(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150444
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】小分子イオン格子で構成される調色された高輝度蛍光材料
(51)【国際特許分類】
C09B 11/28 20060101AFI20241016BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20241016BHJP
C09B 23/06 20060101ALI20241016BHJP
C09B 19/00 20060101ALI20241016BHJP
C07C 255/52 20060101ALI20241016BHJP
C07D 311/82 20060101ALI20241016BHJP
C07D 213/20 20060101ALI20241016BHJP
C07D 491/16 20060101ALI20241016BHJP
C07D 265/38 20060101ALI20241016BHJP
C07D 263/62 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C09B11/28 E CSP
C09K11/06
C09B23/06
C09B11/28
C09B19/00
C07C255/52
C07D311/82
C07D213/20
C07D491/16
C07D265/38
C07D263/62
C09B11/28 E
C07D311/82 CSP
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024099467
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2020571341の分割
【原出願日】2019-03-10
(31)【優先権主張番号】62/641,281
(32)【優先日】2018-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】399042915
【氏名又は名称】インディアナ ユニバーシティ リサーチ アンド テクノロジー コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】520349056
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・コペンハーゲン
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フラッド,アマール・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】ラウルセン,ボー・ベッゲ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】溶液状態の高輝度の色彩及び蛍光の特質を再現する有機染料の固体状態の形態を調製することを可能にする組成物及び配合物を提供する。
【解決手段】式:
(荷電染料
m
+)
x・(対イオン
n
-)
y・(対イオン受容体)
z(I)
(式中、荷電染料
m+は、カチオン性染料であり、対イオン
n-は、アニオンであり、対イオン受容体は、対イオン
n-の結合リガンドであり、m、n、x及びyは、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である)の化合物。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(荷電染料m+)x・(対イオンn-)y・(対イオン受容体)z (I)
(式中、
荷電染料m+は、カチオン性染料であり、対イオンn-は、アニオンであり、対イオン受容体は、対イオンn-の結合リガンドであり、
m、n、x及びyは、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である)
の化合物。
【請求項2】
式(I)の荷電染料m+が、以下の方法:
(a)酸HX(式中、Xは、式(I)の化合物中の対イオンn-である)の添加によって中性染料を荷電染料m+へと変換する方法、
(b)カチオン性部位を中性染料へ導入することによって中性染料を荷電染料m+へと変換する方法
のうちの1つによって調製される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
中性染料を荷電染料m+へと変換する方法による式(I)の荷電染料m+の調製が、酸HX(式中、酸HXは、HPF6、HBF4及びHClO4からなる群から選択される)を中性染料に添加することを含む、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
カチオン性部位を中性染料へ導入することによって中性染料を荷電染料m+へと変換する方法による式(I)の荷電染料m+の調製が、中性染料の遊離塩基部位をR-Y(式中、Rは、アルキル部分であり、Yは、式(I)の化合物中の対イオンn-である)でアルキル化することを含む、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
カチオン性染料が、光吸収ユニットを有する、又は光吸収ユニットと光放出ユニットとの両方を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
カチオン性染料が、カチオン性スチリル、カチオン性キサンテン、カチオン性トリアンギュレニウム、カチオン性オキサジン、トリアリールメタン、カチオン性シアニン、カチオン性アクリジン、カチオン性フルオロノン、カチオン性フェナントリジン、カチオン性ポリ芳香族炭化水素、カチオン性イミド、カチオン性BODIPY、カチオン性クマリン及びカチオン性スクアライン、又はこれらの組み合わせからなる染料クラスの群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
カチオン性染料が、以下のメンバー:
【化1】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
カチオン性染料が、以下のメンバー:
【化2】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
対イオン受容体が、ヘテロマクロ環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
ヘテロマクロ環が、式(II)、(III)、(IV)及び(V):
【化3】
[式中、
式(II)のR、式(III)のR、R’及びR’’、式(IV)のR
1、R
2、R
3、R
4及びR
5、並びに式(V)のR
1、R
2、R
3及びR
4は、同一であっても異なっていてもよく、アルキル(例えばC
1~C
18)、アルキル置換フェニル誘導体、及び置換グリコール誘導体、アルケニル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、水素、ヨード、-OR
6、-N(R
7R
8)、-CO
2R
9、-C(O)-N(R
10R
11)(式中、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は、それぞれ、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、及び水素からなる群から選択される)又はこれらの組み合わせからなる群から選択され、
式(II)のRと、式(IV)のR
1、R
2、R
3、R
4及びR
5とは同一であり、
式(III)のR、R’及びR’’と、式(V)のR
1、R
2、R
3及びR
4は、互いに独立に選択されうる]
又はこれらの組み合わせから選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
アニオンが、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、AsO4
3-、HAsO4
2-、H2AsO4
-、AsF6
-、AlCl4
-、PO4
3-、HPO4
2-、H2PO4
-、SO4
2-、HSO4
-、Cl-、Br-、I-、シアニド、BrO4
-、IO4
-、F-、HF2
-、TcO4
-、RPO4
2-、R2PO4
-、RSO3
-、SCN-、N3
-、I3
-、CO3
2-、HCO3
-、P2O7
4-、HP2O7
3-、H2P2O7
2-、H3P2O7
-、RBF3
-(式中、Rは、置換基を含む)からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
アニオンが、F5-TPB-、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシ-2-プロピル)フェニル]ボレート、Ar4B-(式中、Arは、アリールである)、TRISPHAT-、又はBINPHAT-ではないことを条件とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
カチオン性染料が、光吸収ユニットを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
カチオン性染料が、対イオンn-と対イオン受容体との間で形成された複合体の吸収波長よりも長い波長の光を吸収する、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
希釈条件下で、カチオン性染料単独の光吸収特性(吸収帯の位置及び幅)を再現する、光吸収特性を有する光吸収ユニットを含む、請求項13又は14に記載の化合物。
【請求項16】
式(I)が、式(I-1):
【化4】
である、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
式(I)が、式(I-2):
【化5】
である、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
式(I)が、式(I-3):
【化6】
である、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
式(I)が、式(I-4):
【化7】
である、請求項13に記載の化合物。
【請求項20】
式(I)が、式(I-5):
【化8】
である、請求項13に記載の化合物。
【請求項21】
カチオン性染料が、光吸収ユユニット及び光放出ユニットを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項22】
カチオン性染料が、対イオンn-と対イオン受容体との間で形成された複合体の吸収波長よりも長い波長の光を吸収し、光放出する、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
カチオン性染料と対イオン受容体との複合体の電気的特性が、部分的若しくは完全な電子移動、カチオン性染料と対イオン受容体との間の光誘起電子移動をもたらさない、又は新しい吸収帯若しくは放出帯を生成しない、請求項21又は22に記載の化合物。
【請求項24】
式(I)が、式(I-6):
【化9】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
式(I)が、式(I-7):
【化10】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項26】
式(I)が、式(I-8):
【化11】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項27】
式(I)が、式(I-9):
【化12】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項28】
式(I)が、式(I-10):
【化13】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項29】
式(I)が、式(I-11):
【化14】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
式(I)が、式(I-12):
【化15】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
式(I)が、式(I-13):
【化16】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
式(I)が、式(I-14):
【化17】
である、請求項21~23のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載の化合物を含む、配合物。
【請求項34】
カチオン性染料と対イオン受容体との複合体の電気的特性が、部分的な若しくは完全な電子移動、光誘起電子移動、又はカチオン性染料と対イオン受容体との間の電気的混合をもたらさない、請求項33に記載の配合物。
【請求項35】
固体状態の材料を含む、請求項33及び34に記載の配合物。
【請求項36】
固体状態の材料が、粉末、非晶質固体、薄膜、結晶、マイクロ粒子、ポリマー複合体、ナノ粒子、並びにマイクロ粒子及びナノ粒子のコロイドからなる群から選択される、請求項35に記載の配合物。
【請求項37】
溶液、粉末又はコロイドから調製される、請求項33~36のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項38】
コロイドを含む、請求項35に記載の配合物。
【請求項39】
高輝度光放出特性を有する材料を製造する方法であって、
請求項1~29のいずれか一項に記載の化合物又は請求項30~35のいずれか一項に記載の配合物を含む第1の混合物を調製するステップ、及び
第1の混合物を濃縮して、固体状態にある光放出ユニットを有する材料を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項40】
式(VI):
(荷電染料m-)x・(対イオンn+)y・(対イオン受容体)z (VI)
(式中、
荷電染料m-は、アニオン性染料であり、対イオンn+は、カチオンであり、対イオン受容体は、対イオンn+の結合リガンドであり、
m、n、x及びyは、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である)
の化合物。
【請求項41】
式(VI)の荷電染料m-が、以下の方法:
(a)塩基MOH(式中、Mは、式(VI)の化合物中の対イオンn+である)の添加によって中性染料を荷電染料m-へと変換すること、又は
(b)アニオン性部位を中性染料へ導入することによって中性染料を荷電染料m-へと変換すること
のうちの1つによって調製される、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
