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特開2024-150675発酵プロセスを制御するためのプロセス
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  • 特開-発酵プロセスを制御するためのプロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150675
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】発酵プロセスを制御するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/04 20060101AFI20241016BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241016BHJP
   C12P 1/04 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12N5/04
C12N1/12 Z
C12N1/20 Z
C12P1/04
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024119251
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2021514957の分割
【原出願日】2019-09-18
(31)【優先権主張番号】PA201800610
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】521106326
【氏名又は名称】ファーメンテイションエキスパーツ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケアウルフ,セーレン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発酵プロセスを制御するためのプロセスを提供する。
【解決手段】少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料を含む発酵生成物中の少なくとも2種の所定の代謝産物の発生を制御するためのプロセスに関し、プロセスは、(i)発酵生成物において発生されるべき少なくとも2種の所定の代謝産物を決定する工程と、(ii)前記所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料が選択される工程と、(iii)前記所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種の発酵有機体が選択される工程と、(iv)工程(ii)にて選択された海藻材料と、工程(iii)にて選択された発酵有機体とを、発酵反応器にて混合させ、発酵混合物を提供する工程と、(v)少なくとも2種の所定の代謝産物の発生に有利に働く発酵条件下にて、発酵混合物を発酵させる工程と、を含み、これにより発酵生成物を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料を含む発酵生成物
における少なくとも2種の所定の代謝産物の発生を制御するためのプロセスであって、前
記プロセスが、
(i)前記発酵生成物において発生されるべき前記少なくとも2種の所定の代謝産物を
決定する工程と;
(ii)工程(i)において決定された前記所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種
の植物材料および/または前記少なくとも1種の海藻材料が選択される工程と;
(iii)工程(i)において決定された前記所定の代謝産物に基づき、少なくとも1
種の発酵有機体が選択される工程と;
(iv)工程(ii)において選択された、前記少なくとも1種の植物材料および/ま
たは前記少なくとも1種の海藻材料と、工程(iii)において選択された、前記少なく
とも1種の発酵有機体とを発酵反応器内で混合し、発酵混合物を提供する工程と;
(v)前記少なくとも2種の所定の代謝産物の発生に有利に働く発酵条件下で、前記発
酵混合物を発酵させる工程と;
を含み、
これにより、前記発酵生成物が提供される、
プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1種の海藻材料が、単細胞藻類または多細胞の大型藻類であり、前記多
細胞の大型藻類が、褐藻大型藻類および/または紅藻大型藻類から選択され得、前記褐藻
大型藻類が、昆布類、サッカリナ・ラティッシマ(ラミナリア・サッカリナ)、ラミナリ
ア・ディジテイト、アスコフィルム・ノドスム、ラミナリア・ハイパーボレア、またはそ
れらの混合物のうちの1種以上から選択され得る、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1種の植物材料は、ブラッシカ・ニグラ;シナピス・アルバ(ブラッシ
カ・アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ブラッシカ・ラパまたはそれらの混合物である
、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも2種の代謝産物は、アミノ酸;脂肪酸;生理活性フェノール;ビタミン
;酸;プリン化合物;炭水化物化合物;フラボノイド化合物;または細菌性バイオマーカ
から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酸は、安息香酸;またはその誘導体である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記少なくとも1種の発酵有機体は、1種以上の健康増進微生物であり、好ましくは、
前記1種以上の健康増進微生物は、1種以上の乳酸菌である、請求項1から5のいずれか
一項に記載のプロセス。
【請求項7】
代謝産物のライブラリーが前記発酵生成物において同定され、前記発酵生成物および/
または前記発酵混合物の代謝産物の前記ライブラリーは、同様の前の発酵生成物の代謝産
物の前記ライブラリーと比較される、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
発酵生成物であって、
(d)少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料;
(e)少なくとも1種の発酵有機体;
(f)少なくとも2種の代謝産物であって、アミノ酸;脂肪酸;生理活性フェノール;ビ
タミン;酸;プリン化合物;炭水化物化合物;フラボノイド化合物;または細菌性バイオ
マーカから選択される、少なくとも2種の代謝産物;
を含む、発酵生成物。
【請求項9】
前記発酵生成物は、繊維性化合物をさらに含み;好ましくは、前記繊維性化合物は、前
記少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料を起源としており
、前記少なくとも1種の植物材料は、ブラッシカ・ニグラ;シナピス・アルバ(ブラッシ
カ・アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ホワイトマスタード、インディアンマスタード
、チャイニーズマスタード、および/またはブラックマスタードシード粉末である、請求
項8に記載の発酵生成物。
【請求項10】
前記少なくとも2種の代謝産物は、少なくとも1種の酸、好ましくは少なくとも1種の
有機酸、好ましくは少なくとも1種の芳香族有機酸、好ましくは、安息香酸、4-ヒドロ
キシフェニル酢酸および/またはシナピン酸から選択される少なくとも1種の芳香族有機
酸;好ましくは安息香酸、を含む、請求項8または9に記載の発酵生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵プロセスを制御するための、および発酵生成物の品質管理を提供するた
めのプロセスに関する。特に、本発明は、望ましいおよび/または所定の成分を確実に発
生させるために、少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料を
発酵させる場合における、発酵プロセスを制御するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
発酵は、発酵有機体が炭化水素供給源を消費し、種々の代謝産物を生成する代謝プロセ
スである。
【0003】
植物材料および海藻材料が発酵する場合に、材料は発酵有機体のための炭化水素供給源
として作用し、分解されて種々の代謝産物を発生させる。発酵プロセス中、通常は、実質
的に難消化性材料であり得る材料の消化性は変化する可能性があり、かつ更には発酵生成
物を消費するヒトまたは動物に、プレバイオティクスな効果を提供することができる。
【0004】
植物材料および海藻材料は、地理的位置、天候、収穫時期、収穫後および発酵前処理、
保存状態などにより、同じ植物材料または海藻材料の多くの異なる性質でおよび多くの異
