(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150569
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】膀胱がんのバイオマーカーとしてのケラチン17
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20241016BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20241016BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
G01N33/574 A ZNA
C12Q1/06
G01N33/574 A
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114175
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2022112447の分割
【原出願日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】62/371,286
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】503035992
【氏名又は名称】ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
(71)【出願人】
【識別番号】519040843
【氏名又は名称】ケーディーエックス・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケネス・アール・シュロイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ルイサ・エフ・エスコバル-オヨス
(72)【発明者】
【氏名】ナム・キム
(57)【要約】
【課題】治療を必要とする患者を早期に特定することができるように、既存の治療法と併せて使用されて、対象が膀胱がんを有する又は膀胱がんが進行しているかどうかを判断することができる新規の診断バイオマーカーを同定するという、満たされていない必要性が存在する。このような方法論は、非侵襲的であり、多重検査及び/又は複数の試料を一度に処理することができる当技術分野の診断検査システムの状態で展開することができるとすれば、特に好都合であると考えられる。
【解決手段】本開示は、対象から得た膀胱試料中のK17発現を検出及び分析するための方法を提供する。本開示はまた、試料中のK17の発現を検出することによって哺乳動物の対象を膀胱がんと特定するための方法及びキットに関する。本方法は、対象の膀胱から得た試料中のケラチン17のレベルを決定するための、細胞ベース及び無細胞の両方の方法を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のケラチン17発現を検出するための方法であって、
対象から膀胱組織または細胞試料を受け取る工程であって、前記試料が複数の膀胱細胞を含む、工程と、
前記試料中のケラチン17(K17)タンパク質発現を検出する工程であって、前記細胞を抗K17抗体と接触させること、及び細胞中の前記K17タンパク質と抗K17抗体との間の結合を免疫組織化学分析によって検出することを含む工程と、
K17染色によりK17発現について前記細胞をスコアリングする工程であって、K17染色が2+であるならば、前記対象が膀胱がん細胞を有する、工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記膀胱組織試料を加工する工程を更に含み、前記加工する工程が、膀胱組織試料を解体して細胞を単離することと、溶解溶液中で単離した細胞を溶解することと、溶解溶液からタンパク質を単離することと、トリプシンを含む消化溶液中で単離したタンパク質を消化することと、得られた混合物を遠心分離に供することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、膀胱組織及び尿からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記膀胱組織が、生検組織、又はホルマリン固定パラフィン包埋組織試料である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の膀胱細胞が、移行上皮細胞、結合組織細胞、筋肉細胞、脂肪細胞、又はそれらの組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象の膀胱がんを検出する方法であって、
対象から尿試料を受け取る工程であって、前記試料が複数の膀胱細胞を含む、工程と、
前記試料の前記膀胱細胞中のK17タンパク質発現を検出する工程であって、前記検出が、前記細胞を抗K17抗体と接触させる工程、及び細胞中のK17タンパク質と抗K17抗体との間の結合を検出する工程を含む、工程と、
複数の膀胱細胞を含む対照尿試料を受け取る工程と、
前記対照尿試料中のK17タンパク質発現を検出する工程であって、前記検出が前記対照尿試料を抗K17抗体と接触させる工程、及び前記対照尿試料中のK17と抗K17抗体との間の結合を検出する工程と、
前記対照尿試料中のK17発現の量と比較して、試料中でK17タンパク質発現の量の10倍~60倍の間の増加が検出される場合、対象が膀胱がんであると検出する工程と
を含む、方法。
【請求項7】
前記膀胱がんが尿路上皮がんである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記尿路上皮がんが、低悪性度乳頭状新生物、低異型度乳頭状尿路上皮がん、高異型度乳頭状尿路上皮がん、又は移行尿路上皮がんである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗K17抗体が、抗ヒトK17マウスモノクローナル抗体[E3]である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
試料中のK17タンパク質発現が、免疫組織化学、組織マイクロアレイ、免疫細胞化学的分析、ウエスタンブロッティング、フローサイトメトリー、マイクロ流体検出、及びELISAからなる群から選択される方法によって検出される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
試料中のK17タンパク質発現が、免疫組織化学、又は免疫細胞化学的分析によって検出される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検出する工程が、手持ち式又は可動式検出装置の使用を含む、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その内容が全体として参照により本明細書に組み込まれている、2016年8月5日出願の米国特許仮出願第62/371,286号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本開示は、対象から得た試料中のケラチン17の量を検出するための方法に関する。本方法は、対象の膀胱がんを診断するために使用されうる。本開示の方法は、組織生検、及び細胞ベースの試料、並びに尿試料などの無細胞の試料を用いて実施されうる。本開示は、尿(無傷細胞を含有していても含有していなくてもよい)中のK17の有無を決定するための好適な方法、及び、対象の尿の無細胞部分の中のK17タンパク質又はmRNAの検出によって膀胱組織中のサイトケラチン17の発現レベルを見積もって、その対象における膀胱がんの存在を判定するための方法を、更に提供する。
【背景技術】
【0003】
膀胱がんは、米国では、男性では4番目に多くみられる悪性腫瘍であり、新規に診断される全てのがんのうちの約5%を占めている。American Cancer Society. Cancer Facts & Figures 2016、Atlanta、Ga: American Cancer Society (2016)を参照されたい。全膀胱がんの約半数は、最初は膀胱壁の内層[すなわち、尿路上皮(移行上皮としても知られる)]に確認され、非浸潤性若しくは上皮内がん、又は尿路上皮癌(移行上皮癌の別名でも知られる)とみなされる。Grossman, HBら、JAMA. (2005) 293:810~816頁を参照されたい。膀胱がん患者の約3人に1人が、膀胱壁の下にある筋層へのがんの浸潤を示す。治療様式の進歩によって、早期診断された(すなわち、第0期又は第I期膀胱がん)対象の生存率は上昇しており、早期診断された対象の平均の5年生存率は85~98%の間である[American Cancer Society. Cancer Facts & Figures 2016、Atlanta、Ga: American Cancer Society (2016)]。逆に言えば、診断が後期に至ると、より一層厳しい転帰となり、したがって、第II期又は第III期の膀胱がんであると診断された対象の平均の5年生存率は45%~65%の間である。Kaufman DSら、Lancet. (2009) 374:239~249頁、American Cancer Society. Cancer Facts & Figures 2016、Atlanta、Ga: American Cancer Society (2016)、及びSoloway MS. Urology. (2006) 67: 3~10頁を参照されたい。
【0004】
