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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150539
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】圧迫療法システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A61B17/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024112466
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2022146812の分割
【原出願日】2017-05-19
(31)【優先権主張番号】62/341,894
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518193685
【氏名又は名称】アルジョ アイピー ホールディング アクチエボラグ
【氏名又は名称原語表記】Arjo IP Holding Aktiebolag
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ニュートン,マイケル デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】モリス,リース ジョン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に寝たきりのまたはその他の動かせないまたは運動障害のある患者のために、循環する血液の量を最大にできる圧迫療法を提供する。
【解決手段】流量増大システム10は、コントローラ14に接続された着衣12を有している。着衣12は、例えば導管またはリンケージ15を介して、コントローラ14との通信(例えば、流体、電気、信号、機械的など)を介して作動可能な圧迫要素16を有している。コントローラ14は、圧迫要素16を選択的に作動させて、患者の解剖学的構造に交互に圧力をかけたり解放したり、及び/又はそうでなければ、例えば、このために配置されたアクチュエータ18の使用により、筋肉を選択的に収縮させるよう構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管循環を促進するための装置であって、
患者の解剖学的構造を少なくとも部分的に囲むよう構成された着衣と、
前記着衣に結合され、前記圧迫要素が作動したときに前記解剖学的構造の少なくとも一部を圧迫するよう構成された圧迫要素と、
複数のサイクルにわたり前記圧迫要素を選択的に作動させるよう構成されたコントローラと、
を具えており、
各サイクルは、前記圧迫要素が第1の圧力をかけるよう構成される作動時間と、前記圧迫要素が前記第1の圧力とは異なる第2の圧力をかけるよう構成される非作動時間とを有しており、前記コントローラは、1又はそれ以上の前記サイクルの収縮時間を決定する際に1又はそれ以上の乱数値を使用するよう構成されることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記乱数値は、数学的アルゴリズムによって疑似ランダムに生成されることを特徴とすることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、
前記乱数値は、予め生成された値のリストから選択されることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置において、
前記乱数値は、前記装置の使用中にリアルタイムで前記コントローラによって計算され又は決定されることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置において、
前記乱数値は、最小限と最大限との間で規定される範囲内から選択されることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置において、
前記範囲は、異なるサイクル間で可変であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の装置において、
前記範囲を決定する際にパラメータが前記コントローラによって利用されることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記パラメータが、前記解剖学的構造、患者又は患者の状態もしくは状況、前記装置の使用中に前記解剖学的構造または患者が位置する周囲環境、患者を監視する別の医療機器、前記着衣の検出されたタイプ、モデル、製造業者、もしくはスタイル、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせに関係することを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の装置において、
前記パラメータを測定するセンサをさらに具えることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項6に記載の装置において、
1又はそれ以上の先行サイクルについての前記乱数値は、前記コントローラによって、後続サイクルについての前記範囲を決定するために使用されることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項5に記載の装置において、
前記範囲は、前記装置のユーザによって設定されることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の装置において、
前記コントローラによって膨張したときのチャンバ内の膨張圧力は、異なるサイクル間で可変であることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、
前記膨張圧力は、前記コントローラによってランダムに決定されることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項12に記載の装置において、
所定のサイクルの前記膨張圧力が、所定のサイクル、前のサイクル、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせの収縮長さに比例して前記コントローラによって設定されることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の装置において、
前記コントローラが、少なくとも1つの前記サイクルの前記収縮時間に対して所定の値を割り当てるよう構成されることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置において、
前記コントローラが、所定の値と予め設定されたパターン又は配列内のランダムに決定された値とを切り替えるよう構成されることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の装置において、
前記コントローラが、1組のサイクルのための1組の乱数値を決定し、前記1組の乱数値を強制的配列で配置することを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、
いくつかのサイクルの間、前記強制的配列は、値が増加し、値が減少し、比較的大きい値と比較的低い値との間で振動し、閾値、最小値もしくは最大値からの設定された偏差内であり、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせであることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の装置において、
前記解剖学的構造は、ふくらはぎ、大腿部、足部、脚部、腕部、手、腹部、臀部、もしくはこれらのうちの少なくとも1つの一部分、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせであることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の装置において、
前記圧迫要素は、膨張可能なチャンバを有することを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置において、
前記コントローラが、前記チャンバを膨張させるように構成されたポンプの一部を有するか又は形成することを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項21に記載の装置において、
前記ポンプは、ロータリーバルブ又はソレノイドバルブを有することを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれか一項に記載の装置において、
前記コントローラが、前記乱数値が選択される第1のモードと、前記乱数値が選択されない第2のモードとの間で切り替え可能に構成されることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか一項に記載の装置において、
前記コントローラが、2つの連続するサイクルの任意の組の収縮時間が同じでないように、複数のサイクルにおける各サイクルの収縮時間を提供するよう構成されることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項5乃至11のいずれか一項に記載の装置において、
前記最大限が、約30秒~約60秒であることを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項25に記載の装置において、
前記最大限が、約48秒であることを特徴とする装置。
【請求項27】
請求項5乃至11のいずれか一項に記載の装置において、
前記最小限が、約10秒~約40秒であることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項1乃至27のいずれか一項に記載の装置において、
前記膨張時間が約12秒であることを特徴とする装置。
【請求項29】
請求項12乃至14のいずれか一項に記載の装置において、
前記膨張圧力が約25mmHg~約65mmHgであることを特徴とする装置。
【請求項30】
着衣の膨張可能なチャンバを膨張させるためのポンプであって、
複数のサイクルにわたって前記チャンバを選択的に膨張させ及び収縮させるよう構成されたコントローラを具えており、
各サイクルが膨張時間及び収縮時間を有し、前記コントローラが、1又はそれ以上の前記サイクルの収縮時間に1又はそれ以上の乱数値を割り当てるよう構成されることを特徴とするポンプ。
【請求項31】
患者の解剖学的構造に圧迫療法を提供するための装置であって、
第1の圧迫圧力及び前記第1の圧迫圧力とは異なる第2の圧迫圧力を加えるよう構成された圧迫要素と、
複数のサイクルにわたって前記圧迫要素を選択的に作動させるよう構成されたコントローラであって、各サイクルは、前記圧迫要素が前記第1の圧迫圧力を加えている作動時間と、前記圧迫要素が前記第2の圧迫圧力を加えている非作動時間とを有しており、収縮時間が複数のうちの2つの連続するサイクルのいずれのセットに対しても同じではないように、前記サイクルのそれぞれについての前記収縮時間を常に可変に設定する、コントローラと、
を具えることを特徴とする装置。
【請求項32】
解剖学的構造の周囲に配置されるよう構成された圧迫帯のチャンバを膨張及び収縮させるためにポンプを使用するための方法であって、当該方法が、