なる変形物で提供され得る。
【0005】
これらの変形物は発酵プロセスに影響を与えることがあり、更には発酵植物材料および
/または発酵海藻材料からの均一な発酵生成物を提供する上で、著しく困難さを作り出し
得る。それゆえ、産業上、特に大量または産業スケールで稼働させる場合には、植物材料
または海藻材料も含む、均一な発酵生成物を生じさせる発酵プロセスが必要である。
【0006】
従来、均一な製品は、均一な活性成分および均一な活性画分を提供するために、発酵後
、単離または抽出に供される発酵生成物から提供される。ただし、元々存在する植物材料
および/または元々存在する海藻材料を含む、均一かつ特定の目的発酵生成物を提供しよ
うという同じ傾向は、発酵生成物が質とその成分に関して著しく異なり得ることから、特
定用途向きではない。
【0007】
それゆえ、たとえ同じ植物材料または同じ海藻材料であったとしても、材料および従来
の発酵生成物において大量の差異が観察される可能性がある。
【0008】
したがって、産業上、均一の発酵生成物を確実なものとすることができるプロセスを提
供し、かつ望ましい成分を有する発酵生成物を確実なものとする必要性が存在している。
【0009】
それゆえ、植物材料および/または海藻材料を発酵させるための向上したプロセスは有
利となる可能性があり、特に、植物材料および/または海藻材料を発酵させるための、よ
り効率的でより均一、適応可能および/または信頼性の高いプロセスが有利となる可能性
がある。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明の目的は、植物材料および/または海藻材料の発酵を制御するため
の、向上したプロセスに関する。
【0011】
特に、バッチ間で相違を有しながらも、先行技術の上述の課題を解決する、植物材料お
よび/または海藻材料を発酵させるための、より効率的で、均一で、適応可能でおよび/
または信頼性の高いプロセスを提供することが本発明の目的である。
【0012】
それゆえ、本発明の一態様は、少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1
種の海藻材料を含む発酵生成物における少なくとも2種の所定の代謝産物の発生を制御す
るためのプロセスに関し、このプロセスは、
(i)発酵生成物において発生されるべき少なくとも2種の所定の代謝産物を決定する工
程と;
(ii)工程(i)において決定された所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種の植物
材料および/または少なくとも1種の海藻材料が選択される工程と;
(iii)工程(i)において決定された所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種の発
酵有機体が選択される工程と;
(iv)工程(ii)において選択された、少なくとも1種の植物材料および/または少
なくとも1種の海藻材料と、工程(iii)において選択された、少なくとも1種の発酵
有機体とを発酵反応器内で混合し、発酵混合物を提供する工程と;
(v)少なくとも2種の所定の代謝産物の発生に有利に働く発酵条件下で、発酵混合物を
発酵させる工程と;
を含み、
これにより発酵生成物が提供される。
【0013】
本発明の別の実施形態は、
(a)少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料;
(b)少なくとも1種の発酵有機体;
(c)少なくとも2種の代謝産物であって、アミノ酸;脂肪酸;生理活性フェノール;ビ
タミン;酸;プリン化合物;炭水化物化合物;フラボノイド化合物;または細菌性バイオ
マーカから選択される少なくとも2種の代謝産物;
を含む発酵生成物に関する。
【0014】
本発明の更なる別の態様は、本発明による発酵生成物を提供するために、発酵プロセス
を制御するための少なくとも2種の代謝産物の使用に関する。
【0015】
本発明の更に別の態様は、本発明による発酵生成物を提供するために、発酵プロセスを
制御するための代謝産物のライブラリーの使用に関する。
【0016】
本発明の更なる態様は、アミノ酸;脂肪酸;生理活性フェノール;ビタミン;酸;プリ
ン化合物;炭水化物化合物;フラボノイド化合物;または細菌性バイオマーカから選択さ
れる代謝産物のライブラリーを含む発酵生成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】乳酸菌、ペディオコッカス・アシディラクティシ(DSM16243)、ペディオコッカス・ペントサセウス(DSM12834)およびラクトバチルス・プランタルム(DSM12837)を用いた、本発明による発酵生成物の多数の代謝産物を含むフィンガープリントを示す。発酵生成物は、ナタネ材料、マスタード材料および海藻材料を含む。
図2】乳酸菌、ペディオコッカス・アシディラクティシ(DSM16243)、ペディオコッカス・ペントサセウス(DSM12834)およびラクトバチルス・プランタルム(DSM12837)を用いた、ナタネ材料、マスタード材料および海藻材料を含む発酵生成物における、特定の代謝産物である安息香酸の発生とその量を示す。図2に例示されるように、安息香酸は海藻材料の発酵時にのみ形成され得る。
図3】乳酸菌、ペディオコッカス・アシディラクティシ(DSM16243)、ペディオコッカス・ペントサセウス(DSM12834)およびラクトバチルス・プランタルム(DSM12837)を用いた、ナタネ材料、マスタード材料および海藻材料の発酵から得られた発酵生成物における、別の特定の代謝産物であるリジンの発生とその量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで本発明は以下においてより詳細に記載される。
【0019】
植物材料や海藻などの天然材料と作用させる場合、地理的位置、天候、収穫時期、収穫
後および発酵前処理、保存状態に依存して、多くの変化が同じ植物材料または海藻材料に
生じることがある。それゆえ、たとえ同じ植物材料または同じ海藻材料であったとしても
、材料において多くの差異が観察される可能性がある。したがって、均一な発酵生成物を
確実なものとし、かつ望ましい成分を有する発酵生成物を確実なものとするため、特に、
発酵プロセス中に生成される特定の代謝産物の発生といった点で、この発酵プロセスが制
御され得る。
【0020】
本発明によりこのプロセスを制御することにより、特定の機能的な特徴を有する特定の
発酵生成物を提供するおよび/または先行技術と比較してある特定の機能的な特徴を向上
させることが可能である。
【0021】
それゆえ、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1種の植物材料および/または少
なくとも1種の海藻材料を含む発酵生成物における少なくとも2種の所定の代謝産物の発
生を制御するためのプロセスに関し、このプロセスは、
(i)発酵生成物中に発生する、少なくとも2種の所定の代謝産物を決定する工程と;
(ii)工程(i)において決定された所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種の植物
材料および/または少なくとも1種の海藻材料が選択される工程と;
(iii)工程(i)において決定された所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種の発
酵有機体が選択される工程と;
(iv)工程(ii)にて選択された、少なくとも1種の植物材料および/または少なく
とも1種の海藻材料と、工程(iii)にて選択された、少なくとも1種の発酵有機体と
を発酵反応器中で混合し、発酵混合物を提供する工程と;
(v)少なくとも2種の所定の代謝産物の発生に有利に働く発酵条件下にて、発酵混合物
を発酵させる工程と;
を含み、
これにより発酵生成物が提供される。
【0022】
本文脈における、用語「所定の代謝産物」は、1種以上の代謝産物の発生を増加させる
か、または1種以上の代謝産物の発生を減少もしくは抑制させるかのいずれかのために、
発酵の開始の前に選択される1種以上の代謝産物の発生に関する。これは、一部の所定の
代謝産物が、増加した1種以上の代謝産物および抑制されることになる代謝産物を有する
ということであり得る。
【0023】
本発明の一実施形態では、少なくとも3種の所定の代謝産物が発酵プロセスにて発生す
るように決定され、例えば少なくとも4種の所定の代謝産物、例えば少なくとも5種の所
定の代謝産物、例えば少なくとも6種の所定の代謝産物、例えば少なくとも8種の所定の
代謝産物、例えば少なくとも10種の所定の代謝産物、例えば少なくとも15種の所定の
代謝産物、例えば少なくとも20種の所定の代謝産物、例えば少なくとも25種の所定の
代謝産物、例えば少なくとも30種の所定の代謝産物、例えば少なくとも35種の所定の
代謝産物、例えば少なくとも40種の所定の代謝産物、例えば少なくとも45種の所定の
代謝産物、少なくとも50種の所定の代謝産物が発酵プロセスにて発生するように決定さ
れる。
【0024】
