(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150702
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】糖尿病バイオマーカ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20241016BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G01N33/53 K
G01N33/53 D
G01N33/536 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024120652
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2022175993の分割
【原出願日】2013-05-24
(31)【優先権主張番号】61/651,144
(32)【優先日】2012-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516117456
【氏名又は名称】ファイム ファーマ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルバン、ティハメル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】T1DMの治療に対するセラピーの有効性を測定することができる、および/または、合併症を検出することができるより良好な分析の提供。
【解決手段】自己免疫およびその進行性、より具体的には、糖尿病、前糖尿病、真性糖尿病への感染し易さ、または、被験者におけるそのような複数の疾病のうちの1または複数に対する治療法/治療介入法の有効性のレベルを診断する方法が、被験者から抽出されたサンプルの免疫蛍光分析によってCD4ナイーブ(CD45RO-CD62L+)T細胞のレベルを決定することと、被験者から抽出されたサンプルの免疫蛍光分析によってCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞のレベルを決定することと、CD4ナイーブT細胞のレベルおよびCD4セントラルメモリーT細胞のレベルを定量的に関連付けることとによって実施することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者から抽出されたサンプルに対し、前記被験者の関節リウマチまたは多発性硬化症に対するセラピーの有効性を決定する方法であって、
CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
前記CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを、前記蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
前記CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、前記蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
前記セラピーの有効性を評価する段階と、
を備え、
前記セラピーの間における、前記CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションに対する前記CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションの高い比または比の増大は、前記セラピーの有効性を示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2012年5月24日に出願された米国特許仮出願第61/651,144号からの優先権を主張し、その内容全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、概して自己免疫、糖尿病の分野に関し、より具体的には1型糖尿病および免疫マーカに関する。
【背景技術】
【0003】
1型真性糖尿病(T1DM)の最もよく見られる形態は免疫介在性疾患であり、そこでは、自己免疫応答によってインスリン分泌β細胞が破壊される。特異的にインスリン分泌β細胞をターゲットとした免疫細胞による膵島の進行性炎症性湿潤を伴うこの疾患の発病には、多くの遺伝因子および環境因子が関連している。その症状は、臨床的発症(前糖尿病)前の予測できない期間(数ヶ月から数年)にわたって進行し、患者がこの疾患と診断された後も続く。
【0004】
現在、抗体を使用したT1DMのスクリーニングおよび診断方法がある。特定の抗体が存在するところでは、長い期間をかけて、顕性糖尿病がしばしば進行するであろう。GAD65自己抗体(GAAs)、ICA512自己抗体(ICA512AAs)、または抗インスリン自己抗体(IAAs)のうちの1または複数の発現は、T1DMへと進行するリスクに関連している。GAD65自己抗体(GAAs)、ICA512自己抗体(ICA512AAs)、または抗インスリン自己抗体(IAAs)のうちの2またはそれ以上の発現は、T1DMへと進行する高いリスクに関連している。(Liping Yu et al., Diabetes August 2001 vol. 50 no. 8 1735-1740; Verge CF et al., Diabetes 45:926-933, 199; Verge CF. et al, Diabetes 47:1857-1866, 1998; and Bingley PJ, et al., Diabetes 43:1304-1310, 1994)
【0005】
しかしながら、このスクリーニングは、個々の患者に対しては限られた有用性しかない。抗体スクリーンは、T1DMの高められたリスクレベルを検出することができるが、リスクは一般的な個体群に基づいており、例えば次の数ヶ月内に疾患が発病するかどうか、または、各個人が次の5-10年間にわたって糖尿病にならないであろうかどうかについて、個々の患者に通知することができない。自己免疫性破壊の強度は患者によって変動する。従って、各個人に対してT1DMを発症する個人的リスクを通知し、疾患の発病の時間枠を示すことのできる診断方法に対する要求がある。
【0006】
T1DM自己免疫に対するセラピーの分析に対し、改良された主要評価項目への要求もある。あるセラピーがFDAから規制認可を受けるためには、適切な主要評価項目において、臨床試験によって統計的に有意な効果を示さなくてはならない。この治療効果は、好ましくは、いくつかの明らかで臨床的に優位な恩恵を立証する。T1DMを防ぐための治療の場合、臨床疾患の進行が遅延する、または進行しない(そのために、これらの試験が5または10年かかる)。臨床疾患を有する患者の治療介入の場合、適切な主要評価項目は、代謝管理および糖尿病合併症関連である。最も一般に適用される代謝主要評価項目は、治癒を除いては、自己インスリン生成(β細胞機能の維持に対する代理マーカとしての刺激C-ペプチド)の測定であり、その他はHbA1cおよびインスリン使用である。T1DM患者における改善されたβ細胞機能は短期的に良好な予測をすることができ、長期の臨床結果は評価するのに数年間かかり得る。T1DMおよび合併症の治療に対しては、血糖値のレベルを直接監視することができ、短期および長期の糖尿病合併症のリスクと直接に関連していることが示されてきたグリコシル化ヘモグロビン(例えばHbA1c)のレベルによって、改善された血糖管理を監視することができる。
【0007】
疾患の後臨床段階においてβ細胞機能を維持することを意図したセラピーに対し、T1DMの進行を測定するために刺激C-ペプチド濃度が用いられてきた(Palmer JP, et al., Diabetes 2004; 53:250-264)。しかしながらC-ペプチド濃度の使用は、長期間にわたって繰り返される侵襲的検査(いわゆる混合食負荷試験)を要する。従って、β細胞機能、故にC-ペプチド濃度を低減させる疾患の進行の評価を可能にさせるために、試験は長い間続く。
【0008】
