(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150520
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】インサイチュ遺伝子編集
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20241016BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20241016BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241016BHJP
C12N 5/0789 20100101ALI20241016BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20241016BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20241016BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241016BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20241016BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241016BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241016BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241016BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241016BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241016BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241016BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12Q1/34
C12N5/10
C12N5/0789
C12N15/864 100Z
A61K38/46
A61K48/00
A61K35/76
A61P21/04
A61P21/00
A61P9/10
A61P25/00
A61P1/16
A61P13/12
A61P3/10
A61P19/00
A61P19/02
A61P43/00 105
C12N15/09 110
C12N15/55
C12N15/55 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】56
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024110718
(22)【出願日】2024-07-10
(62)【分割の表示】P 2021507890の分割
【原出願日】2019-08-19
(31)【優先権主張番号】62/719,628
(32)【優先日】2018-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】507183952
【氏名又は名称】ダナ-ファーバー キャンサー インスティテュート,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイガース エイミー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドスタイン ジル
(72)【発明者】
【氏名】ワン レオ
(72)【発明者】
【氏名】シュー ヤー-チェー
(72)【発明者】
【氏名】セレイロ メリエン ゴンザレス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞のインサイチュのゲノム修飾の方法を提供する。
【解決手段】ウイルス(例えば、AAV)を介して送達される配列標的化ヌクレアーゼを使用した、細胞(例えば、幹細胞、組織幹細胞、筋幹細胞、骨格筋におけるSca-1
+間葉系前駆細胞、CD140a
+真皮間葉系細胞)のインサイチュのゲノム修飾の方法が提供される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビボで対象の細胞の標的化集団のゲノムを修飾するための方法であって、
a.前記対象をウイルスと接触させることであって、前記ウイルスは、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を、前記細胞の標的化集団に形質導入することと、
b.前記配列標的化ヌクレアーゼを用いて、前記細胞の標的化集団のゲノムを修飾することと、を含み、
前記細胞の標的化集団は、造血幹細胞でも造血前駆細胞でもない、前記方法。
【請求項2】
前記ウイルスがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記AAVが、前記細胞の標的化集団に対して向性を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記AAVが、細胞の非標的化集団に対して向性が低下しているか、または全くない、請求項2~3に記載の方法。
【請求項5】
AAVが、AAV血清型1、2、6、8、9、10またはAnc80L65である、請求項2~4に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスが静脈内投与されるか、または前記細胞の標的化集団を含む組織に局所的に注射される、請求項1~5に記載の方法。
【請求項7】
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、請求項1~6に記載の方法。
【請求項8】
前記RNA誘導ヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスが、前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する、請求項1~8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象を、前記細胞の標的化集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと接触させることをさらに含む、請求項1~9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のウイルスがAAVである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記AAVが、前記細胞の標的化集団に対して向性を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記AAVが、細胞の非標的化集団に対して向性が低下しているか、または全くない、請求項11~12に記載の方法。
【請求項14】
前記AAVが、AAV血清型1、2、6、8、9、10またはAnc80L65である、請求項1~13に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞の標的化集団が幹細胞または前駆細胞である、請求項1~14に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞の標的化集団が組織幹細胞である、請求項1~15に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞の標的化集団が機能的筋肉幹細胞である、請求項1~16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞の標的化集団が骨格筋の間葉系前駆細胞(Sca-1+)である、請求項1~16に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞の標的化集団が皮膚組織中の真皮間葉細胞(CD140a+)である、請求項1~16に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞の標的化集団が、共通の骨髄系前駆体集団、顆粒球単球前駆体集団、巨核球赤芽球前駆体集団、多能性前駆体集団、及び系統を方向付けられた赤血球前駆体集団から選択される前駆細胞集団である、請求項1~16に記載の方法。
【請求項21】
前記修飾が、突然変異の導入または修正を含む、請求項1~20に記載の方法。
【請求項22】
前記修飾が、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む、請求項1~20に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、ヒトである、請求項1~22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象がマウスである、請求項1~22に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞の標的化集団の少なくとも40%がウイルスによって形質導入される、請求項1~24に記載の方法。
【請求項26】
インビボで対象の筋幹細胞の集団のゲノムを修飾するための方法であって、
a.前記対象をウイルスと接触させることであって、前記ウイルスは、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を前記筋幹細胞の集団に形質導入することと、
b.前記筋幹細胞の集団のゲノムを前記配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと、を含み、
前記ウイルスが静脈内注射によって前記対象に投与され、前記修飾された筋幹細胞が筋原性能力を保持している、前記方法。
【請求項27】
前記ウイルスがAAV8またはAnc80L65である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルスが、前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する、請求項26~27に記載の方法。
【請求項29】
前記筋肉幹細胞の集団の少なくとも50%が前記ウイルスによって形質導入される、請求項26~28に記載の方法。
【請求項30】
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、請求項26~29に記載の方法。
【請求項31】
前記RNA誘導ヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと前記対象とを接触させることをさらに含む、請求項26~31に記載の方法。
【請求項33】
前記修飾が、突然変異の導入または修正を含む、請求項26~32に記載の方法。
【請求項34】
前記修飾が、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む、請求項26~32に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が、ヒトである、請求項26~32に記載の方法。
【請求項36】
前記対象がマウスである、請求項26~32に記載の方法。
【請求項37】
対象における間葉系前駆細胞の集団のゲノムをインビボで修飾するための方法であって、
a.前記対象をウイルスと接触させることであって、前記ウイルスが、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を前記間葉系前駆細胞の集団に形質導入することと、
b.前記間葉系前駆細胞の集団のゲノムを前記配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと、を含む、前記方法。
【請求項38】
前記間葉系前駆細胞がSca-1+である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記間葉系前駆細胞が骨格筋に位置する、請求項37~38に記載の方法。
【請求項40】
前記ウイルスがAAV8、AAV9またはAnc80L65である、請求項37~39に記載の方法。
【請求項41】
前記ウイルスが、前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する、請求項37~40に記載の方法。
【請求項42】
前記間葉系前駆細胞の集団の少なくとも11%が前記ウイルスによって形質導入される、請求項37~41に記載の方法。
【請求項43】
前記間葉系前駆細胞の集団の少なくとも20%が前記ウイルスによって形質導入される、請求項37~41に記載の方法。
【請求項44】
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、請求項37~43に記載の方法。
【請求項45】
前記RNA誘導ヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと前記対象とを接触させることをさらに含む、請求項37~45に記載の方法。
【請求項47】
前記修飾が、突然変異の導入または修正を含む、請求項37~46に記載の方法。
【請求項48】
前記修飾が、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む、請求項37~46に記載の方法。
【請求項49】
前記ウイルスが、組織もしくは器官への局所注射または静脈内注射を介して前記対象に投与される、請求項37~48に記載の方法。
【請求項50】
前記ウイルスが、筋肉組織、脂肪組織、骨髄、または結合組織への局所注射によって投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記対象が、ヒトである、請求項37~50に記載の方法。
【請求項52】
前記対象がマウスである、請求項37~50に記載の方法。
【請求項53】
対象の真皮間葉細胞の集団のゲノムをインビボで修飾するための方法であって、
a.前記対象をウイルスと接触させることであって、前記ウイルスは、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を前記真皮間葉系細胞の集団に形質導入することと、
b.前記真皮間葉系細胞の集団のゲノムを前記配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと、を含む方法。
【請求項54】
前記ウイルスが、AAV8である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ウイルスが、前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する、請求項53~54に記載の方法。
【請求項56】
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、請求項53~55に記載の方法。
【請求項57】
前記RNA誘導ヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと前記対象とを接触させることをさらに含む、請求項53~57に記載の方法。
【請求項59】
前記修飾が、突然変異の導入または修正を含む、請求項53~58に記載の方法。
【請求項60】
前記修飾が、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む、請求項53~59に記載の方法。
【請求項61】
前記対象が、ヒトである、請求項53~60に記載の方法。
【請求項62】
前記対象がマウスである、請求項53~60に記載の方法。
【請求項63】
前記ウイルスが皮膚に局所的に注射されるか、または静脈内に投与される、請求項53~62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年8月18日に出願された米国仮出願第62/719,628号の利益を主張する。上記の出願の全教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所により付与された認可番号F32AG050395、R01
HL135287、DP1 AG048917、及びR01 AR070825の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
体の組織及び臓器の効果的な機能は、どちらのプロセスも、組織幹細胞の作用の調節を必要とする、適切な細胞数の維持(ホメオスタシス)及び損傷後の損傷細胞の交換(修復)に依存する。数十年にわたる多くの研究は、幹細胞機能の重要な分子調節因子を定義しようと努めてきた。しかし、研究者がそのようなメディエーターを調べて定義することができたペースは、そのような研究に通常使用される遺伝子操作されたマウス及び幹細胞移植モデルを生成する技術的限界によって制約されてきた。特に、トランスジェニック及び遺伝子ノックアウトベースのアプローチでは、目的の遺伝子を遍在的または組織特異的な方法で破壊するために、複数の異なる遺伝子操作された欠失及び/またはフロックス(floxed)対立遺伝子の生成及び育種が必要であり、これは、いくつかの遺伝子を摂動させることの組合せ効果が目的である場合に悪化される課題である。同様に、幹細胞のエクスビボのゲノム操作には、これらの細胞の単離及び移植が必要であり、これは、内因性幹細胞ニッチに存在する重要な調節相互作用を妨害し、正常な幹細胞の特性を大幅に変更し得る(Wagers,2012)。したがって、この分野では、内因性幹細胞を単離したり、複雑な多対立遺伝子トランスジェニック動物を生成したりする必要なしに、内因性幹細胞の遺伝子発現を操作するためのプログラム可能なインビボプラットフォームの利用可能性から多大な恩恵を受けるであろう。
【0004】
現在提案されている多くのCRISPR/cas9ベースの遺伝子修飾治療の様式は、修飾前に細胞の標的化集団を患者から除去するエクスビボ法を含む。ただし、固形組織は必ずしも患者から除去できるとは限らないため、これらの方法の適用性が制限される。さらに、このような造血細胞などの組織の除去は、生着不全及び感染の重大なリスクをもたらし、そしてエクスビボで細胞を取り扱うための高価なGMP施設を必要とする。組織の除去はまた、細胞のネイティブのニッチ及び調節相互作用の喪失により、組織内の細胞の機能も破壊し得る。したがって、特に対象の体から容易に除去できない細胞については、インサイチュ遺伝子修飾法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
開示されているのは、ネイティブの幹細胞の特性及び調節相互作用を保ちながら、その生理学的ニッチ内の細胞を遺伝的に変化させる強力な新しいシステムである。具体的には、このシステムは、細胞の単離、培養、またはその後の移植を必要とせずに、幹細胞ゲノムをインサイチュで操作することを可能にし、それにより、ネイティブの調節相互作用及び現存する幹細胞特性を維持する。このシステムはまた、インビトロ条件で堅牢な幹細胞機能を維持できないこと、アブレーションコンディショニングの必要な使用、及び生着不全の避けられないリスクなど、エクスビボでの幹細胞の修飾及びその後の移植に関連する課題及び毒性を軽減する(Morgan et al.,2017)。したがって、内因性組織幹細胞にDNA修飾酵素を直接形質導入する機会は、幹細胞における治療的遺伝子
編集を目的とした現在進行中の学術的及び商業的取り組みに直接かつ特定の関連性があり、その全てが、これまで、エクスビボでの修飾及び再注入のために幹細胞を精製する必要性があると考えている(Morgan et al.,2017)。
【0006】
本明細書に記載のAAVベースのインビボシステムではまた、幹細胞機能を調査するための現在の実験システムに関連する重要な技術的及び実際的な制限も克服する。特に、一般的に採用されているトランスジェニック及び遺伝子ノックアウトベースのモデルは、複数の対立遺伝子を導入するために複雑な育種スキームを必要とすることが多く、時間及びリソースの両方に多大な投資を必要とし、高齢の動物において、非標準の遺伝子的背景において、または組み合わせた方式で、遺伝標的化効果を評価する際にはさらに問題となる。対照的に、本明細書に開示されるように、プログラム可能なDNA修飾酵素のAAV媒介送達は、広範な動物の年齢及び系統にわたって、そして様々な個々の及び多重化された遺伝子座に適用され得る。したがって、この技術は、遺伝子の機能及び相互作用をインビボで及び組織前駆体で調べることができるペースを加速する上で重要な用途を有する可能性が高い。最終的に、このシステムは、幹細胞の表現型に特異的に影響を与えると疑われる候補及び未知の遺伝子標的の迅速かつ直接的なインビボスクリーニングを可能にするように適合され得る。
【0007】
本開示のいくつかの態様は、インビボで対象の細胞集団のゲノムを修飾する方法に関するものであり、この方法は、対象をウイルスと接触させることであって、このウイルスが、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を細胞の集団に形質導入することと、この細胞集団のゲノム(例えば、細胞集団内の細胞のゲノム)を、配列標的化ヌクレアーゼで修飾することとを含み、この細胞集団は、造血幹細胞でも、造血前駆細胞でもない。いくつかの実施形態では、この方法は、細胞の集団に対して選択的であるか、または1つ以上の他の細胞の集団を除外するために選択的である(本明細書に開示されるかまたは当技術分野で公知である細胞の任意の集団は除外され得る)。いくつかの実施形態では、ウイルスは、アデノ随伴ウイルス(AAV)である。いくつかの実施形態では、AAVは、AAV血清型1、2、6、8、9、10またはAnc80L65である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、局所的または全身的に投与される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、ウイルスは、局所的に注射される(例えば、細胞の集団を含む組織(すなわち、細胞の標的化集団)に注射される)。
【0008】
いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)である。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、細胞の集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する。
【0009】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと対象とを接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、この第2のウイルスはAAVである。いくつかの実施形態では、このAAVは、AAV血清型1、2、6、8、9、10またはAnc80L65である。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞の集団は、幹細胞または前駆細胞である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、組織幹細胞(例えば、固形組織幹細胞)である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は機能的な筋肉幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞の集団は、骨格筋におけるSca-1+間葉系前駆細胞である。いくつかの実施形態では
、細胞の集団は、皮膚組織における真皮間葉細胞(CD140a+)である。本発明のい
くつかの実施形態では、細胞の集団は、前駆細胞である(例えば、造血前駆細胞集団、一
般的な骨髄系前駆体集団、顆粒球単球前駆体集団、巨核球赤芽球前駆体集団、系統を方向付けられた赤血球前駆体集団)。
【0011】
いくつかの実施形態では、この修飾は、突然変異の導入または修正を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、この対象はヒトまたはマウスである。
【0013】
いくつかの実施形態では、細胞集団のうち少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、またはそれ以上が、ウイルス(例えば、第1のウイルスもしくは第2のウイルス、または第1のウイルス及び第2のウイルスの両方)によって形質導入される。いくつかの実施形態では、細胞集団の少なくとも40%が、ウイルス(例えば、第1のウイルスもしくは第2のウイルス、または第1のウイルス及び第2のウイルスの両方)によって形質導入される。
【0014】
本開示のいくつかの態様は、インビボで対象の筋幹細胞の集団のゲノムを修飾する方法に向けられており、この方法は、対象をウイルスと接触させることであって、ここでこのウイルスは、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を筋幹細胞の集団に形質導入することと、筋幹細胞集団のゲノムを配列標的化ヌクレアーゼで修飾することとを含み、このウイルスは静脈内注射によって対象に投与され、この修飾された筋幹細胞は筋原性能力を保持する。いくつかの実施形態では、このウイルスは、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する。
【0015】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、AAV8またはAnc80L65である。いくつかの実施形態では、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%以上の筋幹細胞の集団が、ウイルスによって形質導入される。いくつかの実施形態では、筋幹細胞の集団の少なくとも50%がウイルスによって形質導入される。
【0016】
いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)である。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、saCas9ヌクレアーゼである。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと対象とを接触させることをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、この修飾は、突然変異の導入または修正を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、この対象はヒトである。いくつかの実施形態では、この対象はマウスである。
【0020】
本開示のいくつかの態様は、インビボで対象の間葉系前駆細胞の集団のゲノムを修飾する方法に向けられており、この方法は、対象をウイルスと接触させることであって、このウイルスは、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を、間葉系前駆細胞の集団に形質導入することと、間葉系前駆細胞の集団のゲノムを配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと、を含む。いくつかの実施形態では、このウイルスは、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する。
【0021】
いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞は、Sca-1+である。いくつかの実施形
態では、間葉系前駆細胞は、骨格筋に位置する。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞は、骨格筋に位置し、Sca-1+である。
【0022】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、AAV8、AAV9またはAnc80L65である。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞の集団の少なくとも11%がウイルスによって形質導入される。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞の集団の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上がウイルスによって形質導入される。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞の集団の少なくとも20%がウイルスによって形質導入される。
【0023】
いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CreリコンビナーゼまたはRNA誘導ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)である。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、saCas9ヌクレアーゼである。
【0024】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと対象とを接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、突然変異の導入または修正を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、このウイルスは、局所注射または静脈内注射を介して対象に投与される。いくつかの実施形態では、この対象とはヒトである。いくつかの実施形態では、この対象とはマウスである。
【0026】
本開示のいくつかの態様は、インビボで対象の真皮間葉細胞の集団のゲノムを修飾する方法に向けられており、この方法は、対象をウイルスと接触させることであって、このウイルスが、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を、真皮間葉系細胞の集団に形質導入することと、真皮間葉系細胞の集団のゲノムを配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと、を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスは、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する。
【0027】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、AAV8である。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)である。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、saCas9ヌクレアーゼである。
【0028】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと対象とを接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、突然変異の導入または修正を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む。いくつかの実施形態では、この対象はヒトである。いくつかの実施形態では、この対象はマウスである。
【0029】
この特許または出願ファイルには、カラーで実行された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開のコピーは、請求及び必要な料金の支払いに応じて官庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】AAV-Creの全身投与が筋衛星細胞を形質導入することを示す。実験計画。CreリコンビナーゼをコードするAAVを、Rosa26-LSL-tdTomatoレポーターを有するmdx、Ai9マウスに注射した。i.v.:静脈内。LSL:lox-stop-lox。
【
図1B】AAV-Creの全身投与が筋衛星細胞を形質導入することを示す。低用量(約5.5~8×10
11vg)または高用量(約2.2×10
12vg)で種々の血清型にパッケージングされたAAV-Creを用いて静脈内注射したmdx、Ai9マウスから単離した骨格筋衛星細胞の代表的フローサイトメトリー分析。MuSC:筋肉衛星細胞。
【
図1C】AAV-Creの全身投与が筋衛星細胞を形質導入することを示す。AAV形質導入及びCre組換えtdTomato
+筋衛星細胞の頻度の定量化。個々のマウスのデータポイントは、平均値±SDと重ね合わされる。N=1群あたり各AAV血清型を注射されたマウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射されたマウス3匹。vg:ウイルスゲノム。Anc80L65はAnc80と略される。
【
図2A】AAVで形質導入された筋衛星細胞が、分化及び生着の可能性を保持していることを示す。低用量または高用量で異なるAAV血清型を注射されたマウスから単離された筋肉衛星細胞から分化したミオシン重鎖(MHC)染色筋管の代表的な免疫蛍光画像。緑、MHC。赤、tdTomato。青、Hoechst。スケールバー、100μm。Anc80L65はAnc80と略される。
【
図2B】AAVで形質導入された筋衛星細胞が、分化及び生着の可能性を保持していることを示す。移植されなかった(上段、対照)か、または高用量のAAV-Cre注射Ai9マウス由来の50,000個のFACS精製tdTomato
+筋肉衛星細胞を移植された(下段)mdxマウス由来のTA筋肉における衛星細胞生着を分析する代表的な免疫蛍光画像。移植した2本の脚及び移植していない2本の反対側の脚由来のTA筋肉を、移植後3週間で分析した。白い矢じり印は、Pax7
+tdTomato
-筋肉衛星細胞を示す。白い矢印は、Pax7
+tdTomato
+筋肉衛星細胞を示す。TdTomato
+筋線維も明らかである。青、DAPI。白、ラミニン。緑、Pax7。赤、tdTomato。スケールバー:20μm。
【
図2C】AAVで形質導入された筋衛星細胞が、分化及び生着の可能性を保持していることを示す。ビヒクルのみの注射の3週間後のmdxマウス由来のTA筋肉(上段、対照)または以前に高用量のAAV8-Creを注射されたmdx、Ai9マウスから採取された筋衛星細胞(下段)における筋線維生着を分析する代表的な画像。赤、tdTomato。緑、小麦胚芽凝集素(WGA)。青、DAPI。スケールバー、100μm。
【
図3A】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。実験計画。CreリコンビナーゼをコードするAAVを、Rosa26-LSL-tdTomatoレポーターを保有するmdx、Ai9マウスに注射した。i.v.:静脈内。LSL:lox-stop-lox。
【
図3B】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。HSCゲーティング戦略(骨髄(BM)由来のLin
-Sca-1
+c-Kit
+CD48
-CD150
+)及びHSC内のtdTomato発現の代表的なフローサイトメトリー分析。
【
図3C】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。tdTomatoを発現するHSCの頻度。個々のマウスからのデータポイントは、平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたり各AAV血清型を注射されたマウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。
【
図3D】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。移植後の毎月の間隔での一次レシピエントの末梢血生細胞間のドナーキメラ現象の割合(%)。データは平均±SDである。N=1群あたりの一次レシピエントが8。
【
図3E】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。移植後16週間で示された末梢血系統内にtdTomato
+多系統生着を有する一次レシピエントの頻度。各系統について、tdTomato
+生着は、2つの基準の満足度に基づいてスコアリングされた:CD45.2
+細胞が>1%及びtdTomato
+がCD45.
