(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150709
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241016BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 603
B41J2/14 607
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121043
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2024510391の分割
【原出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2022193447
(32)【優先日】2022-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004303
【氏名又は名称】弁理士法人三協国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 直樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吐出孔からの液体の吐出中において回収系の流路から個別流路への液体の逆流を抑制することが可能な液体吐出ヘッド及びそれを備えた液体吐出装置を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドは、複数の個別流路31、第1共通流路32、第2共通流路33、供給流路41及び回収流路42を備える。各個別流路は、加圧室313、一端部311と加圧室との間の第1絞り部316、他端部312と加圧室との間の第2絞り部317を有する。各個別流路において、一端部には第1共通流路が接続され、他端部には第2共通流路が接続される。供給流路は第1共通流路に接続され、回収流路は第2共通流路に接続される。第2共通流路と回収流路と第1絞り部との合成流路抵抗を、第1共通流路と供給流路と第2絞り部との合成流路抵抗よりも大きくすることでインクの逆流を抑制することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる流路であって、各々が、一端部と、他端部と、前記一端部と前記他端部との間に配置され液体を吐出する吐出孔と、を有する複数の個別流路と、
第1開口を有し、各前記個別流路の前記一端部に接続される第1共通流路と、
第2開口を有し、各前記個別流路の前記他端部に接続される第2共通流路と、
外部から液体が流入する流入口を有し、前記第1共通流路の前記第1開口に接続され、前記流入口から流入した液体を前記第1開口を通じて前記第1共通流路に供給する供給流路と、
外部へ液体が流出する流出口を有し、前記第2共通流路の前記第2開口に接続され、前記第2開口を通じて前記第2共通流路から回収された液体を前記流出口へ流す回収流路と、を備え、
各前記個別流路は、前記一端部と前記他端部との間において前記吐出孔に連通するように設けられ、圧力を加える加圧部が配置された加圧室と、前記一端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第1絞り部と、前記他端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第2絞り部と、を有しており、
前記第2共通流路と前記回収流路と前記第2絞り部との合成流路抵抗は、前記第1共通流路と前記供給流路と前記第1絞り部との合成流路抵抗よりも大きい、液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1絞り部及び前記第2絞り部のそれぞれの流路抵抗は、互いの流路抵抗の差が所定の許容範囲内に収まるように設定されている、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2絞り部の流路抵抗は、前記第1絞り部の流路抵抗よりも15%以内の範囲で小さい、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第2共通流路の流路抵抗は、前記第1共通流路の流路抵抗よりも大きい、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記回収流路の流路抵抗は、前記供給流路の流路抵抗よりも大きい、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2共通流路の流路抵抗は、前記第1共通流路の流路抵抗よりも大きく、且つ、前記回収流路の流路抵抗は、前記供給流路の流路抵抗よりも大きい、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
液体が流れる流路であって、各々が、一端部と、他端部と、前記一端部と前記他端部との間に配置され液体を吐出する吐出孔と、を有する複数の個別流路と、
第1開口を有し、各前記個別流路の前記一端部に接続される第1共通流路と、
第2開口を有し、各前記個別流路の前記他端部に接続される第2共通流路と、
外部から液体が流入する流入口を有し、前記第1共通流路の前記第1開口に接続され、前記流入口から流入した液体を前記第1開口を通じて前記第1共通流路に供給する供給流路と、
外部へ液体が流出する流出口を有し、前記第2共通流路の前記第2開口に接続され、前記第2開口を通じて前記第2共通流路から回収された液体を前記流出口へ流す回収流路と、を備え、
各前記個別流路は、前記一端部と前記他端部との間において前記吐出孔に連通するように設けられ、圧力を加える加圧部が配置された加圧室と、前記一端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第1絞り部と、前記他端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第2絞り部と、を有しており、
前記第2共通流路と前記回収流路と前記第2絞り部との合成流路抵抗は、前記第1共通流路と前記供給流路と前記第1絞り部との合成流路抵抗よりも大きく、
前記供給流路は、前記流入口に連通し、前記流入口から流入した液体を収容可能であって、前記外部に開口した供給外部開口を有する供給収容室を含み、
前記回収流路は、前記流出口に連通し、前記流出口から流出される液体を収容可能であって、前記外部に開口した回収外部開口を有する回収収容室を含み、
前記供給収容室の前記供給外部開口は、弾性変形可能な第1弾性フィルムで塞がれており、
前記回収収容室の前記回収外部開口は、弾性変形可能な第2弾性フィルムで塞がれており、
前記供給収容室における前記第1弾性フィルムの弾性変形に応じた単位圧力当たりの体積変位量を示すコンプライアンスは、前記回収収容室における前記第2弾性フィルムの弾性変形に応じた前記コンプライアンスよりも大きい、液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記第1弾性フィルムと前記第2弾性フィルムとは、一体に形成されている、請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
液体が流れる流路であって、各々が、一端部と、他端部と、前記一端部と前記他端部との間に配置され液体を吐出する吐出孔と、を有する複数の個別流路と、
第1開口を有し、各前記個別流路の前記一端部に接続される第1共通流路と、
第2開口を有し、各前記個別流路の前記他端部に接続される第2共通流路と、
外部から液体が流入する流入口を有し、前記第1共通流路の前記第1開口に接続され、前記流入口から流入した液体を前記第1開口を通じて前記第1共通流路に供給する供給流路と、
外部へ液体が流出する流出口を有し、前記第2共通流路の前記第2開口に接続され、前記第2開口を通じて前記第2共通流路から回収された液体を前記流出口へ流す回収流路と、を備え、
各前記個別流路は、前記一端部と前記他端部との間において前記吐出孔に連通するように設けられ、圧力を加える加圧部が配置された加圧室と、前記一端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第1絞り部と、前記他端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第2絞り部と、を有しており、
前記第2共通流路と前記回収流路と前記第2絞り部とのそれぞれの流路断面積の合計面積は、前記第1共通流路と前記供給流路と前記第1絞り部とのそれぞれの流路断面積の合計面積よりも小さい、液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体が流れる流路であって、各々が、一端部と、他端部と、前記一端部と前記他端部との間に配置され液体を吐出する吐出孔と、を有する複数の個別流路と、
第1開口を有し、各前記個別流路の前記一端部に接続される第1共通流路と、
第2開口を有し、各前記個別流路の前記他端部に接続される第2共通流路と、
外部から液体が流入する流入口を有し、前記第1共通流路の前記第1開口に接続され、前記流入口から流入した液体を前記第1開口を通じて前記第1共通流路に供給する供給流路と、
外部へ液体が流出する流出口を有し、前記第2共通流路の前記第2開口に接続され、前記第2開口を通じて前記第2共通流路から回収された液体を前記流出口へ流す回収流路と、を備え、
各前記個別流路は、前記一端部と前記他端部との間において前記吐出孔に連通するように設けられ、圧力を加える加圧部が配置された加圧室と、前記一端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第1絞り部と、前記他端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第2絞り部と、を有しており、
前記第2共通流路と前記回収流路と前記第2絞り部との合成流路抵抗は、前記第1共通流路と前記供給流路と前記第1絞り部との合成流路抵抗よりも大きく、
前記第2絞り部の流路抵抗は、前記第1絞り部の流路抵抗よりも小さい、液体吐出ヘッド。
【請求項11】
