(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150495
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】細胞膜結合シグナル伝達因子の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 47/69 20170101AFI20241016BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241016BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241016BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241016BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20241016BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241016BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20241016BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241016BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K47/69
A61P25/00
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/14
A61K9/107
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/00
A61K35/12
A61K38/16
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108378
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2020527102の分割
【原出願日】2018-11-16
(31)【優先権主張番号】62/587,338
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519173657
【氏名又は名称】アイビタ バイオメディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニスター ガブリエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】神経変性疾患を処置するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】複合体の異種混合物を含む組成物であって、前記複合体の異種混合物は、第一のシクロデキストリン分子と、第一の細胞膜脂質に共有結合しているWingless(Wnt)タンパク質とを含む第一の複合体、および第二のシクロデキストリン分子と、第二の細胞膜脂質に共有結合しているHedgehog(Hh)タンパク質とを含む第二の複合体を含む、組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物に組織を暴露することを含み、前記組織は、表皮、真皮、皮膚感覚受容体、皮膚付属器、毛髪、爪、皮脂腺、汗腺又は立毛筋である、組織再生の促進を必要とする組織における組織再生の促進方法。
【請求項2】
前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又はメチル-β-シクロデキストリンの1種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シクロデキストリンは、水素添加反応、ヒドロホルミル化反応、メチル化反応、酸化反応、還元化反応、又は炭素-炭素カップリング反応により化学修飾された、化学修飾シクロデキストリンである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記シクロデキストリンは、メチル-β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記脂質修飾タンパク質は、細胞膜脂質と結合したWingless(Wnt)タンパク質又はHedgehog(Hh)タンパク質の1種以上を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記Hhタンパク質は、ソニックヘッジホッグ(SHh)タンパク質、デザートヘッジホッグ(DHh)タンパク質、又はインディアンヘッジホッグ(IHh)タンパク質の1種以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Wntタンパク質は、Wnt3a、Wnt7b、又はWnt10bの1種以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記脂質修飾タンパク質は、Wingless(Wnt)又はHedgehog(Hh)ファミリーの属するタンパク質以外の他のタンパク質から構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脂質修飾タンパク質の採取時に細胞から分泌される可溶性タンパク質を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記脂質修飾タンパク質は、幹細胞集団から採取される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記幹細胞は、胚性幹細胞、単為生殖幹細胞、成体幹細胞、胎児幹細胞、又は人工多能性幹細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記幹細胞は、動物の幹細胞である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記幹細胞は、ヒト幹細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記幹細胞は、Wntタンパク質又はHhタンパク質を過剰発現するように遺伝子操作されている、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記幹細胞は、遺伝子操作により不死化されている、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記幹細胞は、テロメア逆転写酵素(hTERT)を発現するように遺伝子操作されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種のコスモトロープをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種のコスモトロープは、プロピレングリコール、プロリン、トレハロース、エクトイン、又はトリメチルアミンN-オキシドである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種のコスモトロープは、トレハロースである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの前記複合体を含む局所用組成物である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記局所用組成物は、水性製剤である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記局所用組成物が少なくとも1種のコスモトロープと、任意に抗菌剤をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種のコスモトロープは、トレハロースである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記局所用組成物のpHが約4.5から約8.0の間である、請求項20から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
組織再生の促進を必要とする組織での組織再生の促進における使用のための脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物であって、前記組織は、表皮、真皮、皮膚感覚受容体、皮膚付属器、毛髪、爪、皮脂腺、汗腺又は立毛筋である、組成物。
【請求項26】
脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物の、組織再生の促進を必要とする組織での組織再生の促進における使用であって、前記組織は、表皮、真皮、皮膚感覚受容体、皮膚付属器、毛髪、爪、皮脂腺、汗腺又は立毛筋である、使用。
【請求項27】
組織再生の促進を必要とする組織における組織再生の促進のための薬剤の製造における脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物の使用であって、前記組織は、表皮、真皮、皮膚感覚受容体、皮膚付属器、毛髪、爪、皮脂腺、汗腺又は立毛筋である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2017年11月16日に出願された米国仮出願第62/587338号の優先権の利益を主張する。当該出願の内容全体を参照により本明細書で援用する。
【背景技術】
【0002】
Wingless(Wnt)ファミリー及びHedgehog(Hh)ファミリーのタンパク質を始めとする膜結合(membrane bound)シグナル伝達因子は、さまざまな疾患で使用される可能性があるが、これらのタンパク質を得るための現在の方法では、安定で効果的な分子を得ることができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書は、本明細書で開示されるような脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物を開示する。
【0004】
また、本明細書は、本明細書で開示されるような脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む注射可能な局所用組成物を開示する。
【0005】
いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又はγ-シクロデキストリンの1種以上である。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、水素添加反応、ヒドロホルミル化反応、メチル化反応、酸化反応、還元化反応、又は炭素-炭素カップリング反応により修飾されている、化学修飾シクロデキストリンである。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、メチル-β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【0006】
いくつかの実施形態では、脂質修飾タンパク質は、細胞膜脂質と結合(associated)したWingless(Wnt)タンパク質又はHedgehog(Hh)タンパク質の1種以上を含む。いくつかの実施形態では、Hhタンパク質は、ソニックヘッジホッグ(SHh)タンパク質、デザートヘッジホッグ(DHh)タンパク質、又はインディアンヘッジホッグ(IHh)タンパク質の1種以上である。いくつかの実施形態では、Wntタンパク質は、Wnt3a、Wnt7b、又はWnt10bの1種以上である。いくつかの実施形態では、脂質修飾タンパク質は、Wingless(Wnt)ファミリー又はHedgehog(Hh)ファミリーに属するものに加え、他のタンパク質を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、脂質修飾タンパク質は、動物の幹細胞集団から採取されている。いくつかの実施形態では、幹細胞は、胚性幹細胞、単為生殖幹細胞、成体幹細胞、胎児幹細胞、又は人工多能性幹細胞である。いくつかの実施の形態では、幹細胞は分化系列決定複能性幹細胞である。いくつかの実施の形態では、脂質修飾タンパク質は、増殖細胞集団から採取されている。いくつかの実施形態では、幹細胞は、哺乳類幹細胞である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、ヒト幹細胞である。いくつかの実施の形態では、幹細胞は家畜、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、ウマ、ブタ又はトリ由来である。いくつかの実施の形態では、幹細胞は農業動物、例えばウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、水産動物、ニワトリ、カモ、ガチョウ、又は七面鳥由来である。いくつかの実施の形態では、幹細胞は実験動物、例えば鼠、ラット、ハムスター、モルモット、ブタ、ウサギ、サル、トリ、ニワトリ、爬虫類、両生類、カエル、又は水産動物由来である。実験動物、家畜又は農業動物のような動物の特徴づけは、必須の限定として見なされるべきではなく、挙げられた例は包括的ではなく、いくつかの動物が2つ以上の部類に合理的に含まれる。いくつかの実施形態では、幹細胞は、Wntタンパク質又はHhタンパク質を過剰発現するように遺伝子操作されている。一時的な又は安定したWntリガンド及びHhリガンドの過剰発現が、例えば各遺伝子の複数のコピーの導入、翻訳可能なmRNAの導入、又は制御遺伝子の抑制によって達成される。方法は、顕微注射、ウイルスベクター及びレトロウイルスベクターの使用、電気穿孔法、プラスミド、トランスポゾンの使用、又はCRISPR-CAS9システムを用いた標的変異によるものを含む。いくつかの実施の形態では、受容体チロシンキナーゼ(RTK)に対するリガンドがWnt又はHhの発現を活性化し、増加させるために加えられる。RTKは、限定されないが、上皮成長因子(EGF)、インスリン、血小板由来増殖因子(PDGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、FGF(線維芽細胞増殖因子)、NGF(神経成長因子)、受容体ファミリー等である。いくつかの実施形態では、幹細胞は、遺伝子操作により不死化されている。いくつかの実施形態では、幹細胞は、テロメア逆転写酵素(hTERT)を発現するように遺伝子操作されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1種のコスモトロープをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のコスモトロープは、プロピレングリコール、プロリン、トレハロース、エクトイン、又はトリメチルアミンN-オキシドである。
