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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150428
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】アレルギー症状抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/12 20160101AFI20241016BHJP
   A61K 31/231 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A23L33/12
A61K31/231
A61P37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062995
(22)【出願日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2023063557
(32)【優先日】2023-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 綾
(72)【発明者】
【氏名】深川 聡子
(72)【発明者】
【氏名】佐山 慧門
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勝義
【テーマコード(参考)】
4B018
4C206
【Fターム(参考)】
4B018MD10
4B018MD13
4B018MD15
4B018MD25
4B018MD26
4B018MD61
4B018MD90
4B018ME07
4B018MF01
4B018MF03
4B018MF05
4B018MF06
4B018MF10
4B018MF12
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB07
4C206DB47
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZB13
(57)【要約】
【課題】アレルギー症状抑制剤の提供。
【解決手段】油脂中のジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上であり、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が40質量%以上である油脂を有効成分とするアレルギー症状抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂中のジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上であり、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が40質量%以上である油脂を有効成分とするアレルギー症状抑制剤。
【請求項2】
アレルギー症状が鼻及び/又は目のアレルギー症状である請求項1記載のアレルギー症状抑制剤。
【請求項3】
アレルギー症状が鼻水、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ及び涙目から選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載のアレルギー症状抑制剤。
【請求項4】
アレルギー症状がダニ、花粉、菌類、動物、昆虫及び食物から選ばれる少なくとも1種に起因する請求項1又は2記載のアレルギー症状抑制剤。
【請求項5】
油脂を構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が40質量%以上である請求項1又は2記載のアレルギー症状抑制剤。
【請求項6】
油脂中のジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上であり、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が40質量%以上である油脂を有効成分とするアレルギー症状抑制用食品。
【請求項7】
アレルギー症状が鼻及び/又は目のアレルギー症状である請求項6記載のアレルギー症状抑制用食品。
【請求項8】
アレルギー症状が鼻水、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ及び涙目から選ばれる少なくとも1種である請求項6又は7記載のアレルギー症状抑制用食品。
【請求項9】
アレルギー症状がダニ、花粉、菌類、動物、昆虫及び食物、から選ばれる少なくとも1種に起因する請求項6又は7記載のアレルギー症状抑制用食品。
【請求項10】
油脂を構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が40質量%以上である請求項6又は7記載のアレルギー症状抑制用食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー症状抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの体には、感染性微生物や異物等から身を守るための免疫という仕組みが備わっている。この免疫の働きが異常を起こし、くしゃみ、発疹、呼吸困難等の症状を起こしてしまう状態がアレルギーである。