膀胱がんを検出する現行の方法は、尿検査(すなわち、尿中の血液の検出)を含み、様々な市販の検査:Immunocyt(商標)、NMP22 BladderChek(登録商標)、BTAstat(登録商標)テスト、及びUroVysion(登録商標)膀胱がんキット、が使用されている。Immunocyt(商標)は、ムチン、及びがん胎児性抗原(CEA)の存在について対象の尿を検査する。NMP22 BladderChek(登録商標)によるスクリーニングでは、特異的タンパク質であるNMP22が対象の尿中に存在するかどうかを判定する。BTAstat(登録商標)テストは、がんバイオマーカーとしてのヒト補体因子H関連タンパク質(hCFHrp)を検出するように設計されている。これは、高異型度尿路上皮がん検出には比較的感度が高いが、治癒の最良の好機を与える、低異型度病変(すなわち、第0期~第I期の膀胱がん)の検出は概してできない。UroVysion(登録商標)膀胱がんキットは、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)によって、膀胱がんを有することが疑われる対象からの尿標本における3番、7番、17番染色体の異数性、及び9p21座位の欠失を検査する。最も低い異型度の腫瘍は二倍体であるためUroVysion(登録商標)膀胱がんキット検査では陰性となり、このため、BTAstat(登録商標)テストと同様に、UroVysion(登録商標)は膀胱粘膜の低異型度の腫瘍を効果的に検出することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】American Cancer Society. Cancer Facts & Figures 2016、Atlanta、Ga: American Cancer Society(2016)
【非特許文献2】Grossman, HBら、JAMA. (2005) 293:810~816頁
【非特許文献3】Kaufman DSら、Lancet. (2009) 374:239~249頁
【非特許文献4】Soloway MS. Urology. (2006)67:3~10頁
【非特許文献5】Escobar-Hoyos, L.F.ら、Modern pathology (2014) 27(4):621~630頁
【非特許文献6】Schmittgen及びLivak、Nature protocols (2008) 3: 1101~1108頁
【非特許文献7】Edge SB及びCompton CC. Annals of surgical oncology. (2010) 17:1471~4頁
【非特許文献8】L. Escobar-Hoyosら、Cancer Res. 2015 Sep 1;75(17):3650~62頁
【非特許文献9】Schneider CAら、Nat methods. (2012)9:671~5頁
【非特許文献10】Ruifrok AC、Johnston DA、Anal Quant Cytol Histol. (2001) 23:291~9頁
【非特許文献11】Youden WJ. Cancer. (1950) 3:32~5頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、治療を必要とする患者を早期に特定することができるように、既存の治療法と併せて使用されて、対象が膀胱がんを有する又は膀胱がんが進行しているかどうかを判断することができる新規の診断バイオマーカーを同定するという、満たされていない必要性が存在する。このような方法論は、非侵襲的であり、多重検査及び/又は複数の試料を一度に処理することができる当技術分野の診断検査システムの状態で展開することができるとすれば、特に好都合であると考えられる。本開示の方法は、これらの満たされていない必要性に対応し、既存の検査のよりも、有効な治療、並びに患者の良好な転帰及び長い生存時間を可能にするものである。
【0007】
ケラチン17(K17、KRT17、又はサイトケラチン17)は、中間径フィラメント細胞骨格ファミリーのメンバーの1つで、ある種の特定のがん、すなわち、膵臓及び子宮頸がんに対する、予後及び診断バイオマーカーとして同定されている。Escobar-Hoyos, L.F.ら、Modern pathology (2014) 27(4):621~630頁を参照されたい。しかしながら、本開示は、K17が全てのがんの中で過剰発現しているわけではないことを確認している。例えば、
図1は、子宮頸がん及び膵臓がんなどのある種のがんでは、K17は上昇して(高度に発現されて)いるが、肝臓、結腸、腎臓、脳及びリンパ節がんなどの多くの他のがんではK17の発現は高くないことを明確に示している。がんにおけるK17発現は一般に、器官及び腫瘍タイプ特異的である。特に、本開示は、膀胱がんを有する対象の膀胱組織において、健常な対象の膀胱組織及び尿試料から決定されたK17発現レベルと比較してK17発現のレベルが上昇していることを検出して、K17の検出により信頼性の高い膀胱がんの診断検査を可能にすることができることを初めて確認するものである。
【0008】
本開示は、診断用の膀胱がんバイオマーカーとしてのK17の有用性を確認し、検証し、対象の膀胱がんを検出するための高感度の方法を提供する。本方法はまた、非侵襲的で安価な検査によって、患者が膀胱がんを有することを確証するために高価で侵襲的な手順を必要とする既存の診断に比べて予想外の前進がもたらされるであろう、膀胱がんを有することが既知ではない患者での使用についても好都合である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、ケラチン17が、好ましい治療転帰の可能性が最も高い早期の膀胱がんを含む、膀胱がんを診断するためのバイオマーカーであることを明らかにする。本開示はまた、信頼性が高く非侵襲的な膀胱がん診断が自然尿を使用して可能であることも明らかにする。例えば、本明細書におけるデータは、改善された診断が、単に現行の非侵襲的検査方法を悩ます「偽陰性」の読み取り量を低減させることによって、尿検査だけに基づきなされうることを示す。本明細書で示したデータはまた、早期及び高異型度の膀胱がんを有する対象ではK17レベルが(対照試料と比較した場合)上昇したが、正常な良性膀胱粘膜(すなわち、非癌性対照組織)では存在しない又は低レベルで検出されることも示す。まとめると、本開示は、K17発現の増加が膀胱がんの発生及び進行において重大な事象であること、並びに、K17発現が対象の膀胱がんの診断指標として測定されうることを初めて示す。
【0010】
したがって、本開示の一態様では、対象におけるK17の量を決定するための方法が提供される。ある実施形態において、対象は、膀胱がんを有する又は膀胱がんを有する可能性がある。本方法の典型的な実施形態において、膀胱細胞の試料は対象から得られ、次いで、試料は、試料中のK17の発現を検出するために標識される。ある実施形態において、K17の存在は、試料中のK17タンパク質への抗体の結合を通して検出される。別の実施形態において、K17の存在は、RT-PCRによるなど、試料中のK17 mRNAのレベルを測定することによって検出される。他の実施形態において、K17発現が試料中で検出され、対照試料(例えば、参照試料又は標準物質)のK17発現と比較してK17レベルが対照試料のK17レベルより増加している場合、対象は膀胱がんを有する。ある実施形態において、試料は、膀胱組織生検ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料、又は尿試料である。幾つかの実施形態において、対照試料は、健常な対象からの良性の膀胱粘膜、尿路上皮細胞、又は移行上皮細胞である。他の実施形態において、対照試料は、標準物質であり、既知量のK17タンパク質又は核酸を含有する参照試料であってもよく、或いは単に、試料中で検出された特定量のK17タンパク質若しくは核酸に基づき陽性、陰性又は結果なしを示す、読み出し又は指示であってもよい。他の実施形態において、試料は尿であり、尿は、1つ又は複数の、膀胱細胞又は膀胱がん細胞を含有するものとする。幾つかの実施形態において、試料は、細胞を含有しないことが明らかとなる。特定の実施形態において、検出された膀胱がんは、尿路上皮がんである。ある実施形態において、尿路上皮がんは、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP)、低異型度乳頭状尿路上皮癌(LG)、高異型度乳頭状尿路上皮癌(HG)、又は移行尿路上皮がんなどの乳頭状がんである。他の実施形態において、検出された膀胱がんは、膀胱の平坦状尿路上皮内癌(非浸潤性平坦状尿路上皮癌)などの平坦状がんである。更に他の実施形態において、検出された膀胱がんは、例えば、浸潤性尿路上皮細胞がんなどの浸潤性がんである。ある実施形態において、検出された膀胱がんは、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、又は肉腫である。本方法の幾つかの実施形態において、試料中のK17発現の有無又はレベルは、免疫組織化学的染色、若しくは免疫細胞化学的分析によって、又はmRNA検出によって決定される。
【0011】
