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特開2024-150708走行経路作成方法及び走行経路作成システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150708
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】走行経路作成方法及び走行経路作成システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024120903
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2020200126の分割
【原出願日】2020-12-02
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187562
【弁理士】
【氏名又は名称】沼田 義成
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀崇
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄司
(72)【発明者】
【氏名】西井 康人
(72)【発明者】
【氏名】村山 昌章
(57)【要約】
【課題】作業効率の良い走行経路の作成を可能にする走行経路作成方法及び走行経路作成システムを提供する。
【解決手段】
走行経路作成方法は、コンバイン1の自動刈取走行の走行パターンとして、作業領域に対して複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りと、作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈りと、の何れかを選択し、選択した走行パターンに基づいて自動刈取走行の走行経路を作成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバインの自動刈取走行の走行パターンとして、作業領域に対して複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りと、前記作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈りと、の何れかを選択し、
選択した前記走行パターンに基づいて自動刈取走行の走行経路を作成する、走行経路作成方法。
【請求項2】
前記走行パターンとして前記往復刈りと前記回り刈りとの何れかを選択可能に表示部に表示する、請求項1に記載の走行経路作成方法。
【請求項3】
前記往復刈りの旋回方法として前進と後進との切り返しを行うか否かを選択する、請求項1又は2に記載の走行経路作成方法。
【請求項4】
前記往復刈りの旋回方法として前進と後進との切り返しを行うか否かを選択可能に表示部に表示する、請求項3に記載の走行経路作成方法。
【請求項5】
前記走行パターンとして前記往復刈りが選択された場合に、設定された中割の配置に基づいて前記走行経路を作成する、請求項1~4の何れかに記載の走行経路作成方法。
【請求項6】
前記中割の回数を調整可能に表示部に表示する、請求項5に記載の走行経路作成方法。
【請求項7】
コンバインの自動刈取走行の走行パターンとして、作業領域に対して複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りと、前記作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈りと、の何れかを選択する選択部と、
前記選択部が受け付けた前記走行パターンに基づいて自動刈取走行の走行経路を作成する走行経路作成部と、を備える、走行経路作成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行経路に従って自動刈取走行を行うコンバインであって、圃場の状態に応じた中割回数に基づいて走行経路を作成するコンバインに対して、自動走行及び自動刈取を行う走行経路を作成する走行経路作成方法及び走行経路作成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈の刈取を行うコンバインは、GPS等の衛星測位システムを利用して取得した自装置の位置情報に基づいて、予め設定された走行経路に従って自動刈取走行を行うことができる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される作業車自動走行システムは、作業地を、外周領域と、作業対象領域を中割り領域によって複数に分割して得られた区画とに設定する領域設定部と、区画を網羅する走行経路を構成する多数の走行経路要素と、外周領域及び中割り領域を周回する周回経路を構成する周回経路要素とを読み出し可能に管理する経路管理部と、区画のそれぞれが少なくとも1台の作業車で作業走行されるように、自車位置と他車の作業走行状態とに基づいて、次に走行すべき次走行経路要素又は次周回経路要素を選択する経路要素選択部と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6689738号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圃場において複数の条列に植えられた穀稈から作物の収穫作業を行うとき、例えば、コンバインによって、条方向に沿った複数の直線行程を往復走行し、各行程毎に所定条数の条列の刈取作業をする往復刈りを行う。このような往復刈りの自動刈取走行を行う場合、コンバインは、複数の直線行程を往復走行する走行経路を予め作成する。また、走行経路を作成するとき、上記したように圃場の作業領域に対して中割を設定することがあり、例えば、作業者は、作業領域を目視して中割の回数及び位置を任意に決定する。コンバインは、作業者の操作に応じて入力した中割の回数及び位置に基づいて作業領域を複数の分割領域に分割し、複数の分割領域に亘る走行経路を作成する。
【0006】
しかし、圃場に多数の条列の穀稈が植えられている場合、作業者は、圃場を目視しただけでは、条数や配列方向の長さを正確に視認することが困難である。従って、作業者は、自動刈取走行の作業効率を向上するように、分割領域の開始行程及び最終行程の位置及び進行方向を判断することは困難であり、効率の良い中割の回数及び位置を判断することが困難である。
【0007】