一般的に、アレルギーの発症機構はI型からIV型の4つの反応に分類される。これらのうち、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、アナフィラキシーショック等の主要なアレルギーを発症させる型はI型である。
I型反応では、提示された抗原(アレルゲン)によりヘルパーT細胞が活性化され、IL-4(インターロイキン4)等のサイトカインの産生を増加させる。また、B細胞により産生されたIgE抗体は、組織に存在するマスト細胞(肥満細胞)や血中の好塩基球上の高親和性IgE受容体(FcεR1)に結合する。このような感作された状態にある体内にふたたび抗原が入ってくると、抗原はマスト細胞や好塩基球上に結合したIgE抗体と抗原抗体反応をおこし、この刺激により細胞内で一連の反応を生じてヒスタミン等の化学伝達物質が細胞外に遊離され、平滑筋収縮、毛細血管透過性亢進、腺分泌亢進等をおこし、アレルギーの諸症状が発現する。
【0003】
アレルギーの発症・増悪因子としては、遺伝素因を含めた個体因子と、抗原等への曝露を中心とした環境因子が挙げられるが、近年のアレルギー疾患の有病率の増加の原因としては環境因子の影響が大きいとされている。アレルギー疾患に関する研究の進歩により徐々に発症機序、悪化因子等の解明が進みつつあるが、いまだアレルギー疾患に対する完全な予防法や根治的治療法がなく、治療の中心は抗原回避をはじめとした生活環境確保と、ヒスタミンH1拮抗薬、Th2サイトカイン阻害薬等の薬物療法による長期的な対症療法となっているのが現状である。しかし、長期に亘る薬物の服用は、眠気、口渇、胃腸障害等の副作用が問題とされる。
【0004】
そこで、安全性の観点から、抗アレルギー作用を有する食品成分や植物成分の探索が行われている。その一つとして、亜麻仁油があり、亜麻仁油の摂取で、食物アレルギー症状が抑制されること(非特許文献1)、花粉によるアレルギー性結膜炎の症状が改善することが報告されている(非特許文献2)。亜麻仁油はアマの種子から搾油・精製される油で、ω3系高度不飽和脂肪酸の一つであるα-リノレン酸(ALA)を豊富に含むことが知られている。
【0005】
一方、ジアシルグリセロールを高濃度に含む油脂は、食後の血中トリグリセリド(中性脂肪)の増加を抑制し、体内への蓄積性が少ない等の生理作用を有することが報告されている。例えば、特許文献1では、構成脂肪酸の15~90重量%が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸であり、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1~6であるジグリセリドを60~100重量%含有する油脂組成物は、内臓脂肪燃焼性及び体脂肪燃焼性等に優れていることが報告されている。
しかしながら、構成脂肪酸としてα-リノレン酸を多く含むジアシルグリセロール含有油脂にアレルギー症状抑制作用があることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-138296号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kunisawa et al.,Sci Rep.2015、5、9750
【非特許文献2】FASEB j. (2018) doi:10.1096/fj.201801805R
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アレルギー症状抑制剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、α-リノレン酸を多く含むジアシルグリセロール含有油脂を摂取した場合に、鼻や目のアレルギー症状が抑制されることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、油脂中のジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上であり、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が40質量%以上である油脂を有効成分とするアレルギー症状抑制剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアレルギー症状抑制剤は、特に鼻や目におけるアレルギー症状の抑制に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】鼻及び目のアレルギー症状の経時変化を示すグラフ。
図2】ダニ特異的IgE抗体価の初期値からの変化率を示すグラフ。
図3】鼻及び目鼻のアレルギー症状の経時変化を示すグラフ。
