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特開2024-15061燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法
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  • 特開-燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法 図1
  • 特開-燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法 図2
  • 特開-燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015061
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 45/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
F02D45/00 368S
F02D45/00 380
F02D45/00 369
F02D45/00 364
F02D45/00 362
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023199932
(22)【出願日】2023-11-27
(62)【分割の表示】P 2019175522の分割
【原出願日】2019-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野上 哲男
(72)【発明者】
【氏名】久次米 泰典
(72)【発明者】
【氏名】檜野 武憲
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝
(57)【要約】
【課題】陸上の管理装置において船舶に備えられた内燃機関の状態を適切に監視可能なデータ内容としつつ船舶から陸上への衛星通信を介したデータ送信量を低減することができる、燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法を提供する。
【解決手段】船舶から陸上の管理装置に衛星通信を介してデータを送信する船陸間通信システムを用いて船舶に備えられた内燃機関の燃焼圧データを送信するために、船舶に設けられる燃焼圧データ送信装置であって、内燃機関に関する所定の条件データを取得し、当該条件データが予め定められた条件を満足するか否かを判定する条件判定部と、条件を満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における内燃機関の燃焼圧データを抽出する燃焼圧データ抽出部と、抽出した燃焼圧データを管理装置に送信するためのデータ送信信号を生成する信号生成部と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶から陸上の管理装置に衛星通信を介してデータを送信する船陸間通信システムを用いて船舶に備えられた内燃機関の燃焼圧データを送信するために、前記船舶に設けられる燃焼圧データ送信装置であって、
前記内燃機関に関する所定の条件データを取得し、当該条件データが予め定められた条件を満足するか否かを判定する条件判定部と、
前記条件を満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における前記内燃機関の燃焼圧データを抽出する燃焼圧データ抽出部と、
抽出した前記燃焼圧データを前記管理装置に送信するためのデータ送信信号を生成する信号生成部と、を備えた、燃焼圧データ送信装置。
【請求項2】
前記条件判定部は、前記条件データが所定の状態である期間が所定の基準期間以上継続するか否かを判定し、前記所定の状態である期間が前記基準期間以上継続した場合に、前記条件を満足すると判定し、
前記燃焼圧データ抽出部は、前記基準期間の開始時に基づいて予め定められる抽出開始時から所定の抽出期間における前記内燃機関の燃焼圧データを抽出する、請求項1に記載の燃焼圧データ送信装置。
【請求項3】
前記抽出期間は、前記内燃機関のクランク角が所定の開始角度から所定の終了角度となるまでの間の期間である、請求項2に記載の燃焼圧データ送信装置。
【請求項4】