従って、試験(予防試験および治療介入試験の両者)に対する主要評価項目としての役割を果たすより良いマーカ、並びに、T1DM自己免疫の進行性をより速く且つより信頼性高く示すことができ、従って前糖尿病および糖尿病状態を段階分けすることができるより良いマーカに対する要求がある。T1DMの治療に対するセラピーの有効性を測定することができる、および/または、合併症を検出することができるより良好な分析に対する要求もある。
【発明の概要】
【0009】
1型糖尿病における自己インスリン生成の減少に対する新たなマーカが、セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションに対するCD4ナイーブ(CD45RO-CD62L+)の比に、また、セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションレベルに見出された。糖尿病、前糖尿病、真性糖尿病への感染し易さ、または、被験者におけるそのような複数の疾病のうちの1または複数に対するセラピーの有効性を診断する方法は、患者から抽出されたサンプルの免疫蛍光分析によってCD4ナイーブ(CD45RO-CD62L+)T細胞のレベルを決定することと、患者から抽出されたサンプルの免疫蛍光分析によってCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞のレベルを決定することと、CD4ナイーブT細胞のレベルおよびCD4セントラルメモリーT細胞のレベルを定量的に関連付けることとによって実施することができる。ここで、CD4セントラルメモリーT細胞に対するCD4ナイーブT細胞の低い比または比の減少、あるいは、CD4セントラルメモリーT細胞の高いレベルまたはレベルの増大は、自己免疫疾患、前自己免疫疾患、自己免疫への感染し易さ、またはそれらの複数の疾病のうちの1または複数に対する治療の有効性の無さを示す。前糖尿病の状況においては、T1DM特異的自己抗体の存在が、T1DM自己免疫自身の存在を示す。よって、本発明の1つの態様において本明細書に記載される方法は、糖尿病自己抗体が存在するかどうかを決定することと組合わせられる。
【0010】
本発明の1つの態様においては、被験者の糖尿病および前糖尿病状態に対するセラピーの有効性を決定する方法が開示される。これは、被験者にセラピーを開始する段階と、上記被験者からサンプルを抽出する段階と、上記サンプル中のセントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)の比および/またはCD4セントラルメモリーT細胞のレベルを測定する段階と、上記セラピーの有効性を評価する段階とを含む。ここで、セラピーの間における比の増大、および/または、低い/減少したCD4セントラルメモリーT細胞は、効果的なセラピーであることを示す。
【0011】
さらに他の実施形態における方法は、被験者にセラピーを開始する段階と、上記被験者からサンプルを抽出する段階と、上記サンプル中のCD4 T細胞セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)サブポピュレーションを測定する段階と、上記セラピーの有効性を評価する段階とを含むことができる。ここで、セラピーの間における低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたはその減少、あるいは、CD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブの高い比または比の増大は、効果的なセラピーであることを示す。
【0012】
いくつかの実施形態は、真性糖尿病等、被験者における自己免疫疾患に対する治療介入の効果を監視する方法を提供する。これは、自己免疫疾患または疾病に対するセラピーを受ける被験者を選択する段階と、上記被験者からサンプルを抽出する段階と、上記サンプル中のCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを測定する段階および任意でCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを測定する段階と、上記セラピーの有効性を評価する段階とを備える。ここで、セラピーの間における低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたはその減少、あるいは、CD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブの高い比または比の増大は、効果的なセラピーであることを示す。例えばセラピーの開始前に(またはセラピーの開始よりも後だが細胞ポピュレーションの変化の発現よりも前に)、および、継続するセラピーのおよそ3ヶ月および/または6ヶ月の時点で被験者からサンプルが抽出される。
【0013】
他の実施形態においては、自己免疫疾患、前自己免疫疾患、自己免疫疾患への感染し易さ、または、被験者におけるそれらの複数の疾病のうちの1または複数に対するセラピーの有効性を診断する方法が提供される。これは、自己免疫疾患、前自己免疫疾患、または自己免疫疾患への感染し易さを有するまたは有する疑いのある被験者を選択する段階と、上記被験者から抽出されたサンプルの免疫蛍光分析によってCD4ナイーブ(CD45RO-CD62L+)T細胞のレベルを決定する段階と、上記被験者から抽出されたサンプルの免疫蛍光分析によってCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞のレベルを決定する段階と、上記CD4ナイーブT細胞の上記レベルおよび上記CD4セントラルメモリーT細胞の上記レベルを定量的に関連付ける段階とを備える。ここで、CD4セントラルメモリーT細胞に対するCD4ナイーブT細胞の低い比または比の減少、あるいは、CD4セントラルメモリーT細胞の高いレベルまたはレベルの増大は、自己免疫疾患、前自己免疫疾患、自己免疫への感染し易さ、またはそれらの複数の疾病のうちの1または複数に対する治療の有効性の無さを示す。
【0014】
いくつかの実施形態は、自己免疫疾患の発病までの時間を決定する方法を提供する。これは、自己免疫疾病に対して特異的な自己抗体を有する被験者を取得する段階と、上記被験者から1または複数のサンプルを抽出する段階と、上記サンプル中のセントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションレベルを測定し任意でCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションレベルを測定する段階と、CD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションレベルの変化および/またはCD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブの比の変化を、2またはそれ以上のサンプル間で、あるいは、1つのサンプルに対して異なる複数の時点で行われる2またはそれ以上の測定間で算出する段階とを備える。ここで、上記比の減少、および/または、より高いCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、自己免疫疾患の発病までの時間がより短いことと相関する。例としては、セントラルメモリーのLogにおける基準値からの1ユニット分の増加は、それに続く約-0.178ng/mLのC-ペプチド濃度の減少と相関する。これらのT細胞ポピュレーションの定量的変化はC-ペプチドレベルの定量的変化が来ることの前触れであるので、C-ペプチドレベルの減少速度を測定および予測するために、この相関性を使用することができる。
【0015】
いくつかの実施形態は、真性糖尿病に対する様々な臨床試験等、様々な治療介入法の有効性のレベルを決定する方法を提供する。この方法は、被験者にセラピーを開始する段階と、上記被験者からサンプルを抽出する段階と、上記サンプル中のCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを測定する段階および任意でCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを測定する段階と、様々な治療介入の有効性を評価および比較する段階とを備える。ここで比の増大および/またはより低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、より効果的な治療介入と相関する。よって、2またはそれよりも多くの異なる臨床試験の活性治療群に使用される治療介入法の有効性を、信頼性高く且つ定量的に比較する方法が提供される。