本開示の別の態様において、無細胞試料中のK17発現を検出するための方法が提供される。ある実施形態において、対象は、膀胱がんを有する、又は膀胱がんを有する可能性がある。本方法の典型的な実施形態において、試料は対象から得た自然尿である。他の実施形態において、自然尿試料は、細胞を含有しない、又は前記試料から全細胞を除去するように処理されている。特定の実施形態において、無細胞尿試料は対象から得られる。次いで、この試料を、抗K17抗体と接触させて試料中のK17の量を検出する。ここでは、試料中のK17の量は、対象の膀胱中のK17の量を反映することとなる。ある実施形態において、K17の存在は、試料中のK17タンパク質への抗体の結合を通して、又は質量分析を通して検出される。ある実施形態において、K17の量は、試料中のK17 mRNAを検出することによって決定される。幾つかの実施形態において、方法は、定性的(すなわち、試料中で検出されたK17のどんな量も膀胱がんを示す)、又は定量的(所定のレベルを超える量のみ、対象が膀胱がんを有することを示す)であってもよい。定量的実施形態において、K17発現は、対照試料のK17タンパク質又はK17 mRNAの量と比較した試料中で検出されたK17タンパク質又はK17 mRNAの量に基づいて決定され、K17レベルが対照試料のレベルを超えて増加している場合、対象は膀胱がんを有する。幾つかの実施形態において、対照試料は、健常な対象からの尿、若しくは既知量のK17タンパク質若しくはmRNAを含む溶液、又は単に既知量、若しくは特定量に対する標準セットである。特定の実施形態において、検出された膀胱がんは、尿路上皮がんである。ある実施形態において、検出された尿路上皮がんは、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP)、低異型度乳頭状尿路上皮癌(LG)、又は高異型度乳頭状尿路上皮癌(HG)などの乳頭状がんである。他の実施形態において、検出された膀胱がんは、膀胱の平坦状上皮内がん又は非浸潤性平坦状尿路上皮がんなどの平坦状がんである。更に他の実施形態において、検出された膀胱がんは、浸潤性がん、例えば、浸潤性尿路上皮がん又は移行上皮がんなどである。ある実施形態において、検出された膀胱がんは、扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、又は肉腫である。本方法の幾つかの実施形態において、試料中のK17発現のレベルは、ELISAによって決定される。本方法の他の実施形態において、K17発現レベルは、膀胱細胞又は尿中のK17 mRNAの量を検出することによって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ケラチン17発現が様々なタイプのがんで異なることを示すヒストグラムである。RNA発現データは、National Cancer InstituteからのTCGAデータポータルをデータマイニングすることによって評価した。ヒストグラムは、子宮頸、膀胱及び膵臓がんなどのK17発現が上昇したあるタイプのがんについて、K17発現を対数スケールで示している。チャートは更に、結腸、肝臓、脳及びリンパがんなどの多くのタイプのがんは比較的低いレベルのK17を発現していることを示している。
【
図2】尿細胞診試料中のK17免疫細胞化学的局在化を示す画像である。ケラチン17発現は、標識された細胞質K17(濃い色の細胞)の検出によって示すことができるのに対し、他の非癌性細胞ではK17の標識が認められない(正常な非標識細胞)。
【
図3】
図3A~Dは、尿のケラチン17の免疫細胞化学を示す画像である。(a)稀な良性細胞のK17染色、4倍拡大率;(b)稀な良性細胞のK17染色、40倍拡大率(c)増加した(2+)K17染色、4倍拡大率;(d)増加した(2+)K17染色、20倍拡大率。稀な事例として、正常な尿細胞診試料からの良性細胞中でK17がまばらに検出された(a、b)が、尿路上皮がんを有する対象からの尿路上皮細胞中ではK17染色は強い陽性を示した(c、d)。
【
図4】
図4A~Dは、ケラチン17の免疫細胞化学を示す画像である。(a、b)ほとんどの正常な扁平上皮細胞、及び尿路上皮細胞(c、d)はK17について陰性であり、すなわち、ケラチン17染色は示していない。
【
図5】
図5A~Dは、膀胱の組織形態を示す画像である。(a、b、d)良性の膀胱粘膜中では、僅かな限局性のK17の染色しか検出されなかった(c)。
【
図6】
図6A~Dは、K17の増加が尿路上皮腫瘍の全ての異型度において検出されたことを示す画像である。(a)低悪性度乳頭状尿路上皮新生物;(b)隣接する対照の尿路上皮粘膜から変移する、低異型度乳頭状尿路上皮がん;(c~d)高異型度乳頭状尿路上皮がん。免疫組織化学的分析は、異常な尿路上皮細胞(すなわち、腫瘍組織)全般にわたり、広汎で強いケラチン17発現がみられ(a、b)、高異型度尿路上皮がんではより病巣性のK17発現を示す(c、d)ことを示している。
【
図7】
図7A~Dは、浸潤性尿路上皮がんにおける増加したケラチン17の免疫組織化学を示す画像である。(a)非新生物の尿路上皮粘膜の直下にみられる浸潤性がん;(b)血管周囲軟膀胱組織における浸潤性がん;(c)がんの浸潤の最前線でのK17発現;(d)腫瘍細胞による粘膜固有層の浸潤。試験した組織試料は全て、浸潤性尿路上皮がんを有する対象から得た腫瘍細胞で、正常な患者からの組織と比較して、ケラチン17発現が増加していることを示している。
【
図8】
図8A~Bは、マイクロ流体検出法(microfludic detection method)を使用したケラチン17の検出を示す図である。(a)HeLa及び(b)C33細胞の試料を分析した。データは、C33(K17陽性は35.1%)細胞と比較して、HeLa(K17陽性は90.4%)で検出されたK17標識された細胞が有意に多いことを示している。これらのデータは、K17の検出が、マイクロ流体装置とK17免疫染色方法とを併用して効率的に得ることができることを示しており、したがって、K17 mRNA検出及び定量化方法に加え、マイクロ流体装置も本方法を実施するための好適な手段である。
【0013】
表1:対照の尿路上皮粘膜、及び尿路上皮膀胱がんにおけるケラチン17染色について示す表である。対照試料(良性)、及び早期尿路上皮膀胱がん(PUNLMP、LG、HG)の平均PathSQスコアは、対照の膀胱組織試料と尿路上皮がん組織試料(p<0.001)とにおけるK17発現の有意差を示している。
【0014】
表2:尿細胞診試料におけるK17発現の免疫細胞化学的分析を示す表である。データは、膀胱がんを有する患者からの尿試料の臨床診断(悪性腫瘍が陽性)を、膀胱がんを有しない患者からの尿試料の臨床診断(悪性腫瘍が陰性、又は悪性腫瘍が疑わしい)に対して比較している。これらのデータは、膀胱がんを有する対象(T3~T7)から得た試料は全て、K17の染色が陽性であることを示している。対照的に、非癌性患者から得た尿試料では、検出可能なレベルの膀胱細胞が存在する場合でも、K17標識は認められなかった(N1、N7、N8)。
【0015】
表3:尿から単離された細胞の免疫細胞化学的染色によるK17発現の検出を示す表である。表3は、分析した総計104例の患者試料について、4つの独立した試験からの得た結果を示す。本方法を使用して、膀胱がんを有する対象からの試料39例、及び良性組織からの試料65例を分析した。各試験について、K17検出方法の感度及び特異度を示す。結果は、K17ベースの本診断方法が、93%の平均感度及び91%の平均特異度を有することを示している。
【0016】
表4:尿の無細胞成分中のケラチン17タンパク質の検出のために使用したELISAの検出限度。表4は、ELISAによる試験でK17標準物質(組換えK17タンパク質)から得たK17検査結果を、平均、標準偏差、及びパーセント変動係数(%CV)で示す。陽性シグナルのカットオフ値は、K17陽性の判定が陰性対照の平均の標準偏差の3倍(ゼロ標準の平均+[3×ゼロ標準の標準偏差])であるように、陰性対照(ゼロ標準/K17タンパク質なし)から決定した。
【0017】
表5:膀胱がんの対象からの無細胞尿試料中のK17タンパク質の検出を示す表である。表5は、検査した尿試料21例(癌性6例、良性/対照15例)から得たデータを示す。K17が陽性である試料は、平均光学密度(OD)は少なくとも0.081で、%CVは20%未満である。データは、がん6例のうちの4例がK17に陽性を示し、被験良性試料はいずれもK17に陽性を示さなかったことを示している。
【0018】
表6:定量的RT-PCRによるK17 mRNAの検出のためのプライマーセットを示す表である。表6は、RT-PCRによるK17 mRNAの検出及び/又は定量化で使用するプライマーペアを例示する。表6に例示したプライマーなどの本発明の好適なプライマーは、K17 mRNAから生成されたcDNAが試料中に存在する場合にのみ予想したサイズの産物のPCR増幅が起こるように、17Kイントロンをカバーする産物を生成することが設計されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
現在までのところ、膀胱がん、具体的には、早期ステージの膀胱がん(例えば、尿路上皮がん)の診断マーカー(例えば、免疫組織化学的マーカー)は、例えば侵襲的な手順などのin situ及び/又は生検の視覚化を行うゴールドスタンダードと比較して、僅かに診断精度を向上させているに過ぎない。これに対し、本開示は、新規バイオマーカー、K17を同定し、特徴づけし、検証し、現行の技術と比較して改善された診断精度を有する新規の方法論を提供するものであり、膀胱組織の免疫組織化学的染色、及び尿細胞診試料をスクリーニングするための免疫細胞化学的技術、又はK17 mRNAを検出するための核酸ベースの検査を使用する早期の膀胱がんの検出における使用に好都合である。本開示はまた、膀胱組織、及び無細胞尿試料を含む尿試料中のK17タンパク質又はmRNAレベルの検出を通して、対象を膀胱がんであると診断するための無細胞ベースの方法も提供する。
【0020】
専門用語
本開示で使用される「ペプチド」又は「タンパク質」という用語は、隣接するアミノ酸残基のアルファアミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに連結した、直鎖状に連続するアミノ酸残基を指す。一実施形態において、タンパク質はケラチン17(K17)である。
【0021】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、一本鎖又は二本鎖型を含むあらゆる種類の、1つ又は複数のヌクレオチド塩基を指す。本開示の一態様において、核酸はDNAであり、別の態様において、核酸は、例えばmRNAである。本開示の方法の実施において、本方法によって分析される核酸(例えば、K17 RNA)は、1つ又は複数の試料に由来する。
【0022】
