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特開2024-150608FAP活性化治療剤及びそれに関連する使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150608
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】FAP活性化治療剤及びそれに関連する使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/64 20170101AFI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 31/337 20060101ALN20241016BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALN20241016BHJP
   A61K 31/704 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
A61K47/64
A61P35/00
A61K31/337
A61K31/7068
A61K31/704
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115840
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2022086532の分割
【原出願日】2015-06-15
(31)【優先権主張番号】62/011,989
(32)【優先日】2014-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/051,033
(32)【優先日】2014-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520103779
【氏名又は名称】バック バイオサイエンシーズ,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bach BioSciences, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ダブリュー バチョヴチン
(72)【発明者】
【氏名】フン-セン ライ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ジー サンフォード
(72)【発明者】
【氏名】サラ イー ポプラウスキ
(72)【発明者】
【氏名】ウェンゲン ウー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)によって選択的に切断され、活性化される細胞毒性アントラサイクリン(ドキソルビシンなど)及び他の治療剤のプロドラッグを提供する。
【解決手段】次の一般式で表されるプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩および、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。

(式中、Cyt’は、ビンカ薬物等の薬物部分のラジカルを表す。)
プロドラッグは、細胞毒性剤及び他の薬剤を、癌(例えば固形腫瘍)を含むFAP発現組織に標的送達するのに有用である。プロドラッグを含む薬学的化合物、ならびにFAP上方制御を特徴とする障害、例えば、癌、線維症、及び炎症を治療するためのプロドラッグの使用方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式で表されるプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩および、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、
【化1】
(式中、Rは、(C-C10)アルキル、(C-C10)アルコキシ、(C-C10)アルキル-C(O)-(C-C10)アルキル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル(C-C10)アルキル、アリール、アリール(C-C10)アルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアリール(C-C10)アルキルを表し、任意のRが、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されるか、または
-C(=X)Rは、N末端ブロックされたアルファアミノ酸残基を表し、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
3は、(C-C)アルキルを表し、
は、不在であるか、または1つ、2つ、または3つの置換基を表し、各々は(C-C)アルキル、-OH、-NH、及びハロゲンからなる群から独立して選択され、
Xは、Oを表し、
Cyt’は、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、葉酸誘導体、細胞毒性ヌクレオシド類似体、プテリジンファミリーの薬物、ジイネン、ポドフィロトキシン、抗アンドロゲン薬、抗葉酸剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、タキサン、ナフタルイミド、Akt阻害剤、サイクリン依存キナーゼ(CDK)阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤、B-Rafキナーゼ(BRAF)阻害剤、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤からなる群から選択される薬物部分のラジカルを表し、
Lは結合を表すか、又は、-N(H)-L-が、プロドラッグのFAP切断後に代謝されてCyt’を放出する、自壊的リンカーを表し、)
前記プロドラックが、FAP酵素による切断によってCyt’に選択的に変換され、かつプロドラッグの細胞透過性が、Cyt’単独の細胞透過性よりも少なくとも50%低く、
前記薬学的組成物は、注射による非経口投与のために処方される、薬学的組成物。
【請求項2】
-N(H)-L-が、His-Ala、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)、及び2,4-ビス(ヒドロキシメチル)アニリンからなる群から選択される自壊的リンカーである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
が、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1以上の置換基で置換されたヘテロアリールを表する、請求項1また2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
-C(=X)Rが、N末端ブロックされたアルファアミノ酸残基を表し、Xは、Oを表する、請求項1また2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
3は、メチルを表する、請求項1から4のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項6】
は、不在である、請求項1から5のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項7】
は、1つまたは2つのハロゲンを表す、請求項1から5のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項8】
Cyt’は、タキサンを表する、請求項1から7のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記タキサンが、パクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される、請求項8に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記プロドラッグが、
【化2】
で表される構造を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
Cyt’は、細胞毒性ヌクレオシド類似体を表する、請求項1から7のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記細胞毒性ヌクレオシド類似体は、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、5-アザシチジン、フロクスウリジン、アジドチミジン、アバカビル、及びフルダラビンからなる群から選択される、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記プロドラッグが、
【化3】
からなる群から選択される式で表される構造を有する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)が上方制御される障害の治療用薬剤の製造における、請求項1から13のいずれかに記載の薬学的組成物の使用。
【請求項15】
FAP上方制御される障害が、癌、線維症、及び炎症からなる群から選択される、請求項14に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項16】
次の一般式で表されるプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩であって、
【化4】
(式中、Rは、ヘテロアリール多環式部分を表し、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
Cyt’は、水素原子が1つ少ない、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物の残基を表し、
該Cyt’は、プロテアソーム阻害剤でも、ペプチドでも、ペプチジル部分でもなく、
Lは結合を表すか、又は、-N(H)-L-が、プロドラッグのFAP切断後に代謝されてCyt’を放出する、自壊的リンカーを表し、)
前記プロドラックが、FAP間質細胞によって、前記細胞毒性化合物または前記細胞増殖抑制化合物に選択的に変換される、プロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
-N(H)-L-が、His-Ala、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)、及び2,4-ビス(ヒドロキシメチル)アニリンからなる群から選択される自壊的リンカーである、請求項16に記載のプロドラッグ。
【請求項18】
前記細胞毒性化合物または前記細胞増殖抑制化合物が、アントラサイクリン、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、葉酸誘導体、細胞毒性ヌクレオシド類似体、プテリジンファミリーの薬物、ジイネン、ポドフィロトキシン、抗アンドロゲン薬、抗葉酸剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、タキサン、ナフタルイミド、Akt阻害剤、サイクリン依存キナーゼ(CDK)阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤、B-Rafキナーゼ(BRAF)阻害剤、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤からなる群から選択される、請求項16または17に記載のプロドラッグ。
【請求項19】
前記細胞毒性化合物または前記細胞増殖抑制化合物が、ビンカ薬物、葉酸誘導体、細胞毒性ヌクレオシド類似体、プテリジンファミリーの薬物、ジイネン、抗アンドロゲン薬、抗葉酸剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ナフタルイミド、Akt阻害剤、サイクリン依存キナーゼ(CDK)阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤、B-Rafキナーゼ(BRAF)阻害剤、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤からなる群から選択される、請求項18に記載のプロドラッグ。
【請求項20】
前記細胞毒性化合物または前記細胞増殖抑制化合物が、アントラサイクリンである、請求項16から18のいずれかに記載のプロドラッグ。
【請求項21】
前記アントラサイクリンは、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、アクラルビシン、ミトキサントロン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、及びマイトマイシンからなる群から選択される、請求項20に記載のプロドラッグ。
【請求項22】
前記細胞毒性化合物または前記細胞増殖抑制化合物が、タキサンである、請求項16から18のいずれかに記載のプロドラッグ。
【請求項23】
前記タキサンが、パクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される、請求項22に記載のプロドラッグ。
【請求項24】
前記細胞毒性化合物または前記細胞増殖抑制化合物が、細胞毒性ヌクレオシド類似体である、請求項16から19のいずれかに記載のプロドラッグ。
【請求項25】
前記細胞毒性ヌクレオシド類似体は、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、5-アザシチジン、フロクスウリジン、アジドチミジン、アバカビル、及びフルダラビンからなる群から選択される、請求項24に記載のプロドラッグ。
【請求項26】
請求項16から25のいずれかに記載のプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩および、薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項27】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)が上方制御される障害の治療用薬剤の製造における、請求項16から25のいずれかに記載のプロドラッグまたは、その薬学的に許容される塩の使用。
【請求項28】
FAP上方制御される障害が、癌、線維症、及び炎症からなる群から選択される、請求項27に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2014年9月16日に出願された米国特許仮出願第62/051,033号、及び2014年6月13日に出願された米国特許仮出願第62/011,989号の利益を主張する。
また、本願は、特願2020-130483を原出願として令和4年5月27日に分割したものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、FAP活性化治療剤及びそれに関連する使用に関する。
【背景技術】
【0003】
癌は、外部シグナルによる正常な制御がない細胞増殖を特徴とし、他の組織に転移して浸潤する可能性がある。長年、化学療法は様々な種類の癌治療の中心であった。従来の化学療法は、本質的に、迅速に分裂する細胞を毒することにより機能する。そのため、癌細胞それ自体の選択性は比較的低く、よく知られた副作用である脱毛、下痢、及び他の形態の消化器不良、ならびに骨髄抑制をもたらす。このような標的の外れた副作用は、用量規制となることが多く、典型的には、治療の有効性に制約を課す。
【0004】
例えば、ヒドロキシダウノルビシンとしても知られるドキソルビシンは、癌化学療法に使用される薬物である。これは、天然産物のダウノマイシンに密接に関連するアントラサイクリン抗生物質である。すべてのアントラサイクリンと同様、DNAに挿入することにより機能し、最も重度の有害作用は致命的な心臓損傷である。ドキソルビシンは、一般的に、血液系腫瘍、多くの種類の癌腫、及び軟組織肉腫を含む広範囲の癌の治療に使用される。
【0005】
抗癌療法は、それが癌細胞を選択的に標的としたとすれば、大幅に改善されるだろう。癌治療剤の選択的標的を達成する目的で、多くのアプローチが提案され、開発されてきた。例えば、細胞毒性剤は、ある特定の腫瘍抗原に特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体及びその抗原特異的断片に連結されてきた。
【0006】
葉酸標的リポソームドキソルビシン(FTL-Dox)の作用は、インビトロ、特にKBヒト癌腫細胞における葉酸受容体(FR)過剰発現腫瘍において十分に特徴付けされている。非特許文献1は、KB腫瘍を有するマウスに静脈内注射されたFTL-Doxの抗腫瘍活性を検証した。遊離Dox、非標的PEG化リポソームDox(PL-Dox)、またはFTL-Doxの単回静脈内注射をマウスに投与した。FTL及びPLは、循環からのFTLのクリアランスがより速かったにも関わらず、腫瘍組織に同様に蓄積した。FTL-Dox(20mg/kg)で処置されたマウスは、PL-Dox(20mg/kg)を受容したマウスと比較して、腫瘍成長のより大幅な阻害、及び寿命のほぼ50パーセントの増加を示した。Riviereらは、全身投与されたFTLがインビボにおいて抗癌薬物の送達を強化する可能性を有するが、腫瘍標的の利益が実現されるのであれば、FRを発現する正常な組織によるそれらの除去はブロックされる必要があり得ると結論付けた。
【0007】
近年、膜結合プロテアーゼが、腫瘍形成、血管新生、及び転移の重要なメディエーターとして現れた。セプラーゼまたは170kDa黒色腫膜結合ゼラチナーゼとしても知られる線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPαまたは単純にFAP;EC3.4.21.-)は、セリンプロテアーゼファミリーに属するホモ二量体膜内在性タンパク質である。非特許文献2、及び特許文献1(参照により組み込まれる)。
【0008】
正常な成人組織は一般的に、検出可能な量のFAPを発現しない。対照的に、FAPは、上皮癌の反応性間質線維芽細胞、創傷治癒の肉芽組織、ならびに骨及び軟組織肉腫の悪性細胞において発現される。FAPは、発達中の線維芽細胞成長または上皮間葉相互作用の制御、組織修復、及び上皮発癌に関与すると考えられている。意義深いことに、90パーセント超の乳癌腫、非小細胞肺癌腫、及び結腸直腸癌腫を含む最も一般的な種類の上皮癌は、FAP発現間質線維芽細胞を含有する。非特許文献3。成人において、その発現は、癌、線維症、関節炎、創傷、及び炎症を含む病的部位に限られるため、FAPは治療剤に標的特異性を提供することができる。
【0009】
Firestoneらの特許文献2(参照により組み込まれる)は、ヒトFAPの触媒作用により細胞毒性薬物または細胞増殖抑制薬物に変換されることが可能なプロドラッグを開示している。プロドラッグは、FAPによって認識される切断部位を含む。
【0010】
特許文献3(参照により組み込まれる)はプロテアソーム阻害剤のFAP活性化プロドラッグを開示しており、プロテアソーム阻害剤がFAPによる切断の結果としてプロドラッグから放出されるとき、プロテアソーム阻害剤が500nM以下のKiでプロテアソームのタンパク質分解活性を阻害するように、プロテアソーム阻害剤はFAP基質に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第97/34927号
【特許文献2】米国特許第6,613,879号明細書
【特許文献3】国際公開第2013/033396号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Riviere et al.J Drug Targeting 19(1):14-24(2011)
【非特許文献2】Scanlan et al.(1994)Proc Natl Acad Sci USA 91:5657-61
【非特許文献3】Scanlan et al.Proc Natl Acad Sci USA 91:5657-61(1994)
【発明の概要】
【0013】
本発明は、概して、プロドラッグが線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)により選択的に切断されて薬剤を放出する、様々な薬剤のプロドラッグに関する。本発明の一態様は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)によって選択的に切断され、活性化される、細胞毒性化合物及び細胞増殖抑制化合物などの治療剤のプロドラッグに関する。本発明の別の態様は、FAPにより選択的に切断されてFAP活性化の近傍に蓄積される機能性造影剤を放出する、造影剤のプロドラッグに関する。
【0014】
ある特定の実施形態では、本発明は、結合または自壊的リンカーを介して薬剤に共有結合されるFAP基質を含む、薬剤の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)依存性放出のためのプロドラッグを提供する。FAPによるFAP基質の切断時に、プロドラッグは、その活性形態で、またはその活性形態に容易に代謝される形態で薬剤を放出する。
【0015】
ある特定の実施形態では、本発明は、結合または自壊的リンカーを介して薬剤に共有結合されるFAP基質を含む、薬剤の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)依存性放出のためのプロドラッグを提供し、薬剤は薬物である。FAPによるFAP基質の切断時に、プロドラッグは、その活性形態で、またはその活性形態に容易に代謝される形態で薬剤を放出する。プロドラッグは、薬剤の活性形態の50%未満、及びより好ましくは60%、70%、80%、90%、95%、またはさらには98%未満の治療活性を有する。FAP基質は、FAPによる切断に関して、プロリルエンドペプチダーゼ(EC3.4.21.26;PREP)による切断に関するよりも少なくとも10倍大きいkcat/K、及びさらにより好ましくは少なくとも100倍、1000倍、5000倍、またはさらには10,000倍大きいkcat/Kを有する。ある特定の実施形態では、プロドラッグは、以下の特徴のうちの1つ以上をさらに特徴とし得る:
・プロドラッグは、薬剤単独の治療指数よりも少なくとも2倍大きい、及びより好ましくは少なくとも5、10、50、100、250、500、1000、5000、またはさらには10,000倍大きい治療指数を有する、
・等用量基準で比較したとき、薬剤単独での投与と比べて、より大きな割合の活性剤が、標的組織、即ち、FAPを発現する組織に局在化される、即ち、他の組織(血液、肝臓、または心臓など)と比べて標的組織に局在化される活性剤の割合が、薬剤単独と比べたプロドラッグの等用量に関して、少なくとも2倍大きい、及び好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍大きい、
・プロドラッグの最大耐量は、薬剤単独の最大耐量よりも少なくとも2倍多い、及びさらにより好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍多い、
・プロドラッグの細胞透過性は、薬剤単独の細胞透過性よりも少なくとも50%低い、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはさらには99.9%低い、かつ/あるいは
・プロドラッグの循環半減期は、薬剤単独の循環半減期よりも少なくとも25%長い、及びさらにより好ましくは少なくとも50%、75%、100%、150%、200%、500%、750%、またはさらには1000%長い。
【0016】
ある特定の実施形態では、薬物剤は遊離アミンを含み、この遊離アミンに、FAP基質が、2つの部分間にアミド結合を作り出すように、FAP基質部分のC末端カルボニルとの共有結合により直接結合され得るか、またはこの遊離アミンに、自壊的リンカーがFAP基質と薬剤部分との間の架橋として結合され得る。
【0017】
他の実施形態では、薬剤部分はアミン以外の官能基を含み、この官能基に自壊リンカーが結合され得るか、またはこの官能基が別様にFAP基質のC末端カルボニルと結合を形成することができ、この得られた共有結合がFAPにより切断され得る。
【0018】
ある特定の実施形態では、FAP基質は、FAPによる切断に関して、DPP-2、DPP-4、DPP-7、DPP-8、及び/またはDPP-9などの少なくとも1つの哺乳類の「DPP IV活性及び/または構造相同体」(DASH)酵素による切断に関するよりも少なくとも10倍大きい、及びさらにより好ましくは少なくとも50、100、250、500、1000、5000、またはさらには10,000倍大きいkcat/Kを有する。
【0019】
ある特定の実施形態では、本発明は、結合または自壊的リンカーを介して薬物剤に共有結合されるFAP基質を含む、活性薬物剤の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)依存性放出のためのプロドラッグを提供する。FAPによるFAP基質の切断時に、薬物剤は、その活性形態で、またはその活性形態に容易に代謝される形態で放出される。プロドラッグは、薬物剤の活性形態の50%未満、及びより好ましくは60%、70%、80%、90%、95%、またはさらには98%未満の治療活性を有する。FAP基質は、FAPによる切断に関して、プロリルエンドペプチダーゼ(EC3.4.21.26;PREP)による切断に関するよりも少なくとも10倍大きいkcat/K、及びさらにより好ましくは少なくとも100倍、1000倍、5000倍、またはさらには10,000倍大きいkcat/Kを有する。ある特定の実施形態では、プロドラッグは、以下の特徴のうちの1つ以上をさらに特徴とし得る:
・プロドラッグは、薬剤の治療指数よりも少なくとも2倍大きい、及びより好ましくは少なくとも5、10、50、100、250、500、1000、5000、またはさらには10,000倍大きい治療指数を有する、
・等用量基準で比較したとき、薬剤単独での投与と比べて、より大きな割合の活性薬物剤が、標的組織、即ち、FAPを発現する組織に局在化される、即ち、他の組織(血液、肝臓、または心臓など)と比べて標的組織に局在化される活性薬物剤の割合が、薬剤単独と比べたプロドラッグの等用量に関して、少なくとも2倍大きい、及び好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍大きい、
・プロドラッグの最大耐量は、薬剤単独の最大耐量よりも少なくとも2倍多い、及びさらにより好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍多い、
・プロドラッグの細胞透過性は、薬剤の細胞透過性よりも少なくとも50%低い、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはさらには99.9%低い、かつ/あるいは
・プロドラッグの循環半減期は、薬剤単独の循環半減期よりも少なくとも25%長い、及びさらにより好ましくは少なくとも50%、75%、100%、150%、200%、500%、750%、またはさらには1000%長い。