+細胞のうち>1%。
【
図3F】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。tdTomato
+細胞の頻度であって、移植後16週での一次レシピエントにおける、CD45.2
+末梢血生T細胞での頻度。各系統について、その系統内で1%を超えるCD45.2
+細胞を示すレシピエントのみを示す。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたり一次レシピエント6~8。
【
図3G】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。tdTomato
+細胞の頻度であって、移植後16週での一次レシピエントにおける、CD45.2
+末梢血生B細胞での頻度。各系統について、その系統内で1%を超えるCD45.2
+細胞を示すレシピエントのみを示す。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたり一次レシピエント6~8。
【
図3H】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。tdTomato
+細胞の頻度であって、移植後16週での一次レシピエントにおける、CD45.2
+末梢血生単球での頻度。各系統について、その系統内で1%を超えるCD45.2
+細胞を示すレシピエントのみを示す。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたり一次レシピエント6~8。
【
図3I】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。tdTomato
+細胞の頻度であって、移植後16週での一次レシピエントにおける、CD45.2
+末梢血生好中球での頻度。各系統について、その系統内で1%を超えるCD45.2
+細胞を示すレシピエントのみを示す。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたり一次レシピエント6~8。
【
図3J】AAV-Creの全身注射が機能的な造血幹細胞を形質導入することを示す。移植後6ヶ月の一次レシピエントにおけるCD45.2+HSC中のtdTomato
+HSCのパーセンテージ。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたり一次レシピエント6~8。vg:ウイルスゲノム。Anc80L65はAnc80と略される。
【
図4A】AAVで形質導入された造血幹細胞が、二次移植後に長期的な再構成の可能性を示すことを示す。移植後の月間隔での二次レシピエントにおける末梢血生細胞間のドナーキメラ現象の割合(%)。データは平均±SDである。N=1群あたり二次レシピエント6~9。
【
図4B】AAVで形質導入された造血幹細胞が、二次移植後に長期的な再構成の可能性を示すことを示す。移植後16週間で示された末梢血系統内のtdTomato
+多系統生着を有する二次レシピエントの頻度。tdTomato
+生着は、
図3Eと同じ基準を使用して決定された。
【
図4C】AAVで形質導入された造血幹細胞が、二次移植後に長期的な再構成の可能性を示すことを示す。移植後16週での二次レシピエントにおける、CD45.2
+末梢血生T細胞のtdTomato
+細胞の頻度。各系統について、その系統内で1%を超えるCD45.2+細胞を示すレシピエントのみを示す。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたりマウス6~9匹。
【
図4D】AAVで形質導入された造血幹細胞が、二次移植後に長期的な再構成の可能性を示すことを示す。移植後16週での二次レシピエントにおける、CD45.2
+末梢血生B細胞のtdTomato
+細胞の頻度。各系統について、その系統内で1%を超えるCD45.2+細胞を示すレシピエントのみを示す。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたりマウス6~9匹。
【
図4E】AAVで形質導入された造血幹細胞が、二次移植後に長期的な再構成の可能性を示すことを示す。移植後16週での二次レシピエントにおける、CD45.2
+末梢血生単球のtdTomato
+細胞の頻度。各系統について、その系統内で1%を超えるCD45.2+細胞を示すレシピエントのみを示す。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたりマウス6~9匹。
【
図4F】AAVで形質導入された造血幹細胞が、二次移植後に長期的な再構成の可能性を示すことを示す。移植後16週での二次レシピエントにおける、CD45.2
+末梢血生好中球のtdTomato
+細胞の頻度。各系統について、その系統内で1%を超えるCD45.2+細胞を示すレシピエントのみを示す。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたりマウス6~9匹。
【
図4G】AAVで形質導入された造血幹細胞が、二次移植後に長期的な再構成の可能性を示すことを示す。移植後4~5か月の二次レシピエントにおけるCD45.2
+HSC中のtdTomato
+HSCの割合(%)。個々のデータポイントを、平均±SDと重ね合わせて示す。N=1群あたり二次レシピエント6~9。vg:ウイルスゲノム。Anc80L65はAnc80と略される。
【
図5A】AAV-Creの全身注射が骨格筋衛星細胞及び間葉系前駆細胞を形質導入することを示している。高用量AAV8-Creを注射してから2週間後(下)、注射していないAi9
fl/flマウス(上)または年齢を一致させたAi9
fl/flマウスから収集した前脛骨(TA)筋の代表的な免疫蛍光画像。N=分析された、注射されたマウス4匹。スケールバー:20μm。
【
図5B】AAV-Creの全身注射が骨格筋衛星細胞及び間葉系前駆細胞を形質導入することを示している。注射されていないか、または高用量のAAV8-Creを注射されたAi9
fl/flマウスのTA筋肉内のtdTomato
+Pax7
+衛星細胞の頻度の定量化。N=注射されていない分析マウス1匹。N=高用量AAV8-Creを注射した分析マウス3匹。60~80のPax7
+層下(sublaminar)細胞をTA筋肉あたり10の異なる0.181mm
2領域の中で定量した。個々のデータポイントは、平均値±SDと重ね合わされる。
【
図5C】AAV-Creの全身注射が骨格筋衛星細胞及び間葉系前駆細胞を形質導入することを示している。左:筋線維関連細胞におけるLin
+(CD45
+/Mac-1
+/Ter119
+)造血細胞及びSca-1
+間葉系前駆体のFACSゲーティング戦略。右:確立された細胞表面マーカーを用いたLin
-Sca-1
-親ゲート由来のβ1-インテグリン
+/CXCR4
+MuSC(筋衛星細胞)のためのゲーティング戦略(Cerletti et al.,2008、Maesner et al.,2016、Sherwood et al.,2004)。
【
図5D】AAV-Creの全身注射が骨格筋衛星細胞及び間葉系前駆細胞を形質導入することを示している。AAV8-Creを注射したマウス由来のFACS精製tdTomato
+及びtdTomato
-衛星細胞におけるPax7、Myf5、Myod1及び-Myog発現のリアルタイムPCR分析。Gapdhはハウスキーピング遺伝子として使用した。各遺伝子について、転写物レベルは、tdTomato
-群に対して正規化した。p値は、対応のあるt検定によって計算。
【
図5E】AAV-Creの全身注射が骨格筋衛星細胞及び間葉系前駆細胞を形質導入することを示している。AAV形質導入及びCre組換えtdTomato
+Lin
+造血細胞の定量化。平均値±SDと重ね合わされた個々のデータポイント。N=1群あたりAAV注射マウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。
【
図5F】AAV-Creの全身注射が骨格筋衛星細胞及び間葉系前駆細胞を形質導入することを示している。AAV形質導入及びCre組換えSca-1
+間葉系前駆体の定量化。平均値±SDと重ね合わされた個々のデータポイント。N=1群あたりAAV注射マウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。
【
図5G】AAV-Creの全身注射が骨格筋衛星細胞及び間葉系前駆細胞を形質導入することを示している。ビヒクルのみ(左カラム)または高用量AAV8-Cre(右の列)を注射したマウスから単離したSca-1
+間葉系前駆体からエクスビボで分化された脂肪細胞の代表的な蛍光画像。緑、BODIPY(脂質染色)。赤、tdTomato。青、Hoechst。スケールバー、100μm。
【
図6A】AAV-Creの局所注射が骨格筋衛星細胞への送達を可能にすることを示している。Lin
+(CD45
+/Mac-1
+/Ter119
+)造血細胞、Sca-1
+間葉系前駆体、及びSca-1
-Lin
-Pax7-ZsGreen
+MuSC(筋肉衛星細胞)のFACSゲーティング戦略。筋線維関連細胞は、6x10
11個のAAV-Creのウイルスゲノム(vg)を注射したPax7-ZsGreen
+/-、mdx、Ai9
fl/+マウスのTA筋肉から採取した。
【
図6B】AAV-Creの局所注射が骨格筋衛星細胞への送達を可能にすることを示している。AAV形質導入及びCre組換えtdTomato
+Lin
+造血細胞の定量化。個々のデータポイントは、平均±SDと重ね合わせた。N=各群にマウス2~3匹。
【
図6C】AAV-Creの局所注射が骨格筋衛星細胞への送達を可能にすることを示している。AAV形質導入及びCre組換えSca-1
+間葉系前駆体の定量化。個々のデータポイントは、平均±SDと重ね合わせた。N=各群にマウス2~3匹。
【
図6D】AAV-Creの局所注射が骨格筋衛星細胞への送達を可能にすることを示している。AAV形質導入及びCre組換えSca-1
-Lin
-Pax7-ZsGreen
+筋衛星細胞の定量化。個々のデータポイントは、平均±SDと重ね合わせた。N=各群にマウス2~3匹。
【
図7A】AAV-Creの全身注射が造血前駆細胞を形質導入することを示す。赤芽球前駆細胞のFACSゲーティング戦略:EryA(Ter119
+CD71
+FSC
高)、EryB(Ter119
+CD71
+FSC
低)、及びEryC(Ter119
+CD71
-FSC
低)。
【
図7B】AAV-Creの全身注射が造血前駆細胞を形質導入することを示す。骨髄系前駆細胞のFACSゲーティング戦略:一般的な骨髄系前駆体(CMP:Lin
-Sca-1
-c-Kit
+CD34
+FcγR
低)、顆粒球単球前駆体(GMP:Lin
-Sca-1
-c-Kit
+CD34
+FcγR
+)、及び巨核球赤血球前駆体(MEP:Lin
-Sca-1
-c-Kit
+CD34
-FcγR
-)。
【
図7C】AAV-Creの全身注射が造血前駆細胞を形質導入することを示す。tdTomatoを発現するEryA細胞の頻度。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりAAV注射マウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。
【
図7D】AAV-Creの全身注射が造血前駆細胞を形質導入することを示す。tdTomatoを発現するEryB細胞の頻度。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりAAV注射マウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。
【
図7E】AAV-Creの全身注射が造血前駆細胞を形質導入することを示す。tdTomatoを発現するEryC細胞の頻度。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりAAV注射マウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。
【
図7F】AAV-Creの全身注射が造血前駆細胞を形質導入することを示す。tdTomatoを発現するCMPの頻度。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりAAV注射マウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。スケールバー、100μm。Anc80L65はAnc80と略される。vg:ウイルスゲノム。
【
図7G】AAV-Creの全身注射が造血前駆細胞を形質導入することを示す。tdTomatoを発現するGMPの頻度。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりAAV注射マウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。スケールバー、100μm。Anc80L65はAnc80と略される。vg:ウイルスゲノム。
【
図7H】AAV-Creの全身注射が造血前駆細胞を形質導入することを示す。tdTomatoを発現するMEPの頻度。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりAAV注射マウス4匹、N=1群あたりビヒクル注射マウス3匹。スケールバー、100μm。Anc80L65はAnc80と略される。vg:ウイルスゲノム。
【
図8A】AAV-Creの局所注射が造血幹細胞への送達を可能にすることを示す。AAV-Creの大腿内投与の6週間後のHSC内のtdTomato発現の代表的なフローサイトメトリー分析。
【
図8B】AAV-Creの局所注射が造血幹細胞への送達を可能にすることを示す。注射した脚(青)または反対側の脚(赤)内のtdTomatoを発現するLin
-Sca-1
+c-Kit
+CD48
-CD150
+HSCの頻度。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりマウス3~4匹。円:2x10
12vg用量を注射されたマウス。三角形:4x10
12vgの用量を注射されたマウス。反対側の脚にtdTomato
+HSCが存在することは、局所投与されたウイルスの全身性播種を反映している。
【
図8C】AAV-Creの局所注射が造血幹細胞への送達を可能にすることを示す。移植後16週間での一次レシピエントにおける末梢血生細胞間のドナーキメラ現象の割合(%)。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりマウス4~6匹。
【
図8D】AAV-Creの局所注射が造血幹細胞への送達を可能にすることを示す。示された系統内の移植後16週間でのCD45.2
+末梢血細胞のうち1%超のCD45.2
+細胞及び1%超のtdTomato
+を含む一次レシピエントの頻度。
【
図8E】AAV-Creの局所注射が造血幹細胞への送達を可能にすることを示す。移植後16週間でのCD45.2
+末梢血生細胞におけるtdTomato
+細胞の頻度。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりマウス4~6匹。
【
図8F】AAV-Creの局所注射が造血幹細胞への送達を可能にすることを示す。移植後8か月でのドナー由来HSC中のtdTomato
+HSCの割合(%)。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=1群あたりマウス2~5匹。vg:ウイルスゲノム。
【
図9A】AAV-Creの全身注射により、皮膚常在造血細胞、線維芽細胞、及び間葉系前駆体の形質導入が可能になることを示す。造血細胞(CD45
+)、皮膚線維芽細胞(CD45
-CD140a
+)、ならびに皮膚の真皮内のCD24及びSca-1の発現に基づく皮膚線維芽細胞の4つのサブセットを同定するためのフローサイトメトリーゲーティング戦略。細胞は、以前は生きた(DAPI
-)シングレットとしてゲーティングされた。
【
図9B】AAV-Creの全身注射により、皮膚常在造血細胞、線維芽細胞、及び間葉系前駆体の形質導入が可能になることを示す。非注射及び高用量AAV8-Cre注射マウス由来のCD45
+細胞におけるtdTomato蛍光の代表的なフローサイトメトリー分析。
【
図9C】AAV-Creの全身注射により、皮膚常在造血細胞、線維芽細胞、及び間葉系前駆体の形質導入が可能になることを示す。注射されていないマウス及び高用量のAAV8-Creを注射されたマウス由来の皮膚切片の代表的な免疫蛍光画像。緑、CD140a。赤、tdTomato。青、DAPI。スケールバー:50μm。
【
図9D】AAV-Creの全身注射により、皮膚常在造血細胞、線維芽細胞、及び間葉系前駆体の形質導入が可能になることを示す。CD24
+Sca-1
-細胞におけるtdTomato蛍光の代表的なフローサイトメトリー分析。
【
図9E】AAV-Creの全身注射により、皮膚常在造血細胞、線維芽細胞、及び間葉系前駆体の形質導入が可能になることを示す。CD24
+Sca-1
+細胞におけるtdTomato蛍光の代表的なフローサイトメトリー分析。
【
図9F】AAV-Creの全身注射により、皮膚常在造血細胞、線維芽細胞、及び間葉系前駆体の形質導入が可能になることを示す。CD24
-Sca-1
-細胞におけるtdTomato蛍光の代表的なフローサイトメトリー分析。
【
図9G】AAV-Creの全身注射により、皮膚常在造血細胞、線維芽細胞、及び間葉系前駆体の形質導入が可能になることを示す。CD24
-Sca-1
+細胞におけるtdTomato蛍光の代表的なフローサイトメトリー分析。
【
図9H】AAV-Creの全身注射により、皮膚常在造血細胞、線維芽細胞、及び間葉系前駆体の形質導入が可能になることを示す。注射後2週間での注射されたマウス由来の示された皮膚細胞集団のそれぞれにおけるtdTomato
+細胞の割合(%)。個々のデータポイントは平均±SDと重ね合わされる。N=AAV-Creを注射したマウス3匹。
【
図10】全身AAV投与が明白な肝臓組織病理学を誘発しないことを示している。(
図10A)ビヒクル注射またはAAV8-Cre注射したmdx、Ai9動物由来の肝臓切片の代表的なヘマトキシリン及びエオシン(H&E)画像。注射は静脈内に行った。(
図10B)AAV8-Cre注射及びビヒクル注射mdx、Ai9マウス、ならびに注射されていないC57BL/6J WT(野生型)対照のサブセットからの肝臓組織病理学スコアリング。組織には、正常なマウスによく見られるいくつかの微小膿瘍、及び正常なマウスに時折発生する小さな壊死病巣を含んでいた。スケールバー、200μm。vg:ウイルスゲノム。
【
図11A】AAV-saCas9-gDnmt3aを使用したDnmt3aのインビボ編集を示す。Dnmta3 gRNA標的部位を含む増幅されたDnmt3配列にインデルを含む配列読み取りの割合(%)を示す。
【
図11B】AAV-saCas9-gDnmt3aを使用したDnmt3aのインビボ編集を示す。野生型配列に対応するDnmta3 gRNA標的部位を含む増幅されたDnmt3配列における配列読み取りの割合(%)を示す。
【
図11C】AAV-saCas9-gDnmt3aを使用したDnmt3aのインビボ編集を示す。骨髄細胞におけるDnmta3 gRNA標的部位周辺のインデルのヒストグラムを示している。
【
図11D】AAV-saCas9-gDnmt3aを使用したDnmt3aのインビボ編集を示す。HSCにおけるDnmta3 gRNA標的部位周辺のインデルのヒストグラムを示している。
【
図11E】AAV-saCas9-gDnmt3aを使用したDnmt3aのインビボ編集を示す。MPPにおけるDnmta3 gRNA標的部位周辺のインデルのヒストグラムを示している。
【
図11F】AAV-saCas9-gDnmt3aを使用したDnmt3aのインビボ編集を示す。肝細胞のDnmta3 gRNA標的部位周辺のインデルのヒストグラムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0031】
インビボ(すなわち、インサイチュ)での細胞(例えば、組織幹細胞)内のDNA配列の修飾のための戦略(すなわち、方法)が開示されている。この戦略は、インサイチュでの細胞への配列標的化ヌクレアーゼのウイルス(例えば、AAV媒介)送達を利用する。AAVは、修飾する組織に直接注入するか、または全身に送達してもよい。このシステムの概念実証は、AAVを媒介したCreリコンビナーゼの蛍光レポーターマウス(loxP Cre認識部位に隣接する配列の切除時に赤色蛍光を示すAi9レポーター)への送達を使用して、多くの異なる細胞タイプで実証されている。インビボでの幹細胞及び前駆細胞の最大65%の編集、ならびに修飾された細胞の確認された機能性が示されている。さらに、本明細書では、対象に注射されたAAV形質導入saCAS9及びgRNAが、肝臓、骨髄、HSC、及びMPPを特異的に修飾し得ることが示されている。
【0032】
いくつかの態様では、本発明は、対象(例えば、ヒト、マウス)においてインサイチュで細胞の集団(例えば、標的化された細胞の集団)のゲノムを修飾するための方法に向けられ、この方法は、対象をウイルス(例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV))と接触させることであって、このウイルスが、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を細
胞の集団に形質導入することと、配列標的化ヌクレアーゼで細胞集団のゲノムを修飾することとを含む。いくつかの実施形態では、細胞集団とは、幹細胞集団、組織幹細胞集団、筋幹細胞集団(例えば、機能的筋幹細胞集団)、間葉系前駆細胞集団、Sca-1+間葉
