(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150699
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】嚥下可能なデバイスから患者の腸管の中への推進薬物送達
(51)【国際特許分類】
A61J 7/00 20060101AFI20241016BHJP
A61M 31/00 20060101ALI20241016BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241016BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61J7/00 Z
A61M31/00
A61K9/48
A61K47/38
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024120389
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2021550224の分割
【原出願日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】62/812,867
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/821,250
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514002891
【氏名又は名称】ラニ セラピューティクス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イムラン, ミール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の実施形態は、薬物および他の治療剤をGI管内に送達するための嚥下可能なデバイス、調製物、および方法を提供する。
【解決手段】特定の実施形態は、薬物または他の治療剤(TA)を、胃または小腸などのGI管の壁の中に送達するための、カプセルなどの嚥下可能なデバイスを提供する。嚥下可能なデバイスは、センサ、可燃性推進剤(CP)、および少なくとも1つのTAを含む治療剤調製物(TAP)を備える。センサは、外部条件または外部条件の変化に応答して、CPをトリガして点火し、TAPをGI管の壁の中へ推進する。本発明の実施形態は、GI管内で分解され、非経口注射を必要とする薬物または他のTAを経口送達するために特に有用である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体投与治療剤調製物を患者に送達するための嚥下可能なデバイスであって、前記デバイスは、
カプセル壁を有する嚥下可能なカプセルと、
前記カプセルの内部に収容された治療剤調製物と、
前記治療剤調製物から成形されるか、含むか、または含むように構成される、前記カプセル中の組織貫通部材と、
前記組織貫通部材を前記カプセル壁を通って胃腸(GI)管の壁の中に前進させるように構成され、前記カプセルの内部にあり、可燃性推進剤および点火剤を含む、推進ドライバと、を備え、
前記点火剤は、前記GI管中の前記カプセルの外部の条件に応答して前記可燃性推進剤を点火するように構成されている、嚥下可能なデバイス。
【請求項2】
前記点火剤は、pH、圧力、および前記GI管の壁への近接性からなる群から選択される1つ以上の前記GI管中の前記カプセルの外部の条件の変化に応答して前記可燃性推進剤を点火するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記点火剤は、水分、温度、圧力、およびpHからなる群から選択される1つ以上の前記GI管中の前記カプセルの外部の条件に応答して前記可燃性推進剤を点火するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記カプセル壁に埋め込まれ、前記点火剤に結合されたセンサをさらに備え、前記センサは、前記外部の条件の値を感知し、前記1つ以上の前記GI管中の前記カプセルの外部の条件の閾値に到達すると、前記点火剤に前記可燃性推進剤を点火させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記センサは電子式であり、前記感知された条件を表す電気信号を生じさせる、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記点火剤は、前記センサから前記感知された条件を表す前記信号を受信し、点火電流を生成し、前記点火電流を前記可燃性推進剤に送達するトリガ回路を備える、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記トリガ回路は、電池およびコンデンサを含み、前記電池は前記コンデンサを充電し、前記コンデンサは電荷を前記推進剤の中に放電する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記トリガ回路は、前記推進剤に埋め込まれたワイヤフィラメントをさらに含み、前記ワイヤフィラメントは、前記電流が前記コンデンサから中を通って放電されるときに前記推進剤を点火するのに十分な熱を生じさせる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記推進剤は、ニトロセルロースを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記センサは、前記嚥下可能なカプセルの外部領域上に、前記外部の条件の変化に応答して状態を変化させる機械的または流体センサ要素を含む、請求項4に記載のデバイス。
【請求項11】
前記点火剤は、前記機械的または流体センサの状態の変化に応答し、機械的にエネルギーを生成して前記可燃性推進剤を点火する機械的または流体点火剤要素を含む、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記推進ドライバは、ピストンおよびシリンダを備え、前記可燃性推進剤は、前記ピストンの下の前記シリンダの底部にあり、前記治療剤調製物は、前記ピストンの上表面上にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記推進剤は、前記シリンダの前記底部に沿って形成されたニトロセルロースの層を含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記層は、1mg~8mgのニトロセルロースを含む、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記治療剤調製物は、液体形態である、請求項1~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記治療剤調製物は、半液体形態である、請求項1~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記治療剤調製物は、固体形態である、請求項1~14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
固体形態の前記治療剤調製物は、賦形剤または結合剤の少なくとも1つと圧縮され、近位部分と、テーパ状の、鋭利な、またはホーニングされた先端を有する組織貫通遠位部分とを備えたシャフトを有する前記組織貫通部材を成形する、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記カプセル壁の少なくとも一部分が、患者の胃腸管内で約7~9のpHで分解する分解性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
前記治療剤調製物は、第1の治療剤調製物および第2の治療剤調製物を含み、
前記組織貫通部材は、前記第1の治療剤調製物から成形されるか、含むか、または含むように構成される、第1の組織貫通部材と、前記第2の治療剤調製物から成形されるか、含むか、または含むように構成される、第2の組織貫通部材と、を含み、
前記推進ドライバは、前記第1の組織貫通部材を駆動するように構成された第1の推進ドライバであって、
前記デバイスは、前記第2の組織貫通部材を、前記第1の組織貫通部材とは異なる方向で駆動するように構成された第2の推進ドライバをさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記第1の推進ドライバおよび前記第2の推進ドライバは、それぞれ、前記第1の組織貫通部材および前記第2の組織貫通部材を少なくとも2つの正反対の方向で駆動するように構成されている、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
治療剤調製物を患者の胃の洞壁の中に送達するための嚥下可能なデバイスであって、前記デバイスは、
前記患者の胃腸管を通過するようにサイズ決定され、対向した側部および対向した端部を含む壁を有し、前記洞壁において、前記胃内で長手方向に配向するように構成された細長い形状を有する、カプセルと、
前記カプセルの内部にあり、治療剤を含み、前記カプセル内に含まれる組織貫通部材として成形されるか、含むか、または含むように構成される、治療用調製物と、
前記カプセル壁の側壁部に配設され、前記GI管中の前記カプセルの外部の条件を感知し、出力を生じさせるように構成されている、センサと、
前記組織貫通部材に動作可能に結合され、前記センサからの前記出力に応答し、推進剤の燃焼をトリガして、前記組織貫通部材を前記カプセルを通って前記洞壁の中に射出するように構成されている、射出器と、を備える、嚥下可能なデバイス。
【請求項23】
前記GI管中の前記カプセルの前記外部の条件は、胃の蠕動収縮である、請求項22に記載の嚥下可能なデバイス。
【請求項24】
前記カプセルは、前記カプセル壁の側部の一方が前記洞壁に隣接するように、前記胃の蠕動収縮中に前記胃内で長手方向に配向するように構成され、前記センサは、前記胃の蠕動収縮に対応する外部の条件を感知することに応答して電気出力を生成するように構成され、前記デバイスは、
前記センサからの前記電気出力を分析し、前記外部の条件の変化が検出されるとトリガ信号を生成するように構成された論理回路をさらに備える、請求項22に記載の嚥下可能なデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年3月20日に出願された米国仮特許出願第62/821,250号および2019年3月1日に出願された米国仮特許出願第62/812,867号に対する優先権およびその利益を主張し、両出願の完全な開示はともに参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.技術分野
本発明は、嚥下可能な薬物送達デバイスに関する。より具体的には、本発明は、治療剤を胃洞または胃壁の他の部分の中に送達するための嚥下可能な薬物送達デバイスに関する。
【0003】
2.背景の考察
近年、様々な疾患の治療のための新しい薬物の開発が進んでいるが、タンパク質、抗体、ペプチド、および他の不安定な薬剤を含む多くの薬物は、経口投与できず、通常は、分解を避けるために静脈内または他の形態(例えば、筋肉内など)の非経口投与が必要であることから、用途が制限されている。胃の不快感および出血を含む合併症を伴う不良な経口耐性、胃内での薬物化合物の破壊/分解、および薬物の不良な、遅い、または一定しない吸収を含む、多くの理由のいずれかにより、薬物を経口で送達することができないことがある。
【0004】
静脈内送達や筋肉内送達などの従来の代替的な薬物送達方法には、針を刺すことによる痛みや感染の危険性、滅菌技術の使用の必要、長期間にわたって患者の体内で静脈(IV)ラインを維持する必要およびそれに関連する危険性を含む、多くの欠点がある。埋込型薬物送達ポンプなどの他の薬物送達アプローチが採用されているが、これらのアプローチには、デバイスの半永久的な埋込が必要であり、依然として静脈内送達の制限の多くを有する可能性がある。
【0005】
したがって、薬物および他の治療剤の経口送達のための追加的、代替的、および改善された方法、デバイス、および物品が必要である。特に、薬物の経口投与、ならびに患者の胃腸(GI)管の標的領域の中への薬物のその後の注入(吐出、injection)または他の送達を可能にする送達ビヒクルおよび構造を提供することが望ましい。例えば、タイミング、場所、および注入力をより正確に制御することができる、患者のGI管の壁領域の中に直接薬物を注入するための方法、デバイス、および物品を提供することが望ましい。これらの目的のうちの少なくともいくつかは、以下に詳述する説明によって達成される。