【0016】
いくつかの実施形態は、自己免疫に対する標的薬物開発の方法を提供する。これは、1または複数の被験者からサンプルを抽出する段階と、上記サンプル中のセントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを単離する段階および任意でCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを単離する段階と、これらの細胞またはこれらの細胞のサブセットを特異的に標的とする薬物を、それらの疾患特異的特性に基づいて開発する段階とを備える。
【0017】
本実施形態のこれらの特徴およびその他の特徴は、本明細書にて説明および記載され、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに説明するために含まれるものである。本明細書に提示される具体的な複数の実施形態の詳細な記載と組合せてこれらの図面の1または複数を参照することにより、本発明がより良く理解されるであろう。
【0019】
【
図1】基準値と比較した前の訪問におけるT細胞の変化1ユニット当たりのC-ペプチド損失の減少を示すチャートである。セントラルメモリーの減少およびナイーブ/セントラル比の増大の両者が示されている。
【0020】
【
図2】A:ナイーブ、B:セントラルメモリーポピュレーション、C:ナイーブ:セントラルメモリーの比、および、D:Tregポピュレーションを表すものとして特定される、CD4 T細胞サブセットの基準値からのパーセント変化を示す。治療開始("0ヵ月")後、特定の間隔で全て測定されている。最後の治療は24ヶ月目であった。黒丸はアバタセプト治療、白丸はプラシーボである。記号は平均を示し、エラーバーは95%信頼区間を示す。p値および破線は、示されている時点全体にわたって、2つの群が著しく異なることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1型真性糖尿病(T1DM)の最もよく見られる形態は免疫介在性疾患であり、そこでは、自己免疫応答によってインスリン分泌β細胞が破壊される。T細胞が、T1DMに関連した自己免疫において主要な役割を果たす。十分に活性化されるためには、これらの細胞には少なくとも2つの極めて重要な信号が必要であると信じられている。(Marelli-Berg FM, Okkenhaug K, Mirenda V. A Trends Immunol 2007; 28: 267-73。)第1の信号は、抗原提示細胞上のMHC分子の溝中の抗原とT細胞受容体との間の相互作用である。第2の信号は、抗原提示細胞上のCD80およびCD86と、T細胞上のCD28との間の相互作用である。この共刺激性の第2の信号は、細胞の十分な活性化に必要であり、これ無しでは細胞が機能できない。従って、自己免疫および移植用の治療法として共刺激遮断が提案されてきた。(Bluestone JA, St Clair EW, Turka LA. Immunity 2006; 24: 233-38。)
【0022】
ナイーブTリンパ球は、抗原提示細胞(APC-s)によって提示された抗原を探し求めて、二次リンパ器官のT細胞領域へと進む。ひとたび活性化されると、それらは激しく急速に増殖し、炎症を起こした組織へと移動して感染と戦うことができる、あるいは自己免疫の場合は組織を破壊することができるエフェクター細胞を発生する。抗原が一掃されると、刺激を受けた/活性化されたTリンパ球の一部が、通常は保護を与えることができ、2次的抗原投与されると高められた応答を与えることができる循環メモリー細胞として存続する。2つの主なタイプのメモリーT細胞が残る。すなわち、リンパ器官を巡回するセントラルメモリー細胞と、皮膚や消化管等の末梢組織中の見張りとして作用するエフェクターメモリー細胞である。
【0023】
1型糖尿病(T1DM)自己免疫は活性化されたTリンパ球によって駆動される。アバタセプトは共刺激モジュレータであり、十分なTリンパ球活性化を妨げる。最近T1DMと診断された患者における無作為抽出の二重マスク化された試験において、アバタセプトの2年間の投与の効果が評価されてきた。アバタセプトは、ベータ細胞機能の低下を2年間にわたって著しく遅くさせた。この試験からの予備的な結果は、"最近発症した1型糖尿病の患者におけるアバタセプトを用いた共刺激変調:無作為抽出された二重盲検のプラシーボ対照試験"と題する論文として、The Lancetに公開された(2011年6月28日にオンライン出版)。この論文は付録Aとして含まれ、現在出願されている出願の一部分である。
【0024】
複数のT細胞マーカが、糖尿病の進行(残留インスリン分泌性β細胞の破壊)とのあらゆる相関性について分析されてきた。患者の自己免疫性破壊を遅くする糖尿病液性バイオマーカ(GAA、ICA512AA、IAA)を有する化合物を用いて治療された患者については、セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)の比が治療の間基準値から著しく増大し、その後セラピーを終えた後に基準値へと戻ったことが見出された。アバタセプトを用いた治療もまた、CD4 Tセントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)細胞のレベルを低減することによって、C-ペプチドの減少を著しく遅くすることが見出された。
【0025】
糖尿病(残留インスリン分泌性β細胞の破壊)の進行を遅くするための治療がされていない患者については、より高いセントラルメモリーT細胞が、C-ペプチドのその後の減少に著しい関連があることが見出された。よって、治療を受けた群におけるこれらのT細胞の減少は、C-ペプチドの減少におけるより遅い速度と著しい関連があり、このT免疫細胞サブポピュレーション(セントラルメモリーT細胞)は、自己インスリン生成の減少に対する代理免疫マーカとして使用することができる。
【0026】
よって次の仮説が立つ。すなわち、アバタセプトは、ナイーブ細胞が活性化されることを妨げるということ。そして、CD4メモリーT細胞と比較してより高い濃度のCD4ナイーブT細胞の存在は、この化合物が前糖尿病被験者におけるT1DMの発病を遅延させるのに効果的であり、また、T1DM患者におけるインスリン生成の減少を遅延させるのに効果的であることを示すということである。アバタセプトは、CD4ナイーブからCD4セントラルメモリーT細胞への活性化プロセスを妨げるので、CD4セントラルメモリーT細胞レベルを減少させることにより、自己免疫に対するその効果を発揮する。このバイオマーカはまた、(糖尿病抗体と併せた)糖尿病または前糖尿病の進行性を診断するためのアバタセプト等の化合物が存在しない状態で使用することもでき、また、速い進行性の真性糖尿病への感染し易さを決定するために使用することもできる。このマーカは、自己免疫性破壊の強度および病原力、インスリン分泌β細胞の損失速度を監視することができる。
【0027】
本明細書に記載されるバイオマーカ分析は、既知の抗体試験と併用して提供されてよい。そのような組合せは、糖尿病への感染し易さ、並びに、その発病の時間枠の両者を決定することを提供する。臨床的発症後の、自己インスリン生成の完全な損失までの時間、つまり"完全な糖尿病"までの時間を予測することができる。
【0028】
