(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150607
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】コイル、リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20241016BHJP
H01F 27/40 20060101ALI20241016BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20241016BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01F37/00 K
H01F27/40 120
H01F37/00 M
H01F27/28 147
H01F27/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115768
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2021097094の分割
【原出願日】2021-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 和宏
(57)【要約】
【課題】小型化できながら、コイルの温度を精度よく測定できるリアクトルを提供する。
【解決手段】コイルと磁性コアと温度センサとを備え、コイルは、第一コイル部と第二コイル部とを有し、第一コイル部は、平角線がエッジワイズ巻きされた複数の第一ターンを備え、複数の第一ターンの各々は、第一ターンの内周側を構成する第一内周部と、第一ターンの外周側を構成する第一外周部とを有し、第一外周部は、第一内周部に対して第一の方向に向かって傾くように曲げられており、第二コイル部は、平角線がエッジワイズ巻きされた複数の第二ターンを備え、複数の第二ターンの各々は、第二ターンの内周側を構成する第二内周部と、第二ターンの外周側を構成する第二外周部とを有し、第二外周部は、第二内周部に対して第二の方向に向かって傾くように曲げられており、温度センサは、第一コイル部と第二コイル部との間に形成された空間に配置されている、リアクトル。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
前記コイルが配置された磁性コアと、
前記コイルの温度を測定する温度センサとを備え、
前記コイルは、第一コイル部と、前記第一コイル部と前記コイルの軸方向に連続してつながれた第二コイル部とを有し、
前記第一コイル部は、平角線が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第一ターンを備え、
前記複数の第一ターンの各々は、
前記平角線における前記第一ターンの内周側を構成する第一内周部と、
前記平角線における前記第一ターンの外周側を構成する第一外周部とを有し、
前記第一外周部は、前記第一内周部に対して前記コイルの軸方向の第一の方向に向かって傾くように曲げられており、
前記第二コイル部は、前記平角線が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第二ターンを備え、
前記複数の第二ターンの各々は、
前記平角線における前記第二ターンの内周側を構成する第二内周部と、
前記平角線における前記第二ターンの外周側を構成する第二外周部とを有し、
前記第二外周部は、前記第二内周部に対して前記コイルの軸方向の第二の方向に向かって傾くように曲げられており、
前記温度センサは、前記第一コイル部と前記第二コイル部との間に形成された空間に配置されている、
リアクトル。
【請求項2】
前記温度センサは、互いに向かい合う前記第一ターン及び前記第二ターンのいずれか一方に固定されている請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記温度センサは、前記第一内周部及び前記第二内周部のうちの一方に位置する請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記磁性コアは、
前記コイルの内側に配置された内側コア部と、
前記内側コア部の長手方向の途中に設けられたギャップ部とを有し、
前記ギャップ部は、前記空間の内側に配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記磁性コアは、前記コイルの内側に配置された内側コア部を有し、
前記内側コア部は、樹脂中に軟磁性粉末が分散した複合材料の成形体からなる樹脂コア片を含み、
前記樹脂コア片は、前記空間の内側に配置されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記第一ターンは、前記平角線が屈曲された角部を有し、
前記第一ターンの前記角部における前記第一内周部と前記第一外周部との前記コイルの軸方向の第一変位量が0.1mm以上1.0mm以下であり、
前記第二ターンは、前記平角線が屈曲された角部を有し、
前記第二ターンの前記角部における前記第二内周部と前記第二外周部との前記コイルの軸方向の第二変位量が0.1mm以上1.0mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項8】
請求項7に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2は、温度センサを備えたリアクトルを開示する。特許文献1のリアクトルは、コイルの外周面に温度センサが取り付けられている。特許文献2のリアクトルは、コアに配置されたギャップ板に温度センサが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-26504号公報
【特許文献2】特開2019-36696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度センサを備えたリアクトルにおいて、リアクトルを小型化できる構造が望まれる。また、コイルの温度をより正確に測定することが望まれる。
【0005】
特許文献1のリアクトルでは、温度センサがコイルの外周面に配置されているため、温度センサを含めたリアクトルが大型化する。特許文献2のリアクトルのように温度センサをギャップ板の内部に設ける場合、ギャップ板の厚さは温度センサの厚さに依存する。ギャップ板の厚さを温度センサの厚さ以上とする必要があるため、ギャップ板が厚くなる。ギャップ板が厚くなると、コアの磁気抵抗が大きくなると共に、ギャップ板が設けられた部分からの漏れ磁束が増える。特許文献2のリアクトルでは、所望の磁気特性が得られないおそれがある。
【0006】
本開示は、小型化できながら、コイルの温度を精度よく測定できるリアクトルを提供することを目的の一つとする。本開示は、上記リアクトルを備えるコンバータ、及び上記コンバータを備える電力変換装置を提供することを他の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のリアクトルは、コイルと、前記コイルが配置された磁性コアと、前記コイルの温度を測定する温度センサとを備え、前記コイルは、第一コイル部と、前記第一コイル部と前記コイルの軸方向に連続してつながれた第二コイル部とを有し、前記第一コイル部は、平角線が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第一ターンを備え、前記複数の第一ターンの各々は、前記平角線における前記第一ターンの内周側を構成する第一内周部と、前記平角線における前記第一ターンの外周側を構成する第一外周部とを有し、前記第一外周部は、前記第一内周部に対して前記コイルの軸方向の第一の方向に向かって傾くように曲げられており、前記第二コイル部は、前記平角線が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第二ターンを備え、前記複数の第二ターンの各々は、前記平角線における前記第二ターンの内周側を構成する第二内周部と、前記平角線における前記第二ターンの外周側を構成する第二外周部とを有し、前記第二外周部は、前記第二内周部に対して前記コイルの軸方向の第二の方向に向かって傾くように曲げられており、前記温度センサは、前記第一コイル部と前記第二コイル部との間に形成された空間に配置されている。
