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▶ アビオメド オイローパ ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150646
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/13 20210101AFI20241016BHJP
   A61M 60/139 20210101ALI20241016BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20241016BHJP
   A61M 60/422 20210101ALI20241016BHJP
   A61M 60/403 20210101ALI20241016BHJP
   A61M 60/806 20210101ALI20241016BHJP
   F04D 13/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61M60/13
A61M60/139
A61M60/237
A61M60/422
A61M60/403
A61M60/806
F04D13/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117697
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2021556608の分割
【原出願日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】19163670.3
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラウヴィンケル マリウス
(72)【発明者】
【氏名】ケルクホフス ヴォルフガング
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者の血管に経皮的に挿入する血管内血液ポンプを提供する。
【解決手段】血液ポンプは、回転軸10を軸に回転することができるように配置されたインペラ3を備える。インペラ3は、血流入口から血流出口まで血液を運ぶようにサイズおよび形状が決定されたブレード31を有する。この血液ポンプは、インペラ3を回転させる駆動ユニット4を備え、駆動ユニット4は、回転軸10の周りに配置された複数の柱40を備える。柱40はそれぞれ、縦軸LAおよびインペラ側端420を有し、インペラ側端420はインペラ3の方を向いている。それぞれの柱40の周囲にはコイル巻線44が配されており、コイル巻線44は、インペラ3の方を向いたインペラ側端424を有する。インペラ3は、インペラ3を回転させるように回転磁場と相互作用するよう配置された磁性構造体32を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管に経皮的に挿入する血管内血液ポンプ(1)において、
血流入口(21)および血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
前記ポンプケーシング(2)内に、回転軸(10)を軸に回転することができるように配置されたインペラ(3)であり、前記血流入口(21)から前記血流出口(22)まで血液を運ぶようにサイズおよび形状が決定されたブレード(31)を有するインペラ(3)と、
前記インペラ(3)を回転させる駆動ユニット(4)であり、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)を備え、前記柱(40)がそれぞれ縦軸(LA)およびインペラ側端(420)を有し、前記インペラ側端(420)が前記インペラ(3)の方を向いている、駆動ユニット(4)と、
それぞれの前記柱(40)の周囲に配されたコイル巻線(44)であり、前記インペラ(3)の方を向いたインペラ側端(424)を有し、回転磁場を生み出すように制御可能なコイル巻線(44)と
を備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)を回転させるように前記回転磁場と相互作用するよう配置された磁性構造体(32)を備える、
血管内血液ポンプ(1)であって、
前記柱(40)のうちの少なくとも1つの柱(40)のインペラ側端(420)が、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)の周囲に配された前記コイル巻線(44)の前記インペラ側端(424)の上に半径方向に延びておらず、半径方向にという用語が、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)の前記縦軸(LA)を横切る方向、好ましくは、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)の前記縦軸(LA)に対して垂直な方向に関する
ことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)の前記インペラ側端(420)が平らであり、前記回転軸(10)に対して垂直に向けられていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの少なくとも2つの柱(40)の前記インペラ側端(420)間の距離を一定に保つように構成されたスペーサ(7)を備えることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項3に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)が、前記柱(40)のうちの前記少なくとも2つの柱(40)を受け取る開口(71)を有する円板の形状を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記開口(71)がそれぞれ、前記柱(40)のうちの前記少なくとも2つの柱(40)のうちの対応するそれぞれの柱(40)の断面(84)と一致した形状を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)が、0.05から0.3mmの間の厚さ、好ましくは0.066から0.2mmの間の厚さ、より好ましくは約0.1mmまたは正確に0.1mmの厚さを有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)が非強磁性材料でできていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)がチタンでできていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項9】
請求項3から8のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)が、前記柱(40)のうちの前記少なくとも2つの柱(40)の前記インペラ側端(420)のところに配置されていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項10】
請求項3から9のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記コイル巻線(44)の前記インペラ側端が前記スペーサ(7)まで延びていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱のうちの前記少なくとも1つの柱が、対応するそれぞれの柱(40)の縦軸(LA)を横切る断面内において電気伝導性に関して不連続である不連続な軟磁性材料を含み、または前記不連続な軟磁性材料からなることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記インペラ側端(420)とは反対の側の前記柱(40)の端を磁気的に連結しているバックプレート(50)が、前記回転軸(10)に対して平行な断面内において電気伝導性に関して不連続である軟磁性材料を含むことを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)が、対応するそれぞれの柱(40)の前記縦軸(LA)を横切る三角形の断面を有することを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【請求項14】
