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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150462
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】流体推進システム
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/12 20060101AFI20241016BHJP
   B64U 10/25 20230101ALI20241016BHJP
   B64U 50/12 20230101ALI20241016BHJP
【FI】
B64D27/12
B64U10/25
B64U50/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024102857
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2021541456の分割
【原出願日】2020-01-21
(31)【優先権主張番号】62/794,464
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518073310
【氏名又は名称】ジェトプテラ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・エバレット
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型かつ軽量の翼での揚力発生を最大限にする。
【解決手段】航空機は、胴体と、少なくとも1つの主翼とを含み、少なくとも1つの主翼は、上面と、上面内の少なくとも1つの凹部と、少なくとも1つの凹部と流体連通する少なくとも1つの導管とを有する。少なくとも1つのエジェクタは、少なくとも1つの凹部内に配置されており、少なくとも1つの導管を介して圧縮空気を受け取るように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体と、
上面と、前記上面内の少なくとも1つの凹部と、前記少なくとも1つの凹部と流体連通する少なくとも1つの導管とを有する少なくとも1つの主翼と、
前記少なくとも1つの凹部内に配置されており、前記少なくとも1つの導管を介して圧縮空気を受け取るように構成されている少なくとも1つのエジェクタと
を備える航空機。
【請求項2】
非常に積極的な空気力学的な幾何学的形状の翼形部のように近似的に形成された揚力発生表面と、例えば排気ガスの空気などの加圧流体の供給源を使用するエジェクタとを組み合わせた一般的な揚力及び推力増強装置であって、前記エジェクタは、それらの前記組み合せが、個別の翼形部形状の装置及びエジェクタを別々に使用した場合よりも多くの揚力及び推力を発生させるように、幾何学的及び機能的に揚力発生装置に大部分が一致するように形成される、一般的な揚力及び推力増強装置。
【請求項3】
前記エジェクタの入口は、前記翼形部の上面に翼長に沿って最適に配置及び分散され、前記翼形部の前記上面の前縁上に、前記翼形部の上面に沿って流れ方向に形成される境界層吸い込みを可能にして、境界層剥離をなくし、従って増加した迎え角に対する失速を遅らせるか又はなくす、請求項2に記載の構造。
【請求項4】
前記エジェクタの出口は、前記翼形部の上面に翼長に沿って最適に配置及び分散され、境界層がエネルギーを与えられ、前記翼形部の上面に沿って流れ方向に壁ジェットとして噴出されることを可能にして、前記翼形部の前記上面の揚力発生を制御する、請求項2に記載の構造。
【請求項5】
加圧流体が、流体ネットワークにおいて前記翼形部を通してそのルートを介して前記エジェクタに供給され、前記流体ネットワークは、前記エジェクタの各々を個別に調整及び遮断することを可能にし、従って、推力だけでなく揚力も、必要なときに必要な場所に分配する、請求項2に記載のエジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【優先権主張】
【0001】
[0001]本願は、2019年1月18日に出願された米国仮特許出願第62/794,464号の優先権を主張するものであり、その内容全体が、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる。
【著作権表示】
【0002】