【0009】
いくつかの実施形態では、注射可能組成物は、水性製剤である。いくつかの実施形態では、注射可能組成物は、少なくとも1種のコスモトロープをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のコスモトロープは、トレハロースである。
【0010】
また、本明細書は、本明細書で開示の局所用組成物又は注射可能組成物に皮膚組織を暴露することを含む、皮膚組織再生の促進方法を開示する。いくつかの実施の形態では、組織は、表皮、真皮、又は毛髪、爪、腺及び感覚受容器等の皮膚付属器を含む。
【0011】
また、本明細書は、本明細書で開示の組成物に組織を暴露することを含む、組織再生の促進を必要とする組織における組織再生の促進方法を開示する。いくつかの実施の形態では、組織は、脳、心臓、肝臓、脊髄、骨、神経組織、生殖器、又は皮膚若しくは毛髪以外のあらゆる組織である。
【0012】
また、本明細書は、本明細書で開示の組成物を、神経変性疾患の治療を必要とする対象に投与することを含む、神経変性疾患の治療方法を開示する。いくつかの実施形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、脳損傷、末梢神経損傷、末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症又は認知症である。
【0013】
本明細書で用いられた場合、用語“治療”(及びこの語の関連形)は、罹患者を疾患ではない状態又は完全に及び永久に基礎病理を解消するまで回復させる意味での治癒を必ずしも意味しない。むしろ、様々な実施の形態では、用語“治療”は、疾患の進行を遅延させるか停止させること、疾患関連の欠点若しくは損傷の部分的な回復、又は疾患関連の症状の改善若しくは除去を含む。同様に、用語“再生促進”は、罹患組織の完全な回復を必ずしも意味しないが、様々な実施の形態において、罹患組織の喪失を遅延若しくは停止させるための十分な再生活性が起こること、又は罹患組織の部分的な回復を意味する。
【0014】
また、本明細書は、本明細書に開示の組成物又は局所用組成物を製造する方法を開示し、該方法は、培地中でWntタンパク質及びHhタンパク質を産生可能な幹細胞を培養すること、脂質修飾タンパク質のシクロデキストリン複合体を得るために、シクロデキストリンを含む採取溶体中で前記幹細胞をインキュベートすること、前記シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体溶液を保存すること、及び保存された前記シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体溶液又は凍結乾燥された前記シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体を、1種以上の美容上又は薬学的に許容可能な添加剤と混合すること、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、採取溶体は、少なくとも1種のコスモトロープをさらに含む。いくつかの実施形態では、コスモトロープは、トレハロースである。いくつかの実施形態では、採取溶体中のコスモトロープの濃度が、約5%から約30%である。いくつかの実施形態では、コスモトロープの濃度が、約20%である。
【0016】
いくつかの実施の形態では、保存ステップは、前記シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体溶液を4℃以下に保管することを含む。いくつかの実施の形態では、保存ステップは、前記シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体を凍結乾燥することを含む。いくつかの実施の形態では、保存されたシクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体溶液は、1種以上の添加剤と混合され、局所用製剤が製造される。
【0017】
いくつかの実施の形態では、採取溶体は、シクロデキストリンの水溶液を含む。いくつかの実施の形態では、シクロデキストリンは、メチル-β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。いくつかの実施の形態では、採取溶体中のシクロデキストリンの濃度が、約1mMから約20mMである。いくつかの実施の形態では、採取溶体中のシクロデキストリンの濃度が、約10mMである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】シクロデキストリンの化学的構造及び物理的構造を示す。
【
図2】脱水中の脂質膜の安定化へのトレハロースの効果を模式的に示す。
【
図3】形態形成及び組織成長におけるローカル因子とリージョナル因子との間の相互作用を示す。
【
図4A】シクロデキストリンを用いた膜結合脂質修飾タンパク質の捕捉の模式的機構を示す。本図は、脂質修飾タンパク質を有する細胞膜の一部及び中身のないシクロデキストリンを示す。
【
図4B】シクロデキストリンを用いた膜結合脂質修飾タンパク質の捕捉の模式的機構を示す。本図は、シクロデキストリン疎水性コアで捕捉されたタンパク質の脂質修飾を示す。複合体のタンパク質部分は、タンパク質分子を包囲する水に置き換わり、他の分子との反応性を抑制するコスモトロープの添加でさらに安定化される。
【
図5A】採取前と採取後の培養細胞の位相コントラスト顕微鏡写真を示す。本図はシクロデキストリン含有採取溶体への暴露前の平滑で、コンパクトで、多層的な細胞培養物を示す。
【
図5B】採取前と採取後の培養細胞の位相コントラスト顕微鏡写真を示す。本図は細胞の大部分が接着性を失い培養物がばらばらになっている、シクロデキストリンとともにインキュベートした後の培養物を示す。
【
図6A】処置群1-4のマウスが新成長期斑である“成長期波(anagen wavers)”の存在下での成長期への早期遷移を例証することを示す。本図は処置群1のマウスを示す。
【
図6B】処置群1-4のマウスが新成長期斑である“成長期波(anagen wavers)”の存在下での成長期への早期遷移を例証することを示す。本図は処置群2のマウスを示す。
【
図6C】処置群1-4のマウスが新成長期斑である“成長期波(anagen wavers)”の存在下での成長期への早期遷移を例証することを示す。本図は処置群3のマウスを示す。
【
図6D】処置群1-4のマウスが新成長期斑である“成長期波(anagen wavers)”の存在下での成長期への早期遷移を例証することを示す。本図は処置群4のマウスを示す。
【
図7A】
図6A~Dに示された写真に基づく処置への定量された応答のグラフである。本図は、有効成分濃度にかかわらず処置動物が毛の成長の応答を示したことを示す。
【
図7B】
図6A~Dに示された写真に基づく処置への定量された応答のグラフである。本図は、処置動物が新成長期毛斑の数の増大を示したことを示す。
【
図7C】
図6A~Dに示された写真に基づく処置への定量された応答のグラフである。本図は、処置への応答が処置群での皮膚の暗さの増大により確認されたことを示す。
【
図8A】処置マウスでの毛包の休止期の状態を示す。マウスが第1休止期にあることを確認するために研究の1日目(D1)にサンプルが採取された。対照群(群1、
図8A)のマウスは研究の最終日(20日目)に毛包の休止期(T)の状態を維持した(
図8B及び8C)。
【
図8B】処置マウスでの毛包の休止期の状態を示す。マウスが第1休止期にあることを確認するために研究の1日目(D1)にサンプルが採取された。対照群(群1、
図8A)のマウスは研究の最終日(20日目)に毛包の休止期(T)の状態を維持した(
図8B及び8C)。
【
図8C】処置マウスでの毛包の休止期の状態を示す。マウスが第1休止期にあることを確認するために研究の1日目(D1)にサンプルが採取された。対照群(群1、
図8A)のマウスは研究の最終日(20日目)に毛包の休止期(T)の状態を維持した(
図8B及び8C)。
【
図9A】処置マウスでの毛包の休止期の状態を示す。処置群(群2)のマウスは、新成長期斑を含まない区域で休止期及び初期成長期(EA)の毛包の混在を示した。
【
図9B】処置マウスでの毛包の休止期の状態を示す。処置群(群3)のマウスは、新成長期斑を含まない区域で休止期及び初期成長期(EA)の毛包の混在を示した。
【
図9C】処置マウスでの毛包の休止期の状態を示す。処置群(群4)のマウスは、新成長期斑を含まない区域で休止期及び初期成長期(EA)の毛包の混在を示した。
【
図10A】処置マウスでの毛の成長を示す。処置群(群2)のマウスは、典型的な成長期毛包形態を有する新成長期の斑を示した。
【
図10B】処置マウスでの毛の成長を示す。処置群(群3)のマウスは、典型的な成長期毛包形態を有する新成長期の斑を示した。
【
図10C】処置マウスでの毛の成長を示す。処置群(群4)のマウスは、典型的な成長期毛包形態を有する新成長期の斑を示した。
【
図11】2匹の未処置マウスでの毛の成長を示す。2つの毛包(A及びB)はCK14(緑)及びLGR5(赤)の発現で染色された。A及びBはグレイスケールで表示された重ね合わせ画像である。これらの画像の色分解が毛包A及びBそれぞれについて示され、C及びDが赤色蛍光(LRG5)、E及びFが緑色蛍光(CK14)である。対照動物では、LRG5陽性細胞がきわめて少ないことから証明されるように、休止期は最小のWnt活性か又はWnt活性化なしで持続した。
【
図12】処置マウスでの毛包を示す。A、D及びGは、処置群2の毛包を示し、新毛包の顕微鏡写真である(Aは赤色蛍光(LGR5;D)及び緑色蛍光(CK14;G)の重ね合わせである)。増殖するLGR5陽性バルジ細胞(B)が下方に細胞移動し新毛球マトリックス(MX)に集合する。B、E及びHは、処置群3の毛包を示し、新成長期毛包の顕微鏡写真である(Bは赤色蛍光(LGR5;E)及び緑色蛍光(CK14;H)の重ね合わせである)。増殖するLGR5陽性バルジ細胞(B)が下方に細胞移動し休止期(T)の毛包に隣接する初期成長期毛球(EA)に集合する。C、F及びIは、処置群4の毛包を示し、新成長期毛包の顕微鏡写真である(Cは赤色蛍光(LGR5;F)及び緑色蛍光(CK14;I)の重ね合わせである)。新毛包(EA)が古い休止期毛布(T)の下にある。LGR5陽性細胞がバルジ区域(B)を拡大し、下方に集合して新毛球マトリックス(MX)に至る。
【
図13A】処置群での毛の成長を示す。処置動物はSox9陽性による毛幹細胞動員を示す。本図は初期成長期を示す。
【
図13B】処置群での毛の成長を示す。処置動物はSox9陽性による毛幹細胞動員を示す。本図は成長期を示す。
【
図14】培養2日後(A~C)及び5日後(D~G)での他の成長因子を含まない場合のさまざまな濃度での毛包のインビトロ成長におけるメチル-βシクロデキストリン(MBCD)の効果を示す。
【
図15A】示された処置それぞれでの毛包の長さと厚さの定量化を示す。本図は、0.25mMのMBCD複合体における長さの増加で増加が促進された毛包を示す。
【
図15B】示された処置それぞれでの毛包の長さと厚さの定量化を示す。本図は、0.25mM及び0.5mMのMBCD複合体における厚さの増加で統計的有意に増加が促進された毛包を示す(0.25mM群ではp<0.01、0.5mM群ではp<0.05)。
【
図16】ヒト皮膚での胚性幹細胞膜成分及びトレハロースとともに封入したMBCDを含有する組成物の試験を示す。Aは未処置区域を示す。Bは、目に見えて回復した産毛、長い産毛、及び減少した加齢斑を有する処置反対側区域を示す。Cは未処置区域を示す。Dは、目に見えて回復した産毛、長い産毛、及び減少した加齢斑を有する処置反対側区域を示す。
【
図17】細胞膜抽出物で処理した頭髪の増加した成長を示す写真の時系列を示す。具体的には、写真は、毎日の局所適用に暴露したハミルトン-ノーウッドVII脱毛症を有する65歳の対象の頭皮を示し、最初の適用から1ヶ月後(A)、1ヶ月後(B)及び4ヶ月後(C)には、髪の進行性蓄積とVI型以下への退行が示された。
【
図18】シクロデキストリン膜抽出物処理(A及びB)及び対照(C及びD)の神経培養の、緩和から2週間でのベータチューブリン及び核(Hoechst)染色に関する免疫細胞化学的標識を示す(倍率20倍)。Aはベータ-IIIチューブリンに対するポジティブ染色を表す処置培養物のカラー写真の赤色チャンネルである。Bは処置培養物の核染色を表す青色チャンネルである。Cはベータ-IIIチューブリンに対するポジティブ染色を表す対照培養物のカラー写真の赤色チャンネルである。Dは対照培養物の核染色を表す青色チャンネルである。
【
図19】シクロデキストリン膜抽出物処理(A及びB)及び対照(C及びD)の神経培養の、緩和から2週間でのダブルコルチン及び核(Hoechst)染色に関する免疫細胞化学的標識を示す(倍率20倍)。Aはダブルコルチンに対するポジティブ染色を表す処置培養物のカラー写真の赤色チャンネルである。Bは処置培養物の核染色を表す青色チャンネルである。Cはダブルコルチンに対するポジティブ染色を表す対照培養物のカラー写真の赤色チャンネルである。Dは対照培養物の核染色を表す青色チャンネルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
Wingless(Wnt)タンパク質及びHedgehog(Hh)タンパク質は単離及び解析されてきてはいるが、これらの因子の用途はきわめて限定されている。これらのタンパク質の供給源は、共通して、単一の特定のタンパク質を過剰発現するように操作された細胞であり、当該タンパク質は、マイルドなデタージェントにより細胞表面から取り除かれる。
【0020】
本明細書は、生細胞由来の脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を開示する。本明細書で用いたれた場合、“脂質修飾(された)”という用語は、タンパク質がそれに共有結合する脂質を有することを意味する。脂質修飾は、生細胞の通常の生合成プロセスから生じる。Wnt及びHhについて、これらのタンパク質は脂肪酸であるパルミチン酸により修飾されているが、コレステロール等の他の脂質による修飾も本開示の組成物及び方法の範囲内である。追加の脂質修飾が下記の表1に示されている。