図4】鼻及び目鼻のアレルギー症状の経時変化、付随する症状の経時変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において「油脂」とは、脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物を指し、モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びトリアシルグリセロールのいずれか1種以上を含むものである。油脂の種類に特に制限はなく、食用油脂として使用できるものであれば何れでもよい。
【0014】
本発明に用いる油脂は、ジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上であり、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が40質量%以上である油脂である。以下、本明細書において「ジアシルグリセロールの含有量が25質量%以上であり、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量が40質量%以上である油脂」を単に「本発明の油脂」と記載することがある。
【0015】
本発明の油脂中のジアシルグリセロールの含有量は25質量%以上であるが、効果を有効に発現する点、生理効果の点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。
油脂中のジアシルグリセロールの含有量は、好ましくは25質量%以上99質量%以下、より好ましくは30質量%以上98質量%以下、更に好ましくは50質量%以上95質量%以下、更に好ましくは55質量%以上95質量%以下、更に好ましくは60質量%以上95質量%以下、更に好ましくは65質量%以上95質量%以下、更に好ましくは70質量%以上95質量%以下、更に好ましくは75質量%以上95質量%以下である。
【0016】
本発明のジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量は40質量%以上であるが、生理効果の点から、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは52質量%以上であり、また、酸化安定性の点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量は、40質量%以上80質量%以下、好ましくは45質量%以上80質量%以下、より好ましくは50質量%以上80質量%以下、より好ましくは50質量%以上70質量%以下、更に好ましくは52質量%以上70質量%以下、更に好ましくは52質量%以上60質量%以下である。なお、本明細書における脂肪酸量は遊離脂肪酸換算量である。
【0017】
本発明において、ジアシルグリセロールを構成するα-リノレン酸以外の構成脂肪酸としては、特に限定されず、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよい。
風味・工業的生産性の点からは、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは60質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、更に好ましくは75質量%以上99質量%以下、更に好ましくは80質量%以上98質量%以下である。不飽和脂肪酸の炭素数は、生理効果の点から、好ましくは14~24、より好ましくは16~22である。
【0018】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のリノール酸(C18:2)の含有量は、工業的生産性の点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、生理効果の点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のリノール酸(C18:2)の含有量は、好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上30質量%以下、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
【0019】
また、ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のオレイン酸(C18:1)の含有量は、工業的生産性の点から、好ましくは10質量%以上であり、また、生理効果の点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中のオレイン酸(C18:1)の含有量は、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下、更に好ましくは10質量%以上30質量%以下である。
【0020】
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量は、外観、生理効果、油脂の工業的生産性の点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下である。また、工業的な生産性の点から、好ましくは0.5質量%以上である。
ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸中の飽和脂肪酸の合計含有量は、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上8質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以上6質量%以下である。
飽和脂肪酸の種類は特に限定されないが、好ましくは炭素数14~24の飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数16~22の飽和脂肪酸、更に好ましくは炭素数16、18、20の飽和脂肪酸である。
【0021】
本発明において、ジアシルグリセロールは、グリセリンの1,3位に脂肪酸が結合した1,3‐ジアシルグリセロールを多く含有することが効果を有効に発現する点から好ましい。全ジアシルグリセロール中の1,3‐ジアシルグリセロールの含有量は、生理効果の点から、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。また、低温耐性の点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
【0022】
本発明の油脂は、トリアシルグリセロールを含有していてもよく、その含有量は、油脂の工業的生産性の点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは75質量%以下、より好ましくは72質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
油脂中のトリアシルグリセロールの含有量は、好ましくは1質量%以上75質量%以下、より好ましくは2質量%以上75質量%以下、更に好ましくは2質量%以上72質量%以下、更に好ましくは5質量%以上72質量%以下、更に好ましくは5質量%以上50質量%以下、更に好ましくは5質量%以上25質量%以下である。
また、油脂中のモノアシルグリセロールの含有量は、風味、油脂の工業的生産性の点から、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下であり、また、好ましくは0質量%超である。油脂中のモノアシルグリセロールの含有量は、0質量%でもよい。
トリアシルグリセロール及びモノアシルグリセロールの脂肪酸組成は特に限定されず、飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、ジアシルグリセロールと同じであることが、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
【0023】
本発明の油脂は、不純物として遊離脂肪酸又はその塩を含有していてもよい。油脂中の遊離脂肪酸又はその塩の含有量は、風味の点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であり、また、好ましくは0質量%超である。油脂中の遊離脂肪酸又はその塩の含有量は、0質量%でもよい。
【0024】
本発明において、油脂を構成する脂肪酸は、前述したジアシルグリセロールを構成する脂肪酸の組成と同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
油脂を構成する脂肪酸中のα-リノレン酸の含有量は、40質量%以上80質量%以下、好ましくは45質量%以上80質量%以下、より好ましくは50質量%以上80質量%以下、より好ましくは50質量%以上70質量%以下、更に好ましくは52質量%以上70質量%以下、更に好ましくは52質量%以上60質量%以下である。
また、油脂を構成する脂肪酸中の不飽和脂肪酸の含有量は、好ましくは60質量%以上100質量%以下、より好ましくは70質量%以上100質量%以下、更に好ましくは75質量%以上99質量%以下、更に好ましくは80質量%以上98質量%以下である。
【0025】
本発明の油脂は、常法に従って、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応、油脂とグリセリンとのエステル交換反応(グリセロリシス)等により得ることができる。必要に応じて通常の食用油脂を混合してもよい。
エステル化反応とグリセロリシス反応は、アルカリ金属又はその合金、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド等の化学触媒を用いる化学法と、リパーゼ等の酵素を用いる酵素法とに大別される。
なかでも、脂肪酸組成を制御する点から、後述する油脂を加水分解して得られる脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応が好ましい。
【0026】
本発明において、油脂の起源は、食用油脂として使用できるものであれば特に制限はなく、植物性油脂、動物性油脂のいずれでもよい。例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハトムギ油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、チアシード油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア脂、藻油等の植物性油脂;魚油、アザラシ油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂;あるいはこれらのエステル交換油、水素添加油、分別油等の油脂類を挙げることができる。
