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特開2024-150579ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物及び該組成物を用いた細胞死滅誘導方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150579
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物及び該組成物を用いた細胞死滅誘導方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/55 20060101AFI20241016BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C12N15/55 ZNA
C12N15/09 Z
C12N15/55
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024114610
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2022554854の分割
【原出願日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】10-2020-0030473
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】519444052
【氏名又は名称】インスティチュート フォー ベーシック サイエンス
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE FOR BASIC SCIENCE
(71)【出願人】
【識別番号】521105651
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
【氏名又は名称原語表記】UNIST(ULSAN NATIONAL INSTITUTE OF SCIENCE AND TECHNOLOGY)
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】ミョン ギョンチェ
(72)【発明者】
【氏名】クォン テジュン
(72)【発明者】
【氏名】ペク インジュン
(72)【発明者】
【氏名】ラ ジェソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヨンハン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ウチェ
(72)【発明者】
【氏名】オタルパヨエプ タニヤ
(72)【発明者】
【氏名】チョ スンウ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、ゲノム配列変異を有する細胞(cells having genomic sequence variation)内のゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域配列のうち、正常細胞には存在しない固有の配列を含む複数個の核酸配列を特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド、及び核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む一つ以上の伝達手段、前記伝達手段を含む組成物及び前記伝達手段又は組成物を用いたゲノム配列変異を有する細胞の死滅誘導方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞の死滅誘導用組成物。
【請求項2】
前記ゲノム配列変異を有する細胞は、癌細胞、老化細胞、免疫疾患誘発細胞又は心血管疾患誘発細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(i)核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞の死滅誘導用ベクター。
【請求項4】
前記(i)及び(ii)が同一又は異なるベクターに含まれる、請求項3に記載のベクター。
【請求項5】
前記ベクターは、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)、及びRV(Retroviral Vector)からなる群から選ばれるウイルスベクター;又はウイルスレプリコンを含むエピソーマルベクター;を含む、請求項3に記載のベクター。
【請求項6】
前記エピソーマルベクターは、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)、BPV(bovine papilloma virus)又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)の複製起点(Ori)を含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
(i)核酸切断酵素;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用リボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体。
【請求項8】
(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用キャリア。
【請求項9】
(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用エクソソーム。
【請求項10】
(i)核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含み、
前記(i)及び(ii)が同一又は異なるベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項11】
(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含み、
前記(ii)がベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項12】
(i)の核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチドは、核酸切断酵素をコードするRNAであって、選択的に修飾ヌクレオシドを含んだり、又は合成自己-複製RNA(synthetic self-replicative RNA)を含んだり;又は
(i)の核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドがキャリア又はエクソソームに含まれることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
(i)核酸切断酵素;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含有し、
前記(i)及び(ii)がリボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体を形成する、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項14】
(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含有し、
前記(i)及び(ii)がキャリアに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項15】
前記キャリアは、細胞透過性ペプチド(CPP)、ナノ粒子、ZIF(zeolitic imidazole frameworks)、RNAアプタマー-ストレプトアビジン(aptamer-streptavidin)又は重合体を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含有し、
前記(i)及び(ii)がエクソソームに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項17】
互いに異なる配列を有する4個以上の切断因子を含む、請求項9~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記ゲノム配列変異を有する細胞内の4個~30個の変異領域を特異的に認識する切断因子を含む、請求項9~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
互いに異なる配列を有する4個~30個の切断因子を含む、請求項9~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
ゲノム配列変異を有する細胞固有の挿入及び/又は欠失を含む4個~60個の核酸配列部位に二重鎖切断(Double-stranded break、DSB)を誘導し、細胞を死滅させることを特徴とする、請求項9~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記核酸切断酵素は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12j、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Cas14、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、CsMT2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3又はCsf4である、請求項9~16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含む、患者に合わせたオーダーメード型疾病治療用組成物。
【請求項23】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド;を含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項24】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用ベクター。
【請求項25】
前記(i)及び(ii)が同一又は異なるベクターに含まれる、請求項24に記載のベクター。
【請求項26】
AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)、及びRV(Retroviral Vector)からなる群から選ばれるウイルスベクター;又はウイルスレプリコン;を含む、請求項25に記載のエピソーマルベクターを含むベクター。
【請求項27】
前記エピソーマルベクターは、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)、BPV(bovine papilloma virus)又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)の複製起点(Ori)を含む、請求項26に記載のベクター。
【請求項28】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用リボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体。
【請求項29】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこ
れをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用キャリア。
【請求項30】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこ
れをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用エクソソーム。
【請求項31】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコー
ドするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含み、
前記(i)及び(ii)が同一又は異なるベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項32】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこ
れをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含み、
前記(ii)がベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項33】
(i)の核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチドは、核酸切断酵素をコードするRNAであって、選択的に修飾ヌクレオシドを含んだり、又は合成自己-複製RNA(synthetic self-replicative RNA)を含んだり;又は
(i)の核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドがキャリア又はエクソソームに含まれることを特徴とする、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含有し、
前記(i)及び(ii)がリボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体を形成する、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項35】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含有し、
前記(i)及び(ii)がキャリアに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項36】
前記キャリアは、細胞透過性ペプチド(CPP)、ナノ粒子、ZIF(zeolitic imidazole frameworks)、RNAアプタマー-ストレプトアビジン(aptamer-streptavidin)又は重合体を含む、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチド;を含有し、
前記(i)及び(ii)がエクソソームに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物。
【請求項38】
前記ゲノム配列変異を有する細胞内の2個~10個の変異領域を特異的に認識する切断因子を含む、請求項28~37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
互いに異なる配列を有する2個以上の切断因子を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
互いに異なる配列を有する2個~10個の切断因子を含む、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
前記エキソヌクレアーゼIは、微生物、酵素、昆虫、マウス又はヒト由来であることを特徴とする、請求項28~37のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
前記エキソヌクレアーゼIは配列番号31の配列を含む、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド;を含む患者に合わせたオーダーメード型疾病治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム配列変異を有する細胞(cells having genomic sequence variation)内の細胞特異的変異領域配列のうち、正常細胞には存在しない固有の配列を含む複数個の核酸配列を特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド、及び核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む一つ以上の伝達手段、該伝達手段を含む組成物及び前記伝達手段又は組成物を用いたゲノム配列変異を有する細胞の死滅誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CRISPR/Casは、RNAガイドを通じた遺伝子校正道具であって、バクテリア誘導エンドヌクレアーゼCas9(又は突然変異ニッカーゼ)及びガイドRNAを使用し、ガイドRNAとゲノムDNAとの間の配列をマッチングさせ、ゲノム内の特定位置に二重(又は単一)鎖切断を導入することができる。CRISPR/Cas媒介遺伝子ノックアウトは、RNA干渉媒介遺伝子ノックダウン(RNA interference-mediated gene knockdown)よりさらに効率的であると予想され、遺伝子機能を研究するための有用な実験道具を提供している。
【0003】
哺乳動物細胞においてCRISPR-Casシステムが作動し得るという各研究が報告されており、微生物の適応免疫から始まった遺伝子編集技術は、Cas9(CRISPR associated protein 9:RNA-guided DNA endonuclease enzyme)及びガイドRNA(guide RNA、gRNA)を含む。ガイドRNAは、crRNA(CRISPR RNA)及びtracrRNA(trans-activating crRNA)を含み、Cas9に結合し、ターゲット配列に対する塩基対合を通じて目的とするゲノム配列に案内し、二重鎖切断(Double strand break、DSB)が生成される。
【0004】
生命体は、生きていく過程で様々な形態の細胞分裂をし、このような細胞分裂は、多様な方式で修理(repair)する過程を経てゲノム配列を可能な限り同一に維持させているが、状況によってゲノム配列に変異が発生している。このようにゲノム配列に変異が発生した各細胞は、生命体の生存を脅かしたり、良くない影響を及ぼすようになる。このようなゲノム配列変異のうち、最も深刻に台頭しているものが癌である。
【0005】
癌は、変異の蓄積によって発生し、これは、生殖細胞を通じて遺伝されたり、細胞週期の間に体細胞内で獲得される。このような腫瘍遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、DNA復旧遺伝子の変化により、細胞が成長及び調節メカニズムから逸脱し、癌を発生させることもある。
【0006】
一方、ゲノム配列変異を有する細胞によって由来する代表的な疾患である癌を治療するために、多様な抗癌剤が持続的に開発されている。抗癌剤は、1970年代から始まった1世代化学抗癌剤、2000年代から台頭した2世代標的抗癌剤、及び2010年代から適用された3世代免疫抗癌剤として開発されてきた(Nature reviews Cancer.5(1):65-72.)。
【0007】
1世代化学抗癌剤は、パクリタキセル(Paclitaxel)などのような抗癌化合物であって、正常細胞に比べて分裂速度の速い癌細胞を攻撃する。ただし、癌細胞のみならず、正常細胞も攻撃することによって患者の免疫体系を破壊し、強い毒性によって脱毛、嘔吐、食欲低下、疲労感、深刻な体力低下などの各種副作用が発生するという問題があった(Critical reviews in oncology/hematology 89(1):43-61.及びChemistry & Biology Volume 20,Issue 5,23 May 2013,Pages 648-659)。
【0008】
これを解決するために、特定の変異による腫瘍細胞のみを識別して攻撃する標的抗癌剤、例えば、リツキシマブ(Rituximab)又はイマチニブ(imatinib)などが癌治療剤として台頭した。これらは、脱毛、嘔吐などの副作用が少なく、治療剤反応率が高いことが確認されるが、癌を誘発する特定の変異を有する患者にのみ使用可能であるので、多様な癌治療が不可能であり、標的抗癌治療剤に対する耐性が発生するという問題があった(Adv Pharm Bull.2017 Sep;7(3):339-348.)。
【0009】
近年、腫瘍自体を攻撃する他の抗癌剤と異なり、イピリムマブ(Ipilimumab)又はチサゲンレクロイセル(Tisagenlecleucal)などのように、免疫細胞活性化を通じて腫瘍細胞を攻撃して除去する免疫抗癌剤が注目されている(Cytotherapy.2019 Feb;21(2):224-233)。このような免疫抗癌剤は、副作用が少なく、治療反応を示す患者において薬効が長期間維持され得る。ただし、これは、反応率が約20%~30%程度であるので特定の患者にのみ効果があり、免疫関門抑制剤の耐性問題が台頭しており、免疫細胞治療剤などでは、サイトカイン分泌シンドローム及び神経毒性の副作用などが発生し得ることが知られている(Nat Rev Drug Discov.2018 Nov 28;17(12):854-855)。
【0010】
このように多数の抗癌剤が治療に使用されているにもかかわらず、目的とする抗癌効果が十分に達成できないか、抗癌剤の適用時に伴われる副作用があるので、依然として新しい癌治療技術の開発及び適用が必要な実情にある。
【0011】
新しい癌治療技術の一つとして、癌では、正常細胞で発見されない新しいDNA配列が挿入されたり(Insertion:IN)、正常細胞のDNAの一部が欠失する(Deletion:Del)現象が多数観察されるが、このような癌細胞DNAに表れる特異的挿入又は欠失DNA(INDEL)は、正常細胞に存在しないDNA配列であるので、これらを正常細胞と癌細胞の差別的攻撃ターゲットとして設定すると癌を治療することができる。
【0012】
DNA二重鎖切断は、細胞水準で最も深刻な損傷の一つであって、損傷したDNAは、非相同末端連結(non-homologous end joining)、相同組換え(homologous recombination)によって復旧されるが、復旧されていないDNAは、遺伝情報の損傷又は再配列を起こし、細胞死(apoptosis)が誘導され得る。
【0013】
CRISPR/Casシステムを人間の癌治療に適用できることが報告されている(Oncotarget.2016 Mar 15;7(11):12305-17)。しかし、これは、癌の誘発と相関性のある変異に基づいて、ゲノムのうち一つ以上を修正又は切除することにより、癌に対する強力な治療を提供する可能性を高めることができることを提示するものに過ぎない。
【0014】
これと関連して、米国特許公開第2017/0114413号には、癌特異的配列変異をターゲットとするガイドRNAを適用したCRISPR/Casシステムが提案されている。癌特異的配列変異は、単一ターゲットの癌特異的DNAのCNV(copy number variation)を対象とし得ることが記載されている。これは、特定の基準以上のCNVを示す癌をCRISPR/Casシステムを適用することによって治療できる技術であって、治療可能な癌の種類が極めて制限的である。
【0015】
韓国登録特許第2023577号には、癌細胞に特異的に存在する遺伝子複製数変異(CNV)が少なくとも7である遺伝子に相補的に結合するポリヌクレオチド、及びCas9とエキソヌクレアーゼであるRecJとが結合された融合タンパク質を用いた腫瘍細胞殺害用組成物が記載されている。本発明によると、Cas9以外に、エキソヌクレアーゼであるExoIを使用し、複数のガイドRNAの数を最小化することによって目的とする癌治療効果を示すことができる。しかし、RecJをエキソヌクレアーゼとして使用する場合、目的とする程度に投与されるガイドRNAの数を減少又は最小化できなかった。
【0016】
このような技術的背景の下で、本出願の発明者等は、ゲノム配列変異を有する細胞で複数の変異領域を特異的に認識する複数個の切断因子を用いて、複数の変異領域にDSB(double strand break)を誘導することによって、ゲノム配列変異を有する細胞が死滅し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の目的は、核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用ベクターを提供することにある。
【0019】
本発明の目的は、核酸切断酵素及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用リボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体を提供することにある。
【0020】
本発明の目的は、核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用キャリアを提供することにある。
【0021】
本発明の目的は、核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用エクソソームを提供することにある。
【0022】
本発明の目的は、前記ベクターを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0023】
本発明の目的は、前記リボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体を含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0024】
本発明の目的は、前記キャリアを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0025】
本発明の目的は、前記エクソソームを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0026】
本発明の目的は、前記エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0027】
本発明の目的は、前記エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用ベクターを提供することにある。
【0028】
本発明の目的は、前記エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用リボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体を提供することにある。
【0029】
本発明の目的は、前記エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用キャリアを提供することにある。
【0030】
本発明の目的は、前記エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用エクソソームを提供することにある。
【0031】
本発明の目的は、前記ベクターを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0032】
本発明の目的は、前記リボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体を含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0033】
本発明の目的は、前記キャリアを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0034】
本発明の目的は、前記エクソソームを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供することにある。
【0035】
本発明の目的は、前記ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物、ベクター、リボ核酸タンパク質複合体、キャリア又はエクソソームを提供する段階を含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
前記目的を達成するために、本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞の死滅誘導用組成物を提供する。
【0037】
本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを個体に処理するゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導方法に関する。
【0038】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用ベクターを提供する。
【0039】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用リボ核酸タンパク質複合体を提供する。
【0040】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用キャリアを提供する。
【0041】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用エクソソームを提供する。
【0042】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含み、前記(i)及び(ii)が同一又は異なるベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0043】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含み、前記(ii)がベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0044】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がリボ核酸タンパク質複合体を形成する、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0045】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がキャリアに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0046】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、エクソソームを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0047】
また、本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、患者に合わせたオーダーメード型疾病治療用組成物を提供する。
【0048】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを個体に処理する段階を含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導方法を提供する。
【0049】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用ベクターを提供する。
【0050】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用リボ核酸タンパク質複合体を提供する。
【0051】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用キャリアを提供する。
【0052】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用エクソソームを提供する。
【0053】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含み、前記(i)及び(ii)が同一又は異なるベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0054】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含み、前記(ii)がベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0055】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がリボ核酸タンパク質複合体を形成する、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0056】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がキャリアに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0057】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がエクソソームに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を提供する。
