(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150516
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2の構造タンパク質に対する抗体のエピトープ、該エピトープに反応する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2を検出する方法、該抗体を含むSARS-CoV-2検出キット、該エピトープのポリペプチドを含む抗SARS-CoV-2抗体を検出する方法、該エピトープのポリペプチドを含む抗SARS-CoV-2抗体検出キット、該エピトープのポリペプチドを含むSARS-CoV-2用ワクチン及び該抗体を含むSARS-CoV-2感染症治療薬
(51)【国際特許分類】
C07K 16/10 20060101AFI20241016BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20241016BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241016BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241016BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20241016BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241016BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C07K16/10 ZNA
A61K39/215
A61K39/395 S
A61P31/14
G01N33/569 L
G01N33/53 N
C07K16/10
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109831
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2022505853の分割
【原出願日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2020040960
(32)【優先日】2020-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 真也
(57)【要約】
【課題】SARS-CoV-2を検出する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2を検出する方法及び該抗体を含む検出キットを提供すること。SARS-CoV-2に加えてMERS-CoV、SARS-CoV等の重篤な呼吸器症状を引き起こすヒト感染性コロナウイルスを同時に検出する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2及びヒト感染性コロナウイルスを同時に検出する方法及び該抗体を含む検出キットを提供すること。
【解決手段】SARS-CoV-2の構造タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片であって、前記SARS-CoV-2の構造タンパク質がN-タンパク質である、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片、並びに、SARS-CoV-2のタンパク質に反応する抗体と特異的に反応するハプテンであって、前記SARS-CoV-2のタンパク質がN-タンパク質である、前記ハプテン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2の構造タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片であって、前記SARS-CoV-2の構造タンパク質がN-タンパク質である、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項2】
前記N-タンパク質の19~49番目(配列番号18)、401~419番目(配列番号25)、1~18番目(配列番号17)、362~379番目(配列番号23)、377~395番目(配列番号24)、247~267番目(配列番号21)、174~207番目(配列番号19)、230~252番目(配列番号20)又は336~350番目(配列番号22)のアミノ酸領域に結合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項3】
前記N-タンパク質の20~48番目、403~417番目、1~12番目、366~377番目、381~391番目、254~263番目、175~206番目、234~250番目又は338~348番目のアミノ酸領域に結合する、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項4】
前記N-タンパク質の27~41番目、406~415番目、4~11番目、367~375番目、384~390番目、256~261番目、185~196番目、237~247番目又は340~347番目のアミノ酸領域に結合する、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と検体とを接触させ、免疫学的測定法によりSARS-CoV-2を検出することを含む、検体中のSARS-CoV-2を検出する方法。
【請求項6】
N-タンパク質の19~49番目(配列番号18)、401~419番目(配列番号25)、1~18番目(配列番号17)、362~379番目(配列番号23)、377~395番目(配列番号24)、247~267番目(配列番号21)、174~207番目(配列番号19)、230~252番目(配列番号20)及び336~350番目(配列番号22)からなる群より選択されるアミノ酸領域に同時に結合することのできる、少なくとも2種類のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を用いる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む、SARS-CoV-2の検出キット。
【請求項8】
N-タンパク質の19~49番目(配列番号18)、401~419番目(配列番号25)、1~18番目(配列番号17)、362~379番目(配列番号23)、377~395番目(配列番号24)、247~267番目(配列番号21)、174~207番目(配列番号19)、230~252番目(配列番号20)及び336~350番目(配列番号22)からなる群より選択されるアミノ酸領域に同時に結合することのできる、少なくとも2種類のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
SARS-CoV-2の構造タンパク質、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの構造タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片であって、前記SARS-CoV-2の構造タンパク質がN-タンパク質であり、前記SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの構造タンパク質がN-タンパク質である、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項10】
前記SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスが、MERS-CoV及び/又はSARS-CoVである、請求項9に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と検体とを接触させ、免疫学的測定法によりSARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスを検出することを含む、検体中のSARS-CoV-2及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスを検出する方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む、SARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの検出キット。
【請求項13】
配列番号18、25、17、23、24、21、19、20及び22のいずれか一つのアミノ酸配列であるポリペプチド。
【請求項14】