液体が流れる流路であって、各々が、一端部と、他端部と、前記一端部と前記他端部との間に配置され液体を吐出する吐出孔と、を有する複数の個別流路と、
各々が第1開口を有し、各前記個別流路の前記一端部に接続される複数の第1共通流路と、
各々が第2開口を有し、各前記個別流路の前記他端部に接続される複数の第2共通流路と、
外部から液体が流入する流入口を有し、各前記第1共通流路の前記第1開口に接続され、前記流入口から流入した液体を前記第1開口を通じて各前記第1共通流路に供給する供給流路と、
外部へ液体が流出する流出口を有し、各前記第2共通流路の前記第2開口に接続され、前記第2開口を通じて各前記第2共通流路から回収された液体を前記流出口へ流す回収流路と、を備え、
各前記個別流路は、前記一端部と前記他端部との間において前記吐出孔に連通するように設けられ、圧力を加える加圧部が配置された加圧室と、前記一端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第1絞り部と、前記他端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第2絞り部と、を有しており、
前記回収流路、前記回収流路に接続された各前記第2共通流路、及び各前記第2共通流路に接続された前記第2絞り部の合成流路抵抗は、前記供給流路、前記供給流路に接続された各前記第1共通流路、及び各前記第1共通流路に接続された前記第1絞り部の合成流路抵抗よりも大きい、液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドの前記流入口及び前記流出口に接続され、前記液体吐出ヘッドを介して液体を循環させる循環部と、を備える、液体吐出装置。
【請求項13】
前記循環部は、
前記液体吐出ヘッドの前記流入口へ供給される液体を貯留する供給貯留部と、
前記液体吐出ヘッドの前記流出口から流出された液体を貯留する回収貯留部と、
前記回収貯留部から前記供給貯留部へ液体を送出するポンプと、
前記供給貯留部と前記流入口との間を接続し、前記供給貯留部に貯留された液体を前記流入口へ流す流路を形成する外部供給流路部材と、
前記回収貯留部と前記流出口との間を接続し、前記流出口から流出された液体を前記回収貯留部へ流す流路を形成する外部回収流路部材と、を含み、
前記外部回収流路部材の流路抵抗は、前記外部供給流路部材の流路抵抗よりも大きい、請求項12に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及びそれを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置が知られている(例えば特許文献1参照)。液体吐出ヘッドは、液体を吐出する吐出孔が形成されたノズルと圧力室とを有する複数の個別流路と、複数の個別流路の各々の第1接続部に接続される第1共通液室と、複数の個別流路の各々の第2接続部に接続される第2共通液室と、を含む。液体吐出ヘッドでは、第1共通液室は、複数の個別流路の各々に液体を供給する供給系の流路として機能し、第2共通液室は、複数の個別流路の各々において吐出孔から吐出されなかった液体を回収する回収系の流路として機能する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、吐出孔からの液体の吐出中において回収系の流路から個別流路への液体の逆流を抑制することが可能な液体吐出ヘッド及びそれを備えた液体吐出装置を提供することである。
【0005】
本発明の一の局面に係る液体吐出ヘッドは、液体が流れる流路であって、各々が、一端部と、他端部と、前記一端部と前記他端部との間に配置され液体を吐出する吐出孔と、を有する複数の個別流路と、第1開口を有し、各前記個別流路の前記一端部に接続される第1共通流路と、第2開口を有し、各前記個別流路の前記他端部に接続される第2共通流路と、外部から液体が流入する流入口を有し、前記第1共通流路の前記第1開口に接続され、前記流入口から流入した液体を前記第1開口を通じて前記第1共通流路に供給する供給流路と、外部へ液体が流出する流出口を有し、前記第2共通流路の前記第2開口に接続され、前記第2開口を通じて前記第2共通流路から回収された液体を前記流出口へ流す回収流路と、を備える。各前記個別流路は、前記一端部と前記他端部との間において前記吐出孔に連通するように設けられ、圧力を加える加圧部が配置された加圧室と、前記一端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第1絞り部と、前記他端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第2絞り部と、を有している。前記第2共通流路と前記回収流路と前記第2絞り部との合成流路抵抗は、前記第1共通流路と前記供給流路と前記第1絞り部との合成流路抵抗よりも大きい。
【0006】
また、本発明の一の局面に係る液体吐出ヘッドは、液体が流れる流路であって、各々が、一端部と、他端部と、前記一端部と前記他端部との間に配置され液体を吐出する吐出孔と、を有する複数の個別流路と、第1開口を有し、各前記個別流路の前記一端部に接続される第1共通流路と、第2開口を有し、各前記個別流路の前記他端部に接続される第2共通流路と、外部から液体が流入する流入口を有し、前記第1共通流路の前記第1開口に接続され、前記流入口から流入した液体を前記第1開口を通じて前記第1共通流路に供給する供給流路と、外部へ液体が流出する流出口を有し、前記第2共通流路の前記第2開口に接続され、前記第2開口を通じて前記第2共通流路から回収された液体を前記流出口へ流す回収流路と、を備える。各前記個別流路は、前記一端部と前記他端部との間において前記吐出孔に連通するように設けられ、圧力を加える加圧部が配置された加圧室と、前記一端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第1絞り部と、前記他端部と前記加圧室との間に設けられ、前記加圧室よりも流路抵抗の大きい第2絞り部と、を有している。前記第2共通流路と前記回収流路と前記第2絞り部とのそれぞれの流路断面積の合計面積は、前記第1共通流路と前記供給流路と前記第1絞り部とのそれぞれの流路断面積の合計面積よりも小さい。
【0007】
本発明の他の局面に係る液体吐出装置は、上記の液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドの前記流入口及び前記流出口に接続され、前記液体吐出ヘッドを介して液体を循環させる循環部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る液体吐出装置であるプリンタの側面図である。
【
図3】
図3は、プリンタにおける液体吐出ヘッドと循環部との関係を示す模式図である。
【
図4】
図4は、液体吐出ヘッドのヘッド本体に含まれる第1流路部材及び第2流路部材の平面図である。
【
図5】
図5は、第1流路部材の要部の断面図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI線に沿った第2流路部材の断面図である。
【
図7】
図7は、
図4のVII-VII線に沿った第2流路部材の断面図である。
【
図8】
図8は、
図4のVIII-VIII線に沿った第2流路部材の断面図である。
【
図9】
図9は、第2流路部材に含まれる各プレートの平面図である。
【
図10】
図10は、液体吐出ヘッドによる液体としてのインクの吐出中における流量変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド及び液体吐出装置について説明する。液体吐出装置は、液体を吐出する液体吐出ヘッドを備えた装置である。液体吐出装置としては、液体吐出ヘッドから液体としてのインクを吐出させる記録装置、導電性の粒子を含む液体を液体吐出ヘッドから吐出させて電子機器の配線パターンを印刷する装置、化学薬剤などの液体を液体吐出ヘッドから反応容器に向けて吐出させて化学薬品を作製する装置、などが挙げられる。以下の実施形態では、液体吐出装置の具体例として、液体としてインクを吐出する液体吐出ヘッドを備えた記録装置であるインクジェット式のプリンタを例示する。インクジェット式のプリンタは、紙シート、樹脂シート、織物や編物等の生地などのワークに、文字や模様などの画像をインクジェット方式で印刷する記録装置である。
【0010】
[プリンタの全体構成]
図1及び
図2に示されるように、プリンタ1は、インクを吐出する液体吐出ヘッド2と、液体吐出ヘッド2に対してワークWを相対的に移動させる可動部7と、制御部9と、を備える。プリンタ1では、制御部9は、画像のデータである印刷データに基づき液体吐出ヘッド2を制御し、可動部7により移動されるワークWに向けてインクを吐出させることでワークWにインク滴を着弾させて、ワークWに印刷などの記録を行う。
【0011】
本実施形態では、プリンタ1は、ヘッド室11内に配置されたヘッド搭載フレーム12に対して液体吐出ヘッド2が固定された、いわゆるラインプリンタである。プリンタ1の他の実施形態としては、ワークWの搬送方向と交差する方向に液体吐出ヘッド2を往復移動させ、液体吐出ヘッド2からインクを吐出する動作とワークWの搬送動作とを交互に行う、いわゆるシリアルプリンタが挙げられる。
【0012】
プリンタ1において、ヘッド室11内には、4つの平板状のヘッド搭載フレーム12が配置されている。各ヘッド搭載フレーム12には、5つの液体吐出ヘッド2を含むヘッド群2Aが搭載されている。プリンタ1は、4つのヘッド群2Aを有しており、合計20個の液体吐出ヘッド2が搭載されている。
【0013】
液体吐出ヘッド2は、一方向に細長い長尺形状を有している。液体吐出ヘッド2は、インクを吐出する部位がワークWの印刷面に上方から対向し、且つ、その長手方向がワークWの搬送方向と直交する方向に平行となるように、ヘッド搭載フレーム12に搭載される。1つのヘッド群2A内において、3つの液体吐出ヘッド2は、ワークWの搬送方向と直交する方向に沿って並んでおり、他の2つの液体吐出ヘッド2は、搬送方向に沿ってずれた位置で、3つの液体吐出ヘッド2の間にそれぞれ1つずつ並んでいる。換言すれば、1つのヘッド群2Aにおいて、液体吐出ヘッド2は、千鳥状に配置されている。1つのヘッド群2Aにおいて、液体吐出ヘッド2は、各液体吐出ヘッド2で印刷可能な範囲が、ワークWの幅方向、すなわち、ワークWの搬送方向と直交する方向に繋がるように配置されている。このようなヘッド群2A内での各液体吐出ヘッド2の配置によって、各液体吐出ヘッド2からのインクの吐出に基づきワークWの幅方向に隙間のない印刷が可能である。
