(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150485
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241016BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20241016BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241016BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20241016BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20241016BHJP
G02F 1/1368 20060101ALI20241016BHJP
C23C 14/08 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
H01L29/78 612C
H01L29/78 618B
H01L29/78 616S
H01L27/06 102A
H01L27/04 C
H01L21/316 C
H01L21/318 C
G02F1/1368
C23C14/08 K
C23C14/08 C
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107301
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2023173508の分割
【原出願日】2014-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2013173867
(32)【優先日】2013-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014038563
(32)【優先日】2014-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅博
(72)【発明者】
【氏名】神長 正美
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気特性の優れたトランジスタ及び開口率が高く、且つ、電荷容量を増大させる容量素子を有する半導体装置を提供する。
【解決手段】絶縁表面上にトランジスタ102及び容量素子105を有する半導体装置であって、トランジスタは、ゲート電極(導電膜13)と、ゲート電極と重なる酸化物半導体膜19aと、ゲート電極及び酸化物半導体膜の間のゲート絶縁膜(窒化物絶縁膜15及び酸化物絶縁膜17)と、酸化物半導体膜に接する一対の電極として機能する導電膜21a、21bと、酸化物半導体膜に接する酸化物絶縁膜23、25と、酸化物絶縁膜上の金属酸化物膜27と、金属酸化物膜の開口部に形成され、且つ、導電膜21bに接して画素電極として機能する導電膜31と、が形成される。容量素子は、酸化物絶縁膜17上の導電性を有する膜19bと、導電膜31と、導電性を有する膜19bと導電膜31の間に設けられた金属酸化物膜27と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタのチャネル形成領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜の上面と接する領域を有しかつ前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方として機能する領域を有する第1の導電膜と、
前記酸化物半導体膜の上面と接する領域を有しかつ前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の他方として機能する領域を有する第2の導電膜と、
前記酸化物半導体膜の上面と接する領域と、前記第1の導電膜の上面と接する領域と、前記第2の導電膜の上面と接する領域と、を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上面と接する領域を有する第2の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と接する領域と、前記第2の絶縁膜と接する領域と、を有する第3の絶縁膜と、
画素電極として機能する領域を有する第3の導電膜と、
前記第3の絶縁膜を介して前記第3の導電膜と重なる領域を有する第4の導電膜と、
前記第4の導電膜と開口部を介さずに接する領域を有する第5の導電膜と、を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第3の導電膜と接する領域と、前記第4の導電膜と接する領域と、を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜と、を介して前記チャネル形成領域と重なる領域を有し、
前記第3の導電膜は、前記第3の絶縁膜に形成された開口部を介して前記第1の導電膜と接する領域を有し、
前記第2の導電膜は、平面視において、第1の方向に延伸する領域を有し、
前記第5の導電膜は、平面視において、前記第1の方向に沿って延伸する領域を有し、
前記第5の導電膜は、前記ソース電極又は前記ドレイン電極と同じ材料を有し、
前記第3の導電膜は、前記第5の導電膜と重なる領域を有さない半導体装置。
【請求項2】
トランジスタのチャネル形成領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜の上面と接する領域を有しかつ前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の一方として機能する領域を有する第1の導電膜と、
前記酸化物半導体膜の上面と接する領域を有しかつ前記トランジスタのソース電極又はドレイン電極の他方として機能する領域を有する第2の導電膜と、
前記酸化物半導体膜の上面と接する領域と、前記第1の導電膜の上面と接する領域と、前記第2の導電膜の上面と接する領域と、を有する第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上面と接する領域を有する第2の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜と接する領域と、前記第2の絶縁膜と接する領域と、を有する第3の絶縁膜と、
画素電極として機能する領域を有する第3の導電膜と、
前記第3の絶縁膜を介して前記第3の導電膜と重なる領域を有する第4の導電膜と、
前記第4の導電膜と開口部を介さずに接する領域を有する第5の導電膜と、を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第3の導電膜と接する領域と、前記第4の導電膜と接する領域と、前記第5の導電膜と接する領域と、を有し、
前記第3の絶縁膜は、前記第1の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜と、を介して前記チャネル形成領域と重なる領域を有し、
前記第3の導電膜は、前記第3の絶縁膜に形成された開口部を介して前記第1の導電膜と接する領域を有し、
前記第2の導電膜は、平面視において、第1の方向に延伸する領域を有し、
前記第5の導電膜は、平面視において、前記第1の方向に沿って延伸する領域を有し、
前記第5の導電膜は、前記ソース電極又は前記ドレイン電極と同じ材料を有し、
前記第3の導電膜は、前記第5の導電膜と重なる領域を有さない半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシ
ン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特
に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、それらの駆動方法
、または、それらの製造方法に関する。特に、本発明の一態様は、酸化物半導体となりう
る材料を有する膜を電極として有する容量素子及びその作製方法に関する。または、本発
明の一態様は、酸化物半導体膜を有するトランジスタを備えた半導体装置及びその作製方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(薄膜トランジスタ(TFT)と
もいう。)を構成する技術が注目されている。該トランジスタは、集積回路(IC)や画
像表示装置(表示装置)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適
用可能な半導体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料と
して酸化物半導体が注目されている。
【0003】
例えば、トランジスタの活性層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)及び亜
鉛(Zn)を含む酸化物半導体を用いたトランジスタが開示されている(特許文献1参照
)。
【0004】
また、トランジスタの活性層に用いる酸化物半導体膜を、積層構造とすることで、キャ
リアの移動度を向上させる技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
ところで、酸化物半導体においては、水素などの不純物の侵入により、電気的に浅いド
ナー準位が形成され、キャリアとなる電子が発生することが指摘されている。この結果、
酸化物半導体を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスシフトしノーマリーオン
型となってしまい、ゲートに電圧を印加していない状態(つまりオフ状態)におけるリー
ク電流が増大する。そのため、水素のブロッキング性を有する酸化アルミニウム膜を酸化
物半導体膜のチャネル領域、ソース電極及びドレイン電極を被覆するように、基板の全面
にわたって設けることで、酸化物半導体膜への水素の侵入を抑制し、リーク電流の発生を
抑制している(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-165528号公報
【特許文献2】特開2011-138934号公報
【特許文献3】特開2010-16163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化物半導体膜に含まれる欠陥として、酸素欠損がある。例えば、膜中に酸素欠損が含
まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナス方向に変動
しやすく、ノーマリーオン特性となりやすい。これは、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠
損に起因して電荷が生じ、低抵抗化するためである。トランジスタがノーマリーオン特性
を有すると、動作時に動作不良が発生しやすくなる、または非動作時の消費電力が高くな
るなどの、様々な問題が生じる。また、経時変化やストレス試験による、トランジスタの
電気特性、代表的にはしきい値電圧の変動量が増大するという問題がある。
【0008】
一方、一般的に、酸化アルミニウム膜はスパッタリング法または原子層堆積法(ALD
:Atomic Layer Deposition)により成膜することができる。し
かしながら、酸化アルミニウムターゲットを用いたスパッタリング法で酸化アルミニウム
膜を成膜すると、アーキングが生じてしまい、微粒子(パーティクルともいう。)が生成
されてしまう。堆積膜への微粒子の混入は、歩留まり低下の原因となる。
【0009】
また、原子層堆積法による酸化アルミニウム膜の成膜方法は、トリメチルアルミニウム
(TMA)と水蒸気を交互に処理室に導入するため、成膜時間が長くなり、スループット
の低下の一因となる。
【0010】
そこで、本発明の一態様は、電気特性の優れたトランジスタを有する半導体装置を提供
する。または、開口率が高く、且つ電荷容量を増大させることが可能な容量素子を有する
半導体装置を提供する。または、歩留まり高く半導体装置を作製する方法を提供する。ま
たは、生産性の高い半導体装置の作製方法を提供する。または、新規な半導体装置の作製
方法を提供する。または、新規な半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、酸化物半導体となりうる材料を有する膜、代表的には、インジウム
及びM(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)を含む膜と、透光性を
有する導電膜と、酸化物半導体となりうる材料を有する膜及び透光性を有する導電膜の間
に設けられる金属酸化物膜とを有する容量素子である。
【0012】
また、本発明の一態様は、絶縁表面上にトランジスタ及び容量素子を有する半導体装置
であって、トランジスタは、ゲート電極と、ゲート電極と重なる酸化物半導体膜と、ゲー
ト電極及び酸化物半導体膜の間のゲート絶縁膜と、酸化物半導体膜に接する一対の電極と
して機能する第1の導電膜と、を有する。また、酸化物半導体膜に接する酸化物絶縁膜と
、酸化物絶縁膜上の金属酸化物膜と、金属酸化物膜の開口部において形成され且つ第1の
導電膜に接する、画素電極として機能する第2の導電膜とを有する。また、容量素子は、
ゲート絶縁膜上の導電性を有する膜と、第2の導電膜と、導電性を有する膜と第2の導電
膜の間に設けられた金属酸化物膜と、を有する。
【0013】
なお、金属酸化物膜は、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸
化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化
ハフニウム、酸化チタン、酸化タンタル、または酸化窒化タンタルで形成される。また、
金属酸化物膜は、分離されていてもよい。
【0014】
酸化物半導体膜及び導電性を有する膜は、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、また
はIn-M-Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)で形成
される。また、導電性を有する膜は、酸化物半導体膜に含まれる金属元素を有する。
【0015】
酸化物半導体膜及び導電性を有する膜は、第1の膜及び第2の膜を含む多層構造であり
、第1の膜は、第2の膜と金属元素の原子数比が異なってもよい。
【0016】
酸化物絶縁膜は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を
有する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、TDS(
Thermal Desorption Spectroscopy)分析において、表
面温度が100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の加熱処理におけ
る酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上である
。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、電気特性の優れたトランジスタを有する半導体装置を提供する
ことができる。または、本発明の一態様により、開口率が高く、且つ電荷容量を増大させ
ることが可能な容量素子を有する半導体装置を提供することができる。または、本発明の
一態様により、歩留まり高く半導体装置を作製することができる。または、本発明の一態
様により、生産性高く半導体装置を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】半導体装置の一形態を説明するブロック図及び回路図である。
【
図2】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図3】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図4】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図5】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図6】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図7】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図8】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【
図9】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図10】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図11】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図12】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図13】トランジスタのバンド構造を説明する図である。
【
図14】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図15】半導体装置の作製方法の一形態を説明する上面図である。
【
図16】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図17】半導体装置の作製方法の一形態を説明する断面図である。
【
図24】酸化物半導体膜に含まれる水素の濃度を説明する図である。
【
図26】チャネル長としきい値電圧の関係を説明する図である。
【
図27】実施の形態に係る、電子機器の外観図を説明する図。
【
図29】半導体装置の一形態を説明する断面図である。
【
図30】半導体装置の一形態を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及
び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。また
、以下に説明する実施の形態及び実施例において、同一部分または同様の機能を有する部
分には、同一の符号または同一のハッチパターンを異なる図面間で共通して用い、その繰
り返しの説明は省略する。
【0020】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、または領域は、
明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されな
い。
【0021】
また、本明細書にて用いる第1、第2、第3などの用語は、構成要素の混同を避けるた
めに付したものであり、数的に限定するものではない。そのため、例えば、「第1の」を
「第2の」または「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。
【0022】
また、「ソース」や「ドレイン」の機能は、回路動作において電流の方向が変化する場
合などには入れ替わることがある。このため、本明細書においては、「ソース」や「ドレ
イン」の用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0023】
また、電圧とは2点間における電位差のことをいい、電位とはある一点における静電場
の中にある単位電荷が持つ静電エネルギー(電気的な位置エネルギー)のことをいう。た
だし、一般的に、ある一点における電位と基準となる電位(例えば接地電位)との電位差
のことを、単に電位もしくは電圧と呼び、電位と電圧が同義語として用いられることが多
い。このため、本明細書では特に指定する場合を除き、電位を電圧と読み替えてもよいし
、電圧を電位と読み替えてもよいこととする。
【0024】
本明細書において、フォトリソグラフィ工程を行った後にエッチング工程を行う場合は
、フォトリソグラフィ工程で形成したマスクは除去するものとする。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置について、図面を用いて説明する
。なお、本実施の形態では、表示装置を例にして本発明の一態様である半導体装置を説明
する。また、本実施の形態では、半導体膜として酸化物半導体膜を用いて説明する。
【0026】
図1(A)に、半導体装置の一例を示す。
図1(A)に示す半導体装置は、画素部10
1と、走査線駆動回路104と、信号線駆動回路106と、各々が平行または略平行に配
設され、且つ走査線駆動回路104によって電位が制御されるm本の走査線107と、各
々が平行または略平行に配設され、且つ信号線駆動回路106によって電位が制御される
n本の信号線109と、を有する。さらに、画素部101はマトリクス状に配設された複
数の画素103を有する。また、信号線109に沿って、各々が平行または略平行に配設
された容量線115を有する。なお、容量線115は、走査線107に沿って、各々が平
行または略平行に配設されていてもよい。また、走査線駆動回路104及び信号線駆動回
路106をまとめて駆動回路部という場合がある。
【0027】
各走査線107は、画素部101においてm行n列に配設された画素103のうち、い
ずれかの行に配設されたn個の画素103と電気的に接続される。また、各信号線109
は、m行n列に配設された画素103のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素10
3に電気的と接続される。m、nは、ともに1以上の整数である。また、各容量線115
は、m行n列に配設された画素103のうち、いずれかの列に配設されたm個の画素10
3と電気的に接続される。なお、容量線115が、走査線107に沿って、各々が平行ま
たは略平行に配設されている場合は、m行n列に配設された画素103のうち、いずれか
の行に配設されたn個の画素103に電気的と接続される。
【0028】
図1(B)、(C)は、
図1(A)に示す表示装置の画素103に用いることができる
回路構成の一例を示している。
【0029】
図1(B)に示す画素103は、液晶素子121と、トランジスタ102と、容量素子
105と、を有する。
【0030】
液晶素子121の一対の電極の一方の電位は、画素103の仕様に応じて適宜設定され
る。液晶素子121は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。また、複数の
画素103のそれぞれが有する液晶素子121の一対の電極の一方に共通の電位(コモン
電位)を与えてもよい。また、各行の画素103毎の液晶素子121の一対の電極の一方
に異なる電位を与えてもよい。
【0031】
なお、液晶素子121は、液晶の光学的変調作用によって光の透過または非透過を制御
する素子である。なお、液晶の光学的変調作用は、液晶にかかる電界(横方向の電界、縦
方向の電界又は斜め方向の電界を含む)によって制御される。なお、液晶素子121とし
ては、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメクチック液晶、サーモトロピック液晶
、ライオトロピック液晶、強誘電液晶、反強誘電液晶等が挙げられる。
【0032】
液晶素子121を有する表示装置の駆動方法としては、例えば、TNモード、VAモー
ド、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro-ce
ll)モード、OCB(Optically Compensated Birefri
ngence)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical
Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTBA(Tran
sverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。ただし、こ
れに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様々なものを用いることができる。
【0033】
また、ブルー相(Blue Phase)を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物
により液晶素子を構成してもよい。ブルー相を示す液晶は、応答速度が1msec以下と
短く、光学的等方性であるため、配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0034】
図1(B)に示す画素103の構成において、トランジスタ102のソース電極及びド
レイン電極の一方は、信号線109に電気的に接続され、他方は液晶素子121の一対の