これらの油は、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは適宜混合して用いてもよい。なかでも、使用性の点から、植物性油脂を用いるのが好ましく、更に低温耐性に優れた液状油脂を用いるのが好ましく、更にシソ油、アマニ油及びエゴマ油からなる群より選ばれる1種又は2種以上の油脂を用いるのが、α-リノレン酸を豊富に含むため好ましい。なお、液状油脂とは、基準油脂分析試験法2.3.8-27による冷却試験を実施した場合、20℃で液状である油脂をいう。また、食用油脂は、精製工程を経た精製油脂であるのが好ましい。
【0027】
油脂由来の脂肪酸は、油脂を加水分解して得ることができる。油脂を加水分解する方法としては、高温高圧分解法と酵素分解法が挙げられる。高温高圧分解法とは、油脂に水を加えて、高温、高圧の条件で反応することにより、脂肪酸とグリセリンを得る方法である。また、酵素分解法とは、油脂に水を加えて、油脂加水分解酵素を触媒として用い、低温の条件で反応することにより、脂肪酸とグリセリンを得る方法である。
加水分解反応は、常法に従って行うことができる。
【0028】
油脂の加水分解後は、加水分解反応物を分別して固体を除去することが好ましい。分別方法としては、溶剤分別法、自然分別法(ドライ分別法)、湿潤剤分別法が挙げられる。
析出した固体の除去手段としては、静置分離、濾過、遠心分離、脂肪酸に湿潤剤水溶液を混合し分離する方法等が挙げられる。
【0029】
油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応は、酵素法により温和な条件で行うのが風味等の点で優れており好ましい。
酵素の使用量は、酵素の活性を考慮して適宜決定することができるが、反応速度を向上する点から、固定化酵素を使用する場合は、エステル化反応原料の合計質量に対して、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%である。
エステル化反応の反応温度は、反応速度を向上する点、酵素の失活を抑制する点から、好ましくは0~100℃、より好ましくは20~80℃、更に好ましくは30~60℃である。また、反応時間は、工業的な生産性の点から、好ましくは15時間以内、より好ましくは1~12時間、更に好ましくは2~10時間である。
脂肪酸とグリセリンとの接触手段としては、浸漬、攪拌、固定化リパーゼを充填したカラムにポンプ等で通液する方法等が挙げられる。
【0030】
エステル化反応の後は、通常油脂に対して用いられる精製工程を行ってもよい。具体的には、蒸留処理、酸処理、水洗、脱色、脱臭等の工程を挙げることができる。
【0031】
後記実施例に示すとおり、本発明の油脂を摂取すると、ハイオレイックひまわり油を摂取した場合又はアマニ油を摂取した場合と比較し、ダニや花粉による鼻及び目のアレルギー症状が抑制される。すなわち、本発明の油脂は、特に、I型アレルギー反応を抑制出来、I型アレルギー症状の抑制に有用である。
よって、本発明の油脂は、アレルギー症状抑制剤、好ましくはI型アレルギー症状の抑制剤となり得、当該アレルギー症状を抑制するために使用することができ、また、アレルギー症状抑制剤、好ましくはI型アレルギー症状の抑制剤を製造するために使用することができる。
ここで、「使用」は、ヒト若しくは非ヒト動物への使用であり得、治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない、より具体的には医師、又は医療従事者もしくは医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
【0032】
本明細書において、アレルギー症状の抑制とは、アレルギー症状の悪化を抑制すること、アレルギー症状を軽減することを包含する。
本明細書において、アレルギー症状の例としては、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、鼻のかゆみ、目のかゆみ、涙目等の鼻及び/又は目のアレルギー症状が挙げられる。
これらの症状を有するアレルギーの例としては、花粉症、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹、食物アレルギー、アナフィラキシーショック、薬物アレルギー等が挙げられる。
アレルゲンとしては、例えば、ダニ(ヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ等)、花粉(ブタクサ、カナムグラ、スギ、ヒノキ、シラカバ、アカマツ、ススキ、ヒメガマ等)、ホコリ、ハウスダスト、菌類(アルテルナリア、ペニシリウム、カンジダ、クラドシポリウム、アスペルギルス、マラセチア等)、動物(ネコ、イヌ等)、昆虫(ゴキブリ、ガ等)、食物(卵、乳、食肉(牛肉、鶏肉、豚肉)等)、穀物(大豆、米、小麦、ソバ、ゴマ、落花生等)、やまいも、魚介類(あわび、いか、いくら、えび、かに、さけ、さば等)、果物(オレンジ、キウイフルーツ、もも、りんご、いちじく等)が挙げられる。