系前駆細胞集団、骨格筋集団中の間葉系前駆細胞、真皮間葉系細胞集団、またはCD140a+真皮間葉系細胞集団である。いくつかの実施形態では、この細胞の集団は、造血幹
細胞でも造血前駆細胞集団でもない。いくつかの実施形態では、この細胞集団とは、幹細胞集団、組織幹細胞集団、筋幹細胞集団(例えば、機能的筋幹細胞集団)、間葉系前駆細胞集団、Sca-1+間葉系前駆細胞集団、骨格筋集団における間葉系前駆細胞、真皮間
葉系細胞集団、多能性前駆体集団、またはCD140a+真皮間葉系細胞集団の前駆細胞
である。いくつかの実施形態では、この細胞の集団は、前駆細胞集団(例えば、造血前駆細胞集団、共通骨髄前駆体集団、顆粒球単球前駆体集団、巨核球赤血球前駆体集団、系統を方向付けられた赤血球前駆体集団)である。いくつかの実施形態では、この細胞の集団は、肝臓組織細胞集団である。いくつかの実施形態では、この細胞の集団は、骨髄細胞集団である。
【0033】
いくつかの実施形態では、細胞またはそのサブセット(例えば、特定の細胞表面マーカーまたはマーカーのセットを有する細胞)のうち少なくとも約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%以上が修飾される。いくつかの実施形態では、細胞またはそのサブセットのゲノムのうち少なくとも約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%以上が、相同組換えによって修飾される(例えば、ゲノム配列が置換または挿入される)。いくつかの実施形態では、細胞またはそのサブセットのゲノムのうち少なくとも約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%以上が、非相同末端結合(NHEJ)によって修飾される(例えば、ゲノム配列が欠失される)。いくつかの実施形態では、この修飾は、少なくとも1つの対立遺伝子の修飾を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、両方の対立遺伝子の修飾を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上の細胞集団が、細胞の非標的化集団(例えば、細胞の標的化集団を含む組織内の別の細胞型など、ウイルスとも接触した異なる細胞集団)と比較して修飾されている。
【0035】
本明細書で使用される場合、「対象」とは、ヒトまたは動物(例えば、霊長類)を意味する。通常、動物とは脊椎動物、例えば、霊長類、げっ歯類、飼育動物または狩猟動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えば、アカゲザルが挙げられる。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ及びハムスターが挙げられる。飼育及び狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種、例えば、イエネコ、イヌ科の種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類の種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚、例えば、マス、ナマズ及びサケが挙げられる。患者または対象は、前述の、例えば、上記した全ての任意のサブセットを含むが、ヒト、霊長類またはげっ歯類などの1つ以上の群または種を除く。ある特定の実施形態では、対象は哺乳動物、例えば、霊長類、例えば、ヒトである。「患者」、「個体」及び「対象」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定さ
れない。対象は雄性であっても、または雌性であってもよい。「対象」とは、様々な実施形態における任意の脊椎動物であってもよい。対象とは、例えば、実験、診断、及び/もしくは治療を目的として薬剤が投与される個体、または試料が得られる個体もしくは手順が実施される個体であってよい。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、新生児~6か月齢である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、6~24か月齢である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、2~6歳、6~12歳、または12~18歳である。いくつかの実施形態では、ヒト対象は、18~30歳、30~50歳、50~80歳、または80歳を超える。いくつかの実施形態では、対象は、少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、65、70、75、80、85、または90歳である。いくつかの実施形態では、対象は、約5、10、20、30、40、50、60、65、70、75、80、85、または90歳未満である。いくつかの実施形態では、対象は成人である。この目的のために、若くとも18歳のヒトが成人であると見なされる。いくつかの実施形態では、対象は若年者(例えば、ヒト対象では約18、12または6歳未満)である。いくつかの実施形態では、対象は若年者(例えば、ヒト対象では約18、12または6歳未満)ではない。いくつかの実施形態では、対象は胚である。いくつかの実施形態では、対象は胎児である。ある特定の実施形態では、子宮内の胚または胎児に対する生物学的効果を処置するか、または引き起こすために、薬剤が妊婦に投与される。
【0036】
本明細書で使用される場合、細胞を1つ以上のウイルスと「接触させること」は、対象の全身に(例えば、静脈内に)または局所的に(例えば、皮膚組織、筋肉組織、または他の標的とされた組織もしくは器官への局所注射)ウイルスを投与することを含み得る。あるいは、他の投与経路が選択されてよい(例えば、経口、吸入、鼻腔内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、及び他の親経路)。接触方法は限定されず、当該技術分野において利用可能な任意の好適な方法であってよい。
【0037】
本明細書で使用される場合、「核酸」または「核酸配列」という用語は、リボ核酸、デオキシリボ核酸またはそれらの類似体の単位を組み込んだ任意の分子、好ましくはポリマー分子を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。一本鎖核酸は、変性二本鎖DNAの一本鎖核酸であり得る。あるいは、それは、いずれの二本鎖DNAにも由来しない一本鎖核酸であり得る。一態様では、鋳型核酸はDNAである。別の態様では、鋳型はRNAである。好適な核酸分子は、ゲノムDNAまたはcDNAを含むDNAである。他の好適な核酸分子は、mRNAを含むRNAである。核酸分子は、ゲノムDNAと同様に天然に存在してもよいし、もしくはそれは合成であってもよく、すなわち、ヒトの行為に基づいて調製されてもよいし、または2つの組合せであってもよい。核酸分子はまた、ある特定の修飾、例えば、米国特許出願第20070213292号に記載されるような2’-デオキシ、2’-デオキシ-2’フルオロ、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、2’-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、または2’-O--N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、コレステロール付加、及びホスホロチオエート骨格など、ならびに米国特許第6,268,490号に記載されるような、2’-酸素原子と4’-炭素原子との間でメチレン単位によって連結されているある特定のリボヌクレオシドを有し得、両方の特許及び特許出願の全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ウイルス組成物は、ヒト患者に対して約1.0×109GC~約1.0×1015GCの範囲内(体重が70kgの平均的な対象を処置するために)、好ましくは1.0×1012GC~1.0×1014GCである複製欠損ウイルスの量を含有するために投与単位で製剤化され得る。好ましくは、製剤中の複製欠損ウイルスの用量は、1.0×109GC、5.0×109GC、1.0×1010GC、5.0×1
010GC、1.0×1011GC、5.0×1011GC、1.0×1012GC、5.0×1012GC、または1.0×1013GC、5.0×1013GC、1.0×1014GC、5.0×1014GC、または1.0×1015GCである。いくつかの実施形態では、製剤中の複製欠陥ウイルスの用量は、5.5~8×1011または2.2×1012のウイルスゲノム(vg)である。
【0039】
本明細書全体にわたって開示される方法での使用に好適なウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス)、ワクシニアウイルス及び他のポックスウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス)などが挙げられる。ウイルスは、宿主細胞に導入される場合、感染性ウイルスを産生するのに十分なウイルス遺伝情報を含んでも含まなくてもよく、すなわち、ウイルスベクターは複製可能であっても複製欠損性であってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、アデノ随伴ウイルスである。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、小さな(20nm)複製欠損性の非エンベロープウイルスである。AAVゲノムは、約4.7キロベース長の一本鎖DNA(ssDNA)である。ゲノムは、DNA鎖の両端に逆方向末端反復配列(ITR)、ならびに2つのオープンリーディングフレーム(ORF):rep及びcapを含む。AAVゲノムは、19番染色体上の特定の部位に最も頻繁に組み込まれる。ゲノム中へのランダムな組込みは、ごくわずかな頻度で生じる。組込み能力は、ベクターからrep ORFの少なくとも一部を除去することによって排除される場合があり、結果としてエピソームの状態を保持し、少なくとも非分裂細胞中で持続的な発現を提供するベクターをもたらす。AAVを遺伝子導入ベクターとして使用するために、プロモーターに機能的に連結される、所望のタンパク質またはRNAをコードする核酸配列、例えば、ATPIF1を阻害するポリペプチドまたはRNAをコードする核酸配列を含む核酸が、AAVゲノムの逆方向末端反復配列(ITR)間に挿入される。アデノ随伴ウイルス(AAV)及びベクターとしての、例えば、遺伝子治療のためのそれらの使用は、Snyder,RO and Moullier,P.,Adeno-Associated Virus Methods and Protocols,Methods in Molecular Biology,Vol.807.Humana Press,2011でも考察されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、AAV血清型1、2、6、8、9、10またはAnc80(すなわち、Anc80L65)(参照によって本明細書に組み込まれるWO2015054653に開示される)である。いずれのAAV血清型も、または改変AAV血清型も適宜使用されてよく、かつ限定されない。
【0042】
別の好適なAAVは、例えば、rhlOであってもよい[WO2003/042397]。さらに他のAAV供給源としては、例えば、AAV9[米国特許第7,906,111号、米国特許出願公開第2011-0236353-A1号]、及び/またはhu37[例えば、米国特許第7,906,111号、米国特許出願公開第2011-0236353-A1号を参照]、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8[米国特許第7790449号、米国特許第7282199号]などが挙げられてよい。これらの及び他の好適なAAVの配列に加えて、AAVベクターを生成する方法については、例えば、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、米国特許第7790449号、米国特許第7282199号、米国特許第7588772B2号を参照のこと。さらに他のAAVが、必要に応じて、選択されたAAVカプシドの組織選択性を考慮に入れて選択されてもよい。組換えAAVベクター(AAVウイルス粒子)は、AAVカプシド内にパッケージングされた、5’AAV ITR、本明細書に記載される発現カセット及び3’AAV ITRを含有する核酸分子を含んでよい。本明細書に記載されるように、発現カセ
ットは、各発現カセット内にオープンリーディングフレーム(複数可)のための調節エレメントを含有してもよく、核酸分子は、場合により追加の調節エレメントを含有してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、AAV血清型は、細胞の標的化集団に対して向性(troposim)を有するか、または優先的に形質導入する。いくつかの実施形態では、AAV血清型は、細胞の非標的化集団(例えば、細胞の標的化集団を含む組織内の別の細胞型など、ウイルスとも接触した異なる細胞集団)と比較して約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、またはそれ以上の細胞の標的化集団について、向性を有するか、または優先的に形質導入する。いくつかの実施形態では、AAV血清型は、細胞の標的化集団を実質的に形質導入するか、またはそれのみを形質導入する。
【0044】
AAVベクターは、全長AAV 5’逆方向末端反復配列(ITR)及び全長3’ITRを含んでもよい。AITRと称される5’ITRの短縮型が記載されていて、それはD-配列及び末端分解部位(trs)が欠失している。「sc」という略語は、自己相補的であることを指す。「自己相補的AAV」は、組換えAAV核酸配列が保有しているコード領域が、分子内二本鎖DNA鋳型を形成するように設計されている構築物を指す。感染時、第2鎖の細胞媒介合成を待つのではなく、scAAVの2つの相補的な半分が会合して、すぐに複製及び転写を行う準備ができている1本の二本鎖DNA(dsDNA)単位を形成することになる。例えば、D M McCarty et al,“Self-complementary recombinant adeno-associated virus(scAAV)vectors promote efficient transduction independently of DNA synthesis”,Gene Therapy,(August 2001),Vol 8,Number 16,Pages 1248-1254を参照のこと。自己相補的AAVは、例えば、米国特許第6,596,535号、同第7,125,717号、及び同第7,456,683号に記載され、その各々の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0045】
偽型AAVが産生される場合、ITRは、カプシドのAAV供給源とは異なる供給源から選択される。例えば、AAV2 ITRは、選択された細胞受容体、標的組織またはウイルス標的に対して特定の効率を有するAAVカプシドとともに使用するために選択される場合がある。一実施形態では、AAV2に由来するITR配列、またはその欠失型(AITR)が、便宜上、かつ規制当局の承認を早めるために使用される。しかしながら、他のAAV供給源に由来するIRTが選択されてもよい。ITRの供給源がAAV2に由来し、AAVカプシドが別のAAV供給源に由来する場合、得られたベクターは偽型と称される場合がある。しかしながら、AAV ITRの他の供給源が利用されてもよい。
【0046】
一本鎖AAVウイルスベクターが使用されてよい。対象への送達に好適なAAVウイルスベクターを生成及び単離する方法は、当該技術分野において公知である。例えば、米国特許第7790449号、米国特許第7282199号、WO2003/042397、WO2005/033321、WO2006/110689、及び米国特許第7588772B2号を参照のこと。1つのシステムでは、産生細胞株が、ITRに隣接する導入遺伝子をコードする構築物ならびにrep及びcapをコードする構築物(複数可)で一過性トランスフェクトされる。第2システムでは、rep及びcapを安定して供給するパッケージング細胞株が、ITRに隣接する導入遺伝子をコードする構築物で(一過性または安定に)トランスフェクトされる。これらの各システムでは、ヘルパーアデノウイルスまたはヘルペスウイルスの感染に応答してAAVビリオンが産生されるため、混入ウイルスからrAAVを単離する必要がある。より最近では、AAVを回収するのにヘルパーウ
イルスの感染を必要としないシステムが開発され、必要なヘルパー機能(すなわち、アデノウイルスEl、E2a、VA、及びE4またはヘルペスウイルスUL5、UL8、UL52、及びUL29、ならびにヘルペスウイルスポリメラーゼ)も、このシステムによってトランスに供給される。これらの新しいシステムでは、ヘルパー機能は、必要なヘルパー機能をコードする構築物で細胞を一過性トランスフェクトすることによって供給され得るか、または細胞が、ヘルパー機能をコードする遺伝子を安定して含有するように操作され得、その発現は転写もしくは転写後レベルで制御され得る。さらに別のシステムでは、ITRに隣接する導入遺伝子及びrep/cap遺伝子は、バキュロウイルスベースのベクターの感染によって昆虫細胞に導入される。これらの産生システムに関する概説については、一般に、例えば、その各々の内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Zhang et al,2009,“Adenovirus-adeno-associated virus hybrid for large-scale recombinant adeno-associated virus production,”Human Gene Therapy 20:922-929を参照のこと。これらを作製かつ使用する方法及び他のAAV産生システムは、以下の米国特許にも記載され、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる:5,139,941、5,741,683、6,057,152、6,204,059、6,268,213、6,491,907、6,660,514、6,951,753、7,094,604、7,172,893、7,201,898、7,229,823、及び7,439,065。
【0047】
別の実施形態では、他のウイルスベクターを使用してもよく、組込みウイルス、例えば、ヘルペスウイルスまたはレンチウイルスを含むが、他のウイルスを選択してもよい。好適には、これらの他のベクターのうち1つが生成される場合、それは複製欠損ウイルスベクターとして産生される。「複製欠損ウイルス」または「ウイルスベクター」とは、合成または人工ウイルス粒子であって、その中では目的の遺伝子を含有する発現カセットがウイルスカプシドまたはエンベロープ中にパッケージングされ、このウイルスカプシドまたはエンベロープ内に同じくパッケージングされている任意のウイルスゲノム配列が複製欠損性であり、すなわち、それらは子孫ビリオンを生成できないが、標的細胞に感染する能力を保持し得る、合成または人工ウイルス粒子を指す。一実施形態では、ウイルスベクターのゲノムは、複製に必要な酵素をコードする遺伝子を含まない(このゲノムは「ガットレス」である、すなわち、人工ゲノムの増幅及びパッケージングに必要なシグナルに隣接する目的の導入遺伝子のみを含有するように操作され得る)が、これらの遺伝子は産生中に供給され得る。
【0048】
1つ以上のウイルスは、哺乳動物細胞中で発現(例えば、配列標的化ヌクレアーゼ、ドナー鋳型、及び/または1つ以上のgRNAの発現)を誘導できるプロモーター、例えば、好適なウイルスプロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、レトロウイルス、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、ヘルペスウイルスもしくは哺乳動物細胞に感染する他のウイルスに由来するプロモーター、または例えば、EF1アルファ、ユビキチン(例えば、ユビキチンBもしくはC)、グロビン、アクチン、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)などの遺伝子に由来する哺乳動物プロモーター、または複合プロモーター、例えば、CAGプロモーター(CMV初期エンハンサーエレメント及びニワトリベータ-アクチンプロモーターの組合せ)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒトプロモーターが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーター、U6プロモーター、H1プロモーター、構成的プロモーター、及びユビキタスプロモーターから選択される。いくつかの実施形態では、プロモーターは、特定の細胞型(例えば、細胞の標的化集団)において発現を誘導する。例えば、筋幹細胞特異的プロモーター、間葉系前駆細胞特異的プロモーター、または真皮間葉系細胞(CD140a+)特異的プロモーター。いくつかの実施形態では、プロモーターは、本明細書に記載の細胞の任意の集団における発現を選択的に指示する。
【0049】
本明細書に開示される方法に使用され得る配列標的化ヌクレアーゼは限定されることなく、本明細書に開示される任意の配列標的化ヌクレアーゼであってよい。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、RNA誘導ヌクレアーゼ(例えば、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ))、またはそれらの機能的断片もしくは機能的バリアントである。