本明細書で使用される「サイトケラチン17」、「ケラチン17」、「KRT17」、及び「K17」という用語は、受託番号NG_008625に記載されている、17番染色体に位置しI型中間径フィラメント鎖ケラチン17コードする、ヒトケラチンであるII型細胞骨格ケラチン4遺伝子又はそれらの産物を指す。K17の意図された意味の範囲には、受託番号NM_000422に記載のケラチン17 cDNA配列のmRNA転写物、及びそれから翻訳された、例えば、受託番号NP_000413に記載のケラチン、1型細胞骨格タンパク質17又はそれらの相同体を含むタンパク質が含まれる。
【0023】
本明細書で使用される「対象」、「検査対象」、又は「患者」という句は、あらゆる哺乳動物を指す。一実施形態において、対象は、膀胱がん診断(例えば、尿路上皮癌)の志願者、又は尿路上皮新生物などの前癌性病変を有する個人である。ある実施形態において、対象は膀胱がんを有すると診断されており、対象はその治療の志願者である。本開示の方法は、がんを発現するリスクを有する、又はがんであると診断されているあらゆる哺乳動物の対象に対して実施することができる。特に、本明細書に記載の方法は、ヒトに対して実施される場合に最も有用である。
【0024】
本開示で使用される「生物学的試料」、「検査試料」、又は「試料」は、当業者に既知の任意の方法で得ることができる。試料は、膀胱組織、尿、又はそれらの組合せを含む、対象の任意の部分から得ることができる。ある実施形態において、試料は、対象の膀胱から摘出された、組織生検、新鮮組織、又は生組織である。特定の実施形態において、試料は、膀胱壁、例えば膀胱の移行上皮、結合組織、筋肉組織、又は脂肪組織からの細胞の採取物である。他の実施形態において、試料は、本開示の方法における使用に先だって加工される。例えば、ホルマリン固定及びパラフィン包埋は臨床組織標本の組織学的保存及び診断のために有益であり、ホルマリン固定パラフィン包埋組織は新鮮組織又は凍結組織より大量に利用し易いため、対象から単離されホルマリン固定パラフィン包埋された組織試料が本開示の方法において有用である。幾つかの実施形態において、細胞を遠心分離によって又は濾過によって尿から収集し、収集した細胞を検査のために使用する。当業者は、用いる検査によって異なると思われる、K17タンパク質又はmRNAの回避可能な分解を防ぐ方法で、試料を採取し、加工し、検査することを保証することに注意することとなる。特定の実施形態において、試料は、対象から得たある量の尿であり、したがって、尿は、検出可能な量の細胞を有する場合又は有しない場合がある(すなわち、試料は、無細胞である場合又は無細胞ではない場合がある)。ある実施形態において、試料は、K17タンパク質又はmRNAを含有する無細胞尿試料である。
【0025】
本明細書で使用される「対照試料」、「非癌性試料」、又は「正常試料」とは、K17の上昇を示さない、及び/又はK17がないこと若しくはK17レベルの低減(「低減」とは、がんを示す標準値又は他の既知の値との比較的においてである)を示す試料である。ある実施形態において、対照試料は癌性細胞を含有しない(例えば、正常な膀胱粘膜、良性の膀胱粘膜細胞、及び膀胱の尿路上皮又は移行上皮由来のその他の非癌性細胞を含む、良性の組織成分であるが、それだけに限定されない)。特定の実施形態において、対照又は正常試料は、K17染色又は発現を示さない良性の組織由来の試料である。本開示で使用する対照試料の非限定的な例としては、非癌性組織摘出物、対象から摘出された切除断端、K17レベルが正常である若しくは低減していることが既知である単離細胞、又は他の健常な個人から得た良性の試料若しくは尿が含まれる。一実施形態において、対照試料は、健常な個人からのヒトの尿、又は何も代用していない若しくは所定量のK17タンパク質又は核酸で代用した調合尿である。一実施形態において、本開示の対照試料は、当該対象から得た良性の膀胱組織である。特定の他の実施形態において、対照試料は、健常な対象(すなわち、がんがない患者)から得た尿細胞診試料である。特定の実施形態において、対照試料は、対象から得たある量の無細胞の尿であり、したがって、尿は、検出可能な量のK17タンパク質又は核酸を含んでいない。他の実施形態において、対照試料は、対象から得たある量の無細胞の尿であり、したがって、無細胞尿試料は、既知量の検出可能なK17タンパク質又は核酸を含む。
【0026】
「増加する」、又は「より高い」若しくは「上昇した」という用語は、少なくとも、対照試料で確認された、測定された、又は分析された実体(K17発現又は量など)の相対量を超えていることを意味する。非限定的な例としては、対照試料の量から50%の増加、又は陰性対照試料の量から少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、1000%、若しくはそれより高い増加が含まれるが、それだけに限定されない。特定の実施形態において、対象が膀胱がんを有することを示すK17発現には、対照試料が示したK17発現の量と比較して少なくとも1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、13倍、15倍、20倍、25倍、30倍、又はそれより高い増加が含まれる。本開示で使用される「K17発現のレベルの増加」とは、対照若しくは正常なK17発現のレベルとの比較における、又は参照試料若しくは標準物質によるセットで測定したK17発現のレベルとの比較における、細胞、生物若しくは試料中に存在する、K17タンパク質若しくはそれらのペプチド断片又はRNAの量の増加を意味することとする。ある実施形態において、試料中の任意の量のK17の検出とは、対照の量を超える増加である。ある特定の実施形態において、膀胱がんと対応するケラチン17発現のレベルの増加は、対照試料又は標準物質としてのセットが示したK17発現の量と比較して少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、13倍、15倍、20倍、25倍、30倍、又はそれより高いK17発現の増加があることによって実証される。
【0027】
「低下した」又は「低下」という用語は、少なくとも、対照試料又は標準物質によるセットにおいて確認された、測定された、又は分析された実体の相対量未満であることを意味する。
【0028】
本明細書で使用される「膀胱がん」という句は、膀胱の細胞又は組織における悪性腫瘍を含む。膀胱がんは、例えば、尿管、膀胱、尿道、及び腎臓の一部の内部を覆う尿路上皮又は移行上皮と呼ばれる細胞層における悪性腫瘍を含む。特定の事例において、膀胱がんは、膀胱壁の結合組織、筋肉、又は脂肪層における癌性細胞の存在を含む。本開示の膀胱がんは、浸潤性又は非浸潤性の、膀胱の乳頭状又は平坦状がんであってもよい。「乳頭状がん」は、膀胱の内部表面から膀胱の中空の中心に向かって成長する、細長い指状の突起が典型である。膀胱壁の深い組織層へと成長することなく膀胱の中心に向かって成長する乳頭状腫瘍は、非浸潤性乳頭状膀胱がんである。ある実施形態において、膀胱がんは、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP)である。他の場合において、膀胱がんは、低異型度(成長が遅い)乳頭状尿路上皮癌(LG)、又は高異型度乳頭状尿路上皮癌(HG)である。他の実施形態において、膀胱がんは、移行尿路上皮がんである。「平坦状がん」は、膀胱の中空部に向かって成長せず、主に膀胱壁の移行上皮に取って代わる膀胱がんである。ある実施形態において、膀胱がんは、非浸潤性の平坦状がん又は平坦状上皮内癌(CIS)である。他の実施形態において、膀胱がんは、膀胱壁の扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、又は肉腫である。本開示の方法を使用して検出可能な膀胱がんは、低又は高異型度がんなどの「異型度」を分類することができる。「低異型度膀胱がん」は、正常又は対照の膀胱尿路上皮細胞が発生する尿路上皮細胞から構成され、治療に対する反応について概して予後が良好又は好ましい。「高異型度膀胱がん」は、正常又は対照の組織と識別できる、膀胱細胞の殆ど分化していない又は未分化のサブセットである。高異型度膀胱がんは、低異型度がんと比較して、概してより浸潤性で予後不良である。
【0029】
方法
本開示は、膀胱がんのバイオマーカーとしてケラチン17使用するための方法を説明する。ここでは、様々な診断カテゴリー(すなわち、非癌性膀胱粘膜、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP)、低異型度乳頭状尿路上皮癌(LG)、及び高異型度乳頭状尿路上皮癌(HG)、又は移行尿路上皮がん)について、ホルマリン固定パラフィン包埋試料又は尿細胞診試料から得た顕微解剖組織切片中で、K17 RNA又はタンパク質の発現を免疫組織化学、免疫細胞化学、溶液若しくは固相タンパク質アッセイ(例えば、ELISA、マイクロ流体、フローサイトメトリー、質量分析)によって検出、又は(例えば、Q-RTPCRなどのRT-PCR方法論によって)K17 mRNAを検出若しくはK17 mRNAのレベルを測定した。データは、K17が、対照(良性)試料とPUNLMP試料との間で発現に約30倍の差異;対照試料とLG膀胱がん試料との間で発現に15倍の差異;及び対照試料とHG膀胱がん試料との間でK17発現に13倍の差異を示したことを示す。したがって、本開示は、K17発現は、測定することができ、膀胱がんの診断のための診断バイオマーカーとして使用することができることを示すものである。
【0030】
本開示の一態様は、対象を膀胱がんであると診断するための方法であって、対象から検査試料を得る工程と、試料中のK17発現のレベルを検出する工程とを含み、これによって、対照試料のK17発現のレベルと比較した試料中のK17発現のレベルの増加から対象が膀胱がんを有すると同定する方法を提供する。別の実施形態において、K17発現のレベルは、定性的又は定量的方法でK17 mRNAの存在を検出することによって決定される。特定の実施形態において、K17発現のレベルは、定性的又は定量的方法でK17タンパク質の存在を検出するイムノアッセイによって決定される。
