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特開2024-150500医療用耐キンク性ピールアウェイシース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150500
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】医療用耐キンク性ピールアウェイシース
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A61M25/00 510
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108782
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2021532845の分割
【原出願日】2019-12-09
(31)【優先権主張番号】62/777,598
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リュウ クリフォード エム.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】耐キンク性ピールアウェイシースを提供するためのデバイスおよび方法を提供する。
【解決手段】デバイスは、患者の脈管構造内に挿入するためのシース300を含む。シースは、外面と、長軸と、シースボディ105の中を通って形成された管腔108とを有する、シースボディを具備する。シースボディは、長軸の周りにアレンジされた内層110と、内層と同軸上にアレンジされた外層120と、内層および外層の間にポジショニングされた支持層130とを具備し、内層と外層と支持層とは、一緒に積層されてシースボディを形成する。シースはまた、少なくとも1つの剪断ライン144であって、シースボディの外面の下にポジショニングされ、かつ、少なくとも1つの剪断ラインに沿ったシースボディの長軸方向の分離を容易にするよう構成された、少なくとも1つの剪断ラインを具備する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脈管構造内に挿入するためのシースであって、以下:
外面と、長軸と、シースボディの中を通って形成された管腔とを有するシースボディであって、該シースボディが、該長軸の周りにアレンジされた内層と、該内層と同軸上にアレンジされた外層と、該内層と該外層との間にポジショニングされた支持層とを具備し、該内層と該外層と該支持層とが、一緒に積層されて該シースボディを形成している、シースボディ;および
該シースボディ内に形成された少なくとも1つの剪断ラインであって、該シースボディの該外面の下にポジショニングされ、かつ、該少なくとも1つの剪断ラインに沿った該シースボディの長軸方向の分離を容易にするよう構成された、少なくとも1つの剪断ライン
を具備する、シース。
【請求項2】
支持層が内層と外層との間で同軸上にアレンジされている、請求項1記載のシース。
【請求項3】
内層および外層が押出成形物を具備する、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項4】
内層および外層が、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のうちいずれか1つから作製される、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項5】
前記少なくとも1つの剪断ラインが直線状または非直線状のうちいずれか1つである、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項6】
内層と外層と支持層とが積層される前に、該内層と該支持層との間、および該支持層と該外層との間のうちいずれか1つにポジショニングされたモノフィラメントによって、各剪断ラインが形成される、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項7】
モノフィラメントが、内層および外層に用いられる材料の融点より高いか、それと同じか、またはそれより低い融点を備えた材料から作製される、請求項6記載のシース。
【請求項8】
モノフィラメントがシースボディに沿って長軸方向に延在する、請求項6~7のいずれか一項記載のシース。
【請求項9】
モノフィラメントが長軸に沿って螺旋状に延在する、請求項6~8のいずれか一項記載のシース。
【請求項10】
モノフィラメントが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製されたロッドを具備する、請求項6~9のいずれか一項記載のシース。
【請求項11】
モノフィラメントが支持層と融着する、請求項6~10のいずれか一項記載のシース。
【請求項12】
2つの剪断ラインを具備する、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項13】
モノフィラメントが長軸の周りで放射状に180°離れている、請求項12記載のシース。
【請求項14】
モノフィラメントと、内層および外層のうち少なくとも1つとの間に、空隙が生じる、請求項6~13のいずれか一項記載のシース。
【請求項15】
モノフィラメントがシースボディから除去可能である、請求項6~14のいずれか一項記載のシース。
【請求項16】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、
シースボディを長軸に沿ってスプリットする段階;および
該スプリットしたシースボディを再接続する少なくとも1つの脆弱継目(weak joint)を作り出すため、該スプリットしたシースボディをリフローする段階
によって形成された少なくとも1つの脆弱継目
を具備する、請求項1~5のいずれか一項記載のシース。
【請求項17】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、
シースボディを長軸に沿って複数の部分にスプリットする段階;
薄い押出層を該シースボディの管腔内に挿入する段階;および
該スプリットしたシースボディを再接続する複数の脆弱継目を作り出すため、該スプリットしたシースボディを薄い押出層とともにリフローする段階
によって形成された複数の脆弱継目
を具備する、請求項1~5のいずれか一項記載のシース。
【請求項18】
支持層が組紐またはコイルを具備する、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項19】
支持層が渦巻状のレーザーカット層を具備する、請求項1~17のいずれか一項記載のシース。
【請求項20】
剪断ラインに沿って、シースボディにあらかじめ刻み目が入れられている、請求項19記載のシース。
【請求項21】
支持層が、
除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された、回旋を有する少なくとも1つのS字形ワイヤ
を具備する、請求項1~17のいずれか一項記載のシース。
【請求項22】
支持層が、
対応する数の除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された複数のS字形ワイヤ
を具備する、請求項1~17のいずれか一項記載のシース。
【請求項23】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、内層、外層、および支持層のうち少なくとも1つの内部にポジショニングされている、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項24】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、シースボディの長さの少なくとも一部分に沿って長軸方向に延在する、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項25】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、
シースボディ内部に形成された、空隙、脆いシーム、および脆い接続部のうちいずれか1つ
を具備する、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項26】
支持層が、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製される、前記請求項のいずれか一項記載のシース。
【請求項27】
耐キンク性ピールアウェイシースを作製する方法であって、以下の段階:
長軸と、管状の内層の中を通って形成された管腔とを有する、管状の内層を提供する段階;
該内層と同軸上にアレンジされた外層を提供する段階;
シースボディを形成するため該内層と該外層との間に積層された支持層を提供する段階;
該内層と該外層と該支持層とを融着するため該シースボディをリフローする段階;
該シースボディの外面の下にポジショニングされた少なくとも1つの剪断ラインであって、該少なくとも1つの剪断ラインに沿った該シースボディの長軸方向の分離を容易にするよう構成された、少なくとも1つの剪断ラインを形成する段階
を含む、方法。
【請求項28】
支持層を内層と外層との間で同軸上にアレンジする段階
をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
シースボディ内に各剪断ラインを形成する段階が、
該シースボディをリフローする段階の前に、少なくとも1つのモノフィラメントを、内層と支持層との間、または支持層と外層との間に挿入するステップ
をさらに含む、請求項27~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
シースボディ内に各剪断ラインを形成する段階が、
リフロー後にモノフィラメントを除去するステップ
をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
モノフィラメントが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製されたロッドを具備する、請求項29~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