【0058】
また、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む患者に合わせたオーダーメード型疾病治療用組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】CINDELAが癌細胞で選択的な細胞死滅を誘導することを示す結果である。(A)CINDELA(癌特異的INDELs攻撃者)模式図である。(B)同時多発的な複数のDNA DSB(制限酵素AsiSIで生成される)は、骨肉腫細胞(U2OS)で細胞死滅を誘導する。(C)CRISPR-Cas9に起因したDSBは細胞死滅を誘導する。1から10以上の多くのサイトを対象とするsgRNAをテストし、HEK293T細胞の生存率を測定する。(D)SpCas9 RNP複合体によるCINDELAによって誘導された癌細胞を死滅する。スケールバーは300μmである。P-値は、対応のない両側t検定(unpaired two-sided t-test)を使用して計算する。
【0060】
図2】RNP複合体によって伝達されるCINDELA gRNAによって誘導された同時多発的なDNA DSBによる細胞死滅の段階的な増加を示す結果である。HCT116に対する細胞特異的なInDelsをターゲットとする18個のgRNAをATTO標識された追跡RNAで処理する。ATTO信号(赤色)を感知し、RNP複合体が成功的に伝達されたことを確認する。誘導されたDNA DSBの効果を確認するために、特定の領域で生きている細胞を定量化する。6個(A-C)12個、(D-F)18個、(G)gRNA及び追跡RNAをSpCas9と共にHCT116細胞に伝達する。(H)SpCas9のみをHCT116細胞に伝達する。(I)細胞の生存度は、それぞれの表示されたCINDELA処理で定量化する。
【0061】
図3】AAV由来のCRISPR/SaCas9を含むCINDELAに対する結果である。(A)SaCas9及びsgRNA発現プラスミドの形質感染を伴うCINDELAはU2OS細胞を死滅する。30個の非特異的sgRNAを発現する細胞(HCT116特異的InDelsをターゲットとするsgRNA)に比べて、U2OS InDelsに特異的なCINDELA sgRNA発現細胞は、増加した死滅を示した。(B)SaCas9及びCINDELA sgRNAプラスミドの形質感染後、相対的な細胞生存率をモニターした。有意性は、対応のない両側t検定(unpaired two-sided t-test)を使用して評価された。(C)sgRNA及びSaCas9発現AAVをU2OSに形質導入し、72時間後に細胞生存率を観察した。対照群として、同一のAAVをRPE1細胞に適用し、SaCas9のみを発現するAAVをU2OS細胞に形質導入した。スケールバーは300μmである。(D)アポトーシスは、AAV形質導入後に時間依存的に増加する。細胞株特異的ターゲッティングは有意に増加する(p値は、対応のない両側t検定(unpaired two-sided t-test)を使用して計算する)。
【0062】
図4】プラスミドで伝達されたCINDELA sgRNAによって誘導された同時多発的なDNA DSBによる細胞死滅の段階的な増加を示す結果である。(A)U2OS及びRPE1細胞にSaCas9のみを含有したり(sgRNAなし)、又はU2OS細胞に特異的な配列をターゲットとする30個のsgRNAを含むSaCas9のうち一つを発現するAAVを形質導入する。(B)(A)で観察された細胞生存度を定量化する。各ウェルの70%EtOHのうち染色された1%のブロモフェノールブルーを30%のアセテートから抽出し、OD595を測定する。(C)SaCas9のみ(sgRNAなし)又はU2OS細胞に特異的な配列をターゲットとする30個のsgRNAを含むSaCas9のうち一つを発現するAAVで形質導入されたU2OS細胞において、染色質結合タンパク質を表示された抗体で免疫ブロットする。(D)U2OS及びRPE1細胞イメージは、SaCas9のみを発現したり、5個のsgRNA(グループAとB)、10個のsgRNA、20個のsgRNA又は30個のsgRNAを含むSaCas9を発現するAAV形質導入3日後にキャプチャーする。(E)(D)で観察されたアポトーシス細胞死滅を定量化する。
【0063】
図5】マウス異種移植モデルでのCINDELA効果を示した結果である。U2OS骨肉腫細胞株でマウス異種移植モデルを確立し、AAVを使用してSaCas9と共に30CINDELA sgRNAを伝達した。(A)腫瘍の増殖は、SaCas9のみを発現するAAVで形質導入された異種移植モデル腫瘍と比較して、U2OS特異的CINDELA sgRNA及びSaCas9を発現するAAVで形質導入された腫瘍において有意に遅延される。相対的な腫瘍体積の差は、対応のない両側t検定(unpaired two-sided t-test)を使用して分析する。(B)SaCas9のみで処理された腫瘍と比較して、CINDELA sgRNA及びSaCas9で処理された異種移植モデル腫瘍サンプルにおいて細胞死滅が増加する。AAV注射6日後に異種移植モデル組織を採取し、TUNEL分析で細胞死滅を測定する(スケールバー:100μmの上端パネル;20μmの下端パネル)。(C)CINDELAによって誘導されたアポトーシス細胞死滅は、FACS分析を通じてアネキシン(Annexin)V発現を測定することによって確認する(p-値は、対応のない両側t検定(unpaired two-sided t-test)を使用して計算する)。
【0064】
図6】U2OS由来の異種異種移植モデル組織のCINDELA効果を示した図である。(A)CINDELA腫瘍へのSaCas9の発現は、抗-HA(SaCas9にタグ付けされる)抗体を用いた免疫染色によって検出する。(B)マウスの体重は、一定のAAV注射の間に測定された。No sgRNA(SaCas9のみを含む)及びCINDELA sgRNA(U2OS特異的)は、SaCas9のみ、及びU2OS細胞に特定的な配列をターゲットとする30個のsgRNAを含むSaCas9のうち一つを発現するAAVを注入したことを示す。
【0065】
図7】患者由来の腫瘍細胞とPDX(患者由来の異種移植)モデルのCINDELA効果を示した図である。(A)膠芽腫患者(GBL-67)由来の腫瘍細胞をAAV形質導入を使用して26個のCINDELA sgRNA及びSaCas9で処理する。神経幹細胞株(NSC-10)と比較して、CINDELA処理は、GBL-67細胞を特異的に死滅する。スケールバーは300μmである。(B)肺癌PDXモデルは、CINDELA sgRNAsとSaCas9で処理する。注目すべきことは、腫瘍の成長が、SaCas9のみを含む対照群と比較してCINDELA sgRNA及びSaCas9治療で有意に遅延される(有意性は、対応のない両側t検定(two-sided unpaired t-test)を使用して評価する)。
【0066】
図8】CINDELA治療によって肺癌PDXの増殖が抑制されることを示す図である。(A)SaCas9のみ又はPDX-073癌に特異的な配列をターゲットとする29個のsgRNAを含むSaCas9のうち一つを発現するAAVを3日間隔で5回、2週間注射した。腫瘍を有するマウス(上端パネル)とマウスから抽出された腫瘍(下端パネル)の写真である。(B)SaCas9のみ又はPDX-318癌に特異的な配列をターゲットとする22個のsgRNAを含むSaCas9のうち一つを発現するAAVを3日間隔で5回、2週間注射した。腫瘍を有するマウス(上端パネル)とマウスから抽出された腫瘍(下端パネル)の写真である。(C)マウスの体重は、一定のAAV注射の間に測定された。
【0067】
図9】U2OS細胞株で30個のDNA配列をターゲットとして、細胞死滅を誘導できるかどうかを確認した結果を示した図である。
【0068】
図10】U2OS細胞株で10個のDNA配列をターゲットとして、細胞死滅を誘導できるかどうかを確認した結果を示した図である。
【0069】
図11】U2OS細胞株で5個のDNA配列をターゲットとして、細胞死滅を誘導できるかどうかを確認した結果を示した図である。
【0070】
図12】U2OS細胞株で図11と異なる5個のDNA配列をターゲットとして、細胞死滅を誘導できるかどうかを確認した結果を示した図である。
【0071】
図13】U2OS細胞株で3個のDNA配列をターゲットとして、細胞死滅を誘導できるかどうかを確認した結果を示した図である。
【0072】
図14】Exo-saCas9及びこれを用いてDSBを誘導するメカニズムに対する模式図である。
【0073】
図15】染色体(chromosome)3をターゲットとする5個のガイドRNAを形質感染し、HCT116細胞死滅効果を実験した結果を示した図である。saCas9を単独で使用する場合は、5個のガイドRNAで細胞死滅が微々たるものであったが、Exo-saCas9を使用する場合は、5個のガイドRNAで十分に細胞死滅を起こすことを確認した。
【0074】
図16】U2OS細胞株でExo-saCas9を使用し、5個のガイドRNAで十分に細胞死滅を起こし得ることを確認した結果を示した図である。
【0075】
図17】DNA損傷マーカー(damage marker)であるg-H2AXを通じて、Exo-Cas9が細胞死滅をさらにうまく誘導する理由が、saCas9によるDNA DSB誘導後に復旧(repair)を阻害するためであることを確認した結果を示した図である。
【0076】
図18】Exo-Cas9を用いたとき、DR-GFPアッセイ(assay)を通じてHR(Homologous recombination)される程度を確認した結果を示した図である。その結果、Exo-Cas9を用いたとき、HRが著しく低下することを確認した。Exo-Cas9がHRを阻害することを証明した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
他の方式で定義されない限り、本明細書で使用された全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する技術分野で熟練した専門家によって通常的に理解されるのと同一の意味を有する。一般に、本明細書で使用された命名法は、本技術分野でよく知られており、通常的に使用される。
【0078】
本発明は、一観点において、核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及びゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0079】
1.ゲノム配列変異を有する細胞
【0080】
正常な体細胞の複製時にも、DNA重合酵素(DNA polymerase)は、107ペアのヌクレオチドを合成する間に、約1個のエラーが発生する。DNA回復メカニズムによってこのようなエラーの99%は校正され、全体的に10個のヌクレオチドを複製するときに1個のエラーを犯す。このような突然変異は蓄積され、ゲノムの不安定性(genome instability)を引き起こす。
【0081】
このようなゲノムの不安定性(genome instability)は、細胞外的環境要因によって加速され得るが、X-線、紫外線又は放射線への露出、活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)などである。
【0082】
ゲノムの不安定性の結果、ゲノムが損傷した細胞、すなわち、「ゲノム配列変異を有する細胞」が発生し、変異された遺伝情報が後代の娘細胞に遺伝されて増殖するようになる。
【0083】
すなわち、前記「ゲノム配列変異を有する細胞」は、突然変異の蓄積によってゲノムの塩基配列に変化が発生した細胞である。このようなゲノムの塩基配列の変化は、細胞の活性及び機能が正常細胞と異なり、その結果、生物体又は生物の器官が生きたり作動するのに問題、すなわち、疾患を引き起こす。
【0084】
例えば、「ゲノム配列変異を有する細胞」による疾患発病状態の細胞であって、具体的には、老化細胞(senescent cell)、良性腫瘍(benign tumor)、悪性腫瘍(malignant tumor)、すなわち、癌細胞などであり、これに限定されない。
【0085】
このようなゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、正常細胞で発見されないDNA配列の挿入(Insertion:In)、又は正常細胞のDNAの一部の欠失(Deletion:Del)を通じて生成されるが、通常、このような変異配列を「インデル(InDel)」と言う。ゲノム配列変異の形態としては、「インデル(InDel)」以外に、特定の配列が他の配列に代替(substitution)される場合もある。
【0086】
いわゆる点突然変異(point mutation)は、DNAとRNAの塩基配列で一つの塩基対が変わって(代替、substitution)発生する突然変異である場合である。本発明において、「インデル(InDel)」は、正常細胞のDNAの配列に対して挿入又は欠失した配列はもちろん、代替された配列又は挿入、欠失及び代替の組み合わせの過程で正常細胞に存在しない塩基配列を意味する。
【0087】
このような遺伝的変異細胞のDNAに表れる特異的な「インデル」配列は、正常細胞に存在しない塩基配列であるので、これらを正常細胞と疾患を引き起こす細胞との差別的攻撃ターゲットとして設定することができる。
【0088】
本発明において、InDel配列は、疾患を発生させる遺伝子と関連した配列のみを意味しない。また、特定のタンパク質を暗号化する遺伝情報を有している配列はもちろん、いわゆるジャンク(junk)DNA配列も本発明のInDelになり得る。すなわち、本発明で主なターゲットとするInDelは、1)正常細胞には存在しない配列であって、2)疾患発病状態の細胞に共通的に存在する塩基配列である。
【0089】
前記ゲノム配列変異を有する細胞は、遺伝子変形又は損傷によって細胞の活性が正常細胞と異なるようになった細胞を意味し、例えば、遺伝子変形又は損傷による疾患発病状態の細胞を意味し得る。
【0090】
前記ゲノム配列変異を有する細胞によって、例えば、癌、老化、免疫疾患、心血管疾患などの疾患が誘発され得る。
【0091】
癌(cancer)と細胞老化(cellular senescence)は、ゲノムの不安定性(genomic instability)によって発生する代表的な疾患又は現象である。細胞老化の場合、老化された細胞が身体組織及び臓器などに蓄積され、これは、慢性炎症反応が生じる環境はもちろん、周辺組織及び細胞も容易に損傷させる。結局、生体組織の再生能力が低下し、痴呆、糖尿病、退行性関節炎などの退行性疾患も誘発される。本発明は、「ゲノム配列変異を有する細胞」を選択的に死滅させる方法を提供する。よって、「ゲノム配列変異を有する細胞」から由来する各疾患を効果的に治療することができる。
【0092】
癌細胞は、突然変異の蓄積によって発生するが、このような過程でDNAに多くのInDelが作られ、このような遺伝的変異によって、次の二つの遺伝的特徴を備えると癌細胞になる。(1)正常な規制を無視して増殖し、(2)他の細胞のために正常に準備された領域に侵入し、その位置を占める。一つ目の特徴はあるが、二つ目の特徴がない細胞は、過度な増殖はするが、一塊のみとして残っている腫瘍を形成する。この場合の腫瘍を良性(benign)と言い、このような腫瘍は、外科的な手術によって除去され得る。しかし、一つの腫瘍が周辺組織に侵入する能力があると、悪性(malignant)と呼ばれる癌になる。浸透能力がある悪性腫瘍細胞は、1次腫瘍から分離されて血流やリンパ管に入り込み、身体の他の部位に転移(metastasis)されることによって2次腫瘍を形成することができる。
【0093】
前記癌は、例えば、黒色腫、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、神経膠腫、肝臓癌、甲状腺腫瘍、胃癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、肺癌、大腸癌、膠芽腫、子宮内膜癌、腎臓癌、結腸癌、膵臓癌、食道癌腫、頭頸部癌、中皮腫、肉腫、骨肉腫、胆管癌又は表皮癌などであり得るが、これに制限されるのではない。
【0094】
全ての癌細胞には、正常細胞で発見されない新しいDNA配列が挿入されたり(Insertion:IN)、正常細胞のDNAの一部が欠失する(Deletion:Del)現象が多数観察され、各癌細胞ごとに特異的に挿入/欠失したDNA配列が存在し得る。
【0095】
細胞は、DNA二重鎖が切断されると、これを復旧しようとするDNA復旧メカニズムを有する。しかし、このような復旧メカニズムは、DNA二重鎖切断の数が少ない場合に効果的に復旧するが、その数が多くなると死滅するようになる。バクテリアの場合は、一つのDNA二重鎖切断でバクテリアが死滅し得るが、動物細胞の場合は、それより多くのDSBが必要であると知られている。
【0096】
本発明によると、上記の事実に基づいて、ゲノム配列変異を有する細胞、例えば、癌細胞のInDelを見出し、これを認識できる切断因子を製作し、核酸切断酵素を用いてゲノム配列変異を有する細胞、例えば、癌細胞などを特異的に死滅させるように誘導することができる。
【0097】
老化の場合は、老化された細胞でDNA損傷が蓄積されており、DNA復旧活性が減少しているが、老化された細胞でDNA損傷が多くなり得る。このような損傷を治療するために復旧が活発に行わなければならないが、老化された細胞及び組織において、特に二重鎖切断復旧が減少しており、DNA変異が多く観察される。
【0098】
細胞老化(cellular senescence)の場合、DNA損傷などによるゲノムの不安定性が主な老化経路である。DNA損傷が発生すると、重要な遺伝子が壊れたり、転写調節過程などが変化し、特定の生化学的経路に関与するタンパク質の生産及び機能に問題が発生し、細胞の正常な機能が破壊され得る。このような細胞が除去されずに蓄積されると、単一細胞の壊れで終了しなく、個体全体の恒常性を脅かすこともある。
【0099】
正常細胞で発見されない新しいDNA配列が挿入されたり(Insertion:IN)、正常細胞のDNAの一部が欠失する(Deletion:Del)現象が多数観察され、各老化細胞ごとに特異的に挿入/欠失したDNA配列が存在し得る。
【0100】
本発明によると、上記の事実に基づいて、ゲノム配列変異を有する細胞、例えば、老化細胞のInDelを見出し、これを認識できる切断因子を製作し、核酸切断酵素を用いてゲノム配列変異を有する細胞、例えば、老化細胞などを特異的に死滅させるように誘導することができる。
【0101】
老化細胞(senescent cells)を選択的に除去することによって、老化と関連した特性を緩和することができる。細胞老化の標識子としての役割をするp16プロモーターに細胞死滅遺伝子を発現させることによって老化された細胞を選択的に死滅させたとき、その組織の機能を検討すると、老化と関連して表れる特性の緩和が起こることを確認した。マウスを用いたモデルから早期に老化された細胞を除去することによって、代表的な老化表現型である白内障及び筋肉消失が発生しておらず、運動能力にもさらに優れることを研究結果として得た(Baker,D.J.,T,(2011)Nature 479:232-236)。
【0102】
免疫疾患の場合、哺乳類のリンパ球細胞にはB-細胞受容体、T-細胞受容体が存在するが、これらは、V(D)J組換え(recombination)過程を通じてV(variable)、D(diversity)、J(joining)遺伝子が混合されながら、これを通じて多様な種類の抗原を認識することができる。この過程で二重鎖切断が起こるが、これを調節する各タンパク質が欠けるとき、V(D)J組換え過程が確実に作動できなくなり、その結果、免疫欠乏、神経欠陥などの多くの疾病が表れるようになる。
【0103】
正常細胞で発見されない新しいDNA配列が挿入されたり(Insertion:IN)、正常細胞のDNAの一部が欠失する(Deletion:Del)現象が多数観察され、各免疫疾患発病細胞ごとに特異的に挿入/欠失したDNA配列が存在し得る。
【0104】
本発明によると、上記の事実に基づいて、ゲノム配列変異を有する細胞、例えば、免疫疾患発病細胞のInDelを見出し、これを認識できる切断因子を製作し、核酸切断酵素を用いてゲノム配列変異を有する細胞、例えば、免疫疾患発病細胞などを特異的に死滅させるように誘導することができる。
【0105】
心血管疾患と関連して、例えば、心不全症は、心臓のポンプ機能が弱くなったときに発生する疾患であって、現在まで心不全患者において心不全、糖尿病及びインスリン抵抗性の間の連関関係があることが知られている。また、心不全症では、心臓組織及び内臓脂肪でDNA損傷が蓄積されると知られているが、これは、脂肪組織の炎症反応及びインスリン抵抗性によって起こるものであると知られている。実際にマウスに高カロリーの食物を与えたとき、多くの脂肪酸が脂肪組織に流入しながらROSの過量生成をもたらし、その結果、DNA損傷が蓄積されたり、又はp53が脂肪組織の炎症反応及びインスリン抵抗性に関与することが明らかになった。このような過度な脂肪の分解は、神経系で酸化的ストレスを誘導し、これは、DNA損傷及び脂肪組織のp53依存的な炎症反応を誘導する。その他にも、アテローム性動脈硬化症(atherosclerosis)の初期、病期進行でDNA損傷が蓄積されることが報告された。併せて、DNA損傷は、プラーク(plaque)のレベルを増加させ、このプラークのレベル増加が動脈硬化につながるという報告もある。これにより、動脈硬化でもDNA損傷が重要な役割をすることができる。
【0106】
「ゲノム配列変異を有する細胞」から由来する各疾患のほとんどは、DNA復旧(repair)やDNA損傷応答(damage response)の欠乏によってもたらされる。代表的な疾患としては、エカルディ・グティエール症候群(Aicardi-Goutieres syndrome)(脳の萎縮症と筋肉の異常)、筋肉萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis 4;ALS4、神経細胞の退化)、マイヤー・ゴーリン症候群(Meier-Gorlin Syndrome)(小脳症、膝骨の異常)、ゼッケル症候群(Seckel syndrome)(血球の数が減少する疾病)、シムケ免疫性骨形成不全(Schimke immune-osseous dysplasia)(低身長、小脳症、腎臓異常、免疫欠乏、背中が反る疾患)、毛細血管拡張性運動失調症(Ataxia telangiectasia;毛細管拡張性症、免疫体系異常、白血病)、ナイミーヘン切断症候群(免疫体系異常、リンパ種発生)、ブルーム症候群(皮膚発疹による血管拡張、皮膚色素異常、免疫系異常、肺疾患)、ウェルナー症候群(速い老化)、ロスムンド・トムソン症候群(皮膚異常、赤色斑、血管拡張、白内障)、ファンコニ貧血症(貧血、血小板の減少、白血病の増加)、色素性乾皮症(太陽光敏感性、皮膚癌、色素症)、コケイン症候群(小字症、小人症、太陽光敏感性)、リンチ症候群(大腸癌)、家族性大腸腺腫症(大腸癌、直腸癌の増加)などがある。このような疾病の各患者は、多くのゲノム配列変異を有する細胞を作るようになり、これを通じて各器官で多様な疾患がもたらされる。
【0107】
正常細胞で発見されない新しいDNA配列が挿入されたり(Insertion:IN)、正常細胞のDNAの一部が欠失する(Deletion:Del)現象が多数観察され、心血管疾患発病細胞ごとに特異的に挿入/欠失したDNA配列が存在し得る。
【0108】
本発明によると、上記の事実に基づいて、ゲノム配列変異を有する細胞、例えば、心血管疾患発病細胞のInDelを見出し、これを認識できる切断因子を製作し、核酸切断酵素を用いてゲノム配列変異を有する細胞、例えば、心血管疾患発病細胞などを特異的に死滅させるように誘導することができる。
【0109】
遺伝的変異細胞に特異的に存在するInDelは、正常細胞及びゲノム配列(Genome sequence)を分析し、互いに異なるInDelを見出すことができる。塩基配列の分析では、全ゲノム配列(Whole Genome sequnece)を比較することができ、場合によっては、特定の染色体のみを選択し、塩基配列を分析・比較することができる。
【0110】
場合によって、InDelの選別時、癌細胞はWGSしなく、知られているWGSを使用する場合、正常細胞には存在しないInDelのみを検証することができる。今後、患者の癌細胞で多くのInDELを発見するとき、共通的に表れるInDELが存在し得る。この場合、共通的に表れるInDELのみをPCRなどによって癌細胞で観察し、ターゲット組成物に含ませる戦略が含まれ得る。また、WGSをし、InDelを検出することが現在最も効果的な方法であるが、サブトラクティブハイブリダイゼーション(subtraction hybridization)(正常細胞のDNAと癌細胞のDNAを変性(denaturation)させ、再びハイブリダイゼーション(hybridization)を行うことによって、互いに結合しない部位をInDelとして見出す方式)も可能である。よって、WGSを含むInDelを見出すことができる多様な方法を用いて、遺伝子変形細胞の特異的InDelを発見する方式を用いることができる。
【0111】
2.変異領域
【0112】
一つの実施例において、前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、細胞死滅を誘導するのに十分なターゲットに該当する互いに異なる4個以上であり得る。前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、例えば、互いに異なる30個以下であり得る。前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、例えば、互いに異なるそれぞれの4個~30個であり得る。
【0113】
前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、具体的には、互いに異なるそれぞれの4個~30個、具体的には、5個~30個、5個~29個、5個~28個、5個~27個、5個~26個、5個~25個、5個~24個、5個~23個、5個~22個、5個~21個、5個~20個、5個~19個、5個~18個、5個~17個、5個~16個、5個~15個、5個~14個、5個~13個、5個~12個、5個~11個、5個~10個、6個~30個、6個~29個、6個~28個、6個~27個、6個~26個、6個~25個、6個~24個、6個~23個、6個~22個、6個~21個、6個~20個、6個~19個、6個~18個、6個~17個、6個~16個、6個~15個、6個~14個、6個~13個、6個~12個、6個~11個、6個~10個、7個~30個、7個~29個、7個~28個、7個~27個、7個~26個、7個~25個、7個~24個、7個~23個、7個~22個、7個~21個、7個~20個、7個~19個、7個~18個、7個~17個、7個~16個、7個~15個、7個~14個、7個~13個、7個~12個、7個~11個、7個~10個、8個~30個、8個~29個、8個~28個、8個~27個、8個~26個、8個~25個、8個~24個、8個~23個、8個~22個、8個~21個、8個~20個、8個~19個、8個~18個、8個~17個、8個~16個、8個~15個、8個~14個、8個~13個、8個~12個、8個~11個、8個~10個、9個~30個、9個~29個、9個~28個、9個~27個、9個~26個、9個~25個、9個~24個、9個~23個、9個~22個、9個~21個、9個~20個、9個~19個、9個~18個、9個~17個、9個~16個、9個~15個、9個~14個、9個~13個、9個~12個、9個~11個、9個~10個、10個~30個、10個~29個、10個~28個、10個~27個、10個~26個、10個~25個、10個~24個、10個~23個、10個~22個、10個~21個、10個~20個、10個~19個、10個~18個、10個~17個、10個~16個、10個~15個、10個~14個、10個~13個、10個~12個、10個~11個、11個~30個、11個~29個、11個~28個、11個~27個、11個~26個、11個~25個、11個~24個、11個~23個、11個~22個、11個~21個、11個~20個、11個~19個、11個~18個、11個~17個、11個~16個、11個~15個、11個~14個、11個~13個、11個~12個、12個~30個、12個~29個、12個~28個、12個~27個、12個~26個、12個~25個、12個~24個、12個~23個、12個~22個、12個~21個、12個~20個、12個~19個、12個~18個、12個~17個、12個~16個、12個~15個、12個~14個、12個~13個、13個~30個、13個~29個、13個~28個、13個~27個、13個~26個、13個~25個、13個~24個、13個~23個、13個~22個、13個~21個、13個~20個、13個~19個、13個~18個、13個~17個、13個~16個、13個~15個、13個~14個、14個~30個、14個~29個、14個~28個、14個~27個、14個~26個、14個~25個、14個~24個、14個~23個、14個~22個、14個~21個、14個~20個、14個~19個、14個~18個、14個~17個、14個~16個、14個~15個、15個~30個、15個~29個、15個~28個、15個~27個、15個~26個、15個~25個、15個~24個、15個~23個、15個~22個、15個~21個、15個~20個、15個~19個、15個~18個、15個~17個、15個~16個であり得る。
【0114】
前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、具体的には、互いに異なるそれぞれの4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個又は30個(数字の間の範囲も含む)であり得る。
【0115】
変異が存在する位置の含まれたゲノムは、細胞で二倍体(diploid)及び/又は三倍体(triploid)であり得るので、互いに異なるそれぞれの4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個又は30個(数字の間の範囲も含む)、又は、4ペア、5ペア、6ペア、7ペア、8ペア、9ペア、10ペア、11ペア、12ペア、13ペア、14ペア、15ペア、16ペア、17ペア、18ペア、19ペア、20ペア、21ペア、22ペア、23ペア 、24ペア、25ペア、26ペア、27ペア、28ペア、29ペア又は30ペアの
変異領域を考慮して、互いに異なる4個~60個、例えば、互いに異なる60個、59個、58個、57個、4個~56個、55個、54個、53個、52個、51個、50個、49個、48個、47個、46個、45個、44個、43個、42個、41個、40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個又は4個(数字の間の範囲も含む)の二重鎖切断(Double-stranded break、DSB)を誘導し、細胞を死滅させることができる。
【0116】
前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、核酸配列であって、例えば、コーディング又はノンコーディング核酸であり得る。前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の核酸は、コーディング核酸であってもよく、ゲノム(genome)から転写されてタンパク質に翻訳されてもよい。前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の核酸は、ノンコーディング核酸であってもよく、ゲノムから転写されてタンパク質に翻訳されない。
【0117】
本発明に係るゲノム配列変異を有する細胞内の変異は、正常細胞で発見されない場合がある。このような変異は、ゲノム配列変異を有する細胞と正常細胞をWGS(whole genome sequencing)し、ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の配列、例えば、配列の挿入、欠失、及び置換で構成された群から選ばれた一つ以上であり得る。
【0118】
ゲノム配列変異を有する細胞特異的配列のマッピングは、WGS(whole genome sequencing)、又はサブトラクションハイブリダイゼーション(subtractive hybridization)及びシーケンシングの方法を通じて行われてもよく、このとき、導出されたInDelの場合、癌で発見された挿入の場合は直ぐガイドRNAを製作し、欠失の場合は、切断地点(break point)をマッピングした後、切断地点を含むガイドRNAを製作して使用することができる。