請求項13に記載の血管内血液ポンプ(1)であって、前記三角形の断面を有する前記少なくとも1つの柱(40)の側面が、前記回転軸(10)から遠ざかる方向を向いており、前記回転軸(10)を囲むように曲がっていることを特徴とする血管内血液ポンプ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプ(blood pump)に関し、詳細には、患者の血管に経皮的に挿入する、患者の血管内の血流を補助するための血管内血液ポンプ(intravascular blood pump)に関する。この血液ポンプは、改良された駆動ユニットを有する。
【背景技術】
【0002】
軸流血液ポンプ、遠心(すなわち半径流)血液ポンプまたは混合型血液ポンプなど、さまざまなタイプの血液ポンプが知られている。混合型血液ポンプは、軸方向力と半径方向力の両方によって血流が引き起こされる血液ポンプである。血管内血液ポンプは、カテーテルによって大動脈などの患者の血管に挿入される。血液ポンプは通常、通路によって連結された血流入口および血流出口を有するポンプケーシングを備える。この通路に沿った血流入口から血流出口への血流を生じさせるため、ポンプケーシング内に、インペラ(impeller)またはロータ(rotor)が回転可能に支持されており、インペラは、血液を運ぶためのブレード(blade)を備える。
【0003】
血液ポンプは通常、駆動ユニットによって駆動される。駆動ユニットは電動機とすることができる。例えば、米国特許出願公開第2011/0238172A1号は、電動機に磁気的に結合することができるインペラを有する体外血液ポンプを開示している。このインペラは、電動機内の磁石の隣に配された磁石を備える。インペラの磁石と電動機の磁石との間の引力によって、電動機の回転がインペラに伝えられる。米国特許出願公開第2011/0238172A1号から、回転部品の数を減らすために回転磁場を利用することも知られており、駆動ユニットは、回転軸の周りに配置された動かない複数の柱(post)を有し、柱はそれぞれ、電線コイル巻線を担持しており、磁心の働きをする。回転磁場を生み出すため、制御ユニットがコイル巻線に電圧を逐次的に供給する。十分に強い磁気結合を提供するためには、磁力が十分に高くなければならない。これは、駆動ユニットに十分に大きな電流を供給することによって、または大きな磁石を提供することによって達成することができる。しかしながら、大きな磁石は、血液ポンプの大きな全径につながる。
【0004】
欧州特許第3222301B1号は、駆動ユニットとインペラの間に磁気結合を有する血液ポンプ、特に、駆動ユニットとインペラの間に磁気結合を有する血管内血液ポンプを開示しており、この血液ポンプはコンパクトな設計を有し、特に、ポンプのポンピングパワーとサイズの比が大きく、その結果、血液ポンプを経血管的に、経静脈的に、経動脈的にもしくは経弁的に挿入することを可能にする十分に小さな外寸法、またはハンドリングおよび便宜上の理由からよりいっそう小さな外寸法を有する。
【0005】
より詳細には、欧州特許第3222301B1号の血液ポンプは、血流入口および血流出口を有するポンプケーシングと、インペラと、インペラを回転させる駆動ユニットとを備える。ポンプケーシングの内側でインペラを回転軸を軸に回転させることにより、血液を、インペラのブレードによって血流入口から血流出口まで運ぶことができる。駆動ユニットは、複数の柱、好ましくは6つの柱と、継鉄(yoke)の働きをするために柱の後端を連結しているバックプレート(back plate)とを備える。これらの柱は、回転軸に対して垂直な平面内で見たときに、回転軸の周囲に円形に配置されており、これらの柱はそれぞれ縦軸(longitudinal axis)を有し、縦軸は、前記回転軸に対して平行であることが好ましい。これらの柱はそれぞれ、シャフトおよび傾斜ヘッド部分を有し、傾斜ヘッド部分は、後端とは反対の側のシャフトのインペラ側端(impeller-side end)にあり、それぞれの柱の周囲に配されたコイル巻線の軸方向ストップ(axial stop)の働きをすることができるショルダを形成するように、シャフトの上に半径方向に延びている。インペラを駆動するための回転磁場を発生させるため、コイル巻線を、コヒーレント(coherent)なやり方で制御することができる。インペラは、回転磁場の回転にインペラが追従するように回転磁場と相互作用するよう配置された磁石の形態の磁性構造体(magnetic structure)を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現状技術の欠点は、シャフトの上に半径方向に延びるヘッド部分が、互いに対する小さな距離を有することである。その結果、ヘッド部分間にかなりの寄生磁束が存在し、この寄生磁束は、トルクの発生のために失われる。本発明の目的は、この点に関して駆動ユニットを改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の血液ポンプは上述の血液ポンプに対応する。これに応じて、本発明の血液ポンプは、軸流血液ポンプまたは斜流血液ポンプであることがある(純粋な遠心血液ポンプの直径は普通、血管内用途には大きすぎる)。斜流血液ポンプは、部分的に軸方向にポンピングし、部分的に半径方向にポンピングする血液ポンプである。しかしながら、本発明の一態様によれば、少なくとも1つの柱のインペラ側端、好ましくはそれぞれの柱のインペラ側端は、対応するそれぞれのコイル巻線のインペラ側端の上に半径方向に延びていない。「半径方向に」という用語は、対応するそれぞれの柱の縦軸を横切る方向、好ましくは対応するそれぞれの柱の縦軸に対して垂直な方向に関する。言い換えると、柱は、特定のヘッド部分を持たない。その代わりに、柱は、少なくともそのインペラ側端領域において一定の断面有することが好ましく、その全長に沿って一定の断面を有するとより好ましい。
【0008】
動作時、隣り合う柱は普通、インペラを避けて隣り合う柱間を流れる傾向を磁束が示すような態様の異なる磁化を有する。そのような磁気流れ(magnetic flow)は、トルクの発生のために失われる。ヘッド部分を持たないこのタイプの柱の利点は、柱間の距離がより大きいことによって、隣り合う柱間のそのような磁気損失が低減することである。その結果、柱のインペラ側端が対応するそれぞれのコイル巻線のインペラ側端の上に半径方向に延びるポンプに比べて、駆動ユニットとインペラの間のトルクと軸方向力との比を大きくすることができる。
【0009】
柱のインペラ側端は平らな形態を有することが好ましい。特に、柱のインペラ側端は、回転軸に対して垂直な向きに向けられる。柱の平らなインペラ側端は、構造空間(construction space)を小さくすることができるという効果を有する。これは、柱に面する側のインペラの表面も平らにすることができるためである。したがって、インペラの回転軸方向の全長をより短くすることができる。
【0010】
駆動ユニットは、少なくとも2つの柱に対するスペーサを備えることが好ましく、全ての柱に対するスペーサを備えるとより好ましい。特に、このスペーサは、少なくとも2つの柱のインペラ側端間の距離を一定に保つように構成されている。これらの2つの柱は隣り合う柱とすることができるが、隣り合う柱ではない柱とすることもできる。後者の場合、スペーサは、異なる柱間で、例えば回転軸を通して、力を伝えることができる。隣り合う柱の場合、スペーサは、それらの柱間の空間を埋めることができる。しかしながら、全ての柱が互いに一定の距離に保たれることが最も好ましい。
【0011】
スペーサは円板とすることができる。円板は、柱を挿入するための開口を有することができる。そのような開口の境界を介して、柱間の力を伝達することができる。円板形スペーサは、回転軸の方向に小さな厚さを有することが好ましい。例えば、この厚さを、0.05から0.3mmの間、好ましくは0.066から0.2mmの間、より好ましくは約0.1mmまたは正確に0.1mmとすることができる。この小さな厚さは、距離保持のために軸方向空間がわずかしか使用されないという利点を提供する。磁気短絡を回避するため、スペーサが非強磁性材料でできているとさらに好ましい。スペーサは、チタンまたは別の生体適合性材料でできていることが好ましい。チタンが好ましいのは、チタンが、スペーサの厚さを小さくすることが可能となるような高い機械的強度を有するためである。
【0012】
コイル巻線は、スペーサの、インペラから遠ざかる方向を向いた側に配置されていることが好ましい。コイル巻線のインペラ側端は、スペーサの近くに配置することができ、またはスペーサに接することができる。スペーサは、柱のインペラ側端に、好ましくは柱のインペラ側端の平面と同一平面となるように配置することができる。これらの方策により、ポンプケーシングの内側の使用可能な空間の利用が改善される。
