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特開2024-150469がんの予防または治療方法において使用するためのがん/精巣抗原をコードするウイルスベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150469
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】がんの予防または治療方法において使用するためのがん/精巣抗原をコードするウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/861 20060101AFI20241016BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20241016BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20241016BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 33/243 20190101ALI20241016BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/863 Z
C12N15/09 Z
C12N5/10
A61K35/761
A61K35/76
A61K45/00 101
A61K48/00
A61K39/395 T
A61K31/337
A61K31/475
A61K31/7068
A61K31/7048
A61K31/519
A61K33/243
A61K31/282
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P37/04
C12N15/861 Z
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024103713
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2021505666の分割
【原出願日】2019-07-30
(31)【優先権主張番号】1812647.4
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】520143926
【氏名又は名称】ラディック インスティテュート フォア キャンサー リサーチ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LUDWIG INSTITUTE FOR CANCER RESEARCH LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デン エンド,ベノイト ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】レオン,キャロル エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヒル,アドリアン エス.
(72)【発明者】
【氏名】レドチェンコ,イリナ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】がんの予防または治療のためのウイルスベクターベースのワクチンを提供する。
【解決手段】核酸分子が、(i)MAGEがん抗原の免疫原性断片;(ii)NY-ESO-1がん抗原もしくはその免疫原性断片;(iii)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片、およびNY-ESO-1がん抗原もしくはその免疫原性断片、(iv)LAGE1がん抗原もしくはその免疫原性断片、または(v)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片およびLAGE1がん抗原もしくはその免疫原性断片を含むがん抗原(複数可)をコードするポリヌクレオチド配列であって、前記がん抗原(複数可)が、動物細胞において前記がん抗原(複数可)の翻訳、転写および/または発現を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列、ならびにアデノウイルスパッケージングシグナル配列を含む、ChAdベクターを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子をカプシドで包んだチンパンジーアデノウイルス(ChAd)ベクターであっ
て、前記核酸分子が、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ESO-1がん抗
原、もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/もしくはLA
GE1がん抗原、もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列であって
、動物細胞において前記がん抗原またはその断片の翻訳、転写および/または発現を指令
する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列、ならびにアデ
ノウイルスパッケージングシグナル配列を含む、ChAdベクター。
【請求項2】
(a)国際公開第2012/172277号パンフレットに開示されたChAdOx1
;好ましくは、国際公開第2012/172277号パンフレットに開示された配列番号
38のポリヌクレオチドもしくはそれと少なくとも80%の同一性を有する配列によりコ
ードされるChAdOx1、または(b)国際公開第2017/221031号パンフレ
ットに開示されたChAdOx2;好ましくは、国際公開第2017/221031号パ
ンフレットに開示された配列番号10のポリヌクレオチドもしくはそれと少なくとも80
%の同一性を有する配列によりコードされるChAdOx2である、請求項1に記載のC
hAdベクター。
【請求項3】
核酸分子をカプシドで包んだ改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)ベクターであ
って、前記核酸分子が、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ESO-1がん
抗原、もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/もしくはL
AGE1がん抗原、もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列であっ
て、動物細胞において前記がん抗原またはその断片の翻訳、転写および/または発現を指
令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列を含む、MV
Aベクター。
【請求項4】
国際公開第2011/128704号パンフレットまたは欧州特許出願公開第2044
947号明細書に開示された通りのものである、請求項3に記載のMVAベクター。
【請求項5】
前記MAGE抗原が、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも46%、好
ましくは少なくとも69%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有する配列、も
しくはその任意の免疫原性断片の配列を有するMAGE 3Aである、請求項1~4のい
ずれか一項に記載のChAdまたはMVAベクター。
【請求項6】
前記NY-ESO-1がん抗原が、配列番号3のアミノ酸配列、またはそれと少なくと
も75%、好ましくは少なくとも76.7%の同一性を有する配列、もしくはその任意の
免疫原性断片の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のChAdまたはMV
Aベクター。
【請求項7】
前記LAGE1がん抗原が、配列番号5のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも78
%、好ましくは少なくとも97%の同一性を有する配列、もしくはその任意の免疫原性断
片の配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のChAdまたはMVAベクター
【請求項8】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号6のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも7
9%の同一性を有する配列、もしくはその断片の配列を有するヒトHLAクラスII組織
適合性抗原ガンマ鎖(li)をさらにコードし、それにより、前記がん抗原が、liとの
融合物またはその断片として動物細胞中で発現され、
好ましくは、前記断片が膜貫通ドメインであり、より好ましくは、前記膜貫通ドメイン
が、アミノ酸残基30~55または30~61を含み、よりいっそう好ましくは、前記膜
貫通ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項1~7のいずれか一項に記
載のChAdまたはMVAベクター。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも8
1%の同一性を有する配列、もしくはその断片の配列を有するtPAをさらにコードし、
それにより、前記がん抗原が、tPAとの融合物またはその断片として動物細胞中で発現
され、好ましくは、前記断片が、21アミノ酸のリーダー配列を含み、より好ましくは、
前記21アミノ酸のリーダー配列が配列番号9である、請求項1~8のいずれか一項に記
載のChAdまたはMVAベクター。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチド配列が、融合タンパク質として動物細胞中で発現される、(i)
MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片およびNY-ESO-1がん抗原もしくはそ
の免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片およびLA
GE1がん抗原もしくはその免疫原性断片をコードする、請求項1~9のいずれか一項に
記載のChAdベクター。
【請求項11】
前記ポリヌクレオチド配列が、融合タンパク質として動物細胞中で発現される、(i)
MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片および/もしくはNY-ESO-1がん抗原
もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片
および/もしくはLAGE1がん抗原もしくはその免疫原性断片をコードし、前記MAG
Eがん抗原、NY-ESO-1がん抗原またはLAGE1がん抗原のうちの少なくとも1
つが断片である、請求項1~9のいずれかに記載のMVAベクター。
【請求項12】
前記MAGEがん抗原およびNY-ESO-1またはMAGEがん抗原およびLAGE
1が免疫原性断片である、請求項11に記載のMVAベクター。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチド配列が、発現された場合に、前記MAGEおよびNY-ESO-
1もしくはLAGE1がん抗原またはその断片をいずれかの順序において融合タンパク質
として連結する、5~9アミノ酸のリンカー、好ましくは、アミノ酸配列GGGPGGG
を有するリンカーをコードする、請求項10~12のいずれかに記載のChAdまたはM
VAベクター。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のChAdまたはMVAベクターを含む、免疫原
性組成物。
【請求項15】
アジュバントをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~10もしくは13のいずれかに記載のChAdベクター、または請求項3~
9もしくは11~13のいずれかに記載のMVAベクターをコードする配列を含む、単離
されたポリヌクレオチド。
【請求項17】
ヒトコドン用法についてコドン最適化されている、請求項16に記載の単離されたポリ
ヌクレオチド。
【請求項18】
請求項16または17に記載のポリヌクレオチドを含む、細菌人工染色体(BAC)ク
ローン。
【請求項19】
請求項1~13のいずれかに記載のChAdおよび/またはMVAベクターを含む、単
離された宿主細胞。
【請求項20】
個体においてがんを予防または治療する方法であって、有効量の請求項1~10または
13のいずれかに記載のChAdベクターを投与すること、および有効量の請求項3~9
または11~13のいずれかに記載のMVAベクターを投与することを含み、それにより
、前記個体の適応免疫系が刺激されて、抗がん免疫応答が提供される、方法。
【請求項21】
前記ChAdおよびMVAベクターの前記投与が、別々に、逐次的にまたは同時に実行
される、請求項20に記載のがんを予防または治療する方法。
【請求項22】
有効量の1つまたは複数のチェックポイント阻害剤の投与をさらに含む、請求項20ま
たは21に記載の方法。
【請求項23】
前記チェックポイント阻害剤が、前記ChAdおよびMVAベクターと同時に、別々に
または並行して投与される、請求項20~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記個体が、化学療法および/または放射線療法治療を受けた、受けている、または受
ける個体である、請求項20~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記ChAdベクターが最初に投与される、請求項20~24のいずれかに記載の方法
【請求項26】
前記ChAdおよびMVAベクターが、それぞれ1回より多く投与される、請求項20
~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記ChAdおよびMVAベクターが交互に投与される、請求項20~26のいずれか
に記載の方法。
【請求項28】
ベクターの各投与の間の期間が、5日~8週の範囲内、好ましくは1週である、請求項
20~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記チェックポイント阻害剤が、PD-1、CTLA-4またはPD-L1を遮断する
、請求項22~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、トレ
メリムマブもしくはアテゾリズマブ、デュルバルマブまたはアベルマブから選択される、
請求項22~28のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキン
リンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、小細胞肺がん、腎臓、頭頸部、肉腫、または乳房の
がんである、請求項22~28のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
がんの予防または治療において使用するための、請求項1、2、5~10または13の
いずれかに記載のChAdベクター。
【請求項33】
がんの予防または治療において使用するための、請求項3~9または11~13のいず
れかに記載のMVAベクター。
【請求項34】
がんの予防または治療のための患者への別々の、逐次的なまたは同時の投与のための、
請求項1、2、5~10または13のいずれかに記載のChAdベクター、および請求項
3~9または11~13のいずれかに記載のMVAベクター。
【請求項35】
がんの治療のためにChAdおよびMVAベクターと共に投与するための1つまたは複
数のチェックポイント阻害剤をさらに含む、請求項34に記載のがんの予防または治療に
おいて使用するためのChAdおよびMVAベクター。
【請求項36】
前記チェックポイント阻害剤が、ベクターと同時に、別々にまたは並行して投与される
、請求項35に記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdおよびMV
Aベクター。
【請求項37】
患者が、化学療法を受けた、受けているまたは受ける患者である、請求項31~33の
いずれかに記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdおよびMVAベ
クター。
【請求項38】
前記ChAdベクターが最初に投与される、請求項34~36のいずれかに記載のがん
の予防または治療において使用するためのChAdおよびMVAベクター。
【請求項39】
前記ChAdおよびMVAベクターが、それぞれ1回より多く投与される、請求項34
~38のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdおよび
MVAベクター。
【請求項40】
前記ChAdおよびMVAベクターが交互に投与される、請求項34~39のいずれか
に記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdおよびMVAベクター。
【請求項41】
ベクターの各投与の間の期間が、5日~8週の範囲内、好ましくは1週である、請求項
34~40のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdお
よびMVAベクター。
【請求項42】
前記チェックポイント阻害剤が、PD-1、CTLA-4またはPD-L1を遮断する
、請求項35~41のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用するためのC
hAdおよびMVAベクター。
【請求項43】
前記チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ、トレ
メリムマブもしくはアテゾリズマブ、デュルバルマブまたはアベルマブから選択される、
請求項35~41のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用するためのCh
AdおよびMVAベクター。
【請求項44】
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキン
リンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、小細胞肺がん、腎臓、頭頸部、肉腫または乳房のが
んである、請求項35~41のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用する
ためのChAdおよびMVAベクター。
【請求項45】
がんの予防または治療のための患者への別々の、逐次的なまたは同時の投与のための、
請求項1、2、5~10または13のいずれかに記載のChAdベクター、請求項3~9
または11~13のいずれかに記載のMVAベクター、化学療法剤、およびチェックポイ
ント阻害剤。
【請求項46】
前記化学療法剤が、(b)パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビ
ン、エトポシドまたはペメトレキセドのうちの1つと組み合わせた(a)カルボプラチン
またはシスプラチンから選択される、請求項45に記載のChAdベクター、MVAベク
ター、化学療法剤およびチェックポイント阻害剤。
【請求項47】
前記チェックポイント阻害剤がPD-1である、請求項45または46に記載のChA
dベクター、MVAベクター、化学療法剤およびチェックポイント阻害剤。
【請求項48】
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)もしくは小細胞肺がん(SCLC)、黒色
腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、小細胞肺がん、
腎臓、頭頸部、肉腫または乳がんから選択されるがんである、請求項45~47のいずれ
かに記載のChAdベクター、MVAベクター、化学療法剤およびチェックポイント阻害
剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの予防または治療のためのウイルスベクターベースのワクチン、より特