【0008】
本開示のコンバータは、本開示のリアクトルを備える。
【0009】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバータを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示のリアクトルは、小型化できながら、コイルの温度を精度よく測定できる。
【0011】
本開示のコンバータ、及び本開示の電力変換装置は、小型で、かつ、コイルの温度を精度よく測定できるリアクトルを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るリアクトルの一例を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るリアクトルの一例を示す概略分解平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るリアクトルの要部を示す概略平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るリアクトルに用いられるコイルの一例を示す概略斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るリアクトルに用いられるコイルを軸方向から見た概略端面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係るリアクトルに用いられるコイルの製造に用いる巻線機における曲げ加工部の構成を説明する概略図である。
【
図9】
図9は、曲げ加工部の動作を説明する概略図である。
【
図10】
図10は、曲げ加工部の動作を説明する別の概略図である。
【
図11】
図11は、コイルの製造方法を説明するための概略図である。
【
図12】
図12は、コイルの製造方法を説明するための別の概略図である。
【
図13】
図13は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
【
図14】
図14は、コンバータを備える電力変換装置の一例の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施形態に係るリアクトルは、コイルと、前記コイルが配置された磁性コアと、前記コイルの温度を測定する温度センサとを備え、前記コイルは、第一コイル部と、前記第一コイル部と前記コイルの軸方向に連続してつながれた第二コイル部とを有し、前記第一コイル部は、平角線が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第一ターンを備え、前記複数の第一ターンの各々は、前記平角線における前記第一ターンの内周側を構成する第一内周部と、前記平角線における前記第一ターンの外周側を構成する第一外周部とを有し、前記第一外周部は、前記第一内周部に対して前記コイルの軸方向の第一の方向に向かって傾くように曲げられており、前記第二コイル部は、前記平角線が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第二ターンを備え、前記複数の第二ターンの各々は、前記平角線における前記第二ターンの内周側を構成する第二内周部と、前記平角線における前記第二ターンの外周側を構成する第二外周部とを有し、前記第二外周部は、前記第二内周部に対して前記コイルの軸方向の第二の方向に向かって傾くように曲げられており、前記温度センサは、前記第一コイル部と前記第二コイル部との間に形成された空間に配置されている。
【0015】
本開示のリアクトルは、温度センサが第一コイル部と第二コイル部との間に形成された空間に配置されていることから、小型化できる。
【0016】
本開示のリアクトルは、コイルの温度を精度よく測定できる。温度センサが上記空間に配置されていることで、コイルの温度又はコイルに極めて近い箇所の温度を測定できる。
【0017】
本開示のリアクトルは、第一コイル部と第二コイル部との間に、温度センサが配置される空間を確保する。第一ターン及び第二ターンの各々の外周部が互いに逆方向に傾くように曲げられることによって、第一コイル部と第二コイル部との間に温度センサの配置が可能な程度の隙間が形成される。
【0018】
(2)本開示のリアクトルの一形態として、温度センサは、互いに向かい合う第一ターン及び第二ターンのいずれか一方に固定されていてもよい。
【0019】
上記形態は、温度センサがコイルに固定されていることで、コイルの温度をより正確に測定できる。
【0020】
(3)上記(2)に記載のリアクトルの一形態として、前記温度センサは、前記第一内周部及び前記第二内周部のうちの一方に位置していてもよい。
【0021】
上記形態は、温度上昇が大きいコイルの内周側に温度センサが設けられていることで、コイルの温度をより正確に測定できる。
【0022】
(4)本開示のリアクトルの一形態として、前記磁性コアは、前記コイルの内側に配置された内側コア部と、前記内側コア部の長手方向の途中に設けられたギャップ部とを有してもよい。前記ギャップ部は、前記空間の内側に配置されていてもよい。
【0023】
上記の形態は、コイルの温度をより正確に測定できる。磁性コアがギャップ部を有する場合、ギャップ部から漏れ磁束が発生する。そのため、ギャップ部の近傍では、漏れ磁束によってコイルの温度が上昇し易い。上記の形態では、ギャップ部近傍でのコイルの温度を測定できる。
【0024】
(5)本開示のリアクトルの一形態として、前記磁性コアは、前記コイルの内側に配置された内側コア部を有し、前記内側コア部は、樹脂中に軟磁性粉末が分散した複合材料の成形体からなる樹脂コア片を含んでもよい。前記樹脂コア片は、前記空間の内側に配置されていてもよい。
【0025】
上記の形態は、コイルの温度をより正確に測定できる。樹脂コア片は熱伝導性が低く、放熱性に劣る。内側コア部が樹脂コア片を含む場合、樹脂コア片が高温になり易い、樹脂コア片が位置する部分では、コイルの温度が上昇し易い。上記の形態では、樹脂コア片が位置する部分でのコイルの温度を測定できる。
【0026】
(6)本開示のリアクトルの一形態として、前記第一ターンは、前記平角線が屈曲された角部を有し、前記第一ターンの前記角部における前記第一内周部と前記第一外周部との前記コイルの軸方向の第一変位量が0.1mm以上1.0mm以下であってもよい。前記第二ターンは、前記平角線が屈曲された角部を有し、前記第二ターンの前記角部における前記第二内周部と前記第二外周部との前記コイルの軸方向の第二変位量が0.1mm以上1.0mm以下であってもよい。
【0027】
第一ターンにおける第一変位量及び第二ターンにおける第二変位量がそれぞれ上記範囲であることで、温度センサが配置される上記空間を確保し易い。
【0028】
(7)本開示の実施形態に係るコンバータは、上記(1)から(6)のいずれか1つに記載のリアクトルを備える。
【0029】
本開示のコンバータは、小型で、かつ、コイルの温度を精度よく測定できる上記リアクトルを備える。
【0030】
(8)本開示の実施形態に係る電力変換装置は、上記(7)に記載のコンバータを備える。
【0031】
本開示の電力変換装置は、上記コンバータを備えることから、小型で、かつ、コイルの温度を精度よく測定できる上記リアクトルを備える。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のリアクトル、コンバータ、及び電力変換装置の具体例を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
<リアクトルの概要>
図1から
図4を主に参照して、実施形態に係るリアクトル100の概要を説明する。リアクトル100は、
図1、
図2に示すように、コイル10と磁性コア30とを備える。磁性コア30は、全体としてθ状に構成される。更に、リアクトル100は、
図3、
図4に示すように、温度センサ50を備える。コイル10は、第一コイル部110と第二コイル部120とを有する。リアクトル100の特徴の一つは、温度センサ50が第一コイル部110と第二コイル部120との間に形成された空間15に配置されている点にある。以下、リアクトル100の構成を詳細に説明する。
【0034】
図3、
図4では、リアクトル100を構成する部材を簡略化して示している。