【0006】
米国特許公開第2003/0114789号、米国特許公開第2007/0055200号、および米国特許公開第2017/0265598号は、肥満治療の一環として、収縮を誘発するために薬物を患者の洞(幽門ないし前庭部、antrum)の中に注入する埋込可能なシステムを説明している。薬物を胃腸(GI)管内の腸壁または他の壁の中に注入するための嚥下可能なカプセルを説明する、本出願と共通の発明者適格および/または共通の所有権を有する特許および公開特許出願には、米国特許第9,149,617号、米国特許公開第2011/0208270号、および米国特許公開第2012/0010590号が挙げられる。国際公開公報WO2018/213582は、薬物を胃壁の中に注入
するためのバネ機構を備えた薬剤構造を有するカプセルを説明している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態は、薬物および他の治療剤を、胃、胃洞(前庭部、gastric antrum)、十二指腸、小腸などを含む患者の胃腸管の壁の中に送達するためのデバイス、システム、物品、調製物、キット、および方法を提供する。特に、本発明の実施形態は、タンパク質、ポリペプチド、および抗体など、胃腸(GI)管内において吸収が不良であり、耐性が不良であり、および/または分解される薬物および他の不安定な治療剤の送達に適した嚥下可能なカプセルおよび他のデバイスを提供する。タンパク質および抗体は、インスリン、tnf-α抗体およびインターロイキン抗体(例えば、インターロイキン17抗体)など、製薬およびバイオシミラー分野で知られている1つ以上のバイオロジクスを含んでもよい。PCSK9抗体および様々な凝固因子(例えば、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子など)。かかる不安定な治療剤を胃洞の壁の中に注入する際に特に有用であるが、本発明の実施形態は、他の薬剤を使用してもよく、小腸壁、大腸壁などのGI管の他の場所、口内の頬側面、および患者の体の他の場所への導入に使用してもよい。
【0008】
本発明のデバイスおよび方法は、固体投与薬剤および他の治療剤をGI管(例えば、胃、小腸など)の内腔壁の中に注入するための推進ドライバを組み込んでおり、推進ドライバは、通常は、可燃性推進剤および点火剤を含む。点火剤は、pH、圧力、壁の近接性、導電率などの、カプセルの外部の条件に応答して可燃性推進剤を点火するように構成されてもよい。
【0009】
多くの実施形態では、本発明の嚥下可能デバイスは、圧力センサ、pHセンサ、導電率センサ、またはGI管内の嚥下可能デバイスの位置を検出することができる他の機構などのセンサを含んでもよい。特定の実施形態は、薬物および他の治療剤を患者の胃、胃洞、十二指腸、および/または小腸の壁の中に送達するための、カプセルなどの嚥下可能なデバイスを含む。例えば、デバイスは、胃内の存在を示す導電率の変化、洞の収縮によってデバイスの外部に印加された圧力の変化、および/またはpHの変化を検出または応答して、十二指腸および小腸の中への侵入を検出するように構成された嚥下可能なカプセルであってもよい。カプセルがGI管内の標的場所に到着すると、カプセルがその場所にある間に、推進ドライバをトリガして、薬剤を注入また別の方法で送達することができる。そのような嚥下可能なカプセルおよび他のデバイスは、洞、十二指腸、または小腸などの特定の内腔場所にあるときに自己整列し、薬剤は、カプセルから所定の方向にGI管の隣接する壁の中へ注入されるように構成される。好ましくは、該方向は、洞壁もしくは胃又はGI管の他の部分に垂直である。しかしながら、45°の角度など他の方向もまた考慮される。
【0010】
本発明の特定の実施形態は、固体剤形の薬物および他の治療剤、特に、GI壁組織の中に送達されない場合には、GI管内の消化液によって分解されるものの送達に特に有用であるが、他の実施形態は、液体、ゲル、粉末、および他の従来の薬剤形態の送達に有用である。例示的な固体剤形は、しばしば自己貫通性(自己浸透性、self-penetrating)であり、例えば、GI管の腔または他の内腔壁の表面に貫通するのを容易にするために、鋭利な、尖った、テーパ状の、または他の形状の遠位先端を有する。そのような自己浸透性の固体剤形は、本明細書では、以下、組織貫通部材(TPM)と呼ばれることがある。プリセット発明の多くの実施形態は、GI管の任意の部分の通過による分解を最小限にするかまたは分解を生じさせずに、経口送達を介して薬物を血流の中に迅速に放出することが可能である。
【0011】
第1の態様では、固体投与治療剤調製物を患者に送達するための嚥下可能なデバイスは、カプセル壁を有する嚥下可能なカプセルを備える。本明細書の他の場所に説明されている組織貫通部材、すなわち、TPMなどの固体投与治療剤は、カプセル内に収容されており、カプセル内の推進ドライバは、固体投与治療剤をカプセル壁を通って胃腸(GI)管の壁の中に前進させるように配置および構成されている。推進ドライバは、通常は、可燃性推進剤および点火剤を含む。点火剤は、通常は、カプセルの外部の条件に応答して可燃性推進剤を点火するように構成されている。そのような外部条件は、GI管の特定の領域で時間の経過にかかわらず一定のままであるpHまたは温度などの静的条件であってもよく、または蠕動の結果として時間の経過とともにGI管の特定の領域で変化する圧力などの変化に応じてまたは動的であってもよい。
【0012】
カプセルの外部の条件は、水分、温度、圧力、pH、GI管の壁への近接性、またはセンサによって感知することができる、もしくは点火剤をトリガすることができるカプセル内の変化を引き起こすことができる、GI管内の他の任意の条件のうちのいずれか1つであってもよい。しばしば、点火剤は、GI管の領域内の条件の変化に応答して可燃性推進剤を点火するように構成されている。特定の領域で変化する条件には、例えば、洞または小腸内の圧力、GI管の壁への近接性などが含まれる。代替的に、点火剤は、カプセルがGI管の特定の領域に入るときに遭遇する静的条件に応答して可燃性推進剤を点火するように構成されてもよい。例えば、胃のpHは、小腸のpH(約pH7~9)よりも大幅に低い(約pH3)。点火剤は、嚥下可能なカプセルが胃から幽門を通過して十二指腸および小腸に入るときのpHの低下に応答して点火するように構成することができる。さらに他の場合では、条件は静的であってもよく、点火剤は、トリガされるために条件への曝露のある期間を必要とし得る。例えば、点火剤は、カプセルがGI管の標的領域に入ったことを確実にするように計算された時間の間、GI管内の水分に曝露されることによってトリガされてもよい。
【0013】
本発明の嚥下可能なデバイスは、カプセル壁に埋め込まれ、点火剤に結合されたセンサを含んでもよい。そのような場合、センサは、外部条件の値を感知し、条件の閾値または値の変化に到達すると、点火剤に可燃性推進剤を点火させるように構成されてもよい。本明細書では、患者の腔壁との接触から生じる外部圧力を測定するための電子センサがより具体的に説明されているが、水分、pH、温度などのいずれかを測定する追加の電子センサもまた使用されてもよい。
【0014】
電子センサを採用する実施形態では、センサは、通常は、感知された条件を表す電気信号を生じさせる。そのような場合、点火剤は、通常は、センサから、感知された条件を表す信号を受信し、点火回路および可燃性推進剤に送達される点火電流を生成するトリガ回路を備える。点火電流は、通常は、加熱、グロー、火花、または別の方法で燃焼を開始することによって、可燃性推進剤を点火するのに十分である。
【0015】
適切なトリガ回路は、通常は、少なくとも電池およびコンデンサを含み、電池はコンデンサを充電し、コンデンサは十分な電荷が蓄積された後、推進剤の中に放電する。例えば、コンデンサは、蓄積された電流を推進剤に埋め込まれたワイヤフィラメントまたは他の導体の中に放電することができ、ワイヤフィラメントは、電流がコンデンサから中を通って放電されるときに推進剤を点火するのに十分な熱を生じさせる。適切な推進剤には、本明細書で以下により詳細に説明するように、投薬調剤を推進するためにピストンの下に配設することができる薄いシートまたは層に形成された細粒ニトロセルロースなどのニトロセルロースベースの組成物が含まれる。
【0016】
投薬調剤(drug dosage)は、通常は固体形態であり、さらに通常は、嚥下可能なカプセルから排出された後、胃または小腸の壁などのGI管の壁に貫入することができる固体形態である(しかしながら、液体、および固体投薬調剤と液体投薬調剤と混合物の実施形態も考えられる)。組織貫通部材またはTPMと呼ばれるそのような固体形態の例を以下に詳細に説明する。固体投与薬物(solid dosage drug)は、大抵は、ピストンおよびシリンダを含む推進ドライバによって嚥下可能なカプセルから推進される。可燃性推進剤は、好ましくは、ピストンの下のシリンダの閉じた端部または「底部」に設置され、固体投与治療剤は、ピストンの反対側または「上」表面に設置される。ニトロセルロースまたは他の可燃性推進剤がピストンの下で点火されると、ピストンはシリンダから前方に送られ、胃壁またはGI管(例えば、小腸)の他の壁内腔壁に貫入できるように、嚥下可能なカプセルの壁を通して固体投与治療剤を送る。しばしば、固体投与治療剤は、最小限の干渉で薬物を排出することができるが、送達前は薬物を保護することを保証するために、嚥下可能なカプセルの壁に形成された貫通性バリア(浸透性バリア)を介して送達される。特定の実施形態では、推進剤がニトロセルロースの層(例えば、シリンダの底部に配置される)を含む場合、層は、約1~8mgの範囲、より好ましくは約3mgの質量を有してもよい。さらに、ニトロセルロースの比質量は、固体投薬調剤が送達される所望のGI壁に応じて調整することができる。洞に見られる壁といったより厚い壁にはより大きい量のニトロセルロースを使用することができ、小腸に見られる壁といったより薄い壁にはより少ない量を使用することができる。ニトロセルロースの量の調整はまた、標的GI壁の中への固体投薬調剤の所望の貫通(浸透)深さのために行われてもよい。例えば、小腸を通って腹膜壁および/または空洞の中への貫通を保証するために、より大きい量のニトロセルロースを使用することができる。
【0017】
本発明の嚥下可能なデバイスの他の好ましい態様では、嚥下可能なカプセル壁は、円筒形シェルを備え、通常は、円筒壁の各側に丸みを帯びたまたは半球形の端部を有する従来の薬物カプセルの幾何学的形状を有する。球形、半球形、ピラミッド状などを含む他の形状も考えられる。カプセルの壁は、しばしば、患者の腸管内で時間の経過とともに分解可能であるが、カプセルからの薬剤の送達前に分解しないように十分に頑丈である。嚥下可能なデバイスの他の構成要素は、分解性であるか、または正常な消化プロセスを通じて患者の腸から排出されるように十分に小さい場合がある。
【0018】
本発明のさらなる態様では、治療剤を患者の腸管の壁の中に送達するための方法は、治療剤調製物が中に収容されている嚥下可能なカプセルを提供することを含む。患者は嚥下可能なカプセルを摂取し、カプセルは、GI管内の消化液または他の条件に影響されない生物活性形態で、その中に治療剤を維持しながら、患者のGI管の最初の部分を通過する。しばらくすると、カプセル内の可燃性推進剤が、GI管内の外部条件、しばしば、感知された外部条件の変化に応答して点火され、点火された推進剤は、カプセルからの治療剤をGI管の壁の中に注入する。
【0019】
本発明の方法の特定の態様では、カプセル内の可燃性推進剤は、外部条件(例えば、カプセルの外部のGI管内の条件)、しばしば、pH、圧力、GI管の壁への近接性などの条件の変化への曝露に応答して点火されてもよい。他の特定の態様では、カプセルは、ある閾値曝露時間の間、またはカプセルがGI管の異なる領域に入った(例えば、幽門から小腸の中へ行く)結果としてのいずれかで、水分、温度、圧力、pHなどの静的条件への曝露に応答して点火されてもよい。
【0020】