【0119】
WGS(全ゲノムシーケンシング)は、次世代シーケンシング(next generation sequencing)によって10X、20X、40X形式で多くの倍数でゲノムを読む方法を意味する。「次世代シーケンシング」は、チップ(Chip)基盤、及びPCR基盤のペアエンド(paired end)形式で全ゲノムを断片化し、前記断片に対して化学的な反応(hybridization)に基づいて超高速でシーケンシングを行う技術を意味する。
【0120】
サブトラクションハイブリダイゼーションは、多くの組織又は細胞の間に発現の差がある遺伝子のクローニングに用いられる方法である。試験する細胞のDNA試料特異的遺伝子が検出され得る。試験する細胞のDNAを一本鎖DNAに変性させた後、アニーリング(annealing)を行う。アニーリング条件を調節することによって、試験する細胞特異的DNA配列を二本鎖DNAとして分離することができる。
【0121】
ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の核酸配列は、例えば、該当の配列をターゲットとして、核酸切断酵素によって核酸配列内のDNAのDSBが起こる遺伝子部位を意味するものであって、核酸配列内の核酸切断酵素が特異的に認識する配列、例えば、核酸切断酵素がCas9である場合、Cas9タンパク質が認識するPAM配列の5’末端及び/又は3’末端に隣接して位置する約17bp乃至23bp長さの核酸配列を意味し得る。
【0122】
ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の配列を特異的に認識するガイドRNAは、PAM配列が位置するDNA鎖の相補鎖のヌクレオチド配列と90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の配列相補性を有するヌクレオチド配列を意味するものであって、前記相補鎖のヌクレオチド配列と結合可能である。
【0123】
ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の配列は、該当の配列部位の二つのDNA鎖のうちPAM配列が位置する鎖の核酸配列で表示される。このとき、実際にガイドRNAが結合するDNA鎖は、PAM配列が位置する鎖の相補鎖であるので、前記ガイドRNAに含まれた標的化配列は、RNAの特性上、TをUに変更することを除いては、InDelを含む核酸配列と同一の核酸配列を有するようになる。
【0124】
前記Cas9タンパク質がストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のものである場合、前記PAM配列は、5’-NGG-3’(Nは、A、T、G、又はCである)で、ゲノム配列変異を有する細胞固有の変異配列を含む核酸配列は、配列内の5’-NGG-3’配列の5’末端及び/又は3’末端に隣接して位置する遺伝子部位であって、例えば、最大長さが約50bp又は約40bpである遺伝子部位であり得る。
【0125】
前記Cas9タンパク質がストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)由来のものである場合、前記PAM配列は、5’-NNAGAAW-3’(Nは、A、T、G、又はCである)で、ゲノム配列変異を有する細胞固有の変異配列は、配列内の5’-NNAGAAW-3’配列の5’末端及び/又は3’末端に隣接して位置する遺伝子部位であって、例えば、最大長さが約50bp又は約40bpである遺伝子部位であり得る。
【0126】
前記Cas9タンパク質がスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のものである場合、前記PAM配列は、5’-NNGRRT-3’(Nは、A、T、G、又はCで、Rは、A又はG)で、ゲノム配列変異を有する細胞固有の変異配列は、配列内の5’-NNGRRT-3’配列の5’末端及び/又は3’末端に隣接して位置する遺伝子部位であって、例えば、最大長さが約50bp又は約40bpである遺伝子部位であり得る。
【0127】
前記Cas9タンパク質がカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter
jejuni)由来のものである場合、前記PAM配列は、5’-NNNNRYAC-3’(Nは、A、T、G、又はCで、Rは、A又はGで、Yは、C又はTである)で、ゲノム配列変異を有する細胞固有の変異配列は、配列内の5’-NNNNRYAC-3’配列の5’末端及び/又は3’末端に隣接して位置する遺伝子部位であって、例えば、最大長さが約50bp又は約40bpである遺伝子部位であり得る。
【0128】
3.切断因子
【0129】
本発明において、切断因子とは、正常細胞と比較して、ゲノム配列変異を有する細胞で変異された部分、すなわち、ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の核酸配列を認識して切断できるように誘導する塩基配列を意味する。
【0130】
ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域を特異的に認識するガイドRNAは、PAM配列が位置するDNA鎖の相補鎖のヌクレオチド配列と90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、又は100%の配列相補性を有するヌクレオチド配列を意味するものであって、前記相補鎖のヌクレオチド配列と結合可能である。
【0131】
ゲノム配列変異を有する細胞のInDelを含む核酸配列を特異的に認識する切断因子は、例えば、ガイドRNAであり得る。前記ガイドRNAは、例えば、crRNA(CRISPR RNA)、tracrRNA(trans-activating crRNA)、及び単一ガイドRNA(single guide RNA;sgRNA)からなる群から選ばれた1種以上であってもよく、具体的には、crRNAとtracrRNAとが互いに結合された二重鎖crRNA:tracrRNA複合体、又はcrRNA又はその一部とtracrRNA又はその一部とがオリゴヌクレオチドリンカーで連結された単一鎖ガイドRNA(sgRNA)であり得る。
【0132】
本発明の具体的な実施例において、crRNAとtracrRNAとが互いに結合された二重鎖crRNA:tracrRNAを切断因子として使用することができる。crRNAが標的部位と結合されたことを認識し、エンドヌクレアーゼ機能が活性化され得る。場合によって、切断因子として単一鎖ガイドRNA(sgRNA)を使用することができる。
【0133】
本発明において、前記切断因子は、複数個であって、複数個のそれぞれの切断因子の配列が異なるので、互いに異なる配列を含むことができる。
【0134】
本発明において、前記切断因子は、正常細胞の塩基配列と比較して、細胞の死滅を誘導できる十分な複数個の数でなければならなく、互いに異なる配列を有する5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上、23個以上、24個以上、25個以上、26個以上、27個以上、28個以上、29個以上、又は30個以上であり得る。前記切断因子は、互いに異なる配列を有する30個以下、29個以下、28個以下、27個以下、26個以下、25個以下、24個以下、23個以下、22個以下、21個以下、20個以下、19個以下、18個以下、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、又は2個以下であり得る。
【0135】
本発明において、前記切断因子は、正常細胞の塩基配列と比較して、細胞の死滅を誘導できる十分な複数個の数でなければならなく、互いに異なる配列を有する4個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する4個~59個、4個~58個、4個~57個、4個~56個、4個~55個、4個~54個、4個~53個、4個~52個、4個~51個、4個~50個、4個~49個、4個~48個、4個~47個、4個~46個、4個~45個、4個~44個、4個~43個、4個~42個、4個~41個、4個~40個、4個~39個、4個~38個、4個~37個、4個~36個、4個~35個、4個~34個、4個~33個、4個~32個、4個~31個、4個~30個、4個~29個、4個~28個、4個~27個、4個~26個、4個~25個、4個~24個、4個~23個、4個~22個、4個~21個、4個~20個、4個~19個、4個~18個、4個~17個、4個~16個、4個~15個、4個~14個、4個~13個、4個~12個、4個~11個、又は4個~10個であり得る。
【0136】
本発明において、前記切断因子は、正常細胞の塩基配列と比較して、細胞の死滅を誘導できる十分な複数個の数でなければならなく、互いに異なる配列を有する、例えば、4個~30個、4個~29個、4個~28個、4個~27個、4個~26個、4個~25個、4個~24個、4個~23個、4個~22個、4個~21個、4個~20個、4個~19個、4個~18個、4個~17個、4個~16個、4個~15個、4個~14個、4個~13個、4個~12個、4個~11個、4個~10個、5個~30個、5個~29個、5個~28個、5個~27個、5個~26個、5個~25個、5個~24個、5個~23個、5個~22個、5個~21個、5個~20個、5個~19個、5個~18個、5個~17個、5個~16個、5個~15個、5個~14個、5個~13個、5個~12個、5個~11個、5個~10個、6個~30個、6個~29個、6個~28個、6個~27個、6個~26個、6個~25個、6個~24個、6個~23個、6個~22個、6個~21個、6個~20個、6個~19個、6個~18個、6個~17個、6個~16個、6個~15個、6個~14個、6個~13個、6個~12個、6個~11個、6個~10個、7個~30個、7個~29個、7個~28個、7個~27個、7個~26個、7個~25個、7個~24個、7個~23個、7個~22個、7個~21個、7個~20個、7個~19個、7個~18個、7個~17個、7個~16個、7個~15個、7個~14個、7個~13個、7個~12個、7個~11個、7個~10個、8個~30個、8個~29個、8個~28個、8個~27個、8個~26個、8個~25個、8個~24個、8個~23個、8個~22個、8個~21個、8個~20個、8個~19個、8個~18個、8個~17個、8個~16個、8個~15個、8個~14個、8個~13個、8個~12個、8個~11個、8個~10個、9個~30個、9個~29個、9個~28個、9個~27個、9個~26個、9個~25個、9個~24個、9個~23個、9個~22個、9個~21個、9個~20個、9個~19個、9個~18個、9個~17個、9個~16個、9個~15個、9個~14個、9個~13個、9個~12個、9個~11個、9個~10個、10個~30個、10個~29個、10個~28個、10個~27個、10個~26個、10個~25個、10個~24個、10個~23個、10個~22個、10個~21個、10個~20個、10個~19個、10個~18個、10個~17個、10個~16個、10個~15個、10個~14個、10個~13個、10個~12個、10個~11個、11個~30個、11個~29個、11個~28個、11個~27個、11個~26個、11個~25個、11個~24個、11個~23個、11個~22個、11個~21個、11個~20個、11個~19個、11個~18個、11個~17個、11個~16個、11個~15個、11個~14個、11個~13個、11個~12個、12個~30個、12個~29個、12個~28個、12個~27個、12個~26個、12個~25個、12個~24個、12個~23個、12個~22個、12個~21個、12個~20個、12個~19個、12個~18個、12個~17個、12個~16個、12個~15個、12個~14個、12個~13個、13個~30個、13個~29個、13個~28個、13個~27個、13個~26個、13個~25個、13個~24個、13個~23個、13個~22個、13個~21個、13個~20個、13個~19個、13個~18個、13個~17個、13個~16個、13個~15個、13個~14個、14個~30個、14個~29個、14個~28個、14個~27個、14個~26個、14個~25個、14個~24個、14個~23個、14個~22個、14個~21個、14個~20個、14個~19個、14個~18個、14個~17個、14個~16個、14個~15個、15個~30個、15個~29個、15個~28個、15個~27個、15個~26個、15個~25個、15個~24個、15個~23個、15個~22個、15個~21個、15個~20個、15個~19個、15個~18個、15個~17個、15個~16個であり得る。
【0137】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する6個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する6個~59個、6個~58個、6個~57個、6個~56個、6個~55個、6個~54個、6個~53個、6個~52個、6個~51個、6個~50個、6個~49個、6個~48個、6個~47個、6個~46個、6個~45個、6個~44個、6個~43個、6個~42個、6個~41個、6個~40個、6個~39個、6個~38個、6個~37個、6個~36個、6個~35個、6個~34個、6個~33個、6個~32個、6個~31個、6個~30個、6個~29個、6個~28個、6個~27個、6個~26個、6個~25個、6個~24個、6個~23個、6個~22個、6個~21個、6個~20個、6個~19個、6個~18個、6個~17個、6個~16個、6個~15個、6個~14個、6個~13個、6個~12個、6個~11個、又は6個~10個であり得る。
【0138】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する8個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する8個~59個、8個~58個、8個~57個、8個~56個、8個~55個、8個~54個、8個~53個、8個~52個、8個~51個、8個~50個、8個~49個、8個~48個、8個~47個、8個~46個、8個~45個、8個~44個、8個~43個、8個~42個、8個~41個、8個~40個、8個~39個、8個~38個、8個~37個、8個~36個、8個~35個、8個~34個、8個~33個、8個~32個、8個~31個、8個~30個、8個~29個、8個~28個、8個~27個、8個~26個、8個~25個、8個~24個、8個~23個、8個~22個、8個~21個、8個~20個、8個~19個、8個~18個、8個~17個、8個~16個、8個~15個、8個~14個、8個~13個、8個~12個、8個~11個、又は8個~10個であり得る。
【0139】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する10個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する10個~59個、10個~58個、10個~57個、10個~56個、10個~55個、10個~54個、10個~53個、10個~52個、10個~51個、10個~50個、10個~49個、10個~48個、10個~47個、10個~46個、10個~45個、10個~44個、10個~43個、10個~42個、10個~41個、10個~40個、10個~39個、10個~38個、10個~37個、10個~36個、10個~35個、10個~34個、10個~33個、10個~32個、10個~31個、10個~30個、10個~29個、10個~28個、10個~27個、10個~26個、10個~25個、10個~24個、10個~23個、10個~22個、10個~21個、10個~20個、10個~19個、10個~18個、10個~17個、10個~16個、10個~15個、10個~14個、10個~13個、又は10個~12個であり得る。
【0140】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する12個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する12個~59個、12個~58個、12個~57個、12個~56個、12個~55個、12個~54個、12個~53個、12個~52個、12個~51個、12個~50個、12個~49個、12個~48個、12個~47個、12個~46個、12個~45個、12個~44個、12個~43個、12個~42個、12個~41個、12個~40個、12個~39個、12個~38個、12個~37個、12個~36個、12個~35個、12個~34個、12個~33個、12個~32個、12個~31個、12個~30個、12個~29個、12個~28個、12個~27個、12個~26個、12個~25個、12個~24個、12個~23個、12個~22個、12個~21個、12個~20個、12個~19個、12個~18個、12個~17個、12個~16個、12個~15個、12個~14個、又は12個~13個であり得る。
【0141】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する互いに異なる配列を有する14個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する14個~59個、14個~58個、14個~57個、14個~56個、14個~55個、14個~54個、14個~53個、14個~52個、14個~51個、14個~50個、14個~49個、14個~48個、14個~47個、14個~46個、14個~45個、14個~44個、14個~43個、14個~42個、14個~41個、14個~40個、14個~39個、14個~38個、14個~37個、14個~36個、14個~35個、14個~34個、14個~33個、14個~32個、14個~31個、14個~30個、14個~29個、14個~28個、14個~27個、14個~26個、14個~25個、14個~24個、14個~23個、14個~22個、14個~21個、14個~20個、14個~19個、14個~18個、14個~17個、14個~16個、又は14個~15個であり得る。
【0142】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する16個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する16個~59個、16個~58個、16個~57個、16個~56個、16個~55個、16個~54個、16個~53個、16個~52個、16個~51個、16個~50個、16個~49個、16個~48個、16個~47個、16個~46個、16個~45個、16個~44個、16個~43個、16個~42個、16個~41個、16個~40個、16個~39個、16個~38個、16個~37個、16個~36個、16個~35個、16個~34個、16個~33個、16個~32個、16個~31個、16個~30個、16個~29個、16個~28個、16個~27個、16個~26個、16個~25個、16個~24個、16個~23個、16個~22個、16個~21個、16個~20個、16個~19個、16個~18個、又は16個~17個であり得る。
【0143】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する18個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する18個~59個、18個~58個、18個~57個、18個~56個、18個~55個、18個~54個、18個~53個、18個~52個、18個~51個、18個~50個、18個~49個、18個~48個、18個~47個、18個~46個、18個~45個、18個~44個、18個~43個、18個~42個、18個~41個、18個~40個、18個~39個、18個~38個、18個~37個、18個~36個、18個~35個、18個~34個、18個~33個、18個~32個、18個~31個、18個~30個、18個~29個、18個~28個、18個~27個、18個~26個、18個~25個、18個~24個、18個~23個、18個~22個、18個~21個、18個~20個、又は18個~19個であり得る。
【0144】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する20個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する20個~59個、20個~58個、20個~57個、20個~56個、20個~55個、20個~54個、20個~53個、20個~52個、20個~51個、20個~50個、20個~49個、20個~48個、20個~47個、20個~46個、20個~45個、20個~44個、20個~43個、20個~42個、20個~41個、20個~40個、20個~39個、20個~38個、20個~37個、20個~36個、20個~35個、20個~34個、20個~33個、20個~32個、20個~31個、20個~30個、20個~29個、20個~28個、20個~27個、20個~26個、20個~25個、20個~24個、20個~23個、20個~22個、又は20個~21個であり得る。
【0145】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する22個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する22個~59個、22個~58個、22個~57個、22個~56個、22個~55個、22個~54個、22個~53個、22個~52個、22個~51個、22個~50個、22個~49個、22個~48個、22個~47個、22個~46個、22個~45個、22個~44個、22個~43個、22個~42個、22個~41個、22個~40個、22個~39個、22個~38個、22個~37個、22個~36個、22個~35個、22個~34個、22個~33個、22個~32個、22個~31個、22個~30個、22個~29個、22個~28個、22個~27個、22個~26個、22個~25個、22個~24個、又は22個~23個であり得る。
【0146】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する24個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する24個~59個、24個~58個、24個~57個、24個~56個、24個~55個、24個~54個、24個~53個、24個~52個、24個~51個、24個~50個、24個~49個、24個~48個、24個~47個、24個~46個、24個~45個、24個~44個、24個~43個、24個~42個、24個~41個、24個~40個、24個~39個、24個~38個、24個~37個、24個~36個、24個~35個、24個~34個、24個~33個、24個~32個、24個~31個、24個~30個、24個~29個、24個~28個、24個~27個、24個~26個、又は24個~25個であり得る。
【0147】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する26個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する26個~59個、26個~58個、26個~57個、26個~56個、26個~55個、26個~54個、26個~53個、26個~52個、26個~51個、26個~50個、26個~49個、26個~48個、26個~47個、26個~46個、26個~45個、26個~44個、26個~43個、26個~42個、26個~41個、26個~40個、26個~39個、26個~38個、26個~37個、26個~36個、26個~35個、26個~34個、26個~33個、26個~32個、26個~31個、26個~30個、26個~29個、26個~28個、又は26個~27個であり得る。
【0148】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する28個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する28個~59個、28個~58個、28個~57個、28個~56個、28個~55個、28個~54個、28個~53個、28個~52個、28個~51個、28個~50個、28個~49個、28個~48個、28個~47個、28個~46個、28個~45個、28個~44個、28個~43個、28個~42個、28個~41個、28個~40個、28個~39個、28個~38個、28個~37個、28個~36個、28個~35個、28個~34個、28個~33個、28個~32個、28個~31個、28個~30個、又は28個~29個であり得る。
【0149】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する30個~60個、例えば、互いに異なる配列を有する30個~59個、30個~58個、30個~57個、30個~56個、30個~55個、30個~54個、30個~53個、30個~52個、30個~51個、30個~50個、30個~49個、30個~48個、30個~47個、30個~46個、30個~45個、30個~44個、30個~43個、30個~42個、30個~41個、30個~40個、30個~39個、30個~38個、30個~37個、30個~36個、30個~35個、30個~34個、30個~33個、30個~32個、又は30個~31個であり得る。
【0150】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する60個、59個、58個、57個、56個、55個、54個、53個、52個、51個、50個、49個、48個、47個、46個、45個、44個、43個、42個、41個、40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、又は4個を含むことができる(数字の間の範囲も含む)。
【0151】
前記切断因子は、例えば、5個~30個であり得る。前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個又は5個を含むことができる。前記切断因子は、正常細胞の塩基配列と比較して、細胞の死滅を誘導できる十分な数字でなければならなく、互いに異なる配列を有する4個~30個であり得る。前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個又は4個を含むことができる。
【0152】
切断因子がターゲットとする染色体が二倍体(diploid)及び/又は三倍体(triploid)であるかどうかによって、各切断因子がターゲットとする配列を2個及び/又は3個含むことができる。よって、切断因子によって誘導される二重鎖切断(DSB)は、細胞の死滅を誘導できる切断因子の数の2倍及び/又は3倍であり得る。例えば、互いに異なる配列を有する5個の切断因子を含む場合、細胞死滅のために10個乃至15個の二重鎖切断(DSB)が必要である。
【0153】
前記ガイドRNAは、次のような段階を通じて製作することができる:ゲノム配列変異を有する細胞と一般細胞のWGS結果データを比較して、ゲノム配列変異を有する細胞固有の変異配列を見出す。これに基づいて、ガイドRNA製作条件に充足したゲノム配列変異を有する細胞固有の変異配列特異的なガイドRNAを設計する。その後、ゲノム配列変異を有する細胞固有の変異サイトの長さを考慮して任意的順位を付与し、全ての染色体(chromosome)に均一にガイドRNAが設計できるようにし、最終のガイドRNA組み合わせを完成する。
【0154】
ガイドRNAの製作条件は次の通りである。(a)PAMサイトを除いたガイドRNAの塩基配列の長さは20塩基(base pair)である。(b)ガイドRNAに存在するグアニン(guanine)とシトシン(cytosine)との和の比率が40%から60%である。(c)ゲノム配列変異を有する細胞固有の変異配列がPAMサイト付近の直ぐ前の領域に存在する。(d)最大単一重合体(homopolymer)の長さが4塩基(base pair)以下である。(e)正常細胞のWGS結果データに一つの不一致(mismatch)を許容するマッピングをしたとき、マッピング結果があってはならない。
【0155】
細胞株特異的なInDelをWGSを通じて全ゲノム解読して確認した後、該当の領域を強く結合するPAMサイト領域に含ませるようにガイドRNAを設計する。設計されたガイドRNAは、正常を代表するヒトの標準ゲノムで確認し、非特異的反応がないことを確認する。その後、InDelサイトの長さを考慮して任意的順位を付与し、これに基づいて全ての染色体(chromosome)に均一にガイドRNAが設計できるようにし、最終のガイドRNA組み合わせを完成する。ガイドRNAの数は、ゲノム配列変異を有する細胞の種類及びDSBを起こす実験方法によって調整可能である。
【0156】
4.核酸切断酵素
【0157】
このようなDNA二重鎖切断の手段である核酸切断酵素は、制限酵素(restriction enzyme)、ZNFN(zinc finger nuclease)、TALEN(transcriptional activator-like effector nuclease)又はCasタンパク質であり得るが、これに制限されるのではない。前記Casタンパク質は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12e、Cas12g、Cas12h、Cas12i、Cas12j、Cas13a、Cas13b、Cas13c、Cas13d、Cas14、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、CsMT2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3又はCsf4のエンドヌクレアーゼであり得るが、これに制限されるのではない。
【0158】
前記Casタンパク質は、コリネバクター(Corynebacter)、ステレラ(Sutterella)、レジオネラ(Legionella)、トレポネーマ(Treponema)、フィリファクター(Filifactor)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus:Streptococcus pyogenes)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、バクテロイデス(Bacteroides)、フラビイボラ(Flaviivola)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、アゾスピリルム(Azospirillum)、グルコナセトバクター(Gluconacetobacter)、ナイセリア(Neisseria)、ロセブリア(Roseburia)、パルビバクラム(Parvibaculum)、スタフィロコッカス(Staphylococcus:Staphylococcus aureus)、ニトラティフラクター(Nitratifractor)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)及びカンピロバクター(Campylobacter)からなる群から選ばれるCasタンパク質のオーソログ(ortholog)を含む微生物属から由来し、これらから単純分離されたもの又は組み換えられたものであり得る。
【0159】
5.伝達手段
【0160】
ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域配列のうち、正常細胞には存在しない固有の配列を含む核酸配列を特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド、及び核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む一つ以上の伝達手段を含むことができる。
【0161】
前記伝達手段と関連して、複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド、及び核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドは、同一又は異なる伝達手段に位置し得る。
【0162】
遺伝的変異細胞を選択的に死滅させるときに発生する代表的な副作用は、オフターゲット(OFF-Target)効果である。これは、正常細胞のDNA配列を遺伝的変異細胞のInDelと誤って認識して切断する場合に発生し得る。このようなエラーを減少させるためには、InDelの配列を長くすることが好ましい。CAS9の場合、通常、17個~21個の配列の長さのガイドRNAを搭載することができる。