に、目的のがんワクチン抗原を含み、かつ哺乳動物への投与のための、複製欠陥性アデノ
ウイルス(Ad)および改変ワクシニアウイルスアンカラ(Modified Vaccinia Virus An
kara;MVA)ベクターに関する。本発明は、したがって、ウイルス粒子、ウイルス粒子
を含む免疫原性組成物、およびウイルスベクターを含有する宿主細胞に関する。ウイルス
ベクターワクチンは、がんを患う対象を治療するためまたは対象ががんに罹ることを予防
するために使用される。好ましいレジームでは、本発明は、Adベクターを使用するプラ
イム投与、続いてMVAベクターを使用するブースト投与を伴う。本発明はさらに、本発
明の新規の複製欠陥性アデノウイルスベクターを含むワクチン組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
毎年160万人より多くの米国人ががんと診断され、約600,000人が2018年
に米国単独でこの疾患で死亡したと予測される。過去数10年の間に、がんの検出、診断
、および治療において著しい進歩が達成された。しかしながら、依然として67%の人々
が治療の開始の5年後に生存しているに過ぎない。(Siegel, R. L. et al. (2017) Canc
er J. Clin. 67(1): 7 - 30を参照)
【0003】
現行の治療オプションとしては、外科的処置、放射線、高周波、化学療法薬、モノクロ
ーナル抗体などが挙げられる。これらのアプローチのほとんどは、重篤なリスク、毒性の
副作用、高いコスト、および疑わしい有効性と関連付けられる。
【0004】
だが、がん免疫療法は、近年ある程度の著しい進歩を実証しており、関心を引く進展中
の分野であり続けている。健常な正常ヒト免疫系は、腫瘍関連抗原(TA)を認識する細
胞溶解性Tリンパ球(CTL)の能力に基づいて腫瘍細胞を同定および拒絶する先天的な
能力を有する。がん細胞は、通常、細胞性および液性の両方の、統合された免疫応答を活
性化させるはずである。細胞応答は、免疫応答に参加するCD8およびCD4 T細
胞を伴う。しかしながら、がんおよび悪性がんの発生において、腫瘍細胞に対する正常な
CTL活性は弱体化または喪失される。がん免疫療法は、したがって、腫瘍細胞に対する
ヒト免疫系のCTL活性を回復または再燃させるための様々なアプローチを採る。ヒトが
ん患者の免疫系は、腫瘍関連抗原(TA)を発現する悪性細胞を根絶するという目標と共
に利用され得る。
【0005】
細胞傷害性T細胞はCD8を発現し、がん性細胞を特異的に殺傷することができる。C
D4 T細胞またはTヘルパー細胞は、細胞傷害性応答の発生をサポートし、サイトカ
インを産生し、そしてまたB細胞の成熟および増殖を補助する。液性応答の間に、B細胞
は、活性化され、複製され、分化し、TA特異的な抗体を産生する。さらなる情報のため
に、Murphy, K. & Weaver, C. "Janeway's Immunobiology" 9th Edition (2016): Garlan
d Science/Taylor & Francis: New York, NYを参照されたい。
【0006】
養子T細胞療法および免疫チェックポイントモジュレーターは、腫瘍を拒絶するヒト免
疫系の能力をブーストすることを目的とした臨床アプローチである。しかしながら、両方
のアプローチは制限を有する。養子T細胞療法は、要求される特異性のエフェクターT細
胞の拡大増殖および形質導入を要求する(Baruch E. N. et al. (2017) Cancer 123(S11)
: 2154 - 62)を参照。この複雑性は現在、このアプローチの応用性を制限している。免
疫チェックポイントモジュレーターのセグメントであるチェックポイント阻害剤治療は、
エフェクター機能を向上させるためにT細胞へのブレーキを解放するモノクローナル抗体
に基づく。チェックポイント阻害剤は進行性がん患者のある比率において長期間の臨床応
答を誘導することがあるが、全てのT細胞のこの刺激により引き起こされる自己免疫毒性
の副作用が依然として問題である。また、既存のチェックポイント阻害剤治療は、T細胞
により浸潤されていない「冷」腫瘍に関して有効性の欠如を抱えている。
【0007】
上記に対する有望な代替を表す別のアプローチは、がんワクチンまたはより詳細には治
療用がんワクチンであり、これは腫瘍細胞に対する免疫応答を誘発するために使用される
。これは、腫瘍細胞は本来的に免疫原性に乏しく、ワクチンはこの欠乏を克服するために
役立つことを助けるべきであるという概念に基づく。多くの異なる種類のがんワクチンが
研究されており、一部は有望な結果を示している。Sahin U. et al. (2017) Nature 547(
7662): 222 - 226は、がんに対する多重特異性治療免疫を動員する個別化RNAミュータ
ノーム(mutanome)ワクチンを試みた。また、Ott P. A. et al. (2017) Nature 547(766
2): 217 - 221は、黒色腫を有する患者のための個別化免疫原性ネオ抗原ワクチンを試み
た。
【0008】
しかしながら、GlaxoSmithKline(GSK)による2つの大きい第II
I相試験を含むいくつかの大スケール臨床試験の失敗後に、がんワクチンの可能性は疑問
のあるものとなった。これらの試験では、アジュバントと組み合わせた組換え腫瘍関連タ
ンパク質に基づくワクチン接種アプローチが使用された。このワクチンプラットフォーム
は、多くの他のもののように、良好な抗体およびCD4 Tヘルパー応答を誘導できる
ことを証明したが、一貫したCTL応答を開始させることはできなかった。CTLは抗腫
瘍免疫応答の鍵となるエフェクターであることを考慮すると、これはそれらのワクチンの
臨床的失敗を説明する可能性がある。技術的課題は、したがって、ヒトにおいて良好なC
D8応答を誘導する新たながんワクチンプラットフォームを提供することである。
【0009】
何らかの有効性を達成するために、がんワクチンは、i)がん細胞上で潜在的に発現さ
れるか、またはがん細胞上にのみ発現され、かつ統合された免疫応答を誘発できる抗原を
標的化する能力、ならびにii)抗原特異的T細胞の堅牢なクローン性拡大増殖およびエ
フェクターおよびメモリー分化を誘導する能力を有するべきであると考えられる(Coulie
, P. G. (2014) Nat. Rev. Cancer, 14(2): 135 - 146)を参照。
【0010】
伝統的に、治療用がんワクチンは、腫瘍抗原(TA)タンパク質およびアジュバントを
含んでいた。例えば、スティムバックス(Stimuvax)(かつてはBLP25リポソームワ
クチン(L-BLP25)として公知)と呼ばれるワクチンは、ムチン1(MUC1)抗
原およびアジュバントMPL4に由来する合成ペプチドを被包するリポソームであり、米
国特許第6,600,012号明細書、BIOMIRA INC.がこれに関する。また
、切除されたMAGE-A3陽性非小細胞肺がんを有する患者における第3相試験におい
て査定されたマグリット(MAGRIT)ワクチン(Vansteenkiste, J. F. et al Lancet Onco
l. 17(6): 822 - 835を参照)は、組換え黒色腫関連抗原MAGE-A3タンパク質と組
み合わせたAS15アジュバントを含有していた。しかしながら、上記に一般に指し示さ
れるように、これらのスティムバックスおよびマグリットワクチンは、大きい第III相
試験において有効性を示さなかった。
【0011】
米国および欧州において承認された最初の「がんワクチン」はプロベンジ(PROVENGE)
であり、これは患者の抗原提示細胞(APC)が前立腺酸ホスファターゼ(PAP)抗原
とインキュベートされた自己細胞ワクチンである。適切なT細胞応答を活性化させる有効
性および能力にもかかわらず、このワクチンは各患者のために個々に作られることを要求
し、それにより、複雑かつ高価な生産プロセスを伴う。結果として、ワクチンの実用性は
限定されている(米国特許出願公開第2004/141991号明細書、LAUS et
al.を参照)。
【0012】
ベクターベースのがんワクチンは、大きな有望性を示して強い治療的関心を生じさせて
おり、いくつかのベクター技術、アジュバントおよび組合せが診療所において試験されて
いる。この戦略の基礎は、腫瘍抗原を送達するために組換えウイルスベクターを使用する
ことである。ウイルスベクター自体は複製欠陥性となるように改変されているため、もは
や患者に対して有害ではない。ベクターは、TAの他に、アジュバントとして作用して免
疫応答の誘導を増強する他のウイルス抗原の両方を発現する。理想的なウイルスベクター
は、いくつかの特性:i)安全であること、ii)効率的な抗原提示を可能にすること、
iii)統合された免疫応答を誘発すること、およびiv)大スケールで製造できること
を有するべきである(Melief, C. J. M. et al. (2015) J. Clin. Invest. 125(9): 3401
- 3412)を参照。
【0013】
いくつかのウイルスベクターが臨床使用のために提唱されてきた。例えば、複製欠陥性
アデノウイルス(Ad)は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1について欧州特許第2
,130,921号明細書、GLAXOSMITHKLINE BIOLOGALS S
A、またはマラリアについて米国特許出願公開第2012/082694号明細書、CR
UCELLにおいて開示されるものなど、感染性疾患のためのワクチンベクターとして研
究されてきた。
【0014】
ワクチン接種の分野において、ワクチン投与には、典型的には、1回目の注射と同じ方
式であるが、後の1つまたは複数の時点において投与される1つまたは複数のブースティ
ング注射が後続する。1回目(プライミング)の投与および以後(ブースティング)の投
与の間隔の間に、免疫系は、細胞性および液性の両方の応答を誘発することにより応答す
る(Woodland, D. L. (2004) Trends Immunol. 25(2): 98 - 104を参照)。
【0015】
しかしながら、同じベクターを用いる繰返しの投与(同種ブースティング)は、腫瘍抗
原特異的T細胞応答をブーストせず、その理由は、競合する免疫原性がウイルス抗原に対
して生成され、ウイルスカプシドの表面抗原を認識し、組換えベクターによる抗原提示細
胞のさらなる感染を予防する抗体の産生が結果としてもたらされるからである。特に、同
種ブースティングは、挿入された腫瘍抗原に対してCD8 T細胞を誘導しない。この問
題を回避するための潜在的なアプローチは、2つの異なるウイルスベクターなどの異なる
抗原送達システムを使用するワクチンの逐次的な投与(異種ブースティング)を伴う。欧
州特許出願公開第2,631,290号明細書、NATIONAL UNIVERSIT
Y CORPORATIONは、ワクシニアウイルスベクターおよびセンダイウイルスベ
クターを含むプライム/ブーストワクチン用のウイルスベクターを開示する。Chen, J.-L
. et al. (2015) Int. J. Cancer 136(6): E590 - 601は、NY-ESO-1特異的抗体
、ならびにイスコマトリックス(ISCOMATRIX)中のNY-ESO-1タンパク質を用いて
プライミングされ、組換えNY-ESO-1鶏痘ウイルスを用いてブーストされた黒色腫
患者における細胞応答を記載する。
【0016】
多くのプライム/ブーストワクチンはDNAワクチンから構成され、様々なウイルスベ
クターが試みられてきた。例えば、国際公開第2006/057454号パンフレット、
JAPAN SCIENCE AND TECHNOLOGY AGENCYは、プライ
ミングのためにバチルス・カルメット-ゲラン(Bacillus Calmette-Guerin)(BCG)
ベクターおよびブースティングのために弱毒化ワクシニアウイルス株DIsを使用するこ
とによるHIV-1 gag E抗原に対して開発された異種プライム/ブーストHIV
ワクチンを開示する。Odunsi, K. et al. (2012) Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 109
(15): 5797 - 5802は、2つの異なるオルソポックスベクター(ワクシニアおよび鶏痘)
ならびに抗原NY-ESO-1を用いるプライム-ブーストアプローチを使用した限定さ
れたサイズの第I相研究を記載し、黒色腫および卵巣がん患者の中でのあり得る臨床的利
益を示した。
【0017】
ヒトアデノウイルスは、それらの特性(例えば、複製欠損、安定性、高い免疫原性、多
数の細胞種に形質導入する能力など)のため、がんワクチンの開発のために科学者により
広く使用されている。天然のアデノウイルス感染症はヒト集団において風土性であり、ヒ
トの大部分は人生の最初の5年以内に血清転換する。そのため、ヒトアデノウイルスに由
来するがんワクチンは、既存の液性および細胞性免疫に遭遇し、それがその有効性を制限
する(Coughlan, L. (2015) et al. J. Pharm. Pharmacol. 67(3): 382 - 399、および
米国特許第6,140,087号明細書、ADVEC INC、名称「Adenovirus Vecto
rs for Gene Therapy」を参照)。
【0018】
米国特許第9,714,435号明細書、ISIS INNOVATION、名称「Si
mian Adenovirus and hybrid Adenoviral vectors」および欧州特許出願公開第2,16
3,260号明細書、ISTITUTO RICHERCHE DI BIOLOGIC
A MOLECULARE、名称「Chimpanzee Adenovirus Vaccine Carriers」は、ヒト
においていかなる既存の免疫も逃れる非ヒト霊長動物に由来する複製欠陥性アデノウイル
スを科学者がどのように開発したのかを説明する。チンパンジーアデノウイルス(ChA
d)は、いくつかのクオリティ:i)堅牢な免疫原性、ii)ヒトにおける低い血清有病
率、iii)標準化された生産的製造を示す。
【0019】
弱毒化非複製性ワクシニアウイルスアンカラ株(MVA)もまた公知である。このウイ
ルスベクターは、優れた安全性プロファイルと共に免疫応答を誘発することが示されてい
る。MVAは、結果としてそのゲノムの約15%の喪失を伴うニワトリ胚線維芽細胞にお
ける570回より多くの継代により弱毒化されている。そのため、MVAは、多くの哺乳
動物細胞においてビリオンを成熟させる能力を欠如しており、強い免疫原性および増幅の
低減したリスクと関連付けられる。ISIS INNOVATION Limitedの
国際公開第2011/128704号パンフレットは、導入遺伝子がポックスウイルスゲ
ノムに挿入される、MVAを含むポックスウイルス発現系を記載し、したがって、感染症
に対するワクチン、がん治療および遺伝子療法の目的のためのポックスウイルスベクター
ならびに目的の遺伝子を標的細胞に移入するためのその使用を提供する。Isis In
novation Limitedの欧州特許出願公開第2044947号明細書もあり
、これは、免疫応答、特に、インフルエンザウイルスに対するT細胞免疫応答を誘導する
ために使用されるMVAウイルスベクターを記載する。
【0020】
感染性疾患の治癒を目的として、異種プライム-ブーストレジームにおけるウイルスベ
クターベースのワクチンが開発され、強いCTL応答を誘導するために最適化されている
。このワクチン戦略は、同じ免疫原を持つ改変ワクシニアアンカラ(MVA)を用いるプ
ライムおよびブーストのためにチンパンジーアデノウイルス(ChAd)を用いた。Coug
hlan L. et al. (2015) J. Pharm. Pharmacol. 67(3): 382 - 99およびHui E. P. et al.
(2013) Cancer Res. 73(6): 1676 - 88は、前臨床研究および感染性疾患状況における臨
床研究における両方のウイルスベクターの個々の試験、ならびにそれらがどのように非常
に高い安全性プロファイルを有するのかを報告する。
【0021】
欧州特許出願公開第2,044,947号明細書、ISIS INNOVATIONは
、インフルエンザの予防におけるプライミング用のアデノウイルスベクターおよび次にブ
ースティング用のMVAを有するワクチンを開示する。
【0022】
Ewer K. J. et al. (2013) Nat. Commun. 4: 2836およびOgwang, C. et al. (2015) Sc
i. Transl. Med. 7(286): 286re5は、マラリア用のプライミングとしてのChAdおよび
ブースティングとしてのMVAを有するワクチンを開示する。
【0023】
同じプライム-ブーストアプローチは、5T4抗原を発現するがんマウスモデルにおい
てCappuccini, F. et al. (2017) Oncotarget 8(29): 47474 - 47489、がんマウスモデル
が前立腺がん抗原であるSTEAP1を発現するCappuccini, F. et al. (2016) Cancer
Immunol. Immunother. CII 65(6): 701 - 713において記載されている。全てのこれらの
研究において、異種プライム-ブーストワクチンは、TAに対する強い免疫応答および抗
原特異的CD8 T細胞の活性化を誘導した。
【0024】
国際公開第2017/120670号パンフレット(Lichty、B. & Bel
l, J.)もあり、これは、抗原特異的Tリンパ球の刺激および有意な生存を結果とし
てもたらす、臨床的に関連するがんモデルの結果における複製性腫瘍溶解性ラブドウイル
スおよび免疫チェックポイント阻害剤の併用投与を記載する。腫瘍溶解性ラブドウイルス
は、悪性細胞に特異的に感染し、それにおいて複製され、それを殺傷し、正常組織は影響
されないままとする。腫瘍溶解性ラブドウイルス(例えば、VSVdelta5 lまた
はMamba MG 1)は、MAGEA3、ヒトパピローマウイルスE6/E7融合タ
ンパク質、前立腺タンパク質のヒト6回膜貫通上皮抗原、またはがん精巣抗原から選択さ
れる、試験動物が既存の免疫を有する腫瘍抗原を発現する。
【0025】
治療用がんワクチンの成功は、腫瘍上に発現されるが正常組織上には発現されない腫瘍
抗原を標的化することを必要とする。がん生殖細胞系列抗原は、いくつかの種類のがんに
おいて生理学的に発現されるが、MHC I分子の欠如に起因して免疫系に抗原を提示で
きない生殖細胞系列細胞を除いて、分化した正常組織において発現されないタンパク質の
異種群である。これらの抗原は、がん生殖細胞系列遺伝子によりコードされる。Gnjatic,
S. et al. (2006) Cancer Res. 95: 1 - 30に記載されるように、NY-ESO-1およ
びMAGE-A3は、原型的なMAGE型抗原であり、群の最も代表的なもののうちの2
つである。また、Coulie P. G. et al. (2014)、上掲は、多数の患者において起こること
が示された応答を記載する。
【発明の概要】
【0026】
本発明によれば、核酸分子をカプシドで包んだチンパンジーアデノウイルス(ChAd
)ベクターであって、核酸分子が、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ES
O-1がん抗原、もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/
もしくはLAGE1がん抗原、もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド
配列であって、動物細胞においてがん抗原またはその断片の翻訳、転写および/または発
現を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列、なら
びにアデノウイルスパッケージングシグナル配列を含む、ChAdベクターが提供される
。有利には、そのようなChAdウイルスベクターは、安定かつ十分に研究されており、
ヒトアデノウイルスに対する抗体により中和されず、かつ複製欠損性となるように操作さ
れている。それらは、挿入される目的の抗原のために高容量を有し、アデノウイルスE1
遺伝子を含有するHEK293細胞中で製造することができる。
【0027】