本発明のアレルギー症状抑制剤は、特にダニ及び花粉に起因するアレルギー症状を抑制することに効果的であり、また、鼻水、鼻づまり、鼻のかゆみ及び目のかゆみといった症状を抑制することに対して特に効果的である。なお、上述のアレルギー症状を抑制することによりもたらされる鼻眼症状に付随して悪化する症状(睡眠障害、倦怠感及び疲労)を抑制することに対して効果的である。
【0033】
本発明のアレルギー症状抑制剤は、それ自体、アレルギー症状を抑制するための医薬品、医薬部外品、化粧品、食品又は飼料となり、また当該医薬品、医薬部外品、化粧品、食品又は飼料に配合して使用される素材又は製剤となり得る。
【0034】
当該医薬品(医薬部外品を含む、以下同じ)は、本発明の油脂を、アレルギー症状を抑制するための有効成分として含有する。更に、該医薬品は、該有効成分の機能が失われない限りにおいて、必要に応じて薬学的に許容される担体、又は他の有効成分、薬理成分等を含有していてもよい。
医薬品は任意の投与形態で投与され得る。投与形態としては、例えば、錠剤(チュアブル錠等を含む)、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤等の経口固形製剤、内服液剤、シロップ剤等の経口液状製剤、注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、外用剤等の非経口投与製剤が挙げられる。好ましい投与形態は経口投与である。形態は使用目的に応じて大きさを任意に調節することができる。
このような種々の剤形の製剤は、必要に応じて、薬学的に許容される担体、例えば、賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、保存剤、増粘剤、流動性改善剤、嬌味剤、発泡剤、香料、被膜剤、希釈剤等や、他の薬効成分等と適宜組み合わせて、定法に従って調製することができる。
【0035】
当該化粧品は、本発明の油脂を、アレルギー症状を抑制するための有効成分として含有する。さらに、該化粧品は、該有効成分の機能が失われない限りにおいて、必要に応じて化粧料に許容される担体、又は他の有効成分、薬効成分、化粧成分等を含有していてもよい。
本発明の油脂を含む化粧品の好ましい例としては、顔、ボディ用の化粧料(例えば、ローション、ゲル、クリーム、パック等)、メークアップ用化粧料、顔又はボディ用の洗浄料等が挙げられる。
斯かる化粧品の各製剤は、常法に従って製造することができる。化粧料に許容される担体としては、例えば、各種油剤、界面活性剤、ゲル化剤、緩衝剤、防腐剤、酸化防止剤、溶剤、分散剤、キレート剤、増粘剤、紫外線吸収剤、乳化安定剤、pH調整剤、色素、香料等が挙げられる。
他の有効成分、薬効成分、化粧成分としては、例えば、植物抽出物、殺菌剤、保湿剤、抗炎症剤、抗菌剤、角質溶解剤、清涼剤、抗脂漏剤、洗浄剤、メークアップ成分等が挙げられる。
【0036】
当該食品は、本発明の油脂を、アレルギー症状を抑制するための有効成分として含有する。
食品には、アレルギー症状抑制を訴求とし、必要に応じてその旨の表示が許可又は届出された食品(特定保健用食品、機能性表示食品)が含まれる。表示の例としては、「目や鼻の不快感を緩和する」等がある。機能表示が許可又は届出された食品は、一般の食品と区別することができる。
食品の形態は、固形、半固形又は液状(例えば飲料)であり得る。例としては、各種食品組成物(パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、冷凍食品、アイスクリーム類、あめ類、ふりかけ類、スープ類、乳製品、シェイク、飲料、調味料等)、更には、上述した経口投与製剤と同様の形態(顆粒剤、粉剤、錠剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、トローチ剤等の固形製剤)の栄養補給用組成物が挙げられる。
種々の形態の食品は、本発明に油脂を、任意の食品材料、若しくは他の有効成分、又は食品に許容される添加物(例えば、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、酸味料、甘味料、苦味料、pH調整剤、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、固着剤、分散剤、流動性改善剤、湿潤剤、香科、調味料、風味調整剤)等と適宜組み合わせて、定法に従って調製することができる。
【0037】
当該飼料は、本発明の油脂を、アレルギー症状を抑制するための有効成分として含有する。
飼料の形態としては、好ましくはペレット状、フレーク状、マッシュ状又はリキッド状であり、例えば、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、犬、猫、小鳥等に用いるペットフード等が挙げられる。
飼料は、本発明の油脂を、他の飼料材料、例えば、肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類、ゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等と適宜組み合わせて、定法に従って調製することができる。