C-ペプチドは、プロインスリンにおける構造的な連結として作用する31個のアミノ酸ペプチドである。これは、プロインスリンが酵素によって開裂される際に、インスリンと共に血液循環中に放出される。よって、T1DMにおいては低いレベルから検出不能なレベルのC-ペプチドが見出されるが、その疾患の初期段階にあるT2DMの患者は、正常より高いインスリン/C-ペプチドレベルをしばしば有する。しかしながら、使用される分析のタイプ、患者の年齢、および、患者が試験の前に絶食していたかどうか等の複数の因子に応じたC-ペプチドレベルに対するいくつかの参照範囲があり得る。ラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫化学発光定量分析(immunochemiluminometric assay)(ICMA)等の任意の既知の分析方法が、C-ペプチドを定量化するために使用されてよい。RIA法においては、ヤギ抗C-ペプチド(goat anti-C-peptide)を使用してC-ペプチドが測定される。プロインスリンも結合させるこの抗体は、インスリンとの交差反応性が無い。試験の分析感度は、概して0.125ng/mlであり、一晩の絶食が必要である。RIA法は、正常成人に対して0.5-2ng/mLの参照範囲を与える。ICMA法においては、約0.3ng/mLの分析感度を与えるために、2つのインキュベーションサイクルを有する競合免疫測定法が使用される。ICMA法は、正常成人に対して0.9-4ng/mLの参照範囲を与え、患者は絶食していなくてはならない。12歳未満の子供に対しては、参照範囲は0.0から0.3ng/mLまでである。10-12歳の子供および17歳およびそれ以上の個人に対しては、参照範囲は0.4から3.3ng/mLまでである(LABCORP)。インスリンを生成するためのインスリン分泌β細胞の能力を評価するために、食物負荷試験が用いられる。最も一般に用いられる試験は混合食負荷試験(MMTT)と呼ばれ、そこでは、2時間または4時間にわたって、いくつかの血液サンプルがC-ペプチド測定用に採取される。
【0029】
本明細書で使用される"被験者"という用語は、自己免疫障害を有するか、または有することが予期される人間またはその他の動物である。従って、いくつかの実施形態において、被験者は本明細書に提供されるような治療処置が必要であろう。好ましい被験者は哺乳動物である。被験者の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、ウマ、サル、イヌ、ネコ、ネズミ、ラット、ウシ、ブタ、ヤギ、およびヒツジを含む。いくつかの実施形態において、"被験者"は概して糖尿病を有するまたは有すると予期されるヒト患者である。いくつかの実施形態において、"被験者"はここ最近200日、100日、または50日以内に糖尿病と診断されたヒト患者である。いくつかの実施形態において、"被験者"は1型真性糖尿病を有するヒト患者である。いくつかの実施形態において、"被験者"は前糖尿病のヒト患者である。いくつかの実施形態において、"被験者"は最近真性糖尿病と診断されたものの、残存ベータ細胞機能をまだ有しているヒト患者である。いくつかの実施形態において、"被験者"は1型糖尿病以外の自己免疫を有するヒト患者である。そのような自己免疫は、これらに限定されるものではないが、関節リウマチおよび多発性硬化症を含む。
【0030】
自己免疫疾患または疾病を有するあるいは有することが予期される被験者、もしくは自己免疫疾患、前自己免疫疾患、または自己免疫疾患への感染し易さを有するあるいは有することが疑われる被験者を、つまり自己免疫疾患に対する複数の診断基準に基づいて被験者を評価することによって選択することができる。これとは代替的にまたはこれに加えて、自己免疫疾患、前自己免疫疾患、または自己免疫疾患への感染し易さとの相関が既知であるような任意の遺伝子マーカ、または自己抗体、またはその他のバイオマーカを評価することによって、この患者のポピュレーションが選択され得る。
【0031】
本明細書で使用される"治療"または"治療する"という用語は、疾患、疾患の兆候、または疾患に向かう傾向を有する患者への治療薬の適用または投与、あるいは、そのような患者から単離された組織または細胞株への治療薬の適用または投与として定義される。治療とは、発病を防ぐこと、進行を遅らせること、疾患、疾患の兆候、または疾患に向かう傾向を逆行させる、またはそうでなくとも改善、改良する、または影響を及ぼすことを包含するものであることが意図される。例えば、本明細書に記載されるものを合わせ持つ被験者(例えば、人間の被験者)の治療は、1型糖尿病の臨床的発症の前、その間、またはその後において、被験者における例えば、膵臓β細胞に対する反応である進行中の自己免疫を遅らせる、改良する、または停止させることができる。
【0032】
本明細書で使用される"糖尿病状態"という用語は、糖尿病、前糖尿病、または糖尿病への感染し易さを包含することが意図される。
【0033】
治療は、臨床試験用に認可された薬剤成分を使用した治療であってよい。または、臨床試験の間あるいは臨床試験の前に起こる治療であってよい。
【0034】
本明細書で使用される、真性糖尿病の進行を遅延させるという文脈において、"進行を遅延させる"という表現は、1型糖尿病の臨床的発症の前または後において、機能している残存ベータ細胞量の損失を遅延させること意味する。遅延は、例えば、1、2、3、4、5、6、9、12、15、18、21、24またはそれ以上の月間数の遅延であってよい。あるいは、2、3、4、またはそれ以上の年数の遅延であってよい。
【0035】
本明細書で使用される"投与する"または"投与"という用語は、その意図される作用部位へと医薬組成物を直接的および間接的に供給するための全ての手段を包含することが意図される。
【0036】
"治療上の有効量"という用語は、ある投薬量および必要な期間において、所望の治療結果を実現するための効果的な量のことを言う。ある医薬組成物の治療上の有効量は、疾患の状態、年齢、性別、個体の体重、および、所望の応答を個体に生じさせる医薬組成物の能力等の因子に従って変動するであろう。治療上の有効量はまた、治療上の有益な効果が、薬剤のあらゆる毒性または有害な効果を上回るような量である。
【0037】
上記の記載は様々な実施形態の例および特定の詳細を与えるものであるが、記載される複数の実施形態の特徴および/または機能のいくつかは、記載される実施形態の範囲から逸脱することなく修正の余地があることは理解されるであろう。上記の記載は、本発明の例示を意図したものであり、その範囲は、ここに添付される請求項の文言によってのみ限定されるものである。
【0038】
実施例
出願者による教示の範囲を限定するものとしては決して解釈されるべきではない以下の実施例を考慮すると、出願者による教示の態様がさらに理解されるであろう。
【0039】
実施例1 -試験
上記で参照した文献Lancet(参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように、1型糖尿病と診断された複数の患者に対してアバタセプトを使用する第2相臨床試験が実施された。適格な患者達は、最近100日以内に1型糖尿病と診断され、少なくとも1つの糖尿病関連の自己抗体(マイクロアッセイされたインスリン抗体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ-65[GAD-65]抗体、膵島細胞抗原-512[ICA-512]抗体、または膵島細胞自己抗体)を有し、0.2nmol/Lまたはそれより高い刺激C-ペプチド濃度を有する。
【0040】
患者達は、参加する場所によって階層化され、アバタセプトを用いた実験的治療を受けるもの、または二重盲検法の手順を使用したプラシーボを受けるものに、2:1の比率で無作為に割り当てられた。アバタセプト(Orencia, Bristol-Myers Squibb, Princeton、ニュージャージー州、米国)は、100mLの0.9%塩化ナトリウム点滴中において、10mg/kgの投与量(1投与当たり最大1000mg)で30分間の静脈内点滴として、1日目、14日目、および28日目、その後は28日ごとに、700日目を最後の投与として(全部で27投与)与えられた。標準的な生理食塩水点滴がプラシーボとして使用された。患者達は、何の前投薬も受けなかった。
【0041】
血液サンプルが一元的に分析された。2サイトのエンザイムイムノアッセイ(two-site immunoenzymometric assay)(Tosoh Bioscience, South San Francisco、カリフォルニア州、米国)を用いて、凍結血漿からC-ペプチド濃度が測定された。血液サンプルを、3ヶ月目、6ヶ月目、12ヶ月目、18ヶ月目、および24ヶ月目、並びに、投与の終わりから6ヵ月後の30ヶ月目に取得した。
【0042】