本発明の更なる実施形態では、本発明の少なくとも2種の代謝産物は、発酵生成物のフ
ィンガープリントを表す。本発明の一実施形態では、フィンガープリントは、(i)少な
くとも2種の所定の代謝産物の存在および(ii)発酵生成物内に存在する、少なくとも
2種の所定の代謝産物の含有量、の表示を提供する。フィンガープリントは、質量分析ま
たは単純リストにて例示され得る。
【0025】
同じ所定の代謝産物を含む種々のフィンガープリント間の一部の変動は、分析に起因し
て生じることがあり、その変動は所定の代謝産物の数が増加する場合に増加することがあ
る。種々のフィンガープリント間の変動が観察される場合には、少なくとも2種の所定の
代謝産物間の比率は、同じであるか、または実質的に同じであってもよい。
【0026】
本文脈における、用語「発生」は、少なくとも1種の植物材料および/または少なくと
も1種の海藻材料の、代謝産物への変換に関する。発生は、代謝産物の形成を増加、また
は代謝産物の形成を減少もしくは抑制する、のいずれか一方であり得る。
【0027】
少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料の発酵中、複数の
代謝産物が形成され得る。
【0028】
本発明による発酵生成物は、少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種
の海藻材料を元々起源としている成分および発酵プロセス中に生成された成分を含む成分
の混合物に関する。本発明による少なくとも2種の代謝産物は、好ましくは発酵プロセス
中に生成される。
【0029】
本発明の一実施形態では、代謝産物のライブラリーが提供されてよく、これは任意選択
的には種々の代謝産物の濃度表示と組み合わせて提供されてよく、発酵生成物のフィンガ
ープリントとして機能し得る。
【0030】
発酵生成物のこのフィンガープリントは、発酵生成物の品質を評価するため、および/
または提供された発酵生成物の均一性を評価するため、以前のフィンガープリントと比較
され得る。
【0031】
本発明の一実施形態では、代謝産物のライブラリーは発酵生成物にて同定され得る。
【0032】
本文脈における、用語「同定された代謝産物」は、例えばGC-MS分析(ガスクロマ
トグラフィー-質量分析)またはHILIC分析(親水性相互作用クロマトグラフィー分
析)によって同定された、既知および未知の代謝産物の両方に関する。好ましくは、既知
の化合物は特徴付けられ、命名され得る。
【0033】
本発明の一実施形態では、発酵生成物および/または発酵混合物の代謝産物のライブラ
リーは、同様の先行発酵生成物の代謝産物のライブラリーと比較され得る。
【0034】
本文脈における、用語「代謝産物のライブラリー」は、代謝産物の範囲に関する。好ま
しくは、代謝産物のライブラリーは、少なくとも20種の代謝産物、例えば少なくとも3
0種の代謝産物、例えば少なくとも40種の代謝産物、例えば少なくとも50種の代謝産
物、例えば少なくとも60種の代謝産物、例えば少なくとも70種の代謝産物、例えば少
なくとも80種の代謝産物、例えば少なくとも80種の代謝産物、例えば少なくとも90
種の代謝産物、例えば少なくとも100種の代謝産物、例えば少なくとも250種の代謝
産物、例えば少なくとも500種の代謝産物を含む。
【0035】
本発明の一実施形態では、少なくとも2種の代謝産物は、アミノ酸;脂肪酸;生理活性
フェノール;ビタミン;酸;プリン化合物;炭水化物化合物;フラボノイド化合物;また
は細菌性バイオマーカから選択され得る。
【0036】
アミノ酸は、アラニン(ala);アルギニン(arg);アスパラギン(asn);
アスパラギン酸(asp);システイン(cys);グルタミン(gln);グルタミン
酸(glu);グリシン(gly);ヒスチジン(his);イソロイシン(ile);
ロイシン(leu);リジン(lys);メチオニン(met);フェニルアラニン(p
he);プロリン(pro);セリン(ser);トレオニン(thr);トリプトファ
ン(trp);チロシン(tyr);およびバリン(val)からなる群から選択され得
る。
【0037】
好ましくは、アミノ酸は、アルギニン(arg);アスパラギン(asn);アスパラ
ギン酸(asp);グルタミン(gln);グルタミン酸(glu);イソロイシン(i
le);リジン(lys);フェニルアラニン(phe);プロリン(pro);トリプ
トファン(trp);およびチロシン(tyr)からなる群から選択され得る。
【0038】
本発明の一実施形態では、アミノ酸は必須アミノ酸であり得る。好ましくは、必須アミ
ノ酸は、ヒスチジン(his);イソロイシン(ile);ロイシン(leu);リジン
(lys);メチオニン(met);フェニルアラニン(phe);トレオニン(thr
);トリプトファン(trp);およびバリン(val)からなる群から選択され得る。
特に、必須アミノ酸は、イソロイシン(ile);ロイシン(leu);リジン(lys
);フェニルアラニン(phe);およびトリプトファン(trp)からなる群から選択
される。
【0039】
本発明の更なる実施形態では、脂肪酸はポリ不飽和脂肪酸;不飽和脂肪酸または短鎖脂
肪酸であり得る。
【0040】
好ましくは、ポリ不飽和脂肪酸は、メチレン中断型ポリエンであるオメガ-3、オメガ
-6およびオメガ-9、共役脂肪酸、またはリノレン酸(C18:2)、γ-リノレン酸
(C18:3);α-リノレン酸(C18:3);オクタデカテトラエン酸(18:4)
;エイコサテトラエン酸(C20:4);エイコサペンタエン酸(C20:5);もしく
はピノレン酸から選択される他のポリ不飽和脂肪酸から好ましくは選択され得る。
【0041】
不飽和脂肪酸は好ましくは、オレイン酸(C18:1);エン酸(C18:1);10
-ウンデセン酸(C10:1);ヒドロキシステアリン酸(C10:1);9-ヘキサデ
カン酸(C16:1)から選択され得る。
【0042】
短鎖脂肪酸は、ギ酸;酢酸;プロピオン酸;酪酸、イソブチル酸、バレリアン酸および
イソバレリアン酸から好ましくは選択され得る。
【0043】
本発明の一実施形態では、生理活性フェノールは、プロトカテク酸、p-ヒドロキシ安
息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、クロロゲン酸、バニリン酸、コーヒー酸、p-
クマル酸、サリチル酸、フラボノイドである。
【0044】
本発明の更なる実施形態では、酸は有機酸または無機酸であり得る。
【0045】
無機酸は好ましくはタウリンであり得る。
【0046】
有機酸は、窒素有機酸(nitrogenic organic acid);芳香族
有機酸;脂肪族有機酸;またはジカルボン酸から選択され得る。
【0047】
好ましくは、窒素有機酸は、クレアチン;アセチル-カルニチン、ブチリル-カルニチ
ン、デオキシ-カルニチン、イソバレリル-カルニチン、およびプロピオニル-カルニチ
ンなどのカルニチンまたはその誘導体であり得る。
【0048】
芳香族有機酸は好ましくは、安息香酸、ニコチン酸またはそれらの誘導体であり得る。
【0049】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも2種の代謝産物のうちの1種は安息香酸で
あり得る。
【0050】
脂肪族有機酸は好ましくは、乳酸;酢酸;アコニット酸;イソクエン酸;またはクエン
酸から選択され得る。
【0051】
ジカルボン酸は好ましくは、2-オキソグルタル酸;リンゴ酸;ピルビン酸;フマル酸
;コハク酸;またはマロン酸から選択され得る。
【0052】
本発明の一実施形態では、プリン化合物は、アデニン化合物;アデノシン化合物;シチ
ジン化合物;シトシン化合物;グアニン化合物;グアノシン化合物;ヒポキサンチン化合
物、イノシン化合物;またはキサンチン化合物から選択され得る。
【0053】
本発明の更なる実施形態では、炭水化物化合物は、フルクトース-6-リン酸;グルコ
ース;グルコース-6-リン酸;またはmyo-イノシトールから選択され得る。
【0054】
本発明の更なる一実施形態では、フラボノイド化合物は、ケンペロール3-O-ソホロ
シドなどのケンペロール化合物であり得る。
【0055】
本発明による、本明細書に記載の発酵プロセスを制御する場合、発酵プロセスおよび発
酵生成物の意図される使用に基づき発酵される材料を設計することが可能であり得る。こ
の方法では、発酵生成物の活性および/または特異性を向上させることができる。
【0056】
本文脈における、用語「向上した活性」は、消費者の健康増進活性に関し、発酵生成物
または消費者に対する抗菌活性;発酵生成物の消化性を向上させ得ること;製品の味およ
び/香りを向上させ得ることに関する。
【0057】
本発明の文脈における、用語「特異性」は、特定の活性を提供するための発酵生成物の
能力に関する。本発明の一実施形態では、この活性は消費者の健康増進活性であり得、こ
の活性は、発酵生成物または消費者に対する抗菌活性;発酵生成物の消化性を向上させる
こと;生成物の味および/香りを向上させることであってもよい。
【0058】