【0021】
多能性から最終分化ステージへの遷移状態を示す幹細胞は、顕著な量のWndタンパク質及びHhタンパク質を発現する。しかし、培養上清は種々の可溶性成長因子を含有するものの、Wndタンパク質及びHhタンパク質は細胞培養上清中では存在を確認できない。Wnt及びHhの生理的発現は脂質による修飾をまねき、その結果、それらは、細胞外液へ分泌されるのではなく、発現細胞の表面膜と結合(associate)する。幹細胞をシクロデキストリン溶体に暴露することで、コレステロール含有細胞膜に結合されている脂質修飾Wnt及びHhタンパク質を成功裏に抽出することが可能となり、こうして、シクロデキストリンに結合された脂質修飾タンパク質の可溶性複合体が形成される。この可溶性の脂質修飾タンパク質/シクロデキストリン複合体にトレハロースを添加することで、当該複合体は安定化し、凍結乾燥複合体の長期保存が可能となる。
【0022】
Wntタンパク質及びHhタンパク質は、インビトロ及びインビボで、細胞生存の促進、毛の生長、及び組織再生に有効である。適切な幹細胞機能及び治療効果のためには様々な因子の組み合わせが必要なので、同定済みの正常幹細胞培養物から得た異質Wnt(例えば、Wnt3a、Wnt7b、Wnt10bなど)及びHh混合物の使用は、特定のタンパク質を発現するように操作された改変細胞から得た単一因子の使用よりも有利である。
【0023】
そこで、本明細書は、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、及び成体幹細胞を始めとする幹細胞由来の膜結合脂質修飾タンパク質の捕捉のための方法を開示する。脂質修飾タンパク質の構造の例としては、これらに限定されるわけではないが、Wntファミリー及びHhファミリーのタンパク質(リガンド)が挙げられる。前述の細胞は、これらのタンパク質の発現を最大化するように操作され、その後、疎水性分子を捕捉する能力が知られているシクロデキストリンに暴露される。いくつかの実施の形態では、操作された細胞の脂質修飾タンパク質の発現プロファイルが特徴づけられる。シクロデキストリン複合体は、さらに、乾燥及びタンパク質変性への保護を付与するためにトレハロースにより被覆される。
【0024】
本開示に先立ち、これらの脂質修飾タンパク質は有機溶媒又はデタージェントにより細胞から抽出された。これらの方法は、抽出タンパク質に与える安定性及び機能性が限定的であるという欠点がある。有機溶媒は、タンパク質成分を変性させ、タンパク質活性に不可欠の脂質修飾を除去するおそれがある。デタージェント抽出は、リポタンパク質のミセルを生ずる。このミセルは、さらにリポソーム内に包含される可能性がある。デタージェント抽出は溶媒抽出よりも優れているものの、前述のミセル及びリポソームは保存寿命の限られた不安定な構造である。
【0025】
本明細書に記載の方法は、脂質修飾タンパク質の捕捉を保証し、凍結乾燥による長期保存の可能性をひらく。シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体は、さらに、タンパク質及び脂質を取り囲む水に取って代わり構造保存を保証するコスモトロピック剤の一種であるトレハロースを用いて保存される。
【0026】
幹細胞培養物から単離された脂質修飾タンパク質/シクロデキストリン複合体は、組織修復、創傷修復及び再生、皮膚再活性化、毛の成長、及び化粧品に役立つ。
【0027】
シクロデキストリン
天然由来のシクロデキストリンには、シクロデキストリン-α、シクロデキストリン-β、シクロデキストリン-γの三種がある。シクロデキストリンは、他の多くの化学薬品とともに安定な水性複合体を形成する。典型的なシクロデキストリンは、6-8グルコピラノシド単位を含み、溶媒に二級水酸基を晒している大きな開口と、溶媒に一級水酸基を晒している小さな開口とを有する環状体としてトポロジー的には表現できる。この配置により、環状体の内部は、疎水性ではないものの水性環境よりも大幅に親水性が低いため、他の疎水性分子を収容することが可能である。一方、その外部は、シクロデキストリン(又はそれらの複合体)に水溶性を付与するほど十分に親水性である(
図1)。
【0028】
包接複合体の形成は、ゲスト分子の物理的及び化学的性質(主に水溶性)を大幅に修飾するため、疎水性分子とシクロデキストリンの包接複合体は、生体組織中を浸透し、特定の条件下(これらに限定されるわけではないが、pH変化、熱、グルコースモノマー間のα-1,4結合を切断できる酵素、又は他の疎水性分子(例えば、コレステロール)による置換など)で生物活性疎水性化合物を放出する能力を有する。
【0029】
分子内のグルコース環の数によって、シクロデキストリンは、α(アルファ)-シクロデキストリン(六糖環分子)、β(ベータ)-シクロデキストリン(7糖環分子)、又はγ(ガンマ)-シクロデキストリン(8糖環分子)に分類される。シクロデキストリンは、内側が疎水性で外側が親水性なので、疎水性化合物と複合体を形成できる。こうして、シクロデキストリンは、これらの化合物の溶解性及びバイオアベイラビリティを高めることができる。これは、疎水性化合物が送達される食品サプリメント用途のみならず製薬用途でも高い関心事である。α-、β-、及びγ-シクロデキストリンは、すべて、一般的に、FDAにより安全であると評価されている。
【0030】
天然由来のシクロデキストリンの化学修飾を、溶解性を高め、特定の疎水性分子に適合させ、他の分子への結合に使える末端を提供し、特定の機能(特定の細胞成分への結合、巨大分子構造への自己集合化など)を提供するように、設計することができる。一般的な修飾として、ランダムメチル化及びヒドロキシプロピル化が挙げられる。
【0031】
β-シクロデキストリン及びメチル-β-シクロデキストリン(MBCD)は、両方とも、培養細胞からコレステロールを除去する。培養細胞からのコレステロールの除去の際に、メチル化形態(MBCD)はβ-シクロデキストリンよりも効率的である。水溶性MBCDは、コレステロールを含む可溶性包接複合体を形成し、これにより、水溶液中でのコレステロールの溶解性を高める。MBCDはコレステロールフリー製品の調合のために採用され、かさばり且つ疎水性のコレステロール分子はシクロデキストリン環内部に容易に収まり、その後、このシクロデキストリン環は除去される。また、MBCDは、研究において、膜からコレステロールを除去することにより脂質ラフトをばらばらにするために採用される。
【0032】
いくつかの実施の形態は、上記で開示された1種又は複数種のシクロデキストリンを特異的に含む。いくつかの実施の形態は、上記で開示された1種又は複数種のシクロデキストリンを特異的に除外する。
【0033】
コスモトロープ
コスモトロープは水分子を好適に相互作用させ、これにより(事実上)タンパク質などの高分子の分子内相互作用を安定化する。コスモトロープの例としては、これらに限定されるわけではないが、プロピレングリコール、プロリン、トレハロース、エクトイン、及びトリメチルアミン-N-オキシドなどが挙げられる。トレハロース(ミコース、トレマロース)は、2つのグルコース分子からなる二糖である。いくつかの実施の形態は、上記で開示された1種又は複数種のコスモトロープを特異的に含む。いくつかの実施の形態は、上記で開示された1種又は複数種のコスモトロープを特異的に除外する。
【0034】
キノコや細菌では、トレハロースは、細胞内脱水中にゲル相を形成し、当該期間中に細胞内小器官を保護し、その後、適切な環境に戻ったときに速やかな再水和を可能とすることから、トレハロースの主な生物学的目的は水分調節である。トレハロースは、ヒトでは、一般的な抗酸化特性に加えて水和機能を果たすものの、トレハロースの主な役割は、タンパク質のフォールディング及びアンフォールディングなどの細胞内機能を調節する細胞シャペロンとしての役割である。
【0035】
【0036】
トレハロースは、コスモトロープ又は水構造マーカーとして分類されている。即ち、トレハロース/水間の相互作用が、水/水の相互作用よりもずっと強く、また、トレハロースの生体保護作用に関与している可能性がある。
【0037】
トレハロースは、タンパク質凝集を防ぐことができるので、安定化剤として働き、治療用タンパク質の保存寿命を改善する。モデルタンパク質を用いた研究から、トレハロースが分子内ジスルフィド結合の形成に干渉することで湿気により誘導されたウシ血清アルブミンの凝集を止める能力を有することが示されている。トレハロースは、脂質膜の安定化及び脱水に対する保護に有効である。トレハロースがなければ、脂質二重層は脱水中に液晶からゲルへの遷移を経験し、二重層構造が早期に損傷することになるだろう。トレハロースは、水を置き換えることで、脂質の間の空間を占有し、再水和の際に組織化された液晶構造を維持する(
図2)。
【0038】
Hedgehog(Hh)ファミリー及びWingless(Wnt)ファミリー
哺乳類は、三種のヘッジホッグホモローグ、デザート(DHh)、インディアン(IHh)、及びソニック(SHh)ヘッジホッグを有しており、このなかでも、ソニックが最も良く研究されている。このシグナル伝達経路は、ノックアウトマウスで研究され、脳、骨格、筋肉組織、胃腸管、肺、及び心臓での細胞特異性が示された。最近の研究は、成体組織の維持と再生に関係する成体幹細胞の調節におけるヘッジホッグシグナル伝達の役割を指摘している。また、この経路はいくつかのがんの発生に関与している。ヘッジホッグシグナル伝達を特異的に標的としがんと戦う薬剤が活発に開発されている。
【0039】
親油性基の付加は、広範囲にわたる修飾であり、多様な構造及び機能を有するおよそ1000にも上るタンパク質上で起きている(表1)。少なくとも異なる5種類の脂質がタンパク質に共有結合し得る。これらの例としては、これらに限定されるわけではないが、脂肪酸、イソプレノイド、ステロール、リン脂質、及びグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーなどが挙げられる。タンパク質は、2種以上の脂質を含んでもよく、例えば、ミリスチン酸エステル+パルミチン酸エステル、パルミチン酸エステル+コレステロール、又はファルネシル+パルミチン酸エステルなどが挙げられる。脂質修飾の最も一般的な効果は、膜への親和性の増加である。
【0040】
【0041】
Hhタンパク質は、前駆体分子としてつくられ、C末端プロテアーゼドメインとN末端シグナル伝達ユニットを備え、その合成過程で数々の独特な修飾を受ける。HhのN末端は、そのシグナル配列が取り除かれた後に当該タンパク質のまさにN末終端で剥き出しになっている保存システイン残基上で、脂肪酸であるパルミチン酸エステルにより修飾される。このパルミトイル基は、このシステインのNH2基にアミドを介して結合されている。
【0042】
Wnt分子は、パルミトイル化されるので、その一次アミノ酸配列から予測されるよりもずっと疎水性が高い。修飾を受けるとおもわれるWntタンパク質のアミノ酸は、最初の保存システイン(C77)である。この残基は、全てのWntに存在し、且つ、変異体解析によれば、Wnt機能に不可欠である。
【0043】
疎水性を付与する脂質修飾のため、Hh及びWntは全身に分布することはできない。これらのタンパク質は、膜に結合し、直接的に接触している細胞の間で細胞から細胞へと伝達されることのみ可能である。一方、可溶性因子(FGF、EGFなど)は、全身に分布し、局所的な細胞にも遠隔的な細胞にも作用を及ぼすことができる。
【0044】
Engrailed(En)転写因子を発現する起源細胞(幹細胞)がHhを分泌する。En発現細胞に隣接する細胞のみが、受容体タンパク質であるPatched(Ptc)とHhの相互作用を受けてから、Hedgehogに応答することが可能である。
【0045】
HhによりPtcが活性化された細胞は、Wntタンパク質を合成する。Wnt脂質修飾タンパク質は、細胞間シグナルとして働き、その細胞表面受容体であるFrizzledを活性化することにより細胞の隣接列をパターン化する。こうして、隣接細胞へのWnt及びHhの作用が、明瞭に異なる解剖学的特徴を説明する位置符号を定め、一方、可溶性因子が、細胞増殖及び組織成長のための一時的符号を定める(
図3)。
【0046】
毛包は、不均一組織、時には、神経外胚葉と中胚葉との相互作用で形成された“小器官”と呼ばれる。毛包新生は、胚において、上皮プラコードが周囲の真皮に陥入することにより生じる。出生後の毛包は、3相の更新サイクル、成長期(anagen)、退行期(catagen)、及び休止期(telogen)を経験する。最初の完全な出生後毛包サイクル(最初の成長期、最初の退行期、最初の休止期)は、出生後の最初の3.5週間内に完了し、その後、次の毛サイクル(第2の成長期、第2の退行期、第2の休止期)が続く。
【0047】
皮膚では、発生中の表皮からの毛包の形成は、その下の真皮での線維芽細胞からのシグナルを必要とする。毛包形態形成は、後期胚期及び早期新生児期の間に生じる。成体の皮膚では、通常、新しい毛包は生じない。
【0048】
毛包新生は、Wnt/β-カテニンの遺伝子移植に応じて、又は、創傷による表皮でのWnt/β-カテニンの活性化に応じて、成体マウス皮膚で誘導することができる。DKK1(Dickkopf関連タンパク質1)によるWntシグナル伝達の阻害は、毛包発生におけるWntシグナル伝達の機能的重要性を示す。数種のWnt分子が、毛包で発現しており、この機能に従事していると考えられる。Wnt3a及びWnt7aが、毛包のマトリクス細胞で発現しており、成長期での真皮乳頭細胞の維持を行っている。これらの細胞は、frizzled7、disheveled2、GSK3β、β-カテニン、及びLef1を始めとするWntシグナル伝達カスケードの成分を発現することから、Wntに応答する能力を有する可能性がある。そこで、Wnt経路が毛包形態形成中における主要調節因子であると考えられている。Wntシグナル伝達は、EDA/EDAR/NF-κB(エクトジスプラシンA/エクトジスプラシンA受容体/活性化B細胞のカッパ軽鎖エンハンサーである核内因子)シグナル伝達を介して進行する。NF-κBは、Wnt経路を調節し、SHhの発現を上方調節するシグナルメディエーターとして働く。真皮SHh及び血小板由来成長因子(PDGF)シグナル伝達は、真皮noggin発現を上方調節する。nogginは、骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達の強力な阻害剤であり、BMP媒介β-カテニン阻害を打ち消すのに役立つ。表皮及び真皮の系統の間のシグナル伝達のこの相互作用は、表皮SHhシグナル増幅に役立つ。