シースが2つの剪断ラインを具備する、請求項27~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
リフローする段階の前にシースボディに刻み目を入れる段階をさらに含む、請求項27~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
モノフィラメントを長軸の周りで放射状に180°離す段階
をさらに含む、請求項32~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
シースボディ内に各剪断ラインを形成する段階が、
該シースボディを長軸に沿ってスプリットするステップ;および
該スプリットしたシースボディを再接続する少なくとも1つの脆弱継目を作り出すため、該スプリットしたシースボディをリフローするステップ
を含む、請求項27~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
シースボディ内に各剪断ラインを形成する段階が、
該シースボディを長軸に沿ってスプリットするステップ;
薄い押出層を該シースボディの管腔内に挿入するステップ;および
該スプリットしたシースボディを再接続する少なくとも1つの脆弱継目を作り出すため、該スプリットしたシースボディをリフローするステップ
を含む、請求項27~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
内層と外層との間に積層された支持層を提供する段階が、
内層の周囲に巻かれた複数のS字形ワイヤを、対応する数の除去可能マンドレルによってインターロックするステップ
をさらに含む、
各マンドレルは、シースボディ内に剪断ラインを形成するために除去可能である、
請求項27~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
患者の脈管構造内に挿入するためのシースであって、以下:
外面と、長軸と、シースボディの中を通って形成された管腔とを有するシースボディ;
該シースボディ内部に積層されかつ該シースボディに沿って長軸方向に延在する支持手段;および
該シースボディの該外面の下にポジショニングされた剪断手段であって、少なくとも1つの該剪断手段に沿ったシースボディの長軸方向の分離を容易にするよう構成された剪断手段
を具備する、シース。
【請求項39】
支持手段が支持層を具備する、請求項38記載のシース。
【請求項40】
剪断手段が少なくとも1つの剪断ラインを具備する、請求項38~39のいずれか一項記載のシース。
【請求項41】
シースボディが、長軸の周りにアレンジされた内層と、該内層と同軸上にアレンジされた外層とを具備し、かつ、支持手段が該内層と該外層との間に積層されている、請求項38~40のいずれか一項記載のシース。
【請求項42】
支持手段が内層と外層との間で同軸上にアレンジされている、請求項38~41のいずれか一項記載のシース。
【請求項43】
内層および外層が押出成形物を具備する、請求項38~42のいずれか一項記載のシース。
【請求項44】
内層および外層が、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のうちいずれか1つから作製される、請求項38~43のいずれか一項記載のシース。
【請求項45】
前記少なくとも1つの剪断ラインが直線状または非直線状のうちいずれか1つである、請求項40~44のいずれか一項記載のシース。
【請求項46】
内層と外層と支持層とが積層される前に、該内層と該支持層との間、および該支持層と該外層との間のうちいずれか1つにポジショニングされたモノフィラメントによって、各剪断ラインが形成される、請求項40~45のいずれか一項記載のシース。
【請求項47】
モノフィラメントが、内層および外層に用いられる材料の融点より高いか、それと同じか、またはそれより低い融点を備えた材料から作製される、請求項46記載のシース。
【請求項48】
モノフィラメントがシースボディに沿って長軸方向に延在する、請求項46~47のいずれか一項記載のシース。
【請求項49】
モノフィラメントが長軸に沿って螺旋状に延在する、請求項46~48のいずれか一項記載のシース。
【請求項50】
モノフィラメントが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製されたロッドを具備する、請求項46~49のいずれか一項記載のシース。
【請求項51】
モノフィラメントが支持層と融着する、請求項46~50のいずれか一項記載のシース。
【請求項52】
2つの剪断ラインを具備する、請求項46~51のいずれか一項記載のシース。
【請求項53】
モノフィラメントが長軸の周りで放射状に180°離れている、請求項52記載のシース。
【請求項54】
モノフィラメントと、内層および外層のうち少なくとも1つとの間に、空隙が生じる、請求項46~53のいずれか一項記載のシース。
【請求項55】
モノフィラメントがシースボディから除去可能である、請求項46~54のいずれか一項記載のシース。
【請求項56】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、
シースボディを長軸に沿ってスプリットする段階;および
該スプリットしたシースボディを再接続する少なくとも1つの脆弱継目を作り出すため、該スプリットしたシースボディをリフローする段階
によって形成された少なくとも1つの脆弱継目
を具備する、請求項40~45のいずれか一項記載のシース。
【請求項57】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、
シースボディを長軸に沿って複数の部分にスプリットする段階;
薄い押出層を該シースボディの管腔内に挿入する段階;および
該スプリットしたシースボディを再接続する複数の脆弱継目を作り出すため、該スプリットしたシースボディを薄い押出層とともにリフローする段階
によって形成された複数の脆弱継目
を具備する、請求項40~45のいずれか一項記載のシース。
【請求項58】
支持層が組紐またはコイルを具備する、請求項40~57のいずれか一項記載のシース。
【請求項59】
支持層が渦巻状のレーザーカット層を具備する、請求項40~57のいずれか一項記載のシース。
【請求項60】
剪断ラインに沿って、シースボディにあらかじめ刻み目が入れられている、請求項40~59のいずれか一項記載のシース。
【請求項61】
支持層が、
除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された、回旋を有する少なくとも1つのS字形ワイヤ
を具備する、請求項40~57のいずれか一項記載のシース。
【請求項62】
支持層が、
対応する数の除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された複数のS字形ワイヤ
を具備する、請求項40~57のいずれか一項記載のシース。
【請求項63】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、内層、外層、および支持層のうち少なくとも1つの内部にポジショニングされている、請求項40~62のいずれか一項記載のシース。
【請求項64】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、シースボディの長さの少なくとも一部分に沿って長軸方向に延在する、請求項40~63のいずれか一項記載のシース。
【請求項65】
前記少なくとも1つの剪断ラインが、シースボディ内部に形成された、空隙、脆いシーム、および脆い接続部のうちいずれか1つを具備する、請求項40~64のいずれか一項記載のシース。
【請求項66】
支持層が、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製される、請求項40~65のいずれか一項記載のシース。
【請求項67】
患者を心室補助デバイスで処置するために請求項1~26のいずれか一項記載のシースを用いる方法であって、以下の段階:
第一ポジションにおいて該患者の動脈切開内に該シースを挿入する段階;
シースボディを引き裂くことによって該シースを分離する段階;および
該第一ポジションにおいて該患者の該動脈切開内に該心室補助デバイスを挿入する段階
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35 U.S.C. § 119(e) の下、その内容のすべてが参照により本明細書に組み入れられる2018年12月10日に提出された米国特許仮出願第62/777,598号による恩典を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
脈管内医療デバイスは、非限定的に、Impella(登録商標)ポンプ、体外膜型酸素化(ECMO)ポンプ、およびバルーンポンプを具備しうる。Impella(登録商標)ポンプはさらに、いずれもDanvers, MAのAbiomed, Inc.による、Impella 2.5(登録商標)ポンプ、Impella 5.0(登録商標)ポンプ、Impella CP(登録商標)ポンプ、およびImpella LD(登録商標)ポンプを具備しうる。ピールアウェイイントロデューサは、心臓カテーテル手技または他の医療設定において患者の脈管構造内に医療デバイスを送達するために用いられる、使い捨て式の医療デバイスである。医療デバイスは通常、患者の脈管構造内への挿入前にピールアウェイシースの中に通される。医療デバイスがポジショニングされたら、ピールアウェイイントロデューサが除去されてもよい。そうした除去は、シース(およびハブ)内の管腔より大きい他の医療デバイスを患者の動脈切開内に挿入できるために必要である。標準的なピールアウェイイントロデューサは、シースを引き裂くことを可能にする、シースに連結された近位側プラスチック製ハブを含む。医療デバイスはプラスチック製ハブを通ってシース内まで挿入されてもよく、そのシースを通ってデバイスが患者体内に置かれてもよい。心臓内血液ポンプ、カテーテル、ガイドワイヤ、リード線などの脈管内医療デバイスが、ピールアウェイイントロデューサを通って患者の脈管構造内に導入されてもよい。