請求項13に記載のポリペプチドと検体とを接触させ、免疫学的測定法により抗SARS-CoV-2抗体を検出することを含む、検体中の抗SARS-CoV-2抗体を検出する方法。
【請求項15】
請求項13に記載のポリペプチドを含む、抗SARS-CoV-2抗体の検出キット。
【請求項16】
請求項13に記載のポリペプチドと検体とを接触させ、免疫学的測定法により抗SARS-CoV-2抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体以外の抗ヒト感染性コロナウイルス抗体を検出することを含む、検体中の抗SARS-CoV-2抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体以外の抗ヒト感染性コロナウイルス抗体を検出する方法。
【請求項17】
請求項13に記載のポリペプチドを含む、抗SARS-CoV-2抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体以外の抗ヒト感染性コロナウイルス抗体の検出キット。
【請求項18】
請求項13に記載のポリペプチドを含む、SARS-CoV-2用ワクチン。
【請求項19】
請求項13に記載のポリペプチドを含む、SARS-CoV-2用、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルス用ワクチン。
【請求項20】
請求項13に記載のポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体又は抗原結合性断片を含む、SARS-CoV-2感染症の治療のための抗体医薬。
【請求項21】
請求項13に記載のポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体又は抗原結合性断片を含む、SARS-CoV-2感染症、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルス感染症の治療のための抗体医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-CoV-2の構造タンパク質に対する抗体が認識するエピトープ、該エピトープに反応する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2を検出する方法、該抗体を含むSARS-CoV-2検出キット、該エピトープのポリペプチドを含む抗SARS-CoV-2抗体を検出する方法、該エピトープのポリペプチドを含む抗SARS-CoV-2抗体検出キット及び該エピトープのポリペプチドを含むSARS-CoV-2用ワクチン及び該抗体を含むSARS-CoV-2感染症治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスは正の一本鎖RNAゲノムとらせん対称性のヌクレオカプシドをもつエンベロープウイルスである。ヒトに感染するコロナウイルスとしてはベータコロナウイルスがあり、中でもMERSコロナウイルス(MERS-CoV)及びSARSコロナウイルス(SARS-CoV)は重篤な呼吸器症状を引き起こすことが知られている。
【0003】
2019年に中国で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が発生し、2020年2月現在東アジアを中心に東南アジア、中東、ヨーロッパなどで感染拡大が続いている。そのため、SARS-CoV-2に対する治療法やワクチンに加えて、SARS-CoV-2を早期に発見して感染拡大を抑えるべく、迅速かつ簡便な検出法の開発が急務となっている。
【0004】
SARS-CoV-2の発生以降、SARS-CoV-2の抗原性及び候補エピトープに関する報告がなされているが(例えば、非特許文献1)、当該候補エピトープはSARS-CoV-2に対するワクチンの開発を指向したものであり、SARS-CoV-2の検出に適したエピトープ及び当該エピトープを認識する抗体については未だ報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Suresh Kumar, Preprints, doi:https://www.preprints.org/manuscript/202002.0071/v1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、SARS-CoV-2を検出する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2を検出する方法及び該抗体を含む検出キットを提供することを目的とする。また、本発明は、SARS-CoV-2に加えてMERS-CoV、SARS-CoV等の重篤な呼吸器症状を引き起こすヒト感染性コロナウイルスを同時に検出する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2及びヒト感染性コロナウイルスを同時に検出する方法及び該抗体を含む検出キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来、抗原性を予測する複数のアルゴリズムが報告されているが(例えば、Chou PY, Fasman GD. 1978. Prediction of the secondary structure ofproteins from their amino acid sequence. Adv Enzymol Relat Areas Mol Biol47:45-148)、これらのアルゴリズムは互いに相反する指標を含んでいることから、個々のアルゴリズムでは抗原性予測の精度に乏しいという問題点があった。本発明者らはこれらのアルゴリズムを統合して抗原性の精度を高めることができるための改良を行い、当該改良したアルゴリズムを用いて得られたSARS-CoV-2を構成する構造タンパク質分子全体についての抗原性の強弱スコア(
図1~4)から、SARS-CoV-2を構成する構造タンパク質における特定のアミノ酸配列を有する領域においてウイルス抗原性が強く、当該特定のアミノ酸配列がSARS-CoV-2を検出する抗体の認識するエピトープ(ポリペプチド)として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明はSARS-CoV-2の構造タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片及び該抗体を含むSARS-CoV-2の検出キットを提供する。ここで、前記SARS-CoV-2の構造タンパク質は、S-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質である。
【0009】
また、本発明はSARS-CoV-2の構造タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と検体とを接触させ、免疫学的測定法によりSARS-CoV-2を検出することを含む、検体中のSARS-CoV-2を検出する方法を提供する。検体中のSARS-CoV-2を検出する方法においては、各構造タンパク質について少なくとも2種類のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を用いるサンドイッチ法が好ましい。
【0010】
また、本発明はSARS-CoV-2の構造タンパク質、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルス(好ましくは、MERS-CoV及び/又はSARS-CoV)の構造タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片及び該抗体を含む、SARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルス(好ましくは、MERS-CoV及び/又はSARS-CoV)の検出キットを提供する。ここで、前記SARS-CoV-2の構造タンパク質は、S-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質であり、前記SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの構造タンパク質は、S-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質である。
【0011】