図3では、磁性コア30のうち、コイル10の内側に配置される内側コア部30iのみを示している。
図3では、便宜上、ギャップ部30gにハッチングを付している。本実施形態では、内側コア部30iは、
図1、
図2に示すミドルコア部300である。本実施形態では、温度センサ50が配置される側をリアクトルの上側とする。
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面のうち、上半分のみを示している。
図3のIV-IV線は、コイル10の軸方向に沿う線である。
【0035】
(コイル)
まず、
図5、
図6を主に参照して、コイル10の概要を説明する。コイル10は、平角線1で構成されたエッジワイズコイルである。コイル10は、
図5に示すように、平角線1が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数のターン2によって形成されている。コイル10の両端部には、平角線1が引き出された端末部131,132が設けられている。端末部131は、コイル10の第一端部121から引き出されている。端末部132は、コイル10の第二端部122から引き出されている。第一端部121及び第二端部122は、コイル10の両側に配置される各ターンによって構成される。端末部131,132は、平角線1が螺旋状に巻かれたターン群の輪郭から外側に突出する部分である。
図5では、端末部132をコイル10の軸方向にフラットワイズ曲げする前であって、
図1に示すコイル10の形状とする前の状態を示している。
図6は、
図5に示すコイル10を第一端部121側から軸方向に見た図である。
図6では、コイル10の端末部132の図示を省略している。
【0036】
コイル10の形状は、円筒状でもよいし、角筒状でもよい。円筒状とは、コイル10を軸方向から見た端面の形状が、円形状であるものをいう。円形状には、真円形状のみならず、楕円形状も含む。角筒状とは、上記端面の形状が、多角形状であるものをいう。多角形状としては、例えば、三角形状、四角形状、六角形状、八角形状などがある。四角形状には、矩形状、台形状が含まれる。矩形状には、正方形状が含まれる。本実施形態では、コイル10は角筒状である。具体的には、コイル10は、上記端面の形状が矩形状である四角筒状のコイルである。
【0037】
(平角線)
平角線1は、断面が矩形の巻線である。上記断面とは、平角線1の長手方向に直交する断面である。上記矩形は、
図8に示す平角線1のように、一対の短辺と一対の長辺とを有する。平角線1の幅は、向かい合う短辺同士の距離であり、長辺の長さに相当する。平角線1の幅方向は、実質的に矩形の長辺に沿う方向である。平角線1の厚さは、向かい合う長辺同士の距離であり、短辺の長さに相当する。平角線1の厚さ方向は、実質的に矩形の短辺に沿う方向である。平角線1の幅及び厚さは適宜選択できる。平角線1の幅は、例えば3mm以上15mm以下、更に5mm以上12mm以下である。平角線1の厚さは、例えば0.5mm以上5mm以下、更に0.8mm以上3mm以下である。
【0038】
(ターン)
複数のターン2は、平角線1が螺旋状に巻回されることによって形成される。各ターン2の形状は、上述したコイル10の端面の形状と実質的に同じである。ターン2の形状とは、ターン2の軸方向から見た形状である。本実施形態では、
図6に示すように、ターン2の形状が矩形状である。ターン2は、平角線1が直線状に配置された4つの直線部20sと、平角線1が屈曲された4つの角部20cとを有する。
【0039】
ターン2の数は適宜選択できる。ターン2の数は、例えば10ターン以上60ターン以下、更に20ターン以上50ターン以下である。
【0040】
(第一コイル部・第二コイル部)
図7を参照して、コイル10の構成を詳しく説明する。
図7は、
図6のVII-VII断面における切断面のみを示している。
図7では、切断面より奥に見える構成は省略している。
図6のVII-VII線は、ターン2の対角線である。コイル10は、第一コイル部110と第二コイル部120とを有する。第一コイル部110は、平角線1が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第一ターン21を備える。第二コイル部120は、平角線1が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第二ターン22を備える。コイル10の特徴の一つは、第一ターン21及び第二ターン22を形成する平角線1が特定の形状を有している点にある。
【0041】
第一コイル部110と第二コイル部120とは、同軸上に配置され、コイル10の軸方向に連続してつながれている。つまり、第一コイル部110と第二コイル部120とは、電気的に直列に接続されると共に、機械的にコイル10の軸方向に並んで配置されている。第一コイル部110と第二コイル部120とは、連続した1本の平角線1で形成されている。第一コイル部110と第二コイル部120とは、一連の平角線1で継ぎ目なく構成されている。第一コイル部110の軸方向及び第二コイル部120の軸方向は、コイル10の軸方向と一致する。
【0042】
〈第一ターン〉
図7に示すように、第一コイル部110は、複数の第一ターン21によって形成されている。第一ターン21の数は適宜選択できる。複数の第一ターン21の各々は、第一内周部11iと第一外周部11eとを有する。第一内周部11iは、平角線1における第一ターン21の内周側を構成する。第一外周部11eは、平角線1における第一ターン21の外周側を構成する。第一外周部11eは、第一内周部11iに対してコイル10の軸方向の第一の方向に向かって傾くように曲げられている。具体的に説明すると、第一ターン21を形成する平角線1が平角線1の幅方向の途中で屈曲されている。第一内周部11iと第一外周部11eとは屈曲部11bを介してつながっている。第一内周部11iは、平角線1における屈曲部11bよりも第一ターン21の内周側に位置する部分である。第一外周部11eは、平角線1における屈曲部11bよりも第一ターン21の外周側に位置する部分である。本実施形態では、
図6に示す角部20c及び直線部20sのいずれにおいても、第一ターン21における平角線1が幅方向の途中で屈曲されている。角部20cに比べて直線部20sの方が平角線1の曲げが小さい傾向がある。その理由は、後述するコイルの製造方法で説明する。
【0043】
第一内周部11iは、コイル10の軸方向に沿った断面を見たとき、第一ターン21の内周側から外周側に向かって実質的に径方向に沿って延びている。つまり、第一内周部11iは、第一ターン21の径方向と実質的に平行に延びている。第一内周部11iが平角線1の巻きピッチによって径方向からずれている分については、径方向に沿っているとみなす。
【0044】
上記第一の方向は、コイル10の軸方向の一端から他端に向かう方向である。コイル10の両端部のうち、第一コイル部110が位置する側の端部を第一端部121とし、第二コイル部120が位置する側の端部を第二端部122とする。本実施形態では、
図7中、下側に位置するコイル10の端部が第一端部121であり、上側に位置するコイル10の端部が第二端部122である。第一の方向は、第一端部121から第二端部122に向かう方向である。
図7では、第一の方向は下から上に向かう方向である。つまり、第一外周部11eは、第一内周部11iに対して上方に向かって傾斜している。
【0045】
平角線1の幅方向における第一内周部11iの長さは、例えば、平角線1の幅の30%以上75%以下、更に40%以上70%以下である。平角線1の幅方向における第一外周部11eの長さは、例えば、平角線1の幅の25%以上70%以下、更に30%以上60%以下である。
【0046】
〈第一変位量〉
第一内周部11iと第一外周部11eとのコイル10の軸方向の第一変位量11dは、例えば0.1mm以上1.0mm以下、更に0.2mm以上0.6mm以下である。第一変位量11dは、第一ターン21における角部での変位量である。第一ターン21における直線部での変位量は、角部での変位量よりも小さくてよい。上記角部とは、
図6に示す角部20cである。上記直線部とは、
図6に示す直線部20sである。
【0047】