【0049】
毛の発生へのSHhの関与は、胚発生中のSHh発現及び胚発生にわたるSHh発現の操作から示唆されていた。正常毛包発生中では、SHhは上皮プラコード内の毛包内に発現しており、その受容体Ptcが初期胚期に下層の間充織凝集で検出される。
【0050】
in vivo実験から、SHhが、おそらくは他の局所因子と協調して、休止期から生長期への遷移を刺激することが示唆されている。SHhの一過性発現は、疾患症状の毛の生長サイクルを再活性化し得た。
【0051】
哺乳類では、相当の組織再生能力にもかかわらず、大きな創傷を負うと、組織の形態及び機能は完全には回復せず、瘢痕組織が形成されることとなる。この限定的再性能は、線維組織の迅速な干渉、以降の組織再生を妨害する何かに部分的に起因するが、有害微生物を阻害するという防御的利点があるかもしれない。怪我を負ったとき、骨、肝臓、新生児の指の先端のみが再生可能である。加齢は、組織回復の別の決定要因であり、動物は老化に伴いその再性能を徐々に失う。
【0052】
修復された皮膚は、通常は瘢痕として治癒するが、無傷の皮膚よりも弱く、創傷を負っていない皮膚に比べて乱れた細胞外マトリックス(ECM)を備えている。皮膚の創傷では、通常、毛包は再生しない。結果として、出生後の哺乳類の皮膚の修復は、再生後の組織が怪我を負っていない組織とほとんどみわけがつかない妊娠初期胎児の創傷の再生過程とは同じではない。
【0053】
Wntシグナル伝達は、皮膚治癒の増殖期の間の上昇したβカテニンのレベルの維持には重要ではないものの、Wntタンパク質は、創傷修復中の表皮βカテニンの刺激に参加しているかもしれない。皮膚発生でのその機能と類似して、Wnt及び/又はβカテニンシグナル伝達は、皮膚創傷修復のさまざまな点で重要な役割を果たし、上皮構造の構築や表皮区画の再構成に関与している。
【0054】
Wntシグナル伝達は生体表皮での細胞増殖を調節しており、これは皮膚創傷治癒の速度及び程度に直接的に影響する。また、Wntは、毛包のバルジ領域における皮膚幹細胞及び毛包間表皮の基底層における皮膚幹細胞の少なくとも2種類の皮膚幹細胞についてのニッチシグナルとしての役割を果たし、これらの幹細胞は、皮膚創傷修復に寄与する。非治癒創傷へのリポソーマルWnt3aの局所適用は、内因性Wntシグナル伝達を補充し、皮膚創傷治癒が改善することとなる。
【0055】
また、Wntシグナル伝達は、中枢神経系で重要である。Wntシグナル伝達経路の活性化がCNS損傷後の再生応答に重要で、神経発生の刺激、血液脳構造の統合及び脳の認知機能の回復等の様々な保護機序を活性化することが主張されている。
【0056】
Hedgehogシグナル伝達は、マウスでの正常及び加速創傷治癒に直接的に寄与することが示されていた。Hhシグナル伝達が阻害されると、創傷治癒が全ての点(創傷閉鎖、上皮形成、肉芽形成、血管分布、及び増殖)で重篤に障害される。
【0057】
皮膚では、触盤は、初期毛包と並行して発生し、感覚メルケル細胞を含んでいる。表皮Wntシグナル伝達及び以降の表皮Eda/Edar(エクトジスプラシン/エクトジスプラシン受容体)シグナル伝達は、初期毛包でのSHh発現を誘導することで、メルケル細胞の形態形成を促進する。毛包と発生的に関連付けられているものの、フェイトマッピングからはメルケル細胞が毛包系統以外を主な起源とすることが示されていた。こうした発見は、初期毛包から毛包外メルケル細胞前駆細胞への発生中外胚葉SHhシグナル伝達内での相互シグナル伝達を確立するために触盤発生がWnt依存性間葉シグナルを必要とすることを示唆している。局所的に産生されたSHhがモルフォゲンとして働くことが、発生及び生後の触盤幹細胞維持の間での系統特異化に不可欠である。
【0058】
発生の間、SHhが、中枢神経系(CNS)における軸索の髄鞘形成に関与するグリア細胞であるオリゴデンドロサイト前駆細胞(OLP)の系統特異的及び増殖に必要である。SHhシグナル伝達は、胚発生の間のオリゴデンドロサイト(OLG)の発生と成人期でのその産生の両方の制御に関する。
【0059】
両生類では、Hhシグナル伝達及びそのWntシグナル伝達との階層的相関が四肢再生を制御している。Wntシグナル伝達は、腸管上皮及び造血幹細胞(HSC)の両方での自己複製を促進することが示されている。多くの組織の幹細胞がWntへの応答性を有する(表2)。
【0060】
【0061】
細胞膜に結合した脂質修飾タンパク質とともに、脂質も細胞シグナル伝達に関与している。こうした脂質としては、これらに限定されるわけではないが、スフィンゴ脂質系脂質(例えば、セラミド、スフィンゴシン、スフィンゴシン-1-リン酸、グルコシルセラミド、セラミド-1-リン酸、ホスファチジルイノシトールビスリン酸(PIP2)脂質アゴニスト、ホスファチジルイノシトール系脂質(例えば、ホスファチジルイノシトールビスリン酸(PIP2))、Gタンパク質共役受容体の活性剤(例えば、リゾホスファチジン酸(LPA)、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)、血小板活性化因子(PAF)、エンドカンナビノイド、プロスタグランジン、FAHFA、レチノール誘導体)、及び核受容体の活性剤(例えば、ステロイドホルモン、レチノイン酸、プロスタグランジン)が挙げられる。
【0062】
組成物
そこで、本明細書は、脂質修飾されたHedgehog(Hh)及び/又はWingless(Wnt)タンパク質及び少なくとも1種のシクロデキストリンを含有する組成物を開示する。脂質修飾Hh及び/又はWntタンパク質は本明細書で記載するようにヒト幹細胞から単離される。特定の実施形態では、幹細胞は、多能性幹細胞、複能性幹細胞、単系統分裂中前駆細胞、又は不死化細胞系列である。
【0063】
特定の実施形態では、Wntタンパク質及びHhタンパク質の供給源となる細胞は、ヒトの、胚性幹細胞、単為生殖幹細胞、又は人工多能性幹細胞である。関心のある他の細胞としては、胎児若しくは成体幹細胞として同定され又は胎児付属物から採取されている任意のインビトロ増殖細胞が挙げられる。他の細胞を細胞周期脱調節(例えば、テロメラーゼ発現など)で不死性を付与する遺伝子操作により修飾することも可能である。特定の実施形態では、幹細胞は、テロメア逆転写酵素(hTERT)の遺伝子操作発現により不死化されている。供給源となる細胞は、当業者に既知の確立された方法及び細胞培地を用いて培養することができる。いくつかの実施の形態では、幹細胞が新たに取得される。他の実施の形態では、幹細胞が細胞培養技術によってin vitroで増加され、脂質修飾タンパク質が採取される。いくつかの実施の形態では、幹細胞は前もって凍結されたものである。いくつかの実施の形態では、事前に凍結された幹細胞が溶解された後に少なくとも1回継代されることでin vitroで培養され、脂質修飾タンパク質が採取される。
【0064】
いくつかの実施形態では、Hhタンパク質又はWntタンパク質は、まず培地を捨て、培養物を等張緩衝液(例えば、生理食塩水、ハンクス平衡塩溶液など)でリンスし、その後、約1時間から約24時間の間、任意にゆっくり連続的に又は断続的に撹拌して、細胞を採取溶体と混ぜ合わせることにより採取される。細胞のいくつかは基質への付着性を失うかもしれない。可溶性脂質修飾タンパク質/シクロデキストリン複合体を含有する採取溶体は、さらに、細胞残屑を除去するために処理され(例えば、遠心分離及び0.1-0.5μmが通過する濾過)、濾過され、4℃で保存される。
【0065】
幹細胞から脂質修飾Wnt及びHhタンパク質を得るのに適した採取溶体は、1-20mMのシクロデキストリンを含有する等張溶液を含む。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンの濃度は、約1-5mM、約5-10mM、約10-15mM、約15-20mM、約2-10mM、約5-20mM、約8-20mM、約12-20mM、約8-12mM、約5mM、約7mM、約9mM、約10mM、約11mM、約13mM、又は約15mMである。採取溶体の体積は、ディッシュ又はフラスコ当たり約0.1-1.0mL/cm2である。いくつかの実施形態では、採取溶体の体積は、ディッシュ又はフラスコ当たり約0.25mL/cm2である。
【0066】
採取溶体は、約1時間から約5時間の間、ゆっくり連続的に又は断続的に撹拌して、供給源となる細胞とともにインキュベートされる。いくつかの実施形態では、採取溶体は、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約3.5時間、約4時間、約4.5時間、又は約5時間の間、細胞とともにインキュベートされる。
【0067】
代表的な実施の形態では、脂質修飾Wnt及びHhタンパク質は、採取後、ng/ml濃度で採取溶体に含まれる(例えば、下記の実施例の表5及び表6参照)。これは、採取溶体中にシクロデキストリンがない場合、とにかく、Wnt又はHhタンパク質が検出可能な量で含まれる場合に存在するこれらのタンパク質の量よりも少なくとも1000倍濃縮されている。様々な実施の形態では、採取溶体は、約1から約25ng/ml、又はその範囲内の整数若しくは整数付近の濃度の修飾Wnt又はHhタンパク質を有する。医薬組成物又は薬用化粧組成物が0.1から100%の採取溶体を含む場合、脂質修飾Wnt又はHhタンパク質は、これらの組成物にpg/ml及びng/ml濃度で含まれ、少なくとも0.1pg/mlを超える。したがって、様々な実施の形態では、医薬組成物又は薬用化粧組成物は、1×10-1から25ng/ml又はその範囲内の整数若しくは整数付近の濃度の脂質修飾Wnt又はHhタンパク質を含む。いくつかの実施の形態では、脂質修飾されるのはWntタンパク質、Hhタンパク質又はその組み合わせである。これら実施の形態の観点では、Wntタンパク質はWnt3a、Wnt7b、Wnt10b又はそのあらゆる組み合わせである。これら実施の形態の他の観点では、Hhタンパク質は、SHh、DHh、IHh又はそのあらゆる組み合わせである。
【0068】
細胞は、採取工程において代謝的に活性を維持し、可溶性タンパク質を分泌し続ける。よって、採取溶体はそれら可溶性タンパク質に加え、シクロデキストリン複合体化脂質修飾タンパク質を含み得る。いくつかの実施の形態は、それら可溶性タンパク質を特異的に含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、又はγ-シクロデキストリンの1種以上である。いくつかの実施形態では、天然のシクロデキストリンが、水素添加反応、ヒドロホルミル化反応、酸化反応、還元化反応、及び炭素-炭素カップリング反応により化学修飾される。こうした周知の修飾物としては、2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン及びメチル-β-シクロデキストリンが挙げられる。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、メチル-β-シクロデキストリン(MBCD)である。
【0070】
特定の実施形態では、採取溶体は、さらに、コスモトロープを含有する。採取溶体を調製する方法の一例として、タンパク質分子を取り囲む水に取って代わるコスモトロピック剤の添加が挙げられる。コスモトロピック剤の例としては、約5%から約30%の間の終濃度でシクロデキストリン複合体溶体に添加されるトレハロースが挙げられる。別の実施形態では、コスモトロープ濃度は、約5%から約10%、約10%から約15%、約15%から約20%、約15%から約25%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、若しくは約30%、又はこれらの値の間の任意の濃度である。一実施形態では、トレハロース濃度は、採取直後に添加されて20%w/vである。
【0071】
いくつかの実施形態では、採取溶体は、10mMのシクロデキストリンと20%のトレハロースとの水溶液を含む。
【0072】
シクロデキストリン複合体は、さらに、低温度法(例えば、凍結乾燥)を用いて凍結乾燥保存されてもよい。
【0073】
本開示の組成物でのWntタンパク質及びHhタンパク質の検出は、市販の定量ELISA検出キットを用いて行える。
【0074】
本明細書に開示の脂質修飾タンパク質/シクロデキストリン複合体の一実施形態を
図4A及び4Bに図示する。
【0075】
一例示的実施形態では、Wnt/Hh-シクロデキストリン複合体を含有する組成物は、水溶液である。組成物は、さらに、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、水溶性ビタミン、及び微量元素の1種以上を含んでもよい。組成物の成分の例としては、これらに限定されるわけではないが、水溶性成長因子、ステロイドホルモン、及びこれらのアナログが挙げられる。水溶性成長因子の例としては、これらに限定されるわけではないが、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、幹細胞増殖因子(HGF)などが挙げられる。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、本開示に基づき調製される局所用組成物又は製剤は、液体、ペースト、クリーム、ローション、パウダー、軟膏、又はゲルの組成物形態をとることもある。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、組成物形態はペーストであり、これは局所適用を意図した1種以上の物質を含有する半固体剤型を意味する。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、組成物形態はクリームである。本明細書では、“クリーム”という用語は、水中油型又は油中水型のいずれかの半固体エマルション又は粘性液体を指す。本明細書では、“エマルション”という用語は、分散相及び分散媒の両方が不混和液であり、分散液が小さな顆粒状で分散媒液の全体に分布しているコロイド系を指す。安定な基本的エマルションは、少なくとも2種の液体と乳化剤とを含有する。エマルションの一般的な種類は、油が分散液であり水溶液(例えば、水など)が分散媒である水中油型、及び、反対に、水溶液が分散相である油中水型である。また、非水性のエマルションを調製することも可能である。水中油型のクリームとしては、ハンドクリーム及びファンデーションクリームが挙げられる。油中水型のクリームとしては、コールドクリーム及びエモリエントクリームが挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態によれば、組成物形態はローションであり、これは適切なビヒクル内に1種以上の有効成分を含有する液体又は半液体の調製物を意味する。ローションは、水性媒体中に固体が懸濁した懸濁液、エマルション、又は溶体であってもよい。