【0038】
製剤中の本発明の油脂の含有量は、製剤の形態に応じて異なるため一概には言えないが、例えば製剤の総量を基準として、好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは99.8質量%以下である。
【0039】
本発明の油脂の投与量又は使用量は、本発明の効果を達成できる量であり得る。当該投与量又は使用量は、対象の種、体重、性別、年齢、状態、又はその他の要因に従って変動し得るが、経口投与(摂取)の場合には、成人(60kg)1人当たり1回、本発明の油脂として、例えば0.3~15g、好ましくは0.5~10g、更に好ましくは1~5g、更に好ましくは2~5gである。
上記製剤は、任意の投与計画に従って投与又は使用され得るが、1日に1回~複数回に分けて、1日間以上、好ましくは7日間以上、より好ましくは14日間以上、よりさらに好ましくは28日間以上、また、効果を効率的に享受する観点から100日間以下、好ましくは80日間以下、より好ましくは63日間以下、反復・継続して投与又は使用し得る。
【0040】
本発明のアレルギー症状抑制剤は、油脂組成物の形態として投与又は使用されることが好ましい。
アレルギー症状抑制剤が油脂組成物の形態である場合、油脂組成物中の本発明の油脂の含有量は、使用性の点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、また、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.9質量%以下である。
【0041】
油脂組成物は、風味、酸化安定性、着色抑制等の点から、抗酸化剤を含有するのが好ましい。油脂組成物中の抗酸化剤の含有量は、風味、酸化安定性、着色抑制等の点から、好ましくは0.005質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.04質量%以上1.0質量%以下、更に好ましくは0.08質量%以上0.7質量%以下である。
抗酸化剤としては、食品に使用するものであれば特に制限はないが、ローズマリー抽出物等の天然抗酸化剤、レシチン、トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びブチルヒドロキシアニソール(BHA)等から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0042】
本発明のアレルギー症状抑制剤を投与又は使用する対象としては、アレルギーの症状の緩和を所望するヒト又は非ヒト動物が挙げられる。好ましくは鼻及び/目のアレルギー症状の緩和を所望するヒト等が挙げられる。非ヒト動物としては、類人猿、その他霊長類等の非ヒト哺乳動物等が挙げられる。
【実施例0043】
〔油脂の調製〕
アマニ油(ADM社製)を酵素により加水分解して脂肪酸を得た後、段階的に冷却し、析出した脂肪酸を遠心分離により分別した。次いで、市販の固定化1,3位選択リパーゼ(ノボザイム社)を触媒として、分別脂肪酸とグリセリンとを減圧下でエステル化反応を行った。固定化酵素を濾別した後、反応終了品を分子蒸留にかけ、水洗、脱臭したものに、抗酸化剤としてトコフェロール、ローズマリー抽出物、アスコルビン酸パルミテートを添加したものを試験油(実施例)とした。
ハイオレイックひまわり油(サミット製油社製)に試験油と同様の抗酸化剤を添加したものを比較油1(比較例1)として用いた。
アマニ油(ADM社製)に試験油と同様の抗酸化剤を添加したものを比較油2(比較例2)として用いた。
試験油(実施例)及び比較油1、2(比較例1、2)の分析結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
試験油(実施例)の全ジアシルグリセロール中の1,3-ジアシルグリセロールの割合は69質量%であった。
【0046】
グリセリド組成及び脂肪酸組成の分析方法は以下のとおりである。
(i)油脂のグリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、油脂サンプル約10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学製)0.5mLを加え、密栓し、70℃で15分間加熱した。これに水1.0mLとヘキサン1.5mLを加え、振とうした。静置後、上層をガスクロマトグラフィー(GLC)に供して分析した。
【0047】
(ii)油脂の構成脂肪酸組成
日本油化学会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.-1996)」に従って脂肪酸メチルエステルを調製し、得られた油脂サンプルを、American Oil Chemists. Society Official Method Ce 1f-96(GLC法)に準拠して測定した。
<GLC分析条件>
装置:アジレント7890B(アジレントテクノロジー社製)
カラム:CP-SIL88 50m×0.25mm×0.2μm(Agilent J&W社製)