【0013】
あるいは、スペーサが柱のインペラ側端に配置されていなくてもよく、またはスペーサが省かれていてもよい。後者の場合には、コイル巻線のインペラ側端が、対応するそれぞれの柱のインペラ側端まで延びることができる。この場合、コイル巻線は、柱のインペラ側端まで起磁力(magneto-motive force)を発生させることができる。
【0014】
柱はそれぞれ縦軸を有する。それぞれの柱の縦軸は回転軸に対して平行であることが好ましい。柱はそれぞれ、対応するそれぞれの柱の縦軸を横切る断面内、好ましくは対応するそれぞれの柱の縦軸に対して垂直な断面内において不連続である軟磁性材料を含むことができる。言い換えると、柱の軟磁性材料は、柱の対応するそれぞれのコイル巻線によって生じる磁束の方向を横切る断面内、好ましくは柱の対応するそれぞれのコイル巻線によって生じる磁束の方向に対して垂直な断面内において不連続である。断面内において軟磁性材料を分割または中断することにより、発熱およびエネルギー消費を低減させることができるような態様で、柱内の渦電流を低減させること、または防ぐことができる。患者に移動性を与えるために血液ポンプがバッテリ給電式であることが望ましい血液ポンプの長期適用に関しては、エネルギー消費を低減させることが特に有用である。さらに、長期適用では、パージ(purge)なしで血液ポンプを動作させることができ、これは、発熱が小さい場合にのみ可能である。
【0015】
本明細書の意味において「不連続な」は、軟磁性材料の厳密に分離されたエリアまたは中断されているが別の位置で連結されているエリアを形成するために、軟磁性材料が、縦軸を横切る断面内で見たときに、絶縁材料もしくは他の材料または隙間によって中断、分離または分断されていることを意味する。
【0016】
磁束の方向を横切る断面内において不連続な軟磁性材料を提供すると、上で説明したとおり、渦電流が低減し、したがって発熱およびエネルギー消費が小さくなる。連続した軟磁性材料またはフルボディ(full body)の(すなわちソリッドな(solid))軟磁性材料に比べて磁場を大幅に弱くしないために、軟磁性材料の総量を最大化し、その一方で軟磁性材料の連続エリアを最小化する。これは例えば、軟磁性材料を、電気鋼(electric steel)などの軟磁性材料の複数の板(sheet)の形態で提供することによって達成することができる。特に、それらの板が板のスタックを形成していてもよい。それらの板は、互いに電気的に絶縁されていることが好ましく、例えば、隣り合う板間に接着剤、ラッカー、焼付けエナメル(baking enamel)などを提供することによって互いに電気的に絶縁されていることが好ましい。そのような配置を、「スロット入りの(slotted)」と表現することができる。スロット入りの柱によって生じる磁場がソリッドな柱によって生じる磁場と実質的に同じであるような態様で、軟磁性材料の量は、フルボディの軟磁性材料に比べてわずかしか低減されず、絶縁材料の量は少なく維持される。言い換えると、発熱およびエネルギー消費をかなり低減させることができるが、その一方で、絶縁材料に起因する磁場の損失はわずかである。
【0017】
これらの板は、対応するそれぞれの柱の縦軸に対して実質的に平行に広がっていることが好ましい。言い換えると、これらの板は、これらの柱が、磁束の方向を横切る断面内または磁束の方向に対して垂直な断面内において不連続であるような態様で、磁束の方向に対して実質的に平行に広がることができる。軟磁性材料が、縦軸を横切る断面内において不連続である限りにおいて、これらの板は、対応するそれぞれの柱の縦軸に対して斜めに広がることができることが理解されるであろう。これらの板は、25μmから1mmの範囲の厚さを有することが好ましく、50μmから450μmの範囲の厚さ、例えば200μmの厚さを有するとより好ましい。
【0018】
渦電流を防ぎまたは低減させるために、電気用鋼(electrical steel)などのスロット入り軟磁性材料を電動機内に配置することは一般的に知られている。しかしながら、この技術は、板が普通は約500μm以上の範囲の厚さを有する大型装置に対して適用されている。1つの柱が普通、前記の大きさ程度の直径を有し、投入電力が比較的に小さい(例えば最大20ワット(W))本発明の血液ポンプなどの小型用途において、渦電流および関連問題は予想されなかった。驚くべきことに、柱の直径が小さいにも関わらず、スロット入りの柱を提供することによって渦電流を低減させることができ、したがって発熱およびエネルギー消費を小さくすることができる。最高50,000rpm(毎分回転数)の高速で動作させることがある血液ポンプの動作にとって、このことは有利である。
【0019】
柱内に不連続な軟磁性材料を提供する上述のスロット入り配置以外の他の配置が可能であることもあることが理解されるであろう。例えば、複数の板の代わりに、複数の線材(wire)、繊維、柱または他の細長い要素を使用して、駆動ユニットのそれぞれの柱を形成することができる。これらの線材などは、線材が互いに電気的に絶縁された束の形態で提供することができ、例えば、それぞれの線材を取り囲むコーティングによってまたは線材が埋め込まれた絶縁性のマトリックス(matrix)によって線材が互いに電気的に絶縁された束の形態で提供することができ、円形、丸みを帯びた形状、長方形、正方形、多角形など、さまざまな断面形状を有することができる。同様に、軟磁性材料のエリア間の空間が接着剤、ラッカー、ポリマーマトリックスなどの電気絶縁材料を含む、軟磁性材料の粒子、軟磁性材料のワイヤウールまたは他のスポンジ状もしくは多孔性の構造体を提供することもできる。焼結材料またはプレスされた材料によって、軟磁性材料の多孔性構造体、したがって軟磁性材料の不連続な構造体を形成することもできる。空気暴露による軟磁性材料の酸化に起因する酸化物層によって絶縁層を自動的に形成することができるため、このような構造体では追加の絶縁材料を省くことができる。
【0020】
軟磁性材料の板もしくは他の構造体は均一に形成されたものとすることができるが、すなわち、1つの柱の板の厚さもしくは全ての柱の板の厚さを同じにすること、または線材の直径を同じすることができるが、均一でない配置を提供することもできる。例えば、板がさまざまな厚さを有することができ、または線材がさまざまな直径を有することができる。より詳細には、特に板のスタックに関して、中心の1枚以上の板がより大きな厚さを有し、スタックの端に向かうにつれて隣の板がより小さな厚さを有することができる。すなわち、板の厚さが、スタックの中心から端に向かって、すなわちスタックの中心から最も外側の板に向かって薄くなる。同様に、線材の束の中の中心の1本以上の線材がより大きな直径を有し、柱の縁の線材がより小さな直径を有することもできる。すなわち、線材の直径を、束の中心から縁に向かって、すなわち束の中心から最も外側の線材に向かって小さくすることができる。柱の縦軸を横切る断面に関して、柱の中心に軟磁性材料のより大きな連続エリアを提供すること、すなわち、柱の中心に比較的に厚い板または比較的に太い線材を提供することが有利なことがある。これは、これによって、それぞれの柱の縦軸に沿って中心を通る磁束を強化することができ、中心の渦電流は、柱の側部の渦電流ほどには関連しないためである。言い換えると、このような配置が有利なことがあるのは、柱の側部領域の渦電流の方がより重大であり、側部領域の薄い板または細い線材によってこの渦電流を低減させることができるためである。
【0021】
駆動ユニットは、柱の後端を連結するバックプレートを備えることができる。少なくとも1つの柱の後端の表面(以後、後端面)、好ましくは全ての柱の後端面が、その少なくとも1つの柱の縦軸に対して実質的に垂直に配置されていることが好ましい。この少なくとも1つの柱、好ましくは全ての柱はさらに、柱の縦軸の周りに配された、前記縦軸に沿って延びる周囲面/周縁面を備えることができ、後端面は、前記周囲面の縦方向の後端に提供されており、後端面は、インペラから遠ざかる方向を向いている。後端面は、周囲面に対して実質的に垂直であることが好ましい。
【0022】
柱と同様に、バックプレートも、不連続な軟磁性材料を含むことができる。バックプレート内の磁束は、回転軸を実質的に横切っているか、または回転軸に対して実質的に垂直であるため、バックプレートの軟磁性材料は、回転軸に対して平行な断面内において不連続であることが好ましい。これに加えて、柱の不連続な材料に関して上で述べた実質的に全ての特徴および説明は、バックプレートに対しても有効である。例えば、柱と同様に、バックプレートもスロット入りとすることができ、すなわち、バックプレートも、積み重ねられた複数の板で形成されたものとすることができ、バックプレートのそれらの板も互いに電気的に絶縁されていることが好ましい。バックプレートの板は、柱の板に対して実質的に垂直に広がることができる。上で説明したとおり、渦電流を低減させることができ、それによって発熱および電力消費を小さくすることができる。しかしながら、代替として、バックプレートを、連続した軟磁性材料で形成されたもの、すなわちソリッドな軟磁性材料で形成されたものとすることもできる。