【0003】
1つのアプローチにおいて、医師は、(存在していれば)プラスチック製のイントロデューサハブに亀裂を入れ、そしてシースボディのシャフトを剥いでいくことによって、イントロデューサのシースを引き裂く。イントロデューサのシースを引き裂くため、シースボディに分離力が印加される必要がある。医師は次に、ハブを把持し、そしてシースの近位端で軸方向のノッチまたは刻み目に沿ってハブを破壊する。シースは、シースの片側または両側にある剪断ラインまたは刻み目に沿って、長軸に沿って裂け、そして軸方向に剥ぐことができる。イントロデューサのピールアウェイシースは、医療デバイスがイントロデューサを通って患者体内に挿入された後に、医療デバイスを妨げることも除去することもなく、イントロデューサをどけるまたは除去することを可能にする。
【0004】
一般的な製造技法において、ピールアウェイシースは単一の押出プラスチックチューブから形成される。そうした押出プラスチックチューブは通常、剛性であり、拡張器を用いて患者体内にポジショニングされる。患者の脈管構造内に挿入されたら拡張器が除去される。複雑な医療手技の場合は、シースを再ポジショニングすること、または、例えばシースを患者にさらに確実固定するなどのために追加的な横方向の力(押力)をシースにかけることが必要になる可能性がある。これは押出チューブのキンクまたは屈曲を引き起こし、それによってシースの通路を塞ぎ、それは医療手技をさらに複雑にする。さらに、現在利用可能なシースの性質により、シースのキンク形成を防ぐために追加的な手技が必要とされる。そうした手技には、シースのつぶれまたは屈曲を防ぐためにシースを望ましいポジションで縫合またはテーピングする段階が含まれる。その追加の段階はシースの使用を複雑にし、そして、そうした手技の全体的なプロフィールも増大させる。
【発明の概要】
【0005】
概要
上述したような技術的現状のさまざまな問題点および欠点に対処するためのアプローチを本明細書に開示する。より具体的には、耐キンク性ピールアウェイシースを提供するためのデバイスおよび方法を本明細書に開示する。1つの態様において、本発明のデバイスは、患者の脈管構造内に挿入するためのシースを具備する。シースは、外面と、長軸と、シースボディの中を通って形成された管腔とを有する、シースボディを具備する。シースボディは、長軸の周りにアレンジされた内層と、内層と同軸上にアレンジされた外層と、内層と外層との間にポジショニングされた支持層とを具備する;内層と外層と支持層とは、一緒に積層されてシースボディを形成する。シースはまた、シースボディ内に形成された少なくとも1つの剪断ラインを具備する;前記少なくとも1つの剪断ラインは、シースボディの外面の下にポジショニングされ、かつ、前記少なくとも1つの剪断ラインに沿ったシースボディの長軸方向の分離を容易にするよう構成される。
【0006】
支持構造は、シースが、キンクの形成を伴わずに大きな押力に耐えることを可能にする。このことは、複雑な脈管内手技のための可撓性を維持しながら一方でよりプッシャビリティの高いシースを生じさせる。さらに、シース構造内に剪断ラインを形成することにより、耐キンク性シースを容易に分離できるようになる。
【0007】
いくつかの実施形態において、支持層は内層と外層との間で同軸上にアレンジされる。そうした同軸のアレンジメントにより、各層がシースボディの円周の周りで同様の厚さになる。特定の実施形態において、内層および外層は押出成形物を具備する。いくつかの実施形態において、内層および外層は、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のうちいずれか1つから作製される。
【0008】
いくつかの実施形態において、剪断ラインは直線状または非直線状であってもよい。特定の実施形態において、内層と外層と支持層とが積層される前に、内層と支持層との間、および支持層と外層との間のうちいずれか1つにポジショニングされたモノフィラメントによって、各剪断ラインが形成されてもよい。さらなる実施形態において、モノフィラメントは、内層および外層に用いられる材料の融点より高いか、それと同じか、またはそれより低い融点を備えた材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態において、モノフィラメントはシースボディに沿って長軸方向に延在する。特定の実施形態において、モノフィラメントは長軸に沿って螺旋状に延在する。そうしたバリエーションは、目下の医療手技に基づく医師のニーズにかなう耐キンク性シースを作製することを可能にする。
【0009】
特定の実施形態において、モノフィラメントは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製されたロッドを具備してもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、モノフィラメントは支持層と融着してもよい。さらなる実施形態において、シースは2つの剪断ラインを具備し、それによって耐キンク性シースの引き裂きを容易にしてもよい。特定の実施形態において、モノフィラメントはシースの長軸の周りで放射状に180°離れていてもよい。さらなる実施形態において、モノフィラメントと、内層および外層のうち少なくとも1つとの間に、空隙が生じてもよい。いくつかの実施形態において、モノフィラメントはシースボディから除去可能であってもよい。モノフィラメントを除去するとシースボディ内に空隙が残り、それは耐キンク性シースが容易にスプリットすることを可能にする。
【0011】
特定の実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、以下の段階によって形成された少なくとも1つの脆弱継目(weak joint)を具備してもよい:シースボディを長軸に沿ってスプリットする段階;および、スプリットしたシースボディを再接続する前記少なくとも1つの脆弱継目を作り出すため、スプリットしたシースボディをリフローする段階。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、以下の段階によって形成された複数の脆弱継目を具備してもよい:シースボディを長軸に沿って複数の部分にスプリットする段階;薄い押出層をシースボディの管腔内に挿入する段階;および、スプリットしたシースボディを再接続する前記複数の脆弱継目を作り出すため、スプリットしたシースボディを薄い押出層とともにリフローする段階。剪断ラインの形成に対するそうした代替は、作製がより容易であるが、より大きな押力を印加してもシースのキンクまたはつぶれを引き起こさない、耐キンク性シースをもたらす。さらなる実施形態において、支持層は組紐またはコイルを具備してもよい。いくつかの実施形態において、支持層は渦巻状のレーザーカット層を具備してもよい。特定の実施形態において、剪断ラインに沿ってシースボディにあらかじめ刻み目が入れられていてもよい。このことにより、医師がシースを引き裂くために必要な力がより小さくなるので、シースボディの分離が容易になる。
【0012】
いくつかの実施形態において、支持層は、除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された、回旋を有する少なくとも1つのS字形ワイヤを具備してもよい。他の実施形態において、支持層は、対応する数の除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された複数のS字形ワイヤを具備してもよい。そうしたS字ワイヤは、インターロックしたワイヤが、積層中にS字ワイヤを所定の位置に保持することに役立ち、かつ、積層後にシースボディから除去されると剪断ラインをもたらすことにも役立つという、代替的な支持構造を提供する。
【0013】
特定の実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、内層、外層、および支持層のうち少なくとも1つの内部にポジショニングされてもよい。他の実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、シースボディの長さの少なくとも一部分に沿って長軸方向に延在してもよい。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、シースボディ内部に形成された、空隙、脆いシーム、および脆い接続部のうちいずれか1つを具備してもよい。特定の実施形態において、支持層は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製されてもよい。
【0014】
別の態様において、耐キンク性ピールアウェイシースを作製するための方法を説明する。同方法は、長軸と、管状の内層の中を通って形成された管腔とを有する、管状の内層を提供する段階を含む。同方法は次に、内層と同軸上にアレンジされた外層を提供する段階を含む。同方法における次の段階は、シースボディを形成するため内層と外層との間に積層された支持層を提供する段階である。同方法はまた、内層と外層と支持層とを融着するためシースボディをリフローする段階も含む。同方法における次の段階は、シースボディの外面の下にポジショニングされた少なくとも1つの剪断ラインであって、前記少なくとも1つの剪断ラインに沿ったシースボディの長軸方向の分離を容易にするよう構成された、少なくとも1つの剪断ラインを形成する段階である。
【0015】
いくつかの実施形態において、同方法は、支持層を内層と外層との間で同軸上にアレンジする段階をさらに含む。他の実施形態において、同方法は、シースボディをリフローする段階の前に、少なくとも1つのモノフィラメントを、内層と支持層との間、または支持層と外層との間に挿入する段階を含む。特定の実施形態において、同方法は、リフロー後にモノフィラメントを除去する段階もまた含む。いくつかの実施形態において、モノフィラメントは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製されたロッドを具備してもよい。特定の実施形態において、シースは2つの剪断ラインを具備する。
【0016】
