図された支承面(26)を備える、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項3】
前記支承面(26)は、前記被圧着部分(25)の周辺に、好ましくは前記被圧着部分(25)の周囲に配置されている、請求項2に記載の支持体(20)。
【請求項4】
前記被圧着部分(25)は、好ましくは円筒形の中央面と、前記支承面(26)に隣接する、好ましくは円錐形又は円錐台形の外面とを備えるリップを備える、請求項2に記載の支持体(20)。
【請求項5】
前記前面(22)は、ユーザに見えるように意図され、例えば、表面コーティング、ダイヤモンドめっき、研磨、又は彫刻などの装飾仕上げ又は装飾終端を含む被装飾面を含む、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項6】
圧着方向及び前記圧着方向に垂直な平面において、
-前記支承面(26)は、第1の突出面を有し、
-前記前面(22)は、第2の突出面を有し、
前記第2の突出面の面積は、前記第1の突出面の面積よりも大きく、好ましくは、前記第2の突出面の面積は、前記第1の突出面の面積の値の150%よりも大きく、好ましくは、前記第2の突出面の面積は、前記第1の突出面の面積の値の200%よりも大きい、請求項2から4のいずれか一項に従属する請求項5に記載の支持体(20)。
【請求項7】
前記装飾インサート(10)の前記圧着がベゼル圧着である、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項8】
前記被圧着部分(25)は、マウント(24)の周辺に、好ましくは前記マウント(24)の周りに配置され、前記装飾インサート(10)上に完全に又は部分的に折り畳まれるように意図されたリップを備える、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項9】
前記被圧着部分(25)は、前記圧着ツール(120)によって押し戻される、かつ/又は剪断される、前記貫通ハウジング(21)の側壁の少なくとも一部分を含む、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項10】
前記マウント(24)は、前記装飾インサート(10)との、連続的な接触面を含む、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項11】
前記マウント(24)は、前記装飾インサート(10)との、不連続な接触面を含む、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項12】
時計又は宝飾品アイテムであって、
-請求項1のいずれか一項に記載の少なくとも1つの支持体(20)と、
-前記貫通ハウジング(21)内に、前記マウント(24)に当接して配置された少なくとも1つの装飾インサート(10)であって、前記被圧着部分(25)は、前記装飾インサート(10)上に圧着される、少なくとも1つの装飾インサート(10)と、
を備える、時計又は装飾品。
【請求項13】
時計又は宝飾品アイテムを製造するための方法であって、
-請求項1のいずれか一項に記載の支持体(20)を提供するステップと、
-前記挿入開口部(212)を介して前記貫通ハウジング(21)内に、装飾インサート(10)を導入するステップと、
-前記装飾インサート(10)に当接して、前記被圧着部分(25)を塑性変形させるステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記被圧着部分(25)を塑性変形させる前記ステップは、前記挿入開口部(212)を介して前記貫通ハウジング(21)内に圧着ツール(120)を導入することによって単一の動作及び/又は単一の移動で実行され、前記圧着ツール(120)は、前記被圧着部分(25)と接触して前記被圧着部分(25)の外周部を、好ましくは同時に、塑性変形させるように意図された圧着界面(125)を備える、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記被圧着部分(25)を塑性変形させる前記ステップは、前記支持体(20)上への前記圧着ツール(120)の機械的当接によって終端する、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記圧着ツール(120)は、前記装飾インサート(10)と協働するように意図された接触界面を備え、前記製造方法は、少なくとも前記被圧着部分(25)の塑性変形のステップの前又はその間に、前記接触界面を有する前記支持体(20)に対して前記装飾インサート(10)を位置決めすることからなるステップを含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記圧着ツール(120)は、好ましくは前記貫通ハウジング(21)の軸方向と同軸の、直線移動に従う、請求項13に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項13に記載の製造方法を実施するための圧着ツーリングであって、
-請求項1から11のいずれか一項に記載の前記支持体(20)を受け入れるように意図された圧着ホルダ(110)と、
-圧着ツール(120)であって、
-請求項1から11のいずれか一項に記載の前記支持体(20)の前記被圧着部分(25)と接触し、前記被圧着部分(25)を塑性変形させるように意図された圧着界面(125)、と
-前記圧着界面(125)に対して移動可能であり、圧着動作の前に、前記圧着ツール上に前記装飾インサート(10)を受け入れて保持するように意図された接触界面、
を備える、圧着ツールと、を備え、
前記圧着ツール(120)は、前記圧着ツール(120)の前記圧着界面(125)と前記装飾インサート(10)との間のいかなる直接接触も回避するように意図された内部の空き空間(127)を有する、圧着ツーリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、時計製造又は宝飾品に関し、特に、本発明は、装飾インサート、宝石、半宝石、又は装飾用石、宝石用原石、又は任意の他の追加の装飾部品などの装飾要素を受け入れるように意図された、時計又は宝飾品のための支持体に関する。このような支持体はベゼルと呼ばれることがあり、装飾要素は支持体上に圧着することができる。
【0002】
関連技術