【0080】
“溶体”は、一般的に、2種以上の物質の均一混合物と考えられている。溶体は、必ずしもそうである必要はないが、しばしば、液体である。溶体中では、溶質の分子(又は溶けている物質)は溶媒の分子の間で均等に分布している。本開示の組成物に役立つかもしれない溶媒としては、アルコールなどの有機溶媒に加えて、水が挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、組成物形態は軟膏である。軟膏は、半固体調製物であり、しばしば、皮膚への外用を意図している。一般的に、軟膏のベースは、炭化水素ベース(油性)、吸着ベース(無水)、エマルションベース(水・油型)、水溶性ベースに分けられる。その無水的性質のために、軟膏は一般的に保存料を必要としない。軟膏は、クリームよりも保水性と閉塞性が高く、皮膚上に保護膜を形成する。閉塞効果は浸透性を強めその期間を長くする傾向がある。
【0082】
いくつかの実施形態によれば、本組成物の組成物形態はゲルである。本明細書では、“ゲル”という用語は、水性又はアルコール性ベース中にある高分子量ポリマーから調製した粘着質でゼリー状の半固体又は固体を指す。
【0083】
追加の組成物形態を製剤分野でよく知られている技術を用いて調製することができる。例えば、こうした技術は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、20版、Gennaro A.R.等編、Lippincott Williams&Wilkins刊、フィラデルフィア州、2000年に記載されている。当該刊行物の内容を参照により援用する。
【0084】
本明細書に開示の組成物に、機能的目的、審美的目的、及びマーケティング目的で、乳化剤、保存料、保湿剤、濃厚剤、香料、染料、ハーブエキス、及びビタミンを始めとする、数々の追加成分を、選択された追加成分が化学的及び物理的に相性が良い(compatible)であることを条件として、添加することができる。本明細書で、“相性が良い”という用語は、組成物の成分が、通常の使用条件の下では組成物の効果を実質的に減じるような相互作用がないように、互いに混ぜ合わせることが可能であることを意味する。いくつかの実施の形態は、本明細書に開示された1種類以上の追加成分を特異的に含み、それらは、添加剤、キャリア、特定機能の物質であってもよいし、そうでなくてもよい。いくつかの実施の形態は、本明細書に開示された1種類以上の追加成分を特異的に除外し、それらは、添加剤、キャリア、特定機能の物質であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート-20、ポリソルベート-40、ポリソルベート-80、又はこれらの混合物を含む。
【0086】
本明細書では、“キャリア”という用語は、1種以上の活性剤を対象に送達するための薬学的に許容可能な不活性剤又はビヒクルを指し、しばしば、“添加剤”とも呼ばれる。キャリアは、治療される対象への投与に適するように十分高い純度と十分低い毒性とを有する必要がある。キャリアは、さらに、本明細書に開示の脂質修飾タンパク質/シクロデキストリン複合体の安定性及びバイオアベイラビリティを維持するべきである。キャリアは、液体でも固体でもよく、ある組成物の活性剤及び他の成分と混ぜ合わせたときに、想定する投与法の計画したやり方で、所望の嵩、堅さなどをもたらすように、選択される。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、記載の組成物は、水性キャリアを含む。キャリアのレベルと種類は、他の成分との相性の良さ及び製品の他の所望の性質に応じて選択される。水性キャリアは、組成物中に、例えば、重量に基づいて、約30から約98%、約50%から約95%、又は約70%から約95%のレベルで含まれる。
【0088】
キャリアの例としては、水、低級アルキルアルコールの水溶液が挙げられる。低級アルキルアルコールの例としては、1から6炭素を有する一価アルコール、例えば、エタノールが挙げられる。いくつかの実施形態によれば、水性キャリアは実質的に水である。
【0089】
本開示の組成物のpHは、例えば、約4から約8である。皮膚利益剤が組成物に含まれる場合、pHは至適効果をもたらすpHに調整されてもよい。所望のpHを得るために、緩衝剤及びpH調整剤が含まれてもよい。本明細書では、pH調節剤の例として、アセテート、フォスフェート、シトレート、トリエタノールアミン、及びカーボネートが挙げられる。
【0090】
本開示の組成物の粘度(流れへの抵抗性)は、広範囲にわたって代わり得、また、増粘剤に依存し得る。例えば、いくつかの実施形態によれば、本開示の組成物は、約500mPasから約1,000,000Pasの粘度を組成物に与える増粘剤を含み得る。いくつかの実施形態によれば、増粘剤は約1,000mPasから約100,000mPasの粘度を組成物に与える。
【0091】
マイクロエマルションをもたらす増粘剤の非限定的な例として、カルボン酸/カルボキシレートコポリマーが挙げられる。こうしたコポリマーは、使用時に粘着性や油っぽさがない適切な粘度に組成物を維持することができ、また、不水溶性成分が組成物に含まれる場合に、こうした不水溶性成分を分散させ安定化させることができる。市販のカルボン酸/カルボキシレートコポリマーの例としては、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、例えば、PEMULEN(商標名)TR-I、PEMULEN(商標名)TR-2、CARBOPOL(登録商標)1342、CARBOPOL(登録商標)1382、及びCARBOPOL(登録商標)ETD 2020(全てBFグッドリッチ社から購入可能)が挙げられる。
【0092】
カルボン酸/カルボキシレートコポリマーを中和するために、中和剤、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、トロメタミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン、及びこれらの混合物が含まれ得る。
【0093】
セルロース誘導体ポリマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ニトロセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース粉末、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態によれば、セルロース誘導体ポリマーは、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びこれらの混合物である。本明細書で特に有用な市販の化合物として、Natrosol Hydroxyethylcelluloseという商標のヒドロキシエチルセルロース、及び、Aqualon Cellulose Gumという商標のカルボキシメチルセルロース(ともにAqualonから購入可能)が挙げられる。
【0094】
増粘剤の他の例としては、プルラン、マンナン、スクレログルカン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、グアーガム、ヒドロキシプロピルグアーガム、キサンタンガム、アカシアガム、アラビアガム、トラガカント、ガラクタン、カロブガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、ペクチン、アミロペクチン、寒天、クインスシード(Cydonia oblonga Mill)、デンプン(コメ、トウモロコシ、ポテト、ムギ)、アルゲコロイド(アルゲエキス)などが挙げられる。微生物学的ポリマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、デキストラン、サクシノグルカン(succinoglucan)、デンプン系ポリマー(カルボキシメチルデンプン及びメチルヒドロキシプロピルデンプンなど)が挙げられる。アルギン酸系ポリマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、アルギン酸ナトリウム、及び、アルギン酸プロピレングリコールエステルが挙げられる。アクリレートポリマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、及びポリエチレンイミンが挙げられる。無機水溶性材料の例としては、これらに限定されるわけではないが、ベントナイト、ケイ酸マグネシウム・アルミニウム、ラポナイト(laponite)、ヘクトナイト(hectonite)、及び無水ケイ酸が挙げられる。
【0095】
増粘剤の例として、約1000を超える分子量を有するポルアルキレングリコールも挙げられる。化合物の例としては、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレン、及びポリエチレングリコール、ポリプロピレンオキサイド、ポリオキシプロピレン、及びポリプロピレングリコール;並びに、ポリプロピレングリコール及び混合ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーが挙げられる。ポリエチレングリコールポリマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、PEG-2M(POLYOX WSR(登録商標)N-10とも呼ばれ、ユニオンカーバイドから購入可能、また、PEG-2,000としても購入可能)、PEG-5M(POLYOX WSR(登録商標)N-35及びPOLYOX WSR(登録商標)N-80とも呼ばれ、ともにユニオンカーバイドから購入可能、また、PEG-5,000及びPolyethylene Glycol 300,000としても購入可能)、PEG-7M(POLYOX WSR(登録商標)N-750とも呼ばれる(ユニオンカーバイドから購入可能))、PEG-9M(POLYOX WSR(登録商標)N-3333とも呼ばれ(ユニオンカーバイドから購入可能))、及びPEG-14M(POLYOX WSR(登録商標)N-3000とも呼ばれ、ユニオンカーバイドから購入可能)が挙げられる。
【0096】
市販の追加水溶性ポリマーの例としては、これらに限定されるわけではないが、キサンタンガム(KELTROL(商標名)、ケルコ(Kelco)から購入可能)、カルボマー(CARBOPOL(商標名)934、CARBOPOL(商標名)940、CARBOPOL(商標名)950、CARBOPOL(商標名)980、及びCARBOPOL(商標名)981(全てBFグッドリッチ社から購入可能)、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス-20)コポリマー(ACRYSOL(商標名)22(ローム・アンド・ハースから購入可能)、ポリアクリルアミド(SEPIGEL(商標名)305(セピック(Seppic)から購入可能)、グリセリルポリメタクリレート(LUBRAGEL(商標名)NP)及びグリセリルポリメタクリレートとプロピレングリコールとPVM/MAコポリマーの混合物(LUBRAGEL(商標名)OIL(ISPより購入可能))、スクレログルカン(CLEAROGEL(商標名)SCI I、ミッシェル・メルシエ・プロダクツ社(Michel Mercier Products Inc.)(米国、ニュージャージー州)から購入可能)、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド系ポリマー(CARBOWAX(商標名)PEG、POLYOX(商標名)WASR、及びUCON(商標名)FLUIDS(全てアマーコル(Amerchol)から購入可能)が挙げられる。
【0097】
他の剤の例としては、市販の両性ポリマー、例えば、Polyquaternium 22(MERQUAT(商標名)280、MERQUAT(商標名)295)、Polyquaternium39(MERQUAT(商標名)PLUS3330、MERQUAT(商標名)PLUS3331)、及びPolyquaternium47(MERQUAT(商標名)2001、MERQUAT(商標名)200IN),(全てカラゴン・コーポレーション(Calgon Corporation)から購入可能)が挙げられる。
【0098】
本明細書では、“保湿剤”という用語は、その吸湿性により水分保持を促進する物質を指す。保湿剤は、皮膚に吸収されることで機能し、外気から水分を引き寄せる。そして、引き寄せられた水分は、角質層のための貯水池としての役割を果たす。
【0099】
水溶性保湿剤の例としては、これらに限定されるわけではないが、多価アルコール(ブチレングリコール(1,3-ブタンジオール)、ペンチレングリコール(1,2-ペンタンジオール)、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、エトキシ化グルコース、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、ヘキサントリオール、ジプロピレングリコール、エリトリトール、トレハロース、ジグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、グルコース、フルクトースなど)、他の水溶性化合物(尿素、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、アデノシンリン酸ナトリウム(sodium adenosin phosphate)、乳酸ナトリウム、炭酸ピロリドン、グルコサミン、シクロデキストリンなど)、及びこれらの混合物が挙げられる。追加の例としては、水溶性アルコキシル化非イオン性ポリマー(約1000以下の分子量のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール(例えば、PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-1000))及びこれらの混合物が挙げられる。
【0100】