電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ102のゲート電極は、走査線1
07に電気的に接続される。トランジスタ102は、オン状態またはオフ状態になること
により、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0035】
図1(B)に示す画素103の構成において、容量素子105の一対の電極の一方は、
電位が供給される容量線115に電気的に接続され、他方は、液晶素子121の一対の電
極の他方に電気的に接続される。なお、容量線115の電位の値は、画素103の仕様に
応じて適宜設定される。容量素子105は、書き込まれたデータを保持する保持容量とし
ての機能を有する。
【0036】
例えば、
図1(B)の画素103を有する表示装置では、走査線駆動回路104により
各行の画素103を順次選択し、トランジスタ102をオン状態にしてデータ信号のデー
タを書き込む。
【0037】
データが書き込まれた画素103は、トランジスタ102がオフ状態になることで保持
状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0038】
また、
図1(C)に示す画素103は、表示素子のスイッチングを行うトランジスタ1
33と、画素の駆動を制御するトランジスタ102と、トランジスタ135と、容量素子
105と、発光素子131と、を有する。
【0039】
トランジスタ133のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
信号線109に電気的に接続される。さらに、トランジスタ133のゲート電極は、ゲー
ト信号が与えられる走査線107に電気的に接続される。
【0040】
トランジスタ133は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデー
タの書き込みを制御する機能を有する。
【0041】
トランジスタ102のソース電極及びドレイン電極の一方は、アノード線として機能す
る配線137と電気的に接続され、トランジスタ102のソース電極及びドレイン電極の
他方は、発光素子131の一方の電極に電気的に接続される。さらに、トランジスタ10
2のゲート電極は、トランジスタ133のソース電極及びドレイン電極の他方、及び容量
素子105の一方の電極に電気的に接続される。
【0042】
トランジスタ102は、オン状態またはオフ状態になることにより、発光素子131に
流れる電流を制御する機能を有する。
【0043】
トランジスタ135のソース電極及びドレイン電極の一方はデータの基準電位が与えら
れる配線139と接続され、トランジスタ135のソース電極及びドレイン電極の他方は
、発光素子131の一方の電極、及び容量素子105の他方の電極に電気的に接続される
。さらに、トランジスタ135のゲート電極は、ゲート信号が与えられる走査線107に
電気的に接続される。
【0044】
トランジスタ135は、発光素子131に流れる電流を調整する機能を有する。例えば
、発光素子131の劣化等により、発光素子131の内部抵抗が上昇した場合、トランジ
スタ135のソース電極及びドレイン電極の一方が接続された配線139に流れる電流を
モニタリングすることで、発光素子131に流れる電流を補正することができる。配線1
39に与えられる電位としては、例えば、0Vとすることができる。
【0045】
容量素子105の一対の電極の一方は、トランジスタ102のゲート電極、及びトラン
ジスタ133のソース電極及びドレイン電極の他方と電気的に接続され、容量素子105
の一対の電極の他方は、トランジスタ135のソース電極及びドレイン電極の他方、及び
発光素子131の一方の電極に電気的に接続される。
【0046】
図1(C)に示す画素103の構成において、容量素子105は、書き込まれたデータ
を保持する保持容量としての機能を有する。
【0047】
発光素子131の一対の電極の一方は、トランジスタ135のソース電極及びドレイン
電極の他方、容量素子105の他方、及びトランジスタ102のソース電極及びドレイン
電極の他方と電気的に接続される。また、発光素子131の一対の電極の他方は、カソー
ドとして機能する配線141に電気的に接続される。
【0048】
発光素子131としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子131としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0049】
なお、配線137及び配線141の一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には
、低電源電位VSSが与えられる。
図1(C)に示す構成においては、配線137に高電
源電位VDDを、配線141に低電源電位VSSを、それぞれ与える構成としている。
【0050】
図1(C)の画素103を有する表示装置では、走査線駆動回路104により各行の画
素103を順次選択し、トランジスタ133をオン状態にしてデータ信号のデータを書き
込む。
【0051】
データが書き込まれた画素103は、トランジスタ133がオフ状態になることで保持
状態になる。さらに、トランジスタ133は、容量素子105と接続しているため、書き
込まれたデータを長時間保持することが可能となる。また、トランジスタ133により、
トランジスタ102のソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素
子131は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、
画像を表示できる。
【0052】
次に、表示装置に含まれる素子基板の具体的な構成について説明する。ここでは、画素
103に液晶素子を用いた液晶表示装置の具体的な例について説明する。ここでは、
図1
(B)に示す画素103の上面図を
図2に示す。
【0053】
なお、
図1(B)(C)では、表示素子として、液晶素子121や発光素子131を用
いた例を示したが、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。様々な表示素子
を用いることも可能である。例えば、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機物及
び無機物を含むEL素子、有機EL素子、無機EL素子)、LED(白色LED、赤色L
ED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジス
タ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバル
ブ(GLV)、プラズマディスプレイ(PDP)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メ
カニカル・システム)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル
・マイクロ・シャッター)、MIRASOL(商標登録)、IMOD(インターフェアレ
ンス・モジュレーション)素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディス
プレイ、カーボンナノチューブ、など、電気磁気的作用により、コントラスト、輝度、反
射率、透過率などが変化する表示媒体を有するものがある。EL素子を用いた表示装置の
一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例とし
ては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレ
イ(SED:Surface-conduction Electron-emitte
r Display)などがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディ
スプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレ
イ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク又は電
気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。
【0054】
図2において、走査線として機能する導電膜13は、信号線に略直交する方向(図中左
右方向)に延伸して設けられている。信号線として機能する導電膜21aは、走査線に略
直交する方向(図中上下方向)に延伸して設けられている。容量線として機能する導電膜
21cは、信号線と平行方向に延伸して設けられている。なお、走査線として機能する導
電膜13は、走査線駆動回路104(
図1(A)を参照。)と電気的に接続されており、
信号線として機能する導電膜21a及び容量線として機能する導電膜21cは、信号線駆
動回路106(
図1(A)を参照。)に電気的に接続されている。
【0055】
トランジスタ102は、走査線及び信号線が交差する領域に設けられている。トランジ
スタ102は、ゲート電極として機能する導電膜13、ゲート絶縁膜(
図2に図示せず。
)、ゲート絶縁膜上に形成されたチャネル領域が形成される酸化物半導体膜19a、一対
の電極として機能する導電膜21a、21bにより構成される。なお、導電膜13は、走
査線としても機能し、酸化物半導体膜19aと重畳する領域がトランジスタ102のゲー
ト電極として機能する。また、導電膜21aは、信号線としても機能し、酸化物半導体膜
19aと重畳する領域がトランジスタ102のソース電極またはドレイン電極として機能
する。また、
図2において、走査線は、上面形状において端部が酸化物半導体膜19aの
端部より外側に位置する。このため、走査線はバックライトなどの光源からの光を遮る遮
光膜として機能する。この結果、トランジスタに含まれる酸化物半導体膜19aに光が照
射されず、トランジスタの電気特性の変動を抑制することができる。
【0056】
また、導電膜21bは、開口部41において、画素電極として機能する透光性を有する
導電膜31と電気的に接続されている。
【0057】
容量素子105は、容量線として機能する導電膜21cと接続されている。また、容量
素子105は、ゲート絶縁膜上に形成される導電性を有する膜19bと、トランジスタ1
02上に設けられる誘電体膜と、画素電極として機能する透光性を有する導電膜31と、
で構成されている。誘電体膜は、透光性を有し、且つ酸素の透過性の低い金属酸化物膜を
有する。ゲート絶縁膜上に形成される導電性を有する膜19bは透光性を有する。即ち、
容量素子105は透光性を有する。
【0058】
このように容量素子105は透光性を有するため、画素103内に容量素子105を大
きく(大面積に)形成することができる。従って、開口率を高めつつ、代表的には55%
以上、好ましくは60%以上とすることが可能であると共に、電荷容量を増大させた半導
体装置を得ることができる。例えば、解像度の高い半導体装置、例えば液晶表示装置にお
いては、画素の面積が小さくなり、容量素子の面積も小さくなる。このため、解像度の高
い半導体装置において、容量素子に蓄積される電荷容量が小さくなる。しかしながら、本
実施の形態に示す容量素子105は透光性を有するため、当該容量素子を画素に設けるこ
とで、各画素において十分な電荷容量を得つつ、開口率を高めることができる。代表的に
は、画素密度が200ppi以上、さらには300ppi以上、更には500ppi以上
である高解像度の半導体装置に好適に用いることができる。
【0059】
また、本発明の一態様は、高解像度の表示装置においても、開口率を高めることができ
るため、バックライトなどの光源の光を効率よく利用することができ、表示装置の消費電
力を低減することができる。
【0060】
次いで、
図2の一点鎖線A-B、C-Dにおける断面図を
図3に示す。
図3に示すトラ
ンジスタ102は、チャネルエッチ型のトランジスタである。なお、一点破線A-Bは、
トランジスタ102のチャネル長方向、トランジスタ102と画素電極として機能する導
電膜31の接続部、及び容量素子105の断面図であり、C-Dにおける断面図は、トラ
ンジスタ102のチャネル幅方向の断面図である。
【0061】
図3に示すトランジスタ102は、シングルゲート構造のトランジスタであり、基板1
1上に設けられるゲート電極として機能する導電膜13を有する。また、基板11及びゲ
ート電極として機能する導電膜13上に形成される窒化物絶縁膜15と、窒化物絶縁膜1
5上に形成される酸化物絶縁膜17と、窒化物絶縁膜15及び酸化物絶縁膜17を介して
、ゲート電極として機能する導電膜13と重なる酸化物半導体膜19aと、酸化物半導体
膜19aに接する、一対の電極として機能する導電膜21a、21bとを有する。また、
酸化物絶縁膜17、酸化物半導体膜19a、及び一対の電極として機能する導電膜21a
、21b上には、酸化物絶縁膜23が形成され、酸化物絶縁膜23上には酸化物絶縁膜2
5が形成される。窒化物絶縁膜15、酸化物絶縁膜17、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁
膜25、導電膜21b上には金属酸化物膜27が形成される。また、金属酸化物膜27上
には、窒化物絶縁膜29が形成される。また、一対の電極として機能する導電膜21a、
21bの一方、ここでは導電膜21bに接続する導電膜31が、窒化物絶縁膜29上に形
成される。なお、導電膜31は画素電極として機能する。
【0062】
また、
図3に示す容量素子105は、酸化物絶縁膜17上に形成される導電性を有する
膜19bと、金属酸化物膜27と、窒化物絶縁膜29と、画素電極として機能する導電膜
31とを有する。
【0063】
本実施の形態に示すトランジスタ102上には、分離された酸化物絶縁膜23、25が
形成される。分離された酸化物絶縁膜23、25が酸化物半導体膜19aと重畳する。ま
た、金属酸化物膜27がトランジスタ102及び分離された酸化物絶縁膜23、25を覆
うとともに、容量素子105の誘電体として設けられる。
【0064】
金属酸化物膜27は、透光性を有し、且つ酸素の透過性が低い酸化物膜である。また、
金属酸化物膜27として、高誘電体材料を用いることが好ましい。金属酸化物膜27とし
ては、代表的には酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガ
リウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウ
ム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化窒化タンタル等で形成された金属酸化物膜がある。
なお、金属酸化物膜は、絶縁膜または半導体膜である。
【0065】
金属酸化物膜27の膜厚は、0.5nm以上50nm以下、平均膜厚が2nm以上10
nm以下である。金属酸化物膜27の厚さを0.5nm以上、好ましくは2nm以上とす
ることで、酸化物半導体膜19a、酸化物絶縁膜23、25から外部への酸素の移動を阻
害することができる。一方、金属酸化物膜27の厚さを50nm以下、好ましくは10n
m以下とすることで、絶縁性の高い金属酸化物膜となる。これは、金属酸化物膜27は、
金属膜を酸化する方法で得られるからである。なお、金属酸化物膜27の形成方法の詳細
に関しては、後述する。
【0066】
窒化物絶縁膜29は、水の透過性の低い絶縁膜を用いることが可能である。さらには、
水素及び水の透過性の低い絶縁膜を用いることが可能である。また、窒化物絶縁膜29と
して、高誘電体材料を用いることが好ましい。また、窒化物絶縁膜29として、水素を有
することが好ましい。窒化物絶縁膜29としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜
、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜等の窒化物絶縁膜がある。
【0067】
窒化物絶縁膜29の膜厚は、50nm以上300nm以下、好ましくは100nm以上
200nm以下である。
【0068】
酸化物半導体膜19aは、代表的には、In-Ga酸化物膜、In-Zn酸化物膜、I
n-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)等の金属
酸化物膜で形成される。
【0069】
また、酸化物半導体膜19a上に設けられる酸化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25
として、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を設けること
が好ましい。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加熱
により酸素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化
物絶縁膜は、TDS分析において、表面温度が100℃以上700℃以下、または100
℃以上500℃以下の加熱処理における酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1
018atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上で
ある酸化物絶縁膜である。
【0070】
膜中に酸素欠損が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧
がマイナス方向に変動しやすく、ノーマリーオン特性となりやすい。これは、酸化物半導
体膜に含まれる酸素欠損に起因して電荷が生じ、低抵抗化するためである。トランジスタ
がノーマリーオン特性を有すると、動作時に動作不良が発生しやすくなる、または非動作
時の消費電力が高くなるなどの、様々な問題が生じる。また、経時変化やストレス試験に
よる、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値電圧の変動量が増大するという問題
がある。
【0071】
しかしながら、本実施の形態に示すトランジスタ102は、酸化物半導体膜19a上に
設けられる酸化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25として、化学量論的組成を満たす酸
素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いて形成することができる。さらに、酸化物
半導体膜19a、酸化物絶縁膜23、及び酸化物絶縁膜25上に、金属酸化物膜27が設
けられ、金属酸化物膜27上には窒化物絶縁膜29が設けられる。この結果、酸化物絶縁
膜23または酸化物絶縁膜25に含まれる酸素が、効率よく酸化物半導体膜19aに移動
し、酸化物半導体膜19aに含まれる酸素欠損を低減することが可能である。また、外部
から酸化物半導体膜19aへの水、さらには水素の移動を低減することができる。これら
の結果、ノーマリーオフ特性を有するトランジスタとなる。また、経時変化やストレス試
験により、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値電圧の変動量を低減することが
できる。
【0072】
また、容量素子105において、導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19aと
同時に形成された膜であり、且つプラズマダメージ等により酸素欠損が形成され、導電性
が高められた膜である。または、導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19aと同
時に形成された膜であり、且つ不純物を含むことにより導電性が高められた膜である。ま
たは、導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19aと同時に形成された膜であり、
且つ不純物を含むと共に、プラズマダメージ等により酸素欠損が形成され、導電性が高め
られた膜である。
【0073】
トランジスタ102においては、酸化物半導体膜19aと金属酸化物膜27の間に酸化
物絶縁膜23、25を有するが、容量素子105においては、導電性を有する膜19bと
金属酸化物膜27の間には、酸化物絶縁膜23、25を有しない。すなわち、容量素子1
05の誘電体は、金属酸化物膜27及び窒化物絶縁膜29であり、誘電体の厚さを薄くす
ることが可能であり、容量素子105の電荷容量を増大することが可能である。また、容
量素子105において、誘電体として高誘電体材料である金属酸化物膜27及び窒化物絶
縁膜29を用いることで、容量素子105の電荷容量を増大することが可能である。
【0074】
本実施の形態に示す半導体装置の素子基板は、トランジスタの酸化物半導体膜と同時に
、容量素子の一方となる電極が形成される。また、画素電極として機能する導電膜を容量
素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導電
膜を形成する工程が不要であり、作製工程を削減できる。また、一対の電極が透光性を有
するため、容量素子は透光性を有する。この結果、容量素子の占有面積を大きくしつつ、
画素の開口率を高めることができる。
【0075】
以下に、トランジスタ102の構成の詳細について説明する。
【0076】
基板11の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の
耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サフ
ァイア基板等を、基板11として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンなどを用
いて形成される単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物
半導体基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が
設けられたものを、基板11として用いてもよい。なお、基板11として、ガラス基板を
用いる場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×22
00mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×28
00mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで
、大型の表示装置を作製することができる。
【0077】
また、基板11として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ102
を形成してもよい。または、基板11とトランジスタ102の間に剥離層を設けてもよい
。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板11より分離し
、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ102は耐熱性の
劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0078】
ゲート電極として機能する導電膜13は、アルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタ
ン、モリブデン、タングステンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分と
する合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。ま
た、マンガン、ジルコニウムのいずれか一または複数から選択された金属元素を用いても
よい。また、ゲート電極として機能する導電膜13は、単層構造でも、二層以上の積層構
造としてもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアル
ミニウム膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チ
タン膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン
膜上にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタ
ン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を積層し、さらにその上にチタン膜を形成する
三層構造等がある。また、アルミニウムに、チタン、タンタル、タングステン、モリブデ