また、本発明はSARS-CoV-2を検出する抗体の認識するエピトープ(ポリペプチド)を提供する。更に、本発明は、該エピトープのポリペプチドを含む抗SARS-CoV-2抗体を検出する方法、該エピトープのポリペプチドを含む抗SARS-CoV-2抗体検出キット、該エピトープのポリペプチドを含むSARS-CoV-2用ワクチン及び該抗体を含むSARS-CoV-2感染症治療薬を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、SARS-CoV-2を検出する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2を検出する方法及び該抗体を含む検出キットを提供することができる。また、本発明によれば、SARS-CoV-2に加えてMERS-CoV、SARS-CoV等の重篤な呼吸器症状を引き起こすコロナウイルスを同時に検出する抗体及び該抗体を含む検出キットを提供することができる。さらに、本発明によれば、SARS-CoV-2を検出する抗体の認識するエピトープ(ポリペプチド)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】SARS-CoV-2のS-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化したグラフである。
【
図2】SARS-CoV-2のN-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化したグラフである。
【
図3】SARS-CoV-2のM-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化したグラフである。
【
図4】SARS-CoV-2のE-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化したグラフである。
【
図5a】配列番号5の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5b】配列番号6の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5c】配列番号7の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5d】配列番号8の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5e】配列番号9の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5f】配列番号10の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5g】配列番号11の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5h】配列番号13の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5i】配列番号15の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5j】配列番号16の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5k】配列番号18の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5l】配列番号19の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5m】配列番号20の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5n】配列番号21の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5o】配列番号23の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5p】配列番号24の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5q】配列番号25の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5r】配列番号26の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5s】配列番号27の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5t】配列番号30の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5u】配列番号31の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5v】配列番号32の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5w】配列番号33の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図5x】配列番号34の配列を有するポリペプチドを免疫した際の、当該ポリペプチドに対する特異的な反応性を示すグラフである。
【
図6】実施例1で得られた計24種類の抗体の、SARS-CoV-2不活化抗原への反応性を示すグラフである。
【
図7】SARS-CoV-2不活化抗原を免疫して得られた抗血清中に存在する抗体のエピトープを解析した結果を示すグラフである。
【
図8】配列番号2記載のrecombinant N-タンパク質(full-length)を免疫して得られた抗血清中に存在する抗体のエピトープを解析した結果を示すグラフである。
【
図9】実施例3及び4で得られた抗血清中の抗体の、配列番号17~25のN-タンパク質エピトープ配列への反応性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔SARS-CoV-2に対する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2を検出する方法及び該抗体を含む検出キット〕
SARS-CoV-2は、主にS-タンパク質(表面タンパク質)、N-タンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)、M-タンパク質(膜タンパク質)及びE-タンパク質(エンベロープタンパク質)から構成される、ベータコロナウイルス属のウイルスである。本実施形態に係るモノクローナル抗体は、SARS-CoV-2を構成する主要な構造タンパク質、すなわち、S-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質と特異的に反応する。
【0015】
本実施形態において「特異的に」とは、タンパク質と本実施形態に係るモノクローナル抗体が混じり合う液系において、該抗体がSARS-CoV-2のタンパク質以外のタンパク質成分と検出可能なレベルで抗原抗体反応を起こさないか、又は何らかの結合反応や会合反応を起こしたとしても、該抗体のSARS-CoV-2のタンパク質との抗原抗体反応よりも明らかに弱い反応しか起こさないことを意味する。
【0016】
SARS-CoV-2のS-タンパク質(表面タンパク質;以下、本明細書において単に「S-タンパク質」とも称する)は、代表的には配列番号1で表される1273個のアミノ酸配列からなる。S-タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質であってもよく、配列番号1と90%以上(好ましくは95%以上)の配列同一性を有するタンパク質であってもよい。
【0017】
本実施形態に係る、SARS-CoV-2のS-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、S-タンパク質の66~85番目(配列番号5)、87~107番目(配列番号6)、105~131番目(配列番号7)、140~157番目(配列番号8)、155~170番目(配列番号9)、522~541番目(配列番号10)、538~562番目(配列番号11)、595~611番目(配列番号12)、670~693番目(配列番号13)、761~797番目(配列番号14)、802~818番目(配列番号15)又は1235~1273番目(配列番号16)のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、S-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図1において、抗原性スコア(antigenicity score)が閾値スコア(threshold score)と比較して高く、少なくとも16個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0018】