市販の保湿剤の例としては、これらに限定されるわけではないが、ブチレングリコール(セラニーズから購入可能な1,3-ブチレングリコール)、ペンチレングリコール(ドラゴコから購入可能なHYDROLITE(商標名)-5)、グリセリン(プロクター・アンド・ギャンブル社から購入可能なSTAR(商標名)及びSUPEROL(商標名)、クローダ・ユニバーサル社(Croda Universal Ltd.)から購入可能なCRODEROL(商標名)GA7000、ユニケマ(Unichema)から購入可能なPRECERIN(商標名)シリーズ、化学名と同じ商標名で販売されているNOFの製品)、プロピレングリコール(イノレックス(Inolex)から購入可能なLEXOL(商標名)PG-865/855、BASFから購入可能な1,2-プロピレングリコールUSP)、ソルビトール(リポ(Lipo)から購入可能なLIPONIC(商標名)シリーズ、ICIから購入可能な、SORBO(商標名)、ALEX(商標名)、A-625(商標名)、及びA-641(商標名)、並びにUPIから購入可能な、UNISWEET(商標名)70、UNISWEET(商標名)CONC)、ジプロピレングリコール(化学名と同じ商標名でBASFから購入可能)、ジグリセリン(ソルベイ(Solvay GmbH)から購入可能なDIGLYCEROL(商標名))、キシリトール(協和及びエーザイから化学名と同じ商標名で購入可能)、マルチトール(林原から購入可能なMALBIT(商標名))、コンドロイチン硫酸ナトリウム(化学名と同じ商標名でフリーマン(Freeman)及びバイオイベリカ(Bioiberica)から購入可能、また、ATOMERGIC SODIUM CHONDROITIN SULFATEの商標名でアトマージック・ケメタルズ(Atomergic Chemetals)から購入可能)、ヒアルロン酸ナトリウム(化学名と同じ商標名でチッソ社から購入可能、アクティブ・オーガニックスから購入可能なACTIMOIST(商標名)、インタージェン(Intergen)から購入可能なAVIAN SODIUM HYALURONATEシリーズ、一丸ファルコスから購入可能なHYALURONIC ACID Na)、アデノシンリン酸ナトリウム(化学名と同じ商標名で旭化成、協和、及び第一製薬から購入可能)、乳酸ナトリウム(化学名と同じ商標名でメルク、和光、及び昭和化工から購入可能)、シクロデキストリン(アメリカン・マイズ(American Maize)から購入可能なCAVITRON(商標名)、ローヌ・プーランから購入可能なRHODOCAP(商標名)シリーズ、及びトーメンから購入可能なDEXPEARL(商標名))、ポリエチレングリコール(ユニオンカーバイドから購入可能なCARBOWAX(商標名)シリーズ)、並びにグリセリルポリメタクリレートとプロピレングリコールとPVM/MAコポリマーの混合物(ガーディアン・ラボ(Guardian Lab )から購入可能なLUBRAJEL(商標名)Oil)が挙げられる。
【0101】
本明細書では、“保存料”という用語は、水分を含有する製品中で望ましくない微生物の成長を防止又は阻害する物質を指す。局所用製剤などの薬剤での使用が承認されている保存料は、連邦規則集第21巻で刊行されている現在の連邦規則で確認できる。当該内容を参照により本願明細書で援用する。保存料の例としては、これらに限定されるわけではないが、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、バイオペイン(biopein)、BHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチルパラベン、アスコルビン酸カルシウム、ソルビン酸カルシウム、クエン酸、シナモン・カッシア、クロロクレゾール、ジアゾリジニル尿素、チオジプロピオン酸ジラウリル、EDTA(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩)、エリソルビン酸、グレープフルーツ種子エキス、ヒドロキシヘンゾエート(hydroxyhenzoate)、メチルパラベン、ネオペイン(Neopein)、フェノニップ(phenonip)、フェノキシエタノール、亜硫酸水素カリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム、プロピルパラベン、ローズマリーオイルエキス、アスコルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、スプラレイン(Suprarein)、チオジプロピオン酸、銀粒子、及び/又はトコフェロールが挙げられる。また、追加で、保存は、抑制された温度(例えば、4℃未満又は凍結)で、シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体又は当該複合体を含む組成物又は製剤を貯蔵することで実行され得る。
【0102】
いくつかの実施形態では、組成物は、1日に1回、1日に2回、1日に3回、1日置き、毎週、又は所望の結果を得るために必要な任意の期間で、局所的に適用される。典型的には、組成物は、所望の治療区域に局所的に適用され、皮膚に吸収されるに任せられる。
【0103】
治療用途
シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体含有組成物の治療用途としては、これらに限定されるわけではないが、組織再生を含む。
【0104】
本明細書に開示の組成物及び製剤は、局所的に投与されてもよい。シクロデキストリン複合体含有組成物は、採取溶体の約0.1%から約100%を含有する用量で局所的に投与されてもよい。特定の実施形態では、約5%から約25%(v/w、v/v、又はw/v)、約10%から約25%、約15%から約25%、約20%から約25%、約5%から約20%、約5%から約15%、約5%から約10%、約5%、約7.5%、約10%、約12.5%、約15%、約17.5%、約20%、約22.5%、若しくは約25%、又は、これらの値の間の任意の範囲の用量で、局所的に投与される。
【0105】
本開示の組成物の用量及び所望薬剤濃度は、想定する特定用途に応じて変わり得る。適切な用量の決定は、十分に当業者である医師の技術の範囲内である。動物実験は、ヒト治療のための有効用量の決定のための信頼できる筋道を提供する。有効用量の種間補正(interspecies scaling)は、Mardenti、J.及びChappell、W.著のThe use of interspecies scaling in toxicokinetics(Toxicokinetics and New Drug Development、Yacobi等編、Pergamon Press刊、ニューヨーク州、1989、42-96頁)に記載の原理に基づいて実行できる。本明細書では“治療上有効”量という用語は、例えば、毛の成長などの特定の処置を実行するのに必要な量を指す。“処置”は、治療処置及び予防手段(標的症状又は疾患の予防又は緩慢化(減少)を目的とする)の両方を指す。処置の必要なものとしては、疾患に罹りやすいもの又は疾患を予防する必要があるものに加えて、既に疾患に罹患しているものが挙げられる。いくつかの実施形態では、疾患は現存する。
【0106】
シクロデキストリン/脂質修飾リガンド複合体の用途は、限定されないが、心筋再生、肺再生、創傷治癒、触感回復、味覚回復、骨折後の骨形成の促進、in vitroでの卵成熟、抹消及び中枢の神経組織の再生、乳房組織の再生若しくは増大、陰茎の大きさの増加、外部生殖器の感覚増強、移植の血管新生の促進、免疫調節、神経変性疾患の治療、脳再生、肝再生、脊髄再生、又は生殖器再生などである。特定の実施の形態では、組織再生は、皮膚又は毛髪以外のあらゆる組織におけるものである。
【0107】
いくつかの実施の形態では、シクロデキストリン/脂質修飾リガンド複合体は知覚神経機能の回復を必要とする組織での知覚神経機能の回復に適している。いくつかの実施の形態では、組織は中枢神経系組織又は末梢神経系組織である。
【0108】
また、本明細書では、神経変性疾患の治療に関するシクロデキストリン/脂質修飾リガンド複合体の使用が開示され、当該使用は、本明細書に開示された組成物を、神経変性疾患の治療を必要とする対象へ投与することを含む。いくつかの実施の形態では、神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、脊髄損傷、脳損傷、末梢神経損傷、末梢神経障害、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症又は認知症である。
【0109】
いくつかの再生での使用は、特に皮膚及び毛髪に適用された場合、それらに対する美容的な観点を有する。そのような使用は、加齢性斑点色素、しわ、及び脱毛の抑制などである。脱毛の抑制を目的とするいくつかの実施の形態では、患者が軽度から中等度、例えば女性についてラドウィグ分類のI型若しくはII型、又は男性についてノーウッド分類のIII型若しくはIV型の脱毛を有する。他の実施の形態では、患者は、さらに進行した脱毛を有する。様々な実施の形態では、治療によって、適切な分類における少なくとも1、2、3又はさらに多くの段階、程度を下げることができる。
【0110】
用語“治療する”又は“治療”は、あらゆる種類の治療活動を広く含み、例えば、ヒト又は他の動物における疾患の緩和又は予防、あるいはその他に、ヒト又は他の動物の体の構造又は任意の機能に影響を及ぼすあらゆる活動を含む。治療活動は、特には本明細書に開示された様々な治療方法、例えば、医療従事者、患者自身又は他の任意の人によるかを問わない組織再生の促進方法に従って、本明細書に開示された薬剤、製剤及び医薬組成物を患者に投与することを含む。治療活動は、他の医療従事者又は患者自身を含む任意の他の人の影響を受ける医師、医師助手及びナース・プラクティショナー等の医療従事者の指示、説明、及び助言を含む。いくつかの実施の形態では、治療活動は特定の薬剤又はその組み合わせを状態の治療のために選択することを促すこと、誘導すること、又は命じることも含んでもよい。そして、当該薬剤に対する保険の補償の承認、代替の薬剤に対する補償の拒絶によって当該薬剤が実際に使用される。採用医薬品集に当該薬剤を含める又は採用医薬品集から代替の薬剤を除外する、又は薬剤の使用の奨励金の提供は保険会社又は薬剤給付管理会社等によって実行される。また、いくつかの実施の形態では、治療活動は、治療活動は特定の薬剤又はその組み合わせを状態の治療のために選択することを促すこと、誘導すること、又は命じることも含んでもよい。そして、病院、外来診療所、保険維持機構、医療業務又は医師団体等によって確立された指針又は実施基準によって当該薬剤が実際に使用される。当該薬剤に対する保険の補償の承認、代替の薬剤に対する補償の拒絶によって採用医薬品集に当該薬剤を含める又は採用医薬品集から代替の薬剤を除外する、又は薬剤の使用の奨励金の提供は保険会社又は薬剤給付管理会社等によって実行される。
【0111】
治療を目的とする実施の形態は通常、治療方法として表現されるが、当該実施の形態それぞれについて、医薬での組成物の使用、薬剤の製造における組成物の使用、及び医薬での使用のための組成物という対応する実施の形態がある。様々な実施の形態では、医薬、薬剤、及び類似の専門用語は、それぞれが個別に又は群として、薬剤及び化粧品、そしてそれらの関連する使用を意味するものとして理解されるべきである。
【実施例0112】
実施例1:部分的分化型胚性幹細胞培養物に由来する細胞からのHh/Wntの捕捉と検出
胚性幹細胞は、MATRIGEL(登録商標)の薄い層からなる接着基質上にbFGF(10ng/mL)及びactivin A(5ng/mL)を補充した無血清培地を用いて現在刊行法に従って増殖した。コンフルエントになった後、培養物の半分に成長因子であるbFGF及びActivin Aを含まない以外は同じ培地を与えた。細胞培養上清サンプルを、フォリスタチン濃度について分析した。
【0113】
未分化型又は部分的分化型の、個々の培養物を、60分から180分の間、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、又はメチル-β-シクロデキストリン(MBCD)の10mM溶液に暴露した。位相コントラスト顕微鏡下で観察された暴露前の細胞培養物は、細胞培養物の管表面に付着しており、平滑で、コンパクトで、単層の又は多層的な細胞の領域を有していた。シクロデキストリンとともにインキュベートした後は、培養物は、大部分の細胞が接着性を失い、ばらばらになった。位相コントラスト顕微鏡下で、すでに付着している細胞の層が培地に自由に浮遊する個々の細胞又は複数の細胞の区画に解離された。
【0114】
その後、細胞とともにインキュベートしたMBCD溶液を、SHh、Wnt3a、及びWnt7aの濃度について分析した。結果を表3に示す。
【0115】
【0116】
α-又はβ-シクロデキストリンの添加は、MBCDで観測されたものに対して、減少はするものの比例的な効果を示した。
【0117】
3回の異なる実験から得られた細胞及びシクロデキストリン溶体の同じ調製物が約400個の標的タンパク質のパネルに対する多重ELISAによって解析された。有意な濃度で検出されたタンパク質を含む結果が表4に提示されている。
【0118】
【0119】
下記のタンパク質が10~100pg/mLの範囲という少量で検出された。RBP4、ANGPTL4、MMP-10、IL-21、MMP-7、ALCAM、アクチビンA、Fcg RIIBC、ULBP-1、DKK-1、SCF R、TNF RII、IL-5 Ra、IL-1 F9、PDGF-AA、LDL R、uPAR、フーリン、TIM-3、Epo R、EGF R、MMP-13、PDGF-BB、JAM-A、CD99、TGFb2、IL-13 R1、PIGF、GH、シスタチンC、カリクレイン5、アディプシン、TWEAK、TF、HGF、トランスフェリン、ガレクチン-9、EGF R3、CD229、ErbB4、BMP-4、NAP-2、E-カドヘリン、ANG-2、IL-34、IL-6、LOX-1、NT-4、OPG、Axl、TRAIL R3、PF4、リポカリン-2、IL-1ra、AR、IL-11、TIM-1、FGF-21、uPA、CA9、ANG-1、CD23、VEGF、IL-27、IL-6R、DLL1、IL-1a、RGM-B、MCSF、FGF-4、IGFBP-1、Tie-2、ICAM-2。
【0120】