【0023】
柱と同様に、バックプレートも、電気用鋼(磁性鋼)などの軟磁性材料または磁束回路を閉じるのに適した他の材料、好ましくはコバルト鋼(cobalt steel)でできていることが好ましい。バックプレートの直径は、5mmまたは6mmから7mmなど、3mmから9mmの範囲とすることができる。バックプレートの厚さは、1.5mmなど、0.5mmから2.5mmの範囲とすることができる。血液ポンプの外径は、4mmから10mmの範囲とすることができ、7mmであると好ましい。これらの複数の柱の配置体(arrangement)の外径は、4mmから7.5mmの範囲など、3mmから8mmの範囲とすることができ、6.5mmであると好ましい。
【0024】
上述のとおり、柱は、電気用鋼(磁性鋼)などの軟磁性材料でできている。柱およびバックプレートは同じ材料でできたものとすることができる。柱およびバックプレートを含む駆動ユニットは、コバルト鋼でできていることが好ましい。コバルト鋼の使用は、ポンプサイズ、特に直径を低減させることに寄与する。全ての磁性鋼の中で最も高い透磁率および最も高い飽和磁束密度を有するため、コバルト鋼は、同じ量の材料を使用した場合に、最も多くの磁束を生み出す。
【0025】
柱の寸法、特に柱の長さおよび断面積はさまざまとすることができ、それらはさまざまな因子に依存する。用途に依存する血液ポンプの寸法、例えば血液ポンプの外径とは対照的に、柱の寸法は、電磁的特性によって決まり、それらの電磁的特性は、駆動ユニットの所望の性能を達成するように調整される。それらの因子のうちの1つの因子が、柱の最も小さな断面積によって達成される磁束密度である。断面積が小さいほど、所望の磁束を達成するのに必要な電流は大きくなる。しかしながら、電流が大きくなるほど、電気抵抗によりコイルの電線内で発生する熱も大きくなる。このことは、全体サイズを低減させるためには「細い」柱が好ましいが、柱を細くすると必要な電流が大きくなり、その結果、望んでいない熱が発生するということを意味する。電線内で発生する熱は、コイル巻線に使用される電線の長さおよび直径にも依存する。巻線損失(通常のケースである銅線が使用される場合には「銅損」または「銅電力損」と呼ばれる)を最小化するためには、短い電線長および大きな電線径が好ましい。言い換えると、電線径が小さい場合には、より太い電線に比べて、同じ電流でより多くの熱が発生する。好ましい電線径は例えば0.5mmから0.2mm、例えば0.1mmである。柱の寸法および駆動ユニットの性能に影響を与えるさらなる因子は、コイルの巻線の数および巻線の外径、すなわち巻線を含む柱の外径である。多数の巻線を、それぞれの柱の周囲の2つ以上の層として配置することができる。例えば2つまたは3つの層を提供することができる。しかしながら、層の数が多いほど多くの熱が発生する。これは、より大きな巻線径を有する外側層の電線の長さが長くなるためである。長い電線は、短い電線に比べて抵抗が大きいことにより、より多くの熱を発生させることがある。したがって、巻線径が小さい単一の巻線層が好ましいと考えられる。柱の長さに依存する巻線の典型的な数は、約50から約150、例えば56または132とすることができる。巻線の数とは無関係に、コイル巻線は、導電性材料、特に金属、例えば銅または銀でできている。銀の電気抵抗は銅の電気抵抗よりも約5%小さいため、銅に比べて銀の方が好ましいことがある。
【0026】
少なくとも1つの柱が、柱の縦軸を横切る三角形の断面を有することが好ましく、それぞれの柱が、柱の縦軸を横切る三角形の断面を有するとより好ましい。柱の断面は、柱の全長にわたって三角形であることが好ましい。三角形の柱は、ポンプハウジングの内側の使用可能な空間を、高い百分率で利用することができる。これは、回転軸の周囲にそのような柱を高密度に入れ込むことができるためである。三角形の1つの辺は、回転軸から遠ざかる方向を向いており、曲線であることが好ましい。この湾曲は、回転軸を囲むように曲がっている。この湾曲の半径は、回転軸の周りに配置された複数の柱によって規定された外径の半径と一致していることが好ましい。このような湾曲によって、円筒形のポンプハウジングの内側の空間の使用のさらなる増大を達成することができる。
【0027】
好ましい実施形態の上記の概要および以下の詳細な説明は、添付図面を参照して読んだときにより十分に理解される。本開示を図解する目的で図面を参照する。しかしながら、本開示の範囲は、図面に開示された特定の実施形態だけに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】血液ポンプの断面図である。
図2】駆動ユニット-インペラ配置体(drive unit-impeller-arrangement)の第1の実施形態の断面図である。
図3A図2による駆動ユニット-インペラ配置体用のスペーサを示す透視図である。
図3B図3Aのスペーサの正面図である。
図3C図3Aおよび3Bのスペーサの側面図である。
図4A図2による配置体の駆動ユニットの柱のための開口を有するバックプレートの第1の層の透視図である。
図4B図2の配置体の駆動ユニットの柱のための開口がないバックプレートの第2の層の透視図である。
図4C図4Aおよび4Bの第1および第2の層を含む、組み立てられたバックプレートの断面図である。
図5A図2による配置体の駆動ユニットの柱をさらに製造するための中間製品を製造する段階を示す図である。
図5B図2による配置体の駆動ユニットの柱をさらに製造するための中間製品を製造する段階を示す図である。
図5C図2による配置体の駆動ユニットの柱をさらに製造するための中間製品を製造する段階を示す図である。
図5D図2による配置体の駆動ユニットの柱をさらに製造するための中間製品を製造する段階を示す図である。
図6A図5Cによる中間製品上の溶接部(weld)を示す図である。
図6B図5Cによる中間製品上の溶接部(weld)を示す図である。
図6C図5Cによる中間製品上の溶接部(weld)を示す図である。
図7図5Aから6Cに従って準備された中間製品から切り出された柱の透視図である。
図8】2本の溶接シーム(weld seam)および中間製品から切り出される柱の2つの断面を有する、図6Aの中間製品の平面の正面図である。
図9】溶接部を有する柱の端面の正面図である。
図10】駆動ユニット-インペラ配置体の第2の実施形態の断面図である。
図11A図10による駆動ユニットのための一体型の磁心を製造するステップを示す図である。
図11B図10による駆動ユニットのための一体型の磁心を製造するステップを示す図である。
図11C図10による駆動ユニットのための一体型の磁心を製造するステップを示す図である。
図12A図11Aから11Cに従って製造された一体型の磁心上の溶接部を示す図である。
図12B図11Aから11Cに従って製造された一体型の磁心上の溶接部を示す図である。
図12C図11Aから11Cに従って製造された一体型の磁心上の溶接部を示す図である。
図13A】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13B】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13C】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13D】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13E】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13F】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13G】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13H】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13I】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