本発明の方法の特定の実施形態では、センサは、嚥下可能なカプセル上またはその中に提供され、結合されて、可燃性推進剤をトリガして、治療剤をGI管の壁の中に注入することができる。例示的なセンサは、圧力トランスデューサ、温度トランスデューサ、pHトランスデューサ、光学トランスデューサ、およびGI管内の薬物の送達と関連する物質または条件を検出することができる他のトランスデューサ/センサなど、嚥下可能なカプセルの壁に組み込まれるか、または別の方法で関連する電気トランスデューサを含む。そのような電気センサは、通常は、治療剤をGI管の壁の中に注入するために、可燃性推進剤の点火を電気的にトリガするように構成された電気信号を生成する。
【0021】
代替の実施形態では、センサは、嚥下可能なカプセルの壁に組み込まれるか、または別の方法で関連する、機械的または流体トランスデューサ、構成要素、機構などを含んでもよい。そのような機械的または流体トランスデューサは、通常は、機械的または流体的に可燃性推進剤をトリガして、治療剤をGI管の壁の中に注入するように結合される。そのような機械的または流体トランスデューサは、通常は、熱、火花、または可燃性推進剤を点火することができる他の機械的エネルギーを生じさせることができる機械的点火剤に結合される。
【0022】
本発明の方法の多くの実施形態では、可燃性推進剤を点火することは、点火電流を生成し、点火電流を可燃性推進剤に送達する回路をトリガすることを含む。例示的なトリガ回路は、コンデンサおよび電池を含み、コンデンサは、電池によって充電され、可燃性推進剤を点火するのに十分な電荷がコンデンサに蓄積された後、コンデンサから電流を放電する。
【0023】
可燃性推進剤の例示的な点火剤には、可燃性推進剤(例えば、ニトロセルロース)に埋め込まれた、またはその中もしくは周りに別の方法で位置付けられたタングステン、ニクロム、またはそれらの合金などの導電性ワイヤフィラメントが含まれ、電流電荷は、電流がコンデンサからフィラメントを通って放電されるときに推進剤を点火するのに十分な熱または火花をフィラメント内で生じさせる。
【0024】
多くの実施形態では、可燃性推進剤は、ピストンの下のシリンダの底部に配設され、固体投与治療剤は、ピストンの上表面(すなわち、可燃性推進剤の側とは反対のピストンの側の表面)に設置される。次に、可燃性推進剤の点火により、ピストンの下のガスおよび材料の燃焼および膨張が引き起こされ、固体投与治療剤をカプセルの壁を通ってGI管の壁内の標的組織の中に前進させる方向にピストンが駆動される。
【0025】
別の態様では、治療剤調製物を患者の胃の腔壁の中に送達するための嚥下可能なデバイスは、カプセル、カプセル内の治療用調製物、センサ、および組織貫通治療用浸透に動作可能に結合された射出器を備える。カプセルは、通常は、患者のGI胃腸管を通過するようにサイズ決定され、大抵は対向した側部および対向した端部を含む壁を有する。そのようなカプセルは、通常は、洞などのGI管の内腔内で長手方向に配向するように構成された細長い形状を有する。カプセル内の治療用調製物は、組織貫通部材として成形された治療剤を含み、カプセルの側壁部分に配設されたセンサは、カプセルの外部の条件を感知し、出力を生じさせるように構成されている。射出器は、組織貫通部材およびセンサの両方に動作可能に結合され、センサからの出力に応答して、推進剤の燃焼をトリガして、組織貫通部材をカプセル壁を通ってGI管の壁の中に射出するように構成されている。
【0026】
さらに別の態様では、治療剤調製物を患者の胃の腔壁の中に送達するための嚥下可能なデバイスは、カプセル、治療用調製物、センサ、論理回路、および射出器を備える。カプセルは、患者の腸管を通過するようにサイズ決定され、対向する側部および対向する端部を含む壁を有する。カプセルは、細長い形状を有し、カプセルの幾何学的形状は、カプセル壁の側部がGI管の壁、通常は、洞の壁に隣接するように、胃の蠕動収縮中にGI管の内腔内で長手方向に配向するように構成されている。カプセル内の治療用調製物は、組織貫通部材として成形されている治療剤を含む。センサは、カプセル壁の側壁部分に配置され、カプセルの外部の条件を感知し、電気出力を生成するように構成されている。論理回路は、センサからの電気出力を分析し、pHの変化、圧力の変化、GI管壁への近接性の変化などの外部条件の変化が検出されるとトリガ信号を生成するように構成されている。射出器は、組織貫通部材およびセンサの両方に動作可能に結合され、射出器は、センサからの電気出力に応答して、推進剤の燃焼をトリガして、組織貫通部材をカプセル壁を通ってGI管の壁の中に射出するように構成されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、TPMは、薬物または他の治療剤を含有し、推進要素、送達バルーン、または他の拡張可能な送達手段などの駆動部材の拡張によって腔または他の腸壁の中に挿入されるように構成されている。TPMは、通常は、ドライブ部材またはドライブ部材への中間部材(例えば、シャフト)に分離可能に結合されてもよい近位部分、組織貫通遠位部分、および任意選択で、組織貫通部材を腸壁の腔または他の領域内に保持するための保持機構(機能、feature)を含むシャフトを備える。組織貫通端は、通常は、腔壁、小腸壁、またはGI管の他の内腔壁などの組織の中に送り込まれたときに組織浸透を強化するために、テーパ状にされる、面取りされる、または別の方法で形成もしくは鋭利化される。組織保持部材は、組織の中への前進を可能にするが、組織からの引き込みに抵抗するフック、バーブ(返し、barb)、分岐などであってもよい。TPMは、保持機構を有する必要はないが、代わりに、保持機構なしで胃または腸壁に保持されるように形状を有するか、または別の方法で構成されてもよい。
【0028】
TPMは、通常は、治療剤調製物を患者の血流に送達するように、洞、胃壁、腸壁、またはGI管の他の内腔壁内で溶解または別の方法で吸収されるように構成された薬物または他の治療剤を含む治療剤調製物から少なくとも部分的に形成される。治療剤調製物はまた、当技術分野で知られている1つ以上の医薬賦形剤、例えば、崩壊剤、結合剤など、を含んでもよい。TPMは、望ましくは、治療剤を腸壁の特定の組織層、例えば、粘膜層、粘膜下層などに送達するように、腸壁の中に選択された距離を貫通するように構成されている。これは、TPMシャフト上に配置された複数の止め部を使用する、および/または、腸壁の中の選択された距離を貫通すると、屈曲または場合によってはせん断するようにTPMシャフトを構成することで実現することができる。また、TPMの先端を斜めにするか、または別の方法で角度を付けることで、組織に侵入すると水平方向に向きを変える、または角度を付けることによっても実現することができる。
【0029】
通常は、TPMによって送達される薬物または他の治療剤は、PEO(ポリエチレンオキシド)、PLA(ポリ乳酸)、PLGAなどの生分解性ポリマーおよび/またはマルトースなどの糖と混合される。そのような実施形態では、TPMは、薬物と生分解性ポリマーとの略不均一な混合物を含んでもよい。代替的に、貫通部材は、略生分解性材料から形成された部分と、薬物もしくは他の治療剤から形成されるかまたは薬物もしくは他の治療剤を含む別個のセクションまたはコンパートメントとを含んでもよい。例えば、一実施形態では、TPMは、治療剤のスラグ(例えば、円筒形の形状)がフィットされる中空コア(または他の中空部分)を有する生分解性材料の外側シェルを備えてもよい。TPMの先端または組織貫通部分は、組織により容易に浸透することができるように、糖または金属(例えば、マグネシウムまたはマグネシウム合金)などのより硬い材料を含んでもよい。胃(例えば、洞)壁、腸壁(例えば、小腸)、またはGI管の他の壁内に配置されると、組織貫通部材は、壁組織内の間質液によって分解され、薬物はそれらの液体に溶解し、特定の腸壁(例えば、胃、小腸)の中または周りの毛細血管によって血流の中に吸収される。TPMはまた、通常は、前進後に腸壁の組織内に貫通部材を保持するためのバーブまたはフックなどの1つ以上の組織保持機構を含む。保持機構は、部材シャフトの周囲で対称的に分布する2つ以上のバーブなど、組織保持を強化するために様々なパターンで配置することができる。しかしながら、TPMはまた、逆テーパ形状または他の形状によってなど、他の手段によって、腸に保持することもできる。逆テーパ形状はまた、保持をさらに強化するために1つ以上の保持機構と組み合わせることができる。
【0030】
薬物または他の治療剤は、固体形態であってもよく、次に、モールディングまたは他の類似の方法を使用して組織貫通部材の形状に形成されるか、または固体もしくは液体形態であってもよく、次に、液体形態の生分解性ポリマーに添加され、次に、混合物が、モールディングまたはポリマー技術分野で知られている他の形成方法を使用してTPMに形成される。望ましくは、薬物および分解性ポリマーを含む組織貫通部材の実施形態は、様々なペプチドおよびタンパク質などの薬物を含む薬物の任意の実質的な熱分解を生じない温度で形成される(例えば、硬化される)。これは、室温硬化ポリマーと、当技術分野で知られている室温モールディングおよび溶媒蒸発技術との使用を通じて実現することができる。特定の実施形態では、組織貫通部材内の熱分解された薬物の量は、望ましくは約10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満である。特定の薬物の熱分解温度は、既知であるか、または当技術分野で既知の方法を使用して決定することができ、次に、この温度を使用して、特定のポリマー処理方法(例えば、モールディング、硬化、溶媒蒸発方法など)を選択および調整することができる。
【0031】
他の態様では、本発明は、本明細書に説明される嚥下可能なデバイスの実施形態を使用して、小腸の壁(または胃などのGI管内の内腔の他の壁)の中に送達するための治療剤調製物を提供する。調製物は、治療有効用量の少なくとも1つの治療剤(例えば、インスリン、インクレチン、抗発作化合物、NSAID、抗生物質など)を含む。調製物は、固体、液体、ゲル、およびそれらの組み合わせを含み得、および1つ以上の医薬賦形剤を含んでもよい。調製物は、嚥下可能なカプセル内に含まれ、カプセルから内腔壁の中に送達され、内腔壁内で分解して治療剤の用量を放出するための形状および材料稠度を有する。通常は、この形状および材料稠度は、調製物を本明細書に説明される組織貫通部材の1つ以上の実施形態の中に配置または形成することによって実現される。調製物はまた、小腸の壁または他の体の内腔における調製物の分解速度を強化するか、または別の方法で制御するように、選択可能な表面積対体積比を有してもよい。調製物中の薬物または他の治療剤の用量は、従来の経口送達方法に必要とされる用量から下方に滴定することができ、それにより、薬物からの潜在的な副作用を低減することができる。
【0032】
別の態様では、本発明は、嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態を使用する、薬物および治療剤の患者の胃洞の壁およびGI管の他の領域の中への送達のための方法を提供する。そのような方法は、治療有効量の様々な薬物および他の治療剤の送達に使用することができる。これらには、例えば、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、インスリン、インターフェロン(MSおよび他の状態の治療のため)、および他の類似の化合物である、さもなければ、胃内での化学的分解のために注入を必要とする多くの大分子ペプチドおよびタンパク質が含まれる。本発明の実施形態によって送達されてもよい適切な薬物および他の治療剤には、様々な抗体(例えば、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)抗体)、化学治療剤(例えば、インターフェロン)、インスリンおよび糖尿病を治療するための関連化合物、グルカゴン様ペプチド(例えば、GLP-1、エキセナチド)、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン(例えば、インスリン様成長因子(IFG)および他の成長因子)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、コルチゾンなど)、ワクチン、および様々な抗マラリア剤などの抗寄生虫剤が含まれる。特定の実施形態では、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して、関節リウマチなどの様々な自己免疫関連障害の治療のために治療有効量のモノクローナル抗体アダリムマブを送達することができる。このまたは特定の治療剤の投与量は、患者の体重、年齢、状態、または他のパラメータに応じて滴定することができる。