研究に登録された112人の患者のうち、77人がアバタセプトを用いた実験的治療を受けるように無作為に割り当てられ、35人がプラシーボを受けるように割り当てられた。2年にわたるアバタセプトを用いた共刺激変調は、最近発症した1型糖尿病におけるβ細胞機能の低下を9.6ヶ月遅くするという結果を示した。2年後、アバタセプト治療を受けた群はプラシーボ群に比べて、59%高い自己インスリン生成を有していた。アバタセプト治療を受けた群はまた、(同一のインスリン使用量を用いた)試験全体を通して、著しく良好なHbA1c(血糖制御のレベルの測定)を有した。たとえ恐らく数年間は疾患の進行が続くとしても、初期治療介入の有益な効果は、1型糖尿病の臨床診断時点前後にもT細胞活性化がまだ起こることを示唆している。
【0043】
実施例2 -フローサイトメトリー
実施例1の臨床試験の被験者達からの複数の血液サンプルに対するフローサイトメトリー分析が、アバタセプトおよびプラシーボ治療群の両者に対して、0、3、6、12、および24ヶ月目に実行され、試験の終わりから6ヵ月後(30ヶ月目)に追加の分析が行われた。フローサイトメトリーは、細胞等の顕微粒子を流体の流れの中に浮遊させ、一度に1つの細胞をレーザおよび電子検出装置に通過させることによって、これらを計数および調査する通常の技術である。現在の機器は、通常、複数のレーザおよび蛍光検出器を有している。レーザおよび検出器の数を増加させることにより複数の抗体ラベリングが可能になり、また、それらの表現型マーカによって、目標とするポピュレーションをより正確に識別することができる。
【0044】
フローサイトメトリーの特殊型である蛍光活性化細胞選別(FACS)も分析に使用された。FACSは、それぞれの細胞の特異的な光散乱および蛍光特性に基づいて、一度に1つの細胞ずつ、生体細胞の不均一な混合物を2またはそれ以上の容器中へと選別し、それらを特徴付ける方法を提供する。これは、個々の細胞からの蛍光信号を素早く、客観的且つ定量的に記録すること、並びに、特定の対象となる細胞を物理的に分離することを提供するので、有用な科学機器である。蛍光信号は、FACS前に細胞がインキュベートされた蛍光ラベルされた抗体に由来する。複数のラベリングを用いて、それぞれの抗体が異なるフルオロフォアに結び付けられる。使用される抗体は、対象となる細胞マーカに対して特異的である。CD4+細胞を検出するために、抗CD4抗体がフルオロフォアによってラベルされた。CD45ROの同時検出のために、別のフルオロフォアを用いた特異的抗CD45RO抗体もまた使用された。(蛍光ラベルされた抗CD4抗体および抗CD45RO抗体は、カリフォルニア州サンノゼのBD Biosciences等の様々な配布元から市販されている。)それぞれのフルオロフォアは特徴的なピーク励起および発光波長を有するので、例えば、Becton-Dickinson FACSCaliburまたはFACSAriaシステム等の蛍光活性化細胞選別機器を用いることにより、それらの間を区別することができるようになる。
【0045】
3つの5色の分析において、7つのT細胞マーカが検討された。プラシーボ群においては、これらのマーカのいずれについても基準値からの変化は見られなかった。治療を受けた群においては、CD4 T細胞およびCD8 T細胞、またはCD8 T細胞のナイーブおよびメモリーサブセットには変化が見られなかった。
【0046】
しかしながら、治療の間、セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)比は、アバタセプト群において基準値から著しく増大し、その後、セラピーを止めると基準値へと戻った。プラシーボ群に対する試験の間、より高いCD4セントラルメモリーT細胞が、C-ペプチドのその後の減少と著しい関連があった。アバタセプト群におけるこれらのT細胞の減少は、より遅い速度のC-ペプチドの減少と著しい関連があった。
【0047】
この研究はまた、制御性T細胞ポピュレーション(CD4+CD25high)がアバタセプト群において基準値から減少し、その後セラピーを止めると基準値へと戻るということも見出した。しかしながら、これらの制御性T細胞の減少は、ナイーブ/メモリーポピュレーションの変化またはC-ペプチドレベルの変化とは相関性を示さなかった。
【0048】
表1は、3、6、12、および24ヶ月目に対する、CD4セントラルメモリーT細胞に対するCD4ナイーブT細胞の比に関する、logで与えられた基準値からの最小二乗平均変化、および、基準値からの標準偏差並びにp値を与える。基準値から30ヶ月目は、被験者がセラピーを止めており、30ヶ月目データとして与えられる。薬剤群およびプラシーボ群の間のp値は、同一の訪問時における複数の群間のものである。
【表1】
【0049】
これらのサンプルおよび時点に対してC-ペプチド濃度もまた測定された。両方の群のデータを解析すると、セントラルメモリーに対するCD4 T細胞ナイーブ比と、CD4セントラルメモリーT細胞レベルとの両者における事前の変化が、T1DMにおける、続くC-ペプチドの損失を予測した(
図1)。これに対し、同時に行ったT細胞測定は、基準値からのC-ペプチド変化とは著しい関連は無かった。セントラルメモリーT細胞の増加は、C-ペプチドのその後の減少(自己インスリン生成)と著しい関連があることが見出された。具体的には、Logセントラルメモリー比における基準値からの1ユニット分の増加は、平均して-0.178ng/mlのC-ペプチドの減少と見積もられる。
図1はCD4セントラルメモリーT細胞の減少およびCD4ナイーブ/セントラルメモリーT細胞比の増大がC-ペプチド損失の減少をもたらすことを提示している。ユニット数の変化を比較して、自己免疫プロセスの病原力、および、様々な治療介入法の有効性のレベルをも示す評価尺度を提供することを定量的に示すことができる。続いて、様々な治療介入法の有効性のレベルが、ユニット数に基づいてランク付けされる。
【0050】
我々が検討した時間差は3ヶ月または6ヶ月であった。よって、我々の目的のためには、その後のC-ペプチド損失またはその欠如を評価するために、この細胞ポピュレーションについて2つの異なる測定が必要である。これらのT細胞ポピュレーション(CD4ナイーブ/セントラルメモリー細胞比およびCD4セントラルメモリー細胞レベルの両者)の変化は、それに続くC-ペプチド損失を予測する。
図2のA-Dは、基準値と比較した、ナイーブ、メモリー、およびナイーブ/メモリーT細胞の経時的な変化を示す。これらは、30ヶ月にわたって起こるそれらの変化を示す。我々は3ヶ月および6ヶ月で検討したが、
図2に見られるように、その他の時間および時間間隔も同様に有効であり、治療の前に行われた基準値測定、および/または、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、21、24、27、30、33、36ヶ月目、またはそれ以上の月数における測定を含んでよい。
【0051】
本明細書で使用されるセクションの見出しは構成上の目的のためだけであって、記載される主題を限定するものとしては決して解釈されるべきではない。出願者の教示が様々な実施形態と関連付けて記載されているが、これは、出願者の教示がそのような実施形態に限定されるべきであることを意図したものではない。そうではなく、この分野の当業者には理解されるであろうが、出願者の教示は、様々な代替手段、修正、および均等物を包含するものである。以下に本発明の実施形態の例を項目として挙げる。
【0052】
[項目1]
被験者の自己免疫疾患または疾病に対するセラピーの有効性を決定する方法であって、
自己免疫疾患または疾病に対するセラピーを受ける被験者を選択する段階と、
被験者からサンプルを抽出する段階と、
サンプル中のCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを測定する段階および任意でCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを測定する段階と、
セラピーの有効性を評価する段階と、
を備え、
セラピーの間における低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベル、あるいは、CD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの高い比または比の増大は、効果的なセラピーであることを示す方法。
[項目2]
サンプルは、測定する段階の前に、ラベルされた抗CD45RO抗体およびラベルされた抗CD62L抗体によってインキュベートされる項目1に記載の方法。