例えば、作業者が中割の回数をより少なく決定してしまうと、分割領域が条の配列方向に長くなって、分割領域間を移動する空走経路が長くなってしまう問題が生じる。また、作業者は、条の配列方向における分割領域の長さを、コンバインの刈取幅(例えば、最大刈取条数)の倍数に決定することは困難であり、最大刈取条数よりも少ない1条や2条等の刈取条数の行程が分割領域に設定される問題が生じる。なお、このような少ない条数の条列に対して刈取作業を行うと、刈取量の減少や既刈領域の走行に起因して、脱穀精度の低下や排藁の巻き込み等の不具合が生じるおそれがある。
【0008】
なお、特許文献1に記載される技術では、中割り領域を作り出す作業を行うが、条数や配列方向の長さ、作業効率を考慮していないので、上記のような問題が生じる恐れがある。
【0009】
本発明は、作業効率の良い走行経路の作成を可能にする走行経路作成方法及び走行経路作成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の走行経路作成方法は、コンバインの自動刈取走行の走行パターンとして、作業領域に対して複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りと、前記作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈りと、の何れかを選択し、選択した前記走行パターンに基づいて自動刈取走行の走行経路を作成する
【0011】
上記の本発明の走行経路作成方法は、前記走行パターンとして前記往復刈りと前記回り刈りとの何れかを選択可能に表示部に表示する
【0012】
上記の本発明の走行経路作成方法は、前記往復刈りの旋回方法として前進と後進との切り返しを行うか否かを選択する
【0013】
上記の本発明の走行経路作成方法は、前記往復刈りの旋回方法として前進と後進との切り返しを行うか否かを選択可能に表示部に表示する
【0014】
上記の本発明の走行経路作成方法は、前記走行パターンとして前記往復刈りが選択された場合に、設定された中割の配置に基づいて前記走行経路を作成する
【0015】
上記の本発明の走行経路作成方法は、前記中割の回数を調整可能に表示部に表示する。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の走行経路作成システムは、コンバインの自動刈取走行の走行パターンとして、作業領域に対して複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りと、前記作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈りと、の何れかを選択する選択部と、前記選択部が受け付けた前記走行パターンに基づいて自動刈取走行の走行経路を作成する走行経路作成部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業効率の良い走行経路の作成を可能にする走行経路作成方法及び走行経路作成システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るコンバインの側面図である。
図2】本発明の実施形態に係るコンバインの移動局及び基地局のブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンバインのブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて作業領域に中割回数を設定する動作例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係るコンバインの動作例の圃場を、行程と共に示す平面図である。
図6】本発明の実施形態に係るコンバインの動作例の圃場を、行程及び分割領域と共に示す平面図である。
図7】本発明の実施形態に係るコンバインの動作例の圃場を、分割領域及び走行経路と共に示す平面図である。
図8】本発明の実施形態に係るコンバインにおいて中割設定画面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態によるコンバイン1について説明する。コンバイン1は、自動運転又は手動操作によって、作業対象の圃場を走行すると共に、圃場において複数の条列に植えられた穀稈から作物の収穫作業を行うために刈取等の作業を行うものである。コンバイン1は、例えば、自動運転によって操向を制御する一方、手動操作に応じて走行速度を制御するオート作業や、自動運転によって操向及び走行速度を制御する無人作業を行うように構成され、圃場内で自律して走行、旋回及び作業することができる。
【0020】
コンバイン1は、穀稈の複数の条列に対して、最大刈取条数以内の条列を有する一行程を走行しながらそれらの条列の刈取作業を行う。本発明では、最大刈取条数を限定しないが、本実施形態では、最大刈取条数が6条である6条刈りのコンバイン1について説明する。
【0021】
コンバイン1は、所定の走行パターンの走行経路を予め作成し、その走行経路に従って自動刈取走行を行うように構成される。例えば、コンバイン1は、複数の条列を有する作業領域に対して、複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りや、作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈り等の走行パターンの走行経路を作成可能である。また、コンバイン1は、往復刈りの走行経路を作成する場合、条方向に沿った所定の中割回数の中割を設定し、作業領域を中割で複数の分割領域に分割して、各分割領域の往復刈りを配列順に行うように複数の分割領域に亘る走行経路を作成する。
【0022】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2と、刈取部3と、脱穀部4と、選別部5と、貯留部6と、排藁処理部7と、動力部8と、操縦部9とを備え、いわゆる自脱型コンバインで構成される。コンバイン1は、走行部2によって走行しつつ、刈取部3によって刈り取った穀稈を脱穀部4で脱穀し、選別部5で穀粒を選別して貯留部6に貯える。コンバイン1は、脱穀後の排藁を排藁処理部7によって処理する。コンバイン1は、動力部8が供給する動力によって、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を駆動する。
【0023】