【0033】
本発明の様々な方法実施形態では、ドライブおよび推進剤を使用するものを含む、嚥下可能な薬物送達デバイスの実施形態は、複数の状態の治療のための複数の薬物、または特定の状態の治療のための複数の薬物(例えば、HIVエイズ治療のためのプロテアーゼ阻害剤)を送達するために使用することができる。使用中、そのような実施形態は、患者が特定の1つ以上の状態のために複数の医薬を服用しなければならない必要性なく済ませることを可能にする。また、それらは、2つ以上の薬物のレジメンが、ほぼ同時に、小腸、したがって血流の中に送達および吸収されることを容易にするための手段を提供する。化学的組成、分子量などの違いにより、薬物は異なる速度で腸壁を通じて吸収され得、異なる薬物動態分布曲線(例えば、血漿対時間曲線)がもたらされる。本発明の実施形態は、ほぼ同時に、望ましい薬物混合物を注入することによってこの問題に取り組む。これは、ひいては薬物動態、したがって、選択された薬物の混合物の有効性を改善する。
【0034】
本発明のこれらならびに他の実施形態および態様のさらなる詳細は、添付の図面図を参照して、以下により完全に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】本発明のデバイスおよび方法に関連する、患者の胃腸(GI)管、特に胃 の領域を示す。
【
図2】本発明の原理に従って構築された嚥下可能な薬物送達デバイスの主要な構成要素を示す。
【
図3】本発明の原理に従って構築された嚥下可能な薬物送達デバイスの特定の実施形態の主要な構成要素を示す。
【
図4】本発明の原理に従って構築され、電子センサおよび出力増大回路を含む、嚥下可能な薬物送達デバイスのさらなる実施形態の主要な構成要素を示す。
【
図5】本発明の原理に従って構築され、pH感応スイッチおよび出力増大回路を含む、嚥下可能な薬物送達デバイスの別の実施形態の主要な構成要素を示す。
【
図6】食物の正常な消化処理中の患者の胃洞内の典型的な圧力プロファイルを示すグラフである。
【
図7】患者のGI管内の圧力を測定するためのテストカプセルを示す。
【
図8A-1-8F-2】治療剤の腔壁の中への注入をもたらす、患者の胃洞内での嚥下可能なカプセルの通過および処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態は、薬物、物質、医薬などを腸壁(例えば、小または大)、胃壁(例えば、腔壁)、または体内の他の場所の中に送達するためのデバイス、システム、および方法を提供する。本明細書で使用される場合、「治療剤」、「薬剤」、「医薬」、および「薬物」という用語は交換可能に使用され、薬物または他の治療剤、ならびに1つ以上の医薬賦形剤を含むことができる任意の形態の治療、診断、または他の生物学的に活性な目的として意図される任意の医療調製物を指す。本発明の多くの実施形態は、医薬を胃洞GA、小腸またはGI管の他の領域内に送達するための嚥下可能なデバイスを提供する。特定の実施形態は、GI管内の特定の場所または領域内のpHなどの条件に応答して、医薬を小腸の壁または腸管内の他の場所の中に送達するための、カプセルなどの嚥下可能なデバイスを提供する。他の特定の実施形態は、洞の収縮によってカプセルに印加される圧力に応答して、医薬を洞または小腸の壁の中に送達するための、カプセルなどの嚥下可能なデバイスを提供する。
【0037】
本発明のデバイス、システム、および方法は、薬物を、例えば、洞壁などの胃壁の部分、または空腸などの小腸の一部を含む、GI管内の特定の領域に送達するのに特に適している。さらに、部分的に消化された食物が胃に存在する場合でも、薬物を洞壁または小腸の中に送達するのにも適している。ここで
図1Aを参照すると、胃の本体部で消化プロセスを開始した後、部分的に消化された食物は胃の底部または本体部に入り、次に、本発明のデバイスおよび方法が好ましくは治療剤を洞の壁の中に送達する、GA(洞Aとも呼ばれる)の中に移る。治療剤を送達した後、デバイスは幽門括約筋PSを通過して十二指腸Dに入り、そこから無傷の、部分的に分解された、または完全に分解されたデバイスが大腸を通過し、体から排泄される。
【0038】
本発明の多くの実施形態は、胃洞の壁を含むGI管の壁の中への薬物および他の治療剤の送達を企図しているので、ここで胃を含むGI管の解剖学的構造および機能についての簡単な発明を提供する。
図1Aに示すように、GI管は食道Eから始まり、噴門Cで胃Sに入る。したがって、食物は、食道を通って噴門を通過した後、胃に入る。
図1Bに示すように、胃の主な解剖学的領域には、底部F、コーパスまたは本体部B、洞(A)、および幽門Pが含まれる。底部の壁は薄いが、洞の壁ははるかに厚く(筋層のために)、本明細書に説明される固体投薬調剤(solid drug dose)の実施形態の送達を容易に可能にする。しかしながら、胃の機能性領域は解剖学的領域に対応していない。
図1Cに示すように、機能的には、胃は胃貯蔵器GRと胃ポンプGPとに分けることができる。胃貯蔵器には、底部Fとコーパスまたは本体部Bが含まれる。胃ポンプは、蠕動波が発生するエリアによって表され、コーパスの遠位部および洞が含まれる。平滑筋細胞の特性が異なるため、胃貯蔵器は緊張性活動を特徴とし、胃ポンプは蠕動波として知られる段階的活動を特徴としている。胃ポンプの主な特徴は蠕動波である。それは近位胃から生じ、幽門に伝播する。蠕動波は、胃壁から生じる電波に基づいている。胃および小腸の両方の壁には、カハールの間質細胞(ICC)と呼ばれる間質細胞のネットワークがある。これらの間質細胞は、それらの膜電位の振動により電気的なペースメーカ電位を生成する。ICCのペースメーカ電位は、平滑筋細胞内に電気的イベントを送り、そこでそれらは徐波によって反射される。ペースメーカ電位の頻度および結果としてもたらされる蠕動収縮は、1分間に約3回、または約20秒で発生する。ペースメーカ電位は、蠕動波の最大頻度および伝播速度を決定する。胃コーパスの領域では、蠕動波は浅く、それらは、前述のように、胃貯蔵器のポンプを表す。蠕動波が洞(A)に到達すると、洞の円形のくびれが深くなり、それにより、洞が管状の形状に発達し、その中で洞の内容物に力が印加される。腔ポンプの排出機構は、3つの段階:1)推進の段階、2)排出および混合の段階、ならびに3)逆推進および粉砕の段階、に分けることができる。蠕動波が近位洞を移動すると、以前に収縮していた末端洞が弛緩する。したがって、粥状液および他の胃の内容物は、遠位(すなわち、末端)洞の中に推進される(推進の段階)。蠕動波が洞の中央を移動すると、幽門が開き、十二指腸の収縮が抑制される。したがって、少量の胃粥状液が幽門を越えて十二指腸の中に送達される。排出および混合のこの段階では、蠕動波は幽門から比較的離れている。すなわち、胃粥状液は圧力によって十二指腸の中に押し込まれるのではなく、蠕動波によって小腸の中に押し流される。腔ポンプのこの機構は、ふるい分け効果と関連している。特に、洞の形状は管状になり、幽門から十二指腸の中への液体および小さな粒子の流れを可能にするが、嚥下可能なカプセル10の実施形態を含むより固体の物質は、幽門の比較的小さな開口部によって遮断されることによって洞内に保持される。腔収縮のこの段階の間にそのように保持されると、収縮する洞の力がカプセルの表面に加えられ、そこで圧力または以下に説明する他のセンサ12を使用してそれらを感知することができる。
【0039】
本発明の原理に従って構築された嚥下可能なカプセル10は、通常は、
図2に示すように、圧力または他の近接センサ12、ドライバ14、および送達される投薬調剤16を含む。これらの特定の構成要素の性質は、とりわけ薬物送達のモードおよびGI管内の標的薬物送達領域に応じて、大きく異なる可能性がある。例えば、圧力または他の近接センサ12は、機械的、電気的、またはそれらの組み合わせであってもよい。センサ12は、通常は、嚥下可能なカプセル10に外部から印加された力/圧力を感知することができ、特に、洞の収縮によってカプセルの外部に圧力が印加されているときを感知することができる。洞によって加えられる圧力はGI管内で固有であり、嚥下可能なカプセル10が洞の内部に到達したことを示すために最小閾値を超える圧力の感知に依ってもよいことが理解されるであろう。
【0040】
ドライバ14はまた、様々な形態のいずれか1つを有してもよい。ドライバは、
図2に示す破線の矢印によって示されるように、カプセルからの治療剤40の放出を開始するために、機械的、電気的、化学的、または他の蓄積エネルギーに依ってもよい。ドライバ14は、圧力または他の近接センサ12に結合され、嚥下可能なカプセル10が患者の洞の内部に到達したことを示す、圧力センサが所定の閾値を上回る圧力を感知することに応答してドライバは作動する。場合によっては、センサおよびドライバは、胃洞の収縮によって加えられる圧力を、薬物を腔壁の中に送る力に変換するように構成されてもよい。
【0041】
ここで
図3を参照すると、本発明の動作可能な構成要素を有する嚥下可能なカプセル24の特定の実施形態がより詳細に示されている。固体圧電素子などの固体圧力センサ26が、通常、カプセルの外壁に据え付けられる。特定の実施形態によれば、圧力センサ26または他の近接センサ12は、固体投薬調剤40(例えば、組織貫通部材TPM)がカプセル24を出る場所(例えば、カプセル内でシリンダ36が位置付けられている場所)に近接して(1~5mm)位置付けられ得る。そのため、ドライバ14がトリガされてその固体投薬調剤を洞壁の中に射出するときに、洞壁が実際にカプセル表面と接触することを確実にすることができる。このようにして、固体投薬調剤40が、胃内の腔壁または他の望ましい場所、またはGI管の他の部分の中に送達されるという信頼性が高まる。圧力センサ26は、カプセルの内部の制御モジュール28(本明細書ではコントローラ28とも呼ばれる)に接続されている。制御モジュール28は、通常は、以下でより詳細に説明するように、嚥下可能なカプセル24のすべて(または一部分)の動作を制御するために、マイクロプロセッサおよびプロセス上で実行可能な関連アプリケーションソフトウェアを含む。代替の実施形態では、制御モジュール28は、アナログデバイスであってもよいか、またはアナログデバイスも同様に含んでもよい。いくつかの実施形態では、嚥下可能なカプセル24はまた、カプセル電源をオンにして圧力センサによる圧力の感知を開始するように、嚥下可能ながいつ嚥下され、胃の中にあるかを確認するための流体または他のセ
ンサ30を有する。1つ以上の実施形態によれば、流体センサ30は、カプセルが胃に入ったことを確認するために、胃内の消化液による電極間の導電性架橋を感知する、カプセル表面またはカプセル上の他の場所に配設された電極に対応し得る。使用中、流体センサ30は、電池または他の電源48の電力を節約するのに役立ち、カプセルが嚥下された後のみ、カプセルは表面によってカプセルに印加された圧力を感知するために電力を消費し始める。
【0042】
嚥下可能なカプセル24は、一対の薬物送達モジュール34を収容した内部を囲むカプセル壁32によって取り囲まれている。各薬物送達モジュール34は、中に往復ピストン38を有するシリンダ36を含む。ピストン38は、
図3に示すように、最初は引き込まれ、関連するシリンダ36の底部に隣接する空間を有する。空間は、化学推進剤44が充填されてもよく、その中にコイルまたは他の点火剤46を有してもよい。このようにして、制御モジュール28は、推進剤44を電気的に点火し、点火された推進剤から生成された力によって、固体投与薬物40を
図3の破線で示す方向に送ることができる。1つ以上の実施形態によれば、化学推進剤は、層に形成されるか、または別の方法でシリンダ36の底部に位置付けられたウェルの中へ配設されてもよいニトロセルロースまたは他のニトロ化ポリマーなどの引火性膜に対応し得る。ウェル内に位置付けられると、推進剤44およびウェルは、点火時に方向性のあるエネルギー供給を提供するように構造化されてもよい。推進剤44がニトロセルロース層または他の形状を含む特定の実施形態では、ニトロセルロース層(または他の形状)の質量は、約1~8mgの範囲であり、より好ましくは約3mgであってもよい。3mgのニトロセルロースを用いた実験的研究は、毎秒約30メートルの組織貫通部材40の速度をもたらした。代替または追加の実施形態では、ニトロセルロースまたは他の推進剤44は、固体投薬調剤40のシャフトの底部(例えば、非組織貫通部分)に埋め込まれるか、または別の方法で組み込まれ得る。点火剤ワイヤまたはワイヤコイル点火剤120/220(
図4、