中性染料を荷電染料m-へと変換することによる式(VI)の荷電染料m-の調製が、塩基MOHを中性染料に添加することを含み、塩基MOHは、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、RbOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2、Mg(OH)2、水酸化アンモニウム(ここで、アンモニウムはN(R)4
+であり、式中、Rは、同一の又は同一でない組成のアルキル基である)からなる群から選択される、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
アニオン性染料が、光吸収ユニットを有する化合物、及び光吸収ユニットと光放出ユニットとの両方を有するアニオン性染料から選択される、請求項40に記載の化合物。
【請求項44】
アニオン性染料が、アニオン性スチリル、アニオン性キサンテン、アニオン性トリアンギュレニウム、アニオン性オキサジン、アニオン性トリアリールメタン、アニオン性シアニン、アニオン性アクリジン、アニオン性フルオロノン、アニオン性フェナントリジン、アニオン性ポリ芳香族炭化水素、アニオン性イミド、アニオン性BODIPY、アニオン性クマリン及びアニオン性スクアライン、又はこれらの組み合わせからなる染料クラスの群から選択される、請求項40に記載の化合物。
【請求項45】
アニオン性染料が、以下のメンバー:
【化18】
からなる群から選択される、請求項40に記載の化合物。
【請求項46】
対イオン受容体が、ヘテロマクロ環である、請求項40に記載の化合物。
【請求項47】
ヘテロマクロ環が、式(VII)~(XIII):
【化19】
[式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、全て同一であり又は全て異なり、アルキル(例えばC
1~C
18)、アルキル置換フェニル誘導体、及び置換グリコール誘導体、アルケニル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、水素、ヨード、-OR
6、-N(R
7R
8)、-CO
2R
9、-C(O)-N(R
10R
11)(式中、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は、それぞれ、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、及び水素からなる群から選択される)又はこれらの組み合わせからなる群から選択される]
又はこれらの組み合わせから選択される、請求項46に記載の化合物。
【請求項48】
カチオンが、Li+、Na+、K+、Cs+、アンモニウムカチオンN(R)4
+(式中、Rは、同一の又は同一でない組成のアルキル基である)、Rb+、Ca2+、Ba2+、Mg2+、ジカチオン性ビス-アンモニウムカチオン(R1)3N+-(R2)-N(R3)3
+(式中、R1及びR3は、同一の又は同一でない組成のアルキル基であり、R2は、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキルからなる群から選択される)又はこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項40~47のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項49】
カチオンが、メチルピリジニウム、テトラ-フェニルホスホニウムではないことを条件とする、請求項40~47のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項50】
アニオン性染料が、光吸収ユニットを含む、請求項40~49のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項51】
アニオン性染料が、対イオンn+と対イオン受容体との間で形成された複合体の吸収波長よりも長い波長にて光を吸収する、請求項50に記載の化合物。
【請求項52】
希釈条件下で、アニオン性染料単独の光吸収特性(吸収帯の位置及び幅)を再現する、光吸収特性を有する光吸収ユニットを含む、請求項50又は51に記載の化合物。
【請求項53】
アニオン性染料が、光吸収ユニット及び光放出ユニットを含む、請求項40~47のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項54】
アニオン性染料が、対イオンn+と対イオン受容体との間で形成された複合体の吸収波長よりも長い波長にて光を吸収し、光放出する、請求項53に記載の化合物。
【請求項55】
アニオン性染料と対イオン受容体との複合体の電気的特性が、部分的な若しくは完全な電子移動、アニオン性染料と対イオン受容体との間の光誘起電子移動をもたらさない、又は新しい吸収帯若しくは放出帯を生成しない、請求項53又は54に記載の化合物。
【請求項56】
式(VI-1)、(VI-2)、(VI-3)、(VI-4)及び(VI-5):
【化20】
から選択される、請求項1~54のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項57】
請求項40~56のいずれか一項に記載の化合物を含む、配合物。
【請求項58】
アニオン性染料と対イオン受容体との複合体の電気的特性が、部分的な若しくは完全な電子移動、光誘起電子移動、又はカチオン性染料と対イオン受容体との間の電気的混合をもたらさない、請求項57に記載の配合物。
【請求項59】
固体状態の材料を含む、請求項57及び58に記載の配合物。
【請求項60】
固体状態の材料が、粉末、非晶質固体、薄膜、結晶、マイクロ粒子、ポリマー複合体、ナノ粒子、並びにマイクロ粒子及びナノ粒子のコロイドからなる群から選択される、請求項59に記載の配合物。
【請求項61】
溶液、粉末又はコロイドから調製される、請求項58~60のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項62】
コロイドを含む、請求項59に記載の配合物。
【請求項63】
高輝度光放出特性を有する材料を製造する方法であって、
請求項40~56のいずれか一項に記載の化合物又は請求項57~62のいずれか一項に記載の配合物を含む第1の混合物を調製するステップ、及び
第1の混合物を濃縮して、固体状態にある光放出ユニットを有する材料を形成するステップ
を含む、方法。
【請求項64】
物質を検出する方法であって、
物質を、請求項1~63のいずれか一項に記載の化合物、配合物又は材料のうちの任意のものと接触させて混合物を形成するステップ、及び
物質単独、又は化合物、配合物若しくは材料単独に対する、接触させるステップの結果としての混合物の化合物、配合物又は材料のうちの任意のものにおける少なくとも1つのスペクトル特性の変化を測定するステップ
を含み、
物質が、混合物での測定するステップの結果としての、化合物、配合物又は材料のうちの任意のものにおける少なくとも1つのスペクトル特性の変化により検出される、方法。
【請求項65】
光吸収及び光放出をポリマーに付加する方法であって、
ポリマーを提供するステップ、及び
ポリマーをSMILES材料と接触させるステップ
を含む、方法。
【請求項66】
生物材料を染色する方法であって、
生物材料を提供するステップ、及び
生物材料を、SMILES材料を含むマイクロ粒子又はナノ粒子と接触させるステップ
を含む、方法。
【請求項67】
イオン性染料の光安定性を向上させる方法であって、
イオン性染料を提供するステップ、及び
イオン性染料をSMILES材料へと変換するステップ
を含む、方法。
【請求項68】
イオン性染料の、ポリマー及び非極性溶媒との溶解性及び混合性を向上させる方法であって、
イオン性染料を提供するステップ、及び
イオン性染料をSMILES材料へと変換するステップ
を含む、方法。
【請求項69】
プログラム化可能な光吸収及び光放出特性を有するSMILES材料を作製する方法であって、
イオン性染料を提供するステップであり、イオン性染料が特定の光吸収及び光放出特性を含む、ステップ、及び
イオン性染料をSMILES材料へと変換するステップ
を含む、方法。
【請求項70】
プログラム化可能なストークシフトを有するSMILES材料を作製する方法であって、
第1のイオン性染料及び第2のイオン性染料を提供するステップ、
第1のイオン性染料と第2のイオン性染料とを一緒に混合して第1の混合物を形成するステップ、
第1の混合物をSMILES材料へと変換するステップ
を含み、
SMILES材料中において、第1のイオン性染料がエネルギー供与体であり、第2のイオン性染料がエネルギー受容体であり、第1のイオン性染料による光放出及び第2のイオン性染料による光吸収を可能にする、
方法。
【請求項71】
異なる相対強度を有する異なる波長にてプログラム化可能な吸収及び光放出を伴うSMILES材料を作製する方法であって、
少なくとも2種のイオン性染料を提供するステップ、
少なくとも2種のイオン性染料を一緒に混合して第1の混合物を形成するステップ、
第1の混合物をSMILES材料へと変換するステップ
を含み、
少なくとも2種のイオン性染料が、異なる相対強度を有する異なる波長にてプログラム化可能な吸収及び光放出を含む、
方法。
【請求項72】
プログラム化可能な光放出減衰率を有するSMILES材料を作製する方法であって、
複数のイオン性染料を提供するステップ、
複数のイオン性染料を一緒に混合して第1の混合物を形成するステップ、
第1の混合物をSMILES材料へと変換するステップ
を含み、
複数のイオン性染料が、SMILES材料中において、光吸収エネルギー供与体として働く第1のイオン性染料、エネルギー受容体及びエネルギー供与体として同時に働く任意の中間の染料、及びエネルギー受容光放出体として働く最終のイオン性染料を含み、第1のイオン性染料による光吸収、任意の中間の染料を通るパスエネルギー、及び最終のイオン性染料による光放出を可能にする、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.119の下、2018年3月10日に出願された、「COLOR MATCHED AND BRIGHT FLUORESCENT MATERIALS COMPOSED OF SMALL-MOLECULE IONIC LATTICES」と題された米国特許仮出願番号第62/641281号の優先権を主張するものであり、この内容をこの全体において参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、米国科学財団(National Science Foundation)により授与された1412401に基づく政府後援によってなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、対イオン受容体複合体中で結合されているそれらの対イオンを有するイオン性染料を含有する材料の設計及び調製、並びに光学材料におけるこれらの使用に関係する。
【背景技術】
【0004】
色彩及び高輝度を有する有機染料は、1848年に発見された。これらの発見以来、当業者は、溶液中のこれらの染料の色彩及び高輝度の光放出を再現しようと試みながら塗料及び顔料を製造してきた。溶液中のこれらの色彩及び輝度特性にもかかわらず、これらの特性を保持する有機染料の固体状態の形態を調製する能力は、技術的困難及び予測不可能性に遭遇してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、それらの溶液状態の高輝度の色彩及び蛍光の特質を再現する有機染料の固体状態の形態を調製することを可能にする組成物及び配合物への必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
第1の態様において、式(I):
(荷電染料m+)x・(対イオンn-)y・(対イオン受容体)z (I)
の化合物が提供される。荷電染料m+は、カチオン性染料であり、対イオンn-は、アニオンであり、対イオン受容体は、対イオンn-の結合リガンドである。m、n、x及びyの値は、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。
【0007】
第2の態様において、配合物が提供される。式(I):
(荷電染料m+)x・(対イオンn-)y・(対イオン受容体)z (I)
の化合物を含む配合物が提供される。荷電染料m+は、カチオン性染料であり、対イオンn-は、アニオンであり、対イオン受容体は、対イオンn-の結合リガンドである。m、n、x及びyの値は、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。
【0008】
第3の態様において、高輝度光放出特性を有する材料を製造する方法が提供される。該方法は以下のステップを含む。第1のステップは、カチオン性染料及び対アニオンの溶液をアニオン受容体と混合して、式(I)
(荷電染料m+)x・(対イオンn-)y・(対イオン受容体)z (I)
の化合物を含む第1の混合物を形成することを含む。荷電染料m+は、カチオン性染料であり、対イオンn-は、アニオンであり、対イオン受容体は、対イオンn-の結合リガンドである。m、n、x及びyの値は、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。第2のステップは、第1の混合物を濃縮して、固体状態にある光放出ユニットを有する材料を形成するステップである。このようにして製造された材料は、粉末、非晶質固体、薄膜、結晶、マイクロ粒子、ポリマー複合体、ナノ粒子、並びにマイクロ粒子及びナノ粒子のコロイドでありうる。
【0009】
第4の態様において、式(VI):
(荷電染料m-)x・(対イオンn+)y・(対イオン受容体)z (VI)
の化合物が提供される。荷電染料m-は、アニオン性染料であり、対イオンn+は、カチオンであり、対イオン受容体は、対イオンn+の結合リガンドである。m、n、x及びyは、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。
【0010】
第5の態様において、式(VI):
(荷電染料m-)x・(対イオンn+)y・(対イオン受容体)z (VI)
の化合物を含む配合物が開示される。荷電染料m-は、アニオン性染料であり、対イオンn+は、カチオンであり、対イオン受容体は、対イオンn+の結合リガンドである。m、n、x及びyは、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。
【0011】
第6の態様において、高輝度光放出特性を有する材料を製造する方法が開示される。該方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、第4の態様による化合物又は第5の態様による配合物を含む第1の混合物を調製することを含む。第2のステップは、第1の混合物を濃縮して、固体状態にある光放出ユニットを有する材料を形成することを含む。
【0012】