【0050】
現在使用されている配列標的化ヌクレアーゼ(すなわち、標的化可能なヌクレアーゼ、部位特異的ヌクレアーゼ)には、主に4つの種類がある:ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びRNA誘導型ヌクレアーゼ(RGN)、例えば、CRISPR/CasII型システムのCasタンパク質、ならびに操作されたメガヌクレアーゼ。ZFN及びTALENは、選択されたDNA配列をタンパク質の標的とするように適切に設計されている、部位特異的DNA結合ドメイン(DBD)に融合された制限酵素FokI(またはその操作されたバリアント)のヌクレアーゼドメインを含む。ZFNの場合、DNA結合ドメイン(DBD)は、ジンクフィンガーDBDを含む。TALENの場合、部位特異的DBDは、キサントモナス(Xanthomonas)種などの植物病原菌に見られる部位特異的DNA結合タンパク質のファミリーである転写活性化因子様エフェクター(TALE)によって用いられるDNA認識コードに基づいて設計される。
【0051】
規則的な間隔をもってクラスター化された短鎖反復回文配列(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat)(CRISPR)II型システムは、ゲノム工学用のRNA誘導型エンドヌクレアーゼ技術として使用するために修飾されている細菌適応免疫系である。細菌系は、crRNA及びtracrRNAと呼ばれる2つの内因性細菌RNAならびにCRISPR関連(Cas)ヌクレアーゼ、例えば、Cas9を含む。tracrRNAは、crRNAと部分的に相補性を有し、それと複合体を形成する。Casタンパク質は、crRNA/tracrRNA複合体によって標的配列に誘導され、これは標的内でcrRNA配列と相補配列との間にRNA/DNAハイブリッドを形成する。ゲノム修飾で使用するために、crRNA及びtracrRNA構成成分は、多くの場合に単一のキメラガイドRNA(sgRNAまたはgRNA)に組み合わされ、crRNAの標的化特異性及びtracrRNAの特性が組み合わされて、Casタンパク質がDNAを切断できるように標的配列にCasタンパク質を局在化させる単一の転写物となる。sgRNAは、多くの場合に所望の標的配列に相補的な、またはそれと相同なおよそ20ヌクレオチドのガイド配列に続いて、約80ntのハイブリッドcrRNA/tracrRNAを含む。当業者は、ガイドRNAが標的配列に完全に相補的であるか、またはそれと相同である必要はないことを十分に理解する。例えば、いくつかの実施形態では、それは1つまたは2つのミスマッチを有する場合がある。gRNAがハイブリダイズするゲノム配列には、通常、片側にプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列が隣接しているが、当業者は、ある特定のCasタンパク質がPAM配列に対して緩やかな要件を有する場合があることを十分に理解する。PAM配列はゲノムDNA中に存在するが、sgRNA配列中には存在しない。Casタンパク質は、正確な標的配列及びPAM配列を有する任意のDNA配列を対象とすることになる。PAM配列は、Casタンパク質が由来する細菌の種に応じて変化する。Casタンパク質の具体例としては、Cas1、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9及びCas10が挙げられる。いくつかの実施形態では、部位特異的ヌクレアーゼは、Cas9タンパク質を含む。例えば、Streptococcus pyogenes(Sp)、Neisseria meningitides、Staphylococcus aureus、Streptococcus thermophiles、またはTreponema denticola
に由来するCas9を使用してもよい。これらのCas9タンパク質のPAM配列は、それぞれNGG、NNNNGATT、NNAGAA、NAAAACである。いくつかの実施形態では、Cas9は、Staphylococcus aureus(saCas9)に由来する。
【0052】
部位特異的ヌクレアーゼの操作されたバリアントは多数開発されていて、ある特定の実施形態で使用されてよい。例えば、Cas9及びFok1の操作されたバリアントは、当該技術分野において公知である。さらに、生物学的に活性な断片またはバリアントが使用され得ると理解される。他の選択肢としては、ハイブリッド部位特異的ヌクレアーゼの使用が挙げられる。例えば、CRISPR RNA誘導型FokIヌクレアーゼ(RFN)では、FokIヌクレアーゼドメインが、触媒的に不活性なCas9タンパク質(dCas9)タンパク質のアミノ末端に融合される。RFNは二量体として機能し、2つのガイドRNAを利用する(Tsai,QS,et al.,Nat Biotechnol.2014;32(6):569-576)。一本鎖DNA切断を生成する部位特異的ヌクレアーゼも、ゲノム編集に有用である。そのようなヌクレアーゼは「ニッカーゼ」と称されることもあり、2つのヌクレアーゼドメインを含む部位特異的ヌクレアーゼ(ZFN、TALEN、及びCasタンパク質など)の2つのヌクレアーゼドメインのうち1つにおいて、主要な触媒残基に突然変異(例えば、アラニン置換)を導入することによって生成され得る。そのような突然変異の例としては、SpCas9のD10A、N863A、及びH840A、または他のCas9タンパク質の相同位置が挙げられる。ニックは、一部の細胞型では低効率でHDRを刺激し得る。互いに近く、反対の鎖上に存在する一対の配列を標的とする2つのニッカーゼは、各鎖上に一本鎖切断を作成して(「ダブルニッキング」)、DSBを効果的に生成し得、これは場合によりドナーDNA鋳型を使用してHDRによって修復され得る(Ran,F.A.et al.Cell 154,1380-1389(2013))。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、SpCas9バリアントである。いくつかの実施形態では、SpCas9バリアントは、R661A/Q695A/Q926A三重バリアントまたはN497A/R661A/Q695A/Q926A四重バリアントである。Kleinstiver et al.,“High-fidelity CRISPR-Cas9 nucleases with no detectable genome-wide off-target effects,”Nature,Vol.529,pp.490-495(及び補足資料)(2016)(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、クラス2タイプV-B CRISPR-Casタンパク質のC2c1である。Yang et al.,“PAM-Dependent Target DNA Recognition and Cleavage by C2c1 CRISPR-Cas Endonuclease,” Cell,Vol.167,pp.1814-1828(2016)(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、参照によって本明細書に組み込まれる、US20160319260「Engineered CRISPR-Cas9 nucleases with Altered PAM Specificity」に記載されているタンパク質である。
【0053】
配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸は、ウイルス(例えば、AAV)中に含まれるのに十分に短くなければならない。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、Staphylococcus aureusに由来するCas9(saCas9)である。
【0054】
いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、天然に存在する配列標的化ヌクレアーゼと少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のポリペプチド配列同一性を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはRNA誘導ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)である。
【0056】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、細胞の集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する。gRNAは限定されず、本明細書に記載の任意のgRNAであり得る(例えば、目的の遺伝子領域に結合するgRNA、目的の遺伝子領域に隣接する2つのgRNA)。いくつかの実施形態では、ウイルスは単一のgRNAを形質導入する。いくつかの実施形態では、ウイルスは2つのgRNAを形質導入する。
【0057】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルス(例えば、AAV)と対象とを接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、第1ウイルスと第2ウイルスとの比は、約1:3~約1:100であり、その間の比を含む。例えば、第1ウイルスと第2ウイルスとの比は、約1:5~約1:50、または約1:10、または約1:20であってよい。好ましくはないが、比は1:1であってもよいし、または第2ウイルスが多く存在してもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、第2のウイルスは、目的の遺伝子領域に隣接する2つのgRNA、または目的の遺伝子領域に結合する1つのgRNAをコードする。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、細胞集団における治療的遺伝子置換を可能にするために、対象への相同ドナー鋳型の投与をさらに含む。相同組換え(Homologous recombination)(HR)媒介修復(相同組換え(homology-directed)修復(HDR)とも称される)は、切断を修復するための鋳型として相同ドナーDNAを使用する。ドナーDNAの配列がゲノム配列と異なる場合、このプロセスにより、ゲノムに配列変化が導入される。
【0059】
別の実施形態では、この方法は、gRNAを送達するための単一のAAVと、第2の異なるCas9送達システムとを含む。例えば、Cas9(またはCpfl)送達は、非ウイルス構築物、例えば、「裸のDNA」、「裸のプラスミドDNA」、RNA、及びmRNAによって媒介され得る(例えば、ミセル、リポソーム、カチオン性脂質-核酸組成物、ポリグリカン組成物及び他のポリマー、脂質及び/またはコレステロールベースの核酸コンジュゲート、ならびに本明細書に記載されるものなどの他の構築物を含む、様々な送達組成物及びナノ粒子と併せて)。例えば、X.Su et al,Mol.Pharmaceutics,2011,8(3),pp774-787、ウェブ公開:2011年3月21日、WO2013/182683、WO2010/053572及びWO2012/170930(その両方が参照によって本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0060】
いくつかの実施形態では、修飾される細胞集団は、幹細胞集団である。いくつかの実施形態では、修飾される細胞集団は、組織幹細胞集団、機能的筋幹細胞集団、間葉系前駆細胞集団、Sca-1+間葉系前駆細胞、骨格筋集団における間葉系前駆細胞、真皮間葉系細胞集団、またはCD140a+真皮間葉系細胞集団である。いくつかの実施形態では、修飾される細胞集団は、造血幹細胞集団でも造血前駆細胞集団でもない。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される方法によって修飾されたゲノムを有する細胞の運命または機能を評価することをさらに含む。いくつかの実施形態では、修飾された細胞の細胞生着、自己複製及び/または分化機能を評価する。いくつかの実施形態では、修飾された細胞の筋原性、造血性、線維形成性、脂肪生成性、及び/または骨形成性の能力が評価される。いくつかの実施形態では、細胞の形
態、成長速度、生存率、代謝、及び/または転移能。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物は、疾患または状態を処置またはその可能性を低減する。本明細書に開示される方法は、標的ポリヌクレオチド配列の発現に関連する様々な障害(すなわち、疾患及び状態)を処置及び/または予防することを企図している。本明細書に記載の方法及び組成物を使用して、標的ポリヌクレオチド配列の発現の増大、標的ポリヌクレオチド配列の発現の減少、または細胞における標的ポリヌクレオチド配列の発現の欠如に関連する障害を処置または予防し得ることを理解されたい。標的ポリヌクレオチド配列の発現の増大及び減少としては、標的ポリヌクレオチド配列の発現レベルがそれぞれ増大または減少する状況、ならびに標的ポリヌクレオチド配列の発現産物の機能及び/または活性のレベルがそれぞれ、通常の発現及び/または活性レベルと比較して、増大または減少する状況が挙げられる。当業者は、標的ポリヌクレオチド配列(またはその発現産物)のレベル及び/または活性が本明細書に記載の組成物と細胞とを接触させた後、関連する細胞において減少するか否かを決定することによって、標的ポリヌクレオチド配列の発現の増大に関連する障害の処置または予防を評価し得ることを理解するであろう。当業者はまた、標的ポリヌクレオチド配列(またはその生成物の発現)のレベル及び/または活性が、本明細書に記載の組成物と細胞とを接触させた後、関連する細胞において増大したか否かを決定することにより、標的ポリヌクレオチド配列の発現低下に関連する障害の処置または予防(例えば、その可能性の低減)が評価され得ることも理解するであろう。
【0063】
いくつかの実施形態では、この障害は、遺伝性障害である。いくつかの実施形態では、この障害は、単一遺伝子障害である。いくつかの実施形態では、この障害は、多重遺伝子障害である。いくつかの実施形態では、この障害は、1つ以上のSNPに関連する障害である。1つ以上のSNPに関連する例示的な障害としては、米国特許第7,627,436号に記載されている複雑な疾患、PCT国際出願公開番号WO/2009/112882に記載されているアルツハイマー病、米国特許出願公開第2011/0039918に記載されている炎症性疾患、米国特許出願公開第2012/0309642号に記載されている多嚢胞性卵巣症候群、米国特許第7,732,139号に記載されている心血管疾患、米国特許出願公開第2012/0136039号に記載されているハンチントン病、欧州特許出願公開番号第EP2535424号に記載されている血栓塞栓性疾患、PCT国際出願公開番号WO/2012/001613に記載されている神経血管疾患、米国特許出願公開番号2010/0292211に記載されている精神病、米国特許出願公開番号2011/0319288に記載されている多発性硬化症、PCT国際出願公開番号WO/2006/023719A2に記載されている統合失調症、統合失調性感情障害、及び双極性障害、米国特許出願公開第2011/0104674号に記載されている双極性障害及び他の疾患、PCT国際出願公開番号WO/2006/104370A1に記載されている結腸直腸癌、米国特許出願公開第2006/0204969号に記載されているAKT1遺伝子遺伝子座に隣接するSNPに関連する障害、PCT国際出願公開第WO/2003/012243A1号に記載されている摂食障害、米国特許出願公開第2007/0269827号に記載されている自己免疫疾患、米国特許第7,790,370号に記載されているクローン病を有する患者における線維狭窄症、及び米国特許第8,187,811号に記載されているパーキンソン病(これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が挙げられる。本発明の方法に従って処置または予防され得る1つ以上のSNPに関連する他の障害は、当業者には明らかであろう。
【0064】
いくつかの実施形態では、この疾患または状態は、幹細胞または組織幹細胞を含む。いくつかの実施形態では、この疾患または状態は、修飾された機能的筋幹細胞で処置され得る。修飾された機能的筋幹細胞は、筋ジストロフィーなどの筋疾患または障害の処置を必要とする哺乳動物におけるそのような処置に使用し得る。筋ジストロフィーとしては、デ
ュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、筋強直性ジストロフィー(シュタイネルト病としても公知)、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSH)、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)、遠位筋ジストロフィー及びエメリー・ドレフス筋ジストロフィーが挙げられる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物は、虚血性疾患(例えば、心筋梗塞、肢虚血、脳卒中、一過性虚血、再灌流障害)神経障害(例えば、糖尿病性末梢神経障害、毒性神経障害)、肝不全、腎不全、糖尿病、骨及び関節の疾患、または幹細胞療法を必要とする任意の変性疾患の処置または予防に使用され得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物は、神経障害の処置を必要とする対象において、内皮細胞へ分化する能力を有する細胞(例えば、多能性幹細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、単核球、またはその前駆体もしくはその子孫)のゲノムをインサイチュで修飾することであって、この細胞が目的の神経組織における血管新生を増強することを含む、修飾することを含む神経障害の処置のために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物は、神経障害の処置を必要とする対象において、内皮細胞へ分化する能力を有する細胞(例えば、多能性幹細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、単核球、またはその前駆体もしくはその子孫)のゲノムをインサイチュで修飾することであって、この細胞が目的の神経組織の微小血管系にあり、血管新生、血管分布、または神経組織の生物学的機能を増大させることを含む、修飾することを含む神経障害の処置のために使用され得る。さらに別の実施形態では、この方法は、インサイチュで修飾されたゲノムを有する、内皮細胞へ分化する能力を有する細胞(例えば、多能性幹細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、単核球、またはその前駆体もしくはその子孫)を、それを必要とする対象において提供し、この細胞は、治療効果(例えば、パラクリン因子、神経栄養因子、血管新生因子の増大、または血管新生の増大)を発揮するのに十分な神経組織における体液性応答を増強する。
【0067】
別の実施形態では、本発明は、肝不全、腎不全、または糖尿病の処置を必要とする対象に対して、肝細胞、腎細胞、またはインスリン産生細胞(例えば、膵島細胞)に分化転換する可能性を有する細胞のゲノムをインサイチュで修飾し、この細胞が組織を修復または再生することを含む、肝不全、腎不全、または糖尿病を処置するための方法を提供する。
【0068】
いくつかの実施形態では、この疾患または状態は、骨格筋における修飾された間葉系前駆細胞で処置され得る。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、皮膚組織における修飾された真皮間葉細胞(CD140a+)で処置され得る。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、脂肪異栄養症(例えば、先天性全身性脂肪異栄養症(ベラジネリ-セイプ症候群)、家族性部分型脂肪異栄養症、マルファノイド早老性リポジストロフィー症候群、CANDLE症候群、後天性部分型脂肪異栄養症(バラケル-サイモン症候群)、遠心性腹部脂肪異栄養症(小児腹壁遠心性脂肪萎縮症)、環状脂肪萎縮(lipoatrophia annularis)(フェレイラマークス脂肪萎縮症(Ferreira-Marques lipoatrophia))、またはHIV関連脂肪異栄養症)である。いくつかの実施形態では、ゲノムがインサイチュで修飾された細胞は、組織美容、組織修復のために、または脂肪関連障害の処置のために使用される。
【0069】
本明細書で使用される場合、疾患、障害または病状に関連して使用される場合の「処置する」、「処置」、「処置すること」、または「改善」とは、状態の治療的処置を指し、この目的は、症状または状態の進行または重症度を逆転、軽減、改善、阻害、鈍化または停止することである。「処置すること」という用語は、状態の少なくとも1つの有害作用または症状を減少または軽減させることを含む。1つ以上の症状または臨床マーカーが減
少する場合、処置は一般に「効果的」である。あるいは、状態の進行が減少または停止する場合、処置は「効果的」である。すなわち、「処置」は、症状またはマーカーの改善だけでなく、処置が行われない場合に予想される症状の進行または悪化の停止または少なくとも遅延も含む。有益なまたは所望の臨床結果としては、処置が行われない場合に予想されるものと比較した場合に、1つ以上の症状(複数可)の軽減、欠損程度の縮小、安定した(すなわち、悪化しない)状態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