MAGE型抗原は、がん患者においてCD8 T細胞を誘導することが公知である腫瘍
特異的な共有されるヒト腫瘍抗原である。それらは、多くのがん種において発現され、M
HC-1分子を有しない男性生殖細胞系列細胞を除いて、正常組織中で発現されない。
【0028】
NY-ESO-1(遺伝子名CTAG1)は多くのがん患者において強いCD8応答を
誘導し、複数のHLAクラスI特異性により表されるように、多数のCD8エピトープが
同定され得る。
【0029】
特定の形態では、ChAdベクターは、(a)国際公開第2012/172277号パ
ンフレットに開示されたChAdOx1;好ましくは、国際公開第2012/17227
7号パンフレットに開示された配列番号38のポリヌクレオチドもしくはそれと少なくと
も80%の同一性を有する配列によりコードされるChAdOx1、または(b)国際公
開第2017/221031号パンフレットに開示されたChAdOx2;好ましくは、
国際公開第2017/221031号パンフレットに開示された配列番号10のポリヌク
レオチドもしくはそれと少なくとも80%の同一性を有する配列によりコードされるCh
AdOx2であってもよい。
【0030】
核酸分子をカプシドで包んだ(encapdisating)改変ワクシニアウイルスアンカラ(M
VA)ベクターであって、核酸分子が、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-
ESO-1がん抗原、もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原およ
び/もしくはLAGE1がん抗原、もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌクレオ
チド配列であって、動物細胞においてがん抗原またはその断片の翻訳、転写および/また
は発現を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列を
含む、MVAベクターもまた本発明により提供される。有利には、そのようなMVAベク
ターは、ヒトにおいて複製ができず、天然痘ワクチンとしての長い安全性追跡記録を有す
る。MVAは、ChAdを用いるプライミング後に優れたブースティングを提供する。M
VAは、病原性および免疫系逃避因子を有さず、高度に免疫原性であり、かつニワトリ胚
性線維芽細胞または不死化アヒル胚性細胞系において容易に製造される。
【0031】
MVAベクターは、より特定の形態では、国際公開第2011/128704号パンフ
レットまたは欧州特許出願公開第2044947号明細書に開示された通りであってもよ
い。
【0032】
本明細書に記載されるような本発明のChAdおよび/またはMVAベクターについて
、MAGE抗原は、好ましくは、MAGE3Aであり、そのため、配列番号1のアミノ酸
配列、またはそれと少なくとも46%、好ましくは少なくとも69%、より好ましくは少
なくとも95%の同一性を有する配列、もしくはその任意の免疫原性断片の配列を有する
【0033】
本明細書に記載されるような本発明のChAdおよび/またはMVAベクターについて
、NY-ESO-1がん抗原は、配列番号3のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも7
5%、好ましくは少なくとも76.7%の同一性を有する配列、もしくはその任意の免疫
原性断片の配列を有する。
【0034】
本明細書に記載されるような本発明のChAdおよび/またはMVAベクターについて
、LAGE1抗原は、配列番号5のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも78%、好ま
しくは少なくとも97%の同一性を有する配列、もしくはその任意の免疫原性断片の配列
を有する。
【0035】
本発明の好ましいChAdおよび/またはMVAベクターにおいて、ポリヌクレオチド
配列は、ヒトHLAクラスII組織適合性抗原ガンマ鎖(hliまたはli)をさらにコ
ードしてもよく、かつliは、配列番号6のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも79
%の同一性を有する配列、もしくはその断片の配列を有してもよく、それにより、がん抗
原は、liとの融合物またはその断片として動物細胞中で発現され、より好ましくは、断
片は膜貫通ドメインであり、よりいっそう好ましくは、膜貫通ドメインは、アミノ酸残基
30~55または30~61を含む。特に好ましい実施形態では、膜貫通ドメインは、配
列番号7のアミノ酸配列を有する。
【0036】
本発明の代替的に好ましいChAdおよび/またはMVAベクターにおいて、ポリヌク
レオチド配列は、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも81%の同一性を
有する配列、もしくはその断片の配列を有するtPAをさらにコードしてもよく、それに
より、がん抗原は、tPAとの融合物またはその断片として動物細胞中で発現され、より
好ましくは、断片は、21アミノ酸のリーダー配列を含み、よりいっそう好ましくは、2
1アミノ酸のリーダー配列は配列番号9である。
【0037】
有利には、liまたはtPAを含めることは、ウイルスベクターで製造される抗原の免
疫原性を増加させる。これは、抗原特異的T細胞応答の大きさ、広さおよび持続期間を増
加させる。
【0038】
本発明のChAdベクターは、融合タンパク質として動物細胞中で発現される、(i)
本明細書においてそれぞれ定義されるような、MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断
片およびNY-ESO-1がん抗原もしくはその免疫原性断片、または(ii)本明細書
においてそれぞれ定義されるような、MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片および
LAGE1がん抗原もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列を有す
るように構築されてもよい。
【0039】
本発明のMVAベクターは、融合タンパク質として動物細胞中で発現される、(i)本
明細書においてそれぞれ定義されるような、MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片
および/もしくはNY-ESO-1がん抗原もしくはその免疫原性断片、または(ii)
本明細書においてそれぞれ定義されるような、MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断
片および/もしくはLAGE1がん抗原もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌク
レオチド配列であって、MAGEがん抗原、NY-ESO-1がん抗原またはLAGE1
がん抗原のうちの少なくとも1つが断片である、ポリヌクレオチド配列を有するように構
築されてもよい。
【0040】
本発明者らは、NYESO-1は、ヒトにおいてMAGEA3よりも免疫原性であり得
ると考える。また、がん患者において、患者のある特定の群において、腫瘍は、NY-E
SO-1ではなくMAGEA3を発現することがより頻繁に見出される。したがって、あ
り得る懸念は、MAGEA3抗原およびNY-ESO-1抗原の両方を含む、本発明のプ
ライム-ブーストレジメンにおけるMVAブーストベクターを有することで、NY-ES
O-1に対して免疫優性の免疫応答およびMAGEA3に対して有効でない免疫化に繋が
る可能性があるということである。したがって、少なくともそのような特定の患者群、ま
たはNY-ESO-1と比較してMAGEA3のより高い発現を有する群について、MA
GEA3がん抗原またはその免疫原性断片のみを含むMVAベクターがプライム-ブース
トレジメンにおいて好ましい。すなわち、ある特定の実施形態では、本発明は、何らかの
NY-ESO-1がん抗原またはその免疫原性断片を含むMVAベクターを含まない。同
様に、ある特定の実施形態では、本発明は、何らかのLAGE1がん抗原またはその免疫
原性断片を含むMVAベクターを含まない。
【0041】
好ましい実施形態では、MVAベクターのそれぞれ、MAGEがん抗原およびNY-E
SO-1、またはMAGEがん抗原およびLAGE1のそれぞれは、免疫原性断片である
【0042】
本発明のChAdおよび/またはMVAベクターが、発現時に抗原の融合物をもたらす
ように構築される場合、ポリヌクレオチド配列はまた、好ましくは、発現された場合に、
MAGEおよびNY-ESO-1もしくはLAGE1がん抗原またはその断片をいずれか
の順序において融合タンパク質として連結する、5~9アミノ酸の好適なポリペプチドリ
ンカー、より好ましくは、アミノ酸配列GGGPGGGを有するポリペプチドリンカーを
コードする。
【0043】
本発明はまた、したがって、上述のようなおよび本明細書に記載されるようなChAd
またはMVAベクターを含む免疫原性組成物を提供する。そのような組成物は、好適なア
ジュバントをさらに含んでもよい。
【0044】
本発明はさらに、本明細書に記載されるようなChAdベクターまたはMVAベクター
中に含有される、融合タンパク質をコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチドを
提供する。
【0045】
好ましいポリヌクレオチドは、MAGEA3/リンカー/NY-ESO-1融合タンパ
ク質をコードする配列番号10の核酸配列を含む。配列番号10と少なくとも70%の同
一性を有する配列を有するポリヌクレオチドもまた可能である。501アミノ酸の翻訳さ
れたタンパク質配列は、配列番号11またはそれと少なくとも70%の同一性を有する配
列に示される通りである。
【0046】
別の好ましいポリヌクレオチドは、hli/MAGEA3/リンカー/NY-ESO-
1融合タンパク質をコードする配列番号12の核酸配列を有する。配列番号12と少なく
とも70%の同一性を有する配列を有するポリヌクレオチドもまた可能である。翻訳され
たタンパク質配列は、配列番号13またはそれと少なくとも70%の同一性を有する配列
に示される。
【0047】
さらに別の好ましいポリヌクレオチドは、tPA/MAGEA3/リンカー/NY-E
SO-1融合タンパク質をコードする配列番号14の核酸配列を有する。配列番号12と
少なくとも70%の同一性を有する配列を有するポリヌクレオチドもまた可能である。翻
訳されたタンパク質配列は、配列番号15またはそれと少なくとも70%の同一性を有す
る配列に示される。
【0048】
特定の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、上述の配列またはそのバリアン
トのいずれかからなる。
【0049】
本発明の全ての態様において、抗原をコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、ヒ
トにおける発現のためにコドン最適化されている。当業者は、例えば、米国特許第8,3
26,547号明細書、またはPuigbo, P. et al. (2007) OPTIMIZER: A web server for
optimizing the codon usage of DNA sequences: Nucleic Acids Research, 35:W126-W1
31に記載のものを含む、多数の利用可能なソフトウェアパッケージに精通している。また
、Integrated DNA TechnologiesまたはGenScript
により提供されるものなどの商業的に利用可能なサービスおよびソフトウェアもある。
【0050】
本発明はまた、本明細書に記載されるようなポリヌクレオチドを含む細菌人工染色体(
BAC)クローンを含む。ウイルスゲノムのBACクローンのウイルスへの変換(「レス
キュー」)は、ISIS INNOVATION Limitedの国際公開第2012
/172277号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるよう
な周知の方法により実行することができる。
【0051】
本発明は、本明細書に記載されるようなChAdおよび/またはMVAベクターを含む
単離された宿主細胞をさらに含む。
【0052】
また、本発明は、個体においてがんを予防または治療する方法であって、有効量の本明
細書に記載されるようなChAdベクターを投与すること、および有効量の本明細書に記
載されるようなMVAベクターを投与することを含み、それにより、個体の適応免疫系が
刺激されて、抗がん免疫応答が提供される、方法を提供する。有利には、本発明の方法は
、強いT細胞免疫応答、特に、長く持続する保護免疫に繋がる強いCD8免疫応答を生
成する。
【0053】
本発明によるがんを予防または治療する好ましい方法において、ChAdおよびMVA
ベクターの投与は、別々に、逐次的にまたは同時に実行される。
【0054】
本発明によるがんを予防または治療する特定の方法において、有効量の1つまたは複数
の免疫チェックポイントモジュレーターがさらに投与される。そのようなチェックポイン
トモジュレーターは、ChAdおよびMVAベクターと同時に、別々にまたは並行して投
与されてもよい。
【0055】
本発明のがんを予防または治療する方法の態様では、治療されている個体は、化学療法
および/または放射線療法治療を受けた、受けている、または受ける個体であってもよい
【0056】
本発明によるがんを予防または治療する方法において、ChAdベクターは、好ましく
は、最初に投与される。
【0057】
本発明のがんの予防または治療方法において、ChAdおよびMVAベクターは、それ
ぞれ1回より多く投与されてもよい。好ましい態様では、ChAdがプライミング免疫化
として使用される場合、これらは1回のみ行われ、続いて2回のMVAブースター免疫化
が行われる。ChAdおよびMVAベクターが交互に投与されるがんの治療または予防方
法もまた可能である。
【0058】
本発明のベクターの各投与の間の期間は、5日~8週の範囲内であってもよいが、好ま
しくは、約1週の期間が、プライムおよびその後の1回または複数回のブーストの間に使
用される。
【0059】
チェックポイントモジュレーターが投与され、そしてまた治療レジメンの部分を形成す
る、本発明のがんの予防または治療方法において、チェックポイントモジュレーターは、
PD-1、CTLA-4またはPD-L1を遮断する阻害剤であってもよい。有利には、
1つまたは複数のチェックポイントモジュレーターと共に本発明のベクターおよび免疫原
性組成物を使用することは、同等の効果(すなわち、単独で使用される場合の同等の効果
)のために必要とされるチェックポイントモジュレーターの投薬量を低減するために役立
ち得る。効果は、本発明のウイルスベクター治療レジメンおよびチェックポイントモジュ
レーターの間で単に付加的なものではなく、相乗的なものである。
【0060】
特に好ましいチェックポイントモジュレーターは、ニボルマブ(オプジーボ(Opdivo)
(登録商標))、ペムブロリズマブ(キイトルーダ(Keytruda)(登録商標))、イピリ
ムマブ(ヤーボイ(Yervoy)(登録商標))、トレメリムマブもしくはアテゾリズマブ(
テセントリク(Tecentriq)(登録商標))、デュルバルマブ(durvaliumab)(イミフィ
ンジ(Imfinzi)(登録商標))またはアベルマブ(バベンチオ(Bavencio)(登録商標
))から選択されてもよい。
【0061】
本発明によるがんを予防または治療する方法は、がん生殖細胞系列遺伝子、好ましくは
、MAGE型、NYESO、およびLAGE抗原をコードする遺伝子を発現するがんを対
象とし、好ましくは、例えば、がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、ホジキ
ンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、尿路(尿路上皮)、食道、膀胱、小細胞肺がん、腎臓
、頭頸部、肉腫、または乳房のがんである、特定のがん種を対象とする。
【0062】
よって、本発明は、がんの予防または治療において使用するための本発明のChAdベ
クターを含む。また、がんの予防または治療において使用するための本発明のMVAベク
ター。そのような使用に関して、本発明の方法の様々な態様のそれぞれが等しく適用され
る。
【0063】
さらに、本発明は、がんの予防または治療のための患者への別々の、逐次的なまたは同
時の投与のための、本明細書において定義されるような本発明のChAdベクター、およ
び本明細書において定義されるような本発明のMVAベクターを含む。
【0064】
本明細書において定義されるようながんの予防または治療において使用するためのCh
AdおよびMVAベクターは、Chen, D.S. and Mellman, I. (2013) Immunity 39(1):1-1
0、およびChen, D.S. and Mellman, I. (2017) Nature 541(7637):321-330に記載される
ような、がん免疫サイクルまたはがん免疫セットポイントの1つまたは複数のモジュレー
ター、好ましくは、がんの治療のためにChAdおよびMVAベクターと共に投与するた
めのチェックポイント阻害剤をさらに含んでもよい。
【0065】
進行性がんを有する患者の大部分は、現在、チェックポイントモジュレーターに基づく
免疫療法に応答しない。例えば、抗PD1阻害剤が、黒色腫、腎細胞癌、頭頸部癌および
肺癌において使用される。一態様では、本発明は、抗PD1および化学療法と組み合わせ
てMAGE-A3およびNY-ESO-1に対するCD8 T細胞を誘導するためにCh
Ad/MVAワクチンを使用する。いかなる特定の理論によっても縛られることを望まな
いが、本発明者らは、そうでなければ「冷」腫瘍であるものが、抗PD1によりブースト
される腫瘍特異的CD8 T細胞により浸潤されることを予期する。
【0066】
本発明者らはまた、本発明によるワクチン+化学療法剤+チェックポイント阻害剤の三
重の組合せは、ワクチン単独またはワクチン+化学療法剤またはワクチン+チェックポイ
ント阻害剤と比較した場合に、マウスモデルにおいて有意に向上した抗腫瘍効果、および
マウスの有意な生存時間を提供することを見出した。実際、三重の組合せの効果は、相乗
的であるようなものである。三重の組合せを用いて骨髄由来抑制細胞(MDSC)の有意
な枯渇が達成される。本発明はまた、したがって、そのような三重の組合せの治療方法お
よび対応する医療用途を提供する。本発明はまた、がんの予防または治療のための患者へ
の別々の、逐次的なまたは同時の投与のための、上記に定義されるようなChAdベクタ
ー、上記に定義されるようなMVAベクター、化学療法剤、およびチェックポイント阻害
剤を提供する。
【0067】
化学療法剤は、(b)パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビン、
エトポシドまたはペメトレキセドのうちの1つと組み合わせた(a)カルボプラチンまた
はシスプラチンから選択されてもよい(但し、それに限定されない)。チェックポイント
阻害剤について、これはPD-1であってもよい。そのような特定の三重の組合せは、非
小細胞肺がん(NSCLC)もしくは小細胞肺がん(SCLC)、黒色腫、ホジキンリン
パ腫、非ホジキンリンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、腎臓、頭頸部、肉腫または乳がん
に対する有用な治療を提供し得る。
【0068】
がんの予防または治療のための本明細書に記載されるようなChAdおよび/またはM
VAベクターを含むキットもまた、本発明の部分として提供される。そのようなキットは
、本発明のChAdおよび/またはMVAベクターのうちの1つを保持する少なくとも1
つの容器を含む。キットは、異なる本発明のウイルスベクターをそれぞれ有する、2つま
たはより多く、すなわち、複数の容器を含んでもよい。キットは、使用されるワクチンレ
ジメンに関する必須の情報、例えば、プライム-ブースト、および投与の間の期間を含む
、ワクチンとしてのベクターの使用における説明書のセットを含んでもよい。より複合的
な実施形態では、キットは、本明細書に記載の発明による、さらなる治療エレメント、例
えば、チェックポイントモジュレーターのいずれかを含んでもよい。