米国特許第1,092,587号明細書は、時計又は宝飾品に関する従来技術において知られており、圧着される宝石用原石のパビリオン上に折り畳まれるタブを有する支持体を開示している。他方で、このシステムは、パビリオンを隠すなどの欠点を有する可能性があり、これは輝きに影響を及ぼす可能性がある。なお、折り畳まれるタブは、いかなるはね返りも有してはならず、そうでなければ、宝石用原石が不十分に圧着されてしまい、動いてしまう可能性があるということにも留意されたい。したがって、可能な限り弾性変形が小さい高延性材料を選択する必要がある。また、製造方法は、シートメタルから開始することを必要とし、そのことは、支持体の形状を制限し得るということにも留意されたい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の上述の欠点に対処することであり、特に、第1に、製造が容易であり、かつ/又は装飾インサートの輝きにできるだけ影響を与えず、かつ/又は支持体内の装飾インサートの位置及び向きの最適な反復性を保証し、かつ/又は高品質の圧着を保証する、言い換えれば、支持体上の装飾インサートの堅牢な及び/又は審美的な固定を伴う、装飾インサートのための支持体を提案することである。
【0004】
この目的のために、本発明の第1の態様は、時計又は宝飾品アイテムのための支持体であって、支持体と、支持体上に圧着された宝石用原石などの装飾インサートとを備える支持体に関し、その支持体は、
-ユーザに見えるように配置された前面と、
-後面と、
-前面と後面との間に配置され、装飾インサートを受け入れるように意図された少なくとも1つの貫通ハウジング(又は貫通孔)であって、
-装飾インサートを観察者に見えるようにするために、前面に設けられるか、配置されるか、又は開口する露出開口部と、
-装飾インサートを貫通ハウジング内に導入するために、後面に設けられるか、配置されるか、又は開口する挿入開口部と、
-装飾インサートを貫通ハウジング内に位置決めするためのマウント、を備える貫通ハウジングと、を備え、
支持体は、装飾インサートの圧着を生成するために、マウントに当接して位置決めされた装飾インサート上で塑性変形されるように意図された、好ましくは後面から圧着される部分(被圧着部分)を備えることを特徴とする。
被圧着部分は、装飾インサート上で塑性変形され、言い換えれば、不可逆的に変形されて、支持体上への装飾インサートの固定が、信頼性が高く堅牢となり、支持体と装飾インサートとの間の相対移動のリスクがないように意図されている。なお同様に、被圧着部分は、後面側に配置されて、ユーザがそれを見ることがないようになっており、前面の外観は、被圧着部分及び実行される圧着とは無関係であり、これは、デザイン及び/又は装飾の大きな自由度を提供するこということに留意されたい。
【0005】
一実施形態によれば、被圧着部分は、露出開口部と挿入開口部との間に配置することができる。一実施形態によれば、被圧着部分は、マウント及び/又は装飾インサートの周辺又は周囲に配置することができる。
【0006】
一実施形態によれば、支持体は、後面側に配置された支承面を備えることができ、その支承面は、被圧着部分を装飾インサート上で変形させるように意図された圧着ツールのための圧着終了支承を提供するように意図されている。支承面は、装飾インサートに加えられる力をより良好に制御することを可能にする圧着移動終了時の当接部として作用することができる。より具体的には、移動終了時に、圧着ツールによって加えられる力を支承面を介して直接吸収するのは支持体自体であり、これらの力は装飾インサートを通過しない。このような実装態様により、支承面及び被圧着部分が同じ単一部品、すなわち支持体上に設けられるので、幾何学的ばらつきを低減することによって一連の寸法を保証することが可能になる。言い換えれば、本発明は、圧着寸法又は圧着移動を決定するための支承面の使用に関するものでもあり得る。支承面のそのような使用は、支承面と装飾インサートのマウントとの間の特定の寸法決め及び/又は公差を必要とする。特に、支承面は、支持体の単純な後面ではなく、圧着ツールの当接機能専用の面である。一実施形態によれば、支承面は、被圧着部分とは別個であるか又は異なる。特に、支承面は、圧着前又は圧着後に、被圧着部分とは別個であるか又は異なる。支承面はいかなる圧着変形も受けない。
【0007】
一実施形態によれば、支承面は、ユーザからは隠されるように配置することができる。典型的には、被圧着部分は後面からアクセス可能であるので、支承面は有利にはユーザに見えないように意図される。特に、圧着ツールは前面と接触しないということが理解される。したがって、前面は、いかなる変形又は艶消しも受けない。
【0008】
一実施形態によれば、支承面は、被圧着部分の周辺に、好ましくは被圧着部分の周囲に配置することができる。
【0009】
一実施形態によれば、被圧着部分は、好ましくは円筒形の中央面と、支承面に隣接する、好ましくは円錐形又は円錐台形の外面とを備えるリップを備えることができる。一実施形態によれば、リップは、貫通ハウジング内への装飾インサートの導入前に、支持体上に形成されるか又は存在することができる。言い換えれば、支持体が、リップ及び貫通ハウジングとともに製造(マシニング加工、成形など)され、次いで、装飾インサートが、貫通ハウジング内に導入される。この実施形態によれば、予め存在しているリップは、貫通ハウジング内への装飾インサートの導入後に変形される。
【0010】
一実施形態によれば、支承面は後面に配置することができる。一実施形態によれば、支承面を形成する後面は、被圧着部分及び/又はマウントとは別個であり、かつ/又は分離されており、かつ/又はある距離だけ離れて配置される。
【0011】
一実施形態によれば、前面は、ユーザに見えるように意図された被装飾面であって、表面コーティング、ダイヤモンドめっき、研磨、又は彫刻などの装飾仕上げ又は装飾終端を含むことができる被装飾面を含むことができる。したがって、被装飾面は、挿入開口部及び被圧着部分の反対側に位置し、被装飾面は、圧着ツールに対して露出せず、かつ特定の終端を設けることができ、かつ/又は被装飾面の外観が、被圧着部分の圧着によって影響を受けないことを保証することができる。いずれにしても、圧着が行われると、前面に終端処理を施す必要はない。
【0012】
一実施形態によれば、圧着方向及び圧着方向に垂直な平面において、
-支承面は、第1の突出面を有することができ、
-前面(言い換えれば、被装飾面)は、第2の突出面を有することができ、
第2の突出面の面積は、第1の突出面の面積よりも大きくてもよく、好ましくは、第2の突出面の面積は、第1の突出面の面積の値の150%よりも大きくてもよく、好ましくは、第2の突出面の面積は、第1の突出面の面積の値の200%よりも大きくてもよい。上記の実装態様によれば、被装飾面は、支承面よりも著しく大きくすることができ、その結果、接触圧力又はヘルツ圧力(一方では圧着ツールと支承面との間、他方では被装飾面とホルダとの間の圧着移動終了時におけるもの)は、支承面の側でより高くなる。その結果、圧着力によって引き起こされる可能性のあるマーキングが支承面の側に生じ、被装飾面はマーキングされないままとなる。
【0013】