前記条件判定部は、所定の期間取得した前記条件データの分散、標準偏差または変動係数が所定のしきい値範囲内である状態が前記基準期間継続した場合に、前記条件を満足すると判定する、請求項2または3に記載の燃焼圧データ送信装置。
【請求項5】
前記条件データは、前記内燃機関の負荷変化によって変化するデータである、請求項1から4の何れかに記載の燃焼圧データ送信装置。
【請求項6】
前記条件データは、機関負荷データ、機関回転数データ、燃料噴射量データ、機関負荷指令値データ、機関回転数指令値データ、燃料噴射量指令値データ、および過給機回転数データのうちの少なくとも1つを含む、請求項5に記載の燃焼圧データ送信装置。
【請求項7】
前記燃焼圧データ抽出部は、抽出した前記燃焼圧データの一部に欠落があるか否かを判定し、欠落がある場合に、欠落箇所のデータを、欠落箇所の前後のデータから補間するデータ補間部を有する、請求項1から6の何れかに記載の燃焼圧データ送信装置。
【請求項8】
前記条件判定部は、前記条件を設定変更可能な条件設定部を有する、請求項1から7の何れかに記載の燃焼圧データ送信装置。
【請求項9】
前記内燃機関は、複数の気筒を備え、
前記燃焼圧データ抽出部は、前記複数の気筒のうちの予め指定された少なくとも1つの気筒における前記燃焼圧データを抽出する、請求項1から8の何れかに記載の燃焼圧データ送信装置。
【請求項10】
請求項1から9の何れかに記載の燃焼圧データ送信装置と、
陸上に設けられ、前記燃焼圧データ送信装置との間で衛星通信を介してデータを送受信する管理装置と、を備えた、船陸間通信システム。
【請求項11】
船舶から陸上の管理装置に衛星通信を介してデータを送信する船陸間通信システムを用
いて船舶に備えられた内燃機関の燃焼圧データを送信する燃焼圧データ送信方法であって、
前記内燃機関に関する所定の条件データを取得し、当該条件データが予め定められた条件を満足するか否かを判定し、
前記条件を満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における前記内燃機関の燃焼圧データを抽出し、
抽出した前記燃焼圧データを前記管理装置に送信するためのデータ送信信号を生成し、
前記データ送信信号を前記管理装置に送信する、燃焼圧データ送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に設けられる燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン等の内燃機関の燃焼状況から内燃機関の状態診断または劣化等の予兆検知を行うために内燃機関の燃焼圧データを取得することが知られている。さらに、取得した燃焼圧データを、内燃機関を備えた設備または移動体とは離れた場所に設けられた管理装置に送信し、管理装置においてデータを解析することも行われている。
【0003】
このような技術を船舶に設けられた内燃機関にも適用した場合、船舶内で取得した燃焼圧データを陸上の管理装置に送信することになる。陸上の設備または移動体においては、有線通信はもちろんのこと、無線通信であっても、多数のアクセスポイントからインターネットを経由した通信により安価かつ高速なデータ送信が可能である。
【0004】
一方、船舶は、陸上に設置されたアクセスポイントから離れた海上を航路とするため、船舶から陸上の管理装置にデータ送信するためには、衛星通信を利用する必要がある(例えば下記特許文献1参照)。データの送信に衛星通信を利用する場合、陸上でのインターネット等を介した通信に比べて通信料が高価になり、時々刻々変化する燃焼圧データを常時送信するのは現実的ではない。
【0005】
通信量を低減するために、特定のデータを抽出して送信する場合、データを抽出する時間を任意に設定すると、管理装置におけるデータの解析に影響が生じ、正しい解析を行うことができない恐れがある。また、下記特許文献2には、前回送信したデータと今回送信するデータとを比較し、前回と異なる部分のデータのみを送信することで通信量を低減することが開示されている。
【0006】
しかし、このような方法を、外乱の影響によりデータが変動し易い燃焼圧波形のデータに適用した場合、同じ横軸(例えば内燃機関のクランク角)に対する値(燃焼圧)が変動することにより、前回と同じ値を有するデータがほとんどなくなる結果、通信量が低減しない恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-75654号公報