複数のサイクルにわたって前記チャンバを選択的に膨張及び/又は収縮させるステップであって、各サイクルは膨張時間と収縮時間とを有する、ステップと、
1又はそれ以上のサイクルの前記収縮時間に対して1又はそれ以上の乱数値を割り当てるステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項33】
ヒトの解剖学的構造の周りに配置されるよう構成された圧迫装置を使用するための方法であって、
複数のサイクルにわたって圧迫要素を選択的に作動させるステップであって、各サイクルは、前記圧迫要素が第1の圧迫圧力を加えている作動時間と、前記圧迫要素が前記第1の圧迫圧力とは異なる第2の圧迫圧力を加えている非作動時間とを有する、ステップと、
収縮時間が前記複数のサイクルのうちの2つの連続するサイクルに対して同じではないように、1又はそれ以上の前記サイクルについて前記収縮時間を可変に設定するステップと、
を具えることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法において、前記収縮時間を可変に設定するステップが、前記1又はそれ以上のサイクルの前記収縮時間を決定する際に1又はそれ以上の乱数値を使用することを具えることを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項32および34のいずれか一項に記載の方法において、前記乱数値が、数学的アルゴリズムによって擬似ランダムに生成されることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項32および34のいずれか一項に記載の方法において、前記乱数値が、事前に生成されたリストの値から選択されることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項32乃至36のいずれか一項に記載の方法において、前記乱数値が、前記装置の使用中にリアルタイムで計算され又は決定されることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項32乃至37のいずれか一項に記載の方法において、前記乱数値が、最小限と最大限との間で規定された範囲内から選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法において、前記範囲が異なるサイクル間で可変であることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項38乃至39のいずれか一項に記載の方法において、
前記範囲を決定する際にパラメータが利用され、前記パラメータが、前記解剖学的構造、患者又は患者の状況もしくは状態、前記装置の使用中に前記解剖学的構造又は患者が配置される周囲環境、患者を監視する他の医療機器、前記着衣の検出されたタイプ、モデル、製造業者、もしくはスタイル、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせに関係することを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、センサを使用して前記パラメータを測定するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法において、1またはそれ以上の先行サイクルについての前記乱数値が、後続サイクルについての前記範囲を決定するために使用されることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項38に記載の方法において、前記範囲が前記装置のユーザによって設定されることを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項32乃至43のいずれか一項に記載の方法において、
膨張時の前記圧迫帯のチャンバ内の膨張圧力が異なるサイクル間で可変であることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法において、
前記膨張圧力がコントローラによってランダムに決定されることを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項44に記載の方法において、
所与のサイクルの前記膨張圧力が、所与のサイクル、先行サイクル、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせの収縮長さに比例してコントローラによって設定されることを特徴とする方法。
【請求項47】
ヒトの解剖学的構造の周りに配置されるよう構成された圧迫装置を使用するための方法であって、当該方法が、
複数のサイクルにわたって請求項1乃至29及び31のいずれか一項に記載の装置の圧迫要素を選択的に膨張させ及び/又は収縮させるステップを具えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
この国際特許出願は、2016年5月26日に出願された米国仮特許出願第62/341,894号の優先権の利益を主張するものであり、その全開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
深部静脈血栓症(「DVT」)および他の有害な医学的状態は、血液が停滞しているか、体内でうまく循環していない場合に起こり得る。この理由から、循環を増加させ、DVTおよびこれらの他の状態の発生を減少させるために、患者内の血流を促進するための治療法が開発されている。一例として、圧迫治療が、当該技術分野において知られており、膨張式着衣(例えば、スリーブ)内の患者のふくらはぎ、大腿部、足部、または他の解剖学的構造を包み、着衣を周期的に膨張且つ収縮させることによって行われ、膨張によって圧迫されたときに患者の四肢内の筋肉組織および循環血管からの血液の排出を強制し、それにより患者内の血流を促進する。患者の静脈は、着衣がサイクルの収縮期にあるときに血液を補充する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのような療法の1つの目的は、特に寝たきりのまたはその他の動かせないまたは運動障害のある患者のために、循環する血液の量を最大にすることである。しかしながら、圧迫療法の場合、各患者は、各膨張-収縮サイクルに対して異なる「理想的な」または所望の時間を有しており、例えば、異なる生理機能、年齢、傷害、移動性、または健康状態の患者が、いくつかのケースで、著しく異なるサイクル時間を要する。患者のモニタリングの進歩にもかかわらず、すべての解剖学的領域に対する各患者の静脈補充時間を正確にまたは手頃な価格で連続的に決定し、これにより、最適な形態の圧迫治療を提供することは、非実用的なままとなっている。これは、特に、患者集団全体にわたって見出された変異が考慮される場合、および臨床効果/状況による所与の患者の循環機能の関連する変動が考慮される場合に最も顕著である。コストと結果の両方において、様々な生理機能および状態の患者がますます増加していることをより効果的に処理することが、医学分野において常に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
例示的な実施形態による血管循環を促進するための装置が、患者の解剖学的構造を少なくとも部分的に囲むように構成された着衣と、前記着衣に結合され、前記圧迫要素が作動されたときに前記解剖学的構造の少なくとも一部を圧迫するよう構成された圧迫要素と、複数のサイクルにわたり圧迫要素を選択的に作動させるよう構成されたコントローラと、を有しており、各サイクルは、前記圧迫要素が第1の圧力をかけるよう構成される作動時間と、前記圧迫要素が前記第1の圧力とは異なる第2の圧力をかけるよう構成される非作動時間とを有しており、前記コントローラは、1又はそれ以上の前記サイクルの収縮時間を決定する際に1又はそれ以上の乱数値を使用するよう構成される。
【0005】
例示的な実施形態による着衣の膨張可能なチャンバを膨張させるためのポンプが、複数のサイクルにわたって前記チャンバを選択的に膨張させ及び収縮させるよう構成されたコントローラを有しており、各サイクルが膨張時間及び収縮時間を有し、前記コントローラが、1又はそれ以上の前記サイクルの収縮時間に1又はそれ以上の乱数値を割り当てるよう構成される。
【0006】
例示的な実施形態による患者の解剖学的構造に圧迫療法を提供するための装置が、第1の圧迫圧力と、前記第1の圧迫圧力とは異なる第2の圧迫圧力を加えるよう構成された圧迫要素と、複数のサイクルにわたって圧迫要素を選択的に作動させるように構成されたコントローラであって、各サイクルは、前記圧迫要素が第1の圧迫圧力を加えている作動時間と、前記圧迫要素が前記第2の圧迫圧力を加えている非作動時間とを有しており、収縮時間が複数のうちの2つの連続したサイクルのいずれのセットに対しても同じではないように、前記サイクルのそれぞれについての前記収縮時間を常に可変的に設定する、コントローラとを有する。
【0007】
例示的な実施形態による解剖学的構造の周囲に配置されるように構成された圧迫帯のチャンバを膨張及び/又は収縮させるためにポンプを使用するための方法が、複数のサイクルにわたって前記チャンバを選択的に膨張及び/又は収縮させるステップであって、各サイクルは膨張時間と収縮時間とを有する、ステップと、1又はそれ以上のサイクルの前記収縮時間に対して1又はそれ以上の乱数値を割り当てるステップと、
を含む。
【0008】
例示的な実施形態によるヒトの解剖学的構造の周りに配置されるように構成された圧迫装置を使用するための方法が、複数のサイクルにわたって圧迫要素を選択的に作動させるステップであって、各サイクルは、前記圧迫要素が第1の圧迫圧力を加えている作動時間と、前記圧迫要素が第1の圧迫圧力とは異なる第2の圧迫圧力を加えている非作動時間とを有する、ステップと、収縮時間が前記複数のサイクルのうちの2つの連続するサイクルに対して同じではないように、1又はそれ以上の前記サイクルについて前記収縮時間を可変に設定するステップと、を含む。任意選択的に、前記収縮時間を可変に設定するステップが、前記1またはそれ以上のサイクルの前記収縮時間を決定する際に1またはそれ以上の乱数値を使用することを含む。
【0009】