【0020】
ある特定の実施形態では、薬物剤は遊離アミンを含み、この遊離アミンに、FAP基質が、2つの部分間にアミド結合を作り出すように、FAP基質部分のC末端カルボニルとの共有結合により直接結合され得るか、またはこの遊離アミンに、自壊的リンカーがFAP基質と薬物剤部分との間の架橋として結合され得る。
【0021】
他の実施形態では、薬物剤部分はアミン以外の官能基を含み、この官能基に、自壊リンカーが結合され得るか、またはこの官能基が別様にFAP基質のC末端カルボニルと結合を形成することができ、この得られた共有結合がFAPにより切断され得る。
【0022】
ある特定の実施形態では、FAP基質は、FAPによる切断に関して、DPP-2、DPP-4、DPP-7、DPP-8、及び/またはDPP-9などの少なくとも1つの他の哺乳類の「DPP IV活性及び/または構造相同体」(DASH)酵素による切断に関するよりも少なくとも10倍大きい、及びさらにより好ましくは少なくとも50、100、250、500、1000、5000、またはさらには10,000倍大きいkcat/Kを有する。
【0023】
ある特定の実施形態では、FAP基質はオリゴペプチドである。ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、結合または自壊的リンカーを介して薬剤に共有結合されるC末端プロリンを含む。好ましくは、結合は、FAPのタンパク質分解活性により切断され得る結合、例えば、アミド結合である。好ましくは、FAPのP1’特異性の一因となるリンカー(即ち、P1’残基としてFAPに認識される)。ある特定の実施形態では、オリゴペプチドはN末端ブロック基を含む。
【0024】
ある特定の実施形態では、プロドラッグは、複素環自壊的部分などの自壊的リンカーを含む。例示的な自壊的リンカーは、His-Ala、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)、及び2,4-ビス(ヒドロキシメチル)アニリンを含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、薬剤は抗癌剤である。
【0026】
ある特定の実施形態では、薬剤は、ペプチドまたはペプチジル部分ではない。
【0027】
ある特定の実施形態では、薬剤はプロテアソーム阻害剤ではない。
【0028】
ある特定の実施形態では、本発明は、結合または自壊的リンカーを介して薬剤に共有結合されるFAP基質を含む、薬剤の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)依存性放出のためのプロドラッグを提供し、薬剤は細胞毒性薬物または細胞溶解性薬物である。FAPによるFAP基質の切断時に、細胞毒性剤または細胞溶解性剤は、その活性形態で、またはその活性形態に容易に代謝される形態で放出される。プロドラッグは、細胞毒性剤または細胞溶解性剤単独の活性形態の50%未満、及びより好ましくは60%、70%、80%、90%、95%、またはさらには98%未満の治療活性を有する。FAP基質は、FAPによる切断に関して、プロリルエンドペプチダーゼ(EC3.4.21.26;PREP)による切断に関するよりも少なくとも10倍大きいkcat/K、及びさらにより好ましくは少なくとも100倍、1000倍、5000倍、またはさらには10,000倍大きいkcat/Kを有する。ある特定の実施形態では、プロドラッグは、以下の特徴のうちの1つ以上をさらに特徴とし得る:
・プロドラッグは、薬剤単独と比べて、腫瘍細胞に対して50%未満の細胞毒性または細胞溶解性活性、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、またはさらには99.99%未満の細胞毒性または細胞溶解性活性を有する、
・プロドラッグは、腫瘍の治療に関して、薬剤単独の治療指数よりも少なくとも2倍大きい、及びより好ましくは少なくとも5、10、50、100、250、500、1000、5000、またはさらには10,000倍大きい治療指数を有する、
・等用量基準で比較したとき、薬剤単独での投与と比べて、より大きな割合の薬剤が、標的組織、即ち、FAPを発現する組織に局在化される、即ち、他の組織(血液、肝臓、または心臓など)と比べて標的組織に局在化される活性剤の割合が、薬剤単独と比べたプロドラッグの等用量に関して、少なくとも2倍大きい、及び好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍大きい、
・プロドラッグの最大耐量は、薬剤単独の最大耐量よりも少なくとも2倍多い、及びさらにより好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍多い、
・プロドラッグの細胞透過性は、薬剤単独の細胞透過性よりも少なくとも50%低い、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはさらには99.9%低い、かつ/あるいは
・プロドラッグの循環半減期は、薬剤単独の循環半減期よりも少なくとも25%長い、及びさらにより好ましくは少なくとも50%、75%、100%、150%、200%、500%、750%、またはさらには1000%長い。
【0029】
ある特定の実施形態では、本発明は、結合または自壊的リンカーを介して薬物剤に共有結合されるFAP基質を含む、細胞毒性剤または細胞溶解性剤の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)依存性放出のためのプロドラッグを提供する。FAPによるFAP基質の切断時に、細胞毒性剤または細胞溶解性剤は、その活性形態で、またはその活性形態に容易に代謝される形態で放出される。プロドラッグは、細胞毒性剤または細胞溶解性剤の活性形態の50%未満、及びより好ましくは60%、70%、80%、90%、95%、またはさらには98%未満の治療活性を有する。FAP基質は、FAPによる切断に関して、プロリルエンドペプチダーゼ(EC3.4.21.26;PREP)による切断に関するよりも少なくとも10倍大きいkcat/K、及びさらにより好ましくは少なくとも100倍、1000倍、5000倍、またはさらには10,000倍大きいkcat/Kを有する。ある特定の実施形態では、プロドラッグは、以下の特徴のうちの1つ以上をさらに特徴とし得る:
・プロドラッグは、薬剤と比べて、腫瘍細胞に対して50%未満の細胞毒性または細胞溶解性活性、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、またはさらには99.99%未満の細胞毒性または細胞溶解性活性を有する、
・プロドラッグは、薬剤の治療指数よりも少なくとも2倍大きい、及びより好ましくは少なくとも5、10、50、100、250、500、1000、5000、またはさらには10,000倍大きい治療指数を有する、
・等用量基準で比較したとき、薬剤単独での投与と比べて、より大きな割合の活性薬物剤が、標的組織、即ち、FAPを発現する組織に局在化される、即ち、他の組織(血液、肝臓、または心臓など)と比べて標的組織に局在化される活性薬物剤の割合が、薬剤単独と比べたプロドラッグの等用量に関して、少なくとも2倍大きい、及び好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍大きい、
・プロドラッグの最大耐量は、薬剤単独の最大耐量よりも少なくとも2倍多い、及びさらにより好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍多い、
・プロドラッグの細胞透過性は、薬剤の細胞透過性よりも少なくとも50%低い、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはさらには99.9%低い、かつ/あるいは
・プロドラッグの循環半減期は、薬剤単独の循環半減期よりも少なくとも25%長い、及びさらにより好ましくは少なくとも50%、75%、100%、150%、200%、500%、750%、またはさらには1000%長い。
【0030】
さらに例示するために、薬剤は、アントラサイクリン、ビンカ薬物(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、及びエトポシドなどのビンカアルカロイド)、マイトマイシン、ブレオマイシン、葉酸誘導体(アミノプテリン、メトトレキサート、及びジクロロメトトレキサートなど)、細胞毒性ヌクレオシド類似体(例えば、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、5-アザシチジン、フロクスウリジン、アジドチミジン、アバカビル、及びフルダラビン)、プテリジンファミリーの薬物、ジイネン、ポドフィロトキシン、抗アンドロゲン薬(例えば、ビスカルタミド、フルタミド、ニルタミド、及び酢酸シプロテロン)、抗葉酸剤(例えば、メトトレキサート)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、トポテカン及びイリノテカン)、ナイトロジェンマスタード系アルキル化剤(メルファランなど)を含むアルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、及びイホスファミド)、タキサン(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)、ナフタルイミド(アモナフィドなど)、チラパザミン(SR-4233)、ならびに標的放射線増感剤として有用な化合物(例えば、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、トポイソメラーゼ阻害剤、及びシスプラチン)を含む群から選択され得る。
【0031】
一実施形態では、プロドラッグは、次の一般式
【化1】
によって表され得るプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩であって、式中、
は、(C-C10)アルキル、(C-C10)アルコキシ(例えば、tert-ブチルオキシ)、(C-C10)アルキル-C(O)-(C-C10)アルキル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル(C-C10)アルキル、アリール、アリール(C-C10)アルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアリール(C-C10)アルキル、を表し、任意のRは、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される、または-C(=X)RはN末端ブロックされたアルファアミノ酸残基を表し、XはOであり、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
は、不在であるか、または1つ、2つ、または3つの置換基を表し、各々は(C-C)アルキル、-OH、-NH、及びハロゲンから独立して選択され、
Xは、OまたはSを表し、
Cyt’は、単独で、または-L-NHと組み合わせて、水素原子が1つ少ない、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物を表し、
Lは、細胞毒性化合物もしくは細胞増殖抑制化合物の一部であり、かつP’残基としてFAPによって認識される、4~8員環または大きい疎水性基を表すか、またはLは、FAP切断後に代謝されてCyt’を放出する自壊的リンカーであり、
プロドラッグが、FAP間質細胞によって細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物に選択的に変換される。
【0032】
ある特定の実施形態では、プロドラッグは、FAP間質細胞によってインビボで細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物に選択的に変換される。
【0033】
ある特定の好ましい実施形態では、プロドラッグは、次の一般式
【化2】
またはその薬学的に許容される塩によって表され、式中、
は、ヘテロアリール多環式部分を表し、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
Cyt’は、単独で、または-L-NHと組み合わせて、水素原子が1つ少ない、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物を表し、
Lは、細胞毒性化合物もしくは細胞増殖抑制化合物の一部であり、かつP’残基としてFAPによって認識される、4~8員環または大きい疎水性基を表すか、またはLは、FAP切断後に代謝されてCyt’を放出する自壊的リンカーであり、
プロドラッグは、FAP間質細胞によって細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物に選択的に変換される。
【0034】
ある特定の実施形態では、プロドラッグは、FAP間質細胞によってインビボで細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物に選択的に変換される。
【0035】
他の好ましい実施形態では、プロドラッグは、次の一般式
【化3】
またはその薬学的に許容される塩によって表され、式中、
は、ヘテロアリール部分を表し、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
Cyt’は、単独で、または-L-NHと組み合わせて、水素原子が1つ少ない、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物を表し、
Lは、細胞毒性化合物もしくは細胞増殖抑制化合物の一部であり、かつP’残基としてFAPによって認識される、4~8員環または大きい疎水性基を表すか、またはLは、FAP切断後に代謝されてCyt’を放出する自壊的リンカーであり、
プロドラッグは、FAP間質細胞によって細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物に選択的に変換される。
【0036】
ある特定の実施形態では、プロドラッグは、FAP間質細胞によってインビボで細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物に選択的に変換される。
【0037】
ある特定の実施形態では、本発明は、FAPにより選択的に切断され、活性化される細胞毒性アントラサイクリン(ドキソルビシンなど)及び他の治療剤のプロドラッグを提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、プロリルエンドペプチダーゼEC3.4.21.26(PREP)と比べて(即ち、これによらない)FAPにより選択的に切断され、活性化される細胞毒性アントラサイクリン(ドキソルビシンなど)及び他の治療剤のプロドラッグを提供する。
【0038】
任意の特定の理論または作用機序に拘束されるわけではないが、本発明者は、本明細書に開示される非細胞毒性、非細胞増殖抑制プロドラッグがFAPによりインサイチュで切断されて前駆体細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物を放出し、次にこれは自発的に細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物への変換を受け、それにより細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物のFAP発現細胞への標的送達を達成する。
【0039】
本発明の態様は、式I
【化4】
によって表されるプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩であって、式中、
は、(C-C10)アルキル、(C-C10)アルコキシ(例えば、tert-ブチルオキシ)、(C-C10)アルキル-C(O)-(C-C10)アルキル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル(C-C10)アルキル、アリール、アリール(C-C10)アルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアリール(C-C10)アルキルを表し、任意のRは、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換され、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
は、不在であるか、(C-C)アルキル、-OH、-NH、またはハロゲンを表し、
Xは、OまたはSを表し、
Lは結合を表す、または-N(H)-L-は自壊的リンカーを表し、
Cyt’は、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物の残基を表す。
【0040】
本発明の態様は、本発明のプロドラッグまたはその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物である。
【0041】
本発明の態様は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の上方制御を特徴とする障害の治療方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の本発明のプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0042】
ある実施形態では、FAPの上方制御を特徴とする障害は、癌(例えば、固形腫瘍)、線維症、及び炎症からなる群から選択される。
【0043】
本発明の態様は、癌の治療方法であり、それを必要とする対象に治療有効量の本発明のプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】3099DOX及びFAPによるその活性化を示す。
図2】FAP及びPREPによる3099DOX活性化のインビボ酵素速度論を示すグラフである。
図3】ドキソルビシンプロドラッグについての組換えFAP活性の速度を示すグラフである。GP-DOXはz-GP-DOXを指す。
図4】FAPによる3099DOX活性化の特異性を示す棒グラフである。
図5】マウス血漿における3099DOX及びz-GP-DOXのインビトロ活性化を示すグラフである。
図6】正常なマウスの筋肉溶解物における3099DOXのインビトロ安定性を示す棒グラフである。z-GP-DOXのデータは比較のために示される。示されるデータは37℃での12時間後の消化である。
図7】正常なマウスにおけるiv注射による20mg/kgの3099DOXの単回投与後の3099DOX(「プロドラッグ」)及びドキソルビシン(「ウォーヘッド」)の薬物動態を示すグラフである。
図8】20mg/kgの3099DOX(三角形)または8mg/kgのドキソルビシン(円形)の注射後のインビボ血漿ドキソルビシン(DOX)濃度を示すグラフである。mpk,mg/kg。
図9】実施例に記載されるHEK-FAP腫瘍モデル研究で使用されたマウスにおけるドキソルビシン(DOX;「ウォーヘッド」)及び3099DOX(「プロドラッグ」)のインビボ組織分布を示すグラフである。サンプルは6mg/kgの3099DOXを用いたiv投薬1時間後に得た。
図10】実施例に記載されるHEK-FAP腫瘍モデル研究におけるインビボ腫瘍成長を示すグラフである。***、p<0.05対ビヒクル;ns、対ビヒクルで有意でない;mpk,mg/kg。
図11】実施例に記載されるHEK-FAP腫瘍モデル研究における生存率を示すグラフである;mpk,mg/kg。
図12】ゲムシタビンプロドラッグの構造、及びPREPと比較したとき、ゲムシタビンプロドラッグがFAPによって選択的に活性化されることを示すグラフを示す。
図13】2つのAkt阻害剤プロドラッグの構造、及びPREPと比較したとき、Akt阻害剤がプロドラッグがFAPによって選択的に活性化されることを示すグラフを示す。
図14】ドキソルビシンプロドラッグ5057DOXの構造、及びPREPと比較したとき、ドキソルビシンプロドラッグがFAPによって選択的に活性化されることを示すグラフを示す。
図15A】スタイル(styled)ARI-5173のFAP活性化Akt阻害剤の構造を示す。プロドラッグは、HEK-mFAP細胞によって発現されたFAPにより活性化されるように思える。FAP阻害剤5057の追加はこの活性化をブロックする。
図15B】スタイルARI-5174のFAP活性化Akt阻害剤の構造を示す。プロドラッグは、HEK-mFAP細胞によって発現されたFAPにより活性化されるように思える。FAP阻害剤5057の追加はこの活性化をブロックする。
図16A】ARI-5173のFAPによる活性化速度論を示す一対のグラフである。
図16B】ARI-5174のFAPによる活性化速度論を示す一対のグラフである。
図17A】マウスの肝臓転移におけるFAP活性を示すグラフである。
図17B】マウスの肝臓転移におけるFAP活性を示すグラフである。
図18A】3099DOXの活性化速度論を示すグラフである。
図18B】5057DOXの活性化速度論を示すグラフである。
図19】3099DOX及び5057DOXによる血漿FAP活性の阻害の薬物動態を示すグラフである。円形、20mg/kgの3099DOX;四角形、80mg/kgの3099DOX;三角形、20mg/kgの5057DOX;逆三角形、80mg/kgの5057DOX。
図20A】5057DOXまたは3099DOXの指定用量で処置された正常なマウスにおけるプロドラッグの血漿薬物動態を示すグラフである;mpk、mg/kg。
図20B】5057DOXまたは3099DOXの指定用量で処置された正常なマウスにおける「ウォーヘッド」の血漿薬物動態を示すグラフである;mpk,mg/kg。
図21】2mg/kgの5057DOXを用いた静脈内注射後の指定時間での腫瘍を有するHEK-FAPマウスにおける5057DOX及び「ウォーヘッド」の組織分布を示す4つのグラフである。点線は、正常なマウスの薬物動態研究から得た5057DOXまたは「ウォーヘッド」のおよその血漿濃度を表す。
図22】HEK-FAPマウスにおける9mg/kgの5057DOX対ビヒクルの有効性を示すグラフである。接種33日後(即ち、処置の開始時)に腫瘍>200mmを有する動物は除外される。
図23】9mg/kgの5057DOX(四角形)対ビヒクルの有効性、及び9mg/kgの3099DOX(逆三角形)対ビヒクルHEK-FAPマウスの有効性を示すグラフである。接種33日後(即ち、処置の開始時)に腫瘍>200mmを有する動物は除外される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)は、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-IV)様サブファミリーに属するポストプロリル切断セリンプロテアーゼである。FAP及びプロリルエンドペプチダーゼ(PREP;EC3.4.21.26)は、内部プロリン残基のC末端側で切断できる唯一既知の哺乳類プロテアーゼである。FAPのP-P切断特異性はPでプロリンを必要とし、PのグリシンまたはD-アミノ酸は、Pで小さい非荷電アミノ酸を好み、Pで大半のアミノ酸を容認する。FAPと異なり、PREPは構成的かつ遍在的に発現される。
【0046】
本発明は、FAP発現細胞、例えば、上皮癌、治癒創傷の肉芽組織、ならびに骨及び軟組織肉腫の悪性細胞の反応性間質線維芽細胞に細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物を標的送達することが可能な非細胞毒性で非細胞溶解性のプロドラッグを提供するために、酵素活性及びFAPの特異性、ならびに自壊的リンカーの特性を利用する。
【0047】
本発明の態様は、結合または自壊的リンカーを介して薬剤に共有結合されるFAP基質を含む、薬剤の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)依存性放出のためのプロドラッグであり、薬剤は薬物である。FAPによるFAP基質の切断時に、プロドラッグは、その活性形態で、またはその活性形態に容易に代謝される形態で薬剤を放出し、プロドラッグは、薬剤の活性形態の50%未満の治療活性を有し、FAP基質は、FAPによる切断に関して、プロリルエンドペプチダーゼ(EC3.4.21.26;PREP)による切断に関するよりも少なくとも10倍大きいkcat/Kを有する。
【0048】
ある特定の実施形態では、プロドラッグは、以下の特徴のうちの1つ以上をさらに特徴とし得る:
・プロドラッグは、薬剤単独の治療指数よりも少なくとも2倍大きい、及びより好ましくは少なくとも5、10、50、100、250、500、1000、5000、またはさらには10,000倍大きい治療指数を有する、
・等用量基準で比較したとき、薬剤単独での投与と比べて、より大きな割合の活性剤が、標的組織、即ち、FAPを発現する組織に局在化される、即ち、他の組織(血液、肝臓、または心臓など)と比べて標的組織に局在化される活性剤の割合が、薬剤単独と比べたプロドラッグの等用量に関して、少なくとも2倍大きい、及び好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍大きい、
・プロドラッグの最大耐量は、薬剤単独の最大耐量よりも少なくとも2倍多い、及びさらにより好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍多い、
・プロドラッグの細胞透過性は、薬剤単独の細胞透過性よりも少なくとも50%低い、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはさらには99.9%低い、かつ/あるいは
・プロドラッグの循環半減期は、薬剤単独の循環半減期よりも少なくとも25%長い、及びさらにより好ましくは少なくとも50%、75%、100%、150%、200%、500%、750%、またはさらには1000%長い。
【0049】
本発明の態様は、結合または自壊的リンカーを介して薬剤に共有結合されるFAP基質を含む、薬剤の線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)依存性放出のためのプロドラッグであり、薬剤は、細胞毒性薬物または細胞溶解性薬物である。FAPによるFAP基質の切断時に、プロドラッグは細胞毒性剤または細胞溶解性剤を放出し、FAP基質は、FAPによる切断に関して、プロリルエンドペプチダーゼ(EC3.4.21.26;PREP)による切断に関するよりも少なくとも10倍大きいkcat/Kを有し、プロドラッグは、以下の特徴のうちの少なくとも1つ以上をさらに特徴とし得る:
・プロドラッグは、薬剤単独と比べて、腫瘍細胞に対して50%未満の細胞毒性または細胞溶解性活性、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、99.9%、またはさらには99.99%未満の細胞毒性または細胞溶解性活性を有する、
・プロドラッグは、腫瘍の治療に関して、薬剤単独の治療指数よりも少なくとも2倍大きい、及びより好ましくは少なくとも5、10、50、100、250、500、1000、5000、またはさらには10,000倍大きい治療指数を有する、