【0069】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して以下においてさらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1-1】図1Aは、調製したマウスP1A抗原をコードするChAdOx1ベクターを図式的に示す。
図1-2】図1Bは、末梢血単核細胞(PBMC)が採取され、免疫応答について試験されるマウスのChAdOx1-P1A/MVA-P1Aプライム-ブースト免疫化の図式的な概要を示す。
図2図2は、図1に示されるように、P1AをコードするChAdOx1/MVAウイルスベクターを用いて免疫化されたマウスにおけるCD8 T細胞応答の結果を示す。
図3図3は、同系P1A発現がん細胞系、P815および15V4T3を用いた負荷に対するマウスDBA/2マウスのChAdOx1-P1A/MVA-P1Aプライム-ブースト予防ワクチン接種の図式的な概要を示す。
図4図4は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)対照に対して3つのP1A抗原についての図3に示されるようなマウスのプライム-ブーストワクチン接種後の経時的な平均P815腫瘍成長を示す。
図5図5は、図4に示されるワクチン接種マウスについてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。
図6】[図6A図6Aは、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)対照に対して図3に示されるようなマウスのChAdOx1-IiP1A/MVA-P1Aのプライム-ブーストワクチン接種、または細胞系L1210.P1A.B7.1を用いた免疫化後の経時的な平均15V4T3腫瘍成長を示す。 [図6B図6Bは、図6Aに示されるワクチン接種マウスについてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。
図7図7は、確立された腫瘍の拒絶を伴う、治療的状況においてマウスにおけるプライム-ブーストPIAワクチンを試験するためのワクチン接種スキームを図式的に示す。
図8-1】[図8A図8Aは、P1A発現同系がん株15V4T3を用いた負荷に対して治療的状況においてDBA/2マウスにおける異なるChAdOx1-P1A/MVA-P1Aプライム-ブーストワクチン接種レジームを用いたワクチン接種後の経時的な腫瘍体積成長を示す。 [図8B図8Bは、プライムブーストワクチン接種スキーム(単一のプライム-ブースト、高用量(10ChadOx/10MVA)後25日目までの平均腫瘍成長を示す。
図8-2】[図8C図8Cは、図8に示されるワクチン接種マウスについてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。
図9図9は、マウスにおける治療的状況において抗PD1チェックポイント阻害剤治療とChAdOx1-IiP1A/MVA-P1Aのプライム-ブーストワクチン接種を組み合わせた効果を示すための実験において使用されたワクチン接種スキームを示す。
図10図10は、P1A発現同系がん株15V4T3を用いた負荷に対してDBA/2マウスにおいて、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせたChAdOx1-IiP1A/MVA-P1Aプライム-ブーストワクチン接種レジームについての経時的な腫瘍体積成長を示す。
図11図11は、図10におけるワクチン接種マウスについてのカプラン-マイヤー生存曲線を示す。
図12図12は、MAGE-A3(M)およびNY-ESO-1(NY)タンパク質をコードするウイルスベクターを非近交系CD1マウスにワクチン接種し、次にCD8 T細胞応答を決定する実験についての図式的な概要を示す。
図13図13は、インバリアント鎖liまたはtPAありおよびなしでの、ChAdOx-MAGEA3/NY-ESO-1融合物を用いた非近交系CD1マウスの免疫化の結果としての(IFNγ産生により測定された場合の)CD8 T細胞の誘導を示す。免疫化後に単離されたPBMCをex vivoでオーバーラップするMAGEA3またはオーバーラップするNY-ESO-1ペプチドを用いて刺激した。
図14図14は、図13と同じものを、tPAありまたはなしでのMVA-MAGEA3のブーストを用いた免疫化の結果と共に示す。
図15図15は、図13と同じものを、tPAありまたはなしでのMVA-NY-ESO-1のブーストを用いた免疫化の結果と共に示す。
図16図16Aは、ChAdOx-M-NY、ChAdOx-tPA-M-NYまたはChAdOx-Ii-M-NYを用いたプライム、およびMVA-M、MVA-NY、MVA-tPA-M、またはMVA-tPA-NYベクターを用いたブースト後のPBMCにおけるMAGE-A3およびNYESO特異的応答を示す。図16Bは、MVA-M、MVA-NY、MVA-tPA-M、またはMVA-tPA-NYベクターのいずれかを用いた2回目のブースト後のPBMCにおけるMAGE-A3およびNYESO特異的応答を示す。
図17】[図17A図17Aは、ChAdOx-Ii-MAGEA3/NY-ESO-1融合物を用いた免疫化、およびMVA-M、MVA-NY、MVA-tPA-M、またはMVA-tPA-NYベクターを用いたブースト後の非近交系CD1マウスにおけるMAGE-A3およびNYESOに対するCD8 T細胞応答の誘導を示す。 [図17B図17Bは、MVA-M、MVA-NY、MVA-tPA-M、またはMVA-tPA-NYベクターを用いた2回目のブースト後のMAGE-A3およびNYESO特異的応答を示す。
図18図18は、マウスの8つの実験群のそれぞれにおけるマウスへの15V4T3細胞注射およびその後の治療ポイントの時間表を示す。
図19図19は、図18に示される実験の平均腫瘍成長結果のグラフを示す。結果は、二元配置分散分析により分析している。*=p<0.05。**=p<0.01。***=p<0.001。****=p<0.0001。
図20-1】図20は、マウスの8つの実験群のそれぞれについての、移植後の腫瘍の経時的な腫瘍体積のグラフを示す。
図20-2】図20は、マウスの8つの実験群のそれぞれについての、移植後の腫瘍の経時的な腫瘍体積のグラフを示す。
図21図21は、マウスの8つの実験群のそれぞれについてのカプランマイヤー生存プロットを示す。データは、ログランク(マンテル・コックス)検定により分析した。*=p<0.05。**=p<0.01。
図22図22は、マウスの8つの実験群の27日目における出血でのCD8細胞のIFNγ応答を示すチャートである。
図23図23は、マウスの8つの実験群のそれぞれにおけるマウスへの15V4T3細胞注射およびその後の治療ポイントの繰返しの実験の時間表を示す。
図24図24は、ある特定の実験的治療および対照についての、(a)CD11b、(b)CD11bかつGR1hi、または(c)CD11bかつGR1intであるCD45細胞の割合のグラフを示す。
図25図25は、ある特定の実験的治療および対照についての、(a)CD11c、および(b)CD11bかつCD11cであるCD45細胞の割合のグラフを示す。
図26図26は、マウスのPBS対照、αPD1のみ、ならびに2つの試験群(1)低用量1週間隔プライムブースト(ChAdOx1-Ii-P1A+MVA-tPA-P1A)および(2)低用量1週間隔プライムブースト(ChAdOx1-Ii-P1A+MVA-tPA-P1A)+αPD1についてのワクチン接種の時間表を示す。
図27図27は、図26に示される実験マウスおよび対照のそれぞれについての経時的な平均腫瘍体積を示す。
図28図28は、図26に示される実験マウスおよび対照のそれぞれについての腫瘍量を示すチャートである。
図29図29は、図25~28に示されるような対照および実験群のそれぞれについての各個々の動物についての腫瘍成長速度データのグラフである。
図30図30は、マウスの各実験群および対照群における腫瘍中の総細胞の割合としての腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の割合を示すチャートである。
図31図31は、マウスの実験群および対照群のそれぞれにおけるCD4:CD8 T細胞の比を示すチャートである。
図32図32は、マウスの実験群および対照群のそれぞれにおける腫瘍中のCD4:CD8 TILの比の比(左手チャート)、ならびにCD8細胞であるT細胞のパーセンテージ(右手チャート)のチャートを示す。
図33図33は、対照および実験マウス群のそれぞれにおけるCD3 CD8 TILカウントの絶対数を示すチャートである。
図34図34は、対照および実験マウス群のそれぞれにおける絶対的なP1A 5~43四量体 H-2L CD8 TILカウントを示すチャートである。
図35図35は、P1A特異的CD8 TIL浸潤物と回収時の腫瘍量との相関を示す図表である。
図36図36は、マウスの血液におけるCD8応答を示すチャートである。
図37図37は、マウスの血液におけるCD8応答を示すチャートである。
図38図38~40は、マウスの脾臓におけるCD8応答を示すデータのチャートである。
図39図38~40は、マウスの脾臓におけるCD8応答を示すデータのチャートである。
図40図38~40は、マウスの脾臓におけるCD8応答を示すデータのチャートである。
図41図41~43は、T細胞サブセット解析を示すデータの棒グラフである。図43に対するレジェンドは、図41および図42に適用される。
図42図41~43は、T細胞サブセット解析を示すデータの棒グラフである。図43に対するレジェンドは、図41および図42に適用される。
図43図41~43は、T細胞サブセット解析を示すデータの棒グラフである。図43に対するレジェンドは、図41および図42に適用される。
図44図44および図45は、さらなるT細胞サブセット解析を示すデータの棒グラフである。図45に対するレジェンドは、図44に適用される。
図45図44および図45は、さらなるT細胞サブセット解析を示すデータの棒グラフである。図45に対するレジェンドは、図44に適用される。
図46図46は、T細胞サブセット解析のさらなるデータを示す。
図47図47は、T細胞上のPD1発現についてのデータのチャートを示す。
図48図48は、T細胞上のPD1発現についてのさらなるデータを示す。
図49図49は、T細胞上のPD1発現についてのさらなるデータを示す。
図50図50は、P1A特異的T細胞上のPD1発現についてのデータのチャートを示す。
図51図51~53は、P1A特異的T細胞上のPD1発現についてのさらなるデータのチャートを示す。
図52図51~53は、P1A特異的T細胞上のPD1発現についてのさらなるデータのチャートを示す。
図53図51~53は、P1A特異的T細胞上のPD1発現についてのさらなるデータのチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
詳細な説明
本発明に従って使用するための好適なチンパンジーアデノウイルスベクターは、国際公
開第2012/17277号パンフレット、Isis Innovations Lim
ited、または国際公開第2005/071093号パンフレット、Istituto
di Ricerche di Biologia Molecolare P. A
ngeletti S. p. A、またはOxford University In
novation Limitedの国際公開第2017/221031号パンフレット
(これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載されている。
【0072】
特に好ましいアデノウイルスベクターは、Vaccitech Ltd、Oxford
のチンパンジーアデノウイルスOxford 1および2(ChAdOx1およびChA
dOx2)である。ChAdOx1は、野生型分離株Y25(種ヒトアデノウイルスE)
からの複製欠陥性E1/E3欠失チンパンジーアデノウイルスベクターであり、Dicks M.
D. et al. (2012) PLoS ONE 7: e40385に記載されている。ChAdOx2は、HEK2
93細胞中でのウイルス収率を増加させるために改変されたE4領域を有するChAd6
8に由来するE1/E3欠失ワクチンベクターである。
【0073】
本発明のChAdベクターは、(a)国際公開第2012/172277号パンフレッ
トに開示されたChAdOx1;好ましくは、国際公開第2012/172277号パン
フレットに開示された配列番号38のポリヌクレオチドもしくはそれと少なくとも80%
の同一性を有する配列によりコードされるChAdOx1、または(b)国際公開第20
17/221031号パンフレットに開示されたChAdOx2;好ましくは、国際公開
第2017/221031号パンフレットに開示された配列番号10のポリヌクレオチド
もしくはそれと少なくとも80%の同一性を有する配列によりコードされるChAdOx
2であってもよい。本発明において使用されるChAdベクターは、本明細書にさらに記
載されるように、核酸配列の全てのホモログ、均等物および誘導体を含んでもよいことを
当業者は理解する。
【0074】
本発明に従って使用するための好適な改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターは、
国際公開第2011/128704号パンフレットまたは欧州特許出願公開第20449
47号明細書(これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる)に詳細に記載さ
れている。
【0075】
本発明のウイルスベクターのいずれかによりコードおよび発現されるような、がん抗原
は、別々であれ、互いおよび任意選択的に他のポリペプチドとの融合物の形態であれ、好
ましくは、本明細書において定義されるように免疫原性であり、これは、がん抗原の断片
ならびに互いおよび他のポリペプチドとのそれらの融合物を含む。
【0076】
本明細書において使用される場合、「抗原」は、一般に、タンパク質またはポリペプチ
ドの1つまたは複数のエピトープと等しく、これには、その融合物および断片およびバリ
アントが含まれる。そのような断片およびバリアントは、親抗原と本質的に同じ生物学的
活性または機能を保持してもよい。「抗原性の」(antigenic)は、通常、タンパク質ま
たはポリペプチドまたは断片が、抗体またはT細胞を産生するために使用されることがで
き、そのため対象において抗体またはT細胞応答を誘導できることが意味される。「免疫
原性の」(immunogenic)は、タンパク質またはポリペプチドまたは断片が、対象におい
て強力かつ好ましくは保護的な免疫応答を誘発できることが意味される。そのため、後者
の場合、タンパク質またはポリペプチドまたは断片は、抗体応答および非抗体ベースの免
疫応答を生成することが可能であり得る。
【0077】
本明細書において使用される場合、参照配列に対して同一性を有する核酸配列が言及さ
れる場合は常に、同一性の程度は、以下の任意のものから選択されてもよく、「少なくと
も」がここに列記される各パーセンテージの数値に適用される:少なくとも46%、47
%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57
%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67
%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77
%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87
%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97
%、98%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6
%、98.7%、98.8%、98.9%、99%、99.1%、99.2%、99.3
%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.9%。
相同性または同一性の程度を決定する目的のために核酸配列を比較する場合、BESTF
ITおよびGAP(両方ともWisconsin Genetics Computer
Group(GCG)ソフトウェアパッケージから)などのプログラムを使用すること
ができる。例えば、BESTFITは、2つの配列を比較し、最も類似したセグメントの
最適なアライメントを生成する。GAPは、全長に沿って配列をアライメントすることを
可能にし、適宜いずれかの配列にスペースを挿入することにより最適なアライメントを見
出す。好適には、本発明の文脈において、核酸配列の同一性を議論する場合、比較はそれ
らの全長に沿った配列のアライメントにより為される。上記は、適宜変更の上で、本出願
に開示される全ての核酸配列に適用される。
【0078】
追加的に、本明細書に例示される特定の核酸分子からのバリエーションが、遺伝コード
の縮重を考慮して可能であることもまた当業者は認める。好ましくは、そのようなバリア
ントは、全長にわたり本明細書に記載の核酸配列に対して実質的な同一性を有する。
【0079】
本発明との繋がりにおいて記載される任意のアミノ酸配列に関して、これは、これらの
アミノ酸配列のバリアントを含む。当業者に周知のように、本明細書に開示される所与の
開始または参照配列について、1つまたは複数のアミノ酸残基が、任意の組合せで置換、
欠失または付加されてもよい。本発明のタンパク質の特性および活性を変更しないサイレ
ント置換、付加および欠失は、変化として好ましい。様々なアミノ酸は類似した特性を有
し、1つまたは複数のそのようなアミノ酸は、その物質の所望の免疫原性も他の活性も排
除することなく1つまたは複数の他のそのようなアミノ酸により置換され得る。そのため
、アミノ酸グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは、脂肪族側鎖を
有し、多くの場合に互いに置換され得る。これらのうち、グリシンおよびアラニンは、互
いを置換するために好ましく使用される。また、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは
、疎水性であるより大きい脂肪族側鎖を有し、互いを置換するために使用されてもよい。
フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンは、芳香族側鎖を有するアミノ酸であ
り、互いを置換してもよい。リジン、アルギニンおよびヒスチジンは、塩基性側鎖を有す
るアミノ酸であり、互いを置換してもよい。アスパラギン酸およびグルタミン酸は、酸性
側鎖を有し、互いを置換してもよい。アスパラギンおよびグルタミンは、アミド側鎖を有
し、互いを置換してもよい。システインおよびメチオニンは、硫黄含有側鎖を有し、互い
を置換してもよい。
【0080】
「バリアント」は、本明細書において記載される場合、天然に存在するまたは人工的な
バリアントを含む。人工的なバリアントは、核酸分子、細胞または生物に応用されるもの
を含む、突然変異誘発または遺伝子操作または遺伝子編集技術を使用して生成されてもよ
い。本明細書において使用される場合、参照配列に対して同一性を有するアミノ酸配列が
言及される場合は常に、同一性の程度は、以下の任意のものから選択されてもよく、「少
なくとも」がここに列記される各パーセンテージの数値に適用される:少なくとも46%
、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%
、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%
、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%
、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%
、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%
、97%、98%、98.1%、98.2%、98.3%、98.4%、98.5%、9
8.6%、98.7%、98.8%、98.9%、99%、99.1%、99.2%、9
9.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%または99.