本明細書に記載の任意の実施形態において、1又はそれ以上の乱数値は、数学的アルゴリズムによって疑似ランダムに生成される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記1又はそれ以上の乱数値は、予め生成された値のリストから選択される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記乱数値は、前記装置又はポンプの使用中にリアルタイムで前記コントローラによって計算され又は決定される。本明細書に記載の任意の実施形態において、乱数値は、最小限と最大限との間で規定される範囲内から選択される。本明細書に記載の任意の実施形態において、乱数値の範囲は、異なるサイクル間で可変である。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記範囲を決定する際にパラメータが前記コントローラによって利用される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記パラメータが、前記解剖学的構造、患者又は患者の状態もしくは状況、前記装置またはポンプの使用中に前記解剖学的構造または患者が位置する周囲環境、患者を監視する別の医療機器、前記着衣の検出されたタイプ、モデル、製造業者、もしくはスタイル又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせに関係する。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記装置又はポンプが、前記パラメータを測定するセンサをさらに具える。本明細書に記載の任意の実施形態において、1又はそれ以上の先行サイクルの前記乱数値は、前記コントローラによって、後続サイクルの前記範囲を決定するために使用される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記乱数値の範囲は、前記装置又はポンプのユーザによって設定される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記コントローラによって膨張したときの前記装置のチャンバ内の膨張圧力は、異なるサイクル間で可変である。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記膨張圧力は、前記コントローラによってランダムに決定される。本明細書に記載の任意の実施形態において、所定のサイクルの前記膨張圧力が、所定のサイクル、前のサイクル、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせの収縮長さに比例してコントローラによって設定される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記コントローラが、少なくとも1つの前記サイクルの前記収縮時間に対して所定の値を割り当てるよう構成される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記コントローラは、所定の値と予め設定されたパターン又は配列内のランダムに決定された値とを切り替えるよう構成される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記コントローラは、1組のサイクルのための1組の乱数値を決定し、前記1組の乱数値を強制的配列で配置する。本明細書に記載の任意の実施形態において、いくつかのサイクルの間、前記強制的配列は、値が増加し、値が減少し、比較的大きい値と比較的低い値との間で振動し、閾値、最小値もしくは最大値からの設定された偏差内であり、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせである。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記解剖学的構造は、ふくらはぎ、大腿部、足部、脚部、腕部、手、腹部、臀部、もしくはこれらのうちの少なくとも1つの一部分、又はこれらのうちの少なくとも1つを含む組み合わせである。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記圧迫要素は、膨張可能なチャンバを有する。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記コントローラが、前記チャンバを膨張させるように構成されたポンプの一部を有するか又は形成する。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記装置又はポンプは、ロータリーバルブ又はソレノイドバルブを有する。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記コントローラが、前記乱数値が選択される第1のモードと、前記乱数値が選択されない第2のモードとの間で切り替え可能に構成される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記コントローラが、2つの連続するサイクルの任意の組の収縮時間が同じでないように、複数のサイクルにおける各サイクルの収縮時間を提供するよう構成される。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記装置又はポンプの乱数値の範囲の最大限は、約30秒~約60秒である。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記装置又はポンプの乱数値の範囲の最大限が、約48秒である。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記装置又はポンプの乱数値の範囲の最小限が、約10秒~40秒である。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記装置又はポンプの膨張時間が約12秒である。本明細書に記載の任意の実施形態において、前記装置又はポンプの膨張圧力が、約25mmHg~約65mmHgである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下の説明は、決して限定的であると見なされるべきではない。添付の図面を参照して、同様の構成要素は同様に番号付けされる。
【0011】
図1図1は、圧迫療法システムの1サイクルにわたる代表的な「正常な」患者集団の時間に対する静脈圧を図式的に示す。
図2図2は、圧迫療法の1サイクルにわたって静脈還流を有する代表的な患者集団についての時間に対する静脈圧を図式的に示す図である。
図3図3は、本明細書に開示される一実施形態による圧迫治療システムを概略的に示す。
図4図4は、本明細書に開示される別の実施形態による圧迫治療システムを概略的に示す。
図5図5は、本明細書に開示される一実施形態による圧迫治療システム用の圧迫着衣の分解図である。
図6図6は、図1のグラフを示し、サイクルタイムの最小および最大限を示す。
図7図7は、本明細書に開示される別の実施形態による圧迫治療システムを概略的に示す。
図8図8は、本明細書に開示される別の実施形態による圧迫治療システムを概略的に示す。
図9図9は、256回のランダムな圧迫サイクルのサイクル時間を順次示すレーダープロットである。
図10図10は、ランダムに生成された値に使用することができる強制配列の例の説明を容易にするための図である。
図11図11は、乱数値の配列を生成するよう構成された線形フィードバックシフトレジスタの図である。
図12図12は、本明細書に開示される一実施形態による圧迫治療システムを動作させる方法を示すフローチャートである。
図13図13は、本明細書に開示される別の実施形態による圧迫治療システムを動作させる方法を示すフローチャートである。
図14図14は、本明細書に開示される別の実施形態による圧迫治療システムを操作する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示された装置および方法の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明は、例示を目的として本明細書に示され、図面を参照して限定されるものではない。
【0013】
図1および図2は、代表的な正常な健康な患者および静脈還流を有する患者それぞれについて、患者の四肢における静脈圧を時間の経過とともに示す例示的なプロットを示す。図1および図2のそれぞれは、仮想の患者集団における患者の平均的結果に対応し、これらの結果は、議論のためにのみ含まれており、限定することを意図するものではないことに留意されたい。各プロットの左側部分(時間が0秒未満の場合)は、モニタリングされている静脈を取り囲む筋肉の通常の使用(例えば、運動)によって生じるような最小値まで低下する静脈圧を示す。圧力降下は、静脈を圧迫して血液を強制的に循環させる周囲の筋肉の使用により、静脈内の血液が押し出され又は締め出された結果である。筋肉の使用が止まった後、静脈は再び血液を補充し、それにより各プロットの右側部分(時間が0より大きい場合)に示すように、静脈圧を最大に戻すようにする。
【0014】
寝たきりの、またはそれ以外の障害を有する患者のための筋肉使用または運動は、この同じ効果を達成するための圧迫療法、すなわち静脈を圧迫して体内で血液を強制的に循環させることによって一般にシミュレートされる。したがって、図1および図2のそれぞれは、着衣が上述のように交互に膨張及び収縮する圧迫療法中の1つの膨張-収縮サイクルを表すことに留意されたい。議論を容易にするために、着衣が膨張されるサイクル中の時間の長さは、本明細書では「膨張時間」と称され、一方、着衣が収縮するサイクル中の時間の長さは、「収縮時間」と称される。圧迫後に患者の静脈が完全に補充されるのに必要な時間量は、ここでは患者の「静脈補充時間」と称される。
【0015】
図1図2の比較により理解されるように、静脈還流時間は、静脈還流がない患者(例えば、図1のように約45秒長い)よりも、静脈還流患者(図2に示す約10乃至20秒)の方が顕著に短い。静脈補充時間におけるこのような不一致にもかかわらず、現在市販されているDVT圧迫治療システムは、典型的には、図1によって表される「通常の」補充時間によって決定される固定サイクル時間で設定される。例えば、一般に利用されるサイクル時間は、カーフベースの圧迫療法の場合は60秒の固定サイクル時間であり、膨張/圧迫に12秒、収縮補充に48秒が使用される。対照的に、静脈還流を有する患者は、わずか10秒以内に完全に補充された静脈を有し得る。60秒の固定サイクル時間は、議論の便宜のために全体にわたって使用されており、限定的であるとみなされるべきではない。
【0016】
図3は、流量増大システム10を概略的に示している。システム10は、圧迫治療システムと見なすこともできるし、圧迫療法システムと呼ぶこともできる。増大した及び増大とは、当該システムを利用する患者の血管流体の体積流量が、流量増大システムを含まない場合に発生するであろう量に対して増加することを意味する。一実施形態では、動脈血流、リンパ液流などの他の流体もシステム10の使用によって改善されることが理解されるべきであるが、血管流体流は血流、具体的には静脈血流を含む。この理由から、本明細書の方法によって多くの血管流体の増加した又は増大した循環が促進されるので、静脈血流に関する本明細書の議論は一般に他の血管流体にも適用されることが理解されるべきである。上記の議論に従って、システム10の1つの目標は、代表的な患者集団内の最大数の患者について達成された拡張血流の平均量を増加させることである。
【0017】
システム10は、コントローラ14に接続された着衣12を有している。着衣12は、例えば導管またはリンケージ15を介して、コントローラ14との通信(例えば、流体、電気、信号、機械的など)を介して作動可能な圧迫要素16を有している。コントローラ14は、圧迫要素16を選択的に作動させて、患者の解剖学的構造に交互に圧力をかけたり解放したり、及び/又はそうでなければ、例えば、このために配置されたアクチュエータ18の使用により、筋肉を選択的に収縮させるよう構成されている。典型的には、市販の圧迫治療システムは、ポンプによって選択的に膨張する膨張可能なチャンバを有している。したがって、一実施形態では、アクチュエータ18は、1またはそれ以上のローラ、ベーン、ギア、ネジ、スクロール、ソレノイドまたは電磁部品、ダイアフラム、ラム、プランジャなどのポンプ機構、又は加圧流体を送達するために当該技術分野において既知の又は発見された他の任意の機構の形態をとり得る。一実施形態では、圧迫要素16は1又はそれ以上の電気接点を含み、患者の解剖学的構造又は筋肉組織の圧迫は、電気刺激を介して達成され、これにより、例えば、患者の筋肉組織が選択的に収縮する。コントローラ14全体は、単一のハウジングまたは容器内に収容されてもよく、そうでなければ、通信方式で一緒に結合されてもよいことが想定されているので、圧迫要素16が膨張可能なチャンバであり、アクチュエータ18がポンプ機構であるかまたはポンプ機構を含む場合、コントローラ14全体は、「ポンプ」として配置され、または「ポンプ」と称され得る。圧迫要素が膨張可能なチャンバの形態をとる場合、圧迫要素16の膨張および収縮を容易にするために、任意の数および構成の弁を追加的または代替的に含めることができる。ポンピング機構と膨張可能なチャンバとの間で連通可能な膨張流体として、任意の所望の気体(例えば、周囲空気)、液体、または流動性固体(例えば、ビーズ)を使用することができる。