・等用量基準で比較したとき、薬剤単独での投与と比べて、より大きな割合の薬剤が、標的組織、即ち、FAPを発現する組織に局在化される、即ち、他の組織(血液、肝臓、または心臓など)と比べて標的組織に局在化される活性剤の割合が、薬剤単独と比べたプロドラッグの等用量に関して、少なくとも2倍大きい、及び好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍大きい、
・プロドラッグの最大耐量は、薬剤単独の最大耐量よりも少なくとも2倍多い、及びさらにより好ましくは少なくとも5、10、100、またはさらには1000倍多い、
・プロドラッグの細胞透過性は、薬剤単独の細胞透過性よりも少なくとも50%低い、及びさらにより好ましくは少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはさらには99.9%低い、かつ/あるいは
・プロドラッグの循環半減期は、薬剤単独の循環半減期よりも少なくとも25%長い、及びさらにより好ましくは少なくとも50%、75%、100%、150%、200%、500%、750%、またはさらには1000%長い。
【0050】
ある特定の実施形態では、FAP基質は、FAPによる切断に関して、少なくとも1つの哺乳類の「DPP IV活性及び/または構造相同体」(DASH)酵素による切断に関するよりも少なくとも10倍大きいkcat/Kを有する。
【0051】
ある特定の実施形態では、薬剤は抗癌剤である。
【0052】
ある特定の実施形態では、抗癌剤は、アントラサイクリン、ビンカ薬物、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、マイトマイシン、ブレオマイシン、葉酸誘導体、アミノプテリン、メトトレキサート、ジクロロメトトレキサート、細胞毒性ヌクレオシド類似体、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、5-アザシチジン、プテリジンファミリーの薬物、ジイネン、ポドフィロトキシン、抗アンドロゲン薬、ビスカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸シプロテロン、抗葉酸剤、トポイソメラーゼ阻害剤、トポテカン、イリノテカン、アルキル化剤、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、イホスファミド、ナイトロジェンマスタード系アルキル化剤、メルファラン、タキサン、パクリタキセル、ドセタキセル)、ナフタルイミド、アモナフィド、チラパザミン(SR-4233)、及び標的放射線増感剤として有用な化合物を含む群から選択される。
【0053】
ある特定の実施形態では、FAP活性化プロドラッグは、FAPによる切断時に、サイクリン依存キナーゼ(CDK)阻害剤を放出する。例示的なCDK阻害剤は、CDK1、CDK2、CDK5、及びCDK9の阻害剤である、ジナシクリブ(dinaciclib)(MK-7965、SCH727965)である。アプレピタントとの組み合わせでのジナシクリブの作用に対する第I相試験が進行性悪性疾患の患者において実施された。他のCDK阻害剤が既知である。例えば、フラボピリドールは、慢性リンパ性白血病(CLL)のヒト臨床試験中である非選択的CDK阻害剤である。Senderowicz et al.J.Clin.Oncol.16(9):2986-2999(1998)。CDK阻害剤のさらなる例としては、BAY1000394(Bayer Intellectual Property GmbHの国際公開第WO2013/139734号を参照)、Merck Patent GmbHの国際公開第WO2014/078637号に開示される化合物、P276-00、(R)-ロスコビチン(セリシクリブ(seliciclib)としても知られる)、及びアルボシジブが挙げられる。
【化5-1】
【化5-2】
【0054】
ある特定の実施形態では、FAP活性化プロドラッグは、FAPによる切断時に、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤を放出する。例示的なPI3K阻害剤は、抗新生物活性の可能性がある、脂質キナーゼのpanクラスIホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)ファミリーの経口生体利用可能特定経口阻害剤で、BKM120としても知られるブパルリシブである。PI3K阻害剤BKM120は、ATP競合様式で、PI3K/AKTキナーゼ(またはタンパク質キナーゼB)シグナル伝達経路においてクラスIのPIK3を特異的に阻害し、それにより二次メッセンジャーのホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸の生成、及びPI3Kシグナル伝達経路の活性化を阻害する。PI3Kシグナル伝達経路の活性化は腫瘍形成にしばしば関連する。
【化6】
【0055】
ある特定の実施形態では、FAP活性化プロドラッグは、FAPによる切断時に、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤を放出する。例示的なMEK阻害剤は、抗新生物活性の可能性がある、MEK1及びMEK2(MEK1/2)の経口生体利用可能な小分子阻害剤のTAK-733である。MEK阻害剤TAK-733は、MEK1/2に選択的に結合し、その活性を阻害し、成長因子媒介細胞シグナル伝達及び腫瘍細胞増殖の阻害をもたらし得るMEK1/2依存性エフェクタータンパク質及び転写因子の活性化を阻止する。MEK1/2(MAP2K1/K2)は、RAS/RAF/MEK/ERK経路の活性化において主な役割を果たし、様々な腫瘍細胞型においてしばしば上方制御される二重特異性スレオニン/チロシンキナーゼである。
【化7】
【0056】
ある特定の実施形態では、FAP活性化プロドラッグは、FAPによる切断時に、B-Rafキナーゼ(BRAF)阻害剤を放出する。例示的なBRAF阻害剤はダブラフェニブメシル酸塩(GSK2118436)である。
【化8】
【0057】
ある特定の実施形態では、FAP活性化プロドラッグは、FAPによる切断時に、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤を放出する。例示的なHDAC阻害剤はSNDX-275及びMS-275としても知られるエンチノスタットである。
【化9】
【0058】
ある特定の実施形態では、FAP基質はオリゴペプチドである。
【0059】
ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、結合または自壊的リンカーを介して薬剤に共有結合されるC末端プロリンを含む。好ましくは、結合は、FAPのタンパク質分解活性により切断され得る結合、例えば、アミド結合である。好ましくはリンカーは、FAPのFAPP’特異性の一因となるリンカー(即ち、P’残基としてFAPに認識される)である。
【0060】
ある特定の実施形態では、オリゴペプチドは、N末端ブロック基を含む。
【0061】
ある特定の実施形態では、FAP基質は、自壊的リンカーを介して薬剤に共有結合される。
【0062】
ある特定の実施形態では、自壊的リンカーは、His-Ala、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)、及び2,4-ビス-ヒドロキシメチル)アニリンからなる群から選択される。
【0063】
本発明の態様は、式I
【化10】
によって表されるプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩であって、式中、
は、(C-C10)アルキル、(C-C10)アルコキシ(例えば、tert-ブチルオキシ)、(C-C10)アルキル-C(O)-(C-C10)アルキル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル(C-C10)アルキル、アリール、アリール(C-C10)アルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアリール(C-C10)アルキルを表し、任意のRは、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換され、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
は、不在であるか、(C-C)アルキル、-OH、-NH、または1つもしくは2つのハロゲンを表し、
Xは、OまたはSを表し、
Lは結合を表す、または-N(H)-L-は自壊的リンカー(例えば、-NH-(CH-C(O)-または-NH-(CH-C(O)-)を表し、
Cyt’は、細胞毒性化合物の残基または細胞増殖抑制化合物の残基を表す。
【0064】
ある特定の実施形態では、Cyt’は、細胞毒性化合物の残基を表す。細胞毒性化合物は、細胞または細胞の集団を死滅または損傷することが可能な化合物である。本発明に従う有用な細胞毒性化合物は、ブレオマイシン、メルファラン、メトトレキサート、メルカプトプリン、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシン、ビンカアルカロイド、ジフルオロヌクレオチド、タキソール、アントラサイクリン、及びこれらの類似体を含むが、これらに限定されない抗癌剤を含む。アントラサイクリン及びその類似体は、具体的には、例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、アクラルビシン、ミトキサントロン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、及びマイトマイシンを含む。ある特定の実施形態では、Cyt’はアントラサイクリンまたはその類似体の残基を表す。ある特定の実施形態では、Cyt’はドキソルビシンの残基を表す。
【0065】
ある特定の実施形態では、Cyt’は、細胞増殖抑制化合物の残基を表す。細胞増殖抑制化合物は、一般的に細胞または細胞の集団を死滅または損傷することなく、細胞または細胞の集団の増殖を阻害することが可能な化合物である。
【0066】
ある特定の実施形態では、Lは結合を表す。
【0067】
ある特定の実施形態では、-N(H)-L-は自壊的リンカーを表す。例えば、一実施形態では、自壊的リンカーは-NH-(CH-C(O)-である。一実施形態では、自壊的リンカーは-NH-(CH-C(O)-である。
【0068】
ある特定の実施形態では、自壊的リンカーはp-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)である。
【0069】
ある特定の実施形態では、自壊的リンカーは2,4-ビス(ヒドロキシメチル)アニリンである。
【0070】
ある特定の実施形態では、Rは、(C-C10)アルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0071】
ある特定の実施形態では、Rは、(C-C10)アルコキシを表し、任意に選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。例えば、ある特定の実施形態では、Rはメトキシを表す。別の例として、ある特定の実施形態では、Rはtert-ブチルオキシを表す。
【0072】
ある特定の実施形態では、Rは、(C-C10)アルキル-C(O)-(C-C10)アルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0073】
ある特定の実施形態では、Rは、(C-C)シクロアルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。例えば、ある特定の実施形態では、Rはシクロプロピルを表す。
【0074】
ある特定の実施形態では、Rは、(C-C)シクロアルキル(C-C10)アルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0075】
ある特定の実施形態では、Rは、アリールを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。例えば、ある特定の実施形態では、Rはフェニルである。
【0076】
ある特定の実施形態では、Rは、アリール(C-C10)アルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。例えば、ある特定の実施形態では、Rはベンジルを表す。
【0077】
ある特定の実施形態では、Rは、ヘテロアリールを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。ある特定の実施形態では、RはN含有ヘテロアリールを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。ある特定の実施形態では、RはO含有ヘテロアリールを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。ある特定の実施形態では、Rは、S含有ヘテロアリールを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0078】
ある特定の実施形態では、Rは、ヘテロアリール(C-C10)アルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。ある特定の実施形態では、Rは、N含有ヘテロアリール(C-C10)アルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。ある特定の実施形態では、RはO含有ヘテロアリール(C-C10)アルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。ある特定の実施形態では、Rは、S含有ヘテロアリール(C-C10)アルキルを表し、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0079】
ある特定の実施形態では、Rは、5~12環原子を含む環式芳香族部分、好ましくは単環式、二環式、または三環式のラジカルを表し、好ましくは、例えば、1~4個の窒素原子を含む環式ヘテロ芳香族であり、さらにより好ましくは、キノリン及びイソキノリンなどの芳香族系の一部ではない(即ち、環平面に拡張され得る)少なくとも1つの孤立電子対を含む塩基性環式ヘテロ芳香族部分であるが、塩基性ならびに非塩基性窒素原子を含有するヘテロ芳香族環、例えばイミダゾールまたはプリンであってもよい。
【0080】
ある特定の実施形態では、Rはキノリニルを表す。
【0081】
ある特定の実施形態では、Rはイソキノリニルを表す。
【0082】
ある特定の実施形態では、RはHを表す。
【0083】
ある特定の他の実施形態では、Rは(C-C)アルキルを表す。例えば、ある特定の実施形態では、Rはメチルを表す。
【0084】
ある特定の実施形態では、RはHを表す。
【0085】
ある特定の他の実施形態では、Rは(C-C)アルキルを表す。例えば、ある特定の実施形態では、Rはメチル、エチル、プロピル、またはイソプロピル表す。ある特定の実施形態では、Rはメチルである。
【0086】
ある特定の実施形態では、Rは不在である。
【0087】
ある特定の他の実施形態では、Rは(C-C)アルキルを表す。例えば、ある特定の実施形態では、Rはメチルを表す。
【0088】
ある特定の実施形態では、Rは-OHを表す。
【0089】
ある特定の実施形態では、Rは-NHを表す。
【0090】
ある特定の実施形態では、Rは、1つまたは2つのハロゲンを表す。例えば、ある特定の実施形態では、Rは環の単一のF置換、または他の実施形態では、2つのF置換を表す。別の例として、ある特定の実施形態では、Rは、環の単一のCl置換、または他の実施形態では、2つのCl置換を表す。
【0091】
ある特定の実施形態では、XはOを表す。
【0092】
ある特定の他の実施形態では、XはSを表す。
【0093】
ある特定の実施形態では、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物はアントラサイクリンであり、Lは結合である。
【0094】
例えば、アントラサイクリン部分は、次の式
【化11】
によって表すことができ、式中、
は、(C-C)アルキル、(C-C)ヒドロキシアルキル、または(C-C)アルカノイルオキシ(C-C)アルキル、特にメチル、ヒドロキシメチル、ジエトキシアセトキシメチル、またはブチリルオキシメチルを表し、
は、水素、ヒドロキシル、または(C-C)アルコキシ、特にメトキシを表し、
及びRのうちの1つは水素原子を表し、もう1つは水素原子またはヒドロキシもしくはテトラヒドロピラニ-2-イルオキシ(OTHP)基を表す。
【0095】
例えば、様々な実施形態では、アントラサイクリンは、ドキソルビシン、ダウノルビシン、デトルビシン、カルミノルビシン(carminorubicin)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、ミトキサントロン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、プリカマイシン、及びマイトマイシンからなる群から選択される。
【0096】
ある特定の実施形態では、アントラサイクリンはドキソルビシンである。
【0097】
ある特定の実施形態では、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物はヌクレオシド類似体であり、Lは自壊的リンカーである。
【0098】
ある特定の実施形態では、ヌクレオシド類似体は、ゲムシタビン、トロキサシタビン、ラミブジン、及びシタラビンからなる群から選択される。
【0099】
ある特定の実施形態では、ヌクレオシド類似体はゲムシタビンである。
【0100】
ある特定の実施形態では、ヌクレオシド類似体はトロキサシタビンである。
【0101】
ある特定の実施形態では、ヌクレオシド類似体はラミブジンである。
【0102】
ある特定の実施形態では、ヌクレオシド類似体はシタラビンである。
【0103】
ある特定の実施形態では、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物は、置換ナフチリジン化合物など、セリン/スレオニン キナーゼのイソ型のうちの1つ以上の活性の阻害剤であるAkt(PKBとしても知られる、以後「Akt」と称される)である。FAP活性化プロドラッグが本発明により企図される診療所における例示的なAkt阻害剤としては、AEterna Zentarisによるペリホシン(KRX-0401)、MerckによるMK-2206、及びGlaxoSmithKlineによるGSK-2141795が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、対象プロドラッグのAkt阻害剤部分は、次の式
【化12】
によって表すことができ、式中、
E、F、G、H、I、J、K、L、及びMは、CまたはNから独立して選択され、各E、F、G、H、I、J、K、L、及びMは独立して、任意選択で、Rで置換され、
環Yは、(C-C)シクロアルキルであり、該シクロアルキルは、任意選択で、(C-C)アルキル、(C-C)アルコキシ、COH、ハロ、CN、OH、及びNHからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され、
は、H、オキソ、(C=O)(C-C10)アルキル、(C=O)-アリール、(C=O)(C-C10)アルケニル、(C=O)(C-C10)アルキニル、COH、ハロ、OH、O(C-C)ペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)(C-C)シクロアルキル、S(O)NR、SH、S(O)-(C-C10)アルキル、及び(C=O)-ヘテロシクリルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルは、任意選択で、Rから選択される1つ以上の置換基で置換され、
は、オキソ、(C=O)(C-C10)アルキル、(C=O)-アリール、(C=O)(C-C10)アルケニル、(C=O)(C-C10)アルキニル、COH、ハロ、OH、O(C-C)ペルフルオロアルキル、(C=O)NR、CN、(C=O)(C-C)シクロアルキル、SH、S(O)NR、S(O)-(C-C10)アルキル、及び(C=O)-ヘテロシクリルからなる群から独立して選択され、該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、及びヘテロシクリルは、任意選択で、Rから選択される1つ以上の置換基で置換され、
は、(C=O)(C-C10)アルキル、(C=O)アリール、C-C10)アルケニル、C-C10)アルキニル、(C=O)ヘテロシクリル、COH、ハロ、CN、OH、O-Cペルフルオロアルキル、O(C=O)NR、オキソ、CHO、(N=O)R、S(O)NR、SH、S(O)-(C-C10)アルキル、及び(C=O)(C-C)シクロアルキルからなる群から選択され、該アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、ヘテロシクリル、及びシクロアルキルは、任意選択で、R6aから選択される1つ以上の置換基で置換され、
6aは、(C=O)(C-C10)アルキル、O(C-C)ペルフルオロアルキル、(C-C)アルキレン-S(O)、SH、オキソ、OH、ハロ、CN、(C-C10)アルケニル、(C-C10)アルキニル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)アルキレン-アリール、(C-C)アルキレン-ヘテロシクリル、(C-C)アルキレン-N(R、C(O)R、(C-C)アルキレン-CO、C(O)H、及び(C-C)アルキレン-COHからなる群から選択され、該アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、及びヘテロシクリルは、任意選択で、R、OH、(C-C)アルコキシ、ハロゲン、COH、CN、O(C=O)(C-C)アルキル、オキソ、及びN(Rからなる群から選択される最大3つの置換基で置換され、
及びRは、H、(C=O)(C-C10)アルキル、(C=O)(C-C)シクロアルキル、(C=O)-アリール、(C=O)-ヘテロシクリル、(C-C10)アルケニル、(C-C10)アルキニル、SH、SO、及び(C=O)N(Rからなる群から独立して選択され、該アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、アルケニル、及びアルキニルは、任意選択で、R6aから選択される1つ以上の置換基で置換されるか、またはR及びRは、それらが結合される窒素と共に、各環に3~7員を有し、任意選択で、窒素に加えて、N、O、及びSから選択される1個または2個の追加のヘテロ原子を含有する単環式または二環式複素環を形成することができ、該単環式または二環式複素環は、任意選択で、R6aから選択される1つ以上の置換基で置換され、
は、(C-C)アルキル、(C-C)シクロアルキル、アリール、またはヘテロシクリルであり、
は独立して、H、(C-C)アルキル、アリール、ヘテロシクリル、(C-C)シクロアルキル、(C=O)(C-C)アルキル、またはS(O)であり、
aは、0または1であり、
bは、0または1であり、
mは、0、1、または2であり、
pは独立して、0、1、2、3、4、または5である。
【0104】
好ましい実施形態では、Akt阻害剤部分は以下の式で表される:
【化13】
【0105】
例示的なFAP活性化AKT阻害剤は、以下を含む:
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【0106】
ある特定の実施形態では、薬物剤は、パクリタキセルまたはドセタキセルなどのタキサンである。パクリタキセルの例示的なFAP活性化プロドラッグは、以下である:
【化15】
【0107】
ある特定の実施形態では、薬物剤は、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、5-アザシチジン、フロクスウリジン、アジドチミジン、アバカビル、またはフィウダラビン(fiudarabine)などの細胞毒性ヌクレオシド類似体である。ヌクレオシド類似体の例示的なFAP活性化プロドラッグは以下を含む:
【化16-1】
【化16-2】
【0108】
式Iを参照すると、ある特定の実施形態では、-C(X)Rは、生理学的pHで、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物と比べてプロドラッグの細胞透過性を減少させる部分である。例えば、様々な実施形態では、プロドラッグの細胞透過性は、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物の細胞透過性の10パーセント、20パーセント、30パーセント、40パーセント、50パーセント、60パーセント、70パーセント、75パーセント、80パーセント、85パーセント、90パーセント、または95パーセント未満である。ある特定の実施形態では、プロドラッグの細胞透過性は、細胞毒性化合物または細胞増殖抑制化合物の細胞透過性の50パーセント未満である。
【0109】
式Iを参照すると、ある特定の実施形態では、-C(X)Rは、生理学的pHでイオン化される1つ以上の官能基を含む。
【0110】
式Iを参照すると、ある特定の実施形態では、-C(X)Rは、生理学的pHでイオン化される1つ以上の官能基で置換されるアシル(C-C10)アルキルである。
【0111】
式Iを参照すると、ある実施形態では、-C(X)Rは、式HOC-(C-C10)アルキル-C(O)-で表される。
【0112】
例えば、ある特定の実施形態では、-C(X)Rは、式HOC-(CH-C(O)-で表される。
【0113】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rは、ホルミル、ダンシル、アセチル、ベンゾイル、トリフルオロアセチル、スクシニル、及びメトキシスクシニルからなる群から選択される。
【0114】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはホルミルである。
【0115】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはダンシルである。
【0116】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはアセチルである。
【0117】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはベンゾイルである。
【0118】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはトリフルオロアセチルである。
【0119】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはスクシニルである。
【0120】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはメトキシスクシニルである。