いくつかの実施形態において、同方法は、リフローする段階の前にシースボディに刻み目を入れる段階をさらに含んでもよい。他の実施形態において、同方法は、モノフィラメントを長軸の周りで放射状に180°離す段階をさらに含んでもよい。特定の実施形態において、同方法は、シースボディを長軸に沿ってスプリットする段階;および、スプリットしたシースボディを再接続する少なくとも1つの脆弱継目を作り出すため、スプリットしたシースボディをリフローする段階;を追加的に含む。いくつかの実施形態において、シースボディ内に各剪断ラインを形成する段階は、シースボディを長軸に沿ってスプリットする段階;薄い押出層をシースボディの管腔内に挿入する段階;および、スプリットしたシースボディを再接続する少なくとも1つの脆弱継目を作り出すため、スプリットしたシースボディをリフローする段階;をさらに含む。
【0017】
他の実施形態において、内層と外層との間に積層された支持層を提供する段階は、内層の周囲に巻かれた複数のS字形ワイヤを、対応する数の除去可能マンドレルによってインターロックする段階をさらに含み、ここで各マンドレルはシースボディ内に剪断ラインを形成するために除去可能である。
【0018】
さらなる態様において、外面と、長軸と、シースボディの中を通って形成された管腔とを有するシースボディが提供される。シースボディ内部に積層されかつシースボディに沿って長軸方向に延在する支持手段;および、シースボディの外面の下にポジショニングされた剪断手段であって、前記少なくとも1つの剪断手段に沿ったシースボディの長軸方向の分離を容易にするよう構成された剪断手段;もまた提供される。
【0019】
いくつかの実施形態において、支持手段は支持層を具備してもよい。他の実施形態において、剪断手段は少なくとも1つの剪断ラインを具備してもよい。さらなる実施形態において、シースボディは、長軸の周りにアレンジされた内層と、内層と同軸上にアレンジされた外層とを具備してもよく、そして支持手段は内層と外層との間に積層される。いくつかの実施形態において、支持手段は内層と外層との間で同軸上にアレンジされてもよい。他の実施形態において、内層および外層は押出成形物を具備してもよい。
【0020】
特定の実施形態において、内層および外層が、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のうちいずれか1つから作製されてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは直線状または非直線状であってもよい。特定の実施形態において、内層と外層と支持層とが積層される前に、内層と支持層との間、および支持層と外層との間のうちいずれか1つにポジショニングされたモノフィラメントによって、各剪断ラインが形成されてもよい。他の実施形態において、モノフィラメントは、内層および外層に用いられる材料の融点より高いか、それと同じか、またはそれより低い融点を備えた材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態において、モノフィラメントはシースボディに沿って長軸方向に延在してもよい。特定の実施形態において、モノフィラメントは長軸に沿って螺旋状に延在してもよい。
【0022】
さらなる実施形態において、モノフィラメントは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製されたロッドを具備してもよい。いくつかの実施形態において、モノフィラメントが支持層と融着してもよい。他の実施形態において、シースが2つの剪断ラインを具備してもよい。他の実施形態において、モノフィラメントが長軸の周りで放射状に180°離れていてもよい。特定の実施形態において、モノフィラメントと、内層および外層のうち少なくとも1つとの間に、空隙が生じてもよい。いくつかの実施形態において、モノフィラメントはシースボディから除去可能であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、以下の段階によって形成された少なくとも1つの脆弱継目を具備してもよい:シースボディを長軸に沿ってスプリットする段階;および、スプリットしたシースボディを再接続する前記少なくとも1つの脆弱継目を作り出すため、スプリットしたシースボディをリフローする段階。他の実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、以下の段階によって形成された複数の脆弱継目を具備してもよい:シースボディを長軸に沿って複数の部分にスプリットする段階;薄い押出層をシースボディの管腔内に挿入する段階;および、スプリットしたシースボディを再接続する前記複数の脆弱継目を作り出すため、スプリットしたシースボディを薄い押出層とともにリフローする段階。
【0024】
特定の実施形態において、支持層は組紐またはコイルを具備してもよい。他の実施形態において、支持層は渦巻状のレーザーカット層を具備してもよい。さらなる実施形態において、剪断ラインに沿ってシースボディにあらかじめ刻み目が入れられていてもよい。いくつかの実施形態において、支持層は、除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された、回旋を有する少なくとも1つのS字形ワイヤを具備してもよい。他の実施形態において、支持層は、対応する数の除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された複数のS字形ワイヤを具備してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、内層、外層、および支持層のうち少なくとも1つの内部にポジショニングされてもよい。特定の実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、シースボディの長さの少なくとも一部分に沿って長軸方向に延在してもよい。さらなる実施形態において、前記少なくとも1つの剪断ラインは、シースボディ内部に形成された、空隙、脆いシーム、および脆い接続部のうちいずれか1つを具備してもよい。
【0026】
他の実施形態において、支持層は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つから作製されてもよい。
【0027】
別の態様において、患者を心室補助デバイスで処置するために前述のシースを用いる方法が提供される。同方法は、第一ポジションにおいて患者の動脈切開内にシースを挿入する段階を含む。同方法は次に、シースボディを引き裂くことによってシースを分離する段階を含む。同方法は最後に、第一ポジションにおいて患者の動脈切開内に心室補助デバイスを挿入する段階を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
以上および他の目的と利点とは、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて検討することによって明らかになるであろう;添付の図面全体にわたって、同様の参照符号は同様のパーツを参照する。
【0029】
図1】本開示の1つの態様に基づく例示的なピールアウェイシースを示す。
図2図1のピールアウェイシースの例示的な断面図を示す。
図3】シースボディにおける剪断ラインに沿って分離されている、図1および図2の例示的なピールアウェイシースを示す。
図4】本開示の1つの態様に基づく、シースボディにおける螺旋状の剪断ラインに沿って分離されている例示的なピールアウェイシースを示す。
図5図5Aは、本開示の1つの態様に基づく、2つの除去可能マンドレルによってインターロック配向に保持された2つのS字形ワイヤを有する、図1のピールアウェイシースの例示的な支持層を示す。図5Bは、シースボディを分離するための、図5Bに図示した支持層のマンドレルの除去を示す。
図6】分離されリフローされたシース部分を伴う、本開示の耐キンク性ピールアウェイシースのさらなる態様の例示的な断面図を示す。
図7】分離され薄い押出層の上でリフローされたシース部分を伴う、本開示の耐キンク性ピールアウェイシースの他のさまざまな態様の例示的な断面図を示す。
図8】本開示の1つの態様に基づく、耐キンク性ピールアウェイシースを作製するための方法の、例示的なフローチャートを示す。
図9】本開示の1つの態様に基づく、耐キンク性ピールアウェイシースを用いる方法の、例示的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本明細書に説明するデバイスおよび方法が全体的に理解されうるよう、特定の例示的態様を説明する。本明細書に説明する態様および特徴は、心室補助デバイスを伴う脈管内手技において使用するための耐キンク性ピールアウェイシースと関係した使用について具体的に説明するが、理解されるであろう点として、以下に概説するすべての構成要素および他の特徴は、任意の好適な様式において互いに組み合わせられてもよく、かつ、耐キンク性ピールアウェイシースを必要とする他のタイプの手技に適合および適用されてもよい。
【0031】
本明細書に説明するデバイスおよび方法は、内層および外層と、シースを強化するための支持層とを具備する、シース構造を用いる。これらの層は、層の積層が生じるよう各層が一緒に積層する、熱処理(リフロー)に供される。そうした強化積層構造は、シースのキンクまたはつぶれを引き起こすことなくシースをより大きな押力に供することを可能にする。
【0032】
シースはまた、シースボディの層状構造内に挿入されて外層と支持層との間にポジショニングされる、ナイロンロッドなどのモノフィラメントまたはロッドも含んでもよい。積層プロセスの間、モノフィラメントはシースボディの内層および外層とは融着せず、それにより熱処理後の除去が可能となる。モノフィラメントが除去されると、その場所に空隙が残る。そうした空隙は、空隙のすぐ近傍でシースボディを菲薄化し、それによって、例えば医師がシースを引き離した時など分離力に供された時にシースがその付近で分離しまたは引き裂かれる、シースボディ内部の剪断ラインが形成される。シースボディは、制御されかつあらかじめ定められた様式で、剪断ラインに沿って引き裂かれる。
【0033】