走行部2は、機体フレーム10の下方に設けられていて、左右一対のクローラ式走行装置11と、トランスミッション(図示せず)とを備える。走行部2は、動力部8のエンジン27から伝達される動力(例えば、回転動力)によって、クローラ式走行装置11のクローラを回転することで、コンバイン1を前後方向に走行させたり、左右方向に旋回させたりする。トランスミッションは、動力部8の動力(回転動力)をクローラ式走行装置11へ伝達するものであり、回転動力を変速することもできる。
【0024】
刈取部3は、走行部2の前方に設けられ、所定の刈取幅に含まれる最大刈取条数以内の条列の刈取作業を行う。刈取部3は、デバイダ13と、引起装置14と、切断装置15と、搬送装置16とを備える。デバイダ13は、圃場の穀稈を一条毎に分草して、最大刈取条数以内の所定条数分の穀稈を引起装置14へ案内する。引起装置14は、デバイダ13によって案内された穀稈を引き起こす。切断装置15は、引起装置14によって引き起こされた穀稈を切断する。搬送装置16は、切断装置15によって切断された穀稈を脱穀部4へ搬送する。
【0025】
脱穀部4は、刈取部3の後方に設けられる。脱穀部4は、フィードチェーン18と、扱胴19とを備える。フィードチェーン18は、刈取部3の搬送装置16から搬送された穀稈を脱穀のために搬送し、更に脱穀後の穀稈、すなわち排藁を排藁処理部7へと搬送する。扱胴19は、フィードチェーン18によって搬送されている穀稈を脱穀する。
【0026】
選別部5は、脱穀部4の下方に設けられる。選別部5は、揺動選別装置21と、風選別装置22と、穀粒搬送装置(図示せず)と、藁屑排出装置(図示せず)とを備える。揺動選別装置21は、脱穀部4から落下した脱穀物をふるいにかけて穀粒と藁屑等に選別する。風選別装置22は、揺動選別装置21によって選別された脱穀物を送風によって更に穀粒と藁屑等に選別する。穀粒搬送装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された穀粒を貯留部6へ搬送する。藁屑排出装置は、揺動選別装置21及び風選別装置22によって選別された藁屑等を機外へ排出する。
【0027】
貯留部6は、脱穀部4の右側方に設けられる。貯留部6は、グレンタンク24と、排出装置25とを備える。グレンタンク24は、選別部5から搬送されてきた穀粒を貯留する。排出装置25は、オーガ等で構成され、グレンタンク24に貯留されている穀粒を任意の場所に排出する。
【0028】
排藁処理部7は、脱穀部4の後方に設けられる。排藁処理部7は、排藁搬送装置(図示せず)と、排藁切断装置(図示せず)とを備える。排藁搬送装置は、脱穀部4のフィードチェーン18から搬送された排藁を排藁切断装置へ搬送する。排藁切断装置は、排藁搬送装置によって搬送された排藁を切断して機外へ排出し、例えば、コンバイン1の後方の右側寄りに排出する。
【0029】
動力部8は、走行部2の上方、且つ、貯留部6の前方に設けられる。動力部8は、回転動力を発生させるエンジン27を備える。動力部8は、エンジン27が発生させた回転動力を、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7に伝達する。
【0030】
操縦部9は、動力部8の上方に設けられる。操縦部9は、運転席29と、複数の操作具(図示せず)とを備える。運転席29は、作業者が座る座席であり、例えば、右側に設けられる。操作具は、コンバイン1の進行方向を変更し、すなわちコンバイン1を操向操作するためのハンドルを含み、作業者は、ハンドル等の操作具を操作することにより、コンバイン1の走行や作業を操縦できる。また、操作具は、エンジン27の回転速度、すなわちコンバイン1の走行部2の走行速度を調整するアクセルや、刈取部3を昇降させる昇降スイッチを含む。
【0031】
コンバイン1は、コンバイン1の周囲の画像を撮影する機体カメラ32(図3参照)を備えている。機体カメラ32は、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。
【0032】
コンバイン1は、図2に示すように、GPS等の衛星測位システムを利用してコンバイン1の位置情報を取得する移動局34を備えている。移動局34は、例えば、移動通信機35と、移動GPSアンテナ36と、データ受信アンテナ37とを備える。移動通信機35は、移動GPSアンテナ36によってGPS衛星と通信することにより、移動局34の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を取得する。
【0033】
なお、コンバイン1の作業対象となる圃場の周囲の畦等には、図2に示すように、基地局39が設置されていてもよい。本実施形態では、コンバイン1の位置情報の補正のために基地局39を利用する例を説明するが、基地局39を備えなくてもよく、基地局39による位置情報の補正を行わなくてもよい。基地局39は、固定通信機40と、固定GPSアンテナ41と、データ送信アンテナ42とを備える。固定通信機40は、固定GPSアンテナ41によってGPS衛星と通信することにより、基地局39の位置情報を取得する。固定通信機40は、基地局39の位置情報に基づく補正情報を、データ送信アンテナ42を介して移動通信機35へ送信する。
【0034】
また、基地局39は、圃場を撮影する固定カメラ43を備えていてもよい。固定カメラ43は、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。固定通信機40は、固定カメラ43が撮影した画像を取得して、データ送信アンテナ42を介して移動通信機35へ送信する。本実施形態では、圃場情報の取得のために基地局39の固定カメラ43を利用する例を説明するが、固定カメラ43を備えなくてもよく、固定カメラ43による圃場情報の取得を行わなくてもよい。
【0035】
移動局34の移動通信機35は、データ受信アンテナ37を介して基地局39の固定通信機40と無線通信を行う。移動通信機35は、補正情報を固定通信機40から受信し、補正情報に基づいて移動局34の位置情報、すなわちコンバイン1の位置情報を補正する。移動通信機35は、固定カメラ43が撮影した圃場画像を固定通信機40から受信する。
【0036】
次に、コンバイン1の制御装置50について図3を参照して説明する。
【0037】