図13J】さまざまな実施形態による柱の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1を参照すると、血液ポンプ1の断面図が示されている。血液ポンプ1は、血流入口21および血流出口22を有するポンプケーシング2を備える。血液ポンプ1は、カテーテルポンプとも呼ばれる血管内ポンプとして設計されており、カテーテル25によって患者の血管内に展開される。血流入口21は、フレキシブルカニューレ23の端にあり、フレキシブルカニューレ23は、使用中、大動脈弁などの心臓弁を貫いて配置することができる。血流出口22は、ポンプケーシング2の側面に位置し、大動脈などの心臓血管内に配置することができる。血液ポンプ1は、駆動ユニット4によってポンプ1を駆動するための電力を血液ポンプ1に供給する、カテーテル25内を延びる電線路26に電気的に接続されている。この駆動については後により詳細に説明する。
【0030】
長期適用で血液ポンプ1が使用されることが意図されている場合、すなわち血液ポンプ1が患者に植え込まれた状況で数週間または数か月間、血液ポンプ1が使用されることが意図されている場合には、バッテリによって電力が供給されることが好ましい。ケーブルによって患者がベースステーションにつながれることがないため、こうすることにより患者は移動することができる。患者はバッテリを持ち運ぶことができ、バッテリは、血液ポンプ1に電気エネルギーを、例えば無線で供給することができる。
【0031】
血液は、血流入口21と血流出口22とを結ぶ通路24に沿って運ばれる(矢印によって血流が示されている)。通路24に沿って血液を運ぶためにインペラ3が提供されており、インペラ3は、第1の軸受11および第2の軸受12によって、ポンプケーシング2内に、回転軸10を軸に回転することができるように取り付けられている。回転軸10はインペラ3の縦軸であることが好ましい。この実施形態では、軸受11、12がともに接触型の軸受である。しかしながら、軸受11、12のうちの少なくとも一方を、磁気軸受または流体軸受(hydrodynamic bearing)などの非接触型の軸受とすることもできる。第1の軸受11は、ある程度の回転運動およびピボット運動を可能にする球面軸受面を有するピボット軸受である。一方の軸受面を形成するピン15が提供されている。第2の軸受12は、支持部材13内に、インペラ3の回転を安定させるように配されており、支持部材13は、血流のための少なくとも1つの開口14を有する。インペラ3が回転したときに血液を運ぶためブレード31がインペラ3上に提供されている。インペラ3の回転は、インペラ3の端部の磁石32に磁気的に結合された駆動ユニット4によって引き起こされる。図示の血液ポンプ1は混合型血液ポンプであり、流れの主方向は軸方向である。インペラ3の配置、特にブレード31の配置によっては、血液ポンプ1が、純粋に軸方向の血液ポンプにもなりうることが理解される。
【0032】
血液ポンプ1は、インペラ3および駆動ユニット4を備える。駆動ユニット4は、複数の柱40、例えば6つの柱40備え、図1の断面図には、そのうちの2つの柱40だけが示されている。柱40は、回転軸10に対して平行に配置されており、より詳細には、それぞれの柱40の縦軸が回転軸10に対して平行である。柱40の一端420は、インペラの隣に配されている。柱40の周りにはコイル巻線44が配置されている。コイル巻線44は、回転磁場を生み出すために制御ユニットによって逐次的に制御される。制御ユニットの一部は、電線路26に接続されたプリント回路板6である。インペラは磁石32を有し、この実施形態では磁石32が多片磁石として形成されている。磁石32は、インペラ3の、駆動ユニット4に面した端に配されている。磁石32は、インペラ3を回転軸10を軸に回転させるように回転磁場と相互作用するよう配置されている。
【0033】
磁束通路を閉じるため、柱のインペラ側端とは反対の側の柱40の端に、バックプレート50が置かれている。柱40は磁心の働きをし、適当な材料、特に、鋼または適当な合金などの軟磁性材料でできており、適当な合金は特にコバルト鋼である。同様に、バックプレート50も、コバルト鋼などの適当な軟磁性材料でできている。バックプレート50は磁束を強化し、磁束の強化は血液ポンプ1の全径の低減を可能にし、血液ポンプ1の全径の低減は、血管内血液ポンプにとって重要である。同じ目的で、磁石32の、駆動ユニット4から遠ざかる方向を向いた面のところのインペラ3内に、継鉄37、すなわち追加のインペラバックプレートが提供されている。この実施形態の継鉄37は、インペラ3に沿って血流を導くために円錐の形状を有する。継鉄37も、コバルト鋼でできたものとすることができる。継鉄37内または磁石32内に、中央軸受11に向かって延びる1つ以上のウォッシュアウトチャネル(wash-out channel)が形成されていてもよい。
【0034】
図2は、図1による血液ポンプの駆動ユニット-インペラ配置体の第1の好ましい実施形態の断面図を示している。図2から分かるとおり、柱40のインペラ側端420は、巻線44の上に半径方向に延びていない。むしろ、柱40の縦軸LAの方向において柱40の断面は一定である。したがって、柱40が互いに接近することが回避される。柱40が互いに接近すると部分的な磁気短絡が生じることがあるため、その結果として、血液ポンプの電動機のパワーが低下する。
【0035】
図2による駆動ユニットは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または好ましくは6つの柱40を備えることができる。9つまたは12個にするなど、柱40の数をこれよりも多くすることが可能なことがある。断面図であるため、2つの柱40だけが示されている。柱40とバックプレート50は駆動ユニット4の磁心400を形成する。磁心400は、10mmよりも小さい直径を有することができる。
【0036】
柱40は、示されているとおり、電気伝導性(electric conductivity)に関して不連続である不連続な軟磁性材料からなるものとすることができる。この不連続な軟磁性材料は、強磁性材料でできた複数の板85を互いに積層したものを含む。積層方向(direction of lamination)は、柱40の縦軸LAの方向に配置されており、矢印DLによって示されている。示されているとおり、柱40は、回転軸10に対して平行に配置されている。
【0037】
柱40の周囲にスペーサ7が配されている。スペーサ7は、磁気的に不活性の材料でできており、スペーサ7の目的は、インペラ側端420における柱40の距離を一定に保つことである。スペーサ7については、図3Aから3Cに関してさらに詳細に説明する。スペーサ7まで、コイル巻線44のインペラ側端424が延びている。柱40の他端にはバックプレート50が提供されている。図2に示された実施形態によれば、バックプレート50は、柱40をその中に受け取るための凹部を有する。より詳細には、バックプレート50は、柱40の後端450を受け取るための開口511を有する第1の層51を備える。バックプレート50については、図4Aから4Cに関してさらに詳細に説明する。
【0038】
上述の3つの特徴、すなわち、柱のインペラ側端424が巻線44のインペラ側端の上に半径方向に延びていないこと、柱40間に磁気的に不活性のスペーサ7が提供されていること、およびバックプレート50が、柱40の後端450を受け取るための凹部を有することの任意の組合せを有する血液ポンプ1の実施形態を実現することが考えられる。
【0039】
図3Aから3Cはそれぞれ、スペーサ7の透視図、正面図および側面図を示している。スペーサ7は全体に、中央に貫通穴75を有する円板または車輪の形態を有する。スペーサ7は、それぞれの柱のための開口71を備える。6つの柱40を有する実施形態に関しては、示されているように、6つの開口71が存在する。開口71間には、ディスタンシングスポーク(distancing spoke)72が配置されている。開口71に柱40が挿入されているとき、ディスタンシングスポーク72は、柱40間の距離を一定に保つ。さらに、スペーサ7は、外側リム(rim)73および内側リム74を備え、外側リム73および内側リム74は、隣り合うディスタンシングスポーク72を連結し、スペーサを安定させる。スペーサ7は、常磁性材料であるチタンでできており、常磁性材料は、柱40のインペラ側端420間に配置されたときに磁気短絡を防ぐ。チタンは、小さな厚さを有するスペーサ7の製造を可能にするような高い機械的強度を提供する。このことは、構造空間の消費に関して有利である。
【0040】