本発明の一実施形態では、少なくとも2種の所定の代謝産物は、HDMPPA(3-4
’-ヒドロキシル-3’,5’-ジメトキシフェニル)プロピオン酸)を含まない。
【0059】
本発明の発明者らは驚くべきことに、4つのパラメータが発酵プロセスを制御する上で
特に重要であると示すことができることを見い出した。これらのパラメータは:
(I)海藻材料の種類;
(II)植物材料の種類;
(III)選択された1種以上の発酵有機体;および/または、
(IV)発酵プロセス;
を含み得る。
【0060】
これらの4つのパラメータのうちの1つ以上を制御することにより、発酵プロセスを制
御するために、関心対象の特定の代謝産物の発生を操作することができる。この方法によ
り、均一または実質的に均一な生成物を提供することが可能であり得る。
【0061】
発酵プロセス中の代謝産物の発生を制御するために特に重要であると見い出され得る第
1のパラメータは、使用される海藻材料の種類であり得る。
【0062】
用語「少なくとも1種の発酵海藻材料」は、異なる発酵海藻材料が使用され得ることを
意味している。本発明の一実施形態では、発酵生成物は、少なくとも1種の海藻材料、例
えば少なくとも2種の海藻材料、例えば少なくとも3種の海藻材料、例えば少なくとも4
種の海藻材料を含む。
【0063】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の発酵海藻材料は単細胞藻類または多細胞の
大型藻類である得る。
【0064】
本本発明の更なる実施形態では、多細胞の大型藻類は、褐藻大型藻類、紅藻大型藻類、
および/または緑藻大型藻類から選択され得る。
【0065】
本発明の別の実施形態では、褐藻大型藻類は、昆布類、サッカリナ・ラティッシマ(ラ
ミナリア・サッカリナ)、ラミナリア・ディジテイト、アスコフィルム・ノドスム、ラミ
ナリア・ハイパーボレア、またはその混合物から選択され得る。
【0066】
発酵プロセス中の代謝産物の発生を制御するために特に重要であると見い出され得る第
2のパラメータは、使用される植物材料の種類であり得る。
【0067】
本文脈における、用語「植物材料」は、光合成を行うことができる材料に関する。
【0068】
用語「少なくとも1種の発酵植物材料」は、異なる植物材料が使用され得ることを意味
している。本発明の一実施形態では、発酵生成物は、少なくとも1種の発酵植物材料、例
えば少なくとも2種の発酵植物材料、例えば少なくとも3種の発酵植物材料、例えば少な
くとも4種の発酵植物材料を含む。
【0069】
発酵生成物が2種以上の発酵植物材料を含む場合、発酵植物材料は異なる起源のもので
あってもよい。
【0070】
本発明の一実施形態では、発酵植物材料は、少なくとも1種のタンパク質性の植物材料
から選択されてよい。タンパク質性の植物材料は、野菜植物材料であってもよく、好まし
くは野菜植物材料は、真性双子葉植物、被子植物、および/またはバラ科植物から選択さ
れ得る。
【0071】
好ましくは、タンパク質性の植物材料または野菜植物材料は、アブラナ属植物から選択
され得る。
【0072】
本発明の一実施形態では、アブラナ属植物は、アブラナ(Brassicaceae)
科または十字花(Cruciferae)科から選択される。
【0073】
本発明の更なる実施形態では、アブラナ科または十字花科は、アブラナ属;アマナズナ
属;ヒマワリ;ヤシ;ダイズ、ソラマメ、ルピナス;またはそれらの組合せの少なくとも
1つから選択され得る。好ましくは、少なくとも1種のアブラナ属は、ブラッシカ・ナパ
;ブラッシカ・オレラケア;ブラッシカ・カンペストリス;ブラッシカ・ニグラ;シナピ
ス・アルバ(ブラッシカ・アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ブラッシカ・ラパまたは
それらの混合物などの1つ以上の種から選択され得る。
【0074】
本発明の更なる一実施形態では、少なくとも1種のアブラナ属は、セイヨウアブラナ、
ナタネ、キャノーラ、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、ケール、芽キャベツ、カ
ラードグリーン、サボイキャベツ、コールラビ、ガイラン、ホワイトマスタード、インデ
ィアンマスタード、チャイニーズマスタード、およびブラックマスタードシードの粉末を
含むものからなる群から選択され得る。
【0075】
発酵生成物は、本明細書に定義される少なくとも1種の発酵海藻材料と、本明細書に定
義される少なくとも1種の発酵植物材料との組合せを含み得る。
【0076】
本文脈における、材料(少なくとも1種の植物材料、少なくとも1種の海藻材料または
少なくとも1種の植物材料と少なくとも1種の海藻材料との組合せ)に関係する用語「発
酵」は、所定の量の発酵微生物を材料に加えることにより、微生物および1種以上の材料
を相互作用させ材料を分解する、1種以上の材料の制御された代謝プロセスに関する。
【0077】
発酵プロセス中の代謝産物の発生を制御するのに特に重要であると見い出され得る第3
のパラメータは、使用される発酵有機体の種類であり得る。
【0078】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の発酵有機体は、1種以上の健康増進微生物
であり得る。
【0079】
発酵生成物および/または発酵混合物は、1種以上の健康増進微生物を含み、好ましく
はこの健康増進微生物は健康増進酵母および/または健康増進細菌、更により好ましくは
健康増進微生物は健康増進細菌であり得る。
【0080】
健康増進細菌は、1種以上のプロバイオティクスを含み得る。1種以上のプロバイオテ
ィクスおよび/または1種以上の健康増進微生物は、少なくとも1種の乳酸菌株を含み得
る。
【0081】
本発明の文脈における、用語「プロバイオテック」は、適正量で投与される場合、宿主
に健康的な恩恵を与える、生きている微生物に関する。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の乳酸菌株は、エンテロコッカス属、
ラクトバチルス属、ペディオコッカス属、ラクトコッカス属、もしくはビフィドバクテリ
ウム属またはそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0083】
本発明の更なる実施形態では、1種以上の乳酸菌株は、ペディオコッカス・ペントサセ
ウス;ペンディオコッカス・アシディラクティシ;ラクトバチルス・プランタルム、ラク
トバチルス・ラムノサス、エンテロコッカス・フェシウム、ラクトバチルス・アシドフィ
ルス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィド
バクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ペントー
サス、ラクトバチルス・バギナリス、ラクトバチルス・キシローサスおよびそれらの組合
せからなる群から選択され得る。
【0084】
本発明の一実施形態では、健康増進微生物は発酵生成物中に存在する主要な微生物であ
ってもよい。好ましくは主要な微生物は、乳酸菌である。更により好ましくは、主要な微
生物は、ペディオコッカス・ペントサセウス;ペンディオコッカス・アシディラクティシ
、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・ラムノサス、エンテロコッカス・フ
ェシウム、ラクトバチルス・アシドフィルス、ビフィドバクテリウム・ラクティス、ビフ
ィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ラクトバチルス・サ
リバリウス、ラクトバチルス・ペントーサス、ラクトバチルス・バギナリス、ラクトバチ
ルス・キシローサス;からなる群から選択され得る。好ましくは、組成物中に存在する主
要な乳酸菌はラクトバチルス・プランタルムである。
【0085】
本発明の文脈における、用語「主要な微生物」は、存在する微生物の総量に対する重量
/重量比によって決定される、最高量で存在する微生物に関する。
【0086】
発酵中、微生物群は、共発酵を提供するために、植物材料を発酵させるために使用され
得る。共発酵は、異なる微生物の混合物(例えば酵母、菌類、および/または細菌類の混
合物)または異なる細菌の混合物であってもよい。好ましくは、共発酵は異なる細菌の菌
株の混合物を含む。本発明の一実施形態では、発酵混合物および/または発酵生成物は、
1種以上の細菌の菌株、例えば2種以上の細菌の菌株、例えば3種以上の細菌の菌株、例
えば4種以上の細菌の菌株、例えば7種以上の細菌の菌株、例えば10種以上の細菌の菌
株、例えば15種以上の細菌の菌株、例えば20種以上の細菌の菌株、例えば25種以上
の細菌の菌株、例えば30種以上の細菌の菌株、例えば35種以上の細菌の菌株、例えば
40種以上の細菌の菌株を含む。好ましくは、細菌の菌株は1種以上の乳酸菌株であって
よい。
【0087】
本発明の更なる実施形態では、1種以上の乳酸菌株は、ペディオコッカス・ペントサセ
ウス(DSM12834);ペンディオコッカス・アシディラクティシ(DSM1624