一実施形態によれば、装飾インサートの圧着は、ベゼル圧着であってもよい。そのような圧着は、装飾インサートの後部(例えば、宝石用原石のパビリオン)を隠すことなく、又は大幅に隠すことなく、リップ又は薄い厚さの材料で装飾インサートを全体的に取り囲み、その結果、輝きはほとんど影響を受けない。そのような実施形態では、被圧着部分は、マウントを取り囲む連続部分(例えば、リップ)である。したがって、圧着力は、装飾インサートの周辺全体にわたって分散され、これにより、特にシボ圧着又はクロー圧着に関しての損傷のリスクが低減される。同様に、予め存在しているリップは、特に、被圧着部分が圧着ツールによって支持体に切り込まれる解決策に関して、圧着力を低減することができる。なお、この解決策は、圧着を簡単にすることができる一方で、特にシボ圧着又はクロー圧着に関して、より良好な抵抗又は機械的強度を保証するということに留意されたい。この解決策はまた、支持体の貫通ハウジング内の装飾インサートの正確な向き及び位置決め、すなわち再現可能かつ反復可能な向き及び位置決めを保証する。
【0014】
一実施形態によれば、被圧着部分は、マウントの周辺に配置され、装飾インサート上に完全に又は部分的に折り畳まれるように意図されたリップを備えることができる。折り畳まれるそのようなリップは、簡単な圧着ツールによる簡単な圧着を可能にする。一実施形態によれば、リップは、貫通ハウジング内への装飾インサートの導入前に、支持体上に形成されるか又は存在することができる。言い換えれば、支持体が、リップ及び貫通ハウジングとともに製造(マシニング加工、成形など)され、次いで、装飾インサートが、貫通ハウジング内に導入される。この実施形態によれば、予め存在しているリップは、貫通ハウジング内への装飾インサートの導入後に変形される。
【0015】
一実施形態によれば、リップは凹部又はスロットを備えることができる。そのような実装形態は、デザイン及び/又は製造の大きな自由度を提供する。圧着力は、低減することができる。
【0016】
一実施形態によれば、被圧着部分は、花弁の形態の複数の変形可能部分を含むことができ、これらの変形可能部分は、マウントの周辺に配置され、装飾インサート上に折り畳まれるように意図されたものである。圧着力は、低減することができる。
【0017】
一実施形態によれば、装飾インサート上に折り畳まれると、複数の変形可能部分のうちの少なくとも2つの隣接する変形可能部分(例えば、花弁)は、少なくとも部分的に連続的なものとすることができる。圧着終了時の外観は、高品質なものとなる。
【0018】
一実施形態によれば、被圧着部分は、圧着ツールによって押し戻される、かつ/又は剪断される、貫通ハウジングの少なくとも1つの側壁部分を含むことができる。そのような場合、圧着ツールは、貫通ハウジングの材料を剪断及び/又は切開して、貫通ハウジングを装飾インサート上に押し付ける、かつ/又は折り曲げることができる。
【0019】
一実施形態によれば、装飾インサートは、後面側に配置されるように意図された後方アンダーカット部を備えることができ、被圧着部分は、後方アンダーカット部に当接して圧着されるように意図され得る。
【0020】
一実施形態によれば、支持体は、装飾インサートを露出開口部上にセンタリングするように意図された、少なくとも1つのセンタリング面を備えることができる。そのようなセンタリング面は、支持体(その被装飾面、その外周辺)と装飾インサート(カットされた宝石用原石のクラウン又はテーブル)との間の正確な位置決めを提供することによって、知覚される品質を改善することができる。
【0021】
一実施形態によれば、装飾インサートは、ガードルなどの、例えば円筒形である側面を備えることができ、センタリング面は、側面を受け入れるように設けることができる。
【0022】
一実施形態によれば、被圧着部分は、マウントと挿入開口部及び/又は後面との間に配置することができる。
【0023】
一実施形態によれば、マウントは、装飾インサートとの、連続的である接触面を備えることができる。接触面は、平坦であってもよいし、円錐形又は円錐台形であってもよい。装飾インサートへの応力のいかなる集中も回避するために、支持体と装飾インサートとの間に面接触を有するためには、装飾インサートの形状と相補的な形状が可能である。
【0024】
一実施形態によれば、マウントは、装飾インサートとの、不連続である接触面を備えることができる。例えば、装飾インサートの、光の通過、視認性、又は露出を最大化するため、支持体の装飾インサートを解放するために、空き空間であるスロットを設けることが可能である。
【0025】
本発明の第2の態様は、時計又は宝飾品アイテムに関することができ、その時計又は宝飾品アイテムは、
-第1の態様による少なくとも1つの支持体と、
-貫通ハウジング内にマウントに当接して配置された少なくとも1つの装飾インサートであって、被圧着部分が装飾インサート上に圧着又は折り畳まれる、少なくとも1つの装飾インサートと、を備える。
【0026】
本発明の第3の態様は、時計又は宝飾品アイテムの製造方法に関することができ、その方法は、
-第1の態様による支持体を提供するステップと、
-任意選択的に、支持体の前面を圧着ホルダ上に配置するステップであって、前面は、部分コーティング又は中間コーティングによってコーティング又は保護され得るということが理解される、ステップと、
-挿入開口部を介して貫通ハウジング内に、装飾インサートを導入するステップと、
-装飾インサートに当接して、被圧着部分を塑性変形させるステップと、を含む。
【0027】
一実施形態によれば、被圧着部分を塑性変形させるステップは、挿入開口部を介して貫通ハウジング内に圧着ツールを導入することによって実行することができ、圧着ツールは、被圧着部分と接触するように意図され、被圧着部分を塑性変形させるための圧着界面を備えることができる。
【0028】
一実施形態によれば、被圧着部分を塑性変形させるステップは、支持体上への圧着ツールの機械的当接によって終了することができる。言い換えれば、変形ステップは、圧着ツールの当接の最終ステップを含む。この実施形態によれば、圧着ツールは、圧着のための移動の終端を画定するために支持体と当接するように意図された当接面、例えばショルダ付き面を備えることができる。この実施形態によれば、当接面は、圧着界面とは別個であり、かつ/又は分離されており、かつ/又はある距離だけ離れて配置される。したがって、圧着界面及び当接面は、被圧着部分の十分な変形を保証するように意図されている。
【0029】
一実施形態によれば、圧着ツールは、装飾インサートと協働するように意図された接触界面を備えることができ、製造方法は、少なくとも被圧着部分の塑性変形のステップの前又はその間に、接触界面を有する支持体に対して装飾インサートを位置決めすることからなるステップを含むことができる。典型的には、接触界面は、被圧着部分を折り畳むように意図されたツールの作業部分(圧着界面)に対して浮動していてもよい。したがって、接触界面は、装飾要素をセンタリングするために、圧着ツールの残りの部分よりも前に装飾要素と接触することができ、接触界面は、次いで、圧着作業中に圧着ツールの残りの部分に対して摺動することができる。
【0030】