【0014】
4つのヘッド群2Aは、ワークWの搬送方向に沿って配置されている。1つのヘッド群2Aに属する各液体吐出ヘッド2には、同じ色のインクが供給されるようになっており、4つのヘッド群2Aで4色のインクが印刷できる。インクの色は、例えば、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)及びブラック(BK)である。
【0015】
可動部7は、ヘッド室11内においてヘッド搭載フレーム12に搭載された液体吐出ヘッド2に対してワークWを相対的に移動させる。可動部7は、ヘッド室11に対してワークWの搬送方向上流側に配置された供給ローラ71及び供給調整ローラ72と、ヘッド室11内に配置された搬送ローラ73と、ヘッド室11に対してワークWの搬送方向下流側に配置された第1回収調整ローラ74、第2回収調整ローラ75及び回収ローラ76と、を含む。供給ローラ71は、ワークWを送り出すローラである。供給調整ローラ72は、供給ローラ71により送り出されたワークWをヘッド室11内に案内するローラである。搬送ローラ73は、供給調整ローラ72により案内されてヘッド室11内に導入されたワークWを、液体吐出ヘッド2の下側を通過するように搬送するローラである。第1回収調整ローラ74及び第2回収調整ローラ75は、搬送ローラ73により搬送されたワークWをヘッド室11の外側へ導くローラである。回収ローラ76は、第1回収調整ローラ74及び第2回収調整ローラ75によりヘッド室11の外側に導かれたワークWを巻き取ることにより回収するローラである。
【0016】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係るプリンタ1は、ワークWの搬送方向において、供給調整ローラ72とヘッド室11との間に配置される塗布部81と、第1回収調整ローラ74と第2回収調整ローラ75との間に配置される乾燥部82と、第2回収調整ローラ75と回収ローラ76との間に配置される撮像部83と、を備える。
【0017】
塗布部81は、ヘッド室11に導入される前のワークWに、コーティング剤を塗布する。コーティング剤としては、例えば、ワークWとしてインクが浸み込み難いものを用いる場合において、インクが定着し易いように、ワークWにインク受容層を形成するものが使用できる。他に、コーティング剤としては、ワークWとしてインクが浸み込み易いものを用いる場合において、インクのにじみが大きくなり過ぎず、隣に着弾した別のインクとあまり混じり合わないように、ワークWにインク浸透抑制層を形成するものが使用できる。
【0018】
乾燥部82は、回収ローラ76に回収される前のワークWに付着しているインクを乾燥させる。乾燥部82に採用されるインクの乾燥方式としては、例えば、温風を吹き付ける方式、赤外線を照射する方式、加熱したローラを接触させる方式などが挙げられる。
【0019】
撮像部83は、乾燥部82による乾燥後のワークWを撮像し、ワークWにおけるインクの印刷状態を確認するための撮像データを取得する。撮像部83により取得された撮像データは、制御部9に入力される。制御部9は、撮像データに基づいて、ワークWにおけるインクの印刷状態を評価する。具体的には、制御部9は、液体吐出ヘッド2からインク滴が吐出されなかったために印刷されていない画素がないか、液体吐出ヘッド2から吐出されたインク滴の着弾位置がずれていないか、などを評価する。
【0020】
[液体吐出ヘッドの詳細構成]
次に、
図3~
図9を参照しながら、液体吐出ヘッド2を詳細に説明する。なお、以下の説明では、液体吐出ヘッド2の外側を外部と称する。液体吐出ヘッド2は、インクを吐出するためのインクの流路などが形成されたヘッド本体21と、ヘッド本体21に接続され、インクの吐出動作を制御するためのドライバICや配線基板などを収容した筐体22と、を含む。
【0021】
ヘッド本体21は、一方向に長い平板形状を有している。以下では、方向関係については、ヘッド本体21の長手方向D1において一方方向を第1方向D11と称し、第1方向D11の反対方向を第2方向D12と称する。また、ヘッド本体21の長手方向D1と直交する幅方向D2において一方方向を第3方向D21と称し、第3方向D21の反対方向を第4方向D22と称する。また、ヘッド本体21において長手方向D1及び幅方向D2と直交する方向を、ヘッド本体21の厚み方向D3と称する。液体吐出ヘッド2がヘッド搭載フレーム12に搭載された状態では、ヘッド本体21の長手方向D1はワークWの搬送方向と直交する方向に平行であり、ヘッド本体21の幅方向D2はワークWの搬送方向に平行であり、ヘッド本体21の厚み方向D3はワークWの印刷面に垂直な上下方向に平行である。
【0022】
図3に示されるように、ヘッド本体21は、ヘッド本体21の下方部分に配置される第1流路部材3と、ヘッド本体21の上方部分に配置される第2流路部材4と、第1流路部材3と第2流路部材4との間に配置される圧電アクチュエータ基板5と、を含む。第1流路部材3は、圧電アクチュエータ基板5の駆動に応じてインクを吐出するための流路が形成された平板状の部材である。第2流路部材4は、外部からインクが流入する流入口411と、外部へインクが流出する流出口421と、を有した平板状の部材である。第2流路部材4は、流入口411から流入したインクを第1流路部材3に供給するための流路が形成されるとともに、第1流路部材3から回収されたインクを流出口421へ流すための流路が形成される。
【0023】
図3に示されるように、液体吐出ヘッド2の外部には循環部6が配置されている。循環部6は、ヘッド本体21における流入口411及び流出口421に接続される。循環部6は、流出口421から流入口411へ向かうインクの流れを形成することで、ヘッド本体21を介してインクを循環させる。
【0024】
循環部6は、供給貯留部61と、回収貯留部62と、ポンプ63と、外部供給流路部材64と、外部回収流路部材65と、を含む。供給貯留部61は、ヘッド本体21の流入口411へ供給されるインクを貯留する。回収貯留部62は、ヘッド本体21の流出口421から流出されたインクを貯留する。ポンプ63は、回収貯留部62から供給貯留部61へインクを送出する。外部供給流路部材64は、供給貯留部61とヘッド本体21の流入口411との間を接続し、供給貯留部61に貯留されたインクを流入口411へ流す流路を形成する。外部回収流路部材65は、回収貯留部62とヘッド本体21の流出口421との間を接続し、流出口421から流出されたインクを回収貯留部62へ流す流路を形成する。
【0025】
図4及び
図5に示されるように、ヘッド本体21の下方部分に配置される第1流路部材3は、複数の個別流路31と、第1共通流路32と、第2共通流路33と、を有している。第1共通流路32は、複数の個別流路31の各々の流路の入口となる一端部311に接続される流路である。第2共通流路33は、複数の個別流路31の各々の流路の出口となる他端部312に接続される流路である。本実施形態では、第1流路部材3は、複数の個別流路31の各々の一端部311に接続される第1共通流路32を複数有するとともに、複数の個別流路31の各々の他端部312に接続される第2共通流路33を複数有している。例えば、第1流路部材3は、4本の第1共通流路32を有するとともに、4本の第2共通流路33を有している。
【0026】
複数の個別流路31はそれぞれ、第1共通流路32に接続される一端部311と、第2共通流路33に接続される他端部312とを有し、一端部311から他端部312に向かってインクが流れる流路である。各個別流路31において、一端部311は、インクの流れ方向の上流端であって流路の入口であり、他端部312は、インクの流れ方向の下流端であって流路の出口である。各個別流路31におけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。各個別流路31は、一端部311と他端部312との間において第1流路部材3の上面3Aに配置された加圧室313と、一端部311と他端部312との間において第1流路部材3の下面3Bに配置された吐出孔315と、加圧室313と吐出孔315とを繋ぐディセンダ314と、を有している。
【0027】
加圧室313は、第1流路部材3の上面3Aにおいて上方を向いて開口しており、ディセンダ314を通じて吐出孔315に連通している。第1流路部材3の上面3Aには、加圧室313の開口を塞ぐように圧電アクチュエータ基板5が接合されている。これにより、加圧室313の上方には、圧電アクチュエータ基板5に組み込まれた変位素子51が配置される。変位素子51は、加圧室313に対して圧力を加える加圧部としての機能を有する。ディセンダ314は、第1流路部材3の厚み方向D3に沿って加圧室313から吐出孔315に至るまで下方に延びている。ディセンダ314の上端に加圧室313が接続され、ディセンダ314の下端に吐出孔315が接続される。吐出孔315は、第1流路部材3の下面3Bにおいて下方を向いて開口しており、変位素子51の駆動に応じて加圧室313で加圧されてディセンダ314内を通過したインクを吐出する。
【0028】
複数の第1共通流路32はそれぞれ、第1流路部材3の長手方向D1に沿って延びる流路である。各第1共通流路32におけるインクの流れ方向は、第1流路部材3の長手方向D1に平行である。各第1共通流路32は、複数の個別流路31の各々の一端部311に接続されることにより、各個別流路31にインクを供給する供給系の流路として機能する。各第1共通流路32におけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。各第1共通流路32における流路断面の面積を示す流路断面積は、長手方向D1の両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、各第1共通流路32の流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。各第1共通流路32は、第1流路部材3の幅方向D2に並んで配置される。各第1共通流路32は、長手方向D1における第1方向D11の端部及び第2方向D12の端部の各々に、第2流路部材4から第1流路部材3に供給されるインクを受け入れる第1開口321を有している。各第1共通流路32においては、第1方向D11の端部に形成された第1開口321と、第2方向D12の端部に形成された第1開口321とに、ほぼ同量のインクが第2流路部材4から供給される。第1共通流路32における各端部の第1開口321に供給されたインクは、第1共通流路32の長手方向D1の中央に向かって流れる。第1共通流路32を流れたインクは、当該第1共通流路32に一端部311が接続された各個別流路31に供給される。