【0018】
しかしながら、患者に対して可変圧力を及ぼすことができる任意の数の他の機構および構成が存在することに留意されたい。例えば、圧迫要素16、導管またはリンケージ15、および/またはアクチュエータ18は、1又はそれ以上のローラ、カム、フィンガ、プランジャ、モータ、クランクシャフト、偏心的に取り付けられた継手、ばね、形状変化または形状記憶材料(熱、光、化学物質などの特定の刺激に応答する2又はそれ以上の形状または構成間の遷移)、圧電アクチュエータ、または、第1の圧力をかけかつ第1の圧力とは異なる第2の圧力をかける(全く圧力をかけない)ような非作動時に患者から離脱するときに、患者の解剖学的構造に対して選択的または代替的に物理的に接触するように駆動される他の構成要素として構成されてもよく、またはこれらの構成要素を含んでいる。
【0019】
典型的な市販の圧迫療法システムは前述の膨張可能なチャンバを使用するため、説明を容易にするために、これらの交互に起きる作動/非作動状態は、非膨張式システムが使用されている場合であっても、それぞれ、本明細書では「膨張」および「収縮」の議論に対応すると理解され得る。したがって、前述の「膨張時間」はまた、圧迫要素の作動時間に対応する(すなわち「作動時間」および「膨張時間」はいずれも同じ意味で、構成にかかわらず圧迫要素が作動して患者に対して増大した力または圧力を加える時間を指している)一方、前述の「収縮時間」はまた、圧迫要素の非作動時間に対応する(すなわち、「非作動時間」および「収縮時間」はいずれも同じ意味で、構造にかかわらず圧迫要素が患者にかかる圧力を解放または緩和するために作動していない時間を指している)ことに留意されたい。
【0020】
さらに、「非作動」という用語が本明細書で使用されており、この用語は、作動時に加えられる圧力と比較して非作動時に、より低い圧力が加えられることを一般に意味するが、「非作動」であっても、いくらかの圧力が依然としてかかることを意味する(すなわち、アクチュエータ18は、その用語が本明細書中で使用されるように、非作動状態にあるときであっても、いくらか少ない程度で作動してもよい)ように「作動される(actuated)」という用語に対してのみ用いられる。さらに、いくつかの実施形態では、圧迫要素16は、非作動時(例えば、デフォルトで押しつぶすか又は圧力をかけるように構成されたばね負荷または弾性部材の形態をとる)に比較的大きな圧力をかけるように構成され、アクチュエータ18は作動時(例えば、バネ負荷または弾性部材の力に抗して押し戻し、それによって患者にかかる圧力を解放する)に圧力を解放または緩和するように構成され、これらの実施形態は本明細書および特許請求の範囲の記載の範囲内であることに留意されたい。
【0021】
システム10’が図4に示されており、図3のシステム10に概ね類似しており、多くの同じ構成要素が含まれている。しかしながら、システム10とは異なり、システム10’は、コントローラ14によってそれぞれ膨張可能な2つの着衣12を含む。例えば、図2の実施形態の2つの着衣12は、改善された治療が提供され得るように、患者の異なる領域、例えば対向する脚部に装着され得る。一実施形態では、第1の着衣のチャンバは、第2の着衣のチャンバが収縮している間に交互に膨張されるが、逆もまた同様である。本明細書におけるシステム10に関する議論は、システム10’及び本明細書に開示され及び/又は本開示を考慮して認識される他の代替的な実施形態を含むものとする。
【0022】
着衣12は、圧迫要素16を交互に作動させることにより解剖学的構造が着衣12によって繰り返し圧迫されるように、少なくとも部分的に包まれ、固定され、またはそうでなければ患者の解剖学的構造に対して又はその周りに配置されるように構成される。解剖学的構造の反復圧迫が、静脈を物理的に圧迫して静脈から血液を押し出すことによって患者の血流を促進し、それによって運動または筋肉の使用をシミュレートし、患者内の循環を改善することが、当技術分野において十分に検討されている。これは、動かない又は寝たきりの患者、および鬱血し、DVTなどの健康上の問題をもたらす心臓から遠位に位置する四肢、例えば脚の場合に特に有用であることが判明している。解剖学的構造は、足、ふくらはぎ、大腿、上腕、前腕、胸、腹部、臀部、または増強された血流が所望され、反復圧迫によって達成可能な他の構造であり得ることに留意されたい。
【0023】
任意の数の適切な圧迫着衣が当該技術分野で既知であり使用され、着衣12のために、または着衣12として使用することができる。図5は、1つの非限定的な実施形態(着衣12の構成要素に概ね類似する着衣12’の構成要素には、プライム記号が付されている)による着衣12’の分解図をより詳細に示す。着衣12’は、圧力流体チャンバ16’を規定する膨張可能なブラダ13を含む。ブラダ13からは、ポンプまたは他の流体圧力源(例えば、コントローラ14)に接続可能な流体導管またはチューブ15’が延びている。ブラダ13は、着衣12’の本体を規定し、任意の所望の方法、例えば縫合、接着剤などで互いに固定された織物層17aと17bとの間に保持されてもよい。着衣12’の本体にさらなる強度を提供するために、縁部21がさらに含まれてもよく、患者の解剖学的構造の周りに巻き付けられたときに、着衣12’の本体をそれ自体に取り付けるために、例えばフックおよびループ材料の形態のファスナー23を含めることができる。
【0024】
概して、コントローラ14は、アクチュエータ18の動作および圧迫要素16の作動を制御するように構成されている。すなわち、コントローラ14は、アクチュエータ18がどのくらいの間、どのくらいの頻度で動作しているかを制御し、それによって、システム10の各動作サイクル中に加えられる圧力の長さおよびタイミングを決定するよう使用される。システム10は、必要に応じて、例えば数時間、数日など、任意の長さにわたって連続的に動作するように構成することができる。圧迫要素16は、アクチュエータ18が動作していないときに、(圧迫要素16の特定の構成に応じて)受動的に通気または解放することができ、又は、アクチュエータ18は、各膨張に続いて圧迫要素16を能動的に引き込み、収縮させ、または(該当する場合、構成に応じて)解放するように構成されてもよい。
【0025】
図3の図示の実施形態では、コントローラ14は、処理ユニット20およびメモリ22を含む。処理ユニット20は、中央演算処理装置、または任意の論理ユニット、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または数学的演算および/またはコマンドの実行のための当技術分野で既知の又は発見された他の構成要素であり、又はこれらを含んでもよい。メモリ22は、ハード・ディスク・ドライブ、ランダム・アクセス・メモリ、読み出し専用メモリ、ソリッド・ステート・ドライブなど、またはソフトウェア、命令、プロセス、アプリケーション、またはコントローラ14の動作を規定または決定するプログラムを記憶することができる任意のタイプの電子情報記憶媒体であり得るか、またはそれらを含み得る。処理ユニット20及びメモリ22は、単一の集積チップ上に含まれていてもよいし、又は電子信号通信で別個のコンポーネントとして接続されていてもよい。
【0026】
より具体的には、本明細書に開示される原理および実施形態によれば、コントローラ14は、システム10の1またはそれ以上のサイクルのサイクル時間または収縮時間を常に可変および/またはランダムに設定、選択、採取、または決定するように構成される。本明細書の目的のために、「設定する」、「選択する」、「生成する」、「決定する」といった用語は、選択された値の使用に関して本質的に互換的に使用される。常に可変であるということは、収縮した時間に対して同じ長さの逐次的圧迫サイクルの対が存在しないことを意味する。ランダムということは、一般に、値が、患者の生理学、病状または状態と無関係なパラメータによって少なくとも部分的に設定され、決定され、または影響を受けることを意味する。望ましくない又は臨床的に価値の低い結果(例えば、望ましくない長い又は短い収縮時間)が発生するのを防ぐために、ランダム化は、特定の範囲内の値、すなわち、上限または最大値と下限または最小値との間の値に制限される。すなわち、乱数値は、サイクルごとに上限と下限との間で選択されるか、または上限と下限との間で規定される。上限および下限と共に、サイクル時間のランダム性または乱数値を設定または決定するための様々な実施形態が、本明細書および以下で検討される。
【0027】
いくつかの実施形態では、ランダム性は、コントローラ14によって実行される数学的関数によって達成される。本明細書で使用する用語「ランダム」は、例えばランダム化された成分を有するセミランダムおよび擬似乱数値、及びランダム性の特定の性質の外観又は介在物を含むことを意図している。例えば、大部分のコンピュータ化された乱数発生器は、擬似乱数である数学関数を介して動作するので、本明細書で使用されるランダムの定義を満たす。乱数値および/またはランダム性を決定するためのさらなる実施形態を以下に開示する。
【0028】
以下でより完全に議論される理由のために、本発明者らは、様々な要因の任意の組み合わせにより、任意の所与の患者集団の最適サイクルまたは最適収縮時間が、前述の60sサイクル/48sの収縮時間といった一定間隔で達成される可能性は低いと認識している。「最適」とは、特定の患者の単位時間当たりに最大量の増加した血流を生じる時間量を意味する。固定サイクルの代わりに、システム10のようなシステムのサイクルまたは収縮時間(例えば、所定の上限と下限との間)をランダム化することにより、実際には、統計的には、患者集団における任意の患者について、ランダム化された時間が、一定の間隔が使用された場合よりも「最適」に近くなる可能性がより高い。
【0029】
すなわち、複数のサイクルを連続してランダム化し続けることにより、より多くの数の患者が、いくつかのサイクルで最適な静脈補充時間を迎えるか、または最適な補充時間に近いタイミングを少なくとも達成することになり、これにより、全体の効率が向上する。時間はランダム化されているので、特定のグループの患者に不利益を与えるべきではなく、ほとんどの患者は実際に利点を見いだすであろう。このようにして、ランダム化は、一定の間隔システムで予想されるよりも、所与の患者集団に対してより大きい量の血流を増大させるために使用され得る。換言すれば、所与の患者集団における患者あたりの平均増加血流は、本明細書で論じられるような圧迫療法システムのサイクル時間のランダム化の使用によって増加され得る。さらに、集団内の患者のかなりのサブセットに対する顕著な負の効果を緩和しながら、患者あたりの平均増加血流の増加を達成することができる。
【0030】