図4Aは、バックプレート50の第1の層51の透視図を示している。第1の層51は全体に、中心穴515を有する円板または車輪の形状を有する。第1の層52は、その中に柱40の後端450が配置される開口511を備える。第1の層51は、開口511間に配置されたディスタンシングスポーク512を備える。ディスタンシングスポーク512の1つの目的は、柱40の後端450の距離を互いに対して一定に保つことである。さらに、第1の層51は、外側リム513および内側リム514を備え、外側リム513および内側リム514はそれぞれ、開口511の外側半径方向端および内側半径方向端においてディスタンシングスポーク512を連結する。第1の層51は、電気伝導性に関して不連続である不連続な軟磁性材料でできたものとすることができる。第1の層51は、強磁性のいくつかの板85からなるものとすることができ、特に、図4Aに示されているように3枚の板からなるものとすることができる。不連続な軟磁性材料を形成するため、板85は、非導電性材料とともに積層されている。積層方向DLは板85に対して概ね平行であり、板が主として広がる方向が積層面を規定する。バックプレート50内において、板85は、回転軸10に対して垂直である。第1の層51の中央には穴515が配置されている。穴515の目的は、第1の層51と第2の層52との組立てを容易にすること、例えば、第1および第2の層51、52の心合わせを容易にすることであることがある。
【0041】
図4Bには、バックプレート50の第2の層52の透視図が示されている。第2の層52は実質的に、第1の層51の穴515と一致した穴525を中央に有する円板の形態を有する。第2の層52には、柱40の後端のための開口がない。その代わりに、第2の層52は、柱40の後端450に面する接触平面526を有する。組み立てられた状態の駆動ユニットでは、柱40の後端450とバックプレート50との間で磁束を伝えるために、柱の後端450が、バックプレート50の第2の層52の接触平面526と接触している。柱40の全ての後端450が接触平面526と接触しているため、柱40間で磁束を交換することができ、第2の層52内に磁気ゼロ点(magnetic zero point)を形成することができる。これを可能にするため、第2の層52は軟磁性材料でできている。この軟磁性材料は、電気伝導性に関して不連続である不連続な軟磁性材料とすることができ、第1の層51に関して上で説明した構造体と同様に、一緒に積層された板85を含むことができる。一例として、図4Bに示されているように、3枚の板85が第2の層52を構成してもよい。第2の層52では、積層方向DLが、回転軸10に対して垂直である。板85は、強磁性かつ導電性であり、一方、板85間の明示されていない中間層は非強磁性かつ非導電性である。このタイプの不連続な軟磁性材料は、そうでなければ磁束の変化によってより大量に生み出されるであろう渦電流を低減させる。第2の層52の中央の穴525の目的は、第1の層51と第2の層52との組立てを容易にすること、例えば、第1および第2の層51、52の心合わせを容易にすることであることがある。
【0042】
図4Cは、バックプレート50の断面図を示している。バックプレート50は、第1の層51および第2の層52からなり、第1の層51および第2の層52は、最も大きな広がりを有するそれらの層の主表面において、互いに結合されている。バックプレート50の第1の層51と第2の層52の間のこの結合は、第1および第2の層51、52の板85間の結合と同じ手法で確立することができる。第1の層51と第2の層52とを心合わせするように、第1の層51の貫通穴515および第2の層52の貫通穴525は互いに整列している。第1の層51と第2の層52とを積み重ねることにより、柱40の後端450を収容するための凹部501が形成されるような形で、開口511の一端が第2の層52によって閉じられる。凹部501の底に接触平面526が形成される。柱40が凹部501に挿入されると、柱40の後端450は接触平面526と接触する。さらに、それぞれの柱40を一緒に取り囲むディスタンシングスポーク512ならびに外側および内側リム513、514によって、柱40の位置が固定される。このようにすると、接触平面526において第2の層52と柱40の後端面45との間に磁気連結(magnetic connection)が確立され、さらに、柱40と第1の層51の柱40を取り囲む上述の部分との間に第2の磁気連結が確立される。しかしながら、磁束の主要な部分は、接触平面526を介して伝達される。柱40の後端450の表面は所定の平坦性(evenness)を有することが好ましく、接触平面526も所定の平坦性を有することが好ましい。このようにすると、柱40の後端450の表面45と接触平面526との間の隙間を、あるサイズ、好ましくは10μmよりも小さいあるサイズよりも小さく保つことができる。このことは、柱40とバックプレート50との間の磁束の伝達を改善する。柱40の後端450の表面45と接触平面526との間には、追加の材料が存在しないことが好ましい。本発明のこの実施形態では、表面45およびバックプレート50を介した磁束の伝達が、柱40をバックプレート50に固定する手法から独立している。
【0043】
図5Aから5Dは、柱40を生産するための準備ステップを示している。図5Aは、電気伝導性に関して不連続である不連続な軟磁性材料のプレート8の透視図を示している。プレート8は以後、ワークピース(work piece)とも呼ばれる。
【0044】
図5Aでは、プレート8に、プレート8からワークピースロッド(work piece rod)81を切り離す幅Wが示されている。ワークピースロッド81の幅Wは、ワークピースロッド81から製造される柱40の長さと同一である。図5Aの長方形Rによって示された部分の拡大図が図5Bに示されている。この図には、不連続な軟磁性材料の積み重ねられた板85が示されている。積層方向DLは、プレート8の主平面に沿って走っており、したがって積層方向DLが積層面を形成する。
【0045】
図5Cは、プレート8から切り離されたワークピースロッド81を、不連続な材料の分離片として示している。図5Cの長方形Rによって示された部分の拡大図が図5Dに示されている。この拡大図には、ワークピースロッド81の板85が示されている。
【0046】
図6Aは、ロッド81から柱40を切り出す準備における溶接ステップの基礎をなす、図5Cおよび5Dのワークピースロッド81を示している。図6Aの左側を向いたロッド81の側面には、ロッド81から製造される柱40の複数の断面84が示されている。ロッド81からこれらの断面84を切り出すことによって柱40が製造される。ロッド81の幅Wは柱40の長さと一致しているため、ロッド81の側面811および812は、柱40のインペラ側端420および後端450の端面になる。
【0047】
図6Bは、柱40を切り出す前の次の準備ステップを示している。ロッド81の面811に、切り出す柱40のそれぞれの断面84を横切って、2本の溶接シーム82および83が、互いに距離を置いて溶接されている。溶接シーム82および83は、板85の積層方向DLに対して垂直に走っている。このようにすると、不連続な材料の板が互いに連結される。2本の溶接シームの代わりに単一の溶接シームを提供することもできる。さらに、ロッド81の反対側の面812に同様の溶接シームを提供することもできる。溶接シーム82および83があることにより、板85は、互いに対してより良好な機械的連結を有し、電気的にも連結されている。この電気的連結には、柱40になると想定される不連続な軟磁性材料の任意の位置から、例えば放電加工のために必要となることがあるロッド81のそれぞれの電気接続位置まで、電流が流れることができるという利点がある。このようにすると、放電加工がかなり容易になる。さらに、切り出された柱40が積層剥離によってばらばらになることがないため、より高い加工信頼性が達成される。レーザ溶接が適用されることが好ましい。同じ溶接部に2回またはそれ以上の頻度で溶接パワーを適用すると有利なことがある。長方形Rによって示されたロッド81の部分が、図6Cに拡大されて示されている。
【0048】
したがって、図6Cは、ロッド81から切り出す柱40の複数の断面84を示している。断面84は、実質的に三角形の形状を有する。示されているように、かどを丸くすることができる。図6Cの断面84の左側に示されている三角形の凸形の辺842は凸形態を有する。円筒形のポンプハウジング2の内側の使用可能な構造空間を十分に利用するのに、このタイプの断面84は有利である。断面84の凸形辺842の反対側の断面84のかど841の2等分線は、積層方向DLと整列している。このようにすると、板85は、断面84を貫いて対称に走る。
【0049】