図5)を含む点火剤46は、投与量40の底部(または往復ピストン38)に接着するか、または別の方法で動作可能に結合されるかまたは位置付けられて、本明細書に説明したのと同様のやり方で、ニトロセルロースまたは他の推進剤44を点火する。
【0043】
いくつかの実施形態では、点火剤46は、推進剤44の点火と組み合わせて燃焼の促進剤として作用する化合物でコーティングされた導電性ワイヤを含んでもよい。これは、第1段階が促進剤コーティングの点火を含み、第2段階が推進剤44の点火を含む、2段階燃焼を形成する効果を有する。促進剤コーティングのための例示的な化合物には、以下が含まれるが、これらに限定されない:Conductive Hot Shot Pyrogenミックス、H-3 Pyrogenミックス、およびQuickDip、これらはすべて、テキサス州トリニティのQuickburstによって製造されている。そのような促進剤コーティング化合物はまた、点火剤ワイヤ46への接着のために選択されてもよい。一実施形態では、点火剤コイルは、促進剤化合物自体から構成されてもよい(すなわち、ワイヤ上に層状にされていない)。例えば、Conductive Hot Shot Pyrogen化合物は導電性であり、導電性点火剤ワイヤおよび点火促進剤の両方として使用することができる。
【0044】
嚥下可能なカプセル24は、通常は、制御モジュール28、点火剤46、およびカプセル24の他の構成要素に電力を供給するために、化学蓄電池(例えば、リチウム電池)または他の電源48も担持する。いくつかの実施形態では、電源48はコンデンサに対応し得る。推進剤44が、ニトロセルロース、または点火剤によって点火される他の点火性化学推進剤などの点火性材料に対応する特定の実施形態では、点火剤48は、点火剤46を点火するのに十分な電流および電圧を提供するように構成されたコンデンサに通常は対応する独自の専用電源(図示せず)を有してもよい。
【0045】
固体投与薬物40は、通常は自己貫通性であり、しばしば鋭利な、ホーニングされた、または他の組織貫通性の先端を有する。そのような固体剤形の詳細は、以下にさらに詳細に提供される。
【0046】
ここで
図4を参照すると、1つ以上の実施形態によれば、嚥下可能なカプセル100は、カプセルが患者の食道を通過して胃の中に入り、幽門を通って小腸および/または続いて大腸の中に入るように、嚥下を可能にするためにサイズ決定および構成されているカプセル壁またはシェル102を含む。サイズおよび形状の適応は、小児、新生児、および獣医の用途に行うことができる。カプセルの特定の構造、その内部構成要素、および両方の材料に応じて、カプセルは患者の腸内で完全に分解されてもよいか、または正常な消化プロセスによって腸から排泄されてもよい。通常は、カプセル壁102は、カプセルが胃を通過して腸の中に入り、最終的に腸内で消化されるように十分に長く持続する生分解性材料から形成される。対照的に、嚥下可能なカプセル100の内部構成要素は、腸内で消化されず、正常な消化の過程で腸から排泄される無毒な金属、セラミック、プラスチック、または他の材料を含んでもよい。しかしながら、そのような非分解性の構成要素は、それらが排泄されているときにそれらが患者に対して安全であるようにするサイズ、幾何学的形状、および他の特性を有するように形成される。
【0047】
1つ以上の実施形態によれば、嚥下可能なカプセル100は、カプセルから外向きに露出した外部表面およびカプセルの内部領域105と連絡する内部表面を有するように、カプセル壁102内に設置される1つ以上のセンサ104を含む。また、ドライバ回路106が嚥下可能なカプセル100の内部105内に設置され、カプセルからの治療剤の放出をトリガするために電流を生成するために、センサ104から信号を受信するように構成されている。特に、ドライバ回路106は、本明細書の他の場所で説明されるように、通常は組織浸透部材、すなわち、TPMの形態の固体投薬調剤110を前進および放出するように構成される薬物送達モジュール112に動作可能に結合される。薬物送達モジュール112は、通常は、シリンダ116の内部に受け入れられ、シリンダ116内で往復運動するように配設されたピストン114を含む。固体投薬調剤110は、カプセル壁102に向かう方向に選択的に駆動されるピストン114の表面上に設置され、それにより、投与量110は、壁を通って、GI管の隣接する腸壁または他の内腔壁の中に送達されてもよい。ピストン114は、ピストンが駆動される方向の端部とは反対のシリンダ116の端部に配設された可燃性推進剤118の点火によって駆動される。
【0048】
1つ以上の実施形態によれば、ドライバ回路106は、例えばフィラメントまたは他のワイヤ点火剤を使用して、可燃性推進剤118を点火するのに十分な電流を生成するように構成されている。特定の実施形態では、フィラメントは、タングステン、ニクロム、またはそれらの合金を含んでもよい。例えば、ドライバ回路106は、電池124と、通常はシリコン制御整流子(またはSCR)の形態のトリガ126と、トランジスタ130およびコンデンサ132を含むブースタ/コンバータ回路128とを含んでもよい。トリガ126は、固体投薬調剤110を送達するための必要条件が存在するときに、センサ104から信号を受信する。がセンサ104によって条件が感知されると、低電圧信号がトリガに送信され、トリガは次に回路を開いて、電池124からコンデンサ132に電流を送達する。トランジスタ130およびコンデンサ132の組み合わせは、電流ブースタとして機能するように配置および構成され、電流ブースタは、可燃性推進剤118に埋め込まれた、または別の方法で接触しているワイヤコイル点火剤120への電流の速達をさらにトリガする。
【0049】
可燃性推進剤118の燃焼は、ピストン114をカプセル壁に向かう方向に駆動するのに十分であるエネルギーの放出およびガスの膨張を引き起こす。ピストン114が駆動される力は、壁102を通って、通常は、患者の胃腸壁(例えば、腔壁、小腸壁など)の標的部分に隣接する壁の領域に形成された脆弱バリア134を通って、固体投薬調剤110を駆動するのに十分である。
【0050】
図5に、嚥下可能なカプセル200の代替の実施形態が示されている。
図4の実施形態にあるようなセンサ104の代わりに、この実施形態では、嚥下可能なカプセル200は、カプセルの壁206内に形成されたトリガスイッチ202を含む。例えば、トリガスイッチ202は、一対の電気接点204が中に埋め込まれている生分解性本体203を含んでもよい。嚥下可能なカプセルが最初に患者のGI管に入ると、生分解性本体203は、最初に、胃の少なくとも一部分を含むGI管の内容物から接触を絶縁する。時間の経過とともに、生分解性本体203は分解して電気接点204を露出させ、それにより、GI管の導電性内容物(例えば、胃酸、胆汁、チャイムなど)が、一対の収縮の間に導電性経路を提供する。このようにして、前の実施形態で説明したのと同様のやり方で固体投与薬物210の送達を開始するために、ドライバ回路208を閉じることができる。
【0051】
例えば、一実施形態によれば、生分解性本体203は、ポリ(メタ)アクリレート(PMA)などのpH感応材料から形成することができ、これは、胃または小腸の消化液など、選択されたpHを有する消化液を含む消化液に可溶である。市販の可溶性PMAポリマーは、Evonik Nutrition & Care GmbH(エッセン、ドイツ)からEudragit(登録商標)の商標名で市販されている。
【0052】
嚥下可能なカプセル200の残りの構造は、嚥下可能なカプセル100の構造と同様であってもよい。特に、薬物送達モジュール212は、カプセル壁206の内部領域205内に設置され得、シリンダ216内で往復運動するように配設されたピストン214を含んでもよい。可燃性推進剤218は、シリンダ216の一端に設置され、点火剤ワイヤ220は、可燃性推進剤に埋め込まれている。
【0053】
ドライバ回路208は、電池224と、トランジスタ230およびコンデンサ232を含むブースタ/コンバータ回路228とを含む。コンデンサ232の充電は、電気接点204が、患者のGI管の導電性内容物への曝露によって電気的に結合されたときに開始される。次に、ドライバ回路208の開始は、燃焼を開始し、前の実施形態で説明したように脆弱バリア234を通して固体投薬調剤210を駆動するために、可燃性推進剤218内に埋め込まれた点火剤ワイヤ220に電流を送達する。
【0054】
図4および
図5では、薬物送達モジュール112/212の場所は、カプセル壁102/206の端部に配設され、それにより、固体投薬調剤110/210は、略、カプセル102/206の長軸または長手方向軸に沿って送達される。しかしながら、
図4および
図5の例示は、主に概略的な目的のためであり、
図3に示す薬物送達モジュール34に関して上で詳述したように、薬物送達モジュール112/212の配向および場所は、カプセル102/206の長手方向軸に垂直であってもよい(すなわち、カプセル壁102/206の円周に対して半径方向に配向される)ことが理解される。
【0055】
追加または代替の実施形態は、例えば、GI管内の液体への曝露、特に、小腸で見られるpH(例えば、6~7.4)など、特定のpHを有する液体への曝露を含む、GI管内の状態に応答して分解するトリガまたはラッチを含んでもよい機械的点火剤を企図する。特定の実施形態では、点火剤は、別の表面と可動接触すると火花または火炎を生成する1つ以上の摩擦反応性部分を有する微細機械加工またはMEMSベースの予張力ばねデバイス(図示せず)を含んでもよい。点火剤は、分解性ラッチによって予張力状態に保たれ、ラッチが分解すると、摩擦反応性部分が互いに接触し、これにより、点火剤の別の表面または外部表面によって、ニトロセルロースまたは他の推進剤に点火する火花または火炎が生成される。反応性部分は、一方の反応性部分についてはマッチ棒の頭に見られる材料または高炭素鋼、および反対側の部分についてはフリントまたは高シリカ材料を含んでもよい。
【0056】
そのような点火剤の一実施形態によれば、点火剤は、分解性ラッチによって収縮された状態に保たれるピンセットのような形状を有してもよい。ピンセットのアームは、ピンセットアームに含まれる反応性部分を含むそれぞれからわずかにオフセットされているため、ラッチが解放されると互いに擦れ合い、推進剤に点火する火花を生成する。代替の実施形態では、ピンセットは、ラッチが分解するとアームが一緒に跳ね返り、反応部分の力強い接触および火花または火炎の生成をもたらすように、過度に拡張された拡張形状を有してもよい。様々な実施形態では、機械的点火剤は、例えば、PEO(ポリエチレンオキシド)、PLGA、シリコーン、および当技術分野で知られている他のエラストマーを含む、当技術分野で知られている様々な生体適合性および/生分解性ポリマーから作製することができる。それらはまた、MEMS、フォトリソグラフィ、3D印刷、および当技術分野で知られている様々な微細機械加工方法のうちの1つ以上を使用して作成することができる。
【0057】
ここで
図6を参照すると、1つ以上の実施形態によれば、嚥下可能なカプセル24の圧力センサ26および制御モジュール28は、腔蠕動として知られる腔壁の蠕動によってカプセル壁に加えられる外部圧力/力の変化を感知するように構成およびプログラムされてもよい。腔蠕動は、通常は、
図6に示すように、ピーク圧力P
pを有する一連の圧力波を含む。特定のピーク圧力値が患者集団および/または特定の患者について決定され得、嚥下可能なカプセル24からの治療調製物の送達を開始する、ピーク圧力P
p未満の圧力値が選択されてもよい。例えば、
図6のP
0.8として詳述されるように、トリガ圧力はピーク圧力値の80%であってもよい。他のトリガ圧力値(例えば、ピーク圧力P
pの70%、85%、90%など)が選択されてもよいことが理解される。いくつかの実施形態に従って説明されるように、ピーク圧力P
pは、洞のいくつかの蠕動収縮の間、洞内に保持されるようにカプセルを構成し、蠕動収縮のいくつかのサイクルを通して加えられた腔圧力を記録し、次に、平均ピーク圧と、平均頻度および収縮期間を含むがこれに限定されない腔蠕動収縮に関連する他の情報とを計算するようにコントローラ28および/または制御モジュールを構成することによって決定されてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態によれば、患者は、最初に、テストカプセルまたはカプセル模倣物24’(