3)、ラクトバチルス・プランタルム(DSM12837)、エンテロコッカス・フェシ
ウム(NCIMB30122)、ラクトバチルス・ラムノサス(NCIMB30121)
、ペディオコッカス・ペントサセウスHTS(LMG P-22549)、ペンディオコ
ッカス・アシディラクティシ(NCIMB30086)および/またはラクトバチルス・
プランタルムLSI(NCIMB30083)のうち1種以上からなる群から選択され得
る。好ましくは、1種以上の乳酸菌株は、ペディオコッカス・ペントサセウス(DSM1
2834);ペンディオコッカス・アシディラクティシ(DSM16243);ラクトバ
チルス・プランタルム(DSM12837)のうち1種以上からなる群から選択され得る
【0088】
発酵生成物は、生存可能な高含量の乳酸菌を有し得る。本発明の一実施形態では、発酵
生成物は、発酵生成物1グラムあたり10~1012CFUの範囲、例えば1グラムあ
たり10~1012CFUの範囲、例えば1グラムあたり10~1011CFUの範
囲、例えば1グラムあたり10~1011CFUの範囲、例えば1グラムあたり10
~1010CFUの範囲の総量で、1種以上の乳酸菌株を含む。
【0089】
発酵プロセスは好ましくは、ホモ型発酵プロセスまたは実質的なホモ型発酵プロセスで
あってもよい。
【0090】
本発明の一実施形態では、発酵生成物は、発酵生成物に対して1%(w/w)乳酸超の
乳酸濃度、例えば発酵生成物に対して少なくとも1.5%(w/w)乳酸、例えば発酵生
成物に対して少なくとも2%(w/w)乳酸、例えば発酵生成物に対して少なくとも3%
(w/w)乳酸、例えば発酵生成物に対して少なくとも4%(w/w)乳酸、例えば発酵
生成物に対して少なくとも5%(w/w)乳酸、例えば発酵生成物に対して少なくとも6
%(w/w)乳酸、例えば発酵生成物に対して少なくとも7%(w/w)乳酸、例えば発
酵生成物に対して少なくとも8%(w/w)乳酸、例えば発酵生成物に対して少なくとも
9%(w/w)乳酸、例えば発酵生成物に対して少なくとも10%(w/w)乳酸、例え
ば発酵生成物に対して少なくとも1.1~10%(w/w)乳酸の範囲、例えば発酵生成
物に対して少なくとも2.5~7.5%(w/w)乳酸の範囲、例えば発酵生成物に対し
て少なくとも5~6%(w/w)乳酸の範囲の乳酸濃度を含んでいてもよい。
【0091】
本発明の文脈における、用語「実質的にホモ型発酵である」は、ホモ型発酵中に酢酸を
わずかに発生することに関する。
【0092】
本発明の一実施形態では、発酵生成物は、発酵生成物に対して0.01~1%(w/w
)酢酸の範囲の酢酸濃度、例えば発酵生成物に対して0.1~0.9%(w/w)酢酸の
範囲、例えば発酵生成物に対して0.5~0.8%(w/w)酢酸の範囲の酢酸濃度を含
んでいてもよい。
【0093】
発酵プロセス中の代謝産物の発生を制御するのに特に重要であると見い出され得る第4
のパラメータは、発酵プロセスまたは発酵プロセスのパラメータであり得る。
【0094】
本発明の一実施形態では、プロセスは、少なくとも2種の所定の代謝産物のアットライ
ン(at-line)測定もしくはインライン測定、または2種の代謝産物に関して分析
される発酵生成物の定期的サンプリングに関連している。
【0095】
本発明の更なる実施形態では、発酵混合物は、少なくとも2種の所定の代謝産物が望ま
しい量で提供されるまで発酵可能であってよい。長期間にわたる発酵では、発酵生成物中
の発酵有機体の高い生存率を確実にするために、追加の発酵有機体が、発酵混合物に加え
られてもよい。
【0096】
発酵混合物が過度に高温になることを防ぐために、発酵混合物は、発酵混合物が工程(
v)において発酵可能となる前に、30~50%(w/w)湿度の範囲の湿度、例えば3
5~45%(w/w)湿度の範囲、例えば38~42%(w/w)湿度の範囲、例えば約
40%(w/w)湿度に調節され得る。
【0097】
空気および/または酸素は、好ましくは、発酵混合物が工程(v)において発酵可能に
なる前に、発酵反応器から除去または実質的に除去されてもよい。
【0098】
本文脈における、用語「実質的に除去」は、発酵混合物の総体積に対して5%(v/v
)未満、例えば発酵混合物の総体積に対して3%(v/v)未満;例えば発酵混合物の総
体積に対して1%(v/v)未満;例えば発酵混合物の総体積に対して0.5%(v/v
)未満;例えば発酵混合物の総体積に対して0.1%(v/v)未満の、発酵混合物中の
空気および/または酸素の存在に関する。
【0099】
本発明の一実施形態では、プロセスは嫌気性発酵プロセスであってもよい。
【0100】
本発明の更なる実施形態では、発酵混合物は、多くの発酵有機体が生存するのを維持す
るため、発酵プロセス中、50℃未満、例えば45℃未満;例えば40℃未満の発酵混合
物温度に維持され得る。好ましくは、発酵プロセスは、15~40℃、例えば25~35
℃、例えば30~40℃、例えば15~20℃または例えば40~45℃の範囲の温度で
実施され得る。
【0101】
発酵混合物は、発酵混合物のpHが、pH5.5以下、例えばpH5.0以下;例えば
pH4.5以下、例えばpH4.3以下、例えばpH4.2以下、例えばpH4.1以下
または例えばpH4.0以下のpHに達するまで発酵され得る。
【0102】
少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料は、プロセス全体
を通して滅菌されないため、自然発生する微生物の成長(所望の微生物または非所望の微
生物)は、pHを減少させることによっておよび/または嫌気性発酵状態にすることによ
って抑制される。
【0103】
発酵混合物は好ましくは、少なくとも5日間、例えば少なくとも7日間、例えば少なく
とも10日間、例えば少なくとも12日間、例えば少なくとも15日間、例えば少なくと
も17日間、例えば少なくとも20日間、例えば少なくとも23日間、発酵され得る。
【0104】
本発明の一実施形態では、得られた発酵生成物を乾燥し、乾燥発酵生成物を提供し得る
。本発明による発酵生成物を乾燥させるための方法の一例は、参照として本明細書に組み
込まれるWO2013/029632に説明されている。
【0105】
好ましくは、乾燥発酵生成物は、4~12%(w/w)の範囲、例えば5~10%(w
/w)の範囲、例えば6~8%(w/w)の範囲の含水量を有してよい。
【0106】
発酵生成物が少なくとも1種の発酵植物材料と少なくとも1種の発酵海藻材料との組合
せを含む場合、少なくとも1種の植物材料の発酵および少なくとも1種の海藻材料の発酵
は、個別または一緒に実施されてもよい。好ましくは、少なくとも1種の植物材料および
少なくとも1種の海藻材料の発酵は一緒に実施され得る。
【0107】
本発明による発酵生成物は、好ましくは繊維性材料を含んでいてもよい。好ましくは、
発酵生成物は、植物材料および/または海藻材料を起源とする繊維性材料を含む。
【0108】
本発明の一実施形態では、発酵生成物は、1kgの乾燥発酵生成物あたり5g超の繊維
性材料、例えば1kgの乾燥発酵生成物あたり10g超の繊維性材料、例えば1kgの乾
燥発酵生成物あたり15g超の繊維性材料、例えば1kgの乾燥発酵生成物あたり20g
超の繊維性材料、例えば1kgの乾燥発酵生成物あたり25g超の繊維性材料、例えば1
kgの乾燥発酵生成物あたり50g超の繊維性材料、例えば1kgの乾燥発酵生成物あた
り75g超の繊維性材料、例えば1kgの乾燥発酵生成物あたり100g超の繊維性材料
、例えば1kgの乾燥発酵生成物あたり150g超の繊維性材料、例えば1kgの乾燥発
酵生成物あたり200g超の繊維性材料、例えば1kgの乾燥発酵生成物あたり250g
超の繊維性材料、例えば1kgの乾燥発酵生成物あたり300g超の繊維性材料を含む。
【0109】
本発明による発酵生成物は、好ましくはデンプン材料を含んでいてもよい。好ましくは
、発酵生成物は、植物材料および/または海藻材料を起源とするデンプン材料を含む。
【0110】
本発明の一実施形態では、組成物は、1kgの乾燥組成物あたり5g超のデンプン材料
、例えば1kgの乾燥組成物あたり10g超のデンプン材料、例えば1kgの乾燥組成物
あたり15g超のデンプン材料、例えば1kgの乾燥組成物あたり20g超のデンプン材
料、例えば1kgの乾燥組成物あたり25g超のデンプン材料、例えば1kgの乾燥組成
物あたり50g超のデンプン材料、例えば1kgの乾燥組成物あたり75g超のデンプン
材料、例えば1kgの乾燥組成物あたり100g超のデンプン材料、例えば1kgの乾燥
組成物あたり150g超のデンプン材料、例えば1kgの乾燥組成物あたり200g超の
デンプン材料、例えば1kgの乾燥組成物あたり250g超のデンプン材料、例えば1k
gの乾燥組成物あたり300g超のデンプン材料を含んでいてもよい。
【0111】
少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料は、5cmの平均
最大径、例えば4cmの平均最大径、例えば3cmの平均最大径、例えば2cmの平均最
大径、例えば1cmの平均最大径、例えば25μm~5cmの範囲の平均径、例えば0.