他の態様において、剪断ラインが脆いシームによって形成されてもよい。ここで、積層されたシースボディが、長軸に沿って少なくとも2つの部分にスプリットされてもよい。次に、(例えばスプリット部分が溶けることによって)シースボディの2つのスプリット部分の間に脆いシームが形成されるよう、シースボディのスプリット部分が再アセンブリされそしてもう一度リフローされてもよい。脆いシームは、シースボディ内部かつシースボディの外面の下に形成される。そうした脆いシームは、破壊に要する分離力がより小さく、それによって強化シースの容易な引き裂きを可能にする。さらなる態様において、シームのスプリット部分が、単一の押出層の上に再アセンブリされる。次に、シースボディのスプリット部分が単一の押出層の外面に融着され、それによって脆い接続部が形成されるよう、再アセンブリ後の構造が追加のリフロープロセスに供されてもよい。シームと同様に、脆い接続部は層状シースボディの厚さより薄く、したがって接続部の破壊に要する分離力がより小さく、それによって強化シースの容易な引き裂きを可能にする。脆い接続部もまた、シースボディの外面の下に形成される。
【0034】
シースボディの強化積層構造と、その上に形成された剪断ラインとは、押力などであるがそれに限定されないより大きな力に耐えられる、可撓性のピールアウェイシースをもたらす。そうしたシースの、より増大したプッシャビリティは、上述したようなハブを必要とせずにシースを用いることを可能にし、それによって耐キンク性ピールアウェイシースのプロフィールを低減させる。
【0035】
図1に、本開示の1つの態様に基づく例示的な耐キンク性シース100の拡大図を示す。シース100は、大腿動脈など、患者の動脈切開内への挿入に好適である。シース100は、長軸106に沿って延在し、かつシーズボディの中を通って延在する管腔108を有する、シースボディ105を具備する。特定の態様において、シースボディ105は円形の断面を備えた管状であってもよいが、シースボディ105は任意の形状および構成であってよい。
【0036】
シースボディ105の管腔は、経皮ポンプ(図示せず)などの心室補助デバイスが通過するために開いている。そうした経皮ポンプの1例は、Danvers, MassachusettsのAbiomed, Inc.によるImpella 2.5(商標)ポンプシステムである。そうしたポンプは、概して、カテーテルボディの遠位端にポンプヘッドを備えかつカテーテルボディの近位端にハンドルを備えた、カテーテルボディを具備する。ほとんどの場合、ポンプヘッドはカテーテルボディの直径より大きい直径を有する。理解されるであろう点として、本明細書では経皮的心臓ポンプについて説明するが、他の任意の経皮的医療デバイスまたは脈管内医療デバイスが本開示と併せて用いられてもよい。
【0037】
シースボディ105は、シースボディ105の長軸106に沿ってアレンジされた内層110を具備する。内層110は、押出層の中を通って形成された管腔を有する押出層を具備してもよい。内層110の管腔はシースボディ105の管腔を形成する。内層110は第一の材料を具備してもよい。いくつかの態様において、内層110は、円形の断面と、内面と、外面とを備えた管状であってもよい。シースボディ105は外層120もまた具備してもよい。内層110と同様に、外層120は押出層を具備してもよい。外層120は第二の材料を具備してもよい。いくつかの態様において、外層120は、円形の断面と、内面と、外面とを備えた管状であってもよい。外層120は、外層120が内層110に対して同軸になるように、シースボディ105の長軸106の周りでアレンジされる。この構成において、外層120は、シースボディ105の長さに沿って内層110の周りに同心状にアレンジされる。いくつかの態様において、外層120は、シースボディ105の長さの一部分に沿って内層110の周りに同心状にアレンジされてもよい。
【0038】
シース100は、内層110と外層120との間にアレンジされた支持層130をさらに具備する。この構成において、支持層130は、第一層110と第二層120との間で効果的に挟まれている。支持層130は、シースボディ105の内層110と外層120とを強化する組紐構造を具備してもよい。支持構造130は円形の断面を備えた管状であってもよい。いくつかの態様において、支持層130はシースボディ105の長さに沿って延在してもよい。他の態様において、支持層130はシースボディ105の長さの一部分に沿って延在してもよい。図1は支持層130を管状の組紐構造として図示しているが、理解されるであろう点として、例えば後述の説明における図5A~5Bの支持層など、支持層130が他の構造を具備してもよい。例えば、支持構造130が管状のコイルを具備してもよく、または、対応する数のマンドレルとリリース可能式にインターロックされた、内層110の外面周囲に巻きつけられた少なくとも1つのS字ワイヤを具備してもよい。そうした強化は、患者の脈管構造内に挿入されるまたは押される際にシース110がキンクを生じることを防ぎながら一方でその可撓性を維持する。さらに、支持層130がレーザーカット押出成形物を具備してもよい。レーザーカット押出成形物は、渦巻状のレーザーカット層を含んでもよい。レーザーカット押出成形物は、シースのプッシャビリティを高めながら一方でその可撓性を保つ、任意のパターンに基づいてカットされてもよい。プッシャビリティが意味するところは、本開示に基づくピールアウェイシースの構造によって、シースのキンクまたは屈曲の形成を伴わずに、シージング(sheathing)を患者の脈管構造内に挿入する時により大きな押力をシースに印加できる、ということである。支持構造は第三の材料を具備してもよい。
【0039】
いくつかの態様において、内層110の厚さは外層120の厚さと等しくてもよい。他の態様において、シース100の剛性を制御するため、内層110と外層120とが異なる厚さであってもよい。さらに、いくつかの態様において、支持層130は内層110および外層120より薄くてもよい。特定の態様において、内層110および外層120は押出成形物を具備してもよい。
【0040】
いくつかの態様において、内層110に用いられる第一の材料が、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のうちいずれか1つを具備してもよい。いくつかの態様において、外層120に用いられる第二の材料が第一の材料を具備してもよい;すなわち、内層110と外層120とが同じ材料から作られてもよい。さらに、特定の態様において、支持層130に用いられる第三の材料が、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、低密度ポリエチレン(LDPE)材料、およびステンレス鋼のうちいずれか1つを具備してもよい。
【0041】
図1はまた、内層110と外層120との間で支持層130とともにアレンジされた2つのモノフィラメントまたはロッド140、145も示している。いくつかの態様において、ロッド140、145は外層120と支持層130との間にアレンジされる。他の態様において、ロッド140、145は内層110と支持層130との間にアレンジされてもよい。ロッド140、145はシースボディ105の長軸106の周りで放射対称であってもよい。図1に示すように、ロッド140、145は、シース100の長軸106の周りで互いから放射状に180°離れている。特定の態様において、ロッド140、145は支持層130と同じ材料タイプから作製されてもよい;すなわち、ロッド140、145は前述で定義したような第三の材料から作製されてもよい。いくつかの態様において、ロッド140、145は、軸106の周りで長軸方向に延在するナイロンロッドを具備してもよい。理解されるであろう点として、図1には2つのロッドが示されているが、本開示に基づくシース100内に任意の数のロッドが含まれてよい。加えて、以下の説明において、さまざまな態様におけるナイロンロッドが例示される。しかし、第三の材料タイプによって定義されるような任意の材料タイプのロッドが使用されてよいことが理解されるであろう。
【0042】
留意されるべき点として、内層、外層、および支持層に用いられるものと異なる材料がロッドに用いられることにより、積層後、シース100内のロッドのすぐ近傍で空間が生じる。いくつかの態様において、そうした空間はシース使用中のロッドの除去を容易にする。
【0043】
特定の態様において、図1に図示した層状アレンジメントは、層状構成が温度プロフィールに基づいて熱に晒されるリフローサイクルに供される。熱は、シースボディ105の長さに沿って動く熱ゾーンとして実施されてもよい。熱処理は、内層110と外層120と支持層130とを一緒に積層させて、シースボディ105を単一の層として形成させる。層の積層は、シース100の可撓性とプッシャビリティとを増大させながら一方でシースボディ105におけるキンクの形成を防ぐ。リフローは内層110と外層120と支持層130とを一緒に積層させるが、これらの層に異なる材料タイプが用いられていることにより、リフロー後に支持層130が内層110および外層120と融着することが防がれる。この結果として、内層110と支持層130との間、および支持層130と外層120との間で、シースボディ105の長さに沿って脆弱ポイントが生じる。
【0044】
リフローサイクルは、例えばピークリフロー温度、熱ゾーンの長さ、熱ゾーンのスピード、および滞留時間など、複数の変数を有しうる。例示的なピークリフロー温度には、ナイロンについて約150℃~約350℃、PEBAXについて約220℃~約290℃、そしてポリエチレンについて約110℃~約126℃が含まれる。特定の態様において、リフローサイクルに用いられるピークリフロー温度は、シースボディ105を参照対象とする熱ゾーンの長さおよび/または熱ゾーンのスピードに依存する。留意されるべき点として、「約」という用語は、述べられる値の±20%の範囲を示す。特定の態様において、リフローサイクルの最大温度は、ロッドに用いられる材料の融点より低くてもよい。そうであると、リフロー中にロッド140、145が内層110、外層120、および支持層130と融着しない。いくつかの態様において、ロッド140、145はリフロー後にシースボディ105から除去されてもよく、それにより空隙142、146が残る(図2に示す)。他の態様において、リフローサイクルの最大温度は、ロッド140、145に用いられる材料の融点より高くてもよい。いくつかの態様において、リフローサイクルの最大温度は、ロッド140、145に用いられる材料の融点と同じでもよい。