本実施形態に係る、SARS-CoV-2のS-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、好ましくはS-タンパク質の71~83番目、89~103番目、107~127番目、143~154番目、158~167番目、524~538番目、546~560番目、598~608番目、672~691番目、772~796番目、806~816番目又は1238~1269番目のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、S-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図1において、抗原性スコアが閾値スコアと比較してより高く、少なくとも10個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0019】
本実施形態に係る、S-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、より好ましくはS-タンパク質の73~79番目、93~99番目、109~115番目、145~152番目、160~165番目、526~531番目、553~558番目、599~607番目、674~684番目、773~795番目、808~814番目又は1257~1261番目のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、S-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図1において、抗原性スコアが閾値スコアと比較して最も高く、少なくとも5個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0020】
SARS-CoV-2のN-タンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質;以下、本明細書において単に「N-タンパク質」とも称する)は、配列番号2で表される419個のアミノ酸配列からなる。
【0021】
本実施形態に係る、N-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、N-タンパク質の1~18番目(配列番号17)、19~49番目(配列番号18)、174~207番目(配列番号19)、230~252番目(配列番号20)、247~267番目(配列番号21)、336~350番目(配列番号22)、362~379番目(配列番号23)、377~395番目(配列番号24)又は401~419番目(配列番号25)のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、N-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図2において、抗原性スコア(antigenicity score)が閾値スコア(threshold score)と比較して高く、少なくとも15配列からなるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0022】
本実施形態に係る、N-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、好ましくはN-タンパク質の1~12番目、20~48番目、175~206番目、234~250番目、254~263番目、338~348番目、366~377番目、381~391番目又は403~417番目のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、N-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図2において、抗原性スコアが閾値スコアと比較してより高く、少なくとも10個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0023】
本実施形態に係る、N-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、より好ましくはN-タンパク質の4~11番目、27~41番目、185~196番目、237~247番目、256~261番目、340~347番目、367~375番目、384~390番目又は406~415番目のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、N-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図2において、抗原性スコアが閾値スコアと比較して最も高く、少なくとも6個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0024】
SARS-CoV-2のM-タンパク質(膜タンパク質;以下、本明細書において単に「M-タンパク質」とも称する)は、配列番号3で表される222個のアミノ酸配列からなる。
【0025】
本実施形態に係る、M-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、M-タンパク質の1~24番目(配列番号26)、33~50番目(配列番号27)、101~120番目(配列番号28)、121~139番目(配列番号29)、146~171番目(配列番号30)、169~195番目(配列番号31)又は193~222番目(配列番号32)のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、M-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図3において、抗原性スコア(antigenicity score)が閾値スコア(threshold score)と比較して高く、少なくとも18個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0026】
本実施形態に係る、M-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、好ましくはM-タンパク質の1~19番目、38~45番目、103~118番目、122~138番目、155~168番目、172~195番目又は196~216番目のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、M-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図3において、抗原性スコアが閾値スコアと比較してより高く、少なくとも8個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0027】
本実施形態に係る、M-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、より好ましくはM-タンパク質の1~16番目、40~44番目、105~117番目、123~136番目、160~167番目、173~179番目又は205~215番目のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、M-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図3において、抗原性スコアが閾値スコアと比較して最も高く、少なくとも5配列からなるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0028】
SARS-CoV-2のE-タンパク質(エンベロープタンパク質;以下、本明細書において単に「E-タンパク質」とも称する)は、配列番号4で表される75個のアミノ酸配列からなる。
【0029】
本実施形態に係る、E-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、E-タンパク質の1~19番目(配列番号33)又は50~75番目(配列番号34)のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、E-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図4において、抗原性スコア(antigenicity score)が閾値スコア(threshold score)と比較して高く、少なくとも19個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0030】