図7)を飲み込んでもよく、これは、必ずしもドライバ14および治療剤40を含有せず、むしろその主な機能はいくつかの腔蠕動収縮を通してカプセル24’に加えられた圧力などを記録し、次に、平均ピーク蠕動圧、収縮の頻度および期間のうちの1つ以上を含む、これらの収縮に関連する様々なデータを計算して外部デバイスに送信することである。圧力センサ25が、そのようなデータを捕捉するために、テストカプセル24’の外表面に結合されてもよい。テストカプセル24’がGI管を通って進むにつれて観察された圧力データを記録および/または送信するための内部回路(図示せず)も提供されてもよい。次に、取得されたデータ/情報は、嚥下可能なカプセル24に、例えば、外部デバイス(図示せず)からカプセル24のコントローラ28(例えば、プロセッサまたは他の制御モジュール)に入力されてもよく、次に、トリガタイミングを修正するために利用されてもよいか、または別の方法で、腔壁の中の治療剤の放出を制御する。これらおよび関連する実施形態では、制御モジュール28は、取得したデータおよび/またはデバイスの動作においてコントローラ上で実行可能なアプリケーションソフトウェアを格納するためのメモリ手段(例えば、RAM、DRAM、揮発性メモリなど)、ならびに当技術分野で知られているRF、Wifi、他の送信デバイスなどの送信手段を含むか、またはそうでなければそれらに動作可能に結合することができる。特定の実施形態では、送信/トランシーバデバイスは、携帯電話、タブレットなどの外部デバイスと通信するように、Bluetooth(登録商標)通信プロトコルを使用するように構成されてもよい。
【0059】
ここで
図8A-1から
図8F-2を参照して、本発明の原理による、嚥下可能なカプセル10(または上で詳述した飲み込む可能なカプセル24、100、および200のうちのいずれか)の腔壁(AW)への送達について説明する。
図8B-1および
図8B-2に示すように、最初は、胃洞(GA)は空であり、AWは蠕動収縮を受けており、したがってくびれている。次に、患者は嚥下可能なカプセル10を摂取し、
図8C-1および
図8C-2に示すように、カプセルは、最終的にGAに近づく。嚥下可能なカプセル10がGAに入るにつれて、
図8D-1および
図8D-2に示すように、胃壁はその外部をくびれさせる。
図8D-1および
図8D-2に示すように、AWによって印加された圧力の結果として、カプセル10のセンサ26は、次に、上昇した圧力/力を感知し、次に、カプセルの壁を通ってAWの中に固体剤形40を放出する。
【0060】
特定の実施形態では、制御モジュール28または他の回路は、洞壁のいくつかの蠕動収縮から圧力/力対時間曲線を測定および格納して、特に、上記の腔ポンプ1つ以上の段階中に発生する、個々の患者の腔収縮の圧力/力曲線のデータベースを開発するように構成することができる。さらに以下に説明するように、カプセルに加えられるピーク蠕動圧/力(またはピーク圧の選択された例えば80%)、ならびに洞の蠕動収縮の頻度および/または期間などのパラメータを含む様々な情報は、制御モジュールまたは論理手段によって圧力/力曲線から導出されてもよい。様々な実施形態では、これらのまたは他のパラメータのうちの1つまたは組み合わせが制御モジュール28によって使用されて、例えば、本明細書に説明した点火性推進剤を使用して、洞壁の中への固体投与量40の放出がトリガされてもよい。特定のアプローチでは、制御モジュール28は、あるパーセンテージのピーク収縮圧と収縮期間との両方を使用して、固体投薬調剤40の放出をトリガするように構成することができる。これらのアプローチのうちの1つ以上を使用すると、カプセル10は、カプセル10への洞の望ましい量の収縮および/または接触をもたらす、洞の蠕動波/収縮が発生したときをより適切に感知することができるようになる。このようにして、腔壁(または胃もしくはGI管の他の部分)の中への固体投薬調剤40の送達の信頼性が著しく改善される。
【0061】
様々な実施形態では、カプセル24は、腔ポンプのいくつかの蠕動収縮段階中に洞内に留まるように望ましくサイズ決定および成形されるか、または別の方法で構成され得、カプセルに印加された平均ピーク腔蠕動圧、ならびに腔蠕動収縮の頻度および/または期間を含む、特定の患者に固有の腔収縮の情報を導出するように、洞の複数の蠕動収縮を感知および記録してもよい。これは、様々なアプローチを通して実現することができる。例えば、1つのアプローチによれば、カプセル24の直径は、部分的にのみ開いた幽門弁または幽門括約筋PSの直径よりもいくらか大きくなるようにサイズ決定することができる。追加または代替の実施形態では、収縮中にカプセル24が洞によって把持されるまたは洞に対して保持されることを確実にする様々な表面コーティングまたは表面機構の使用を通じて、カプセルは、そうでなければ洞からそれを押し出し得る蠕動収縮中に洞内に留まるように構成することができる。コーティングは、当技術分野で知られている弱い接着力を有する圧力作動生体接着剤を含む、圧力作動生体接着剤コーティングを含んでもよい。そのような表面機構は、カプセルが洞によって把持されたときに洞の表面とカプセル表面との間の摩擦係数を増加させ、したがって、カプセルを洞の遠位に押し出すために必要な力の量を増加する、および/または洞内のカプセルの移動を減少させる、ローレット表面を含む、当技術分野で知られている様々なテクスチャ加工された表面を含んでもよい。
【0062】
図8E-1および
図8E-2に示すように、腔壁は蠕動を受け続け、最終的に嚥下可能なカプセル10を放出する。カプセル10は、完全に分解されていない場合、
図8F-1および
図8F-2に示すように、幽門括約筋(PS)を通過して十二指腸Dに入る。幽門括約筋PSを通過して十二指腸Dに入った後、カプセル10は最終的に患者から排泄される。
【0063】
図3に戻って参照すると、様々な実施形態では、組織貫通部材40を含む嚥下可能なカプセル24は、液体、半液体または固体形態の医薬、または3つすべての組み合わせの送達のために構成されてもよい。形態がどうであれ、医薬は、望ましくは、医薬が嚥下可能なカプセル24から腔または他のGI壁(例えば、小腸)上の標的場所の中に前進させられ、次に壁内で分解して薬物または他の治療剤を放出することを可能にする材料稠度を有する。医薬の材料稠度は、(体液中の)調製物の硬度、多孔性、および溶解度のうちの1つ以上を強化/最適化するように処方されてもよい。組織貫通部材または他の投薬調剤40の材料および寸法もまた、GI管内の特定の標的場所に対して最適化されてもよい。例えば、腔壁の中への送達のために、洞壁のより筋肉質の部分に浸透するために、より長い組織貫通部材をより高い硬度で使用することができる。材料稠度は、以下のうちの1つ以上を選択して使用することで実現することができる:i)調製物を作るために使用される圧縮力、ii)当技術分野で知られている1つ以上の医薬崩壊剤の使用、iii)他の医薬賦形剤の使用、iv)調製物(例えば、微粉化粒子)の粒子サイズおよび分布、ならびにv)当技術分野で知られている微粉化および他の粒子形成方法の使用。
【0064】
嚥下可能なカプセル24は、嚥下され、少なくともGI間を通過して洞に入るようにサイズ決定される。しかしながら、特定の実施形態では、カプセルの直径は、幽門弁が部分的にのみ開かれたときに洞内で再訓練されるようにサイズ決定されてもよい。サイズはまた、送達される薬物の量、ならびに患者の体重、および成人と小児の用途に応じて調整することもできる。追加または代替のアプローチでは、幽門弁が部分的にのみ開かれているときにカプセルを洞内に保持するのを助けるために、カプセルはまた、本明細書に説明した表面コーティングおよび機構を含んでもよい。通常は、カプセルは、ビタミンと同様の湾曲した端を有する管状の形状を有する。これらおよび関連する実施形態では、カプセルの長さは0.5~2インチの範囲であってもよく、直径は0.1~0.5インチの範囲であってもよく、他の寸法が考えられる。嚥下可能なカプセル24は、内部空間または体積を画定する外部表面および内部表面を有する、カプセル壁32を含む。いくつかの実施形態では、カプセル壁は、組織貫通部材40の外向きの前進のためにサイズ決定された1つ以上の開口を含むことができる。
【0065】
嚥下可能なカプセル24は、通常は、必ずしもではないが、医薬品技術分野で知られているゼラチンなどの生分解性材料から作製され、胃および洞内での分(酸などによる)解からカプセルを保護し、その後、小腸または腸管の他のエリアにあるより高いpHで分解するように構成された腸溶コーティングを含んでもよい。様々な実施形態では、嚥下可能なカプセル24は、そのうちの1つ以上が生分解性であってもよい複数の部分またはセグメント(例えば、2つの半体)から形成されてもよい。
【0066】
上で考察されたように、カプセル24の1つ以上の部分は、好ましい実施形態では、セルロース、ゼラチン材料、PLGA(ポリ乳酸-コ-グリコール酸)を含んでもよい様々な生分解性ポリマーを含む、当技術分野で知られている様々な生体適合性ポリマーから作製することができる。他の適切な生分解性材料には、本明細書に説明した様々な腸溶性材料、ならびにラクチド、グリコリド、乳酸、グリコール酸、パラジオキサノン、カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、カプロラクトン、それらのブレンドおよびコポリマーが含まれる。
【0067】
生分解性腸溶性材料を含む、嚥下可能なカプセル24用の生分解性材料の使用は、カプセルが全体的または部分的に分解することを可能にして、薬物送達の前、最中、または後にGI系を通過するのを容易にする。本明細書でさらに詳細に説明するように、様々な実施形態では、嚥下可能なカプセル24は、腸管をより容易に通過するより小さな断片23に制御可能に分解するように、生分解性材料のシーム22を含むことができる。
【0068】
様々な実施形態では、嚥下可能なカプセル24は、蛍光透視法、超音波、MRIなどの1つ以上の医用イメージングモダリティを使用してデバイスの場所のための様々な放射線不透過性、エコー源性または他の材料を含んでもよい。特定の実施形態では、カプセルの全部または一部が、放射線不透過性/エコー源性を含んでもよい。放射線不透過性マーカに適した材料には、硫酸バリウム、化合物、二酸化チタン、およびそれらの化合物が含まれる。使用中、そのような材料は、GI管内の嚥下可能なカプセル24の場所、ならびにその展開状態(例えば、特色のあるマーカを両端、および任意選択で壁32の他の場所に位置付けることができる)を可能にし、嚥下可能なカプセル24は、治療剤の放出前に洞内で適切に整列しているという視覚的な確認を可能にする。それらはまた、GI管を通るデバイスの通過時間の決定を可能にするために使用されてもよい。このような情報を使用して、特定の患者の薬物の投与量を滴定したり、例えば、糖尿病の治療のためにインスリンを服用する場合に、食事の摂取などのイベントの後に特定の薬を服用する時期に関する情報を提供したりすることができる。
【0069】
組織貫通部材40は、様々な薬物および他の治療剤、1つ以上の医薬賦形剤(例えば、崩壊剤、安定剤など)、および以下で考察されかつ米国特許第9,757,548号、同第8,562,589号、同第8,809,269号、同第8,969,293号、同第8,809,271号、同第8,980,822号、同第9,861,683号、同第9,259,386号、同第9,284,367号、同第9,149,617号、同第8,734,429号、同第9,283,179号、同第8,764,733号、同第9,402,806号、同第9,629,799号、同第9,415,004号、同第9,402,807号、同第8,846,040号、同第10,098,931号、および同第10,220,003号、および米国出願第15/144,733号、同第15/150,379号、同第15/260,260号、同第15/928,606号、同第16/183,573号、ならびに本出願と共通の発明者適格を有する、同時係属中の仮出願第62/786,831号に詳細に説明されている、先端を有するシャフトを含むTPMの主要な構造的構成要素を形成するために使用されてもよい1つ以上の生分解性材料(例えば、PEO)から作製することができ、これらの完全な開示は参照によりあらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0070】
特定の材料を選んで、貫通部材に望ましい構造的特性および材料特性(例えば、胃または腸壁の中への挿入のためのカラム強度、または貫通部材の崩壊、したがって薬物の放出を制御するための多孔性および親水性)を与えることができる。多くの実施形態では、貫通部材40は、例えば