制御装置50は、CPU等のコンピュータで構成され、ROM、RAM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等の記憶部51に接続されている。記憶部51は、コンバイン1の各種構成要素及び各種機能を制御するためのプログラムやデータを記憶し、制御装置50が、記憶部51に記憶されたプログラムやデータに基づいて演算処理を実行することにより、各種構成要素及び各種機能を制御する。例えば、制御装置50は、移動局34を制御して移動通信機35からコンバイン1の位置情報を取得する。
【0038】
コンバイン1は、通信部52を備えていて、制御装置50は、通信部52を介して、作業者の保有する携帯端末53等の外部機器と無線通信を行い、携帯端末53との間で各種情報を送受信する。携帯端末53(選択部)とコンバイン1(走行経路作成部61)とは、図3に示すように、走行経路作成システムを構成する。携帯端末53は、コンバイン1を遠隔操作可能な端末であって、例えば、タッチパネルを備えるタブレット端末やノート型のパーソナルコンピュータ等で構成される。なお、携帯端末53と同様の操作具が操縦部9に備えられてもよい。なお、携帯端末53は、画像を撮影する携帯カメラ54を備えていてもよい。携帯カメラ54は、例えば、作業対象の圃場を撮影して圃場画像を取得する。本実施形態では、圃場情報の取得のために携帯カメラ54を利用する例を説明するが、携帯カメラ54を備えなくてもよく、携帯カメラ54による圃場情報の取得を行わなくてもよい。
【0039】
携帯端末53は、作業対象の圃場に係る圃場情報について、タッチパネルのタッチ操作等による入力操作を受け付けるように構成される。携帯端末53は、例えば、圃場外周を構成する圃場端の形状(以下、圃場形状と称する)、圃場端の位置情報(座標等)、圃場における未刈穀稈領域の形状、未刈穀稈を有する領域(以下、未刈領域と称する)の位置情報(座標等)、圃場又は未刈領域における複数の条列の条方向、条方向に交差する条の配列方向(幅方向)、配列方向における圃場又は未刈領域の幅、複数の条列の全条列数等を圃場情報として設定可能な圃場情報設定画面を表示する。また、携帯端末53は、圃場情報に基づく圃場マップを表示しつつ、圃場マップ上にコンバイン1の走行経路を進行方向が分かるように表示することもできる。
【0040】
携帯端末53は、コンバイン1の自動刈取走行の走行パターンの選択を受け付ける選択部として機能する。選択部としての携帯端末53は、例えば、自動刈取走行の走行経路を作成する場合に、往復刈り又は回り刈りの走行パターンを選択する走行選択画面をタッチパネル(表示部)に表示する。携帯端末53は、走行選択画面の操作に応じて入力された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)の選択情報をコンバイン1へ送信して走行経路の作成を指示する。
【0041】
また、携帯端末53は、コンバイン1が自動的に設定した中割回数の調整を受け付ける調整部として機能する。調整部としての携帯端末53は、例えば、コンバイン1が設定した中割回数や往復刈りの走行経路のデータをコンバイン1から受信して、作業領域、中割及び走行経路を合成表示した中割設定画面70をタッチパネル(表示部)に表示する(図8参照)。携帯端末53は、この中割設定画面70に中割回数を表示すると共に中割回数の減少ボタン71及び増加ボタン72を備えて中割回数の減少又は増加の操作を受け付ける。なお、中割設定画面70において中割なしボタン73の操作によって中割なしを選択すると、中割回数が0回に設定される。携帯端末53は、この中割設定画面70に走行経路の作成ボタンを備えて走行経路作成の操作を受け付ける。携帯端末53は、中割設定画面70の操作に応じて入力された中割回数の調整情報(調整後の中割回数)をコンバイン1へ送信して中割の再設定及び走行経路の再作成を指示する。
【0042】
なお、制御装置50は、通信部52を介して、空撮カメラ57を備えたドローン等の空撮装置56と無線通信を行ってもよく、空撮装置56は、携帯端末53と無線通信を行ってもよい。本実施形態では、圃場情報の取得のために空撮装置56及び空撮カメラ57を利用する例を説明するが、空撮装置56及び空撮カメラ57を備えなくてもよく、空撮カメラ57による圃場情報の取得を行わなくてもよい。制御装置50又は携帯端末53は、作業者による空撮装置56の動作指示や圃場の撮影指示を受け付けて空撮装置56へ送信する。空撮装置56は、動作指示に応じて動作し、また、撮影指示に応じて空撮カメラ57を制御して、圃場を撮影して圃場画像を取得する。空撮装置56は、空撮カメラ57が撮影した圃場画像を制御装置50又は携帯端末53へ送信する。
【0043】
制御装置50は、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57によって撮影した圃場画像を受信して操縦部9のモニタに表示する。あるいは、制御装置50は、撮影した圃場画像を携帯端末53へ送信して、携帯端末53のモニタに表示させてもよい。
【0044】
また、コンバイン1は、刈取部3の刈取能力値である最大刈取条数として6条を予め設定して記憶部51に記憶している。コンバイン1は、最大刈取条数よりも少ない1条や2条等の刈取条数で刈取作業を行うとき、刈取量の減少や既刈領域の走行に起因して、脱穀精度の低下や排藁の巻き込み等の不具合が生じる可能性がある。しかし、最大刈取条数よりも少ない場合でも、4条や5条等の刈取条数で刈取作業を行うときには、刈取量の減少量が少なく、既刈領域の走行幅が狭いため、このような不具合は抑制される。そこで、本実施形態では、少ない条数の刈取作業に起因する不具合が抑制される条数を下限刈取条数と称し、コンバイン1は、最大刈取条数よりも少ない下限刈取条数として5条を予め設定して記憶部51に記憶している。なお、下限刈取条数は、作業者による携帯端末53の入力操作に応じて任意に設定可能としてよく、最大刈取条数よりも1少ない5条に限定されず、最大刈取条数よりも2少ない4条に設定してもよい。
【0045】
コンバイン1は、刈取部3の刈取情報として条列毎の刈取幅や一行程当たりの刈取幅(例えば、最大刈取条数の条列の刈取幅)、一行程当たりの刈取条数(例えば、最大刈取条数)を予め設定して記憶部51に記憶している。なお、一行程当たりの刈取幅は、条列毎の刈取幅に基づいて把握してもよい。また、コンバイン1は、走行部2及び動力部8の旋回能力値として行程間状態に応じた旋回情報を予め設定して記憶部51に記憶している。例えば、コンバイン1は、枕地において隣り合う二つの行程間だけでなく、一つ以上の行程を飛ばした二つの行程間でも旋回することがあり、様々な行程間のそれぞれについて旋回情報を記憶する。また、コンバイン1は、行程間の距離や飛ばした行程数等の行程間状態に応じて、行程間の旋回半径や旋回時間等の旋回情報を、各行程間について記憶する。なお、コンバイン1は、行程間状態として、行程間の路面状態(ぬかるみの程度等)や枕地の地形(傾斜等)を考慮して旋回情報を設定してよい。