【0029】
第1共通流路32と各個別流路31の一端部311との間の接続部位には、第1フィルタ311Aが設けられている。第1フィルタ311Aは、第1共通流路32内のインクが各個別流路31へ通過することを許容するとともに、インク中の異物などが各個別流路31へ通過することを規制する。
【0030】
第1流路部材3において第1共通流路32の下側の面は、第1ダンパ322になっている。第1ダンパ322の第1共通流路32に面している面と反対側の面は、空気などの気体が入った第1ダンパ室323に面している。第1ダンパ室323の体積は、第1共通流路32から加わる圧力によって変化する。第1ダンパ322は、第1ダンパ室323の体積が変化することに応じて振動可能である。第1ダンパ322の振動が減衰することにより、第1共通流路32に生じた圧力変動を減衰させることができる。このため、第1共通流路32に対して第1ダンパ322を設けることで、第1共通流路32内のインクの共振等の圧力変動を小さくすることができる。
【0031】
複数の第2共通流路33はそれぞれ、第1流路部材3における第1共通流路32の下方の位置で長手方向D1に沿って延びる流路である。各第2共通流路33におけるインクの流れ方向は、第1流路部材3の長手方向D1に平行である。各第2共通流路33は、複数の個別流路31の各々の他端部312に接続されることにより、各個別流路31において吐出孔315から吐出されなかったインクを回収する回収系の流路として機能する。各第2共通流路33におけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。各第2共通流路33における流路断面の面積を示す流路断面積は、長手方向D1の両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、各第2共通流路33の流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。各第2共通流路33は、第1流路部材3の幅方向D2に並んで配置される。各第2共通流路33は、長手方向D1における第1方向D11の端部及び第2方向D12の端部の各々に、各個別流路31において吐出孔315から吐出されずに第2共通流路33に回収されたインクを第2流路部材4へ流す第2開口331を有している。第2共通流路33に他端部312が接続された各個別流路31から第2共通流路33に回収されたインクは、第2共通流路33における各端部の第2開口331に向かって流れて、当該第2開口331を通じて第2流路部材4に回収される。
【0032】
第1流路部材3において第2共通流路33の下側の面は、第2ダンパ332になっている。第2ダンパ332の第2共通流路33に面している面と反対側の面は、空気などの気体が入った第2ダンパ室333に面している。第2ダンパ室333の体積は、第2共通流路33から加わる圧力によって変化する。第2ダンパ332は、第2ダンパ室333の体積が変化することに応じて振動可能である。第2ダンパ332の振動が減衰することにより、第2共通流路33に生じた圧力変動を減衰させることができる。このため、第2共通流路33に対して第2ダンパ332を設けることで、第2共通流路33内のインクの共振等の圧力変動を小さくすることができる。
【0033】
第1共通流路32と第2共通流路33とは、第1流路部材3の厚み方向D3に見た平面視において、重なって配置されている。複数の個別流路31は、一端部311が第1共通流路32に接続されるとともに他端部312が第2共通流路33に接続された状態で、第1共通流路32及び第2共通流路33の幅方向D2の両側の各々に、長手方向D1に並んで配置されている。
【0034】
また、複数の個別流路31はそれぞれ、一端部311と加圧室313との間に配置された第1絞り部316と、他端部312と加圧室313との間において吐出孔315が設けられたディセンダ314の下端に接続された第2絞り部317と、を有している。
【0035】
第1絞り部316は、個別流路31の一端部311と加圧室313との間において、第1流路部材3の幅方向D2に沿って延びる流路である。第1絞り部316は、個別流路31の一端部311に接続された第1共通流路32と、加圧室313とのそれぞれに連通している。第1絞り部316におけるインクの流れ方向は、第1流路部材3の幅方向D2に平行である。第1絞り部316におけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。第1絞り部316における流路断面の面積を示す流路断面積は、両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、第1絞り部316の流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。第1絞り部316の流路断面積は、第1共通流路32の流路断面積よりも小さく、且つ、加圧室313及びディセンダ314の各々の流路断面積よりも小さい。これにより、第1絞り部316の流路抵抗は、第1共通流路32の流路抵抗よりも大きく、且つ、加圧室313及びディセンダ314の各々の流路抵抗よりも大きい。
【0036】
第2絞り部317は、個別流路31の他端部312とディセンダ314の下端との間において、第1流路部材3の幅方向D2に沿って延びる流路である。第2絞り部317は、個別流路31の他端部312に接続された第2共通流路33と連通するとともに、ディセンダ314を通じて加圧室313及び吐出孔315と連通している。第2絞り部317におけるインクの流れ方向は、第1流路部材3の幅方向D2に平行である。第2絞り部317におけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。第2絞り部317における流路断面の面積を示す流路断面積は、両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、第2絞り部317の流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。第2絞り部317の流路断面積は、第2共通流路33の流路断面積よりも小さく、且つ、加圧室313及びディセンダ314の各々の流路断面積よりも小さい。これにより、第2絞り部317の流路抵抗は、第2共通流路33の流路抵抗よりも大きく、且つ、加圧室313及びディセンダ314の各々の流路抵抗よりも大きい。
【0037】
複数の個別流路31、第1共通流路32及び第2共通流路33の各流路が形成された第1流路部材3においては、第2流路部材4から第1流路部材3に供給されたインクは、第1開口321を通じて第1共通流路32に流れ込む。第1共通流路32に流れ込んだインクは、第1共通流路32との接続部位となる一端部311を通じて各個別流路31に流入する。一端部311を通じて各個別流路31に流入したインクは、第1絞り部316を通過した後に、加圧室313に流れ込む。加圧室313に流れ込んだインクは、ディセンダ314を流れ、一部のインクは吐出孔315から吐出される。吐出孔315から吐出されなかったインクは、第2絞り部317を通過した後に、他端部312を通じて第2共通流路33に流れ込む。第2共通流路33に流れ込んだインクは、第2開口331を通じて第2流路部材4に向かって流れて回収される。
【0038】
図5に示されるように、第1流路部材3は、複数のプレートが厚み方向D3に積層された積層構造を有している。
図5の例では、第1流路部材3は、第1~第16プレート3a~3pの16枚のプレートが上から順番に積層されている。
【0039】
各個別流路31における一端部311は第4プレート3dに形成された孔によって区画され、各個別流路31における他端部312は第11プレート3kに形成された孔によって区画される。各個別流路31における加圧室313は、最上層の第1プレート3aに形成された孔によって区画される。各個別流路31におけるディセンダ314は、加圧室313を区画する第1プレート3aの孔に連通するように第2~第15プレート3b~3oの各々に形成された孔によって区画される。各個別流路31における吐出孔315は、ディセンダ314を区画する第2~第15プレート3b~3oの各々の孔に連通するように最下層の第16プレート3pに形成された孔によって区画される。各個別流路31における第1絞り部316は、一端部311を区画する第4プレート3dの孔と、加圧室313を区画する第1プレート3aの孔とに連通するように、第3プレート3cに形成された孔によって区画される。各個別流路31における第2絞り部317は、他端部312を区画する第11プレート3kの孔と、ディセンダ314の下端を区画する第15プレート3oの孔と、吐出孔315を区画する第16プレート3pの孔とに連通するように、第15プレート3oに形成された孔によって区画される。
【0040】
各第1共通流路32は、各個別流路31における一端部311を区画する第4プレート3dの孔と連通するように第5~第8プレート3e~3hの各々に形成された孔によって区画される。各第1共通流路32に対応した第1ダンパ322は、第1共通流路32の下端を区画する第8プレート3hの孔に面した第9プレート3iによって形成され、第1ダンパ322に対応した第1ダンパ室323は、第10プレート3jに形成された溝によって区画される。
【0041】
各第2共通流路33は、各個別流路31における他端部312を区画する第11プレート3kの孔と連通するように第11~第12プレート3k~3lの各々に形成された孔によって区画される。各第2共通流路33に対応した第2ダンパ332は、第2共通流路33の下端を区画する第12プレート3lの孔に面した第13プレート3mによって形成され、第2ダンパ332に対応した第2ダンパ室333は、第14プレート3nに形成された溝によって区画される。