上記のように、48秒の収縮時間は市販の圧迫治療システムにおいて典型的である。しかしながら、所定の患者が正確に48秒に等しい静脈補充時間を有することは統計的にはあり得ない。すなわち、典型的な市販の圧迫治療システムで使用される前述の48秒間の収縮間隔は、システムの膨張後に大部分の患者が完全な静脈の補充を達成するのに十分長いために選択される。これにより、(ほぼすべての場合に静脈が完全に補充された後に圧迫が起こるため)事実上全ての患者のために各サイクル毎に良好な量の増大した血流が達成されるが、ほとんどの患者にとって最適な収縮時間は48秒未満であると予想される。
【0031】
一般に、患者の生理学、病状および他の要因における当然の多様性のために、ほとんどの患者にとって最適な収縮時間を表す一定間隔はないと予想される。患者の最適な収縮時間は、それらの静脈の補充時間に等しくてもよいが、その患者の静脈の補充時間をおそらく超えることはできないことに留意されたい。つまり、患者の静脈が一杯になると、そのサイクルの最大可能血流量が既に達成されており、患者の静脈が完全に補充された後に圧迫する前に追加の時間を待つことは、サイクル当たりの血流を増加させることなく単位時間当たりのサイクル数を減少させるのみであり、これにより効率を低下させる。
【0032】
静脈還流を有する患者は、圧迫療法から恩恵を受ける患者集団のかなりの部分を構成し、これらの患者は、静脈還流を有さない患者よりもずっと少ない最適な収縮時間を有することに留意されたい(例えば、図1で表される例示的な患者集団についての約45秒以上と比較して、図2で表される患者母集団の例では約10~20秒である)。さらに、本発明者らは、静脈還流を有していない患者であっても、患者の最適な収縮時間がその患者の静脈補充時間よりも小さいと特定された場合、改善された予防/治療が可能であると考えている。より具体的には、静脈が補充する速度は非線形であることが注目される。血液の補充速度は、静脈圧が漸近的に最大に近づくことによって、例えば図1および図2に示される各サイクルの終わりに向かって指数関数的に低下する(理論的には、静脈内の血液量は、図1および図2に示される静脈圧に概ね対応する)。漸近的な静脈補充挙動によれば、いくつかの患者にとって最適な収縮時間は、その患者の静脈補充時間の前のある時点で実際に起こると考えられる。すなわち、1サイクル当たりより多くの増加流量を有するより少ないサイクルとは対照的に、1サイクル当たりより少ない増加流量を有するより多くのサイクルから利益を得ることができる患者もある。換言すれば、サイクル時間が短縮されると、単位時間当たりのサイクル数が増加し、たとえより少ない血流がサイクル毎に増大しても、サイクルはより頻繁に起こり、より全体的に増大された血流が時間とともに達成される。
【0033】
上記に加えて、医療業界で特定され、研究され、出版され、増加した血流の量に直接関係しない間欠的圧迫療法の様々な血行力学的および血液学的効果がある。これには、血液中の抗凝固物質の生成、並びに患者の血管および筋肉の物理的な圧迫によって生じる他の化学的および物理的効果の生成に加えて、血流の促進による血管壁および弁の洗浄効果が含まれる。これらの態様のいくつかは圧迫の特定の動作に直接関連付けられているので、所与の期間にわたって圧迫サイクルの数を増加させる動作は、これらのさらなる効果の増大をもたらすことが本発明者らによって提案される。したがって、着衣設計の場所、構造、または性質にかかわらず、すべての圧迫着衣のタイプにわたってこの改良された機能性を提供できることは特に有利である。
【0034】
患者の最適な収縮時間は、患者の静脈の補充時間よりも短くてもよいという理解にもかかわらず、圧迫に適した患者の四肢または他の解剖学的部位における増大血流の量を正確かつ連続的に測定することは、現在のところ、費用効果的または臨床的に適切ではない。さらに、各患者の最適な収縮時間は、(例えば、患者の活動/運動、座ったり横臥したりするような患者の向き、周囲温度、栄養または医薬的摂取などの結果として)経時的に変化してもよい。このため、各患者の最適な収縮時間を容易に確認することはできず、推定されるだけである。さらに、上述したように、最適な収縮時間は、患者によって大きく異なる場合がある。
【0035】
好都合なことに、システム10および他の利点の中でここで開示された他の実施形態によって利用される上述のランダム化は、各患者の最適な収縮時間において確実性を必要とせずに、かつ最適収縮時間が著しく異なる患者集団に適合しながら、所与の患者集団についての平均増大血流を増加させる。本明細書に記載のランダム化技術によるサイクルタイムの一定の変化は、より多くの患者、特に静脈還流および他の病状に罹患しているDVT関連の問題の最も高いリスクのある患者に対してより有効な治療が提供されることを確実にする。さらに、一部の患者は、従来の一定間隔システムと比較して現在記載されているシステムの使用によって精神的または心理的に利益を得ることができる。すなわち、定間隔療法は、意識的にまたは無意識的に、特に長期の治療期間にわたって一部の患者によって単調であると認識され、ランダム化は、治療の予測可能な性質を分解し、単調性によって引き起こされる煩わしさを緩和するのに役立ち得る。
【0036】
例えば、所定の患者Pが、一定の間隔時間t未満の最適な収縮時間tを有する(すなわち、患者Pについてt<tと仮定する)場合を考える。時間tが各サイクルに使用される場合、その患者Pの各サイクル毎のタイミングは、t-tに等しい時間だけ効率が悪くなる。ここで、tより小さいランダム化された時間tを考える(すなわち、tは、例えばコントローラ14によって、t<tとなるように選択されると仮定する)。サイクルごとに3つのケースが生じる可能性がある。すなわち、t=t(「シナリオ1」)、t>t(「シナリオ2」)、又はt<t(「シナリオ3」)。
【0037】
シナリオ1の場合、最適な効率に達し、これは一定間隔方式よりも明らかに好ましい。シナリオ2の場合、サイクルは最適(一定時間tの使用と同様)よりも長くなるが、t<t<tなら必ずt-t<t-tであり、そのサイクルはt-tに等しい量でより速く発生するため、一定時間tに関して時間が節約されるので、効率が向上する。本明細書に記載されているように、静脈還流を有する患者は、最適な収縮時間が現在使用されている一定間隔よりもかなり短いと予想されるため、このシナリオ2に最も頻繁に入るはずであり、したがって、これらの患者は、開示された実施形態が提供する治療の改善から大きく利益を得ることができる。したがって、シナリオ1とシナリオ2は、患者Pにとって明らかに常に好ましい。
【0038】
シナリオ3の場合、ランダム化された時間tは、静脈が完全に補充される前の時点で発生する(最適な補充時間tは、患者Pの静脈の補充時間t後に論理的に起こり得ないため)。したがって、より頻繁に発生するランダム化された時間tによって達成される単位時間当たりのサイクル数の増加と、より長い一定時間tによって達成されるサイクル当たりの静脈の補充容量と比較したときのこの減少した補充の機会に伴う対応する減少した血流との間にはトレードオフがある。
【0039】
結果として、所与の個々のサイクル時間が、どの時間tまたはtが、増大された血流に関する他の時間と比較してより有利であるかを決定することは容易に可能ではない(例えば、この例における時間tに起因する単位時間当たりのより多くのサイクルと、一定の間隔tに起因する1サイクル当たりのより大きな血液流量との間の前述のトレードオフが存在する)。しかしながら、ランダム化された時間tに対するシナリオ3の潜在的な非効率性は、一定の間隔tと比較して、ランダム化された時間tがあまりにも望ましくなく短くなるのを防ぐランダム化された時間tの最小限を設定することによって緩和することができることに留意されたい。(例えば、一実施形態では、図1および図2に関して上述したように、最小限を静脈の補充曲線の漸近部分に対応するように配置することによって)。
【0040】
したがって、より長い持続時間であるが一定のサイクルを使用する従来技術のシステムで動かされた血液量は、tおよびtに関連する。それに対し、現在開示されている実施形態では、移動される血液量は、したがって、tとtとの間の変動、および固定サイクル時間tによって通常提供されるサイクル数よりも多くのサイクル数の関連する改善に関係する。
【0041】
現在開示されている実施形態の効果は、結果として生じるサイクル時間の変動/ランダムな選択が、患者の個々のサイクル時間tが個々の患者の補充時間tと比較して準最適であり得る一方、次の選択されたサイクル時間は、それ自体が常にtに対して準最適である固定されたより長いサイクル時間tが使用された場合に達成されるよりも最適であり得る。したがって、すべてのサイクル時間が、患者治療の持続期間にわたって総計で考慮される場合、本発明の結果として動かされた血液量の改善が達成される。
【0042】
上記を考慮して、ここでは、大多数の患者にとって最適な収縮時間が一定時間t未満である「n」人の患者{P,P,...,P}の患者集団全体を考える(すなわち、すべての、または本質的にすべての患者についてt<tと仮定する)。この状況の患者は、この状況の患者は、効率を高めるか(すなわち、あるサイクルのtが、上述したシナリオ1またはシナリオ2のいずれかをトリガした場合)、または固定間隔スキームに関してさえもほぼ壊れてしまう(すなわち、上述のようにtがシナリオ3をトリガした場合)。このようにして、本明細書に記載のランダム化技術を利用する正味の結果は、一般的に使用される固定間隔システムに期待されるものに関して、任意の所与の患者集団についての増大した全血流量(および/または患者あたりの平均増大血流)の増加であると予想される。したがって、本発明は、所与の臨床の場または環境内のある範囲の患者に処方された製品のより広い有効性の改善をもたらす。
【0043】
本明細書で論じられる最適な収縮時間は、増大した全血流量を最大にしようとすることに関してのみ決定され、患者に有益であり得る他の態様または検討事項を考慮しないことが認識されるべきである。この理由のため、静脈補充時間よりも短い「最適な」収縮時間を有する(例えば、t<t)患者でさえも、少なくともいくつかのサイクルの間、実際の収縮時間が最適な収縮時間tおよび/または静脈補充時間tよりも長い場合、圧迫療法を受けることが、ある患者にとっては望ましい。したがって、一実施形態では、収縮時間の一定の間隔がランダム化された間隔の間に散在する。例えば、ランダムに決定されない一定間隔、例えば48秒があり、例えば「n」サイクルごとの既知の倍数の収縮時間として使用され、他のすべてのサイクルの収縮時間はランダムに決定される。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、ランダム化のための最大限および最小限は、図1および図2で特定された曲線の漸近端部に対応する期間に及ぶように選択することができ、収縮長さが比較的かなり減少しても、血液補充量の減少はごくわずかなものに過ぎない。例えば、図6は、「正常な」患者について図1と同じプロットを示す1つの仮説的な例(これは決して本開示または本願の特許請求の範囲を限定するものと考えるべきではない)を論じるために含まれているが、典型的な商用長である48秒で設定された収縮時間の最大限tmaxと、代表的に40秒で設定された代表最小限tmimとをさらに示す。収縮時間をtmimとtmaxとの間の任意の値(すなわち、図6の例に示すように最大限48秒から最小限40秒)としてランダムに選択することは、このようにして、すなわち、それぞれtmimおよびtmaxに対応する静脈圧pmimおよびpmaxの間の比較的わずかな差によって示されるように、補充された血液の量の対応する比較的わずかな減少をもたらすように設定され得る。当然のことながら、pmimとpmaxとの差がより大きくなる可能性がある他の実施形態では、他の最大および最小限を設定することができるが、本明細書で論じる理由により全体的な増大血流を改善する。