本実施形態に係る、E-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、好ましくはE-タンパク質の4~13番目又は51~72番目のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、E-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図4において、抗原性スコアが閾値スコアと比較してより高く、少なくとも10個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0031】
本実施形態に係る、E-タンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体は、より好ましくはE-タンパク質の5~10番目又は60~71番目のアミノ酸領域に結合する。これらのアミノ酸領域は、E-タンパク質分子全体について抗原性の強弱をスコア化した
図4において、抗原性スコアが閾値スコアと比較して最も高く、少なくとも6個のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0032】
本実施形態に係るモノクローナル抗体を基に、抗原結合部位のみを分離させて使用することもできる。すなわち、公知の方法により作製された、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖抗体(scFv)、VHHなどの特異的な抗原結合性を有する断片(抗原結合性断片)は本発明の範囲に含まれる。また、本実施形態に係るモノクローナル抗体のクラスはIgGに限定されず、IgY、IgM、Camel Ig又はIg NARでもよい。なお、本明細書において、文脈からそうでないことが明らかな場合を除き、「抗体」は、「抗体又はその抗原結合性断片」を意味する。
【0033】
本実施形態に係るモノクローナル抗体は、公知の免疫学的手法を用い、SARS-CoV-2のタンパク質又はその部分ペプチド(例えば、上記したS-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質又はE-タンパク質における特定のアミノ酸領域からなるポリペプチド)を被免疫動物に免疫し、被免疫動物の細胞を用いてハイブリドーマを作製することにより、又は遺伝子組換え技術による組換え抗体として作製することにより得ることができる。免疫に用いるペプチドの長さは特に限定されないが、好ましくは5アミノ酸以上、より好ましくは10アミノ酸以上、更に好ましくは13アミノ酸以上のペプチドを用いて免疫原とすることができる。
【0034】
免疫原とするSARS-CoV-2のタンパク質は培養ウイルス液から得ることもできるが、SARS-CoV-2のタンパク質をコードするDNAをプラスミドベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入して発現させることにより得ることもできる。
【0035】
免疫原とするSARS-CoV-2のタンパク質又はそれらの部分ペプチドは以下に例示するようなタンパク質と融合タンパク質として発現させ、精製の後、又は未精製のまま免疫原として用いることもできる。融合タンパク質の作製には、当業者が「タンパク質発現・精製タグ」として一般的に用いる、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、チオレドキシン(TRX)、Nusタグ、Sタグ、HSVタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ、Strepタグ、Strep-IIタグ、Mycタグ、HAタグ、V5タグ、Eタグ、T7タグ、VSV-Gタグ、Glu-Gluタグ、Aviタグなどが利用できる。これらとの融合タンパク質は、消化酵素を用いてSARS-CoV-2のタンパク質又はその部分ペプチド部分とそれ以外のタグ部分とを切断し、分離精製した後に免疫原として用いることが好ましい。
【0036】
免疫した動物からのモノクローナル抗体の調製は、周知のケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol. 256, p495-497(1975))により容易に行うことができる。すなわち、免疫した動物から、脾細胞やリンパ球等の抗体産生細胞を回収し、これを常法によりマウスミエローマ細胞と融合させてハイブリドーマを作製し、得られたハイブリドーマを限界希釈法等によりクローニングし、クローニングされた各ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体のうち、SARS-CoV-2のタンパク質と抗原抗体反応するモノクローナル抗体を選択する。
【0037】
腹水や培養上清からのモノクローナル抗体の精製は、公知のイムノグロブリン精製法を用いることができる。例えば、硫酸アンモニウムや硫酸ナトリウムを用いた塩析による分画法、PEG分画法、エタノール分画法、DEAEイオン交換クロマトグラフィー法、ゲルろ過法などが挙げられる。また免疫動物種とモノクローナル抗体のクラスに応じて、プロテインA、プロテインG、プロテインLのいずれかを結合させた担体を用いたアフィニティクロマトグラフィー法によっても精製することが可能である。
【0038】
本実施形態に係るSARS-CoV-2を検出する方法は、SARS-CoV-2のタンパク質、すなわち、S-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と検体とを接触させ、免疫学的測定法によりSARS-CoV-2を検出することを含む。
【0039】
本実施形態に係る検出方法において用いる検体としては、例えば、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、尿、精液、髄液、唾液、汗、涙、腹水若しくは羊水などの体液;粘液;糞便;血管若しくは肝臓などの臓器;組織;細胞、又はそれらの抽出液など、SARS-CoV-2のタンパク質が含まれる可能性のある生体試料が挙げられ、好ましくは、採取が容易である、口腔、扁桃腺、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支又は肺などからの細胞及び分泌液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液、うがい液、喀痰、気管吸引液、気管支肺胞洗浄液などである。これらの検体を採取する方法は特に限定されず、公知の方法を採用することができる。具体的には、綿棒を用いた方法が挙げられる。
【0040】
本実施形態に係るSARS-CoV-2のタンパク質の測定は、当業者にとって周知の免疫学的測定法であればいずれも採用できる。免疫学的測定法としては、例えば競合法、凝集法、ウェスタンブロット法、免疫染色法、サンドイッチ法などが挙げられる。
【0041】
本実施形態に係るSARS-CoV-2のタンパク質の測定法としては、少なくとも2種類のモノクローナル抗体を使用するサンドイッチ法が好ましい。サンドイッチ法自体は免疫測定の分野において周知であり、例えばイムノクロマト法、ELISA法などにより行うことができる。本実施形態に係る測定法は、上記したSARS-CoV-2のタンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体を用いること以外は、周知のサンドイッチ法により行うことができる。
【0042】
サンドイッチ法において、測定するSARS-CoV-2のタンパク質がS-タンパク質である場合、66~85番目(配列番号5)、87~107番目(配列番号6)、105~131番目(配列番号7)、140~157番目(配列番号8)、155~170番目(配列番号9)、522~541番目(配列番号10)、538~562番目(配列番号11)、595~611番目(配列番号12)、670~693番目(配列番号13)、761~797番目(配列番号14)、802~818番目(配列番号15)及び1235~1273番目(配列番号16)からなる群より選択されるアミノ酸領域に同時に結合することのできる、少なくとも2種類のモノクローナル抗体を用いることが好ましい。
【0043】
サンドイッチ法において、測定するSARS-CoV-2のタンパク質がN-タンパク質である場合、1~18番目(配列番号17)、19~49番目(配列番号18)、174~207番目(配列番号19)、230~252番目(配列番号20)、247~267番目(配列番号21)、336~350番目(配列番号22)、362~379番目(配列番号23)、377~395番目(配列番号24)及び401~419番目(配列番号25)からなる群より選択されるアミノ酸領域に同時に結合することのできる、少なくとも2種類のモノクローナル抗体を用いることが好ましい。
【0044】