ン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素の膜、または複数組み合わせた合
金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0079】
また、ゲート電極として機能する導電膜13は、インジウム錫酸化物、酸化タングステ
ンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタン
を含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物
、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用する
こともできる。また、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属元素の積層構造とする
こともできる。
【0080】
窒化物絶縁膜15は、窒化物絶縁膜29と同様の材料を適宜用いることが可能である。
【0081】
窒化物絶縁膜15の厚さは、5nm以上100nm以下、より好ましくは20nm以上
80nm以下とするとよい。
【0082】
酸化物絶縁膜17は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸
化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金属酸化物などを用いればよく、積層ま
たは単層で設ける。
【0083】
また、酸化物絶縁膜17として、ハフニウムシリケート(HfSiOx)、窒素が添加
されたハフニウムシリケート(HfSixOyNz)、窒素が添加されたハフニウムアル
ミネート(HfAlxOyNz)、酸化ハフニウム、酸化イットリウムなどのhigh-
k材料を用いることでトランジスタのゲートリークを低減できる。
【0084】
酸化物絶縁膜17の厚さは、5nm以上400nm以下、より好ましくは10nm以上
300nm以下、より好ましくは50nm以上250nm以下とするとよい。
【0085】
窒化物絶縁膜15及び酸化物絶縁膜17はゲート絶縁膜として機能する。なお、窒化物
絶縁膜15または酸化物絶縁膜17の一方のみを、ゲート電極として機能する導電膜13
及び酸化物半導体膜19aの間に設け、ゲート絶縁膜として機能させてもよい。
【0086】
酸化物半導体膜19aは、代表的には、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、In-
M-Zn酸化物(MはAl、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)を用いて形成す
る。
【0087】
なお、酸化物半導体膜19aがIn-M-Zn酸化物膜であるとき、InおよびMの和
を100atomic%としたとき、InとMの原子数比率は、好ましくはInが25a
tomic%より大きく、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34a
tomic%より大きく、Mが66atomic%未満とする。
【0088】
酸化物半導体膜19aは、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以
上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸化物半
導体を用いることで、トランジスタ102のオフ電流を低減することができる。
【0089】
酸化物半導体膜19aの厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上1
00nm以下、さらに好ましくは3nm以上50nm以下とする。
【0090】
酸化物半導体膜19aがIn-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ga、Y、Zr、La、
Ce、またはNd)の場合、In-M-Zn酸化物膜を成膜するために用いるスパッタリ
ングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。
このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1
:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2が好ましい。
なお、成膜される酸化物半導体膜19aの原子数比はそれぞれ、誤差として上記のスパッ
タリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む
。
【0091】
酸化物半導体膜19aとしては、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いる。例えば
、酸化物半導体膜19aは、キャリア密度が1×1017個/cm3以下、好ましくは1
×1015個/cm3以下、さらに好ましくは1×1013個/cm3以下、より好まし
くは1×1011個/cm3以下の酸化物半導体膜を用いる。
【0092】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜19aのキャリア密度や不純
物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとする
ことが好ましい。
【0093】
なお、酸化物半導体膜19aとして、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半
導体膜を用いることで、さらに優れた電気特性を有するトランジスタを作製することがで
き好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)こ
とを高純度真性または実質的に高純度真性とよぶ。高純度真性または実質的に高純度真性
である酸化物半導体は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることがで
きる場合がある。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタ
は、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが
少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位
密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。また、高純度真性または実質
的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著しく小さく、チャネル幅が1×1
06μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、ソース電極とドレイン電極間の電
圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、オフ電流が、半導体パラメータア
ナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以下という特性を得ることができる
。従って、当該酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性の
変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる場合がある。なお、酸化物半導体膜のト
ラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷の
ように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体膜にチャネ
ル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。不純物として
は、水素、窒素、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属等がある。
【0094】
酸化物半導体膜に含まれる水素は金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に、
酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損が形成される。当該酸素欠
損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部
が金属原子と結合する酸素と結合することで、キャリアである電子を生成する場合がある
。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性
となりやすい。
【0095】
このため、酸化物半導体膜19aは酸素欠損と共に、水素ができる限り低減されている
ことが好ましい。具体的には、酸化物半導体膜19aにおいて、二次イオン質量分析法(
SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により
得られる水素濃度を、5×1019atoms/cm3以下、より好ましくは1×101
9atoms/cm3以下、5×1018atoms/cm3以下、好ましくは1×10
18atoms/cm3以下、より好ましくは5×1017atoms/cm3以下、さ
らに好ましくは1×1016atoms/cm3以下とする。
【0096】
酸化物半導体膜19aにおいて、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれる
と、酸化物半導体膜19aにおいて酸素欠損が増加し、n型化してしまう。このため、酸
化物半導体膜19aにおけるシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法により得られ
る濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms
/cm3以下とする。
【0097】
また、酸化物半導体膜19aにおいて、二次イオン質量分析法により得られるアルカリ
金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましく
は2×1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、
酸化物半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増
大してしまうことがある。このため、酸化物半導体膜19aのアルカリ金属またはアルカ
リ土類金属の濃度を低減することが好ましい。
【0098】
また、酸化物半導体膜19aに窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、キ
ャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を用
いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、当該酸化物半導体膜にお
いて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、二次イオン質量分析法
により得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい
。
【0099】
また、酸化物半導体膜19aは、例えば非単結晶構造でもよい。非単結晶構造は、例え
ば、後述するCAAC-OS(C Axis Aligned-Crystalline
Oxide Semiconductor)、多結晶構造、後述する微結晶構造、また
は非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最も欠陥準位密度が高く、C
AAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0100】
酸化物半導体膜19aは、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は
、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。
【0101】
なお、酸化物半導体膜19aが、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の
領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域の二種以上を有する混合膜であってもよ
い。混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CA
AC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域を有する場合がある。ま
た、混合膜は、例えば、非晶質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CA
AC-OSの領域、単結晶構造の領域のいずれか二種以上の領域の積層構造を有する場合
がある。
【0102】
導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19aと同時に形成された酸化物半導体膜
を加工して形成される。このため、導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19aと
同様の金属元素を有する膜である。すなわち、酸化物半導体となりうる材料を有する。ま
た、酸化物半導体膜19aと同様の結晶構造、または異なる結晶構造を有する膜である。
しかしながら、酸化物半導体膜19aと同時に形成された酸化物半導体膜に、不純物また
は酸素欠損を有せしめることで、導電性を有する膜19bとなる。酸化物半導体膜に含ま
れる不純物としては、水素がある。なお、水素の代わりに不純物として、ホウ素、リン、
スズ、アンチモン、希ガス元素、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が含まれていてもよ
い。
【0103】
このため、酸化物半導体膜19a及び導電性を有する膜19bは共に、酸化物絶縁膜1
7上に形成されるが、不純物濃度が異なる。具体的には、酸化物半導体膜19aと比較し
て、導電性を有する膜19bの不純物濃度が高い。例えば、酸化物半導体膜19aに含ま
れる水素濃度は、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×1018ato
ms/cm3以下、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5
×1017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3
以下であり、導電性を有する膜19bに含まれる水素濃度は、8×1019atoms/
cm3以上、好ましくは1×1020atoms/cm3以上、より好ましくは5×10
20atoms/cm3以上である。また、酸化物半導体膜19aと比較して、導電性を
有する膜19bに含まれる水素濃度は2倍、好ましくは10倍以上である。
【0104】
また、酸化物半導体膜19aと同時に形成された酸化物半導体膜をプラズマに曝すこと
により、酸化物半導体膜にダメージを与え、酸素欠損を形成することができる。例えば、
酸化物半導体膜上に、プラズマCVD法またはスパッタリング法で膜を成膜すると、酸化
物半導体膜がプラズマに曝され、酸素欠損が生成される。または、酸化物絶縁膜23及び
酸化物絶縁膜25を形成するためのエッチング処理において酸化物半導体膜がプラズマに
曝されることで、酸素欠損が生成される。または、酸化物半導体膜が、酸素及び水素の混
合ガス、水素、希ガス、アンモニア等のプラズマに曝されることで、酸素欠損が生成され
る。この結果、酸化物半導体膜は導電性が高くなり、導電性を有する膜19bとなる。
【0105】
即ち、導電性を有する膜19bは、導電性の高い酸化物半導体膜ともいえる。また、導
電性を有する膜19bは、導電性の高い金属酸化物膜ともいえる。
【0106】
また、窒化物絶縁膜29として、窒化シリコン膜を用いる場合、窒化シリコン膜は水素
を含む。このため、窒化物絶縁膜29の水素が酸化物半導体膜19aと同時に形成された
酸化物半導体膜に拡散すると、該酸化物半導体膜において水素は酸素と結合し、キャリア
である電子が生成される。酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損に、窒化シリコン膜に含ま
れる水素が入ることで、キャリアである電子が生成される。これらの結果、酸化物半導体
膜は導電性が高くなり、導電性を有する膜19bとなる。
【0107】
酸素欠損が形成された酸化物半導体に水素を添加すると、酸素欠損サイトに水素が入り
伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、酸化物半導体は、導電性が高くなり、
導電体化する。導電体化された酸化物半導体を酸化物導電体ということができる。すなわ
ち、導電性を有する膜19bは、酸化物導電体膜で形成されるということができる。一般
に、酸化物半導体は、エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する
。一方、酸化物導電体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物半導体である。したが
って、該ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の
透光性を有する。
【0108】
導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19aより抵抗率が低い。導電性を有する
膜19bの抵抗率が、酸化物半導体膜19aの抵抗率の1×10-8倍以上1×10-1
倍未満であることが好ましく、代表的には1×10-3Ωcm以上1×104Ωcm未満
、さらに好ましくは、抵抗率が1×10-3Ωcm以上1×10-1Ωcm未満であると
よい。
【0109】
一対の電極として機能する導電膜21a、21bは、アルミニウム、チタン、クロム、
ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタング
ステンからなる単体金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造とし
て用いる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウ
ム膜を積層する二層構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-
マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積
層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタ
ン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し
、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または
窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム
膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する
三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を
用いてもよい。
【0110】
酸化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25として、化学量論的組成を満たす酸素よりも
多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。ここでは、酸化物絶縁膜23と
して、酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成し、酸化物絶縁膜25として、化学量論的組成
を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を形成する。
【0111】
酸化物絶縁膜23は、酸素を透過する酸化物絶縁膜である。このため、酸化物絶縁膜2
3上に設けられる、酸化物絶縁膜25から脱離する酸素を、酸化物絶縁膜23を介して酸
化物半導体膜19aに移動させることができる。また、酸化物絶縁膜23は、後に形成す
る酸化物絶縁膜25を形成する際の、酸化物半導体膜19aへのダメージ緩和膜としても
機能する。
【0112】
酸化物絶縁膜23としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上
50nm以下の酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。なお、本
明細書中において、酸化窒化シリコン膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量
が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が
多い膜を指す。
【0113】
また、酸化物絶縁膜23と酸化物半導体膜19aとの界面における欠陥量が少ないこと
が好ましく、代表的には、ESR測定により、酸化物半導体膜19aの欠陥に由来するg
値が1.89以上1.96以下に現れる信号のスピン密度が1×1017spins/c
m3以下、さらには検出下限以下であることが好ましい。
【0114】
なお、酸化物絶縁膜23においては、外部から酸化物絶縁膜23に入った酸素が全て酸
化物絶縁膜23の外部に移動する場合がある。または、外部から酸化物絶縁膜23に入っ
た酸素の一部が、酸化物絶縁膜23にとどまる場合もある。また、外部から酸化物絶縁膜
23に酸素が入ると共に、酸化物絶縁膜23に含まれる酸素が酸化物絶縁膜23の外部へ
移動することで、酸化物絶縁膜23において酸素の移動が生じる場合もある。
【0115】
酸化物絶縁膜23に接するように酸化物絶縁膜25が形成されている。ここでは、酸化
物絶縁膜25は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用
いて形成する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、加
熱により酸素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸
化物絶縁膜は、TDS分析において、表面温度が100℃以上700℃以下、または10
0℃以上500℃以下の加熱処理における酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×
1018atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上
である酸化物絶縁膜である。
【0116】
酸化物絶縁膜25としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm
以上400nm以下の、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等を用いることができる。
【0117】
また、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25が積層された酸化物絶縁膜は、欠陥量が
少ないことが好ましい。欠陥の少ない酸化物絶縁膜は、100K以下のESRで測定して
得られたスペクトルにおいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g
値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.9
66以下の第3のシグナルが観測される。また、g値が2.037以上2.039以下乃
至1.964以上1.966以下であるスピンの密度が1×1018spins/cm3
未満であり、代表的には1×1017spins/cm3以上1×1018spins/
cm3未満である。なお、100K以下のESRスペクトルにおいてg値が2.037以
上2.039以下の第1シグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナ
ル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグナルは、窒素酸化物(NOx
、xは0以上2以下、好ましくは1以上2以下)起因のシグナルに相当する。窒素酸化物
の代表例としては、一酸化窒素、二酸化窒素等がある。即ち、g値が2.037以上2.