【0045】
いくつかの態様において、ロッド140、145は、支持層130と同じ材料タイプから作製されてもよい。そうした態様において、ロッド140、145と支持層130とはリフロー中に一緒に融着する。このことはシースボディ105内部に複合体支持構造を形成させる。この複合体支持構造もまた、内層110と複合体支持構造との間、および複合体支持構造と外層120との間で、シースボディ105の長さに沿って脆弱ポイントを有する。
【0046】
本開示のさまざまな態様に関して、リフローされたシースボディ105内にロッド140、145が存在することの結果として、シースボディ105の長さに沿って空隙142、146が形成される。前述したように、空隙142、146は、シースボディ105内部に位置する際に、ロッド140、145の長さに沿って長軸方向に延在する。ゆえに、内層110と支持層130との間、および支持層130と外層120との間に空隙142、146が生じうる。さらに、前述したように、そうした周囲材料は、リフロー前のロッド140、145のポジションに応じて第一、第二、または第三の材料タイプのうちいずれか1つであってもよい。ゆえに、リフロー中に、ロッド140、145とシースボディ105の周囲材料との間に空隙142、146が生じうる。リフロー後にロッド140、145がシースボディ105から除去されてもよいことを説明したが、常にそのとおりでなくてもよい。特定の態様において、使用中にロッド140、145がシースボディ105内に残っていてもよい。理解されるであろう点として、ロッド140、145がシースボディ105内に残っていてもなお、リフロー後に空隙142、146は存在するが、ロッド140、145がリフロー後にシースボディ105から除去されないならば、これらの空隙142、146はロッド140、145で満たされている。したがって空隙142、146は、分離力に供された時にシースボディ105がそこで分離する、シースボディ105内で長軸方向に延在する剪断ライン144、148として役立つ。そうした剪断ライン144、148はシースボディ105に沿って長軸方向に延在し、かつシースボディ105の外面の下にポジショニングされる。したがって空隙142、146は、シースが分離力に供された時にシースボディ105の分離の助けとなる。
【0047】
図2に、層110、120、130がリフローされた後、かつナイロンロッド140、145が除去されそれによってシースボディ105の長さに沿って長軸方向に延在する空隙142、146が残った後の、図1における耐キンク性シース100の断面図200を示す。図2における断面図に見られるように、シースボディ105からナイロンロッド140、145が除去されると、空隙142、146の近くに残る材料の量は、シースボディ105の他の区画と比較して低減する。シースボディ105の材料のこの菲薄化は、空隙142、146の近くのシースボディ105の機械的強度を低減させる。ゆえに、例えば医師がシース100を引き離そうとした時など、シースボディ105が分離力に供された時に、シースボディ105の機械的強度が空隙142、146に沿って低減していることによって、シース100は空隙142、146に沿って長軸方向に裂き取られる。要するに、空隙142、146は、シースボディ105の裂けが空隙142、146に沿ってのみ生じるように制御されかつ局在化されるよう、シースボディ105の機械的強度を望ましい位置で意図的に低減させる。したがって空隙142、146は、分離力に供された時にシースボディ105がそこで分離する、シースボディ105内で長軸方向に延在する剪断ライン144、148として役立つ。いくつかの態様において、空隙142、146は、シースボディ105の長さの一部分にのみ沿って長軸方向に延在してもよい。
【0048】
さらに、特定の態様において、空隙142、146は、上述のリフローサイクルおよび材料タイプに基づき、内層110、外層120、および支持層130のうち少なくとも1つの中またはその間にポジショニングされてもよい。例えば、空隙142、146が、内層110内のみ、外層120内のみ、支持層130内のみ、内層110と支持層130との間、外層120と支持層130との間、または3層すべての中に形成されてもよい。いずれの場合においても、空隙142、146がシースボディ105の内部に形成されるので、剪断ライン144、148はシースボディ105の外面上には形成されない。代わりに、剪断ライン144、148は外面の下かつシースボディ105内部に形成される。
【0049】
加えて、シースボディ105の外面に、空隙142、146に隣接してあらかじめ刻み目が入れられていてもよい。そうした刻み目はかみそり刃で入れてもよい。図2には示していないが、あらかじめ刻み目が入れられた線は、剪断ライン144、148とアライメントした長軸方向の溝(grove)をシースボディ105の外面において形成する。したがって、シースボディ105に印加された分離力は、シースボディを剪断ライン144、148に沿って剪断させ、それによって剪断ライン144、148に沿ったシースボディ105の長軸方向の分離を引き起こす。図1および図2は、2つの剪断ライン144、148を備えたシースを描いているが、本開示に基づくシースにおいて任意の数の剪断ラインが実施されてもよいことが理解されるであろう。ゆえに、シース100が引き離された時、シースボディ105は剪断ライン144、148に沿って長軸方向に分離し、シース100に沿った他の場所では分離しない。いくつかの態様において、支持層130の外面にあらかじめ刻み目が入れられていてもよい;すなわち、外層120と接触している支持層130の表面にあらかじめ刻み目が入れられていてもよい。そうした刻み目はかみそり刃で入れてもよい。支持層130の外面は、リフローサイクルに供する前に、シースボディ105にあらかじめ刻み目が入れられる。支持層130の外面の刻み目は、シース100が引き離された時にシースボディ105の分離の助けとなる。
【0050】
図3に、シースボディを分離する剪断力に供された時の、本開示の1つの態様に基づくシース300を示す。シース300は、図1におけるシース100と同じ特徴を具備する。前述したように、そうした剪断力は、シース300が引き離される時にシース300にかけられてもよい。シース300は、図1におけるシース100と同じ特徴を具備するが、図3には1つの剪断ライン144のみが図示されている。そうした剪断ラインは、図1および図2におけるものと同様の、除去可能なナイロンロッド140、145によって形成されていてもよい;その場合は、ナイロンロッド140、145がシースボディ105から除去された後に空隙142、146が形成される。剪断ライン144は、図3においてシースボディ105の外面上にポジショニングされて示されているが、以上の説明から理解されるように、剪断ライン144はシースボディ105内部かつシースボディ105の外面の下に位置する。図3に示されているように、シースボディ105は剪断ライン144に沿って分離する。そうした剪断ライン144は、本質的に、空隙142によってシースボディ105内に形成される。剪断ボディ105における材料の量が空隙142に沿って低減していることによって、シース300を分離しまたは引き裂くために必要な力もまた低減する。さらに、シースボディ105はその中で融着した支持構造130を有するので、シース300は使用中に(例えばシース300が患者の脈管構造内へと押されている時などに)座屈またはキンクをきたすことなく押力に耐えることができる。
【0051】
理解されるであろう点として、前述したような図1~3の耐キンク性ピールアウェイシース100、200、および300は、心室補助デバイスを患者の脈管構造内に挿入するためのイントロデューサシースとして実施されてもよい。イントロデューサシースとして用いられる時に、シースボディ105の遠位端が、例えば、その内容すべてが参照により本明細書に組み入れられる、米国特許仮出願第62/672,212号に説明されているイントロデューサシースハブ、および米国特許出願第15/438,171号に説明されているイントロデューサハブなどの、イントロデューサハブに連結されてもよい。そうしたイントロデューサハブは、わずかな力の印加時にハブが少なくとも2つの区画に容易にスプリットすることを可能にする、ノッチおよびウィングを備えて構成される。そうしたハブが本開示の耐キンク性ピールアウェイシースに連結された時、剪断ライン144、148に沿ったシースボディ105の分離はハブがスプリットされた時にもたらされ、それによって、医師によるシースボディ105の制御された分離が可能となる。
【0052】
図4に、本開示のさらなる態様に基づくシース400を示す。シース400は、シースボディ105と同様の構造を有するシースボディ405を具備する;すなわち、シースボディ405は、内層410と、内層410の周りに同軸上にアレンジされた外層420と、内層410と外層420との間にポジショニングされた支持層430と、ナイロンロッドとを具備する。シース100と同様に、ナイロンロッドは、シース400内の外層420と支持層430との間、または内層410と支持層430との間にポジショニングされてもよい。ただし、ロッド140、145がシースボディ105の長軸に沿って直線状に延在する図1のシース100と異なり、シース400においてロッドはシースボディ405の長軸の周りで螺旋状に延在する。この構成において、ナイロンロッドは、シースボディ405の周りに長軸方向に延在する二重螺旋を効果的に形成する。そうすることにより、螺旋状に巻きつけられたナイロンロッドはシース400に追加的な強度および剛性をもたらし、それはシース400を患者の脈管構造内に挿入する時に有益である。このことは、患者体内への挿入時にシース400がキンクしないことを確実化する。層状のシースボディ405およびナイロンロッドがリフローされた後、シースボディ105の長さに沿って空隙442、446が形成される。いくつかの態様において、シースボディ405に沿って二重螺旋の様式で長軸方向に延在する空隙442、446をナイロンロッドの代わりに残すため、ナイロンロッドがシースボディ405から除去されてもよい。図1に関して言及したように、空隙442、446の各々は、シースボディ405に沿って長軸方向に延在する螺旋状の剪断ライン444、448を形成する。図1および図2におけるシース100、ならびに図3におけるシース300と同様に、剪断ライン444は、シースボディ405内部かつシースボディ405の外面の下に位置する。理解されるであろう点として、図4におけるシース400に関して開示する螺旋状のロッドは、図1のシース100に関して前述に開示した、コイルまたはレーザーカットされた渦巻を具備する支持層と同じではない。