複数の第一ターン21において、全ての第一変位量11dが同じであってもよい。複数の第一ターン21のうち、一部の第一ターン21における第一変位量11dが、残りの第一ターン21の少なくとも一部における第一変位量11dと異なってもよい。例えば、複数の第一ターン21のうち、第二端部122側に位置する第一ターン21の第一変位量11dが、その他の第一ターン21の第一変位量11dよりも大きくてもよい。第二端部122側に位置する第一ターン21は、第二コイル部120の第二ターン22と向かい合う。
【0048】
第一変位量11dは、例えば、レーザ距離計を用いて、次のようにして測定することができる。コイル10を、コイル10の軸方向が垂直となるように水平な台に置く。第一端部121が上、第二端部122が下になるようにコイル10を配置する。コイル10の上方の基準位置から、第一内周部11iの上面と側面との交点までの距離を測定する。この距離を第一の距離とする。第一内周部11iの側面は、第一ターン21の内周面であり、平角線1の断面における矩形の一方の短辺に対応する面である。上記基準位置から第一外周部11eの上面と側面との交点までの距離を測定する。この距離を第二の距離とする。第一外周部11eの側面は、第一ターン21の外周面であり、平角線1の断面における矩形のもう一方の短辺に対応する面である。第一の距離と第二の距離との差を第一変位量11dとする。そして、第一ターン21の全ての角部20cにおける第一変位量11dを測定する。本実施形態であれば、
図6に示す4つの角部20cにおけるそれぞれの第一変位量11dを測定する。測定した全角部の第一変位量11dの平均値をその第一ターン21における第一変位量11dとする。
【0049】
〈第二ターン〉
図7に示すように、第二コイル部120は、複数の第二ターン22によって形成されている。第二ターン22の数は適宜選択できる。第二ターン22の数は、第一コイル部110を構成する第一ターン21の数と同じであってもよいし、異なってもよい。複数の第二ターン22の各々は、第二内周部12iと第二外周部12eとを有する。第二内周部12iは、平角線1における第二ターン22の内周側を構成する。第二外周部12eは、平角線1における第二ターン22の外周側を構成する。第二外周部12eは、第二内周部12iに対して第一コイル部110の軸方向の第二の方向に向かって傾くように曲げられている。具体的に説明すると、上述した第一ターン21と同様に、第二ターン22を形成する平角線1が平角線1の幅方向の途中で屈曲されている。第二内周部12iと第二外周部12eとは屈曲部12bを介してつながっている。第二内周部12iは、平角線1における屈曲部12bよりも第二ターン22の内周側に位置する部分である。第二外周部12eは、平角線1における屈曲部11bよりも第二ターン22の外周側に位置する部分である。本実施形態では、
図6に示す角部20c及び直線部20sのいずれにおいても、第二ターン22における平角線1が幅方向の途中で屈曲されている。角部20cに比べて直線部20sの方が平角線1の曲げが小さい傾向がある。
【0050】
第二内周部12iは、コイル10の軸方向に沿った断面を見たとき、第二ターン22の内周側から外周側に向かって実質的に径方向に沿って延びている。つまり、第二内周部12iは、第二ターン22の径方向と実質的に平行に延びている。第二内周部12iが平角線1の巻きピッチによって径方向からずれている分については、径方向に沿っているとみなす。
【0051】
上記第二の方向は、コイル10の軸方向の他端から一端に向かう方向である。第二の方向は、上述した第一の方向とは逆向きである。即ち、第二の方向は、第二端部122から第一端部121に向かう方向である。
図7では、第二の方向は上から下に向かう方向である。つまり、第二外周部12eは、第二内周部12iに対して下方に向かって傾斜している。
【0052】
平角線1の幅方向における第二内周部12iの長さは、例えば、平角線1の幅の30%以上75%以下、更に40%以上70%以下である。平角線1の幅方向における第二外周部12eの長さは、例えば、平角線1の幅の25%以上70%以下、更に30%以上60%以下である。
【0053】
〈第二変位量〉
第二内周部12iと第二外周部12eとのコイル10の軸方向の第二変位量12dは、例えば0.1mm以上1.0mm以下、更に0.2mm以上0.6mm以下である。第二変位量12dは、第二ターン22における角部での変位量である。第二ターン22における直線部での変位量は、角部での変位量よりも小さくてよい。上記角部とは、
図6に示す角部20cである。上記直線部とは、
図6に示す直線部20sである。
【0054】
複数の第二ターン22において、全ての第二変位量12dが同じであってもよい。複数の第二ターン22のうち、一部の第二ターン22における第二変位量12dが、残りの第二ターン22の少なくとも一部における第二変位量12dと異なってもよい。例えば、複数の第二ターン22のうち、第一端部121側に位置する第二ターン22の第二変位量12dが、その他の第二ターン22の第二変位量12dよりも大きくてもよい。第一端部121側に位置する第二ターン22は、第一コイル部110の第一ターン21と向かい合う。
【0055】
第二変位量12dは、上述した第一変位量11dと同じようにして測定すればよい。第二変位量12dの測定は、第一端部121が上に向くようにコイル10を水平な台に置いて行う。コイル10の上方の基準位置から、第二内周部12iの上面と側面との交点までの第一の距離と、第二外周部12eの上面と側面との交点までの第二の距離を測定する。第一の距離と第二の距離との差を第二変位量12dとする。そして、第二ターン22の全ての角部における第二変位量12dを測定し、その平均値をその第二ターン22における第二変位量12dとする。
【0056】
(空間)
図3、
図4に示すように、コイル10は、第一コイル部110と第二コイル部120との間に空間15が形成されている。空間15には、温度センサ50が配置される。
図7を参照して上述したように、第一コイル部110を構成する第一ターン21において、第一外周部11eが第一内周部11iに対して第一の方向に傾くように曲げられている。第二コイル部120を構成する第二ターン22において、第二外周部12eが第二内周部12iに対して第二の方向に傾くように曲げられている。第一ターン21と第二ターン22とで互いに逆方向に曲げられていることで、互いに向かい合う第一ターン21と第二ターン22とが離間した状態になる。これにより、第一コイル部110と第二コイル部120との間に空間15が形成される。本実施形態では、上述したように、第一ターン21及び第二ターン22の各角部20cにおいて、平角線1が幅方向の途中で屈曲されている。そのため、空間15は、第一ターン21及び第二ターン22の直線部20s同士の間に形成されている。
【0057】
空間15の間隔は、例えば0.2mm以上2.0mm以下である。空間15の間隔が0.2mm以上であることで、空間15を温度センサ50の収納スペースとして利用し易い。空間15の間隔が0.5mm以上であると、温度センサ50の収納スペースとしてより利用し易い。空間15の間隔が2.0mm以下であることで、コイル10の内側に配置された内側コア部30iが空間15から露出することを低減できる。空間15の間隔が1.0mm以下であると、内側コア部30iの露出部分をより低減できる。空間15の間隔は、更に0.4mm以上1.2mm以下、0.5mm以上1.0mm以下が好ましい。空間15の間隔とは、互いに向かい合う第一ターン21と第二ターン22との間の隙間の距離である。空間15の間隔は、コイル10の軸方向に沿った間隔であって、互いに向かい合う第一ターン21と第二ターン22との間の隙間の最大値とする。
【0058】
空間15の間隔は、上述した第一ターン21の第一変位量11d及び第二ターン22の第二変位量12dによって決まる。第一変位量11d及び第二変位量12dが大きいほど、空間15の間隔が大きくなる。第一変位量11d及び第二変位量12dが0.1mm以上であることで、温度センサ50が配置される空間15を確保し易い。特に、互いに向かい合う第一ターン21と第二ターン22において、第一変位量11dと第二変位量12dとの合計が、例えば0.4mm以上1.2mm以下、更に0.5mm以上1.0mm以下であることが好ましい。第一変位量11d及び第二変位量12dの各上限は、コイル10の製造上の観点から、1.0mmが好ましい。また、第一変位量11d及び第二変位量12dが1.0mm以下であると、平角線1が幅方向の途中で折れ曲がっていることが一見して分かり難い。つまり、従来と遜色ない見栄えのよいコイルを得易い。