[項目3]
測定する段階は、サンプルにフローサイトメトリーを行う段階を有する項目1または項目2に記載の方法。
[項目4]
サンプルは血液サンプルである項目1から項目3のいずれか1項に記載の方法。
[項目5]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは比の増大は、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからのレベルまたは比と比較されたものである項目1から項目4のいずれか1項に記載の方法。
[項目6]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは比の増大は、標準化されたレベルまたは比と比較されたもの、あるいは、セラピーを開始する前に抽出されたサンプルから得られたレベルまたは比と比較されたものである項目1から項目4のいずれか1項に記載の方法。
[項目7]
セラピーの間における低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、効果的なセラピーであることを示す項目1から項目6のいずれか1項に記載の方法。
[項目8]
測定する段階は、CD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションおよびCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの両者を測定する段階を有し、セラピーの間におけるCD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの高い比または比の増大は、効果的なセラピーであることを示す項目1から項目7のいずれか1項に記載の方法。
[項目9]
セラピーは糖尿病状態に対するものである項目1から項目8のいずれか1項に記載の方法。
[項目10]
糖尿病関連の自己抗体の存在を決定する段階をさらに備える項目9に記載の方法。
[項目11]
糖尿病状態は1型真性糖尿病である項目9に記載の方法。
[項目12]
自己免疫疾患、前自己免疫疾患、自己免疫疾患への感染し易さ、または、被験者におけるこれらの疾患のうちの1または複数に対するセラピーの有効性を診断する方法であって、
自己免疫疾患、前自己免疫疾患、または自己免疫疾患への感染し易さを有するまたは有する疑いのある被験者を選択する段階と、
被験者から抽出されたサンプルの免疫蛍光分析により、CD4ナイーブ(CD45RO-CD62L+)T細胞のレベルを決定する段階と、
被験者から抽出されたサンプルの免疫蛍光分析により、CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞のレベルを決定する段階と、
CD4ナイーブT細胞のレベルおよびCD4セントラルメモリーT細胞のレベルを定量的に関連付ける段階と、
を備え、
CD4セントラルメモリーT細胞に対するCD4ナイーブT細胞の低い比または比の減少、あるいは、高いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは増大したCDセントラルメモリーT細胞レベルは、自己免疫疾患、前自己免疫疾患、自己免疫への感染し易さ、またはこれらの疾患のうちの1または複数に対する治療の有効性の無さを示す方法。
[項目13]
自己免疫疾患は真性糖尿病または前糖尿病であり、
CD4セントラルメモリーT細胞に対するCD4ナイーブT細胞の低い比または比の減少、あるいは、高いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは増大したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、糖尿病、前糖尿病、または真性糖尿病への感染し易さを示す項目12に記載の方法。
[項目14]
グルタミン酸デカルボキシラーゼ-65抗体、膵島細胞抗原-512抗体、インスリン抗体、またはその他の膵島細胞自己抗体から選択される糖尿病関連抗体の存在を決定する段階をさらに備える項目13に記載の方法。
[項目15]
疾患は1型真性糖尿病である項目12から項目14のいずれか1項に記載の方法。
[項目16]
サンプルは、ラベルされた抗CD45RO抗体によって分析の前にインキュベートされる項目12から項目15のいずれか1項に記載の方法。
[項目17]
決定する段階は、サンプルにフローサイトメトリーを行う段階を有する項目12から項目16のいずれか1項に記載の方法。
[項目18]
サンプルは血液サンプルである項目12から項目17のいずれか1項に記載の方法。
[項目19]
レベルまたは比の減少および増大の少なくとも一方は、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからのレベルまたは比と比較されたものである、あるいは、標準化されたレベルまたは比と比較されたものである項目12から項目18のいずれか1項に記載の方法。
[項目20]
被験者を取得する段階と、
被験者から1または複数のサンプルを抽出する段階と、
1または複数のサンプル中のCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションレベルを測定する段階および任意でCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションレベルを測定する段階と、
CD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションレベルの変化およびCD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの比の変化の少なくとも一方を、2またはそれ以上のサンプル間で、あるいは、1つのサンプルに対して異なる複数の時点で行われる2またはそれ以上の測定間で算出する段階と、
を備え、
比の減少、および、より高いCD4セントラルメモリーT細胞レベルの少なくとも一方は、自己免疫疾患の発病までのより短い時間または治療介入の効果が低いことのどちらかと相関する、
自己免疫疾患の発病までの時間または異なる複数の治療介入法の有効性のレベルを決定する方法。
[項目21]
被験者は、自己免疫疾患に対して特異的な自己抗体またはその他のバイオマーカを有する項目20に記載の方法。
[項目22]
被験者は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ-65抗体、膵島細胞抗原-512抗体、インスリン抗体、またはその他の膵島細胞自己抗体から選択される少なくとも1つの糖尿病関連抗体を有し、
比の減少、および、より高いCD4セントラルメモリーT細胞レベルの少なくとも一方は、真性糖尿病の発病までのより短い時間と相関する項目20または項目21に記載の方法。
[項目23]
セントラルメモリーT細胞のLogにおける基準値からの1ユニット分の増加は、約-0.178ng/mLのC-ペプチド濃度の減少と相関する項目20から項目22のいずれか1項に記載の方法。
[項目24]
2ヶ月から12か月までの間の間隔で離れた少なくとも2つのサンプルが被験者から抽出される項目20から項目23のいずれか1項に記載の方法。
[項目25]
3ヶ月から6ヶ月までの間の間隔で離れた少なくとも2つのサンプルが被験者から抽出される項目24に記載の方法。
[項目26]
被験者から抽出されたサンプルは、1ヶ月から6ヶ月までの間の間隔で離れた少なくとも2つの異なる時点において測定される項目20から項目23のいずれか1項に記載の方法。
[項目27]
サンプルは、測定する段階の前に、ラベルされた抗CD45RO抗体によってインキュベートされる項目20から項目26のいずれか1項に記載の方法。
[項目28]
測定する段階は、サンプルにフローサイトメトリーを行う段階を有する項目20から項目27のいずれか1項に記載の方法。
[項目29]
サンプルは血液サンプルである項目20から項目28のいずれか1項に記載の方法。
[項目30]
レベルの増大および比の減少の少なくとも一方は、セラピーが開始される前のレベルまたは比と比較されたもの、もしくは、標準化されたレベルまたは比と比較されたものである項目20から項目29のいずれか1項に記載の方法。
[項目31]