[0002]本開示は、米国著作権法及び/又は国際著作権法の下で保護されている。(c) 2019 Jetoptera. All rights reserved.((c)は著作権マークを示す)。本特許文書の開示の一部には、著作権保護の対象となる資料が含まれている。著作権所有者は、特許及び/又は商標庁の特許ファイル又は記録に記載されているような特許文書又は特許開示のいずれかによる完全な複写に異議を唱えないが、それ以外についてはあらゆる著作権を留保する。
【背景技術】
【0003】
[0003]通常の翼形部から発生する揚力は、翼形部の周囲の気流条件と上記翼形部の幾何学的形状とに起因する。速度及び迎え角を変化させること並びにフラップなどの表面を変化させること(表面変化)によって、翼形部の揚力を制御することができ、その目的は、小型かつ軽量の翼での揚力発生を最大限にすることである。翼は、一般に、効率を向上させるために大型化しており、重量を抑えるために複合材料で作られている。
【0004】
[0004]翼の重量を最小限にし、揚力発生を最大限にすることが望ましい。推力発生装置の設置面積及び重量を最小限にし、その出力(推力)を最大限にすることが望ましい。これは、燃料又はエネルギー消費の最小化につながる。
【0005】
[0005]ほとんどの従来の航空機では、現在のところ、ジェット流出を翼形部又はウィングフォイル(wingfoil)に向けてその損失エネルギーを利用することは不可能である。ターボジェットの場合、ジェット流出が高温であるため、翼形部を介した揚力発生への使用は実際には不可能である。典型的なジェット排気温度は摂氏1000度であり、ほとんどの軍用航空機に当てはまるように、推力増強のために後燃焼が利用される場合にはそれよりも高いこともある。ターボファンが使用される場合、最新の航空機では高バイパスが使用されているにもかかわらず、ファン及びコアの排気流体をほぼ軸方向に向けるベーンがあっても、ファンの回転により、非軸方向の残留性要素が依然としてかなり存在する。非常に高温のコアホットガスの存在及び噴出する混合物の残留回転運動に加え、ダウンウォッシュ内のジェットの円筒状の性質により、ターボファンエンジンの後方に直接配置された翼形部の使用は実現困難である。加えて、ターボファンなどのジェットエンジンからの高温流と低温流との混合長は、インチではなくマイル単位で発生している。他方で、現在の大型のターボプロップの使用は、プロペラの直径と同じ大きさの大きな下降円筒状空気流を発生させ、プロペラの後方の回転成分の速度はより高く、大量の空気を低速で移動させる。回転成分があるため、下流の運動エネルギーを推進以外の他の目的に利用することは難しく、従って運動エネルギーの一部は、失われて効率的に利用されない。大型のプロペラによって動かされる空気の一部はまた、エンジンのコアに向けられる。要約すると、現在の推進システムからのジェット流出は、現在活用されていない残留エネルギー及び可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】[0006]一実施形態による航空機の上面斜視図を例示する。
図2】[0007]図1に例示される航空機の正面平面図である。
図3】[0008]図1に例示される航空機の翼及びエジェクタアセンブリの分解組立図を例示する。
図4】[0009]タービン及び圧縮機アセンブリを含む、図1に例示される航空機の翼及びエジェクタアセンブリの上面部分断面斜視図を例示する。
図5】[0010]代替的な実施形態による航空機の上面図を例示する。
図6】[0011]別の代替的な実施形態による航空機の上面斜視図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0012]本願は、本発明の1つ又は複数の実施形態を説明することを意図している。「~しなければならない(must)」、「~するであろう(will)」などの絶対的な用語及び特定の量の使用は、そのような実施形態のうちの1つ又は複数に適用可能であると解釈されるべきであるが、必ずしも全てのそのような実施形態に適用可能であると解釈されるべきではないことは理解されたい。そのため、本発明の実施形態は、そのような絶対的な用語の文脈で説明される1つ又は複数の特徴又は機能性を省略するか、又はそれらの修正を含み得る。加えて、本願中の見出しは、参照を目的としているにすぎず、本発明の意味にも解釈にも決して影響を及ぼすものではない。
【0008】
[0013]一実施形態は、翼又は他の空気力学的表面などの揚力発生装置にスラスタ/エジェクタを埋め込むことによって推力及び揚力の両方を増強させる特徴を組み合わせる。そのようなエジェクタは、例えば、翼の上面に埋め込まれ得る。
【0009】