【0045】
一実施形態では、ユーザは、裁量で、または臨床指針に基づいて様々な数を選択して、乱数のリストを生成することができる。特定の理由(例えば、比較的高い値と比較的低い値を選択し、この高い値と低い値との間で行き来する)のために、2又はそれ以上の特定の値を意図的に選択することもできることにも留意されたい。一実施形態では、各数字は、乱数ジェネレータソフトウェア(例えば、大部分のソフトウェアプログラミング言語が「ランダム化」または「ランド」機能を有する)、線形順次シフトレジスタ(例えば、図11の説明を参照)、合同ジェネレータ、または任意の他のランダム化アルゴリズムまたはシーケンス生成方法によって生成することができる。さらに、乱数値は、必要に応じて、オンザフライで、またはシステム10の動作中に生成されてもよく(例えば、図13および/または図14の説明を参照)、又は、乱数値は事前に生成されまたはプリセットされ、システム10の使用中に単に読み取られるメモリ(例えば、メモリ22)に記憶される(例えば、図12および/または図9および表1の説明を参照)。
【0046】
生成された値は、(例えば、メモリ22に)記憶され、後でシステムによって呼び戻されるかまたは表示され(例えば、モニタ、スクリーンまたは他のディスプレイ上に視覚的またはグラフィック的に提示され、印刷される等)又は繰り返される。いくつかの実施形態では、2又はそれ以上の数のシーケンスが繰り返される。いくつかの実施形態では、各サイクルのプリセットされた選択のリストから数がランダムに選択される。いくつかの実施形態では、乱数は、ある結果に向かって確率的に偏っている(すなわち、特定の結果がより起こりやすい)一方、他の実施形態では、偏っていない(すなわち、考えられるそれぞれの結果は同様にあり得る)。
【0047】
一実施形態では、コントローラ14は同じ値を2回連続して選択することが防止される。一実施形態では、収縮時間の値は、2又はそれ以上の値のサブセットに配置され、各サブセットは、少なくとも1つのランダム化された値、および(例えば、定義された数学的関係を介して)第1の値に基づいて決定される少なくとも1つの値を有する。例えば、第1の値は、その場でランダムに決定され、第2の値は第1の数値と第2の数値の合計が所望の合計に等しくなるように、例えばこのように平均サイクル時間が維持されるように決定される。一実施形態では、第2の値は、第1の値の割合、例えば75%、125%等として決定される。一実施形態では、第1の値は、(例えば、第1の最小限と第1の最大限によって定義される)第1の範囲から選択され、第2の値は、第1の範囲とは異なる(例えば、第1の最大限および最小限とは異なる第2の最小限および第2の最大限によって定義される)第2の範囲から選択される。当業者であれば、乱数または数の組を生成または決定するための任意の数の方法を理解するであろう。
【0048】
一実施形態では、コントローラ14の動作パラメータまたは性能パラメータ、例えば、値のプリセットリスト、確率的バイアス、上限および下限等は、患者に与えられる圧迫療法の全長に応じて自動的に変更される。例えば、システム10は、治療の開始時に1又はそれ以上のパラメータに対して第1の値または値のセットを利用し、一定の時間が経過した後に第2の値または値のセットを利用することができる。治療における進行を行うことができるように、さらなる値または値のセットをさらに使用することができる。
【0049】
有利には、本明細書に記載の実施形態は特別な特徴または構成要素を必要としないので、この開示されているシステムは、事実上任意の既知のまたは発見された圧迫療法システムからの既存の構成要素と互換性があるか、またはそうでなければ利用することができる。すなわち、既存の商業的に入手可能な膨張可能な着衣および/または流体導管/チューブ(単一または複数のルーメンを含む)を、変更なしに使用することができ、後方互換性が大きくなる。本実施形態は、任意の数のチャンバを有する着衣、例えば図3に示されるような単一のチャンバ、または参照によりそれぞれの全体として本明細書に含まれている米国特許第6,080,120号または米国特許公開第2015/245976号に開示されるような複数のチャンバを有するシステムに適用可能であることに留意されたい。同様に、本実施形態は、膨張可能な着衣の将来のバージョンにも容易に適用可能であるべきである。さらに、本明細書に開示された実施形態は、身体の任意の領域、例えばふくらはぎ、大腿部、足部等の既存の着衣と共に使用することができることに留意されたい。さらに、既存のアクチュエータ/ポンプハードウェアおよび設計もまた、現在のシステムまたは過去のシステム、あるいは大部分から再利用することができるが、これは、これらのシステムは、本明細書で論じられる実施形態に従って既存のアクチュエータ/ポンピング機構の動作を(例えばソフトウェア命令を介して)制御するコントローラを含むように修正されるだけでよいためである。
【0050】
本明細書で論じるように、この分野での現状の認識は、48秒が、ふくらはぎの圧迫療法を受けている大多数の患者に有用な収縮時間であることを示している。したがって、いくつかの実施形態では、収縮時間の最大限は約48秒に設定される。しかし、他の最大限を利用してもよいことを理解されたい。いくつかの実施形態では、収縮時間の最大限は30~60秒の範囲から選択され、さらなる実施形態では40~50秒の間から選択される。患者の静脈に圧迫の間に補充する時間が不十分である場合、患者を混乱させ、および/または治療の有効性を低下させる可能性があるため、圧迫が頻繁に起こらないように最小限を設定することができる。一実施形態では、収縮時間の下限は10~40秒の範囲から選択される一方、さらなる実施形態では20~30秒から選択される。当然のことながら、本明細書の上記および下記に与えられた時間範囲は、既存の足、ふくらはぎ又はふくらはぎ大腿着衣についての本発明者の知識に関して主に推奨され、他の身体部分または解剖学的領域(又はこれらの部分及び領域でさえ)は、他の長さの時間から利益を受ける。
【0051】
各サイクルの膨張時間は、任意の選択された時間、例えばふくらはぎの着衣の商業的実施形態で典型的に使用される12秒であってもよい。しかし、上述したランダム化技術は、必要に応じて追加的にまたは代替的に膨張時間(例えば、本明細書で論じられるような最小および最大限の制限を受ける、例えば、アクチュエータ/ポンプが完全に作動し、それによって完全な加圧が達成されるのに十分な時間である約3秒の最小限)に適用されてもよいことにも留意されたい。また、サイクルの膨張時間は、そのサイクルまたは前または後のサイクルの収縮時間のランダム化された長さに応じて可変であってもよいことにも留意されたい。例えば、一実施形態における膨張時間は、比較的短いランダム化収縮時間に続いてまたはそれに先行して短縮または延長されてもよく、または比較的長い収縮時間に続いてまたはその前に短縮または延長されてもよい。一実施形態では、サイクル時間全体(収縮時間+膨張時間)は、最小サイクル長および/または最大サイクル長を有することができる。一実施形態では、最小サイクル長は少なくとも35秒である。一実施形態では、最大サイクル長は90秒未満である。また、これらの時間の長さは、現在開示されている実施形態の実施を支援するのに役立つ非限定的な推奨を意図しており、任意の他の長さの時間を使用することができる。当然のことながら、サイクル長さは、本明細書に開示された実施形態によってランダム化され、収縮時間は、膨張時間を差し引くことによって決定される。
【0052】
いくつかの実施形態では、コントローラ14の性能パラメータおよび/または動作は、補助装置によって監視される1またはそれ以上の補助医療装置および/または変数の影響を受ける。例えば、図7には、コントローラ14”が、例えば、WiFi、赤外線、RFID、Bluetooth(登録商標)、イーサネット(登録商標)など、任意の有線または無線通信デバイスまたは技術であり得る、送信機/受信機26を介して補助装置24と通信するシステム10”が示されている。コントローラ14”はその他の点ではコントローラ14に類似しており、コントローラ14の議論はコントローラ14”に適用されることに留意されたい。
【0053】
補助医療装置24によって監視される変数は、周囲の室温、時間などの患者の外部にあるもの又は排他的なものであってもよい。代替的に、監視される変数は、静脈圧、心拍数、検出された動きなどのように、患者の内部にあるもの又は包含的なものでもよい。一実施形態では、補助装置24は、DVTまたは他の医学的状態についてスクリーニングするよう構成された診断装置の一部である。この目的のために、補助医療装置24は、1またはそれ以上のパラメータまたは変数を測定するための任意の測定、検知または監視装置とすることができる。代替的に、補助医療装置24は、患者に他の何らかの治療を提供することができ、コントローラ14”は、補助装置24と同期して、相補的に、同時に、および/または通信し、かつ/または相互作用するように構成することができる。例えば、コントローラ14”の性能パラメータは、補助装置24の動作および/または監視された変数の測定結果によって少なくとも部分的に影響され、設定され、または定義され得る。一実施形態では、アクチュエータ18が同時に作動している場合、補助装置24の動作および/または測定精度が影響を受け、したがって、コントローラ14”は、補助装置24の動作中に収縮間隔を実行し、および/または必要に応じて収縮期間の長さを延長して、補助装置24の動作が終了するまで圧迫が起こらないように構成される。有利なことに、固定された一定間隔が各サイクル毎に使用されないため、本明細書で論じられるランダム化技術は、モニタリング変数の測定の潜在的に大きな程度の誤差を構成し、したがって、モニタリングを行う機器またはセンサは、高度に正確である必要はなく、または細かく較正される必要はない。一実施形態では、コントローラ14の性能パラメータは、着衣12、導管15、および/またはアクチュエータ18の種類、モデル、製造業者、またはスタイルをコントローラ14が、例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,884,255号に記載されているようなRFIDで検出することによって修正される。
【0054】
図8の実施形態に示すように、システム10'''は、ユーザがコントローラ14'''の異なる動作モードおよび/または性能パラメータ(例えば、収縮時間、膨張時間、確率的偏り、上限および下限などのプリセットリスト)を選択、定義、影響を与えまたは入力することを可能にするよう構成されたセレクタ28を任意選択的に含み得る。コントローラ14''と同様に、コントローラ14'''はその他の点ではコントローラ14に類似しており、コントローラ14の説明はコントローラ14'''に適用可能である。
【0055】
セレクタ28は、ノブ、ダイヤル、スイッチ、ボタン、レバーなどとして構成することができ、その作動または起動によって、ユーザはコントローラ14'''の動作モードを変更することができる。一実施形態では、セレクタ28は、コントローラ14'''と有線または無線で(例えば、WiFi、赤外線、RFID、Bluetooth(登録商標)、イーサネット(登録商標)などを介して)通信する別個の装置とすることができ、これによって、これはユーザがコントローラ14'''の性能を変更することを可能にする。セレクタ28を介して、ユーザは、ランダム化の最大および/または最小限を変更し、ランダム化間隔の間に一定間隔が散在するかどうかを、および/または一定間隔前のランダム化サイクル数を設定し、本明細書で論じる任意のランダム化の実施形態などに従って動作するようシステムを切り替える。ユーザによって選択可能な動作モードは、プリセットまたは所定のプロファイル、例えばメモリ22に保存することができる。一実施形態では、セレクタ28は、ランダム化をオフにするように構成することができ、必要に応じて、システムは従来の一定間隔動作モードに戻ることができる。