【特許文献2】特開昭62-39941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、陸上の管理装置において船舶に備えられた内燃機関の状態を適切に監視可能なデータ内容としつつ船舶から陸上への衛星通信を介したデータ送信量を低減することができる、燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る燃焼圧データ送信装置は、船舶から陸上の管理装置に衛星通信を
介してデータを送信する船陸間通信システムを用いて船舶に備えられた内燃機関の燃焼圧データを送信するために、前記船舶に設けられる燃焼圧データ送信装置であって、前記内燃機関に関する所定の条件データを取得し、当該条件データが予め定められた条件を満足するか否かを判定する条件判定部と、前記条件を満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における前記内燃機関の燃焼圧データを抽出する燃焼圧データ抽出部と、抽出した前記燃焼圧データを前記管理装置に送信するためのデータ送信信号を生成する信号生成部と、を備えている。
【0010】
上記構成によれば、内燃機関に関する所定の条件データが予め定められた条件を満足する場合に、その満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における内燃機関の燃焼圧データが抽出される。したがって、内燃機関が所定の状態にあるときの燃焼圧データが送信される。このため、管理装置で解析したい条件に合致する燃焼圧データを送信することが可能となる。以上より、陸上の管理装置において船舶に備えられた内燃機関の状態を適切に監視可能なデータ内容としつつ船舶から陸上への衛星通信を介したデータ送信量を低減することができる。
【0011】
前記条件判定部は、前記条件データが所定の状態である期間が所定の基準期間以上継続するか否かを判定し、前記所定の状態である期間が前記基準期間以上継続した場合に、前記条件を満足すると判定し、前記燃焼圧データ抽出部は、前記基準期間の開始時に基づいて予め定められる抽出開始時から所定の抽出期間における前記内燃機関の燃焼圧データを抽出してもよい。
【0012】
上記構成によれば、内燃機関が所定の状態にある期間が所定の基準期間以上継続している場合に、内燃機関の燃焼圧データが抽出される。したがって、内燃機関がその状態で安定しているときの燃焼圧データを送信することが可能となる。これにより、管理装置で解析したい条件に合致する燃焼圧データとしてより適切な燃焼圧データを抽出することができる。
【0013】
前記抽出期間は、前記内燃機関のクランク角が所定の開始角度から所定の終了角度となるまでの間の期間であってもよい。これにより、内燃機関の特定の状態(掃気、圧縮、燃焼、排気等)における燃焼圧データを送信することができる。
【0014】
前記条件判定部は、所定の期間取得した前記条件データの分散、標準偏差または変動係数が所定のしきい値範囲内である状態が前記基準期間継続した場合に、前記条件を満足すると判定してもよい。所定期間における条件データの分散、標準偏差または変動係数に基づいて条件判定を行うことにより、ある程度の外乱を許容しつつ管理装置で解析したい内燃機関の状態に関する燃焼圧データを送信することができる。
【0015】
前記条件データは、前記内燃機関の負荷変化によって変化するデータであってもよい。これにより、内燃機関が所定の負荷状況にあるときの燃焼圧データを送信することができる。
【0016】
前記条件データは、機関負荷データ、機関回転数データ、燃料噴射量データ、機関負荷指令値データ、機関回転数指令値データ、燃料噴射量指令値データ、および過給機回転数データのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0017】
前記燃焼圧データ抽出部は、抽出した前記燃焼圧データの一部に欠落があるか否かを判定し、欠落がある場合に、欠落箇所のデータを、欠落箇所の前後のデータから補間するデータ補間部を有していてもよい。抽出した燃焼圧データの一部に欠落があった場合であっても、燃焼圧データの送信元(船舶側)で予めデータ補間を行うことにより、別途管理装
置に対してデータの欠落が存在していることを示す情報(データ)を送る必要がなくなる。また、管理装置において一部のデータが欠落していることによるデータの不採用をなくし、有効な燃焼圧データを効率的に送信することができる。
【0018】