9%。当業者は、アミノ酸配列を比較するためにCLUSTALプログラムなどのプログ
ラムを使用してもよい。このプログラムは、アミノ酸配列を比較し、適宜いずれかの配列
にスペースを挿入することにより最適なアライメントを見出す。最適なアライメントのた
めにアミノ酸の同一性または類似性(同一性プラスアミノ酸種の保存)を算出することが
可能である。BLASTxのようなプログラムは、類似した配列の最も長いストレッチを
アライメントし、フィットに対して値を割り当てる。そのため、それぞれが異なるスコア
を有する、類似性のいくつかの領域が見出される比較を得ることが可能である。上記は、
適宜変更の上で、本出願に開示される全てのアミノ酸配列に適用される。
【0081】
特に好ましいMVAベクターは、当該技術分野において最も一般的に使用されるように
、CEF中での570回の継代後のAnton Mayrにより製造される標準的なMV
Aである。これは、天然痘根絶との繋がりで開発されたワクシニアウイルスの高度に弱毒
化された株である。MVAは、ワクシニアゲノムの約10%を喪失しており、それと共に
霊長動物細胞中で効率的に複製する能力を喪失している。
【0082】
MAGEヒトがん抗原に関して、MAGEファミリーは約40のメンバーからなる。M
AGE-Aタンパク質は、少なくとも46%の配列同一性、定義された生化学構造および
特性を共有する。MAGE-A3は、がんの主要な形態において著しく発現され、その発
現は、負のアウトカムと関連付けられる。他のMAGE-AファミリーメンバーとのMA
GE-A3アミノ酸配列のアライメントは、以下の同一性%値を与える:
【0083】
【表1】
【0084】
上記に示されるMAGE抗原のそれぞれは、配列番号1のMAGEA3参照配列との任
意の同一性パーセンテージの点で定義され得るように、本発明の遂行において使用されて
もよい。
【0085】
NY-ESO-1に関して、これは、180アミノ酸の公知のがん抗原である。配列は
、LAGE-1に対して76.6%の同一性を有する。いくつかの研究は、配列の免疫原
性を定義することを試みてきた。主な領域は、NY-ESO-1のaa 79~173に
わたる。Gnjatic S, et al. (2006) Adv. Cancer Res. vol 95:1-30; Sabbatini P, et a
l. (2012) Clin. Cancer Res. Vol 18(23): 6497-508;およびBaumgaertner P, et al. (2
016) Oncoimmunology vol 9:5(10)は、黒色腫または卵巣がんがどのように特定の目的の
断片を強調してきたのかを報告する。これらは、本発明の任意の態様において使用するた
めの各オプションである:
・NY-ESO-1 79~173
・NY-ESO-1 79~108
・NY-ESO-1 100~129
・NY-ESO-1 121~150
・NY-ESO-1 42~173
【0086】
LAGE1もまた公知のがん抗原であり、それまたはその断片もまた、本発明のウイル
スベクターおよび方法および使用においてMAGEA3と共に使用されてもよい。
【0087】
アジュバントは、本明細書に記載の発明のAdChおよび/またはMVAベクターの送
達用の組成物において使用されてもよい。有利には、これらのウイルスベクターは、がん
抗原または断片およびCD74、MHCクラスIIインバリアント鎖(li)の間の融合
タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物を含むように操作されてもよい。これは
、増進したCD8 T細胞免疫原性に繋がることが予期される。そのようなタンパク質
融合物および好ましいli配列を作る方法についてのより詳細な情報は、Isis In
novation Limitedの国際公開第2015/082922号パンフレット
(参照により本明細書に組み込まれる)に提供される。
【0088】
本発明のウイルスベクターは、エピトープストリングとして1つまたは複数の抗原遺伝
子を発現するように設計されてもよい。好ましくは、複数のエピトープのストリング中の
エピトープは、不必要な核酸および/またはアミノ酸材料が回避されるように、介在配列
なしで連結されて一緒になっている。エピトープストリングの作出は、好ましくは、同じ
リーディングフレームにおいて1つまたは複数のエピトープをコードするDNAと共に、
エピトープストリングのアミノ酸配列をコードする組換えDNA構築物を使用して達成さ
れる。代替的に、抗原は、別々のポリペプチドとして発現されてもよい。
【0089】
抗原の任意の断片は、別々であれ、記載されるようなエピトープストリング中であれ、
好ましくは、親抗原の配列からの少なくともn個の連続するアミノ酸を含み、nは、好ま
しくは、少なくとも7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、1
8、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31
、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、
45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、5
7、58、59、60、70、80、90もしくは100アミノ酸、または7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36
、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、
50、51、52、53、54、55、56、57、57、58、59、60、70、8
0、90もしくは100アミノ酸より多い。断片は、好ましくは、親抗原の1つまたは複
数のエピトープを含む。断片は、一部の状況では、親抗原の単一のエピトープのみを含む
またはからなるものであってもよい。通常、断片は、抗原性/免疫原性の特性が維持され
るように、親領域またはエピトープと十分に類似している。
【0090】
本発明において使用される抗原または抗原遺伝子の1つまたは複数は、C末端および/
またはN末端において切断されていてもよい。これは、クローニングおよびベクター化ワ
クチンの構築を促し得、かつ/または抗原の免疫原性もしくは抗原性を増進し得る。切断
の方法は当業者に公知である。例えば、遺伝子操作の様々な周知の技術を使用して、抗原
遺伝子のいずれかの末端においてコーディング核酸配列を選択的に欠失させ、次に所望の
コーディング配列をウイルスベクターに挿入することができる。例えば、候補タンパク質
の切断は、コーディング核酸のそれぞれ3’および/または5’末端を選択的に侵食する
3’および/または5’エキソヌクレアーゼ戦略を使用して作出される。野生型遺伝子配
列は、発現される抗原が、親抗原と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはより多くのアミ
ノ酸だけ切断され得るように切断されてもよい。一部の事例では、抗原遺伝子は、野生型
抗原と比較してC末端において(発現された場合に)10~20アミノ酸だけ切断されて
いる。他の事例では、抗原遺伝子は、野生型抗原と比較してC末端において(発現された
場合に)13~18アミノ酸、好ましくは、(発現された場合に)15アミノ酸だけ切断
されている。
【0091】
一部の状況では、抗原遺伝子はリーダー配列を含んでもよく、これは、mRNAへの一
次転写物のプロセシング、翻訳効率、mRNA安定性に影響してもよく、かつ抗原の発現
および/または免疫原性を増進してもよい。本発明との繋がりにおいて、アジュバント能
力にも役立ち得る一部の好ましいリーダー配列は、組織プラスミノーゲン活性化因子(t
PA)またはMHC IIシャペロンタンパク質インバリアント鎖(Ii)である。好ま
しくは、リーダー配列は、1つまたは複数の抗原に対してN末端に配置される。
【0092】
本発明は、任意選択的に1つまたは複数の追加の活性原料成分、薬学的に許容される担
体、希釈剤、賦形剤またはアジュバントと組み合わせて、本発明の1つまたは複数のウイ
ルスベクターを含む、薬学的または免疫原性組成物を含む。好ましくは、組成物は、免疫
原性および/または抗原性組成物である。
【0093】
好適なアジュバントは当該技術分野において周知であり、不完全フロイントアジュバン
ト、完全フロイントアジュバント、MDP(ムラミルジペプチド)を含むフロイントアジ
ュバント、ミョウバン(水酸化アルミニウム)、ミョウバン+百日咳菌(Bordatella per
tussis)および免疫刺激性複合体(ISCOM、典型的には、ウイルスタンパク質を含有
するQuil Aのマトリックス)が挙げられる。
【0094】
本発明の免疫原性および/または抗原性組成物は、予防的(がんの形成を予防する免疫
応答を誘導する)または治療的(抗がん活性を有する免疫応答を誘導する)であってもよ
い。
【0095】
本発明のベクターまたは組成物は、単回の免疫化または複数回の免疫化のいずれかとし
て個々の対象に投与される。好ましくは、ウイルスベクターまたはその免疫原性組成物は
、単一、二重または三重の免疫化レジームの部分として投与される。それらはまた、同種
または異種プライム-ブースト免疫化レジームの部分として投与されてもよい。
【0096】
免疫化レジームは、本発明のウイルスベクターまたは免疫原性組成物の2回目またはそ
の後の投与を含んでもよい。2回目の投与は、短い期間でまたは長い期間で投与され得る
。用量は、時間、日、週、月または年の期間で、例えば、1回目の投与から1、2、3、
4、5、6、7、8、9、もしくは10もしくはより多くの週もしくは0.25、0.5
、0.75、1、5、10、15、20、25、30、35もしくは40もしくはより多
くの年の後までに、または1回目の投与から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8
、9、もしくは10もしくはより多くの週もしくは0.25、0.5、0.75、1、5
、10、15、20、25、30、35もしくは40もしくはより多くの年の後に投与さ
れてもよい。好ましくは、2回目の投与は、1回目の投与から少なくとも2か月後に行わ
れる。好ましくは、2回目の投与は、1回目の投与から10年後までに行われる。これら
の時間間隔は、好ましくは、適宜変更の上で、任意のその後の用量の間の期間に適用され
る。
【0097】
投与に関して、本発明のウイルスベクターは、10、100、10、10、10
、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、10
またはより多くのウイルス粒子(vp)の1つまたは複数の用量の量において投与され
てもよい。
【0098】
投与は、腹腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、または鼻腔内投与により為さ
れてもよい。好ましい実施形態では、ウイルスベクターは、全身的に、特に、注射および
灌流などを含む、血管内投与により投与される。
【0099】
免疫チェックポイントモジュレーター(アゴニストまたは阻害剤)は、がんの治療にお
いて使用される免疫療法である。それらは、がん細胞を攻撃するT細胞をチューニングす
ることが公知のタンパク質であるチェックポイントタンパク質を調節する。本発明に従っ
て使用するためのチェックポイントモジュレーターのセグメント、チェックポイント阻害
剤は、CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)、PD-1(プログラム
細胞死タンパク質1)またはPD-L1(プログラム細胞死リガンド1)を含む、異なる
チェックポイントタンパク質を遮断する。CTLA-4およびPD-1はT細胞上に見出
される一方、PD-L1はがん細胞上に見出される。PD-1を遮断するための好適なチ
ェックポイント阻害剤としては、ニボルマブ(オプジーボ(登録商標))、ペムブロリズ
マブ(キイトルーダ(登録商標))が挙げられ、黒色腫、ホジキンリンパ腫、非小細胞肺
がん、尿路(尿路上皮)、膀胱などのがんを患う患者を治療するために本発明のワクチン
接種アプローチと共に使用されてもよい。CTLA-4を遮断するための好適なチェック
ポイント阻害剤としてはイピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))が挙げられ、黒色腫の治
療のために本発明と共に使用されてもよい。PD-L1を遮断するための好適なチェック
ポイント阻害剤としてはアテゾリズマブ(テセントリク(登録商標))が挙げられ、肺、
乳房および尿路上皮を含むがんの治療のために本発明と共に使用されてもよい。
【0100】
本発明の方法および使用の施行において有用な免疫チェックポイントモジュレーターの
他の好適な標的としては、例えば、AMHRII、B7-H3、B7-H4、BTLA、
BTNL2、ブチロフィリンファミリー、CD27、CD28、CD30、CD40、C
D40L、CD47、CD48、CD70、CD80、CD86、CD155、CD16
0、CD226、CD244、CEACAM6、CLDN6、CCR2、CTLA4、C
XCR4、GD2、GGG(グアニリルシクラーゼG)、GIRT、GIRTリガンド、
HHLA2、HVEM、ICOS、ICOSリガンド、IFN、IL1、IL1R、IL
1RAP、IL6、IL6R、IL7、IL7R、IL12、IL12R、IL15、I
L15R、LAG3、LIGHT、LIF、MUC16、NKG2Aファミリー、OX4
0、OX40リガンド、PD1、PDL1、PDL2、Resokine、SEMA4D
、Siglecファミリー、SIRPアルファ、STING、TGFベータファミリー、
TIGIT、TIM3、TL1A、TMIGD2、TNFRSF、VISTA、4-1B
Bおよび4-1BBリガンドから選択される任意のものが挙げられる。
【0101】
チェックポイントモジュレーターのより完全な総説は、Mahoney, A. M. et al., (2015
) Nature Reviews Drug Discovery vol 14: 561 - 584(特に図1を参照)により提供さ
れる。
【0102】
チェックポイントモジュレーターの投与は、本発明のプライムまたは1回もしくは複数
回のブースト免疫化のいずれかと同時に為されてもよい。これは、したがって、予防また
は治療目的のための組合せ治療を提供する。同時投与の改変として、チェックポイントモ
ジュレーターは、プライムおよび/またはブースト投与の実質的に後に、実際上同時に、
投与されてもよい。あるいは、プライムおよび/またはブースト投与から時間的に遅延し
た逐次投与が為されてもよい。遅延は、プライムおよびブースト投与と比較して異なって
もよく、チェックポイントモジュレーターがワクチン投与の間に時間的に別々に投与され
るように十分に長くてもよい。本発明の免疫原性組成物とは別々のチェックポイントモジ
ュレーターの投与は、各投与の間の等しい期間を結果としてもたらしてもよい。一部の事
例では、チェックポイントモジュレーターは、本発明のChAdベースの免疫原性組成物
を使用するプライムワクチン接種の前に投与されてもよい。
【0103】
1つまたは複数のチェックポイントモジュレーターの文脈における「組合せ治療」は、
組合せの成分の同時の、逐次的なまたは別々の投与を想定する。例えば、本発明のウイル
スベクターおよびチェックポイント阻害剤の同時の投与である。例えば、本発明のウイル
スベクターおよび1つまたは複数のチェックポイント阻害剤の逐次的な投与もまた可能で
ある。さらに、本発明のウイルスベクターおよび1つまたは複数のチェックポイント阻害
剤の別々の投与の例がある。ウイルスベクターおよびチェックポイント阻害剤の投与が逐
次的または別々である場合、ウイルスおよびチェックポイント阻害剤は、治療剤が協同的
な、例えば、相乗的な、効果を示すことを可能とする時間間隔内に投与されてもよい。好
ましい実施形態では、本発明のウイルスベクターおよび1つまたは複数のチェックポイン
ト阻害剤は、互いの1、2、3、6、12、24、48、72時間以内、または4、5、
6もしくは7日以内または8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、
18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30もし
くは31日以内に投与される。一部の実施形態では、本発明のウイルスベクターの第1の
用量は、チェックポイント阻害剤の第1の用量の前に投与され、またはその逆であり、ウ
イルスベクターおよびチェックポイント阻害剤を用いる治療がオーバーラップする時期を
含んでもよい。他の実施形態では、本発明のウイルスベクターの第1の用量は、チェック
ポイント阻害剤の第1の用量と同じ時点またはおおよそ同じ時点に投与されてもよい。他
の実施形態では、本発明のウイルスベクターの第1の用量は、チェックポイント阻害剤の
第1の用量(または第2、第3もしくはその後の用量)の後に投与され、ウイルスベクタ
ーおよびチェックポイント阻害剤を用いる治療がオーバーラップする時期を含んでもよい
【実施例0104】
材料および方法
ウイルスベクターの構築
翻訳効率のためにコドン最適化された、ウイルスベクターへの挿入用の遺伝子配列は、
GeneArt(ThermoFisher Scientific)によりDNAスト
リングまたはプラスミドとして合成された。チンパンジーアデノウイルスベクター(Ch
AdOx)の構築のために、DNAストリング挿入物およびp1990骨格(Gatew
ay(登録商標)エントリーベクター)を制限酵素KpnI/NotIを用いて消化し、
次に終夜のインキュベーションを介してライゲートした。目的の遺伝子配列をコードする
プラスミドp1990でDH5α(商標)コンピテント大腸菌(E. coli)を形質転換し
、次にPCR法を介して陽性クローンについてスクリーニングした。陽性のクローニング
されたDNAをmidiprepを介して増幅し、次にLRクロナーゼを使用して、遺伝
子挿入物を含有するp1990およびp2563[配列番号24]、ChAdOxデステ
ィネーションベクターの間でGateway(登録商標)クローニング(ThermoF
isher Scientific)を実行した。p2563デスティネーションベクタ
ーDNAを細菌形質転換、maxiprepおよび重力カラム精製を介して増幅した。p
2563デスティネーションベクターをPme1を用いて消化してDNAを線状化した後
に、ウイルス製造用とした。
【0105】
ChAdOx1ベクターを生成するための寄託された生物学的材料の核酸配列および供
給源を含む、より包括的な技術情報は、Isis Innovation Limite
dの国際公開第2012/172277号パンフレット(参照により本明細書に組み込ま
れる)に開示されている。ChAdOx2ベクターを生成するための生物学的材料の核酸
配列および供給源を含む、より包括的な技術情報は、Oxford Universit
y Innovation Limitedの国際公開第2017/221031号パン
フレット(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0106】
本発明のChAdOxウイルスベクターの製造のためのさらなる材料および方法の情報
を提供する、参照により本明細書に組み込まれる他の関連する開示は、Dicks, M. D. J.,
et al. (2012) "A Novel Chimpanzee Adenovirus Vector with Low Human Seroprevalen
ce: Improved Systems for Vector Derivation and Comparative Immunogenicity" PlosO
ne e40385である。
【0107】
改変ワクシニアアンカラ(MVA)ベクターを生成するために、GeneArt DN
AストリングまたはプラスミドをPhusion(登録商標)ポリメラーゼ(Therm
oFisher Scientific)を使用するPCRを介して増幅し、InFus
ion反応のための正しいオーバーハングを確実にした。遺伝子挿入物およびp4719
[配列番号25]、MVAデスティネーションベクターを次に制限酵素Ale Iを用い
て消化した。増幅された挿入物およびp4719を次にInFusion法を使用してラ
イゲートした。ライゲートされたプラスミドでDH5α(商標)コンピテント大腸菌(E.
coli)を形質転換した。陽性クローンをスクリーニングし、DNAをmidiprep
を介して増幅した。DNAを線状化させるためのXho1+Acc651を用いる最終の
消化をウイルス製造の前に行った。
【0108】
本発明のために必要なMVAベクターを生成および再製造するための寄託された生物学
的材料の核酸配列および供給源を含む、より包括的な技術情報は、Isis Innov
ation Limitedの国際公開第2011/128704号パンフレットおよび
欧州特許出願公開第2044947号明細書(これらのそれぞれは参照により全体が組み
込まれる)に開示されている。本発明のMVAウイルスベクターの製造のためのさらなる
材料および方法の情報を提供する、参照により本明細書に組み込まれる他の関連する開示
は、Pavot V., Sebastian S., Turner A. V., Matthews J., Gilbert S.C. (2017) "Gene
ration and Production of Modified Vaccinia Virus Ankara (MVA) as a Vaccine Vecto
r" In: Ferran M., Skuse G. (eds) Recombinant Virus Vaccines, Methods in Molecula
r Biology, vol 1581 Humana Press, New York, NYである。
【0109】
ペプチドの製造
P1A、MAGE-A3およびNY-ESO-1タンパク質の全体をカバーする15ア
ミノ酸の長さの短いペプチドのオーバーラップするプールをMimotopes、Mul
grave、Victoria、Australiaに注文して製造した。
【0110】
マウス
6~8週齢C57BL/6、DBA/2およびCD1マウスをEnvigo、UKから
購入し、Functional Genomics Facility、Univers
ity of Oxford、UKにおいて飼育した。マウスの世話および実験の手順は
、UK Animals Scientific Procedures Act Pr
oject License 30/2947の条項に従って実行した。
【0111】
in vivo研究
ワクチンの免疫原性を査定するために、全身麻酔下での50μlの総容量の筋肉内(i
.m.)注射を介して図中に指し示される用量において製造されたChAdOx1および
MVAウイルスベクターをマウスに投与した。各実験について詳述するスキームに従って
ワクチン接種を時点において投与した。生L1210.P1A.B7-1細胞を用いる免
疫化は、腹腔内注射を介して行った。ex vivoアッセイ用のPBMCを得るために
、尾静脈出血を介して血液を採取し、ACK溶解緩衝液を用いて赤血球細胞を除去するた
めの処理を行った。
【0112】
10の異なる組換えウイルスワクチン(以下の表1を参照)を生成し、抗原発現を感染
細胞において確認した。
【0113】
【表2】
【0114】
P1A抗原を発現するこれらのウイルスベクター化ワクチンの免疫原性を、DBA/2
、C57BL/6およびCD1非近交系マウスを含むマウスの3つの異なる系統において
試験した。
【0115】
ex vivoペプチド刺激
単離されたマウスPBMCまたは脾臓細胞を、10%のFCSを添加したRPMI 1
640培地に懸濁し、V底96ウェルプレートに加えた。抗CD28抗体(2μg/ml
)およびDNase(20μg/ml)と共にP1A、MAGE-A3もしくはNY-E
SO-1ペプチドまたはDMSO対照を4mg/mlの作用濃度において培養培地に加え
ることにより細胞を刺激した。細胞内サイトカイン蓄積を促進するために1時間後にBr
efaldin Aを添加すると共に、ペプチド刺激細胞を5%のCO中37℃で5時
間インキュベートした。
【0116】
フローサイトメトリー - 細胞内サイトカイン染色
ペプチド刺激後、PBMCをPBSを用いて洗浄し、PBS中のAqua live/
dead fixable dye(Invitrogen)および抗CD8/抗CD4
抗体と4℃で20分間インキュベートすることにより表面マーカー/生存能のための染色
を行った。サイトカインを産生する活性化細胞のパーセンテージを査定するために、細胞
を次にCytoFix/CytoPerm(BD Biosciences)を用いて固
定および透過処理し(permeabalised)、1xのperm緩衝液(BD Bioscie
nces)中の抗IFN-γ、抗TNF-αおよび抗IL-2抗体と4℃で20分間イン
キュベートした。試料をBD Fortessaで取得し、FlowJoソフトウェア(
Tree Star, Inc.)を使用して解析を行った。
【0117】
統計解析
全ての統計的検定および解析は、GraphPad Prismソフトウェアを使用し
て行った。複数の群間の差異は、クラスカル・ウォリスノンパラメトリック分散分析を用
い、個々の群間の差異は、マン-ホイットニーノンパラメトリックt検定を用いて決定し
た。
【0118】
[実施例1]
ChAdOx/MVAを用いる免疫化によるP1Aに対するCD8 T細胞の誘導
P1Aは、同系宿主における非突然変異MAGE型抗原に対するCD8応答の誘導を確
認するためおよびP1A発現腫瘍P815に対する保護を誘導するために使用できるマウ
スMAGE型抗原である。それはMAGE-A3およびNY-ESO-1のサロゲートで
ある。
【0119】
図1Bは、末梢血単核細胞(PBMC)が採取され、ワクチン接種応答について試験さ
れるマウスのプライム-ブースト免疫化の図式的な概要を示す。図2は、P1Aをコード
するChAdOx1/MVAウイルスベクターを用いてワクチン接種されたマウスにおけ
るCD8 T細胞応答を示す。ワクチン接種スキームの時間表(図1)に従って、BL
/6、DBA/2およびCD1マウスにChAdOx1.P1AまたはChAdOx1.