【0031】
ある実施形態において、K17発現は、試料中でK17と抗K17抗体との間の結合を検出することによって決定される。本開示の一実施形態において、生物学的試料(すなわち、検査試料、又は対照試料)は、当該対象から得られる。本方法に従って使用することができる生物学的試料は、当業者に既知の様々な手段によって採取してもよい。本方法で使用する試料採取技術の非限定的な例としては、細針吸引生検、外科的切除生検、内視鏡生検、及び切除生検が挙げられる。他の実施形態において、K17レベルは、がんを有することが疑われる対象から得た尿の試料中で検出することができ、尿試料は、試料中のK17タンパク質又はK17 mRNAの量を決定する検査にかけられる。ある実施形態において、尿試料は、検査の間に、細胞の存在について分析されてもよく、又は尿から細胞を収集するために処理されてもよい。しかしながら、様々な他の実施形態において、試料は、細胞の有無に左右されない方法で加工される。特定の実施形態において、K17発現は、膀胱がん患者からの無細胞の試料中で、又は更に自然尿の無細胞部分からの尿試料中で検出することができる。他の実施形態において、試料は、検出可能な量(数)の細胞を含有する自然尿試料である。医師によって安価で高感度(偽陰性が殆どない)且つ高精度(偽陽性が殆どない)で自然尿試料中の膀胱がんが検出できるようになることによって、本方法は現行の診断を超えた利益をもたらすものである。
【0032】
幾つかの実施形態において、方法は、非癌性組織、又はがんを有さない対象の尿から得られうる対照試料を含む。
図3A~B及び
図4C~Dに示したように、対照試料には、検出可能な量の良性の尿路上皮細胞を含有する自然尿を含んでもよい。他の実施形態において、対照試料は、
図4A~Bに示したように、検出可能な量の正常な扁平細胞を含有する自然尿である。更に他の実施形態において、対照試料(非癌性)には、ケラチン17染色を示さない、膀胱粘膜組織(
図5A、B及びD)又は良性の膀胱粘膜組織(
図5C)を含んでもよい。他の実施形態において、対照試料は、増加した(強い)レベルのK17染色を示す膀胱がんを有することが既知である対象から得た試料などの陽性対照であってもよい。例えば、陽性対照試料は、
図3C~Dに示したように、強い(増加した)量のケラチン17発現を示す検出可能な量の尿路上皮がん細胞を含有する自然尿である。更に他の実施形態において、陽性対照試料(癌性)は、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(
図6A)、低異型度尿路上皮癌(
図6B)、高異型度乳頭状尿路上皮がん(
図6C~D)、又は浸潤性尿路上皮癌(
図7A~D)を有する対象から得た組織を含む。陽性対照試料として利用される細胞又は組織のタイプにかかわらず、このような細胞は、K17発現レベルの増加を示していなければならない。更に、特に、本開示の処理能力の高い実施形態において、本方法は、対照がないような、或いは対照が調合された液体若しくは材料、又は使用者若しくは機器製造者が設定した所定値でもあるような、自動装置及びコンピューターで制御された分析手法で展開されることとなる。
【0033】
膀胱がんの結果、尿中にがん細胞が存在すると考えられる一方で、がん患者からの無細胞尿試料中のK17の量がこのような試料と正常(非癌性)試料とを区別しうるに十分なものであることは、本開示の予想外の態様である。更に、細胞ベースのアッセイの品質管理及び細胞回収工程が高価であるため、本開示のこの実施形態の実施態様は、現行の侵襲的検査に伴う費用を著しく低減させるものである。したがって、幾つかの実施形態において、試料は、検出可能な量の細胞を含まない液体である尿、すなわち、無細胞の試料である。これらの特定の実施形態のためには、対照試料は、予め決定された(既知の)量のK17タンパク質又はRNAを含有する無細胞の尿試料であってもよく、その量は皆無でも又は検出限度未満であってもよい。幾つかの実施形態において、無細胞の尿試料は、検出可能な量のK17タンパク質又はRNAを含有する(例えば、膀胱がん患者からの試料、又は対照試料)。他の実施形態において、無細胞の尿試料は、検出可能な量のK17タンパク質又はRNAを含有しない(陰性対照試料、又は膀胱がんを有さない対象からの試料)。利用した方法が自然尿の無細胞の部分の中のケラチン17発現を分析する実施形態において、対照試料は、既知量のK17タンパク質(陰性対照では0でありうる)を含む液体試料(例えば、尿)、又は健常な患者からの正常な膀胱細胞の液体試料であってもよい。他の実施形態において、対照試料は、膀胱がんを有することが既知である対象からの既知量のK17タンパク質を含む又は対象が膀胱がんを有さない場合に予想される量より高いと考えられる量のK17タンパク質を含む液体試料(例えば、尿)などの、陽性対照でありうる。
【0034】
ある実施形態において、対象から得た試料は、ホルマリン固定、急速冷凍、又はパラフィン包埋などの予備的処理又は加工を何ら施すことなく直接使用される。特定の実施形態において、生物学的試料は、対象から得て、ホルマリン処理、及びホルマリン固定試料のパラフィンへの包埋によって加工してもよい。ある実施形態において、試料は、使用の前に保管されていてもよい。したがって、本診断方法は、オートステイナーLink(Dako社)、ディスカバリーXT及びベンチマークXT(Ventana Medical Systems社)、Leica(登録商標)ST5010オートステイナーXL、Leica(登録商標)マルチステイナーST5020(Leica Biosystems Nussloch社)、オートステイナーLink48(Agilant社)、並びにLab Vision(商標)オートステイナー360-2D、Lab Vision(商標)オートステイナー480s(Thermo Fisher Scientific(商標)社)などの免疫組織化学染色装置(例えば、自動染色装置)での使用のための調製を含む、複数の調製方法を使用して適用することができる。
【0035】
幾つかの実施形態において、本方法で使用される試料は、対象から得られた尿である。ある実施形態において、尿試料は、K17発現について検査、分析することができる検出可能な量の細胞を含む。幾つかの実施形態において、細胞は、対象の膀胱壁由来である。特定の実施形態において、試料は、K17を発現する検出可能な量の細胞を含有する。
【0036】
好適な試料を得た後、試料中のK17発現のレベルは、当業者によって既知の様々な技術を使用して決定されうる。本開示ある実施形態において、K17発現レベルは、免疫組織化学(IHC)、qRT-PCR、ノーザンブロッティング、ウエスタンブロッティング、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、マイクロアレイ分析、又は質量分析によって測定されてもよい。特定の実施形態において、K17は、溶液相タンパク質アッセイ(例えば、ELISA、マイクロ流体、フローサイトメトリー)によって検出される。特定の実施形態において、K17発現は、検出可能な量の膀胱細胞を含む尿試料の免疫組織化学的染色によって決定される。他の実施形態において、K17発現は、フローサイトメトリー又はマイクロ流体ベースの検出方法による、蛍光標識された細胞の検出によって決定される。特定の実施形態において、蛍光標識された細胞は、ケラチン17を発現する。幾つかの実施形態において、K17発現のレベルは、試料中のK17 mRNA又はタンパク質の存在を検出することによって決定される。幾つかの実施形態において、試料中で検出されたK17 mRNA又はタンパク質のいかなる量も、膀胱がんの診断と相関する。他の実施形態において、試料中のK17タンパク質又はmRNAの量は、対照試料中の存在量を超えていなければならない。
【0037】
抗ヒトK17マウスモノクローナル抗体[E3]、ヒトK17に対するポリクローナル抗体、哺乳動物のK17タンパク質ドメイン又はそのエピトープに対する、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体などの任意のタイプの抗体をK17抗原に対して使用してもよいが、それだけに限定されない。また、免疫グロブリン分子のキメラ型、一本鎖、Fc、Fab、Fab'及びFab2フラグメント、並びにK17タンパク質に対するFab発現ライブラリーも適用可能である。当該抗体は、免疫グロブリンの全てのクラス、サブクラス及びタイプを含み、またK17タンパク質に結合するハプテン分子(例えば、核酸、ポリマー)も含む。
【0038】
ある実施形態において、一次抗体とのインキュベーション後、試料は、ビオチン化二次抗体を使用する間接アビジン-ビオチンベース免疫ペルオキシダーゼ法によって加工し、顕色させ、ヘマトキシリンで対比染色する。次いで、スライドは、K17発現について分析することができる。
【0039】
ある実施形態において、ケラチン発現は、対応する臨床データに対し盲検で、強く染色された細胞の百分率を定量化するマニュアル半定量的スコアリングシステム、PathSQ法によって定量化される。更に別の実施形態において、スライドは、DAB-ヘマトキシリン(DAB-H)カラーデコンボリューションプラグインを使用するJava(登録商標)ベースの画像処理ソフトウエア、the National Institutes of Health ImageJ 1.46によってスコアリングすることができる。全内容が参照により本明細書に特に組み込まれている、Schneider CAら、Nat methods. (2012) 9:671~5頁を参照されたい。
【0040】