1mm~5cm、例えば0.5mm~5cmの範囲の平均径、例えば0.5mm~2cm
の範囲の平均径を有してよい。
【0112】
発酵生成物は、乾燥組成物であってもよく、0.5mm未満の粒子サイズを有する、乾
燥組成物の30~70%(w/w)の範囲;例えば40~60%(w/w)の範囲;例え
ば約50%(w/w)、および0.5mm超の粒子サイズを有する、乾燥組成物の30~
70%(w/w)の範囲;例えば40~60%(w/w)の範囲;例えば約50%(w/
w)を含む。
【0113】
本発明の更なる実施形態では、乾燥発酵生成物は以下の基準:
a)乾燥発酵生成物の1~10%(w/w)、例えば約5%(w/w)が、1.0mm超
の粒子サイズを有する;
b)乾燥発酵生成物の45~55%(w/w)、例えば約50%(w/w)が、0.5~
1.0mmの間の粒子サイズを有する;
c)乾燥発酵生成物の30~40%(w/w)、例えば約50%(w/w)が、0.25
~0.5mmの間の粒子サイズを有する;および/または、
d)乾燥発酵生成物の5~15%(w/w)、例えば約10%(w/w)が、0.25m
m未満の粒子サイズを有する、
のうちの少なくとも2つ、好ましくは3つ、更により好ましくは少なくとも4つを含む
【0114】
本文脈における、用語「約」は、記載された量の10%以下、例えば5%以下、例えば
1%以下の変動に関する。
【0115】
種々の粒子サイズの選択は、当業者に公知であるようにふるいにかけることによって決
定され得る。
【0116】
発酵海藻材料および/または発酵植物材料は、材料の天然代謝性を維持させるために、
好ましくは滅菌に供されなくてよい。
【0117】
本発明の好ましい実施形態は、
(a)少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料;
(b)少なくとも1種の発酵有機体;
(c)少なくとも2種の代謝産物であって、少なくとも2種の代謝産物が、アミノ酸;脂
肪酸;生理活性フェノール;ビタミン;酸;プリン化合物;炭水化物化合物;フラボノイ
ド化合物;または細菌性バイオマーカから選択される、少なくとも2種の代謝産物;
を含む発酵生成物に関する。
【0118】
発酵生成物は更に繊維性化合物を含み、好ましくは、繊維性化合物は、少なくとも1種
の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料を起源とする。
【0119】
好ましくは、植物材料を起源としている場合の繊維性化合物は、5mm以下の平均径、
例えば3mm以下の平均径、例えば2mm以下の平均径、例えば1mm以下の平均径、例
えば25μm~3mmの範囲の平均径、例えば0.1mm~2.5mmの範囲の平均径、
例えば0.5mm~2.25mmの範囲の平均径、例えば1.0mm~2mmの範囲の平
均径を有する。
【0120】
好ましくは、海藻材料を起源としている場合の繊維性化合物は、2mm以下の平均径、
例えば1.5mm以下の平均径、例えば1mm以下の平均径、例えば25μm~2mmの
範囲の平均径、例えば0.1mm~1.5mmの範囲の平均径、例えば0.5mm~1.
25mmの範囲の平均径、例えば0.75mm~1mmの範囲の平均径を有する。
【0121】
本発明の一実施形態では、植物材料は、アブラナ科から選択することができ、好ましく
は、アブラナ属;ヒマワリ;ヤシ;ダイズ、ソラマメ、ルピナス;またはそれらの組合せ
のうちの1つから選択され得る。好ましくは、少なくとも1種のアブラナ属は、ブラッシ
カ・ナパ;ブラッシカ・オレラケア;ブラッシカ・カンペストリス;ブラッシカ・ニグラ
;シナピス・アルバ(ブラッシカ・アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ブラッシカ・ラ
パまたはそれらの混合物などの1つ以上の種から選択されてよい。好ましくは、少なくと
も1種のアブラナ属は、セイヨウアブラナ、ナタネ、キャノーラ、キャベツ、ブロッコリ
ー、カリフラワー、ケール、芽キャベツ、カラードグリーン、コールラビ、ガイラン、ホ
ワイトマスタード、インディアンマスタード、チャイニーズマスタード、およびブラック
マスタードシードの粉末を含むものからなる群から選択される。
【0122】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1種の植物材料は、ブラッシカ・ニグラ;
シナピス・アルバ(ブラッシカ・アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ホワイトマスター
ド;インディアンマスタード、チャイニーズマスタードおよび/またはブラックマスター
ドシード粉末であってよい。
【0123】
少なくとも1種の植物材料が、ブラッシカ・ニグラ;シナピス・アルバ(ブラッシカ・
アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ホワイトマスタード;インディアンマスタード、チ
ャイニーズマスタードおよび/またはブラックマスタードシード粉末であり得る場合、少
なくとも2種の代謝産物は、好ましくは、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、チロ
シン、アスパラギン、トレオニン、プロリン、イソロイシンおよびバリンからなる群から
選択される少なくとも1種のアミノ酸;例えば当該群から選択される少なくとも2種のア
ミノ酸;例えば当該群から選択される少なくとも3種のアミノ酸;例えば当該群から選択
される少なくとも4種のアミノ酸;例えば当該群から選択される少なくとも5種のアミノ
酸;例えば当該群から選択される少なくとも6種のアミノ酸;例えば当該群から選択され
る少なくとも7種のアミノ酸;例えば当該群から選択される少なくとも8種のアミノ酸;
例えば当該群から選択される少なくとも9種のアミノ酸;例えば当該群から選択される少
なくとも10種のアミノ酸を含んでいてもよい。
【0124】
少なくとも1種の植物材料が、ブラッシカ・ニグラ;シナピス・アルバ(ブラッシカ・
アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ホワイトマスタード;インディアンマスタード、チ
ャイニーズマスタードおよび/またはブラックマスタードシード粉末であり得る場合、少
なくとも2種の代謝産物は、少なくとも1種の酸、好ましくは少なくとも1種の有機酸、
好ましくは少なくとも1種の芳香族有機酸、好ましくは、安息香酸、4-ヒドロキシフェ
ニル酢酸および/またはシナピン酸から選択される少なくとも1種の芳香族有機酸、を含
み、最も好ましい芳香族酸は安息香酸であり得る。
【0125】
本発明の一実施形態では、少なくとも1種の発酵有機体は、実質的に生存可能な発酵有
機体であり得る。
【0126】
本文脈における、用語「実質的に生存可能な」は、発酵生成物1グラムあたり10
1012CFUの範囲、例えば1グラムあたり10~1012CFUの範囲、例えば1
グラムあたり10~1011CFUの範囲、例えば1グラムあたり10~1011
FUの範囲、例えば1グラムあたり10~1010CFUの範囲の総量で生存する発酵
有機体に関する。
【0127】
本発明の一実施形態では、発酵生成物は、10~60%(w/w)の範囲、例えば15
~50%(w/w)、例えば20~40%(w/w)の範囲、例えば30~35%(w/
w)の範囲のタンパク質含有量を含む。
【0128】
好ましくは、発酵生成物にて利用可能であるタンパク質の少なくとも50%、例えば少
なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも
90%、例えば少なくとも95%は、消化可能なタンパク質である。
【0129】