図8D-1および
図8D-2に示すように、洞または他の腸壁の組織に貫通しやすいように、シャフトおよび針先端または他の尖った先端を有するように形成されてもよい。例示的な実施形態では、先端はトロカールを有し、先端の硬度および組織浸透特性を増加させるスクロース、マルトースまたは他の糖などの様々な分解性材料(先端の本体内に、またはコーティングとして)を含んでもよい。腸壁内に配置されると、貫通部材40は、壁組織内の間質液によって分解され、それにより、薬物または他の治療
剤がそれらの流体内に溶解し、血流の中に吸収される。組織貫通部材40のサイズ、形状、および化学組成のうちの1つ以上を選択して、組み込まれた薬物の溶解および吸収を数秒、数分、または数時間のうちに可能にすることができる。溶解速度は、医薬品技術分野で知られている様々な崩壊剤の使用を通じて制御することができる。崩壊剤の例には、デンプングリコール酸ナトリウムなどの様々なデンプン、およびカルボキシメチルセルロースなどの様々な架橋ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。崩壊剤の選択は、小腸の壁内の環境、例えば、血流、蠕動収縮の平均数などに合わせて具体的に調整することができる。
【0071】
組織貫通部材40はまた、通常は、前進後に腸壁の腔または他の領域の組織内に貫通部材を保持するためのバーブ(返し、barb)またはフックなどの1つ以上の組織保持機構を含んでもよい。保持機構は、2つ以上のバーブが部材シャフトの周囲でおよびそれに沿って対称的に、または別方法で分布するなど、様々なパターンで配置して組織をより強く保持することができる。追加的に、多くの実施形態では、貫通部材はまた、送達機構上の結合構成要素への取り付けのための凹部または他の嵌合機構を含んでもよい。そのような機構は、米国特許第8,734,429号にさらに詳細に説明され、これは、参照により本明細書に既に組み込まれている。
【0072】
組織貫通部材40は、望ましくは、ピストン38に分離可能に結合されるように構成され、それにより、組織貫通部材40の腔壁の中への前進後、組織貫通部材はピストンから分離する。分離可能性は、以下を含む様々な手段によって実装することができる。すなわち、i)ピストンの開口とのぴったりとはまった状態または嵌入、ii)ピストンからの分離を促進するために、組織貫通部材を組織に固定する、組織貫通部材40上の組織保持機構の構成および配置、ならびにiii)腸壁の中への組織貫通部材の貫入深さ。これらの因子のうちの1つ以上を使用して、組織貫通部材40は、ピストンが引き込まれるか、もしくは別の方法で腔壁から離れて引き戻されるときに、および/または洞の蠕動もしくは他の収縮によって嚥下可能なカプセル24に力が印加されるときに分離するように構成されてもよい。
【0073】
上記のように、様々な実施形態では、組織貫通部材40は、いくつかの薬物および他の治療剤から作製することができる。また、1つ以上の実施形態によれば、組織貫通部材は、完全に薬物から作製されてもよく、または他の構成成分、例えば、様々な医薬賦形剤(例えば、結合剤、防腐剤、崩壊剤など)、望ましい機械的特性を与えるポリマーなどをも有してもよい。さらに、様々な実施形態では、1つ以上の組織貫通部材40が、他の組織貫通部材と同じまたは異なる薬物(または他の治療剤)を担持することができる。前者の構成は、より多くの量の特定の薬物の送達を可能にし、後者は、複数の薬物の略同時の送達を必要とする薬物治療レジメンを容易にするために、2つ以上の異なる薬物をほぼ同時に腔壁の中に送達することを可能にする。
【0074】
通常は、組織貫通部材40によって担持される薬物または他の治療剤は、生分解性材料と混合されて、組織貫通部材40を形成する。生分解性材料は、PEO(ポリエチレンオキシド)、PLGA、セルロースなどの1つ以上の生分解性ポリマー、ならびにマルトースなどの糖、または本明細書に説明したまたは当技術分野で知られている他の生分解性材料を含んでもよい。そのような実施形態では、貫通部材40は、薬物と生分解性材料との略不均一な混合物を含んでもよい。代替的に、組織貫通部材40は、略生分解性材料から形成された部分と、薬物から略形成された、または薬物を含む別個のセクションとを含んでもよい。成形セクションが、別個のセクションとして事前に形成され得、次に、組織貫通部材40の空洞の中に挿入されてモジュール作製を可能にする。代替的に、薬物調製物は、組織貫通部材40の空洞の中に導入され得、例えば、組織貫通部材40の空洞、ウェル、中空内部、または他のレセプタクルの中に注入されるまたは注入される粉末、液体、またはゲルとして組み合わされる。成形セクション42は、薬物自体、または薬物と1つ以上の結合剤、防腐剤、崩壊物および他の賦形剤とを含有する薬物調製物から形成されてもよい。
【0075】
様々な実施形態では、組織貫通部材40の重量は、約10~15mgの範囲であってもよく、より大きなおよびより小さな重量が考えられる。マルトースから作製された組織貫通部材40の実施形態では、重量は約11~14mgの範囲であってもよいが、PEOでは、組織貫通部材の重量は10~15mgの範囲であってもよい。様々な実施形態では、薬物および望ましい送達用量に応じて、部材40中の薬物の重量パーセントは、約0.1~約15%の範囲であってもよい。部材40中の薬物の重量パーセントは、望ましい用量に応じて、ならびに薬物に構造的および化学量論的安定性を提供し、また薬物の望ましい溶出プロファイルを実現するために調整することができる。表1は、組織貫通部材40によって送達されてもよいいくつかの薬物の用量および重量パーセントの範囲を列挙している。
【表1】
【0076】
組織貫通部材40は、1つ以上のポリマーおよび当技術分野で知られている医薬品作製技術を使用して作製することができる。例えば、薬物(生分解性材料を有するまたは有さない)は、固体形態であってもよく、次に、1つ以上の結合剤が添加されて、モールディング、圧縮または他の類似の方法を使用して組織貫通部材40の形状に形成されてもよい。代替的に、薬物および/または薬物調製物は、固体または液体形態であってもよく、次に、液体形態の生分解性材料に添加され、混合物は、モールディングまたはポリマー技術で知られている他の形成方法を使用して貫通部材40に形成される。
【0077】
望ましくは、薬物または他の治療剤および分解性材料を含む組織貫通部材40の実施形態は、様々なペプチドおよびタンパク質などの薬物を含む薬物(または他の治療剤)の任意の実質的な熱分解を生じない温度で形成される。これは、室温硬化ポリマーと、当技術分野で知られている室温モールディングおよび溶媒蒸発技術との使用を通じて実現することができる。特定の実施形態では、組織貫通部材の内部の熱分解された薬物または他の治療剤の量は、望ましくは約10重量%未満、より好ましくは5%未満、さらにより好ましくは1%未満である。特定の薬物の熱分解温度は、既知であるか、または当技術分野で知られている方法を使用して決定することができ、次に、この温度を使用して、特定のポリマー処理方法(例えば、モールディング、硬化、溶媒蒸発方法など)を選択および調整して、温度および関連する薬物の熱分解レベルを最小限に抑えることができる。
【0078】
医薬送達後、嚥下可能なカプセル24(圧力センサ26、制御モジュール28、および薬物送達モジュール34の一部またはすべてを含む)は、洞から小腸および大腸を含む腸管を通過し、最終的に排泄されてもよい。生分解性シームまたは他の生分解性部分を有するカプセル24の実施形態では、カプセルは、腸管内でより小さな断片に分解されて、腸管を通過し、腸管から排泄されるのを容易にする。生分解性組織貫通針/部材40を有する特定の実施形態では、針が胃、腸(小腸または大腸)またはGI管の他の場所の壁から取れなくなることがあれば、針は生分解し、カプセル24を胃または腸壁から放出する。
【0079】
上記の方法の1つ以上の実施形態は、様々な疾患および状態を治療するために、治療有効用量の様々な薬物および他の治療剤を含有する調製物の送達に使用することができる。これらには、例えば、tnfアルファ抗体、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン、インスリン、インターフェロン、および他の類似の化合物など、様々なモノクローナル抗体を含む、抗体を含む、胃または腸内での化学的分解および/または不活性化のために注入を必要とする多くの大分子ペプチドおよびタンパク質が含まれる。本発明の実施形態によって送達されてもよい適切な薬物および他の治療剤には、様々なイムケモ治療剤(例えば、インターフェロン)、抗生物質、抗ウイルス薬、インスリンおよび関連化合物、グルカゴン様ペプチド(例えば、GLP-1、エキセナチド)、副甲状腺ホルモン、成長ホルモン(例えば、IFGおよび他の成長因子)、抗発作剤(例えば、フロセミド)、抗片頭痛医薬(スマトリプタン)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン)、および様々な抗マラリア剤などの抗寄生虫剤が含まれる。特定の薬物の投与量は、患者の体重、年齢、または他のパラメータについて滴定することができる。また、望ましいまたは治療効果を実現するための薬物(例えば、血糖調節のためのインスリン、抗発作のためのフロセミド)は、薬物が従来の経口送達によって送達された場合に必要な量(例えば、胃で消化され、小腸の壁を通して吸収される嚥下可能な錠剤)よりも少なくすることができる。これは、胃の中の酸および他の消化液による薬の分解がないという事実と、薬の一部分だけではなく、すべてが小腸(または胃腸管、例えば、大腸、胃などの他の内腔)の壁の中に送達されるという事実によるものである。薬物に応じて、調製物で送達される用量は、望ましい治療効果(例えば、血糖調節、発作調節など)を実現するために、従来の経口送達手段によって送達される用量の5%~100%の範囲であってもよく、さらに少ない量が考えられる。特定の用量低減は、特定の薬物、治療される状態、ならびに患者の体重、年齢、および状態に基づいて滴定することができる。いくつかの薬物(腸管内での分解レベルがわかっている)では、標準的な用量低減を採用することができる(例えば、10~20%)。分解する傾向および吸収が不良である傾向が強い薬物には、より大きい量の用量低減を使用することができる。このようにして、摂取用量が低下するため、嚥下可能なカプセル24によって送達される特定の1つ以上の薬物の潜在的な毒性および他の副作用(例えば、胃のけいれん、過敏性腸、出血など)を低減することができる。これは、ひいては患者の副作用の重症度および出現率の両方が低減するため、患者のコンプライアンスが改善される。薬物の用量低減を採用する実施形態の追加の利点には、患者が薬物に対する耐性を発達させる(より高い用量を必要とする)尤度、および抗生物質の場合、患者が細菌耐性株を発達させる尤度の低減が含まれる。また、胃バイパス手術、および小腸のセクションが除去された、またはその作用(例えば、消化)の長さが効果的に短縮された他の処置を受けている患者に対して、他のレベルの用量低減を実現することができる。
【0080】
単一の薬物の送達に加えて、嚥下可能な薬物送達嚥下可能なカプセル24およびそれらの使用方法の実施形態は、複数の状態の治療のための複数の薬物、または特定の状態の治療のための複数の薬物(例えば、HIVエイズ治療のためのプロテアーゼ阻害剤)を送達するために使用することができる。使用中、そのような実施形態は、患者が特定の1つ以上の状態のために複数の医薬を服用しなければならない必要性をなしで済ませることを可能にする。また、それらは、2つ以上の薬物のレジメンが、ほぼ同時に、小腸、したがって血流の中に送達および吸収されることを容易にするための手段を提供する。化学的組成、分子量などの違いにより、薬物は異なる速度で腸壁を通じて吸収され得、異なる薬物動態分布曲線がもたらされる。本発明の実施形態は、略同時に、望ましい薬物混合物を注入することによってこの問題に取り組む。これは、ひいては薬物動態、したがって、選択された薬物の混合物の有効性を改善する。追加的に、複数の薬物を服用する必要をなくすことは、認知能力または身体能力が損なわれている患者を含む、1つ以上の長期的な慢性状態を有している患者にとって特に有益である。
【0081】