【0059】
本実施形態では、内側コア部30iにギャップ部30gが設けられている。空間15は、ギャップ部30gの外側に位置している。そのため、温度センサ50は、ギャップ部30gの外側に設けられている。
【0060】
〈ターン間の隙間〉
更に、
図7に示すように、第一コイル部110において、第一ターン21を形成する平角線1が幅方向の途中で屈曲されていることで、第一ターン21間の隙間21gを小さくすることができる。第二コイル部120において、第二ターン22を形成する平角線1が幅方向の途中で屈曲されていることで、第二ターン22間の隙間22gを小さくすることができる。隙間21g及び隙間22gが小さくなる理由は明らかではないが、次のように考えられる。平角線1が幅方向の途中で屈曲されていることで、第一ターン21及び第二ターン22のそれぞれに平角線1を曲げた方向に引っ張られる力が加わり、第一ターン21間と第二ターン22間とのそれぞれが狭くなるものと推測される。上述した第一ターン21の第一変位量11d及び第二ターン22の第二変位量12dが0.1mm以上であると、隙間21g及び隙間22gを低減する効果が得られ易い。
【0061】
隙間21g及び隙間22gは、例えば0.076mm以下、更に0.06mm以下、0.05mm以下である。隙間21g及び隙間22gは小さいほど好ましいので、下限は設けない。即ち下限はゼロである。
【0062】
第一ターン21間の隙間21gは、全ての隙間21gの平均値として求めることができる。隙間21gは、[(L1-n1×t)/(n1-1)]として求められる。L1は、第一コイル部110の長さ(mm)である。n1は、第一ターン21のターン数である。tは、平角線1の厚さ(mm)である。
【0063】
第一コイル部110の長さL1は、次のように測定する。第一コイル部110の外周面の周方向の任意の位置にコイル10の軸方向と平行な直線を採る。この直線は、第一ターン21の外周面に接する仮想の直線である。直線上の第一ターン21のうち、両端に位置する第一ターン21間の直線距離を求める。この距離を長さL1とする。第一コイル部110の長さL1は、コイル10の軸方向が水平になるようにコイル10を水平な台に置いて測定するとよい。測定は、コイル10に対して荷重をかけていない状態で行う。第一ターン21のターン数n1は、上記直線と交差する第一ターン21の数とする。(n1-1)は、第一ターン21間の隙間21gの数を表している。
【0064】
第二ターン22間の隙間22gは、上述した第一ターン21間の隙間21gと同じようにして測定すればよい。隙間22gは、[(L2-n2×t)/(n2-1)]として求められる。L2は、第二コイル部120の長さ(mm)である。n2は、第二ターン22のターン数である。
【0065】
第二コイル部120の長さL2は、上述した第一コイル部110の長さL1と同じように、第二コイル部120の外周面にコイル10の軸方向と平行な仮想の直線を採り、この直線を用いて求めればよい。第二ターン22のターン数n2は、上記直線と交差する第二ターン22の数とする。(n2-1)は、第二ターン22間の隙間22gの数を表している。コイル10の全長Lは、第一コイル部110の長さL1と第二コイル部120の長さL2とを合わせた長さである。
【0066】
(温度センサ)
図3、
図4に示すように、温度センサ50は第一コイル部110と第二コイル部120との間に形成された空間15に配置される。温度センサ50は、コイル10の温度を測定する。温度センサ50には、例えば、サーミスタ、熱電対、測定抵抗体などが利用できる。温度センサ50の厚さは、空間15の間隔よりも小さい。
図4では、温度センサ50やギャップ部30gの位置関係を説明するため、便宜上、第一ターン21及び第二ターン22の断面形状を簡略化して示している。実際には、第一ターン21及び第二ターン22の各々の外周部は、
図7に示すように、互いの外周部が接近するように屈曲している。
【0067】
温度センサ50の配置箇所は、特に限定されない。本実施形態では、温度センサ50の配置箇所をコイル10の上面側としている。但し、温度センサ50は、リアクトル100の設置面とは反対側に設けることが好ましい。一般にリアクトル100は、冷媒が流れる冷却板の上に設置される。本実施形態では、リアクトル100の下面が冷却板に載せられる設置面である。その場合、コイル10の下面側は、冷却板側に放熱され易い。コイル10において、設置面となる下面から離れた上面側に温度センサ50を設けることで、コイル10のうち最も熱くなる箇所の温度を正確に測定できる。
【0068】
温度センサ50が空間15に配置されていることで、コイル10の温度を精度よく測定できる。コイル10の温度は、コイル10の外周面よりもコイル10の内周面側の方が上昇し易い。これは、磁性コア30が配置されるコイル10の内周側は熱が逃げ難いからである。また、磁性コア30で発生した熱がコイル10へ伝達される。温度センサ50が空間15に配置されている場合、最も熱くなり易い箇所、つまりコイル10の内周面側に近い部分の温度を測定できる。
【0069】
温度センサ50は、互いに向かい合う第一ターン21及び第二ターン22のいずれか一方に固定されていることが好ましい。本実施形態では、温度センサ50が固定材70によって第一ターン21に固定されている。温度センサ50が第一ターン21及び第二ターン22の一方に固定されていることで、コイル10の温度をより正確に測定できる。固定材70は、例えば、接着剤、粘着テープ、半田などが挙げられる。
【0070】
更に、温度センサ50は、
図4に示すように、コイル10の内周側に位置することが好ましい。具体的には、
図7に示す第一ターン21及び第二ターン22における第一内周部11i及び第二内周部12iのうちの一方に位置しているとよい。本実施形態では、温度センサ50が、第一ターン21の内周側、即ち第一内周部11iに位置している。上述したように、コイル10の内周側は温度上昇が大きい。コイル10の内周側に温度センサ50が位置することで、コイル10の温度をより正確に測定できる。
【0071】
本実施形態では、内側コア部30iに設けられたギャップ部30gの外側に空間15が位置している。そのため、温度センサ50は、ギャップ部30gの外側に設けられている。ギャップ部30gでは漏れ磁束が発生する。ギャップ部30gの近傍では漏れ磁束によってコイル10に渦電流損が発生するため、コイル10の温度が上昇し易い。温度センサ50がギャップ部30gの外側に設けられていることで、最も温度が高くなるギャップ部30g近傍でのコイル10の温度を測定できる。コイル10の温度をより正確に測定できる。
【0072】
温度センサ50は、例えば固定材70を介して、コイル10に取り付けることができる。
【0073】
(磁性コア)
図1、
図2を参照して、磁性コア30の構成を説明する。磁性コア30は、第一コア31と第二コア32との組物である。第一コア31と第二コア32については、後述する。磁性コア30は、ミドルコア部300と、第一エンドコア部310と、第二エンドコア部320と、第一サイドコア部330と、第二サイドコア部340とを有する。
【0074】
(ミドルコア部)
ミドルコア部300は、磁性コア30のうち、コイル10の内側に配置される部分である。つまり、ミドルコア部300は内側コア部30iに相当する。本実施形態では、ミドルコア部300は、ミドルコア部300の長手方向に二分割されており、第一ミドルコア部301と第二ミドルコア部302とを有する。ミドルコア部300の長手方向の途中に、ギャップ部30gが設けられている。ギャップ部30gは、第一ミドルコア部301と第二ミドルコア部302との間に配置されている。ギャップ部30gは、エアギャップであってもよいし、樹脂やセラミクスなどの非磁性材料の板材であってもよい。ギャップ部30gは設けなくてもよい。
【0075】
(第一エンドコア部・第二エンドコア部)
第一エンドコア部310は、磁性コア30のうち、コイル10の第一端部121と向かい合う部分である。第二エンドコア部320は、コイル10の第二端部122と向かい合う部分である。第一エンドコア部310と第二エンドコア部320とは、コイル10を軸方向から挟むように間隔をあけて配置される。
【0076】
(第一サイドコア部・第二サイドコア部)