039以下乃至1.964以上1.966以下であるスピンの密度が少ないほど、酸化物
絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないといえる。
【0118】
なお、ここでは、酸化物半導体膜19aと金属酸化物膜27の間に複数の酸化物絶縁膜
23、25を設けたが、酸化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25の一方のみ設けてもよ
い。
【0119】
酸化物絶縁膜25上に金属酸化物膜27が設けられるため、酸化物絶縁膜25に含まれ
る酸素が、外部に移動しにくくなる。この結果、酸化物絶縁膜25に含まれる酸素が効率
よく酸化物半導体膜19aに移動し、酸化物半導体膜に含まれる酸素欠損量を低減するこ
とができる。
【0120】
窒化物絶縁膜15及び窒化物絶縁膜29の内側に、酸化物半導体膜19a及び酸化物絶
縁膜23、25が設けられている。このため、外部から酸化物半導体膜19aへの水、さ
らには水素の移動を低減することができる。
【0121】
導電膜31は、透光性を有する導電膜を用いる。透光性を有する導電膜は、酸化タング
ステンを含むインジウム酸化物膜、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物膜、酸
化チタンを含むインジウム酸化物膜、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物膜、インジウ
ム錫酸化物(以下、ITOと示す。)膜、インジウム亜鉛酸化物膜、酸化ケイ素を添加し
たインジウム錫酸化物膜等がある。
【0122】
なお、導電膜31は、くし歯形状や、スリット31bを有する形状にしてもよい。その
場合の断面図を
図29に示す。導電膜31をこのようなレイアウトとすることにより、I
PSモードやFFSモードで液晶を駆動することが出来る。一例として、導電膜31にス
リット31bを設けた場合の上面図を
図30に示す。また、導電膜31のレイアウト形状
に応じて、VAモードで液晶を駆動することもできる。
【0123】
次に、
図3に示すトランジスタ102及び容量素子105の作製方法について、
図4乃
至
図7を用いて説明する。
【0124】
図4(A)に示すように、基板11上に導電膜13となる導電膜12を形成する。導電
膜は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等により形成する。
【0125】
ここでは、基板11としてガラス基板を用いる。また、導電膜12として、厚さ100
nmのタングステン膜をスパッタリング法により形成する。
【0126】
次に、導電膜12上に、第1のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によりマ
スクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜12の一部をエッチングして、
図4(B
)に示すように、ゲート電極として機能する導電膜13を形成する。この後、マスクを除
去する。
【0127】
なお、ゲート電極として機能する導電膜13は、上記形成方法の代わりに、電解メッキ
法、印刷法、インクジェット法等で形成してもよい。
【0128】
ここでは、ドライエッチング法によりタングステン膜をエッチングして、ゲート電極と
して機能する導電膜13を形成する。
【0129】
次に、
図4(C)に示すように、ゲート電極として機能する導電膜13上に、窒化物絶
縁膜15と、後に酸化物絶縁膜17となる酸化物絶縁膜16を形成する。次に、酸化物絶
縁膜16上に、後に酸化物半導体膜19a、導電性を有する膜19bとなる酸化物半導体
膜18を形成する。
【0130】
窒化物絶縁膜15及び酸化物絶縁膜16は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で
形成する。
【0131】
ここでは、シラン、窒素、及びアンモニアを原料ガスとしたプラズマCVD法を用いて
、窒化物絶縁膜15として、厚さ300nmの窒化シリコン膜を形成する。
【0132】
酸化物絶縁膜16として酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、または窒化酸化シリコ
ン膜を形成する場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0133】
酸化物絶縁膜16として酸化ガリウム膜を形成する場合、MOCVD(Metal O
rganic Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成
することができる。
【0134】
ここでは、シラン及び一酸化二窒素を原料ガスとしたプラズマCVD法を用いて、酸化
物絶縁膜16として、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0135】
酸化物半導体膜18は、スパッタリング法、塗布法、パルスレーザー蒸着法、レーザー
アブレーション法等を用いて形成することができる。
【0136】
スパッタリング法で酸化物半導体膜を形成する場合、プラズマを発生させるための電源
装置は、RF電源装置、AC電源装置、DC電源装置等を適宜用いることができる。
【0137】
スパッタリングガスは、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素ガス、希ガス及び酸素の
混合ガスを適宜用いる。なお、希ガス及び酸素の混合ガスの場合、希ガスに対して酸素の
ガス比を高めることで、後述するCAAC-OSが形成されやすいため好ましい。
【0138】
また、ターゲットは、形成する酸化物半導体膜の組成にあわせて、適宜選択すればよい
。
【0139】
高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜を得るためには、チャンバ
ー内を高真空排気するのみならずスパッタガスの高純度化も必要である。スパッタガスと
して用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、
より好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガス
を用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができ
る。
【0140】
ここでは、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZOと示す。)ターゲット(In:G
a:Zn=1:1:1)を用いたスパッタリング法により、酸化物半導体膜として厚さ3
5nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を形成する。
【0141】
次に、酸化物半導体膜18上に、第2のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程
によりマスクを形成した後、該マスクを用いて酸化物半導体膜の一部をエッチングするこ
とで、
図4(D)に示すような、素子分離された酸化物半導体膜19a、19cを形成す
る。この後、マスクを除去する。
【0142】
ここでは、酸化物半導体膜上にマスクを形成し、ウエットエッチング法により酸化物半
導体膜18の一部を選択的にエッチングすることで、酸化物半導体膜19a、19cを形
成する。
【0143】
次に、
図5(A)に示すように、のちに導電膜21a、21b、21cとなる導電膜2
0を形成する。
【0144】
導電膜20は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等で導電膜を形成する。
【0145】
ここでは、厚さ50nmのタングステン膜及び厚さ300nmの銅膜を順にスパッタリ
ング法により積層する。
【0146】
次に、導電膜20上に第3のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によりマス
クを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜20をエッチングして、
図5(B)に示す
ように、一対の電極として機能する導電膜21a、21bと、容量線として機能する導電
膜21cとを形成する。この後、マスクを除去する。
【0147】
ここでは、銅膜上にフォトリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、当該マス
クを用いてタングステン膜及び銅膜をエッチングして、導電膜21a、21b、21cを
形成する。なお、ウエットエッチング法を用いて銅膜をエッチングする。次に、SF6を
用いたドライエッチング法により、タングステン膜をエッチングすることで、該エッチン
グにおいて、銅膜の表面にフッ化物が形成される。該フッ化物により、銅膜からの銅元素
の拡散が低減され、酸化物半導体膜19aにおける銅濃度を低減することができる。
【0148】
次に、
図5(C)に示すように、酸化物半導体膜19a、19c、及び導電膜21a、
21b、21c上に、後に酸化物絶縁膜23となる酸化物絶縁膜22、及び後に酸化物絶
縁膜25となる酸化物絶縁膜24を形成する。
【0149】
なお、酸化物絶縁膜22を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に酸化物絶縁膜2
4を形成することが好ましい。酸化物絶縁膜22を形成した後、大気開放せず、原料ガス
の流量、圧力、高周波電力及び基板温度の一以上を調整して、酸化物絶縁膜24を連続的
に形成することで、酸化物絶縁膜22及び酸化物絶縁膜24における界面の大気成分由来
の不純物濃度を低減することができると共に、酸化物絶縁膜24に含まれる酸素を酸化物
半導体膜19aに移動させることが可能であり、酸化物半導体膜19aの酸素欠損量を低
減することができる。
【0150】
酸化物絶縁膜22としては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内にお
ける圧力を20Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上250Pa以
下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜
または酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0151】
酸化物絶縁膜22の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0152】
上記条件を用いることで、酸化物絶縁膜22として酸素を透過する酸化物絶縁膜を形成
することができる。また、酸化物絶縁膜22を設けることで、後に形成する酸化物絶縁膜
25の形成工程において、酸化物半導体膜19aへのダメージ低減が可能である。
【0153】
なお、酸化物絶縁膜22は、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を280℃以上400℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内にお
ける圧力を100Pa以上250Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に高周波電力
を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成することができ
る。
【0154】
当該成膜条件において、基板温度を上記温度とすることで、シリコン及び酸素の結合力
が強くなる。この結果、酸化物絶縁膜22として、酸素が透過し、緻密であり、且つ硬い
酸化物絶縁膜、代表的には、25℃において0.5重量%のフッ酸を用いた場合のエッチ
ング速度が10nm/分以下、好ましくは8nm/分以下である酸化シリコン膜または酸
化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0155】
また、加熱をしながら酸化物絶縁膜22を形成するため、当該工程において酸化物半導
体膜19aに含まれる水素、水等を脱離させることができる。酸化物半導体膜19aに含
まれる水素は、プラズマ中で発生した酸素ラジカルと結合し、水となる。酸化物絶縁膜2
2の成膜工程において基板が加熱されているため、酸素及び水素の結合により生成された
水は、酸化物半導体膜から脱離する。即ち、プラズマCVD法によって酸化物絶縁膜22
を形成することで、酸化物半導体膜19aに含まれる水及び水素の含有量を低減すること
ができる。
【0156】
また、酸化物絶縁膜22を形成する工程において加熱するため、酸化物半導体膜19a
が露出された状態での加熱時間が少なく、加熱処理による酸化物半導体膜からの酸素の脱
離量を低減することができる。即ち、酸化物半導体膜中に含まれる酸素欠損量を低減する
ことができる。
【0157】
ここでは、酸化物絶縁膜22として、流量30sccmのシラン及び流量4000sc
cmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃と
し、27.12MHzの高周波電源を用いて150Wの高周波電力を平行平板電極に供給
したプラズマCVD法により、厚さ50nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。当該条件
により、酸素が透過する酸化窒化シリコン膜を形成することができる。
【0158】
酸化物絶縁膜24としては、プラズマCVD装置の真空排気された処理室内に載置され
た基板を180℃以上280℃以下、さらに好ましくは200℃以上240℃以下に保持
し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力を100Pa以上250Pa以下
、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし、処理室内に設けられる電極に0
.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好ましくは0.25W/cm2以上
0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件により、酸化シリコン膜または酸化
窒化シリコン膜を形成する。
【0159】
酸化物絶縁膜24の原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体を用
いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラン、
トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、酸素、オゾン、一酸化二窒素
、二酸化窒素等がある。
【0160】
酸化物絶縁膜24の成膜条件として、上記圧力の処理室において上記パワー密度の高周
波電力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増
加し、原料ガスの酸化が進むため、酸化物絶縁膜24中における酸素含有量が化学量論比
よりも多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素の結
合力が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果、化
学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸
化物絶縁膜を形成することができる。また、酸化物半導体膜19a上に酸化物絶縁膜22
が設けられている。このため、酸化物絶縁膜24の形成工程において、酸化物絶縁膜22
が酸化物半導体膜19aの保護膜となる。この結果、酸化物半導体膜19aへのダメージ
を低減しつつ、パワー密度の高い高周波電力を用いて酸化物絶縁膜24を形成することが
できる。
【0161】
ここでは、酸化物絶縁膜24として、流量200sccmのシラン及び流量4000s
ccmの一酸化二窒素を原料ガスとし、処理室の圧力を200Pa、基板温度を220℃
とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1500Wの高周波電力を平行平板電極に
供給したプラズマCVD法により、厚さ400nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。な
お、プラズマCVD装置は電極面積が6000cm2である平行平板型のプラズマCVD
装置であり、供給した電力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると0.25W
/cm2である。
【0162】
また、一対の電極として機能する導電膜21a、21bを形成する際、導電膜のエッチ
ングによって、酸化物半導体膜19aはダメージを受け、酸化物半導体膜19aのバック
チャネル(酸化物半導体膜19aにおいて、ゲート電極として機能する導電膜13と対向
する面と反対側の面)側に酸素欠損が生じる。しかし、酸化物絶縁膜24に化学量論的組
成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を適用することで、加熱処理によっ
て当該バックチャネル側に生じた酸素欠損を修復することができる。これにより、酸化物
半導体膜19aに含まれる欠陥を低減することができるため、トランジスタ102の信頼
性を向上させることができる。
【0163】
次に、酸化物絶縁膜24上に、第4のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程に
よりマスクを形成する。次に、該マスクを用いて酸化物絶縁膜22及び酸化物絶縁膜24
の一部をエッチングして、
図5(D)に示すように、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜
25を形成する。この後、マスクを除去する。
【0164】
当該工程において、ドライエッチング法により、酸化物絶縁膜22及び酸化物絶縁膜2
4をエッチングすることが好ましい。この結果、酸化物半導体膜19cはエッチング処理
においてプラズマに曝されるため、酸化物半導体膜19cの酸素欠損を増加させることが
可能である。
【0165】
なお、A-Bの断面図に示すように、チャネル長方向において、酸化物半導体膜19a
の外側に酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25の端部が位置するように、また、C-D
の断面図に示すように、チャネル幅方向において、酸化物半導体膜19aの外側に酸化物
絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25の端部が位置するように、酸化物絶縁膜22及び酸化物
絶縁膜24をそれぞれエッチングする。この結果、分離された酸化物絶縁膜23及び酸化
物絶縁膜25を形成することができる。なお、酸化物絶縁膜22及び酸化物絶縁膜24の
エッチングと共に、酸化物絶縁膜16の一部もエッチングされ、酸化物絶縁膜17が形成
される。この結果、窒化物絶縁膜15が露出する。
【0166】
次に、加熱処理を行う。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上400℃以下
、好ましくは300℃以上400℃以下、好ましくは320℃以上370℃以下とする。
【0167】
該加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を用いること
で、短時間に限り、基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。そのため加熱
処理時間を短縮することができる。
【0168】
加熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1p
pm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)
の雰囲気下で行えばよい。なお、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水
等が含まれないことが好ましい。
【0169】
当該加熱処理により、酸化物絶縁膜25に含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜19a
に移動させ、酸化物半導体膜19aに含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0170】
また、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25に水、水素等が含まれる場合、窒化物絶
縁膜29を形成した後に、加熱処理を行うと、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25に
含まれる水、水素等が、酸化物半導体膜19aに移動し、酸化物半導体膜19aに欠陥が
生じてしまう。しかしながら、当該加熱により、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25
に含まれる水、水素等を脱離させることが可能であり、トランジスタ102の電気特性の
ばらつきを低減すると共に、しきい値電圧の変動を抑制することができる。
【0171】
なお、加熱しながら酸化物絶縁膜24を、酸化物絶縁膜22上に形成することで、酸化
物半導体膜19aに酸素を移動させ、酸化物半導体膜19aに含まれる酸素欠損を低減す
ることが可能であるため、当該加熱処理を行わなくともよい。
【0172】
また、当該加熱処理は、