【0042】
ヘッド本体21の上方部分に配置される第2流路部材4は、第1流路部材3の上面3Aにおける、圧電アクチュエータ基板5が接続されていない領域に接合されている。すなわち、第2流路部材4は、圧電アクチュエータ基板5を囲むように、第1流路部材3の上面3Aに接合されている。
図4及び
図6~
図9に示されるように、第2流路部材4は、供給流路41と、回収流路42とを有している。
【0043】
供給流路41は、第1流路部材3における各第1共通流路32に供給するインクが流れる流路である。供給流路41は、液体吐出ヘッド2の外部においてヘッド本体21に接続される循環部6の外部供給流路部材64を流れるインクが流入する流入口411を有している。流入口411は、第2流路部材4の長手方向D1において第2方向D12の端部領域に、上方を向いて外部に開口している。供給流路41は、各第1共通流路32の第1開口321に接続され、流入口411から流入したインクを第1開口321を通じて各第1共通流路32に供給する。
【0044】
供給流路41は、流入口411に接続される流入接続流路412Aと、流入接続流路412Aを通じて流入口411に連通する供給収容室412と、供給収容室412に接続される分岐接続流路4131と、分岐接続流路4131を通じて供給収容室412に連通する供給分岐流路413と、を有している。
【0045】
流入接続流路412Aは、流入口411と供給収容室412とを接続する流路である。供給収容室412は、第2流路部材4の長手方向D1の中央部よりも第2方向D12側の領域に配置され、第2流路部材4の長手方向D1に沿って延びる流路である。供給収容室412におけるインクの流れ方向は、第2流路部材4の長手方向D1に平行である。供給収容室412におけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。供給収容室412における流路断面の面積を示す流路断面積は、長手方向D1の両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、供給収容室412の流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。供給収容室412は、流入口411から流入したインクを収容可能であって、上方を向いて外部に開口した供給外部開口412Bを有している。
【0046】
供給収容室412の供給外部開口412Bは、弾性変形可能な弾性フィルム43で塞がれている。供給収容室412の体積は、弾性フィルム43における供給外部開口412Bに面した部分の弾性変形に応じて変化する。弾性フィルム43は、供給収容室412の体積を変化させる弾性変形に応じて振動可能である。弾性フィルム43の振動が減衰することにより、供給収容室412に生じた圧力変動を減衰させることができる。このため、供給収容室412の供給外部開口412Bが弾性フィルム43で塞がれることで、供給収容室412内のインクの共振等の圧力変動を小さくすることができる。
【0047】
また、供給収容室412内には、第2フィルタ412Cが設けられている。第2フィルタ412Cは、供給収容室412内のインクが供給分岐流路413へ通過することを許容するとともに、インク中の異物などが供給分岐流路413へ通過することを規制する。
【0048】
分岐接続流路4131は、第2流路部材4の長手方向D1の中央部に配置され、供給収容室412と供給分岐流路413とを接続する流路である。
【0049】
供給分岐流路413は、分岐接続流路4131を通じて供給収容室412に連通するとともに、第1流路部材3における第1開口321に接続されることで第1共通流路32に連通する流路である。供給分岐流路413は、第1供給分岐流路413Aと、第2供給分岐流路413Bとを有している。
【0050】
第1供給分岐流路413Aは、第2流路部材4の長手方向D1の中央部において分岐接続流路4131に接続されて、長手方向D1に沿って延びる流路である。第1供給分岐流路413Aは、分岐接続流路4131に接続される部位から分岐して、第1方向D11に向かって延びる流路と、第2方向D12に向かって延びる流路とを含んでいる。第1供給分岐流路413Aにおけるインクの流れ方向は、第2流路部材4の長手方向D1に平行である。第1供給分岐流路413Aにおけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。第1供給分岐流路413Aにおける流路断面の面積を示す流路断面積は、長手方向D1の両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、第1供給分岐流路413Aの流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。
【0051】
第2供給分岐流路413Bは、第1供給分岐流路413Aの長手方向D1における第1方向D11の端部と第2方向D12の端部とにそれぞれ接続されて幅方向D2に延びる流路であって、第1流路部材3における各第1共通流路32の第1開口321に接続される。第2供給分岐流路413Bは、第1供給分岐流路413Aに接続される部位から分岐して、幅方向D2における第3方向D21に向かって延びる流路と、幅方向D2における第4方向D22に向かって延びる流路とを含んでいる。第2供給分岐流路413Bにおけるインクの流れ方向は、第2流路部材4の幅方向D2に平行である。第2供給分岐流路413Bにおけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。第2供給分岐流路413Bにおける流路断面の面積を示す流路断面積は、両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、第2供給分岐流路413Bの流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。
【0052】
回収流路42は、第1流路部材3における各第2共通流路33から回収されたインクが流れる流路である。回収流路42は、液体吐出ヘッド2の外部においてヘッド本体21に接続される循環部6の外部回収流路部材65へインクが流出する流出口421を有している。流出口421は、第2流路部材4の長手方向D1において第1方向D11の端部領域に、上方を向いて外部に開口している。回収流路42は、各第2共通流路33の第2開口331に接続され、第2開口331を通じて各第2共通流路33から回収されたインクを流出口421へ流す。
【0053】
回収流路42は、流出口421に接続される流出接続流路422Aと、流出接続流路422Aを通じて流出口421に連通する回収収容室422と、回収収容室422に連通する回収分岐流路423と、を有している。
【0054】
流出接続流路422Aは、流出口421と回収収容室422とを接続する流路である。回収収容室422は、第2流路部材4の長手方向D1の中央部よりも第1方向D11側の領域に配置され、第2流路部材4の長手方向D1に沿って延びる流路である。回収収容室422におけるインクの流れ方向は、第2流路部材4の長手方向D1に平行である。回収収容室422におけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。回収収容室422における流路断面の面積を示す流路断面積は、長手方向D1の両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、回収収容室422の流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。回収収容室422は、流出口421から流出されるインクを収容可能であって、上方を向いて外部に開口した回収外部開口422Bを有している。
【0055】
回収収容室422は、第2流路部材4の長手方向D1において供給収容室412と互いに隣接するように配置される。回収収容室422の回収外部開口422Bは、供給収容室412の供給外部開口412Bと共通の弾性フィルム43で塞がれている。回収収容室422の体積は、弾性フィルム43における回収外部開口422Bに面した部分の弾性変形に応じて変化する。弾性フィルム43は、回収収容室422の体積を変化させる弾性変形に応じて振動可能である。弾性フィルム43の振動が減衰することにより、回収収容室422に生じた圧力変動を減衰させることができる。このため、回収収容室422の回収外部開口422Bが弾性フィルム43で塞がれることで、回収収容室422内のインクの共振等の圧力変動を小さくすることができる。
【0056】
なお、供給収容室412の供給外部開口412Bと回収収容室422の回収外部開口422Bとが、別個独立の弾性フィルムで塞がれていてもよい。すなわち、供給収容室412の供給外部開口412Bが第1弾性フィルムで塞がれ、一方で、回収収容室422の回収外部開口422Bが第2弾性フィルムで塞がれていてもよい。供給収容室412の供給外部開口412Bと回収収容室422の回収外部開口422Bとが共通の弾性フィルム43で塞がれる場合には、当該弾性フィルム43は、供給外部開口412Bを塞ぐ第1弾性フィルムと回収外部開口422Bを塞ぐ第2弾性フィルムとが一体に形成されたフィルムとなる。
【0057】
回収分岐流路423は、回収収容室422に連通するとともに、第1流路部材3における第2開口331に接続されることで第2共通流路33に連通する流路である。回収分岐流路423は、第1回収分岐流路423Aと、第2回収分岐流路423Bとを有している。
【0058】