サンドイッチ法において、測定するSARS-CoV-2のタンパク質がM-タンパク質である場合、1~24番目(配列番号26)、33~50番目(配列番号27)、101~120番目(配列番号28)、121~139番目(配列番号29)、146~171番目(配列番号30)、169~195番目(配列番号31)及び193~222番目(配列番号32)からなる群より選択されるアミノ酸領域に同時に結合することのできる、少なくとも2種類のモノクローナル抗体を用いることが好ましい。
【0045】
サンドイッチ法において、測定するSARS-CoV-2のタンパク質がE-タンパク質である場合、1~19番目(配列番号33)及び50~75番目(配列番号34)のアミノ酸領域に同時に結合することのできる、2種類のモノクローナル抗体を用いることが好ましい。
【0046】
本実施形態に係るSARS-CoV-2の検出キットは、SARS-CoV-2のタンパク質、すなわち、S-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質と特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。
【0047】
本実施形態に係るSARS-CoV-2の検出キットは、上記した免疫学的測定法に用いられる形態であればいずれも採用できるが、好ましくは、正確、迅速かつ簡便にSARS-CoV-2のタンパク質を測定することが可能なイムノクロマトストリップの形態である。
【0048】
本実施形態に係るSARS-CoV-2の検出キットの好ましい一態様は、S-タンパク質の66~85番目(配列番号5)、87~107番目(配列番号6)、105~131番目(配列番号7)、140~157番目(配列番号8)、155~170番目(配列番号9)、522~541番目(配列番号10)、538~562番目(配列番号11)、595~611番目(配列番号12)、670~693番目(配列番号13)、761~797番目(配列番号14)、802~818番目(配列番号15)及び1235~1273番目(配列番号16)からなる群より選択されるアミノ酸領域に同時に結合することのできる、少なくとも2種類のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。
【0049】
本実施形態に係るSARS-CoV-2の検出キットの好ましい一態様は、N-タンパク質の1~18番目(配列番号17)、19~49番目(配列番号18)、174~207番目(配列番号19)、230~252番目(配列番号20)、247~267番目(配列番号21)、336~350番目(配列番号22)、362~379番目(配列番号23)、377~395番目(配列番号24)及び401~419番目(配列番号25)からなる群より選択されるアミノ酸領域に同時に結合することのできる、少なくとも2種類のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。
【0050】
本実施形態に係るSARS-CoV-2の検出キットの好ましい一態様は、M-タンパク質の1~24番目(配列番号26)、33~50番目(配列番号27)、101~120番目(配列番号28)、121~139番目(配列番号29)、146~171番目(配列番号30)、169~195番目(配列番号31)及び193~222番目(配列番号32)からなる群より選択されるアミノ酸領域に同時に結合することのできる、少なくとも2種類のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。
【0051】
本実施形態に係るSARS-CoV-2の検出キットの好ましい一態様は、E-タンパク質の1~19番目(配列番号33)及び50~75番目(配列番号34)のアミノ酸領域に同時に結合することのできる、2種類のモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。
【0052】
〔SARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスに対する抗体;該抗体を用いてSARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスを検出する方法;及び該抗体を含む検出キット〕
本実施形態に係るモノクローナル抗体は、SARS-CoV-2の構造タンパク質、すなわち、SARS-CoV-2のS-タンパク質(表面タンパク質)、N-タンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)、M-タンパク質(膜タンパク質)及びE-タンパク質(エンベロープタンパク質)からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質、並びにSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの構造タンパク質、すなわち、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスのS-タンパク質(表面タンパク質)、N-タンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)、M-タンパク質(膜タンパク質)及びE-タンパク質(エンベロープタンパク質)からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質と特異的に反応する。
【0053】
本実施形態において「特異的に」とは、タンパク質と本実施形態に係るモノクローナル抗体が混じり合う液系において、該抗体がSARS-CoV-2のタンパク質、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスのタンパク質以外のタンパク質成分と検出可能なレベルで抗原抗体反応を起こさないか、又は何らかの結合反応や会合反応を起こしたとしても、該抗体のSARS-CoV-2のタンパク質、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスのタンパク質以外のタンパク質との抗原抗体反応よりも明らかに弱い反応しか起こさないことを意味する。
【0054】
SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスは、ヒトに重篤な呼吸器症状を引き起こすコロナウイルスであれば特に制限されないが、好ましくはMERS-CoV及び/又はSARS-CoVであり、より好ましくはSARS-CoVである。
【0055】
本実施形態に係るモノクローナル抗体は、上記〔SARS-CoV-2に対する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2を検出する方法及び該抗体を含む検出キット〕において記載した方法と同様の方法で調製することができる。
【0056】
本実施形態に係るSARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスを検出する方法は、SARS-CoV-2の構造タンパク質、すなわち、SARS-CoV-2のS-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質と、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの構造タンパク質、すなわち、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスのS-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質に特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片と検体とを接触させ、免疫学的測定法によりSARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスを検出することを含む。
【0057】
本実施形態に係る方法において用いる検体、並びにSARS-CoV-2のタンパク質、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスのタンパク質の測定は、上記〔SARS-CoV-2に対する抗体、該抗体を用いてSARS-CoV-2を検出する方法及び該抗体を含む検出キット〕において記載した検体及び測定方法と同様である。
【0058】
本実施形態に係るSARS-CoV-2、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの検出キットは、SARS-CoV-2の構造タンパク質、すなわち、SARS-CoV-2のS-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質とSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの構造タンパク質、すなわち、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスのS-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質に特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片を含む。