第一サイドコア部330及び第二サイドコア部340は、磁性コア30のうち、ミドルコア部300を挟むように、コイル10の外側に配置される部分である。第一サイドコア部330と第二サイドコア部340とは、コイル10の軸方向に沿う両側面を挟むように間隔をあけて配置される。第一サイドコア部330及び第二サイドコア部340は、第一エンドコア部310と第二エンドコア部320とをつなぐ長さを有している。
【0077】
(第一コア・第二コア)
磁性コア30は、第一コア31と第二コア32とが組み合わされることで構成されている。第一コア31及び第二コア32の各々の形状は、種々の組み合わせから選択できる。本実施形態では、磁性コア30は、E字状の第一コア31と、T字状の第二コア32とを組み合わせたE-T型である。その他の組み合わせとしては、例えば、E-U型、E-I型、T-U型などがある。
【0078】
本実施形態では、第一コア31は、第一エンドコア部310と、ミドルコア部300の一部である第一ミドルコア部301と、第一サイドコア部330及び第二サイドコア部340の各々の全部とを含む。第一エンドコア部310と、第一ミドルコア部301と、第一サイドコア部330と、第二サイドコア部340とは一体に形成されている。第二コア32は、第二エンドコア部320と、ミドルコア部300の残部である第二ミドルコア部302とを含む。第二エンドコア部320と、第二ミドルコア部302とは一体に形成されている。
【0079】
磁性コア30は、例えば、圧粉成形体や複合材料の成形体などで構成されている。圧粉成形体は、軟磁性材料からなる粉末を圧縮成形してなる。軟磁性材料としては、鉄や鉄合金などの金属、フェライトなどの非金属が挙げられる。鉄合金は、例えば、Fe-Si合金、Fe-Ni合金などが挙げられる。以下、軟磁性材料からなる粉末を「軟磁性粉末」と呼ぶ。圧粉成形体における軟磁性粉末の含有量は、圧粉成形体を100体積%とするとき、例えば85体積%以上99.99体積%以下である。
【0080】
複合材料の成形体は、軟磁性粉末が樹脂中に分散してなる。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合して分散させた原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。複合材料における軟磁性粉末の含有量は、複合材料を100体積%とするとき、例えば20体積%以上80体積%以下が挙げられる。複合材料の樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー、フッ素樹脂などが挙げられる。一般に、複合材料の成形体は、圧粉成形体に比べて樹脂を多く含むため、圧粉成形体よりも熱伝導性が低い。以下、複合材料の成形体からなるコア片を「樹脂コア片」と呼ぶ。
【0081】
第一コア31の構成材料と第二コア32の構成材料とは、同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、第一コア31と第二コア32とが圧粉成形体で構成されていてもよいし、第一コア31と第二コア32とが樹脂コア片で構成されていてもよい。或いは、第一コア31及び第二コア32のうち、一方が圧粉成形体で構成され、他方が樹脂コア片で構成されていてもよい。本実施形態では、第一コア31が複合材料の成形体からなる樹脂コア片であり、第二コア32が圧粉成形体である。つまり、ミドルコア部300のうち、第一ミドルコア部301が樹脂コア片で構成され、第二ミドルコア部302が圧粉成形体で構成されている。
【0082】
(保持部材)
更に、本実施形態では、2つの保持部材41,42を有する。保持部材41は、コイル10の第一端部121側に配置される。保持部材42は、コイル10の第二端部122側に配置される。保持部材41,42は、コイル10と、磁性コア30の第一エンドコア部310と第二エンドコア部320との間の電気的絶縁を確保する。保持部材41,42には、ミドルコア部300の各端部が挿入される貫通孔43が形成されている。
【0083】
保持部材41,42は矩形枠状である。保持部材41は、第一端部121を構成するターンと接する。端末部131は、保持部材41からコイル10の軸方向と直交する方向に引き出される。保持部材42は、第二端部122を構成するターンと接する。保持部材42には、端末部132に貫通されるスリットを有する。端末部132は、スリットを貫通してコイル10軸方向に引き出される。
【0084】
(コイルの製造方法)
図8から
図12を主に参照して、上述したコイル10の製造方法について説明する。コイル10は巻線機を使用して製造できる。巻線機には、公知の巻線機を利用できる。
【0085】
(巻線機)
巻線機は、
図8に示す曲げ加工部800と、図示しない送り機構とを備える。曲げ加工部800は、平角線1をエッジワイズ曲げ加工する。送り機構は、平角線1を送り出す。曲げ加工部800は、巻線機の主要な部分の一つである。
【0086】
(曲げ加工部)
曲げ加工部800は、
図8、
図9に示すように、保持部810と、ガイド部820とを有する。保持部810は、平角線1の内周部1iを保持する。平角線1の内周部1iは、平角線1をエッジワイズ曲げする際に、平角線1における曲げの内周側に位置する部分である。ガイド部820は、平角線1の外周部1eを保持する。平角線1の外周部1eは、平角線1における曲げの外周側に位置する部分である。
【0087】
〈保持部〉
保持部810は、シャフト811と、シャフト811を支持する支持体812とを有する。シャフト811は、平角線1における内周部1iの側面と接触する円柱状の部材である。内周部1iの側面は、平角線1の断面における矩形の一方の短辺に対応する面である。支持体812は円筒状である。シャフト811は、支持体812の中心を貫通する。シャフト811は、支持体812に対して、シャフト811の軸方向にスライド可能である。シャフト811の先端は、支持体812の端面から突出する。シャフト811の先端には、円板状のフランジ813を有する。支持体812とフランジ813とは離間して配置されている。
【0088】
保持部810は、支持体812の端面によって構成される第一面812fと、支持体812と向かい合うフランジ813の面によって構成される第二面813fとを有する。第一面812fと第二面813fとは、平角線1の内周部1iを厚さ方向に挟むように向かい合って配置される。第一面812fと第二面813fとの間に平角線1の内周部1iが通されて保持される。第一面812fと内周部1iとの間、及び第二面813fと内周部1iとの間は、平角線1を送り出した際に平角線1が通過できるように、若干のクリアランスが設けられている。
【0089】
〈ガイド部〉
ガイド部820は、シャフト811の中心軸を回転中心にして回動可能である。ガイド部820は、平角線1の外周部1eを厚さ方向に挟むようにガイド溝821が形成されている。このガイド溝821に、平角線1の外周部1eが通されて保持される。ガイド溝821の幅は、平角線1を送り出した際に平角線1が通過できるように、平角線1の外周部1eの厚さよりも若干大きい。
【0090】
本実施形態では、保持部810に対してガイド部820がシャフト811の軸方向にスライド可能である。ガイド部820の位置は、例えば図示しない駆動装置によって制御される。駆動装置としては、例えばサーボモータなどが利用できる。
【0091】
図9、
図10を参照して、平角線1をエッジワイズ曲げする際の曲げ加工部800の動作を説明する。ここでは、
図5、
図6に示す四角筒状のコイル10を形成する場合を例に挙げて説明する。
図9、
図10は、曲げ加工部800をフランジ813側、即ち
図8の下側からシャフト811の軸方向に見ている。
図9に示すように、図示しない送り機構によって平角線1を直線状に送り出す。
図9中の矢印は、平角線1の送り方向を示す。次に、
図10に示すように、ガイド部820がシャフト811の中心軸を回転中心にして回動する。内周部1iの側面がシャフト811の外周面に押し付けられて、平角線1がシャフト811の外周面に沿って曲がる。これにより、平角線1がエッジワイズ曲げされた角部が形成される。本実施形態では、ガイド部820が90°回動することによって、平角線1を90°曲げる。この動作を繰り返すことによって、1つのターン2を形成する。平角線1の送り出しとエッジワイズ曲げ加工とを4回繰り返すことにより、矩形状のターン2を形成する。そして、ターン2の形成を複数回繰り返し行うことにより、複数のターン2を形成することで、コイル10が形成される。