【0121】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rは、アリール(C-C)アシル及びヘテロアリール(C-C)アシルからなる群から選択される。
【0122】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはアリール(C-C)アシルである。
【0123】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはヘテロアリール(C-C)アシルである。
【0124】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、ベンジル、ナフタレニル、フェナントレニル、フェノリル、及びアニリニルからなる群から選択されるアリールで置換された(C-C)アシルである。
【0125】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、ベンジルで置換された(C-C)アシルである。
【0126】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、ナフタレニルで置換された(C-C)アシルである。
【0127】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、フェナントレニルで置換された(C-C)アシルである。
【0128】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、フェノリルで置換された(C-C)アシルである。
【0129】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、アニリニルで置換された(C-C)アシルである。
【0130】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、ベンジル、ナフタレニル、フェナントレニル、フェノリル、及びアニリニルからなる群から選択されるアリールで置換された(C)アシルである。
【0131】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、ベンジルで置換された(C)アシルである。
【0132】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、ナフタレニルで置換された(C)アシルである。
【0133】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、フェナントレニルで置換された(C)アシルである。
【0134】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、フェノリルで置換された(C)アシルである。
【0135】
ある特定の実施形態では、アリール(C-C)アシルは、アニリニルで置換された(C)アシルである。
【0136】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rはヘテロアリール(C-C)アシルである。
【0137】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリル、フリル、チオフェニル(チエニルとしても知られる)、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、及びピリミジニルからなる群から選択されるヘテロアリールで置換された(C-C)アシルである。
【0138】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリルで置換された(C-C)アシルである。
【0139】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、フリルで置換された(C-C)アシルである。
【0140】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、チオフェニル(チエニルとしても知られる)で置換された(C-C)アシルである。
【0141】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、イミダゾリルで置換された(C-C)アシルである。
【0142】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、オキサゾリルで置換された(C-C)アシルである。
【0143】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、チアゾリルで置換された(C-C)アシルである。
【0144】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、トリアゾリルで置換された(C-C)アシルである。
【0145】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピラゾリルで置換された(C-C)アシルである。
【0146】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリジニルで置換された(C-C)アシルである。
【0147】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリジニル(pyrizinyl)で置換された(C-C)アシルである。
【0148】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリダジニルで置換された(C-C)アシルである。
【0149】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリミジニルで置換された(C-C)アシルである。
【0150】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリル、フリル、チオフェニル(チエニルとしても知られる)、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、トリアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリダジニル、及びピリミジニルからなる群から選択されるヘテロアリールで置換された(C)アシルである。
【0151】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリルで置換された(C)アシルである。
【0152】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、フリルで置換された(C)アシルである。
【0153】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、チオフェニル(チエニルとしても知られる)で置換された(C)アシルである。
【0154】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、イミダゾリルで置換された(C)アシルである。
【0155】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、オキサゾリルで置換された(C)アシルである。
【0156】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、チアゾリルで置換された(C)アシルである。
【0157】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、トリアゾリルで置換された(C)アシルである。
【0158】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピラゾリルで置換された(C)アシルである。
【0159】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリジニルで置換された(C)アシルである。
【0160】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリジニルで置換された(C)アシルである。
【0161】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリダジニルで置換された(C)アシルである。
【0162】
ある特定の実施形態では、ヘテロアリール(C-C)アシルは、ピリミジニルで置換された(C)アシルである。
【0163】
ある実施形態では、プロドラッグは、
【化17】
からなる群から選択される式で表される。
【0164】
ある実施形態では、プロドラッグは、以下の式で表される
【化18】
【0165】
ある実施形態では、プロドラッグは、N-((R)-1-((R)-2-(((2S,3S,4S,6R)-3-ヒドロキシ-2-メチル-6-(((1S,3S)-3,5,12-トリヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシアセチル)-10-メトキシ-6,11-ジオキソ-1,2,3,4,6,11-ヘキサヒドロテトラセン-1-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)イソニコチンアミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0166】
ある実施形態では、プロドラッグは、N-((R)-1-((R)-2-(((2S,3R,4S,6R)-3-ヒドロキシ-2-メチル-6-(((1S,3S)-3,5,12-トリヒドロキシ-3-(2-ヒドロキシアセチル)-10-メトキシ-6,11-ジオキソ-1,2,3,4,6,11-ヘキサヒドロテトラセン-1-イル)オキシ)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)イソニコチンアミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0167】
ある実施形態では、プロドラッグは、N-((R)-1-((R)-2-(((2S,3S,4S,6R)-6-(((1S,3S)-3-アセチル-3,5,12-トリヒドロキシ-10-メトキシ-6,11-ジオキソ-1,2,3,4,6,11-ヘキサヒドロテトラセン-1-イル)オキシ)-3-ヒドロキシ-2-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)イソニコチンアミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0168】
ある実施形態では、プロドラッグは、N-((R)-1-((R)-2-(((2S,3S,4S,6R)-6-(((1S,3S)-3-アセチル-3,5,12-トリヒドロキシ-6,11-ジオキソ-1,2,3,4,6,11-ヘキサヒドロテトラセン-1-イル)オキシ)-3-ヒドロキシ-2-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)カルバモイル)ピロリジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)イソニコチンアミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0169】
本発明の態様は、本発明のプロドラッグ及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物である。ある実施形態では、薬学的組成物は、本発明の2つ以上のプロドラッグを含む。
【0170】
本発明の態様は、本発明の薬学的組成物の作製方法である。本方法は、本発明の化合物を薬学的に許容される担体と組み合わせるステップを含む。ある実施形態では、本方法は、特定の投与経路、例えば経口投与または静脈内投与用の薬学的組成物を製剤化するステップをさらに含む。
【0171】
本発明の態様は、推奨投薬量及び/または製剤の患者への投与を記載する説明書(書面及び/または画像)と共に、薬学的に許容される賦形剤中に製剤化された本明細書に記載されるプロドラッグを含む、パッケージ化された医薬品に関する。
【0172】
本発明の態様は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の上方制御を特徴とする障害の治療方法に関し、それを必要とする対象に治療有効量の本発明のプロドラッグを投与することを含む。FAP上方制御を特徴とする障害は、癌(例えば、固形腫瘍)、異常な細胞増殖、線維症、及び炎症を含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害は、癌、線維症、及び炎症からなる群から選択される。
【0173】
ある実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害は癌(例えば、固形腫瘍)である。
【0174】
ある実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害は乳癌腫である。
【0175】
ある実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害は非小細胞肺癌腫である。
【0176】
ある実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害は結腸直腸癌腫である。
【0177】
ある実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害は線維症である。
【0178】
ある実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害は炎症である。
【0179】
ある特定の実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害の治療方法は、それを必要とする対象に治療有効量の化学療法剤を投与することをさらに含む。
【0180】
ある特定の実施形態では、FAP上方制御を特徴とする障害の治療方法は、それを必要とする対象に治療有効量の抗炎症剤を投与することをさらに含む。
【0181】
本発明の態様は癌の治療方法に関し、それを必要とする対象に治療有効量の本発明のプロドラッグを投与することを含む。
【0182】
ある実施形態では、癌は乳癌腫である。
【0183】
ある実施形態では、癌は非小細胞肺癌腫である。
【0184】
ある実施形態では、癌は結腸直腸癌腫である。
【0185】
ある特定の実施形態では、癌の治療方法は、それを必要とする対象に治療有効量の化学療法剤を投与することをさらに含む。
【0186】
定義
本発明の文脈において、「薬物」は、疾患の治療の補助としてヒトまたは動物に投与することができる化学化合物を意味するものとする。特に、薬物は活性薬理学的作用剤である。
【0187】
用語「細胞毒性化合物」は、生細胞に毒性である化学化合物、特に細胞を破壊または死滅させる薬物を意味するものとする。用語「細胞増殖抑制化合物」は、細胞成長及び増加を抑制し、よって細胞の増殖を阻害する化合物を意味するものとする。
【0188】
本明細書で使用されるとき、「生理学的pH」は、生命と適合性の組織または血液pHを意味する。生理学的pHは典型的には6.8~8.4である。一実施形態では、生理学的pHは7.0~8.0である。一実施形態では、生理学的pHは7.2~7.8である。
【0189】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」または「治療」は、対象の疾患もしくは状態の進行を防止、遅延、または停止させる、その少なくとも1つの症状を減少させる、及び/またはそれを排除することを意味する。一実施形態では、「治療する」または「治療」は、対象の疾患もしくは状態の進行を遅延または停止させる、その少なくとも1つの症状を減少させる、及び/またはそれを排除することを意味する。
【0190】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」は、生存哺乳類を指す。ある実施形態では、対象は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、または非ヒト霊長類である。別の実施形態では、対象はヒトである。
【0191】
治療における使用に対する化合物の「治療有効量」は、所望の投薬量レジメンの一部として投与されるとき(哺乳類、好ましくはヒトに)、例えば、任意の医学的治療に適用可能な妥当な利益/リスク比で、治療される障害もしくは状態、または美容目的の臨床的許容基準に従い、症状を緩和する、状態を寛解させる、または疾患状態の開始を遅らせる調製物中の化合物の量を指す。
【0192】
用語「自己排除(self-eliminating)リンカー」または「自壊的リンカー」は、2つの分子を放出するために、定義された条件下で切断される化学結合により2つ以上の分子を一緒に結合するまでの一時的なエクステンダー、スペーサー、またはプレースホルダーを指す。一般に、自己排除または自壊的リンカーは、直鎖状または分枝状であってよく、同じ分子のうちの2つ以上を一緒に結合するか、または2つ以上の異なる分子を一緒に結合し得る。自壊的部分は、2つの離間した化学部分を通常安定した分子に一緒に共有結合し、酵素切断により分子から該離間した化学部分のうちの1つを放出し、該酵素切断後、二官能性化学基の残部から自発的に切断されて、該離間した化学部分のもう1つを放出することができる二官能性化学基として定義され得る。本発明によると、自壊的部分は、アミド結合により、スペーサー単位を通して、直接または間接的にその一端のうちの1つでFAP基質に共有結合され、そのもう一端で薬物からぶら下がっている化学反応性部位(官能基)に共有結合される。抱合体は、自壊的部分のアミド結合を切断することが可能な酵素(即ち、FAP)の不在下にある。自己排除または自壊的リンカーは、例えば、生理学的条件下、酸性条件下、塩基性条件下、または特定の化学剤の存在下で、劣化、分解、または断片化し得る。自己排除リンカーの例としては、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)及び2,4-ビス(ヒドロキシメチル)アニリンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な自壊的リンカーは、例えば、米国特許第7,754,681号に見出すことができる(参照により組み込まれる)。
【0193】
本明細書で使用されるとき、用語「プロドラッグ」は、生理学的条件下で、治療活性剤に変換される化合物を包含する。プロドラッグの一般的な作製方法は、生理学的条件下で加水分解されて所望の分子を曝露する選択部分を含むことである。他の実施形態では、プロドラッグは、宿主動物の酵素活性によって変換される。ある実施形態では、プロドラッグは、それに由来する、またはそれから放出される遊離もしくは活性薬物と比べて10パーセント未満の活性を有する。ある実施形態では、プロドラッグは、それに由来する、またはそれから放出される遊離もしくは活性薬物と比べて5パーセント未満の活性を有する。ある実施形態では、プロドラッグは、それに由来する、またはそれから放出される遊離もしくは活性薬物と比べて1パーセント未満の活性を有する。
【0194】
本明細書で使用されるとき、「本発明のプロドラッグ」または「本発明の化合物」は、本明細書に開示される式Iの任意のプロドラッグを指す。明確に除外される場合を除き、用語「本発明のプロドラッグ」または「本発明の化合物」は、式Iのこのようなプロドラッグの薬学的に許容される塩をさらに包含する。
【0195】
用語「薬学的に許容される塩」は、プロドラッグ(複数可)の任意に比較的非毒性の無機または有機酸添加塩を指す。これらの塩は、プロドラッグ(複数可)の最終単離及び精製中にインサイチュで、または好適な有機もしくは無機酸を用いてその遊離塩基形態で、精製されたプロドラッグ(複数可)を別個に反応させ、その結果形成された塩を単離することにより調製され得る。代表的な塩は、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(naphthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、及びラウリル硫酸塩などを含む。例えば、Berge et al.(1977)“Pharmaceutical Salts,J.Pharm.Sci.66:1-19を参照。
【0196】
他の場合では、本発明の化合物は、1つ以上の酸性官能基を含有し得、よって、薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することが可能である。これらの場合において、用語「薬学的に許容される塩」は、プロドラッグ(複数可)の任意の比較的非毒性の無機または有機塩基添加塩を指す。これらの塩は同様に、プロドラッグ(複数可)の最終単離及び精製中にインサイチュで、または薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩、または重炭酸塩などの好適な塩基を用いて、アンモニアを用いて、または薬学的に許容される有機一級、二級、もしくは三級アミンを用いてその遊離酸形態で、精製されたプロドラッグ(複数可)を別個に反応させることにより調製され得る。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩などを含む。塩基添加塩の形成に有用な代表的な有機アミンは、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどを含む(例えば、Berge et al.、上記を参照)。
【0197】
本明細書で使用されるとき、句「薬学的に許容される賦形剤」または「薬学的に許容される担体」は、身体の1つの臓器もしくはその一部から身体の別の臓器もしくはその一部への対象化学物質の運搬または輸送に関与する、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と相溶性であり、患者に有害ではなく、実質的に非発熱性であるという意味で「許容可能」でなければならない。薬学的に許容される担体としての機能を果たすことができる材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖類、(2)コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン類、(3)ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体、(4)トラガント粉末、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)ココアバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤、(9)落花生油、綿実油、紅花油、胡麻油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール類、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール類、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル類、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱性物質を含有しない水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、ならびに(21)医薬製剤において採用される他の非毒性相溶性物質が挙げられる。ある特定の実施形態では、本発明の薬学的組成物は、非発熱性である、即ち、患者に投与されたときに大幅な温度上昇を誘導しない。
【0198】
用語「予防的または治療的」処置は、当該技術分野において認識されており、対象組成物のうちの1つ以上の宿主への投与を含む。望ましくない状態の臨床所見(例えば、宿主動物の疾患または他の望ましくない状態)前に投与される場合、処置は予防的であるが(即ち、望ましくない状態の発症から宿主を保護する)、望ましくない状態の所見後に投与される場合、処置は治療的である(即ち、既存の望ましくない状態またはその副作用を低減、寛解、または安定させることが意図される)。
【0199】
用語「アミノ酸残基」または「アミノ酸」は、天然または合成に関わらず、アミノ酸類似体及び誘導体を含むアミノ官能性及び酸官能性の両方を含むすべての化合物を包含することが意図される。ある特定の実施形態では、本発明に企図されるアミノ酸は、アミノ基及びカルボキシル基を含有する、タンパク質に見出されるこれらの天然に生じるアミノ酸、またはこのようなアミノ酸の天然に生じる同化もしくは異化生成物である。
【0200】
天然に生じるアミノ酸は、全体を通して、以下のリストに従い、アミノ酸の慣用名に相当する従来の3文字及び/または1文字略語で特定される。略語は、ペプチドの分野において認められており、生化学命名法のIUPAC-IUB委員会により推奨される。
【表1】
【0201】
用語「アミノ酸残基」は、本明細書で言及される任意の特定のアミノ酸の類似体、誘導体、及び同類物、ならびにC末端もしくはN末端保護されたアミノ酸誘導体(例えば、N末端もしくはC末端保護基で修飾される)をさらに含む。
【0202】
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド」は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合により一緒に結合された一連のアミノ酸残基を指す。用語「ペプチド」は、ペプチド類似体、ペプチド誘導体、ペプチド模倣物、及びペプチド変異体を包含することが意図される。用語「ペプチド」は、任意の長さのペプチドを含むように理解される。本明細書に記載されるペプチド配列は、N末端アミノ酸が左にあり、C末端アミノ酸が右にある、一般的慣用に従い記される。
【0203】