様々な用途では、上記の方法の実施形態を使用して、薬物および治療剤を含む調製物を送達して、多くの医学的状態および疾患の治療を提供することができる。本発明の実施形態で治療することができる医学的状態および疾患には、癌、ホルモン状態(例えば、甲状腺機能低下症/甲状腺機能亢進症、成長ホルモン状態)、骨粗鬆症、高血圧、高コレステロールおよび高トリグリセリド、糖尿病および他のグルコース調節障害、感染症(局所または敗血症)、てんかんおよび他の発作障害、骨粗鬆症、冠状動脈不整脈(心房性および心室性の両方)、冠状動脈虚血性貧血または他の類似の状態が含まれるが、これらに限定されない。多発性硬化症、ギランバレー症候群、強直性脊椎炎、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、多巣性運動ニューロパチー、狼瘡および他の類似の状態を含む、様々な自己免疫障害などのさらに他の状態および疾患もまた考えられる。後者の状態の治療剤には、IgGおよびリツキシマブが含まれ得る。
【0082】
多くの実施形態では、特定の疾患または状態の治療は、薬物または他の治療剤を注入する(または、坐剤などの他の非経口形態の送達の)必要なしに、代わりに、洞、小腸、またはGI管の他の部分の壁の中へ送達される治療剤のみに依り行うことができる。例えば、糖尿病または別のグルコース調節障害は、患者がインスリンを全く注入する必要なしに、洞、小腸の壁の中に送達されるインスリンの使用を通じてのみ(例えば、血糖値を制御することによって)治療することができる。同様に、患者は、従来の経口形態の薬物または他の治療剤を服用する必要はないが、ここでも、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して、洞または小腸の壁の中への送達のみに依存する。他の実施形態では、小腸の壁の中に送達される治療剤は、剤の注入調剤と併せて送達することができる。例えば、患者は、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して、血糖調節のためにインスリンまたは化合物の1日の用量を服用することができるが、数日ごとに、または患者の状態がそれを必要とするとき(例えば、高血糖)に注入調剤を取るだけでよい。同じことが、伝統的に経口形態で送達される治療剤にも当てはまる(例えば、患者は、嚥下可能なカプセルを服用し、必要に応じて従来の経口形態の剤を服用することができる)。そのような実施形態で送達される投与量(例えば、嚥下された用量および注入された用量)は、必要に応じて滴定することができる(例えば、適切な投与量を決定するために、標準的な用量反応曲線および他の薬物動態学的方法を使用する)。また、従来の経口手段によって送達することができる治療剤を使用する実施形態では、嚥下可能なカプセルの実施形態を使用して送達される用量は、胃または腸管の他の部分で略又は全く分解されないので、剤の経口送達に通常与えられる投与量未満に滴定することができる(ここでも、標準的な用量反応曲線および他の薬物動態学的方法を適用することができる)。
【0083】
ここで、様々な疾患および状態の治療のための1つ以上の薬物または他の治療剤を含有する調製物の実施形態の様々なグループについて、投与量を参照して説明する。特定の治療剤およびそれぞれの投与量を含むこれらの実施形態は例示的なものであり、調製物は、嚥下可能なカプセル24の様々な実施形態を使用した、胃腸管内の内腔壁(例えば、小腸壁)の中への送達のために構成された、本明細書に説明した多くの他の治療剤(および当技術分野で知られているもの)を含んでもよいことを理解されたい。投与量は、説明したものよりも大きくても小さくてもよく、本明細書に説明するかまたは当技術分野で知られている1つ以上の方法を使用して調整することができる。実施形態の1つのグループでは、治療剤調製物は、糖尿病および他のグルコース調節障害の治療のための治療有効用量のインスリンを含んでもよい。インスリンは、当技術分野で知られているように、ヒトまたは合成由来であってもよい。一実施形態では、調製物は、約1~10単位の範囲(1単位は、約45.5μgの純結晶インスリンの生物学的等価物である)の治療有効量のインスリンを含有し得、特定の範囲は、2~4、3~9、4~9、5~8、または6~7である。調製物中のインスリンの量は、以下の因子(ここでは「グルコース制御滴定因子」)の1つ以上に基づいて滴定することができる:i)患者の状態(例えば、1型糖尿病対II型糖尿病、ii)患者の血糖制御の以前の全体的なレベル、iii)患者の体重、iv)患者の年齢、v)投与量の頻度(例えば、1日1回対複数回)、vi)時刻(例えば、朝対夕方)、vii)特定の食事(朝食対夕食)、viii)特定の食事の内容/血糖指数(例えば、高脂肪/脂質および糖含量の食事(血糖の急激な上昇を引き起こす傾向があり、したがって血糖指数が高い)対しない低脂肪および糖含量の食事(したがって血糖指数が低い))、およびix)患者の全体的な食生活の内容(例えば、毎日消費される糖質および他の炭水化物、脂質、ならびにタンパク質の量)。
【0084】
実施形態の別のグループでは、治療剤調製物は、糖尿病および他のグルコース調節障害の治療のための治療有効用量の1つ以上のインクレチンを含んでもよい。このようなインクレチンには、グルカコン様ペプチド1(GLP-1)およびそれらの類似体、ならびに胃抑制ペプチド(GIP)が含まれ得る。適切なGLP-1類似体には、エキセナチド、リラグルチド、アルビグルチドおよびタスポグルチド、ならびにそれらの類似体、誘導体および他の機能的等価物が含まれる。一実施形態では、調製物は、約1~10μgの範囲の治療有効量のエキセナチドを含有し得、特定の範囲は、それぞれ、2~4、4~6、4~8、および8~10μgである。別の実施形態では、調製物は、約1~2mg(ミリグラム)の範囲の治療有効量のリラグルチドを含有し得、特定の範囲は、それぞれ、1.0~1.4、1.2~1.6、および1.2~1.8mgである。エキセナチド、リラグルチド、もしくは他のGLP-1類似体、またはインクレチンの用量範囲を滴定するために、グルコース制御滴定因子のうちの1つ以上を適用することができる。
【0085】
実施形態のさらに別のグループでは、治療剤調製物は、糖尿病および他のグルコース調節障害の治療のための治療剤の組み合わせを含んでもよい。そのような組み合わせの実施形態には、治療有効用量のインクレチンおよびビグアニド化合物が含まれ得る。インクレチンは、エキセナチドなどの本明細書に説明した1つ以上のGLP-1類似体を含み得、ビグアニドは、メトホルミン(例えば、Merck Sante S.A.S.によって製造されるGLUCOPHAGEの商標で入手可能である)ならびにその類似体、誘導体、および他の機能的等価物を含んでもよい。一実施形態では、調製物は、約1~10μgの範囲の治療有効量のエキセナチドと、約1~3グラムの範囲の治療有効量のメトホルミンとの組み合わせを含んでもよい。エキセナチド(または他のインクレチン)およびメトホルミンまたは他のビグアニドのそれぞれの用量を滴定するために使用されるグルコース制御滴定因子のうちの1つ以上を用いて、より小さな範囲およびより大きな範囲も考えられる。追加的に、エキセナチドまたは他のインクレチンおよびメトホルミンまたは他のビグアニドの投与量をマッチングさせて、数時間(例えば、12)から1日から数日までの範囲の長期間にわたる患者のグルコース制御のレベルを改善することができ(例えば、正常な生理学的レベル内の血糖の維持および/または高血糖および/または低血糖の場合の出現率および重症度の低減)、さらに長い期間が企図されている。投与量のマッチングはまた、グルコース制御調節因子の使用、ならびにグリコシル化ヘモグロビン(ヘモグロビンA1c、HbA1c、A1C、またはHb1cとして知られている)および長期平均血糖値と相関する他の生体分析物および測定値を使用した患者の血糖値の長期間のモニタリングによっても実現することができる。
【0086】
実施形態のさらに別のグループでは、治療剤調製物は、1つ以上の成長障害の治療、ならびに創傷治癒のための治療有効用量の成長ホルモンを含んでもよい。一実施形態では、調製物は、約0.1~4mgの範囲の治療有効量の成長ホルモンを含有し得、特定の範囲は、0.1~1、1~4、1~2、および2~4であり、さらに大きな範囲が企図されている。特定の用量は、以下のうちの1つ以上に基づいて滴定することができる:i)治療する特定の状態およびその重症度(例えば、発育不全対創傷治癒)、ii)患者の体重、iii)患者の年齢、およびiv)投与量の頻度(例えば、毎日対1日2回)。
【0087】
実施形態のさらに別のグループでは、治療剤調製物は、骨粗鬆症または甲状腺障害の治療のための治療有効用量の副甲状腺ホルモンを含んでもよい。一実施形態では、調製物は、約1~40μgの範囲の治療有効量の成長ホルモンを含有し得、特定の範囲は、10~20、20~30、30~40、および10~40μgであり、さらに大きな範囲が企図されている。特定の用量は、以下のうちの1つ以上に基づいて滴定することができる:i)治療する特定の状態およびその重症度(例えば、骨密度測定によって決定される骨粗鬆症の程度)、ii)患者の体重、iii)患者の年齢、およびiv)投与量の頻度(例えば、毎日対1日2回)。
【0088】
本明細書で使用される場合、単数形の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかでない限り、複数の指示対象を含んでもよい。単数形の物体への参照は、明示的に述べられていない限り、「唯一の」を意味することを意図しておらず、むしろ「1つ以上」を意味する。
【0089】
本明細書で使用される場合、用語「セット」は、1つ以上の物体の集合を指す。したがって、例えば、物体のセットには、単一の物体または複数の物体が含まれ得る。
【0090】
本明細書で使用される場合、用語「略」および「約」は、小さな変動を説明および伝えるために使用される。イベントまたは状況と併せて使用されるとき、これらの用語は、イベントまたは状況が正確に発生する場合、およびイベントまたは状況が近い近似で発生する場合を指し得る。数値と併せて使用されるとき、これらの用語は、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、または0.05%以下など、その数値の±10%以下の変動範囲を指し得る。例えば、「略」整列したとは、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、±0.1°以下、または±0.05°以下など、±10°以下の角度変動の範囲を指し得る。
【0091】
追加的に、量、比率、および他の数値は、本明細書に範囲形式で提示される場合がある。この範囲形式は、便宜および簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に規定される数値を含むが、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分範囲も、各数値および部分範囲が明示的に規定されているかのように含むと柔軟に理解されるべきであることを理解すべきである。例えば、約1~約200の範囲の比率は、明示的に記載された約1および約200の限界を含むが、約2、約3、および約4などの個々の比率、および約10~約50、約20~約100などの部分範囲も含むと理解されるべきである。
【0092】
本開示の技術の様々な実施形態の前述の発明は、例示および発明の目的で提示されている。本開示の技術を開示された正確な形態に限定することを意図するものではない。多くの修正、変形、および改良は、当業者には明らかであろう。例えば、デバイスの実施形態は、様々な小児および新生児の用途、ならびに様々な獣医学の用途に合わせてサイズ決定および別の方法で適応させることができる。それらはまた、男性および女性の両方の尿路に適応されてもよい。さらに、当業者は、慣例に過ぎない実験を使用して、本明細書に説明されている特定のデバイスおよび方法に対する多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。そのような等価物は、本開示の本技術の範囲内であると見なされ、以下の添付の特許請求の範囲によってカバーされる。
【0093】
一実施形態からの要素、特性、または行為は、他の実施形態からの1つ以上の要素、特性、または行為と容易に再結合または置換されて、本発明の範囲内の多数の追加の実施形態を形成することができる。さらに、他の要素と組み合わされているものとして示されているまたは説明されている要素は、様々な実施形態において、独立した要素として存在してもよい。したがって、本発明の範囲は、説明された実施形態の詳細に限定されず、代わりに、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。