【0092】
平角線1の送り出し時は、
図8に示すように、支持体812とフランジ813とは、平角線1の内周部1iとの間に隙間が形成されるような間隔に保持される。平角線1のエッジワイズ曲げ加工時は、支持体812とフランジ813とは、平角線1の内周部1iを上下から挟むような間隔に閉じられる。平角線1をエッジワイズ曲げしたとき、曲げの内周側が厚さ方向に膨らむように変形して、内周部1iが厚くなる。支持体812とフランジ813とで平角線1の内周部1iを平角線1の厚さ方向から挟むことで、エッジワイズ曲げ加工時に平角線1の内周部1iが厚くなることを抑制できる。
【0093】
一般に、巻線機を使用してコイルを作製する場合、保持部810とガイド部820との位置関係は、
図8に示すように、シャフト811の軸方向において、平角線1の内周部1iを保持する位置と、平角線1の外周部1eを保持する位置とが略一致するように設定されている。つまり、平角線1における内周部1iと外周部1eとが平坦になるように、保持部810に対してガイド部820が位置する。このときのガイド部820の位置をガイド部820の基準位置とする。基準位置とは、保持部810が平角線1の内周部1iを保持したときの第一面812fと第二面813fとの間の中心線と、ガイド部820のガイド溝821の幅の中心線とが揃う位置である。
【0094】
図11、
図12に基づいて、上述したコイル10の製造方法の詳細を説明する。コイル10の製造方法は、上述した曲げ加工部800を備える巻線機を使用する。コイル10の製造方法は、第一ターンを形成する工程と、第二ターンを形成する工程とを備える。以下、各工程を詳しく説明する。以下の説明では、
図7を参照する場合がある。本実施形態では、コイル10の第一端部121側から巻き始める。
【0095】
(第一ターンの形成工程)
第一ターン21を形成する工程は、
図11に示すように、保持部810に対してガイド部820をシャフト811の軸方向の第一の方向に変位させた状態で行う。具体的には、保持部810を基準としてガイド部820を上方にスライドさせることにより、保持部810に対してガイド部820を上方に変位させる。つまり、第一の方向は、
図11の下から上に向かう方向である。このように保持部810に対してガイド部820を上方に変位させることで、平角線1における外周部1eが内周部1iに対して上方に傾斜するように平角線1を屈曲させる。この状態で第一ターン21を形成することにより、
図7に示すように、第一外周部11eが第一内周部11iに対して上方に向かって傾斜した第一ターン21を形成できる。所定の数の第一ターン21を形成することにより、第一コイル部110を形成する。
【0096】
(第二ターンの形成工程)
第二ターン22を形成する工程は、
図12に示すように、保持部810に対してガイド部820をシャフト811の軸方向の第二の方向に変位させた状態で行う。上記第二の方向は、上述した第一ターン21を形成する工程での第一の方向とは逆向きである。具体的には、保持部810を基準としてガイド部820を下方にスライドさせることにより、保持部810に対してガイド部820を下方に変位させる。つまり、第二の方向は、
図12の上から下に向かう方向である。このように保持部810に対してガイド部820を下方に変位させることで、平角線1における外周部1eが内周部1iに対して下方に傾斜するように平角線1を屈曲させる。この状態で第二ターン22を形成することにより、
図7に示すように、第二外周部12eが第二内周部12iに対して下方に向かって傾斜した第二ターン22を形成できる。所定の数の第二ターン22を形成することにより、第二コイル部120を形成する。
【0097】
第一ターンの形成工程の後、連続的に第二ターンの形成工程を実施することで、第一コイル部110と第二コイル部120とがコイル10の軸方向に連続してつながれたコイル10を製造できる。保持部810に対してガイド部820を変位させることによって、平角線1を幅方向の途中で屈曲させた場合、第一ターン21間、及び第二ターン22間の各隙間を小さくすることが可能である。
【0098】
第一ターンの形成工程、及び第二ターンの形成工程のいずれにおいても、第一ターン21及び第二ターン22を形成する間は、ガイド部820を変位させた状態を維持する。つまり、保持部810とガイド部820との位置関係は維持される。エッジワイズ曲げ加工時は支持体812とフランジ813とで平角線1の内周部1iを挟むため、ターンの角部では、平角線1が折り曲げられる。一方、平角線1を送り出すときは、支持体812とフランジ813とは、平角線1の内周部1iとの間に隙間が形成されるような間隔で保持される。そのため、ターンの直線部では、角部に比べて平角線1を折り曲げる力が加わり難く、平角線1の曲げが小さくなる場合があると考えられる。
【0099】
保持部810を基準としたガイド部820の変位量Gdは、例えば0.1mm以上1.0mm以下、更に0.2mm以上0.6mm以下が好ましい。ガイド部820の変位量Gdは、ガイド部820を上述した基準位置からシャフト811の軸方向にスライドさせた距離である。第一ターンの形成工程では、変位量Gdは、第一の方向、即ち上方への変位量である。第二ターンの形成工程では、変位量Gdは、第二の方向、即ち下方への変位量である。
【0100】
保持部810によって保持する平角線1の内周部1iの幅は、例えば、平角線1の幅の30%以上75%以下、更に40%以上70%以下である。ガイド部820によって保持する平角線1の外周部1eの幅は、例えば、平角線1の幅の25%以上70%以下、更に30%以上60%以下である。
【0101】
{実施形態の作用効果}
上述した実施形態のリアクトル100は小型化できる。温度センサ50が第一コイル部110と第二コイル部120との間に形成された空間15に配置されている。温度センサ50がコイル10の外周面よりも内側に設けられていることで、リアクトル100の大型化を回避できる。また、リアクトル100はコイル10の温度を精度よく測定できる。コイル10の内周側は温度上昇が大きい。温度センサ50が空間15に配置されていることで、コイル10の内周面側に近い部分の温度を測定できる。最も熱くなり易いコイル10の内周側の温度を測定することで、コイル10の温度を正確に測定できる。
【0102】
コイル10の温度を正確に測定できるため、コイル10の温度に基づいてコイル10の通電制御を行う場合、コイル10の温度変化に対する応答性が向上する。
【0103】
コイル10は、第一コイル部110と第二コイル部120との間に、温度センサ50が配置される空間15を確保し易い。第一コイル部110を構成する第一ターン21、及び第二コイル部120を構成する第二ターン22において、平角線1が幅方向の途中で屈曲されている。第一ターン21と第二ターン22とで平角線1が逆方向に曲げられていることで、第一コイル部110と第二コイル部120との間に、温度センサ50を配置することが可能な空間15を形成できる。
【0104】
[変形例]
上述した実施形態では、
図4を参照して説明したように、内側コア部30iのギャップ部30gの外側に空間15が位置している形態を説明した。内側コア部30iが樹脂コア片を含む場合、樹脂コア片の外側に空間15が位置するようにしてもよい。この場合、温度センサ50は、樹脂コア片の外側に設けられることになる。
図4において、内側コア部30iであるミドルコア部300のうち第一ミドルコア部301が樹脂コア片であれば、第一ミドルコア部301の外側に空間15が位置するようにする。樹脂コア片は熱伝導性が低く、高温になり易い。そのため、第一ミドルコア部301が位置する部分では、コイル10の温度が上昇し易い。ギャップ部30gがない場合、温度センサ50が第一ミドルコア部301の外側に設けられていることで、高温となる第一ミドルコア部301が位置する部分でのコイル10の温度を測定できる。
【0105】
[試作例1]
実施形態で説明したコイルの製造方法によって、コイル10を製造した。
【0106】
製造するコイル10の仕様は次のとおりとした。コイル10の形状は、四角筒状とした。コイル10の端面の形状は矩形状である。第一ターン21の数を16ターン、第二ターン22の数を16ターンとした。
【0107】