前記条件判定部は、前記条件を設定変更可能な条件設定部を有していてもよい。様々な条件設定を可能とすることにより、内燃機関の複数の状態における燃焼圧データを簡単に抽出し、送信することができる。
【0019】
前記内燃機関は、複数の気筒を備え、前記燃焼圧データ抽出部は、前記複数の気筒のうちの予め指定された少なくとも1つの気筒における前記燃焼圧データを抽出してもよい。
【0020】
本発明の他の態様に係る船陸間通信システムは、上記構成の燃焼圧データ送信装置と、
陸上に設けられ、前記燃焼圧データ送信装置との間で衛星通信を介してデータを送受信する管理装置と、を備えている。
【0021】
本発明の他の態様に係る燃焼圧データ送信方法は、船舶から陸上の管理装置に衛星通信を介してデータを送信する船陸間通信システムを用いて船舶に備えられた内燃機関の燃焼圧データを送信する燃焼圧データ送信方法であって、前記内燃機関に関する所定の条件データを取得し、当該条件データが予め定められた条件を満足するか否かを判定し、前記条件を満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における前記内燃機関の燃焼圧データを抽出し、抽出した前記燃焼圧データを前記管理装置に送信するためのデータ送信信号を生成し、前記データ送信信号を前記管理装置に送信する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、陸上の管理装置において船舶に備えられた内燃機関の状態を適切に監視可能なデータ内容としつつ船舶から陸上への衛星通信を介したデータ送信量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る燃焼圧データ送信装置が適用される船陸間通信システムの概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示すデータ送信装置における機能ブロックを示す図である。
図3図3は、本実施の形態における燃焼データ抽出態様を例示するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一または相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態に係る燃焼圧データ送信装置が適用される船陸間通信システムの概略構成を示すブロック図である。本実施の形態における船陸間通信システム1は、船舶4に設けられる船上システム2と、陸上に設けられる管理装置3とを含んでいる。
【0026】
船舶4は、内燃機関5と、内燃機関5を制御する機関制御装置6aと、内燃機関5の状態を計測する機関計測装置6bと、を備えている。機関制御装置6aは、内燃機関5に関連するデータを取得し、それに基づいて内燃機関5等の制御を行う。また、機関計測装置6bは、内燃機関5の燃焼圧データ(燃焼波形データ)を計測する。内燃機関5は、例えば船舶4の推進用主機である大型の2サイクル(2ストローク)エンジン10(以下、単
にエンジン)と、エンジン10に掃気を供給するために空気を圧縮する過給機20と、を備えている。なお、エンジン10は、船舶4の発電用のエンジンであってもよい。また、2サイクルエンジン10の代わりに、4サイクル(4ストローク)エンジンを備えていてもよい。この場合、以下における「掃気」は「給気」に読み替えられる。
【0027】
エンジン10は、複数の気筒11(図1では1つのみ図示)を有している。特に、ユニフロー2サイクルエンジンにおいて、各気筒11には、下方部分に掃気口12が形成され、上方部分には排気口13が形成されている。各気筒11には、ピストン14、燃料噴射弁15、および排気弁16が設けられている。ピストン14は、掃気口12を横切るようにして気筒11内を摺動し、下端部分がコネクティングロッド17を介してクランク軸18に連結されている。
【0028】
燃料噴射弁15は、気筒11の上方部分に位置しており、燃料供給装置31から燃料が供給される。燃料供給装置31は、燃料噴射弁15における燃料噴射パターンおよび燃料噴射タイミングを変更することができる。排気弁16は、排気口13を開閉する弁であって、排気弁駆動装置32によって駆動される。排気弁駆動装置32は、排気弁16の開閉パターンおよび開閉タイミングを変更することができる。
【0029】
過給機20は、エンジン10に供給される空気を断熱圧縮するように構成されている。過給機20は、複数の圧縮機翼(ブレード)を備え、回転軸23回りに回転することにより、外部から導入された空気を圧縮する圧縮機22と、圧縮機22の回転軸23に連結され、圧縮機22の回転動力を生成するタービン21と、を備えている。