障害または疾患に対する所与の処置の有効性は、熟練した臨床医によって決定され得る。しかしながら、処置は、本用語が本明細書で使用される場合、障害の徴候または症状のうちいずれか1つまたは全てが有益な方法で変化される場合、他の臨床的に認められている症状が、例えば、本明細書に記載されるような薬剤または組成物を用いた処置後に少なくとも10%向上または改善する場合「効果的な処置」と見なされる。有効性はまた、個体が悪化(入院によって評価される)しないこと、または医学的介入を必要としない(すなわち、疾患の進行が停止している)ことによって測定され得る。これらの指標を測定する方法は当業者に公知であるか、及び/または本明細書に記載されている。
【0071】
本開示のいくつかの態様は、インビボで対象の筋幹細胞の集団のゲノムを修飾する方法に向けられており、この方法は、対象をウイルスと接触させることであって、このウイルスが、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を筋幹細胞の集団に形質導入することと、筋幹細胞集団のゲノムを配列標的化ヌクレアーゼで修飾することとを含み、このウイルスが静脈内注射によって対象に投与され、この修飾された筋幹細胞が筋原性能力を保持する。
【0072】
AAVは限定されておらず、本明細書に記載されているいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、このウイルスは、AAV8またはAnc80L65である。いくつかの実施形態では、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%以上の筋幹細胞の集団が、ウイルスによって形質導入される。いくつかの実施形態では、筋幹細胞の集団の少なくとも50%がウイルスによって形質導入される。
【0073】
配列標的化ヌクレアーゼは限定されるものではなく、本明細書に記載される任意の配列標的化ヌクレアーゼであってもよい。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ(例えば、saCas9)である。
【0074】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、細胞の集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する。gRNAは限定されるものではなく、本明細書に記載されるいずれであってもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと対象とを接触させることをさらに含む。第2のウイルスは限定されるものではなく、本明細書に記載されているいずれであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、この修飾は、突然変異の導入または修正を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、疾患(例えば、本明細書に記載の疾患)を処置、改善、または予防する。
【0077】
対象は限定されるものではなく、本明細書に記載される任意の対象であってもよい。いくつかの実施形態では、この対象はヒトである。いくつかの実施形態では、この対象はマウスである。
【0078】
本開示のいくつかの態様は、インビボで対象の間葉系前駆細胞の集団のゲノムを修飾する方法に向けられており、この方法は、対象をウイルスと接触させることであって、このウイルスが、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を、間葉系前駆細胞の集団に形質導入することと、間葉系前駆細胞集団のゲノムを配列標的ヌクレアーゼで修飾することと、を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞は、Sca-1+である。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞は、骨格筋に位置する。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞は、骨格筋に位置し、Sca-1+である。
【0080】
ウイルスは限定されておらず、本明細書に記載されているいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスは、AAV8、AAV9、またはAnc80L65である。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞の集団の少なくとも11%がウイルスによって形質導入される。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞の集団の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、またはそれ以上がウイルスによって形質導入される。いくつかの実施形態では、間葉系前駆細胞の集団の少なくとも20%がウイルスによって形質導入される。
【0081】
配列標的化ヌクレアーゼは限定されるものではなく、本明細書に記載されるいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼ(Cas9ヌクレアーゼ)である。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、Cas9ヌクレアーゼ(saCas9)である。
【0082】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと対象とを接触させることをさらに含む。第2のウイルスは限定されるものではなく、本明細書に記載されているいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、この修飾は、突然変異の導入または修正を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む。いくつかの実施形態では、修飾は、疾患(例えば、本明細書に記載の疾患)を処置、改善、または予防する。
【0083】
いくつかの実施形態では、ウイルスは、局所注射または静脈内注射を介して対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。対象は限定されるものではなく、本明細書に記載されるいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、対象はマウスである。
【0084】
本開示のいくつかの態様は、インビボで対象の真皮間葉細胞の集団のゲノムを修飾する方法に向けられており、この方法は、対象をウイルスと接触させることであって、このウイルスが、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を、真皮間葉系細胞の集団に形質導入することと、真皮間葉系細胞の集団のゲノムを配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと、を含む。
【0085】
ウイルスは限定されるものではなく、本明細書に記載されているいずれであってもよい
。いくつかの実施形態では、ウイルスは、AAV8である。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼ(例えば、Cas9ヌクレアーゼ)である。いくつかの実施形態では、配列標的化ヌクレアーゼは、saCas9ヌクレアーゼである。
【0086】
いくつかの実施形態では、この方法は、細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと対象とを接触させることをさらに含む。第2のウイルスは限定されるものではなく、本明細書に記載されているいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、この修飾は、突然変異の導入または修正を含む。いくつかの実施形態では、この修飾は、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む。いくつかの実施形態では、修飾は、疾患(例えば、本明細書に記載の疾患)を処置、改善、または予防する。対象は限定されるものではなく、本明細書に記載されるいずれであってもよい。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象はマウスである。
【0087】
「減少する(decrease)」、「減少する(reduce)」、「減少した」、「減少」、「減少する(decrease)」、及び「阻害する」という用語は全て、本明細書では一般に、参照と比較して統計的に有意な量の減少を意味するために使用される。しかしながら、誤解を避けるために、「減少する(reduce)」、「減少」または「減少する(decrease)」または「阻害する」は通常、参照レベルと比較した場合に少なくとも10%の減少を意味し、例えば、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、最大及び例としては、例えば、参照レベルと比較した場合に所与の実体もしくはパラメータの完全な欠如を含む減少、または所与の処置を行わない場合と比較して10~99%のいずれかの減少を含み得る。
【0088】
「増加した」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」という用語は全て、本明細書では一般に、統計的に有意な量の増加を意味するために使用され、あらゆる誤解を避けるために、「増加した」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」という用語は、参照レベルと比較した場合に少なくとも10%の増加を意味し、例えば、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは最大及び100%の増加、または参照レベルと比較した場合に10~100%のいずれかの増加、あるいは少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍もしくは少なくとも約10倍の増加、または参照レベルと比較した場合に2倍~10倍以上のいずれかの増加を意味する。
【0089】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、組成物、方法、及び方法または組成物に不可欠な、それらの各々の構成成分(複数可)に関連して使用されるが、不可欠であろうとなかろうと、指定されていない要素を含むことについて制限されない。
【0090】
「からなる」という用語は、本明細書に記載されるような組成物、方法、及びそれらの各々の構成成分を指し、これは実施形態のその記載に列挙されていない要素をいずれも除外する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要なそれらの要素を指す。本用語は、その実施形態の基本的かつ新規の、または機能的な特徴(複数可)に実質的には影響を及ぼさない要素の存在を許容する。
【0092】
「統計的に有意」または「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、一般に0.05を超える「p」値(関連の統計的検定によって算出される)を意味する。当業者は、任意の特定の実験に関連する統計的検定が、分析されているデータの種類に依存することを容易に理解することになる。追加の定義は、以下で個々の節の本文中において提供される。
【0093】
細胞生物学及び分子生物学の一般的な用語の定義は、“The Merck Manual of Diagnosis and Therapy”,19th Edition,Merck Research Laboratoriesにより出版,2006(ISBN0-911910-19-0)、RobertS.Porter et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,Blackwell Science Ltd.により出版,1994(ISBN0-632-02182-9)、The ELISA guidebook(Methods in molecular biology 149)by Crowther J.R.(2000)、Immunology by Werner Luttmann,Elsevierにより出版,2006に見出され得る。分子生物学の一般的な用語の定義は、Benjamin Lewin,Genes X,Jones&Bartlett Publishingにより出版,2009(ISBN-10:0763766321)、Kendrew et al.(eds.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により出版,1995(ISBN1-56081-569-8)及びCun-ent Protocols
in Protein Sciences 2009,Wiley Intersciences,Coligan et al.,edsにも見出され得る。
【0094】
別段の記載がない限り、本発明は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3ed.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2001)及びDavis et
al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(1995)に記載されているような、標準的な手順を使用して実施され、その両方とも、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は交換可能に使用され、隣接する残基のアルファ-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに連結された一連のアミノ酸残基を示す。「タンパク質」、及び「ポリペプチド」という用語は、そのサイズまたは機能にかかわらず、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)及びアミノ酸類似体を含む、タンパク質アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、比較的大きなポリペプチドに関連して多くの場合に使用されるのに対して、「ペプチド」という用語は、小さなポリペプチドに関連して多くの場合に使用されるが、当該技術分野においてこれらの用語の使用方法は重複する。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、遺伝子産物及びその断片を指す場合、本明細書では交換可能に使用される。
【0096】
したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質としては、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、断片及び他の等価物、バリアント、断片、ならびに前述の類似体が挙げられる。
***
【0097】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、または本開示を開示された正確な形式に限定することを意図するものではない。本開示の特定の実施形態、及びその実施例は、例示目的のために本明細書に記載されているが、関連分野の当業者が認識するとおり、様々な同等の修正が本開示の範囲内で可能である。例えば、方法のステップまたは機能が所与の順序で提示されているが、代替の実施形態は、異なる順序で機能を実施する場合があるか、または機能は実質的に同時に実施される場合がある。本明細書で提供される本開示の教示は、適宜、他の手順または方法に適用され得る。本明細書に記載される様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされ得る。本開示の態様は、必要であれば、上記の参考文献及び用途の組成物、機能及び構想を用いて、本開示のよりさらなる実施形態を提供するように修正され得る。これらの及び他の変更は、詳細な説明に照らして本開示で行われ得る。
【0098】
前述した実施形態のいずれかの特定の要素は、他の実施形態における要素と組み合わされ得るか、または置換され得る。さらに、本開示のある特定の実施形態と関連する利点が、これらの実施形態の文脈において記載されているが、他の実施形態もそのような利点を示す場合があり、全ての実施形態が、本開示の範囲内となるようにそのような利点を示す必要が必ずしもあるわけではない。
【0099】
全ての特許及び他の示された刊行物は、例えば、本発明と関連して使用される場合のあるそのような刊行物に記載される手法を記載かつ開示することを目的として、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。これらの刊行物は、本出願の出願日以前の、それらの開示のためにのみ提供される。この点で、本発明者らは、先行発明もしくは過去の刊行物によって、または他のいかなる理由によっても、そのような開示に先行する権利が付与されないことを認めるものと解釈されるべきではない。これらの文献の日付または内容に関する描写に関する記載の全ては、出願人に利用可能な情報に基づいているが、これらの文献の日付または内容の正確さについて認めるものではない。
【0100】
当業者は、本発明が、目的を実行し、言及された目的及び利点に加えて、それに固有のものを得るために十分に適合されていることを容易に理解する。本明細書における説明及び実施例の詳細は、ある特定の実施形態を代表するものであり、例示的であって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書における修正及び他の使用は、当業者であれば想定するものである。これらの修正は、本発明の趣旨内に包含される。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な置換及び修正が本明細書に開示される本発明に加えられる可能性があることが、当業者には容易に明らかとなる。
【0101】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書及び特許請求の範囲で本明細書において使用される場合、特に明確な反対の指示がない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。群の1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、特に反対の指示がない限り、またはさもなければ文脈から明らかでない限り、群のメンバーのうち1つ、2つ以上、または全てが、所与の製品またはプロセス中に存在する、それらに用いられる、またはさもなければそれらに関連する場合に満たされると考えられる。本発明は、群のうちの正確に1つのメンバーが、所与の製品またはプロセス中に存在する、それらに用いられる、またはさもなければそれらに関連する実施形態を含む。本発明はまた、群のメンバーのうち2つ以上、または全てが、所与の製品またはプロセス中に存在する、それらに用いられる、またはさもなければそれらに関連する実施形態を含む。さらに、本発
明は、別段の指示がない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることになると当業者に明らかでない限り、列挙されている請求項のうち1つ以上からの1つ以上の制限、要素、条項、記述用語などが、同じ基本請求項(または関連するような任意の他の請求項)に従属する別の請求項に導入される全ての変更、組合せ、及び順列を提供すると理解されるべきである。本明細書に記載される全ての実施形態は、該当する場合、本発明の全ての異なる態様に適用可能であることが企図される。実施形態または態様のいずれかは、該当する場合は常に、1つ以上の他のそのような実施形態または態様と自由に組み合わされ得ることも企図される。要素が一覧表として、例えば、マルクーシュ群または同様の形式で提示される場合、要素の各サブグループも開示され、いずれの要素(複数可)もこの群から除去され得ると理解されるべきである。一般に、本発明、または本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むと見なされる場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様が、そのような要素、特徴などからなるか、またはそれらから本質的になると理解されるべきである。簡潔にするために、それらの実施形態は、いずれの場合においても本明細書では多数の用語で具体的に記載されているわけではない。特定の除外が本明細書に列挙されているかどうかにかかわらず、本発明の任意の実施形態または態様が、特許請求の範囲から明示的に除外され得ることも理解されるべきである。例えば、任意の1つ以上の活性剤、添加剤、成分、任意の薬剤、生物の種類、障害、対象、またはそれらの組合せが除外され得る。
【0102】
特許請求の範囲または説明が組成物に関する場合、別段の指示がない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることになると当業者に明らかでない限り、本明細書に開示される方法のいずれかに従って組成物を作製または使用する方法、及び本明細書に開示される目的のいずれかのために組成物を使用する方法が、本発明の態様であると理解されるべきである。特許請求の範囲または説明が方法に関する場合、例えば、別段の指示がない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることになると当業者に明らかでない限り、方法の実施に有用な組成物を作製する方法、及び方法に従って生成された製品が本発明の態様であると理解されるべきである。