図5(C)に示す酸化物絶縁膜22及び酸化物絶縁膜24を形
成した後に行ってもよいが、
図5(D)に示す酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25を
形成した後の加熱処理の方が、酸化物半導体膜19cへの酸素の移動が生じないと共に、
酸化物半導体膜19cが露出されているため酸化物半導体膜19cから酸素が脱離し、酸
素欠損が形成される。この結果、のちに形成される導電性を有する膜19bの導電性をよ
り高めることが可能であるため、好ましい。
【0173】
ここでは、窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で、350℃、1時間の加熱処理を行う。
【0174】
次に、
図6(A)に示すように、窒化物絶縁膜15、酸化物半導体膜19c、酸化物絶
縁膜17、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜25、一対の電極として機能する導電膜21
a、21b、導電膜21c上に、金属膜26を形成する。
【0175】
金属膜26は、酸化されることで、透光性を有し、且つ酸素の透過性が低い金属酸化物
膜となる金属膜または窒化金属膜を用いることが好ましく、代表的には、アルミニウム、
ガリウム、イットリウム、ハフニウム、チタン、タンタル、窒化タンタル等を用いる。ま
た、金属膜26は、スパッタリング法、蒸着法等により形成する。
【0176】
金属膜26の厚さは、0.5nm以上50nm以下、平均膜厚が2nm以上10nm以
下であることが好ましい。金属膜26を上記厚さとすることで、後の酸素導入処理におい
て、金属膜26のすべてを酸化することができる。なお、当該工程において、酸化物絶縁
膜23及び酸化物絶縁膜25の一以上に酸素を導入することができる。
【0177】
次に、金属膜26に酸素O
*を導入して、金属膜26を酸化することで、
図6(B)に
示すように、金属酸化物膜26aを形成する。例えば、金属膜26としてアルミニウムを
用いると、金属酸化物膜26aとしては、酸化アルミニウム膜が形成される。なお、この
とき、酸素と共に窒素を導入し、金属酸化窒化物膜を形成してもよい。
【0178】
金属膜26に酸素を導入する方法としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラ
ズマ処理等を用いることができる。また、酸素の導入は、基板11の全面を一度に処理し
てもよいし、例えば、線状のイオンビームを用いてもよい。線状のイオンビームを用いる
場合には、基板11またはイオンビームを相対的に移動(スキャン)させることで、金属
膜26全面に酸素を導入することができる。また、酸素の導入処理は、加熱をしながら行
ってもよい。
【0179】
また、金属膜26に導入される酸素の代表例としては、酸素ラジカル、オゾン、酸素原
子イオン等がある。また、酸素は、酸素を含むガスによって生成することが可能であり、
酸素を含むガスの代表例としては、酸素ガス、一酸化二窒素ガス、二酸化窒素ガス、オゾ
ンガス、水蒸気、酸素及び水素の混合ガス等がある。なお、上記酸素を含むガスと共に、
窒素、希ガス等の不活性ガスを導入してもよい。
【0180】
なお、イオン注入法で酸素の導入を行う場合、酸素のドーズ量は1×1013ions
/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすることが好ましい。このようなドー
ズ量とすることで、酸化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25において、さらに酸素の含
有量を高めることができる。
【0181】
また、プラズマ処理で酸素の導入を行う場合は、酸素プラズマ中の酸素を金属膜26に
導入する。プラズマ処理での酸素の導入は、プラズマCVD装置、ドライエッチング装置
等のプラズマ処理装置を用いることができる。また、プラズマ処理装置を用いる場合、基
板11が搭載される支持台または電極にバイアスを印加することが好ましい。この結果、
エネルギーを有する酸素、代表的には酸素分子イオン、酸素原子イオン等を基板11側に
引き寄せることが可能であり、金属膜26への酸素導入量をより増加させることができる
。
【0182】
また、プラズマ処理で酸素の導入を行う場合、μ波で酸素を励起し、高密度な酸素プラ
ズマを発生させることで、金属膜26の酸化を促し、緻密な金属酸化物膜26aを形成す
るとともに、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25の一以上への酸素導入量を増加させ
ることができる。なお、μ波で酸素を励起し、高密度な酸素プラズマを発生させる場合、
酸素の導入は、酸化物半導体膜19a、酸化物半導体膜19c、酸化物絶縁膜23、及び
酸化物絶縁膜25から酸素が脱離されない温度、代表的には250℃以下、好ましくは2
00℃以下で行うことが好ましい。
【0183】
なお、プラズマ処理で金属膜26に酸素の導入を行うことで、スループットを向上させ
ることができる。
【0184】
基板11上に形成された金属膜26に酸素を導入することで、金属酸化物膜26aを形
成するため、金属酸化物膜26aの形成工程において、パーティクルの発生を防ぐことが
可能であり、歩留まりを高めることが可能である。また、スパッタリング法を用いて金属
膜を形成した後、該金属膜に酸素を導入することで金属酸化物膜を形成するため、量産性
が高まるとともに、大面積基板を用いて半導体装置を作製することが可能である。
【0185】
この後、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理により、金属酸化物膜26aの金属原
子と酸素の結合をより強固にすることが可能であり、後の加熱処理において、酸化物絶縁
膜22及び酸化物絶縁膜24からの酸素脱離を抑制することができる。このときの加熱温
度は300℃以上500℃以下、好ましくは400℃以上450℃以下とする。
【0186】
次に、
図6(B)に示すように、金属酸化物膜26a上に、後に窒化物絶縁膜29とな
る窒化物絶縁膜28を形成する。
【0187】
窒化物絶縁膜28は、スパッタリング法、CVD法等により形成する。
【0188】
また、酸化物半導体膜19cが、導電性を有する膜19bとなる。なお、窒化物絶縁膜
28として、プラズマCVD法により窒化シリコン膜を形成すると、窒化シリコン膜に含
まれる水素が酸化物半導体膜19cに拡散するため、より導電性を有する膜19bを形成
することができる。
【0189】
ここでは、プラズマCVD装置の処理室に、流量50sccmのシラン、流量5000
sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアを原料ガスとし、処理室の圧力を
100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MHzの高周波電源を用いて1000
Wの高周波電力を平行平板電極に供給したプラズマCVD法により窒化物絶縁膜28とし
て、厚さ50nmの窒化シリコン膜を形成する。なお、プラズマCVD装置は電極面積が
6000cm2である平行平板型のプラズマCVD装置であり、供給した電力を単位面積
あたりの電力(電力密度)に換算すると1.7×10-1W/cm2である。
【0190】
次に、加熱処理を行ってもよい。該加熱処理の温度は、代表的には、150℃以上40
0℃以下、好ましくは300℃以上400℃以下、好ましくは320℃以上370℃以下
とする。なお、当該加熱処理において、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25上に金属
酸化物膜27が設けられているため、酸化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25に含まれ
る酸素を効率よく酸化物半導体膜19aへ移動させ、酸化物半導体膜19aの酸素欠損を
低減することができる。この結果、しきい値電圧のマイナスシフトを低減することができ
る。また、しきい値電圧の変動量を低減することができる。
【0191】
また、当該加熱処理において、窒化物絶縁膜28に水素が含まれる場合、窒化物絶縁膜
28に含まれる水素が導電性を有する膜19bに移動し、導電性を有する膜19bの導電
性がさらに高まるため好ましい。
【0192】
次に、窒化物絶縁膜28上に第5のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によ
りマスクを形成した後、該マスクを用いて、金属酸化物膜26aおよび窒化物絶縁膜28
をエッチングして、
図6(C)に示すように、開口部41を有する金属酸化物膜27及び
窒化物絶縁膜29を形成する。
【0193】
次に、
図7(A)に示すように、導電膜21b及び窒化物絶縁膜29上に、後に導電膜
31となる導電膜30を形成する。
【0194】
導電膜30は、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等により導電膜を形成する。
【0195】
次に、導電膜30上に、第6のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によりマ
スクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜30の一部をエッチングして、
図7(B
)に示すように、導電膜31を形成する。この後、マスクを除去する。
【0196】
以上の工程により、トランジスタ102を作製すると共に、容量素子105を作製する
ことができる。
【0197】
本実施の形態では、金属膜を形成した後、該金属膜に酸素を導入することで金属酸化物
膜を形成するため、パーティクルの発生を防ぎつつ金属酸化物膜を形成することができる
。このため、歩留まり高く、半導体装置を作製することができる。
【0198】
また、実施の形態に示すトランジスタは、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸
素を含む酸化物絶縁膜上に、酸素の透過性の低い金属酸化物膜を有するため、酸化物絶縁
膜に含まれる酸素が、外部に拡散することを防ぐことが可能である。この結果、酸化物絶
縁膜に含まれる酸素を効率よく酸化物半導体膜に移動させ、酸化物半導体膜に含まれる酸
素欠損量を低減することができる。
【0199】
また、複数の窒化物絶縁膜の内側に、酸化物半導体膜が含まれる。このため、外部から
酸化物半導体膜への水、水素等の移動が、窒化物絶縁膜により妨げられる。この結果、酸
化物半導体膜に含まれる水、水素等の含有量を低減することができる。
【0200】
以上のことから、ノーマリーオフ特性を有するトランジスタを作製することができる。
また、経時変化やストレス試験による、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値電
圧の変動量が低減されたトランジスタを作製することができる。
【0201】
また、本実施の形態に示す半導体装置の素子基板は、トランジスタの酸化物半導体膜と
同時に、容量素子の一方となる電極が形成される。また、画素電極として機能する導電膜
を容量素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新た
に導電膜を形成する工程が不要であり、作製工程を削減できる。また、一対の電極が透光
性を有するため、容量素子は透光性を有する。この結果、容量素子の占有面積を大きくし
つつ、画素の開口率を高めることができる。
【0202】
上記より、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において電気特性が向上した半導体装置
を得ることができる。
【0203】
<変形例1>
ここで、実施の形態1に示す金属酸化物膜27の変形例について、
図8を用いて説明す
る。
【0204】
図8は、画素103の上面図であり、トランジスタ102の構成を破線で示し、金属酸
化物膜27をハッチングを用いて示す。
【0205】
図8(A)に示すように、金属酸化物膜27は、画素103全面に形成することができ
る。この結果、酸化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25に含まれる酸素が外部に移動す
ることを防ぐことが可能である。この結果、酸化物半導体膜19aの酸素欠損を低減する
ことが可能である。
【0206】
または、
図8(B)に示すように、画素103において、分離された金属酸化物膜27
a、27bが形成されてもよい。
図6(A)に示す工程で形成する金属膜26の膜厚を薄
くすることで、分離された金属酸化物膜27a、27bを形成することができる。または
、画素103全面に金属酸化物膜を形成した後、金属酸化物膜の一部を除去することで、
分離された金属酸化物膜27a、27bを形成することができる。
【0207】
なお、分離された金属酸化物膜は、
図8(B)に示す金属酸化物膜27bのように、少
なくとも、トランジスタ102上に設けられることが好ましい。この結果、酸化物絶縁膜
23または酸化物絶縁膜25に含まれる酸素が外部に移動することを防ぐことが可能であ
る。この結果、酸化物半導体膜19aの酸素欠損を低減することが可能である。
【0208】
また、分離された金属酸化物膜は、
図8(B)に示す金属酸化物膜27aのように、容
量素子105となる領域全面に形成されることが好ましい。この結果、各容量素子105
の電荷容量のばらつきを低減することが可能である。
【0209】
なお、ここでは、画素103の上面図を用いて金属酸化物膜27を説明したが、駆動回
路上でも同様の形状の金属酸化物膜を形成することが可能である。
【0210】
<変形例2>
実施の形態1に示す半導体装置の変形例を
図9に示す。
【0211】
図9に示す半導体装置は、
図3に示す半導体装置と比較して、金属酸化物膜27及び窒
化物絶縁膜29の形成順序が異なる。すなわち、窒化物絶縁膜15、酸化物絶縁膜17、
導電性を有する膜19b、一対の電極として機能する導電膜21a、21b、導電膜21
c、酸化物絶縁膜23、及び酸化物絶縁膜25上に窒化物絶縁膜29が形成され、窒化物
絶縁膜29上に金属酸化物膜27が形成される。また、画素電極として機能する導電膜3
1は、金属酸化物膜27上に形成される。
【0212】
図9に示す半導体装置において、容量素子105に含まれる導電性を有する膜19bは
、窒化物絶縁膜29と接する。また、導電性を有する膜19bと金属酸化物膜27の間に
、窒化物絶縁膜29を有する。このため、金属酸化物膜27を形成する工程において行わ
れる酸素導入工程において、導電性を有する膜19bへの酸素導入量を低減できる。この
結果、導電性を有する膜19bの導電性をさらに高めることができる。
【0213】
また、金属酸化物膜27を形成する工程において行われる酸素導入工程において、一対
の電極として機能する導電膜21a、21b、及び導電膜21cが窒化物絶縁膜29に覆
われているため、一対の電極として機能する導電膜21a、21b、及び導電膜21cの
酸化を防ぐことが可能である。この結果、一対の電極として機能する導電膜21a、21
b、及び導電膜21cの抵抗値の増加を抑制することが可能である。
【0214】
この結果、大面積基板を用いて形成される半導体装置において、配線遅延を低減するこ
とが可能である。
【0215】
<変形例3>
実施の形態1に示す半導体装置の変形例を
図10に示す。
【0216】
図10に示す半導体装置は、
図3に示す半導体装置と比較して、金属酸化物膜27が基
板11上全面に形成されず、トランジスタ102上にのみ形成されている点が異なる。
【0217】
このような半導体装置は、
図5(C)において、酸化物絶縁膜24を形成したのち、図
6(A)に示すような金属膜26を形成する。次に、該金属膜26に酸素を導入し、金属
酸化物膜26aを酸化物絶縁膜24上に形成する。
【0218】
次に、金属酸化物膜上に、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成した後、該マス
クを用いて、酸化物絶縁膜22、酸化物絶縁膜24、及び金属酸化物膜26aをエッチン
グすることで、
図10に示すような、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜25、及び金属酸
化物膜27を形成することができる。
【0219】
こののち、窒化物絶縁膜29、導電膜31を形成する。
【0220】
図10に示す半導体装置において、トランジスタ102上に金属酸化物膜27が形成さ
れるため、酸化物半導体膜19aに含まれる酸素欠損を低減することが可能である。この
結果、酸化物絶縁膜に含まれる酸素を効率よく酸化物半導体膜に移動させ、酸化物半導体
膜に含まれる酸素欠損量を低減することができる。
【0221】
<変形例4>
実施の形態1に示す半導体装置の変形例を
図11に示す。
【0222】
図11に示す半導体装置は、
図3に示す半導体装置と比較して、酸化物絶縁膜25が形
成されていない点が異なる。なお、ここでは、酸化物絶縁膜25が化学量論的組成を満た
す酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜で形成される、として説明する。
【0223】
このような半導体装置は、
図5(C)において、酸化物絶縁膜22を形成したのち、酸
化物絶縁膜22上に、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マスク
を用いて、酸化物絶縁膜22をエッチングすることで、
図5(D)に示すような酸化物絶
縁膜23を形成することができる。次に、
図6(A)以降の工程を経て、金属酸化物膜2
7、窒化物絶縁膜29、導電膜31を形成する。
【0224】
図11に示す半導体装置において、酸化物絶縁膜23上に化学量論的組成を満たす酸素
よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜が形成されない。しかしながら、金属酸化物膜27
を形成する工程における、金属膜26に酸素を導入する工程において、金属膜26と同様
に、酸化物絶縁膜23に酸素を導入することが可能である。この結果、酸化物絶縁膜23
に導入された酸素を酸化物半導体膜19aに移動させることで、酸化物半導体膜19aの
酸素欠損を低減することが可能である。また、酸化物半導体膜19aが金属酸化物膜27
と接すると、界面に欠陥準位が形成されるが、本変形例では酸化物半導体膜19a上に酸
化物絶縁膜23が形成されるため、界面における欠陥準位を低減することができる。この
結果、トランジスタのしきい値電圧の変動を低減することが可能である。
【0225】
<変形例5>
実施の形態1に示す半導体装置の変形例を
図12に示す。
【0226】
ここでは、
図3に示す半導体装置と比較して、酸化物半導体膜の欠陥量をさらに低減す
ることが可能なトランジスタを有する半導体装置について図面を参照して説明する。本変
形例で説明するトランジスタは、
図3に示す半導体装置と比較して、酸化物半導体膜を複
数有する多層膜が設けられている点が異なる。
【0227】
図12に、半導体装置が有する素子基板の断面図を示す。
図12は、
図2の一点鎖線A
-B、C-D間の断面図である。
【0228】
図12(A)に示すトランジスタ102aは、窒化物絶縁膜15及び酸化物絶縁膜17
を介して、ゲート電極として機能する導電膜13と重なる多層膜37aと、多層膜37a
に接する一対の電極として機能する導電膜21a、21bとを有する。また、窒化物絶縁
膜15及び酸化物絶縁膜17、多層膜37a、及び一対の電極として機能する導電膜21
a、21b上には、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜25、金属酸化物膜27、及び窒化
物絶縁膜29が形成される。
【0229】
図12(A)に示す容量素子105bは、酸化物絶縁膜17上に形成される多層膜37
bと、多層膜37bに接する金属酸化物膜27と、金属酸化物膜27に接する窒化物絶縁
膜29と、窒化物絶縁膜29に接する導電膜31とを有する。また、多層膜37bは、容
量配線として機能する導電膜21cと接する。
【0230】
本実施の形態に示すトランジスタ102bにおいて、多層膜37aは、酸化物半導体膜
19a及び酸化物半導体膜39aを有する。即ち、多層膜37aは2層構造である。また
、酸化物半導体膜19aの一部がチャネル領域として機能する。また、酸化物半導体膜3
9aに接するように、酸化物絶縁膜23が形成されており、酸化物絶縁膜23に接するよ
うに酸化物絶縁膜25が形成されている。即ち、酸化物半導体膜19aと酸化物絶縁膜2
3との間に、酸化物半導体膜39aが設けられている。
【0231】
酸化物半導体膜39aは、酸化物半導体膜19aを構成する元素の一種以上から構成さ
れる酸化物膜である。このため、酸化物半導体膜19aと酸化物半導体膜39aとの界面
において、界面散乱が起こりにくい。従って、該界面においてはキャリアの動きが阻害さ
れないため、トランジスタの電界効果移動度が高くなる。
【0232】
酸化物半導体膜39aは、代表的には、In-Ga酸化物膜、In-Zn酸化物膜、I
n-M-Zn酸化物膜(MはAl、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)であり、
且つ酸化物半導体膜19aよりも伝導帯の下端のエネルギーが真空準位に近く、代表的に
は、酸化物半導体膜39aの伝導帯の下端のエネルギーと、酸化物半導体膜19aの伝導
帯の下端のエネルギーとの差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上
、または0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.