注目を集め得る代謝産物の1つが安息香酸である。
【0130】
安息香酸は、動物の発生および抗菌作用を向上させると考えられているため、現代の畜
産において使用され得、畜産における安息香酸の使用により、環境への影響を減らすこと
ができる。畜産の向上といった点で、安息香酸は体重増加および更なる飼料要求率の向上
を示している。
【0131】
本発明の好ましい実施形態は、安息香酸に富む発酵生成物を提供するためのプロセスに
関し、当該方法は、
(i)ホワイトマスタード、インディアンマスタード、チャイニーズマスタードおよび/
またはブラックマスタードシード粉末から選択される少なくとも1種の植物材料を選択す
る工程と、
(ii)ホワイトマスタード、インディアンマスタード、チャイニーズマスタードおよび
/またはブラックマスタードシード粉末から選択される少なくとも1種の植物材料と、少
なくとも1種の発酵有機体とを発酵反応器内で混合し、発酵混合物を提供する工程と、
(iii)安息香酸の発生に有利に働く発酵条件下で、発酵混合物を発酵させ、安息香酸
に富む発酵生成物を提供する工程と、
を含む。
【0132】
本発明の一実施形態では、安息香酸に富む発酵生成物を提供するためのプロセスは、少
なくとも2種の所定の代謝産物を含む。
【0133】
本発明の更なる実施形態では、安息香酸は少なくとも2種の所定の代謝産物のうちの1
種である。
【0134】
本発明の文脈における、用語「含む(comprising)」は、用語「含む(in
cluding)」、「含有する(containing)」または「を特徴とする(c
haracterized by)」と同義になり得、これは包括的なまたはオープンエ
ンド形式の特徴の列挙に関するものであり、追加的な、未記載の特徴または方法工程を除
外するものではない。用語「含む(comprising)」は、多量であったとしても
不特定の成分を包含するために、クレームを開放形式のままにする。
【0135】
本発明の文脈における、用語「本質的になる」は、特定された特徴またはステップ、な
らびに言及されておらず、特許請求される発明の基本的および新規な特徴に実質的に影響
を及ぼさない特徴またはステップに、特許請求の範囲を限定することに関する。
【0136】
本発明の態様のうち1つの文脈にて記載される実施形態および特徴は、本発明の他の態
様にも適用されることを留意するべきである。
【0137】
本出願で引用されたすべての特許および非特許の参照は、参照によりその全体が本明細
書に組み込まれる。
【0138】
ここで、本発明は以下の非限定的な実施例にて更に詳細に記載されるであろう。
【実施例0139】
実施例1-種々の植物材料および海藻材料およびそれらの組合せの発酵
【0140】
植物材料および/または海藻材料を含む32種類の異なる生成物を調製し、種々の代謝
産物の含有量について分析した。
【0141】
32種類の異なる発酵生成物は、以下を含む:
1.サッカリナ(2013)、アスコフィラム;ナタネ(BGG1700)
2.サッカリナ、アスコフィラム;ナタネ(BGG1702)
3.アマナズナ属;
4.カメリナ、アスコフィラム;
5.アマナズナ属、アスコフィラム、サッカリナ;
6.ナタネ
7.ナタネ-0日;
8.ナタネ-1日;
9.ナタネ-2日;
10.ナタネ-3日;
11.ナタネ-4日;
12.ナタネ、10%海藻;
13.ナタネ、10%海藻;
14.ナタネ、海藻
15.ダイズ-0日;
16.ダイズ-1日;
17.ダイズ-2日;
18.ダイズ-3日;
19.ダイズ-4日;
20.ダイズおよびプロテアーゼ-1日;
21.ダイズおよびプロテアーゼ-3日;
22.プロテアーゼなしのダイズ-1日;
23.プロテアーゼなしのダイズ-3日;
24.マスタード;
25.マスタード、アスコフィラム;
26.マスタード、アスコフィルム、サッカリナ;
27.マスタード、アスコフィルム、サッカリナ;
28.アスコフィラム;
29.サッカリナ;
30.FP1
31.FP2
32.FP3
【0142】
植物材料(ナタネ、ダイズおよび/またはマスタード)を含む発酵混合物を、特に明記
しない限り、乳酸菌(ペディオコッカス・アシディラクティシ DSM16243、ペデ
ィオコッカス・ペントサセウス DSM12834およびラクトバチルス・プランタルム
DSM12837)ブレンドを用いて11日間発酵させた。
【0143】
海藻材料(褐藻)を含む発酵混合物を、乳酸菌(ペディオコッカス・アシディラクティ
シ DSM16243、ペディオコッカス・ペントサセウス DSM12834およびラ
クトバチルス・プランタルム DSM12837)ブレンドを用いて18日間発酵させた
【0144】
海藻(褐藻)を7日間発酵させる第1段階、続いて植物材料を加える第2段階について
、海藻材料と植物材料(ナタネ、ダイズおよび/マスタード)の組合せを含む発酵混合物
を、乳酸菌のブレンド(ペディオコッカス・アシディラクティシ DSM16243と、
ペディオコッカス・ペントサセウス DSM12834と、ラクトバチルス・プランタル
ム DSM12837)を用いて発酵させ、組み合わせた生成物の発酵を11日間追加で
継続した。
【0145】
固体段階の発酵として各発酵手順が実施され、各発酵混合物を気密状態で閉鎖した発酵
反応器中で圧縮して、空気/酸素ポケットがないまたは実質的にない状態とした。
【0146】
発酵プロセスが終了したとき、発酵生成物を、約10%(w/w)の含水量までスピン
フラッシュドライヤーで乾燥させた。
【0147】
海藻(褐藻)、植物材料および海藻(褐藻)と植物材料の組合せの発酵は、乳酸菌を用
いる制御プロセスであり、植物材料または海藻材料由来の天然の微生物による制御プロセ
スではない。海藻材料は、乳酸菌の種菌(ペディオコッカス・アシディラクティシ DS
M16243、ペディオコッカス・ペントサセウス DSM12834およびラクトバチ
ルス・プランタルム DSM12837)を有した容器にて7日間にわたり前発酵される
。植物材料(この場合、コールドプレスされる)を乳酸菌の第2のバッチと共に発酵海藻
材料中に混合し、発酵を11日間継続し、繊細なプロセスにて10%の水分となるまで乾
燥させ、乳酸菌の生存を10~10CFU/gに固定した。
【0148】
サンプルの抽出
均質化および代謝産物の抽出は、以下の手順を用いた一工程で実施した。Ultra-
turraxを用いて1グラムのサンプルを冷メタノール中で均質化した。上澄み液から
1.5mLをガラスバイアルに移し、窒素流下で乾燥させた。GC-MS分析(ガスクロ
マトグラフィー-質量分析分析)およびHILIC分析(親水性相互作用クロマトグラフ
ィー分析)を用いる分析の前に、サンプルを1mLのmilliQ水で戻す。
【0149】
結果:
GC-MS分析の結果は図1にまとめられており、発酵プロセスが、植物材料、海藻材
料およびプロセス条件といったプロセスの異なるパラメータを変化させることによって制
御される場合の異なる代謝産物の範囲の発生を示している。
【0150】
図1は、海藻(褐藻)を含む発酵混合物を発酵させることにより提供される、発酵生成
物のフィンガープリントを提供する。この発酵生成物は、乳酸菌のブレンド(ペディオコ
ッカス・アシディラクティシ DSM16243、ペディオコッカス・ペントサセウス
DSM12834およびラクトバチルス・プランタルム DSM12837)を用いて7
日間発酵され、続いて第2段階では追加の乳酸菌(ペディオコッカス・アシディラクティ
シ DSM16243、ペディオコッカス・ペントサセウス DSM12834およびラ
クトバチルス・プランタルム DSM12837のブレンド)と一緒に植物材料(ナタネ
およびマスタードを含む)を加えられ、組み合わせた製品の発酵を更に11日間継続した
ものである。
【0151】
図1で提供されたフィンガープリントは、後の生産のために提供される更なるフィンガ