【0056】
単一のセレクタをまとめて又は個別にコントローラ14の複数の性能パラメータを変更するように構成することができ、あるいは複数の異なる変数を個別に設定または制御するための複数のセレクタを含めることができ、例えば、ユーザが上限を変更することを可能にするために第1のセレクタが含まれてもよく、ユーザが下限を独立に変更することを可能にするためにモードセレクタが含まれてもよい。一実施形態では、セレクタ28は、例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン等、または他の入力もしくはインターフェース装置30を介してユーザからの入力を受け取るように構成され、これによりユーザは所望の性能パラメータを明確に定義できる。一実施形態では、動作モードは、患者が静脈逆流および/またはDVTの危険性が高いと考えられる場合にユーザによって選択可能な比較的短い収縮時間(例えば、図2の患者集団では約15~20秒)を有する第1のモードと、比較的長い収縮時間を有する第2のモード(例えば、図1の患者集団については約48秒)との間で選択することができる。
【0057】
以下の表1は、1つの特定の非限定的な実施形態によるランダム化されたサイクルタイム値のセットの仮定の例として含まれている。より具体的には、表1は、一実施形態で使用され得る255の一連の連続動作サイクル(すなわち収縮時間+膨張時間)にそれぞれ対応する255の乱数値のリストを含む。この実施形態では、表1の値は、60秒の最大限と37秒の最小限との間(例えば、各サイクルの膨張時間を12秒と仮定すると、それぞれの最大収縮時間が48秒と最小収縮時間が25秒との間)でランダムに生成される。表1の結果も図9のレーダープロットの形で含まれており、これについては以下でより詳細に論じる。
【0058】
表1の値は合計で12,619秒を有し、その結果、表1の255サイクルは、平均サイクル長が49秒で、合計で210分19秒の間、圧迫治療システムの動作を可能にする。対照的に、60秒の一定サイクル時間を有する従来のシステムは、この同じ期間中に210回だけサイクルすることになる。したがって、表1の実施形態は、同じ期間にわたって従来の60秒の一定間隔システムよりも約21%多いサイクルを提供する。
【0059】
さらに、表1の実施形態は49秒の平均周期長を有するが、患者が受ける治療は、49秒の固定周期長が使用された場合と同じではないことに留意されたい。本明細書で論じられる他の利点に加えて、表9の値をグラフで表す図9を考慮してよりよく理解することができる本明細書で開示されるランダム化技法のさらなる利点は、ランダム化の結果として、一連の連続した値が、一部の患者にとって有益な効果をもたらし得る(代替的に、本明細書ではパターンとも称される)様々な異なるタイプのシーケンスを作成および/またはそれに従うことである。例えば、一実施形態では、連続する乱数値のサブセットは、後続の各値が前の値よりも長いというパターンに従う。一実施形態では、連続する乱数値のサブセットは、後続の各値が前の値より短いというパターンに従う。一実施形態では、連続する乱数値のサブセットは、値が比較的長い時間と比較的短い時間との間で交互に変わるかまたは変動するパターンに従う。
【0060】
上記のように、図9は、表1にまとめられた255サイクルのサイクルタイム値をグラフで示すレーダープロットであり、圧迫療法中に患者にとって有益であり得るいくつかのシーケンスまたはパターンを示すのを支援するために提供される。例えば、図9では、以下のアルファベットの識別子を用いて様々な種類のパターンのいくつかの例が特定されている。ここで、「A」は、サイクル長が漸増する領域を特定する。「B」は、サイクル長が次第に短くなる領域を特定する。「C」は、比較的長いサイクルタイムの領域によって囲まれた比較的短いサイクルタイムの領域を特定する。「D」は、すべてが特定の閾値を下回る複数のサイクルタイムのグループを持つ領域を特定する。「E」は、全てが特定の閾値を超える複数のサイクル時間のグループを有する領域を特定する。本発明者らは、一部の患者は特定の種類の配列から利益を得る可能性があるか、または特定の種類の隣接する配列(例えば、配列Aの後の配列B、配列DおよびEの交互に変わる領域等)が、人体が従来の固定間隔よりさらに有利に反応するという相乗効果を生み出す可能性があると考えている。前述の配列の全ての例が図9において特定されているわけではなく、さらに、これらの型の配列は説明の目的のための非限定的な例であり、他の配列が存在し、圧迫療法を受けている患者にとって有益であることが分かっていることに留意されたい。
【0061】
いくつかの実施形態では、ランダム化された値を生成するときに強制的配列が利用される。「強制的配列」とは、連続する値の1又はそれ以上のサブセットが、特定のタイプの配列またはパターン、例えば上記の配列のいずれかに従うよう構成されることを意味する。換言すれば、値のグループまたはサブセットは、所定のパターンに従うよう意図的に選択され得るか、または値を生成するために利用される数式は、特定の配列を保証するために、1又はそれ以上の前のサイクルの結果に基づいて修正され得る。
【0062】
強制的配列を利用する一実施形態は、限定的であることを意図するものではなく、説明のためだけに含まれる図10を考慮して理解することができる。この実施形態では、値は、3つの範囲、すなわち短い、中程度、または長い、のうちの1つにある。例えば、短い時間は45~50秒、中程度の時間は、50~55秒、長い時間は55~60秒のサイクル時間に対応する。第1の乱数値(「値1」)は、任意の所望の方法(例えば、本明細書に開示された方法のうちのいずれかを使用するシステム10のコントローラ14)を介して第1のサイクルに対して選択および/または生成される。次に、この第1の値は、値1と第2の値(「値2」)の間、および値2と第3のサイクルの値(「値3」)の間の矢印によって示されるように、次のサイクルの次の選択/生成値に影響を及ぼすために使用される。この例では、第1の値が短いとして指定されている場合、第2の値は中程度または長いことが必要である。代替的に、第1の値が中程度の長さである場合、第2の値は中程度または長いことが必要である。第1の値が長い場合は、第2の値は中程度または短いことが必要である。同様に、短い第2の値は、中程度または長い第3の値になり、中程度の第2の値は、長い第3の値にしかならず、長い第2の値は、短いまたは中程度の第3の値になる。
【0063】
強制配列プロセスは、必要に応じて任意の数のサイクルで繰り返すことができ、当業者は、このようにして任意のパターンまたはシーケンスを値に強制しまたは課すことができることを理解するであろう。また、ランダムに生成された値の間に固定値が点在していてもよく、例えば、ランダムに生成された短い値が次の値を所定の固定値になるようにトリガしてもよいことにも留意されたい。いくつかの実施形態では、乱数の選択/生成のための最小限および/または最大限を変えることによって、又は、ランダムに選択/生成された値を数学的に比較し、値が許容範囲内に収まるまで値を選択/生成し続けることによって、強制的配列を達成することができる。このようにして有利なことに、ユーザは、システムの動作にある程度の制御を課すことによって、定義された反復可能な性能特性を達成することができるが、それでも本明細書に開示されるランダム化から利益を得る。一実施形態では、強制的配列を使用して、ユーザによって「ランダム性」が増していると認識されるものを課すことができるが、これは真にランダムではない。例えば、ランダムサンプリングでは、繰り返し値が生じる可能性があり、例えば、同じ数が連続して2回以上選択される可能性がある。繰り返し値はランダムに発生するが、そのような繰り返し値はランダムには「見えない」。すなわち、ある値が他の値よりも頻繁に繰り返される場合、ユーザは完全にランダムなシステムであっても偏りを感じる可能性がある(例えば、配列{35、35、35、35、51、35、35、35}はランダムに生成されるが、「35」が選択されている頻度のため、ランダムには見えない)。したがって、強制的配列を使用して、値が頻繁に繰り返されるのを防ぐことができる(例えば、ある列で同じ数を2回続けて選択できず、同じ数を「y」サイクルのグループで「x」回選択できない、等)。
【0064】
図11は、乱数値を生成するために利用することができる一実施形態に係る線形フィードバックシフトレジスタ50を示す。有利には、線形フィードバックシフトレジスタは、最小量のメモリまたは回路を使用して一連の乱数を生成することができる。それはまた、配列が完全に生成されるまで繰り返さない疑似乱数のリストまたは配列を生成し、次にこの完全な数の配列を自動的に繰り返す。レジスタの初期値を設定することによって、望ましい、または予測可能な配列を作成するよう構成することもできます。
【0065】
線形フィードバックシフトレジスタ50は、10ビットのX0-X9を有する(したがって、1ビットとして、X0-X9の各々は、0または1の値を取り得る)。この実施形態では、最初の8ビットX0-X7は、同様に参照番号52で示される基数2の値を作成する。必要に応じて(例えば、処理ユニット20を介して)ランダムな2進値52を基数10に変換することができる。ランダム化された値52に対してレジスタから下位8ビットを使用することによって配列がサンプリングされ、256個の潜在的な値を提供するが、シフトレジスタ50それ自体は1,023サイクルの後までその配列を繰り返さない。ビットX8およびX9は、以下に説明するようにランダム化の目的で使用され、異なるシーケンスを生成することを可能にするために最初に差分値を事前にロードすることができる。
【0066】
バイナリ値52をランダム化するために、シフトレジスタ50は、XORゲート54、56、および58として示される3つの排他的OR(「XOR」)ゲートを有する。各ゲー54、56、および58は、入力の状態に応じて出力を生成するよう構成されており、これはレジスタ値に影響を与えるために使用される。ゲート54は、ビットX0およびX2からの入力を用いて配置されており、ゲート56は、ビットX3からの入力とゲート54の出力を用いて配置されており、ゲート58は、ビットX4からの入力とゲート56の出力を用いて配置されている。当業者は、シフトレジスタを利用する回路が数列を手続き的に生成するためにとり得る任意の数の他の構成を認識するであろう。
【0067】
図示の実施形態によれば、ランダムな2進値52が決定される(例えば、ランダム化されたサイクル時間、収縮時間等として使用される)毎に、ビットX9の値がXORゲート54、56、および58によって計算され、第3のXORゲート58の出力として設定される。他のビット(X0-X8)の値は、ビットX1-X9の値を次に低いビット(例えば、ビットX8はビットX9よりも前の値をとり、ビットX7はビットX8よりも前の値をとる、等)にシフトすることによって決定される。この例では、次の下位ビットに論理的にシフトされたときのビットX0からの値は破棄できる。したがって、線形フィードバックシフトレジスタ50は、図11に示す0000101000(10進表示で80)から1000010100(10進表示で53)にシフトし、ランダム化された2進値52はこの場合00010100(または10進表示で20)に等しい。