図7は、ロッド81から切り出された柱40を示している。ロッド81の後端450の表面45に示されているとおり、この表面に溶接シーム82および83は依然として存在している。柱40は、その全長に沿って一定の断面84を有する。溶接シーム82および83は、柱40を切り出した後に取り除かれる。
【0050】
図8は、ワークピースロッド81の側面811の2つの断面84の別の配置を示している。図6Aから6Cに示されたワークピースロッド81とは対照的に、図8のワークピースロッド81の側面811は、2つの断面84を、積層方向DLに対して垂直な方向に互いに並べて配することを可能にするサイズを有する。断面84は、積層方向DLに対して、それぞれの断面84の対応するそれぞれの凸形辺842の反対側のかどの2等分線Bが積層方向DLと整列するような向きに向けられている。ロッド81に沿って断面84をこのように配すると材料を節約することができる。生み出される廃材がより少なくなる。ロッド81の厚さおよび柱40の必要な断面寸法によっては、積層方向DLに対して垂直な方向に柱40の断面84をより多く積み重ねることも考えられる。溶接シーム82および83はそれぞれ、それぞれの断面84を横切って走っている。溶接シーム82、83はさらに、積層方向DLに対して垂直な方向に、ロッド81の側面811全体を横切って走っている。このようにすると、ロッド81の不連続な軟磁性材料の全ての板85が互いに連結される。
【0051】
図9は、溶接されたロッド81から切り出された柱40の一例、すなわち、溶接されたロッド81から切り出された柱40の一方の端面の正面図を示している。図9に示されているように、かなりの幅の単一の溶接シーム86が、断面84の凸形辺842に沿って走っている。溶接シーム86は、三角形の断面84の高さの約1/3を超える部分を覆っていてもよい。溶接シーム86は、柱40の全ての板を連結するように、積層方向DLに対して垂直に走っている。この場合も、凸形辺842の反対側のかど841の2等分線Bは積層方向DLと整列している。
【0052】
図10は、図1による血液ポンプ1の駆動ユニット-インペラ配置体の第2の実施形態を示している。図2に示された第1の実施形態と同様に、柱40のインペラ側端420は、巻線44の上に半径方向に延びていない。むしろ、柱40の縦軸LAの方向において柱40の断面は一定である。したがって、柱40が互いに接近することが回避される。柱40が互いに接近すると部分的な磁気短絡が生じることがあるため、その結果として、血液ポンプの電動機のパワーが低下する。
【0053】
図10による駆動ユニットは、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または好ましくは6つの柱40を備えることができる。8つ、10個または12個にするなど、柱40の数をこれよりも多くすることが可能なことがある。断面図であるため、2つの柱40だけが示されている。柱40とバックプレート50は駆動ユニット4の磁心400を形成する。磁心400は、10mmよりも小さい直径を有することができる。
【0054】
この実施形態は、磁心の構造が異なることで、図2に示された第1の実施形態とは異なっている。この実施形態では、磁心400が、柱40およびバックプレート50である駆動ユニット4の磁気構成要素を、1つの単一片またはモノブロック(monoblock)として備える。このモノブロックは、不連続な軟磁性材料からなる。この不連続な軟磁性材料は、電気伝導性に関して不連続である。示されているとおり、この不連続な軟磁性材料は、互いに積層されて図11Cに示されているようなモノブロック9を形成した強磁性材料の複数の板85を含む。積層方向DLは回転軸10に対して平行である。
【0055】
コイル巻線44は、柱40のインペラ側端420まで延びている。このことには、柱40の全体に沿って起磁力を発生させることができるという利点がある。磁心400は、柱40の後端450に、柱40に関して半径方向に突き出た突出部401を備える。この突出部401は、バックプレート50の方向のコイル巻線44のストップとなりうる。この一体の磁心400は、バックプレート50と柱40との間の高い剛性を有するため、柱のインペラ側端420の柱40間のスペーサを省くことができる。この一体の磁心400は、柱40とバックプレート50との間の最適な磁気連結を達成することができるという利点を提供する。磁心400は、10mmより小さい直径を有することができる。
【0056】
図11Aから11Cは、図10に示されているような駆動ユニット-インペラ配置体の駆動ユニット4の磁心400を製造するステップを示している。図11Aは、磁心400を製造するためのワークピースを形成する立方体形のモノブロック9の透視図を示している。モノブロック9は、電気伝導性に関して不連続である不連続な軟磁性材料からなる。モノブロック9は、積層方向DLに向けられた板85を含む。積層方向DLは、板85の主平面に沿って走っている。板85はそれぞれ、図11Aから11Cには明示されていない非導電性材料の結合層によって、隣り合う対応するそれぞれの板に結合されている。
【0057】
図11Bは、機械加工された半製品の状態の磁心400、例えば立方体のモノブロック9から実質的に円筒形のボディ94に変えられた半製品の状態の磁心400を示している。この機械加工ステップで突出部401が製造されている。磁心400の柱40の周縁面を形成するボディ94の小径区間404が製造されており、小径区間404は、柱40の最も外側の凸形側面842の外側半径と一致した直径を有する。
【0058】
次いで、図11Cに示されているような磁心400を製作するように、ボディ94をさらに製造することができる。この製作ステップに対して放電加工を使用することができる。特に、ワイヤカットによる放電加工を適用して、柱40を互いに分離するスロット49を製作することができる。スロットの内側に、コイル巻線44のための空間が提供される。スロット49の底には、柱40の後端間に、一体のバックプレート50の中間エリア59が広がっている。この中間エリアは、柱40およびバックプレート50と一体である。このように、磁心の全体がモノブロック9によって形成される。
【0059】
磁心400の積層方向DLは、その方向が回転軸10に対して平行であるような方向である。ベースプレート50の積層方向DLが、ベースプレート50の柱40間の磁気流れに関して平行でないことを許容することができる。非導電層によって分離されたコイル状に巻かれた軟磁性板材料から、磁心400を製造することも可能である。その場合、ベースプレート50の積層方向DLは常に円周方向である。このことは、ベースプレート50内の磁束中の渦電流を回避するのに有利である。
【0060】
図12Aから12Cは、図11A~11Cに従って製造された一体型の磁心の表面に1つ以上の溶接部をどのように提供することができるのかを示している。これに応じて、示された実施形態では、立方体モノブロック9の1つの側面に3本の溶接シーム82、83が提供されている。溶接シーム82、83は、モノブロック9から切り出すボディ94の断面を横切って、互いに距離を置いて溶接されている。溶接シーム82、83は、板85の積層方向DLに対して垂直に走っている。このようにすると、不連続な軟磁性材料の板が互いに連結される。3本の溶接シームの代わりに、4本以上の溶接シームまたは幅の広い単一の溶接を提供することもできる。さらに、モノブロック9の反対側の面(図示せず)に同様の溶接シームを提供することもできる。反対側の側面の溶接部の代わりに、または反対側の側面の溶接部に加えて、モノブロック9の側面のバックプレート50の高さのところに、バックプレート50を完全にまたは少なくとも部分的に取り囲むように、1つ以上の溶接シームを提供することもできる。溶接シーム82、83があることにより、板85は、互いに対してより良好な機械的連結を有し、電気的にも連結されている。この電気的連結には、不連続な軟磁性材料の任意の位置から、例えば放電加工のために必要となることがあるボディ94のそれぞれの電気接続位置まで、電流が流れることができるという利点がある。このようにすると、放電加工がかなり容易になる。さらに、ボディ94から切り出されるバックプレート-柱ユニットが積層剥離によってばらばらになることがないため、より高い加工信頼性が達成される。レーザ溶接は適用されることが好ましい。同じ溶接部に2回またはそれ以上の頻度で溶接パワーを適用すると有利なことがある。
【0061】