ープリント分析の品質検査に関するガイダンスとして使用され得る。
【0152】
図2は、上記の32種類の異なる発酵生成物について、種々の発酵条件中の代謝産物で
ある安息香酸の発生を示す。
【0153】
安息香酸は、抗菌作用および殺菌作用といった種々の有利な効果により、畜産産業にお
いて広く使用されている有機酸である。
【0154】
興味深いことに、マスタード植物材料を発酵させた場合、安息香酸が著しく発生するこ
とを示す。この著しい発生は、マスタードが存在する場合にのみ現れることを示す。安息
香酸は、マスタードが存在しないと形成されない。それゆえ、ナタネ、海藻またはダイズ
は、安息香酸の形成を引き起こさない。
【0155】
図3は、上記の32種類の異なる発酵生成物について、種々の発酵条件中の代謝産物で
あるリジンの発生を示す。
【0156】
リジンはアミノ酸である。人体はリジンを合成することができず、そのため例えば人間
、家禽、ブタ、魚類、甲殻類および乳牛においても必須である。これは、リジンは食事か
ら得られなければならず、かつこれは必須アミノ酸と呼ばれていることを意味する。複数
の生物学的プロセスにおけるその重要性により、リジンの欠乏は不完全な結合組織、脂肪
酸代謝の欠乏、貧血および全身性タンパク質エネルギー欠乏症を含む複数の疾患状態につ
ながり得る。
【0157】
図3は、ナタネ発酵時間を増やすことによって(列7~11を参照されたい)、リジン
のレベルが増加したことを示す。同様の条件下でダイズを発酵させた場合(列15~19
を参照されたい)には同じの現象は示されず、リジン濃度の増加も観察されない。更には
、発酵中、マスタードもまた大量のリジンを生産することが示される。
【0158】
したがって、結論としては、発酵プロセスの種々のパラメータを制御することによって
、均一な発酵生成物を保証し、所望の成分を有する発酵生成物を保証することが可能であ
る。
【0159】
参考文献
WO2013/029632
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の植物材料、および/または少なくとも1種の発酵有機体と組み合わされた少なくとも1種の海藻材料を含む発酵生成物を提供する発酵プロセスを制御するためのフィンガープリントを提供するための少なくとも2種の代謝産物の使用。
【請求項2】
前記発酵生成物の前記フィンガープリントは、前記発酵生成物の品質を評価するため、および/または提供された発酵生成物の均一性を評価するために、以前のフィンガープリントと比較される、請求項1に記載の使用
【請求項3】
前記少なくとも1種の海藻材料が、単細胞藻類または多細胞の大型藻類である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記多細胞の大型藻類が、褐藻大型藻類および/または紅藻大型藻類から選択され得る、請求項3に記載の使用
【請求項5】
前記褐藻大型藻類が、昆布類、サッカリナ・ラティッシマ(ラミナリア・サッカリナ)、ラミナリア・ディジテイト、アスコフィルム・ノドスム、ラミナリア・ハイパーボレア、またはそれらの混合物のうちの1種以上から選択され得る、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記少なくとも1種の植物材料は、ブラッシカ・ニグラ;シナピス・アルバ(ブラッシカ・アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ブラッシカ・ラパまたはそれらの混合物である、請求項1から5のいずれか1項に記載の使用
【請求項7】
前記少なくとも2種の代謝産物は、アミノ酸;脂肪酸;生理活性フェノール;ビタミン;酸;プリン化合物;炭水化物化合物;フラボノイド化合物;または細菌性バイオマーカから選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の使用
【請求項8】
前記酸は、安息香酸ある、請求項に記載の使用
【請求項9】
前記少なくとも1種の発酵有機体は1種以上の乳酸菌である、請求項1からのいずれか一項に記載の使用
【請求項10】
発酵生成物であって、
)少なくとも1種のアブラナ属植物から選択される植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料;
1または複数の種類の乳酸菌
)少なくとも2種の代謝産物であって、アミノ酸;脂肪酸;生理活性フェノール;芳香族有機酸、窒素有機酸、および/またはジカルボン酸から選択される酸;プリン化合物;炭水化物化合物;またはフラボノイド化合物ら選択される、少なくとも2種の代謝産物;
(d)1%(W/W)以上の濃度の乳酸、
を含む、発酵生成物。
【請求項11】
前記発酵生成物は、繊維性化合物をさらに含み;好ましくは、前記繊維性化合物は、少なくとも1種の前記植物材料および/または少なくとも1種の前記海藻材料を起源としており、前記少なくとも1種の植物材料は、ブラッシカ・ニグラ;シナピス・アルバ(ブラッシカ・アルバ);ブラッシカ・ジュンセア;ホワイトマスタード、インディアンマスタード、チャイニーズマスタード、および/またはブラックマスタードシード粉末である、請求項10に記載の発酵生成物。
【請求項12】
前記発酵生成物は、繊維性化合物をさらに含み、好ましくは、前記繊維状化合物は、少なくとも1種の前記植物材料および/または少なくとも1種の前記海藻材料を起源としている、請求項10または11に記載の発酵生成物。
【請求項13】
前記少なくとも2種の代謝産物は、安息香酸を含む、請求項10から12のいずれか1項に記載の発酵生成物。
【請求項14】
前記少なくとも2種の代謝産物は、リジンを含む、請求項10から13のいずれか1項に記載の発酵生成物。
【請求項15】
前記少なくとも2種の代謝産物は、安息香酸、リジンおよび乳酸を含む、請求項10から14のいずれか1項に記載の発酵生成物。
【請求項16】
少なくとも1種の前記植物材料および/または少なくとも1種の前記海藻材料は、5cmの平均最大径を有する、請求項10から15のいずれか1項に記載の発酵生成物。
【請求項17】
少なくとも1種の植物材料および/または少なくとも1種の海藻材料を含む発酵生成物における少なくとも2種の所定の代謝産物の発生を制御するためのプロセスであって、前記プロセスが、
(i)前記発酵生成物において発生されるべき前記少なくとも2種の所定の代謝産物を決定する工程であって、アミノ酸;脂肪酸;生物活性フェノール;ビタミン;酸;プリン化合物;炭水化物化合物;フラボノイド化合物;または細菌バイオマーカーから選択される少なくとも2種の所定の代謝物を選択する工程と;
(ii)工程(i)において決定された前記所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種の植物材料および/または前記少なくとも1種の海藻材料が選択される工程と;
(iii)工程(i)において決定された前記所定の代謝産物に基づき、少なくとも1種の発酵有機体が選択される工程と;
(iv)工程(ii)において選択された、前記少なくとも1種の植物材料および/または前記少なくとも1種の海藻材料と、工程(iii)において選択された、前記少なくとも1種の発酵有機体とを発酵反応器内で混合し、発酵混合物を提供する工程と;
(v)前記少なくとも2種の所定の代謝産物の発生に有利に働く発酵条件下で、前記発酵混合物を発酵させる工程と;
を含み、
これにより、前記発酵生成物が提供される、
プロセス。
【請求項18】
代謝産物のライブラリーが前記発酵生成物において同定され、前記発酵生成物および/または前記発酵混合物の代謝産物の前記ライブラリーは、同様の前の発酵生成物の代謝産物の前記ライブラリーと比較される、請求項17に記載のプロセス。
【外国語明細書】