4eV以下である。即ち、酸化物半導体膜39aの電子親和力と、酸化物半導体膜19a
の電子親和力との差が、0.05eV以上、0.07eV以上、0.1eV以上、または
0.15eV以上、且つ2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、または0.4eV以
下である。
【0233】
酸化物半導体膜39aは、Inを含むことで、キャリア移動度(電子移動度)が高くな
るため好ましい。
【0234】
酸化物半導体膜39aとして、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNdをIn
より高い原子数比で有することで、以下の効果を有する場合がある。(1)酸化物半導体
膜39aのエネルギーギャップを大きくする。(2)酸化物半導体膜39aの電子親和力
を小さくする。(3)外部からの不純物の拡散を低減する。(4)酸化物半導体膜19a
と比較して、絶縁性が高くなる。(5)Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd
は、酸素との結合力が強い金属元素であるため、酸素欠損が生じにくくなる。
【0235】
酸化物半導体膜39aがIn-M-Zn酸化物膜であるとき、InおよびMの和を10
0atomic%としたとき、InとMの原子数比率は、好ましくは、Inが50ato
mic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくは、Inが25atomi
c%未満、Mが75atomic%以上とする。
【0236】
また、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aが、In-M-Zn酸化物膜(
Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜19a
と比較して、酸化物半導体膜39aに含まれるM(Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、
またはNd)の原子数比が大きく、代表的には、酸化物半導体膜19aに含まれる上記原
子と比較して、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上高い原子
数比である。
【0237】
また、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aが、In-M-Zn酸化物膜(
Mは、Al、Ga、Y、Zr、La、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜39a
をIn:M:Zn=x1:y1:z1[原子数比]、酸化物半導体膜19aをIn:M:
Zn=x2:y2:z2[原子数比]とすると、y1/x1がy2/x2よりも大きく、
好ましくは、y1/x1がy2/x2よりも1.5倍以上である。さらに好ましくは、y
1/x1がy2/x2よりも2倍以上大きく、より好ましくは、y1/x1がy2/x2
よりも3倍以上大きい。
【0238】
酸化物半導体膜19aがIn-M-Zn酸化物膜(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La
、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜19aを成膜するために用いるターゲット
において、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y
1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6
以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下と
することで、酸化物半導体膜19aとしてCAAC-OS膜が形成されやすくなる。ター
ゲットの金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、In:M
:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2等がある。
【0239】
酸化物半導体膜39aがIn-M-Zn酸化物膜(Mは、Al、Ga、Y、Zr、La
、Ce、またはNd)の場合、酸化物半導体膜39aを成膜するために用いるターゲット
において、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x2:y2:z2とすると、x2/y
2<x1/y1であって、z2/y2は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であ
ることが好ましい。なお、z2/y2を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜39
aとしてCAAC-OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元素の原子数比の代
表例としては、In:M:Zn=1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:
Zn=1:3:6、In:M:Zn=1:3:8等がある。
【0240】
なお、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aの原子数比はそれぞれ、誤差と
して上記の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。
【0241】
酸化物半導体膜39aは、後に形成する酸化物絶縁膜25を形成する際の、酸化物半導
体膜19aへのダメージ緩和膜としても機能する。
【0242】
酸化物半導体膜39aの厚さは、3nm以上100nm以下、好ましくは3nm以上5
0nmとする。
【0243】
また、酸化物半導体膜39aは、酸化物半導体膜19aと同様に、例えば非単結晶構造
でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS、多結晶構造、後述する微
結晶構造、または非晶質構造を含む。
【0244】
酸化物半導体膜39aは、例えば非晶質構造でもよい。非晶質構造の酸化物半導体膜は
、例えば、原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない。
【0245】
なお、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aそれぞれにおいて、非晶質構造
の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、及び単結晶構造
の領域の二種以上を有する混合膜を構成してもよい。混合膜は、例えば、非晶質構造の領
域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構造の領域の
いずれか二種以上の領域を有する単層構造の場合がある。また、混合膜は、例えば、非晶
質構造の領域、微結晶構造の領域、多結晶構造の領域、CAAC-OSの領域、単結晶構
造の領域のいずれか二種以上が積層した積層構造を有する場合がある。
【0246】
なお、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aは、各膜を単に積層するのでは
なく連続接合(ここでは特に伝導帯の下端のエネルギーが各膜の間で連続的に変化する構
造)が形成されるように作製する。すなわち、各膜の界面にトラップ中心や再結合中心の
ような欠陥準位を形成する不純物が存在しないような積層構造とする。仮に、積層された
酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aの間に不純物が混在していると、エネル
ギーバンドの連続性が失われ、界面でキャリアがトラップされ、あるいは再結合して、消
滅してしまう。
【0247】
連続接合を形成するためには、ロードロック室を備えたマルチチャンバー方式の成膜装
置(スパッタリング装置)を用いて各膜を大気に触れさせることなく連続して積層するこ
とが必要となる。スパッタリング装置における各チャンバーは、酸化物半導体膜にとって
不純物となる水等を可能な限り除去すべくクライオポンプのような吸着式の真空排気ポン
プを用いて高真空排気(5×10-7Pa乃至1×10-4Pa程度まで)することが好
ましい。または、ターボ分子ポンプとコールドトラップを組み合わせて排気系からチャン
バー内に気体、特に炭素または水素を含む気体が逆流しないようにしておくことが好まし
い。
【0248】
なお、多層膜37aの代わりに、
図12(B)に示すトランジスタ102cのように、
多層膜38aを有してもよい。
【0249】
また、多層膜37bの代わりに、
図12(B)に示す容量素子105cのように、多層
膜38bを有してもよい。
【0250】
多層膜38aは、酸化物半導体膜49a、酸化物半導体膜19a、及び酸化物半導体膜
39aを有する。多層膜38bは、導電性を有する膜49b、導電性を有する膜19b、
及び導電性を有する膜39bを有する。即ち、多層膜38a、38bは3層構造である。
また、多層膜38aにおいて、酸化物半導体膜19aがチャネル領域として機能する。
【0251】
また、酸化物絶縁膜17及び酸化物半導体膜49aが接する。即ち、酸化物絶縁膜17
と酸化物半導体膜19aとの間に、酸化物半導体膜49aが設けられている。
【0252】
また、多層膜38a及び酸化物絶縁膜23が接する。また、酸化物半導体膜39a及び
酸化物絶縁膜23が接する。即ち、酸化物半導体膜19aと酸化物絶縁膜23との間に、
酸化物半導体膜39aが設けられている。
【0253】
酸化物半導体膜49aは、酸化物半導体膜39aと同様の材料及び形成方法を適宜用い
ることができる。
【0254】
酸化物半導体膜49aは、酸化物半導体膜19aより膜厚が小さいと好ましい。酸化物
半導体膜49aの厚さを1nm以上5nm以下、好ましくは1nm以上3nm以下とする
ことで、トランジスタのしきい値電圧の変動量を低減することが可能である。
【0255】
本実施の形態に示すトランジスタは、酸化物半導体膜19a及び酸化物絶縁膜23の間
に、酸化物半導体膜39aが設けられている。このため、酸化物半導体膜39aと酸化物
絶縁膜23の間において、不純物及び欠陥によりトラップ準位が形成されても、当該トラ
ップ準位と酸化物半導体膜19aとの間には隔たりがある。この結果、酸化物半導体膜1
9aを流れる電子がトラップ準位に捕獲されにくく、トランジスタのオン電流を増大させ
ることが可能であると共に、電界効果移動度を高めることができる。また、トラップ準位
に電子が捕獲されると、該電子がマイナスの固定電荷となってしまう。この結果、トラン
ジスタのしきい値電圧が変動してしまう。しかしながら、酸化物半導体膜19aとトラッ
プ準位との間に隔たりがあるため、トラップ準位における電子の捕獲を低減することが可
能であり、しきい値電圧の変動を低減することができる。
【0256】
また、酸化物半導体膜39aは、外部からの不純物を遮蔽することが可能であるため、
外部から酸化物半導体膜19aへ移動する不純物量を低減することが可能である。また、
酸化物半導体膜39aは、酸素欠損を形成しにくい。これらのため、酸化物半導体膜19
aにおける不純物濃度及び酸素欠損量を低減することが可能である。
【0257】
また、酸化物絶縁膜17と酸化物半導体膜19aとの間に、酸化物半導体膜49aが設
けられており、酸化物半導体膜19aと酸化物絶縁膜23との間に、酸化物半導体膜39
aが設けられているため、酸化物半導体膜49aと酸化物半導体膜19aとの界面近傍に
おけるシリコンや炭素の濃度、酸化物半導体膜19aにおけるシリコンや炭素の濃度、ま
たは酸化物半導体膜39aと酸化物半導体膜19aとの界面近傍におけるシリコンや炭素
の濃度を低減することができる。
【0258】
このような構造を有するトランジスタ102cは、酸化物半導体膜32を含む多層膜3
8aにおいて欠陥が極めて少ないため、トランジスタの電気特性を向上させることが可能
であり、代表的には、オン電流の増大及び電界効果移動度の向上が可能である。また、ス
トレス試験の一例であるBTストレス試験及び光BTストレス試験におけるしきい値電圧
の変動量が少なく、信頼性が高い。
【0259】
<トランジスタのバンド構造>
次に、
図12(A)に示すトランジスタ102bに設けられる多層膜37a、及び
図1
2(B)に示すトランジスタ102cに設けられる多層膜38aのバンド構造について、
図13を用いて説明する。
【0260】
ここでは、例として、酸化物半導体膜19aとしてエネルギーギャップが3.15eV
であるIn-Ga-Zn酸化物を用い、酸化物半導体膜39aとしてエネルギーギャップ
が3.5eVであるIn-Ga-Zn酸化物を用いる。エネルギーギャップは、分光エリ
プソメータ(HORIBA JOBIN YVON社 UT-300)を用いて測定する
ことができる。
【0261】
酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aの真空準位と価電子帯上端のエネルギ
ー差(イオン化ポテンシャルともいう。)は、それぞれ8eV及び8.2eVである。な
お、真空準位と価電子帯上端のエネルギー差は、紫外線光電子分光分析(UPS:Ult
raviolet Photoelectron Spectroscopy)装置(P
HI社 VersaProbe)を用いて測定できる。
【0262】
したがって、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aの真空準位と伝導帯下端
のエネルギー差(電子親和力ともいう。)は、それぞれ4.85eV及び4.7eVであ
った。
【0263】
図13(A)は、多層膜37aのバンド構造の一部を模式的に示している。ここでは、
多層膜37aに酸化シリコン膜を接して設けた場合について説明する。なお、
図13(A
)に表すEcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物
半導体膜19aの伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS2は酸化物半導体膜39aの伝
導帯下端のエネルギーを示し、EcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示
す。また、EcI1は、
図12(A)において、酸化物絶縁膜17に相当し、EcI2は
、
図12(A)において、酸化物絶縁膜23に相当する。
【0264】
図13(A)に示すように、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aにおいて
、伝導帯下端のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。換言すると、連続的に変化
するともいうことができる。これは、酸化物半導体膜39aは、酸化物半導体膜19aと
共通の元素を含み、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aの間で、酸素が相互
に移動することで混合層が形成されるためであるということができる。
【0265】
図13(A)より、多層膜37aの酸化物半導体膜19aがウェル(井戸)となり、多
層膜37aを用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜19aに形成
されることがわかる。なお、多層膜37aは、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化し
ているため、酸化物半導体膜19aと酸化物半導体膜39aとが連続接合している、とも
いえる。
【0266】
なお、
図13(A)に示すように、酸化物半導体膜39aと、酸化物絶縁膜23との界
面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形成され得るものの、酸化物半導体
膜39aが設けられることにより、酸化物半導体膜19aと該トラップ準位とを遠ざける
ことができる。ただし、EcS1とEcS2とのエネルギー差が小さい場合、酸化物半導
体膜19aの電子が該エネルギー差を越えてトラップ準位に達することがある。トラップ
準位に電子が捕獲されることで、酸化物絶縁膜界面にマイナスの電荷が生じ、トランジス
タのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。したがって、EcS1とEcS2と
のエネルギー差を、0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トランジス
タのしきい値電圧の変動が低減され、安定した電気特性となるため好適である。
【0267】
また、
図13(B)は、多層膜37aのバンド構造の一部を模式的に示し、
図13(A
)に示すバンド構造の変形例である。ここでは、多層膜37aに酸化シリコン膜を接して
設けた場合について説明する。なお、
図13(B)に表すEcI1は酸化シリコン膜の伝
導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物半導体膜19aの伝導帯下端のエネルギ
ーを示し、EcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、EcI1
は、
図12(A)において、酸化物絶縁膜17に相当し、EcI2は、
図12(A)にお
いて、酸化物絶縁膜23に相当する。
【0268】
図12(A)に示すトランジスタにおいて、一対の電極として機能する導電膜21a、
21bの形成時に多層膜37aの上方、すなわち酸化物半導体膜39aがエッチングされ
る場合がある。一方、酸化物半導体膜19aの上面は、酸化物半導体膜39aの成膜時に
酸化物半導体膜19aと酸化物半導体膜39aの混合層が形成される場合がある。
【0269】
例えば、酸化物半導体膜19aが、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]のIn
-Ga-Zn酸化物、またはIn:Ga:Zn=3:1:2[原子数比]のIn-Ga-
Zn酸化物をスパッタリングターゲットに用いて成膜した酸化物半導体膜であり、酸化物
半導体膜39aが、In:Ga:Zn=1:3:2[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化
物、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物、またはIn
:Ga:Zn=1:3:6[原子数比]のIn-Ga-Zn酸化物をスパッタリングター
ゲットに用いて成膜した酸化物半導体膜である場合、酸化物半導体膜19aよりも酸化物
半導体膜39aのGaの含有量が多いため、酸化物半導体膜19aの上面には、GaOx
層または酸化物半導体膜19aよりもGaを多く含む混合層が形成されうる。
【0270】
したがって、酸化物半導体膜39aがエッチングされた場合においても、EcS1のE
cI2側の伝導帯下端のエネルギーが高くなり、
図13(B)に示すバンド構造のように
なる場合がある。
【0271】
図13(B)に示すバンド構造のようになる場合、チャネル領域の断面観察時において
、多層膜37aは、酸化物半導体膜19aのみと見かけ上観察される場合がある。しかし
ながら、実質的には、酸化物半導体膜19a上には、酸化物半導体膜19aよりもGaを
多く含む混合層が形成されているため、該混合層を1.5番目の層として、捉えることが
できる。なお、該混合層は、例えば、EDX分析等によって、多層膜37aに含有する元
素を測定した場合、酸化物半導体膜19aの上方の組成を分析することで確認することが
できる。例えば、酸化物半導体膜19aの上方の組成が、酸化物半導体膜19a中の組成
よりもGaの含有量が多い構成となることで確認することができる。
【0272】
図13(C)は、多層膜38aのバンド構造の一部を模式的に示している。ここでは、
多層膜38aに酸化シリコン膜を接して設けた場合について説明する。なお、
図13(C
)に表すEcI1は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS1は酸化物
半導体膜19aの伝導帯下端のエネルギーを示し、EcS2は酸化物半導体膜39aの伝
導帯下端のエネルギーを示し、EcS3は酸化物半導体膜49aの伝導帯下端のエネルギ
ーを示し、EcI2は酸化シリコン膜の伝導帯下端のエネルギーを示す。また、EcI1
は、
図12(B)において、酸化物絶縁膜17に相当し、EcI2は、
図12(B)にお
いて、酸化物絶縁膜23に相当する。
【0273】
図13(C)に示すように、酸化物半導体膜49a、酸化物半導体膜19a、及び酸化
物半導体膜39aにおいて、伝導帯下端のエネルギーは障壁が無くなだらかに変化する。
換言すると、連続的に変化するともいうことができる。これは、酸化物半導体膜49aお
よび39aは、酸化物半導体膜19aと共通の元素を含み、酸化物半導体膜19a及び酸
化物半導体膜49aの間で、酸化物半導体膜19a及び酸化物半導体膜39aの間で、酸
素が相互に移動することで混合層が形成されるためであるということができる。
【0274】
図13(C)より、多層膜38aの酸化物半導体膜19aがウェル(井戸)となり、多
層膜38aを用いたトランジスタにおいて、チャネル領域が酸化物半導体膜19aに形成
されることがわかる。なお、多層膜38aは、伝導帯下端のエネルギーが連続的に変化し
ているため、酸化物半導体膜49aと、酸化物半導体膜19aと、酸化物半導体膜39a
とが連続接合している、ともいえる。
【0275】
なお、酸化物絶縁膜17、酸化物半導体膜19a、及び酸化物絶縁膜23が順に積層さ
れる場合、酸化物半導体膜19aと、酸化物絶縁膜23との界面近傍、酸化物半導体膜1
9aと、酸化物絶縁膜17との界面近傍には、不純物や欠陥に起因したトラップ準位が形
成され得るものの、
図13(C)に示すように、酸化物半導体膜39a、酸化物半導体膜
49aが設けられることにより、酸化物半導体膜19aと該トラップ準位とを遠ざけるこ
とができる。ただし、EcS1とEcS2とのエネルギー差、及びEcS1とEcS3と
のエネルギー差が小さい場合、酸化物半導体膜19aの電子が該エネルギー差を越えてト
ラップ準位に達することがある。トラップ準位に電子が捕獲されることで、酸化物絶縁膜
界面にマイナスの電荷が生じ、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてし
まう。したがって、EcS1とEcS2とのエネルギー差、及びEcS1とEcS3との
エネルギー差を、0.1eV以上、好ましくは0.15eV以上とすると、トランジスタ
のしきい値電圧の変動が低減され、安定した電気特性となるため好適である。