【0103】
範囲が本明細書で与えられる場合、本発明は、端点が含まれる実施形態、両方の端点が除外される実施形態、及び一方の端点が含まれ、他方が除外される実施形態を含む。別段の指示がない限り、両方の端点が含まれていると想定されるべきである。さらに、別段の指示がない限り、またはさもなければ文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、その文脈に別段の明確な指示がない限り、本発明の異なる実施形態に記載されている範囲内の任意の具体的な値または部分範囲を、その範囲における下限値の単位の10分の1まで想定し得ると理解されるべきである。一連の数値が本明細書に記載されている場合、本発明は、一連の任意の2つの値によって定義される任意の介在する値または範囲と同様に関連する実施形態、及び最小値が最小と見なされる場合があり、最大値が最大と見なされる場合がある実施形態を含むとさらに理解される。数値は、本明細書で使用される場合、パーセンテージで表される値を含む。数値の前に「約」または「およそ」が付く本発明の任意の実施形態では、本発明は、正確な値が列挙されている実施形態を含む。数値の前に「約」または「およそ」が付かない本発明の任意の実施形態では、本発明は、値の前に「約」または「およそ」が付く実施形態を含む。
【0104】
「およそ」または「約」は一般に、別段の記載がない限り、またはさもなければ文脈から明らかでない限り、いずれの方向にも(その数を超えて、またはその数未満で)1%の範囲内またはいくつかの実施形態では、数の5%の範囲内またはいくつかの実施形態では、数の10%の範囲内となる数を含む(そのような数が、可能な値の100%を許容できないほど超えてしまう場合を除く)。特に明確に反対の指示がない限り、2つ以上の行為を含む本明細書で請求される任意の方法において、方法の行為の順序は、方法の行為が列挙されている順序に必ずしも限定されるとは限らないが、本発明は順序がそのように限定
されている実施形態を含むと理解されるべきである。別段の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書に記載される任意の製品または組成物が、「単離されている」と見なされる場合があることも理解されるべきである。
【実施例0105】
実施例1
【0106】
ゲノム修飾酵素のインビボ送達により、治療への応用及び機能的な遺伝子スクリーニングが大いに期待できる。これに関連して、恒常性において、そして再生の合図に応答して、細胞置換の永続的な供給源を提供する内因性組織幹細胞への送達は、特に興味深い。ここでは、Creリコンビナーゼによって活性化される高感度蛍光レポーターシステムを利用して、内因性組織幹細胞におけるアデノ随伴ウイルス(AAV)によるインビボ形質導入後のゲノム修飾の効率を試験した。本発明者らは、免疫表現型分析と幹細胞機能の堅調なインビトロ及びインビボのアッセイを組み合わせて、複数のAAV血清型を使用して、組織に局在する骨格筋衛星細胞、間葉系前駆体、及び造血幹細胞の効果的な標的化を明らかにする。このアプローチによって達成されたゲノム修飾率は最大65%に達し、修飾された細胞は重要な機能特性を保持していた。この研究は、ネイティブの幹細胞の特性及び調節相互作用を維持しながら、生理学的ニッチ内の組織幹細胞を遺伝的に変化させる強力な新しいプラットフォームを確立する。
【0107】
全身AAV投与が成体動物の衛星細胞を形質導入し得るか否か、及びこのアプローチが追加のAAV血清型及び別個の組織幹細胞及び前駆体集団に拡張され得るか否かを本明細書に詳述するように調査した。AAV-Creのインビボでの全身送達後の成体マウス衛星細胞の効率的な形質導入が見出され、これは、全衛星細胞プールの60%超に達し、新生児マウスにおける本発明者らの以前の研究の6倍の増大を表している(Tabebordbar et al.,2016)。この形質導入能力は、AAV9に限定されるものではなく、AAV8及びAnc80L65(以下Anc80と呼ぶ)を含む追加のAAV血清型にも拡張される。また、骨格筋及び真皮の中の間葉系前駆体、ならびに骨髄の中の造血幹細胞及び前駆細胞を含む、複数の非筋原性幹細胞及び前駆細胞の形質導入及びゲノム修飾も本明細書に開示されている。その後の単離、分化、及び移植の研究により、標的化組織幹細胞は、インサイチュのAAV形質導入及びゲノム修飾後に再生機能を保持することが確認されている。まとめると、これらの研究は、成体哺乳動物におけるAAV送達を使用した、複数の解剖学的ニッチにわたる幹細胞及び前駆細胞の異なる系統の効率的なインビボのゲノム修飾を実証している。このシステムは、治療目的のための組織常在幹細胞におけるインビボでの遺伝子の活性化、破壊、及び編集戦略、ならびにトランスジェニックまたは内因性対立遺伝子を誘導または不活性化するアプローチを可能にして幹細胞及び前駆細胞のネイティブニッチ内のそれらの新規な分子調節因子を明らかにする。
【0108】
結果
【0109】
ゲノム修飾酵素のAAV9媒介性送達による、骨格筋幹細胞(衛星細胞)のインビボにおける遺伝子修飾の可能性は(Tabebordbar et al.,2016)、以前に実証された。その研究では、成体マウスにおけるAAV9-Creの筋肉内送達後の衛星細胞の実質的な形質導入(34~37%)が観察されたが、静脈内注射後の成体衛星細胞の形質導入率は測定されなかった(Tabebordbar et al.,2016)。
【0110】
ここでは、CMVプロモーター及びキメライントロンの下流にあるCreリコンビナーゼ(AAV-Cre)をコードする、血清型8、9、またはAnc80(Zinn et
al.,2015)がパッケージされたAAV粒子を生成し、若年生体(6週齢)Ai
9マウスに静脈内注射した(mdxバックグラウンド:mdx、Ai9マウス、
図1A)。Ai9対立遺伝子は、停止カセットのCre媒介性切除後、単一細胞の分解能で検出可能な、tdTomatoの蛍光による、標的化細胞の不可逆的な標識を可能にする、Rosa26-Lox-Stop-Lox-tdTomatoレポーターをコードする(Madisen et al.,2010)。AAV-Cre粒子は、2回の用量で、尾静脈または後眼窩洞のいずれかによって静脈内注射した(マウス1匹あたり5.5~8×10
11または2.2×10
12のウイルスゲノム(vg))。次に、注射の2~3週間後に、3つの明確に定義された再生成人前駆細胞集団(骨格筋衛星細胞、筋肉常在間葉系前駆細胞、ならびに骨髄に局在する造血幹細胞及び前駆細胞)におけるtdTomato蛍光の存在について組織を分析した(これらは全て、広範囲に検証された細胞表面マーカープロファイルによって容易に識別可能である)(Cerletti et al.,2008、Kiel et al.,2005、Maesner et al.,2016、Sherwood et al.,2004)。
【0111】
tdTomato
+筋衛星細胞(CD45
-CD11b(MAC-1)
-Ter119
-Sca-1
-β1インテグリン
+CXCR4
+細胞として定義される。
図5C(Cerletti et al.,2008、Maesner et al.,2016、Sherwood et al.,2004))は、静脈内注射の解剖学的位置(後眼窩または尾静脈)に関係なく、AAV-Creを注射した全ての動物(N=24マウス)で8~62%の範囲の頻度で検出され、これによって、AAVによるこれらの細胞のインビボ形質導入後の堅調かつ再現性のあるCre依存性組換えが示される(
図1B~1C)。ビヒクルを注射した対照(N=6)ではtdTomato
+細胞は検出されなかった(
図1B~1C)。同じ血清型のAAVを注射したマウスを比較すると、tdTomato
+衛星細胞の割合は、注射したAAVの用量とほぼ相関し、平均して、衛星細胞のプール全体の半分超が形質導入され、より高用量のAAV8-CreまたはAnc80-Creのいずれかで遺伝的に修飾された(
図1C)。これらの所見は、高用量AAV8-Creを注射した動物のサブセット(N=3)での免疫蛍光分析によって検証され、3つの異なるAAV-Creを注射したマウスから分析した30の切片のうち29においてtdTomato
+筋衛星細胞の存在が確認された(Pax7の発現と、基底膜の下のそれらの局在とを特徴とする(Seale et al.,2000))(
図5A)。注入されていない対照の切片では、tdTomato
+細胞は検出されなかった。3匹全ての動物にわたるこれらの顕微鏡データの定量化は、フローサイトメトリーによって得られた結果(
図1C)と同様に、tdTomato
+でもあるPax7
+衛星細胞の平均約34%を示した(
図5B)。興味深いことに、同じ筋肉から調製された異なる切片に存在するtdTomato
+Pax7
+筋肉衛星細胞の頻度の実質的な変動が観察され(
図5B)、AAV形質導入及びその後のゲノム修飾イベントが筋肉組織全体に均一に分布しない可能性があることを示唆している。
【0112】
次に、インビボでAAV形質導入及びゲノム修飾衛星細胞がそれらの筋原性能力を維持したか否か(
図1A)を調べた。AAV-Creを注射したマウスの筋肉から選別された衛星細胞は、エクスビボで培養した場合、増殖、分化、融合してtdTomato
+ミオシン重鎖(MHC)発現筋管を形成する能力を保持していた(
図2A)。融合筋管におけるtdTomatoシグナルの相対強度は、分類された集団の形質導入効率を反映しているようであり(FACSによって決定)、より高度に形質導入された集団は、視覚的に明るいtdTomato
+筋管を生成する(
図2A)。AAV-Creで形質導入されたtdTomato
+衛星細胞の摂動されていない増殖及び分化特性と一致して、筋原性遺伝子発現の相対的定量化は、tdTomato
-衛星細胞と比較した場合tdTomato
+衛星細胞におけるMyod1のわずかな(約25%)減少を伴う、同等レベルのPax7、Myf5、及びMyog発現を示した(
図5D)。最後に、AAVで形質導入された筋衛星細胞は、ストリンジェントなインビボ移植アッセイを使用して、筋原性幹細胞の特
性を保持していることが確認された。実際、tdTomato
+衛星細胞は、単離及び損傷前レシピエント筋肉への移植後に生着し、tdTomato
+筋線維を生成し(
図2C)、及び層下Pax7
+衛星細胞のプールを補充する(
図2B)能力を維持していた。まとめると、これらの結果は、成体動物における筋肉衛星細胞のインビボAAV形質導入後の主要な筋原性特徴及び衛星細胞機能の保持を確認している。
【0113】
衛星細胞コンパートメントに加えて、tdTomato
+細胞はまた、筋肉常在Sca-1
+間葉系前駆体のサブセット(8~46%の範囲)でも検出され、これらは分化して、異なる血清型のAAV-Creを注射した動物の筋肉内の脂肪細胞(Hettmer et al.,2011、Schulz et al.,2011、Sherwood et al.,2004、Tan et al.,2011)(
図5C、5F~5G)、及び筋肉浸潤性造血細胞のサブセット(CD45、Mac-1及び/またはTer119を特徴とする)(4~33%の範囲)を形成し得る(
図5C、5E)。CMVプロモーターの制御下でCreリコンビナーゼをコードするAAV6、AAV8、またはAAV9の全身投与を評価する別の実験では、同様に、筋肉衛星細胞(6~13%の範囲)及び筋肉に局在するSca-1
+前駆体(5~6%の範囲)の形質導入を示し、これは、このインビボ送達システムの再現性を強調している(表S1)。
【0114】
【0115】
最後に、AAV-Creを使用して筋肉前駆体を標的とする局所送達法を評価した。これらの研究では、筋肉衛星細胞をトランスジェニックにマークするPax7-ZsGreen対立遺伝子を保有するmdx、Ai9動物を使用した(
図6A)(Arpke et
al.,2013、Bosnakovski et al.,2008、Maesner et al.,2016)。血清型1、8、または9を使用した6×10
11vg/
マウスのAAV-Creを、直接筋肉内注射で送達し、全身送達の結果と同様に、AAV-Creの局所注射の3週間後の骨格筋の分析により、造血系統細胞(
図6B、33~62%の範囲)、Sca-1
+間葉系前駆体(
図6C、62~80%の範囲)、及び衛星細胞(
図6D、10~23%の範囲)のかなりの画分においてtdTomato発現が明らかになった。mdx筋肉でPax7レポーター対立遺伝子を使用して筋肉衛星細胞をマークするこの遺伝子アプローチは以前に適用されているが(Filareto et al.,2015、Tabebordbar et al.,2016)、Pax7-ZsGreen対立遺伝子がmdxマウスの一部の筋芽細胞を際立たせ得ることも否定できない。それにもかかわらず、全身AAV送達後に得られた結果と合わせて、これらのデータは、複数のAAV血清型による、ネイティブニッチ内の骨格筋前駆体及び間葉系前駆体へのゲノム修飾酵素の効率的で用量依存的かつ再現性のある形質導入及び送達を実証する。
【0116】
他の解剖学的ニッチにおける追加の幹細胞集団が同様に全身AAV投与によって標的化され得るか否かを決定するために、CreリコンビナーゼをコードするAAV8、AAV9またはAnc80を静脈内注射されたマウスから採取された骨髄細胞(
図3A)も分析した。検出可能なtdTomato発現は、免疫表現型で同定された造血幹細胞(HSC、Lin
-Sca-1
+c-kit
+CD48
-CD150
+として定義)内で観察された(
図3B~
図3C、範囲3~38%)。これらの結果は、尾静脈または後眼窩洞のいずれかを通じた静脈内送達を使用して再現可能であり(
図3C)、AAV6、AAV8、またはAAV9-Creを使用してCMV駆動Creを注射した別の実験で再現可能であった(表S1)。骨格筋衛星細胞での結果と同様に、骨髄HSCを、ウイルス力価と大まかに相関する効率で複数のAAV血清型によって形質導入及び修飾した(
図3C)。
【0117】
HSCに加えて、全身送達されたAAV-Creによる骨髄中のより方向付けられた造血前駆体の標的化を調査した。tdTomato蛍光は、一般的な骨髄前駆体(CMP、Lin
-Sca-1
-c-Kit
+CD34
+FcγR
低、4~26%の範囲)、顆粒球単球前駆体(GMP、Lin
-Sca-1-c-Kit
+CD34
+FcγR
+、5~17%の範囲)、及び巨核球赤血球前駆体(MEP、Lin
-Sca-1
-c-Kit
+CD34
-FcγR
-、2.5~12%の範囲)を含む骨髄前駆体の複数のサブセットで検出された(
図7B、
図7F~7H)。tdTomato
+細胞は、EryA細胞(好塩基性赤芽球、Ter119
+CD71
+FSC
高、23~74%の範囲)、EryB細胞(後期好塩基性及び多色性赤芽球、Ter119
+CD71
+FSC
低、9~20%の範囲)及びEryC細胞のごく一部(オルソクロマチック赤芽球及び網状赤血球、Ter119
+CD71
-FSC
低、0.8~2.5%の範囲)を含む系統を方向付けられた赤血球前駆体からも検出された(
図7A、7C~7E)。tdTomato
+系統が制限された造血前駆体の検出によって、これらの細胞がAAV-Creによって直接形質導入されたことか、またはAAV注射後14日以内により上流の前駆細胞から生じたことが示唆される。
【0118】
免疫表現型検査によって検出された、インビボで形質導入されたtdTomato
+HSCが、幹細胞の生着、自己複製、及び分化の能力を保持しているか否かを判断するために、AAV-Creによって形質導入されたHSCの長期再構成機能を評価するための厳密な一次及び二次移植アッセイを利用した。手短に言えば、Lin
低tdTomato
+骨髄細胞を、CD45.2アロタイプを発現するAAV-Cre注射Ai9マウスからFACSによって単離し、致死的に照射されたコンジェニックCD45.1
+レシピエントに移植した(
図3A)。末梢血キメラ現象の毎月の評価によって、全ての一次移植レシピエントの間で高レベルのドナー(CD45.2
+)細胞生着が明らかになった(
図3D)。さらに、全てのレシピエントは、移植後16週間で、複数の造血系統におけるtdTomato
+CD45.2
+ドナー由来末梢血細胞の永続的な寄与を示した(
図3E~I)。骨髄におけるtdTomato発現の分析によって、分析された46匹のレシピエント
マウスのうち45匹においてドナー由来のCD45.2
+tdTomato
+HSCの存在がさらに明らかになった(
図3J)。移植されたレシピエントにおけるtdTomato-CD45.2
+ドナー由来の末梢血細胞及びHSCの検出は、細胞純度よりも細胞収量を最大化するために、二重ではなく単回の選別の能力を反映している可能性が高い(
図3F~J)。
【0119】
次に、以前に生着された一次レシピエントマウスのサブセット(
図3A)からの骨髄細胞の二次移植を行った。二次レシピエント内のドナーキメラ現象レベルの分析によって、末梢血細胞の間で約20~80%の範囲が明らかになった(
図4A)。これらの二次レシピエントのうち、大多数は、移植後16週間でtdTomato
+ドナー細胞による多系統生着を示した(
図4B~
図4F)。さらに、tdTomato
+ドナー由来のHSCが、移植後4~5か月の二次レシピエントの骨髄で検出され(
図4G)、AAV-Creが、長命のオリゴリネージ前駆体ではなく、最初に注射された動物内で長期再構成HSCを実際に形質導入したという機能的証拠を提供する。(Busch et al.,2015、Sawai et al.,2016、Sun et al.,2014)。複数のAAV注射動物の骨髄で検出された、AAV血清型1、2、5、6、8、9、10及びAnc80の局所注射後のHSCの形質導入であって、免疫表現型で(
図8A~8B、表S2)及び機能的に(
図8C~8F)定義されたtdTomato
+HSCも評価した。
【0120】
表S2。
【0121】
【0122】
まとめると、これらのデータによって、配列特異的DNA修飾酵素をコードする任意の多数のAAV血清型の局所または全身注射が、最も原始的で長期の再構成HSCを含む内因性骨髄幹細胞及び前駆細胞の複数のサブセットの形質導入を可能にし得るという強力な証拠が提供される。この戦略によって、移植アッセイでアッセイされたように、ネイティ
ブニッチ内に存在する長期の再構成HSCの複数回の造血再生全体を通じて維持される不可逆的なゲノム修飾が可能になる。
【0123】
最後に、骨格筋と造血組織以外に分析を拡張するために、高用量のAAV8-Creを注射した動物のサブセットから皮膚組織を収集し、AAVの全身送達がこの明確に定義された解剖学的コンパートメント内の個別の前駆細胞集団を形質導入し得るか否かを評価した。骨髄分析から予想されるように、皮膚に局在する造血細胞内のtdTomato蛍光(CD45
+、7~22%の範囲、
図9A~9B、9H)が観察され、CD140a発現(Pdgfraとしても知られている)を特徴として皮膚線維芽細胞(
図9C)でも観察された(Collins et al.,2011)。フローサイトメトリーを使用して、評価されたtdTomato発現を、CD24とSca-1の組み合わせ発現によって区別可能な、CD45
-CD140a
+皮膚線維芽細胞の4つの集団内でさらに評価した(
図9A)(Zhang et al.,2016)。TdTomato蛍光は、脂肪細胞前駆体(CD24
+Sca-1
+、8~26%の範囲、
図9E、9H)、真皮乳頭細胞(CD24
-Sca-1
-、13~20%の範囲、
図9F、9H)、及び皮膚線維芽細胞の2つの集団(CD24
+Sca-1
-、2~4%の範囲、及びCD24
-Sca-1
+、16~27%の範囲、
図9D、9G、及び9H)を含むこれらの真皮サブセットのそれぞれで検出された。したがって、全身投与されたAAVは、表皮の恒常性及び再生をサポートする真皮脂肪及び結合組織の前駆体を含む、哺乳類の皮膚の複数の免疫表現型が異なる細胞集団を標的とする(Driskell et al.,2014で概説)。上記の骨格筋及び骨髄細胞集団の分析と一致して、これらのデータは、複数の異なる成体細胞系統及び解剖学的に異なる組織区画内で直接ゲノム修飾を達成するための全身AAV投与の幅広い有用性を示す。
【0124】
考察
【0125】
本研究では、インビボでの組織幹細胞集団内の永久的なゲノム修飾を可能にするためのAAVによるDNA修飾酵素の効率的な送達を立証した。この高度にプログラム可能なアプローチによって、3つの異なる解剖学的ニッチ(骨格筋、皮膚、及び骨髄)の幹/前駆細胞の4つの異なる系統(筋原性、造血、線維/脂肪生成、及び骨形成)における有効性を実証し、これは、CRISPR/Casベースのシステム(Tabebordbar et al.,2016)及び他の器官系及び種における追加の幹/前駆体集団を含む他のDNA修飾酵素に対して一般化可能である可能性が高い。
【0126】
このアプローチの明確な利点は、細胞の単離、培養、またはその後の移植を必要とせずに、インサイチュで幹細胞ゲノムを操作できることであり、これによって、ネイティブの調節相互作用及び現存する幹細胞の特性が維持される。このシステムはまた、エクスビボ幹細胞の修飾ならびにその後の移植に関連する課題及び毒性、例えば、インビトロ条件で堅牢な幹細胞機能を維持できないこと、アブレーションコンディショニングの必要な使用、及び移植片の失敗の避けられないリスクを軽減する(Morgan et al.,2017)。DNA修飾酵素で内因性組織幹細胞を直接形質導入する機会は、幹細胞における治療的遺伝子編集を目的とした現在進行中の学術的及び商業的取り組みに直接かつ特定の関連性があると予想され、その全てが、これまで、エクスビボでの修飾及び再注入のために幹細胞を精製する必要性があると考えている(Morgan et al.,2017)。
【0127】
この研究の重要な発見は、AAVがインビボで複数の成体組織幹細胞及び前駆細胞型を効率的に形質導入し得るということである。これらの結果は、AAVが局所または全身投与後の成体動物の骨格筋衛星細胞を効果的に形質導入しないと結論付けた以前の報告とある程度対照的である(Arnett et al.,2014、Chamberlain