下記のタンパク質が0.1~10pg/mLの範囲という微量で検出された。BMP-7、IP-10、IL-15 R、TRAIL R2、RAGE、EG-VEGF、NrCAM、NGF R、IL-2 Ra、IL-1 R3、IL-13 R2、NT-3、IL-8、FAP、レプチンR、LIF、IL-16、TNFb、レニン、LYVE-1、MCSF R、MDC、I-TAC、IL-17E、トラッピン-2、TNFa、IL-15、アグリカン、VEGF R2、SCF、TGFa、IL-2、IL-17B、IFNg、ガレクチン-7、MICA、IL-31、I-309、ICAM-3、b-NGF、FAS L、TARC、カテプシンS、VEGF-D、MCP-4、MIP-3a、PDGF-AB、MEPE、MCP-2、TSLP、MIP-1b、MIP-1d、AgRP、BLC、IL-12p40、EGF、SDF-1a、IL-7、IL-17F、MCP-3、TRAIL、FGF-7、GM-CSF。
【0121】
次のタンパク質は検出されなかった。IL-7、IL-17F、MCP-3、TRAIL、FGF-7、GM-CSF、プロスタシン、IL-10、GDNF、IL-13、IL-12p70、2B4、4-1BB、ADAM9、ADAMTS13、アディポネクチン、ANGPTL3、B7-1、B7-H1、CD14、CD200、CD30、CD40、CD40L、CD97、Ck beta 8-1、CNTF、DAN、DcR3、DR6、エンドグリン、エオタキシン、ErbB2、E-セレクチン、FABP2、Fas、FGF-19、FLRG、Flt-3L、フラクタルカイン、ガレクチン-3、GITR、GITR L、グラニュリシン、HVEM、IGF-1、IGF-1R、IGF-2、IL-1 F10、IL-1 F5、IL-1 F8、IL-1 R5、IL-1 R6、IL-1 RI、IL-10 Rb、IL-17、IL-17R、IL-1b、IL-2 Rg、IL-20、IL-21R、IL-32 alpha、L1CAM-2、レプチン、LIMPII、LRIG3、マラプシン、MBL、MICB、MIG、Nectin-4、NRG1-b1、オステオアクチビン、PDGF Rb、PECAM-1、ペルセフィン、プロラクチン、RANK、ROBO3、S100A8、Siglec-5、Siglec-7、Siglec-9、SOST、シンデカン-3、TACI、TGFb3、トロンボスポンジン-5、Tie-1、TLR2、VCAM-1、WIF-1、XEDAR、G-CSF、TRAIL R4、TREM-1、IL-18 Rb、MMP-8、ST2、CRP、ULBP-2、GASP-1、CTLA4、RANTES、PSA-free、IL-3、CEACAM-1、SDF-1b、IL-23、HCC-1、OSM、CTACK、CEA、MMP-3、MIP-3b、IL-18 BPa、トロポニンI、BAFF、TSH、FSH、IL-1 RII、エオタキシン-3、IL-28A、TECK、ACE-2、TPO、PARC、BCMA、TACE、リンホタクチン、TRANCE、シスタチンA、HCC-4、BTC、AMICA、CCL28、IL-29、TIMP-4、LIGHT、CXCL14、プロカルシトニン、CA15-3、MPIF-1、IGFBP-5、アンギオテンシノーゲン、IL-17B R、GASP-2、L-セレクチン、サイログロブリン、MSP、VE-カドヘリン、6Ckine、CD84。
【0122】
実施例2 細胞源及び採取方法
細胞の分化状態とベータ-シクロデキストリン化学修飾との違いを検証するために、我々は部分的に分化した、及び多能性幹細胞の培養物から膜結合シグナルを採取し、2つの異なるベータ-シクロデキストリン:メチル及びヒドロキシプロピル修飾したものを用いた。
【0123】
胚性幹細胞培養が4個の同じ培養容器でコンフルエントになるまで維持された。コンフルエントにおいて、培養したうちの2個が15mL/75cm2の20%トレハロース及び10mMメチル-ベータ-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン溶液を用いて、一晩かけて非分化段階で採取された。
【0124】
他の2個の培養物を血清なし、成長因子なしの培地で2日間、分化させた後、メチル-ベータ-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン溶液を用いた同じ方法で採取された。
【0125】
所定の条件で2日後に、胚性幹細胞を外胚葉及び中胚葉系統の混合物中で部分的に分化させた。系統のこの混合物が初期発生を組み立て直す。
【0126】
抽出物が分析されるまで4℃に保管された。
【0127】
Wnt3a(HUM-WNT-3A)及びソニックヘッジホッグ(HUM-SHh N末端)に関して、製造者の仕様書に基づいて定量的ELISAキットを用いて分析が行われた。
【0128】
非分化幹細胞(ES)は、分化した細胞(DIF)よりもWnt-3Aの産生が少なかった。メチル-ベータ-シクロデキストリン(MBCD)はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン(HPCD)よりも良好に抽出された。
【0129】
【0130】
ソニックヘッジホッグは部分的に分化した幹細胞(DIF)にかなり多くの量で含まれており、メチル-ベータ-シクロデキストリン(ME-CDX)で良好に抽出された。
【0131】
【0132】
結論として、膜結合成長因子(Wnt、SHh)抽出物はメチル-ベータ-シクロデキストリンに関してより効率的である。さらに、部分的に分化した細胞が抽出物のより高い濃度をもたらした。
【0133】
実施例3:動物モデルでの毛の成長の比較研究
部分的分化型胚性幹細胞の培養物を、1mL/106細胞の体積で注入した10mMのメチル-β-シクロデキストリン及び20%のトレハロースを含有する採取水溶液に室温で3時間暴露して、シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体(以降、“有効成分”とする)を得た。
【0134】
製剤化有効成分(保存料としてフェノキシエタノール及びカプリリルグリコール0.75%を含む)を、毛の成長(又は再成長)を標的に試験した。毛の成長についてのマウスモデルを用い、原型形成を試験した。第一休止期が確認された6週齢のオスとメスのマウスを、3つの異なる濃度の処置群と陰性対照に無作為に割り付けた。
【0135】
1日目に、全ての動物をイソフルレンで麻酔し、背中全体(肩から臀部まで)をハサミで刈り毛のない状態にした。試験物を、0日目から開始して14日間にわたり連続して局所適用した。試験物は、毎日、マウスのそれぞれの背面皮膚にやさしくこすりつけた。処置種類毎に新しい手袋を着用した。動物は、同じケージのマウスが試験物をなめてしまうのを避けるために、処置期間中、独居させた。
【0136】
体重及び臨床的観察を毎週行った。巨視的なデジタル写真を、2、7、10、14、及び22日目に撮影した。22日目に、皮膚サンプルを全てのマウスから採取し、組織学的分析のためにホルマリンで固定した。
【0137】
全ての処置群は、有効成分の濃度にかかわらず、対照群の20%と比較して、80%の対象で新たな成長期斑を示した。応答は、標準化された写真の黒色素の個数で評価された対照群と比較して処置群で11.3%、13.4及び19.01%まで皮膚の暗さの増加により確認された。剃られた領域の新たな成長期斑の個数が処置群では動物あたり6~7個で、対照群では動物1体で1個であった(
図7A-C)。
【0138】
実験の1日目に得られた組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色は、対照群において、休止期の開始と、実験の最後まで休止期の毛包の持続とを示す(
図8)。実験の最後で、皮膚の組織切片のヘマトキシリン・エオシン染色によって、処置群のマウスが休止期から成長期への遷移を示すことが示された。これは、まだ目に見える毛の成長(
図9)及び新毛斑での典型的な成長期毛包形態(
図10)が見られない領域における休止期及び初期成長期(EA)の毛包の混在によって考えられる。
【0139】
休止期では、毛包幹細胞は、古い毛包のバルジ区域に休止状態で局在する。LGR5は、Wntで誘導される推定上の毛包幹細胞マーカーである。LGR5+細胞は、成長期への遷移の間、真皮乳頭への細胞移動の際に、実際の毛包シャフトを刺激する。免疫蛍光顕微鏡下で、対照群由来の試料におけるLGR5発現は、毛包の外毛根鞘を特徴づけるCK14陽性基底細胞に沿って最小か又は欠如する(
図11)。処置群では、Wntシグナル伝達が毛包幹細胞活性化及び新たな成長期への遷移を示すLGR5を誘導した(
図12)。
【0140】
SOX9は、毛包幹細胞の運命及び可塑性を支配する先駆因子であり、外毛根鞘(ORS)分化及びバルジでの毛幹細胞区画の形成に不可欠である。Sox9発現はソニックヘッジホッグ(SHh)シグナル伝達に依存する。処置動物は、成長期誘発の毛包マトリックスにおけるSox9陽性による毛幹細胞の動員を示す(
図13)。
【0141】
実施例4:エクスビボヒト毛包培養物
毛球区域が明確に存在する、毟り取ったヒトの毛を、採取直後に細胞増殖培地に浸けた。毛サンプルのいくつかは、実施例2に記載の胚性幹細胞培養物由来の脂質修飾タンパク質/MBCD複合体(封入済みMBCD)(有効成分と呼ぶ)、又は、対照としての未封入MBCDに、シクロデキストリン成分の0.25mMの同一濃度で、暴露した。他の成長因子(例えば、EGF、KGFなど)は毛包培養物中で用いなかった。培養2日後(
図14A-C)、細胞の接着とわずかな増殖が、位相コントラスト顕微鏡下で、MBCD含有培養物及び対照毛包培養物の両方で観察されたが、MBCD封入因子を含有する毛包培養物で増殖はより多かった。暴露5日後(
図14D-G)、対照毛包は老化をむかえ基質から剥がれたが、MBCDに暴露した毛包培養物は約80%の直径の増大と細胞の増殖を続けた。
【0142】
禿げていない男性由来のヒト毛包を頭皮サンプルから解離させた。群毎に合計で15個の毛包を、標準的なDMEM:F12の培地(ウシ胎仔血清5%)に移し、対照、又は、シクロデキストリン成分の0.1mM、0.25mM、若しくは0.5mMの濃度の有効成分のいずれかに暴露した。毛の長さ及び毛包の厚さを0日目及び7日目に測定した。
【0143】
7日以内に、毛包の大部分が長さの点で成長し、0から63%の長さの増加がみられた。0.25mMの有効成分で処置した毛包は42%±13%成長し、一方、他の処置を受けた毛包は33から34%成長した。同じ試験条件で、毛包の厚さの成長は統計的有意に達した(0.25mMの群についてp<0.01、0.5mMの群についてp<0.05)(
図15A-B)。
【0144】
実施例5:細胞膜結合脂質修飾シグナル伝達因子を含有する製剤の臨床試験
シクロデキストリン/脂質修飾タンパク質複合体からなる有効成分を部分的分化型ヒト胚性幹細胞の培養物を1mL/10
6細胞の体積で注入した10mMのメチル-β-シクロデキストリン及び20%のトレハロースを含有する採取水溶液に室温で3時間暴露することで産生した。組成物を、片手の手関節の背側区域上に外用し、もう片手は未処置のままにした。手のこの部分は、末梢腕産毛に覆われており、左と右でそのパターンや密度が同じだが、機械的摩耗により休止期の明確な兆候を示している。適用は、約1滴(30μL)を皮膚に広げて、ベタつくまで乾燥し、その後、ベタつきがなくなるまで擦った。当該区域を、5日間にわたって毎日処置し、2週間後に評価を行った。末梢腕毛の成長は、処置区域で明確に目立っていた(
図16C-D)。さらに、老化に関連するしわ及び斑点状色素沈着が明らかに減っており、肌のきめも改善した。2点識別能力の増大に基づき、触感の改善が対象から報告された。観察結果は、皮膚における再活性化効果を示唆している(
図16A-B)。
【0145】
実施例6:部分的に分化したhESC膜抽出物の局所用組成物を用いたヒトでの臨床試験
25%又は50%の濃度の幹細胞膜抽出物を含む蒸留水と微生物阻害剤(フェノキシエタノール及びソルビン酸、1%)とを混合することで局所用調製物が調製された。
【0146】
他の調製物には、水に代えてアミノ酸濃度を高めた細胞培養培地ベースの組成物を使用した。
【0147】
ハミルトン-ノーウッドVII型脱毛症の65歳の志願者が、1ヶ月間の毎日投与に続いて1ヶ月間投与しない交互処置を3回繰り返し局所用溶体で処置された。各処置サイクルの後に標準化された条件での写真が撮影された。最初の適用から6ヶ月後に、1ヶ月違いで撮影された写真によって、各処置サイクルの後の新たな毛髪の進行性蓄積と、VI型以下への退行が示された(
図17)。
【0148】
単一施設での臨床試験が行われ、4週間毎の下記で交互処置で使用された場合(合計16週間に続いて8週間の退行期間)の毛髪成長処置製品の有効性及び耐性が自己認知した薄毛及び脱毛、並びに軽度から中等度の脱毛であると臨床的に評価された男女(女性についてラドウィグ分類のI型若しくはII型、男性についてノーウッド分類のIII型若しくはIV型)で評価された。
【0149】
2段階の治療計画が試験された。治療計画では、10mMメチル-ベータ-シクロデキストリン及び20%トレハロースを含む蒸留水中の部分的に分化した幹細胞膜抽出物を使用し、これを4週間、毎日適用した後で、さらに4週間、細胞培養培地中にみられる栄養を含有するものの膜抽出物を含まない局所用組成物を毎日適用した。
【0150】
本試験は次の評価項目で設計された。
【0151】
評価項目
・8週の退行期に続く4、8、12、16週及び24週での共通の包括的な写真の治験責任医師による格付け
・8週の退行期に続く4、8、12、16及び24週での毛髪成長パラメーターの対象による格付け
・基準に加え、8週の退行期に続く4、8、12、16及び24週で撮影された頭皮の共通の包括的な写真
・基準、16及び24週で撮られた頭頂の直径1cm領域の超接写写真と、基準、16及び24週の画像を用いた16及び24週後に行われるか毛髪密度及び直径に関する画像解析
・基準に加え、8週の退行期に続く4、8、12、16及び24週でのすべて対象による自己評価アンケート
・基準に加え、8及び16週で採取された対象ごとの3mm生検(対象あたり計3生検)。試料は頭の皮膚及び毛包構造の組織学的改善の分析のために賛助者に送られる。
【0152】
有効性が8週の退行期に続く4、8、12、16週及び24週での共通の包括的な写真の治験責任医師による格付けを介して評価される。対象が8週の退行期に続く4、8、12、16及び24週での毛髪成長パラメーターを格付けする。忍容性評価が基準に加え、8週の退行期に続く4、8、12、16及び24週で行われ、基準と第4週の間、対象に毎週電話し、あらゆるAEに関して点検した。自己評価アンケートが基準に加え、8週の退行期に続く4、8、12、16及び24週で行われた。頭皮の共通の包括的な写真が基準に加え、8週の退行期に続く4、8、12、16及び24週で撮影される。頭頂の超接写写真が基準、16及び24週で撮られ、毛髪密度及び直径に関する画像解析が16及び24週の実験の後に両方の時点の画像を用いて行われる。