[0014]エジェクタと呼ばれ得る推力増強装置は、例えば、本明細書に完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第15/256,178号に記載されており、これは、圧縮空気などの加圧流体流を使用して、より多くの推力を発生させ、従ってエンタイトルメント推力(entitlement thrust)を増強するものであり、それ以外は、大気条件への膨張によって、しかしながら周囲空気の巻き込みとエネルギー伝達とを介して、特定量の推力(エンタイトルメント推力)を生み出し得る。エジェクタは、形状を非円形とすることができ、翼形部の上面に類似した形状が与えられ得、これにより、上記翼形部への埋め込みが容易になる。
【0010】
[0015]本発明の一実施形態は、2つの要素を組み合わせる。これにより、例えば2.0の推力増強が揚力増強とまとめられ、翼形部が、失速することなく積極的な(aggressive)迎え角を持つことができるようになり、境界層吸い込みと吹き付けジェット表面との組合せによって少なくとも1.5倍の揚力増大を実現する。この組合せは、現在の個別システムの性能を超える航空機のSTOL及び操縦性を可能にすることができる。
【0011】
[0016]本発明の一実施形態では、エジェクタによって放出された流れは、揚力発生のための薄い翼形部(例えば、エジェクタの出口平面の後方に配置された翼の後縁面)にそれを真っ直ぐに向けることで、揚力発生に使用され得る。例えば、エジェクタ流出軸速度が航空機の対気速度よりも125%大きい場合、ジェット流出流を受ける翼の部分は、翼長が単に航空機の空気の対気速度によって気体が流れる(washed)場合と比較して、同じ翼長で50%超高い揚力を発生させることができる。この例を使用すれば、エジェクタ流出速度が150%まで上昇すると、揚力は、例えばタービンからの加圧排気ガスが使用された場合の密度低下効果を含めても、航空機の対気速度での元の翼よりも45%超高くなる。
【0012】
[0017]図1及び図2は、本発明の一実施形態による航空機100を例示する。航空機100は、前方先尾翼102及び尾部垂直安定板103が取り付けられている胴体101を含む。航空機100は更に、胴体101に取り付けられている一対の主翼104を含んでおり、その中にエジェクタ105が埋め込まれている。例示される実施形態では、各エジェクタ105の大きさは、胴体101から翼104の先端に配置されるにつれて次第に小さくなる。
【0013】
[0018]図3に最もよく例示されているように、翼104は、エジェクタ105を受け入れて収容するとともに各エジェクタの前後の空気力学的表面として機能するように構成された凹部106を含む。図4を参照すると、航空機100は、翼104の内部全体に及び図3に示すように導管109を介してエジェクタ105に圧縮空気を行き渡らせるガスタービン107及び圧縮機108を更に含み得る。
【0014】
[0019]この構成の結果として、本発明の少なくとも1つの実施形態は、例えば、非常に積極的な空気力学的な幾何学的形状の翼形部のように近似的に形成された揚力発生表面104を、例えば排気ガスの空気などの加圧流体の供給源を使用するエジェクタ105と組み合わせた揚力及び推力増強装置を提供する。エジェクタ105は、それらの組合せが、個別の翼形部形状の装置104及びエジェクタを別々に使用した場合よりも多くの揚力及び推力を発生させるように、上記揚力発生装置に一致するように幾何学的及び機能的に形成される。
【0015】
[0020]そのような実施形態では、エジェクタ105の入口は、翼104の上面上に翼長に沿って最適に配置及び分散され、翼の上面の前縁上に、翼の上面に沿って流れ方向に形成される境界層吸い込みを可能にして、境界層剥離をなくし、従って増加した迎え角に対する失速を遅らせるか又はなくす。
【0016】
[0021]そのような実施形態では、エジェクタ105の出口は、翼104の上面上に翼長に沿って最適に配置及び分散され、境界層がエネルギーを与えられ、翼の上面に沿って流れ方向に壁ジェットとして噴出されることを可能にして、翼の上面の揚力発生を制御する。
【0017】
[0022]そのような実施形態では、加圧流体が、流体ネットワークにおいて翼104を通してエジェクタ105に供給され、この流体ネットワークは、エジェクタの各々を個別に調整及び遮断することを可能にし、従って、推力だけでなく揚力も、必要なときに必要な場所に分配する。
【0018】
[0023]代替的に、車両が離陸操縦を完了して水平飛行に移行した直後に、軽量ウィングフォイルなどの翼をエジェクタ出口平面のすぐ後ろに配備して、エンジンからのより少ない動力でより多くの揚力を発生させるのを助けることができる。
【0019】
[0024]代替的に、本発明のこの実施形態を使用すると、翼は翼長がそれ程長くなくてもよく、コード(cord)が同じ場合、翼長を40%超縮小しても、同じ揚力を発生させることができる。当業者に知られているこの揚力Lの方程式(式1)では、次の通りである: L=1/2ρV2SC 式(1)