本出願のTable 1 (表1)に示したように、K17の免疫組織化学的分析は、ホルマリン固定パラフィン包埋試料上で行うことができる。ここでは、レーザーキャプチャーマイクロスコピーによって、ヘマトキシリン及びエオジン染色された組織切片からの正常な膀胱粘膜(対照試料)、PUNLMP、LG乳頭状尿路上皮がん、及びHG乳頭状尿路上皮がん検査試料の切り出しを行い、各診断カテゴリーから膀胱壁細胞を回収する。次いで、ホルマリン固定パラフィン包埋組織試料を、間接免疫ペルオキシダーゼ法を使用して処理する。具体的には、次いで、試料をプロテアーゼ反応混液と共にインキュベートして、タンパク質架橋結合の解除を促進する。インキュベーション後、温度を上げて(50℃超)、組織試料を脱パラフィンし、再水和する。次いで、抗原賦活化装置内で、クエン酸緩衝液中で、抗原回復を実施する。内在性ペルオキシダーゼを阻害し、試料をK17特異的抗体とインキュベーションして標識する。一次抗体とのインキュベーション後、二次抗体を添加し、試料を顕色させ、ヘマトキシリンで対比染色する。対照組織試料からの陰性対照を同様の方法を使用して処理する。
【0041】
特定の実施形態において、陰性対照試料(良性)及び膀胱がん試料(PUNLMP、LG、HG、移行尿路上皮がん)中のK17に対する免疫組織化学的染色は、対応する臨床データに対し盲検で、強く染色された[がん]細胞の百分率を定量化するマニュアル半定量的スコアリングシステム、PathSQによってスコアリングし、対照試料中のK17発現レベルからの増加倍率を算出する。
図3C~Dを参照されたい。組織生検については、PathSQスコアは少なくとも5%でなければならない。他の実施形態において、PathSQスコアは、5%から99%、10%から90%、20%から80%、30%から70%、又は40%から60%の間である。他の実施形態において、当業者が、がんの存在に対応する試料のPathSQスコアを決定することができる。
【0042】
特定の実施形態において、K17タンパク質検出は、組織マイクロアレイによって実行する。例えば、正常な膀胱粘膜、PUNLMP、LG、HG又は移行尿路上皮膀胱がん細胞を含有する組織を、パラフィンブロックから得て、組織マイクロアレイブロックへ配置することができる。ある実施形態において、膀胱がん細胞の他の供給源を検査試料として使用することができる。特に、膀胱壁細胞を含有する尿試料、又は細胞は含有しないが膀胱壁細胞由来のタンパク質及び/又はmRNAは含有する尿試料は、理想的な検査試料である。試料中のK17の対照試料のK17からの増加倍率の決定に使用する対照試料は、例えば、HISTO-Array(商標)から入手した組織マイクロアレイ試料などの市販の組織マイクロアレイ試料から得ることができる。本方法で使用する組織マイクロアレイスライドは、次いで、加工、すなわち、キシレンで脱パラフィンし、アルコールを使用して再水和することができる。ある実施形態において、試料は、クエン酸緩衝液とのインキュベーション、過酸化水素を用いて内在性ペルオキシダーゼを阻害すること、又は非特異的結合を阻害する血清(例えば、ウシ、ヒト、ロバ又はウマ血清)で試料を処理することによって、更に加工することができる。K17に対する一次抗体とのインキュベーションによって、試料を更に標識する。
【0043】
幾つかの実施形態において、また、本開示の
図2、
図3A~Dから
図5A~D、並びにTable 2 (表2)及びTable 3 (表3)に示したように、K17発現は、検出可能な量の細胞の免疫細胞化学的分析によって、尿細胞診試料から決定することができる。ここでは、自然尿試料は当該対象から採取し、遠心分離又は濾過などの当業者に既知の技術を使用して、試料から膀胱細胞を単離する。分離した膀胱細胞を、次いで、スライドに固定し、通常の免疫細胞化学的方法を使用してK17について標識し、ヘマトキシリンについて対比染色し、検査及び対照両尿試料中でのK17発現について、顕微鏡法を使用してスコアリングする。
【0044】
例えば、
図2、並びに
図3A及びBは、健常な(非癌性の)対象から得られた自然尿から単離した細胞から得た対照試料についてのケラチン17染色を示す。これらの細胞は、散在する(「対照レベルの」)K17染色を示している。比較して、
図3C~Dは、膀胱がん(尿路上皮がん)を有する対象の自然尿から得た尿路上皮細胞における、強いケラチン17染色を示す。
図4A~D及び
図5A~Dは、ケラチン17発現の陰性対照レベルの追加の例であり、健常な扁平上皮細胞(
図4A~B)及び健康な非癌性尿路上皮細胞(
図4C~D)、並びに非癌性膀胱粘膜組織(
図5A、B & D)及び良性の膀胱粘膜組織(
図5C)の図を示している。
【0045】
更に別の実施形態において、K17 mRNA発現は、定性的フォーマットでの逆転写酵素PCR(RT-PCR)を使用して、また、定量的RT-PCRによって、決定することができる。より具体的には、総RNAは、Trizol試薬を使用して試料から抽出することができる。次いで、逆転写酵素-PCRを、当業者によって既知の方法を使用して実施することができる。例えば、cDNA合成のテンプレートとして1μgのRNAを使用することができ、次いで、cDNAテンプレートを、K17 mRNAに対する遺伝子特異的プライマー(すなわち、フォワード5'-3'プライマー配列、及びリバース3'-5'配列)と混合することができる。K17プライマーの例をTable 6 (表6)に示す。検出用のプローブ配列もまた添加することができる(例えば、Applied Biosystems社からのTaqMan(商標)、及びThermo Fisher Scientific systems社からのSYBR(登録商標)グリーンが当技術分野において知られており、この目的に有用である)。次いで、リアルタイム定量的PCRを、各試料について実行し、得られたデータは、対照又は正常試料(すなわち、良性の膀胱粘膜)で明らかにされたK17 mRNA発現レベルの対照レベルに対して正規化することができる。例えば、Schmittgen及びLivak、Nature protocols (2008) 3: 1101~1108頁を参照されたい。核酸配列ベース増幅(NASBA)、ループ介在等温増幅(LAMP)、鎖置換増幅(SDA)、多置換増幅(MDA)、ローリングサークル増幅、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ヘリカーゼ依存性増幅、分枝増幅(ramification amplification)、又は分枝DNAなど、それだけに限定されないが、これらを含む他の核酸検出技術もまた、K17 mRNAを検出するために、又は別の状況ではK17 mRNA発現を定量化するために用いることができる。
【0046】
K17タンパク質が検出される他の実施形態において、本開示の方法は、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して展開して試料中のK17発現を決定することができる。これに加えて、質量分析、及びラテラルフロータンパク質検出アッセイを用いて、試料中のK17発現レベルを検出し、定量化することができる。例えば、Table 4 (表4)及びTable 5 (表5)に示したような、自然尿などの試料は、遠心分離によって試料中に存在する膀胱細胞を単離して調製することができる。無細胞ベースの診断方法などのある実施形態において、検査試料の無細胞の部分を単離して、ELISAシステムを使用してK17タンパク質発現を検査することができる。無細胞ELISAベース検出方法のために、マイクロタイタープレートをK17E3モノクローナル抗体などの抗ケラチン17抗体を含むコーティング溶液で覆い、インキュベートする。次いで、マイクロタイタープレートは、K17タンパク質の非特異的結合を防止するためにブロッキングすることができる。次に、所定の量の検査試料をマイクロタイタープレートの各ウェルに添加し、インキュベートする。次いで、各ウェルに、ペルオキシダーゼなどの検出可能なマーカーで標識したK17抗体(例えば、ペルオキシダーゼで標識した2D10モノクローナル抗体)を含有する検出溶液を添加し、インキュベートする。ある実施形態において、検出可能なマーカーと反応してシグナル放出することができる検出基質を加える前に、ウェルを洗浄してもよい。インキュベーション後、450nmなどの検出可能な光波長の放出によって各プレートを読み取り、試料中のケラチン17タンパク質の量を測定する。ある実施形態において、対照試料、例えば、標準物質を次いで実行し、次いで、検査試料中のK17タンパク質の量を対照のK17タンパク質の量と比較して、対照の量又は標準値を超える検出量に相関させるがんの診断と併せて検出されたK17タンパク質の量から推測して、対象が膀胱がんを有するかどうかを判定することができる。
【0047】
実施形態において、本開示の方法は、フローサイトメトリーを使用して展開することができる。本開示の一実施形態において、検出可能なタグを使用して標識した細胞を検出して、試料中のK17タンパク質又はmRNAを検出する及び/又は定量化する、例えば、K17発現又は発現レベルを決定することができる、マイクロ流体フローサイトメトリーシステムが提供される。
図8A~Bに例証したように、自然尿又は膀胱組織試料などの細胞含有試料が得られ、調製される。ある実施形態において、尿試料は、メタノールで細胞を固定すること、及び固定した細胞を遠心分離によって単離することによって、加工、又は調製する。幾つかの実施形態において、細胞をリン酸緩衝液(PBS)中に懸濁し、(K17E3モノクローナル抗体(Abcam社)などの)抗ケラチン17抗体と接触させ、インキュベートして、試料中に存在するK17に結合させる。次いで、非特異的結合を制限するために、試料を洗浄することができる。次いで、試料をフィコエリスリンなどの検出可能なマーカーを含む二次抗体と接触させ、インキュベートして、試料中の標識されたK17に特異的に結合させる。次いで、試料を液体中に懸濁し、カートリッジへ分注する。次いで、カートリッジをMoxi Goシステム(Orflo Technologies社)などのマイクロ流体検出システム中で読み取って、試料中に存在するK17の量を決定することができる。ある実施形態において、対照試料、例えば、参照試料を同じ方法で実行し、検査試料中のK17タンパク質の量を対照のK17タンパク質の量と比較して、対象が膀胱がんを有するかどうかを決定する。他の実施形態において、予め設定された標準量を超える検査試料中で検出されたK17の量は、いずれもK17発現の増加レベルと相関しており、したがって膀胱がんの診断に相関する。