【0030】
圧縮機22で圧縮された空気は、掃気管24および掃気室25を介してエンジン10に掃気として供給される。エンジン10での燃焼により排出された排ガスは、過給機20のタービン21に流入される。タービン21は、複数のタービン翼(ブレード)を備え、流入された排ガスによってタービン21が回転軸23回りに回転することにより、圧縮機22が回転する。
【0031】
船上システム2は、機関制御装置6aおよび機関計測装置6bが取得したデータを管理装置3に送信するためのデータ送信装置7を備えている。データ送信装置7は、機関制御装置6aおよび機関計測装置6bから所定のデータを取得し、管理装置3に送信するためのデータ送信信号を生成する。データ送信装置7は、公知のコンピュータ装置を含む。
【0032】
さらに、船上システム2は、データ送信装置7で生成されたデータ送信信号を、衛星通信を介して管理装置3に送信する船外通信部8を備えている。データ送信装置7と船外通信部8とは船内LAN9により信号を授受可能に接続されている。船外通信部8は、例えば電子メール等を送信可能なメールサーバを備えている。船内LAN9には、種々のデータサーバ、演算装置、入力装置または表示装置等が接続され得る。
【0033】
船外通信部8から送信されたデータ送信信号は、通信衛星40を介した衛星通信により伝送される。管理装置3には、衛星通信によるデータ送信信号を受信可能な衛星アンテナ41が設けられ得る。これに加えて、または、これに代えて、陸上に設けられた他の衛星アンテナ42でいったんデータ送信信号が受信され、当該衛星アンテナ42からインターネット等の通信ネットワーク43を介して管理装置3にデータ送信信号が送信されてもよい。
【0034】
以下、本実施の形態においてデータ送信装置7が内燃機関5の燃焼圧データを送信する態様について説明する。すなわち、本実施の形態におけるデータ送信装置7は、燃焼圧データ送信装置として機能する。
【0035】
図2は、図1に示すデータ送信装置における機能ブロックを示す図である。図2に示すように、本実施の形態におけるデータ送信装置7は、条件判定部71と、燃焼圧データ抽出部72と、信号生成部73と、を備えている。
【0036】
条件判定部71は、内燃機関5に関する所定の条件データを取得し、当該条件データが予め定められた条件を満足するか否かを判定する。本実施の形態において、条件データは、内燃機関5の負荷変化によって変化するデータである。
【0037】
内燃機関5の負荷変化によって変化するデータは、内燃機関5の可動部における負荷を直接的または間接的に検出した機関負荷データ、燃料噴射弁15から噴射される燃料噴射量を検出した燃料噴射量データ、機関制御装置6aから出力される機関回転数指令値を示す機関回転数指令値データ、機関制御装置6aから出力される燃料噴射量指令値を示す燃料噴射量指令値データ、および、過給機20の回転数を検出した過給機回転数データを含み得る。また、内燃機関5が発電用の内燃機関である場合には、内燃機関5の回転数を一定とした負荷制御を行い得るため、その場合には条件データとして、機関負荷指令値データを用いてもよい。条件判定部71は、これらのデータのうちの何れか1つのデータを用いて判定を行ってもよい。あるいは、条件判定部1は、これらのデータのうちの複数種類のデータを用いて判定を行ってもよい。すなわち、後述する判定条件が複数種類のデータのそれぞれの判定のAND条件またはOR条件となっていてもよい。
【0038】
機関負荷データは、負荷検出器51により検出されるデータを用いてもよい。例えば、負荷検出器51は、内燃機関5あるいはそこに接続される出力軸における変位を検出してもよい。機関計測装置6bまたは条件判定部71は、検出された変位から負荷を算出してもよい。機関制御装置6aから燃料噴射量および機関回転数を取得し、それらから仮想負荷を算出してもよい。燃料噴射量は、燃料供給装置31に設けられた燃料噴射量検出器61で検出され、機関制御装置6aに送られる。また、機関回転数は、内燃機関5に設けられた機関回転数検出器62で検出され、機関制御装置6aに送られる。なお、図2には、機関負荷データを、負荷検出器51から機関計測装置6bを介して取得する態様と、燃料噴射量検出器61および機関回転数検出器62から機関制御装置6aを介して取得する態様との双方を図示しているが、条件判定部71は、機関負荷データを取得する場合、これらの態様のうちの何れか一方の態様で機関負荷データを取得できればよい。