and Chamberlain,2017、Chang et al.,2016)。これらの以前の研究の1つ(Arnett et al.,2014)では、CMV駆動のeGFPをコードするAAV6を4週齢のマウスに全身投与しても、注射の4週間後、検出可能なPax7+/eGFP+衛星細胞は得られなかった。一方、CMV-eGFPをコードするAAV6またはAAV9を8週齢のマウスに筋肉内投与すると、注射後2週間でPax7+/eGFP+衛星細胞が検出されなかったが、AAV8-CMV-eGFPを同様に投与したところ、eGFPを発現する衛星細胞コンパートメントはわずかとなった(<5%)(Arnett et al,2014)。これらの不一致の1つの可能性として考えられる説明は、この研究では、一過性の発現を示し得るAAVゲノムによってコードされる、導入されたeGFPタンパク質の発現を監視するのではなく、より感度の高いCre/lox駆動システムを利用して、AAV形質導入細胞及びその子孫におけるマウスゲノムからtdTomato蛍光を確実に駆動したことであり得る。最終的に、これらの結果によって、AAVが治療用遺伝子編集に必要な効率で衛星細胞を形質導入し得ることが実証される。注目すべきことに、AAV形質導入後に細胞が恒久的に修飾されるこのアプローチは、骨髄局在HSCを含む非筋原性幹細胞及び前駆細胞へのAAVカーゴの送達の検出も可能にした。健康なヒトCD34+造血細胞(AAVHSCと呼ばれる(Smith et al.,2014))における天然に存在するクレードF AAVバリアントの近年の検出は、このような細胞を形質導入し得るAAVの存在を示唆しているが、この報告書では、組換えAAVベクターによるこれらの細胞の効率的なインビボ形質導入が実証され、免疫表現型検査及び移植アッセイを使用して、形質導入後のHSC機能の保存が確認される。それでも、将来の研究では、AAV形質導入が幹細胞集団内のグローバルな遺伝子発現レベルに何らかの影響を与えるか否か、及びAAVが組織幹細胞の特定のサブセットを他のサブセットよりも優先的に形質導入するか否かを調査することが重要である。
【0128】
筋肉衛星細胞及びHSCを標的とすることに加えて、AAVがインビボで間葉系前駆細胞を形質導入するというこれらの発見は、この細胞集団にとって重要な潜在的用途を持っている。間葉系前駆体は、筋形成の十分に確立された調節因子であり(Joe et al.,2010)、老化及び筋肉疾患における線維症及び脂肪沈着の主要な原因に相当する(Joe et al.,2010、Lounev et al.,2009、Uezumi et al.,2014、Uezumi et al.,2010)。したがって、これらの細胞は、抗線維化介入に関して、またはそれらの筋原性活性を促進する操作に関しての潜在的な標的である。さらに、増殖、分化、または筋肉の栄養サポートにおける役割の調節因子を含む、これらの細胞の作用を支配する機構については現在ほとんど知られていないため、この細胞集団を標的とすることは、そのような機構を明らかにするのに、ならびに筋肉の維持及び再生の理解を進めるために、役立つ可能性があると予想される。これは次に、これらの細胞の有害な影響を軽減し、それらの筋原性活性を促進する治療的介入につながる可能性がある。そのような目的のためにこれらの細胞の遺伝子発現を操作するためにCreモデルを利用した多数の研究を考えると(Heredia et al.,2013、Kopinke et al.,2017、Lees-Shepard et al.,2018、Roberts et al.,2013)、このシステムは、遺伝子操作のための代替の、場合によってはより簡単なシステムを提供すると予想される。
【0129】
ここで説明するインビボのAAVシステムは、幹細胞機能を調べるための現在の実験システムに関連する重要な技術的及び実用的な制限を克服する。特に、一般的に採用されているトランスジェニック及び遺伝子ノックアウトベースのモデルは、複数の対立遺伝子を導入するために複雑な育種スキームを必要とすることが多く、時間及びリソースの両方に多大な投資を必要とする。このようなアプローチは、高齢の動物、非標準的な遺伝的背景、または組み合わせの方法で遺伝子標的化効果を評価する場合、さらに困難になる。対照
的に、プログラム可能なDNA修飾酵素のAAV媒介送達は、広範な動物の年齢及び系統にわたって、そして様々な個々の及び多重化された遺伝子座に適用され得る。さらに、ここで利用されるAAV-Cre戦略は、タモキシフェン誘導性Cre-(CreER)依存性遺伝子活性化/不活性化戦略への代替の補完的なアプローチを提供し、さらに研究者がホルモン投与の潜在的な交絡効果を回避し得るようにする(Patel et al.,2017)。したがって、この技術は、遺伝子の機能及び相互作用をインビボで及び組織前駆体で調べることができるペースを加速する上で、重要な用途を有する可能性が高い。本明細書に示される結果はまた、複数のAAV血清型が組織幹細胞及び前駆細胞に対して向性を示し、これによって特定の幹細胞集団を形質導入するAAVカプシドバリアントの同定、及びAAVにコードされた遺伝子の発現をこれらの細胞型のみに制限する天然に存在するかもしくは合成の遺伝子調節エレメントの同定を含む、より特異的かつ選択的なシステムの将来の開発の基盤を確立する。最終的に、このシステムは、幹細胞の表現型に特異的に影響を与えると疑われる候補及び未知の遺伝子標的の迅速かつ直接的なインビボスクリーニングを可能にするように適合され得る。
【0130】
STAR方法
【0131】
【0132】
実験モデル及び主題の詳細
【0133】
マウス
【0134】
マウスは、Harvard University(ハーバード大学)/Faculty of Arts and Sciences Biological Research Infrastructure(ファカルティーオブアーツアンドサイエンスバイオロジカルリサーチインフラストラクチャー)の動物施設に収容され、この施設は、実験動物管理公認協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)(AALAC)によって認定されている。全ての手順は、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)によって認可されたプロトコールのもとで行った。マウスは、ケージあたり最大5匹の密度で標準的な換気ラックに収容された。室温は22℃±1℃、湿度30~70%に維持された。マウスを12時間の明/暗サイクルで飼育し、餌及び水は自由に与えた。ブリーダーマウスは、照射されたPicoLabMouse Diet 20 5058(LabDiet,St.Louis,MO)で飼育し、非ブリーダーマウスは、照射されたLabDiet Prolab Isopro RMH 3000 5P75(LabDiet,St.Louis,MO)で飼育した。ケージには、1/4インチのAnderson’s Bed o Cob bedding(The Andersons,Inc.,Maumee,OH)を充填し、それぞれに1つのネストレット(2×2インチ四方の圧縮綿、Ancare,Bellmore,NY)及び1つの赤いマウスの小屋(認定ポリカーボネート、3 3/4インチ幅×1 7/8インチ高×3インチ長、BioServ,Flemington,NJ)を備えた。ケージの交換は、少なくとも14日ごとに、必要に応じてより頻繁に実行した。動物の健康サーベイランスは、インデックス動物のPCR試験及びラックプレナムからの綿棒を通して四半期ごとに実施した。
【0135】
C57BL/10ScSn-Dmdmdx/J(mdx、C57BL/10ScSnJバックグラウンド)、B6、129S6-Gt(ROSA)26Sortm9(CAG-tdTomato)Hze/J(Ai9、B6/129S6バックグラウンド)、B6.SJL-PtprcaPepcb/BoyJ(CD45.1、C57BL/6Jバックグラウンド)、B6.Cg-Tg(Pax7-ZsGreen)1Kyba/J(Pax7-ZsGreen、C57BL/6Jバックグラウンド)及びC57BL/6Jマウス系統をこの研究に使用した。mdx、Ai9ホモ接合マウスを生成するには、mdxマウスを、Ai9ホモ接合マウスと交配させた。mdx、Ai9マウスを、Pax7-Zsgreen マウスと交配させて、mdx、Ai9、Pax7-Zsgreen動物を生成した。Pax7-zsGreen対立遺伝子は、フローサイトメトリーによって骨格筋衛星細胞をマークするための複数の研究で広く検証されている(Arpke et al.,2013、Bosnakovski et al.,2008、Maesner et al.,2016)。動物は、実験群と対照群にランダムに割り当てた。実験に使用された全てのマウスは免疫能力があった。
【0136】
大腿骨内注射実験では、6~9か月齢の雄性及び雌性のAi9ホモ接合動物に、AAV-Creまたはビヒクルを注射した。注射の6週間後、マウスを安楽死させ、造血細胞をフローサイトメトリー分析及びFACSのために単離した。全身注射実験の場合、6週齢の雄性のmdx、Ai9ホモ接合マウスに、AAV-Creまたはビヒクルを、尾静脈または後眼窩の注射を介して注射した。注射の2週間後、マウスを採取し、肝臓、骨格筋、及び造血細胞を分析のために収集した。熟練したマウス病理学者(R.Bronson)によって盲検法で実施された、AAV-Cre及び対照注射動物のサブセットからの肝臓組織のヘマトキシリン及びエオシン染色切片の組織病理学的評価は、組織病理学の兆候を明らかにしなかった(
図10B)。
【0137】
造血細胞移植実験では、ホモ接合型CD45.1マウスの骨髄細胞を採取し、Sca-1を枯渇させてヘルパー骨髄に使用した。ホモ接合性CD45.1マウスを、一次及び二次造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC)移植のレシピエントとして使用した。HSPC移植後、レシピエント動物を、移植後4週間、0.67mg/mLのスルファジアジントリメトプリムを含む抗生物質水で飼育した。
【0138】
方法の詳細
【0139】
AAVの選択及び生産
【0140】
複数のAAV血清型を使用し、特に広範な生体内分布を伴う血清型に重点を置いた(Zincarelli et al.,2008)。大腿骨内注射実験では、7つのAAV血清型(1、2、5、6、8、9、及び10)のパネルを評価し、HSCを最も効率的に標的化したものを特定した。筋肉内注射実験には、3つのAAV血清型(1、8、9)のより小さなパネルを使用した。本発明者らは、全身注射実験ではAAV1では先に進まなかった。この理由は、他のAAV血清型よりも大きな炎症反応を誘発することが公知であり(Lu and Song,2009)、前臨床試験においても、疾患モデリングの適用でも有用性が制限され得るためである。全身注射実験のために使用されるAAV血清型の選択は、AAV9がインビボで効果的に筋衛星細胞を形質導入することを示している本発明者らの以前の研究に基づいていた(Tabebordbar et al.,2016)。予備分析(表S1)では、尾静脈注射によりAAV9を、さらに2つの血清型AAV6及びAAV8(両方とも、インビボ送達後に骨格筋を標的とすることが示されている)とも投与した(Blankinship et al.,2004、Wang et al.,2005)。これらの結果に基づいて、次に本発明者らは、AAV8及びAAV9の全身尾静脈投与を行い、また骨格筋または他の臓器に対して強い向性を持つ祖先のAAVであるAnc80L65も含み(Zinn et al.,2015)、CMVプロモーター及びキメライントロンの下流のCreリコンビナーゼを発現させた。後眼窩の全身AAV投与については、本発明者らは、特にAnc80及びAAV8に焦点を当て、これらは両方とも、尾静脈注射実験で血液幹細胞と筋肉幹細胞に対してより高い標的化効率を示した。さらに、より高濃度のAAVを注入すると、形質導入効率が向上するか否かを評価するために、AAV8を2回投与した。
【0141】
AAV8、AAV9、及びAnc80L65を使用した全身注射実験では、前述のように、Schepens Eye Research Institute(スケペンス眼研究所)及びMassachusetts Eye and Ear Infirmary(マサチューセッツ眼・耳病院)(SER/MEEI)のGrousbeck Gene Therapy CenterのGene Transfer Vector Core(GTVC)によってAAVの生成を行った(Lock et al.,2010、Zinn et al.,2015)。AAV血清型1、2、5、6、8、9、及び10を使用した大腿骨内注射実験では、AAVはUniversity of Pennsylvania Penn Vector Core(ペンシルベニア大学ペンベクターコア)で生成した。AAV6、AAV8、及びAAV9を使用した全身注射実験では、AAVの生成はUMASS医大のベクターコアによって行われた。
【0142】
筋幹細胞の単離及びインビトロ分化
【0143】
AAV-Creを全身注射したmdx、Ai9マウスからの筋幹細胞の単離は、以前に記載されたように実施した(Cerletti et al.,2008、Sherwood et al.,2004)。手短に言えば、前脛骨筋(TA)、腓腹筋、上腕三頭
筋、大腿四頭筋、及び腹筋をコラゲナーゼ及びディスパーゼで消化し、筋線維関連細胞を遠心分離によって単離した。細胞を、抗体ミックス(APC-Cy7抗CD45(1:200)、APC-Cy7抗CD11b(1:200)、APC-Cy7抗TERl19(1:200)、APC抗Sca-1(1:200)、FITC抗CD29(β1-インテグリン)(1:100)、ビオチン抗CD184(CXCR4)(1:100))を用いて氷上で30分間染色し、続いてストレプトアビジン-PE-Cy7(1:100)を用いて氷上で15分間で二次染色した。ヨウ化プロピジウム(PI)及びカルセインブルーを使用して、それぞれ死細胞と生細胞を識別した。CD45-CD11b(Mac-1)-Ter119-Sca-1-β1インテグリン+CXCR4+細胞は、筋衛星細胞としてFACSによって単離した。Sca-1+、CD45-CD11b-Ter119-細胞は、間葉系前駆体として単離した。系統(CD45、CD11b、Ter119)+細胞を、分析のためにLin+血液細胞としてゲーティングした。AAV形質導入筋肉から単離された衛星細胞のインビトロ増殖のために、衛星細胞を、20%ドナーウマ血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、及び1%グルタマックスを含むF10中でコラーゲン/ラミニンコーティングプレートに播種した。5ng/mlのbFGFを毎日培地に添加した。培地は1日おきに更新した。5日後、衛星細胞を回収し、細胞数をカウントし、分化のために細胞を96ウェルプレートの複数のウェルに再プレートした。翌日、培地を2%ドナーウマ血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシンを含むDMEMに交換した。筋管は、分化培地で60時間または72時間後に4%パラホルムアルデヒドで固定した。
【0144】
mdx、Pax7-ZsGreen+/-、Ai9マウスのAAV-Cre注射TA筋肉からの筋幹細胞の単離は、以前に記載されたように実施された(Tabebordbar et al.,2016)。簡単に説明すると、個々のTA筋肉を、はさみを使用して別々に細かく切り刻み、その後コラゲナーゼ及びディスパーゼでの2つの消化ステップを続けた。筋肉は消化ステップの間と後に粉砕された。ホモジネートを遠心分離し、再懸濁し、ろ過してから、次の回の遠心分離及び再懸濁を行った。細胞は、APC抗Sca-1(1:200)、APC-Cy7抗CD45(1:200)、APC-Cy7抗CD11b(Mac-1)(1:200)、及びAPC-Cy7抗Ter119(1:200)の抗体混合物で染色した。ヨウ化プロピジウム(PI)及びカルセインブルーを使用して、それぞれ死細胞と生細胞を識別した。CD45-CD11b(Mac-1)-Ter119-Sca-1-Pax7-ZsGreen+細胞は筋肉衛星細胞として単離した。このトランスジェニック系統は、フローサイトメトリーによる衛星細胞同定の問題に特に取り組んだ本発明者らの研究室からの研究を含む(Maesner et al.,2016)、筋肉衛星細胞の同定及び単離のための複数の研究で以前に使用されており、複数のグループによって広範な検証研究が行われている(Arpke et al.,2013、Bosnakovski et al.,2008、Maesner et al.,2016)。
【0145】
筋肉Sca-1+前駆体の単離及び脂肪生成分化
【0146】
AAV-Creを全身に注射したmdx、Ai9マウス由来のSca-1+前駆体(Sca-1+,CD45-CD11b(Mac-1)-Ter119-)単離物を以前に記載のように行った(Hettmer et al.,2011、Schulz et al.,2011、Tan et al.,2011)。簡単に説明すると、新たに選別したSca-1+細胞を、コラーゲン/ラミニンでコーティングした96ウェルプレートにプレートし、増殖培地(20%ドナーウマ血清、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、及び1%グルタマックスを含むF10)中で8日間増殖させて、毎日5ngのbFGFを提供し、新鮮な培地を1日おきに交換した。増殖培地で8日後、細胞を脂肪生成誘導培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、1mMデキサメタゾン、100nMインスリン、1mMロシグリタゾン及び0.5mMの3-イソブチル-1-メチルキ
サンチンを含むDMEM)に2日間切り替え、その後、脂肪生成分化培地(10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び100nMインスリンを含むDMEM)にさらに8日間切り替えた。培地は1日おきに交換し、細胞は、製造業者の指示に従ってBODIPY(商標)493/503で染色した。
【0147】
筋肉衛星細胞移植
【0148】
移植の1日前に、Naja pallida由来の10μM心臓毒素ガンマ25μLを、麻酔をかけた7~8週齢の雄性mdxレシピエントマウスの前脛骨(TA)筋に注射した。最大50,000個の単回選別のtdTomato+衛星細胞またはビヒクル(染色媒体)のみを、損傷前の前脛骨(TA)筋に注射した。注射したTA筋を、凍結切片化及び蛍光検出のために移植の3週間後に採取した。
【0149】
免疫蛍光
【0150】
インビトロで分化した筋管のミオシン重鎖(MHC)染色では、筋管を0.5%Triton X-100を使用して室温で15分間透過処理し、DPBSで2×5分間洗浄し、5%正常ヤギ血清2%BSA、2%タンパク質濃縮物(M.O.M.(商標)Basic kit)、及び0.1%tween-20を用いて室温で1時間ブロックした。細胞をDPBSで2×5分間洗浄し、抗骨格ミオシンII型(速い単収縮)(1:200)及び抗骨格ミオシンI型(遅い単収縮)(1:100)と4℃で一晩インキュベートし、DPBSで3×5分間洗浄し、ヤギ抗マウスIgG Alexa-488コンジュゲート二次抗体(1:250)とインキュベートした。DPBSで3×5分間洗浄した後、細胞を10mg/mlのHoechstで染色した。
【0151】
骨格筋組織の染色のために、前脛骨(TA)筋を切開し、すぐに1%PFAで室温で1時間固定し、DPBSで洗浄し、30%スクロースで4℃で一晩凍結保存した。次に、組織をO.C.T.化合物に包埋し、過冷却イソペンタンで凍結保存し、Leica CM1860クライオスタット(Leica Biosystems)を使用して切片化した。切片を2%PFAで5分間、後固定し、0.1Mグリシン緩衝液で5分間インキュベートし、0.3%Triton X-100/DPBSで20分間透過処理した。切片は10%のM.O.M.のIgGブロッキング試薬でブロックし、さらに1%のM.O.M.のIgGブロッキング試薬、3%のBSA、8%のM.O.M.タンパク質濃縮物、及び5%の正常ヤギ血清でブロックした。一次抗体染色は、抗Pax7(15μg/mL)及びウサギ抗ラミニン(1:200)を使用して4℃で一晩行った。翌日、切片を洗浄し、ヤギ抗マウスIgG1 Alexa Fluor 488(1:250)及びヤギ抗ウサギIgG H+L Alexa Fluor 647(1:250)で染色した。スライドには、DAPIを含むVectashield HardSet Antifade Mounting Mediumをのせ、Zeiss LSM 880倒立共焦点顕微鏡を使用して画像をキャプチャした。免疫蛍光分析によるPax7+tdTomato+層下細胞(sublaminar cell)の定量のために、60~80のPax7+層下細胞を、動物1匹あたり10 0.181mm2の視野で定量した。
【0152】
皮膚組織の染色のために、背部皮膚試料を室温で4%PFAを使用して15分間固定し、PBSで十分に洗浄し、4℃で一晩30%スクロースに浸し、O.C.T(Sakura Finetek)に包埋した。30μMの切片を1~2時間ブロックし(5%ロバ血清、1%BSA、2%冷水魚ゼラチンを含む0.3%Triton含有PBS)、抗CD140a(1:200)及び抗RFP(1:1000)抗体を、4℃で一晩、インキュベートし、ロバ抗ヤギIgG Alexa 488(1:400)またはロバ抗ウサギCy3(1:400)二次抗体と室温で2~4時間インキュベートした。対比染色にはDAP
Iを使用した。
【0153】
RNA単離、cDNA合成、リアルタイムPCR
【0154】
衛星細胞を直接Trizol LSに選別し、-80℃で保存した。全RNを製造元の指示に従って単離した。ezDNase酵素キットを含むSuperScript IV