キャリアガス:1.0mL He/min
インジェクター:Split(1:50)、T=300℃
インジェクション量:1μL
ディテクター:FID、T=300℃
オーブン温度:150℃5min保持→1℃/min昇温→160℃5min保持→2℃/min昇温→200℃10min保持→10℃/min昇温→220℃5min保持
【0048】
(iii)ジアシルグリセロール画分の構成脂肪酸組成
油脂サンプル約40mgにヘキサンを1mL加え、固相抽出カートリッジ(「InertSep Si」、ジーエルサイエンス製)にアプライした。ヘキサン:酢酸エチル=95:5の混合溶液を40mL、ヘキサン:酢酸エチル=80:20の混合溶液を10mL順次通液した。続いて、ヘキサン:酢酸エチル=70:30の混合溶液を30mL通液し、ジアシルグリセロール画分として回収した。得られたジアシルグリセロール画分について、上記の方法にて脂肪酸組成を分析した。
【0049】
試験例1
<方法>
試験は、20-59歳の健常男女60名を試験の対象に、二重盲検無作為化比較試験を実施した。60名の試験参加者を2群にランダムに分け、実施例(30名)は試験油2.5gを、比較例(30名)は比較油1(ハイオレイックひまわり油)2.5gを1日1回、8週間にわたり食事にかけて摂取した。試験参加者は、試験品摂取前、摂取4週間後、及び摂取8週間後に日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(JRQLQ No1)に回答した。JRQLQ No1について、鼻・眼の症状の程度を示すパートIの回答を両群で比較した。試験品摂取前、摂取4週間後、及び摂取8週間後に採血を行い分析機関(LSIメディエンス)にて特異的IgE抗体を測定した。
【0050】
試験期間中に医薬品を常用していたことが判明した1名、及びプロトコール違反のあった1名を除いた各群29名(計58名)を解析対象とした。解析対象者58名のうち52名は、ダニ、スギ、カンジダ、マラセチア、ネコ(フケ)、イヌ(フケ)、ゴキブリ、ガ、ピーナッツ、キウイ、エビ、カニのいずれか1つ以上の特異的IgE陽性(クラス2以上)であった。また割合としてはスギ陽性者が最も多く(81%)、次いでダニ陽性者であった(66%)。
【0051】
JRQLQの症状スコアについては、各時点でのスコア及び初期値からのスコアの変化量を平均値±標準誤差で示し、統計解析はマン・ホイットニーのU検定により行った。ダニ特異的IgE抗体については、抗体価の初期値からの変化率(%)を平均値±標準誤差で示し、統計解析は対応のないt検定により行った。
【0052】
<結果>
図1に示すように、「くしゃみ」「目のかゆみ」「涙目」のスコアは、実施例(試験油摂取群)では比較例(比較油1摂取群)と比べて低値であった。「水っぱな」「くしゃみ」「鼻づまり」「鼻のかゆみ」のスコアの初期値からの変化量は、実施例(試験油摂取群)では比較例(比較油1摂取群)と比べて低値であった。
図2に示すように、ダニ特異的IgE抗体の変化率は、実施例(試験油摂取群)では比較例(比較油1摂取群)と比べて低値であった。
【0053】
試験例2
<方法>
試験は、20-65歳の健常男女47名を試験の対象に、二重盲検無作為化比較試験を実施した。47名の試験参加者を2群にランダムに分け、実施例(22名)は試験油2.5gを、比較例(25名)は比較油2(アマニ油)2.5gを1日1回、8週間にわたり食事にかけて摂取した。試験参加者は、試験品摂取前、摂取4週間後、及び摂取8週間後に日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(JRQLQ No1)に回答した。JRQLQ No1について、鼻・眼の症状の程度を示すパートIの回答、鼻眼症状に付随するQOLの程度を示すパートIIのうち、「社会生活」(8.人とつき合いの支障(控えがち)、9.他人と会話・電話の支障(差し障り)、10.まわりの人が気になるのスコアの合算値)、「睡眠」(11.睡眠障害(眠りが良くない)のスコア)、「身体機能」(12.倦怠感(だるい)と13.疲労(疲れやすい)のスコアの合算値)、「精神生活」(14. 気分が晴れない、15. いらいら感、16. ゆううつ、17. 生活に不満足のスコアの合算値)の回答を両群で比較した。
【0054】
試験油摂取群21名、比較油2摂取群25名(計46名)を解析対象とした。
JRQLQの症状スコアについては、各時点での初期値からのスコアの変化量を平均値±標準誤差で示し、統計解析はマン・ホイットニーのU検定により行った。
【0055】
<結果>
図3[I]に示すように、「水っぱな」「くしゃみ」「鼻づまり」「鼻のかゆみ」「目のかゆみ」「涙目」のスコアは、実施例(試験油摂取群)では比較例(比較油2摂取群)と比べて低値であった。また、図3[II]に示すように、「水っぱな」「くしゃみ」「鼻づまり」「鼻のかゆみ」「目のかゆみ」「涙目」のスコアの初期値からの変化量は、実施例(試験油摂取群)では比較例(比較油2摂取群)と比べて低値であった。さらには、図4[III][IV]に示すように、実施例(試験油摂取群)では、鼻眼症状に付随して悪化する症状(睡眠障害、倦怠感及び疲労)スコアの改善も見られた。
図1
図2
図3
図4