第7の態様において、物質を検出する方法が開示される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、物質を、前述の態様のうちの任意のものによる化合物、配合物又は材料のうちの任意のものと接触させることを含む。第2のステップは、物質単独、又は化合物、配合物若しくは材料単独に対し接触させるステップの結果としての混合物の、化合物、配合物又は材料のうちの任意のものにおける少なくとも1つのスペクトル特性の変化を測定することを含む。物質は、混合物を測定するステップの結果としての、化合物、配合物又は材料のうちの任意のものにおける少なくとも1つのスペクトル特性の変化によって検出される。
【0013】
第8の態様において、光吸収及び光放出をポリマーに付加する方法が開示される。該方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、ポリマーを用意することを含む。第2のステップは、該ポリマーをSMILES材料と接触させることを含む。
【0014】
第9の態様において、生物材料を染色する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、生物材料を用意することを含む。第2のステップは、該生物材料を、SMILES材料を含むマイクロ粒子又はナノ粒子と接触させることを含む。
【0015】
第10の態様において、イオン性染料の光安定性を向上させる方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、イオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、該イオン性染料をSMILES材料へと変換することを含む。
【0016】
第11の態様において、イオン性染料の、ポリマー及び非極性溶媒との溶解性及び混合性を向上させる方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、イオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、該イオン性染料をSMILES材料へと変換することを含む。
【0017】
第12の態様において、プログラム化可能な光吸収及び光放出特性を有するSMILES材料を作製する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、イオン性染料を用意することを含む。イオン性染料は、特定の光吸収及び光放出特性を含む。第2のステップは、該イオン性染料をSMILES材料へと変換することを含む。
【0018】
第13の態様において、プログラム化可能なストークシフトを有するSMILES材料を作製する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、第1のイオン性染料及び第2のイオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、第1のイオン性染料と第2のイオン性染料とを一緒に混合して第1の混合物を形成することを含む。第3のステップは、第1の混合物をSMILES材料へと変換することを含む。SMILES材料において、第1のイオン性染料はエネルギー供与体であり、第2のイオン性染料はエネルギー受容体であり、第1のイオン性染料による光放出、及び第2のイオン性染料による光吸収を可能にする。
【0019】
第14の態様において、異なる相対強度を有する異なる波長にてプログラム化可能な吸収及び放出を伴うSMILES材料を作製する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、少なくとも2種のイオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、少なくとも2種のイオン性染料を一緒に混合して第1の混合物を形成することを含む。第3のステップは、第1の混合物をSMILES材料へと変換することを含む、少なくとも2種のイオン性染料は、異なる相対強度を有する異なる波長における、プログラム化可能な吸収及び光放出を含む。
【0020】
第15の態様において、プログラム化可能な光放出減衰率を有するSMILES材料を作製する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、複数のイオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、複数のイオン性染料を一緒に混合して第1の混合物を形成することを含む。第3のステップは、該混合物をSMILES材料へと変換することを含む。複数のイオン性染料は、SMILES材料中、光吸収性エネルギー供与体として働く第1のイオン性染料、同時にエネルギー受容体とエネルギー供与体として働く任意の中間の染料、及びエネルギー受容性光放出体として働く最終のイオン性染料を含んで、第1のイオン性染料による光吸収、任意の中間の染料を通るパスエネルギー、及び最終のイオン性染料による光放出を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】固体中で密に充填されて吸収を歪めかつ光放出を止めている、例示的なカチオン性染料及びこれらの対イオン(アニオン、X
-)を示す図である。
【
図1B】光学特性を救済する機会をもたらす例示的な分離格子の図である。
【
図1C】例示的な小分子分離格子(SMILES)が、カチオン性染料の空間的及び電気的分離のために、アニオン結合マクロ環、例えばシアノスターを使用して生成されうることを示す図である。
【
図2A】溶液相中の過塩素酸ローダミンBの例示的な吸収スペクトル(破線、1μM、CH
2Cl
2)を示す図である。
【
図2B】溶液相中の過塩素酸ローダミンBの例示的な励起及び光放出スペクトル(破線、1μM、CH
2Cl
2)を示す図である。
【
図2C】過塩素酸ローダミンB単独(点線)、及びFL-SMILES薄膜として構成された過塩素酸ローダミンB(実線)についての、例示的な固体状態吸収スペクトルを示す図である。
【
図2D】過塩素酸ローダミンB単独(点線)、及びFL-SMILES薄膜として構成された過塩素酸ローダミンB(実線)についての、例示的な固体状態の励起及び光放出スペクトルを示す図である。薄膜の条件:2mM CH
2Cl
2溶液20μL、2000RPM、ガラススライド15秒。
【
図2E】周囲下での過塩素酸ローダミン3B(左)及びFL-SMILES(右)の例示的な画像である。
【
図2F】UV光下でのFL-SMILESと複合体化された過塩素酸ローダミン3Bの例示的な画像である。
【
図3A】エチルバイオレット(CH
2Cl
2)の溶液吸収スペクトルの図である。
【
図3B】薄膜中(点線)及びAB-SMILES材料内(実線)のエチルバイオレットの吸収スペクトルの図である。
【
図3C】空間的に均質な着色を有するAB-SMILES中のエチルバイオレットの薄膜である。
【
図4】FL-SMILES化合物[(シアノスター)
2(PF
6)(DIOC
2)]の結晶構造において見られる各荷電の充填である。溶液から成長した結晶は、シアノスターとDIOC
2・PF
6とを2:1比で含有している。
【
図5】シアノスターでSMILES材料を作製するのに使用した例示的な蛍光団の図である。
【
図7】ローダミン3B・ClO
4でもFL-SMILES材料を形成する例示的なシアノスター類似体の図である。
【
図8】様々なアニオン受容体複合体により規定されている電気的ウィンドウの輪郭を描くエネルギー量の図形である。エネルギーは、酸化還元電位及び光学バンドギャップから推定される。
【
図9A】FL-SMILES[(シアノスター)
2(BF
4)(DAOTA)]のマイクロ粒子の例示的な顕微鏡写真である。
【
図9B】FL-SMILES[(シアノスター)
2(BF
4)(オキサジン720)]のマイクロ粒子の例示的な顕微鏡写真である。
【
図10A】過塩素酸ローダミン3Bで、及び対応するFL-SMILES[(シアノスター)
2(ClO
4)(ローダミン3B)]で染色されたポリスチレン材料を示す、例示的な写真画像である。
【
図10B】FL-SMILES[(シアノスター)
2(ClO
4)(ローダミン3B)]で染色されたサンプル(右)からのみ出現する蛍光を示す、UV光照射下の、例示的な写真画像である。
【
図11】実施例中の方法Iに従って調製したFL-SMILES[(シアノスター)
2(ClO
4)(ローダミン3B)]で染色されたポリマーである。
【
図12】実施例中の方法IIに従って調製したFL-SMILES[(シアノスター)
2(ClO
4)(ローダミン3B)]で染色されたポリマーである。
【
図13-1】FL-SMILES材料の概要の図である。
【
図13-2】FL-SMILES材料の概要の図である。
【
図13-3】FL-SMILES材料の概要の図である。
【
図14-1】AB-SMILES材料の概要の図である。
【
図14-2】AB-SMILES材料の概要の図である。
【
図14-3】AB-SMILES材料の概要の図である。式(I-15)が、ジカチオン性染料[(シアノスター)
2(HSO
4)
2(テトラメトキシ-アミノローダミン))])を含むSMILES材料であることに留意されたい。
【
図15】トリトンXにより安定化された水性溶液中のコロイドとして存在する[(シアノスター)
2(ClO
4)(ローダミン3B)]のFL-SMILESナノ粒子の吸光度(左)、並びに励起及び光放出スペクトル(右)の図である。
【
図16】酸(HX)の添加によって中性染料をカチオン性染料へと変換する例示的な反応の図である。
【
図17A】アルキル化によって、中性染料を、1つの正電荷を有するカチオン性染料へと変換する例示的な反応の図である。
【
図17B】アルキル化によって、中性染料を、1つ及び2つの正電荷を有するカチオン性染料へと変換する例示的な反応の図である。
【
図18】塩基(MOH)の添加によって中性染料をアニオン性染料へと変換する例示的な反応の図である。
【
図19-1】アニオン性染料を有する例示的なSMILES材料:(VI-1)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)
2(Cs
+)(スルホローダミンB)])、(VI-2)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)
2(Cs
+)(BODIPY FL)])、(VI-3)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)
2(Cs
+)(フルオレセイン)])、(VI-4)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)
2(Cs
+)(7-ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボキシレート)])、及び(VI-5)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)
2(Ca
2+)(ウラニン)])の図であり、(VI-5)がジアニオン性染料を含むSMILES材料であることに留意されたい。
【
図19-2】アニオン性染料を有する例示的なSMILES材料:(VI-1)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)2(Cs+)(スルホローダミンB)])、(VI-2)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)2(Cs+)(BODIPY FL)])、(VI-3)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)2(Cs+)(フルオレセイン)])、(VI-4)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)2(Cs+)(7-ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボキシレート)])、及び(VI-5)([(ジベンゾ-18-クラウン-6)2(Ca2+)(ウラニン)])の図であり、(VI-5)がジアニオン性染料を含むSMILES材料であることに留意されたい。
【
図20】2当量のシアノスターを有するカチオン性染料R12、対イオンPF
6
-を使用したSMILESナノ粒子の流体力学的粒径分布を示す、例示的な動的光散乱プロットの図である。
【
図21】2当量のシアノスターと混合したカチオン性染料R12及びそのPF
6
-対イオンを含むSMILESナノ粒子の、例示的な蛍光スペクトルの図である。
【
図22】SMILESナノ粒子を有する例示的な生物の画像である:R12ナノ粒子でインキュベートしたHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像(パネル(a))、R-12ベースのSMILESナノ粒子でインキュベートしたHeLa細胞の蛍光顕微鏡画像(パネル(b))、ゼブラフィッシュ幼虫のR-12ベースSMILESナノ粒子での血管系の画像(パネル(c))、ゼブラフィッシュ幼虫のGFP蛍光での血管系の画像(パネル(d))、ゼブラフィッシュ幼虫のホワイトフィールド画像(パネル(e))、並びにゼブラフィッシュ幼虫のR-12ベースSMILESナノ粒子及びGPF蛍光オーバーレイでの血管系の画像(パネル(f))。
【
図23】染料がSMILES材料中に組み入れられると染料の光安定性が向上することを明示する、例示的なスペクトルデータの図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、
図1に例示しているSMILES材料(小分子分離格子、Small Molecule Isolation LatticES)と名付けられた新しいタイプの光学材料の発見に基づく。SMILES材料は、例えばポリマー複合体中で溶液状態にある又は低濃度である、希釈条件下で測定された、分離されたイオン性有機染料の、高蛍光強度及び/又は調色特性を有する配合物を含む。SMILES材料が、分離された有機染料の高蛍光強度及び調色特性を提示するとき、これらは蛍光SMILES(FL-SMILES)と名付けられ、
図2に例示している。SMILES材料が、分離された有機染料の調色特性を提示するのみであるとき、これらは光吸収性SMILES(AB-SMILES)と名付けられ、
図3に例示している。SMILES材料は、イオン性染料及びその対イオンを適当なキレート剤リガンドと混合してイオン格子を形成することによって得られる(
図4)。SMILES材料は、多くのカチオン性染料(
図5)並びに既知の溶液状態のスペクトル色彩及び/又は光放出特性を有する染料クラスから速やかに調製して、調色彩された固体状態の材料及び/又は蛍光の固体状態の材料を有する配合物を提供することができる。該材料の得られたイオン格子(
図4)において、イオン性染料は、互いから空間的に分離される。いかなる特定の操作理論又は作用機序にも限定されるものではないが、対照化合物(
図6)の使用は、材料の配合物におけるこの空間的分離が、調色された光吸収及び/又は増進された光放出を伴う材料を作製することを助けると考えられる。ことを示唆している。SMILES材料は、適当なキレート剤リガンド(
図6及び
図7)の範囲からのものであることができる。いかなる特定の操作理論又は作用機序にも限定されるものではないが、エネルギー量によって規定されるイオン性染料の電気的分離は、調色された光吸収及び/又は増進された光放出を伴う材料(