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド類似体」は、1つ以上の天然に生じないアミノ酸を含むペプチドを指す。天然に生じないアミノ酸の例としては、d-アミノ酸(即ち、天然に生じる形態と反対のキラリティーのアミノ酸)、N-α-メチルアミノ酸、C-α-メチルアミノ酸、β-メチルアミノ酸、β-アラニン(β-Ala)、ノルバリン(Nva)、ノルロイシン(Nle)、4-アミノ酪酸(γ-Abu)、2-アミノイソ酪酸(Aib)、6-アミノヘキサン酸(ε-Ahx)、オルニチン(orn)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、サルコシン、シトルリン、システイン酸、シクロヘキシルアラニン、α-アミノイソ酪酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、3-アミノプロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸(2,3-diaP)、d-もしくはl-フェニルグリシン、d-もしくはl-2-ナフチルアラニン(2-Nal)、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic)、d-もしくはl-2-チエニルアラニン(Thi)d-もしくはl-3-チエニルアラニン、d-もしくはl-1-,2-,3-または4-ピレニルアラニン、d-もしくはl-(2-ピリジニル)-アラニン、d-もしくはl-(3-ピリジニル)-アラニン、d-もしくはl-(2-ピラジニル)-アラニン、d-もしくはl-(4-イソプロピル)-フェニルグリシン、d-(トリフルオロメチル)-フェニルグリシン、d-(トリフルオロメチル)-フェニルアラニン、d-p-フルオロフェニルアラニン、d-もしくはl-p-ビフェニルアラニン、d-もしくはl-p-メトキシビフェニルアラニン、メチオニンスルホキシド(MSO)、及びホモアルギニン(Har)が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、d-もしくはl-2-インドール(アルキル)アラニン、及びd-もしくはl-アルキルアラニンが挙げられ、アルキルは、置換もしくは非置換のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソ-ブチル、またはイソ-ペンチル、及びホスホノ-または硫酸化(例えば、-SOH)非カルボキシレートアミノ酸である。
【0204】
天然に生じないアミノ酸の他の例としては、3-(2-クロロフェニル)-アラニン、3-クロロ-フェニルアラニン、4-クロロ-フェニルアラニン、2-フルオロ-フェニルアラニン、3-フルオロ-フェニルアラニン、4-フルオロ-フェニルアラニン、2-ブロモ-フェニルアラニン、3-ブロモ-フェニルアラニン、4-ブロモ-フェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、2-メチル-フェニルアラニン、3-メチル-フェニルアラニン、4-メチル-フェニルアラニン、2,4-ジメチル-フェニルアラニン、2-ニトロ-フェニルアラニン、3-ニトロ-フェニルアラニン、4-ニトロ-フェニルアラニン、2,4-ジニトロ-フェニルアラニン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、ペンタフルオロフェニルアラニン、2,4-ジクロロ-フェニルアラニン、3,4-ジクロロ-フェニルアラニン、3,4-ジフルオロ-フェニルアラニン、3,5-ジフルオロ-フェニルアラニン、2,4,5-トリフルオロ-フェニルアラニン、2-トリフルオロメチル-フェニルアラニン、3-トリフルオロメチル-フェニルアラニン、4-トリフルオロメチル-フェニルアラニン、2-シアノ-フェニアラニン、3-シアノ-フェニアラニン4-シアノ-フェニアラニン、2-ヨード-フェニアラニン、3-ヨード-フェニアラニン、4-ヨード-フェニアラニン、4-メトキシフェニルアラニン、2-アミノメチル-フェニルアラニン、3-アミノメチル-フェニルアラニン、4-アミノメチル-フェニルアラニン、2-カルバモイル-フェニルアラニン、3-カルバモイル-フェニルアラニン、4-カルバモイル-フェニルアラニン、m-チロシン、4-アミノ-フェニルアラニン、スチリルアラニン、2-アミノ-5-フェニル-ペンタン酸、9-アントリルアラニン、4-tert-ブチル-フェニルアラニン、3,3-ジフェニルアラニン、4,4’-ジフェニルアラニン、ベンゾイルフェニルアラニン、α-メチル-フェニルアラニン、α-メチル-4-フルオロ-フェニルアラニン、4-チアゾリルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、2-チエニルアラニン、2-(5-ブロモチエニル)-アラニン、3-チエニルアラニン、2-フリルアラニン、2-ピリジルアラニン、3-ピリジルアラニン、4-ピリジルアラニン、2,3-ジアミノプロピオン酸、2,4-ジアミノ酪酸、アリルグリシン、2-アミノ-4-ブロモ-4-ペンテン酸、プロパルギルグリシン、4-アミノシクロペント-2-エンカルボン酸、3-アミノシクロペンタンカルボン酸、7-アミノ-ペプタン酸、ジプロピルグリシン、ピペコリン酸、アゼチジン-3-カルボン酸、シクロプロピルグリシン、シクロプロピルアラニン、2-メトキシ-フェニルグリシン、2-チエニルグリシン、3-チエニルグリシン、α-ベンジル-プロリン、α-(2-フルオロ-ベンジル)-プロリン、α-(3-フルオロ-ベンジル)-プロリン、α-(4-フルオロ-ベンジル)-プロリン、α-(2-クロロ-ベンジル)-プロリン、α-(3-クロロ-ベンジル)-プロリン、α-(4-クロロ-ベンジル)-プロリン、α-(2-ブロモ-ベンジル)-プロリン、α-(3-ブロモ-ベンジル)-プロリン、α-(4-ブロモ-ベンジル)-プロリン、α-フェネチル-プロリン、α-(2-メチル-ベンジル)-プロリン、α-(3-メチル-ベンジル)-プロリン、α-(4-メチル-ベンジル)-プロリン、α-(2-ニトロ-ベンジル)-プロリン、α-(3-ニトロ-ベンジル)-プロリン、α-(4-ニトロ-ベンジル)-プロリン、α-(1-ナフタレニルメチル)-プロリン、α-(2-ナフタレニルメチル)-プロリン、α-(2,4-ジクロロ-ベンジル)-プロリン、α-(3,4-ジクロロ-ベンジル)-プロリン、α-(3,4-ジフルオロ-ベンジル)-プロリン、α-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-プロリン、α-(3-トリフルオロメチル-ベンジル)-プロリン、α-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-プロリン、α-(2-シアノ-ベンジル)-プロリン、α-(3-シアノ-ベンジル)-プロリン、α-(4-シアノ-ベンジル)-プロリン、α-(2-ヨード-ベンジル)-プロリン、α-(3-ヨード-ベンジル)-プロリン、α-(4-ヨード-ベンジル)-プロリン、α-(3-フェニル-アリル)-プロリン、α-(3-フェニル-プロピル)-プロリン、α-(4-tert-ブチル-ベンジル)-プロリン、α-ベンズヒドリル-プロリン、α-(4-ビフェニルメチル)-プロリン、α-(4-チアゾリルメチル)-プロリン、α-(3-ベンゾ[b]チオフェニルメチル)-プロリン、α-(2-チオフェニルメチル)-プロリン、α-(5-ブロモ-2-チオフェニルメチル)-プロリン、α-(3-チオフェニルメチル)-プロリン、α-(2-フラニルメチル)-プロリン、α-(2-ピリジニルメチル)-プロリン、α-(3-ピリジニルメチル)-プロリン、α-(4-ピリジニルメチル)-プロリン、α-アリル-プロリン、α-プロピニル-プロリン、γ-ベンジル-プロリン、γ-(2-フルオロ-ベンジル)-プロリン、γ-(3-フルオロ-ベンジル)-プロリン、γ-(4-フルオロ-ベンジル)-プロリン、γ-(2-クロロ-ベンジル)-プロリン、γ-(3-クロロ-ベンジル)-プロリン、γ-(4-クロロ-ベンジル)-プロリン、γ-(2-ブロモ-ベンジル)-プロリン、γ-(3-ブロモ-ベンジル)-プロリン、γ-(4-ブロモ-ベンジル)-プロリン、γ-(2-メチル-ベンジル)-プロリン、γ-(3-メチル-ベンジル)-プロリン、γ-(4-メチル-ベンジル)-プロリン、γ-(2-ニトロ-ベンジル)-プロリン、γ-(3-ニトロ-ベンジル)-プロリン、γ-(4-ニトロ-ベンジル)-プロリン、γ-(1-ナフタレニルメチル)-プロリン、γ-(2-ナフタレニルメチル)-プロリン、γ-(2,4-ジクロロ-ベンジル)-プロリン、γ-(3,4-ジクロロ-ベンジル)-プロリン、γ-(3,4-ジフルオロ-ベンジル)-プロリン、γ-(2-トリフルオロメチル-ベンジル)-プロリン、γ-(3-トリフルオロメチル-ベンジル)-プロリン、γ-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-プロリン、γ-(2-シアノ-ベンジル)-プロリン、γ-(3-シアノ-ベンジル)-プロリン、γ-(4-シアノ-ベンジル)-プロリン、γ-(2-ヨード-ベンジル)-プロリン、γ-(3-ヨード-ベンジル)-プロリン、γ-(4-ヨード-ベンジル)-プロリン、γ-(3-フェニル-アリル-ベンジル)-プロリン、γ-(3-フェニル-プロピル-ベンジル)-プロリン、γ-(4-tert-ブチル-ベンジル)-プロリン、γ-ベンズヒドリル-プロリン、γ-(4-ビフェニルメチル)-プロリン、γ-(4-チアゾリルメチル)-プロリン、γ-(3-ベンゾチオイエニルメチル)-プロリン、γ-(2-チエニルメチル)-プロリン、γ-(3-チエニルメチル)-プロリン、γ-(2-フラニルメチル)-プロリン、γ-(2-ピリジニルメチル)-プロリン、γ-(3-ピリジニルメチル)-プロリン、γ-(4-ピリジニルメチル)-プロリン、γ-アリル-プロリン、γ-プロピニル-プロリン、トランス-4-フェニル-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-フルオロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸トランス-4-(3-フルオロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-フルオロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-クロロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-クロロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-クロロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-ブロモ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-ブロモ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-ブロモ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-メチル-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-メチル-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-メチル-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-ニトロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-ニトロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-ニトロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(1-ナフチル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-ナフチル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2,5-ジクロロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2,3-ジクロロ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-トリフルオロメチル-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-トリフルオロメチル-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-シアノ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-シアノ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-シアノ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-メトキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-メトキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-メトキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-ヒドロキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-ヒドロキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-ヒドロキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2,3-ジメトキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3,4-ジメトキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3,5-ジメトキシ-フェニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-ピリジニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-ピリジニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(4-ピリジニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-チエニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(3-チエニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-(2-フラニル)-ピロリジン-3-カルボン酸、トランス-4-イソプロピル-ピロリジン-3-カルボン酸、4-ホスホノメチル-フェニルアラニン、ベンジル-ホスホスレオニン、(1’-アミノ-2-フェニル-エチル)オキシラン、(1’-アミノ-2-シクロヘキシル-エチル)オキシラン、(1’-アミノ-2-[3-ブロモ-フェニル]エチル)オキシラン、(1’-アミノ-2-[4-(ベンジルオキシ)フェニル]エチル)オキシラン、(1’-アミノ-2-[3,5-ジフルオロ-フェニル]エチル)オキシラン、(1’-アミノ-2-[4-カルバモイル-フェニル]エチル)オキシラン、(1’-アミノ-2-[ベンジルオキシ-エチル])オキシラン、(1’-アミノ-2-[4-ニトロ-フェニル]エチル)オキシラン、(1’-アミノ-3-フェニル-プロピル)オキシラン、(1’-アミノ-3-フェニル-プロピル)オキシラン、及び/もしくはこれらの塩ならびに/または保護基変異体が挙げられる。
【0205】
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド誘導体」は、通常天然に生じるペプチドの一部ではない追加の化学部分または生化学部分を含むペプチドを指す。ペプチド誘導体は、アミノ末端及び/もしくはカルボキシ末端ならびに/または1つ以上のアミノ酸側鎖が好適な化学置換基で誘導体化されたペプチド、ならびに環式ペプチド、2重ペプチド、ペプチドのマルチマー、他のタンパク質もしくは担体に融合したペプチド、グリコシル化ペプチド、リン酸化ペプチド、親油性部分(例えば、カプロイル、ラウリル、ステアロイル部分)に抱合されたペプチド、及び抗体もしくは他の生物学的リガンドに抱合されたペプチドを含む。ペプチドを誘導体化するために使用され得る化学置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基、アシル基(アルカノイル基及びアロイル基を含む)、エステル、アミド、ハロゲン、ヒドロキシル、カルバミルなどが挙げられるが、これらに限定されない。置換基はまた、Fmoc(フルオレニルメチル-O-CO-)、カルボベンズオキシ(ベンジル-O-CO-)、モノメトキシスクシニル、ナフチル-NH-CO-、アセチルアミノ-カプロイル、及びアダマンチル-NH-CO-などのブロック基であってもよい。他の誘導体は、C末端ヒドロキシメチル誘導体、O修飾誘導体(例えば、C末端ヒドロキシメチルベンジルエーテル)、及びアルキルアミド及びヒドラジドなどの置換アミドを含むN末端修飾誘導体を含む。置換基は、本明細書に詳述されるように、「保護基」であり得る。
【0206】
本明細書で使用されるとき、用語「ペプチド模倣物」は、構造的にペプチドに類似し、ペプチドの機能を模倣する化学部分を含有する化合物を指す。例えば、ペプチドが機能活性を有する2つの帯電している化学部分を含有する場合、模倣物は、帯電している化学機能が3次元空間で維持されるように、2つの帯電している化学部分を空間的配向及び限定構造に配置する。よって、用語ペプチド模倣物は、同配体を含むことが意図される。本明細書で使用されるとき、用語「同配体」は、化学構造の立体高次構造が類似するため、例えば、構造がペプチドに特異的な結合部位に適合するため、ペプチドを置換し得る化学構造を指す。ペプチド模倣物の例としては、当該技術分野において周知である1つ以上の骨格修飾を含むペプチド(即ち、アミド結合模倣物)が挙げられる。アミド結合模倣物の例としては、-CHNH-、-CHS-、-CHCH-、-CH=CH-(シス及びトランス)、-COCH-、-CH(OH)CH-、-CHSO-、-CS-NH-、及び-NH-CO-(即ち、逆ペプチド結合)が挙げられるが、これらに限定されない(例えば、Spatola,Vega Data Vol.1,Issue 3,(1983)、Spatola,in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids Peptides and Proteins,Weinstein,ed.,Marcel Dekker,New York,p.267(1983)、Morley,J.S.,Trends Pharm.Sci.pp.463-468(1980)、Hudson et al.,Int.J.Pept.Prot.Res.14:177-185(1979)、Spatola et al.,Life Sci.38:1243-1249(1986)、Hann,J;Chem.Soc.Perkin Trans.1,307-314(1982)、Almquist et al.,J.Med Chem.23:1392-1398(1980)、Jennings-White et al.,Tetrahedron Lett.23:2533(1982)、Szelke et al.,EP 45665(1982)、Holladay et al.,Tetrahedron Lett.24:4401-4404(1983)、及びHruby,Life Sci. 31:189-199(1982)を参照)。ペプチド模倣物の他の例としては、1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されたペプチド(例えば、James,G.L.et al.(1993)Science 260:1937-1942)、及びラクタムまたは他の環式構造を形成するように架橋された骨格を含むペプチドが挙げられる。
【0207】
本明細書で使用されるとき、用語「変異体ペプチド」は、1つ以上のアミノ酸残基が、ペプチドが対応するアミノ酸配列と比較して、欠失、付加、または置換されたペプチドを指す。典型的には、変異体が1つ以上のアミノ酸置換を含有するとき、それらは「保存的」置換である。保存的置換は、1つのアミノ酸残基の、類似する側鎖特性を有する別の残基による置換を伴う。当該技術分野において既知であるように、20個の天然に生じるアミノ酸は、それらの側鎖の物理化学特性に従い分類され得る。好適な分類は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、フェニルアラニン、及びトリプトファン(疎水性側鎖);グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミン(極性、帯電していない側鎖);アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖)、ならびにリジン、アルギニン、及びヒスチジン(塩基性側鎖)を含む。アミノ酸の別の分類は、フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシン(芳香族側鎖)である。保存的置換は、アミノ酸の、同じ群からの別のアミノ酸との置換を伴う。
【0208】
ある特定の実施形態では、-C(X)Rは、N末端ブロックされたアルファアミノ酸残基を表し、式中、XはOである。N末端ブロックされたアミノ酸残基は、該残基のアミノ基に共有結合された保護基の存在により修飾されたアミノ酸残基である。
【0209】
本明細書で使用されるとき、句「保護基」は、望ましくない化学変換から潜在的に反応性の官能基を保護する一時的な置換基を意味する。
【0210】
用語「アミノ保護基」または「N末端保護基」は、合成手順中の望ましくない反応に対してアミノ酸もしくはペプチドのα-N末端を保護するか、またはさもなければアミノ酸もしくはペプチドのアミノ基を保護することが意図されるこれらの基を指す。通常使用されるN保護基は、Greene,Protective Groups In Organic Synthesis,(John Wiley&Sons,New York(1981))に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、保護基は、生物学的に活性な親を放出するために、インビボで、例えば、酵素加水分解により容易に切断されるプロドラッグとして使用され得る。α-N保護基は、ホルミル、アセチル(「Ac」)、プロピオニル、ピバロイル、t-ブチルアセチルなどの低級アルカノイル基を含み、他のアシル基は、2-クロロアセチル、2-ブロモアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタリル、o-ニトロフェノキシアセチル、-クロロブチリル、ベンゾイル、4-クロロベンゾイル、4-ブロモベンゾイル、4-ニトロベンゾイルなどを含み、スルホニル基は、ベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニルなどを含み、カルバメート形成基は、ベンジルオキシカルボニル、p-クロロベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、p-ニトロベンジルオキシカルボニル、2-ニトロベンジルオキシカルボニル、p-ブロモベンジルオキシカルボニル、3,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、2,4-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、4-エトキシベンジルオキシカルボニル、2-ニトロ-4,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、3,4,5-トリメトキシベンジルオキシカルボニル、1-(p-ビフェニルイル)-1-メチルエトキシカルボニル、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、t-ブチオキシカルボニル、ジイソプロピルメトキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、メトキシカルボニル、アリルオキシカルボニル,2,2,2,-トリクロロエトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、4-ニトロフェノキシカルボニル、フルオレニル-9-メトキシカルボニル、シクロペンチルオキシカルボニル、アダマンチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、フェニルチオカルボニルなどを含み、アリールアルキル基は、ベンジル、トリフェニルメチル、ベンジルオキシメチル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)などを含み、シリル基は、トリメチルシリルなどを含む。また他の例としては、テイル(theyl)、スクシニル、メトキシスクシニル、スベロイル、アジピル、アゼライル(azelayl)、ダンシル、ベンジルオキシカルボニル、メトキシアゼライル、メトキシアジピル、メトキシスベロイル、及び2,4-ジニトロフェニルが挙げられる。
【0211】
用語「カルボキシ保護基」または「C末端保護基」は、化合物の他の官能部位を伴う反応が実施されている間、カルボン酸官能性をブロックまたは保護するために採用されるカルボン酸保護エステルまたはアミド基を指す。カルボキシ保護基は、Greene,Protective Groups in Organic Synthesis pp.152-186(1981)に開示されており、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、カルボキシ保護基は、カルボキシ保護基が、生物学的に活性の親を放出するために、インビボで、例えば、酵素加水分解により容易に切断され得るプロドラッグとして使用され得る。このようなカルボキシ保護基は当業者に周知であり、米国特許第3,840,556号及び第3,719,667号(その開示は、本明細書において、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、ペニシリン及びセファロスポリンの分野において、カルボキシル基の保護に広く使用されている。代表的なカルボキシ保護基は、C-C低級アルキル(例えば、メチル、エチル、またはt-ブチルなど);アリールアルキル(フェネチルまたはベンジルなど)及びその置換誘導体(アルコキシベンジルまたはニトロベンジル基など);アリールアルケニル(フェニルエテニルなど);アリール及びその置換誘導体(5-インダニルなど);ジアルキルアミノアルキル(ジメチルアミノエチルなど));アルカノイルオキシアルキル基(アセトキシメチル、ブチリルオキシメチル、バレリルオキシメチル、イソブチリルオキシメチル、イソバレリルオキシメチル、1-(プロピオニルオキシ)-1-エチル、1-(ピバロイルオキシル)-1-エチル、1-メチル-1-(プロピオニルオキシ)-1-エチル、ピバロイルオキシメチル、プロピオニルオキシメチルなど);シクロアルカノイルオキシアルキル基(シクロプロピルカルボニルオキシメチル、シクロブチルカルボニルオキシメチル、シクロペンチルカルボニルオキシメチル、シクロヘキシルカルボニルオキシメチルなど);アロイルオキシアルキル(ベンゾイルオキシメチル、ベンゾイルオキシエチルなど);アリールアルキルカルボニルオキシアルキル(ベンジルカルボニルオキシメチル、2-ベンジルカルボニルオキシエチルなど);アルコキシカルボニルアルキルまたはシクロアルキルオキシカルボニルアルキル(メトキシカルボニルメチル、シクロヘキシルオキシカルボニルメチル、1-メトキシカルボニル-1-エチルなど);アルコキシカルボニルオキシアルキルまたはシクロアルキルオキシカルボニルオキシアルキル(メトキシカルボニルオキシメチル、t-ブチルオキシカルボニルオキシメチル、1-エトキシカルボニルオキシ-1-エチル、1-シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ-1-エチルなど);アリールオキシカルボニルオキシアルキル(2-(フェノキシカルボニルオキシ)エチル、2-(5-インダニルオキシカルボニルオキシ)エチルなど);アルコキシアルキルカルボニルオキシアルキル(2-(1-メトキシ-2-メチルプロパン-2-オイルオキシ)エチルなど);アリールアルキルオキシカルボニルオキシアルキル(2-(ベンジルオキシカルボニルオキシ)エチルなど);アリールアルケニルオキシカルボニルオキシアルキル(2-(3-フェニルプロペン-2-イルオキシカルボニルオキシ)エチルなど);アルコキシカルボニルアミノアルキル(t-ブチルオキシカルボニルアミノメチルなど);アルキルアミノカルボニルアミノアルキル(メチルアミノカルボニルアミノメチルなど);アルカノイルアミノアルキル(アセチルアミノメチルなど);複素環カルボニルオキシアルキル(4-メチルピペラジニルカルボニルオキシメチルなど);ジアルキルアミノカルボニルアルキル(ジメチルアミノカルボニルメチル、ジエチルアミノカルボニルメチルなど);(5-(低級アルキル)-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)アルキル((5-t-ブチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルなど)、ならびに(5-フェニル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)アルキル((5-フェニル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルなど)である。代表的なアミドカルボキシ保護基は、アミノカルボニル基及び低級アルキルアミノカルボニル基である。例えば、アスパラギン酸は、酸不安定基(例えばt-ブチル)によりα-C末端で保護され、水素化不安定基(例えばベンジル)によりβ-C末端で保護され、次に、合成中選択的に脱保護され得る。上述のように、保護されたカルボキシ基はまた、低級アルキル、シクロアルキル、またはアリールアルキルエステル、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、sec-ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル、イソアミルエステル、オクチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエチルエステルなど、またはアルカノイルオキシアルキル、シクロアルカノイルオキシアルキル、アロイルオキシアルキルもしくはアリールアルキルカルボニルオキシアルキルエステルであり得る。