【0163】
このようなオフターゲット効果と共に、細胞内の多量の形質導入による副作用、すなわち、毒性効果を低下させるために、その細胞死滅誘導用組成物の投与量を最小化する必要がある。最近、遺伝子治療の発展により、遺伝子を細胞に導入する多くの方法が開発された。そして、遺伝子を導入する多くの方法のうちウイルスベクター(viral vector)を使用する方法の導入においては、人体に有害でないように導入する遺伝子を伝達(delivery)するための毒性の有無も活発に研究された。このような研究は、細胞に導入される酵素の数を減少させる方法でも達成され得る。これは、誘導用組成物がRNP複合体である場合は、RNP複合体の投与量を最小化しなければならないか、誘導用組成物がベクターを活用して形質転換させるものであれば、ベクターの投与量が最小化されることを意味する。
【0164】
i)1つ目の場合、RNP複合体の切断酵素が多数個の切断因子を発現できると、投入されるRNP複合体の個数を減少させることができる。特に、CAS12、CASΦの場合は、複数個のガイドRNAを一つのラインに挿入することができ、複数個の切断因子を一つのRNP複合体に含ませることができる。
【0165】
ii)2つ目の場合は、ベクターに複数個の切断因子を発現させるガイドRNAを含ませれるとよい。
【0166】
上記のような方法を活用する場合、細胞死滅誘導用組成物の投与量を減少させ、毒性効果を減少できるという効果が獲得される。これと共に、このような発明の場合、それぞれの細胞に導入される各切断因子が同一であるので、細胞死滅作用の統一性(uniformity)を高めることができるが、以下では、これについて説明する。
【0167】
切断因子a、b、c、d、e、fの合計5個が細胞死滅に必要であれば、それぞれの切断因子に対応する切断酵素(A)が細胞に全部投与されたり、形質転換されなければならない。一つの細胞に5個の切断酵素が投入されたとしても、全ての切断因子が投入されないので、細胞死滅に帰結しない場合がある。この場合、細胞死滅を確実に発生させるためには、細胞に導入される切断酵素の平均的個数が5個以上である必要がある。a、b、c、d、e、fを切断因子として認識する切断酵素を活用する場合、その酵素の一つのみが細胞に投入されたとしても、細胞死滅は行われ得る。これと同様に、5個の他の種のベクターを活用することなく、5個の切断因子を発現する一つのベクターのみが細胞に投入されたとしても、その細胞は十分に死滅させることができる。よって、本発明を通じて細胞内に投入されて発現される切断酵素の量を減少させ、毒性を効果的に減少させ、細胞死滅効果の正確度又は統一性(uniformity)を大幅に向上させることができる。これを可能にするCAS12、CASΦの使用は、効果を高めるものであると考えられる(Science(2020)369:333)。
【0168】
また、ウイルス伝達(viral delivery)の他に、ナノ粒子(nanoparticle)を用いてRNP複合体を伝達する方法で細胞死滅を誘導することができる。ナノ粒子を用いる場合は、ナノ粒子の外側に癌細胞に特異的に結合するペプチドを結合し、正常細胞にもたらされ得る副作用を最小化することができる。ペプチドとしては、癌細胞を特異的にターゲットとするRPARPARペプチドなどを含んで使用することができる(Sugahara et al.,Cancer Cell(2009)16:510-520)。
【0169】
前記伝達手段は、例えば、ウイルス伝達手段であり得る。ウイルス伝達手段は、ウイルスベクターを含むことができる。ウイルスベクターは、例えば、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)又はRV(Retroviral Vector)を含み得るが、これに制限されない。
【0170】
前記伝達手段は、例えば、非ウイルス伝達手段であり得る。非ウイルス伝達手段は、例えば、ウイルスレプリコンを含むエピソーマルベクターを含むことができる。非ウイルス伝達手段は、mRNA形態の伝達、RNP(Ribonucleoprotein)又はキャリアによる伝達を含むことができる。mRNA形態の伝達として、合成修飾(synthetic modified)mRNA又はsrRNA (self-replicating RNA)を含むことができる。キャリアとして、ナノ粒子、細胞透過ペプチド(CPP)又は重合体を含むことができる。
【0171】
本発明で使用可能な伝達手段は、例えば、ベクターを含むことができる。「ベクター」は、連結された他の核酸を輸送できる核酸分子を称する。例えば、単一鎖、二重鎖又は部分的二重鎖である核酸分子;一つ以上の自由末端、非自由末端(例えば、環形)を含む核酸分子;DNA、RNA又はこれらの二つを全て含む核酸分子;及び当業界に公知となっている他の多様なポリヌクレオチド;を含む。
【0172】
例えば、前記ベクターは、「プラスミド」であって、環形の二重鎖DNAループを称するものであって、これに、例えば、標準分子クローニング技法によって追加的なDNAセグメントが挿入され得る。
【0173】
本発明で使用可能なウイルス伝達手段は、例えば、ウイルスベクターを含むことができる。前記ウイルスベクターは、例えば、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)又はRV(Retroviral Vector)を含むことができる(Acta Biochim Pol.2005,52(2):285-291.及びBiomolecules.2020 Jun,10(6):839.)。
【0174】
ウイルスベクターの場合、ウイルス-誘導されたDNA又はRNA配列は、ウイルス(例えば、レトロウイルス、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、複製欠損アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)では、ウイルス内にパッケージングするためのベクターに存在する。ウイルスベクターは、宿主細胞内への形質感染のためのウイルスによって運搬されたポリヌクレオチドを含む。
【0175】
場合によって、ベクターは、導入される宿主細胞で自律複製することができる(例えば、バクテリア複製Oriを有するバクテリアベクター及びエピソーマル哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、ノンエピソーマル哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内への導入時、宿主細胞のゲノムに統合され、これによって宿主ゲノムと共に複製される。
【0176】
特定のベクターは、これらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは、本願で「発現ベクター」と称される。組換えDNA技術で有用な一般的な発現ベクターは、度々プラスミド形態である。
【0177】
組換え発現ベクターは、宿主細胞で核酸の発現に適した形態で核酸を含むことができ、これは、組換え発現ベクターが発現のために使用されるように、すなわち、発現される核酸配列に作動可能に連結されるように宿主細胞を基盤にして選択され得る一つ以上の調節要素を含むことを意味する。
【0178】
組換え発現ベクター内で、「作動可能に連結された」は、関心ヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を許容する方式で(例えば、試験管内転写/翻訳システムで又はベクターが宿主細胞内に導入される場合は宿主細胞で)調節要素に連結されることを意味する。
【0179】
「調節要素」は、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム進入部位(IRES)、及びその他の発現調整要素(例えば、転写終決信号、例えば、ポリアデニル化信号及びポリ-U配列)を含むことができる。調節要素は、多くの類型の宿主細胞でヌクレオチド配列の誘導、又は常に発現を指示する要素及び特定の宿主細胞でのみヌクレオチド配列の発現を指示する要素(例えば、組織-特異的調節配列)を含む。組織-特異的プロモーターは、要望される関心組織、例えば、筋肉、ニューロン、骨、皮膚、血液、特定の器官(例えば、肝、膵臓)、又は特定の細胞類型(例えば、リンパ球)で主に発現を指示することができる。また、調節要素は、組織又は細胞-類型特異的であったり、組織又は細胞-類型特異的でない細胞-周期依存性又は発達段階-依存的方式などの一時的-依存的方式で発現を指示することができる。
【0180】
場合によって、ベクターは、一つ以上のpol IIIプロモーター、一つ以上のpol IIプロモーター、一つ以上のpol Iプロモーター、又はこれらの組み合わせを含む。
pol IIIプロモーターの例は、非制限的にU6及びH1プロモーターを含む。pol
IIプロモーターの例は、非制限的に、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(任意にRSVエンハンサーを有する)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(選択的にCMVエンハンサーを有する)(例えば、Boshart et al(1985)Cell 41:521-530)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター及びEF1αプロモーターを含む。
【0181】
「調節要素」には、エンハンサー、例えば、WPRE;CMVエンハンサー;HTLV-IのLTRでのR-U5’セグメント;SV40エンハンサー;及びウサギβ-グロビンのエクソン2とエクソン3との間のイントロン配列などが含まれ得る。発現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、要望される発現水準などの因子に左右され得ることが当業者によって認識され得る。ベクターは、宿主細胞内に導入され、本願に記載したような核酸によってエンコードされる融合タンパク質又はペプチドを含む転写物、タンパク質又はペプチドを生成することができる(例えば、クラスター化された規則的間隔の短い回文の反復部(CRISPR)転写物、タンパク質、酵素、その突然変異体、その融合タンパク質など)。有益なベクターは、レンチウイルス及びアデノ随伴ウイルスを含み、このようなベクターの類型は、特定の類型の細胞を標的化するために選択され得る。
【0182】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」は相互交換的に使用される。任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド、又はこれらの類似体を含むことができる。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有することができ、公知又は非公知の任意の機能を行うことができる。ポリヌクレオチドは、一つ以上の修飾したヌクレオチド、例えば、メチル化されたヌクレオチド及びヌクレオチド類似体を含むことができる。ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーのアセンブリー前又は後に可能である。
【0183】
ベクターは、原核細胞又は真核細胞で本発明に係る核酸切断酵素(例えば、核酸転写物、タンパク質又は酵素)及び切断因子の発現のために設計され得る。例えば、核酸切断酵素及び切断因子転写物は、大腸菌などのバクテリア細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクター使用)、酵母細胞、又は哺乳類細胞で発現され得る。場合によって、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列及びT7重合酵素を使用して試験管内で転写されて翻訳され得る。
【0184】
ベクターは、原核生物で導入されて増殖され得る。一部の具現例において、原核生物は、真核細胞内に導入されるベクターの複製体を増幅させるために、又は真核細胞に導入されるベクターの生成で中間ベクターとして使用され得る(例えば、ウイルスベクターパッケージングシステムの一部としてプラスミドを増幅させる)。原核生物は、ベクターの複製物を増幅させ、一つ以上の核酸を発現させ、例えば、宿主細胞又は宿主有機体に伝達するための一つ以上のタンパク質の供給源を提供するために使用され得る。原核生物でのタンパク質の発現は、恒常性又は誘導性プロモーターを含む、ベクターを有する大腸菌で行われ得る。
【0185】
前記ベクターは、それぞれ電気穿孔法(electroporation)、リポフェクション、ウイルスベクター、ナノ粒子のみならず、PTD(Protein translocation domain)融合タンパク質方法などを通じて生体内又は細胞内に伝達され得る。
【0186】
A.ウイルスベクター
【0187】
AAVは、細胞及び動物モデルを対象にしてin vivo遺伝子の編集に使用され得る。ITR(逆方向末端反復配列)を追加することができる。ITRは、AAVゲノム及び/又は目的とする導入遺伝子に位置し、複製起点として作用し得る。Rep及び/又はcapタンパク質が転写され、ターゲット細胞に伝達するためのAAVゲノムをカプセル化できるようにカプシドを形成する。このようなカプシド上の表面収受容体がAAVセロタイプ(serotype)を決定する。
【0188】
AdVは、二重DNA鎖を遺伝物質とし、細胞及び動物モデルを対象にしてin vivo遺伝子の編集に使用され得る。LVは、ランダム統合(random integration)及び挿入突然変異(insertional mutagenesis)によってがん遺伝子(oncogene)に統合される場合、腫瘍発生可能性が高いので、in vitro及びex vivoでのみ使用可能である(Popescu N.C.,Zimonjic D.,DiPaolo J.A.Viral integration,fragile sites,and proto-oncogenes in human neoplasia.Hum.Genet.1990,84:383-386.)。RVを用いて、遺伝子伝達を通じた疾病治療を臨床的に試みたことが報告された(J.Clin.Investig.2008,118:3132-3142.)。
【0189】
(1)AAV
【0190】
AAVは、ssDNAを遺伝物質として含み、約~4.7kbのパッケージング容量を有する。AAVは、細胞及び動物モデルを対象にしてin vivo遺伝子の編集時に最も多く使用されている(Viruses 2019,11,28,Current Gene Therapy,2008,8,147-161)。
【0191】
AAVのゲノムは、線形の単一鎖DNAであって、長さは約4.7kbである。AAVゲノムの両末端には、ITRs(inverted terminal repeats)と呼ばれるヘアピン(hairpin)構造が存在する。ITRは、AAVゲノムの複製とAAV粒子のパッケージングに関与する。
【0192】
AAV基盤のベクターは、ターゲット細胞での形質感染及びゲノムを核に位置させるためのウイルス機能は維持し、AAVの複製及び子孫生成能は欠けた状態である。AAVは、ヒトには免疫原性がないものと知られており、AAVベクターは、他のウイルス伝達システムに比べて免疫原性が低い。
【0193】
AAVゲノムは、ほとんどがエピソームに残留し、癌を生成しないミトコンドリアDNA及びAAVS1染色体19に一部が統合され得る。非分裂細胞(Non-dividing cells)で、長期間安定的に導入遺伝子(transgene)を発現可能である。
【0194】
特定の組織において、CRISPR編集に適した多様なセロタイプが存在する。AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、又はAAV9のセロタイプを含むことができる。
【0195】
【0196】
AAVは、パッケージング容量(Packaging Capacity)が~4.7Kb程度であるので、導入遺伝子(transgene)コーディング遺伝子のパッケージングに困難がある。サイズが大きな核酸切断酵素を使用する場合、遺伝子の治療で最も広く使用される伝達システムであるAAVのパッケージング限界を考慮して、適用可能な方法を探そうとする試みがある。
【0197】
本発明に係る組成物の効率的伝達のために、二重(dual)又はそれ以上のAAVシステムを適用することができる。二重又はそれ以上のAAVシステムを製作するための方法は、例えば、断片化ベクター(fragmented vector)、重複ベクター(overlapping vector)、トランススプライシングベクター(trans-splicing vector)又はハイブリッドベクター(hybrid vector)の製作を含むことができる(Viruses 2019,11,28)。
【0198】
断片化ベクター(Fragmented vector)は、特定の地点で導入遺伝子を切り取った(truncation)後、各断片を別途のAAVにパッケージングする方法で製作することができ、重畳する導入遺伝子のHR(homologous recombination)を通じて完全な導入遺伝子を生産することができる。重複ベクター(Overlapping vector)は、指定された重複を含む導入遺伝子を通じてHRを誘導する方法で製作することができ、導入遺伝子の末端にITR(inverted terminal repeat sequence)を含ませ、二重AAVが細胞に形質感染されるとITRが集合され、HRが発生し得る。トランススプライシングベクター(trans-splicing vector)は、重複を含まないが、スプライスドナー(splice donor)/スプライス受容部位(splice acceptor site)によって分離された導入遺伝子の断片を含んで製作することができ、ゲノムのスプライシングメカニズムによって導入遺伝子の断片を連結させることができる。ハイブリッドベクター(hybrid vector)は、重複部位及びスプライスドナー(splice donor)/スプライス受容部位(splice acceptor site)を含み、重複及びトランススプライシング(trans-splicing)機能を組み合わせて製作することができ、目的とする導入遺伝子産物は、二重ベクター(dual vector)での共同感染、スプライスドナー(splice donor)/スプライス受容部位(splice acceptor site)によるスプライシング及び重複部位によるHRを通じて製造することができる。
【0199】
AAVシステムに効率的に適用するために核酸切断酵素を使用する場合、CRISPR/Casシステムが適用され得る。前記Casは、例えば、スプリット(split)SpCas9、SaCas9、CjCas9、Cas12a又はCas12jなどであり得る。
【0200】
スプリット(Split)Cas9は、1,368アミノ酸、4.10kbpのストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9(SpCas9)を対象とする。2個のAAVベクターに、2個に分離されたスプリットSpCas9のそれぞれをパッケージングすることができる。ただし、元のSpCas9に比べて活性が低くなり得るという短所があり、in vivoでの2個のAAVベクターによる伝達効率が単一のAAVベクターに比べて低くなり得る。
【0201】
SaCas9は、1,053アミノ酸、3.16kbpのスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)由来のCas9(SaCas9)であって、SaCas9をsgRNAと共に単一のAAVにパッケージングすることができる。ただし、2個以上のsgRNAと共にパッケージングするには空間が不足し得る。SaCas9によって認知されるPAM(protospacer-adjacent motif)配列5’-NNGRRT-3’は、SpCas9のPAM配列である5’-NGG-3’に比べて低い頻度で存在し、ターゲットサイトの設定に制限があり得る。
【0202】
CjCas9は、984アミノ酸、2.95kbpのカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCas9であって、5’-NNNNACAC-3’をPAMとして認知することができる。
【0203】
Cas12a(タイプ-V Cpf1)は、ラクノスピラセ・バクテリウム(Lachnospiraceae bacterium)ND2006(LbCpf1)由来と、アシダミノコッカス(Acidaminococcus)sp.BV3L6(AsCpf1)由来とに区分され得る。Cas12aは、3.9kb Tヌクレオチド(nucleotide)-リッチ(rich)PAMサイト(5’-TTTV)、crRNA成熟(maturation)の自触作用(self-Catalysis)、段違い(staggered)dsDNA切断(cut)を含み、NHEJ(non-homologous end joining)を通じて遺伝子が挿入され得る。Cas12a(タイプ-V Cpf1)は、哺乳動物細胞において、SpCas9に比べて高い標的特異性(targeting specificity)を有するものと知られている。
【0204】
場合によって、ベクター間のトランスフェクションの比率差及び発現率差を最小化するために、核酸切断酵素をコードする核酸と、切断因子である複数個のガイドRNAを一つのベクターにクローニングし、生体内又は細胞内にトランスフェクションすることができる。このとき、核酸切断酵素としてCpf1(Cas12a)を含むことができる。この場合、単一のプロモーターを使用してcrRNAの発現を誘導することができる。
【0205】
Cas12aによる癌特異的挿入-欠失標的化細胞死滅(Cancer specific INsertion-DELetion targeting Apoptosis:CINDELA)を誘導することができる。これを通じて、癌細胞を殺す程度にベクターの数を最小化することができる。Cas12aは、癌特異的な挿入と欠失を標的とし、DNA二重鎖切断を生成し、これを通じて細胞死滅を誘導するのに使用することができる。
【0206】
Cas12aは、単一のガイドRNAによってガイドされるプログラム可能なDNAエンドヌクレアーゼである。CRISPR-Cas9の場合、各sgRNAは、一般的に個別ベクター又は各sgRNA自身のプロモーターを必要とするマルチカセットベクターで発現される。対照的に、Cas12aを通じた多重ゲノム編集は、Cas12a自体によって個別crRNAを処理し、一つのトランスクリプトとしてガイドRNAを発現させることができる。
【0207】
例えば、pCE048-SiT-Cas12aベクターを使用して、一つのベクターとして多くのガイドRNAを誘導することができる。ベクターの数を最小化し、癌細胞を除去し、癌特異的挿入-欠失標的化細胞死滅の効率性を改善することができる。
【0208】
Cas12jは、単一(single)~70Kda CasΦであって、Cas9/Cas12aに比べて分子量が半分である。Cas12jは、5’TBN 3’PAMを認識(Bは、G、T又はC)し、tracrRNAなしで、crRNA相補的DNAを切断可能である。このような特徴に基づいて、コンパクトシステム(compact system)を提供することができる。
【0209】
国際公開特許WO2016/176191には、遺伝疾患治療のためのデュアルベクターシステムが記載されている。ベクターシステムは、AAVベクターであって、Cas9遺伝子を含むAAVベクター及び一つ以上のsgRNAを含むAAVベクターを含むことができる。このとき、前記Cas9遺伝子を含むAAVベクターと、一つ以上のsgRNAを含むAAVベクターとの含有比率と関連して、sgRNAを含むAAVベクターが、Cas9遺伝子を含むAAVベクターを超えることができる。例えば、一つ以上のsgRNAを含むAAVベクターに対するCas9遺伝子を含むAAVベクターの比率は、約1:3乃至約1:100、具体的には、約1:10であり得る。ドナーテンプレートに対する核酸切断酵素(例えば、Cas9或いはCpf)の比率は、核酸切断酵素がAAVベクター以外の供給源によって付加的に或いは代替的に供給される場合にも維持され得ると記載されており、本発明にも適用され得る。
【0210】
AAVの適用と関連して、米国登録特許第10577630号には、ガイドRNA及びCRISPRエンザイムをコードする一つ以上のポリヌクレオチドを含むAAV粒子を通じて、哺乳動物の肝細胞のうち目的とするゲノム遺伝子座でのターゲット配列を編集し、哺乳動物を変形する方法が記載されている。AAV粒子をターゲット細胞に伝達する方法を含み、in vivoターゲット配列を編集することによって哺乳動物を変換できることが記載されている。AAVのパッケージングサイズを考慮して、ガイドRNA及びCRISPRエンザイムを一度に搭載できるように、CRISPRエンザイムがSaCas9であると記載されている。これは、本発明に係る組成物及びその伝達にも適用可能であり、参照として導入され得る。
【0211】
(2)AdV
【0212】
AdVは、dsDNAを遺伝物質として含み、約~35kbpのパッケージング容量を有する。AdVも、細胞及び動物モデルを対象にして遺伝子の編集に使用できることが検証された。AdV基盤のベクターは、ターゲット細胞での形質感染及びゲノムを核に位置させるためのウイルス機能は維持し、AdVの複製及び子孫生成能は欠けた状態である(Genes & Diseases Volume 4,Issue 2,June 2017,Pages 43-63)。
【0213】
AdVは、分裂細胞(dividing cell)及び非分裂細胞(non-dividing cell)の全てに形質感染が可能である。細胞ゲノムに統合されずに染色体の外部に存在するので、本発明に係る組成物と共に、細胞にベクターを伝達するときに目的とするターゲットサイト以外の所望でない変異が発生するオフターゲット効果を減少させることができる。
【0214】
形質導入効率を高め、副作用を最小化するために、AdVを遺伝子伝達ベクターとして使用するための最適化が試みられた。
【0215】
1世代AdVの場合は、ウイルス遺伝子(Viral gene)E1を除去することによって、複製欠損ベクターに製作された。ただし、ウイルスカプシド(Viral capsid)及び/又はウイルス遺伝子の発現により、依然として急性又は慢性免疫反応が発生し得る。
【0216】
2世代AdVの場合は、ウイルス遺伝子(Viral gene)E2及びE4を除去し、慢性免疫反応を調節しようとした。E2及びE4の除去により、パッケージング容量を~8kbに増加させることができる。
【0217】
3世代AdVの場合は、ウイルス遺伝子を全部除去し、ITR及びカプシド形成(encapsidation)(ψ)と関連した遺伝子のみを含ませることができる。パッケージング容量を~35kbに増加させ、単一ベクターに核酸切断酵素及び複数の切断因子を全部含ませて伝達可能である。また、慢性免疫反応を誘導しない場合がある。
【0218】
3世代AdvであるHCAdV(high-capacity adenoviral vectors)を用いてCRISPR/Cas9を伝達できることが報告された(Nature Scientific Reports volume 7,Article
number:17113(2017))。AAVと異なり、CRISPR/Cas9システムの全ての構成が単一のベクターに含まれ得る。持続的又は誘導性Cas9が発現可能であり、複数のgRNAを含むことができる。HPV 18(human papillomavirus 18)がん遺伝子(oncogene)E6、DMD(dystrophin gene causing Duchenne muscular dystrophy)及びCCR5(HIV co-receptor C-C chemokine receptor type 5)ターゲットCRISPR/Cas9-HCAdVを製作し、CRISPR/Cas9-HCAdV発現ユニットがターゲットに伝達され、目的とするターゲット位置にDNA DSBが誘導され得る。これは、本発明に係る組成物及びその伝達にも適用可能であり、参照として導入され得る。
【0219】
(3)LV
【0220】
LVは、レトロウイルス(Retrovirus)ssRNAを遺伝物質として含み、約~8kbのパッケージング容量を有する。LVを通じて、外部遺伝子を希釈なしで分裂細胞(dividing cells)に形質感染させることができる(Cancer Gene Therapy pp 379-391)。
【0221】
LVのインテグラーゼ(integrase)活性を除去し、ウイルスゲノムが統合されないようにし、これに影響を受けないと共に、転写(transcription)及びプレインテグレーション複合体(pre-integrating complex)を核(nucleus)の付近に運ぶ能力は維持させようとする試みがあった(IDLV(Integrase-deficient lentiviral vectors)、Cell Rep.2017;20:2980-2991)。また、CRISPR/Casシステム伝達と関連して、two-レンチウイルス(lentivirus)CRISPR/Cas9伝達を通じて、機能的(Functional)CRISPR/Cas9配列の宿主ゲノムに統合した後、Cas9-ターゲッティングsgRNAを共同発現させ、Cas9 ORF(open reading frame)を不活性化させようとする試みがあった(Nat.Commun.2017;8:15334)。これは、本発明に係る組成物及びその伝達にも適用可能であり、参照として導入され得る。
【0222】
LVは、分裂細胞(dividing cell)及び非分裂細胞(non-dividing cell)の全てに形質感染可能である。トランスファーベクター(Transfer Vector)、パッケージングベクター(Packaging Vector)及びエンベロープベクター(Envelope Vector)を含み、3個のベクターを共導入(co-transfection)させ、ウイルス粒子の生成後で定量-精製し、目的とする遺伝子がうまく伝達された細胞を選別することができる。
【0223】
前記トランスファーベクター(transfer vector)は、Tat(遺伝子発現のための転写誘導タンパク質)結合サイト(binding site)である5’LTR及び3’LTR、パッケージング信号(packaging signal)(ψ)及び導入遺伝子を含むことができる。前記パッケージングベクター(packaging
vector)は、複製性が除去されたパッケージング信号(Δψ)が欠失し、カプシド(capsid)、逆転写酵素(reverse transcriptase)、プロテアーゼ(protease)、インテグラーゼなどのような酵素が発現されるgag及び/又はpolなどのウイルス構造遺伝子を含むことができる。転写を誘導するTat及び/又はmRNAを輸送するためのRevなどのウイルス調節遺伝子(tat及び/又はrev)を含むことができる。前記エンベロープベクター(envelope vector)は、ウイルスエンベロープ(envelope)発現遺伝子であるウイルス(viral)envを含むことができる。
【0224】
(4)RV
【0225】
遺伝情報を有するRNAが逆転写酵素によって二重鎖のDNAに転換されたプロウイルス(provirus)DNAを通じて複製が開始される。約~8kbの外部遺伝子の導入が可能である。LTRを含む治療遺伝子が導入されたプラスミドをウイルス粒子化細胞株に導入し、ウイルス粒子を製造することができる。細胞株は、gag、pol、envタンパク質を供給する(Genetic Vaccines and Therapy 2004,2:9)。
【0226】
トランスファーベクター(Transfer Vector)、パッケージングベクター(Packaging Vector)及びエンベロープベクター(Envelope Vector)を含み、3個のベクターを共導入(co-transfection)させ、ウイルス粒子の生成後に定量-精製し、目的とする遺伝子がうまく伝達された細胞を選別することができる。
【0227】
前記トランスファーベクター(transfer vector)は、Tat(遺伝子発現のための転写誘導タンパク質)結合サイト(binding site)である5’LTR、3’LTR、及び導入遺伝子を含むことができる。5’LTR及び3’LTRを通じて、ウイルスの複製、宿主への挿入、ウイルス遺伝子の発現を誘導する。前記パッケージングベクター(packaging vector)は、複製性が除去されたパッケージング信号(packaging signal)(Δψ)が欠失し、カプシド、逆転写酵素(reverse transcriptase)、プロテアーゼ、インテグラーゼなどのような酵素が発現されるgag及び/又はpolなどのウイルス構造遺伝子を含むことができる。前記エンベロープベクター(envelope vector)は、ウイルスエンベロープ発現遺伝子であるウイルス(viral)envを含むことができる。