第1回収分岐流路423Aは、第2流路部材4の長手方向D1の中央部において回収収容室422に接続されて、長手方向D1に沿って延びる流路である。第1回収分岐流路423Aは、回収収容室422に接続される部位から分岐して、第1方向D11に向かって延びる流路と、第2方向D12に向かって延びる流路とを含んでいる。第1回収分岐流路423Aは、第2流路部材4において第1供給分岐流路413Aの上方の位置に配置されている。第2流路部材4の厚み方向D3に見た平面視において、第1供給分岐流路413Aと第1回収分岐流路423Aとは、少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。第1回収分岐流路423Aにおけるインクの流れ方向は、第2流路部材4の長手方向D1に平行である。第1回収分岐流路423Aにおけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。第1回収分岐流路423Aにおける流路断面の面積を示す流路断面積は、長手方向D1の両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、第1回収分岐流路423Aの流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。
【0059】
第2回収分岐流路423Bは、第1回収分岐流路423Aの長手方向D1における第1方向D11の端部と第2方向D12の端部とにそれぞれ接続されて幅方向D2に延びる流路であって、第1流路部材3における各第2共通流路33の第2開口331に接続される。第2回収分岐流路423Bは、第1回収分岐流路423Aに接続される部位から分岐して、幅方向D2における第3方向D21に向かって延びる流路と、幅方向D2における第4方向D22に向かって延びる流路とを含んでいる。第2回収分岐流路423Bにおけるインクの流れ方向は、第2流路部材4の幅方向D2に平行である。第2回収分岐流路423Bにおけるインクの流れ方向に垂直な流路断面の形状は、例えば矩形状である。第2回収分岐流路423Bにおける流路断面の面積を示す流路断面積は、両端部間の全体に亘って同一である。すなわち、第2回収分岐流路423Bの流路断面積は、インクの流れ方向において均一である。
【0060】
供給流路41及び回収流路42の各流路が形成された第2流路部材4においては、ヘッド本体21に接続される循環部6の供給貯留部61に貯留されたインクが、外部供給流路部材64を通じて第2流路部材4に供給される。外部供給流路部材64を通じて第2流路部材4に供給されたインクは、流入口411及び流入接続流路412Aを通じて供給収容室412に流れ込む。供給収容室412に流れ込んだインクは、分岐接続流路4131を通じて第1供給分岐流路413Aに流入する。第1供給分岐流路413Aに流入したインクは、第1供給分岐流路413Aを流れた後に、第2供給分岐流路413Bに流入する。第2供給分岐流路413Bに流入したインクは、当該第2供給分岐流路413Bに接続された第1開口321を通じて第1流路部材3の各第1共通流路32に供給される。一方、第2流路部材4において、第1流路部材3における各第2共通流路33の第2開口331に接続された第2回収分岐流路423Bには、各第2共通流路33から回収されたインクが流入する。第2回収分岐流路423Bに流入したインクは、第1回収分岐流路423Aに流入し、当該第1回収分岐流路423Aを流れた後に、回収収容室422に流れ込む。回収収容室422に流れ込んだインクは、流出接続流路422Aを通じて流出口421から流出する。流出口421から流出したインクは、当該流出口421に接続された外部回収流路部材65を通じて回収貯留部62に流れ込む。回収貯留部62に流れ込むことで貯留されたインクは、ポンプ63によって回収貯留部62から供給貯留部61へ送出される。これにより、第1流路部材3及び第2流路部材4を含むヘッド本体21を介してインクが循環する。
【0061】
また、
図6に示されるように、第2流路部材4の下面には、圧電アクチュエータ基板5の収容空間44が設けられている。収容空間44は、第2流路部材4の幅方向D2における第3方向D21及び第4方向D22の各端部に、第2流路部材4の上面にまで貫通している貫通孔441を有している。貫通孔441には、圧電アクチュエータ基板5を駆動する駆動信号を伝達するFPC(Flexible Printed Circuit)などの信号伝達部442が通されている。
【0062】
図6~
図9に示されるように、第2流路部材4は、複数のプレートが厚み方向D3に積層された積層構造を有している。
図6の例では、第2流路部材4は、第1~第7プレート4a~4gの7枚のプレートが上から順番に積層されている。
【0063】
供給流路41における流入口411及び回収流路42における流出口421は、第1及び第2プレート4a,4bに形成された孔によって区画される。供給流路41における供給収容室412及び回収流路42における回収収容室422は、第2及び第3プレート4b,4cに形成された孔によって区画される。供給収容室412の供給外部開口412Bと回収収容室422の回収外部開口422Bとを共通に塞ぐ弾性フィルム43は、第1プレート4aと第2プレート4bとの間に挟まれて配置される。供給流路41における流入接続流路412A及び回収流路42における流出接続流路422Aは、第3プレート4cに形成された孔によって区画される。供給流路41における分岐接続流路4131は、第4プレート4dに形成された孔によって区画される。供給流路41における第1供給分岐流路413Aは、第5プレート4eに形成された孔によって区画される。回収流路42における第1回収分岐流路423Aは、第3プレート4cに形成された溝によって区画される。供給流路41における第2供給分岐流路413Bは、第5及び第6プレート4e,4fに形成された孔によって区画される。回収流路42における第2回収分岐流路423Bは、第4~第6プレート4d~4fに形成された孔によって区画される。
【0064】
圧電アクチュエータ基板5を収容する収容空間44は、第7プレート4gに形成された孔によって区画される。信号伝達部442が通される貫通孔441は、第1~第7プレート4a~4gに形成された孔によって区画される。
【0065】
第2流路部材4の下面における収容空間44に収容された圧電アクチュエータ基板5は、第1流路部材3の上面3Aに接合されている。圧電アクチュエータ基板5は、変位素子51が各個別流路31の加圧室313の各々の上方に位置するように配置される。各個別流路31の加圧室313の各々の開口は、第1流路部材3の上面3Aに圧電アクチュエータ基板5が接合されることで塞がれる。圧電アクチュエータ基板5には、変位素子51に信号を供給するためのFPCなどの信号伝達部442が接続されている。
【0066】
図5に示されるように、圧電アクチュエータ基板5は、圧電体である2枚の第1圧電セラミック層5A及び第2圧電セラミック層5Bからなる積層構造を有している。第1圧電セラミック層5A及び第2圧電セラミック層5Bのいずれの層も複数の加圧室313を跨ぐように延在している。第1圧電セラミック層5A及び第2圧電セラミック層5Bは、例えば、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO
3系、BaTiO
3系、(BiNa)NbO
3系、BiNaNb
5O
15系などのセラミックス材料からなる。
【0067】
圧電アクチュエータ基板5は、Ag-Pd系などの金属材料からなる共通電極52と、Au系などの金属材料からなる個別電極53と、を有している。個別電極53は、圧電アクチュエータ基板5の上面における各加圧室313に対向する位置に、それぞれ配置されている。個別電極53には、制御部9から信号伝達部442を通じて駆動信号が供給される。駆動信号は、ワークWの搬送と同期して一定の周期で供給される。共通電極52は、第1圧電セラミック層5Aと第2圧電セラミック層5Bとの間の領域に面方向のほぼ全面にわたって形成されている。すなわち、共通電極52は、圧電アクチュエータ基板5に対向する領域内のすべての加圧室313を覆うように延在している。共通電極52は、第1圧電セラミック層5A上に個別電極53からなる電極群を避ける位置に形成されている共通電極用表面電極(不図示)に、第1圧電セラミック層5Aを貫通して形成された貫通導体を介して繋がっている。また、共通電極52は、共通電極用表面電極を介して接地され、グランド電位に保持されている。共通電極用表面電極は、個別電極53と同様に、制御部9と直接的あるいは間接的に接続されている。
【0068】
第1圧電セラミック層5Aの個別電極53と共通電極52とに挟まれている部分は、厚み方向D3に分極されており、ユニモルフ構造の変位素子51となっている。制御部9からの制御でドライバICなどを介して、個別電極53に供給される駆動信号により、変位素子51が駆動(変位)させられる。様々な駆動信号で吐出孔315からインクを吐出させることができるが、例えば、高電位を基準として、一定期間低電位とするパルスの駆動信号を個別電極53に供給することで、吐出孔315からインクを吐出させることが可能である。
【0069】
具体的には、予め個別電極53を共通電極52より高い電位(高電位)にしておき、吐出要求があるごとに個別電極53を共通電極52と一旦同じ電位(低電位)とし、その後所定のタイミングで再び高電位とする。これにより、個別電極53が低電位になるタイミングで、第1圧電セラミック層5A及び第2圧電セラミック層5Bが元の平らな形状に戻り始め、加圧室313の体積が初期状態と比較して増加する。これにより、加圧室313内のインクに負圧が与えられる。そうすると、加圧室313内のインクが固有振動周期で振動し始める。具体的には、最初、加圧室313の体積が増加し始め、負圧は徐々に小さくなっていく。次いで加圧室313の体積は最大になり、圧力はほぼゼロとなる。次いで加圧室313の体積は減少し始め、圧力は高くなっていく。その後、圧力がほぼ最大になるタイミングで、個別電極53を高電位にする。そうすると最初に加えた振動と、次に加えた振動とが重なり、より大きい圧力がインクに加わる。この圧力がディセンダ314内を伝搬し、吐出孔315からインクが吐出される。
【0070】
つまり、高電位を基準として、一定期間低電位とするパルスの駆動信号を個別電極53に供給することで、吐出孔315からインクを吐出させることができる。このパルス幅は、加圧室313のインクの固有振動周期の半分の時間であるAL(Acoustic Length)とすると、原理的には、インクの吐出速度及び吐出量を最大にできる。
【0071】