【0046】
また、制御装置50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することにより、圃場情報設定部60、走行経路作成部61、自動運転制御部62として動作する。なお、走行経路作成部61は、本発明に係る走行経路作成方法を実現するものである。
【0047】
圃場情報設定部60は、作業対象の圃場に係る圃場情報を自動又は手動で設定して記憶部51に記憶する。例えば、圃場情報設定部60は、携帯端末53の圃場情報設定画面に対する圃場情報の入力操作に応じて、圃場情報を手動で設定する。あるいは、圃場情報設定部60は、コンバイン1の機体カメラ32、基地局39の固定カメラ43、携帯端末53の携帯カメラ54又は空撮装置56の空撮カメラ57によって圃場を撮影した圃場画像を取得し、圃場画像を画像解析することによって圃場情報を自動で取得する。なお、圃場情報設定部60は、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57のうち、1つのカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよく、2つ以上のカメラの圃場画像から圃場情報を解析してもよい。
【0048】
また、圃場情報設定部60は、携帯端末53を介して手動で設定される圃場情報と、機体カメラ32、固定カメラ43、携帯カメラ54又は空撮カメラ57の圃場画像から自動で設定される圃場情報と整合性をとることでより正確な圃場情報を取得することもできる。
【0049】
走行経路作成部61は、圃場をコンバイン1が自動運転で自動走行及び自動刈取を行うために参照する走行経路を作成して記憶部51に記憶する。走行経路は、走行に関する走行設定だけでなく、刈取等の作業に関する作業設定も含む。走行設定は、圃場における走行位置に加えて、各走行位置での走行速度及び進行方向(操向方向及び前進又は後退)を含む。作業設定は、各走行位置での刈取の稼働又は停止、刈取速度及び刈取高さ、刈取条数、他の作業に関する情報を含む。
【0050】
走行経路作成部61は、圃場内の未刈領域を作業領域として、走行しながら刈取を行う行程を直線状に設定し、作業領域に対して複数の直線行程を組み合わせて走行経路を設定する。走行経路作成部61は、携帯端末53等の選択部によって選択された走行パターン(往復刈り又は回り刈り)の選択情報に応じて当該走行パターンの走行経路を作成する。本実施形態では、走行経路作成部61は、作業領域の複数の条列を、条方向に沿った複数の直線行程で往復走行し、各行程で所定条数の条列の刈取作業をする往復刈りを行う走行経路を作成する。刈取作業では作業領域に未刈領域と穀稈の刈取作業後の領域(以下、既刈領域と称する)とが存在するところ、走行経路作成部61は、可能な限り、既刈領域がコンバイン1の機体右方に位置し、未刈領域がコンバイン1の機体左方に位置するように往復刈りの行程を配置する。
【0051】
具体的には、走行経路作成部61は、条方向に交差する条の配列方向において一端側の行程を一方向に走行した後、枕地を走行して他端側へ移動し、他端側の行程を他方向(一方向と逆方向)に走行する往復走行を行うように走行経路を作成する。また、走行経路作成部61は、このような往復走行を配列方向の両端側から中央側に向かって行程をずらしながら行う走行経路を作成する。その結果、走行経路の開始行程は作業領域の配列方向において一端側に設定され、最終行程は中央側に設定される。
【0052】
また、走行経路作成部61は、二つの行程の間で枕地を走行する空走経路に対して、前進のみで180度旋回する基本的な旋回方法であるU字ターンや、前進で90度旋回してから後退して更に前進で90度旋回するように前進と後進との切り返しを行うフィッシュテールターン等の様々な旋回方法の何れかを設定してよい。
【0053】
走行経路作成部61は、二つの行程間の距離に応じて自動的に旋回方法を選択してよく、例えば、比較的離れている場合にはU字ターンを選択し、一方、比較的近いためにU字ターンができない場合にはフィッシュテールターンを選択してよい。あるいは、コンバイン1は、下限旋回半径を予め設定していて、行程間の旋回半径が下限旋回半径以上の場合には、行程間にU字ターンを設定する一方、行程間の旋回半径が下限旋回半径未満の場合には、行程間にフィッシュテールターンを設定してもよい。また、走行経路作成部61は、路面状態(ぬかるみの程度等)や枕地の地形(傾斜等)に応じて、自動的に旋回方法を選択してもよい。あるいは、走行経路作成部61は、携帯端末53のタッチパネル(表示部)等を用いた入力操作に応じて手動で旋回方法を選択してもよい。
【0054】
本実施形態では特に、走行経路作成部61が作業領域に対して所定の中割回数の中割を設定して走行経路を作成する例を説明する。走行経路作成部61は、作業領域の大きさと、刈取部3による一行程当たりの刈取情報と、行程間状態に応じた旋回情報とに基づいて、作業領域の推奨中割回数を算出する。走行経路作成部61は、圃場情報設定部60によって設定された圃場情報を記憶部51から取得して圃場情報に基づいて作業領域の大きさを取得する。走行経路作成部61は、予め設定された刈取部3の一行程の刈取情報を記憶部51から取得し、予め設定された行程間状態に応じた旋回情報を記憶部51から取得する。
【0055】
具体的には、走行経路作成部61は、作業領域の大きさとして条の配列方向における作業領域の幅又は全条列数を、一行程の刈取情報として刈取幅又は刈取条数で除算し、その除算結果を作業領域の全行程数とする。走行経路作成部61は、全行程数が所定行程数(例えば、12本)未満の場合、推奨中割回数を0回に設定して、作業領域を分割することなく、作業領域において配列方向の一端側に開始行程を有し、中央側に最終行程を有する往復刈りの走行経路を作成する。
【0056】