一実施形態によれば、接触界面は、装飾インサートの把持を実行するように意図されることができ、製造方法は、圧着ツールによって装飾インサートを把持するステップを含み、装飾インサートを貫通ハウジング内に挿入するステップは、圧着ツールによって実行することができる。また、装飾インサートを、例えば吸引によって所定の位置に保持することによって、接触界面上に位置決めして、次いで、支持体への挿入を自動的に行うことも可能である。
【0031】
一実施形態によれば、製造方法は、少なくとも被圧着部分を塑性変形させるステップ中に、接触界面と圧着界面との間の相対移動のステップを含むことができる。
【0032】
一実施形態によれば、圧着ツールは、好ましくは貫通ハウジングの軸方向と同軸の、直線移動に従うことができる。
【0033】
一実施形態によれば、被圧着部分を変形させるステップは、圧着ツールの単一の動作及び/又は単一の移動で実行され得る。
【0034】
一実施形態によれば、圧着界面は、凹部、空き空間、又は被圧着部分の到達範囲を超える部分を含むことができ、被圧着部分を塑性変形させるステップは、被圧着部分に沿った、被圧着部分の不均一又は不連続な変形を伴って、実行することができる。
【0035】
本発明の第4の態様は、第3の態様による製造方法を実施するために提供される圧着ツーリングに関することができ、その圧着ツーリングは、
-第1の態様による支持体を受容するように意図された圧着ホルダと、
-圧着ツールであって、
-第1の態様による支持体の被圧着部分と接触し、被圧着部分を塑性変形させるように意図された圧着界面と、
-圧着界面に対して移動可能であり、圧着動作の前に圧着ツール上に装飾インサートを受け入れて保持するように意図された接触界面、を備える圧着ツールと、を備え、
圧着ツールは、圧着ツールの圧着界面と装飾インサートとの間のいかなる直接接触も回避するように意図された内部の空き空間を有する。
【0036】
一実施形態によれば、圧着ツールは、少なくとも被圧着部分の塑性変形中に、装飾インサートと協働し、装飾インサートを支持体に対して位置決めするように意図された接触界面を備えることができ、接触界面は、圧着界面に対して、例えば流動によって移動可能であり得る。
【0037】
本発明の第5の態様は、圧着ツールと、少なくとも1つの支持体と、その少なくとも1つの支持体に圧着される少なくとも1つの装飾インサートとを備える圧着キットに関することができる。
【0038】
一実施形態によれば、支持体は、
-ユーザに見えるように配置された前面と、
-後面と、
-前面と後面との間に配置され、装飾インサートを受け入れるように意図された少なくとも1つの貫通ハウジングであって、
-装飾インサートを観察者に見えるようにするために、前面に設けられるか、配置されるか、又は開口する露出開口部と、
-装飾インサートを貫通ハウジング内に導入するために、後面に設けられるか、配置されるか、又は開口する挿入開口部と、
-装飾インサートを貫通ハウジング内に位置決めするためのマウント、を備える貫通ハウジングと、を備え、
支持体は、好ましくは後面から圧着される部分(被圧着部分)を含み、この部分は、例えば圧着リップによって形成され、例えば連続しており、マウントに当接して位置決めされた装飾インサート上で塑性変形されるように意図されている。一実施形態によれば、支持体は、圧着ツールのための圧着終了当接部を形成するように設けられた支承面を備える。一実施形態によれば、圧着ツールは、圧着終了時に支承面に当接するように意図された当接面、例えばショルダ部を備える。そのような圧着キットは、圧着中に装飾インサートを損傷又は移動させるリスクなしに、再現可能かつ反復可能な圧着を保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として与えられ、添付の図面によって示される本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読むと、より明確に明らかになるであろう。
【0040】
図1】本発明に係る支持体の断面図を示す。
【0041】
図2図1の支持体に受け入れられ得る装飾インサートの側面図を示す。
【0042】
図3図1の支持体に受け入れられた、図2の装飾インサートを示す。
【0043】
図4図1の支持体に受け入れられた図2の装飾インサートを固定するための圧着動作の前の、圧着ツール内に配置された図3のアセンブリを示す。
【0044】
図5】圧着動作後の、圧着ツール内に配置された図3のアセンブリを示す。
【0045】
図6】圧着動作後の図3のアセンブリを示す。
【0046】
図7】圧着動作後の図3のアセンブリの、正面からの斜視図を示す。
【0047】
図8】圧着動作後の図3のアセンブリの後方からの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、時計又は宝飾品アイテムのアイテムに組み込むことができる装飾アセンブリを形成するために、装飾インサート10(図2)を受け入れるように意図された支持体20(図1)に関する。装飾インサート10は、好ましくは、任意の形状であり得る宝石用原石10又はカットされた宝石10である。支持体20は、ベゼル、文字盤、ミドル、金属ブレスレットリンク、又は石を収容することができる任意の他の宝飾品もしくは時計製造構成要素とすることができる。支持体20は、金、白金、真鍮、又は鋼などの延性材料で作られることが好ましい。図1は、図2に示される装飾インサート10を受け入れて固定するように意図された支持体20の断面図を示す。
【0049】
図1の支持体20は、特に、
-ユーザに見えるように配置された前面22と、
-前面22の反対側に配置された後面23と、
前面22と後面23との間に配置され、装飾インサート10を受け入れて、支持体20内の中心に置くように意図された貫通ハウジング21であって、
装飾インサート10を観察者に見えるようにするために前面22に設けられた露出開口部211、
装飾インサート10を貫通ハウジング21に導入するために後面23に設けられた挿入開口部212、及び
貫通ハウジング21内に装飾インサート10を位置決めするように意図されたマウント24、を備える貫通ハウジング21と、
-後面23から空き空間27を介して圧着ツールにアクセス可能であり、マウント24に当接して位置決めされた装飾インサート10上で塑性変形され、装飾インサート10の圧着を生成するように意図された被圧着部分25と、
-後面側23に設けられた、特に円筒形の外側部分28と、
-時計又は宝飾品アイテム上の支持体20のアセンブリの軸方向当接部を画定するために、外側部分28に隣接するマウント29と、を備える。
【0050】
前面22は、観察者又はユーザに見えるように意図されており、例えば、研磨(鏡面研磨)、装飾的な彫刻、面取り、又は日輪型装飾を構成する放射状の線などの装飾的な仕上げを有することができる。支持体20の可視部分を形成する前面22の、幾何学的定義には制限はない。好ましくは、前面22は、例えば、装飾インサート10に価値を与える面取り又は切り子面を含む幾何形状を採用する。前面22の仕上げは、有利には、特にダイヤモンドめっき、黒色研磨、又は鏡面研磨とすることができる。サテン仕上げ、日輪型装飾、渦巻き状装飾、ギョーシェ、又は任意の他の時計製造用仕上げなどの仕上げも、前面22の様々な表面上に独立して適用することができる。更に、例えばレーザーによって生成されたマーク又は彫刻も適用することができる。インク、エナメル、セラミック又は発光材料などの着色堆積物を適用することもできる。