図8)を作製することを助けると考えられる。FL-SMILES材料における光放出は、カチオン性染料ローダミン3Bから構成されたFL-SMILESとおいて見られる強度において、25倍増加していることによって例示されるように、イオン性染料単独の固体状態の製品についてよりも桁が大きいことが見られる(
図2D)。SMILES材料は、粉末(
図9)、非晶質固体(
図2E及び
図2F)、薄膜(
図3C)、結晶(
図4)、マイクロ粒子(
図9)、ポリマー複合体(
図10、
図11及び
図12)、ナノ粒子、並びにマイクロ粒子及びナノ粒子のコロイド(
図15)である。材料の範囲シリーズは、FL-SMILES(
図13)及びAB-SMILES(
図14)の特性を示している。イオン性染料は、SMILES材料を作製する目的のために、酸を付加することによる(
図16)かつアルキル化することによる(
図17)カチオン性染料の作成、及び塩基を付加することによる(
図18)アニオン性染料の作成により、生じさせられうる。アニオン性染料は、アニオン性染料及びその対イオンを適当なキレート剤リガンドと混合することによって、SMILES材料(
図19)を作製するために使用されうる。高い蛍光強度及び/又は調色特性を有する強固なSMILES材料を提供するこれらの及び他の好ましい実施形態が、本明細書において開示される。単に、SMILES材料及び着色すべきポリマーを良好な溶媒に溶解させ、次いで該溶媒を除去することによって、任意の形態にあるSMILES材料がポリマーに色彩を加える(
図10、
図11及び
図12)ために使用されうる。SMILES材料でポリマーに色彩を加える別の単純な方法(
図10、
図11及び
図12)は、単にSMILES材料を加熱したポリマー溶融物に溶解して、得られた着色ポリマーを冷却することによる。2当量のシアノスターと混合させたカチオン性染料を使用して作製されたSMILESナノ粒子は、サイズ20nmのオーダーで作製され得(
図20)、生物画像(
図22)のために使用されうる蛍光スペクトル(
図21)を示す。染料をSMILES材料へ組み入れると、染料の光安定性が向上することが見られる(
図23)。
【0023】
<定義>
本開示の態様又は特定の実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「the」及び「said」は、1つ以上の要素が存在することを意味すると意図される。用語「含む(comprising)」、「含む(including)」及び「有する」は、包括的であると意図され、かつ列挙した要素以外に追加の要素が存在しうることを意味する。用語「又は」は、特定の列挙のうちの任意の1つのメンバーを意味し、かつ、別段の指定がない限り、その列挙の任意のメンバーの組み合わせも含む。
【0024】
本明細書で意図されるとき、用語「実質的に」、「およそ」及び「約」、並びに類似の用語は、本開示の主題が関係する当技術分野で一般の及び許容される使用法との調和において広い意味を有することが意図される。これらの用語が、これらの特徴の範囲を、与えられている精密な数値範囲に限定することなしに、記載され特許請求されている一定の特徴の記載を可能にすることが意図されていることが、本開示を検討する当業者によって理解されるべきである。したがって、これらの用語は、記載され特許請求されている主題の実質的でない又は重要でない修正又は変更が、添付の特許請求の範囲において列挙されている本発明の範囲内であると考えられると解釈されるべきである。
【0025】
本明細書で説明される化合物は、不斉を呈してよく、光学的に活性な又はラセミな形態において分離されてよい。光学的に活性な形態を調製する方法としては、例えば、ラセミ形態の分割、又は光学的に活性な出発材料からの合成が挙げられる。オレフィンの多くの幾何異性体、C=N二重結合などもまた、本明細書に記載されている化合物中に存在することができ、かつ全てのそのような安定な異性体が、本明細書において熟慮される。特定の立体化学又は異性体形態が具体的に示されていない限り、構造の、全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミの形態、及び全ての幾何異性体の形態が熟慮される。
【0026】
本明細書で開示されている組成物及び配合物の化合物は、塩として存在してよい。用語「塩」は、水又は油に可溶性又は分散性である化合物の塩を指す。塩は、化合物の最終的な分離及び精製の間に調製されてもよく、又は別個に化合物のアミノ基を好適な酸と反応させることによって調製されてもよい。例えば、化合物が、メタノール及び水などであるがこれらに限定されない好適な溶媒に溶解され、少なくとも1当量の塩酸のような酸で処理されてよい。得られた塩は析出し、ろ過により分離され、減圧下で乾燥されてもよい。或いは、溶媒及び過剰な酸が減圧下で除去されて塩を提供してもよい。代表的な塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、ブチル酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミスルフェート、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ギ酸塩、イセチオン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、グルタミン酸塩、パラ-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、塩化水素塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。化合物のアミノ基はまた、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ラウリル、ミリスチル、ステアリルなどの、塩化アルキル、臭化アルキル、ヨウ化アルキルで四級化されてもよい。
【0027】
塩基付加塩は、本化合物の最終分離及び精製の間に調製されてもよく、これは、カルボキシル基の、ヒドロキシド、カーボネート、又はリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム又はアルミニウム、又は有機第一級、第二級、第三級アミンなどの、金属カチオンのビカーボネートなどの好適な塩基との反応による。メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネシルアミン、1-エフェナミン及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジンなどから誘導される第四級アミン塩が、本発明の範囲内にあると熟慮される。
【0028】
本明細書で使用される用語「置換されている」は、指定された原子上の任意の1個以上の水素が、指定された基からの選択物で置き換えられていることを意味し、ただし、指定された原子の通常の原子価は超えられないこと、及び安定な化合物中で置換がもたらされることを条件とする。置換基がオキソ(すなわち、=O)であるとき、原子上の2個の水素が置き換えられる。オキソ置換基は、芳香族部分上には存在しない。環系(例えば炭素環式又は複素環式)がカルボニル基又は二重結合で置換されていると言われるとき、カルボニル基又は二重結合が環の部分である(すなわち環内である)ことが意図される。
【0029】
置換基への結合が、環中の2個の原子を繋いでいる結合を架橋していると示すとき、そのような置換基は、環上で任意の原子に結合されうる。置換基が、それを介してそのような置換基が所与の式の化合物の残部に結合している原子を示さずに列挙されているとき、そのような置換基は、そのような置換基中の任意の原子を介して結合されてもよく、ただし、得られた結合が、安定な化合物中に存在することを条件とする。
【0030】
本明細書で使用される用語「ヒドロキシ」は、-OH基を指す。本明細書で使用される用語「オキソ」は、=O基を指す。本明細書で使用される用語「オキシ」は、-O-基を指す。本明細書で使用される用語「スルホニル」は、-S(O)2-基を指す。本明細書で使用される用語「カルボニル」は、-C(O)-基を指す。本明細書で使用される用語「カルボキシ」は、-C(O)-OH基を指す。本明細書で使用される用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、-Cl、-Br、-I又は-Fを指す。
【0031】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、2~10個の炭素を含有し、2個の水素の除去により形成された少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を指す。アルケニルの代表例としては、エテニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル及び3-デセニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用される用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に付加されている、本明細書に定義されているアルキル基を指す。アルコキシの代表例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリスデシルオキシ、テトラデシルオキシ及びペンタデシルオキシが挙げられるがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、1~18個(例として、例示的な炭素数)の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を指す。アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル及びn-デシルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用される用語「アルキル-NH」は、窒素原子を介して親分子部分に付加されている、本明細書に定義されているアルキル基を指す。
【0035】
本明細書で使用される用語「アルキル-NH-アルキル」は、本明細書に定義されているアルキル基を介して親分子部分に付加されている、本明細書に定義されているアルキル-NH基を指す。
【0036】
本明細書で使用される用語「アリール」は、フェニル基、又は二環式若しくは三環式の縮合環系を意味する。二環式縮合環系は、親分子部分に付加されており、且つ本明細書に定義されている単環式シクロアルキル基、フェニル基、本明細書に定義されている単環式ヘテロアリール基、又は本明細書に定義されている単環式複素環に縮合している、フェニル基によって例示される。三環式縮合環系は、本明細書に定義されている単環式シクロアルキル基、フェニル基、本明細書に定義されている単環式ヘテロアリール基、又は本明細書に定義されている単環式複素環に縮合している、本明細書で定義されたアリール二環式縮合環系によって例示される。アリールの代表例としては、アントラセニル、アズレニル、フルオレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル及びテトラヒドロナフチルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
本明細書で使用される用語「シクロアルキル」は、単環式、二環式又は三環式の環系を指す。単環式環系は、3~8個の炭素原子を含有する飽和の環式炭化水素基によって例示される。単環式環系の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。二環式縮合環系は、親分子部分に付加されているシクロアルキル基によって例示され、これは、本明細書に定義されている追加のシクロアルキル基、本明細書に定義されているフェニル基、ヘテロアリール、又は本明細書に定義されている複素環に縮合している。三環式縮合環系は、本明細書に定義されている追加のシクロアルキル基、本明細書に定義されているフェニル基、ヘテロアリール、又は本明細書に定義されている複素環に縮合しているシクロアルキル二環式縮合環系によって例示される。二環式環系はまた、そこで単環式環の炭素原子の2つの非近接炭素原子が1個の炭素原子と3個の追加の炭素原子との間のアルキレン橋によって結合されている架橋単環式環系によっても例示される。二環式環系の代表例としては、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[3.3.1]ノナン及びビシクロ[4.2.1]ノナンが挙げられるがこれらに限定されない。三環式環系はまた、そこで二環式環の2つの非近接炭素原子が結合によって、又は1個の炭素原子と3個の炭素原子との間のアルキレン橋によって結合されている二環式環系によっても例示される。三環式環系の代表例としては、トリシクロ[3.3.1.03,7]ノナン及びトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン(アダマンタン)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される用語「ハロアルキル」は、本明細書に定義されているアルキル基を介して親分子部分に付加されている、本明細書に定義されている少なくとも1つのハロゲンを指す。ハロアルキルの代表例としては、クロロメチル、2-フルオロエチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル及び2-クロロ-3-フルオロペンチルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用される用語「ヘテロアリール」は、芳香族単環式環又は芳香族二環式環系を指す。芳香族単環式環は、N、O及びSからなる群から独立に選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5員又は6員環である。5員の芳香族単環式環は2つの二重結合を有し、6員の芳香族単環式環は3つの二重結合を有する。二環式ヘテロアリール基は、親分子部分に付加しており、且つ本明細書に定義されている単環式シクロアルキル基、本明細書に定義されている単環式アリール基、本明細書に定義されている単環式ヘテロアリール基、又は本明細書に定義されている単環式複素環に縮合している、単環式ヘテロアリール環によっても例示される。ヘテロアリールの代表例としては、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、フリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インドリジニル、イソベンゾフラニル、イソインドリル、イソオキサゾリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、フタルアジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、キノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、トリアゾリル及びトリアジニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用される用語「複素環」は、非芳香族単環式環又は非芳香族二環式環を指す。