【0048】
本開示の最新の方法論の一実施形態において、試料中のK17の量(タンパク質又はmRNA)を、正常な膀胱細胞又は非癌性細胞(又は組織若しくは尿試料、或いはいずれかに由来の細胞試料)のいずれかに存在するK17の対照量と、又は対照試料中のK17の量(タンパク質又はmRNA)と比較する。比較は、タンパク質又はmRNAを検出、定量化するための、当業者に既知の任意の方法によって行うことができる。特定の実施形態において、対象が膀胱がんを有することを示すK17発現の量は、対照試料のK17発現の量より30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、500%、1000%、又はそれより高い増加を含むが、それだけに限定されない。
【0049】
他の実施形態において、対象が膀胱がんを有することを示すK17発現は、対照試料が示すK17発現の量と比較して少なくとも1倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、13倍、15倍、20倍、25倍、30倍、又はそれより高い増加を含む。ある特定の実施形態において、対象の早期ステージの膀胱がんと対応する、PathSQによって測定されたK17発現は、対照(良性)試料のK17発現から10倍から60倍のK17発現の増加を示す試料中のK17染色によって実証される。他の実施形態において、対象の早期の膀胱がんは、対照試料のK17発現からの13倍から30倍のK17発現の増加を示す検査試料中のK17染色によって実証される。特定の実施形態において、対象の早期の膀胱がんは、対照試料のK17発現から約13倍、約15倍、又は約30倍のK17発現の増加を示す検査試料中のK17染色によって実証される。本開示の好ましい実施形態において、30を超えるPathSQスコアを有するK17発現を示す検査試料は、対象が低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP)に相当する、又はそれを超えた病変を有することを示す。検査試料が30から35の間のPathSQスコアを有するK17発現を示す実施形態において、対象は低異型度乳頭状尿路上皮癌(LG)を有する。検査試料が29以下のPathSQスコアを有するK17発現示す実施形態において、対象は高異型度乳頭状尿路上皮癌(HG)を有する。検査試料が12から46の間のPathSQスコアを有するK17発現示す特定の実施形態において、対象は膀胱がんを有する。
【0050】
更に他の実施形態において、対象が膀胱がんを有することを示すK17発現は、少なくとも0.065、少なくとも0.070、少なくとも0.075、少なくとも0.080、少なくとも0.081、少なくとも0.085、少なくとも0.090、又はそれより高い検査試料の吸光度の読み取りを含む。ある実施形態において、対象が膀胱がんを有することを示すK17発現は、0.065から0.2の間、0.065から0.1、0.075から0.2、0.075から0.1、0.08から0.2、0.08から0.15、0.08から0.1、0.08から0.09の間までの検査試料の吸光度の読み取りを含む。特定の実施形態において、対象が膀胱がんを有することを示すK17発現は、0.065、0.066、0.067、0.068、0.069、0.070、0.071、0.072、0.073、0.074、0.075、0.076、0.077、0.078、0.079、0.080、0.081、0.082、0.083、0.084、0.085、0.086、0.087、0.088、0.089、0.090、0.091、0.092、0.093、0.094、0.095、0.096、0.097、0.098、0.099、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、又はそれより高い検査試料の吸光度の読み取りを含む。
【0051】
本方法はまた、他のK17介在疾患の存在を診断するために用いることもできる。したがって、本開示の方法は、前述の説明又は以下に例によって限定されることを意図されていない。
【実施例0052】
(実施例1)
材料及び方法。
実施した試験は、84例のホルマリン固定パラフィン包埋した外科的組織塊(Table 1 (表1))の分析を含んだ。外科的組織塊は全て、膀胱がんを有することが疑わしい対象(患者)から得た。これらの試験の症例は、次の診断カテゴリー:良性の尿路上皮、(n=12)、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP)(n=9)、低異型度乳頭状尿路上皮癌(n=23)、高異型度乳頭状尿路上皮癌(n=14)、移行/尿路上皮癌(n=26)を含む。ある症例において、組織塊は、病理学者によって、経尿道的切除術(TURBT)、膀胱生検、又は膀胱切除標本のいずれかからのヘマトキシリン-エオジン染色した切片を、当初報告された診断組織が残余組織塊に十分に提示されていることを確認する組織学的再調査(DCM)を行って、選択した。残余組織が不足している、又は診断に用いた組織が後の臨床使用のために保存できなかった症例は、本試験に含めなかった。膀胱がんは、全内容が参照により本明細書に組み込まれているEdge SB及びCompton CC. Annals of surgical oncology. (2010) 17:1471~4頁に記載の(i)臨床病期、並びに(ii)腫瘍異型度(Table 1 (表1))によって分類した。
【0053】
免疫組織化学。免疫組織化学的分析は、全体として参照により本明細書に特に組み込まれている、L. Escobar-Hoyosら、Cancer Res. 2015 Sep 1;75(17):3650~62頁に既述されている通り、間接免疫ペルオキシダーゼ法によって実施した。簡潔には、60℃でインキュベーションした後、組織切片をキシレンで脱パラフィンし、アルコールで再水和した。抗原回復は、抗原賦活化装置内で、120℃で10分間、クエン酸緩衝液中で行った。内在性ペルオキシダーゼを3%過酸化水素によって阻害し、切片を、抗ヒトK17マウスモノクローナル抗体[E3](Abcam(登録商標)社)、又は及び膀胱がんに対するKi-67(クローンMIB-1、1:100希釈、DAKO社、Carpentaria、CA、USA)で、4℃で一晩標識した。K17を結合し、標識する、本方法で使用する他の抗体は、抗サイトケラチン17抗体[EP1623]細胞骨格マーカーab109725(Abcam(登録商標)社)、ケラチン17(D73C7)ウサギmAb(Cell Signaling Technology(登録商標)社)、ヒトK17 LS-C22650に対するモルモットポリクローナル(IgG)(LifeSpan BioSciences社)、ケラチン17 orb22505に対するウサギポリクローナル抗体(Biorbyt社)を含む。一次抗体適用後、ビオチン化ウマ二次抗体(R.T.U.Vectastain ABCキット;Vector Laboratories社)を試料に添加した。3,3'-ジアミノベンジジン(DAB;Dako社)で顕色を行い、ヘマトキシリンで対比染色した。陰性対照は、全ての検査に対して、同じ濃度のサブクラスが適合した免疫グロブリンを使用して行った。膀胱がん中のK17に対する免疫組織化学的染色を、対応する臨床データに対し盲検で、強く染色された腫瘍細胞の百分率を定量化するマニュアル半定量的スコアリングシステム、PathSQによってスコアリングした。PathSQは、強い(すなわち、2+)染色を有する腫瘍細胞の割合に基づく。Ki-67染色は、核内染色が陽性を示す腫瘍細胞の百分率としてスコアリングした。
【0054】
マイクロ流体によるK17検出。尿細胞診試料の免疫染色に加えて、尿中のK17陽性細胞を、蛍光タグを使用して標識した細胞を検出することができるフローサイトメトリー又はマイクロ流体システムを適用して検出することができた。このようなシステムの一例としては、使い捨てのマイクロ流体カートリッジと、サイズ(コールター法)及び蛍光シグナル(フィコエリトリン)に基づく細胞数を数えることができる読み取り装置とを利用する、Moxi Goシステム(Orflo Technologies社)がある。Moxi Goマイクロ流体装置(Orflo Technologies社)を使用したK17陽性細胞の検出は、対照としてK17陽性(HeLa)細胞及びK17陰性(C33)細胞を使用して検査した。細胞(約1×105細胞)を70%メタノールで1時間固定し、1000gで5分間遠心分離してペレット化し、次いで1mLの1×PBSで洗浄した。次いで、細胞をペレット化し、リン酸緩衝液溶液(PBS)100μLに再懸濁した。次に、細胞50μLをケラチン17抗体(E3、Abcam社)50μLと混合し、室温で2時間インキュベートした。次いで、細胞をペレット化し、1mLのPBSで1回洗浄し、再度ペレット化した。次いで、ペレット化した細胞を、フィコエリトリン(PE)で標識した抗マウス抗体(PBS中1:100希釈、Abcam社)50μLに再懸濁し、室温で30分間インキュベートした。細胞を1mLのPBSで2回洗浄し、最後に500μLのPBSに再懸濁した。各試料の75μLをマイクロ流体カートリッジ上へ添加し、装置上でそれを読み取ることによって、標識された細胞をMoxi Goマイクロ流体装置上で読み取った。
【0055】