一方、全行程数が所定行程数(例えば、12本)以上の場合、走行経路作成部61は、全行程数及び旋回情報に基づいて、1回以上の推奨中割回数を算出する。前提として、作業領域を中割で複数の分割領域に分割するとき、中割回数や中割の配置に応じて、各分割領域の行程の配分が異なるので、各分割領域内の行程間の空走経路の組み合わせや分割領域間の空走経路の組み合わせ等が異なる。そのため、中割回数や中割の配置に応じて、複数の分割領域に要する旋回時間の合計時間や旋回距離の合計距離が異なる。そこで、走行経路作成部61は、作業領域に最適な推奨中割回数又は作業領域に推奨する推奨中割回数として、旋回合計時間が最短となる場合の中割の回数や旋回合計距離が最短となる場合の中割の回数を算出して設定する。
【0057】
例えば、走行経路作成部61は、下限行程数(例えば、6本)を予め設定していて、作業領域を下限行程数以上の行程を有する複数の分割領域に仮分割する。走行経路作成部61は、仮分割した分割領域毎に開始行程及び最終行程を有する往復刈りの走行経路を仮作成する。なお、走行経路作成部61は、各分割領域が偶数の行程を有するように作業領域を仮分割するとよく、全行程数が奇数の場合には、複数の分割領域のうち、最終の分割領域に奇数の行程を設定し、他の分割領域に偶数の行程を設定する。
【0058】
なお、上記したように既刈領域がコンバイン1の機体右方に位置するように行程を設定することが好ましいため、走行経路作成部61は、既刈領域である一の分割領域がコンバイン1の機体右方に位置するように、次の分割領域の開始行程を設定する。更に、複数の分割領域では、一の分割領域の最終行程と次の分割領域の開始行程との空走経路を可能な限り短くすることが好ましい。そのため、走行経路作成部61は、一の分割領域の最終行程と次の分割領域の開始行程との進行方向を逆方向に設定すると共に、次の分割領域の開始行程を一の分割領域側に設定する。これらのことから、走行経路作成部61は、分割領域に対して偶数の行程を設定する。
【0059】
走行経路作成部61は、中割回数や中割の配置の異なる様々な中割パターンについて、上記の複数の分割領域の仮分割及び走行経路の仮作成を行い、中割パターン毎に旋回合計時間又は旋回合計距離を算出する。そして、走行経路作成部61は、中割パターン間で旋回合計時間又は旋回合計距離を比較し、旋回合計時間又は旋回合計距離が最短となる中割パターンを選択する。走行経路作成部61は、選択した中割パターンで分割される複数の分割領域の領域数から1を減算した結果を、推奨中割回数として設定する。あるいは、走行経路作成部61は、選択した中割パターンの中割回数を推奨中割回数として設定してもよい。
【0060】
例えば、作業領域の全行程数が24本の場合には、中割回数を1回に設定して12本の行程を有する2つの分割領域に分割する中割パターン、中割回数を2回に設定して8本の行程を有する3つの分割領域に分割する中割パターン、中割回数を3回に設定して6本の行程を有する4つの分割領域に分割する中割パターン等が考えられる。走行経路作成部61は、これらの中割パターンの内、旋回合計時間又は旋回合計距離が最短となる中割パターンを選択することになる。
【0061】
なお、分割数が少なくなると、分割領域間の移動距離が長くなるため、旋回合計時間又は旋回合計距離が増加する傾向がある。そこで、走行経路作成部61は、分割数及び分割領域間の移動距離を最適化して旋回合計時間又は旋回合計距離を減少するとよい。各分割領域の最終行程付近では、行程間の旋回半径が短くなり、フィッシュテールターンが設定される傾向がある。フィッシュテールターンはU字ターンに比べて旋回時間が長いので、分割数が多くなると、フィッシュテールターンの回数が多くなって旋回合計時間が増加することになる。そこで、走行経路作成部61は、フィッシュテールターンの回数が少なくなるように分割数を最適化して旋回合計時間を減少するとよい。
【0062】
更に、走行経路作成部61は、上記のように設定した推奨中割回数及び中割パターンの中割配置の中割を作業領域に設定し、当該中割で作業領域を複数の分割領域に分割し、各分割領域に複数の行程を設定し、各分割領域内の複数の行程に亘る走行経路を作成する。また、走行経路作成部61は、一の分割領域の最終行程と次の分割領域の開始行程との間で枕地を走行する空走経路を設定することで分割領域間の行程を連結する。このようにして、走行経路作成部61は、複数の分割領域に亘る走行経路を作成する。
【0063】
走行経路作成部61は、可能な限り各行程に最大刈取条数を設定する(最大刈取条数の条列を割り当てる)ことが好ましいが、各分割領域の全条列数と、刈取部3の刈取能力値である最大刈取条数及び下限刈取条数とに基づいて、各行程に下限刈取条数以上を設定して走行経路を作成する。走行経路作成部61は、既刈条列のみを有する行程に対して、コンバイン1の機体左方及び右方が既刈領域か未刈領域かに拘わらず、最大刈取条数を設定してよい。例えば、最終以外の分割領域では、中割に沿った行程がコンバイン1の機体右方に未刈領域を有するので、走行経路作成部61は、このような中割行程に最大刈取条数を固定して設定する。
【0064】
また、走行経路作成部61は、既刈条列と未刈条列とを有する行程に対して下限刈取条数を設定してよい。このとき、走行経路作成部61は、既刈条列がコンバイン1の機体前方の右側に位置し、未刈条列がコンバイン1の機体前方の左側に位置するように、すなわち、既刈領域がコンバイン1の機体右方に位置するように、下限刈取条数の行程を走行経路に設定する。
【0065】
分割領域に複数の行程を設定する場合、先ず、走行経路作成部61は、第1設定動作として、分割領域の全条列数を最大刈取条数で除算する。以下、この除算を第1除算と称する。この第1除算の結果、余りがない場合、即ち、全条列数が最大刈取条数の倍数である場合には、走行経路作成部61は、分割領域の各行程に最大刈取条数を設定して走行経路を作成する。
【0066】
一方、第1除算の結果、余りがある場合には、走行経路作成部61は、第2設定動作として、分割領域の最終行程以外の各行程に最大刈取条数を仮設定し、最終行程を調整行程として下限刈取条数を仮設定し、最終行程以外の条列の残存条数を最大刈取条数で除算する。以下、この除算を第2除算と称する。
【0067】
この第2除算の結果、余り(余り条数)が最大刈取条数と下限刈取条数との差分以内である場合、走行経路作成部61は、下限刈取条数と余り条数とを加算した加算条数を分割領域の最終行程に設定すると共に、最終行程以外の残存行程に最大刈取条数を設定して走行経路を作成する。
【0068】
また、第2除算の結果、余り(余り条数)が最大刈取条数と下限刈取条数との差分を超える場合、走行経路作成部61は、第3設定動作として、分割領域の最終行程及び他の行程を含む調整行程に下限刈取条数を仮設定し、調整行程以外の条列の残存条数を最大刈取条数で除算し、すなわち、第2除算を再度行う。