非芳香族単環式環は、N、O及びSからなる群から独立に選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含有する3員、4員、5員、6員、7員及び8員環である。単環式環系の代表例としては、アゼチジニル、アジリジニル、ジアゼピニル、ジチアニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル、テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、テトラヒドロチエニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキシドチオモルホリニル(チオモルホリンスルホン)及びチオピラニルが挙げられるがこれらに限定されない。二環式複素環は、親分子部分に付加されており、且つ本明細書に定義されている単環式シクロアルキル基、単環式アリール基、本明細書に定義されている単環式ヘテロアリール基、又は本明細書に定義されている単環式複素環に縮合している、単環式複素環によって例示される。二環式環系はまた、そこで単環式環の2つの非近接原子が、炭素、窒素及び酸素からなる群から選択される1個の原子と3個の原子との間の橋によって結合されている架橋された単環式環系によっても例示される。二環式環系の代表例としては、例えば、ベンゾピラニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾジオキシニル、1,3-ベンゾジオキソリル、シノリニル、1,5-ジアゾカニル、3,9-ジアザ-ビシクロ[4.2.1]ノン-9-イル、3,7-ジアザビシクロ[3.3.1]ノナン、オクタヒドロピロロ[3,4-c]ピロール、インドリニル、イソインドリニル、2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[c]アゼピン、2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[b]アゼピン、2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾ[d]アゼピン、テトラヒドロイソキノリニル及びテトラヒドロキノリニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
用語「マクロ環」は、一緒に共有結合された少なくとも3つの環式環を含む環式環系を指す。
【0042】
用語「ヘテロマクロ環」は、マクロ環構造中に含まれている少なくとも1個の非炭素原子を有するマクロ環を指す。
【0043】
用語「光吸収ユニット」は、その存在が、電磁的スペクトルの、光UVの領域、可視及び/又は近赤外の領域の吸収を左右する原子又は原子群を有する発色団を指す。
【0044】
用語「光放出ユニット」は、その存在が、電磁的スペクトルの、光UVの領域、可視及び/又は近赤外の領域の吸収を左右する原子又は原子群を有する蛍光団を指す。
【0045】
用語「光吸収ユニット及び光放出ユニット」は、その存在が、電磁的スペクトルの、光UVの領域、可視及び/又は近赤外の領域の吸収を左右する原子又は原子群を有する蛍光団を指す。
【0046】
本明細書に記載されている化学構造は、IUPAC命名法規則に従って命名されており、適当であれば、当技術分野で許容可能な慣用名及び略語を含む。IUPAC命名法は、ChemDraw(登録商標)(PerkinElmer,Inc.)、ChemDoodle(登録商標)(iChemLabs、LLC)及びMarvin(ChemAxon Ltd.)などの、化学構造を描くソフトウェアプログラムに由来することができる。化学構造は、化学名が誤称である限り、又はさもなければ本明細書で開示されている化学構造と矛盾する限り、本開示において規制している。
【0047】
<イオン性染料のクラス>
本発明は、天然に得られる、又は中性染料の特定の染料クラスから得られるイオン性染料を使用する。これらの染料としては、スチリル、キサンテン、トリアンギュレニウム、オキサジン、トリアリールメタン、シアニン、アクリジン、フルオロノン、フェナントリジン、ポリ芳香族炭化水素、イミド、BODIPY、クマリン及びスクアライン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。これらの染料は、本明細書で開示されている適当な条件下で、カチオン性染料又はアニオン性染料へと変換されうる。
【0048】
例えば、中性染料は、酸HX(式中、Xは、アニオン性対イオンである)の添加で、カチオン性染料へと変換されうる(
図16)。別の例では、中性染料は、1つ以上のカチオン性部位を中性染料へ導入することによって、カチオン性染料へと変換されうる(
図17A、
図17B)。
【0049】
同様に、中性染料は、塩基MOH(式中、Mは、アニオン性対イオンである)の添加で、アニオン性染料へと変換されうる(
図18)。別の例において、中性染料は、1種以上のアニオン性部位を中性染料へ導入することによって、アニオン性染料へと変換されうる。
【0050】
例えば、アニオン性染料は、2つ以上のカチオン性部位をアニオン性染料へ導入することによって、カチオン性染料へと変換されうる。
【0051】
例えば、カチオン性染料は、2つ以上のアニオン性部位をカチオン性染料へ導入することによって、アニオン性染料へと変換されうる。
【0052】
<カチオン性染料からのSMILES化合物>
第1の態様において、式(I):
(荷電染料m+)x・(対イオンn-)y・(対イオン受容体)z (I)
の化合物が提供される。荷電染料m+は、カチオン性染料であり、対イオンn-は、アニオンであり、対イオン受容体は、対イオンn-の結合リガンドである。m、n、x及びyの値は、1以上の整数である。
【0053】
第1の点において、式(I)の化合物は、天然のカチオン性染料で、又は初期にカチオン性染料へと変換された中性染料、又はカチオン性染料へと変換されたアニオン性染料で、調製される。したがって、式(I)の荷電染料m+(すなわち、カチオン性染料)は、以下の方法のうちの1つによって調製されうる。1つの方法において、中性染料は、酸HX(式中、Xは、式(I)の化合物中の対イオンn-である)の添加によって荷電染料m+へと変換されうる。いくつかの好ましい実施形態において、中性染料を荷電染料m+へと変換することによる式(I)の荷電染料m+の調製は、酸HX(式中、酸HXは、HPF6、HBF4及びHClO4からなる群から選択される)を中性染料に添加することを含む。
【0054】
別の方法において、カチオン性部位を中性染料へ導入することによって、中性染料は荷電染料m+へと変換される。いくつかの好ましい実施形態において、カチオン性部位を中性染料へ導入することによって中性染料を荷電染料m+へと変換することによる式(I)の荷電染料m+の調製は、中性染料の遊離塩基部位をR-Y(式中、Rは、アルキル部分であり、Yは、式(I)の化合物中の対イオンn-である)でアルキル化することを含む。アルキル部分Rは、当技術分野で既知の任意のアルキル部分であることができる。好ましくは、アルキル部分Rは、アルキル(例えばC1~C18)、アルキル置換フェニル誘導体、置換グリコール誘導体、アルケニル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、水素、ヨード、-OR6、-N(R7R8)、-CO2R9、-C(O)-N(R10R11)(式中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、及び水素からなる群から選択される)又はこれらの組み合わせからなる群から選択されうる。
【0055】
別の方法において、アニオン性染料は、酸を2回付加すること、又は2回アルキル化すること、又は酸の付加及びアルキル化などのこれらの組み合わせによって、カチオン性染料へと変換されうる。
【0056】
第2の点において、対イオン受容体は、ヘテロマクロ環である。第2の点において、ヘテロマクロ環は、式(II)、(III)、(IV)及び(V):
【0057】
【0058】
式(II)のR、式(III)のR、R’及びR’’、式(IV)のR1、R2、R3、R4及びR5、並びに式(V)のR1、R2、R3及びR4は、アルキル(例えばC1~C18)、アルキル置換フェニル誘導体、及び置換グリコール誘導体、アルケニル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、水素、ヨード、-OR6、-N(R7R8)、-CO2R9、-C(O)-N(R10R11)(式中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、及び水素からなる群から選択される)又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。式(II)のRと、式(IV)のR1、R2、R3、R4及びR5とは同一である。式(III)のR、R’及びR’’、並びに式(V)のR1、R2、R3及びR4は、互いに独立に選択されうる。
【0059】
第1の態様の前述の点に関して、アニオンは、アニオンが式(I)の対イオン受容体とキレート複合体を形成することができるならば、任意のアニオンであることができる。好ましくは、アニオンは、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、AsO4
3-、HAsO4
2-、H2AsO4
-、AsF6
-、AlCl4
-、PO4
3-、HPO4
2-、H2PO4
-、SO4
2-、HSO4
-、Cl-、Br-、I-、シアニド、BrO4
-、IO4
-、F-、HF2
-、TcO4
-、RPO4
2-、R2PO4
-、RSO3
-、SCN-、N3
-、I3
-、CO3
2-、HCO3
-、P2O7
4-、HP2O7
3-、H2P2O7
2-、H3P2O7
-、RBF3
-(式中、Rは、置換基を含む)からなる群から選択される。アニオンを含む式(I)から除外される一定のアニオンは、F5-TPB-、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシ-2-プロピル)フェニル]ボレート、Ar4B-(式中、Arは、アリールである)、TRISPHAT-、BINPHAT-からなる群から選択される。
【0060】
さらなる点において、カチオン性染料と対イオン受容体との間の、部分的な、完全な又は光誘起電子移動の可能性は、式(I)の組成物中に存在するとき、カチオン性染料の調色特性及びスペクトル光放出特性の保持を犠牲にする。いかなる特定の操作理論又は作用機序にも限定されるものではないが、マーカス電子移動理論又は量子力学により定義されている軌道混合の原則から予想されるようにエネルギー的に好ましいとき、式(I)の得られた組成物からのカチオン性染料と対イオン受容体との間の、部分的な又は完全な電子移動が可能であると考えられる。そのような現象の例は、Bo Qiao、Brandon E.Hirsch、Semin Lee、Maren Pink、Chun-Hsing Chen、Bo W.Laursen及びAmar H.Flood、「Ion-Pair Oligomerization of Chromogenic Triangulenium Cations with Cyanostar-Modified Anions That Controls Emission in Hierarchical Materials」、J.Am.Chem.Soc.2017、139:6226~6233頁に開示されており、その内容は、ここで、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。この事例において、部分的な又は完全な電子移動は、カチオン性染料において最も上位の占有された分子軌道と、対イオン受容体において最も上位の占有された分子軌道との間で発生すると考えられる。したがって、第3の点において、式(I)の化合物のカチオン性染料としては、光吸収ユニットを有するカチオン性染料、又は光吸収ユニットと光放出ユニットとの両方を有するカチオン性染料が挙げられる。
【0061】
第4の点において、カチオン性染料を含む式(I)の化合物は、カチオン性スチリル、カチオン性キサンテン、カチオン性トリアンギュレニウム、カチオン性オキサジン、トリアリールメタン、カチオン性シアニン、カチオン性アクリジン、カチオン性フルオロノン、カチオン性フェナントリジン、カチオン性ポリ芳香族炭化水素、カチオン性イミド、カチオン性BODIPY、カチオン性クマリン及びカチオン性スクアライン、又はこれらの組み合わせからなる染料クラスの群から選択される。例示的なカチオン性染料としては、構造:
【0062】
【0063】
なおもさらなる点によれば、式(I)の化合物は、式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(I-4)、式(I-5)、式(I-6)、式(I-7)、式(I-8)、式(I-9)、式(I-10)、式(I-11)、式(I-12)、式(I-13)及び式(I-14):
【0064】
【0065】
<カチオン性染料のSMILES配合物>
第2の態様において、配合物が提供される。配合物は、式(I):
(荷電染料m+)x・(対イオンn-)y・(対イオン受容体)z (I)
の化合物を含む。荷電染料m+は、カチオン性染料であり、対イオンn-は、アニオンであり、対イオン受容体は、対イオンn-の結合リガンドである。m、n、x及びyの値は、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。
【0066】
第1の点において、対イオン受容体は、ヘテロマクロ環である。第2の点において、ヘテロマクロ環は、式(II)、(III)、(IV)及び(V):
【0067】
【0068】
式(II)のR、式(III)のR、R’及びR’’、式(IV)のR1、R2、R3、R4及びR5、並びに式(V)のR1、R2、R3及びR4は、アルキル(例えばC1~C18)、アルキル置換フェニル誘導体、及び置換グリコール誘導体、アルケニル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、水素、ヨード、-OR6、-N(R7R8)、-CO2R9、-C(O)-N(R10R11)(式中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、及び水素からなる群から選択される)又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。式(II)のRと、式(IV)のR1、R2、R3、R4及びR5とは同一である。式(III)のR、R’及びR’’、並びに式(V)のR1、R2、R3及びR4は、互いに独立に選択されうる。
【0069】