【0212】
「脂肪族鎖」は、以下に定義されるアルキル、アルケニル、及びアルキニルのクラスを含む。直鎖状脂肪族鎖は、非分枝状炭素鎖部分に限定される。本明細書で使用されるとき、用語「脂肪族基」は、直鎖、分枝鎖、または環式脂肪族炭化水素基を指し、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基などの飽和及び不飽和脂肪族基を含む。
【0213】
「アルキル」は、指定された炭素原子の数、または指定されない場合、最大30個の炭素原子を有する、完全飽和環式もしくは非環式、分枝状もしくは非分枝状炭素鎖部分を指す。例えば、1~8個の炭素原子のアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルなどの部分、及びこれらの部分の位置異性体であるそれらの部分を指す。10~30個の炭素原子のアルキルは、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、及びテトラコシルを含む。ある特定の実施形態では、直鎖または分枝鎖アルキルは、その骨格に30個以下(例えば、直鎖に関してはC~C30、分枝鎖に関してはC~C30)、及びより好ましくは20個以下の炭素原子を有する。
【0214】
「シクロアルキル」は、単環式もしくは二環式、または架橋飽和炭素環式環を意味し、各々3~12個の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造に5~12個の炭素原子を有し、より好ましくは環構造に6~10個の炭素を有する。
【0215】
炭素の数が指定されない限り、本明細書で使用されるとき、「低級アルキル」は、上に定義されるアルキル基を意味するが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルなど、その骨格構造に1~10個の炭素、より好ましくは1~6個の炭素原子を有する。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」は、類似する鎖長を有する。本出願全体を通して、好ましいアルキル基は低級アルキルである。ある特定の実施形態では、本明細書にアルキルと指定される置換基は低級アルキルである。
【0216】
「アルケニル」は、指定された炭素原子の数、または炭素原子の数に対して制限が指定されない場合、最大26個の炭素原子を有し、かつその部分に1つ以上の2重結合を有する、任意の環式もしくは非環式、分枝状もしくは非分枝状不飽和炭素鎖部分を指す。6~26個の炭素原子のアルケニルは、不飽和結合(複数可)がその部分のどこに位置してもよく、2重結合(複数可)について(Z)または(E)構成のいずれかを有し得る、それらの様々な異性体形態で、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドコセニル、トリコセニル、及びテトラコセニルにより例示される。
【0217】
「アルキニル」は、アルケニルの範囲のヒドロカルビル部分を指すが、その部分に1つ以上の3重結合を有する。
【0218】
用語「アルキルチオ」は、それに結合される硫黄部分を有する、上に定義されるアルキル基を指す。ある特定の実施形態では、「-アルキルチオ-」部分は、-(S)-アルキル、-(S)-アルケニル、-(S)-アルキニル、及び-(S)-(CH-R(式中、m及びRは以下に定義される)のうちの1つにより表される。代表的なアルキルチオ基は、メチルチオ、エチルチオなどを含む。
【0219】
本明細書で使用されるとき、用語「アルコキシル」または「アルコキシ」は、それに結合される酸素部分を有する、以下に定義されるアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどを含む。「エーテル」は、酸素により共有結合された2つの炭化水素である。したがって、そのアルキルにエーテルを付与するアルキルの置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O-(CH-R(式中、m及びRは以下に記載される)のうちの1つにより表され得るなど、アルコキシルであるか、またはそれに類似する。
【0220】
用語「アミン」及び「アミノ」は、当該技術分野において認識されており、非置換及び置換両方のアミン、例えば、次の式:
【化19】
により表すことができる部分を指し、式中、R、R、及びRは各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、-(CH-R、またはRを表し、Rは、それらが結合されるN原子と共に、環構造に4~8個の原子を有する複素環を完成させ、Rは、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、またはポリシクリル(polycyclyl)を表し、mは、0または1~8の範囲の整数である。ある特定の実施形態では、RまたはRのうちの1つのみがカルボニルであり得、例えば、R、R、及び窒素は一緒にイミドを形成しない。さらにより特定の実施形態では、R及びR(及び任意選択で、R)は各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、または-(CH-Rを表す。よって、本明細書で使用されるとき、用語「アルキルアミン」は、それに結合される置換または非置換アルキルを有する、上に定義されるアミン基を意味する、即ち、R及びRのうちの少なくとも1つは、アルキル基である。ある特定の実施形態では、アミノ基またはアルキルアミンは塩基性であり、つまり、pK≧7.00を有する共役酸を有する、即ち、これらの官能基の陽子添加形態は、水と比べて、約7.00を超えるpKを有する。
【0221】
本明細書で使用されるとき、用語「アリール」は、環の各原子が炭素である(即ち、炭素環式アリール)、5~12員の置換または非置換単環及び多環式芳香族基を含む。好ましくは、アリール基は、5~12員環、より好ましくは6~10員環を含む。用語「アリール」は、環のうちの少なくとも1つが芳香族であり、例えば、他の環式環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/またはヘテロシクリルであり得る、2つ以上の炭素が2つの隣接環に共通である2つ以上の環式環を有する多環式環系も含む。炭素環式アリール基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどを含む。
【0222】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロアリール」は、芳香族環または環系の1つ以上の原子がヘテロ原子である、5~12員の置換または非置換単環及び多環式芳香族基を含む。好ましくは、ヘテロアリール基は、5~12員環、より好ましくは6~10員環を含む。用語「ヘテロアリール」は、環のうちの少なくとも1つがヘテロ芳香族であり、例えば、他の環式環が、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/またはヘテロシクリルであり得る、2つ以上の原子が2つの隣接する環に共通である2つ以上の環式環を有する多環式環系も含む。ヘテロアリール基は、その環構造が1~4個のヘテロ原子を含む、置換または非置換芳香族5~12員環構造、より好ましくは6~10員環を含む。ヘテロアリール基は、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、プリン、キノリン、イソキノリン、カルバゾールなどを含む。
【0223】
用語「ヘテロシクリル」または「複素環基」は、その環構造が1~4個のヘテロ原子を含む、3~18員環構造、より好ましくは5~12員環、より好ましくは6~10員環を指す。複素環はまた、ポリシクル(polycycle)であり得る。ヘテロシクリル基は、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム(アゼチジノン及びピロリジノンなど)、スルタム、スルトンなどを含む。複素環式環は、1つ以上の位置で、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルファモイル、スルフィニル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、-CF、-CNなど、上述のこのような置換基で置換され得る。
【0224】
用語「カルボニル」は、当該技術分野において認識されており、次の式:
【化20】
により表すことができるこのような部分を含み、式中、Xは結合であるか、または酸素もしくは硫黄を表し、Rは、水素、アルキル、アルケニル、-(CH-R、または薬学的に許容される塩を表し、Rは、水素、アルキル、アルケニル、または-(CH-Rを表し、m及びRは上に定義される通りである。Xが酸素であり、かつRまたはRが水素でない場合、式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、かつRが上に定義される通りである場合、その部分は、本明細書において、カルボキシル基と称され、特にRが水素である場合、式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、かつRが水素である場合、式は「ギ酸塩」を表す。一般に、上式の酸素原子が硫黄原子で置き換えられる場合、式は「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、かつRまたはRが水素出ない場合、式は「チオエステル」基を表す。Xが硫黄であり、かつRが水素である場合、式は「チオカルボン酸」基を表す。Xが硫黄であり、かつRが水素である場合、式は「チオギ酸塩」基を表す。一方、Xが結合であり、かつRが水素ではない場合、上式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、かつRが水素である場合、上式は「アルデヒド」基を表す。
【0225】
本明細書で使用されるとき、用語「チオキサミド(thioxamide)」は、次の式:
【化21】
により表すことができる部分を指し、式中、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、またはアリール、好ましくは水素またはアルキルからなる群からなる群から選択される。さらに、「チオキサミド由来」化合物または「チオキサミド類似体」は、1つ以上のアミド基が1つ以上の対応するチオキサミド基で置き換えられた化合物を指す。チオキサミドは、当該技術分野において、「チオアミド」とも称される。
【0226】
本明細書で使用されるとき、用語「置換(substituted)」は、有機化合物のすべての容認できる置換基を含むことが企図される。広範な態様では、容認できる置換基は、有機化合物の非環式及び環式、分枝状及び非分枝状、炭素環式及び複素環、芳香族及び非芳香族置換基を含む。例示的な置換基は、例えば、本明細書において上述されるものを含む。容認できる置換基は、適切な有機化合物に関して、1つ以上及び同じまたは異なってもよい。本発明の目的において、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基及び/またはヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の任意の容認できる置換基を有し得る。本発明は、いかなる様式においても、有機化合物の容認できる置換基によって限定されることを意図しない。「置換」または「~で置換される」は、このような置換が置換された原子及び置換基の許容される原子価に従い、かつ置換が、例えば、転位、環化、脱離等の変換を自発的に受けない、安定した化合物をもたらすという暗黙の条件を含むことを理解する。
【0227】
本明細書で使用されるとき、用語「ニトロ」は-NOを意味し、用語「ハロゲン」は、-F、-Cl、-Br、または-Iを示し、用語「スルフヒドリル」は-SHを意味し、用語「ヒドロキシル」は-OHを意味し、用語「スルホニル」は-SO-を意味し、用語「アジド」は-Nを意味し、用語「シアノ」は-CNを意味し、用語「イソシアナト」は-NCOを意味し、用語「チオシアナト」は-SCNを意味し、用語「イソチオシアナト」は-NCSを意味し、用語「シアナト」は-OCNを意味する。
【0228】
用語「スルファモイル」は当該技術分野において認識されており、次の式:
【化22】
により表すことができる部分を含み、式中、R及びRは上に定義される通りである。
【0229】
用語「硫酸塩」は当該技術分野において認識されており、次の式:
【化23】
により表すことができる部分を含み、式中、Rは上に定義される通りである。
【0230】
用語「スルホンアミド」は当該技術分野において認識されており、次の式:
【化24】
により表すことができる部分を含み、式中、R及びRは上に定義される通りである。
【0231】
用語「スルホン酸塩」は当該技術分野において認識されており、次の式:
【化25】
により表すことができる部分を含み、式中、Rは、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである。
【0232】
本明細書で使用されるとき、用語「スルホキシド」または「スルフィニル」は、次の式:
【化26】
により表すことができる部分を指し、式中、R12は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、またはアリールからなる群からなる群から選択される。
【0233】
用語「DASHセリンプロテアーゼ」は、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)IV活性及び/またはその構造相同体を意味する。これらのタンパク質は、それらの一般的なポストプロリン切断セリンジペプチダーゼ機序により統合される酵素である。
【0234】
本明細書で使用されるとき、各表現、例えば、アルキル、m、n等の定義は、任意の構造において2回以上生じるとき、同じ構造の別の箇所のその定義とは無関係であることが意図される。
【0235】
本発明の目的において、化学元素は、Handbook of Chemistry and Physics,67th ed.,1986-87、内表紙の元素周期表、CAS版に従い特定される。
【0236】
本発明のある特定の化合物は、特定の幾何学的または立異性体形態で存在し得る。本発明は、本発明の範囲内に入る、シス及びトランス異性体、R及びSエナンチオマー、ジアステレオマー、(d)異性体、(l)異性体、それらのラセミ混合物、及びそれらの他の化合物を含む、すべてのこのような化合物を企図する。さらなる不斉炭素原子がアルキル基などの置換基に存在し得る。すべてのこのような異性体ならびにそれらの混合物は、本発明に含まれることが意図される。
【0237】
例えば、本発明の化合物の特定のエナンチオマーが所望される場合、不斉合成により、または得られるジアステレオマー混合物が分離され、補助基が切断されて純粋な所望のエナンチオマーをもたらすキラル補助を用いた誘導により調製され得る。代替的に、分子がアミノなどの塩基性官能基、またはカルボキシルなどの酸性官能基を含有する場合、適切な光学的に活性な酸または塩基を用いてジアステレオマー塩が形成され、その後、ジアステレオマーの分割が、結果として当該技術分野において周知の分別結晶またはクロマトグラフ法により形成され、後に純粋なエナンチオマーが回収される。
【0238】
同席療法
本発明の化合物は、他の治療剤と組み合わせることができる。本発明の化合物及び他の治療剤は、同時にまたは順次に投与され得る。他の治療剤が同時に投与されるとき、それらは同じまたは異なる製剤において投与され得るが、実質的に同時に投与される。他の治療剤の投与が本発明の化合物の投与とは一時的に分離されるとき、他の治療剤は、本発明の化合物と順次に投与される。これらの化合物間の時間の分離は数分程度であるか、またはそれ以上長くてもよい。
【0239】
本発明の化合物はまた、抗癌療法とも併用して投与され得る。抗癌療法は、癌用薬剤、放射線、及び外科手技を含む。本明細書で使用されるとき、「癌用薬剤」は、癌の治療目的のために対象に投与される薬剤を指す。本明細書で使用されるとき、「癌の治療」は、癌発達の防止、癌の症状の低減、及び/または確立した癌の成長の阻害を含む。一実施形態では、「癌の治療」は、原発部位で、または転移性に関わらず、癌の症状の低減、及び/または確立した癌の成長の阻害を意味する。癌の治療用の様々な種類の薬剤が本明細書に記載される。本明細書の目的において、癌用薬剤は、化学療法剤、免疫療法剤、癌ワクチン、ホルモン療法、及び生物学的応答修飾物質として分類される。
【0240】
化学療法剤は、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、非糖含有クロロエチルニトロソ尿素、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、フラジリン(fragyline)、メグラミン(Meglamine)GLA、バルルビシン、カルムスチン、及びポリフェルポサン(poliferposan)、MMI270、BAY 12-9566、RASファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、MMP、MTA/LY231514、LY264618/ロメテキソール(Lometexol)、グラモレック(Glamolec)、CI-994、TNP-470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、バルスポダール/PSC833、ノバントロン/ミトロキサントロン(Mitroxantrone)、メタレット/スラミン、バチマスタット、E7070、BCH-4556、CS-682、9-AC、AG3340、AG3433、インセル(Incel)/VX-710、VX-853、ZD0101、ISI641、ODN 698、TA 2516/マルミスタット、BB2516/マルミスタット、CDP 845、D2163、PD183805、DX8951f、レモナールDP 2202、FK 317、ピシバニール/OK-432、AD 32/バルルビシン、メタストロン(Metastron)/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロミド、エバセト(Evacet)/リポソームドキソルビシン、イエウタキサン(Yewtaxan)/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、キセロード(Xeload)/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、シクロパックス(Cyclopax)/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU-077/シスプラチン、HMR 1275/フラボピリドール、CP-358(774)/EGFR、CP-609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS-182751/経口白金、UFT(テガフール/ウラシル)、エルガミソール(Ergamisol)/レバミゾール、エニルウラシル/776C85/5FU増強剤、カンプト/レバミゾール、カンプトサー(Camptosar)/イリノテカン、ツモデックス(Tumodex)/ラリトレキセド(Ralitrexed)、ロイスタチン/クラドリビン、パキセクス(Paxex)/パクリタキセル、ドキシル/リポソームドキソルビシン、カエティクス(Caelyx)/リポソームドキソルビシン、フルダラ/フルダラビン、ファルマルビシン(Pharmarubicin)/エピルビシン、DepoCyt、ZD1839、LU 79553/ビス-ナフタルイミド、LU 103793/ドラスタイン(Dolastain)、カエティクス(Caetyx)/リポソームドキソルビシン、ゲムザール(Gemzar)/ゲムシタビン、ZD 0473/アノルメド(Anormed)、YM 116、ヨウ素シード、CDK4及びCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/デキシフォサミド(Dexifosamide)、アイフェス(Ifes)/メスネクス(Mesnex)/イフォサミド(Ifosamide)、ブモン(Vumon)/テニポシド、パラプラチン/カルボプラチン、プランチノール/シスプラチン、ベペシド/エトポシド、ZD 9331、タキソテール(Taxotere)/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサンアナログ、ニトロソ尿素、メルフェラン(melphelan)及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロロムブシル(Chlorombucil)、シタラビンHCI、ダクチノマイシン、ダウノルビシンHCl、リン酸エストラムスチンナトリウム、エトポシド(VP16-213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5-FU)、フルタミド、ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ-2a、Alfa-2b、酢酸ロイプロリド(LHRH放出因子類似体)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、メスナ、ミトタン(o.p’-DDD)、ミトキサントロンHCl、オクトレオチド、プリカマイシン、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、クエン酸タモキシフェン、チオグアニン、チオテパ、硫酸ビンブラスチン、アムサクリン(m-AMSA)、アザシチジン、エリスロポエチン、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、ミトグアゾン(メチル-GAG;メチルグリオキサールビス-グアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2’デオキシコホルマイシン)、セムスチン(メチル-CCNU)、テニポシド(VM-26)、ならびに硫酸ビンデシンからなる群から選択され得るが、このように限定されない。
【0241】
免疫療法剤は、リブタキシン(Ributaxin)、ハーセプチン、クアドラメット、パノレックス(Panorex)、IDEC-Y2B8、BEC2、C225、オンコリム(Oncolym)、SMART M195、ATRAGEN、オバレックス、ベキサール(Bexxar)、LDP-03、ior t6、MDX-210、MDX-11、MDX-22、OV103、3622W94、抗VEGF、ゼナパックス、MDX-220、MDX-447、MELIMMUNE-2、MELIMMUNE-1、CEACIDE、プレターゲット(Pretarget)、NovoMAb-G2、TNT、グリオマブ(Gliomab)-H、GNI-250、EMD-72000、リンホシド(LymphoCide)、CMA 676、モノファーム(Monopharm)-C、4B5、ior egf.r3、ior c5、BABS、抗FLK-2、MDX-260、ANA Ab、SMART 1D10 Ab、SMART ABL 364 Ab、及びImmuRAIT-CEAからなる群から選択され得るが、このように限定されない。
【0242】
癌ワクチンは、EGF、抗イディオタイプ癌ワクチン、gp75抗原、GMK黒色腫ワクチン、MGVガングリオシド接合ワクチン、Her2/neu、オバレックス、M-Vax、O-Vax、L-Vax、STn-KHLテラトープ(theratope)、BLP25(MUC-1)、リポソームイディオタイプワクチン、メラシン(Melacine)、ペプチド抗原ワクチン、毒素/抗原ワクチン、MVA系ワクチン、PACIS、BCGワクチン、TA-HPV、TA-CIN、DISCウイルス、及びImmuCyst/TheraCysからなる群から選択され得るが、このように限定されない。
【0243】