【0053】
シースボディ405を分離するには、(シース100の場合のように)シースボディのいずれかの側に分離力を印加する代わりに、医師はシース405を引き裂くため単にシースボディ405の遠位端を巻き解けばよい。交錯した螺旋を構造内に形成する剪断ラインによって、シースボディ405は、図4に描かれているように、剪断力に供された時にリボンのように引き裂かれる。
【0054】
図5A~5Bに、本開示のさらなる態様に基づくシース500を示す。シース500は、内層510と、内層510の周りに同軸上にアレンジされた外層520と、内層510と外層520との間にポジショニングされた支持層530とを具備する、シースボディ505を具備する。図5Aは、本開示の1つの態様に基づく支持層530の詳細な構成を示している。支持層130が管状の組紐構造を具備する、図1に示したシース100と異なり、支持層530は編み合わせられたS字ワイヤ532、534を具備する。S字ワイヤ532、534は追加的にマンドレル540、545とインターロックされる。この構成において、S字ワイヤ532は、内層510の外面の上半分にわたってジグザグ状に、マンドレル540、545の上下に交互に巻きつく。同様に、S字ワイヤ534は、内層510の外面の下半分にわたってジグザグ状に、マンドレル540、545の上下に交互に巻きつく。さらに、S字ワイヤ532、534およびマンドレル540、545は、S字ワイヤ532、534が各マンドレル540、545の周りで互いに編み合わせられるようにアレンジされる。ゆえに、図5Aに示すように、S字ワイヤ532、534は、各マンドレル540、545に沿って長軸方向に動きながら、マンドレルの上下に交互にアレンジされる。この様式において、マンドレル540、545はS字ワイヤ532、534を内層510の周囲の所定の位置にロックする。図5Aには2つのS字ワイヤおよび2つのマンドレルのみが示されているが、任意の数のS字ワイヤおよびマンドレルを備えた態様もまた本開示の範囲内に含まれる。
【0055】
前述したシースと同様に、シース500の内層510、外層520、および支持層530は、各層が一緒に融着できるようリフローされる。シースボディ505の融着した層内の、編み合わせられたS字ワイヤ532、534は、シース500の可撓性とプッシャビリティとを増大させながら、一方で、シースが患者の脈管構造内に挿入される時のキンクの形成を防ぐ。リフロープロセス後、前述したナイロンロッドと同様の様式でマンドレル540、545が引き抜かれる。そうしたマンドレル540、545の引き抜きは図5Bに描かれており、シースボディ505内に空隙542、546を残す。空隙542、546はシースボディ505に沿って長軸方向に延在し、かつシースボディ505内で剪断ラインを規定する。例えば、空隙542はシースボディ505の片側上で剪断ラインを規定し(図示せず)、一方で、空隙546はシースボディ505の反対側上で別の剪断ライン565を規定する。図5A~5Bに示す態様において、シースボディ505内に埋め込まれたS字ワイヤ532、534におけるピークおよびトラフの、空隙542、546に対するポジションのゆえに、剪断ラインは概ね正弦状である。図5A~5Bにおける剪断ラインは概ね正弦状であると説明したが、理解されるであろう点として、剪断ラインは任意の形状および構成を取ってよい。前述の態様において説明したシース100、300、および400と同様に、図5Bにおける剪断ラインは、シースボディ505の内部かつシースボディ505の外面の下に位置する。例えばシース500が医師によって引き離された時など、シース500が分離力に供された時に、シースボディ505は第一部分550と第二部分560とに分離する。前述したシースと同様に、剪断ラインは、分離力に供された時にシースが分離する様式を規定する。ゆえに剪断ラインは、シース500が引き離された時にシースボディ505が第一部分550と第二部分560とに分離することを助ける。
【0056】
図6に、本開示のさらなる態様に基づくシース600の断面図を示す。シース600は、紙面の向こうへまたはこちらへ延在する長軸を具備する。前述したシースと異なり、シース600は、シースボディ内に剪断ラインを作り出すうえで長軸方向の空隙を利用しない。シース600は、内層610と、内層610の周りに同軸上にアレンジされた外層620と、内層610と外層630との間にポジショニングされた支持層630とを具備する。支持層630は、図1~4および図5A~5Bに関して前述した任意の様式に構成されてもよい。図6の態様において、内層610、外層620、および支持層630は、それぞれの層を一緒に融着させてシースボディ605を形成する第一リフロー処理に供される。
【0057】
シースボディ605は次に、長軸に沿って第一部分650と第二部分660とにスプリットされる。シースボディ605は例えばレーザーカットによってスプリットされてもよい。次に第一部分650と第二部分660とが物理的に再アセンブリされる。物理的に再アセンブリされたシースボディ605は、次に第二リフロープロセスに供される。第二リフロープロセスは第一リフロープロセスと異なってもよい。例えば、用いられる温度プロフィールがより低いピーク温度を有してもよく、または用いられるピーク温度がより短時間にわたって印加されてもよい。この第二リフロープロセスにより、第一部分650と第二部分660とが、シースボディ605がそこでスプリットされた縁部に沿って一緒に融着する。この結果として、シースボディ605の長さに沿って脆いシーム670、675が形成される。第二リフロープロセスの温度プロフィールは、図6に示すように、第一部分650と第二部分660とが一緒に融着された時に、シーム670、675がシースボディ605の外面まで延在しないよう、脆いシーム670、675がシースボディ605内部に位置するように選択される。
【0058】
シーム670、675は分離力の印加時に容易に破壊される。ゆえに、再アセンブリされたシースボディ605は、例えばシース600が医師によって引き離された時など、分離力に供された時に、第一部分650と第二部分660とにおいて容易に分離される。したがってシーム670、675は、シースがそこで分離する、シースボディ605に沿った剪断ラインを規定する。前述したシースと同様に、剪断ラインは、分離力に供された時にシース600が分離する様式を規定する。シースボディ605の融着した内層610、外層620、および支持層630は、シース600の可撓性とプッシャビリティとを向上させながら一方でシースボディ605におけるキンクの形成を防ぐ。加えて、脆いシーム670、675は、シースボディ605が容易に分離されまたは引き裂かれることを可能にする。さらに、シーム670、675がシースボディ605の外面まで延在しないよう、脆いシーム670、675がシースボディ605内部に位置しているので、シース600の剪断ラインはシースボディ605内部かつシースボディ605の外面の下に位置する。
【0059】
図7に、本開示のさらなる態様に基づくシース700の断面図を示す。シース700は、紙面の向こうへまたはこちらへ延在する長軸を具備する。図6におけるシース600と同様に、シース700は、シースボディ内に剪断ラインを作り出すうえで長軸方向の空隙を利用しない。シース700は、管腔715がその中を通って走っている内層710と、内層710の周りに同軸上にアレンジされた外層720と、内層710と外層730との間にポジショニングされた支持層730とを具備する。支持層730は、図1~4および図5A~5Bに関して前述した任意の様式に構成されてもよい。図7の態様において、内層710、外層720、および支持層730は、それぞれの層を一緒に融着させてシースボディ705を形成する第一リフロー処理に供される。
【0060】
シースボディ705は次に、長軸に沿って第一部分750と第二部分760とにスプリットされる。シースボディ705は例えばレーザーカットによってスプリットされてもよい。次に第一部分750と第二部分760とが、中を通り抜ける管腔を具備する押出層770の周りにアレンジされる。押出層770の管腔は管腔715と同心状であり、管腔715より小さい直径を有する。押出層770は、第一部分750と第二部分760とが押出層770の周りにアレンジされた時に、第一部分および第二部分のスプリット縁部が合わさらず、それによって、シースボディ705に沿って長軸方向に延在するギャップ755、765が残るよう寸法決定される。アセンブリは次に第二リフロープロセスに供される。第二リフロープロセスは第一リフロープロセスと異なってもよい。例えば、用いられる温度プロフィールが、より低いピーク温度を有してもよく、または用いられるピーク温度がより短時間にわたって印加されてもよい。この第二リフロープロセスは、押出層770を、スプリットしたシースボディ705の第一部分750および第二部分760の内面に融着させる。この結果として、図7に示すように、シースボディ705の長さに沿って延在する、ギャップ755、765内の脆い接続部780、785が形成される。第二リフロープロセスの温度プロフィールは、図7に示すように、第一部分750と第二部分760とが一緒に融着された時に、接続部780、785がシースボディ705の外面まで延在しないよう、ギャップ755、765内の接続部780、785がシースボディ705内部に位置するように選択される。
【0061】
押出層770は任意の厚さを有してよい。好ましくは、押出層770は内層710および外層720より薄い。いくつかの態様において、押出層770が、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のうちいずれか1つを具備してもよい。
【0062】