配合物の第3の点において、好ましいアニオンは、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、AsO4
3-、HAsO4
2-、H2AsO4
-、AsF6
-、AlCl4
-、PO4
3-、HPO4
2-、H2PO4
-、SO4
2-、HSO4
-、Cl-、Br-、I-、シアニド、BrO4
-、IO4
-、F-、HF2
-、TcO4
-、RPO4
2-、R2PO4
-、RSO3
-、SCN-、N3
-、I3
-、CO3
2-、HCO3
-、P2O7
4-、HP2O7
3-、H2P2O7
2-、H3P2O7
-、RBF3
-(式中、Rは、置換基を含む)からなる群から選択される。アニオンを含む式(I)から除外される一定のアニオンは、F5-TPB-、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシ-2-プロピル)フェニル]ボレート、Ar4B-(式中、Arは、アリールである)、TRISPHAT-、BINPHAT-からなる群から選択される。配合物の別の点において、カチオン性染料m+と対イオン受容体との間の、部分的な、完全な又は光誘起電子移動は、マーカス理論及び量子論により統制される規則によれば、発生しない。配合物のなおもさらなる点によれば、配合物は、式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(I-4)、式(I-5)、式(I-6)、式(I-7)、式(I-8)、式(I-9)、式(I-10)、式(I-11)、式(I-12)、式(I-13)、式(I-14)及び式(I-15):
【0070】
【化5】
からなる群から選択される式(I)を含むことができる。
【0071】
配合物のさらなる点になおもよれば、カチオン性染料m+は、対イオンn-と対イオン受容体との間に形成された複合体の吸収波長よりも長い波長の光を吸収する。配合物のさらなる点になおもよれば、カチオン性染料m+は、対イオンn-と対イオン受容体との間に形成された複合体の吸収波長よりも長い波長の光を放出する。配合物のさらなる点になおもよれば、式(I)の化合物は、光放出ユニットを含む。配合物のさらなる点になおもよれば、配合物は、固体状態の材料を含む。この点において、固体状態の材料は、好ましくは、粉末、非晶質固体、薄膜、結晶、マイクロ粒子、ポリマー複合体、ナノ粒子、並びにマイクロ粒子及びナノ粒子のコロイドからなる群から選択される。加えて、かつ配合物によれば、配合物は、低極性度の溶媒を含む溶液から調製される。
【0072】
<カチオン性染料のSMILES材料の調製>
SMILES材料は、正しい比のカチオン性染料及び対アニオンを対イオン受容体と混合し、固体状態の形態にある材料を作製することによって、容易に調製されうる。
【0073】
したがって、第3の態様において、高輝度光放出特性を有する材料を製造する方法が提供される。該方法は、以下のステップを含む。第1のステップは、カチオン性染料及び対アニオンの溶液を、アニオン受容体と混合して、式(I):
(荷電染料m+)x・(対イオンn-)y・(対イオン受容体)z (I)
の化合物を含む第1の混合物を形成することを含む。
荷電染料m+は、カチオン性染料であり、対イオンn-は、アニオンであり、対イオン受容体は、対イオンn-の結合リガンドである。m、n、x及びyの値は、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。第2のステップは、第1の混合物を濃縮して、固体状態にある光放出ユニットを有する材料を形成する工程である。
【0074】
第1の点において、対イオン受容体は、ヘテロマクロ環である。第2の点において、ヘテロマクロ環は、式(II)、(III)、(IV)及び(V):
【0075】
【化6】
並びにこれらの組み合わせから選択される。
【0076】
式(II)のR、式(III)のR、R’及びR’’、式(IV)のR1、R2、R3、R4及びR5、並びに式(V)のR1、R2、R3及びR4は、アルキル(例えばC1~C18)、アルキル置換フェニル誘導体、及び置換グリコール誘導体、アルケニル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、水素、ヨード、-OR6、-N(R7R8)、-CO2R9、-C(O)-N(R10R11)(式中、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、及び水素からなる群から選択される)又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。式(II)のRと、式(IV)のR1、R2、R3、R4及びR5とは同一である。式(III)のR、R’及びR’’、並びに式(V)のR1、R2、R3及びR4は、互いに独立に選択されうる。
【0077】
方法の第3の点において、好ましいアニオンは、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、N(SO2CF3)2
-、N(SO2C2F5)2
-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、AsO4
3-、HAsO4
2-、H2AsO4
-、AsF6
-、AlCl4
-、PO4
3-、HPO4
2-、H2PO4
-、SO4
2-、HSO4
-、Cl-、Br-、I-、シアニド、BrO4
-、IO4
-、F-、HF2
-、TcO4
-、RPO4
2-、R2PO4
-、RSO3
-、SCN-、N3
-、I3
-、CO3
2-、HCO3
-、P2O7
4-、HP2O7
3-、H2P2O7
2-、H3P2O7
-、RBF3
-(式中、Rは、置換基を含む)からなる群から選択される。アニオンを含む式(I)から除外される一定のアニオンは、F5-TPB-、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシ-2-プロピル)フェニル]ボレート、Ar4B-(式中、Arは、アリールである)、TRISPHAT-、BINPHAT-からなる群から選択される。配合物の別の点において、カチオン性染料m+と対イオン受容体との間の、部分的な、完全な又は光誘起電子移動は、マーカス理論及び量子論により統制される規則によれば、発生しない。方法のなおもさらなる点によれば、配合物は、式(I-1)、式(I-2)、式(I-3)、式(I-4)、式(I-5)、式(I-6)、式(I-7)、式(I-8)、式(I-9)、式(I-10)、式(I-11)、式(I-12)、式(I-13)、式(I-14)及び式(I-15):
【0078】
【化7】
からなる群から選択される式(I)を含むことができる。
【0079】
方法のさらなる点になおもよれば、カチオン性染料m+は、対イオンn-と対イオン受容体との間に形成された複合体の吸収波長よりも長い波長の光を吸収する。方法のさらなる点になおもよれば、カチオン性染料m+は、対イオンn-と対イオン受容体との間に形成された複合体の吸収波長よりも長い波長の光を放出する。方法のさらなる点になおもよれば、式(I)の化合物は、光放出ユニットを含む。方法のさらなる点になおもよれば、配合物は、固体状態の材料を含む。この点に関して、固体状態の材料は、好ましくは、粉末、非晶質固体、薄膜、結晶、マイクロ粒子、ポリマー複合体、ナノ粒子、並びにマイクロ粒子及びナノ粒子のコロイドからなる群から選択される。加えて、かつ該方法によれば、配合物は、低極性度の溶媒を含む溶液から、又は粉末から、又はコロイドから調製される。ある点において、配合物はコロイドを含み、これは、液体、溶液及び固体状態とは異なる物質の状態である。
【0080】
<アニオン性染料からのSMILES化合物>
第4の態様において、式(VI):
(荷電染料m-)x・(対イオンn+)y・(対イオン受容体)z (VI)
の化合物が提供される。
【0081】
荷電染料m-は、アニオン性染料であり、対イオンn+は、カチオンであり、対イオン受容体は、対イオンn+の結合リガンドである。m、n、x及びyは、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。
【0082】
第1の点において、式(VI)の化合物は、荷電染料m-を含み、これは以下の方法のうちの1つによって調製される。第1の方法において、中性染料が、塩基MOH(式中、Mは、式(VI)の化合物中の対イオンn+である)の添加によって荷電染料m-へと変換されうる。第2の方法において、中性染料は、アニオン性部位を中性染料へ導入することによって、荷電染料m-へと変換されうる。好ましい実施形態において、塩基MOHは、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、RbOH、Ca(OH)2、Ba(OH)2、Mg(OH)2、水酸化アンモニウム(ここで、アンモニウムはN(R)4
+であり、式中、Rは、同一の又は同一でない組成のアルキル基である)からなる群からから選択される。
【0083】
第2の点において、式(VI)の化合物は、アニオン性染料を含み、該アニオン性染料は、光吸収ユニットを有する化合物、及び光吸収ユニットと光放出ユニットとの両方を有するアニオン性染料から選択される。
【0084】
第3の点において、式(VI)の化合物は、アニオン性染料を含み、該アニオン性染料は、アニオン性スチリル、アニオン性キサンテン、アニオン性トリアンギュレニウム、アニオン性オキサジン、アニオン性トリアリールメタン、アニオン性シアニン、アニオン性アクリジン、アニオン性フルオロノン、アニオン性フェナントリジン、アニオン性ポリ芳香族炭化水素、アニオン性イミド、アニオン性BODIPY、アニオン性クマリン及びアニオン性スクアライン、又はこれらの組み合わせからなる染料クラスの群から選択される。
【0085】
第4の点において、式(VI)の化合物は、アニオン性染料を含み、該アニオン性染料は、以下のメンバー:
【0086】
【0087】
第5の点において、式(VI)の化合物は、対イオン受容体を含み、該対イオン受容体は、ヘテロマクロ環である。好ましいヘテロマクロ環としては、式(VII)~(XIII):
【0088】
【化9】
から選択される1つ、又はこれらの組み合わせが挙げられる。置換基R
1、R
2、R
3及びR
4は、全て同一であり又は全て異なり、アルキル(例えばC
1~C
18)、アルキル置換フェニル誘導体、及び置換グリコール誘導体、アルケニル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、水素、ヨード、-OR
6、-N(R
7R
8)、-CO
2R
9、-C(O)-N(R
10R
11)(式中、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10及びR
11は、それぞれ、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキル、及び水素からなる群から選択される)又はこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0089】
式(VI)の好ましいカチオン性対イオンとしては、Li+、Na+、K+、Cs+、アンモニウムカチオンN(R)4
+(式中、Rは、同一の又は同一でない組成のアルキル基である)、Rb+、Ca2+、Ba2+、Mg2+、ジカチオン性ビス-アンモニウムカチオン(R1)3N+-(R2)-N(R3)3
+(式中、R1及びR3は、同一の又は同一でない組成のアルキル基であり、R2は、特に、アルケニル、アルキル、アルコキシ、アルキル-NH-アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロアリール、複素環、ハロアルキルからなる群から選択される)、又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるカチオンが挙げられる。対イオンが対イオン受容体に結合する必要があるため、好ましいカチオンはテトラ-フェニルホスホニウムではない。対イオンが、熱の又は光誘起電子移動に向けて不活性化である必要があるため、好ましいカチオンはメチルピリジニウムではない。式(VI)の例示的化合物としては、式(VI-1)、(VI-2)、(VI-3)、(VI-4)及び(VI-5):
【0090】
【0091】
別の点において、式(VI)の化合物は、光吸収ユニットを含むアニオン性染料を含む。その際、好ましい実施形態は、対イオンn+と対イオン受容体との間に形成された複合体の吸収波長よりも長い波長の光を吸収するアニオン性染料を含む。好ましい実施形態は、希釈条件下で、アニオン性染料単独の光吸収特性(吸収帯の位置及び幅)を再現する光吸収特性を有する光吸収ユニットを含むアニオン性染料を含む。なおも他のさらなる実施形態において、アニオン性染料は、光吸収ユニットと光放出ユニットとを含む。なおも他のさらなる実施形態において、アニオン性染料は、対イオンn+と対イオン受容体との間に形成された複合体の吸収波長よりも長い波長の光を吸収し放出する。その際、アニオン性染料と対イオン受容体との複合体の電気的特性は、部分的な又は完全な電子移動、アニオン性染料と対イオン受容体との間の光誘起電子移動をもたらさない又は新しい吸収帯又は放出帯を生成しない。
【0092】
<アニオン性染料のSMILES配合物>
第5の態様において、式(VI):
(荷電染料m-)x・(対イオンn+)y・(対イオン受容体)z (VI)
の化合物を含む配合物が開示される。荷電染料m-は、アニオン性染料であり、対イオンn+は、カチオンであり、対イオン受容体は、対イオンn+の結合リガンドである。m、n、x及びyは、1以上の整数であり、x・nの積とm・yの積とは同一である。
【0093】
第1の点において、配合物は、式(VI)の化合物について開示された点のそれぞれについて明らかにされた化合物を含む。第2の点において、配合物は、部分的な又は完全な電子移動、光誘起電子移動、又はカチオン性染料と対イオン受容体との間の電気的混合をもたらさない、アニオン性染料と対イオン受容体との複合体の電気的特性を含む。第3の点において、配合物は、固体状態の材料を含む。その際、固体状態の材料は、粉末、非晶質固体、薄膜、結晶、マイクロ粒子、ポリマー複合体、ナノ粒子、並びにマイクロ粒子及びナノ粒子のコロイドからなる群から選択される。別の点において、配合物は、溶液、粉末又はコロイドから調製される。その際、配合物は、コロイドを含む。
【0094】
<アニオン性染料のSMILES材料の調製>
第6の態様において、高輝度光放出特性を有する材料を製造する方法が開示される。該方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、第4の態様による化合物又は第5の態様による配合物を含む第1の混合物を調製することを含む。第2のステップは、第1の混合物を濃縮して、固体状態にある光放出ユニットを有する材料を形成することを含む。
【0095】
<SMILES材料でのさらなる方法及び用途>