【0051】
後面23は、観察者又は最終使用者から隠されるように意図されてもよいが、逆も可能であり、言い換えれば、後面23は見えるままにされてもよい。
【0052】
したがって、マウント24は、露出開口部211と挿入開口部212との間に配置され、装飾インサート10を適切にセンタリングするために、円錐形又は円錐台形の表面を有する。マウント24の開口部は、貫通ハウジング21の最小通路直径である直径D2を有する。
【0053】
被圧着部分25は、挿入開口側212でマウント24から張り出し、この例では、中心円筒形凹部中心と、支承面26上に開口する円錐形又は円錐台形外面とを有するリップを形成する(言い換えれば、圧着リップ又は少なくともその外面は、支承面26に隣接する)。支承面26自体は、空き空間27の底部を形成する。空き空間27は、後面23に直接開口しており、後述するように、圧着ツールの通路を提供することができる。図1に示すように、被圧着部分25は、その自由端に向かって減少する断面を有する。
【0054】
マウント24及び/又は被圧着部分25において、装飾インサート10を角度的に配向するための形状又はカウンタ形状を見ることができる。特に、裸の装飾インサート10が、上から見たときに、非円形のサイズ、シルエット、又は形状(楕円形、ナシ形、バゲット形、多角形のサイズ、形状又はシルエットなど)を有する場合、マウント24及び/又は被圧着部分は、次いで、正確かつ信頼性のある角度配向を保証するのに適した受けカウンタ形状を有することができる。
【0055】
支持体20は、ここでは貫通ハウジング21の対称軸を形成する中心軸A2セントラルを有する。
【0056】
図2は、図1の支持体20内に受け入れられ得る装飾インサート10の側面図を示す。装飾インサート10は、石の下部(図2参照)によって画定されるクラウン12と、上部(図2参照)によって画定されるパビリオン13とを備える宝石であり得る。2つの部分は、直径D1のガードル11によって分離され、ガードル11は、石の輪郭又は周辺縁部を画定する。加えて、石は、クラウン12の中心に、石の大きな下側切り子面によって画定されるテーブル14を備える。最後に、装飾インサート10は、その中心を通り、テーブル14に垂直な軸A1を有する。
【0057】
図3は、図1の支持体20に受け入れられた図2の装飾インサート10を示す。このように提示された装飾アセンブリ内では、クラウン12は、装飾インサート10の前部又は可視部分であり、パビリオン13は、装飾インサート10の後部又は隠れた部分である。
【0058】
装飾インサート10は、高品質の美的装飾アセンブリを形成するために支持体20内に配置されるように意図されている。より詳細には、装飾インサート10は、支持体20の軸A2と実質的に同軸の方向に、支持体20の後部から挿入されることによって、貫通ハウジング21内に配置されるように意図されている。軸A2は、貫通ハウジング21に対して長手方向であり、その中心を通過する。
【0059】
貫通ハウジング21は、装飾インサート10のガードル11に合うように調整され、その最適な位置決めを可能にするようにマシニング加工される。更に、マウント24には、装飾インサート10を正確に保持するために、ガードル11の寸法、特に直径D1よりも小さい寸法D2を有する開口部が設けられている。
【0060】
貫通ハウジング21のマウント24は、装飾インサート10の軸方向当接及び正確な位置決めを画定するように、クラウン12と協働するか、又はクラウン12に合うように調整されるように意図されている。より詳細には、マウント24は、テーブル14を軸A2に沿って高精度で位置決めし、装飾インサート10の軸A1と支持体20の軸A2とが可能な限り完全に同軸になるようにテーブル14を配向するように画定される。
【0061】
マウント24によって画定される開口部は、装飾アセンブリの可視側に、テーブル14と、クラウン12の大部分とが見えるように設けられる。より具体的には、クラウン12の外周上に位置する小さな部分のみがマウント24と協働し、装飾インサート10の可能な限り大きな部分が現れることを可能にするように意図されることが好ましい。
【0062】
なお、装飾インサート10は、図3に表現されているものに対して「他の方向」で、支持体20に取り付けられ、圧着され得るということに留意されたい。より具体的には、装飾インサート10のパビリオン13をマウント24に当接させて位置決めすることができ、被圧着部分25はクラウン12に対峙する。したがって、装飾アセンブリの可視側となるのはパビリオン13である。
【0063】
支持体20は、装飾インサート10の圧着機能を保証にすることを目的として、支持体20の後側に配置された被圧着部分25を備える。図4は、図1の支持体20内に受け入れられた図2の装飾インサート10を固定するための圧着動作の前の、圧着ツール内に配置された図3のアセンブリを示す。
【0064】
圧着ツールは、実質的に、(装飾インサート10が支持体20内に配置された状態で)支持体20を受け入れるホルダ110と、支持体20の被圧着部分25に面する圧着ツール120とを備える。
【0065】
ホルダ110は、支持体20を適切にセンタリングするためのボア111と、支持体20の前面22を受け入れるベース面112とを備えることができる。ベース面112は、いかなる干渉も回避するために、テーブル14に面する凹部又は適所を有することができる。任意選択的に、ベース面112は前面22と完全に対峙することができる。
【0066】
圧着ツール120は、圧着界面125と、貫通路128が開口する内部の空き空間127とを有する中空シリンダ121を備えたパンチの形状を有する。圧着界面125は、被圧着部分25に直接面しており、圧着ツール120の底部において、終端面126(それ自体が支持体20の支承面26に面する)で終端する。
【0067】
図4の装飾アセンブリは、圧着される準備ができており、この目的のために、圧着ツール120は、図5に示すように、下方への軸方向移動を行い、移動終了位置又は圧着終了位置に移動することができる。なお、図5では、その下方への移動中に、圧着ツール120が被圧着部分25と接触するようになり、その結果、圧着界面125が装飾インサート10に当接して被圧着部分25を折り畳むということに留意されたい。詳細には、被圧着部分25は、パビリオン13の周辺部上に折り畳まれ、その結果、装飾インサート10のベゼル圧着が、支持体20の後部によって生成される。
【0068】