本発明の化合物はまた、抗炎症剤とも併用して投与され得る。抗炎症剤は、非ステロイド系炎症(NSAID)、基本元素の金、副腎皮質ステロイド、ビタミンD、ビタミンE、及びスタチン(HMG-Co-Aレダクターゼ阻害剤)を含む。NSAIDは、アスピリン、サリチル酸コリン、セレコキシブ、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェンカルシウム、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、サリチル酸マグネシウム、メクロフェナム酸ナトリウム、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサラート、サリチル酸ナトリウム、スリンダク、トルメチンナトリウム、及びバルデコキシブを含むが、これらに限定されない。副腎皮質ステロイドは、ベタメタゾン、コルチゾール(ヒドロコルチゾン)、コルチゾン、デキサメタゾン、フルドロコルチゾン、フルチカゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、テトラヒドロコルチゾール、及びトリアムシノロンを含むが、これらに限定されない。スタチンは、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、及びシンバスタチンを含むが、これらに限定されない。
【0244】
投薬量及び投与レジメン
上述のように、「有効量」は、所望の生物学的作用を達成するのに十分な任意の量を指す。本明細書に提供される教示と共に、様々な活性化合物、ならびに効力、相対的生体利用能、患者の体重、有害副作用の重篤度、及び好ましい投与モードなどの重み付け要因から選択することにより、実質的に望ましくない毒性をもたらさず、尚も特定の対象を治療するのに有効である有効な予防または治療レジメンを計画することができる。任意の特定の用途のための有効量は、治療される疾患もしくは状態、投与される本発明の特定の化合物、対象の大きさ、または疾患もしくは状態の重篤度などのこのような要因により変動し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、本発明の特定の化合物及び/または他の治療剤の有効量を経験的に決定することができる。最大用量、つまり、ある医学的判断に従う最高安全用量が使用されることが一般的に好ましい。1日当たりの多用量は、化合物の適切な全身レベルを達成することが企図され得る。適切な全身レベルは、例えば、患者の薬物のピークまたは持続血漿レベルを測定することにより決定することができる。「用量」及び「投薬量」は、本明細書において互換的に使用される。
【0245】
本明細書に記載される任意の化合物に関して、治療有効量は最初に動物モデルから決定され得る。治療有効用量は、ヒトにおいて試験された本発明の化合物、及び他の関連する活性剤など、類似する薬理学的活性を呈することが知られる化合物のヒトデータからも決定され得る。非経口投与に関するよりも高い用量が経口投与に関して必要とされ得る。適用される用量は、相対的な生体利用能及び投与される化合物の効力に基づき調節され得る。上述の方法及び当該技術分野において周知の他の方法に基づき最大有効性を達成するための用量の調節は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0246】
一般に、活性化合物(複数可)の静脈内1日用量は、1日当たり約0.001ミリグラム/kg~1日当たり100ミリグラム/kgである。1日当たり1回または数回の投与における0.05~5ミリグラム/kgの範囲の静脈内用量は所望の結果をもたらすと予想される。他のスケジュール、例えば、2日に1回、週に2回、毎週、2週間に1回、及び毎月の静脈内投薬も本発明により企図される。他の非経口投与経路に関する類似する投薬も本発明により企図される。
【0247】
一般に、活性化合物(複数可)の経口1日用量は、1日当たり約0.01ミリグラム/kg~1日当たり1000ミリグラム/kgである。1日当たり1回または数回の投与における0.5~50ミリグラム/kgの範囲の経口用量は所望の結果をもたらすと予想される。他のスケジュール、例えば、2日に1回、週に2回、毎週、2週間に1回、及び毎月の経口投薬も本発明により企図される。
【0248】
投薬量は、投与様式により、局所もしくは全身で所望の薬物レベルを達成するために適切に調節され得る。例えば、静脈内投与は、1日当たり1桁~数桁の規模の低用量であろうことが予想される。対象における応答がそのような用量で不十分である場合、さらに高い用量(または異なるより局所的な送達経路による有効なより高い用量)は、患者の忍容性が許す程度まで採用され得る。1日当たりの多用量は、化合物の適切な全身レベルを達成することが企図される。
【0249】
医薬製剤及び投与様式
本発明の製剤は、薬学的に許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、相溶性担体、アジュバンド、及び任意選択で他の治療成分を慣例的に含有し得る薬学的に許容される溶液において投与される。
【0250】
療法における使用に関して、本発明の化合物の有効量は、所望の表面に本発明の化合物を送達する任意のモードにより対象に投与され得る。本発明の薬学的組成物の投与は、当業者に既知の任意の手段により達成され得る。投与経路は、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直接注射(例えば、腫瘍内に)、粘膜、吸入、及び局所を含むが、これらに限定されない。
【0251】
経口投与に関して、化合物(即ち、本発明の化合物及び他の治療剤)は、活性化合物(複数可)を、当該技術分野に周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることにより容易に製剤化され得る。このような担体は、本発明の化合物が、治療される対象による経口摂取用の錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化されることを可能にする。経口使用のための薬学的調製物は、固形賦形剤として得ることができ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、所望される場合、好適な助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して、錠剤または糖衣剤コアを得る。好適な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含む、糖などの充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及び/またはポリビニルピロリドン(PVP)などのセルロース調製物である。所望される場合、架橋されたポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤が添加され得る。任意選択で、経口製剤は、食塩水または緩衝液、例えば、内部酸性条件を中和するためのEDTAにも製剤化されるか、または任意の担体なしで投与され得る。
【0252】
上記構成成分(複数可)の経口投薬形態も具体的に企図される。構成成分(複数可)は、誘導体の経口送達が有効であるように化学的に修飾され得る。一般に、企図される化学修飾は、少なくとも1つの部分の構成成分分子自体への結合であり、該部分は、(a)酸加水分解の阻害、及び(b)胃または腸から血流中への取り込みを可能にする。構成成分(複数可)の全体的な安定性の増加、及び身体における循環時間の増加も所望される。このような部分の例としては、ポリエチレングリコール、エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、及びポリプロリンが挙げられる。Abuchowski and Davis,“Soluble Polymer-Enzyme Adducts”,In:Enzymes as Drugs,Hocenberg and Roberts,eds.,Wiley-Interscience,New York,N.Y.,pp.367-383(1981)、Newmark et al.,J Appl Biochem 4:185-9(1982)。使用することができる他のポリマーは、ポリ-1,3-ジオキソラン及びポリ-1,3,6-チオキソカン(tioxocane)である。薬学的使用に好ましいのは、上述のように、ポリエチレングリコール部分である。
【0253】
構成成分(または誘導体)に関して、放出の場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸、または回腸)、または大腸であり得る。当業者は、胃で溶解しないが、十二指腸または腸の別の箇所で材料を放出する利用可能な製剤を有する。好ましくは、放出は、本発明の化合物(または誘導体)の保護、または腸などの胃環境を超えた生物学的活性材料の放出のいずれかにより、胃環境の有害作用を回避する。
【0254】
完全な胃耐性を確実にするために、少なくともpH5.0に不透過性のコーティングが必須である。腸溶コーティングとして使用されるより一般的な不活性成分の例は、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP)、HPMCP 50、HPMCP 55、ポリ酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、ユードラジット(Eudragit)L30D、アクアテリック(Aquateric)、酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ユードラジットL、ユードラジットS、及びシェラックである。これらのコーティングは、混合フィルムとして使用され得る。
【0255】
コーティングまたはコーティングの混合物は、胃に対する保護のために意図されない錠剤にも使用され得る。これは、糖コーティングまたは錠剤を飲み込み易くするコーティングを含み得る。カプセルは、乾燥治療剤(例えば粉末)の送達のための硬質シェル(ゼラチンなど)からなってよく、液体形態用に軟質ゼラチンシェルが使用され得る。カシェ剤のシェル材料は、粘稠なデンプンまたは他の食用紙であり得る。ピル、ロゼンジ剤、成形錠剤、または湿製錠剤に関して、湿式塊化法(moist massing techniques)が使用され得る。
【0256】
治療剤は、約1mmの粒径の顆粒またはペレットの形態の微細多粒子として製剤に含まれ得る。カプセル投与用の材料の製剤は、粉末、軽く圧縮されたプラグ、またはさらには錠剤としてであってもよい。治療剤は圧縮により調製され得る。
【0257】
着色剤及び風味剤をすべて含むことができる。例えば、本発明の化合物(または誘導体)が製剤化され(リポソームまたは小球体封入などにより)、次に着色剤及び風味剤を含有する冷蔵飲料などの食用製品内にさらに含有され得る。
【0258】
不活性材料で治療剤を希釈またはその容量を増加させることができる。これらの希釈剤は、炭水化物、特にマンニトール、a-ラクトース、無水ラクトース、セルロース、スクロース、修飾デキストラン、及びデンプンを含み得る。ある特定の無機塩は、三リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、及び塩化ナトリウムを含む充填剤としても使用され得る。いくつかの市販の希釈剤は、Fast-Flo、Emdex、STA-Rx 1500、Emcompress、及びアビセル(Avicell)である。
【0259】
崩壊剤は、治療剤を固形投薬形態に製剤化する際に含まれ得る。崩壊剤として使用される材料は、デンプンに基づく商業的な崩壊剤Explotabを含む、デンプンを含むが、これに限定されない。デンプングリコール酸ナトリウム、Amberlite、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ウルトラアミロペクチン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、オレジピール、及びカルボキシメチルセルロース、天然海綿、ならびにベントナイトもすべて使用することができる。崩壊剤の別の形態は、不溶性カチオン交換樹脂である。粉末ガムは崩壊剤及び結合剤として使用され、これらは寒天、カラヤ、またはトラガカントなどの粉末ガムを含み得る。アルギン酸及びそのナトリウム塩も崩壊剤として有用である。
【0260】
結合剤は、治療剤を一緒に保持して、硬錠剤を形成するために使用され、アカシア、トラガカント、デンプン、及びゼラチンなどの天然生成物からの材料を含み得る。他は、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、及びカルボキシメチルセルロース(CMC)を含む。ポリビニルピロリドン(PVP)及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は両方とも、治療剤を顆粒化するためにアルコール溶液に使用され得る。
【0261】
減摩剤は、製剤化のプロセス中の付着を防止するために治療剤の製剤に含まれ得る。滑沢剤は、治療剤と型壁との間の層として使用され得、これらは、ステアリン酸(そのマグネシウム及びカルシウム塩を含む)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、液体パラフィン、植物油、及びワックスを含み得るが、これらに限定されない。ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、様々な分子量のポリエチレングリコール、Carbowax 4000及び6000などの可溶性滑沢剤も使用することができる。
【0262】
製剤化中の薬物の流動特性を改善し得る、及び圧縮中の再構成を補助するための滑走剤が添加される場合がある。滑走剤は、デンプン、タルク、焼成シリカ、及び水化ケイ酸アルミニウム(hydrated silicoaluminate)を含み得る。
【0263】
治療剤の水性環境への溶解を補助するために、界面活性剤が湿潤剤として添加される場合がある。界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、及びスルホン酸ジオクチルナトリウムなどのアニオン性洗剤を含み得る。使用され得るカチオン性洗剤は、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムを含み得る。界面活性剤として製剤に含むことができる潜在的な非イオン性洗剤は、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアリン酸塩、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50、及び60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65、及び80、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロース、ならびにカルボキシメチルセルロースを含む。これらの界面活性剤は、本発明の化合物または誘導体の製剤に、単独で、または異なる比率で混合物としてのいずれかで存在し得る。
【0264】
経口的に使用することができる薬学的調製物は、ゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンで作製された軟質の密封カプセル、グリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤を含む。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに任意選択で安定剤との混合物で活性成分を収容し得る。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体に溶解または懸濁され得る。加えて、安定剤が添加され得る。経口投与用に製剤化された小球体も使用され得る。このような小球体は、当該技術分野において十分に定義されている。経口投与用のすべての製剤は、このような投与に好適な投薬量であるべきである。
【0265】
口腔投与に関して、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはロゼンジ剤の形態を取り得る。
【0266】
吸入による投与に関して、本発明に従い使用するための化合物は、便宜上、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適なガスの使用により、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー供与の形態で送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量した量を送達するための栓を提供することにより決定され得る。吸入具または吸入器に使用するための、化合物と、ラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基材との粉末ミックスを含有する、例えばゼラチンのカプセル及びカートリッジが製剤化され得る。
【0267】
本明細書において、本発明の化合物(またはその誘導体)の肺送達も企図される。本発明の化合物(または誘導体)は、吸入中に哺乳類の肺に送達され、肺臓上皮内層を横断して血流に入る。吸入分子の他の報告は、Adjei et al.,Pharm Res 7:565-569(1990)、Adjei et al.,Int J Pharmaceutics 63:135-144(1990)(酢酸リュープロリド)、Braquet et al.,J Cardiovasc Pharmacol 13(suppl. 5):143-146(1989)(エンドセリン-1)、Hubbard et al.,Annal Int Med 3:206-212(1989) (α1-アンチトリプシン)、Smith et al.,1989,J Clin Invest 84:1145-1146(a-1-プロテイナーゼ)、Oswein et al.,1990,“Aerosolization of Proteins”,Proceedings of Symposium on Respiratory Drug Delivery II,Keystone,Colorado,March(組換えヒト成長ホルモン)、Debs et al.,1988,J Immunol 140:3482-3488(インターフェロン-ガンマ及び腫瘍壊死因子アルファ)、及びPlatz et al.,米国特許第5,284,656号(顆粒球コロニー刺激因子)を含む。全身作用のための薬物の肺送達の方法及び組成物は、1995年9月19日に発行されたWongらの米国特許第5,451,569号に記載されている。
【0268】
ネブライザー、計量用量吸入具、及び粉末吸入具を含む、治療薬の肺送達用に設計された幅広い機械装置が本発明の実践における使用に企図され、これらのすべては当業者によく知られている。
【0269】
本発明の実践に好適な市販の装置のいくつかの具体的な例としては、Mallinckrodt,Inc.,St.Louis,Mo.により製造されているUltraventネブライザー、Marquest Medical Products,Englewood,Colo.により製造されているAcorn IIネブライザー、Glaxo Inc.,Research Triangle Park,North Carolinaにより製造されているVentolin計量用量吸入具、及びFisons Corp.,Bedford,Massにより製造されているSpinhaler粉末吸入具が挙げられる。
【0270】
すべてのこのような装置は、本発明の化合物(または誘導体)を分注するのに好適な製剤の使用を必要とする。典型的には、各製剤は、採用される装置の種類に特定であり、療法に有用である通常の希釈剤、アジュバンド、及び/または担体に加えて、適切な噴射材料の使用を伴う場合がある。また、リポソーム、マイクロカプセル、もしくは小球体、包接体、または他の種類の担体の使用が企図される。本発明の化学的に修飾された化合物は、化学修飾の種類または採用される装置の種類により、異なる製剤にも調製され得る。
【0271】
ジェットまたは超音波のいずれかのネブライザーを用いた使用に好適な製剤は、典型的には、溶液の1mL当たり約0.1~25mgの本発明の生物学的に活性な本発明の化合物の濃度で水に溶解された本発明の化合物(または誘導体)を含む。製剤は緩衝剤及び単糖(例えば、本発明の化合物の安定及び浸透圧の制御のため)も含み得る。ネブライザー製剤は、エアロゾルを形成する際の溶液の噴霧により生じる本発明の化合物の表面誘発凝集を減少または防止するために、界面活性剤も含有し得る。
【0272】
計量用量吸入具装置を用いて使用するための製剤は一般的に、界面活性剤の補助により噴射剤に懸濁された本発明の化合物(または誘導体)を含有する微細粉末を含む。噴射剤は、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン、またはこれらの組み合わせを含む、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、または炭化水素など、本目的に採用される任意の従来の材料であってよい。好適な界面活性剤は、トリオレイン酸ソルビタン及び大豆レシチンを含む。オレイン酸は界面活性剤としても有用であり得る。
【0273】
粉末吸入具装置から分注するための製剤は、本発明の化合物(または誘導体)を含有する微細乾燥粉末を含み、装置からの粉末の分散を容易にする量、例えば、製剤の50~90重量%で、ラクトース、ソルビトール、スクロース、またはマンニトールなどの増量剤も含み得る。本発明の化合物(または誘導体)は、肺深部への最も効果的な送達のために、有利に、10マイクロメートル(μm)未満、より好ましくは0.5~5μmの平均粒径の粒子形態で調製されるべきである。
【0274】
本発明の薬学的組成物の鼻腔内送達も企図される。鼻腔内送達は、肺に製品の堆積を必要とすることなく、鼻に治療薬を投与した後、本発明の薬学的組成物の血流への直接通過を可能にする。鼻腔内送達用の製剤はデキストランまたはシクロデキストランを用いたものを含む。
【0275】
鼻腔内投与に関して、有用な装置は、計量用量噴霧器が取り付けられる小さな硬いボトルである。一実施形態では、計量用量は、本発明の薬学的組成物の溶液を既定容積のチャンバに引き込むことにより送達され、このチャンバは、エアロゾル化するように寸法決定されたアパーチャ、及びチャンバ内の液体が圧縮される際に噴霧を形成することによるエアロゾル製剤を有する。チャンバは、本発明の薬学的組成物を投与するために圧縮される。特定の実施形態では、チャンバはピストン配置である。このような装置は市販されている。
【0276】
代替的に、圧搾したときに噴霧を形成することによりエアロゾル製剤をエアロゾル化するように寸法決定されたアパーチャまたは開口部を有するプラスチックのスクイーズボトルが使用される。開口部は通常ボトルの頂部にあり、エアロゾル製剤の効率的な投与のために、頂部は一般的に鼻腔に部分的に合うように先細りされている。好ましくは、鼻腔内吸入具は、薬物の計量用量を投与するために、計量された量のエアロゾル製剤を提供する。
【0277】
全身的に送達することが望ましい場合、化合物は、注射により、例えば、ボーラス注射または連続注入により非経口投与用に製剤化され得る。注射用の製剤は、保存剤を添加した、単位投薬形態、例えば、アンプルまたは多用量容器で提示され得る。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態を取ることができ、懸濁剤、安定剤、及び/分散剤などの製剤用剤を含有し得る。
【0278】
非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態で活性化合物の水溶液を含む。加えて、活性化合物の懸濁液は、適切な油状注射懸濁液として調製され得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、胡麻油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームを含む。水性注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランなど、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意選択で、懸濁液は、好適な安定剤、または化合物の溶解度を増加させて高濃度溶液の調製を可能にする薬剤も含有し得る。
【0279】
代替的に、活性化合物は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、減菌の発熱性物質を含有しない水で構成するための粉末形態であってもよい。
【0280】
化合物は、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基材を含有する、坐剤もしくは停留浣腸などの直腸または膣用組成物にも製剤化され得る。
【0281】
上述の製剤に加えて、化合物は、デポ剤としても調製され得る。このような長期作用性製剤は、好適なポリマーまたは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)、もしくはイオン交換樹脂を用いて、または難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として製剤化され得る。
【0282】
薬学的組成物は、好適な固相もしくはゲル相の担体または賦形剤も含み得る。このような担体または賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、及びポリエチレングリコールなどのポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0283】
好適な液体または固体の薬学的調製物形態には、例えば、吸入用の水性または食塩水溶液、マイクロカプセル化、渦巻型化(encochleated)、顕微鏡的金粒子上へのコーティング、リポソーム中への含有、噴霧化、エアロゾル、皮膚内移植用ペレット、または皮膚切創用鋭利物面での乾燥がある。薬学的組成物は、顆粒、粉末、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、滴剤もしくは活性化合物の持続放出調製物も含み、これらの調製物では、通例、崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、または可溶化剤などの賦形剤及び添加剤、ならびに/または助剤は、上述のように使用される。薬学的組成物は、様々な薬物送達系に使用するのに好適である。薬物送達の方法の簡単な総説については、Langer R,Science 249:1527-33(1990)を参照(参照により本明細書に組み込まれる)。
【0284】
本発明の化合物及び任意選択で他の治療剤は、これら自体で(純粋)、または薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。医薬において使用する場合、塩は薬学的に許容されなければならないが、薬学的に許容されない塩もその薬学的に許容される塩を調製するために適宜使用することができる。このような塩は、以下の酸から調製されるものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸。また、このような塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩のようなアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩として調製することもできる。
【0285】