【0069】
この再度の第2除算の結果、余り(余り条数)が最大刈取条数と下限刈取条数との差分以内である場合、走行経路作成部61は、下限刈取条数と余り条数とを加算した加算条数を調整行程に設定すると共に、調整行程以外の残存行程に最大刈取条数を設定して走行経路を作成する。
【0070】
なお、再度の第2除算の結果、余り(余り条数)が最大刈取条数と下限刈取条数との差分を超える場合、走行経路作成部61は、更に第3設定動作を行う。換言すれば、走行経路作成部61は、余り条数が最大刈取条数と下限刈取条数との差分以内になるまで第3設定動作を繰り返す。
【0071】
走行経路作成部61は、第3設定動作において調整行程に他の行程を加えるとき、最終行程から遡った所定数の行程を追加するとよい。例えば、走行経路作成部61は、初回の第3設定動作では、最終行程に加えて最終行程の一つ前の行程を含む調整行程を設定する。また、走行経路作成部61は、二回目の第3設定動作では、最終行程の二つ前の行程を初回の調整行程(最終行程及び最終行程の一つ前の行程)を更に含む調整行程を再設定する。このようにして、走行経路作成部61は、第3設定動作を行う度に、最終行程の一つ前の行程から順に遡って、行程を一つずつ調整行程に追加する。
【0072】
自動運転制御部62は、走行経路作成部61で作成された走行経路の走行設定及び作業設定に基づいて、動力部8並びに走行部2及び刈取部3を制御して、走行経路に応じた自動走行及び自動刈取を実行させる。自動運転制御部62は、刈取部3によって走行経路上の未刈穀稈を自動的に刈り取る。また、自動運転制御部62は、自動刈取に伴い、脱穀部4、選別部5、貯留部6及び排藁処理部7を制御して、刈取後の穀稈の脱穀、脱穀後の穀粒や藁屑の選別、選別後の穀粒の貯留、脱穀後の排藁の処理等を自動的に実行させる。なお、コンバイン1は、ジャイロセンサ及び方位センサを備えてコンバイン1の変位情報及び方位情報を取得し、自動運転制御部62は、変位情報及び方位情報に基づいてコンバイン1の自動走行を調整してもよい。
【0073】
次に、コンバイン1によって作業領域に中割回数を設定する動作例を図4のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
先ず、圃場情報設定部60は、図5に示すように、圃場Fの未刈領域を作業領域Aとして自動刈取走行を行うために、自動又は手動で、作業領域Aの大きさ等の圃場情報を設定する。圃場Fは、作業領域Aの周囲に往復刈り走行時の旋回スペースとなる枕地Hを有している。
【0075】
次に、走行経路作成部61は、圃場情報設定部60によって設定された圃場情報から作業領域の大きさを取得し、予め設定された刈取部3の一行程の刈取情報を取得する(ステップS1)。そして、走行経路作成部61は、作業領域Aの大きさである作業領域Aの幅を、一行程当たりの刈取情報である刈取幅で除算し、その除算結果を作業領域Aの複数の行程Rの全行程数として算出する(ステップS2)。図5に示す例では、作業領域Aから19本の全行程数を算出する。
【0076】
算出した全行程数が所定行程数(例えば、12本)未満の場合(ステップS3:NO)、走行経路作成部61は、推奨中割回数を0回に設定して(ステップS4)、作業領域Aに対して往復刈りの走行経路を作成する(ステップS6)。
【0077】
一方、走行経路作成部61は、全行程数が所定行程数(例えば、12本)以上の場合(ステップS3:YES)、全行程数及び旋回情報に基づいて1回以上の推奨中割回数を算出する(ステップS5)。そして、走行経路作成部61は、図6に示すように、算出した推奨中割回数の中割Cで作業領域Aを複数の分割領域Dに分割し、図7に示すように、複数の分割領域Dに亘る走行経路Pを作成する(ステップS6)。図6に示す例では、2回の中割Ca、Cbによって、作業領域Aを3つの分割領域Da、Db、Dcに分割する。
【0078】
また、走行経路作成部61は、設定した推奨中割回数及び走行経路のデータを、中割回数の調整部としての携帯端末53へ送信する。携帯端末53は、図8に示すように、これらのデータに基づいて中割設定画面70をタッチパネルに表示し、この中割設定画面70を介して中割回数の減少又は増加あるいは中割なしの調整操作を受け付ける(ステップS7)。中割回数の減少又は増加あるいは中割なしが操作された場合(ステップS7:YES)、携帯端末53は、走行経路の作成の操作に応じて、中割回数の調整情報をコンバイン1へ送信して中割の再設定及び走行経路の再作成を指示する。なお、中割設定画面70において中割回数の減少ボタン71又は増加ボタン72あるいは中割なしボタン73の操作や走行経路の作成ボタンの操作がされなかった場合(ステップS7:NO)、中割Cの再設定及び走行経路Pの再作成をしなくてよい。
【0079】
コンバイン1が携帯端末53から中割回数の調整情報、並びに中割の再設定及び走行経路の再作成の指示を受信すると、走行経路作成部61は、調整後の中割回数を設定して、調整後の中割回数の中割Cで作業領域Aを複数の分割領域Dに分割し、複数の分割領域Dに亘る走行経路Pを再作成する(ステップS8)。
【0080】
なお、上記した実施形態では、走行パターンの選択を受け付ける選択部や中割回数の調整を受け付ける調整部を携帯端末53に備える例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、コンバイン1が、走行パターンの選択を受け付ける選択部や中割回数の調整を受け付ける調整部を備えていてもよく、この場合、選択部と連動する走行選択画面及び調整部と連動する中割設定画面70を、操縦部9の操作具及び携帯端末53の何れに表示してもよい。
【0081】
なお、上記した実施形態では、コンバイン1によって、作業領域の走行経路を仮作成しつつ推奨中割回数を算出する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、コンバイン1の走行経路作成部61は、走行経路を仮作成することなく、作業領域の大きさと、刈取部3による一行程当たりの刈取情報と、行程間状態に応じた旋回情報とに基づいて、作業領域の推奨中割回数を算出してもよい。この場合、走行経路作成部61は、算出した推奨中割回数又は推奨中割回数の調整後の中割回数に基づいて作業領域を複数の分割領域に分割して走行経路を作成するとよい。
【0082】