圧着ツール120の内部の空き空間127及び貫通路128は、装飾インサート10とのいかなる干渉も回避するということが分かる。また、圧着ツール120の終端面126は、支承面26と接触して、被圧着部分25の変形が良好に制御されるように、かついかなる意図せざる圧着力も、装飾インサート10を介してではなく、圧着ツール120から支持体20に直接伝わるようすることが可能であり、それにより、装飾インサート10が保護されることがわかる。
【0069】
また、ホルダ110と接触する前面22は、支承面26よりも、及び/又は塑性変形される被圧着部分25の断面よりもはるかに大きい接触面積を有するということが分かる。ホルダ110と接触する前面22の、この大きな接触面積の結果として、前面22は、不可逆的な変形を受けず、圧着に関連するマークを被ることがなく、支持体20の目に見える外観及びその知覚される品質は、圧着によって影響を受けない。
【0070】
ベゼル圧着は、支持体20内で、石を機械的保持するのに優れている。更に、このタイプの圧着は、パビリオン13の外周部のみを覆い、したがって、可能な最大の光が通過することを可能にし、したがって、透明な石の輝きを最大にすることができる。
【0071】
被圧着部分25上の圧着界面125の支承のレベルにおいて、圧着界面125及び/又は被圧着部分25は、有利には、円錐形もしくは円錐台形、又はより一般的には、傾斜面を有する断面を有する。有利なことに、この構成は、圧着ツール120に加えられる軸方向の力に、軸A1、A2に対して主に半径方向の成分を有する被圧着部分25の変形を生じさせ、パビリオン13に対峙させ、支持体20上に装飾インサート10を圧着させる。
【0072】
したがって、圧着ツール120に加えられる軸方向の力は、装飾インサート10には直接伝達されず、リップの実質的に半径方向の変形に変換される。言い換えれば、圧着ツール120に加えられる力は、装飾インサート10に対して主に垂直な成分を伴って装飾インサート10には直接伝達されず、装飾インサート10に主に軸方向の力を生じさせない。有利なことに、これにより、装飾インサート10の損傷又は変位、あるいは支持体20、より具体的にはマウント24の望ましくない変形を回避することが可能になる。
【0073】
被圧着部分25の周囲が同時に変形されるという事実は、圧着中に装飾インサート10の最適なセンタリング又は自己センタリングを保証することができる。更に、この事実により、傾きが発生するのを回避し、装飾インサート10の軸A1と支持体20の軸A2との間の最適な同軸関係を保証することが可能になる。
【0074】
圧着ツール120は、外側を介して圧着界面125に隣接する外側部分121を備える。外側部分121の寸法は、支持体20の空き空間27への圧着ツール120の挿入を可能にするようなものである。
【0075】
圧着ツール120は、好ましくは、軸方向に案内されることを可能にするブラケット上に組み立てられる。圧着ツール120は、位置及び/又は力に関して制御することができ、自動的に、半自動的に、又はユーザによって手動で操作することができる。
【0076】
圧着は、圧着ツール120の単一の動作で、すなわち、被圧着部分25に当接する圧着ツール120の単一の軸方向移動によって行われることが意図される。あるいは、被圧着部分25を形作るための動作は、一連の軸方向移動及び停止を含むことができ、圧着ツール120の前後移動を含んでも含まなくてもよい。したがって、装飾インサート10の支持体への自動挿入を提供するために、支持体20における圧着ツール120のこの移動を利用することが可能であるということに留意されたい。より具体的には、接触又は把持界面を、圧着ツール120(圧着界面125に対して移動可能である)上に設け、静止位置において圧着ツール120上に、装飾インサート10を受け入れて保持することができるようにしてもよい。圧着ツール120が支持体20に向かって移動する間、装飾インサート10はマウント24に向かって移送され、マウント24に当接して位置決めされ、次いで被圧着部分25が変形される。
【0077】
圧着ツール120の軸方向当接及び/又は制御は、有利なことに、圧着中に圧着ツール120の軸方向移動が制限されるのを可能にし、特に貫通ハウジング21内の装飾インサート10の位置決め又は保持の質を低下させ得る被圧着部分25及び/又はマウント24の過度の変形を防止することができる。
【0078】
石を位置決めし、配向し、保持するように意図された支持体20又は支持体20の少なくとも様々な部品は、フライス削り又は旋削などの、大量生産を可能にする高精度製造手段を使用してマシニング加工することができるように設計される。より具体的には、少なくとも貫通ハウジング21、マウント24、マウント24によって画定される開口部、及び被圧着部分25が、上記の製造手段を使用してマシニング加工される。その結果、有利なことに、テーブル14を軸A2に沿って正確かつ反復可能な方法で配向及び位置決めすることが可能である。
【0079】
更に、装飾インサート10を後部を介してマウント24において圧着することによって、テーブル14と前面22との間の寸法の連鎖を最小限の寸法に減少させることが可能であり、それによって、特に、軸A2に沿った宝石の位置決めにおいて、分散又は標準偏差を制限することが更に可能である。
【0080】
開示された解決策によって提供される精度及び再現性は、複数の装飾インサート10及び/又は装飾アセンブリが並んで組み立てられるときに特に有利である。その理由は、この解決策によって、テーブル14のアセンブリを実質的に同じ高さに位置決めし、それらを実質的にすべて同じ平面内に高精度及び/又は低分散で配向させることが可能になるからである。その結果、すべてのテーブル14が同じ石の同じ材料から得られたかのように、すべての装飾インサート10が、同じ調子の反射及びキャッツアイ効果を有することとなる。
【0081】
したがって、開示された解決策は、装飾アセンブリの後側又は隠れた側の圧着を可能にする。その結果、装飾アセンブリの可視側の美観又は仕上がりは、有利なことに、圧着の実施の質に依存しないことになる。より具体的には、ここで提案される解決策は、装飾アセンブリの後側で実行される圧着機能が、装飾アセンブリの前側又は可視側で実行される美的機能から分離されることを可能にする。
【0082】
更に、この解決策により、高い抵抗力又は機械的強度、並びに支持体20の貫通ハウジング21内での装飾インサート10の正確な向き及び位置決めを保証しながら、圧着を簡略化することが可能になる。
【0083】
図4及び図5を参照すると、圧着は、以下の、
-支持体20を、ホルダ110に当接して前面22を配置又は保持した状態で提供するステップと、
-クラウン12が、マウント24に当接するように、装飾インサート10を、支持体20の挿入開口部212を介して貫通ハウジング21内に挿入するステップと、
-被圧着部分25と接触するまで、圧着ツール120を、軸A2と同軸に移動させるステップと、
-被圧着部分25がパビリオン13に当接して折り畳まれることを可能にする十分な力を圧着ツール120に加えることによって、装飾インサート10を支持体20上に圧着するステップと(前述したように、このステップは、一連の軸方向移動及び停止を含むことができ、前後移動を含んでも含まなくてもよい)、