本実施形態に係る液体吐出ヘッド2では、各個別流路31において、第1絞り部316は、第1共通流路32と加圧室313とを繋いでいる流路であり、第2絞り部317は、第2共通流路33と加圧室313とを繋いでいる流路である。このため、各個別流路31における吐出孔315からのインクの適切な吐出特性を確保するためには、第1絞り部316の流路抵抗は、第1共通流路32、加圧室313及びディセンダ314の各々の流路抵抗よりも大きい値に精度良く設定されることが求められる。同様に、第2絞り部317の流路抵抗は、第2共通流路33、加圧室313及びディセンダ314の各々の流路抵抗よりも大きい値に精度良く設定されることが求められる。
【0072】
第1絞り部316及び第2絞り部317の流路抵抗が小さすぎる場合、1つの個別流路31の加圧室313で発生した圧力波が、第1共通流路32及び第2共通流路33を介して他の個別流路31に伝達されて、各個別流路31の吐出孔315から吐出されるインクの吐出量が不安定になるクロストークが発生し得る。このようにクロストークが発生した場合、各個別流路31における吐出孔315からのインクの適切な吐出特性を確保することが難しくなる。一方、第1絞り部316及び第2絞り部317の流路抵抗が大きすぎる場合、第1共通流路32から各個別流路31へのインクの供給量が低下するとともに、各個別流路31から第2共通流路33へのインクの回収量が低下する。この場合にも、各個別流路31における吐出孔315からのインクの適切な吐出特性を確保することが難しくなる。各個別流路31における吐出孔315からのインクの適切な吐出特性を確保するためには、第1絞り部316及び第2絞り部317の各々の流路抵抗を、比較的大きい値に精度良く設定する必要がある。
【0073】
そこで、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2では、各個別流路31において、第1絞り部316及び第2絞り部317のそれぞれの流路抵抗は、互いの流路抵抗の差が所定の許容範囲内に収まるように設定されている。これにより、加圧室313を挟んで両側に配置される第1絞り部316と第2絞り部317との流路抵抗に許容範囲を超えた差のある場合と比較して、第1絞り部316及び第2絞り部317の各々の流路抵抗を、比較的大きい値に精度良く設定することができる。このため、各個別流路31における吐出孔315からのインクの適切な吐出特性を確保することが可能となる。
【0074】
本実施形態では、第2絞り部317の流路抵抗は、第1絞り部316の流路抵抗よりも15%以内の範囲で小さいことが好ましい。すなわち、第1絞り部316の流路抵抗をR1とし、第2絞り部317の流路抵抗をR2とした場合、0.85R1≦R2<R1を満たすようにR1及びR2が設定される。これにより、吐出孔315からのインクの適切な吐出特性を確保しつつ、吐出孔315から吐出されなかったインクを第2絞り部317を通じて第2共通流路33へ流し易くすることができる。この場合、第2絞り部317の流路断面積を第1絞り部316の流路断面積よりも大きくすることにより、第2絞り部317の流路抵抗を第1絞り部316の流路抵抗よりも小さくすることができる。
【0075】
また、循環部6のポンプ63の駆動に応じてヘッド本体21を介してインクが循環しているときに、各個別流路31の加圧室313の上方に配置された変位素子51が駆動されると、供給流路41及び第1共通流路32を含む供給系の流路から第1絞り部316を通じて加圧室313に供給されたインクの一部が吐出孔315から吐出される。この際、各個別流路31の吐出孔315から吐出されるインクの流量が所定値を超えて大きい場合、第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流する場合がある。このような各個別流路31へのインクの逆流について、
図10に示される流量変化のグラフを参照しながら説明する。
【0076】
循環部6のポンプ63が駆動されると、ヘッド本体21においては、供給系の流路となる供給流路41及び第1共通流路32と、各個別流路31と、回収系の流路となる第2共通流路33及び回収流路42と、を通じて、予め設定された循環流量QAでインクが循環する。循環流量QAでインクが循環しているときに変位素子51が駆動されると、供給系の供給流路41及び第1共通流路32から各個別流路31の第1絞り部316を通じて加圧室313に供給されたインクが印刷データに基づく吐出流量で吐出孔315から吐出され、吐出孔315から吐出されなかったインクが第2絞り部317を通じて回収系の第2共通流路33及び回収流路42に流れて回収される。
【0077】
変位素子51の駆動に応じて吐出孔315からのインクの吐出が開始されると、供給流路41の流入口411から流入するインクの流入流量は、供給流路41、第1共通流路32及び第1絞り部316の順に流れるインクの飽和流量を示す供給系飽和流量QS1に至るまで循環流量QAから徐々に上昇する。供給流路41の流入口411から流入するインクの流入流量は、印刷データに基づく吐出流量での吐出孔315からのインクの吐出中においては、供給系飽和流量QS1で一定に保持される。吐出孔315からのインクの吐出が終了されると、供給流路41の流入口411から流入するインクの流入流量は、循環流量QAに戻るまで供給系飽和流量QS1から徐々に下降する。
【0078】
一方、回収流路42の流出口421から流出するインクの流出流量は、変位素子51の駆動に応じて吐出孔315からのインクの吐出が開始されると、第2絞り部317、第2共通流路33及び回収流路42の順に流れるインクの飽和流量を示す回収系飽和流量QS2に至るまで循環流量QAから徐々に下降する。回収流路42の流出口421から流出するインクの流出流量は、印刷データに基づく吐出流量での吐出孔315からのインクの吐出中においては、回収系飽和流量QS2で一定に保持される。吐出孔315からのインクの吐出が終了されると、回収流路42の流出口421から流出するインクの流出流量は、循環流量QAに戻るまで回収系飽和流量QS2から徐々に上昇する。
【0079】
ここで、ヘッド本体21を介してインクが循環するときの循環流量QAは、インク中の揮発成分の蒸発に伴うインクの粘度上昇を抑制するために、ヘッド本体21において外部に開口した吐出孔315付近でのインクの滞留を規制可能となるように、予め設定される。また、ヘッド本体21においては、吐出孔315からインクを吐出するときの吐出流量の最大許容値を示す最大吐出流量QBが、予め設定されている。最大吐出流量QBは、例えば、循環流量QAの2倍よりも大きい値に設定される。
【0080】
また、供給系の供給流路41及び第1共通流路32と、各個別流路31における第1絞り部316及び第2絞り部317と、回収系の第2共通流路33及び回収流路42との各々の流路抵抗Rについて、流路断面形状が矩形状の場合の流路抵抗Rは、下記式(1)に従って算出される。
【0081】
【0082】
式(1)中、「a」は矩形の流路断面の長辺の長さを表し、「b」は矩形の流路断面の短辺の長さを表し、「L」はインクの流れ方向に沿った流路の長さを示す流路長を表し、「v」はインクの粘度を表す。なお、式(1)中の「X」は、下記式(2)に従って算出される。
【0083】
【0084】
式(2)中、「a」及び「b」は式(1)と同じであり、「π」は円周率を表し、「h」は減衰定数を表す。
【0085】
式(1)から明らかなように、供給系の供給流路41及び第1共通流路32と、各個別流路31における第1絞り部316及び第2絞り部317と、回収系の第2共通流路33及び回収流路42との各々の流路抵抗Rは、流路断面積と流路長とによって調整することができる。本実施形態では、各流路の流路抵抗Rは、各流路の流路断面積によって調整する。
【0086】
吐出孔315から最大吐出流量QBでインクが吐出されるインクの吐出中における供給系飽和流量QS1は、循環流量QA及び最大吐出流量QBを用いた下記式(3)に従って算出される。
【0087】
【0088】
式(3)中、「RS1」は第1共通流路32と供給流路41と第1絞り部316との合成流路抵抗を示す供給系合成流路抵抗を表し、「RS2」は第2共通流路33と回収流路42と第2絞り部317との合成流路抵抗を示す回収系合成流路抵抗を表す。
【0089】
式(3)から明らかなように、供給系飽和流量QS1は、予め設定された循環流量QA及び最大吐出流量QBと、供給系合成流路抵抗RS1と、回収系合成流路抵抗RS2と、によって決まる。
【0090】
吐出孔315から最大吐出流量QBでインクが吐出されるインクの吐出中における回収系飽和流量QS2は、供給系飽和流量QS1及び最大吐出流量QBに基づいて、下記式(4)に従って算出される。
【0091】
【0092】
回収系飽和流量QS2は、供給系飽和流量QS1及び最大吐出流量QBに基づくのであるから、供給系飽和流量QS1と同様に、予め設定された循環流量QA及び最大吐出流量QBと、供給系合成流路抵抗RS1と、回収系合成流路抵抗RS2と、によって決まる。
【0093】
最大吐出流量QBが循環流量QAの2倍よりも大きい値に設定されている場合において、供給系合成流路抵抗RS1と回収系合成流路抵抗RS2とが同一の場合を想定する。この場合、式(3)及び式(4)より、回収系飽和流量QS2は、0(ゼロ)を下回る。例えば、循環流量QAを20ml/min、最大吐出流量QBを100ml/minとした場合において、供給系合成流路抵抗RS1と回収系合成流路抵抗RS2とが同一の場合には、式(3)より供給系飽和流量QS1は70ml/minとなり、式(4)より回収系飽和流量QS2は-30ml/minとなって、回収系飽和流量QS2が0(ゼロ)を下回る。回収系飽和流量QS2が0(ゼロ)を下回る場合には、吐出孔315からのインクの吐出中において、第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流することになる。
【0094】
第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流すると、各個別流路31に逆流したインクが吐出孔315から吐出されるため、吐出されたインクが着弾することでワークWに形成される画像の品質が低下する虞がある。例えば、第1共通流路32及び供給流路41を含む供給系の流路に第1フィルタ311Aと第2フィルタ412Cとが設けられているのに対し、回収系の流路にフィルタが設けられていない場合には、異物などを含むインクが回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31に逆流することになる。この場合、異物などを含むインクが吐出孔315から吐出されるので、異物などに起因してワークWの画像の品質が低下する。