【0276】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法な
どと適宜組み合わせて用いることができる。
【0277】
<変形例6>
実施の形態1に示す半導体装置の変形例を
図14に示す。
【0278】
図14に示す半導体装置は、
図3に示す半導体装置と比較して、窒化物絶縁膜29が形
成されていない点が異なる。
【0279】
このような半導体装置は、
図6(B)において、金属酸化物膜26aを形成したのち、
金属酸化物膜26a上に、フォトリソグラフィ工程によりマスクを形成する。次に、該マ
スクを用いて、金属酸化物膜26aをエッチングして、開口部41を形成する。次に、図
7(A)以降の工程を経て、導電膜31を形成する。
【0280】
図14に示す半導体装置において、窒化物絶縁膜29が形成されていない。しかしなが
ら、
図5(D)に示す酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25を形成するためのエッチン
グ工程において酸化物半導体膜19cはダメージを受け、酸素欠損が形成される。この結
果、酸化物半導体膜19cは、導電性を有する膜19bとなる。
【0281】
この結果、トランジスタの酸化物半導体膜と同時に、容量素子の一方となる電極である
導電性を有する膜を形成することができる。
【0282】
<変形例7>
本実施の形態1に示すトランジスタに設けられる一対の電極として機能する導電膜21
a、21bとして、タングステン、チタン、アルミニウム、銅、モリブデン、クロム、ま
たはタンタル単体若しくは合金等の酸素と結合しやすい導電材料を用いることができる。
この結果、酸化物半導体膜19aに含まれる酸素と一対の電極として機能する導電膜21
a、21bに含まれる導電材料とが結合し、酸化物半導体膜19aにおいて、酸素欠損領
域が形成される。また、酸化物半導体膜19aに一対の電極として機能する導電膜21a
、21bを形成する導電材料の構成元素の一部が混入する場合もある。これらの結果、酸
化物半導体膜19aにおいて、一対の電極として機能する導電膜21a、21bと接する
領域近傍に、低抵抗領域が形成される。低抵抗領域は、一対の電極として機能する導電膜
21a、21bに接し、且つ酸化物絶縁膜17と、一対の電極として機能する導電膜21
a、21bの間に形成される。低抵抗領域は、導電性が高いため、酸化物半導体膜19a
と一対の電極として機能する導電膜21a、21bとの接触抵抗を低減することが可能で
あり、トランジスタのオン電流を増大させることが可能である。
【0283】
また、一対の電極として機能する導電膜21a、21bを、上記酸素と結合しやすい導
電材料と、窒化チタン、窒化タンタル、ルテニウム等の酸素と結合しにくい導電材料との
積層構造としてもよい。このような積層構造とすることで、一対の電極として機能する導
電膜21a、21bと酸化物絶縁膜23との界面において、一対の電極として機能する導
電膜21a、21bの酸化を防ぐことが可能であり、一対の電極として機能する導電膜2
1a、21bの高抵抗化を抑制することが可能である。
【0284】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法な
どと適宜組み合わせて用いることができる。
【0285】
<変形例8>
本実施の形態1に示すトランジスタの作製方法において、一対の電極として機能する導
電膜21a、21bを形成した後、酸化物半導体膜19aを酸化雰囲気で発生させたプラ
ズマに曝し、酸化物半導体膜19aに酸素を供給することができる。酸化雰囲気としては
、酸素、オゾン、一酸化二窒素、二酸化窒素等の雰囲気がある。さらに、当該プラズマ処
理において、基板11側にバイアスを印加しない状態で発生したプラズマに酸化物半導体
膜19aを曝すことが好ましい。この結果、酸化物半導体膜19aにダメージを与えず、
且つ酸素を供給することが可能であり、酸化物半導体膜19aに含まれる酸素欠損量を低
減することができる。また、エッチング処理により酸化物半導体膜19aの表面に残存す
る不純物、例えば、フッ素、塩素等のハロゲン等を除去することができる。また、当該プ
ラズマ処理を300℃以上で加熱しながら行うことが好ましい。プラズマ中の酸素と酸化
物半導体膜19aに含まれる水素が結合し、水となる。基板が加熱されているため、当該
水は酸化物半導体膜19aから脱離する。この結果、酸化物半導体膜19aに含まれる水
素及び水の含有量を低減することができる。
【0286】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法な
どと適宜組み合わせて用いることができる。
【0287】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1と異なる半導体装置及びその作製方法について図面を
参照して説明する。本実施の形態では、トランジスタにおいて異なるゲート電極の間に酸
化物半導体膜が設けられている構造、即ちデュアルゲート構造のトランジスタである点が
実施の形態1と異なる。なお、実施の形態1と重複する構成は説明を省略する。
【0288】
表示装置に含まれる素子基板の具体的な構成について説明する。ここでは、画素103
に液晶素子を用いた液晶表示装置の具体的な例について説明する。ここでは、
図1(B)
に示す画素103の上面図を
図15に示す。
【0289】
図15に示す画素103の上面図において、ゲート電極として機能する導電膜13、酸
化物半導体膜19a、導電膜21a、21b、及び酸化物絶縁膜25それぞれの一部また
は全部に重なるゲート電極として機能する導電膜31aを有する点が実施の形態1と異な
る。ゲート電極として機能する導電膜31aは、開口部41aにおいて、ゲート電極とし
て機能する導電膜13と接続する。
【0290】
次いで、
図15の一点鎖線A-B、C-Dにおける断面図を
図16に示す。
図16に示
すトランジスタ102aは、チャネルエッチ型のトランジスタである。なお、一点破線A
-Bは、トランジスタ102aのチャネル長方向、トランジスタ102aと画素電極とし
て機能する導電膜31の接続部、及び容量素子105aの断面図であり、C-Dにおける
断面図は、トランジスタ102aのチャネル幅方向、及びゲート電極として機能する導電
膜13及びゲート電極として機能する導電膜31aの接続部における断面図である。
【0291】
図16に示すトランジスタ102aは、デュアルゲート構造のトランジスタであり、基
板11上に設けられるゲート電極として機能する導電膜13を有する。また、基板11及
びゲート電極として機能する導電膜13上に形成される窒化物絶縁膜15と、窒化物絶縁
膜15上に形成される酸化物絶縁膜17と、窒化物絶縁膜15及び酸化物絶縁膜17を介
して、ゲート電極として機能する導電膜13と重なる酸化物半導体膜19aと、酸化物半
導体膜19aに接する、一対の電極として機能する導電膜21a、21bとを有する。ま
た、酸化物絶縁膜17、酸化物半導体膜19a、及び一対の電極として機能する導電膜2
1a、21b上には、酸化物絶縁膜23が形成され、酸化物絶縁膜23上には酸化物絶縁
膜25が形成される。窒化物絶縁膜15、酸化物絶縁膜23、酸化物絶縁膜25、導電膜
21b上には金属酸化物膜27が形成され、金属酸化物膜27上には窒化物絶縁膜29が
形成される。また、一対の電極として機能する導電膜21a、21bの一方、ここでは導
電膜21bに接続する導電膜31、及びゲート電極として機能する導電膜31aが窒化物
絶縁膜29上に形成される。なお、導電膜31は画素電極として機能する。
【0292】
C-Dにおける断面図に示すように、窒化物絶縁膜15、金属酸化物膜27、及び窒化
物絶縁膜29に設けられる開口部41aにおいて、ゲート電極として機能する導電膜31
aは、ゲート電極として機能する導電膜13と接続する。即ち、ゲート電極として機能す
る導電膜13及びゲート電極として機能する導電膜31aは同電位である。
【0293】
このため、トランジスタ102aの各ゲート電極に同じ電圧を印加することで、初期特
性バラつきの低減、-GBTストレス試験の劣化の抑制及び異なるドレイン電圧における
オン電流の立ち上がり電圧の変動の抑制が可能である。また、酸化物半導体膜19aにお
いてキャリアの流れる領域が膜厚方向においてより大きくなるため、キャリアの移動量が
増加する。この結果、トランジスタ102aのオン電流が大きくなると共に、電界効果移
動度が高くなり、代表的には電界効果移動度が20cm2/V・s以上となる。
【0294】
本実施の形態に示すトランジスタ102a上には分離された酸化物絶縁膜23、25が
形成される。分離された酸化物絶縁膜23、25が酸化物半導体膜19aと重畳する。ま
た、チャネル幅方向の断面図において、酸化物半導体膜19aの外側に酸化物絶縁膜23
及び酸化物絶縁膜25の端部が位置する。また、
図16に示すチャネル幅方向において、
ゲート電極として機能する導電膜31aは、酸化物絶縁膜23及び酸化物絶縁膜25を介
して、酸化物半導体膜19aの側面と対向する。
【0295】
エッチング等で加工された酸化物半導体膜の端部においては、加工におけるダメージに
より欠陥が形成されると共に、不純物付着などにより汚染されるため、電界などのストレ
スが与えられることによって活性化しやすく、それによりn型(低抵抗)となりやすい。
そのため、ゲート電極として機能する導電膜13と重なる酸化物半導体膜19aの端部に
おいて、n型化しやすくなる。当該n型化された端部が、一対の電極として機能する導電
膜21a、21bの間に設けられると、n型化された領域がキャリアのパスとなってしま
い、寄生チャネルが形成される。しかしながら、C-Dの断面図に示すように、チャネル
幅方向において、ゲート電極として機能する導電膜31aが、酸化物絶縁膜23、25を
介して、酸化物半導体膜19aの側面と対向することで、ゲート電極として機能する導電
膜31aの電界の影響により、酸化物半導体膜19aの側面、または側面及びその近傍を
含む領域における寄生チャネルの発生が抑制される。この結果、しきい値電圧におけるド
レイン電流の上昇が急峻である、電気特性の優れたトランジスタとなる。
【0296】
また、酸化物半導体膜19a上に設けられる酸化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25
は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜で形成されること
が好ましい。
【0297】
酸化物絶縁膜23、25上に酸素の透過性の低い金属酸化物膜27を設けることで、酸
化物絶縁膜23または酸化物絶縁膜25に含まれる酸素が、外部に拡散することを防ぐこ
とが可能であるため、酸化物半導体膜19aに含まれる酸素欠損を低減することが可能で
ある。
【0298】
また、窒化物絶縁膜15及び窒化物絶縁膜29の内側に、酸化物半導体膜19aが含ま
れる。このため、外部から酸化物半導体膜19aへの水、水素等の移動が、窒化物絶縁膜
15及び窒化物絶縁膜29により妨げられる。この結果、酸化物半導体膜19aに含まれ
る水、水素等の含有量を低減することができる。
【0299】
この結果、トランジスタ102aは、ノーマリーオフ特性を有するトランジスタとなる
。また、経時変化やストレス試験により、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値
電圧の変動量を低減することができる。
【0300】
また、容量素子105aにおいて、導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19a
と同時に形成された膜であり、且つプラズマダメージ等により酸素欠損が形成され、導電
性が高められた膜である。または、導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19aと
同時に形成された膜であり、且つ不純物を含むことにより導電性が高められた膜である。
または、導電性を有する膜19bは、酸化物半導体膜19aと同時に形成された膜であり
、且つ不純物を含むと共に、プラズマダメージ等により酸素欠損が形成され、導電性が高
められた膜である。
【0301】
また、容量素子105aにおいて、誘電体として高誘電体材料である金属酸化物膜27
及び窒化物絶縁膜29を用いることで、容量素子105aの電荷容量を増大させることが
可能である。
【0302】
本実施の形態に示す半導体装置の素子基板は、トランジスタの酸化物半導体膜と同時に
、容量素子の一方となる電極が形成される。また、画素電極として機能する導電膜を容量
素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新たに導電
膜を形成する工程が不要であり、作製工程を削減できる。また、一対の電極が透光性を有
するため、容量素子は透光性を有する。この結果、容量素子の占有面積を大きくしつつ、
画素の開口率を高めることができる。
【0303】
以下に、トランジスタ102aの構成の詳細について説明する。なお、実施の形態1と
同じ符号の構成については、説明を省略する。
【0304】
ゲート電極として機能する導電膜31aは、実施の形態1に示す導電膜31と同様の材
料を適宜用いることができる。
【0305】
次に、
図16に示すトランジスタ102a及び容量素子105aの作製方法について、
図4乃至
図6、及び
図17を用いて説明する。
【0306】
実施の形態1と同様に、
図4乃至
図6(B)の工程を経て、基板11上にゲート電極と
して機能する導電膜13、窒化物絶縁膜15、酸化物絶縁膜16、酸化物半導体膜19a
、導電性を有する膜19b、一対の電極として機能する導電膜21a、21b、酸化物絶
縁膜22、酸化物絶縁膜24、金属酸化物膜26a、及び窒化物絶縁膜28をそれぞれ形
成する。当該工程においては、第1のフォトマスク乃至第4のフォトマスクを用いたフォ
トリソグラフィ工程を行う。
【0307】
次に、窒化物絶縁膜28上に第5のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によ
りマスクを形成した後、該マスクを用いて、窒化物絶縁膜15、金属酸化物膜26a、及
び窒化物絶縁膜28の一部をエッチングして、
図17(A)に示すように、開口部41及
び開口部41aを有する窒化物絶縁膜15、金属酸化物膜27、及び窒化物絶縁膜29を
形成する。
【0308】
次に、
図17(B)に示すように、ゲート電極として機能する導電膜13、導電膜21
b、及び窒化物絶縁膜29上に、後に導電膜31、31aとなる導電膜30を形成する。
【0309】
次に、導電膜30上に、第6のフォトマスクを用いたフォトリソグラフィ工程によりマ
スクを形成する。次に、該マスクを用いて導電膜30の一部をエッチングして、
図17(
C)に示すように、画素電極として機能する導電膜31及びゲート電極として機能する導
電膜31aを形成する。この後、マスクを除去する。
【0310】
以上の工程により、トランジスタ102aを作製すると共に、容量素子105aを作製
することができる。
【0311】
本実施の形態に示すトランジスタは、チャネル幅方向において、ゲート電極として機能
する導電膜31aが、酸化物絶縁膜23、25を介して、酸化物半導体膜19aの側面と
対向することで、ゲート電極として機能する導電膜31aの電界の影響により、酸化物半
導体膜19aの側面、または側面及びその近傍を含む領域における寄生チャネルの発生が
抑制される。この結果、しきい値電圧におけるドレイン電流の上昇が急峻である、電気特
性の優れたトランジスタとなる。
【0312】
また、本実施の形態に示すトランジスタは、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの
酸素を含む酸化物絶縁膜上に、酸素の透過性の低い金属酸化物膜を設けることで、酸化物
絶縁膜に含まれる酸素が、外部に拡散することを防ぐことが可能である。この結果、酸化
物絶縁膜に含まれる酸素を効率よく酸化物半導体膜に移動させ、酸化物半導体膜に含まれ
る酸素欠損量を低減することができる。
【0313】
また、複数の窒化物絶縁膜の内側に、酸化物半導体膜が含まれる。このため、外部から
酸化物半導体膜への水、水素等の移動が、窒化物絶縁膜により妨げられる。この結果、酸
化物半導体膜に含まれる水、水素等の含有量を低減することができる。
【0314】
以上のことから、ノーマリーオフ特性を有するトランジスタを作製することができる。
また、経時変化やストレス試験による、トランジスタの電気特性、代表的にはしきい値電
圧の変動量が低減されたトランジスタを作製することができる。
【0315】
また、本実施の形態に示す半導体装置の素子基板は、トランジスタの酸化物半導体膜と
同時に、容量素子の一方となる電極が形成される。また、画素電極として機能する導電膜
を容量素子の他方の電極として用いる。これらのため、容量素子を形成するために、新た
に導電膜を形成する工程が不要であり、作製工程を削減できる。また、一対の電極が透光
性を有するため、容量素子は透光性を有する。この結果、容量素子の占有面積を大きくし
つつ、画素の開口率を高めることができる。
【0316】
上記より、酸化物半導体膜を用いた半導体装置において電気特性が向上した半導体装置
を得ることができる。
【0317】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法、
並びに変形例などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0318】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置に含まれているトランジスタ
において、酸化物半導体膜に適用可能な一態様、及び容量素子の電極である導電性を有す
る膜について説明する。なお、導電性を有する膜は、導電性の高い酸化物半導体膜とも言
えるため、はじめに、酸化物半導体膜を代表例として用いて説明する。
【0319】
酸化物半導体膜は、単結晶構造の酸化物半導体(以下、単結晶酸化物半導体という。)
、多結晶構造の酸化物半導体(以下、多結晶酸化物半導体という。)、微結晶構造の酸化
物半導体(以下、微結晶酸化物半導体という。)、及び非晶質構造の酸化物半導体(以下
、非晶質酸化物半導体という。)の一以上で構成されてもよい。また、酸化物半導体膜は
、CAAC-OS膜で構成されていてもよい。また、酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半
導体及び結晶粒を有する酸化物半導体で構成されていてもよい。以下に、代表例として、
CAAC-OS、多結晶酸化物半導体及び微結晶酸化物半導体について説明する。
【0320】
<CAAC-OS>
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。また、CA
AC-OS膜に含まれる結晶部は、c軸配向性を有する。平面TEM像において、CAA
C-OS膜に含まれる結晶部の面積が2500nm2以上、さらに好ましくは5μm2以
上、さらに好ましくは1000μm2以上である。また、断面TEM像において、該結晶
部を50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは95%以上有することで、単
結晶に近い物性の薄膜となる。
【0321】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち
結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、C
AAC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0322】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。な
お、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配
置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直
」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従っ
て、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0323】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0324】
なお、CAAC-OS膜に対し、電子線回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)
が観測される。
【0325】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0326】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、CAAC-OS膜のout-of-plane法による
解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、I
nGaZn酸化物の結晶の(00x)面(xは整数)に帰属されることから、CAAC-
OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いて
いることが確認できる。
【0327】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZn酸化物の結晶の(110)面に帰属される。InGaZn酸化物の単結
晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ
軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結
晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2
θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0328】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のa-b面に平行な面である。
【0329】
なお、結晶は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行
った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面また
は上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の形
状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成面