第7の態様において、物質を検出する方法が開示される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、物質を、前述の態様のうちの任意のものによる化合物、配合物又は材料のうちの任意のものと接触させることを含む。第2のステップは、物質単独、又は化合物、配合物若しくは材料単独に対して接触させるステップの結果としての混合物の、化合物、配合物又は材料のうちの任意のものにおける、少なくとも1つのスペクトル特性の変化を測定することを含む。物質は、混合物での測定するステップの結果としての、化合物、配合物又は材料のうちの任意のものにおける少なくとも1つのスペクトル特性の変化によって検出される。
【0096】
第8の態様において、光吸収及び光放出をポリマーに付加する方法が開示される。該方法は、いくつかのステップを含む。第1のステップは、ポリマーを用意することを含む。第2のステップは、該ポリマーをSMILES材料と接触させることを含む。
【0097】
第9の態様において、生物材料を染色する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、生物材料を用意することを含む。第2のステップは、該生物材料を、SMILES材料を含むマイクロ粒子又はナノ粒子と接触させることを含む。
【0098】
第10の態様において、イオン性染料の光安定性を向上させる方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、イオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、該イオン性染料をSMILES材料へと変換することを含む。
【0099】
第11の態様において、イオン性染料の、ポリマー及び非極性溶媒との溶解性及び混合性を向上させる方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、イオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、該イオン性染料をSMILES材料へと変換することを含む。
【0100】
第12の態様において、プログラム化可能な光吸収及び光放出特性を有するSMILES材料を作製する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、イオン性染料を用意することを含む。イオン性染料は、特定の光吸収及び光放出特性を含む。第2のステップは、該イオン性染料をSMILES材料へと変換することを含む。
【0101】
第13の態様において、プログラム化可能なストークシフトを有するSMILES材料を作製する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、第1のイオン性染料及び第2のイオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、第1のイオン性染料と第2のイオン性染料とを一緒に混合して第1の混合物を形成することを含む。第3のステップは、第1の混合物をSMILES材料へと変換することを含む。SMILES材料において、第1のイオン性染料はエネルギー供与体であり、第2のイオン性染料はエネルギー受容体であり、第1のイオン性染料による光放出、及び第2のイオン性染料による光吸収を可能にする。
【0102】
第14の態様において、異なる相対強度を有する異なる波長にてプログラム化可能な吸収及び光放出を伴うSMILES材料を作製する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、少なくとも2種のイオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、少なくとも2種のイオン性染料を一緒に混合して第1の混合物を形成することを含む。第3のステップは、第1の混合物をSMILES材料へと変換することを含む。少なくとも2種のイオン性染料は、異なる相対強度を有する異なる波長における、プログラム化可能な吸収及び光放出を含む。
【0103】
第15の態様において、プログラム化可能な光放出減衰率を有するSMILES材料を作製する方法が提供される。該方法はいくつかのステップを含む。第1のステップは、複数のイオン性染料を用意することを含む。第2のステップは、複数のイオン性染料を一緒に混合して第1の混合物を形成することを含む。第3のステップは、該混合物をSMILES材料へと変換することを含む。複数のイオン性染料は、SMILES材料中、光吸収性エネルギー供与体として働く第1のイオン性染料、同時にエネルギー受容体とエネルギーとして働く任意の中間の染料、及びエネルギー受容性光放出体として働く最終のイオン性染料を含み、第1のイオン性染料による光吸収、任意の中間の染料を通るパスエネルギー、及び最終のイオン性染料による光放出を可能にする。
【実施例0104】
[実施例1] SMILES材料の調製の方法
A.1 溶液中のSMILES染料
SMILES材料を、その対イオンの塩としてのイオン性染料(例えば過塩素酸ローダミン3B、1当量)を、正しい数の当量の対イオン受容体、例えば2当量のシアノスター(
図1C、化合物IV、式中、R1=R2=R3=R4=R5=第三級ブチル)と混合して作製した。この方法では、式(I)又は(VI)(イオン性染料、その対イオン及び対イオン受容体の電荷に依る)(式中、m及びnの値は、1以上の整数である)の化合物の溶液を作製する。
【0105】
SMILES染料の代表的な溶液を作製するために、その塩としてのイオン性染料を秤量してフラスコに添加した。このフラスコへ、2モル当量の、SMILESと相溶性の対イオン受容体(例えばシアノスター、
図1C)を添加した。異なるモル当量の対イオン受容体を添加し、x、y及びzの値を変更することができる。ある体積の溶媒(例えばジクロロメタン)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばイオン性染料について1mM)の溶液を得る。
【0106】
[実施例2] シアノスター及びローダミン3BからのSMILES材料の作製
一定量の乾燥過塩素酸ローダミン3B(6.1mg)をフラスコに添加した。2モル当量の、SMILESと相溶性のアニオンリガンドシアノスター(19.6mg)を計り分けてフラスコに添加した。ある体積のジクロロメタン(1mL)をこの乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばカチオン性染料について1mM)の溶液を得た。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収した。一定量(2.4mg)の乾燥FL-SMILES粉末[(シアノスター)2(ClO4)(ローダミン3B)]をフラスコに添加した。次いで、この固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とした。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定した。スピニング時間を30~45秒に設定した。スピナーを起動し、次いで、FL-SMILES[(シアノスター)2(ClO4)(ローダミン3B)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用した。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析した。
【0107】
[実施例3] シアノスター及びピリジン1からのSMILES材料の作製
一定量の乾燥過塩素酸ピリジン1(5.7mg)をフラスコに添加した。2モル当量の、SMILESと相溶性のアニオンリガンドシアノスター(27.6mg)を計り分けてフラスコに添加した。ある体積のジクロロメタン(1mL)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばカチオン性染料について1mM)の溶液を得た。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収した。一定量(2.2mg)の乾燥FL-SMILES粉末[(シアノスター)2(ClO4)(ピリジン1)]をフラスコに添加した。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とした。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定した。スピニング時間を30~45秒に設定した。スピナーを起動し、次いで、FL-SMILES[(シアノスター)2(ClO4)(ピリジン1)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用した。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析した。
【0108】
[実施例4] シアノスター及びDAOTAからのSMILES材料の作製
一定量の乾燥DAOTAテトラフルオロボレート(5.7mg)をフラスコに添加した。2モル当量の、SMILESと相溶性のアニオンリガンドシアノスター(23.0mg)を計り分けてフラスコに添加した。この乾燥混合物に、ある体積のジクロロメタン(1mL)を添加して所望の濃度(例えばカチオン性染料について1mM)の溶液を得た。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収した。一定量(2.3mg)の乾燥FL-SMILES粉末[(シアノスター)2(BF4)(DAOTA)]をフラスコに添加した。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とした。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定した。スピニング時間を30~45秒に設定した。スピナーを起動し、次いで、FL-SMILES[(シアノスター)2(BF4)(DAOTA)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用した。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析した。
【0109】
[実施例5] シアノスター及びオキサジン720からのSMILES材料の作製
一定量の乾燥した過塩素酸オキサジン720(4.9mg)をフラスコに添加した。2モル当量の、SMILESと相溶性のアニオンリガンドシアノスター(20.8mg)を計り分けてフラスコに添加した。ある体積のジクロロメタン(1mL)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばカチオン性染料について1mM)の溶液を得た。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収した。一定量(2.3mg)の乾燥FL-SMILES粉末[(シアノスター)2(ClO4)(オキサジン720)]をフラスコに添加した。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とした。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定した。スピニング時間を30~45秒に設定した。スピナーを起動し、次いで、FL-SMILES[(シアノスター)2(ClO4)(オキサジン720)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用した。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析した。
【0110】
[実施例6] シアノスター及びシアニンからのSMILES材料の作製
一定量の乾燥シアニンDIOC2ヘキサフルオロホスフェート(6.3mg)をフラスコに添加した。2モル当量の、SMILESと相溶性のアニオンリガンドシアノスター(24.1mg)を計り分けてフラスコに添加した。ある体積のジクロロメタン(1mL)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばカチオン性染料について1mM)の溶液を得た。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収した。一定量(2.3mg)の乾燥FL-SMILES粉末[(シアノスター)2(PF6)(DIOC2)]をフラスコに添加した。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とした。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定した。スピニング時間を30~45秒に設定した。スピナーを起動し、次いで、FL-SMILES[(シアノスター)2(PF6)(DIOC2)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用した。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析した。
【0111】
[実施例7] 不良なエネルギー適合性を示すシアノスターとTOTAとを使用したときに色彩の再現を示さない材料の作製
一定量の乾燥TOTAテトラフルオロボレート(4.4mg)をフラスコに添加した。2モル当量の、SMILESと相溶性のアニオンリガンドシアノスター(21.6mg)を計り分けてフラスコに添加した。ある体積のジクロロメタン(1mL)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばカチオン性染料について1mM)の溶液を得た。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収した。一定量(2.2mg)の乾燥FL-SMILES粉末[(シアノスター)2(BF4)(TOTA)]をフラスコに添加した。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とした。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定した。スピニング時間を30~45秒に設定した。スピナーを開始し、次いで、FL-SMILES[(シアノスター)2(BF4)(TOTA)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用した。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析した。薄膜の吸収スペクトルは、TOTA染料単独の希釈溶液と同じ特徴は示さず、光放出特性は希釈溶液中の染料から見られるのと同じ光放出を再現しないが、代わりに、新しい赤色にシフトした光放出帯を示している。
【0112】
[実施例8] SMILES材料の固体状態
それ自体が固体状態にある過塩素酸ローダミン3Bと、SMILES材料としての過塩素酸ローダミン3Bとの、光学特性の比較が、このコンセプトを明示している。FL-SMILES材料[(シアノスター)
2(ClO
4)(ローダミン3B)]の薄膜の光吸収スペクトル(
図2C、実線)は、希釈条件にあるカチオン性染料ローダミン3Bの溶液スペクトルと適合することが見られた。しかしながら、過塩素酸ローダミン3B単独の光吸収スペクトル(