【0039】
前述のように、内燃機関5の負荷変化によって変化するデータ(条件データ)は、機関制御装置6aおよび/または機関計測装置6bを介してデータ送信装置7に入力される。なお、これに代えて、データ送信装置7は、条件データを、対応する検出器51,61,62等から直接取得してもよい。データ送信装置7の記憶部(図示せず)には、判定条件の情報が記憶されている。条件判定部71は、判定条件を読み出し、取得した条件データ(機関負荷データ)が判定条件を満足するか否かを判定する。
【0040】
本実施の形態において、条件判定部71は、所定の期間取得した条件データの分散が所定のしきい値範囲内である期間が所定の基準期間T(例えば30分等)以上継続するか否かを判定し、所定の状態である期間が基準期間T以上継続した場合に、条件を満足すると判定する。燃焼圧データ抽出部72は、条件を満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における内燃機関5の燃焼圧データを抽出する。
【0041】
図3は、本実施の形態における燃焼データ抽出態様を例示するためのイメージ図である。一番上のグラフは、負荷の時間的変化を示すグラフである。機関計測装置6bは、燃焼圧検出器52から燃焼圧を所定のサンプリング周期で計測し燃焼圧データを生成する。燃焼圧データ抽出部72は、機関計測装置6bから所定の時間間隔(以下、データ取得間隔
という。例えば10分間隔等)で定期的に燃焼圧データを取得する。燃焼圧データ抽出部72は、取得タイミングから所定の抽出期間における内燃機関5の燃焼圧データを抽出する。
【0042】
条件判定部71は、燃焼圧データの取得タイミングごとにデータ取得間隔Tにおける条件データの分散Vを算出する。図3における上から二番目のグラフは、所定の時間間隔Tにおける負荷の分散の時間的変化を示すグラフである。分散Vは、複数のデータ要素のそれぞれの値の平均値からの差を二乗し、それらを足し合わせてデータ要素の数で割ったものである。条件判定部71は、この分散Vが条件を満たすか否か(しきい値範囲内:0≦V≦Vmaxであるか否か)を判定する。さらに、条件判定部71は、分散Vが条件を満たす状態が所定回数(例えば4回)連続したかどうかを判定する。例えば、分散Vが条件を満たす状態が4回連続した場合(図3における時刻tから時刻tの何れにおいても条件を満たした場合)、条件を満たした状態が基準期間T(30分)以上の期間継続したと判断される。
【0043】
このとき、条件判定部71は、条件データが所定の状態である期間が所定の基準期間T以上継続すると判定する。燃焼圧データ抽出部72は、条件を満たした期間に取得された燃焼圧データ(4回分のデータ)のうちの3回目の燃焼圧データ(時刻tにおいて取得された燃焼圧データ)を管理装置3に送信するための燃焼圧データとして抽出する。すなわち、分散Vが条件を満足してからちょうど基準期間T(30分)後の燃焼圧データが抽出される。このようにして、燃焼圧データ抽出部72は、基準期間Tの開始時(時刻t)に基づいて予め定められる抽出開始時(条件を満たした最初の取得タイミングから30分後の時刻t)から所定の抽出期間Tにおける内燃機関5の燃焼圧データを抽出する。
【0044】
なお、燃焼圧データを抽出するタイミングは、基準期間T内であればよく、上記に限られない。例えば、抽出するタイミングは、船舶4の内燃機関5の特性(例えば負荷変動後、負荷が安定するまでの期間等)に応じて定められ得る。さらに、基準期間T内の複数のタイミングで燃焼データが抽出されてもよい。
【0045】
抽出期間Tは、内燃機関5のクランク角が所定の開始角度から所定の終了角度となるまでの間の期間である。本実施の形態において、開始角度から終了角度までの角度範囲は、図3の最も下側のグラフに示すように、例えば360°(2サイクルエンジンにおける一周期分)である。なお、図3のグラフでは、ピストン14が上死点の位置にあるときを0°にとり、それを基準に-180°から180°までの範囲を角度範囲としている。
【0046】
また、抽出される燃焼圧データは、所定の角度単位ごとの燃焼圧の値の集合である。例えば、抽出期間が360°で角度単位が0.5°である場合、720個のデータ要素が抽出される。
【0047】
燃焼圧データ抽出部72は、エンジン10の複数の気筒11のうちの予め指定された少なくとも1つの気筒11における燃焼圧データを抽出する。
【0048】