【0228】
(5)その他
【0229】
以外にも、例えば、WO2017/223330に記載したように、単一鎖RNA(single-stranded RNA:ssRNA)ウイルスのゲノムを用いてCRISPR/Casを伝達することができる。LV及びAAVは、ex vivo及びin vivo形態で細胞変形に使用されてきたが、ウイルスDNA基盤の複製は、宿主ゲノムに好ましくない遺伝毒性又は発癌の危険を伴っており、従来と異なる形態のssRNAウイルスベクターを提示する。線形で単一鎖のマイナス極性を有する非感染性RNA鎖を含むモノネガティブウイルス(Mononegavirales)が例示され得る。極性順次転写(polar sequential transcription)を通じて5~10の他のmRNAを生産し、完全なアンチゲノム(antigenome)を合成することによって複製される。例えば、モノネガティブウイルスは、ボルナウイルス科(bornaviridae)、フィロウイルス科(filoviridae)、 ニヤミウイ
ルス科(nyamiviridae)、パラミクソウイルス科(paramyxoviridae)、又はラブドウイルス科(rhabdoviridae)を含むことができる。ボルナウイルス科(bornaviridae)にボルナウイルス(bornavirus)が含まれる。フィロウイルス科(filoviridae)にクウェバウイルス(cuevavirus)、エボラウイルス(ebolavirus)、マールブルグウイルス(marburgvirus)が含まれる。ニヤミウイルス科(nyamiviridae)にニャウイルス(nyavirus)が含まれる。パラミクソウイルス科(paramyxoviridae)にアクアパラミクソウイルス(aquaparamyxovirus)、アブラウイルス(avulavirus)、フェラウイルス(feravirus)、ヘニパウイルス(heniparvirus)、モルビリウイルス(morbillivirus)、レスピロウイルス(respirovirus)、ルブラウイルス(rubulavirus)、肺炎ウイルス(pneumovirus)、メタニューモウイルス(metapneumovirus)及びセンダイウイルス(sendai virus)が含まれる。ラブドウイルス科(rhabdoviridae)にアレムンドラウイルス(alemndravirus)、バイアウイルス(baiavirus)、クリオウイルス(curiovirus)、サイトラブドウイルス(cytorhabdovirus)、ジコルハウイルス(dichorhavirus)、エフェメロウイルス(ephemerovirus)、ハパウイルス(hapavirus)、レダンテウイルス(ledantevirus)、リッサウイルス(lyssavirus)、ノヴィラブドウイルス(novirhabdovirus)、ヌクレオラブドウイルス(nuclearhabdovirus)、ペラブドウイルス(perhabdovirus)、ソーグラウイルス(sawgravirus)、シグマウイルス(sigmavirus)、スプリビウイルス(sprivivirus)、チブロウイルス(tibrovirus)、ツパウイルス(tupavirus)、及びベシクロウイルス(vesiculovirus)が含まれる。特に、WO2017/223330では、センダイウイルス(sendai virus)を通じてCRISPR/Cas伝達システムを構築した。このとき、CRISPR/CasシステムのgRNAに自己切断リボザイム(self-cleaving ribozyme)を適用し、宿主細胞への導入時、gRNAの効果的切断/遊離を可能にする。これを通じて、RNA形質感染効率が増大したことが確認された。これは、本発明に係る組成物及びその伝達にも適用可能であり、参照として導入され得る。
【0230】
治療学的効果を達成するためのベクター用量は、ベクターゲノムの用量/体重kg(vg/kg)で提供され得るが、(a)投与経路、(b)治療学的効果を達成するのに要求される治療遺伝子の発現水準、(c)ベクターに対する任意の宿主免疫反応、(d)発現されたタンパク質の安定度などの要件によって変動し得る。
【0231】
B.非ウイルス伝達手段
【0232】
非ウイルス伝達手段は例えば、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)ori、BPV(bovine papilloma virus)ori又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)oriを含むエピソーマルベクター、mRNA形態で伝達される方法、RNP(Ribonucleoprotein)形態で伝達されたり、又はナノ粒子、CPP、ポリマーなどのキャリアを介して伝達され得る(Nature Reviews Genetics volume 15,pages541-555(2014))。
【0233】
(1)エピソーマルベクター
【0234】
ウイルスプラスミド複製(Viral plasmid replicon)を含むエピソーマルベクターを製作し、本発明に係る組成物を伝達することができる。使用可能なウイルスプラスミド複製(Viral plasmid replicon)は、例えば、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)、BPV(bovine papilloma virus)又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)の複製起点(Ori)を含むことができる。前記複製起点(Ori)を含むプラスミドベクターを構築することができる。前記プラスミドベクターとして、エシェリヒアコリ(Escherichia coli)由来のプラスミド、アクチノマイセス(Actinomyces)由来のプラスミド、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)由来のプラスミド又は酵母由来のプラスミドを使用することができる。前記エシェリヒアコリ(Escherichia coli)由来のプラスミドとして、例えば、pBR322、pUC18、pUC19、pUC118、pUC119又はpBluescriptなどを含むことができる。前記アクチノマイセス(Actinomyces)由来のプラスミドとして、例えば、pIJ486などを含むことができる。前記バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)由来のプラスミドとして、pUB110、pSH19などを含むことができる。前記酵母由来のプラスミドとして、YEp13、YEp24、Ycp50などを含むことができる。
【0235】
例えば、商業的に入手可能なpCMV6-XL3(OriGene Technologies Inc.)、EGFP-C1(Clontech)、pGBT-9(Clontech)、pcDNAI(FUNAKOSHI)、pcDM8(FUNAKOSHI)、pAGE107(Cytotechnology,3,133,1990)、pCDM8(Nature,329,840,1987)、pcDNAI/AmP(Invitrogen)、pREP4(Invitrogen)、pAGE103(J.Blochem.,101,1307,1987)、pAGE210などをプラスミドとして使用することができる。
【0236】
このようなウイルスプラスミド複製(Viral plasmid replicon)を含むベクターは、宿主細胞の染色体に統合されない。ベクターは、場合によって、ウイルスoriを活性化させる産物であるウイルス初期遺伝子(viral early gene)を含むことができる。これを通じて、エピソームは、形質感染された宿主細胞株でうまく調節されて位置し得る。
【0237】
エピソーマルベクターは、目的とする挿入遺伝子が、細胞DNA統合時に発生する各制御因子によって妨害されたり影響を受けないという利点を有する。挿入された異種遺伝子が細胞固有の重要な領域を再配列させたり妨害しない。核において複数の複製として維持され、ウイルストランス活性因子が提供されるだけで目的とする遺伝子の増幅を誘導することができる。安定的な形質感染過程を通じて形質感染効率が高く、真核細胞のみならず、原核細胞でも複製可能なプラスミド構造であるので、一つの細胞システムから他の細胞システムへの転換が容易である。
【0238】
例えば、SV40は、宿主細胞の制御メカニズムとカップリングされずに独立的な複製パターンを示すので、ウイルスゲノムのそれぞれが細胞サイクル中に数回複製可能であり、SV40 Oriは、複製の数が100~1000と非常に高い。よって、細胞分裂の間に高い効率の複製及び核での持続的維持効果を示すことができる。オンコプロテイン(Oncoprotein)であるT-抗原(antigen)が存在し、人間への適用に制限があり、SV40 Oriは、T-抗原が除去された形態で使用されたり、宿主細胞でtransで発現され得る。
【0239】
BPV Oriは、ウイルスによってコーディングされたE1タンパク質に対する結合サイトを有し、E1は、E2の助けによってヘリカーゼ(helicase)で組み合わされ、細胞内遺伝子の核局在化(nuclear localization)を助ける。BPV Oriの複製の数は50~150である。E2タンパク質が染色体に結合可能であり、遺伝子運搬効果(piggy back)を示すので、遺伝子の核内に位置することを持続させ、安定性を維持することができる。
【0240】
EBNA Oriは、宿主細胞内への導入後、DNA複製潜在期にEBVゲノムがFR(family of repeats)及びDS(dyad symmetry)を含むoriPと、FR及びDSのそれぞれと結合可能なEBNA1(EBV nuclear antigen 1)を通じて複製の数5~20のプラスミドに複製され得る。DSと結合したEBNA1がDNAの複製に必要な宿主細胞メカニズムを集め、FRが結合したEBNA1は、遺伝子運搬効果(piggy back)を通じて遺伝子の核内に位置することを持続させ、安定性を維持することができる(Current Gene Therapy,2008,8,147-161,Eur.J.Biochem.267,5665±5678(2000))。これは、本発明に係る組成物及びその伝達にも適用可能であり、参照として導入され得る。
【0241】
場合によって、国際公開特許WO2018/075235のように、アルファウイルスレプリコンRNAを含むことができる。アルファウイルスは、スパイクタンパク質を含有する外被によって取り囲まれたヌクレオカプシドに封入された量の極性の単一鎖RNAゲノムを有する。例えば、シンドビスウイルス(SIN)、セムリキフォレストウイルス(SFV)、ロスリバーウイルス(RRV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)、及び東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)を含むことができる。
【0242】
変形した5’-UTRを含み、ウイルス構造タンパク質をエンコードする核酸配列の少なくとも一部がない変形したレプリコンRNAを含むことができる。前記変形した5’-UTRは、一つ以上のヌクレオチド置換を含むことができる。これを通じて、ウイルス構造タンパク質をエンコードする核酸配列を含まない場合がある。このような核酸分子は、宿主ゲノムに統合し、エピソームに複製されたり、一時的に発現可能である。これは、本発明に係る組成物及びその伝達にも適用可能であり、参照として導入され得る。
【0243】
(2)mRNA形態での伝達
【0244】
mRNA形態で伝達する場合、DNAを用いたベクター形態で伝達する場合に比べて、mRNAへの転写過程が不必要となり、遺伝子編集の開始が速くなり得る。一時的なタンパク質発現(transient protein expression)可能性が高い。DNAに比べて不安定である場合があり、RNAseによって分解可能性が高い方である。
【0245】
本発明に係る組成物の核酸切断酵素及び/又は切断因子のそれぞれをmRNA形態で伝達することができる。核酸切断酵素及び/又は切断因子のmRNAを化学修飾(chemical modification)したり、合成自己-複製RNA(synthetic self-replicative RNA)形態で伝達することができる。
【0246】
国際公開特許WO2011/071931には、単一鎖mRNA分子形態で細胞内に伝達するための変形方法が記載されている。修飾ヌクレオシドが含まれ得る。例えば、修飾ヌクレオシドとして、mC(5-メチルシチジン)、mU(5-メチルウリジン)、mA(N-メチルアデノシン)、sU(2-チオウリジン)、ψ(シュードウリジン)、Um(2’-O-メチルウリジン)、mA(l-メチルアデノシン)、mA(2-メチルアデノシン)、Am(2’-O-メチルアデノシン)、msA(2-メチルチオ-N-メチルアデノシン)、iA(~イソペンテニルアデノシン)、msi6A(2-メチルチオ-Nイソペンテニルアデノシン)、ioA(N-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、msioA(2-メチルチオ-N-(シス-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン)、gA(N-グリシニルカルバモイルアデノシン)、tA(N-トレオニルカルバモイルアデノシン)、msA(2-メチルチオ-N-トレオニルカルバモイルアデノシン)、mA(N-メチル-N-トレオニルカルバモイルアデノシン)、hnA(Nヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、mshnA(2-メチルチオ-N-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン)、Ar(p)(2’-O-リボシルアデノシン(ホスフェート))、I(イノシン)、mI(l-メチルイノシン)、mIm(1,2’-O-ジメチルイノシン)、mC(3-メチルシチジン)、Cm(2’-O-メチルシチジン)、SC(2チオシチジン)、acC(N-アセチルシチジン)、fC(5-ホルミルシチジン)、mCm(5,2’-O-ジメチルシチジン)、acCm(N-アセチル-2’-O-メチルシチジン)、kC(リシジン)、mG(l-メチルグアノシン)、mG(N-メチルグアノシン)、mG(7-メチルグアノシン)、Gm(2’-O-メチルグアノシン)、m G(N,N-ジメチルグアノシン)、mGm(N,2’-O-ジメチルグアノシン)、m Gm(N,N,2’-O-トリメチルグアノシン)、Gr(p)(2’-O-リボシルグアノシン(ホスフェート))、yW(ワイブトシン)、oyW(ペルオキシワイブトシン)、OHyW(ヒドロキシワイブトシン)、OHyW(未完成変形(undermodified)ヒドロキシワイブトシン)、imG(ワイオシン)、mimG(メチルワイオシン)、Q(クエオシン)、oQ(エポキシクエオシン)、galQ(ガラクトシル-クエオシン)、manQ(マンノシルクエオシン)、preQ(7-シアノ-7-デアザグアノシン)、preQ(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン)、G(アルカエオシン(archaeosine))、D(ジヒドロウリジン)、mUm(5,2’-O-ジメチルウリジン)、SU(4-チオウリジン)、mU(5-メチル-2-チオウリジン)、sUm(2-チオ-2’-O-メチルウリジン)、acpU(3-(3-アミノ3-カルボキシプロピル)ウリジン)、hoU(5-ヒドロキシウリジン)、moU(5-メトキシウリジン)、cmoU(ウリジン5-オキシ酢酸)、mcmoU(ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル)、chmU(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン))、mchmU(5(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジンメチルエステル)、mcmU(5-メトキシカルボニルメチルウリジン)、mcmUm(5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン)、mcmU(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン)、nmU(5-アミノメチル-2-チオウリジン)、mnmU(5-メチルアミノメチルウリジン)、mnmU(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン)、mnmseU(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン)、ncmU(5-カルバモイルメチルウリジン)、ncmUm(5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン)、cmnmU(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン)、cmnmUm(5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-メチルウリジン)、cmnmU(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン)、m A(N,N-ジメチルアデノシン)、Im(2’-O-メチルイノシン)、mC(N-メチルシチジン)、mCm(N,2’-O-ジメチルシチジン)、hmC(5-ヒドロキシメチルシチジン)、mU(3-メチルウリジン)、cmU(5-カルボキシメチルウリジン)、mAm(N,2’-O-ジメチルアデノシン)、m Am(N,N,2’-O-トリメチルアデノシン)、m2,7G(N,7-ジメチルグアノシン)、m2,2,7G(N,N,7-トリメチルグアノシン)、mUm(3,2’-O-ジメチルウリジン)、mD(5-メチルジヒドロウリジン)、fCm(5-ホルミル-2’-O-メチルシチジン)、mGm(1,2’-O-ジメチルグアノシン)、mAm(1,2’-O-ジメチルアデノシン)、τmU(5-タウリノメチルウリジン)、τm5s2U(5-タウリノメチル-2-チオウリジン))、imG-14(4-ジメチルワイオシン)、imG2(イソワイオシン)、又はacA(N-アセチルアデノシン)を記載しており、これは、本発明の組成物及びその伝達に適用することができる。
【0247】
合成自己-複製RNA(synthetic self-replicative RNA)形態で伝達され得る(Cell Stem Cell.2013 Aug 1,13(2):10)。非感染性のためにパッケージングされる可能性がなく、自己複製可能な VEE(Venezuelan Equine Encephalitis)ウイルスのRNAレプリコン(replicon)を含むことができる。RNAレプリコンをコードするnsP1乃至nsP4を含むことができる。場合によって、mRNAに5’-Cap及びポリ(poly)(A)テール(tail)を付加することができる。
【0248】
米国登録特許第10370646号に記載したように、5’ to 3’:(VEE RNA replicases)-(promoter)-(GOI)-(IRES or optional promoter)-(optional selectable marker)-(VEE 3’UTR and polyA tail)-(optional selectable marker)-promoterの配列を有する構造物を製作し、アルファウイルスの自己複製骨格を含む自己複製RNAレプリコンを含み、合成自己-複製RNA(synthetic self-replicative RNA)を製作することができ、これは、本発明の組成物及びその伝達に適用することができる。
【0249】
細胞にmRNAを伝達する方法、又は生体内でmRNAを人間、動物などの有機体の細胞に伝達する方法を含み、試験管内又は生体内でmRNA分子を細胞に伝達できる方法を考慮することができる。例えば、脂質(例えば、リポソーム、マイセルなど)を含んだり、ナノ粒子又はナノチューブを含んだり、陽イオン性化合物(例えば、ポリエチレンイミン又はPEI)を含んだり、陽イオン性化合物(例えば、ポリエチレンイミン又はPEI)を含み、mRNA分子を細胞に伝達することができる。場合によって、mRNAを細胞に伝達するために、遺伝子銃又はバイオリステック(biolistic)粒子伝達システムなどのバリスティクス方法(bolistics method)を使用することができる。
【0250】
ただし、核酸切断酵素をmRNA形態で伝達するとき、RNA形態である切断因子と同一のベクターに存在すると、本発明に係る細胞死滅誘導のために、核酸切断酵素がタンパク質形態で存在しなければならないので、伝達された核酸切断酵素mRNAは、タンパク質に翻訳される一方で、翻訳中の切断因子では分解が開始され得る。
【0251】
このような問題を解決するために、切断因子の伝達を遅延させたり、切断因子の化学修飾(chemical modification)を誘導したり、又はウイルスベクターに切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含ませる方法を考慮することができる。
【0252】
核酸切断酵素mRNAを伝達した後、6時間内に切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを伝達することができる(Cell Res.2017,27(3):440-443.)。このような伝達方法を通じて、編集効率(editing efficiency)が向上し得る。切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドの化学修飾(chemical modification)を通じて、切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを伝達した後の安定性を向上させることができる(Nat Biotechnol.2017 Dec,35(12):1179-1187.)。場合によって、核酸切断酵素コーディングmRNA形態で伝達し、切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドは、ベクターにクローニングして伝達することができ、分解されやすい切断因子を安定的に伝達することができる。
【0253】
切断因子の化学修飾(chemical modification)と関連して、合成修飾(synthetic modified)RNA形態で伝達され得る(Stem Cells Int.2019 Jun 19,2019:7641767.)。In vitro転写(IVT)過程において、mRNA末端にcap構造及び/又はポリAテールを付加することができる。場合によって、シュード(Pseudo)-UTP(pseudouridine)又は5mCTP(5-methylcytidine)などの修飾ヌクレオシド(nucleoside)が付加され得る。mRNA及び翻訳されたタンパク質の安定性が増大し得る。合成修飾RNAを細胞質に伝達すると、直ぐタンパク質に翻訳され得る。ただし、mRNA形態で多数のデイリー(daily)mRNAトランスフェクション(transfection)をする場合、 自然免疫応答(innate immnune response)が誘導される可能性が高く、これによって、細胞ストレス(cellular stress)及び激しい細胞毒性(severe cytotoxicity)が誘導され得る。
【0254】
(3)RNP
【0255】
ベクターを通じて細胞死滅を誘導するためには、次の過程を経なければならない:本発明に係る核酸切断酵素及び切断因子を含む組成物をコードするポリヌクレオチドを含むプラスミドを細胞に形質感染し、プラスミドが細胞内の核に移動し、転写が開始された後、核酸切断酵素に対するmRNAが核の外部に移動してタンパク質に翻訳される。切断因子RNAは、プラスミドで転写されて核外に移動する。核酸切断酵素と切断因子RNAとが結合し、RNP(ribonucleoprotein)を形成した後、核に再び運送される。
【0256】
しかし、予備形成された(pre-formed)RNPは細胞に導入され、ターゲットゲノムDNA編集を開始することができる。このようなRNP形態の伝達によると、ベクター伝達に比べてオフターゲット効果を減少させることができ、細胞の核に核酸切断酵素及び切断因子RNAを直接伝達可能であるという長所がある(Scientific Reports volume 8,Article number:14355(2018))。
【0257】
RNP(ribonucleoprotein)形成のために、核酸切断酵素及び切断因子のそれぞれを合成及び精製してRNP形態で製作することができる。場合によって、CL7タグ付けされた核酸切断酵素及び切断因子RNAをプラスミドを通じて直接発現した後、自己集合(self-assembly)形態で組み立てられたRNPを精製して製作することができる(Curr Protoc Mol Biol 2017 Oct 2,120:31.10.1-31.10.19)。
【0258】
国際公開特許WO2019/089884では、細胞内のTGFBR2遺伝子発現を変形する方法として、gRNA及びRNA-ガイドヌクレアーゼ(guided nuclease)コーディングポリヌクレオチドを含むベクター以外に、gRNA及びRNA-ガイドヌクレアーゼ(guided nuclease)を含むゲノム編集システム(genome editing system)を提案している。WO2019/089884によると、gRNA及びRNA-ガイドヌクレアーゼ(guided nuclease)は、RNP(ribonucleoprotein)複合体を含むことができ、2個以上の異なるRNP(ribonucleoprotein)複合体を含むことができ、異なるターゲットドメインを有するgRNAを含むことが可能である。
【0259】
場合によって、韓国登録特許第2107735号のように、一つ以上の内在的遺伝子変形(欠損又は導入)のためにガイドRNA及びCasタンパク質をインビトロで混合し、先に組み立てられたCasタンパク質-ガイドRNA RNP(ribonucleoprotein)を使用することができる。KR2107735では、植物原形質体(protoplast)で一つ以上の植物の内在的遺伝子を欠損又は導入させるために、先に組み立てられたCasタンパク質-ガイドRNA RNPを適用したが、本発明のように、人間を対象とする疾病治療の場合にも同一に適用することができる。
【0260】
具体的には、Cas9プロテイン(protein)及びgRNAを含む複合体形成条件でCas9プロテイン及びgRNAをin vitroで組み立て、Cas9プロテイン及びgRNAを含む複合体をターゲットDNAと接触させることを含むターゲットDNA変形方法が記載されている米国登録特許第9637739号のように、本発明でも、核酸切断酵素及び切断因子をin vitroで組み立て、核酸切断酵素及び切断因子を含むRNP(ribonucleoprotein)複合体を処理し、細胞死滅を誘導することができる。
【0261】
Cas9プロテイン及びgRNAを含む複合体をターゲットDNAと接触させることを含むターゲットDNA標的及び結合方法が記載されている米国登録特許第10626419号のように、本発明でも、核酸切断酵素及び切断因子の複合体を形成し、複合体がターゲットDNAに結合されるようにし、ターゲットDNAをターゲットとすることができる。
【0262】
(4)キャリアを介した伝達
【0263】
核酸切断酵素をコードするmRNA及び/又は切断因子RNAのそれぞれが個別的に又はRNP(ribonucleoprotein)形態で製作され、キャリア伝達システムを介して伝達され得る。前記キャリアは、例えば、細胞透過性ペプチド(CPP)、ナノ粒子、ZIF(zeolitic imidazole frameworks)、RNAアプタマー-ストレプトアビジン(aptamer-streptavidin)、又は重合体を含むことができる(Biomaterials.2018 July,171:207-218.)。
【0264】
CPPは、多様な分子カーゴ(ナノ大きさの粒子から小さい化学分子及びDNAの大きい断片まで)の細胞吸収を容易にする短いペプチドである。カーゴは、核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド及び/又は切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。細胞透過性ペプチド及び核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド及び/又は切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む複合体を製造することができる。具体的には、細胞透過性ペプチドが接合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド及び細胞透過性ペプチドが複合体化された切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。細胞透過性ペプチド及び核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド及び/又は切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドは、共有結合を通じた化学的結合又は非-共有相互作用を通じて組み立てられ得る。核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドは、チオエステル結合を通じてCPPにコンジュゲートされる一方で、切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドはCPPと複合体化され、縮合された正に荷電した粒子を形成する。胚芽幹細胞、皮膚線維芽細胞、HEK293T細胞、HeLa細胞、及び胚芽癌腫細胞を含むヒト細胞の同時及び順次治療がプラスミド形質感染に比べて減少した標的外突然変異で効率的な遺伝子破壊を誘導した(Genome Res.2014,24:1020-1027.)。
【0265】
米国登録特許第10584322号でも、ガイドポリヌクレオチド(guide polynucleotide)及びCasエンドヌクレアーゼ(endonuclease)以外に、CPP(cell-penetrating peptide)を含み、ターゲット位置を変形し、本発明に適用することができる。前記ガイドポリヌクレオチド、Casエンドヌクレアーゼ及びCPPが共有結合(covalently)又は非共有結合(non-covalently)方式で連結され、ガイドポリヌクレオチド/Casエンドヌクレアーゼ-CPP複合体が形成され得る。これを通じて、前記複合体が微生物細胞(microbial cell)の細胞膜又は細胞壁を通過し、Casエンドヌクレアーゼは、微生物細胞のゲノムのうちターゲット位置で二重鎖切断(double-strand break)を誘導することができる。
【0266】
ナノ粒子と関連して、本発明に係る組成物は、高分子ナノ粒子、金属ナノ粒子、金属/無機ナノ粒子又は脂質ナノ粒子を介して伝達され得る。
【0267】
前記高分子ナノ粒子は、例えば、ローリングサークル増幅によって合成されたDNAナノクルー(nanoclew)、糸状DNAナノ粒子であり得る。DNAナノクルー(nanoclew)、糸状DNAナノ粒子にCas9/sgRNAをローディングし、エンドソーム脱出能を向上させるためにPEIをコーティングした。このような複合体が細胞膜に結合して内在化された後、エンドソーム脱出を通じて核に移動し、Cas9タンパク質と単一のガイドRNAが同時に伝達される(Angew Chem Int Ed Engl.2015 Oct 5;54(41)12029-12033)。これは、本発明に係る組成物の伝達に適用可能であり、参照として導入される。
【0268】
他の例示として、陽イオン性及び陰イオン性アクリレートモノマーを通じて、Cas9タンパク質と単一のガイドRNAのRNPは、静電気的相互作用(electrostatic interactions)によってコーティングされ得る。イミダゾール(Imidazole)を含むモノマー、GSH-分解性架橋剤(degradable crosslinker)、アクリレート(acrylate)mPEG、及びアクリレートPEG共役リガンド(conjugated ligands)を連結してRNPの表面に付着させることができる。in situフリーラジカル重合(free-radical polymerization)を通じてRNPの周囲にグルタチオン(glutathione)(GSH)-切断型(cleavable)ナノカプセルが形成できるようにし、ナノカプセルをGSH-切断可能リンカー(cleavable linker)であるN,N’-ビス(アクリロイル)シスタミンと架橋(crosslink)して細胞質で分解できるようにし、細胞質でRNPが分解できるようにする(Nature Nanotechnology volume 14,pages974-980(2019))。これは、本発明に係る組成物の伝達に適用することができ、参照として導入される。