【0068】
ビットX9に対する新たな値1は、次のようにして生成される。ゲート54が、X0(0)およびX2(0)からの元の2つの入力により0を生成する。X3(1)および54(0)からの元の2つの入力により、ゲート56が1を生成する。そして、ゲート58が、X4(0)およびゲート56(1)からの入力の結果として、ビットX9を生成して新しい1の値で満たす。レジスタ50内に結果として得られる値は、システム内での使用に必要とされるようにスケーリングおよび処理することができる。図11の回路のように回路を構成し、シフトレジスタ50によって提供されるデータを利用するための他の動作モードは、当業者にとって明らかに可能である。
【0069】
図12は、コントローラ14の一動作モードを示すフローチャートであり、より具体的には、ランダム化された値は、事前に生成されたリストまたはテーブルを通してポインタを進めることによって取得される。この実施形態では、第1のステップ100で乱数値「VALUE1」がテーブルの第1の値に設定される。次に、ステップ102において、VALUE1を利用してサイクルが実行され、サイクル長、収縮時間、または他のパラメータが設定される。その後、ポインタが次のテーブルエントリに更新され、ステップ104に従ってVALUE1がこの次のエントリに記憶された値に設定される。そして、ステップ106において、システム、例えばシステム10が、例えば処理ユニット20を利用して、テーブルの終わりに達したか否かを判定する。答えがイエスであれば、ポインタはテーブルの最初のエントリにリセットされ、それによりステップ100からのプロセスを繰り返す。そうでなければ、VALUE1の値がサイクルでの使用に許容され、プロセスはステップ102から繰り返される。プロセスは、連続的にまたは設定されたサイクル数の間またはユーザ入力またはコマンドによって終了されるまで続けられる。
【0070】
2つの着衣が使用されている場合(例えば、システム10')、ステップ102の前、最中、または後に、ステップ108が任意に生じてもよく、ここで第2の着衣の膨張のタイミングがVALUE1と一致する時間に発生するようにスケジュールされる。換言すれば、ステップ108において、第2の着衣の膨張は、第1の着衣が収縮するのと同じ期間(必ずしも同じ時間の長さではないが)に発生するように設定またはスケジュールされる。2つの着衣が使用される場合、第2の着衣は図12に示されているのと同じように動作するが、VALUE1は代わりに第2以降の着衣の膨張を指し、ステップ108は第1の着衣を指す。
【0071】
図13のフローチャートを考慮すれば、別の動作モードを理解することができる。この実施形態では、ランダム化された値(やはり「VALUE1」)が必要に応じてまたはオンザフライで生成される。さらに、この実施形態では、時間が最小限「MIN」と最大限「MAX」との間にある場合にのみ値が選択される。第1のステップ110において、乱数発生器が(例えば、上記の技術、方法、方式、または実施形態のうちのいずれかを介して)乱数値VALUE1を生成する。ステップ110のVALUE1がMAXとMINの制限値の間で(例えば、ランダム(rand)またはランダムソフトウェア機能を介して)生成され得る場合、ステップ112および114はスキップされ得る。代替的に、ランダム化された値が他の方法、例えば図11に関して説明したように線形シフトレジスタを介して生成される場合、図13の方法はステップ112に進み、そこでMINがVALUE1に加えられ、VALUE1の値を更新し、VALUE1が使用時にMIN以上になることを保証する。ステップ114では、ステップ112で更新されたVALUE1がMAXより大きいかどうかが(例えば、処理装置20を介して)チェックされる。答えがいいえの場合、プロセスはステップ110からやり直し、VALUE1の新しい値が選択される。ステップ114の答えがイエスであれば、サイクルはVALUE1を用いて実行される。図12の実施形態と同様に、ステップ118は、一方の衣服が確実に膨張する一方で他方の衣服が確実に収縮するように2つの着衣が利用される場合に任意に起こり得る。当業者には明らかなように、追加の論理テスト(簡単にするために図13には示されていない)が、アルゴリズムがステップ110~114のループ内で永久に動かなくなるのを避けるために容易に含まれ得る。
【0072】
図14は、乱数値(やはり「VALUE1」)がシステムの動作中に必要に応じてまたはオンザフライで生成される別の実施形態を示す。第1のステップ120において、パラメータPREVは、(図11の値に似た)プロセスの初期化を可能にするためにプリロードまたはシードとしてVALUE1に等しくなるように設定される。VALUE1はサイクルで使用されたランダム化された値を最終的に表すので、PREVは前回の使用時間を記憶するように効果的に設定される。次に、ステップ110に類似したステップ122が生じ、乱数を選択するために乱数発生器が使用される。次いで、ステップ124および126のセットがステップ112および114と同様に生じ、ステップ122のVALUE1がどのように生成されるかに応じて同様にスキップされてもよい。ステップ126の答えがイエスの場合、システムはVALUE1とPREVとの間に十分な程度の差があるかどうかを判定する。例えば、これは、VALUE1とPREVとの間の差の絶対値を所定の閾値「DELTA」と比較することによって数学的に決定することができる。例えば、上述したように、DELTAをサイクル間で修正して強制的配列を実施することができる。DELTAをゼロに等しく設定することによって、値が繰り返されないことを確実にすることができる。ステップ118は、任意選択でスキップすることができ、または後続のサイクル間のある程度の微分が望ましくない場合には、任意の負の数にDELTAを設定することができる。ステップ128の答えがノーであれば、新しい値がランダムに生成され、VALUE1がこの値に設定される。ステップ128の答えがイエスであれば、VALUE1は許容可能であり、ステップ130に示すように次のサイクル中に使用することができる。2つの着衣が使用されている場合、ステップ132は、上述のステップ108および118と同様に含まれて得る。上述のように、アルゴリズムがステップ122~128のループ内で永久的に動かなくなるのを避けるために、追加の論理テスト(簡単にするために図14には示されていない)を含めることができる。
【0073】
現在の圧迫療法システムのパラメータは、患者の快適さおよびコンプライアンスを改善するために療法を施す医師によってしばしば調整される。この目的のために、いくつかの実施形態では、コントローラ14は、ランダム化された値の使用に応答して圧迫療法の特定のパラメータを自動的に修正するように構成される。一実施形態では、コントローラ14は、システム10の使用中の異なるサイクルについて圧迫要素16によって加えられる最大圧力を修正するよう構成される。反対に、ランダム化された値は、圧迫要素16によって加えられる圧力によって影響され得ることに留意されたい。例えば、圧力は、ユーザまたは他の変数によって選択可能であり、選択された圧力は、本明細書で論じられるようにランダム化の最大および/または最小限を設定するために利用される。一実施形態では、圧迫要素16の圧迫圧力および/またはチャンバ16'内の膨張圧力は、少なくとも約25mmHg、一実施形態では最大約65mmHgであるが、他の圧力も、どの解剖学的部位で現在開示されている実施形態が使用されるかに応じて、臨床的に有利であることを理解されたい。
【0074】
一実施形態では、例えば、本明細書で論じられるように単位時間当たりの圧迫数の増加の結果として静脈血流量の増加に関して治療がより効果的になる場合、圧迫要素16によって加えられる圧力の対応する減少の後でさえも、その患者に対する十分な性能が得られる可能性がある。換言すれば、コントローラ14は、選択された現在のサイクル時間の値および/または1つまたは複数の前のサイクル時間の値に依存する圧力の変化を自動的に提供することができる。すなわち、より短いサイクルが多数ある場合、これらのより短いサイクルに関連したより速い反復が増大した流れを提供するため、これらはわずかに低い圧力レベルに関連し得る。このようにして、患者が経験する圧迫圧力を低下させることができ、何人かの患者にとって快適さを改善することが可能である。逆に、多数のより長いサイクル時間があり、その結果、圧迫の間の期間が長くなる場合には、十分なレベルの増大した血流を確実にするために増大した圧力を有することが望ましい。
【0075】
サイクル時間と圧迫圧力との間の上述の相互関係は、システム10の動作中に継続的に利用されてもよく、または特定のサイクルについてのみ選択的に利用されてもよい。一実施形態では、システム10を操作するユーザまたは医療専門家は、スイッチ(ハードウェアまたはソフトウェア)を操作してこのモードを選択的にオンまたはオフにするか、任意の入力またはインターフェースデバイス(例えばキーボード、マウス、タッチスクリーン)を使用してこの機能が有効になる条件を設定することができる。一実施形態では、圧力は、一日の時間(例えば、患者が眠ろうとしている夜間)等に基づいて、患者が特定の身体的位置にある(例えば、脚を上げた状態での砕石術、及びこれによる改善されたレベルの静脈還流)と検出されたときなど、検出されたパラメータまたは条件に基づいて本明細書で論じられるように自動的に選択されるランダムな値に関して設定される。
【0076】
本発明を例示的な実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を加えてその均等物をその構成要素と置き換えることができることは当業者に理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の示唆に適合させるために多くの修正を加えることができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されず、本発明は特許請求の範囲内にある全ての実施形態を含むことを意図する。また、図面および説明において、本発明の例示的な実施形態が開示されており、特定の用語が使用されているが、特に明記しない限り、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用され、限定の目的ではなく、したがって本発明の範囲はそのように限定されない。さらに、第1、第2などの用語の使用はいかなる順序または重要性も示さず、むしろ第1、第2などの用語は1つの要素を他の要素から区別するために使用される。さらに、用語「1つの」、「1つの」などの使用は数量の制限を意味するのではなく、むしろ少なくとも1つの言及された項目の存在を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管循環を促進するための装置であって、
患者の解剖学的構造を少なくとも部分的に囲むよう構成された着衣と、
前記着衣に結合され、前記圧迫要素が作動したときに前記解剖学的構造の少なくとも一部を圧迫するよう構成された圧迫要素と、
複数のサイクルにわたり前記圧迫要素を選択的に作動させるよう構成されたコントローラと、
を具えており、
各サイクルは、前記圧迫要素が第1の圧力をかけるよう構成される作動時間と、前記圧迫要素が前記第1の圧力とは異なる第2の圧力をかけるよう構成される非作動時間とを有しており、前記コントローラは、1又はそれ以上の前記サイクルの収縮時間を決定する際に1又はそれ以上の乱数値を使用するよう構成されることを特徴とする装置。
【外国語明細書】