または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0330】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS
膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上
面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CA
AC-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部
分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0331】
なお、CAAC-OS膜のout-of-plane法による解析では、2θが31°
近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近
傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶部が含まれるこ
とを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°
近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0332】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素
、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリ
コンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸
化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させ
る要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半
径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜
の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不
純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0333】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化
物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによっ
てキャリア発生源となることがある。
【0334】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性また
は実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体
膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当
該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノ
ーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度
真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体
膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる
。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する
時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高
く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定とな
る場合がある。
【0335】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特
性の変動が小さい。
【0336】
<微結晶酸化物半導体>
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することがで
きない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以
下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10n
m以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrys
tal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline O
xide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、T
EMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。
【0337】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以
上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異な
る結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。
従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない
場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径のX線を用いるXRD
装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析では、結晶面を
示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、結晶部よりも大きい径(例えば
50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと
、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、結晶
部の大きさと近いか結晶部より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電
子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、スポットが観測
される。また、nc-OS膜に対しナノビーム電子線回折を行うと、円を描くように(リ
ング状に)輝度の高い領域が観測される場合がある。また、nc-OS膜に対しナノビー
ム電子線回折を行うと、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある。
【0338】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そ
のため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし
、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-
OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0339】
<酸化物半導体膜及び酸化物導電体膜>
次に、酸化物半導体膜と、導電性を有する膜の抵抗率について説明する。なお、ここで
は、便宜上、導電性を有する膜を酸化物導電体膜として説明する。
【0340】
ここで、トランジスタに用いられる
図2に示す酸化物半導体膜19aのような、酸化物
半導体で形成される膜(以下、酸化物半導体膜(OS)という。)と、容量素子の電極と
して用いられる
図2に示す導電性を有する膜19bのような、酸化物導電体で形成される
膜(以下、酸化物導電体膜(OC)という。)それぞれにおける、抵抗率の温度依存性に
ついて、
図31を用いて説明する。
図31において、横軸に測定温度を示し、縦軸に抵抗
率を示す。また、酸化物半導体膜(OS)の測定結果を丸印で示し、酸化物導電体膜(O
C)の測定結果を四角印で示す。
【0341】
なお、酸化物半導体膜(OS)を含む試料は、ガラス基板上に、原子数比がIn:Ga
:Zn=1:1:1.2のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により厚
さ35nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を形成し、原子数比がIn:Ga:Zn=1:4
:5のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により厚さ20nmのIn-
Ga-Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後、450℃の窒素
及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理し、さらにプラズマCVD法で酸化窒化シリコン膜
を形成して、作製された。
【0342】
また、酸化物導電体膜(OC)を含む試料は、ガラス基板上に、原子数比がIn:Ga
:Zn=1:1:1のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法により厚さ1
00nmのIn-Ga-Zn酸化物膜を形成し、450℃の窒素雰囲気で加熱処理した後
、450℃の窒素及び酸素の混合ガス雰囲気で加熱処理し、プラズマCVD法で窒化シリ
コン膜を形成して、作製された。
【0343】
図31からわかるように、酸化物導電体膜(OC)における抵抗率の温度依存性は、酸
化物半導体膜(OS)における抵抗率の温度依存性より小さい。代表的には、80K以上
290K以下における酸化物導電体膜(OC)の抵抗率の変化率は、±20%未満である
。または、150K以上250K以下における抵抗率の変化率は、±10%未満である。
即ち、酸化物導電体は、縮退半導体であり、伝導帯端とフェルミ準位とが一致または略一
致していると推定される。このため、酸化物導電体膜を、抵抗素子、配線、容量素子の電
極、画素電極、コモン電極等に用いることが可能である。
【0344】
なお、本実施の形態に示す構成及び方法などは、他の実施の形態に示す構成及び方法、
並びに変形例などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0345】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置が適用された電子機器の構成例につい
て説明する。また、本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を適用した表示モジ
ュールについて、
図28を用いて説明を行う。
【0346】
図28に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002と
の間に、FPC8003に接続されたタッチパネル8004、FPC8005に接続され
た表示パネル8006、バックライトユニット8007、フレーム8009、プリント基
板8010、バッテリー8011を有する。なお、バックライトユニット8007、バッ
テリー8011、タッチパネル8004などは、設けられない場合もある。
【0347】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル8006に用いることができる。
【0348】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチパネル8004及び表示パネル
8006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0349】
タッチパネル8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル
8006に重畳して用いることができる。また、表示パネル8006の対向基板(封止基
板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。または、表示パネル
8006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
または、表示パネル8006の各画素内にタッチセンサ用電極を設け、容量型式のタッチ
パネルとすることも可能である。
【0350】
バックライトユニット8007は、光源8008を有する。光源8008をバックライ
トユニット8007の端部に設け、光拡散板を用いる構成としてもよい。
【0351】
フレーム8009は、表示パネル8006の保護機能の他、プリント基板8010の動
作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレ
ーム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0352】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリー8011による電源であってもよい。バッテリー801
1は、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0353】
また、表示モジュール8000には、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を
追加して設けてもよい。
【0354】
図27は、本発明の一態様の半導体装置を含む電子機器の外観図である。
【0355】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機と
もいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカ
メラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯
型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げら
れる。
【0356】
図27(A)は、携帯型の情報端末であり、本体1001、筐体1002、表示部10
03a、1003bなどによって構成されている。表示部1003bはタッチパネルとな
っており、表示部1003bに表示されるキーボードボタン1004を触れることで画面
操作や、文字入力を行うことができる。勿論、表示部1003aをタッチパネルとして構
成してもよい。上記実施の形態で示したトランジスタをスイッチング素子として液晶パネ
ルや有機発光パネルを作製して表示部1003a、1003bに適用することにより、信
頼性の高い携帯型の情報端末とすることができる。
【0357】
図27(A)に示す携帯型の情報端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像な
ど)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に
表示した情報を操作又は編集する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理
を制御する機能、等を有することができる。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子
(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。
【0358】
また、
図27(A)に示す携帯型の情報端末は、無線で情報を送受信できる構成として
もよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロー
ドする構成とすることも可能である。
【0359】
図27(B)は、携帯音楽プレイヤーであり、本体1021には表示部1023と、耳
に装着するための固定部1022と、スピーカー、操作ボタン1024、外部メモリスロ
ット1025等が設けられている。上記実施の形態で示したトランジスタをスイッチング
素子として液晶パネルや有機発光パネルを作製して表示部1023に適用することにより
、より信頼性の高い携帯音楽プレイヤーとすることができる。
【0360】
さらに、
図27(B)に示す携帯音楽プレイヤーにアンテナやマイク機能や無線機能を
持たせ、携帯電話と連携させれば、乗用車などを運転しながらワイヤレスによるハンズフ
リーでの会話も可能である。
【0361】
図27(C)は、携帯電話であり、筐体1030及び筐体1031の二つの筐体で構成
されている。筐体1031には、表示パネル1032、スピーカー1033、マイクロフ
ォン1034、ポインティングデバイス1036、カメラレンズ1037、外部接続端子
1038などを備えている。また、筐体1030には、携帯電話の充電を行う太陽電池1
040、外部メモリスロット1041などを備えている。また、アンテナは筐体1031
内部に内蔵されている。上記実施の形態で説明するトランジスタを表示パネル1032に
適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0362】
また、表示パネル1032はタッチパネルを備えており、
図27(C)には映像表示さ
れている複数の操作キー1035を点線で示している。なお、太陽電池1040で出力さ
れる電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0363】
表示パネル1032は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネ
ル1032と同一面上にカメラレンズ1037を備えているため、テレビ電話が可能であ
る。スピーカー1033及びマイクロフォン1034は音声通話に限らず、テレビ電話、
録音、再生などが可能である。さらに、筐体1030と筐体1031は、スライドし、図
27(C)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適
した小型化が可能である。
【0364】
外部接続端子1038はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可
能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外
部メモリスロット1041に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応で
きる。
【0365】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであって
もよい。
【0366】
図27(D)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置1050は
、筐体1051に表示部1053が組み込まれている。表示部1053により、映像を表
示することが可能である。また、筐体1051を支持するスタンド1055にCPUが内
蔵されている。上記実施の形態で説明するトランジスタを表示部1053およびCPUに
適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【0367】
テレビジョン装置1050の操作は、筐体1051が備える操作スイッチや、別体のリ
モートコントローラにより行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操
作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0368】
なお、テレビジョン装置1050は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機
により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線
による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方
向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である
。
【0369】
また、テレビジョン装置1050は、外部接続端子1054や、記憶媒体再生録画部1
052、外部メモリスロットを備えている。外部接続端子1054は、USBケーブルな
どの各種ケーブルと接続可能であり、パーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能
である。記憶媒体再生録画部1052では、ディスク状の記録媒体を挿入し、記録媒体に
記憶されているデータの読み出し、記録媒体への書き込みが可能である。また、外部メモ
リスロットに差し込まれた外部メモリ1056にデータ保存されている画像や映像などを
表示部1053に映し出すことも可能である。
【0370】
また、上記実施の形態で説明するトランジスタのオフリーク電流が極めて小さい場合は
、当該トランジスタを外部メモリ1056やCPUに適用することにより、消費電力が十
分に低減された信頼性の高いテレビジョン装置1050とすることができる。
【0371】
本実施の形態は、本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施するこ
とができる。
【実施例0372】
本実施例では、金属膜及び該金属膜に酸素を導入して形成した金属酸化物膜の抵抗率に
ついて測定した結果を説明する。
【0373】
<試料A1>
試料A1の作製方法を説明する。はじめにガラス基板上に金属膜を形成した。ここでは
、スパッタリング法により、厚さ5nmのアルミニウム膜を金属膜として形成した。
【0374】
次に、金属膜に酸素を導入して、金属酸化物膜を形成した。ここでは、プラズマ処理装
置において発生させた酸素プラズマにアルミニウム膜で形成される金属膜を曝し、金属膜
を酸化して酸化アルミニウム膜を金属酸化物膜として形成した。
【0375】
次に、金属酸化物膜上に一対の電極を形成した。ここでは、メタルマスクを用いたスパ
ッタリング法により、厚さ100nmのアルミニウム膜を一対の電極として形成した。な
お、一対の電極の間隔は1000μmであり、一対の電極が対向する長さは70900μ
mであった。
【0376】
以上の工程により、試料A1を作製した。
【0377】
<試料A2>
なお、比較例として、試料A1のように金属酸化物膜を形成せず、金属膜上に一対の電
極を形成した試料を試料A2とする。
【0378】
次に、試料A1及び試料A2の導電率、抵抗率、及び抵抗を表1に示す。
【0379】
【0380】
表1より、金属膜に酸素を導入することで、絶縁性の高い、金属酸化物膜を形成できる
ことが分かった。