保持部810によって保持する平角線1の内周部1iの幅は、平角線1の幅の約60%とした。ガイド部820によって保持する平角線1の外周部1eの幅は、平角線1の幅の約30%とした。第一ターン21を形成する工程、及び第二ターン22を形成する工程でのガイド部820の変位量Gdはそれぞれ0.2mmとした。
【0108】
製造したコイル10について、第一ターン21における第一変位量11d及び第二ターン22における第二変位量12dをそれぞれ測定した。各変位量の測定は、実施形態で説明した測定方法を用いて行った。そして、第一変位量11d及び第二変位量12dについて、4つの角部20cにおけるそれぞれの変位量を測定して、その平均値を求めた。その結果、第一ターン21及び第二ターン22における角部20cでの各変位量は、平均で0.2mm程度であった。また、4つの直線部20sの中間点におけるそれぞれの変位量を測定して、その平均値を求めた。直線部20sの中間点とは、具体的には、第一ターン21の周方向に沿った直線部20sの長さの中間点とした。その結果、第一ターン21及び第二ターン22における直線部20sでの各変位量は、平均で0.1mm程度であった。
【0109】
直線部20sでの変位量が角部20cでの変位量よりも小さくなった理由は、次のように考えられる。エッジワイズ曲げ加工時に平角線1の内周部1iを支持体812とフランジ813とで挟むので、内周部1iが固定される。そのため、角部20cでは、平角線1が折り曲げられ易い。これに対し、直線部20sでは、支持体812とフランジ813とが内周部1iとの間に隙間が形成されるような間隔で保持されているため、角部20cに比べて平角線1を折り曲げる力が加わり難い。このような、平角線1と、保持部810及びガイド部820との関係により、角部20cに比べて直線部20sの変位量が小さくなるものと考えられる。
【0110】
さらに、第一コイル部110と第二コイル部120との間に形成された空間15の間隔を測定した。その結果、空間15の間隔は約0.4mmであった。
【0111】
<コンバータ・電力変換装置>
実施形態のリアクトル100は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度であることが挙げられる。実施形態のリアクトル100は、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに搭載されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0112】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、
図13に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。
図13では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0113】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0114】
コンバータ1110は、
図14に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態のリアクトル100を備える。
【0115】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態のリアクトル100などと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態のリアクトル100を利用することもできる。
【符号の説明】
【0116】
100 リアクトル
10 コイル
110 第一コイル部、120 第二コイル部
121 第一端部、122 第二端部
131,132 端末部
1 平角線
1i 内周部、1e 外周部
11i 第一内周部、11e 第一外周部、11b 屈曲部
12i 第二内周部、12e 第二外周部、12b 屈曲部
11d 第一変位量、 12d 第二変位量
15 空間
2 ターン、20s 直線部、20c 角部
21 第一ターン、22 第二ターン
21g,22g 隙間
30 磁性コア、31 第一コア、32 第二コア
30i 内側コア部、30g ギャップ部
300 ミドルコア部
301 第一ミドルコア部、302 第二ミドルコア部
310 第一エンドコア部、320 第二エンドコア部
330 第一サイドコア部、340 第二サイドコア部
41,42 保持部材、43 貫通孔
50 温度センサ
70 固定材
800 曲げ加工部
810 保持部、811 シャフト、812 支持体、813 フランジ
812f 第一面、813f 第二面
820 ガイド部、821 ガイド溝
1100 電力変換装置、1110 コンバータ
1111 スイッチング素子、1112 駆動回路
1115 リアクトル、1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ、1220 モータ
1230 サブバッテリ、1240 補機類、1250 車輪、1300 エンジン
Gd 変位量
L コイルの全長、L1 第一コイル部の長さ、L2 第二コイル部の長さ
【手続補正書】
【提出日】2024-08-15
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアクトルに用いられるコイルであって、
前記コイルは、第一コイル部と、前記第一コイル部と前記コイルの軸方向に連続してつながれた第二コイル部とを有し、
前記第一コイル部は、平角線が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第一ターンを備え、
前記複数の第一ターンの各々は、
前記平角線における前記第一ターンの内周側を構成する第一内周部と、
前記平角線における前記第一ターンの外周側を構成する第一外周部とを有し、
前記第一外周部は、前記第一内周部に対して前記コイルの軸方向の第一の方向に向かって傾くように曲げられており、
前記第二コイル部は、前記平角線が螺旋状にエッジワイズ巻きされた複数の第二ターンを備え、
前記複数の第二ターンの各々は、
前記平角線における前記第二ターンの内周側を構成する第二内周部と、
前記平角線における前記第二ターンの外周側を構成する第二外周部とを有し、
前記第二外周部は、前記第二内周部に対して前記コイルの軸方向の第二の方向に向かって傾くように曲げられており、
前記第一コイル部と前記第二コイル部との間に空間が形成されている、
コイル。
【請求項2】
前記第一ターンは、前記平角線が屈曲された角部を有し、
前記第一ターンの前記角部における前記第一内周部と前記第一外周部との前記コイルの軸方向の第一変位量が0.1mm以上1.0mm以下であり、
前記第二ターンは、前記平角線が屈曲された角部を有し、
前記第二ターンの前記角部における前記第二内周部と前記第二外周部との前記コイルの軸方向の第二変位量が0.1mm以上1.0mm以下である請求項1に記載のコイル。
【請求項3】
前記空間の間隔が0.2mm以上2.0mm以下である請求項1又は請求項2に記載のコイル。
【請求項4】
前記第一ターン間の隙間及び前記第二ターン間の隙間が0.076mm以下である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコイル。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコイルと、
前記コイルが配置された磁性コアとを備える、
リアクトル。
【請求項6】
前記磁性コアは、
前記コイルの内側に配置された内側コア部と、
前記内側コア部の長手方向の途中に設けられたギャップ部とを有し、
前記ギャップ部は、前記空間の内側に配置されている請求項5に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記磁性コアは、前記コイルの内側に配置された内側コア部を有し、
前記内側コア部は、樹脂中に軟磁性粉末が分散した複合材料の成形体からなる樹脂コア片を含み、
前記樹脂コア片は、前記空間の内側に配置されている請求項5に記載のリアクトル。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項9】
請求項8に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。