好適な緩衝剤としては、酢酸と塩(1~2%w/v);クエン酸と塩(1~3%w/v);ホウ酸と塩(0.5~2.5%w/v);及びリン酸と塩(0.8~2%w/v)が挙げられる。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v);クロロブタノール(0.3~0.9%w/v);パラベン(0.01~0.25%w/v)、及びチメロサール(0.004~0.02%w/v)が挙げられる。
【0286】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体に含まれる有効量の本発明の化合物及び任意選択で治療剤を含有する。用語「薬学的に許容される担体」は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与に好適な1つ以上の相溶性の固体もしくは液体充填剤、希釈剤、または封入物質を意味する。用語「担体」は、活性成分が組み合わされて適用を容易にする、天然もしくは合成の有機もしくは無機成分を示す。薬学的組成物の構成成分は、所望の薬学的効率を実質的に損なうであろう相互作用がないような様式で、本発明の化合物、及び互いに混合されることも可能である。
【0287】
具体的に本発明の化合物を含むが、これに限定されない治療剤(複数可)は、粒子で提供され得る。本明細書で使用されるとき、粒子は、本明細書に記載される本発明の化合物もしくは他の治療剤(複数可)の全体または一部を構成し得るナノ粒子または微粒子(またはいくつかの場合では、より大きい粒子)を意味する。粒子は、腸溶コーティングを含むが、これに限定されないコーティングで覆われたコアに治療剤(複数可)を含有し得る。治療剤(複数可)は粒子全体にも分散され得る。治療剤(複数可)はまた、粒子内にも吸着され得る。粒子は、ゼロ次放出、1次放出、2次放出、遅延放出、または持続放出、即放出、及びこれらの任意の組み合わせ等を含む、任意の次放出速度論のものであり得る。粒子は、治療剤(複数可)に加えて、侵食性、非浸食性、生分解性、もしくは非生分解性材料、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、薬学及び医薬の分野において日常的に使用されるこれらの材料のいずれかを含み得る。粒子は、溶液または半固体状態で本発明の化合物を含有するマイクロカプセルであり得る。粒子は事実上あらゆる形状のものであり得る。
【0288】
非生分解性及び生分解性の両方のポリマー材料は、治療剤(複数可)を送達するための粒子を製造する際に使用され得る。このようなポリマーは、天然または合成ポリマーであり得る。ポリマーは、放出が所望される時間期間に基づき選択される。特定の関心の生体吸着性ポリマーは、Sawhney H S et al.(1993)Macromolecules 26:581-7に記載される生体浸食性ヒドロゲルを含み、その教示は、本明細書に組み込まれる。これらは、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ無水物、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、キトサン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、及びポリ(アクリル酸オクタデシル)を含む。
【0289】
治療剤(複数可)は、放出制御系に含有され得る。用語「放出制御」は、製剤からの薬物放出の様式及びプロファイルが制御される任意の薬物含有製剤を指すことが意図される。これは、即放性ならびに非即放性製剤を指し、非即放性製剤は持続放出及び遅延放出製剤を含むが、これらに限定されない。用語「持続放出」(「徐放性」とも称される」)は、その慣用の意味で、長期間にわたって薬物の緩慢な放出を提供し、必要ではないが、好ましくは長期間にわたって薬物の実質的に一定した血液レベルをもたらす薬物製剤を指すように使用される。用語「遅延放出」は、その慣用の意味で、製剤の投与とそれからの薬物の放出との間に時間遅延がある薬物製剤を指すように使用される。「遅延放出」は、長期間にわたって薬物の緩慢な放出を伴う場合も、伴わない場合もあり、よって、「持続放出」である場合も、そうでない場合もある。
【0290】
長期持続放出インプラントの使用は、慢性状態の治療に特に好適であり得る。本明細書で使用されるとき、「長期」放出は、インプラントが少なくとも7日間、好ましくは30~60日間、治療レベルの活性成分を送達するように構成及び配置されることを意味する。長期持続放出インプラントは、当業者に周知であり、上述の放出系のいくつかを含む。
【0291】
ここで本発明を詳細に記載してきたが、これは、単に例示の目的で含まれ、本発明を限定することを意図しない、以下の実施例を参照により明確に理解されるだろう。
【実施例0292】
実施例1
3099DOXの合成
【化27】
スキーム。試薬及び条件:i.H-Pro-OBzl、EDCI、HOBt、DIEA;ii.ジオキサン中4N HCl、2ステップにわたって92%;iii.イソニコチノイルクロリド、DIEA、86%;iv.H/Pd-C、93%;v.EDCI、HOSu;vi.ドキソルビシン.HCl、リン酸緩衝液、DMSO、2ステップにわたって81%。
【0293】
化合物1の合成
EDCI.HCl(2.9g、15mmol)、HOBt(1.6g、12mmol)、及びDIEA(2.0mL、11.5mmol)を、氷水浴冷却下で無水DMF(40mL)中のN-Boc-D-Ala-OH(1.9g、10mmol)の溶液に添加した。得られた混合物を室温で20分間攪拌し、氷水浴で再び冷却し、L-プロリンベンジルエステル塩酸塩(2.54g、10.5mmol)、続いて別に2.0mLのDIEAを添加した。反応混合物を一晩室温で撹拌し、次に真空中で凝縮した。残留物を酢酸エチル(150mL)で溶解し、0.1N KHSO(3×40mL)、水性NaHCO(3×40mL)、鹹水(30mL)で順次に洗浄した。有機相を無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させ、N-Boc-D-Ala-L-Pro-OBzlを得、次にこれを、氷水浴冷却下で、ジオキサン(30mL)中4N HClの溶液に添加した。得られた混合物を室温で2時間攪拌し、次に真空中で凝縮した。残留物を真空中でジクロロメタン(3×30mL)と同時蒸発させて完全に乾燥させた。これにより、白色粉末として化合物1を得た(2.9g、2ステップにわたって92%)。
【0294】
化合物2の合成
無水ジクロロメタン(100mL)中の化合物1(2.8g、8.9mmol)の溶液を氷水浴冷却下で攪拌した。次に、DIEA(4.6mL、27mmol)をゆっくり添加し、続いてイソニコチノイルクロリド塩酸塩(1.75g、9.8mmol)を10分かけて少しずつ添加した。反応が完了するまで得られた混合物を室温で5時間攪拌し、次にさらなるジクロロメタン(100mL)で希釈し、水(20mL)、水性NaHCO(2×20mL)、水性NaCl(20mL)で洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させ、粗化合物2を得、これをシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーでさらに精製し(CHCl:MeOH、20:1)、純粋な生成物2を得た(2.9g、86%)。
【0295】
化合物3の合成
化合物2(1.5g、3.9mmol)をメタノール(20mL)中10%Pd-C(0.15g)の懸濁溶液に添加した。混合物を減圧下で脱気し、H(50psi)下に設置した。反応が完了するまで、混合物を室温で3時間攪拌した。次に、セライトを通して濾過することにより触媒を除去した。濾液を真空中で完全に乾燥するまで濃縮し、白色粉末として化合物3を得た(1.05g、93%)。
【0296】
3099DOXの合成
EDCI.HCl(785mg、3.15mmol)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(0.38g、3.3mmol)を、氷水浴冷却下で無水DMF(25mL)中の化合物3(0.87g、3.0mmol)の溶液に添加した。反応混合物を室温で3時間攪拌し、真空中で濃縮し、DMSO(10mL)に再溶解して溶液Aを作製した。
【0297】
pH7.8のリン酸緩衝液(50mL)を、氷水浴冷却下でよく攪拌しながらDMSO(140mL)中のドキソルビシンHCl(1.9g、3.3mmol)の別の溶液にゆっくり添加した。次に、溶液Aを添加し、得られた混合物を室温で8時間攪拌し、氷水浴で再び冷却し、水(80mL)及びジクロロメタン(800mL)で希釈した。有機相を分配及び分離し、水性NaCl(2×200mL)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濃縮し、シリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し(CHCl:MeOH、20:1~7:1)、粘稠な暗赤色粉末として純粋な化合物3099DOXを得、これを2:3のアセトニトリル-水で再溶解し、凍結乾燥させ、適度な淡赤色粉末を得た(2.0g、2ステップにわたって81%)。
【0298】
分析
(i)化合物3099DOXのLCMS。
0~3分:2%B;3~20分:2~98%B;20~25分:98%B。
Old LCMSで、1.8μm粒径カラムで実行。
計算値MW、816;13.5分でのピークが観察された、839.2:[M+Na]、403.2。
【0299】
(ii)H NMR(DO/ACN-d、1:1)は2:8の比率の2つの回転異性体を示した。
【0300】
(iii)H NMR(CDCl)は単一回転異性体を示した。
【0301】
(iv)純度分析
HPLC条件:
カラム:Agilent Eclipsc Plus C18、4.6×50mm、1.8μm粒径
【表2】
勾配ポンププログラム:
【表3】
分析を開始する前に、カラムを初期組成物移動相で平衡化した。
保持時間:13.48分;純度:99.39%(TAN)。
【0302】
(v)3099DOXの安定性試験(固形粉末、開放バイアル)
【表4】
【0303】
実施例2
ゲムシタビンプロドラッグの合成
4735シリーズ(3099-His-Pro-ゲムシタビン)の一般合成スキームは‘3+2’アプローチ(スキーム1)に従った。PID 4735Dの代表的な合成経路はスキーム2に要約される。置換プロリン類似体は市販のヒドロキシル-プロリン(Hyp)から得た(スキーム3)。3852C(3099-ゲムシタビン)のスキームも提供される(スキーム4)。
【化28】
【0304】
【化29】
試薬及び条件:i.HATU、DIEA、DMF;ii.1N LiOH、THF、2ステップに対して85%;iii.HCl、His(Trt)-OMe、HATU、DIEA、DMF;iv.ジオキサン中4N HCl;v.イソニコチノイルクロリド、DIEA、DCM、3ステップに対して82%;vi.1N LiOH、THF、90%;vii.HATU、DIEA、DMF;viii.ジオキサン中4N HCl、2ステップに対して80%;ix.HATU、DIEA、DMF;x.95%TFA/DCM、2ステップに対して67%。
【0305】
【化30】
試薬及び条件:i.BocO、THF、HO、NaHCO;ii.BnBr、NaCO、DMF;iii.2,2-ジ-N-プロピルアセチルクロリド、DIEA、DCM、3ステップに対して64%;iv.H、Pd/C、MeOH、98%。
【0306】
【化31】
試薬及び条件:i.HATU、DIEA、DMF;ii.ジオキサン中4 NHCl;iii.イソニコチノイルクロリド、DIEA、DCM、3ステップに対して78%;iv.H、Pd/C、MeOH、95%;v.HATU、DIEA、DMF、87%。
【0307】
実験の項
ペプチドカップリング及び脱保護:Boc-AA-OH(1当量)、HCl、NH-AA-OBn(1当量)、及びHATU(1当量)を、氷水浴冷却下で無水DMF(40mL)に添加した。DIEA(2当量)を添加し、得られた混合物を室温で30分間攪拌した。残留物を酢酸エチル(150mL)で溶解し、0.1N KHSO、水性NaHCO、及び鹹水で順次に洗浄した。有機相を無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させ、粗Boc-AA-NH-AA-OBnを得た。
【0308】
次に、Boc-AA-NH-AA-OBnを、氷水浴冷却下でジオキサン(30mL)中4N HClの溶液に添加した。得られた混合物を室温で2時間攪拌し、次に真空中で凝縮した。残留物を真空中でジクロロメタンと同時蒸発させてHCl、NH-AA-NH-AA-OBnを得た。
【0309】
Boc-AA-NH-AA-OBnをメタノール中10%Pd-Cの懸濁溶液に添加した。混合物を減圧下で脱気し、H(50psi)下に設置した。反応が完了するまで、混合物を室温で3時間攪拌した。次に、セライトを通して濾過することにより触媒を除去した。濾液を真空中で濃縮し、白色粉末としてBoc-AA-NH-AA-OBnを得た。
【0310】
実施例3
ドキソルビシンプロドラッグ
【表5】
【0311】
実施例4
FAPによる3099DOX活性化の酵素速度論
FAPのミカエリス・メンテン型酵素速度論は、SpectraMax M2eマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA,USA)を用いて測定された。アッセイを、25℃のFAP緩衝液(50mMトリス、140mM NaCl、pH7.5)中で実施し、それぞれ、380及び460nmの励起及び発光波長で蛍光を絶えず監視した。
速度定数(kcat及びK)は、GP-AMC(Bachem,Torrance,CA,USA)、Ac-(D)-AP-AFC(MP Biomedicals,Solon,OH,USA)、及びそれらのそれぞれのK値の0.1~5倍に等しい試験物質濃度、及び5~10nM酵素を用いて決定された。全てのアッセイは3つ組で実施され、結果はGraphPadソフトウェアを用いたミカエリス・メンテン曲線適合に依存する非線形回帰分析で計算された。
【0312】
8.5×10-6M~6.9×10-4Mの範囲の様々な濃度の3099DOXを、37℃で1.34×10-8M FAPまたはPREPと共にインキュベートし、放出されたドキソルビシンを測定した。速度分析の結果を図2に示す。3099DOXは本質的にPREPでの活性化はなかったが、3099DOXはFAPによって活性化され、V最大=5.877×10-9M/秒、K=1.12×10-5M、kcat(V最大/[E])=0.44秒-1、及びkcat/K=39171 M-1-1であった。
【0313】
実施例5
ドキソルビシンプロドラッグに対する組換えFAP活性の速度
3099DOX、z-GP-DOX、及び3996DOXを、37℃で24時間、組換えFAPの存在下でインキュベートした。放出されたドキソルビシンを、1、4、12、及び24時間で測定した。結果を図3に示す。3099DOXはz-GP-DOXまたは3996DOXのいずれかよりも大幅に速く遊離ドキソルビシンをもたらし、約8時間で最大に達した。
【0314】
実施例6
FAPによる3099DOX活性化の特異性
各々100μMのドキソルビシンプロドラッグ3099DOX、z-GP-DOX、及び3996DOXを、37℃で24時間、5mg/mLのFAP、PREP、またはジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)で消化した。総ドキソルビシンは各アッセイに関して測定された。結果を図4に示す。ドキソルビシンは、FAPによって3099DOXから放出されたが、PREPまたはDPP IVのいずれかからは放出されなかった。類似する量のドキソルビシンがFAP及びPREPによってz-GP-DOXから放出されたが、DPP IVによって本質的に全く放出されなかった。約15パーセントほどのみのドキソルビシンがFAPによって3996DOXから放出されたが、PREPまたはDPP IVからは本質的に全く放出されなかった。
【0315】
実施例7
マウス血漿における3099DOXの活性化
ドキソルビシン、3099DOX、またはz-PG-DOXをマウス血漿に添加して、100μMの等モル最終濃度の薬物またはプロドラッグを含有するサンプルを生成した。次に、得られたサンプルを37℃で12時間インキュベートし、ドキソルビシンを0、4、及び12時間で測定した。結果を図5に示す。3099DOXは、マウス血漿において、z-PG-DOXよりも約25パーセント速く活性化された。
【0316】
実施例8
マウスの筋肉溶解物における3099DOXの安定性
3099DOXまたはz-PG-DOXを、新しく調製したマウスの筋肉溶解物に添加して、100μMの等モル最終濃度のプロドラッグを含有するサンプルを生成した。次に、得られたサンプルを37℃で12時間インキュベートし、ドキソルビシンを12時間で測定した。結果を図6に示す。筋肉溶解物とインキュベートされた3099DOXは本質的にドキソルビシンを放出しなかったが、同じ条件下でインキュベートされたz-GP-DOXは大量のドキソルビシンを放出した。
【0317】
実施例9
正常なマウスにおける3099DOXの薬物動態
正常で健康なマウスに、単回静脈内(iv)注射で20mg/kg体重の3099DOXを投与した。次に、投与5、15、30、60、120、及び240分後に血液を回収し、各血液サンプルから血漿を調製した。プロドラッグ(3099DOX)及びドキソルビシン(「ウォーヘッド」)の血漿濃度は、タンパク質衝突後にLC-MS分析により測定された。結果を図7に示す。
【0318】
実施例10
正常なマウスにおけるドキソルビシンの薬物動態
正常で健康なマウスに、単回静脈内(iv)注射で20mg/kg体重の3099DOXまたは8mg/kg体重のドキソルビシンのいずれかを投与した。次に、投与5、15、30、60、120、及び240分後に血液を回収し、各血液サンプルから血漿を調製した。ドキソルビシンの血漿濃度は、タンパク質衝突後にLC-MS分析により測定された。結果を図8に示す。
【0319】
実施例11
HEK-FAP腫瘍モデル
ヒト胚性腎臓(HEK)細胞をマウスFAPまたはmockベクター(Fox Chase Cancer Center,Philadelphia,PA,USA)で安定して遺伝子導入し、2mM L-グルタミン、10mM HEPES、1mMピルビン酸ナトリウム、4.5g/Lグルコース、100I.Uペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、及び1%ヒトAB血清(VWR,Radnor,PA,USA)で補足された、フェノールレッドなしのRPMI 1640細胞培養培地中で培養した。
【0320】
次に、マウスを5つの処置群に分けた。腫瘍の大きさが100mmになったときに処置を開始した。群1の動物は、単回iv注射として1週間に1回、ビヒクル単独を受容した。群2の動物は、単回iv注射として1週間に1回、2mg/kg(3.7μモル/kg)のドキソルビシンを受容した。群3~5の動物は、単回iv注射として1週間に1回、それぞれ、6、9、または12mg/kg(7.4、11.1、または14.8μモル/kg)の3099DOXを受容した。腫瘍の大きさ(体積)、体重、及び生存は、処置開始後最大70日間監視された。加えて、3099DOX及びドキソルビシンの組織分布が本研究の最後に測定された。
【0321】
実施例12
HEK-FAP腫瘍モデルにおける3099DOXの組織分布
3099DOXの最終投薬の1時間後に、実施例11に記載されるHEK-FAP腫瘍モデル研究の群3の動物から組織を回収した。3099DOX(プロドラッグ)及びドキソルビシン(「ウォーヘッド」)の濃度は、心臓、腫瘍、及び血漿において決定された。結果を図9に示す。ドキソルビシンは、心臓及び血漿と比較して、腫瘍組織(約300nM)に集中した。3099DOXは、心臓及び腫瘍と比較して、血漿(約250nM)に集中した。
【0322】
実施例13
HEK-FAP腫瘍モデルにおける3099DOXの有効性
実施例11に記載されるHEK-FAP腫瘍モデルにおいて、腫瘍成長を監視した。結果を図10に示す。500mmの腫瘍の大きさに達するまでの平均日数は、ビヒクル処理された対照に関して41であった。500mmの腫瘍の大きさに達するまでの平均日数は、ドキソルビシン処置された群2に関して、41~43であった。前者の群のいずれかとは著しく対照的に、500mmの腫瘍の大きさに達するまでの平均日数は、3099DOX処置された群3、4、及び5に関して、それぞれ、51、57、及び63であった。後者の3つの値は、ビヒクルに対して統計的に有意であった(p<0.05)(ダネットの多重比較試験)。
【0323】
実施例14
HEK-FAP腫瘍モデルにおける3099DOXの有効性
実施例11に記載されるHEK-FAP腫瘍モデルにおいて、生存も監視した。結果を図11に示す。3099DOXで処置された動物は、ビヒクル単独またはドキソルビシンのいずれかで処置された動物よりも大幅に長く生存した。図11から明らかなように、3099DOX処置された動物における生存は、用量依存様式で長くなった。
【0324】
実施例15
様々な腫瘍系に対するFAP活性化ドキソルビシンプロドラッグの細胞毒性
様々な腫瘍由来細胞系からの細胞をドキソルビシンまたは3099DOXとインキュベートし、後者はFAPの存在下または不在下で行われ、各々に関してEC50が決定された。結果を下の表に示す。
【表6】
【0325】
実施例16
さらなるFAP活性化ドキソルビシンプロドラッグ
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【0326】
実施例17
MK-2206プロドラッグ
【表8-1】
【表8-2】
【0327】
実施例18
Akt阻害剤プロドラッグ
【表9-1】
【表9-2】
【0328】
実施例19
パクリタキセルプロドラッグ
【表10】
*保持時間(t)は、0.5mL/分の溶媒勾配A)水(0.1%TFA)及びB)アセトニトリル(0.08%TFA)で、Agilent Eclipsc Plus C18 RP-HPLCカラム(4.6×50mm、1.8μm)を使用して記録された。HPLC保持時間は、最初の3分間は2%B、次に6分にわたって2%~98%Bの溶離剤勾配に対して与えられ、これは次の5分間維持された。
【0329】
実施例20
Xaa-boroPro関連プロドラッグ
【表11】
【0330】
実施例21
PREPに対するFAPの選択性
12nM、24nM、または48nMの反応濃度で、FAP緩衝液(50mM トリス-HCl、pH7.4、140mM NaCl)中240nM 5057DOXと組換え酵素(FAPまたはPREP)を組み合わせ、37℃でインキュベートした。等容量の10μM Val-boroPro(FAP阻害剤)を添加することにより、0、10、20、または30分で反応を停止させた。ドキソルビシンは、液体クロマトグラフィー/質量分析(LCMS)により測定された。代表的な結果を図14に示す。
【0331】
実施例22
HEK-FAPマウスにおける5057DOXの組織分布
腫瘍を有するHEK-FAPマウスに、静脈内注射により2mg/kgの5057DOXを投与した。次に、5057DOXの投与20または40分後にマウスを安楽死させ、分析のために組織を回収した。腫瘍、心臓、肺、腎臓、肝臓、筋肉、脾臓、胃、小腸、大腸、膵臓、脳、及び骨髄組織を別個に溶解緩衝液に設置し、均質化し、ボルテックスにかけ、湿った氷上で40分間インキュベートし、3秒間の超音波処理を3回行い、4℃で30分間遠心分離し、次いでプロドラッグ及び「ウォーヘッド」に関して溶解物を分析した。代表的な結果を図21に示す。
【0332】
実施例23
HEK-FAPマウスにおける5057DOXの有効性
腫瘍接種33日後に、HEK-FAPマウスに、静脈内注射により9mg/kgの5057DOXまたはビヒクル対照を投与した。腫瘍体積を毎日監視した。33日目(即ち、5057DOXでの処置の日)に腫瘍体積が200mm未満のマウスの代表的な結果を図22に示す。3099DOXの比較データを図23に示す。
【0333】
参照による組み込み
上記の説明で言及される全ての米国特許ならびに米国及びPCT公開特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0334】
均等物
理解を明確にする目的のために、例示及び実施例によりある程度詳細に本発明をここで十分に説明したが、これらが本発明の範囲またはその任意の特定の実施形態に影響を与えることなく、広くかつ同等の条件、製剤、及び他のパラメータの範囲内で本発明を修正または変更することにより実施することができ、またはそのような修正または変更が添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されることは、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図21
図22
図23
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式で表されるプロドラッグ、またはその薬学的に許容される塩および、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、
【化1】
(式中、Rは、(C-C10)アルキル、(C-C10)アルコキシ、(C-C10)アルキル-C(O)-(C-C10)アルキル、(C-C)シクロアルキル、(C-C)シクロアルキル(C-C10)アルキル、アリール、アリール(C-C10)アルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアリール(C-C10)アルキルを表し、任意のRが、任意選択で、ハロ、ヒドロキシ、カルボキシレート、シアノ、アミノ、ニトロ、及びチオ(-SH)からなる群から独立して選択される1つ以上の置換基で置換されるか、または
-C(=X)Rは、N末端ブロックされたアルファアミノ酸残基を表し、
は、Hまたは(C-C)アルキルを表し、
3は、(C-C)アルキルを表し、
は、不在であるか、または1つ、2つ、または3つの置換基を表し、各々は(C-C)アルキル、-OH、-NH、及びハロゲンからなる群から独立して選択され、
Xは、Oを表し、
Cyt’は、ビンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、葉酸誘導体、細胞毒性ヌクレオシド類似体、プテリジンファミリーの薬物、ジイネン、ポドフィロトキシン、抗アンドロゲン薬、抗葉酸剤、トポイソメラーゼ阻害剤、アルキル化剤、タキサン、ナフタルイミド、Akt阻害剤、サイクリン依存キナーゼ(CDK)阻害剤、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤、B-Rafキナーゼ(BRAF)阻害剤、およびヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤からなる群から選択される薬物部分のラジカルを表し、
Lは結合を表すか、又は、-N(H)-L-が、プロドラッグのFAP切断後に代謝されてCyt’を放出する、自壊的リンカーを表し、)
前記プロドラックが、FAP酵素による切断によってCyt’に選択的に変換され、かつプロドラッグの細胞透過性が、Cyt’単独の細胞透過性よりも少なくとも50%低く、
前記薬学的組成物は、注射による非経口投与のために処方される、薬学的組成物。