図2C、点線)は、希釈条件にあるカチオン性染料ローダミン3Bの溶液スペクトル(
図2A)と適合しなかった。代わりに、薄膜からの吸収スペクトルは歪み、溶液中よりも長い波長及び広いスペクトル帯へのシフトを示した。過塩素酸ローダミン3B単独の薄膜(
図2D、点線)に対して、FL-SMILES材料(
図2D、実線)の光励起及び光放出は増進された。
【0113】
FL-SMILES材料の非晶質粉末の固体状態の調製からの光放出の増進は、過塩素酸ローダミン3B単独(
図2F、左手)に対して、SMILES材料の写真(
図2F、右手)の増進された高輝度において容易に見ることができる。
【0114】
FL-SMILESを使用したときに得られる高輝度光放出は、様々なポリマー複合体において見ることができる。方法I(実施例、F.1 ポリマー複合体を参照されたい)を用いると、以下のポリマーがFL-SMILES[(シアノスター)
2(ClO
4)(ローダミン3B)]で染色されており、UV光照射で観察したときに高輝度蛍光を示すことが見られる。染色ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)、PEG5000及びポリ(ビニルピロリドン)の写真画像について、
図11を参照されたい。例えば、方法II(実施例、F.1 ポリマー複合体を参照されたい)、すなわちポリ(プロピレン)及びポリ(アクリル酸)を使用して作製された染色ポリマーについて、
図12を参照されたい。
【0115】
B.1 SMILES粉末及び非晶質固体
式(I)及び式(VI)中のx、y及びzの値を用いて、上でA.1において説明したSMILES染料溶液を最初に調製する。次いで、溶媒を、真空又は同様の方法の下、蒸発によって除去する。得られた粉末(例えば
図2E及び
図2F)は、化合物Iに対応する式(式中、x、y及びzの値は、元々のSMILES染料溶液によって規定される)の固体状態にあるSMILES材料で構成されている。
【0116】
C.1 薄膜
SMILES材料の薄膜は、適当な溶液、粒子懸濁液、ポリマー溶液、又は任意の関連するSMILES配合物を、ガラススライド上にスピンコーティングして作製することができる。式(I)及び式(VI)の化合物についてのx、y及びzの値は、使用するSMILES粉末又はSMILES染料溶液又は粒子懸濁液又はポリマー溶液によって規定される。
【0117】
一定量のSMILES粉末(B.1項)を揮発性有機溶媒(例えばジクロロメタン又はペンタン)に溶解して又は懸濁させて所望の原液濃度(例えば2mM)とする。加えて、SMILES染料溶液(A.1を参照されたい)、マイクロ粒子懸濁液(E.1を参照されたい)又はポリマー複合体(F.1を参照されたい)を使用することができる。
【0118】
典型的な調製において、ガラススライドをスピンコータに固定する。スピナー(2000RPM)を起動し、次いで、溶液中のSMILES材料20μLをスライドの中央に施用する。スピニング(30~45秒)が完了したら、薄膜は、さらなる加工なしに、さらなる分析に供することができる。
【0119】
D.1 バルク結晶
式(I)及び式(VI)の化合物のSMILES材料の結晶を、結晶成長の標準的な方法を用いて作製する。標準的な方法としては、蒸気拡散、良溶媒と貧溶媒との層化、溶媒の緩慢な蒸発、再結晶化、溶液の播種、及び濃縮溶液の冷却が挙げられるがこれらに限定されない。
【0120】
蒸気拡散を利用する典型的な調製において、SMILES材料の5mM溶液を、ピンホールの開き口を備えた封止バイアルに添加し、好適な揮発性逆溶剤を含有するチャンバ内に置く。次いで、逆溶剤チャンバを閉じ、結晶を成長させる。
【0121】
E.1 SMILESの微結晶及びマイクロ粒子
方法I:一定量の乾燥SMILES粉末(B.1項)をフラスコへ移し、ジクロロメタンに溶解して、所望の濃度(典型的な濃度範囲:1~20mM)とする。或いは、染料溶液は、A.1項で説明したSMILES材料の成分から作製することができる。SMILES成分及び材料は、選択した溶媒に可溶でなければならない。この溶液に、過剰な逆溶剤(例えば20体積当量のペンタン)をゆっくりと添加する。添加している間に、溶液は、SMILES材料の小さいマイクロ粒子が生成するので、不透明になる。溶媒を、続いて真空下で除去し、SMILES材料を得る。
【0122】
方法II:一定量の乾燥SMILES粉末(A.1項)をフラスコに添加し、ジクロロメタンに溶解して、所望の濃度(典型的な濃度範囲:1~20mM)とする。或いは、SMILES染料溶液(A.1項)はまた、所望の濃度においても調製することができる。次いで、SMILES溶液を20体積当量の逆溶剤(典型的にはペンタン)へ滴下添加し、その間に溶液は不透明になることになる。溶媒を、続いて真空下で除去してSMILES材料を得る。
【0123】
F.1 ポリマー複合体
SMILES材料は2つの方法のうちの1つによって、ポリマーに添加することができる。
【0124】
方法I:一定量の乾燥ポリマー(例えば樹脂)をフラスコに添加する。次いで、SMILES材料を、ポリマーの質量の画分(例えば0.05%~20%)にて粉末(B.1項)として添加する。次いで、溶媒を、全ての固体が完全に溶解するまで添加する。次いで、溶液を使用して薄膜(C.1項)を調製し、型を用いてある形状へと鋳造し、又は溶媒を除去して乾燥粉末複合体を供給することができる。代表例としては、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)又はポリ(ビスフェノールAカーボネート)の使用が挙げられる。これらのドープしたポリマーは、乾燥ポリマー樹脂とSMILESとの混合物をジクロロメタンに溶解して溶媒を除去することによって調製する。
【0125】
方法II:一定量の乾燥ポリマー(例えば樹脂)をフラスコに添加する。次いで、フラスコを、油浴中、樹脂が完全に溶融するまで加熱する。SMILES粒子を、ポリマーの質量の画分(例えば0.05%~20%)にて粉末として添加し(B.1項及びE.1項)、液体化したポリマー内でSMILES材料を均等に分散させるように撹拌する。代表例としては、ポリプロピレン及びポリアクリル酸の使用が挙げられる。
【0126】
適切なSMILESローダミンR12ナノ粒子の作製
SMILESナノ粒子を、超音波処理機槽中、R12(400μL)とシアノスター(400μL)との水20mL中混合物を注入して作製した。均質な混合を確実にするために、注入が終わった後1分間、懸濁液の超音波処理を続けた。次いで、オープンバイラルを磁気撹拌機上に8時間置いて、含有しているTHFを蒸発させた。任意の溶解した染料を除去するために、次いで、懸濁液を、2リットルの脱イオン水に対して、10kDaのカットオフフィルターを備えた透析下に一晩置いた。次いで、懸濁液を、10kDaの遠心分離濃縮機を用いて濃縮して、最終体積4mLを得た。
【0127】
DSPEGEG表面コーティングを有する粒子
最初にR12 400μLとシアノスター400μLとDSPEPEG600μLとを混合し、次いで超音波処理機槽中、水20mL中に注入して、DSPEPEGで包んだSMILESナノ粒子を作製した。均質な混合を確実にするために、注入が終わった後1分間、懸濁液の超音波処理を続けた。次いで、バイアルを磁気撹拌機上に置き、含有しているTHFを蒸発させた。次いで、過剰なDSPEPEG及びおそらくは任意の溶解した染料を除去するために、懸濁液を、10kDaのカットオフフィルターを備えた透析下に一晩置いた。次いで、懸濁液を、10kDaの遠心分離濃縮機を用いて濃縮して、最終体積4mLを得た。
【0128】
TAT-ペプチド抱合DSPEPEGでコーティングしたSMILESナノ粒子
最初に、R12 400μLとシアノスター400μLとDSPEPEG300μLとDSPEPEG-マレミド300μLとを混合し、次いで、超音波処理機槽中、水20mLを注入して、DSPEPEGで包んだSMILESナノ粒子を作製した。均質な混合を確実にするために、注入が終わった後1分間、懸濁液の超音波処理を続けた。次いで、バイアルを磁気撹拌機上に置き、含有しているTHFを蒸発させた。次いで、TAT-ペプチドの原液150μL部分をナノ粒子懸濁液添加し、バイアルを一晩撹拌させて抱合反応を完了した。次いで、過剰なDSPEPEG、TAT-ペプチド及びおそらくは任意の溶解した染料を除去するために、懸濁液を、10kDaのカットオフフィルターを備えた透析下に一晩置いた。次いで、懸濁液を、10kDaの遠心分離濃縮機を用いて濃縮して、最終体積4mLを得た。
【0129】
G.1 ジベンゾ-18-クラウン-6及びスルホローダミンBナトリウム塩からのSMILES材料の作製
一定量の乾燥スルホローダミンBナトリウム(5.8mg)をフラスコに添加する。1モル当量のカチオンリガンドジベンゾ-18-クラウン-6(3.6mg)を計り分けてフラスコに添加する。ある体積のジクロロメタン(10mL)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばアニオン性染料について1mM)の溶液を得る。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収する。一定量(18.8mg)の乾燥SMILES粉末[(ジベンゾ-18-クラウン-6)(Na)(スルホローダミンB)]をフラスコに添加する。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とする。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定する。スピニング時間は30~45秒に設定する。スピナーを起動し、SMILES[(ジベンゾ-18-クラウン-6)(Na)(スルホローダミンB)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用する。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析することができる。
【0130】
G.2 ジベンゾ-18-クラウン-6及びフルオレセインセシウム塩からのSMILESの作製
一定量の乾燥フルオレセインセシウム塩(4.6mg)をフラスコに添加する。2モル当量のジベンゾ-18-クラウン-6(7.2mg)を計り分けてフラスコに添加する。ある体積のジクロロメタン(10mL)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばアニオン性染料について1mM、ジベンゾ-18-クラウン-6について2mM)の溶液を得る。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収する。一定量(23.7mg)の乾燥FL-SMILES粉末[(ジベンゾ-18-クラウン-6)2(Cs)(フルオレセイン)]をフラスコに添加する。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とする。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定する。スピニング時間を30~45秒に設定する。スピナーを起動し、次いで、SMILES[(ジベンゾ-18-クラウン-6)2(Cs)(フルオレセイン)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用する。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析することができる。
【0131】
G.3 シアノスター及びジカチオン性テトラメトキシ-アミノローダミンからのSMILES材料の作製
一定量の乾燥テトラメトキシ-アミノローダミンビス-スルフェート(7.2mg)をフラスコに添加する。2モル当量の、SMILESと相溶性のあるアニオンリガンドシアノスター(18.4mg)を計り分けてフラスコに添加する。ある体積のジクロロメタン(10mL)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えばジカチオン性染料について1mM)の溶液を得る。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収する。一定量(5.1mg)の乾燥FL-SMILES粉末[(シアノスター)2(HSO4)2(テトラメトキシ-アミノローダミン)]をフラスコに添加する。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(1mLにて2mM)とする。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定する。スピニング時間を30~45秒に設定する。スピナーを起動し、次いで、FL-SMILES[(シアノスター)2(HSO4)2(テトラメトキシ-アミノローダミン)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用する。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析することができる。
【0132】
G.4 シアノスター、アミノピレン及びヘキサフロオロホスホン酸からのSMILES材料の作製
一定量のアミノピレン(2.2mg)をフラスコに添加する。ある体積のジクロロメタン(10mL)を乾燥混合物に添加して所望の濃度(例えば染料について1mM)の溶液を得る。1モル当量のヘキサフルオロホスホン酸を添加して、アンモニウムピレンヘキサフルオロホスフェートをin situで生成する。2モル当量の、SMILESと相溶性のあるアニオンリガンドシアノスター(18.4mg)を計り分けてフラスコに添加する。次いで、溶媒を真空中で除去し、得られた粉末を回収する。一定量(4.39mg)の乾燥SMILES粉末[(シアノスター)2(PF6)(アンモニウムピレン)]をフラスコに添加する。次いで、固体を揮発性有機溶媒(ジクロロメタン)に溶解して所望の原液濃度(2mM)とする。次いで、ガラス製の顕微鏡スライドを、2000RPMに設定したスピンコータに固定する。スピニング時間を30~45秒に設定する。スピナーを起動し、次いで、FL-SMILES[(シアノスター)2(PF6)(アンモニウムピレン)]の溶解した原液20μLをスライドの中央に施用した。スピニングが完了したら、スライドを取り外し、一切の追加の加工なしで光学特性について分析することができる。
【0133】
<参照による組み込み>
本明細書に引用されている特許、特許出願、特許出願公開、他の公開及び付属物の全ては、あたかもその全体が明らかにされているがごとく、参照により本明細書に組み込む。
【0134】
<好ましい実施形態>
本発明は、最も実用的であり好ましい実施形態であると現在考えられているものに関して記載されてきた。しかしながら、本発明は、例示によって提示されており、開示されている実施形態を限定することは意図されていない。したがって、当業者であれば、本発明が、添付の特許請求の範囲において明らかにされている本発明の趣旨及び範囲内の、全ての修正及び代替的変形を包含することが意図されていることを認識することになる。