(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150714
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】歯科用スクリュー及び歯科用固定器具
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20241016BHJP
A61C 1/18 20060101ALI20241016BHJP
B25B 23/153 20060101ALI20241016BHJP
F16B 23/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C1/18
B25B23/153
F16B23/00 U
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121823
(22)【出願日】2024-07-29
(62)【分割の表示】P 2021573296の分割
【原出願日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】19182620.5
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506260386
【氏名又は名称】ノベル バイオケア サーヴィシィズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲル, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャンセン, ピアーズ
(72)【発明者】
【氏名】エチリン, カリン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歯科用スクリューと、歯科用固定器具とを含む歯科用固定セットを提供する。
【解決手段】歯科用スクリュー10と、歯科用固定器具とを含む歯科用固定セットであって、歯科用スクリュー及び歯科用固定器具はそれぞれ、トルク制限部分を含み、歯科用スクリューのトルク制限部分は、歯科用固定器具のトルク制限部分により伝達可能な最大トルクよりも高い最大トルクに耐えるように構成されている、歯科用固定セット。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用スクリュー(10)と、歯科用固定器具(30)とを含む歯科用固定セットであって、
歯科用スクリュー及び歯科用固定器具はそれぞれ、トルク制限部分(115、35)を含み、歯科用スクリューのトルク制限部分(115)は、歯科用固定器具のトルク制限部分(35)により伝達可能な最大トルクよりも高い最大トルクに耐えるように構成されている、歯科用固定セット。
【請求項2】
歯科用スクリュー(10)は、器具係合インターフェース(20)を含み、器具係合インターフェース(20)は、凹状セクション(22)と交互になっている凸状及び/または平状セクション(21)を含む断面を有するトルク伝達ゾーン(25b)を含み、
歯科用固定器具(30)は、スクリュー係合インターフェース(40)を含み、スクリュー係合インターフェース(40)は、凹状セクション(42)と交互になっている凸状及び/または平状セクション(41)を含むトルク伝達ゾーン(45b)を含み、
トルクを伝達するための歯科用スクリュー及び歯科用固定器具の係合状態で、歯科用スクリューの凸状及び/または平状セクションの各々の少なくとも中間セクションは、ある距離で器具係合インターフェース(20)の凹状セクション(22)のプロファイルに面している、請求項1に記載の歯科用固定セット。
【請求項3】
歯科用スクリュー(10)のトルク伝達ゾーン(25b)、及び歯科用固定器具(30)のトルク伝達ゾーン(45b)は、互いに係合しているときに回転式の遊び、特に1°から3.5°、好ましくは1.5°から3°の範囲の遊びを有する、請求項1または2に記載の歯科用固定セット。
【請求項4】
歯科用スクリュー(10)及び歯科用固定器具(30)はそれぞれ、摩擦によって互いに係合するように構成されたピックアップゾーン(25a、45a)を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の歯科用固定セット。
【請求項5】
歯科用スクリュー(10)及び歯科用固定器具(30)はそれぞれ、歯科用固定セットが完全に係合したときに、歯科用固定器具(30)のトルク伝達ゾーン(45b)及び歯科用スクリュー(10)のトルク伝達ゾーン(25b)の係合を可能にするように構成された検証ゾーンを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の歯科用固定セット。
【請求項6】
歯科用スクリュー(10)が、歯科用コンポーネント(1、2)を互いに固定するためのものであり、歯科用スクリュー(10)が、近位端(11)、遠位端(12)、及び長手方向軸(LS)を有し、歯科用スクリュー(10)が、歯科用固定器具(30)を係合するための器具係合インターフェース(20)を含むスクリューヘッド(13)を近位端にさらに含み、かつスクリューヘッド(13)の遠位にスクリューシャンク(14)をさらに含み、スクリューシャンク(14)は、トルク制限部分(115)、及びトルク制限部分(115)の遠位に歯科用コンポーネント(1、2)と係合するためのねじ状部分(16)を含み、歯科用スクリューは、26Ncmの最小トルクを伝達するように構成され、トルク制限部分は、ねじ状部分に対する損傷を防ぐために、伝達可能なトルクを最大トルクに制限するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の歯科用固定セット。
【請求項7】
トルク制限部分(115)がスクリューシャンクに沿って最小の断面係数を有し、好ましくは、断面係数は、器具係合インターフェースを介して加えられるトルクを伝達するように設計されたスクリューヘッドの任意の断面よりも小さい、請求項6に記載の歯科用固定セット。
【請求項8】
歯科用スクリュー(10)のトルク制限部分(115)で伝達可能な最大トルクが、38Ncm、36Ncm、34Ncm、または32Ncmであり、特に、トルク制限部分(115)が、300Nから500Nの範囲、好ましくは350Nから450Nの範囲の最大引張力に耐えるように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の歯科用固定セット。
【請求項9】