P1A-Iiのいずれか(プライム)、続いて4週後にMVA.P1A(ブースト)をワ
クチン接種した。P1A特異的T細胞応答を試験するために、P1Aペプチドプールを用
いてPMBCをex vivoで刺激し、I型サイトカインを産生する細胞のパーセンテ
ージをフローサイトメトリーにより解析した。サイトカインIFN-γ(A)およびTN
F-α(B)を産生するCD8細胞のパーセンテージ(n=6/群)を測定した。異種
プライム-ブーストワクチン接種は、IFN-γおよびTNF-αの細胞内染色により示
されるように、マウスの3つ全ての系統においてP1Aに対する強いCD8応答を誘導し
た(図2)。P1AをMHC IIシャペロンタンパク質インバリアント鎖(Ii)に融
合させた場合に応答はさらに増進された。これらの結果は、IFN-γ ELISPOT
アッセイおよびDBA/2マウスにおけるP1A特異的四量体染色により確認された(結
果は示さない)。
【0120】
全体として、観察されたものは、DBA/2、B6および非近交系CD1マウスにおけ
る非常に強いCD8応答であった。CD8応答は、ChAdOxベクターにIiを加える
ことにより増加した。見出されたものは、CD8 T細胞がオーバーラップペプチドによ
り誘導された場合に、それらはIFNγ、IL2、およびTNFαを分泌したことであっ
た。P1Aに対するCD4応答はほとんどなかった(CD4エピトープは公知ではない)
【0121】
[実施例2]
腫瘍発生に対するP1Aを持つChAdOx1およびMVAウイルスベクターの保護有効
性の査定
腫瘍負荷に対するワクチン保護有効性の査定の部分として、マウスの1つの脇腹の皮下
(s.c.)に無血清細胞培養培地中の腫瘍細胞を注射した。触知可能な腫瘍が発生した
ら、成長を記録し、腫瘍サイズがいずれかの方向において10mmに達したらマウスを安
楽死させた。腫瘍体積は、式:長さ(mm)×幅2(mm)×0.5を使用して測定した
。生存曲線をカプラン-マイヤー法に従って作成し、生存における差異をログランク検定
を使用して試験した。0.05より低いP値を有意と考えた。
【0122】
より詳細には、DBA/2マウスを4週間隔で与えたPBS、生L1210.P1A.
B7-1細胞またはChAdOx1-P1A(±Ii)/MVA-P1Aプライム-ブー
ストのいずれかを用いて免疫化し、次に脇腹における皮下注射を介して1.5×10
のP815細胞または1×10個の15V4T3細胞を用いた負荷を行った。P815
および15V4T3は、同系P1A陽性肥満症細胞腫細胞系である。15V4T3細胞は
、Boon T, Van den Eynde B, Hirsch H, Moroni C, De Plaen E, van der Bruggen P, De
Smet C, Lurquin C, Szikora JP, De Backer O. (1994) "Genes coding for tumor-spec
ific rejection antigens" Cold Spring Harb Symp Quant Biol. 59: 617 - 22に記載さ
れている。
【0123】
P815負荷(図4)および15V4T3(図7A)後の各治療群についての平均腫瘍
成長。カプラン-マイヤー生存曲線をP815(図5)、15V4T3(図7B)につい
て示す(n=10/群)。
【0124】
図4および図5に示されるように、P1Aを伴うアデノウイルスプライムおよびMVA
ブーストワクチン接種は、PBS対照群と比較してワクチン接種マウスにおいて、有意に
腫瘍成長を低減し、生存を向上させた。興味深いことに、Ii_P1Aを用いてワクチン
接種された群は、L1210.P1A B7.1細胞を用いて免疫化された陽性対照群と
比較してより小さい腫瘍体積およびより良好な生存を有した。この細胞系は、非常に強い
P1A特異的細胞傷害活性およびP1A陽性腫瘍負荷に対する保護を誘導することが以前
に示されている(Brandle D. et al. (1998) Eur. J. Immunol. 28(12): 4010 - 4019お
よびNaslund T. I. et al. (2007) J. Immunol. 178(11): 6761 - 6769)を参照。これは
、ワクチン接種からの刺激された免疫応答は、P815腫瘍からのマウスの保護において
効率的であることを指し示した。図6Aおよび図6Bは、他のP1A陽性腫瘍細胞系15
V4T3を使用して観察された同じ結果を示す。
【0125】
全体として、観察されたものは、異なるP1A発現腫瘍モデルP815および15V4
T3(およびV4D6;データは示さない)における腫瘍負荷に対する保護および生存の
増加と関連付けられるCD8応答であった。プライム-ブーストレジメンは、陽性対照細
胞ワクチンを用いるよりも良好な保護を与えた。インバリアント鎖(Ii)-P1A融合
物がベクターにおいてP1A単独よりもどのように良好であるらしいのかも観察される。
任意の腫瘍が、長期間後に治療を用いた成長効果の低減から逃れている場合、これらはP
1A発現を喪失していた(データは示さない)。
【0126】
[実施例3]
P1Aを持つChAdOx1およびMVAウイルスベクターのワクチン治療有効性の査定
ワクチン治療有効性を査定するための実験を行った。15V4T3腫瘍が確立されたら
、マウスを5日後からChAdOxベクターを用いてプライミングし、次に26日目にM
VAベクターを用いてブーストした。ワクチン接種スキームを図7に示す。3つの異なる
ワクチン接種スキームを試験した。DBA/2マウスを脇腹における皮下注射を介して1
×10個の15V4T3細胞を用いて負荷し、次に負荷の5日後に3週間隔の単一の標
準用量ChAdOx-P1A(10IU)/MVA-P1A(10PFU)プライム
-ブーストワクチン接種、3週間隔の単一の低用量プライム-ブーストワクチン接種(C
hAdOx - 10IU、MVA - 10PFU)、週毎の交互の低用量ChA
dOx-P1A/MVA-P1Aワクチン接種または週毎の対照抗原、DPYをコードす
るChAdOx/MVAワクチン接種のいずれかを与えた。各治療群における15V4T
3腫瘍成長および生存を次にモニターした。
【0127】
図8に示されるように、腫瘍成長は、関連しないタンパク質DPYを発現するウイルス
ベクターを用いてワクチン接種された対照群と比較してワクチン接種マウスにおいて顕著
に遅延された。さらに、単一の標準用量プライム-ブーストは、腫瘍負荷に対する最良の
保護および生存を実証した。しかしながら、ワクチン接種マウスは、後のステージ(6週
目)において腫瘍成長を制御する能力を喪失し始めた。
【0128】
治療有効性は、したがって、15V4T3モデルにおいて観察された。
【0129】
[実施例4]
免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせたChAdOx1-P1A/MVA-P1Aプ
ライム-ブーストワクチン接種レジームの治療有効性の査定
より良好な腫瘍保護を達成し、ワクチン有効性を増加させるために、ワクチンをチェッ
クポイント阻害剤での遮断と組合せ、同じ15V4T3腫瘍モデルを使用して、DBA/
2マウスにP1A発現同系15V4T3腫瘍細胞を接種した。DBA/2マウスを脇腹に
おける皮下注射を介して1×10個の15V4T3細胞を用いて負荷し、次に腫瘍サイ
ズに基づいて負荷後8日目に異なる治療群に無作為化した。マウスにPBS(シャム)ワ
クチン接種、単独のもしくは抗PD1もしくは抗CTLA-4抗体のいずれか(3日間隔
の3用量)と組み合わせた週毎のChAdOx/MVAワクチン接種、または単独の抗P
D1もしくは抗CTLA-4抗体のいずれかを与えた。各治療群における15V4T3腫
瘍成長(図10)および生存(図11)をモニターし、継続期間の全体を通じて記録した
。触知可能な腫瘍の確立後、腫瘍サイズを測定し、マウスを異なる群に無作為化した。図
10(左手グラフ)に示されるように、組合せ療法を与えたマウスの腫瘍成長は、対照お
よび単一療法群におけるマウスと比較してはるかに遅延した。また、抗PD1およびワク
チンの組合せ療法を与えたマウスの100%は、腫瘍負荷後36日目まで生存し、抗CT
LA4およびワクチン治療の群においてマウスの50%が生存したが、他のマウスは全て
生存が不良であった。
【0130】
ワクチン+抗PD1の相乗効果が15V4T3モデルの治療的状況において観察された
【0131】
[実施例5]
CD1非近交系マウスにおけるMAGE-A3およびNY-ESO-1の免疫原性の査定
マウスP1A遺伝子をコードするベクターからの応答が確立されたので、ヒトMAGE
型抗原をコードするベクター構築物を製造し、試験した。異なる形態のヒトMAGE型抗
原、MAGE-A3およびNY-ESO-1の免疫原性をCD1非近交系マウスにおいて
調べた。MAGE-A3およびNY-ESO-1を融合タンパク質としてチンパンジーア
デノウイルスベクターにクローニングすると共に、それらをMVAに個々にクローニング
した。これは2つの主な理由に起因する。第1に、アデノウイルスベクター化ワクチンの
製造はMVAより高価である。臨床的状況用の調製のために試みたことは、コストを最小
化して、MAGE-A3およびNY-ESO-1の融合物を発現する1つの単一のアデノ
ウイルスベクター化ワクチンのみを含ませることであった。第2に、一部のヒト腫瘍はM
AGE-A3またはNY-ESO-1のいずれかを発現する。腫瘍に対するより特異的な
応答を誘導するために、腫瘍により発現される特定の抗原がブースティングのために標的
化される。より詳細には、マウスを時間表(図12)に従ってワクチン接種し、MAGE
-A3-NY-ESO-1±IiまたはtPAをコードするChAdOx1を用いるプラ
イム、続いてMAGE-A3またはNY-ESO-1のいずれか、±tPAをコードする
MVAを用いる2回のブーストを行った(2回目のMVAブーストは1回目のMVAブー
ストに対して交替の抗原を含有する)。指し示される時点において各ワクチン接種後に抗
原特異的T細胞応答を査定した。PBMCを回収し、MAGE-A3(青丸)またはNY
-ESO-1(赤四角)ペプチドを用いてex vivoで刺激し、IFN-γ応答細
胞のパーセンテージをフローサイトメトリーにより解析した。
【0132】
図13は、ChAdOx1-MAGE-A3/NY-ESO-1融合物(M-NY)、
tPAを有するChAdOx1-MAGE-A3/NY-ESO-1融合物(tPA-M
-NY)およびインバリアント鎖を有するChAdOx1-MAGE-A3/NY-ES
O-1融合物(li-M-NY)を用いた非近交系CD1マウスのプライミング注射後の
MAGE-A3/NY-ESO-1に対するCD8 T細胞の誘導を示す。2週後、PB
MCを単離し、MAGE-A3オーバーラップペプチド(赤丸)およびNY-ESO-1
オーバーラップペプチド(青四角)に対する応答をex vivoの細胞内サイトカイン
染色により試験した。プライム後のCD8 IFNγ応答は、融合タンパク質を含有する
ChAdOxプライムは両方の抗原に対して特異的なCD8 T細胞を誘発できることを
示す。
【0133】
次に、ChAdOxプライムしたマウスに(i)tPAへの融合ありまたはなしのMA
GEA3を含有するMVA、および(ii)tPAへの融合ありまたはなしのNY-ES
O-1を含有するMVAを用いるブースター注射を与えた。PBMCを次に再びこれらの
マウスから単離し、オーバーラップペプチドを用いた刺激後にex vivoの細胞内サ
イトカイン染色を使用してMAGEA3およびNY-ESO-1応答について試験した。
図14はMVA-MAGEA3±tPAブーストの効果を示し、図15はMVA-NY-
ESO-1±tPAブーストの効果を示す。図14および図15のそれぞれにおいて、プ
ライムのみの結果とのブーストの結果の簡便な比較のために左手部分として図13を含め
ている。見ることができるように、初期のプライム応答は、MVAを使用する選択された
抗原のいずれかに対してはるかにより高い大きさまでブーストされる。
【0134】
プライムとしてのChAdOx-インバリアント鎖(li)およびMVA-tPAは、
試料サイズおよび何らかの程度の変動性を有する非近交系マウスの使用であるとしても、
最も免疫原性のレジームであるようである。
【0135】
二重ブーストにおいて、初期のプライム応答は、より高い大きさまで同時に増加した(
データは示さない)。観察された応答は、他のI型サイトカインに概ねマッチする(デー
タは示さない)。
【0136】
どれほどの頻度の抗原特異的T細胞がはるかにより高いレベルにブーストされるようで
あるのか、および選択された抗原を標的とする応答を考慮すれば、本発明は、問題とされ
る個々の腫瘍の特定の発現パターンに従って予防または治療に対するより個別化されたア
プローチを可能とし得る。
【0137】
図16Aは、MVA-M、MVA-NY、MVA-tPA-M、またはMVA-tPA
-NYベクターを用いたブースト後のCD8+細胞中のIFN-γ細胞のパーセンテー
ジを示す。図16Bは、MVA-M、MVA-NY、MVA-tPA-M、またはMVA
-tPA-NYベクターのいずれかを用いた2回目のブースト後のCD8細胞中のIF
N-γ細胞のパーセンテージを示す。
【0138】
マウスを融合物MAGE-A3およびNY-ESO-1を発現するアデノウイルスを用
いてプライムし、MAGE-A3またはNY-ESO-1のいずれかを発現するMVAを
用いてブーストした場合、増加したCD8応答は、MVAにより発現される抗原を標的と
した(図14および図15)。また、両方のMVA(MVA_MAGEA3およびMVA
_NYESO)を用いてマウスをブーストすることは、これらの2つの抗原に対する類似
したレベルのCD8応答を誘導した。
【0139】
Bolhassani A. et al. (2011) Mol. Cancer. 10:3に記載されるように、抗原の免疫原
性は、遺伝子を一部の分子アジュバントに融合させることにより増進され得る。これらの
中で、ヒト組織プラスミノーゲン(plasmogen)活性化因子(tPA)シグナルペプチド
(Delogu G. et al. (2002) Infect. Immun.70(1): 292 - 302を参照)は、感染細胞内の
タンパク質発現を増加させ、そのためT細胞応答を増進することがある(例えば、Biswas
S. et al. (2011) PLoS One 6(6): e20977)。また、抗原をMHC II関連Iiに融
合させることは、CD8応答を強化し得る(Mikkelsen M. et al. (2011) Journal of Im
munology 186(4): 2355 -2364;およびSorensen M. R. et al. (2009) European Journal
of Immunology 39(10): 2725 - 2736)。
【0140】
上記の様々な実施例から要約すると、P1Aに対するCD8応答は、抗原をIiに融合
させた場合に増進される(図2)。より良好な刺激されたCD8応答がどのようにマウス
におけるより良好な腫瘍保護に変換されたのかもまた示される(図4および図5)。tP
A融合物の効果は、ウイルスベクター化ワクチンにおいて今までに研究されていない。実
施例は、Iiとは異なり、MAGE抗原へのtPA融合物は、アデノウイルスを用いる単
一のワクチン接種においてCD8 T細胞応答を増進できなかったことを示す。また、
単一のプライムブーストワクチン接種において、マウスをIiに融合した抗原を発現する
アデノウイルスを用いてプライムし、tPAに融合した抗原をコードするMVAを用いて
ブーストした場合に、CD8応答における増加が観察された(図16Aおよび図16B
参照)。しかしながら、さらなる解析は、MVAブーストにおけるMAGE抗原へのtP
A融合物はCD8応答を増進できなかったことを示す。
【0141】
[実施例6]
DBA/2マウスにおける15V4T3腫瘍に対する効果におけるワクチン、チェックポ
イント阻害剤および化学療法の三重の組合せ
図18は、化学療法およびチェックポイント阻害剤治療を伴う試験マウスのワクチン接
種の他に、関連付けられる対照治療についての実験クロノロジーを示す。簡潔に述べれば
、100万個の15V4T3細胞をDBA/2マウスのそれぞれの皮下に注射した。6日
目に腫瘍サイズに基づいてマウスを群に無作為に分割した。マウスの任意のワクチン接種
を含む治療を腫瘍移植後8日目に開始した。投与される場合、20mg/kgのパクリタ
キセルおよび40mg/kgのカルボプラチンを8日目にI.Pによりマウスに与え、2
0mg/kgのパクリタキセルを9日目にI.Pにより与えた。投与される場合、3用量
の100μgのaPD1を18、21および24日目にI.Pにより与えた。群当たりの
マウスの数は6または7または8であった。
【0142】
図19は、実験および対照治療のそれぞれについてのマウスにおける平均腫瘍体積の時
間経過を示す。
【0143】
図20は、各実験群または対照群における個々のマウスの腫瘍体積についての時間経過
を示す。ワクチン接種および/または化学療法および/またはチェックポイント阻害剤の
いずれであれ、治療の時間を示す。48日のエンドポイントでの腫瘍なしであることが見
出される各群中のマウスの数もまた指し示す。ワクチン接種、化学療法およびチェックポ
イント阻害剤の三重の組合せは明確に、様々な治療の中で最も有効に腫瘍の形成を阻害す
る。
【0144】
図21は、各実験群および対照群における経時的なマウスの生存を示す。ワクチン接種
、化学療法およびチェックポイント阻害剤の三重の組合せは明確に、他の治療および対照
と比較してマウスの最良の生存を提供する。
【0145】
aPD1および化学療法とのワクチンの三重の組合せは、他の群と比較して腫瘍成長を
有意に阻害した。腫瘍注射後23日目に8匹のうち6匹が腫瘍なしマウスであり、これら
のマウスは48日目まで腫瘍なしのままであった。また、図22に示されるように、三重
の組合せの群はまた、腫瘍注射後27日目に最も高い末梢P1A特異的CD8応答を有す
る。
【0146】
[実施例7]
DBA/2マウスにおける15V4T3腫瘍に対する効果におけるワクチン、チェックポ
イント阻害剤および化学療法の三重の組合せ
図23は、マウスの各実験群および対照についての時間表を示す。100万個の15V
4T3細胞(早期継代)をDBA/2マウスに同時に注射した。11日目に腫瘍サイズに
基づいてマウスを群に無作為に分割し、マウスのワクチン接種を腫瘍移植後11日目に開
始した。投与される場合、20mg/kgのパクリタキセルおよび40mg/kgのカル
ボプラチンを11日目にI.Pにより与え、20mg/kgのパクリタキセルを12日目
にI.P.により与えた。投与される場合、3用量の100μgのaPD1を21、24
および27日目にI.P.により与えた。群当たりn=6または7。腫瘍負荷を伴わない
ナイーブ群もまたこの実験に含めた。出血を14日目に実行し、試料を使用して骨髄由来
抑制細胞(MDSC)枯渇を調べた。
【0147】
図24および図25は、化学療法のみまたは化学療法+ワクチンを用いて治療されたマ
ウスがどのようにMDSC頻度を低下させたのかを示す。
【0148】
[実施例8]
DBA/2マウスにおける15V4T3腫瘍 - CPIを用いるワクチン接種は腫瘍T
細胞浸潤を増加させる
100万個の15V4T3細胞をDBA/2マウスの皮下に注射した。ワクチン接種ス
ケジュールをPBS対照、aPD1のみ、ならびにマウスの2つの試験群:(1)低用量
1週間隔プライムブースト(ChAdOx1-Ii-P1A+MVA-tPA-P1A)
および(2)低用量1週間隔プライムブースト(ChAdOx1-Ii-P1A+MVA
-tPA-P1A)+aPD1について図26に示す。マウスのワクチン接種を腫瘍移植
後10日目に開始した。CPI(αPD1)をプライムの3日後に与え、腫瘍注射後13
、16および19日目に3用量の100μgを用いた。全てのマウスを20日目に出血さ
せ、21日目に屠殺した。腫瘍微環境の免疫プロファイルをFACSにより研究した。結