【0020】
[0025]ここで、Sは翼の表面積であり、ρは密度であり、Vは航空機(翼)の速度であり、Cは揚力係数である。例えば、10フィートの翼長を有するUAVは、ジェットが水平飛行中は常に翼に直接方向付けられ、翼が薄く、元の翼と同様の翼弦、キャンバ、及びCを有するのであれば、翼長をわずか6フィートに縮小することができる。混合比(又はエントレインメント比)が大きく、従ってジェットの温度がほんの少し高い場合、密度に対する温度の有害な影響ははるかに小さくなる。
【0021】
[0026]図5は、推力を生み出すために航空機の翼上にジェットエンジンを配置する従来のアプローチの代替を提供する実施形態を例示する。図5では、ガス発生器501が、直接一次翼形部の後縁からガス流を放出することによる前方推進のために翼503などの一次翼形部に埋め込まれている一連のエジェクタ502に動力供給するための駆動空気の流れを生み出す。この実施形態では、ガス発生器501は、航空機の本体の胴体504に埋め込まれているとともに、導管505を介してエジェクタ502に流体結合されており、航空機の唯一の推進手段である。エジェクタ502は、円形であっても非円形であってもよく、終端部101に類似する対応する形状の出口構造を有し、所定の調整可能な速度で、発生器501及び導管505からガス流を提供する。追加的に、エジェクタ502は、フラップ又は補助翼のものと同様の方法で可動であり、180度の角度で回転可能であり、必要な推力の提供に加えて、航空機の姿勢を制御するように作動させられ得る。前縁507を有する二次翼形部506は、エジェクタ502からのガス流が二次翼形部506上を流れるように、エジェクタ502の直後に、翼503と直列に配置される。従って、二次翼形部506は、航空機の対気速度よりもはるかに高い速度を受けるため、対気速度の二乗に比例して、高い揚力を生み出す。二次翼形部506の全体は、前縁507に平行に方向付けられた軸を中心として回転可能であり得る。
【0022】
[0027]本発明のこの実施形態では、二次翼形部506は、ガス発生器501によって生成された駆動流体(一次流体とも呼ばれる)と、一次流体部分1つあたり5~25の二次流体部分という割合で駆動流体によって巻き込まれた周囲空気である二次流体との混合により、適度に高い温度を経験する(see)こととなる。そのため、二次翼形部506が経験する温度は、周囲温度よりもわずかに高いが、駆動流体よりは大幅に低く、副翼の材料が、Tmix=(Tmotive+ER×Tamb)/(1+ER)という式に従って揚力荷重を支持及び維持することを可能にするものであり、ここで、Tmixは、エジェクタ502から噴出されるジェット流出の最終の流体混合物の温度であり、ERは、駆動空気の1部分あたりに巻き込まれる周囲空気の部分の巻き込み率であり、Tmotiveは、駆動流体又は一次流体うちの高い方の温度であり、Tambは、接近している周囲空気の温度である。
【0023】
[0028]図6は、タンデム翼を特徴とする本発明の代替的な実施形態を描写している。例示される実施形態では、二次翼形部1010は、一次翼形部701上を流れる流体及び増強翼形部からのガス流が二次翼形部上を流れるように、増強翼形部702、902のすぐ下流に配置される。2つの比較的短い翼701,1010の組合せは、増強翼形部702,902を有さず、より大きな翼に取り付けられたジェットエンジンに依存して推力を生成するはるかに大きい翼長の翼の揚力よりも多くの揚力を生み出す。
【0024】
[0029]前述の文章は、多数の異なる実施形態の詳細な説明を記載しているが、保護の範囲が以下の特許請求の範囲の文言によって定義されることは理解されたい。詳細な説明は、例示的なものとしてのみ解釈されるべきであり、全ての可能な実施形態を説明することは、不可能でないとしても非実用的であるため、全ての可能な実施形態を説明するものではない。現在の技術又は本特許の出願日以降に開発される技術のいずれかを使用して、多数の代替的な実施形態が実装され得、これらは依然として特許請求の範囲内にある。
【0025】
[0030]従って、本特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で説明及び例示された技法及び構造に対して多くの修正及び変形が行われ得る。従って、本明細書で説明された方法及び装置が例示的なものにすぎず、特許請求の範囲を限定するものではないことは理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【外国語明細書】