【0269】
前記金属ナノ粒子と関連して、DNAに金粒子を連結させ、陽イオン性エンドソーム破壊的ポリマー(endosomal disruptive polymer)と複合体を形成し、Cas9リボ核タンパク質(ribonucleoprotein)及びドナー(donor)DNAを細胞に伝達することができる(Nature Biomedical Engineering volume 1,pages889-901(2017))。前記陽イオン性エンドソーム破壊的ポリマー(endosomal disruptive polymer)は、例えば、ポリエチレンイミン、ポリ(アルギニン)、ポリ(リシン)、ポリ(ヒスチジン)、ポリ-[2-{(2-アミノエチル)アミノ}-エチル-アスパルトアミド](pAsp(DET))、ポリ(エチレングリコール)(PEG)とポリ(アルギニン)のブロックco-ポリマー、PEGとポリ(リシン)のブロックco-ポリマー、又はPEGとポリ{N-[N-(2-アミノエチル)-2-アミノエチル]アスパルトアミド}(PEG-pAsp(DET))のブロックco-ポリマーであり得る。
【0270】
更に他の例において、磁性ナノ粒子と組換えバキュロウイルスベクター(baculoviral vector)が複合体を形成できるようにし、磁場(magnetic field)を通じて局所的に活性化させ、CRISPR/Cas9媒介遺伝子の編集を発生させることができる(Nature Biomedical Engineering volume 3,pages126-136(2019))。これは、本発明に係る組成物の伝達に適用することができ、参照として導入される。
【0271】
更に他の例において、光に不安定な光解離性(photolabile)半導体高分子ナノトランスデューサー(nanotransducer)(pSPN)を、CRISPR/Cas9プラスミドを細胞に伝達する遺伝子ベクターとして用いて、遺伝子の編集を遠隔で活性化するための光調節剤として使用可能である。pSPNは、1O2で切断可能なリンカーを介してポリエチレンイミンブラッシュ(polyethylenimine brush)でグラフトされた単一の酸素(1O2)生成バックボーンを含むことができる。近赤外線(NIR)光の照射により、pSPNで遺伝子ベクターの切断を自発的に誘導し、CRISPR/Cas9プラスミドが放出されるようにし、遺伝子の編集を開始する(Angew Chem Int Ed Engl 2019 Dec 9;58(50)18197-18201)。これは、本発明に係る組成物の伝達に適用することができ、参照として導入される。
【0272】
金属/無機ナノ粒子と関連して、例えば、ZIF-8(zeolitic imidazolate framework-8)を通じてCRISPR/Cas9をカプセル化することができ、効率的エンドソーム脱出を通じて目的とするターゲット遺伝子の発現を変更させることができる(Advanced Therapeutics Volume2,Issue4 April 2019)。これは、本発明に係る組成物の伝達に適用することができ、参照として導入される。
【0273】
更に他の例において、アルギニン変形した金粒子を使用することができる。アルギニン変形した金粒子を核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド及び/又は切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドと共に組み立てることができる。これを通じて、ターゲット細胞の膜と融合し、細胞質に移動するようになる(ACS Nano.2017,11:2452-2458)。これは、本発明の組成物及びその伝達に適用することができる。
【0274】
ZIF(zeolitic imidazole frameworks)を通じて負に荷電したCRISPR RNPを、正に荷電したナノスケール(nanoscale)ZIFでカプセル化することができる。このようなZIFにより、RNPのエンドソーム脱出能(endosomal escape)が向上し得る(J Am Chem Soc.2018,140:143-146)。これは、本発明の組成物及びその伝達に適用することができる。
【0275】
RNAアプタマー-ストレプトアビジン、例えば、S1mplex(modular RNA aptamer-streptavidin strategy)を使用することができる。例えば、sgRNAsの3’末端にストレプトアビジンと非共有相互結合する60ヌクレオチドS1mアプタマーを付加することができる。その後、ストレプトアビジン及びCas9タンパク質と複合体を形成し、これをS1mplexesとして細胞内に伝達することができる。場合によって、ストレプトアビジンに高い親和度を示すビオチンが結合したビオチン化(biotinylated)ssODNs(single-stranded oligodeoxynucleotide)を核酸ドナーテンプレート(donor template)に結合させることができる。このような構造の複合体を通じて、精巧に核酸を変形できることを確認した。標準sgRNA RNPに比べて増加した遺伝子校正効率を示すことができる(Nat Commun.2017,8:1711.)。これは、本発明の組成物及びその伝達に適用することができる。
【0276】
陰イオンを帯びる(negatively charged)CRISPR/Cas9をなすDNA或いは核酸は、陽イオンを帯びる(Cationic)物質と結合してナノ粒子を形成することができ、これは、細胞に受容体依存性エンドサイトーシス(receptor-mediated endocytosis)或いは食作用(phagocytosis)などを通じて浸透し得る。例えば、米国登録特許第10682410号には、陽性を帯びるCas9タンパク質と強い陰イオンを帯びるガイドRNAとが互いに結合し、陰イオンを帯びるCas9タンパク質-RNAと超荷電したタンパク質(supercharged protein)(例えば、正に荷電した超荷電タンパク質)、陽イオン性重合体又は陽イオン性脂質を使用して核酸切断酵素を細胞に伝達する技術が記載されており、これを本発明に適用することができる。超荷電タンパク質、陽イオン性重合体又は陽イオン性脂質を核酸切断酵素と接触させて細胞に導入することができる。標的細胞への伝達のために、Cas9タンパク質は陰イオン性電荷を提供し、超荷電蛍光タンパク質として超荷電したGFP、例えば、+36GFP又は-30GFPと結合される。超荷電タンパク質によってエンドソームを有利に崩壊させ、エンドソーム脱出能が増加し得る。これは、本発明の組成物及びその伝達に適用することができる。
【0277】
陽イオン性重合体の場合、Cas9:gRNA複合体が陽イオン性重合体に結合され得る。陽イオン性重合体として、ポリアリルアミン(PAH);ポリエチレンイミン(PEI);ポリ(L-リシン)(PLL);ポリ(L-アルギニン)(PLA);ポリビニルアミン単一-又は共重合体;ポリ(ビニルベンジル-トリ-C1-C4-アルキルアンモニウム塩);脂肪族又は芳香脂肪族ジハロゲン化物及び脂肪族N,N,N’,N’-テトラ-C1-C4-アルキル-アルキレンジアミンの重合体;ポリ(ビニルピリジン)又はポリ(ビニルピリジニウム塩);ポリ(N,N-ジアリル-N,N-ジ-C1-C4-アルキル-アンモニウムハロゲン化物);4次化されたジ-C1-C4-アルキル-アミノエチルアクリレート又はメタクリレートの単一-又は共重合体;ポリクアド(POLYQUAD)TM;ポリアミノアミドなどが含まれ得る。
【0278】
陽イオン性脂質は、陽イオン性リポソーム製剤を含むことができる。リポソームの脂質二重層は、カプセル化された核酸を分解から保護し、核酸に結合できる抗体による特異的中和を防止することができる。エンドソーム成熟の間、エンドソームメンブレインとリポソームとが融合され、陽イオン性脂質-核酸切断酵素の効率的なエンドソーム脱出が可能である。Cas9:gRNA複合体が陽イオン性脂質によってカプセル化され得る。陽イオン性脂質として、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン(PAMAM)星状デンドリマー、リポフェクチン(DOTMAとDOPEとの組み合わせ)、リポフェクターゼ、リポフェクタミン(lipofectamine)(商標登録)(例えば、リポフェクタミン(商標登録)2000、リポフェクタミン(商標登録)3000、リポフェクタミン(商標登録)RNAiMAX、リポフェクタミン(商標登録)LTX)、セイント-レッド(SAINT-RED)(Synvolux Therapeutics社、オランダのGroningen所在)、DOPE、サイトフェクチン(Gilead Sciences社、カリフォルニアのフォスターシティ所在)、及びユーフェクチン(JBL社、カリフォルニアのサンルイスオビスポ所在)が含まれ得る。代表的な陽イオン性リポソームは、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)-プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド;又はジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)から製造され得る。
【0279】
高分子の場合、例えば、フレキシブル樹枝状高分子(flexible dendritic polymer)とCRISPR Casシステムを細胞内に伝達することができる(Chem Sci.2017,8:2923-2930.)。また、例えば、ポリペプチド(polypeptides)及びポリサッカライド(polysaccharide)で製造されたハイブリッドポリマーマイクロキャリアを介してCRISPR Casシステムを細胞内に伝達することができる(Nanomedicine.2018,14:97-108.)。さらに、例えば、GO-PEG-PEI(graphene oxide-poly(ethyleneglycol)-polyethylenimine)ナノキャリアを介してCRISPR Casシステムを細胞内に伝達することができる(Nanoscale.2018,10:1063-1071)。
【0280】
米国公開特許第2019/0099381号には、Cas9ポリペプチド及びガイドRNAを含むRNP複合体をコアとして含み、生分解性架橋重合体(biodegradable crosslinked polymer)をシェル(shell)として含むナノ粒子が記載されている。生分解性架橋重合体は、イミダゾリルアクリロイルモノマー、ビスアクリロイルジスルフィド、任意的PEGアクリロイルモノマー(optionally PEG acryloyl monomers)、カチオンアクリロイルモノマー(Cationic acryloyl monomers)、アニオンアクリロイルモノマー(anionic acryloyl monomers)、カチオン及びアニオンアクリロイルモノマー、又は非イオン性アクリロイルモノマー(non-ionic acryloyl monomers)の重合体を含むことができる。このとき、生分解性架橋重合体とRNPの質量比は、0.4乃至3.5の比率で調整され得る。このようなナノ粒子は、本発明に係る組成物を伝達するために適用することができ、本発明に参照として導入される。
【0281】
脂質ナノ粒子と関連して、キャリアとしてリポソームを用いてCRISPR Casシステムを伝達することができる。リポソームは、内部水性区画を取り囲む単一又は多重ラメラ脂質二重層及び相対的に不透過性である外側親脂性リン脂質二重層で構成された球体小嚢構造である。リポソーム剤形は、主に天然リン脂質及び脂質、例えば、1,2-ジステアロリル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DSPC)、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン又はモノシアロガングリオシドなどを含むことができる。場合によって、血漿内の不安定性を解消するために、脂質膜にコレステロール又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を追加することができる。コレステロールの添加は、カプセル化された生活性化合物の血漿内への迅速な放出を減少させたり、又は1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)は安定性を増加させる(Semple et al.,Nature Niotechnology,Volume 28 Number 2 February 2010,pp.172-177)。
【0282】
米国登録特許第10363217号によると、Cas9及びガイドRNA伝達にレシチン、コレステロール及び金属キレート脂質(metal chelating lipid)を含むナノリポソーム伝達体を使用できることが記載されている。金属キレート脂質として、例えば、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-[(N-5-アミノ-1-カルボキシペンチル)イミノ二酢酸)スクシニル](ニッケル塩)(“DOGS-NTA-Ni”);1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ジエチレントリアミン-ペンタ酢酸(ガドリニウム塩)(“DMPE-DTPA-Gd”);又は1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-ジエチレントリアミン-ペンタ酢酸(銅塩)(“DMPE-DTPA-Cu”)などが含まれ得る。Cas9及びガイドRNAは、カチオン性ポリマー(Cationic polymer)、例えば、ポリ-L-リシン、ポリアミドアミン、ポリ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]、キトサン、ポリ-L-オルニチン、シクロデキストリン、ヒストン、コラーゲン、デキストラン、又はPEI(polyethyleneimine)を含んで複合体を形成し、ナノリポソーム伝達体は、ハイブリッドCRISPR複合体をカプセル化して伝達することができる。
【0283】
場合によって、CRISPR Casシステムは、核酸-脂質粒子(SNALP)のようなリポソームに投与され得る。SNALP剤形は、脂質3-N-[(wメトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]-1,2-ジミリスチルオキシ-プロピル アミン(PEG-C-DMA)、1,2-ジリノレイオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)及びコレステロールを2:40:10:48のモル百分率比で含有することができる(Zimmerman et al.,Nature Letters,Vol.441,4 May 2006)。また、SNALPは、合成コレステロール、ジパルミトイルホスファチジルコリン、3-N-[(w-メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]-1,2-ジミレスチルオキシプロピルアミン、及び陽イオン性1,2-ジリノレイオキシ-3-N,N-ジメチルアミノプロパンを含むことができる(Geisbert et al.,Lancet 2010,375:1896-905)。さらに、SNALPは、陽イオン性脂質、DSPC、コレステロール及びPEG-脂質を、例えば、それぞれ40:10:40:10のモル比で、例えば、エタノール中に溶解させることによって製造され得る(Semple et al.,Nature Niotechnology,Volume 28 Number 2 February 2010,pp.172-177)。
【0284】
米国登録特許第10626393号には、脂質ナノ粒子を用いて核酸を伝達するための薬学的組成物が記載されている。gRNAを含む第1核酸-脂質ナノ粒子及びCas9タンパク質コーディングmRNAを含む第2核酸-脂質ナノ粒子を含む。このうち、第1核酸-脂質ナノ粒子は、陽イオン性脂質及び非陽イオン性脂質を含む。このような脂質ナノ粒子を適用し、生体内のCas9タンパク質コーディングmRNA及びgRNAを効果的に伝達し、標的特異的変異を誘発することができる。前記陽イオン性脂質は、1,2-ジリノレイオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジ-γ-リノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン (γ-DLenDMA;Compound(15))、3-((6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(DLin-MP-DMA;Compound(8))、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート)(Compound(7))、(6Z,16Z)-12-((Z)-dec-4-エニル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエート(Compound(13))などを含む。前記非陽イオン性脂質は、リン脂質又はコレステロールを含む。このような脂質ナノ粒子は、本発明に適用され得る。
【0285】
場合によって、標的核酸の発現を調節するために、ガイドRNAの3’又は5’にMS2バクテリオファージコートタンパク質などのRNA結合ドメインターゲット(binding domain target)を含むアプタマーを連結することができ、米国登録特許第10640789号を参照することができる。細胞でRNA結合ドメインターゲットに結合するRNA結合ドメイン(binding domain)を含む転写活性化因子(transcriptional activator)又はリプレッサー(repressor)を発現させることができる。細胞内でガイドRNAに転写活性化因子又はリプレッサーが連結され、転写活性化因子又はリプレッサーを通じてターゲット核酸の発現が調節されることによって、校正効率を増大させることができる。
【0286】
(5)エクソソームを介した伝達
【0287】
「エクソソーム」は、細胞-由来した小さい(20nm~300nmの直径、さらに好ましくは40nm~200nmの直径)小胞であって、内部空間を取り囲む膜を含み、直接的な原形質膜バディング又は後期エンドソームと原形質膜との融合によって前記細胞から生成される小胞を称する。一般に、エクソソームの生産は、生産細胞の破壊をもたらさない。エクソソームは、脂質又は脂肪酸及びポリペプチドを含み、選択的にペイロード(例えば、治療剤)、レシーバー(例えば、標的化モイエティ)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、又はDNA)、糖(例えば、単糖、多糖類、又はグリカン)又は他の分子を含む。エクソソームは、生産細胞から誘導され、その大きさ、密度、生化学的パラメーター、又はこれらの組み合わせに基づいて生産細胞から単離され得る。
【0288】
このようなエクソソームは、細胞外小胞又は小器官を9乃至14のpHを有する水溶液で処理して開放させることによって膜を収得し、小胞内又は小器官の内容物を除去した後、膜を再び組み立て(re-assembling)、膜小胞形態を形成することによって収得することができる。
【0289】
前記エクソソームに伝達対象物を混合し、再び組み立てることによって膜小胞を形成することができる。伝達対象物は、ゲノム編集システムであり得る。ゲノム編集システムは、非制限的には、メガヌクレアーゼ(meganuclease)システム、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(zinc finger nuclease;ZFN)システム、転写活性因子様エフェクターヌクレアーゼ(transcription activator-like effector nuclease;TALEN)システム、及びクラスター化された規則的間隔の短い回文の反復(clustered regularly interspaced short palindromic repeats;CRISPR)システムを含む。CRISPRシステムは、CRISPR-Cas9システムであり得る。CRISPR-Cas9システムは、Cas9タンパク質をエンコードするヌクレオチド配列、標的配列と混成化されたCRISPR RNA(crRNA)をエンコードするヌクレオチド配列、及びトランス-活性化CRISPR RNA(tracrRNA)をエンコードするヌクレオチド配列を含む。crRNA及びtracrRNAは、一つのガイドRNAに融合され得る。CRISPR-Casシステムの成分は、同一のベクター又は異なるベクターに位置し得る。さらに、CRISPR-Cas9システムは、核局在化信号(nuclear localization signal;NLS)を含むことができる。このようなエクソソームは、本発明に係る組成物の伝達に適用可能であり、参照として導入され得る。
【0290】
官能基化されたエクソソームを介してCRISPR-Cas9システムを伝達することができる(Biomater Sci.2020 May 19;8(10):2966-2976.)。GFP及びGFPナノボディー(nanobody)をエクソソーム膜タンパク質であるCD63と結合させ、Cas9タンパク質をエクソソームに融合させることができる。これを通じて、受容細胞(Recipient cell)でターゲット遺伝子を効率的に編集できることが確認された。このようなエクソソームを介して本発明に係る組成物を伝達することができ、参照として導入される。
【0291】
国際公開特許第WO2020/101740及び米国公開特許第US2020/0155703号のように、治療用膜小胞は、その表面分子を通じて受容細胞と相互作用する能力によって細胞外小胞、例えば、エクソソームを模倣する。治療用膜小胞は、細胞外小胞又は小器官から由来した膜から形成される。例えば、前記膜は、そのような細胞外小胞又は小器官の開放によって細胞外小胞又は小器官から由来し得る。したがって、結果的に空いている治療用膜小胞は、有害な内因性分子、例えば、DNA又は核膜成分、又は任意の所望でないRNA種、酵素又は他のタンパク質のみならず、感染性成分、例えば、ウイルス、ウイルスゲノム物質及び/又はプリオンを含むウイルス成分又は類似する感染性要素を含み、天然細胞外小胞又は小器官が含有する有害な内容物がない場合がある。
【0292】
治療用膜小胞は、治療伝達対象物でローディングされ得る。ローディングされた伝達対象物を含む治療用膜小胞は、その表面分子を介して受容細胞と相互作用し、前記受容細胞にその伝達対象物を伝達する能力を有するという点で自然発生細胞外小胞を模倣する。
【0293】
治療用膜小胞は、例えば、標的化効能、伝達を改善させ、受容細胞/器官/対象への治療伝達対象物を増加させることによって、現在の細胞外小胞治療剤が有する多くの問題を解決することができる。治療用膜小胞は、その表面分子を介して受容細胞と相互作用し/したり、受容細胞に治療伝達対象物を伝達する能力でエクソソーム又は任意の他の細胞外小胞を模倣することによってエクソソーム又は任意の他の細胞外小胞を模倣すると言える。併せて、治療用膜小胞は、可能な否定的な副作用を有する所望でない細胞外小胞のみならず、これらが自然に含有し得る任意の有害な内容物への可能な汚染を軽減できるという点でエクソソーム及び他の自然発生細胞外小胞と異なる。
【0294】
ヨーロッパ公開特許第3706796号及びヨーロッパ登録特許第3463465号のように、エクソソームポリペプチドを介して本発明に係る組成物を伝達することができ、参照として導入される。
【0295】
「エクソソームポリペプチド」は、ポリペプチド作製物の小胞体構造物、例えば、エクソソームへの輸送、トラフィッキング又はシャットリングを可能にする任意のポリペプチド(前記言及したように、典型的に少なくとも一つのPoI及び少なくとも一つのポリペプチド基盤の放出システムを含むが、標的化ペプチド/ポリペプチドも含み得る)を含む。
【0296】
例えば、CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、ALIX、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2b、TSPAN8、TSPAN14、CD37、CD82、CD151、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、Fc受容体、インターロイキン受容体、免疫グロブリン、MHC-I又はMHC-II成分、CD2、CD3イプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19、CD30、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、GAPDH、GLUR2、GLUR3、HLA-DM、HSPG2、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1アルファ、Mac-1ベータ、MFGE8、SLIT2、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、VTI1A又はVTI1Bであり得る。
【0297】
前記エクソソームは、核酸を含み、単一鎖RNA又はDNA、二重鎖RNA又はDNA、化学的に合成及び/又は化学的に修飾したオリゴヌクレオチドを含むことができる。
【0298】
前記エクソソームは、目的とするポリペプチド(PoI)を含み、ここで、前記目的とするポリペプチドは、エクソソームポリペプチドに放出可能に付着している。目的とするポリペプチドのエクソソームポリペプチドへの付着は放出可能であり、目的とする治療学的ポリペプチドのEVへの効率的で且つ妨害されないローディング及び内因性に誘発された放出を可能にする。目的とするポリペプチドとエクソソームポリペプチドとの間の放出可能な付着は、EVの内部で及び/又は後続的に標的細胞又は標的組織の内部で目的とするポリペプチドの内因性に活性化され得る放出を可能にし、ローディング及び治療学的活性を最適化できる放出システムによって媒介される特性である。前記放出システムは、外部刺激に対する必要なしで活性化又は誘発され得る多様な放出可能なポリペプチド相互作用システム(すなわち、前記放出システムは、典型的に細胞又はEV内、又は必須的に任意の生物学的システム内で内因性活性によって誘発される)、例えば、シス-切断ポリペプチド-基盤の放出システム(例えば、インテインを基準にして)、核局所化信号(NLS)-NLS結合タンパク質(NLSBP)基盤の放出システム又は他のタンパク質ドメインを基準にする放出システムを含むグループから選ばれ得るポリペプチド基盤のシステムを含むことができる。単量体性光-誘導された切断-基盤の放出システムを使用することができ、ここで、非常に短い光ブーストのみを使用して単量体性タンパク質ドメインの内因性タンパク質溶解切断を開始し、目的とするポリペプチドを放出することができる。
【0299】
韓国登録特許第1900465号によると、光特異的結合タンパク質を用いてCas9タンパク質を含むエクソソームが記載されている。光特異的結合タンパク質を使用し、一時的に目的タンパク質をマーカータンパク質と結合させ、目的タンパク質が内部に含まれるようにエクソソームを製造する技術が記載されている。例えば、光特異的結合タンパク質であるCIBNとCRY2を利用できるが、具体的には、前記CIBNは、前記マーカータンパク質の一つであるCD9と融合された形態に発現されるようにし、前記CRY2は、目的タンパク質と融合された形態で発現されるように、これらの融合タンパク質をコードする遺伝子をエクソソーム生産細胞に導入した。前記エクソソーム生産細胞で発現されたCIBN-CD9融合タンパク質は、CD9によってエクソソームに含まれるが、このとき、前記細胞に青色光LED照明を照射すると、前記エクソソーム生産細胞で発現された目的タンパク質-CRY2融合タンパク質のCRY2ドメインが、CD9に融合されたCIBNドメインに結合されるので、目的タンパク質-CRY2-CIBN-CD9形態の可逆的に誘導された融合タンパク質が形成され、このような融合タンパク質は、CD9によってエクソソームの内部に含まれる。このように、目的タンパク質が内部に含まれたエクソソームが生産された後、前記青色光LED照明をこれ以上照射しないと、CIB-CRY2結合が解除され、目的タンパク質がエクソソームの細胞膜に結合されない状態でエクソソームの内部に含まれるようになるので、結果的に、目的タンパク質を含むエクソソームを製造することができる。
【0300】
光特異的タンパク質として、CRY(chryptochrome)以外にも、CIB(cryptochrome-interacting basic-helix-loop-helix protein)、CIBN(N-terminal domain of CIB)、PhyB(phytochrome B)、PIF(phytochrome interacting factor)、FKF1(Flavinbinding、Kelch repeat、F-box 1)、GIGANTEA又はPHR(phytolyase homolgous region)などが使用され得る。
【0301】
エクソソーム膜に付着している状態であって、エクソソーム膜から分離されないので、エクソソームが標的細胞の細胞膜に融合される場合にのみ、前記目的タンパク質が標的細胞に伝達され得る。このように標的細胞に融合された後にも、エクソソーム膜に融合されたエクソソームに結合された形態で存在するので、前記目的タンパク質は、標的細胞内で彼の効果を示す確率が非常に低いという限界を有していた。しかし、目的タンパク質がエクソソームの内部に膜と結合されない状態で捕集されている場合、エクソソームが標的細胞によってエンドサイトーシス(endocytosis)されて細胞質に入ったとき、エクソソーム膜に付着しているわけではないので、エクソソームが分解される場合、目的タンパク質が標的細胞の細胞質に伝達され得る。また、標的細胞の細胞質内で自由に移動可能であるので、目的タンパク質は、標的細胞質で生理活性を十分に示すことができる。
【0302】
CRY2及びmCherryの融合タンパク質とCIB及びCD9の融合タンパク質を、エクソソームを多く作り出す不滅細胞株であるHEK293T細胞内で発現した結果、細胞質に均一に分布されていたmCherryタンパク質は、青色光を照射したとき、細胞膜、エンドソーム類似構造などの膜にあることが観察された。FKF1及びmCherryの融合タンパク質とGIGANTEA及びCD9の融合タンパク質をHEK293T細胞で発現させたときにも、類似する結果を観察できた。また、CRY2及びmCherryの融合タンパク質とCIBN及びCD9の融合タンパク質をHEK293Tに発現させ、青色光の強さを調節した結果、20μW乃至50μWの光を照射したとき、エクソソーム内に捕集されたmCherryタンパク質が最も高い水準を示すことを確認した。また、前記細胞で生産分離されたエクソソームを異種細胞であるHT1080細胞に約250μg/mlの濃度で処理した結果、HT1080細胞に対して特別な細胞毒性を示しておらず、前記HT1080細胞の細胞質にmCherryタンパク質が伝達されることを確認した。このような結果により、本発明に係る組成物の伝達時にエクソソームを適用することができ、参照として導入され得る。
【0303】
6.伝達方法
【0304】
A.伝達対象
【0305】
本発明に係る組成物は、ゲノム配列変異を有する細胞内のゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域配列のうち、正常細胞には存在しない固有の配列を含む複数個の核酸配列を特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド、及び核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドを含み、それぞれを伝達するために単一又は伝達手段を同一又は異なる構成で組み合わせて使用することができる。
【0306】