信号生成部73は、抽出した燃焼圧データを管理装置3に送信するためのデータ送信信号を生成する。データ送信信号には、抽出した燃焼圧データおよびそれに付随するデータが含まれ得る。付随するデータは、例えば、内燃機関5の識別番号、送信する燃焼圧データの抽出日時のデータ、抽出時の負荷の情報(実測値、平均値、または分散値等)等が含まれ得る。また、付随するデータには、燃焼圧データを抽出した気筒11の情報(指定された気筒11の識別番号等)が含まれていてもよい。これに代えて、抽出した気筒11を区別せずに、エンジン10の燃焼圧データとしてもよい。
【0049】
また、燃焼圧データ抽出部72は、複数の気筒11のうちの2以上の気筒11における燃焼圧データを抽出し、信号生成部73は、それらを平均して一の燃焼圧データとしてもよい。
【0050】
上記構成によれば、内燃機関5に関する所定の条件データが予め定められた条件を満足する場合に、その満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における内燃機関5の燃焼圧データが抽出される。したがって、内燃機関5が所定の状態にあるときの燃焼圧データが送信される。このため、管理装置3で解析したい条件に合致する燃焼圧データを送信することが可能となる。以上より、陸上の管理装置3において船舶4に備えられた内燃機関5の状態を適切に監視可能なデータ内容としつつ船舶4から陸上への衛星通信を介したデータ送信量を低減することができる。
【0051】
さらに、上記構成によれば、内燃機関5が所定の状態にある期間が所定の基準期間T以上継続している場合に、内燃機関5の燃焼圧データが抽出される。したがって、内燃機関5がその状態で安定しているときの燃焼圧データを送信することが可能となる。これにより、管理装置3で解析したい条件に合致する燃焼圧データとしてより適切な燃焼圧データを抽出することができる。また、条件データの分散に基づいて条件判定を行うことにより、ある程度の外乱を許容しつつ管理装置3で解析したい内燃機関5の状態に関する燃焼圧データを送信することができる。
【0052】
また、条件データとして、内燃機関5の負荷によって変化するデータを用いて条件の判定を行うことにより、内燃機関5が所定の負荷状況にあるときの燃焼圧データを送信することができる。また、内燃機関のクランク角が所定の開始角度から所定の終了角度となるまでの間の期間Tの燃焼圧データを抽出することにより、内燃機関5の特定の状態(掃気、圧縮、燃焼、排気等)における燃焼圧データを送信することができる。
【0053】
本実施の形態において、燃焼圧データ抽出部72は、データ補間部75を備えている。データ補間部75は、抽出した燃焼圧データの一部に欠落があるか否かを判定し、欠落がある場合に、欠落箇所のデータを、欠落箇所の前後のデータから補間する。上述したように、本実施の形態において抽出される燃焼圧データは、所定角度単位ごとの燃焼圧の値の集合として構成されている。燃焼圧のデータの一部においてあるクランク角における燃焼圧の値が何らかの原因で取得できなかった場合、データ補間部75は、欠落したデータ要素におけるクランク角の前後のクランク角における燃焼圧の値から補間する。データ補間の方法は、線形補間等、公知の補間方法の中から適切な補間方法が採用される。
【0054】
このように、抽出した燃焼圧データの一部に欠落があった場合であっても、燃焼圧データの送信元(船舶4側)で予めデータ補間を行うことにより、別途管理装置3に対してデータの欠落が存在していることを示す情報(データ)を送る必要がなくなる。また、管理装置3において一部のデータが欠落していることによるデータの不採用をなくし、有効な燃焼圧データを効率的に送信することができる。
【0055】
また、本実施の形態において、条件判定部71は、条件を設定変更可能な条件設定部74を有する。例えば、データ送信装置7への入力装置(図示せず)において条件が設定入力可能に構成される。条件設定部74は、入力装置による入力内容に基づいて条件を設定する。
【0056】
これに加えて、または、これに代えて、条件設定部74は、予め記憶部等に記憶された複数の条件から自動的に1つの条件を選択して設定してもよい。例えば、複数の条件として負荷が、70%、50%、30%の場合が設定され、第1の条件(例えば負荷70%)
を満足し、燃焼圧データ抽出部72がそのときの燃焼圧データを抽出した後、条件設定部74は、条件を第2の条件(例えば負荷50%)に設定変更してもよい。このように、現在設定されている条件における燃焼圧データが抽出され次第、順に条件が切り替わるように構成されてもよい。