【0095】
吐出孔315からのインクの吐出中における、第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流するのを抑制するためには、下記式(5)に示されるように、吐出孔315からのインクの吐出中において、供給系飽和流量QS1及び最大吐出流量QBに基づく回収系飽和流量QS2が0(ゼロ)を下回らないようにする必要がある。
【0096】
【0097】
そこで、本実施形態に係る液体吐出ヘッド2においては、第2共通流路33と回収流路42と第2絞り部317との合成流路抵抗を示す回収系合成流路抵抗RS2は、第1共通流路32と供給流路41と第1絞り部316との合成流路抵抗を示す供給系合成流路抵抗RS1よりも大きい。すなわち、回収流路42、当該回収流路42に接続された第2共通流路33、当該第2共通流路33に接続された第2絞り部317の合成流路抵抗を示す回収系合成流路抵抗RS2は、供給流路41、当該供給流路41に接続された第1共通流路32、当該第1共通流路32に接続された第1絞り部316の合成流路抵抗を示す供給系合成流路抵抗RS1よりも大きい。例えば、循環流量QAを20ml/min、最大吐出流量QBを100ml/minとした場合において、供給系合成流路抵抗RS1と回収系合成流路抵抗RS2との比を1:10とした場合を想定する。この場合、式(3)より供給系飽和流量QS1は110.9ml/minとなり、式(4)より回収系飽和流量QS2は10.9ml/minとなって、回収系飽和流量QS2が式(5)を満たして0(ゼロ)を下回らない。
【0098】
供給系合成流路抵抗RS1と回収系合成流路抵抗RS2とが同一の場合と比較して、回収系合成流路抵抗RS2を供給系合成流路抵抗RS1よりも大きくすることによって、回収流路42の流出口421から流出するインクの流出流量について、循環流量QAと回収系飽和流量QS2との間の流量変化を小さくすることができる。これにより、流出口421からのインクの流出流量について、回収系飽和流量QS2が0(ゼロ)を下回ることを抑制することが可能となって、第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流するのを抑制することが可能となる。
【0099】
回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流するのを確実に抑制するためには、回収系合成流路抵抗RS2は、式(3)及び式(5)から導かれる、循環流量QA及び最大吐出流量QBを用いた下記式(6)を満たすように、供給系合成流路抵抗RS1よりも大きい値に設定すればよい。
【0100】
【0101】
既述の通り、式(1)から明らかなように、供給系の供給流路41及び第1共通流路32と、各個別流路31における第1絞り部316及び第2絞り部317と、回収系の第2共通流路33及び回収流路42との各々の流路抵抗Rは、各流路の流路断面積によって調整することができる。このため、本実施形態では、第2共通流路33と回収流路42と第2絞り部317とのそれぞれの流路断面積の合計面積は、第1共通流路32と供給流路41と第1絞り部316とのそれぞれの流路断面積の合計面積よりも小さい。これにより、回収系合成流路抵抗RS2を供給系合成流路抵抗RS1よりも大きくすることができる。
【0102】
本実施形態では、第2共通流路33の流路抵抗Rは、第1共通流路32の流路抵抗Rよりも大きい。例えば、第2共通流路33の流路断面積を第1共通流路32の流路断面積よりも小さくすることにより、第2共通流路33の流路抵抗Rを第1共通流路32の流路抵抗Rよりも大きくすることができる。これにより、回収系合成流路抵抗RS2が供給系合成流路抵抗RS1よりも大きくなるように、回収系合成流路抵抗RS2及び供給系合成流路抵抗RS1を設定することができる。このため、第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流することを、より確実に抑制することが可能となる。
【0103】
また、本実施形態では、回収流路42の流路抵抗Rは、供給流路41の流路抵抗Rよりも大きい。具体的には、回収流路42の回収分岐流路423における第1回収分岐流路423Aの流路抵抗Rは、供給流路41の供給分岐流路413における第1供給分岐流路413Aの流路抵抗Rよりも大きい。例えば、第1回収分岐流路423Aの流路断面積を第1供給分岐流路413Aの流路断面積よりも小さくすることにより、第1回収分岐流路423Aの流路抵抗Rを第1供給分岐流路413Aの流路抵抗Rよりも大きくすることができる。これにより、回収系合成流路抵抗RS2が供給系合成流路抵抗RS1よりも大きくなるように、回収系合成流路抵抗RS2及び供給系合成流路抵抗RS1を設定することができる。このため、第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流することを、より確実に抑制することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態では、第2共通流路33の流路抵抗Rは、第1共通流路32の流路抵抗Rよりも大きく、且つ、回収流路42の流路抵抗Rは、供給流路41の流路抵抗Rよりも大きい。これにより、回収系合成流路抵抗RS2が供給系合成流路抵抗RS1よりも大きくなるように、回収系合成流路抵抗RS2及び供給系合成流路抵抗RS1を設定することができる。このため、第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流することを、より確実に抑制することが可能となる。
【0105】
また、液体吐出ヘッド2の外部に配置される循環部6において、回収流路42の流出口421に接続される外部回収流路部材65の流路抵抗を、供給流路41の流入口411に接続される外部供給流路部材64の流路抵抗よりも大きい値に設定してもよい。この場合にも、第2共通流路33及び回収流路42を含む回収系の流路から第2絞り部317を通じて各個別流路31にインクが逆流することを抑制することが可能となる。
【0106】
供給流路41の流入口411から流入するインクの流入流量と、回収流路42の流出口421から流出するインクの流出流量とについて、吐出孔315からのインクの吐出開始時における流量変化の挙動は、下記式(7)で示される圧力損失Pと、下記式(8)で示される減衰比dとによって決まる。
【0107】
【0108】
式(7)中、「R」は供給系及び回収系の各流路の流路抵抗を表し、「U」は流入流量及び流出流量の流量変化を表す。
【0109】
【0110】
式(8)中、「C」は供給収容室412及び回収収容室422の各々におけるコンプライアンスを表し、「R」は供給系及び回収系の各流路の流路抵抗を表し、「M」は供給収容室412及び回収収容室422の各々におけるイナータンスを表す。
【0111】
供給収容室412及び回収収容室422の各々におけるコンプライアンスCは、供給収容室412の供給外部開口412Bと回収収容室422の回収外部開口422Bとを塞ぐ弾性フィルム43の弾性変形に応じた単位圧力当たりの体積変位量を示す。コンプライアンスCは、流路内のインクの体積をVとし、流路内でインクに加わる圧力をpとすると、C=ΔV/Δpで定義される。供給収容室412及び回収収容室422の各々におけるイナータンスMは、インクの密度をρとし、インクの流れ方向に沿った流路長をLとし、流路断面積をSとすると、M=ρL/Sで定義される。
【0112】
本実施形態では、回収系合成流路抵抗RS2が供給系合成流路抵抗RS1よりも大きいため、式(8)より、供給系の供給収容室412よりも回収系の回収収容室422が減衰し易い。このため、吐出孔315からのインクの吐出開始時において、回収系の回収収容室422よりも供給系の供給収容室412内のインクが大きく圧力振動することになる。
【0113】
そこで、回収系合成流路抵抗RS2が供給系合成流路抵抗RS1よりも大きい状態において、供給収容室412における減衰比dと回収収容室422における減衰比dとが同じになるように、供給収容室412のコンプライアンスCは、回収収容室422のコンプライアンスCよりも大きい。この場合、供給収容室412のイナータンスMと回収収容室422のイナータンスMとを同一にする。
【0114】
供給収容室412のコンプライアンスCは、例えば、供給収容室412において弾性フィルム43で塞がれる供給外部開口412Bの開口面積によって調整することができる。同様に、回収収容室422のコンプライアンスCは、例えば、回収収容室422において弾性フィルム43で塞がれる回収外部開口422Bの開口面積によって調整することができる。なお、弾性フィルム43として、供給収容室412の供給外部開口412Bを塞ぐ第1弾性フィルムと、回収収容室422の回収外部開口422Bを塞ぐ第2弾性フィルムとが配置されている場合には、第1弾性フィルム及び第2弾性フィルムの各々の弾性変形に関するヤング率や弾性フィルム43の厚さによって、供給収容室412及び回収収容室422の各々のコンプライアンスCを調整してもよい。
【0115】
供給収容室412及び回収収容室422の各々の減衰比dが同一となるように、供給収容室412のコンプライアンスCを回収収容室422のコンプライアンスCよりも大きくすることで、吐出孔315からのインクの吐出開始時において、供給収容室412及び回収収容室422の各々におけるインクの圧力振動を同一にすることができる。
【符号の説明】
【0116】
1 プリンタ(液体吐出装置)
2 液体吐出ヘッド
3 第1流路部材
31 個別流路
311 一端部
312 他端部
313 加圧室
315 吐出孔
316 第1絞り部
317 第2絞り部
32 第1共通流路
321 第1開口
33 第2共通流路
331 第2開口
4 第2流路部材
41 供給流路
411 流入口
412 供給収容室
42 回収流路
421 流出口
422 回収収容室
43 弾性フィルム
5 圧電アクチュエータ基板
51 変位素子(加圧部)
6 循環部
61 供給貯留部
62 回収貯留部
63 ポンプ
64 外部供給流路部材
65 外部回収流路部材