国際公開特許WO2015/191693によると、gRNAは第1伝達手段に含まれ、核酸編集システムは第2伝達手段に含まれる伝達システムが記載されている。それぞれの伝達システムは、同時にウイルス伝達手段であったり、一つはウイルス伝達手段で、他の一つは非-ウイルス伝達手段であったり、同時に非-ウイルス伝達手段であり得ることが記載されている。これは、本発明に係る組成物を伝達するために適用することができ、本発明に参照として導入される。
【0307】
前記複数個の切断因子をコードするポリヌクレオチド配列及び/又は核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列、又はその組み合わせ(RNA-DNA組み合わせ配列)であり得る。
【0308】
本発明に係る組成物において切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドは、切断因子のRNA配列又はDNA配列を含むことができる。本発明に係る組成物において核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドは、核酸切断酵素タンパク質、核酸切断酵素タンパク質をコードするRNA配列又はDNA配列を含むことができる。
【0309】
B.ベクターによる伝達
【0310】
本発明に係る組成物を伝達するための方法として、切断因子のDNA配列及び核酸切断酵素タンパク質をコードするDNA配列を含むことができる。切断因子のDNA配列及び核酸切断酵素タンパク質をコードするDNA配列は、ベクターなどの伝達手段を介して提供され得る。
【0311】
一観点において、本発明は、(i)核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用ベクターに関する。
【0312】
一観点において、本発明は、(i)核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含み、前記(i)及び(ii)が同一又は異なるベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0313】
一つの実施例において、(i)核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドのそれぞれは、同一又は異なるベクターに含まれ得る。
【0314】
(1)個別ベクターを用いた伝達
【0315】
ベクターは、原核細胞又は真核細胞において複数個の切断因子及び核酸切断酵素の核酸転写物、タンパク質又は酵素の発現のために設計され得る。切断因子のDNA配列及び核酸切断酵素タンパク質をコードするDNA配列のそれぞれは、別個の異なるベクター上に位置させて伝達することができる。
【0316】
本発明に係るウイルスベクターとして、例えば、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)又はRV(Retroviral Vector)、その他のウイルスベクター、例えば、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)ori、BPV(bovine papilloma virus)ori又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)oriを含むエピソーマルベクターを使用して伝達することができる。
【0317】
(2)単一のベクターを用いた伝達
【0318】
切断因子のDNA配列及び核酸切断酵素タンパク質をコードするDNA配列を同一のベクター上に位置させ、一つのベクターを介して同時に伝達することができる。
【0319】
本発明に係るウイルスベクターとして、例えば、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)又はRV(Retroviral Vector)、その他のウイルスベクター、例えば、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)ori、BPV(bovine papilloma virus)ori又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)oriを含むエピソーマルベクターを使用して伝達することができる。
【0320】
複数個の切断因子を含んで多重遺伝子を編集することは、crRNA-プロセッシングメカニズム(processing mechanism)と連関している(Nature Communications volume 11,Article number:1281(2020),Nature Biotechnology volume 35,pages31-34(2017))。
【0321】
核酸切断酵素の種類と関連して、Cas12a/Cas13aは、tracrRNAなしでcrRNAを加工することができる。自体のヌクレアーゼ特性を保有し、pre-crRNA(precursor crRNA)加工に必要な反復配列(repetitive sequence)であるDR(direct repeat)を除去することができる。
【0322】
Cas6は、最後のエフェクター複合体(final effector complex)を形成するために付属タンパク質(accessory protein)が必要であり、Cas6によって加工されたcrRNAは、カスケード(cascade)と呼ばれるCas5、Cas6、Cas7、Cas8で構成されたターゲット認知モジュールに導入され、このようなカスケード複合体は、外部遺伝子のPAMを認知することによってDNAを編集する。
【0323】
Cas9、Cas12b、Cas12cは、tracrRNA(transactivating crRNA)及びRNase IIIを通じてpre-crRNA(precursor crRNA)加工をする。
【0324】
複合遺伝子の校正において、例えば、Cas9が適用される場合、Cas9のgRNAはcrRNA:tracrRNA複合体を含み、crRNA:tracrRNAが融合されてsgRNAを形成するので、複合遺伝子の校正のためにそれぞれのcrRNAの間にpre-crRNA(precursor crRNA)加工に必要な反復配列である直接反復(direct repeat)を挿入し、tracrRNAを別途に発現させ、RNase IIIがtracrRNAによって作動し、直接反復を除去しながら複数の遺伝子を編集することができる。
【0325】
場合によって、それぞれのRNAの間にリボザイムなどの自己切断配列(self-cleaving sequence)を結合させたり、RNAのうち28-ntステムループ配列(stem-loop sequence)を認知し、20番目のヌクレオチドを切断する酵素であるCsy4認知部位を結合させたり、又は内因性RNase P/RNase Zによって加工可能なtRNAを挿入することによって、pre-crRNA(precursor crRNA)がcrRNAに加工できるようにする。
【0326】
複数のgRNAのそれぞれの間にリボザイムなどの自己切断配列を結合させることができる。Pol II及びPol IIIプロモーターを適用し、Pol II及びPol IIIプロモーターによって媒介される転写を通じてpre-crRNAを加工することができる。
【0327】
また、RNAのうち28-ntステムループ配列を認知し、20番目のヌクレオチドを切断する酵素であるCsy4認知部位を結合させることができる。Csy4認知配列を含むgRNAとCsy4を共同発現させると、多重gRNAが発現され、単一のプロモーターを通じて加工され得る。
【0328】
さらに、内因性RNase P/RNase Zによって加工可能なtRNAを挿入し、pre-crRNAを加工することができる。RNase P/RNase Zは、pre-tRNAの5’末端及び3’末端を切断し、多重gRNAがtRNA-gRNAから加工され得る。
【0329】
C.ベクター及びmRNA、キャリア又はエクソソーム組み合わせ
【0330】
本発明に係る組成物を伝達するための方法として、切断因子のDNA配列及び核酸切断酵素タンパク質又は核酸切断酵素タンパク質をコードするRNA配列を含むことができる。
【0331】
本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含み、前記(ii)がベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0332】
前記切断因子のDNA配列は、ベクターを介して伝達することができる。本明細書に記載された任意のベクターを適用して伝達することができ、例えば、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)又はRV(Retroviral Vector)、その他のウイルスベクター、例えば、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)ori、BPV(bovine papilloma virus)ori又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)oriを含むエピソーマルベクターを使用して伝達することができる。
【0333】
核酸切断酵素タンパク質をコードするRNA配列をmRNA形態で伝達することができる。mRNA形態の伝達として、合成修飾(synthetic modified)mRNA又はsrRNA(self-replicating RNA)を含むことができる。
【0334】
核酸切断酵素タンパク質又は核酸切断酵素タンパク質をコードするRNA配列は、修飾ヌクレオシドを含んだり、合成自己-複製RNA(synthetic self-replicative RNA)を含んだり、本明細書に記載されたキャリア又はエクソソームを介して伝達することができる。例えば、ナノ粒子、cpp、ポリマーなどのキャリア又はエクソソームを介して伝達することができる。
【0335】
D.mRNA又はキャリアによる伝達
【0336】
本発明に係る組成物を伝達するための方法として、切断因子のRNA配列及び核酸切断酵素タンパク質又は核酸切断酵素タンパク質をコードするRNA配列を含むことができる。切断因子のmRNA形態で伝達することができる。核酸切断酵素は、タンパク質形態又は核酸切断酵素タンパク質をコードするmRNA形態で伝達することができる。
【0337】
本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有するゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用キャリアに関する。
【0338】
本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がキャリアに含まれるゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0339】
本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用エクソソームに関する。
【0340】
本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がエクソソームに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0341】
mRNA形態の伝達として、合成修飾(synthetic modified)mRNA又はsrRNA(self-replicating RNA)を含むことができる。
【0342】
切断因子のmRNA、核酸切断酵素タンパク質又は核酸切断酵素タンパク質をコードするmRNA配列を核酸切断酵素タンパク質形態で伝達したり、核酸切断酵素タンパク質をコードするmRNA形態で伝達したり、又は本明細書に記載されたキャリア又はエクソソーム、例えば、ナノ粒子、cpp、ポリマーなどのキャリア又はエクソソームを介して伝達することができる。
【0343】
E.RNPによる伝達
【0344】
切断因子のmRNA、核酸切断酵素タンパク質は、RNP形態でin vitroで複合体を形成するようにして伝達することができる。
【0345】
本発明は、(i)核酸切断酵素;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用リボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体に関する。
【0346】
本発明は、(i)核酸切断酵素;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がリボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体を形成する、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0347】
場合によって、RNPを本明細書に記載されたキャリア又はエクソソーム、例えば、ナノ粒子、cpp、ポリマーなどのキャリア又はエクソソームを介して伝達することができる。
【0348】
7.エキソヌクレアーゼ
【0349】
本発明の具体的な実施例において、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素を使用する場合、細胞死滅誘導に必要な切断因子の数を減少できることを確認した。
【0350】
他の観点において、本発明は、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及びゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0351】
前記エキソヌクレアーゼは、5’-3’のヌクレオチド切断能を有することができる。本発明によると、Cas9の場合、5個のgRNAで細胞死滅が起こらなかったが、Exo-Cas9を使用すると、5個のgRNAでも十分に細胞死滅を起こすことを確認した。これは、理論に拘らないが、Cas9によるDNA二重鎖切断(double strand break)以後に復旧を阻害するためであると判断される。
【0352】
前記エキソヌクレアーゼIは、微生物、酵素、昆虫、マウス又はヒト由来であり得る。具体的には、前記エキソヌクレアーゼIは、配列番号31の配列を含むことができる。
【0353】
【0354】
エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素を使用する場合、前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、細胞死滅を誘導するのに十分なターゲットに該当する互いに異なる2個以上であり得る。前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、例えば、互いに異なる20個以下であり得る。前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、例えば、互いに異なるそれぞれの2個~20個であり得る。
【0355】
前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、具体的には、互いに異なるそれぞれの2個~20個、2個~19個、2個~18個、2個~17個、2個~16個、2個~15個、2個~14個、2個~13個、2個~12個、2個~11個、2個~10個、2個~9個、2個~8個、2個~7個、2個~6個、2個~5個、2個~4個、又は2個~3個であり得る。
【0356】
前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、具体的には、互いに異なるそれぞれの2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個(数字の間の範囲も含む)であり得る。
【0357】
変異が存在する位置が含まれたゲノムは、細胞で二倍体(diploid)及び/又は三倍体(triploid)であり得るので、互いに異なるそれぞれの2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個(数字の間の範囲も含む)、又は2ペア、3ペア、4ペア、5ペア、6ペア、7ペア、8ペア、9ペア、10ペア、11ペア、12ペア、13ペア、14ペア、15ペア、16ペア、17ペア、18ペア、19ペア、又は20ペアの変異領域を考慮して、互いに異なる2個~40個、例えば、互いに異なる40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個又は2個(数字の間の範囲も含む)の二重鎖切断(Double-stranded break、DSB)を誘導することによって細胞を死滅させることができる。
【0358】
前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域は、核酸配列であって、例えば、コーディング又は非コーディング核酸であり得る。前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の核酸は、コーディング核酸であってもよく、ゲノムから転写されてタンパク質に翻訳されてもよい。前記ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の核酸は、非コーディング核酸であってもよく、ゲノムから転写されてタンパク質に翻訳されない。
【0359】
本発明に係るゲノム配列変異を有する細胞内変異は、正常細胞で発見されない場合がある。このような変異は、ゲノム配列変異を有する細胞と正常細胞をWGS(whole genome sequencing)し、ゲノム配列変異を有する細胞特異的変異領域の配列、例えば、配列の挿入、欠失、置換で構成された群から選ばれた一つ以上であり得る。
【0360】
ゲノム配列変異を有する細胞特異的配列のマッピングは、WGS(whole genome sequencing)、又はサブトラクションハイブリダイゼーション及びシーケンシングの方法を通じて行うことができ、このときに導出されたInDelにおいて、癌で発見された挿入の場合は直ぐガイドRNAを製作し、欠失の場合は、切断地点(break point)をマッピングした後、切断地点を含むガイドRNAを製作して使用することができる。
【0361】
WGS(全ゲノムシーケンシング)は、次世代シーケンシング(next generation sequencing)によって10X、20X、40X形式で多くの倍数でゲノムを読む方法を意味する。「次世代シーケンシング」は、チップ基盤、及びPCR基盤のペアドエンド形式で全ゲノムを断片化し、前記断片を化学的な反応(hybridization)に基づいて超高速でシーケンシングする技術を意味する。
【0362】
サブトラクションハイブリダイゼーションは、多くの組織又は細胞の間に発現の差を有する遺伝子のクローニングに用いられる方法である。試験する細胞のDNA試料特異的遺伝子が検出され得る。試験する細胞のDNAを一本鎖DNAに変性させた後、アニーリングを行う。アニーリング条件を調節することによって、試験する細胞特異的DNA配列を二本鎖DNAに分離することができる。
【0363】
本発明において、前記切断因子は、複数個であって、複数個のそれぞれの切断因子の配列が異なっており、互いに異なる配列を含むことができる。
【0364】
前記切断因子は、正常細胞の塩基配列と比較して、細胞の死滅を誘導できる十分な複数個の数でなければならなく、互いに異なる配列を有する2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上であり得る。前記切断因子は、互いに異なる配列を有する20個以下、19個以下、18個以下、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、又は2個以下であり得る。
【0365】
前記切断因子の数が多くなるほど、細胞死滅がさらにうまく行われるが、10個程度になると、十分な変異細胞死滅効果を示す。よって、切断因子の数は、2個から10個まで、好ましくは2個から8個まで、より好ましくは3個から5個まで選択することができる。
【0366】
前記切断因子は、互いに異なる配列を有する4個~20個、4個~19個、4個~18個、4個~17個、4個~16個、4個~15個、4個~14個、4個~13個、4個~12個、4個~11個、又は4個~10個であり得る。
【0367】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する6個~20個、6個~19個、6個~18個、6個~17個、6個~16個、6個~15個、6個~14個、6個~13個、6個~12個、6個~11個、又は6個~10個であり得る。
【0368】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する8個~20個、8個~19個、8個~18個、8個~17個、8個~16個、8個~15個、8個~14個、8個~13個、8個~12個、8個~11個、又は8個~10個であり得る。
【0369】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する10個~20個、10個~19個、10個~18個、10個~17個、10個~16個、10個~15個、10個~14個、10個~13個、又は10個~12個であり得る。
【0370】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する12個~20個、12個~19個、12個~18個、12個~17個、12個~16個、12個~15個、12個~14個、又は12個~13個であり得る。
【0371】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する14個~20個、14個~19個、14個~18個、14個~17個、14個~16個、又は14個~15個であり得る。
【0372】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する16個~20個、16個~19個、16個~18個、又は16個~17個であり得る。
【0373】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する18個~20個、又は18個~19個であり得る。
【0374】
本発明において、前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、又は4個を含むことができる(数字の間の範囲も含む)。前記切断因子は、例えば、互いに異なる配列を有する20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個又は2個を含むことができる(数字の間の範囲も含む)。
【0375】
前記切断因子は、正常細胞の塩基配列と比較して、細胞の死滅を誘導できる十分な数でなければならなく、互いに異なる配列を有する2個~20個であり得る。例えば、2個~20個、2個~19個、2個~18個、2個~17個、2個~16個、2個~15個、2個~14個、2個~13個、2個~12個、2個~11個、2個~10個、2個~9個、2個~8個、2個~7個、2個~6個、2個~5個、2個~4個、又は2個~3個であり得る。
【0376】
切断因子がターゲットとする染色体が二倍体(diploid)及び/又は三倍体(triploid)であるかどうかによって、各切断因子がターゲットとする配列を2個及び/又は3個含むことができる。よって、切断因子によって誘導される二重鎖切断(DSB)は、細胞の死滅を誘導できる切断因子の数の2倍及び/又は3倍であり得る。例えば、互いに異なる配列を有する2個の切断因子を含む場合、細胞死滅のために4個乃至6個の二重鎖切断(DSB)が必要である。
【0377】
場合によって、DNA二重鎖切断を通じて細胞死滅効率を高めるために、DNA二重鎖の復旧を阻害するように、例えば、カフェイン(Caffeine)、ウォルトマンニン(Wortmannin)、CP-466722、KU-55933、KU-60019、及びKU-559403で構成された群から選ばれた一つ以上のATM(Ataxia telangiectasia mutated)阻害剤、シザンドリン(Schisandrin)B、NU6027、NVP-BEZ235、VE-821、VE-822(VX-970)、AZ20、及びAZD6738で構成された群から選ばれた一つ以上のATR(Ataxia telangiectasia and Rad-3 mutated)阻害剤、又はDNA-PKcs(DNA-dependent protein kinase Catalytic subunit)のDNA二重鎖の復旧阻害剤をさらに含むことができる。
【0378】
A.伝達対象
【0379】
本発明に係る組成物は、ゲノム配列変異を有する細胞内細胞特異的変異領域の配列のうち、正常細胞には存在しない固有の配列を含む2個以上の細胞特異的変異領域を特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチドを含み、それぞれを伝達するために単一又は伝達手段を同一又は異なる構成で組み合わせて使用することができる。
【0380】
前記複数個の切断因子をコードするポリヌクレオチド配列及び/又は核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド配列は、RNA配列、DNA配列、又はその組み合わせ(RNA-DNA組み合わせ配列)であり得る。
【0381】
本発明に係る組成物において、切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドは、切断因子のRNA配列又はDNA配列を含むことができる。本発明に係る組成物において、エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチドは、タンパク質、タンパク質をコードするRNA配列又はDNA配列を含むことができる。
【0382】
B.ベクターによる伝達
【0383】
本発明に係る組成物を伝達するための方法として、切断因子のDNA配列及びエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするDNA配列を含むことができる。切断因子のDNA配列及びエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするDNA配列は、ベクターなどの伝達手段を介して提供され得る。
【0384】
一観点において、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用ベクターに関する。
【0385】
一観点において、本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを含み、前記(i)及び(ii)が同一又は異なるベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0386】
一つの実施例において、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域を認識する一つ以上の切断因子のそれぞれは、同一又は異なるベクターに含まれ得る。
【0387】
(1)個別ベクターを用いた伝達
【0388】
ベクターは、原核細胞又は真核細胞において複数個の切断因子及び核酸切断酵素の核酸転写物、タンパク質又は酵素の発現のために設計され得る。切断因子のDNA配列及び核酸切断酵素タンパク質をコードするDNA配列のそれぞれを別個の異なるベクター上に位置させて伝達することができる。
【0389】
本発明に係るウイルスベクターとして、例えば、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)又はRV(Retroviral Vector)、その他のウイルスベクター、例えば、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)ori、BPV(bovine papilloma virus)ori又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)oriを含むエピソーマルベクターを使用して伝達することができる。
【0390】
(2)単一のベクターを用いた伝達
【0391】
切断因子のDNA配列及びエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするDNA配列を同一のベクター上に位置させ、一つのベクターを介して同時に伝達することができる。
【0392】
本発明に係るウイルスベクターとして、例えば、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)又はRV(Retroviral Vector)、その他のウイルスベクター、例えば、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)ori、BPV(bovine papilloma virus)ori又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)oriを含むエピソーマルベクターを使用して伝達することができる。
【0393】
複数個の切断因子を含んで多重遺伝子を編集することは、crRNA-プロセッシングメカニズムと連関している(Nature Communications volume 11,Article number:1281(2020),Nature Biotechnology volume 35,pages31-34(2017))。
【0394】
核酸切断酵素の種類と関連して、Cas12a/Cas13aは、tracrRNAなしでcrRNAを加工することができる。自体のヌクレアーゼ特性を保有し、pre-crRNA(precursor crRNA)加工に必要な反復配列であるDR(direct repeat)を除去することができる。
【0395】
Cas6は、最後のエフェクター複合体(final effector complex)を形成するために付属タンパク質(accessory protein)が必要であり、Cas6によって加工されたcrRNAは、カスケードと呼ばれるCas5、Cas6、Cas7、Cas8で構成されたターゲット認知モジュールに導入され、このようなカスケード複合体は、外部遺伝子のPAMを認知することによってDNAを編集する。
【0396】
Cas9、Cas12b、Cas12cは、tracrRNA(transactivating crRNA)及びRNase IIIを通じてpre-crRNA(precursor crRNA)加工をする。
【0397】
複合遺伝子の校正で、例えば、Cas9が適用される場合、Cas9のgRNAはcrRNA:tracrRNA複合体を含み、crRNA:tracrRNAが融合されてsgRNAを形成するので、複合遺伝子の校正のためにそれぞれのcrRNAの間にpre-crRNA(precursor crRNA)加工に必要な反復配列である直接反復を挿入し、tracrRNAを別途に発現させ、RNase IIIがtracrRNAによって作動し、直接反復を除去しながら複数の遺伝子を編集することができる。
【0398】
場合によって、それぞれのRNAの間にリボザイムなどの自己切断配列を結合させたり、RNAのうち28-ntステムループ配列を認知し、20番目のヌクレオチドを切断する酵素であるCsy4認知部位を結合させたり、又は内因性RNase P/RNase Zによって加工可能なtRNAを挿入することによって、pre-crRNA(precursor crRNA)がcrRNAに加工できるようにする。
【0399】
複数のgRNAのそれぞれの間にリボザイムなどの自己切断配列を結合させることができる。Pol II及びPol IIIプロモーターを適用し、Pol II及びPol IIIプロモーターによって媒介される転写を通じてpre-crRNAを加工することができる。
【0400】
また、RNAのうち28-ntステムループ配列を認知し、20番目のヌクレオチドを切断する酵素であるCsy4認知部位を結合させることができる。Csy4認知配列を含むgRNAとCsy4を共同発現させると、多重gRNAが発現され、単一のプロモーターを通じて加工され得る。
【0401】
さらに、内因性RNase P/RNase Zによって加工可能なtRNAを挿入し、pre-crRNAを加工することができる。RNase P/RNase Zは、pre-tRNAの5’末端及び3’末端を切断し、多重gRNAがtRNA-gRNAから加工され得る。
【0402】
C.ベクター及びmRNA、キャリア又はエクソソーム組み合わせ
【0403】
本発明に係る組成物を伝達するための方法として、切断因子のDNA配列及びエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又は核酸切断酵素をコードするRNA配列を含むことができる。
【0404】
本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを含み、前記(ii)がベクターに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0405】