ELISAを使用したK17の検出。尿の無細胞成分中のケラチン17タンパク質は、自然尿試料に対するELISAによって検査した。自然尿を1000gで5分間遠心分離して、細胞をペレット化した。遠心分離の後、尿の無細胞の液体部分をデカントしてK17のELISAでの検査に用いた。ELISAのために、高結合性マイクロタイタープレートを、1×PBS中2μg/mLの濃度のK17E3モノクローナル抗体(Nordic MUBio社、Systeren、Netherlands)を使用する、ウェル当たり100μLのK17コーティング溶液で覆い、4℃で一晩インキュベートした。次いで、各プレートを、ウェル当たり200μLのブロッキング緩衝液(スーパーブロックPBSブロッキング溶液、Thermo Fisher Scientific社)でブロッキングし、室温(RT)で1時間インキュベートした。
【0056】
各ウェルに尿試料100μLとアッセイ緩衝液(1×PBS中10%仔ウシ血清)100μLとを添加することを二通り行うことによって試料を検査し、RTで1時間インキュベートした。試料を、同じプレート上で、1μg/mLから開始する3倍段階希釈のK17標準物質(ケラチン17組換えタンパク質、Abcam社)と共に検査した。次いで、各プレートを、洗浄緩衝液(1×PBS中0.05%Tween-20)400μLで4回洗浄し、アッセイ緩衝液中1μg/mLの最終濃度のペルオキシダーゼで標識したK17 2D10モノクローナル抗体(K17 2D10モノクローナル抗体-HRP、US Biologicals社)を含有する検出抗体溶液100μLと、試料とを、RTで1時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、TMB基質(Pierce社)100μLを各ウェルに添加し、試料を暗所で20分間、室温でインキュベートした。次いで、停止溶液(VWR)100μLを用いて反応を止め、プレートを450nmで読み取った。
【0057】
ケラチンタンパク質発現のスコアリング。DAB-ヘマトキシリン(DAB-H)カラーデコンボリューションプラグイン(全内容が参照により本明細書に組み込まれている、Ruifrok AC、Johnston DA、Anal Quant Cytol Histol. (2001) 23:291~9頁を参照されたい)を使用するJava(登録商標)ベースの画像処理ソフトウエアである、the National Institutes of Health ImageJ 1.46(内容が参照により本明細書に組み込まれている、Schneider CAら、Nat methods. (2012) 9:671~5頁を参照されたい)によって、また、対応する臨床データに対し盲検で、強く陽性に染色された細胞の百分率を定量化する(PathSQ)マニュアル半定量的スコアリングシステムによって、スライドをスコアリングした。ある実施形態において、免疫組織化学的分析のための測定の単位は、PathSQコアスコア、及び全てのコアスコアの平均PathSQスコアであった。診断カテゴリー間のスコアの差異は、クラスカル・ウォリス検定、又はウィルコクソンの順位和検定によって決定した(未表示)。受信者動作特性曲線及び曲線下面積を算出して、ロジスティック回帰分析モデルに基づき、様々な診断カテゴリーを識別するバイオマーカーの能力を評価した。受信者動作特性曲線からの最適なカットオフ値は、ユーデン指数を使用して決定した。内容が参照により本明細書に組み込まれている、Youden WJ. Cancer. (1950) 3:32~5頁を参照されたい。
【0058】
(実施例2)
膀胱がんの診断方法としての免疫組織化学的染色細胞におけるケラチン17検出。
早期の膀胱がんの1つ又は複数の診断カテゴリーにおけるK17の診断値を決定するために、保管していた、良性の膀胱粘膜(良性の)、低悪性度乳頭状尿路上皮新生物(PUNLMP)、低異型度乳頭状尿路上皮癌(LG)、高異型度乳頭状尿路上皮癌(HG)、及び尿路上皮がんの4つの診断カテゴリーからの膀胱がん患者の組織試料の組織に対して、K17についての免疫組織化学的染色(Table 1 (表1))を行った。
【0059】
K17染色は、良性の膀胱粘膜では僅かに検出されたに過ぎなかったが(平均PathSQスコアは2.08)、検査した膀胱がんの全診断カテゴリーでは強く現れた。例えば、Table 1 (表1)は、HG及びPUNLMP試料の平均PathSQスコアは、それぞれ12.3831954から45.1781993の範囲であった(Table 1 (表1))のに対し、対照(非癌性)試料の平均PathSQスコアは約2であったことを示している。更に、
図3A~D、並びに
図4A~D及び
図5A~Dに示した対照試料を
図6A~Dから
図7A~Dの染色された癌性試料と比較すると、強い(増加した)ケラチン17染色は、膀胱がんを有する対象から得た試料でのみ存在することがわかる。まとめると、これらの結果は、K17が膀胱の尿路上皮がんなどの膀胱がんのための強力な診断マーカーであること(p<0.001)を示している。
【0060】
膀胱壁細胞を含有した被験尿試料のうち、K17染色は、膀胱がんが疑わしい又は陽性であると診断された試料の5例/5例で検出された。Table 2 (表2)を参照されたい。Table 2 (表2)に示したように、悪性腫瘍が陰性であった症例では、K17発現は認められなかった。これらのデータは、膀胱がんを有する対象から得た全試料でK17が陽性染色であったことを明確に示している(T3~T7)。対照的に、検出可能なレベルの膀胱細胞が存在する非癌性患者から得た尿試料は、K17標識を示さなかった(N1、N7、N8)。これらの結果は、K17検出が膀胱がんの診断マーカーであるという実験的裏付けを提供するものである。
【0061】
膀胱組織試料を用いて得られた免疫組織化学の結果は、K17検出が尿細胞診標本での膀胱がんの診断の精度を向上させる、高い感度及び特異度のマーカーでありうるという仮説を裏付けた。本開示のTable 3 (表3)に示したように、K17検出は、膀胱がんの診断マーカーとしての感度及び特異度を示す。例えば、膀胱細胞含有自然尿試料に対して実施した多重試験の結果のように(
図2)、K17は、93%の感度(真のK17陽性試料の数/検出されたK17陽性試料の数)、及び91%の特異度(真のK17陰性試料の数/検出されたK17陰性試料の数)を示している。試験2については、殆どの偽陽性試料は、試料を直接スポッティング(direct spotting)して実施されたのに対し、試験3では、ThinPrep試料調製法を用いて実施された。まとめると、示したデータは、尿試料中の膀胱細胞を免疫染色してK17を検出することによって、高い感度及び特異度で対象における膀胱がんの存在を検出しうることを示している。
【0062】
(実施例3)
自動装置ベースの検出方法による細胞中のケラチン17検出。
尿細胞診試料の免疫染色に加えて、尿細胞診試料中のK17陽性細胞は、蛍光的にタグ付けされたタンパク質を検出することができる、フローサイトメトリー及びマイクロ流体装置システムによって検出が可能である。ここでは、K17が陽性であることが既知である標識されたがん細胞(HeLa、
図8A)、及びK17陰性である対照細胞(C33、
図8B)を単離し、K17抗体で蛍光標識し、上述の通り、K17発現をマイクロ流体検出装置上で分析した。
図8A~8Bにみられるように、対照のC33細胞(K17陽性は35.1%)と比較して、HeLa中ではK17標識細胞が有意に多い(K17陽性は90.4%)。まとめると、これらのデータは、K17陽性細胞の検出が、K17免疫染色とマイクロ流体装置とを併用して効率的に達成しうることを示している。
【0063】
(実施例4)
無細胞K17ベースの診断方法。
Table 4 (表4)及びTable 5 (表5)に示したように、膀胱細胞を欠く自然尿からなる検査試料をK17タンパク質発現について分析して、対象が膀胱がんを有するかどうかを判定することができる。例えば、Table 4 (表4)は、ELISAベースのK17検出方法を用いて得られた結果を示す。ここでは、既知量のK17タンパク質を有する対照試料(すなわち、標準物質)を分析して、無細胞試料のELISAシステム検査の感度を決定した。増加したK17タンパク質発現のカットオフ値は、検出可能なシグナルを陰性対照の平均からのブランクの3倍の標準偏差とした陰性対照(ゼロ標準物質)から決定した。例えば、次式を用いた:陰性対照のELISAの読み取りの平均+[陰性対照の3倍の標準偏差]。データに基づくと、ELISAの感度の限界は、K17タンパク質、約1ng/1mLである。
【0064】
Table 5 (表5)は、対象から得た21例の無細胞の尿試料(癌性6例、良性15例、太字は陽性試料)からのデータを示す。ここで、21例の各検査試料を、ELISAシステム上で検査し、自然尿の無細胞部分中のK17発現を試料毎に検出し、Table 4 (表4)の対照レベルと比較した。%CVが20%未満で平均吸光度(OD)の読み取りが0.081以上を示す検査試料は、対象における膀胱がんの存在とよく相関していた。例えば、がん試料の67%(6例の試料のうちの4例)が0.081以上のOD読み取りを示した一方で、0.078ODより高い検出可能なレベルのK17を示した非癌性対照試料は一例もなかった。これはモデル実験であり、実際の患者の検査ではなかったため、がんの試料のうちの2例で検出可能なK17シグナルがなかったのは、朝一番の自然尿はK17タンパク質が蓄積されて一日の他の時間の自然尿より高いレベルとなるように、試料採取の時間といった制御できない検定因子が原因である、又は試料の取り扱い方に原因があると考えられる。まとめると、これらのデータは、本開示が、ELISA、又は質量分析若しくはラテラルフロー計測装置などの他のタンパク質ベースの検出プラットフォームを用いて、無細胞尿試料中の検出可能なレベルのK17タンパク質の測定を用いて対象における膀胱がんの存在を検出する(例えば、膀胱がんを診断する)ことができる方法を提供することを実証するものである。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】