-力が設定値に達すると、かつ/又は圧着ツール120の移動が設定値に達すると、かつ/又は圧着ツール120が支持体20の支承面26に当接すると、力の印加を停止するステップと、
-装飾アセンブリの届かないところに圧着ツール120を配置するステップと、を含むことができる。
【0084】
図6は、図5の圧着動作後の、図3のアセンブリを示す。被圧着部分25が、パビリオン13の周辺部上に正確に折り畳まれ、テーブル14が、支持体20の前面22と完全に位置合わせされているということが分かる。
【0085】
図7は、圧着動作後の図3のアセンブリの正面からの斜視図を示し、支持体20が装飾インサート10の大部分を見えるままにしていることを明確に示す。図4又は図5のホルダ110との大きな接触面積を有する前面22には、マークがないということが分かる。
【0086】
図8は、圧着動作後の図3のアセンブリの後面斜視図を示し、装飾インサート10の全周で折り畳まれてベゼル圧着部を形成している被圧着部分26を明確に示す。
【0087】
圧着が行われると、図7に示すように、前面22から装飾アセンブリを見るユーザは、前面22から実行されるベゼル圧着又は面一圧着によって装飾インサート10が支持体20に固定されていると考える。この前面は、圧着によって変化しない外観を有し、知覚される品質の概念は非常に高い。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明による支持体及び/又は装飾アセンブリ、並びにその製造は、産業上利用可能である。
【0089】
本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される本発明の様々な実施形態に対して、当業者に明らかな様々な修正及び/又は改善を適用することができることが理解される。
【0090】
特に、マウント24は、装飾インサート10の全周又は全周辺にわたる支持から利益を得るように設けられるということに留意されたい。しかしながら、マウント24は、支持のない部分を有することもでき、その結果、装飾インサート10の外周部の周りには、部分的な支持の部分を有するようになってもよい。
【0091】
好ましくは、ベゼル圧着は、装飾インサート10の全外周部又は全周辺に設けられる。しかしながら、被圧着部分25は、リップのない部分を含むことができ、その結果、部分的なベゼル圧着又は石の外周部の特定の部分のみのベゼル圧着を得ることができる。代替的又は追加的に、変形可能な被圧着部分を、例えば花弁の形態で圧着することが可能である。
【0092】
圧着ツール120の圧着界面125は、凹部、空き空間、又は被圧着部分25のマウントの外側部分を備えることができ、その結果、圧着界面125が、被圧着部分25の特定の部分上にのみ折り畳まれ、部分的なベゼル圧着又は装飾インサート10の外周部の特定の部分上のみのベゼル圧着を得ることができる。
【0093】
支持体20は、マシニング加工された被圧着部分25を含まなくてもよい。その結果、装飾インサート10は、石の周りの加工硬化による材料の変位によって、又は圧着中に圧着ツール120によって剪断されたリップによって、支持体20に圧着され得る。
【0094】
圧着ツール120の内部の空き空間127は、パビリオン13との接触によって装飾インサート10を案内することによって、圧着中に装飾インサート10の位置決めに関与することができる。パビリオンによる案内は、追加の手段、例えば、圧着ツール120に対して軸方向に自由度を有する案内手段又は接触界面を備えるであろう。
【0095】
内部の空き空間127は、圧着中に装飾インサート10を角度的に配向するように、パビリオン13の幾何学的形状を組み込んで対峙させることができる。
【0096】
支持体20に面する装飾インサート10の角度配向は、表示手段によって制御又は支援することができる。支持体20と装飾インサート10との間に、ある角度方向が保証される場合には、装飾インサート10の角度方向を保証するために、例えば、装飾インサート10の外側輪郭に対峙するカウンタ形状を、マウント24又は被圧着部分25に設けることによって、マウント24又は被圧着部分25を利用することが可能である。
【0097】
装飾インサート10は、圧着ツール120によって収容又は担持されてもよく、圧着中に、圧着ツール120が装飾インサート10を支持体20の貫通ハウジング21に挿入し、1回の動作で圧着することができる。これを行うために、圧着ツール120は、装飾インサート10を把持するための又は保持するための手段を備えることができる。
【0098】
圧着は、支持体20に面する圧着ツール120の、又はその逆の、上から下又は下から上への相対移動によって行うことができる。この相対移動の間、装飾インサート10は、圧着中に圧着ツール120によって担持され、支持体20内の適所に配置され得る。
【0099】
当然ながら、支持体20は、複数の装飾インサート10を受け入れることができるように、複数のハウジング21を備えることができる。装飾インサート10が「上下逆さまに」圧着される場合も注目され得る。言い換えれば、装飾インサート10のパビリオン13をマウント24に当接して位置決めし、被圧着部分25はクラウン12に対峙する。したがって、装飾アセンブリの可視側となるのはパビリオン13である。
【0100】
コーティング又は一時的なオーバーモールドによって支持体の位置決めを提供する方法を使用して、装飾アセンブリを製造することも可能である。例えば、貫通ハウジング21の前面22及びアクセス可能な部分から開始することによって、複数の支持体20を、同一の金属プレートにマシニング加工することができる。前面が形成されて解放されると、前面は、未加工の支持体20の周りにコーティング又は保護エンベロープを形成する合成材料に埋め込むことができる。次に、後面23及び貫通ハウジング21の残りの部分(特にマウント24及び被圧着部分25)を、マシニング加工することができる。後面23のマシニング加工は、アクセスを得るために、プレートをひっくり返すことを必要とし得る。前面は依然として合成材料に埋め込まれているので、圧着は、合成材料に依存することによって後面から実行することができ、これは、前面22(前面22は合成材料に埋め込まれ、合成材料によって保護されている)に、意図せずマーキングがついてしまうリスクを、更に低減する。圧着が実行されると、合成材料を(例えば溶解によって)除去し、完成した支持体20を解放することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計又は宝飾品アイテムのための支持体(20)であって、前記時計又は前記宝飾品アイテムが、前記支持体(20)と、前記支持体(20)に圧着された宝石用原石などの装飾インサート(10)とを備える、支持体(20)であって、
-ユーザに見えるように配置された前面(22)と、
-後面(23)と、