レベルの増大および比の減少の少なくとも一方は、同一のサンプルからの以前の時点でのレベルまたは比と比較されたものである項目20から項目29のいずれか1項に記載の方法。
[項目32]
1または複数の被験者からサンプルを抽出する段階と、
サンプル中のセントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを単離する段階および任意でCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを単離する段階と、
これらの細胞またはこれらの細胞のサブセットを特異的に標的とする1または複数の薬物を、これらの疾患特異的特性に基づいて開発する段階と、
を備える、
自己免疫に対する標的薬物開発の方法。
[項目33]
方法は、糖尿病に対する標的薬物開発の方法である項目32に記載の方法。
【0053】
また、本発明の他の実施形態の例を項目として挙げる。
[項目1]
被験者から抽出されたサンプルに対し、被験者の糖尿病状態に対するセラピーの有効性を決定する方法であって、
CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
セラピーの有効性を評価する段階と、
を備え、
セラピーの間における、CD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの高い比または比の増大は、セラピーの有効性を示す、方法。
[項目2]
低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、セラピーの有効性を示す、項目1に記載の方法。
[項目3]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからのレベルと比較されたものである、項目2に記載の方法。
[項目4]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、標準化されたレベルと比較されたものである、項目2に記載の方法。
[項目5]
低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、セラピーを開始する前に被験者から抽出されたサンプルにおけるレベルと比較されたものである、項目2に記載の方法。
[項目6]
サンプルは、セラピーの開始後に被験者から抽出されたものである、項目1から5のいずれか1項に記載の方法。
[項目7]
セラピーの間における、低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、効果的なセラピーであることを示す、項目1から6のいずれか1項に記載の方法。
[項目8]
比の増大は、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからの、レベルまたは比と比較されたものである、項目1から7のいずれか1項に記載の方法。
[項目9]
比の増大は、標準化されたレベルまたは比と比較されたものである、項目1から7のいずれか1項に記載の方法。
[項目10]
高い比または比の増大は、セラピーを開始する前に被験者から抽出されたサンプルにおけるレベルと比較されたものである、項目1から7のいずれか1項に記載の方法。
[項目11]
サンプルは、測定する段階の前に、蛍光ラベルされた抗CD45RO抗体および蛍光ラベルされた抗CD62L抗体とインキュベートされる、項目1から項目10のいずれか1項に記載の方法。
[項目12]
被験者の糖尿病状態に対するセラピーの有効性を決定する方法であって、
第1のサンプルと第2のサンプルはそれぞれ、セラピーの開始の前後に、被験者から抽出されたものであり、
方法は、
第1と第2のサンプルにおける、CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションと、CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションとを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
第1と第2のサンプルにおける、CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションと、CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションとを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
セラピーの有効性を評価する段階と、
を備え、
第1のサンプルと比較して、第2のサンプルにおけるCD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの高い比もしくは比の増大は、セラピーの有効性を示す、方法。
[項目13]
サンプルは、測定する段階の前に、蛍光ラベルされた抗CD45RO抗体および蛍光ラベルされた抗CD62L抗体とインキュベートされる、項目12に記載の方法。
[項目14]
測定する段階は、サンプルにフローサイトメトリーを行う段階を有する、項目1から項目13のいずれか1項に記載の方法。
[項目15]
CD4 T細胞サブポピュレーションは、蛍光活性化細胞選別(FACS)により測定される、項目14に記載の方法。
[項目16]
サンプルは血液サンプルである、項目1から項目15のいずれか1項に記載の方法。
[項目17]
糖尿病関連の自己抗体の存在を決定する段階をさらに備える、項目1から16のいずれか1項に記載の方法。
[項目18]
糖尿病状態は1型真性糖尿病である、項目1から17のいずれか1項に記載の方法。
また、さらに本発明の他の実施形態の例を項目として挙げる。
【0054】
[項目1]
糖尿病状態の発病までの時間を決定する方法であって、
糖尿病状態に対して特異的な自己抗体を有する被験者を取得する段階と、
上記被験者から抽出された1または複数のサンプルに対し、
上記サンプル中のCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
上記サンプル中のCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
CD4セントラルメモリーT細胞細胞サブポピュレーションレベルの変化およびCD4セントラルメモリーT細胞細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの比の変化を、2またはそれ以上のサンプル間で、あるいは、1つのサンプルに対して異なる複数の時点で行われる、2またはそれ以上の測定間で算出する段階とを備え、
CD4セントラルメモリーT細胞細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの高い比または比の増加は、糖尿病状態の発病までの時間がより長いと決定する、方法。
[項目2]
低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、自己免疫疾患の発病までの時間がより長いと決定する、項目1に記載の方法。
[項目3]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからのCD4セントラルメモリーT細胞レベルと比較されたものである、項目2に記載の方法。
[項目4]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、標準化されたCD4セントラルメモリーT細胞レベルと比較されたものである、項目2に記載の方法。
[項目5]
比の増加は、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからの、CD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは比と比較されたものである、項目1から4のいずれか1項に記載の方法。
[項目6]
比の増加は、標準化されたCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは比と比較されたものである、項目1から5のいずれか1項に記載の方法。
[項目7]
サンプルは、測定する段階の前に、蛍光ラベルされた抗CD45RO抗体および蛍光ラベルされた抗CD62L抗体とインキュベートされる、項目1から項目6のいずれか1項に記載の方法。