【0059】
〔SARS-CoV-2を検出する抗体の認識するエピトープ(ポリペプチド)〕
本実施形態に係る、配列番号5~34のいずれか一つのアミノ酸配列からなるポリペプチドは、検体中に存在するSARS-CoV-2を検出する抗体の認識するエピトープとして利用可能である。また、本実施形態に係るポリペプチドは、検体中に存在するSARS-CoV-2に加えて、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスを検出する抗体の認識するエピトープとして利用可能である。
【0060】
本実施形態に係るポリペプチドは、検体中(好ましくは血液中)に存在するSARS-CoV-2に対する抗体(すなわち、SARS-CoV-2に対する生体内での防御機構によって産生した抗SARS-CoV-2抗体)を検出するハプテンとして利用可能である。したがって、本発明の一実施形態として、配列番号5~34のアミノ酸配列を有する1種又は2種以上のポリペプチドと検体(好ましくは血液)とを接触させ、免疫学的測定法により抗SARS-CoV-2抗体を検出することを含む、検体中の抗SARS-CoV-2抗体を検出する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、配列番号5~34のアミノ酸配列を有する1種又は2種以上のポリペプチドを含む、抗SARS-CoV-2抗体の検出キットが提供される。
【0061】
本実施形態に係るポリペプチドは、検体中(好ましくは血液中)に存在するSARS-CoV-2に対する抗体、及びSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスに対する抗体(すなわち、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスに対する生体内での防御機構によって産生した抗ヒト感染性コロナウイルス抗体)を検出するハプテンとして利用可能である。したがって、本発明の一実施形態として、配列番号5~34のアミノ酸配列を有する1種又は2種以上のポリペプチドと検体(好ましくは血液)とを接触させ、免疫学的測定法により抗SARS-CoV-2抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体以外の抗ヒト感染性コロナウイルス抗体を検出することを含む、検体中の抗SARS-CoV-2抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体以外の抗ヒト感染性コロナウイルス抗体を検出する方法が提供される。また、本発明の一実施形態として、配列番号5~34のアミノ酸配列を有する1種又は2種以上のポリペプチドを含む、抗SARS-CoV-2抗体、及び抗SARS-CoV-2抗体以外の抗ヒト感染性コロナウイルス抗体の検出キットが提供される。
【0062】
本実施形態に係るポリペプチドは、SARS-CoV-2の感染予防を目的としたワクチン(例えば、ペプチドワクチン、カクテルペプチドワクチン、融合ペプチド、又は当該ペプチドを含むフラグメントドメイン)の基本骨格としての利用可能性を有する。また、本実施形態に係るポリペプチドは、SARS-CoV-2に加えて、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスの感染予防を目的としたワクチンの基本骨格としての利用可能性を有する。
【0063】
本実施形態に係るポリペプチドは、SARS-CoV-2感染症の重篤化の予防を目的としたワクチン(例えば、ペプチドワクチン、カクテルペプチドワクチン、融合ペプチド又は当該ペプチドを含むフラグメントドメイン)の基本骨格としての利用可能性を有する。また、本実施形態に係るポリペプチドは、SARS-CoV-2感染症に加えて、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルス感染症の重篤化の予防を目的としたワクチンの基本骨格としての利用可能性を有する。
【0064】
本実施形態に係るポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、SARS-CoV-2感染症の治療を目的とした抗体医薬(中和抗体)としての利用可能性を有する。また、本実施形態に係るポリペプチドと特異的に反応するモノクローナル抗体又はその抗原結合性断片は、SARS-CoV-2感染症に加えて、SARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルス感染症の治療のための抗体医薬(中和抗体)としての利用可能性を有する。
【0065】
上記した各実施形態におけるSARS-CoV-2以外のヒト感染性コロナウイルスとしては、ヒトに重篤な呼吸器症状を引き起こすコロナウイルスであれば特に制限されないが、好ましくはMERS-CoV及び/又はSARS-CoVであり、より好ましくはSARS-CoVである。
【実施例0066】
〔実施例1:抗体価の測定〕
配列番号5、6、7、8、9、10、11、13、15、16、18、19、20、21、23、24、25、26、27、30、31、32、33又は34の配列を有する計24種の各ポリペプチドを、MBS法(Syed Salman Lateef, et al. J BiomolTech. 2007 Jul; 18(3): 173-176.)に基づき、Blue CarrierProtein(mollusk-derived hemocyanin)とBSA(bovine serum albumin)に各々個別に共有結合させたペプチドコンジュゲートを調製した。Blue Carrier Proteinを用いたペプチドコンジュゲートを免疫抗原として、それぞれ3匹ずつのBALB/cマウスに100 μg/200μL /headの投与量で腹腔投与した。アジュバントとしてsigmaadjuvant systemを使用した。免疫期間中の経時採血は尾静脈から行った。抗体価はBSAを用いたペプチドコンジュゲート固相化ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)法により、以下の手順で確認した。
1)PBSで2 μg/mLに希釈した計24種のBSAペプチドコンジュゲート溶液を100 μL/wellずつ96-wellイムノプレートに添加し、4℃で一晩固相化した。
2)BSAペプチドコンジュゲート溶液を廃棄し、wash buffer (0.05%Tween20/PBS)で2回洗浄後、MilliQ waterで5倍希釈したBlocking One(ナカライテスク社製)を250 μL/wellずつ添加し、25℃で1時間程度インキュベートすることによってブロッキングを行った。
3)ブロッキング溶液を廃棄し、wash bufferで2回洗浄後、wash bufferで100~100,000倍希釈したマウス血漿を100 μL/wellずつ添加し、25℃で2時間インキュベートした。
4)血漿溶液を廃棄し、wash bufferで3回洗浄後、wash bufferで5,000倍希釈したPeroxidase-Conjugated Goat Anti-Mouse Immunoglobulins(DAKO社製)を100 μL/wellずつ添加し、室温で1時間インキュベートした。
5)抗体溶液を廃棄し、wash bufferで3回洗浄後、TMB溶液(TMB One-Step Substrate System:DAKO社製)を100 μL/wellずつ添加した。
6)25℃で20分間インキュベート後、2N H
2SO
4を100 μL/wellずつ添加して反応を停止した。
7)プレートリーダーで450 nm/630 nmの吸光度を測定した。
その結果を
図5a~5xに示す。なお、図中のError bar(SD)は免疫マウスの個体間差(n=3)である。
【0067】
図5a~5xに示すとおり、S-タンパク質、N-タンパク質、M-タンパク質及びE-タンパク質のエピトープペプチドに対する抗体価が上昇していることが確認された。
【0068】
〔実施例2:SARS-CoV-2不活化抗原への抗体の反応性〕
SARS-CoV-2(EPI_ISL_406034)の不活化抗原を固相化したマイクロタイタープレートを用いて、実施例1で得られた計24種の抗体のSARS-CoV-2不活化抗原への反応性をELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)法により、以下の手順で確認した。