図13Aから13Jは、柱のさまざまな実施形態の断面を示している。図13Aから13Dは、柱がスロット入りである実施形態、すなわち、絶縁層172によって互いに絶縁された複数の板171から柱が形成された実施形態を示している。絶縁層172は、接着剤、ラッカー、焼付けエナメルなどを含むことができる。図13Aおよび13Bは、板171の厚さが均一である実施形態を示している。この厚さは、25μmから450μmの範囲とすることができる。図13Aに示された板171は、図13Bに示された板171よりも大きな厚さを有する。図13Cの板は異なる厚さを有しており、中心の板の厚さが最も大きく、最も外側の板の厚さが最も小さい。柱の側部領域の渦電流の方がより重大であり、薄い板によってこの渦電流を低減させることができるため、このことが有利なことがある。中心エリアの渦電流は側部領域の渦電流ほど重大ではなく、中心の比較的に厚い板は磁束を改善するのに役立つことがある。図13Dに例示的に示されているように、示された断面の軟磁性材料、すなわち磁束の方向を横切る断面の軟磁性材料が不連続である、または中断されている限りにおいて、板171の向きを異なるものにすることができる。
【0062】
図13Eおよび13Fは、絶縁材料182によって互いに絶縁された線材181の束によって柱141が形成された実施形態を示している。絶縁材料182は、それぞれの線材181のコーティングとして存在することができ、または、線材181が埋め込まれたマトリックスとすることができる。図13Eの実施形態では全ての線材が同じ直径を有し、一方、図13Fの実施形態では、板の厚さが異なる図13Cに示された実施形態と同様に、中心の線材が最も大きな直径を有し、外側の線材がより小さな直径を有する。図13Gに示されているように、異なる直径の線材181を混合することもでき、このようにすると、全ての線材が同じ直径を有する実施形態に比べて、軟磁性材料の全断面積を増大させることができる。あるいは、線材183間の絶縁層184をさらに最小化するために、線材183は、長方形、正方形などの多角形の断面エリアを有することができる。
【0063】
あるいは、図13Iに示されているようなポリマーマトリックス186に埋め込まれた金属粒子185によって、または絶縁性マトリックスを含浸させたスチールウールもしくは他の多孔性構造体によって、柱141の不連続な断面を形成することもできる。焼結工程または高圧成形工程によって、軟磁性材料の多孔性構造体、したがって軟磁性材料の不連続構造体を生産することもできる。その際には、空気暴露による軟磁性材料の酸化によって絶縁層が自動的に形成されるため、絶縁性マトリックスを省くことができる。あるいは、軟磁性材料の丸められた板187であって、図13Jに示されているように丸められた板187の層が絶縁層188によって分離された丸められた板187から、柱141を形成することもできる。これも、柱141または柱40内の渦電流を低減させる、本発明の意味での不連続断面を提供する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図13H
図13I
図13J
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプ(1)において、
血流入口(21)および血流出口(22)を有するポンプケーシング(2)と、
前記ポンプケーシング(2)内に、回転軸(10)を軸に回転することができるように配置されたインペラ(3)であり、前記血流入口(21)から前記血流出口(22)まで血液を運ぶようにサイズおよび形状が決定されたブレード(31)を有するインペラ(3)と、
前記インペラ(3)を回転させる駆動ユニット(4)であり、前記回転軸(10)の周りに配置された複数の柱(40)を備え、前記柱(40)がそれぞれ縦軸(LA)およびインペラ側端(420)を有し、前記インペラ側端(420)が前記インペラ(3)の方を向いている、駆動ユニット(4)と、
それぞれの前記柱(40)の周囲に配されたコイル巻線(44)であり、前記インペラ(3)の方を向いたインペラ側端(424)を有し、回転磁場を生み出すように制御可能なコイル巻線(44)と
を備え、
前記インペラ(3)が、前記インペラ(3)を回転させるように前記回転磁場と相互作用するよう配置された磁性構造体(32)を備える、
血液ポンプ(1)であって、
前記柱(40)のうちの少なくとも2つの柱(40)の前記インペラ側端(420)間の距離を一定に保つように構成されたスペーサ(7)によって特徴づけられる、血液ポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの少なくとも1つの柱(40)のインペラ側端(420)が、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)の周囲に配された前記コイル巻線(44)の前記インペラ側端(424)の上に半径方向に延びておらず、半径方向にという用語が、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)の前記縦軸(LA)に対して垂直な方向に関する
ことを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)の前記インペラ側端(420)が平らであり、前記回転軸(10)に対して垂直に向けられていることを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)が、前記柱(40)のうちの前記少なくとも2つの柱(40)を受け取る開口(71)を有する円板の形状を有することを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項5】
請求項4に記載の血液ポンプ(1)であって、前記開口(71)がそれぞれ、前記柱(40)のうちの前記少なくとも2つの柱(40)のうちの対応するそれぞれの柱(40)の断面(84)と一致した形状を有することを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項6】
請求項から5のいずれか1項に記載の血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)が、0.05から0.3mmの間の厚さ、好ましくは0.066から0.2mmの間の厚さ、より好ましくは約0.1mmまたは正確に0.1mmの厚さを有することを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項7】
請求項から6のいずれか1項に記載の血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)が非強磁性材料でできていることを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)がチタンでできていることを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項9】
請求項から8のいずれか1項に記載の血液ポンプ(1)であって、前記スペーサ(7)が、前記柱(40)のうちの前記少なくとも2つの柱(40)の前記インペラ側端(420)のところに配置されていることを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項10】
請求項から9のいずれか1項に記載の血液ポンプ(1)であって、前記コイル巻線(44)の前記インペラ側端が前記スペーサ(7)まで延びていることを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の血液ポンプ(1)であって、前記柱のうちの前記少なくとも1つの柱が、対応するそれぞれの柱(40)の縦軸(LA)を横切る断面内において電気伝導性に関して不連続である不連続な軟磁性材料を含み、または前記不連続な軟磁性材料からなることを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の血液ポンプ(1)であって、前記インペラ側端(420)とは反対の側の前記柱(40)の端を磁気的に連結しているバックプレート(50)が、前記回転軸(10)に対して平行な断面内において電気伝導性に関して不連続である軟磁性材料を含むことを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の血液ポンプ(1)であって、前記柱(40)のうちの前記少なくとも1つの柱(40)が、対応するそれぞれの柱(40)の前記縦軸(LA)を横切る三角形の断面を有することを特徴とする血液ポンプ(1)。
【請求項14】
請求項13に記載の血液ポンプ(1)であって、前記三角形の断面を有する前記少なくとも1つの柱(40)の側面が、前記回転軸(10)から遠ざかる方向を向いており、前記回転軸(10)を囲むように曲がっていることを特徴とする血液ポンプ(1)。