接続部780、785は、例えばシース700が医師によって引き離された時など、シースボディ705の第一部分750および第二部分760への分離力の印加時に、容易に破壊される。したがって接続部780、785は、シース700がそこで分離する、シースボディ705に沿った剪断ラインを規定する。シース700の場合、剪断ラインはシースボディ705におけるギャップ755、765と一致する。前述したシースと同様に、剪断ラインは、分離力に供された時にシース700が分離する様式を規定する。シースボディ705の融着した内層710、外層720、および支持層730は、シース700の可撓性とプッシャビリティとを向上させながら一方でシースボディ705におけるキンクの形成を防ぐ。脆い接続部780、785は、シースボディ705が容易に分離されまたは引き裂かれることを可能にする。加えて、脆い接続部780、785は、シースボディ705の外面まで延在しないよう、シースボディ705内部に位置しているので、シース700の剪断ラインはシースボディ705内部かつシースボディ705の外面の下に位置する。
【0063】
次に、前述したシースなどの耐キンク性ピールアウェイシースを作製する方法を、図8の方法800を参照しながら説明する。同方法は、内層が提供される段階810で始まる。ここで内層は、管腔がその中を通って走っている、開口した管状の層を具備する。内層は第一の材料を具備してもよい。次に、段階820によって、支持層が内層と同軸上にアレンジされる。支持層は円形の断面を備えた管状であってもよい。支持層は第三の材料を具備してもよい。支持層は、図1に示した支持層130など、内層を強化する組紐構造を具備してもよい。代替的に、支持層は、図5A~5Bに示したように、管状のコイルを具備してもよく、または、対応する数のマンドレルとリリース可能式にインターロックされた、内層の外面周囲に巻きつけられた少なくとも1つのS字ワイヤを具備してもよい。さらに、支持層は、シースのプッシャビリティを高めながら一方でその可撓性を保つような任意のパターンに基づいてカットされた、レーザーカット押出成形物を具備してもよい。
【0064】
支持層に加えて、図1~4に関して説明したナイロンロッド140、145、440、445などのモノフィラメントまたはロッドが、支持層の外面上に放射状にポジショニングされてもよい。任意の数のロッドが層状構造内に用いられてよい。好ましくは、シースの長軸の周りで互いから放射状に180°離れて、2つのロッドが用いられてもよい。ロッドはシースの長軸に沿って直線状に延在してもよい。他の構成において、ロッドは支持層の外面上で螺旋を形成してもよい。
【0065】
段階830において、図1に示した層状構造などの層状構造を与えるため、内層および支持層の上に外層が同軸上にアレンジされる。任意でロッドが用いられる場合、外層は、図1に示すように、内層と、支持層と、ロッドとを含有するようにアレンジされる。外層は第二の材料を具備してもよい。いくつかの態様において、内層の厚さは外層の厚さと等しくてもよい。他の態様において、シースの剛性および可撓性を制御するため、内層と外層とが異なる厚さを有してもよい。さらに、いくつかの態様において、支持層は内層および外層より薄くてもよい。段階840において、層状構造は、温度プロフィールに基づいて熱に晒されるリフローサイクルに供される。熱処理は、内層と外層と支持層とを一緒に積層させて、シースボディを単一の融着した層として形成させる。層の積層は、シースの可撓性とプッシャビリティとを増大させながら一方でシースボディにおけるキンクの形成を防ぐ。特定の態様において、リフローサイクルの最大温度はナイロンの融点より低い。ゆえに、ナイロンロッドが支持層の外面に隣接して挿入される態様において(段階820)、ロッドは他の残りの層と融着せず、それによって、リフロープロセス後にシースボディから除去されて、図2における空隙142、146などの空隙をその場所に残すことが可能となる。いくつかの態様において、ロッドがシースボディの積層構造から除去される必要はない。
【0066】
段階850において、シースボディ内に剪断ラインが形成される。剪断ラインは、シースボディを分離するために必要な力がわずかである、シースボディ内に形成されたラインまたは空隙を具備する。そうした剪断ラインは、例えばシースボディの外面にかみそり刃であらかじめ刻み目を入れるなどして、シースボディの厚さが低減された領域内に形成されてもよい。リフロー中にナイロンロッドを利用する態様については、シースボディはナイロンロッドの領域において厚さが低減する。ゆえに、ロッドが除去された時に、シースボディ内のその場所に空隙が残る。そうした空隙の形成は、空隙のすぐ近くの領域においてシースボディの菲薄化をもたらし、それによって剪断ラインを形成する。そうした態様において、シースボディに分離力が印加されると、それによりシースボディはこれらの菲薄化領域のところで自然に引き裂かれるまたは裂き取られる。
【0067】
いくつかの態様において、内層に用いられる第一の材料は、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のうちいずれか1つを具備してもよい。いくつかの態様において、外層に用いられる第二の材料は第一の材料を具備してもよい;すなわち、内層と外層とが同じ材料から作られてもよい。さらに、特定の態様において、支持層に用いられる第三の材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルブロックアミド(PEBAXまたはPebaSlix(登録商標)など)、ポリエチレン材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料、ナイロン、高密度ポリエチレン(HDPE)材料、中密度ポリエチレン(MDPE)材料、および低密度ポリエチレン(LDPE)材料のうちいずれか1つを具備してもよい。
【0068】
図9に、本開示の1つの態様に基づく、前述したシースのいずれかなどの耐キンク性ピールアウェイシースを用いる例示的な方法900を図示する。方法900は、耐キンク性ピールアウェイシースが大腿動脈など患者の動脈切開内に挿入される段階910で始まる。前述したように、前述したシースのいずれも、シースボディの患者に近い端部上に形成された先端部を有してもよい。そうした先端部は、患者体内への挿入の助けとなるよう斜角がつけられていてもよい。シースボディの積層構造により、シースは、シースを患者体内に挿入するために用いられる力などの大きな押力に、キンク、屈曲、または座屈をきたすことなく、耐えることができる。特定の態様において、患者体内への挿入前にシースの管腔内に拡張器が挿入されてもよい。拡張器は、シースのみでは貫通することが難しい患者身体の領域において、シースのポジショニングを補助する。挿入されたら、拡張器はシースの管腔から除去される。
【0069】
段階920において、医療デバイスを患者体内に挿入するため、挿入されたシースは除去される。前述したように、そうした医療デバイスは、直径が狭いカテーテルボディと直径がより大きいポンプヘッドとを備えた心臓ポンプであってもよい。ポンプヘッドを患者の動脈切開内に挿入するため、シースが除去されるかまたは引き裂かれる必要がある。シースを引き裂くため、シースボディを引き離すようにシースボディの遠位端のいずれかの側に分離力が印加される。そうした分離力は医師によってかけられてもよい。前述したように、シースボディは、シースボディの長軸方向長さに沿って走っている、シースボディの外面の下に位置する剪断ラインを含有する。そうした剪断ラインはシースボディ構造内の脆弱ポイントである。ゆえに、シースボディの遠位端が分離力に供された時、シースボディは容易に分離するかまたは引き裂かれる。シースボディが引き裂かれると、図9の段階930に示すように、ポンプヘッドなど、直径がより大きい医療デバイスの部分を、使用のため患者の動脈切開内に進めることができる。本開示の諸態様に基づくピールアウェイシースの使用は、シースのキンク、屈曲、または座屈を伴わずに、ポジショニング中により大きな押力をシースに印加することを可能にしながら、一方で、医療手技中にシースが容易に引き裂かれることを確実化する。
【0070】
望ましい場合、本明細書において論じた異なる段階が、異なる順序で、および/または互いに同時に、行われてもよい。さらに、望ましい場合、上述した段階のうち1つまたは複数が任意的であってもよく、または組み合わされてもよい。
【0071】
以上は本開示の原理を例示したものにすぎず、本発明のデバイスおよび方法は、限定ではなく例示の目的で提示される本説明の実施形態以外でも実施されうる。理解されるべき点として、本明細書に開示するデバイスおよび方法は、耐キンク性ピールアウェイシースの製造における使用について示されているが、剛性でありながら可撓性である患者の脈管構造内への開口通路が脈管内手技中に必要とされる、他のシステムに適用されてもよい。
【0072】
本開示の参照後、当業者は、バリエーションおよび修正を考えつくであろう。本開示の諸特徴は、本明細書に説明する1つまたは複数の他の特徴との、任意の組み合わせおよび下位組み合わせ(複数の従属的な組み合わせおよび下位組み合わせを含む)において実施されてもよい。以上に説明または例証したさまざまな特徴は、その構成要素も含めて、他のシステムに組み合わせまたは統合されてもよい。さらに、特定の特徴が省略されるかまたは実施されなくてもよい。
【0073】
変更、置換、および改変の例は当業者によって確認可能であり、かつ、本明細書に開示する情報の範囲から逸脱することなく行われうる。本明細書に挙げるすべての参照物は、その全内容が参照により組み入れられ、かつ本出願の一部をなす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-08-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の脈管構造内に挿入するためのシースであって、以下:
外面と、長軸と、シースボディの中を通って形成された管腔とを有するシースボディであって、該シースボディが、該長軸の周りにアレンジされた内層と、該内層と同軸上にアレンジされた外層と、該内層と該外層との間にポジショニングされた支持層とを具備し、該内層と該外層と該支持層とが、一緒に積層されて該シースボディを形成している、シースボディ;および
該シースボディ内に形成された少なくとも1つの剪断ラインであって、該シースボディの該外面の下にポジショニングされ、かつ、該少なくとも1つの剪断ラインに沿った該シースボディの長軸方向の分離を容易にするよう構成された、少なくとも1つの剪断ライン
を具備する、シース。
【外国語明細書】