VILOマスターミックスを使用してcDNAを合成した。定量的PCRは、QuantStudio 6 FlexリアルタイムPCRシステムで実行した。下記のTaqManアッセイを、相対的な遺伝子発現を評価するために使用した:Pax7(Mm01354484_m1)、Myf5(Mm00435125_m1)、Myod1(Mm00440387_m1)、Myog(Mm00446194_m1)及びGapdh(Mm99999915_g1)。
【0155】
HSPC単離及びフローサイトメトリー分析/FACS
【0156】
骨髄細胞を21ゲージの針で4つの長骨全て(2つの大腿骨及び2つの脛骨)から染色培地(2%FBSを含むHBSS)に洗い流し、再懸濁し、40μmのセルストレーナーでろ過した。細胞をペレット化し、氷上で5分間ACK溶解し(赤芽球前駆細胞を分析する場合を除く)、40μmストレーナーで再ろ過し、染色培地で洗浄した。
【0157】
AAVを注射したマウスからHSCを同定するために、細胞を以下の抗体で氷上で45分間染色した:CD3-ef450またはCD3-ビオチン(1:100)、B220-ef450またはB220-ビオチン(1:200)、Ter119-ef40またはTer119-ビオチン(1:100)、Gr-1-ef450またはGr-1-ビオチン(1:400)、CD11b-APCCy7(1:200)、c-Kit-APC(1:200)、Sca-1-PECy7(1:200)、CD48-FITC(1:200)、及びCD150-BV510(1:50)。ビオチン化抗体を使用した場合、細胞を洗浄し、ストレプトアビジン-ef450(1:200)とともに氷上で30分間インキュベートした。
【0158】
移植されたマウスからHSCを同定するために、細胞を氷上で45分間、以下の抗体で染色した:Lineage Cocktail-Pacific Blue(1:20)、c-Kit-APC(1:200)、Sca-1-PECy7(1:200)、CD48-FITC(1:200)、CD150-BV510(1:50)、及びCD45.2-AF700(1:100)。
【0159】
AAVを注射したマウスから骨髄系前駆体を同定するために、細胞を以下の抗体で氷上で60分間染色した:CD3-ef450またはCD3-ビオチン(1:100)、B220-ef450またはB220-ビオチン(1:200)、Ter119-ef40またはTer119-ビオチン(1:100)、Gr-1-ef450またはGr-1-ビオチン(1:400)、CD11b-APCCy7(1:200)、c-Kit-APC(1:200)、Sca-1-PECy7(1:200)、CD34-FITC(1:25)及びCD16/CD32-AF700(1:100)。ビオチン化抗体の場合、細胞を洗浄し、ストレプトアビジン-ef450(1:200)とともに氷上で30分間インキュベートした。
【0160】
AAVを注射したマウスから赤芽球前駆細胞を同定するために、細胞を以下の抗体を用いて氷上で30分間染色した:CD71-FITC(1:200)及びTer119-APC(1:200)。全てのHSPC染色パネルで、抗体/ストレプトアビジンのインキュベーション後に細胞を洗浄し、染色培地に再懸濁し、FACSの直前にSytox B
lue(1:1,000)を添加して死細胞をマークした。細胞を、BDLSR IIフローサイトメーターで分析し、BD FACS Aria IIで選別を行った。データ分析は、BD FACS Diva及びFlow Joソフトウェアを使用して実行した。
【0161】
HSPC移植
【0162】
各動物について、Lin低tdTomato+生骨髄細胞を、骨髄から10%FBSを含む染色培地中に単独で選別した。CD11b(Mac-1)の発現は、炎症またはストレスの特定の状況でHSCで増大することが報告されているため(Randall and Weissman,1997)、AAV投与後にこのマーカーの発現が変化する可能性があることに備えて、CD11bの発現に基づいて移植に使用されるtdTomato+骨髄細胞を選別しなかった。各ドナー動物由来の細胞を6×105個のSca-1枯渇放射線防護CD45.1ヘルパー骨髄細胞と組み合わせて、二匹の致死照射(950ラド、分割用量)CD45.1レシピエント動物に静脈内注射した(1レシピエントあたり3×105個のヘルパー骨髄細胞)。細胞は、28ゲージのインスリン注射器で後眼窩洞に注射した。
【0163】
Sca-1の枯渇は、ACK溶解CD45.1骨髄細胞を、Sca-1-APC(1:200)を用いて氷上で10分間染色すること、洗浄すること、及び抗APCマイクロビーズとともに氷上で20分間インキュベートすることによって行った。AutoMACS
Separator(Depletesプログラム)を使用して細胞を洗浄し、枯渇させた。枯渇効率は、フローサイトメトリー分析によって確認した。7-AAD(1:20)を生存率色素として使用し、分析の直前に細胞に添加した。
【0164】
末梢血採取及びフローサイトメトリー分析
【0165】
ドナーのキメラ現象及びtdTomato分析は、移植後4、8、12、16週間で一次及び二次移植レシピエントの末梢血試料から実施した。末梢血を尾静脈から100μLのPBS/10mMのEDTAを含む1.5mLチューブに採取し、氷上で保存した。1mLの2%デキストラン/PBSを試料に添加し、混合し、37℃で30分間インキュベートして、赤血球を沈殿させた。残りの細胞を洗浄し、氷上で5分間ACK溶解に供した。細胞を洗浄し、40μmセルストレーナーでろ過し、抗CD16/CD32(1:50)を含むHBSS/2%FBS/10mM EDTAに氷上で5分間再懸濁した。細胞を氷上で30分間、以下の抗体で染色した:CD3-PECy7(1:65)、B220-FITC(1:100)、CD11b-APC-Cy7(1:200)、Gr-1-ビオチン(1:400)、CD45.1-Pacific Blue(パシフィックブルー)(1:100)及びCD45.2-APC(1:100)。細胞を洗浄し、ストレプトアビジン-パシフィックオレンジ(1:500)で氷上で30分間染色した。細胞を洗浄し、HBSS/2%FBS/10mM EDTAに再懸濁し、分析の直前に7-AAD(1:20)を添加した。細胞をBD LSR IIフローサイトメーターで分析し、データ分析は、BD FACS Diva及びFlowJoソフトウェアを用いて行った。
【0166】
肝臓組織学
【0167】
肝臓組織を採取し、4%パラホルムアルデヒドで約24時間固定した後、70%エタノールに移した。試料は、ダナファーバー/ハーバードがんセンター(Dana-Farber/Harvard Cancer Center)のげっ歯類組織病理学コア(Rodent Histopathology Core)に提出し、パラフィンに包埋して、切片化し、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した。スライドは、げっ歯類の組織病理
学者によって盲検法で分析して、組織病理学についてスコア付けした。
【0168】
皮膚細胞の単離及びフローサイトメトリー分析
【0169】
マウスの背中の皮膚を切開した。切開した皮膚(真皮を下に向けた)を、HBSS中の0.25%コラゲナーゼ中で37℃で40~60分間インキュベートした。次に、外科用メスを使用して真皮をこすり落とした。回収した細胞を、350×g、4℃で8分間、遠心分離した。トリプシン-EDTAと37℃で10分間インキュベートすること、ならびに70μM及び40μMのフィルターでろ過することにより、単細胞懸濁液を得た。次に、単細胞懸濁液を、350×g、4℃で8分間遠心分離し、PBS中の5%FBSに再懸濁し、30分間染色した。次の抗体を使用した:CD45-ef450(1:250)、CD140a-ビオチン(1:250)、ストレプトアビジン-APC(1:500)、CD24-FITC(1:200)、及びSca-1-PerCPCy5.5(1:1000)。DAPIを使用して死細胞を除外した。血液系細胞はCD45+としてゲーティングされた。皮膚線維芽細胞は、CD45-CD140a+としてゲーティングし、次いでCD24及びSca-1の発現に基づいてさらに分割した。細胞はBD FACS Aria IIで分析し、データ分析はBD FACS Diva及びFlowJoソフトウェアを使用して実行した。
【0170】
定量化及び統計分析
【0171】
GraphPad Prismソフトウェアを用いて統計分析を行った。リアルタイムPCR分析では、対応のあるt検定を使用して2つの群間の統計的有意性を計算した。反復測定ANOVAを、ドナーのキメラ現象の縦断的分析に使用した。0.05未満のP値の結果は、統計学的に有意であると見なされた。複製に関する情報は、図の凡例で報告する。
【0172】
参考文献
【0173】
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【0223】
実施例2
【0224】
Dnmt3aまたは対照遺伝子座(Jak2)を標的とするStaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)Cas9(saCas9)+ gRNAを運ぶAAVを、2か月齢のC57BL/6マウスに注射した。4か月後、各処置群の1匹のマウスから肝臓及び骨髄を採取した。造血幹細胞(HSC)及び多能性前駆体(MPP)は、骨髄から単離されたFACSであった。さらに、Dnmt3a遺伝子座のゲノムDNAを、これらの細胞集団/臓器(肝臓、骨髄、HSC、及びMPP)のそれぞれから増幅し、配列決定した。
【0225】
結果
【0226】
図11Aは、編集された読み取りの割合、すなわち、gRNA標的化部位を含む増幅されたDnmt3a配列にインデルを含む配列決定読み取り%を示す。
図11Bは、WT読み取り%の割合、すなわち、野生型Dnmt3a配列にマッピングされる配列決定読み取り%を示している。
図11Aに示すように、gRNAを標的とするDnmt3aは、肝臓のDnmt3a遺伝子座の約30%の編集を導入する。インデルは、骨髄及びHSC及びMPPの集団の読み取りの約0.5%でも検出される。これらのインデルは、切断部位の周りに特徴的なCas9誘導インデルピークを示す(
図11C~
図11F)。Jak2を標的とするgRNAは、Dnmt3a編集を誘発せず、これはアプローチの特異性を示している。
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
前記細胞の標的化集団が、共通の骨髄系前駆体集団、顆粒球単球前駆体集団、巨核球赤芽球前駆体集団、多能性前駆体集団、及び系統を方向付けられた赤血球前駆体集団から選択される前駆細胞集団である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、請求項23~26のいずれか一項に記載の組成物。
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、請求項33~39のいずれか一項に記載の組成物。
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、請求項48又は49に記載の組成物。
「およそ」または「約」は一般に、別段の記載がない限り、またはさもなければ文脈から明らかでない限り、いずれの方向にも(その数を超えて、またはその数未満で)1%の範囲内またはいくつかの実施形態では、数の5%の範囲内またはいくつかの実施形態では、数の10%の範囲内となる数を含む(そのような数が、可能な値の100%を許容できないほど超えてしまう場合を除く)。特に明確に反対の指示がない限り、2つ以上の行為を含む本明細書で請求される任意の方法において、方法の行為の順序は、方法の行為が列挙されている順序に必ずしも限定されるとは限らないが、本発明は順序がそのように限定されている実施形態を含むと理解されるべきである。別段の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書に記載される任意の製品または組成物が、「単離されている」と見なされる場合があることも理解されるべきである。
[項1]
インビボで対象の細胞の標的化集団のゲノムを修飾するための方法であって、
a.前記対象をウイルスと接触させることであって、前記ウイルスは、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を、前記細胞の標的化集団に形質導入することと、
b.前記配列標的化ヌクレアーゼを用いて、前記細胞の標的化集団のゲノムを修飾することと、を含み、
前記細胞の標的化集団は、造血幹細胞でも造血前駆細胞でもない、前記方法。
[項2]
前記ウイルスがアデノ随伴ウイルス(AAV)である、項1に記載の方法。
[項3]
前記AAVが、前記細胞の標的化集団に対して向性を有する、項2に記載の方法。
[項4]
前記AAVが、細胞の非標的化集団に対して向性が低下しているか、または全くない、項2~3に記載の方法。
[項5]
AAVが、AAV血清型1、2、6、8、9、10またはAnc80L65である、項2~4に記載の方法。
[項6]
前記ウイルスが静脈内投与されるか、または前記細胞の標的化集団を含む組織に局所的に注射される、項1~5に記載の方法。
[項7]
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、項1~6に記載の方法。
[項8]
前記RNA誘導ヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、項7に記載の方法。
[項9]
前記ウイルスが、前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する、項1~8に記載の方法。
[項10]
前記対象を、前記細胞の標的化集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと接触させることをさらに含む、項1~9に記載の方法。
[項11]
前記第2のウイルスがAAVである、項10に記載の方法。
[項12]
前記AAVが、前記細胞の標的化集団に対して向性を有する、項11に記載の方法。
[項13]
前記AAVが、細胞の非標的化集団に対して向性が低下しているか、または全くない、項11~12に記載の方法。
[項14]
前記AAVが、AAV血清型1、2、6、8、9、10またはAnc80L65である、項1~13に記載の方法。
[項15]
前記細胞の標的化集団が幹細胞または前駆細胞である、項1~14に記載の方法。
[項16]
前記細胞の標的化集団が組織幹細胞である、項1~15に記載の方法。
[項17]
前記細胞の標的化集団が機能的筋肉幹細胞である、項1~16に記載の方法。
[項18]
前記細胞の標的化集団が骨格筋の間葉系前駆細胞(Sca-1+)である、項1~16に記載の方法。
[項19]
前記細胞の標的化集団が皮膚組織中の真皮間葉細胞(CD140a+)である、項1~16に記載の方法。
[項20]
前記細胞の標的化集団が、共通の骨髄系前駆体集団、顆粒球単球前駆体集団、巨核球赤芽球前駆体集団、多能性前駆体集団、及び系統を方向付けられた赤血球前駆体集団から選択される前駆細胞集団である、項1~16に記載の方法。
[項21]
前記修飾が、突然変異の導入または修正を含む、項1~20に記載の方法。
[項22]
前記修飾が、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む、項1~20に記載の方法。
[項23]
前記対象が、ヒトである、項1~22に記載の方法。
[項24]
前記対象がマウスである、項1~22に記載の方法。
[項25]
前記細胞の標的化集団の少なくとも40%がウイルスによって形質導入される、項1~24に記載の方法。
[項26]
インビボで対象の筋幹細胞の集団のゲノムを修飾するための方法であって、
a.前記対象をウイルスと接触させることであって、前記ウイルスは、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を前記筋幹細胞の集団に形質導入することと、
b.前記筋幹細胞の集団のゲノムを前記配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと、を含み、
前記ウイルスが静脈内注射によって前記対象に投与され、前記修飾された筋幹細胞が筋原性能力を保持している、前記方法。
[項27]
前記ウイルスがAAV8またはAnc80L65である、項26に記載の方法。
[項28]
前記ウイルスが、前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する、項26~27に記載の方法。
[項29]
前記筋肉幹細胞の集団の少なくとも50%が前記ウイルスによって形質導入される、項26~28に記載の方法。
[項30]
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、項26~29に記載の方法。
[項31]
前記RNA誘導ヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、項30に記載の方法。
[項32]
前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと前記対象とを接触させることをさらに含む、項26~31に記載の方法。
[項33]
前記修飾が、突然変異の導入または修正を含む、項26~32に記載の方法。
[項34]
前記修飾が、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む、項26~32に記載の方法。
[項35]
前記対象が、ヒトである、項26~32に記載の方法。
[項36]
前記対象がマウスである、項26~32に記載の方法。
[項37]
対象における間葉系前駆細胞の集団のゲノムをインビボで修飾するための方法であって、
a.前記対象をウイルスと接触させることであって、前記ウイルスが、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を前記間葉系前駆細胞の集団に形質導入することと、
b.前記間葉系前駆細胞の集団のゲノムを前記配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと
、を含む、前記方法。
[項38]
前記間葉系前駆細胞がSca-1+である、項37に記載の方法。
[項39]
前記間葉系前駆細胞が骨格筋に位置する、項37~38に記載の方法。
[項40]
前記ウイルスがAAV8、AAV9またはAnc80L65である、項37~39に記載の方法。
[項41]
前記ウイルスが、前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する、項37~40に記載の方法。
[項42]
前記間葉系前駆細胞の集団の少なくとも11%が前記ウイルスによって形質導入される、項37~41に記載の方法。
[項43]
前記間葉系前駆細胞の集団の少なくとも20%が前記ウイルスによって形質導入される、項37~41に記載の方法。
[項44]
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、項37~43に記載の方法。
[項45]
前記RNA誘導ヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、項44に記載の方法。
[項46]
前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと前記対象とを接触させることをさらに含む、項37~45に記載の方法。
[項47]
前記修飾が、突然変異の導入または修正を含む、項37~46に記載の方法。
[項48]
前記修飾が、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む、項37~46に記載の方法。
[項49]
前記ウイルスが、組織もしくは器官への局所注射または静脈内注射を介して前記対象に投与される、項37~48に記載の方法。
[項50]
前記ウイルスが、筋肉組織、脂肪組織、骨髄、または結合組織への局所注射によって投与される、項49に記載の方法。
[項51]
前記対象が、ヒトである、項37~50に記載の方法。
[項52]
前記対象がマウスである、項37~50に記載の方法。
[項53]
対象の真皮間葉細胞の集団のゲノムをインビボで修飾するための方法であって、
a.前記対象をウイルスと接触させることであって、前記ウイルスは、配列標的化ヌクレアーゼをコードする核酸配列を前記真皮間葉系細胞の集団に形質導入することと、
b.前記真皮間葉系細胞の集団のゲノムを前記配列標的化ヌクレアーゼで修飾することと、を含む方法。
[項54]
前記ウイルスが、AAV8である、項53に記載の方法。
[項55]
前記ウイルスが、前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列をさらに形質導入する、項53~54に記載の方法。
[項56]
前記配列標的化ヌクレアーゼが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、Creリコンビナーゼ、またはRNA誘導ヌクレアーゼである、項53~55に記載の方法。
[項57]
前記RNA誘導ヌクレアーゼがCas9ヌクレアーゼである、項56に記載の方法。
[項58]
前記細胞集団において1つ以上のgRNAをコードする核酸配列を形質導入する第2のウイルスと前記対象とを接触させることをさらに含む、項53~57に記載の方法。
[項59]
前記修飾が、突然変異の導入または修正を含む、項53~58に記載の方法。
[項60]
前記修飾が、相同性指向修復を介した突然変異の修正を含む、項53~59に記載の方法。
[項61]
前記対象が、ヒトである、項53~60に記載の方法。
[項62]
前記対象がマウスである、項53~60に記載の方法。
[項63]
前記ウイルスが皮膚に局所的に注射されるか、または静脈内に投与される、項53~62に記載の方法。