【0153】
基準に加え、8及び16週での各対象の頭皮から皮膚科研究医によって生検(3mm)が採取される。
【0154】
安全性/忍容性評価項目
・耐性の臨床的格付け
・有害事象(AE)に関する安全性の検査
・研究期間全体のAEの監視
【0155】
資格要件を満たす少なくとも10人の対象が臨床試験に完全に参加できると予期され、それは少なくとも5人の男性と少なくとも5人の女性である。次の指示が与えられる。
・1週間あたり少なくとも3回の提供された毛髪洗浄製品の使用
・適用:
-1日1回、毛根付近に溶体を2~3滴落とす。頭皮の領域全体に均一に拡げ、約1分間、製品を皮膚に揉み込む。
-洗髪の日に、毛髪を洗浄した後(湿り気又は乾燥)、製品を適用する。1日に2回以上洗髪する場合、各洗浄後に製品を再度適用する。
-製品をつけたままにしておく。ドライクリーンで残余がなくなる。
-いつもどおりスタイリングする。スタイリング製品の使用は避ける(ヘアースプレイ、ジェル等)。
【0156】
忍容性評価は基準と追跡の時点で行う。局所の皮膚耐性が紅斑、浮腫及び乾燥/薄片化の兆候を査定すること、及び、頭皮全体(処置領域)の火照り、ヒリヒリした痛み及び痒みの対象による報告によって評価される。
結果:
8週後、対象の多数が前向きな結果供述に同意又は中立を報告した(表7参照)。治験責任医師の評価は、表8に示されたようにすべてのパラメーターに関して改善であった。
対象によって報告された、又は治験責任医師によって観察された有害事象はなかった。
【0157】
【0158】
【0159】
実施例7 神経培養における細胞の神経栄養効果
胚性幹細胞から分化させた14日目の凍結保存された神経前駆細胞が解凍され、ラミニン被覆されたイメージング細胞培養スライドに同一の密度で撒かれた。対照のために、シクロデキストリン膜抽出物が、同一の培地での終濃度10μL/mL v/vでいくつかのスライドに添加された。培地を交換し、2週間で1週間あたり3回、膜抽出物が添加されて培養が継続された。
【0160】
撒いてから2日後、位相コントラスト顕微鏡で、対照の培養はさらに分化したニューロンの初期喪失及び初期濃度の総合的な減少を示す。対照プレートの細胞回復は48時間で42%であった。一方、48時間で85%というより良好な回復が処置された培養で見られた。対照プレートの細胞の形態は、より多くの線維芽細胞又は上皮細胞に囲まれた神経
細胞の凝集傾向を示した。処置プレートは、上皮の又は線維芽球様の表現型に対して高い比率で均一的に分布した神経形態を呈した。
【0161】
細胞培養が、両方の条件で、2日毎に培地を交換して2週間行われ、処置されたものには10μL/mLのシクロデキストリン膜抽出物が添加された。続いて、スライドが固定され、ニューロンのマーカー(ベータIIIチューブリン、ダブルコルチン)及びグリアのマーカー(GFAP)が染色された。いずれの条件でもグリア細胞は同定されなかった。
【0162】
対照は、培養期間を通して拡がった非神経細胞に囲まれたニューロンを染色するベータチューブリンの島を示す。これらニューロンは、成熟及び培養条件の栄養的支持を欠くことを示唆する細胞凝集を超えて拡がることができない限定された(短くて少ない)神経突起伸長を有する。
【0163】
細胞膜抽出物に暴露された培養は、広範囲に及ぶ神経突起伸長と細胞培養表面全体の均一な分布を示した。培養条件によって、ニューロンの生存、神経突起の拡大が促進され、ベータチューブリン陰性細胞の個数が比例的に減少した(
図18A~D参照)。
【0164】
処置された培養はダブルコルチン陽性ポケットを示し、これは移動性のニューロンが豊富に存在することを示す。対照培養では、散在性のダブルコルチン陽性細胞が観察された(
図19A~D参照)。
【0165】
これらの実験的な観察結果に基づいて、発明者はシクロデキストリン膜抽出物が神経組織に次の効果を発揮すると結論づける。
a)ストレス因子(本実験での凍結/解凍サイクル)に曝された後の神経細胞の生存への貢献
b)神経フィラメントが陽性で、頑丈な神経突起伸長で観察されたような形態的発展の増強
c)ダブルコルチンが陽性で、培養中の初期の神経前駆細胞からの移動性の若いニューロンの持続又は拡大
d)他の細胞の種類に対する増殖増強効果は見られない
【0166】
神経変性疾患に対しては、存在するニューロンの改善された保護及び改善された神経形成による列挙された作用機序の結果により、シクロデキストリン-幹細胞膜抽出物複合体の適用が非常に有益である。当該疾患は、認知症、アルツハイマー病、脳外傷、脊髄損傷及びその他の様々な形態を含むさらに、有利な効果が末梢性ニューロパシーの様々な形態を含む末梢神経障害に対して予想される。
【0167】
特記のない限り、本願明細書及び請求項で用いられる、成分の量、性質(分子量など)、反応条件などを表す全ての数字は、どの箇所でも“約”の語で修飾されているものとして理解されたい。本明細書では、“約”及び“およそ”という用語は、10から15%内に、好ましくは、5から10%内におさまることを意味する。したがって、矛盾しない限り、以降の明細書及び特許請求の範囲に記載の請求項で特定される数値パラメーターは、本発明により得ようとする所望の性質に依存して変わり得る近似値(approximation)である。均等論の適用を請求項の範囲に限定することを意図するわけではないが、少なくとも、各数値パラメーターは、報告の有効数字の桁数を鑑み、通常の丸め技術を適用して、考慮すべきである。本発明の広い範囲を規定する数値範囲及び数値パラメーターは近似値ではあるものの、具体的な実施例で規定されている数値は可能な限り正確に報告されている。ただし、いかなる数値も対応する検査測定でみられる標準偏差から必然的に生じるいくばくかの誤差を本質的に含む。
【0168】
本発明を記載する文脈(特に、特許請求の範囲の文脈)では、特記がなく文脈に明白な矛盾が生じない限り、単数の記載は単数及び複数の両方を包含する。本明細書での数値範囲の記載は、当該範囲内の独立した各数値を個別に参照する簡便な方法としての役割を意図したにすぎない。本明細書に特記のない限り、これらの個別の各数値をそれらが本明細書で個別に記載されているかのように本明細書で援用する。本明細書に記載の全ての方法は、特記がなく文脈に明白な矛盾が生じない限り、任意の適切な順番で実行することができる。本明細書で示したあらゆる例又は例示表現(例えば、“例えば”など)は、本発明をより際立たせることを意図するにすぎず、本発明の範囲を請求項に記載した以外に限定するものではない。本明細書の記載を、本発明を実施するために必須の請求項に未記載の要素を示すものと考えるべきではない。
【0169】
選択的要素の又は本明細書に記載の発明の実施形態のグループ分けは、制限と考えてはならない。各グループメンバーは、個別に、又は、他のグループメンバー若しくは本明細書にある他の要素と組み合わせて、参照されかつ請求項に記載されてもよい。あるグループの1つ以上のメンバーが、便宜性及び/又は特許性を理由に、あるグループに加入されてもよいし、あるグループから削除されてもよい。こうした加入や削除が行われると、本明細書は修正後のグループを含みとみなされ、本明細書は請求項に記載の全てのマーカッシュグループの記載要件を満たす。
【0170】
本発明の特定の実施形態を本明細書に記載したが、これらは本発明を実施するための発明の最良の形態を含んでいる。もちろん、前述の記載に触れた当業者にとってこうした好ましい実施形態についての変形例は明らかだろう。発明者は、当業者であればこうした変形例を適宜に採用すると期待し、本発明が本明細書で具体的に記載したやり方以外で実施されることを意図している。従って、本発明は、適用法令で許可されるように、特許請求の範囲の請求項に記載の主題の修正例及び均等物の全てを包含する。さらに、特記がなく文脈に明白な矛盾が生じない限り、上述の要素の、それらの全ての変形例における、任意の組み合わせが、本発明に包含される。
【0171】
本明細書に記載の具体的な実施形態は、さらに、“からなる”又は“から実質的になる”といった表現で請求項において限定されることもある。請求項で使用する場合、当初から記載されていたか補正により加入したかによらず、“からなる”という移行句は、請求項で特定されていない、要素、工程、又は成分の全てを排除する。“から実質的になる”という移行句は、請求項の権利範囲を、特定した材料及び工程並びに基本的で新規な(1つ又は複数の)特徴に実質的に影響を与えない事項に限定する。このように請求項に記載された本発明の実施形態は、内在的に又は明示的に記載されており、本明細書により実施可能である。
【0172】
さらに、明細書全体で特許文献及び刊行物へのかずかずの参照がなされている。上述の文献及び刊行物のそれぞれについて、それらの内容の全てが、参照により、本願明細書で援用されるものとする。
【0173】
最後に、本明細書に記載の本発明の実施形態は本発明の原理の例示であることを理解されたい。採用可能な他の変形例も本発明の範囲内である。そこで、例として、限定されるわけではないが、本発明の代替的な構成が本明細書の教示に従い使用可能である。従って、本発明は記載し図示したものに厳密に限定されるわけではない。
【0174】
(付記)
(付記1)
脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物に組織を暴露することを含み、前記組織は、表皮、真皮、皮膚感覚受容体、皮膚付属器、毛髪、爪、皮脂腺、汗腺又は立毛筋である、組織再生の促進を必要とする組織における組織再生の促進方法。
【0175】
(付記2)
前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又はメチル-β-シクロデキストリンの1種以上である、付記1に記載の方法。
【0176】
(付記3)
前記シクロデキストリンは、水素添加反応、ヒドロホルミル化反応、メチル化反応、酸化反応、還元化反応、又は炭素-炭素カップリング反応により化学修飾された、化学修飾シクロデキストリンである、付記1又は2に記載の方法。
【0177】
(付記4)
前記シクロデキストリンは、メチル-β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである、付記1から3のいずれか一つに記載の方法。
【0178】
(付記5)
前記脂質修飾タンパク質は、細胞膜脂質と結合したWingless(Wnt)タンパク質又はHedgehog(Hh)タンパク質の1種以上を含む、付記1から4のいずれか一つに記載の方法。
【0179】
(付記6)
前記Hhタンパク質は、ソニックヘッジホッグ(SHh)タンパク質、デザートヘッジホッグ(DHh)タンパク質、又はインディアンヘッジホッグ(IHh)タンパク質の1種以上である、付記5に記載の方法。
【0180】
(付記7)
前記Wntタンパク質は、Wnt3a、Wnt7b、又はWnt10bの1種以上である、付記5に記載の方法。
【0181】
(付記8)
前記脂質修飾タンパク質は、Wingless(Wnt)又はHedgehog(Hh)ファミリーの属するタンパク質以外の他のタンパク質から構成される、付記1から4のいずれか一つに記載の方法。
【0182】
(付記9)
前記脂質修飾タンパク質の採取時に細胞から分泌される可溶性タンパク質を含む、付記1から4のいずれか一つに記載の方法。
【0183】
(付記10)
前記脂質修飾タンパク質は、幹細胞集団から採取される、付記1から9のいずれか一つに記載の方法。
【0184】
(付記11)
前記幹細胞は、胚性幹細胞、単為生殖幹細胞、成体幹細胞、胎児幹細胞、又は人工多能性幹細胞である、付記10に記載の方法。
【0185】
(付記12)
前記幹細胞は、動物の幹細胞である、付記10又は11に記載の方法。
【0186】
(付記13)
前記幹細胞は、ヒト幹細胞である、付記12に記載の方法。
【0187】
(付記14)
前記幹細胞は、Wntタンパク質又はHhタンパク質を過剰発現するように遺伝子操作されている、付記10から13のいずれか一つに記載の方法。
【0188】
(付記15)
前記幹細胞は、遺伝子操作により不死化されている、付記10から14のいずれか一つに記載の方法。
【0189】
(付記16)
前記幹細胞は、テロメア逆転写酵素(hTERT)を発現するように遺伝子操作されている、付記15に記載の方法。
【0190】
(付記17)
少なくとも1種のコスモトロープをさらに含む、付記1から16のいずれか一つに記載の方法。
【0191】
(付記18)
前記少なくとも1種のコスモトロープは、プロピレングリコール、プロリン、トレハロース、エクトイン、又はトリメチルアミンN-オキシドである、付記17に記載の方法。
【0192】
(付記19)
前記少なくとも1種のコスモトロープは、トレハロースである、付記17に記載の方法。
【0193】
(付記20)
前記組成物が脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの前記複合体を含む局所用組成物である、付記1から19のいずれか一つに記載の方法。
【0194】
(付記21)
前記局所用組成物は、水性製剤である、付記20に記載の方法。
【0195】
(付記22)
前記局所用組成物が少なくとも1種のコスモトロープと、任意に抗菌剤をさらに含む、付記20に記載の方法。
【0196】
(付記23)
前記少なくとも1種のコスモトロープは、トレハロースである、付記22に記載の方法。
【0197】
(付記24)
前記局所用組成物のpHが約4.5から約8.0の間である、付記20から23のいずれか一つに記載の方法。
【0198】
(付記25)
組織再生の促進を必要とする組織での組織再生の促進における使用のための脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物であって、前記組織は、表皮、真皮、皮膚感覚受容体、皮膚付属器、毛髪、爪、皮脂腺、汗腺又は立毛筋である、組成物。
【0199】
(付記26)
脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物の、組織再生の促進を必要とする組織での組織再生の促進における使用であって、前記組織は、表皮、真皮、皮膚感覚受容体、皮膚付属器、毛髪、爪、皮脂腺、汗腺又は立毛筋である、使用。
【0200】
(付記27)
組織再生の促進を必要とする組織における組織再生の促進のための薬剤の製造における脂質修飾タンパク質とシクロデキストリンとの複合体を含む組成物の使用であって、前記組織は、表皮、真皮、皮膚感覚受容体、皮膚付属器、毛髪、爪、皮脂腺、汗腺又は立毛筋である、使用。