-前記前面(22)と前記後面(23)との間に配置され、前記装飾インサート(10)を受け入れるように意図された少なくとも1つの貫通ハウジング(21)であって、
-前記装飾インサート(10)を前記観察者に見えるようにするために前記前面(22)に設けられた露出開口部(211)と、
-前記装飾インサート(10)を前記貫通ハウジング(21)内に導入するために前記後面(23)に設けられた挿入開口部(212)と、
-前記装飾インサート(10)を前記貫通ハウジング(21)内に位置決めするためのマウント(24)、
を備える、貫通ハウジング(21)と、を備え、
前記支持体(20)は、前記装飾インサート(10)の圧着を生成するために、前記マウント(24)に当接して位置決めされた前記装飾インサート(10)上で塑性変形されるように意図された被圧着部分(25)を備えることを特徴とする、支持体。
【請求項2】
前記後面(23)に配置された支承面(26)であって、前記装飾インサート(10)上の前記被圧着部分(25)を変形させるように意図された圧着ツール(120)のための圧着終了支承を提供するように意図された支承面(26)を備える、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項3】
前記支承面(26)は、前記被圧着部分(25)の周辺に、好ましくは前記被圧着部分(25)の周囲に配置されている、請求項2に記載の支持体(20)。
【請求項4】
前記被圧着部分(25)は、好ましくは円筒形の中央面と、前記支承面(26)に隣接する、好ましくは円錐形又は円錐台形の外面とを備えるリップを備える、請求項2に記載の支持体(20)。
【請求項5】
前記前面(22)は、ユーザに見えるように意図され、例えば、表面コーティング、ダイヤモンドめっき、研磨、又は彫刻などの装飾仕上げ又は装飾終端を含む被装飾面を含む、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項6】
圧着方向及び前記圧着方向に垂直な平面において、
-前記支承面(26)は、第1の突出面を有し、
-前記前面(22)は、第2の突出面を有し、
前記第2の突出面の面積は、前記第1の突出面の面積よりも大きく、好ましくは、前記第2の突出面の面積は、前記第1の突出面の面積の値の150%よりも大きく、好ましくは、前記第2の突出面の面積は、前記第1の突出面の面積の値の200%よりも大きい、請求項2から4のいずれか一項に従属する請求項5に記載の支持体(20)。
【請求項7】
前記装飾インサート(10)の前記圧着がベゼル圧着である、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項8】
前記被圧着部分(25)は、マウント(24)の周辺に、好ましくは前記マウント(24)の周りに配置され、前記装飾インサート(10)上に完全に又は部分的に折り畳まれるように意図されたリップを備える、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項9】
前記被圧着部分(25)は、前記圧着ツール(120)によって押し戻される、かつ/又は剪断される、前記貫通ハウジング(21)の側壁の少なくとも一部分を含む、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項10】
前記マウント(24)は、前記装飾インサート(10)との、連続的な接触面を含む、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項11】
前記マウント(24)は、前記装飾インサート(10)との、不連続な接触面を含む、請求項1に記載の支持体(20)。
【請求項12】
時計又は宝飾品アイテムであって、
-請求項1に記載の少なくとも1つの支持体(20)と、
-前記貫通ハウジング(21)内に、前記マウント(24)に当接して配置された少なくとも1つの装飾インサート(10)であって、前記被圧着部分(25)は、前記装飾インサート(10)上に圧着される、少なくとも1つの装飾インサート(10)と、
を備える、時計又は装飾品。
【請求項13】
時計又は宝飾品アイテムを製造するための方法であって、
-請求項1に記載の支持体(20)を提供するステップと、
-前記挿入開口部(212)を介して前記貫通ハウジング(21)内に、装飾インサート(10)を導入するステップと、
-前記装飾インサート(10)に当接して、前記被圧着部分(25)を塑性変形させるステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記被圧着部分(25)を塑性変形させる前記ステップは、前記挿入開口部(212)を介して前記貫通ハウジング(21)内に圧着ツール(120)を導入することによって単一の動作及び/又は単一の移動で実行され、前記圧着ツール(120)は、前記被圧着部分(25)と接触して前記被圧着部分(25)の外周部を、好ましくは同時に、塑性変形させるように意図された圧着界面(125)を備える、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記被圧着部分(25)を塑性変形させる前記ステップは、前記支持体(20)上への前記圧着ツール(120)の機械的当接によって終端する、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記圧着ツール(120)は、前記装飾インサート(10)と協働するように意図された接触界面を備え、前記製造方法は、少なくとも前記被圧着部分(25)の塑性変形のステップの前又はその間に、前記接触界面を有する前記支持体(20)に対して前記装飾インサート(10)を位置決めすることからなるステップを含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項17】
前記圧着ツール(120)は、好ましくは前記貫通ハウジング(21)の軸方向と同軸の、直線移動に従う、請求項13に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項13に記載の製造方法を実施するための圧着ツーリングであって、
-請求項1に記載の前記支持体(20)を受け入れるように意図された圧着ホルダ(110)と、
-圧着ツール(120)であって、
-請求項1に記載の前記支持体(20)の前記被圧着部分(25)と接触し、前記被圧着部分(25)を塑性変形させるように意図された圧着界面(125)、と
-前記圧着界面(125)に対して移動可能であり、圧着動作の前に、前記圧着ツール上に前記装飾インサート(10)を受け入れて保持するように意図された接触界面、
を備える、圧着ツールと、を備え、
前記圧着ツール(120)は、前記圧着ツール(120)の前記圧着界面(125)と前記装飾インサート(10)との間のいかなる直接接触も回避するように意図された内部の空き空間(127)を有する、圧着ツーリング。
【外国語明細書】