【0057】
また、条件設定部74は、複数の条件について並行して判定を行ってもよい。この場合、条件判定部71は、例えば、負荷が70%、50%および30%の何れかの場合に、条件を満足すると判定する。信号生成部73は、抽出した燃焼圧データと、そのときの条件内容(複数の条件のうちのどの条件を満足したかの情報)とを含むデータ送信信号を生成する。
【0058】
もちろん、条件設定部74は、同じ条件で複数回燃焼圧データを抽出するために、前回の条件を維持するようにしてもよい。
【0059】
このように、様々な条件設定を可能とすることにより、内燃機関5の複数の状態における燃焼圧データを簡単に抽出し、送信することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0061】
例えば、上記実施の形態において、条件判定部71における判定の条件は、条件データ(の分散)が所定のしきい値範囲内である期間が所定の基準期間T以上継続することに設定された例を示したが、これに限られない。例えば、判定の条件は、条件データの基準期間における値が所定のしきい値範囲内であること、条件データの基準期間における平均値、分散、標準偏差または変動係数が所定のしきい値範囲内であること、条件データが基準期間において所定のしきい値範囲外になった回数が所定回数以内であること、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。なお、標準偏差は、分散の平方根で与えられ、変動係数は、標準偏差を平均値で割ることにより与えられる。
【0062】
また、上記実施の形態においては、抽出される燃焼圧データにおけるクランク角の角度範囲が360°である態様を例示したが、これに限られない。例えば、角度範囲は360°未満でもよいし、360°(1周期分)でもよいし、360°より大きくてもよい。角度範囲が360°より大きい場合、X(X≧2)周期分の燃焼圧データをそのまま抽出してもよいし、X周期分を抽出し、同じ角度ごとに平均した1周期分の燃焼圧データを送信する燃焼圧データとしてもよい。このようにX周期分の燃焼圧データを平均することで送信量を削減することができる。
【0063】
また、上記実施の形態においては、データ送信装置7の信号生成部73で生成したデータ送信信号を船外通信部8に送信し、船外通信部8が衛星通信を介して陸上の管理装置3にデータ送信する態様を例示したが、データ送信装置7が直接衛星通信を介して陸上の管理装置3にデータ送信してもよい。すなわち、データ送信装置7が衛星通信を行う船外通信部を備えていてもよい。
【0064】
また、燃焼圧データが抽出可能な内燃機関5は、船舶4に設けられる燃焼機関である限り、特に限定されない。例えば、上記内燃機関5は、推進用主機、各種補機、船内発電用内燃機関等、種々の用途の内燃機関を含み得る。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、陸上の管理装置において船舶に備えられた内燃機関の状態を適切に監視可能なデータ内容としつつ船舶から陸上への衛星通信を介したデータ送信量を低減することが
できる、燃焼圧データ送信装置、これを備えた船陸間通信システムおよび燃焼圧データ送信方法を提供するために有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 船陸間通信システム
3 管理装置
4 船舶
5 内燃機関
7 データ送信装置(燃焼圧データ送信装置)
71 条件判定部
72 燃焼圧データ抽出部
73 信号生成部
74 条件設定部
75 データ補間部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶から陸上の管理装置に衛星通信を介してデータを送信する船陸間通信システムを用いて船舶に備えられた内燃機関の燃焼圧データを送信するために、前記船舶に設けられる燃焼圧データ送信装置であって、
前記内燃機関に関する所定の条件データを取得し、当該条件データが予め定められた条件を満足するか否かを判定する条件判定部と、
前記条件を満足している期間のうちの少なくとも一部の期間における前記内燃機関の燃焼圧データを抽出する燃焼圧データ抽出部と、
抽出した前記燃焼圧データを前記管理装置に送信するためのデータ送信信号を生成する信号生成部と、を備えた、燃焼圧データ送信装置