[項目8]
測定する段階は、サンプルにフローサイトメトリーを行う段階を有する、項目1から項目7のいずれか1項に記載の方法。
[項目9]
サンプルは血液サンプルである、項目1から項目8のいずれか1項に記載の方法。
[項目10]
糖尿病状態は1型真性糖尿病である、項目1から9のいずれか1項に記載の方法。
【0055】
[項目1]
被験者から抽出されたサンプルに対し、被験者の関節リウマチまたは多発性硬化症に対するセラピーの有効性を決定する方法であって、
CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
セラピーの有効性を評価する段階と、
を備え、
セラピーの間における、CD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの高い比または比の増大は、セラピーの有効性を示す、方法。
[項目2]
低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、セラピーの有効性を示す、項目1に記載の方法。
[項目3]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからのレベルと比較されたものである、項目2に記載の方法。
[項目4]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、標準化されたレベルと比較されたものである、項目2に記載の方法。
[項目5]
低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、セラピーを開始する前に被験者から抽出されたサンプルにおけるレベルと比較されたものである、項目2に記載の方法。
[項目6]
サンプルは、セラピーの開始後に被験者から抽出されたものである、項目1から5のいずれか1項に記載の方法。
[項目7]
セラピーの間における、低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、効果的なセラピーであることを示す、項目1から6のいずれか1項に記載の方法。
[項目8]
比の増大は、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからの、レベルまたは比と比較されたものである、項目1から7のいずれか1項に記載の方法。
[項目9]
比の増大は、標準化されたレベルまたは比と比較されたものである、項目1から7のいずれか1項に記載の方法。
[項目10]
高い比または比の増大は、セラピーを開始する前に被験者から抽出されたサンプルにおけるレベルと比較されたものである、項目1から7のいずれか1項に記載の方法。
[項目11]
サンプルは、測定する段階の前に、蛍光ラベルされた抗CD45RO抗体および蛍光ラベルされた抗CD62L抗体とインキュベートされる、項目1から項目10のいずれか1項に記載の方法。
[項目12]
被験者の関節リウマチまたは多発性硬化症に対するセラピーの有効性を決定する方法であって、
第1のサンプルと第2のサンプルはそれぞれ、セラピーの開始の前後に、被験者から抽出されたものであり、
方法は、
第1と第2のサンプルにおける、CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションと、CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションとを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
第1と第2のサンプルにおける、CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションと、CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションとを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
セラピーの有効性を評価する段階と、
を備え、
第1のサンプルと比較して、第2のサンプルにおけるCD4セントラルメモリーT細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの高い比もしくは比の増大は、セラピーの有効性を示す、方法。
[項目13]
サンプルは、測定する段階の前に、蛍光ラベルされた抗CD45RO抗体および蛍光ラベルされた抗CD62L抗体とインキュベートされる、項目12に記載の方法。
[項目14]
測定する段階は、サンプルにフローサイトメトリーを行う段階を有する、項目1から項目13のいずれか1項に記載の方法。
[項目15]
CD4 T細胞サブポピュレーションは、蛍光活性化細胞選別(FACS)により測定される、項目14に記載の方法。
[項目16]
サンプルは血液サンプルである、項目1から項目15のいずれか1項に記載の方法。
[項目17]
関節リウマチまたは多発性硬化症関連の自己抗体の存在を決定する段階をさらに備える、項目1から16のいずれか1項に記載の方法。
[項目18]
関節リウマチまたは多発性硬化症の発病までの時間を決定する方法であって、
関節リウマチまたは多発性硬化症に対して特異的な自己抗体を有する被験者を取得する段階と、
上記被験者から抽出された1または複数のサンプルに対し、
上記サンプル中のCD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
CD4セントラルメモリー(CD45RO+CD62L+)T細胞サブポピュレーションを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
上記サンプル中のCD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルでラベリングする段階と、
CD4 T細胞ナイーブ(CD45RO-CD62L+)サブポピュレーションを、蛍光ラベルを用いて測定する段階と、
CD4セントラルメモリーT細胞細胞サブポピュレーションレベルの変化およびCD4セントラルメモリーT細胞細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの比の変化を、2またはそれ以上のサンプル間で、あるいは、1つのサンプルに対して異なる複数の時点で行われる、2またはそれ以上の測定間で算出する段階とを備え、
CD4セントラルメモリーT細胞細胞サブポピュレーションに対するCD4 T細胞ナイーブサブポピュレーションの高い比または比の増加は、関節リウマチまたは多発性硬化症の発病までの時間がより長いと決定する、方法。
[項目19]
低いCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、関節リウマチまたは多発性硬化症の発病までの時間がより長いと決定する、項目18に記載の方法。
[項目20]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからのCD4セントラルメモリーT細胞レベルと比較されたものである、項目19に記載の方法。
[項目21]
減少したCD4セントラルメモリーT細胞レベルは、標準化されたCD4セントラルメモリーT細胞レベルと比較されたものである、項目19に記載の方法。
[項目22]
比の増加は、異なる複数の時点において抽出されたサンプルからの、CD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは比と比較されたものである、項目18から21のいずれか1項に記載の方法。
[項目23]
比の増加は、標準化されたCD4セントラルメモリーT細胞レベルまたは比と比較されたものである、項目18から22のいずれか1項に記載の方法。
[項目24]
サンプルは、測定する段階の前に、蛍光ラベルされた抗CD45RO抗体および蛍光ラベルされた抗CD62L抗体とインキュベートされる、項目18から項目23のいずれか1項に記載の方法。
[項目25]
測定する段階は、サンプルにフローサイトメトリーを行う段階を有する、項目18から項目24のいずれか1項に記載の方法。
[項目26]
サンプルは血液サンプルである、項目18から項目25のいずれか1項に記載の方法。