果を図27~53に示す。
【0149】
より詳細には、図27は、屠殺時のマウスの全ての群における腫瘍サイズの均一な広が
りを示す。図28は、ワクチン+抗PD-1組合せ群におけるマウスのサブセットにおけ
る腫瘍量の低減を示し、これらのマウスにおける腫瘍クリアランスの開始を指し示す。
【0150】
図29は、各群におけるマウスのそれぞれについての個々の腫瘍成長曲線を示す。
【0151】
図30は、マウスのワクチンおよび対照群の腫瘍中のCD8腫瘍浸潤性リンパ球(T
IL)のパーセンテージを示す。ワクチン接種は、腫瘍中の総細胞の割合としてCD3
CD8 TILを増加させる。
【0152】
図33および図34は、算出され、細胞数および腫瘍重量に対して正規化された絶対的
なTIL数を示す。
【0153】
図36および図37は、ChAdOxプライム後11日目の早期の時点において評価さ
れた場合に、αPD-1治療の追加がどのようにChAdOx/MVAワクチン接種によ
りプライムされたP1A特異的応答をブーストするようであるのかを示す。
【0154】
図46は、腫瘍におけるP1A特異的TEM CD8の浸潤はどのようにP1A特異
的CD8と同じパターンに従うのかを示す。
【0155】
全体として、図27~53の結果は、対照と比較してマウスのワクチン群におけるCD
CD8 TILの増加およびP1A特異的TILの増加と共に、ワクチンがどのよ
うに腫瘍のT細胞浸潤を増加させるのかを示す。
【0156】
また、CD3CD8 TILは主に、エフェクターメモリー細胞TEM(CD62
CD44)およびTCM(CD62LCD44)である。
【0157】
さらに、P1A特異的TILはワクチン群においてPD-1を発現するが、発現はαP
D1遮断と共に減少する。
【0158】
本明細書において参照されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列
ある特定のタンパク質またはポリペプチドが本明細書において参照され、これらについ
ての参照ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列は、本明細書の部分として提出される
添付の配列表において提供される。配列の一部をアノテーション付けして、以下のように
さらなる情報を提供する:
ヒトHLAクラスII組織適合性抗原ガンマ鎖(li)UniProtKB/Swiss
-Prot:P04233.3。下線を引いた配列部分はベクターにおいて使用される膜
貫通ドメインを表す:
【0159】
【化1】
ヒト組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)。示される下線を引いた配列部分はベ
クターにおいて使用されるリーダー配列である。
【0160】
【化2】
ベクターChAdOx1_MAGE_NYESOのポリヌクレオチド構築物。MAGEA
3に下線を引いている。リンカーを太字としている。NY-ESO-1を斜体としている
【0161】
【化3】
ChAdOx1_MAGE_NYESOの翻訳されたタンパク質。MAGEA3に下線を
引いている。リンカーを太字としている。NY-ESO-1を斜体としている:
【0162】
【化4】
ベクターChAdOx1_hIi_MAGE_NY-ESO-1のポリヌクレオチド構築
物。li配列を太字とし、斜体文字としている。MAGEA3に下線を引いている。配列
リンカーを太字としている。NY-ESO-1を斜体としている:
【0163】
【化5】
ChAdOx1_hIi_MAGE_NY-ESO-1の翻訳されたタンパク質配列。l
i配列を太字とし、斜体文字としている。MAGEA3に下線を引いている。リンカーを
太字としている。NY-ESO-1を斜体としている:
【0164】
【化6】
ベクターChAdOx1_tPA_MAGE_NY-ESO-1のポリヌクレオチド構築
物。tPA配列を太字とし、斜体文字としている。MAGEA3に下線を引いている。リ
ンカーを太字としている。NY-ESO-1を斜体としている:
【0165】
【化7】
ChAdOx1_tPA_MAGE_NY-ESO-1の翻訳されたタンパク質。tPA
配列を太字とし、斜体文字としている。MAGEA3に下線を引いている。リンカーを太
字としている。NY-ESO-1を斜体としている:
【0166】
【化8】
ベクターMVA_tPA_MAGEA3のポリヌクレオチド構築物。tPAに下線を引い
ている:
【0167】
【化9】
MVA_tPA_MAGEA3の翻訳されたタンパク質。tPAに下線を引いている:
【0168】
【化10】
ベクターMVA_tPA_NYESOのポリヌクレオチド構築物。tPAに下線を引いて
いる:
【0169】
【化11】
MVA_tPA_NYESOの翻訳されたタンパク質。tPAに下線を引いている:
【0170】
【化12】
ベクターChAdOx1_mIi_P1Aのポリヌクレオチド構築物。Ii配列に下線を
引いている:
【0171】
【化13】
ChAdOx1_mIi_P1Aの翻訳されたタンパク質。Ii配列に下線を引いている
【0172】
【化14】
【0173】
本明細書の記載および特許請求の範囲の全体を通じて、「含む」および「含有する」と
いう語ならびにそれらのバリエーションは、「含むがそれに限定されない」を意味し、そ
れらは、他の部分、添加物、成分、整数またはステップを除外することを意図しない(お
よび除外しない)。本明細書の記載および特許請求の範囲の全体を通じて、文脈が他に要
求しなければ、単数は複数を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、文脈が他に要
求しなければ、本明細書は、複数の他に単数を想定するものと理解されるべきである。
【0174】
本発明の特定の態様、実施形態または例と組み合わせて記載される特色、整数、特徴、
化合物、化学的部分または基は、それと不適合でなければ、本明細書に記載の任意の他の
態様、実施形態または例に適用可能であることが理解されるべきである。本明細書(任意
の添付の特許請求の範囲、要約書および図面を含む)に開示される特色の全て、ならびに
/またはそのように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップの全ては、そのよ
うな特色および/またはステップの少なくとも一部が互いに排他的である組合せを除いて
、任意の組合せで組み合わせられてもよい。本発明は、いかなる以上の実施形態の詳細に
も制限されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書および図面
を含む)に開示される特色の任意の新規の1つ、もしくは任意の新規の組合せ、またはそ
のように開示される任意の方法もしくはプロセスのステップの任意の新規の1つ、もしく
は任意の新規の組合せに拡張される。
【0175】
本出願との繋がりで本明細書と同時にまたはそれに先行して提出され、本明細書と共に
公衆に閲覧される全ての書類および文書に対して読者の注意が向けられ、全てのそのよう
な書類および文書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20-1】
図20-2】
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
【配列表】
2024150469000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子をカプシドで包んだチンパンジーアデノウイルス(ChAd)ベクターであっ
て、前記核酸分子が、(i)MAGEがん抗原の免疫原性断片;(ii)NY-ESO-
1がん抗原もしくはその免疫原性断片;(iii)MAGEがん抗原もしくはその免疫原
性断片、およびNY-ESO-1がん抗原もしくはその免疫原性断片、(v)LAGE
1がん抗原もしくはその免疫原性断片、または(v)MAGEがん抗原もしくはその免疫
原性断片およびLAGE1がん抗原もしくはその免疫原性断片含むがん抗原(複数可)
コードするポリヌクレオチド配列であって、前記がん抗原(複数可)が、動物細胞にお
いて前記がん抗原(複数可)の翻訳、転写および/または発現を指令する発現制御配列に
作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列、ならびにアデノウイルスパッケー
ジングシグナル配列を含む、ChAdベクター。
【請求項2】
(a)国際公開第2012/172277号パンフレットに開示されたChAdOx1
;好ましくは、国際公開第2012/172277号パンフレットに開示された配列番号
38のポリヌクレオチドもしくはそれと少なくとも80%の同一性を有する配列によりコ
ードされるChAdOx1、または(b)国際公開第2017/221031号パンフレ
ットに開示されたChAdOx2;好ましくは、国際公開第2017/221031号パ
ンフレットに開示された配列番号10のポリヌクレオチドもしくはそれと少なくとも80
%の同一性を有する配列によりコードされるChAdOx2である、請求項1に記載のC
hAdベクター。
【請求項3】
核酸分子をカプシドで包んだ改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)ベクターであ
って、前記核酸分子が、(i)MAGEがん抗原の免疫原性断片、(ii)NY-ESO
-1がん抗原もしくはその免疫原性断片、(iii)MAGEがん抗原の免疫原性断片
びNY-ESO-1がん抗原の免疫原性断片、(iv)LAGE1がん抗原もしくはそ
の免疫原性断片、または(v)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片およびLAG
E1がん抗原もしくはその免疫原性断片、を含むがん抗原(複数可)をコードするポリヌ
クレオチド配列を含み前記がん抗原(複数可)が、動物細胞において前記がん抗原また
はその断片の翻訳、転写および/または発現を指令する発現制御配列に作動可能に連結し
ている、MVAベクター。
【請求項4】
国際公開第2011/128704号パンフレットまたは欧州特許出願公開第2044
947号明細書に開示された通りのものである、請求項3に記載のMVAベクター。
【請求項5】
(a)前記MAGE抗原が、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも46
%、好ましくは少なくとも69%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有する配
列、もしくはその任意の免疫原性断片の配列を有するMAGE 3Aである、および/ま
たは
(b)前記NY-ESO-1がん抗原が、配列番号3のアミノ酸配列、またはそれと少
なくとも75%、好ましくは少なくとも76.7%の同一性を有する配列、もしくはその
任意の免疫原性断片の配列を有する、および/または
(c)前記LAGE1がん抗原が、配列番号5のアミノ酸配列、またはそれと少なくと
も78%、好ましくは少なくとも97%の同一性を有する配列、もしくはその任意の免疫
原性断片の配列を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のChAdまたはMVAベ
クター。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号6のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも7
9%の同一性を有する配列、もしくはその断片の配列を有するヒトHLAクラスII組織
適合性抗原ガンマ鎖(li)をさらにコードし、それにより、前記がん抗原が、liとの
融合物またはその断片として動物細胞中で発現され、
好ましくは、前記断片が膜貫通ドメインであり、より好ましくは、前記膜貫通ドメイン
が、アミノ酸残基30~55または30~61を含み、よりいっそう好ましくは、前記膜
貫通ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、請求項1~のいずれか一項に記
載のChAdまたはMVAベクター。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも8
1%の同一性を有する配列、もしくはその断片の配列を有するtPAをさらにコードし、
それにより、前記がん抗原が、tPAとの融合物またはその断片として動物細胞中で発現
され、好ましくは、前記断片が、21アミノ酸のリーダー配列を含み、より好ましくは、
前記21アミノ酸のリーダー配列が配列番号9である、請求項1~のいずれか一項に記
載のChAdまたはMVAベクター。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチド配列が、融合タンパク質として動物細胞中で発現される、(i)
MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片およびNY-ESO-1がん抗原もしくはそ
の免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片およびLA
GE1がん抗原もしくはその免疫原性断片をコードする、請求項1~のいずれか一項に
記載のChAdベクター。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチド配列が、融合タンパク質として動物細胞中で発現される、(i)
MAGEがん抗原の免疫原性断片および/もしくはNY-ESO-1がん抗原の免疫原性
断片、または(ii)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片および/もしくはLA
GE1がん抗原もしくはその免疫原性断片をコードし、前記MAGEがん抗原、NY-
ESO-1がん抗原またはLAGE1がん抗原のうちの少なくとも1つが断片であり、場
合により、前記MAGEがん抗原およびNY-ESO-1、またはMAGEがん抗原およ
びLAGE1が免疫原性断片である、請求項1~7のいずれかに記載のMVAベクター。
【請求項10】
前記MAGEがん抗原およびNY-ESO-1またはMAGEがん抗原およびLAGE
1が免疫原性断片であ
好ましくは、前記ポリヌクレオチド配列が、発現された場合に、前記MAGEおよびN
Y-ESO-1もしくはLAGE1がん抗原またはその断片をいずれかの順序において融
合タンパク質として連結する、5~9アミノ酸のリンカー、好ましくは、アミノ酸配列G
GGPGGGを有するリンカーをコードする、請求項8または9に記載のChAdまたは
MVAベクター。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のChAdまたはMVAベクターを含場合に
より、アジュバントをさらに含む免疫原性組成物。
【請求項12】
請求項1~もしくは10のいずれかに記載のChAdベクター、または請求項3~
または請求項9もしくは10のいずれかに記載のMVAベクターをコードする配列を含
場合により、ヒトコドン用法についてコドン最適化されている、単離されたポリヌクレ
オチド。
【請求項13】
(a)(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ESO-1がん抗原またはそれ
らの免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/もしくはLAGE1がん抗
原またはそれらの免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列であって、動物細胞に
おいて前記がん抗原もしくはその断片の翻訳、転写、および/もしくは発現を指令する発
現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列、およびアデノウイル
スパッケージングシグナル配列を含む核酸分子をカプシドで包んだChAdベクター、ま
たは
(b)(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ESO-1がん抗原またはその
免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/もしくはLAGE1がん抗原ま
たはそれらの免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列であって、動物細胞におい
て前記がん抗原もしくはその断片の翻訳、転写、および/もしくは発現を指令する発現制
御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列を含む核酸分子をカプシド
で包んだMVAベクター
をコードする配列を含むポリヌクレオチドを含む、細菌人工染色体(BAC)クローン。
【請求項14】
(a)ChAdベクターが請求項2~8または請求項10のいずれかに記載のものであ
るか、または(b)MVAベクターが請求項3~7、9または10のいずれかに記載のも
のであり、場合により、前記ポリヌクレオチド配列がヒトコドン用法のために最適化され
ている、請求項13に記載のBACクローン。
【請求項15】
請求項1~10のいずれかに記載のChAdおよび/またはMVAベクターを含む、単
離された宿主細胞。
【請求項16】
んを予防または治療するための医薬の製造のための請求項1、2、5~8、または
のいずれかに記載のChAdベクターの使用。
【請求項17】
がんを予防または治療するための医薬の製造のための請求項3~7、請求項9または
のいずれかに記載のMVAベクターの使用
【請求項18】
がんの予防または治療のための医薬の製造のためのChAdベクターおよびMVAベク
ターの使用であって前記ChAdベクター及びMVAベクターが、別々に、逐次的にま
たは同時に、それを必要とする患者に投与され
(a)前記ChAdベクターが、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ES
O-1がん抗原またはそれらの免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/
もしくはLAGE1がん抗原またはそれらの免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド
配列であって、動物細胞において前記がん抗原もしくはその断片の翻訳、転写、および/
もしくは発現を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド
配列、およびアデノウイルスパッケージングシグナル配列を含む核酸分子をカプシドで包
んでいる、または
(b)前記MVAベクターが、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ESO
-1がん抗原またはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/もしく
はLAGE1がん抗原またはそれらの免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列で
あって、動物細胞において前記がん抗原もしくはその断片の翻訳、転写、および/もしく
は発現を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列を
含む核酸分子をカプシドで包んでいる使用
【請求項19】
がんの治療のための前記ChAdベクターまたはMVAベクターを用いた1つまたは複
数のチェックポイント阻害剤の投与をさらに含み、場合により、前記チェックポイント阻
害剤が、ベクターと同時に、別々にまたは並行して投与される、請求項18に記載の使用
【請求項20】
前記患者が、化学療法および/または放射線療法治療を受けた、受けている、または受
ようとしている、請求項1618のいずれかに記載の使用
【請求項21】
(a)前記ChAdベクターが最初に投与される、および/または
(b)前記ChAdおよびMVAベクターが、それぞれ1回より多く投与される、およ