本実施形態によれば、走行経路作成方法は、コンバイン1の自動刈取走行の走行パターンとして、作業領域に対して複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りと、作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈りと、の何れかを選択し、選択した走行パターンに基づいて自動刈取走行の走行経路を作成する。
【0083】
また、走行経路作成システムは、コンバイン1の自動刈取走行の走行パターンとして、作業領域に対して複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りと、作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈りと、の何れかを選択する、コンバイン1又は携帯端末53による選択部と、選択部が受け付けた走行パターンに基づいて自動刈取走行の走行経路を作成する、コンバイン1の制御装置50による走行経路作成部61と、を備える。
【0084】
上記のように、本実施形態によれば、コンバイン1は、制御装置50を備えていて、制御装置50は、圃場の作業領域に走行経路を作成する走行経路作成部61及び走行経路に従って自動走行及び自動刈取を制御する自動運転制御部62として機能する。走行経路作成部61は、圃場の複数の条列を有する作業領域に対して条方向に沿った複数の行程を往復して自動刈取走行を行う走行経路を作成する場合に、作業領域の大きさと、刈取部3による一行程当たりの刈取情報と、行程間状態に応じた旋回情報とに基づいて、作業領域の推奨中割回数を算出し、推奨中割回数に基づいて作業領域を複数の分割領域に分割し、複数の分割領域に亘る走行経路を作成する。
【0085】
本実施形態のコンバイン1は、自動刈取走行を行う走行経路として、作業領域に対して複数の行程を往復して自動刈取走行を行う往復刈りと、作業領域の内周に沿った周回を中央側に向かって繰り返して自動刈取走行を行う回り刈りとの何れの走行経路を作成するかを選択する選択部を、コンバイン1又は携帯端末53に備える。そして、走行経路作成部61は、選択部によって往復刈りが選択された場合に、推奨中割回数を算出し、推奨中割回数に基づいて往復刈りの走行経路を作成する
【0086】
本実施形態のコンバイン1によれば、作業領域の大きさと、一行程当たりの刈取情報と、行程間状態に応じた旋回情報とを考慮して、作業領域に適した推奨中割回数を自動的に設定するので、作業時間や作業距離等の作業効率の良い走行経路を作成することができる。
【0087】
また、本実施形態のコンバイン1において、走行経路作成部61は、行程間状態である行程間距離に応じて旋回情報である旋回時間を算出する。
【0088】
これにより、行程間の旋回時間を考慮することで作業領域に適した推奨中割回数を自動的に設定するので、作業時間の効率の良い走行経路を作成することができる。
【0089】
また、本実施形態のコンバイン1において、走行経路作成部61は、行程間状態である行程間距離に応じて旋回情報である旋回方法を決定し、行程間距離及び旋回方法に基づいて旋回時間を算出する。
【0090】
これにより、行程間に適した旋回方法を設定することで、自動刈取走行を安全且つ円滑に行うことができる走行経路を作成することができる。
【0091】
また、本実施形態のコンバイン1において、走行経路作成部61は、旋回時間の合計時間が最短となるように推奨中割回数を算出する。
【0092】
これにより、作業領域の全体を通して作業時間の効率の良い走行経路を作成することができる。
【0093】
また、本実施形態のコンバイン1において、走行経路作成部61は、分割領域に対して偶数の行程を設定して走行経路を作成する。
【0094】
これにより、各分割領域の入口と出口とを同じ側に配置することができ、分割領域間の空走経路を短くすることができる。
【0095】
また、本実施形態のコンバイン1は、走行経路作成部61によって算出された推奨中割回数の調整を受け付ける調整部を、コンバイン1又は携帯端末53に備える。そして、走行経路作成部61は、調整部によって調整された中割回数に基づいて走行経路を再作成する。
【0096】
これにより、コンバイン1は、作業者の意図に沿って中割を再設定することができ、作業者の意図に沿った走行経路を再作成することができる。
【0097】
なお、上記した実施形態では、コンバイン1は、最終行程や、最終行程から遡った所定数の行程に対して、下限刈取条数を設定する例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、他の実施形態では、コンバイン1は、既刈領域がコンバイン1の機体右方に位置する行程や、既刈条列がコンバイン1の機体前方の右側に位置する行程であれば、最終行程の近傍の行程(自動刈取走行の後半の行程)に限定せず、自動刈取走行の前半の行程や中盤の行程に下限刈取条数を設定してもよい。
【0098】
また、コンバイン1は、各分割領域の前半において最大刈取条数で刈取作業を行うと共に、後半において最大刈取条数より少ない下限刈取条数で刈取作業を行うという工程を実現することができる。また、コンバイン1は、動力部8のエンジン27の燃料残量や貯留部6のグレンタンク24の穀粒貯留量を考慮しつつ各分割領域の自動刈取走行を行う場合に、各分割領域で最大刈取条数で刈取作業を行う行程が連続するため、燃料残量や穀粒貯留量を把握し易い。また、コンバイン1は、各分割領域の下限刈取条数で刈取作業を行う最終行程で燃料残量や穀粒貯留量を調整することができる。
【0099】
上記した実施形態では、自脱型コンバインで構成されるコンバイン1の例を説明したが、本発明はこの例に限定されず、コンバイン1は、普通型コンバインで構成されてもよい。また、上記した実施形態では、図7において、行程間の空走経路をUターンで旋回する例を示したが、本発明はこの例に限定されず、行程間の空走経路は、フィッシュテールターン等の他の旋回方法で旋回してもよい。
【0100】
なお、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う走行経路作成方法及び走行経路作成システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
1 コンバイン
2 走行部
3 刈取部
34 移動局
39 基地局
50 制御装置
51 記憶部
52 通信部
53 携帯端末(選択部)
60 圃場情報設定部
61 走行経路作成部
62 自動運転制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8