前記切断因子のDNA配列は、ベクターを介して伝達することができる。本明細書に記載された任意のベクターを適用して伝達することができ、例えば、AAV(Adeno-Associated Viral Vector)、AdV(Adenoviral Vector)、LV(Lentiviral Vector)又はRV(Retroviral Vector)、その他のウイルスベクター、例えば、シミアンウイルス(Simian virus)40(SV40)ori、BPV(bovine papilloma virus)ori又はEBV(Epstein-Barr nuclear antigen)oriを含むエピソーマルベクターを使用して伝達することができる。
【0406】
エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするRNA配列をmRNA形態で伝達することができる。mRNA形態の伝達として、合成修飾(synthetic modified)mRNA又はsrRNA(self-replicating RNA)を含むことができる。
【0407】
エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又は核酸切断酵素をコードするRNA配列は、修飾ヌクレオシドを含んだり、合成自己-複製RNA(synthetic self-replicative RNA)を含んだり、本明細書に記載されたキャリア又はエクソソームを介して伝達され得る。例えば、ナノ粒子、cpp、ポリマーなどのキャリア又はエクソソームを介して伝達することができる。
【0408】
D.mRNA又はキャリアによる伝達
【0409】
本発明に係る組成物を伝達するための方法として、切断因子のRNA配列及びエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又は核酸切断酵素をコードするRNA配列を含むことができる。切断因子のmRNA形態で伝達することができる。エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素は、タンパク質形態又は核酸切断酵素タンパク質をコードするmRNA形態で伝達することができる。
【0410】
本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用キャリアに関する。
【0411】
本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がキャリアに含まれるゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0412】
本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用エクソソームに関する。
【0413】
本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素をコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がエクソソームに含まれる、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0414】
mRNA形態の伝達として、合成修飾(synthetic modified)mRNA又はsrRNA(self-replicating RNA)を含むことができる。
【0415】
切断因子のmRNA、核酸切断酵素タンパク質又は核酸切断酵素タンパク質をコードするmRNA配列を核酸切断酵素タンパク質形態で伝達したり、核酸切断酵素タンパク質をコードするmRNA形態で伝達したり、又は本明細書に記載されたキャリア又はエクソソーム、例えば、ナノ粒子、cpp、ポリマーなどのキャリア又はエクソソームを介して伝達することができる。
【0416】
E.RNPによる伝達
【0417】
切断因子のmRNA、核酸切断酵素タンパク質は、RNP形態でin vitroで複合体を形成するようにして伝達することができる。
【0418】
本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを含む、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用リボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体に関する。
【0419】
本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素;及び(ii)ゲノム配列変異を有する細胞内の変異のうち2個~10個の変異領域を特異的に認識する一つ以上の切断因子をコードするポリヌクレオチドを含有し、前記(i)及び(ii)がリボ核酸タンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)複合体を形成する、ゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物に関する。
【0420】
場合によって、RNPを本明細書に記載されたキャリア又はエクソソーム、例えば、ナノ粒子、cpp、ポリマーなどのキャリア又はエクソソームを介して伝達することができる。
【0421】
本発明を通じて患者に合わせたオーダーメード型治療医薬品を製造することができる。患者に合わせたオーダーメード型は、患者固有の特性又は患者の疾病特性を十分に反映し、効果的に疾病を治療できることを意味する。患者に合わせたオーダーメード型疾病治療用組成物は、治療剤の選別及び治療方法の選択などに有用に使用することができる。
【0422】
これによって、本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含む、患者に合わせたオーダーメード型疾病治療用組成物に関する。本発明は、(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを患者に処理する患者に合わせたオーダーメード型疾病治療方法に関する。
【0423】
本発明は、正常細胞と異なる複数個のゲノム変異配列を選択する1段階;及び核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を処理する段階;を含む患者に合わせたオーダーメード型疾病治療方法に関する。
【0424】
本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを含む患者に合わせたオーダーメード型疾病治療用組成物に関する。本発明は、(i)エンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する2個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子をコードするポリヌクレオチドを患者に処理する患者に合わせたオーダーメード型疾病治療方法に関する。
【0425】
本発明は、正常細胞と異なる複数個のゲノム変異配列を選択する1段階;及びエンドヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼIが融合された核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド、及びゲノム配列変異を有する細胞内の複数の変異領域のそれぞれを特異的に認識する複数個の切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチドを含むゲノム配列変異を有する細胞死滅誘導用組成物を処理する段階;を含む患者に合わせたオーダーメード型疾病治療方法に関する。
【0426】
本発明の組成物、方法及び用途は、これを必要とする対象体に十分な量又は有効量で投与され得る。「有効量」又は「十分な量」は、単一又は多重用量で単独で又は一つ以上の他の治療用組成物、プロトコル、又は治療療法と組み合わされて任意の期間の間に対象体に有益を与えたり、対象体に予想又は要望される結果を提供する量を示す。製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、投与時間、投与経路、排出速度、及び反応感応性などの各要因によって多様に処方され得る。
【0427】
実施例
【0428】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎなく、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0429】
実施例1.同時多発的DNA DSBが細胞死滅を誘導する。
【0430】
InDelsをターゲットとする場合、多量の癌細胞特異的DNA DSBが生成され、癌細胞を選択的に死滅できると仮定した(図1A)。ER-AsiSI U2OS細胞を使用し、酵素的に誘導されたDSBが増殖する癌細胞を死滅させるのに十分であるかどうかをテストした。
【0431】
ER-AsiSI(17)を備えたU2OS細胞は、Tanya Paull博士(テキサス大学オースティン校、米国)によって寄贈された。ER-AsiSI U2OS細胞は、10%の牛胎児血清を含むDMEM(GE Healthcare)で培養した。次は、1×10細胞を6ウェルプレートに播種し、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)(Cat#.H7904;Merck,St.Louis,MO,USA)を添加し、最終処理濃度を300nMにした。4-OHT処理4時間後に培地を再生し、細胞を追加的に6日間インキュベートした。細胞の生存率は、製造社のプロトコル(G9241;Promega,Madison,WI,USA)によってメチレンブルー染色によるコロニー形成分析(Cat# M9140;Merck)又はCelltiter-Glo分析を通じて確認した。
【0432】
ER-AsiSI U2OS細胞は、タモキシフェン(4OHT)の存在下で核に移動するAsiSI制限酵素を発現する(図1B)。ヒトゲノム(GRCh38)の現在のバージョンには、1,225のAsiSI認識サイトが含まれている。したがって、このような細胞類型では、約100~1,000のDSBが発生する可能性があると予測した。4OHT処理後、AsiSIが核に移動した場合、4OHTを処理したU2OS細胞と比較してほぼ全てのER-AsiSI U2OS細胞が死滅した(図1B)。このようなデータは、酵素によって生成された多数のDSBが増殖中の癌細胞を殺すことができることを示す。
【0433】
CRISPR-Cas9によって誘導されたDNA DSBが癌細胞も殺すことができるかどうかをテストした。
【0434】
ヒトゲノムの多様なlociをターゲットとするsgRNAを構築するためにsgRNAを設計し、ヒトGRCh38参照ゲノムに対してCas-OFFinderを使用してターゲットの数を検証した。各sgRNA配列は、pMJ179プラスミド(Cat# 85996;Addgene,Watertown,MA,USA)で変形したマウスU6プロモーターを含むsgRNA発現ベクターにクローニングされた。形質感染1日前に1.5×10個のHEK293T細胞を96ウェルプレートの各ウェルに播種した。次は、200ngのSpCas9(Cat# 43945;Addgene)及びsgRNA発現プラスミドをリポフェクタミン3000(Cat# L3000015;Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)を使用して細胞に形質感染した。形質感染3日後、製造社の指示に従ってCellTiter-Glo発光細胞生存率アッセイ(Luminescent Cell Viability Assay)(Cat# G7570;Promega)を使用して細胞生存率を測定した。マイクロプレートリーダー(microplate reader)とGen5ソフトウェア(BioTek,Winooski,VT,USA)を使用して発光度を測定した。
【0435】
ヒトゲノムに反復的に存在する公知のCRISPR-Cas9ターゲット配列を選択した(図1C及び図2)。sgRNAの数が10以上に増加し、異数体HEK293T細胞のゲノムに20 DSBが生成されると、細胞が死滅しはじめることが観察された。癌細胞株においてCINDELA細胞死滅をテストするための出発点として、30個のgRNAを選択した。
【0436】
【表1】
【0437】
CRISPR-Cas9によって生成された特定のInDelsのDSBが選択的に癌細胞を死滅するかどうかをテストするために、骨肉腫と結腸癌からそれぞれ由来したU2OSとHCT116細胞の全ゲノム塩基配列(whole-genome nucleotide sequences)を決定した。比較のために、テロメラーゼ発現によって不滅化された非腫瘍細胞株であるRPE1の全ゲノムもシーケンシングした。各細胞株で識別されたInDelsに対して、InDelsをターゲットとするsgRNAを設計した。
【0438】
製造社の指示に従って、150bpペアの末端リード(150-bp paired-end read)を含む30×範囲をターゲットとするIlluminaNovaSeq
6000を使用して細胞株及びゼノグラフト組織の全ゲノムシーケンシング(whole genome sequencing)を行った(Illumina,San Diego,CA,USA)。アダプター配列をtrimmomatic(version 0.39)(31)で加工した後、BMA-MEM(version 0.7.17-r1188)を使用し、ヒトゲノム(GRCh38)に対するリードをマッピングした。ヒト(GRch38)ゲノムとマウス(mm10)ゲノムに対するデータベースにリードをマッピングした。その後、フィルタリングされたリードは、ゼノグラフトサンプルに対して追加的に分析するためにヒトゲノムに優先的にマッピングされた。samtools(version 1.10)を用いて重複した一致を除去した後、生殖細胞系列の変形を確認するためのデフォルトセッティングでstrelka2(version 2.9.10)を使用した。
【0439】
癌細胞株特異的InDelsに対するsgRNAを設計するために、まず、3bps~8bpsのInDelsをフィルタリングし、SpCas9及びSaCas9のうち一つに対して該当のInDelsを使用してsgRNAを設計した。gnomADデータベース(version 2.1.1)及び以前にテストした他の癌細胞のうち一つにおいて不均一性(heterogeneity)、対立遺伝子の深さ(allele depth)及びInDel可用性(InDel availability)を考慮して、sgRNAの優先順位を選定した。exonerate(version 2.4.0)を使用し、2個の不一致を許容値としてオフターゲットの可能性を確認し、全ての最終候補対象を視覚的に検査した。分析で使用される全てのコードは、Github(https://github.com/taejoon/CRISPR-toolbox)で利用可能である。
【0440】
【表2】
【0441】
癌特異的InDelsをターゲットとするガイドRNAとトレーサー(tracer) RNA(Integrated DNA Technologies,Inc,Coralville,IA,USA)を使用した。RNP(ribonucleoprotein)複合体は、20μgのガイドRNAとトレーサーRNAを同一のモル濃度で混合した混合物とSpCas9 15μgとを組み合わせて形成された。製造社のプロトコルによって、LipofectamineTMCRISPRMAXTMCas9 Transfection Reagent(Cat# CMAX00001、Thermo Fisher Scientific)を使用してRNPを伝達した。
【0442】
このようなsgRNAが細胞特異的DNA DSBを誘導できるかどうかを調査するために、30個のCRISPR-SpCas9RNP複合体をU2OS細胞に形質感染した。U2OS特異的InDelをターゲットとするCRISPR-RNP複合体を含むU2OS細胞の細胞死滅は、形質感染72時間後に観察された。HCT116特異的なInDelをターゲットとするCRISPR-RNP複合体が形質感染されたU2OS細胞では、細胞死滅が観察されなかった(図1D)。RNP伝達のために、gRNAの数を30から18、12又は6に減少させると、用量依存的に細胞死滅が観察された(図2)。
【0443】
【表3】
【0444】
【表4】
【0445】
実施例2.AAV-SaCas9を含み、CINDELA処理時に癌特異的細胞死滅が誘導される。
【0446】
CMVプロモーターの下でCRISPR/SaCas9発現のためのAAVプラスミドAddgene(#61591)を製作し、HEK293T細胞に形質感染した後、3日目にAAVウイルス粒子を回収して濃縮した(Addgene,AAV Production in HEK293T Cells)。AAV血清型2をウイルスパッケージングに使用し、2.81×1010ウイルス粒子を使用してCINDELAに対する標的細胞に形質導入した。
【0447】
AAV伝達に使用されたSaCas9に3xHAをタグ付けし、単クローン抗-HA抗体(Cat# H3663;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)で検出した。DNA損傷がある細胞は、γH2AXを感知する抗-リン酸化-ヒストンH2A.X抗体(Cat# 05-636;Sigma-Aldrich)を使用して分析した。アポトーシス細胞死滅は、Annexin V Alexa FluorTM 488コンジュゲート(Cat#.A13201;Thermo Fisher Scientific)及びFlow-Joソフトウェア(version 10)を備えたBD FACSVerse機器を使用して製造社の指針に従って定量化した。
【0448】
生体内の腫瘍環境にRNP複合体を伝達することは容易でないので、CINDELA治療にAAV(Adeno-Associated Virus)基盤のSaCas9を使用
できるかどうかをテストした。プラスミド形質感染を通じて、SaCas9タンパク質を発現し、一つはU2OS InDelsをターゲットとし、他の一つはHCT116 InDelsをターゲットとする二つの互いに異なるCINDELA sgRNAセットを含むプラスミドを形質感染させ、U2OSCINDELAの効果を観察した。RNP複合体伝達と同様に、U2OS細胞は、U2OS InDelをターゲットとするsgRNAとSaCas9が共同発現した場合にのみ死滅した(図3A)。CRISPR-RNP形質感染後のアネキシン(annexin)V信号の増加は、アポトーシス(apoptosis)によって細胞が死滅したことを示した(図3B)。in vivo CINDELAテストのために、癌特異的なInDelsをターゲットとするsgRNAとSaCas9を共同発現するAAVを製作した。互いに異なるsgRNAとSaCas9を共同発現する30個のAAVをU2OS細胞及びRPE1細胞に形質導入した。AAVの形質導入は、SaCas9発現に対するウェスタンブロットによって確認された。
【0449】
【表5】
【0450】
U2OS特異的InDelをターゲットとするAAVによる選択的U2O2細胞死滅は、形質導入してから2日後に開始された(図3C図4A及び図4B)。対照的に、RPE1細胞には影響を与えなかった。強力なγH2AX信号は、CRISPR-Cas9の標的となったU2OS細胞でのみ観察され、標的細胞株で選択的なDSBが確認された(図4C)。形質感染を通じた接近と同様に、CINDELAで形質導入されたAAVも時間依存的に細胞死滅を起こした(図4D)。
【0451】
【表6】
【0452】
各細胞に必要なCINDELAターゲットの最小数を確認するために、AAVで伝達されるsgRNAの数を体系的に減少させた。CINDELAによって誘導されたU2OS細胞死滅には、SaCas9タンパク質発現と共に5個以上のsgRNAが必要であった(図4D)。U2OS細胞は、一部の染色体で二倍体(diploid)又は三倍体(triploid)であるので、U2OSゲノムは、各ガイドRNAがターゲットとする2個以上のDNA配列を運搬し、細胞死滅に10個乃至15個のDSBが必要である。一貫的にターゲットとするsgRNAの数の増加により、CINDELA誘導細胞死滅率が増加することが観察された(図4E)。1個又は3個のAAVがU2OS細胞に形質導入される場合、明白な細胞死滅が発生しなかった。
【0453】
実施例3.CINDELA処理時にin vivo異種移植モデル腫瘍成長が抑制される。
【0454】
NOD-SCIDマウスは、標準条件で飼育された。全ての動物実験は、UNISTの動物管理使用委員会(IACUC-19-05)で承認されたプロトコルを使用して実施された。6週齢のマウスに対して2×10の癌細胞を一つの側面に皮下注射した。腫瘍の大きさが約1cmに到逹したとき、AAV粒子を3日間隔で4回注射した。最初にAAV注射してから2週後、腫瘍を採取して分析した。Promega DeadEndTM Colorimetric TUNEL System(Cat# G7360,Promega)を使用してTUNEL分析を行った。PDX実験は、ヒト肺扁平上皮癌のPDXモデル:前臨床および共臨床応用における因子の考察(PDX models of human lung squamous cell carcinoma:consideration of factors in preclinical and co-clinical applications).J.Transl.Med 18,307(2020)通じて知られている方法を使用してDNAlink,Inc.で実施された。
【0455】
CINDELAがin vivoで腫瘍成長を抑制できるかどうかをテストした。U2OS細胞異種移植モデルNOD-SCIDマウスで製作し、腫瘍の大きさが約1cmに到逹するまでモニターした。次に、U2OS特異的CINDELA sgRNA及びSaCas9を発現するAAV又はSaCas9のみを発現するAAVを3日間隔で2週間マウスに5回注射した。図5Aに示したように、U2OS特異的CINDELA sgRNA及びSaCas9発現AAVの注射によって腫瘍増殖が選択的に抑制されることを観察した。SaCas9のHAタグは、SaCas9のみを注射したマウス及びsgRNAを含むSaCas9腫瘍切片で検出された(図6A)。AAV治療期間の間、マウスは、有意な症状を示しておらず、AAVによって伝達されたCINDELAが正常な組織及び細胞に影響を及ぼさなかったことを示唆した(図6B)。CINDELA処理によって誘導された特異的細胞死滅経路を確認するために残った腫瘍を採取し、γH2AX又はTUNEL染色をした。予想どおり、CINDELAがターゲットとした腫瘍は、対照群の腫瘍と比較したとき、アポトーシス細胞死滅(図5C)以外に、γH2AX及びTUNEL信号の相当な誘導を示した(図5A及び図5B)。
【0456】
実施例4.CINDELA処理時に患者由来の1次腫瘍及びPDXを選別的に死滅させる。
【0457】
CINDELA治療が実際に腫瘍サンプルに適用できるかどうかを証明するために、韓国の膠芽腫患者由来の腫瘍細胞株GBL-67を使用した。全ゲノム配列データを基盤にして、GBL-67 InDelsを特異的にターゲットとする26個のSaCas9 CINDELAガイドRNAを設計した。同一の個体の正常細胞を入手できなかったので、ターゲットとするInDelsのないNSC-10神経幹細胞を対照群として使用した。sgRNA及びSaCas9を発現するそれぞれのAAVが生成されると同時に、原発性膠芽腫GBL-67及びNSC-10細胞に形質導入された。CINDELA処理によって約50個の細胞特異的DSBが誘導され、膠芽腫細胞を十分に死滅できることを確認した(図7A)。対照的に、NSC-10細胞は、同一に形質導入された後、成長が弱化されなかった。
【0458】
【表7】
【0459】
最後に、癌治療に対する予測前臨床モデルである患者由来の異種移植モデル(PDX:patient-derived xenografts)でCINDELAの有効性をテストした。確立された肺癌PDXで組織をシーケンシングした後、約30個のCINDELAターゲットを特定した(SPX4-073に対して29個のgRNA、SPX4-318に対して22個のgRNA)。ターゲットsgRNAと共にSaCas9を発現するAAVを3日間隔で5回注射した後、異種移植モデルの腫瘍の大きさを2週間モニターした。PDX腫瘍成長は、sgRNA及びSaCas9を発現するAAVによって阻害された。対照的に、SaCas9のみが発現されたAAVは腫瘍成長を抑制しなかった(図7B図8A及び図8B)。マウスAAV治療期間の間、有意な症状を示さなかった(図8C)。
【0460】
【表8】
【0461】
【表9】
【0462】
実施例5.AAV形質導入を通じて染色体5番のターゲットの選別的細胞死滅を誘導する。
【0463】
5-1.30 CINDELA with saCas9
【0464】
骨肉腫細胞を選択的にターゲットとし得る30個の配列をWGS(whole genome sequencing)を通じて確認した後、AAV-saCAS9ベクター(pX601-AAV-CMV::NLS-SaCas9-NLS-3xHA)にそれぞれの配列を入れた後、HEC293T細胞を用いて5個の配列を一つのグループとして合計6個のAAV粒子グループ(particle group)を製作した。製作されたAAV粒子(particle)をqPCRを用いて定量した後、正常細胞であるRPE1細胞及び骨肉腫細胞であるU2OS細胞に形質導入(transduction)した。96時間後、骨肉腫細胞でのみ選択的に細胞死滅が行われることを確認した。
【0465】
【0466】
U2OS細胞に30個のDNA配列をターゲットとし、骨肉腫細胞を選択的に死滅できることを確認した(図9)。
【0467】
5-2.10 CINDELA with saCas9
【0468】
骨肉腫細胞をターゲットとし得る30個の配列のうち染色体(chromosome)5番をターゲットとし得る10個の配列を用いて、1-1.と同一の方法で(5個の配列を一つのグループとし、2個のAAV粒子グループを製作する)細胞死滅を誘導できるかどうかを確認した。
【0469】
【0470】
U2OS細胞に10個のDNA配列をターゲットとし、骨肉腫細胞を選択的に死滅できることを確認した。30個の配列をターゲットとしたときと同様に、細胞死滅を誘導できることを確認した(図10)。
【0471】
5-3.5 CINDELA with saCas9
【0472】
染色体(chromosome)5番をターゲットとし得る10個の配列のうち1個のグループ(5個のDNA配列をターゲット:グループ5A)のみで細胞死滅を誘導できるかどうかを確認した。
【0473】
U2OS細胞に5個のDNA配列をターゲットとし、骨肉腫細胞を選択的に死滅できることを確認した。30個或いは10個の配列をターゲットとした場合と比較したとき、生きている細胞の比率が少し増加するが、ほとんどの細胞が死滅することを確認した(図11)。
【0474】
5-4.5 CINDELA with saCas9
【0475】
1-3と異なる染色体(chromosome)5番をターゲットとし得る1個のグループ(グループ5B)で細胞死滅が誘導されるかどうかを確認した。
【0476】
U2OS細胞に実施例1-3と異なる配列である5個のDNA配列をターゲットとし、骨肉腫細胞を選択的に死滅できることを確認した。30個或いは10個の配列をターゲットとした場合と比較したとき、生きている細胞の比率が少し増加するが、ほとんどの細胞が死滅することを確認した(図12)。
【0477】
5-5.3 CINDELA with saCas9
【0478】
染色体(chromosome)5番をターゲットとし得る10個の配列のうち3個の配列を任意に選択し、1個のAAV粒子グループ(particle group)を製作した後、細胞死滅が誘導されるかどうかを確認した。
【0479】
【0480】
U2OS細胞に3個のDNA配列をターゲットとし、骨肉腫細胞の選択的な死滅を試みたが、細胞死滅が行われないことを確認した(図13)。
【0481】
実施例6.染色体3番のターゲットの選別的な細胞死滅を誘導する。
【0482】
6-1.染色体(chromosome)3番のためのHCT116 gRNA(5)ターゲッティング
【0483】
saCas9タンパク質にE.coliエキソヌクレアーゼ(exonuclease)を結合したExo-saCas9組換えタンパク質を生成した。形質感染12時間前に、HCT116細胞を(6×10/6ウェルプレート)準備する。染色体(chromosome)3をターゲットとする5個のgRNAとsaCas9或いはExo-Cas9をリポフェクタミン3000を用いて形質感染した後、48時間が経過したとき、顕微鏡を用いて細胞死滅を観察する。
【0484】
染色体(chromosome)3をターゲットとする5個のgRNAを形質感染して実験した。saCas9を単独で使用した場合、5個のgRNAで細胞死滅が起こらなかったが、Exo-saCas9を使用すると、5個のgRNAでも十分に細胞死滅を起こすことを確認した(図15)。
【0485】
6-2.染色体(chromosome)1番のためのU2OS gRNA(5)ターゲッティング
【0486】
形質感染12時間前に、U2OS細胞を(3×10/6ウェルプレート)準備する。U2OS染色体(chromosome)1をターゲットとする5個のgRNAとsaCas9或いはExo-Cas9をリポフェクタミン3000を用いて形質感染した後、48時間が経過したとき、顕微鏡を用いて細胞死滅を観察する。
【0487】
染色体(chromosome)1をターゲットとする5個のgRNAを形質感染して実験した。saCas9を単独で使用した場合、5個のgRNAで細胞死滅が起こらなかったが、Exo-saCas9を使用すると、5個のgRNAでも十分に細胞死滅を起こすことを確認した(図16)。
【0488】
6-3.復旧阻害有無の確認
【0489】
2-1と2-2と同様に形質感染された各細胞を、48時間後にPBSを用いて収穫する。5000rpmで5分間遠心分離し、上澄み液(supernatant)を捨てた後、ペレット(pellet)にバッファーA(細胞膜、核膜除去用バッファー)200μlを処理する。5000rpmで5分間遠心分離し、上澄み液を除去する。ペレットを50μlのRIPAバッファーに再懸濁(resuspension)させた後、1分間50ampで超音波処理(sonication)を行う。13,200rpmで25分間遠心分離した後、上澄み液を定量し、SDS-PAGEゲルで分離させ、g-H2AXアンチボディーを使用してウェスタンブロッティング(western blotting)を行う。
【0490】
図14によるExo-Cas9を使用する場合、DNA損傷マーカー(damage marker)であるg-H2AX発現が高いことを確認した(図17)。Exo-Cas9を使用する場合、細胞死滅をさらにうまく誘導することは、saCas9によるDNA二重鎖切断(double strand break)以後に復旧を阻害するためであると判断される。
【0491】
6-4.DR-GFPアッセイ
【0492】
DR-GFPが発現されるU2OS細胞をsaCas9或いはexo-saCas9とDR-GFP特異的gRNAと共に、リポフェクタミン3000で形質感染させ、72時間後に収穫する。収穫した細胞でのGFP発現量をFACS(Fluorescence-activated cell sorting)を用いて測定する。
【0493】
HR(Homologous recombination)される程度をDR-GFPアッセイを通じて確認した結果、Exo-Cas9を用いたときにHRが著しく低下することを確認した。Exo-Cas9がHRを阻害できることを証明した(図18)。
【0494】
以上では、本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当業界で通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は好ましい実施様態に過ぎなく、これによって本発明の範囲が制限されないことは明白であろう。よって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されると言えるだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
2024150579000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)核酸切断酵素又はこれをコードするポリヌクレオチド;及び
(ii)ゲノム配列変異(genomic sequence variation)を有する細胞において、前記ゲノム配列変異を有する4個以上の細胞特異的変異領域をそれぞれ認識する切断因子又はこれをコードするポリヌクレオチド;を含む、ゲノム配列変異を有する細胞の死滅誘導用組成物。
【外国語明細書】