び/または
(c)前記ChAdおよびMVAベクターが交互に投与される、および/または
(d)ベクターの各投与の間の期間が、5日~8週の範囲内、好ましくは3週である
請求項1820のいずれかに記載の使用
【請求項22】
(a)前記チェックポイント阻害剤が、PD-1、CTLA-4またはPD-L1を遮
断する、または
(b)前記チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ
、トレメリムマブもしくはアテゾリズマブ、デュルバルマブまたはアベルマブから選択さ
れる、請求項1921のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキン
リンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、小細胞肺がん、腎臓、頭頸部、肉腫、または乳房の
がんである、請求項1921のいずれかに記載の使用
【請求項24】
hAdベクター、MVAベクター、化学療法剤、およびチェックポイント阻害剤の、
がんの予防または治療のための医薬の製造における使用であって、前記ChAdベクター
、MVAベクター、化学療法剤、およびチェックポイント阻害剤が、それを必要とする患
者への別々の、逐次的なまたは同時の投与のためのものであり
(a)前記ChAdベクターが、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ES
O-1がん抗原またはそれらの免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/
もしくはLAGE1がん抗原またはそれらの免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド
配列であって、動物細胞において前記がん抗原もしくはその断片の翻訳、転写、および/
もしくは発現を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド
配列、およびアデノウイルスパッケージングシグナル配列を含む核酸分子をカプシドで包
んでいる、または
(b)前記MVAベクターが、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ESO
-1がん抗原またはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/もしく
はLAGE1がん抗原またはそれらの免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列で
あって、動物細胞において前記がん抗原もしくはその断片の翻訳、転写、および/もしく
は発現を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列を
含む核酸分子をカプシドで包んでいる、使用
【請求項25】
前記化学療法剤が、(b)パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲムシタビ
ン、エトポシドまたはペメトレキセドのうちの1つと組み合わせた(a)カルボプラチン
またはシスプラチンから選択され、場合により、
(i)前記チェックポイント阻害剤がPD-1であおよび/または
(ii)前記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)もしくは小細胞肺がん(SCLC
)、黒色腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、小細胞
肺がん、腎臓、頭頸部、肉腫または乳がんから選択されるがんである、請求項24に記載
使用
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本開示は以下の[1]から[48]を含む。
[1]核酸分子をカプシドで包んだチンパンジーアデノウイルス(ChAd)ベクターで
あって、上記核酸分子が、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ESO-1が
ん抗原、もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/もしくは
LAGE1がん抗原、もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列であ
って、動物細胞において上記がん抗原またはその断片の翻訳、転写および/または発現を
指令する発現制御配列に作動可能に連結している、上記ポリヌクレオチド配列、ならびに
アデノウイルスパッケージングシグナル配列を含む、ChAdベクター。
[2](a)国際公開第2012/172277号パンフレットに開示されたChAdO
x1;好ましくは、国際公開第2012/172277号パンフレットに開示された配列
番号38のポリヌクレオチドもしくはそれと少なくとも80%の同一性を有する配列によ
りコードされるChAdOx1、または(b)国際公開第2017/221031号パン
フレットに開示されたChAdOx2;好ましくは、国際公開第2017/221031
号パンフレットに開示された配列番号10のポリヌクレオチドもしくはそれと少なくとも
80%の同一性を有する配列によりコードされるChAdOx2である、上記[1]に記
載のChAdベクター。
[3]核酸分子をカプシドで包んだ改変ワクシニアウイルスアンカラ(MVA)ベクター
であって、上記核酸分子が、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ESO-1
がん抗原、もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/もしく
はLAGE1がん抗原、もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド配列で
あって、動物細胞において上記がん抗原またはその断片の翻訳、転写および/または発現
を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、上記ポリヌクレオチド配列を含む、
MVAベクター。
[4]国際公開第2011/128704号パンフレットまたは欧州特許出願公開第20
44947号明細書に開示された通りのものである、上記[3]に記載のMVAベクター

[5]上記MAGE抗原が、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも46%
、好ましくは少なくとも69%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有する配列
、もしくはその任意の免疫原性断片の配列を有するMAGE 3Aである、上記[1]~
[4]のいずれか一項に記載のChAdまたはMVAベクター。
[6]上記NY-ESO-1がん抗原が、配列番号3のアミノ酸配列、またはそれと少な
くとも75%、好ましくは少なくとも76.7%の同一性を有する配列、もしくはその任
意の免疫原性断片の配列を有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のChAd
またはMVAベクター。
[7]上記LAGE1がん抗原が、配列番号5のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも
78%、好ましくは少なくとも97%の同一性を有する配列、もしくはその任意の免疫原
性断片の配列を有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のChAdまたはMV
Aベクター。
[8]上記ポリヌクレオチド配列が、配列番号6のアミノ酸配列、またはそれと少なくと
も79%の同一性を有する配列、もしくはその断片の配列を有するヒトHLAクラスII
組織適合性抗原ガンマ鎖(li)をさらにコードし、それにより、上記がん抗原が、li
との融合物またはその断片として動物細胞中で発現され、
好ましくは、上記断片が膜貫通ドメインであり、より好ましくは、上記膜貫通ドメイン
が、アミノ酸残基30~55または30~61を含み、よりいっそう好ましくは、上記膜
貫通ドメインが、配列番号7のアミノ酸配列を有する、上記[1]~[7]のいずれか一
項に記載のChAdまたはMVAベクター。
[9]上記ポリヌクレオチド配列が、配列番号8のアミノ酸配列、またはそれと少なくと
も81%の同一性を有する配列、もしくはその断片の配列を有するtPAをさらにコード
し、それにより、上記がん抗原が、tPAとの融合物またはその断片として動物細胞中で
発現され、好ましくは、上記断片が、21アミノ酸のリーダー配列を含み、より好ましく
は、上記21アミノ酸のリーダー配列が配列番号9である、上記[1]~[8]のいずれ
か一項に記載のChAdまたはMVAベクター。
[10]上記ポリヌクレオチド配列が、融合タンパク質として動物細胞中で発現される、
(i)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片およびNY-ESO-1がん抗原もし
くはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片およ
びLAGE1がん抗原もしくはその免疫原性断片をコードする、上記[1]~[9]のい
ずれか一項に記載のChAdベクター。
[11]上記ポリヌクレオチド配列が、融合タンパク質として動物細胞中で発現される、
(i)MAGEがん抗原もしくはその免疫原性断片および/もしくはNY-ESO-1が
ん抗原もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原もしくはその免疫原
性断片および/もしくはLAGE1がん抗原もしくはその免疫原性断片をコードし、上記
MAGEがん抗原、NY-ESO-1がん抗原またはLAGE1がん抗原のうちの少なく
とも1つが断片である、上記[1]~[9]のいずれかに記載のMVAベクター。
[12]上記MAGEがん抗原およびNY-ESO-1またはMAGEがん抗原およびL
AGE1が免疫原性断片である、上記[11]に記載のMVAベクター。
[13]上記ポリヌクレオチド配列が、発現された場合に、上記MAGEおよびNY-E
SO-1もしくはLAGE1がん抗原またはその断片をいずれかの順序において融合タン
パク質として連結する、5~9アミノ酸のリンカー、好ましくは、アミノ酸配列GGGP
GGGを有するリンカーをコードする、上記[10]~[12]のいずれかに記載のCh
AdまたはMVAベクター。
[14]上記[1]~[13]のいずれか一項に記載のChAdまたはMVAベクターを
含む、免疫原性組成物。
[15]アジュバントをさらに含む、上記[14]に記載の組成物。
[16]上記[1]~[10]もしくは[13]のいずれかに記載のChAdベクター、
または上記[3]~[9]もしくは[11]~[13]のいずれかに記載のMVAベクタ
ーをコードする配列を含む、単離されたポリヌクレオチド。
[17]ヒトコドン用法についてコドン最適化されている、上記[16]に記載の単離さ
れたポリヌクレオチド。
[18]上記[16]または[17]に記載のポリヌクレオチドを含む、細菌人工染色体
(BAC)クローン。
[19]上記[1]~[13]のいずれかに記載のChAdおよび/またはMVAベクタ
ーを含む、単離された宿主細胞。
[20]個体においてがんを予防または治療する方法であって、有効量の上記[1]~[
10]または[13]のいずれかに記載のChAdベクターを投与すること、および有効
量の上記[3]~[9]または[11]~[13]のいずれかに記載のMVAベクターを
投与することを含み、それにより、上記個体の適応免疫系が刺激されて、抗がん免疫応答
が提供される、方法。
[21]上記ChAdおよびMVAベクターの上記投与が、別々に、逐次的にまたは同時
に実行される、上記[20]に記載のがんを予防または治療する方法。
[22]有効量の1つまたは複数のチェックポイント阻害剤の投与をさらに含む、上記[
20]または[21]に記載の方法。
[23]上記チェックポイント阻害剤が、上記ChAdおよびMVAベクターと同時に、
別々にまたは並行して投与される、上記[20]~[22]のいずれかに記載の方法。
[24]上記個体が、化学療法および/または放射線療法治療を受けた、受けている、ま
たは受ける個体である、上記[20]~[23]のいずれかに記載の方法。
[25]上記ChAdベクターが最初に投与される、上記[20]~[24]のいずれか
に記載の方法。
[26]上記ChAdおよびMVAベクターが、それぞれ1回より多く投与される、上記
[20]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27]上記ChAdおよびMVAベクターが交互に投与される、上記[20]~[26
]のいずれかに記載の方法。
[28]ベクターの各投与の間の期間が、5日~8週の範囲内、好ましくは1週である、
上記[20]~[27]のいずれかに記載の方法。
[29]上記チェックポイント阻害剤が、PD-1、CTLA-4またはPD-L1を遮
断する、上記[22]~[28]のいずれかに記載の方法。
[30]上記チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ
、トレメリムマブもしくはアテゾリズマブ、デュルバルマブまたはアベルマブから選択さ
れる、上記[22]~[28]のいずれかに記載の方法。
[31]上記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、ホジキンリンパ腫、非ホ
ジキンリンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、小細胞肺がん、腎臓、頭頸部、肉腫、または
乳房のがんである、上記[22]~[28]のいずれかに記載の方法。
[32]がんの予防または治療において使用するための、上記[1]、[2]、[5]~
[10]または[13]のいずれかに記載のChAdベクター。
[33]がんの予防または治療において使用するための、上記[3]~[9]または[1
1]~[13]のいずれかに記載のMVAベクター。
[34]がんの予防または治療のための患者への別々の、逐次的なまたは同時の投与のた
めの、上記[1]、[2]、[5]~[10]または[13]のいずれかに記載のChA
dベクター、および上記[3]~[9]または[11]~[13]のいずれかに記載のM
VAベクター。
[35]がんの治療のためにChAdおよびMVAベクターと共に投与するための1つま
たは複数のチェックポイント阻害剤をさらに含む、上記[34]に記載のがんの予防また
は治療において使用するためのChAdおよびMVAベクター。
[36]上記チェックポイント阻害剤が、ベクターと同時に、別々にまたは並行して投与
される、上記[35]に記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdお
よびMVAベクター。
[37]患者が、化学療法を受けた、受けているまたは受ける患者である、上記[31]
~[33]のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdお
よびMVAベクター。
[38]上記ChAdベクターが最初に投与される、上記[34]~[36]のいずれか
に記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdおよびMVAベクター。
[39]上記ChAdおよびMVAベクターが、それぞれ1回より多く投与される、上記
[34]~[38]のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用するためのC
hAdおよびMVAベクター。
[40]上記ChAdおよびMVAベクターが交互に投与される、上記[34]~[39
]のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用するためのChAdおよびMV
Aベクター。
[41]ベクターの各投与の間の期間が、5日~8週の範囲内、好ましくは1週である、
上記[34]~[40]のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用するため
のChAdおよびMVAベクター。
[42]上記チェックポイント阻害剤が、PD-1、CTLA-4またはPD-L1を遮
断する、上記[35]~[41]のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用
するためのChAdおよびMVAベクター。
[43]上記チェックポイント阻害剤が、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブ
、トレメリムマブもしくはアテゾリズマブ、デュルバルマブまたはアベルマブから選択さ
れる、上記[35]~[41]のいずれかに記載のがんの予防または治療において使用す
るためのChAdおよびMVAベクター。
[44]上記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)、黒色腫、ホジキンリンパ腫、非ホ
ジキンリンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、小細胞肺がん、腎臓、頭頸部、肉腫または乳
房のがんである、上記[35]~[41]のいずれかに記載のがんの予防または治療にお
いて使用するためのChAdおよびMVAベクター。
[45]がんの予防または治療のための患者への別々の、逐次的なまたは同時の投与のた
めの、上記[1]、[2]、[5]~[10]または[13]のいずれかに記載のChA
dベクター、上記[3]~[9]または[11]~[13]のいずれかに記載のMVAベ
クター、化学療法剤、およびチェックポイント阻害剤。
[46]上記化学療法剤が、(b)パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ゲム
シタビン、エトポシドまたはペメトレキセドのうちの1つと組み合わせた(a)カルボプ
ラチンまたはシスプラチンから選択される、上記[45]に記載のChAdベクター、M
VAベクター、化学療法剤およびチェックポイント阻害剤。
[47]上記チェックポイント阻害剤がPD-1である、上記[45]または[46]に
記載のChAdベクター、MVAベクター、化学療法剤およびチェックポイント阻害剤。
[48]上記がんが、非小細胞肺がん(NSCLC)もしくは小細胞肺がん(SCLC)
、黒色腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、尿路(尿路上皮)、膀胱、小細胞肺
がん、腎臓、頭頸部、肉腫または乳がんから選択されるがんである、上記[45]~[4
7]のいずれかに記載のChAdベクター、MVAベクター、化学療法剤およびチェック
ポイント阻害剤。
本発明によれば、核酸分子をカプシドで包んだチンパンジーアデノウイルス(ChAd
)ベクターであって、核酸分子が、(i)MAGEがん抗原および/もしくはNY-ES
O-1がん抗原、もしくはその免疫原性断片、または(ii)MAGEがん抗原および/
もしくはLAGE1がん抗原、もしくはその免疫原性断片をコードするポリヌクレオチド
配列であって、動物細胞においてがん抗原またはその断片の翻訳、転写および/または発
現を指令する発現制御配列に作動可能に連結している、前記ポリヌクレオチド配列、なら
びにアデノウイルスパッケージングシグナル配列を含む、ChAdベクターが提供される
。有利には、そのようなChAdウイルスベクターは、安定かつ十分に研究されており、
ヒトアデノウイルスに対する抗体により中和されず、かつ複製欠損性となるように操作さ
れている。それらは、挿入される目的の抗原のために高容量を有し、アデノウイルスE1
遺伝子を含有するHEK293細胞中で製造することができる。
【外国語明細書】