1)SARS-CoV-2不活化抗原を固相化した96-wellイムノプレートに実施例1で得られた計24種の抗体を100 μL/wellずつ添加し、37℃で1時間インキュベートした。
2)血漿溶液を廃棄し、wash buffer(0.05% Tween20/PBS)で2回洗浄後、dilution buffer(0.05% Tween20, 0.5% BSA/PBS)で25,000倍希釈したPeroxidase-conjugated AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG(subclasses 1+2a+2b+3)及びFcγ Fragment Specific(Jackson ImmunoResearch社製)を100 μL/wellずつ添加し、37℃で1時間インキュベートした。
3)抗体溶液を廃棄し、wash bufferで2回洗浄後、TMB溶液(TMB One-Step Substrate System:DAKO社製)を100 μL/wellずつ添加した。
4)25℃で20分間インキュベート後、2N H
2SO
4を100 μL/wellずつ添加して反応を停止した。
5)プレートリーダーで450 nm/630 nmの吸光度を測定した。
その結果を
図6に示す。なお、図中のError bar(1.96×SD)は測定間差(n=3)である。
【0069】
図6に示すとおり、実施例1で得られた計24種の抗体は、何れもSARS-CoV-2不活性化抗原に反応することが確認された。
【0070】
〔実施例3:SARS-CoV-2不活化抗原を免疫原とした場合の抗血清中に存在する抗体のエピトープの解析〕
実施例2で用いたSARS-CoV-2不活化抗原を免疫原として、実施例1と同じ手順でBALB/cマウスに免疫を行った。得られた抗血清中に存在する抗体のエピトープを以下の手順で解析した。
1)SARS-CoV-2のN-タンパク質の配列(配列番号2)をN末端から1アミノ酸ずつC末端側にスライドさせ、且つ連続した15アミノ酸からなるポリペプチドであり、且つ各ポリペプチド鎖のN末端にはビオチン標識を行い、且つ各ポリペプチド鎖のC末端にはグリシンを1残基付加した、SARS-CoV-2 N-タンパク質ペプチドセット(BioTides
TM Biotinylated Peptides:JPTPeptide Technologies GmbH社製)を用いた。
2)上記1)記載のBioTides
TM Biotinylated PeptidesをDMF(N,N-dimethylformamide)に溶解し、LumAvidinMicrospheres(Liminex社製)へビオチン-アビジン反応を介してBioTides
TM Biotinylated Peptides-immobilized LumAvidinMicrospheresを調製した。本調製の詳細は、Luminex社のxMAP(registered trademark)Cookbook(Chapter 4.2.1)に従った。
3)SARS-CoV-2不活化抗原をBALB/cマウスに免疫して得た抗血清をPBS-TBN(0.02% Tween20, 0.1% BSA/PBS)で100倍希釈した溶液50 μLと、上記2)で調製したBioTides
TMBiotinylated Peptides-immobilized LumAvidin MicrospheresをSARS-CoV-2のN-タンパク質ペプチド各種に対して500 beads of LumAvidin Microspheresで混合したbeadsmix 50 μLを混合後、37℃で1時間インキュベートした。
4)3000rpmで5分間の遠心後、反応溶液の上清を廃棄し、wash buffer(0.02% Tween20/PBS)で2回洗浄した。
5)R-Phycoerythrin AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG(subclasses 1+2a+2b+3)及びFcγ Fragment Specific(Jackson ImmunoResearch社製)をPBS-TBNで200倍希釈した溶液100 μLを、上記4)で反応後のbeads mixに添加し、37℃で1時間インキュベートした。
6)3000rpmで5分間の遠心後、反応溶液の上清を廃棄し、wash bufferで2回洗浄した。
7)PBS-BN(1% BSA/PBS)50μLを、上記6)で反応後のbeads mixに添加し、beads懸濁液を調製した。
8)上記7)で調製したbeads懸濁液についてBio-Plex 200(Bio-Rad社製)を用いてMFI(meadianfluorescence intensity)を計測した。なお、Blank(reference control)として、上記3)において、抗血清に代えてdiluentであるPBS-TBNのみを測定試料に用いた条件でも計測し、抗血清での計測値からBlankでの計測値を差し引いた値をΔMFI(-Blank)と表した。
その結果を
図7に示す。
【0071】
図7に示すとおり、実施例3で得られた抗血清は、配列番号21と22以外のN-タンパク質エピトープ配列に対して有意な抗体価を有することが確認された。
【0072】
〔実施例4:recombinant N-タンパク質を免疫原とした場合の抗血清中に存在する抗体のエピトープの解析〕
recombinant N-タンパク質(full-length;配列番号2)を免疫原として、実施例1と同じ手順でBALB/cマウスに免疫を行った。得られた抗血清中に存在する抗体のエピトープを実施例3と同じ手順で解析した。その結果を
図8に示す。
【0073】
図8に示すとおり、実施例4で得られた抗血清は、配列番号17~25のN-タンパク質の全エピトープ配列に対して有意な抗体価を有することが確認された。
【0074】
〔実施例5:N-タンパク質のエピトープ配列への抗血清中の抗体の反応性〕
実施例3及び実施例4で得られた抗血清を用いて、配列番号17~25のN-タンパク質のエピトープ配列への上記抗血清中の抗体の反応性を以下の手順で確認した。
1)配列番号17~25の各ポリペプチドのN末端にビオチン標識を施し、当該ポリペプチドをDMF(N,N-dimethylformamide)に溶解し、LumAvidin Microspheres(Liminex社製)へビオチン-アビジン反応を介してBiotinylated epitope-peptides-immobilized LumAvidin Microspheresを調製した。本調製の詳細は、Luminex社のxMAP(registeredtrademark)Cookbook(Chapter4.2.1)に従った。
2)実施例3及び実施例4で得られた抗血清をPBS-TBN(0.02% Tween20, 0.1% BSA/PBS)で100倍希釈した溶液50 μLと、上記調製したBiotinylatedepitope-peptides-immobilized LumAvidin Microspheresを配列番号17~25の各ポリペプチドに対して500 beads of LumAvidin Microspheresで混合したbeadsmix 50 μLを混合後、37℃で1時間インキュベートした。
3)3000rpmで5分間の遠心後、反応溶液の上清を廃棄し、wash buffer(0.02% Tween20/PBS)で2回洗浄した。
4)R-Phycoerythrin AffiniPure Goat Anti-Mouse IgG(subclasses 1+2a+2b+3)及びFcγ Fragment Specific(Jackson ImmunoResearch社製)をPBS-TBNで200倍希釈した溶液100 μLを、上記3)で反応後のbeads mixに添加し、37℃で1時間インキュベートした。
5)3000rpmで5分間の遠心後、反応溶液の上清を廃棄し、wash bufferで2回洗浄した。
6)PBS-BN(1% BSA/PBS)50μLを、上記5)で反応後のbeads mixに添加し、beads懸濁液を調製した。
7)上記6)で調製したbeads懸濁液についてBio-Plex 200(Bio-Rad社製)を用いてMFI(meadianfluorescence intensity)を計測した。なお、Blank(reference control)として、上記2)において、抗血清に代えてdiluentであるPBS-TBNのみを測定試料に用いた条件でも計測した。
その結果を
図9に示す。なお、図中のError bar(SD)は測定間差(n=3)である。
【0075】
図9に示すとおり、実施例3及び実施例4で得られた抗血清は、配列番号17~25のN-タンパク質の全エピトープ配列に対して有意な抗体価を有することが確認された。