器具係合インターフェース(20)は、各々4つまたは5つの凹状セクション(22)と交互になっている4つまたは5つの凸状及び/または平状セクション(21)のプロファイルを含む長手方向軸(LS)に垂直な断面を有するトルク伝達ゾーン(25b)を含み、特に、凸状セクション(21)及び凹状セクション(22)が、最大内径(26)を有する円から長手方向軸(LS)に向かって半径方向に延びる長手方向係合突起(24)を形成し、長手方向係合突起(24)は、好ましくはそれらの近位端に面取り(27)を有する、請求項6項に記載の歯科用固定セット。
【請求項10】
器具係合インターフェース(20)が、歯科用スクリューの近位端(11)から遠位端(12)に向かう方向に先細りする歯科用スクリュー(10)のピックアップゾーン(25a)を含み、好ましくは、ピックアップゾーン(25a)が、トルク伝達ゾーン(25b)に隣接して、トルク伝達ゾーン(25b)の近位に、及び/または少なくとも部分的にトルク伝達ゾーン(25b)に沿って位置される、請求項6に記載の歯科用固定セット。
【請求項11】
歯科用スクリュー(10)のトルク制限部分(115)が、器具係合インターフェース(20)に対して遠位に位置されている、請求項6に記載の歯科用固定セット。
【請求項12】
歯科用固定器具(30)が、近位端(31)、遠位端(32)、及び長手方向軸(LT)を有し、歯科用固定器具(30)が、歯科用スクリュー(10)を係合するために遠位端にスクリュー係合インターフェース(40)を備え、かつスクリュー係合インターフェースの近位にトルク制限部分(35)を備え、トルク制限部分は、スクリュー係合インターフェースに対する損傷を防ぐために、伝達可能なトルクを最大トルクに制限するように構成されており、歯科用固定器具(30)のトルク制限部分(35)は、35Ncm以下の最大トルク、好ましくは27.5Ncmから34Ncmの範囲、より好ましくは28Ncmから33Ncmの範囲の最大トルクに耐えるように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の歯科用固定セット。
【請求項13】
シャンク(36)が、スクリュー係合インターフェース(40)と歯科用固定器具(30)のトルク制限部分(35)との間に配置され、トルク制限部分(35)は、スクリュー係合インターフェース(40)とシャンク(36)に隣接するくびれ部分の断面係数よりも小さい断面係数を有する、請求項12に記載の歯科用固定セット。
【請求項14】
スクリュー係合インターフェース(40)は、各々4つまたは5つの凹状セクション(42)と交互になっている4つまたは5つの凸状及び/または平状セクション(41)を含む長手方向軸(LT)に垂直な断面を有するトルク伝達ゾーン(45b)を含み、
凸状及び/または平状セクション(21)及び凹状セクション(22)は、歯科用固定器具に沿って長手方向軸(LT)の周りに係合構造(44)を形成し、係合構造(44)は、好ましくは、長手方向軸(LT)に沿った断面において湾曲したプロファイルを有し、特に、凸状及び/または平状セクション(41)及び凹状セクション(42)は、移行点(43)で接続され、各移行点で、凹状セクションのプロファイルに対する接線と凸状セクションまたは平状セクションに対する接線との間の角度αは、90°から180°または90°から160°の範囲、好ましくは95°から150°の範囲である、請求項12に記載の歯科用固定セット。
【請求項15】
スクリュー係合インターフェース(40)は、歯科用スクリュー(10)を保持するためのピックアップゾーン(45a)を含み、ピックアップゾーンは、円錐形を有するか、又は縦断面における湾曲したプロファイルを有し、ピックアップゾーン(45a)は、好ましくは、トルク伝達ゾーン(45b)に隣接して、トルク伝達ゾーン(45b)の近位に、及び/または少なくとも部分的にトルク伝達ゾーン(45b)に沿って配置される、請求項4~12のいずれか1項に記載の歯科用固定セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用スクリュー、歯科用固定器具、歯科用固定セット、及び歯科修復支持セットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科インプラントを使用して患者の口内に固定される歯科修復物は、1本または複数の歯を置換するための非常に成功した解決策であることが証明されている。今では、患者の歯列への歯科修復物の整容的な統合を可能にする利用可能な歯科治療のための多くの技術がある。さらに、これらの歯科修復物は、機能的な観点からも、それらが置き換える1本または複数の天然歯と基本的に同一であるため、患者は健常な天然歯と比較して大きな変化を経ない。
【0003】
カスタマイズされた、経済的な方法で歯科修復物のそのような解決を患者に提供できるようにするために、歯科修復物は一般にモジュール式の設計を有する。したがって、これらの歯科修復物は、置換に望ましい結果をもたらす歯科用コンポーネントの組み合わせを選択することにより、個々の患者に適合される。歯科用コンポーネントを組み合わせたものは、単に人工歯に直接接続された歯科インプラントである場合がある。より一般的には、それは、アバットメント、歯科インプラント、及び人工歯を組み合わせたものであり、アバットメントは、歯科インプラントと人工歯との間に配置される。このようなアバットメントは、ワンピースアバットメントとマルチピースアバットメントとして利用できる。歯科修復物に存在する可能性のあるさらなる構成要素は、ブリッジ要素、キャップなどである。
【0004】
歯科用コンポーネントの組み合わせを組み立てる最も一般的な手法の1つは、歯科用スクリューの使用である。歯科用スクリューは、歯科修復物の組み立てと分解の両方を可能にする。これは、歯科技工所や歯科医院の椅子の場で歯科修復物を適合させるので特に有利である。さらに、スクリューを使用すると、例えばこれらのコンポーネントを接続するために歯科用セメントを使用する場合よりも、歯科修復物の少なくとも一部の修正がはるかに容易になる。そのような歯科用スクリューはWO2018/091515A1、WO2017/070335A1、及びUS8,029,282B2で提案されている。
【0005】
ただし、コンポーネントの数が増えると、歯科修復物の適合性を最適化するために、より小さなサイズの歯科用スクリューが必要になる。より小さい歯科用スクリューはまた、前歯のようにスペースがかなり限られている歯列の領域でより多大な柔軟性をもたらす。
【0006】
これらの歯科用スクリューは、歯科用コンポーネントを相互に組み立て固定するために使用され、咀嚼力は主に歯科用コンポーネントを介して伝達される。したがって、歯科用スクリューの主な機能は、アセンブリを取り付けて維持することである。さらに、歯科用スクリューが小さいほど、咀嚼力に耐えるための強度を高めるために、歯科用コンポーネントにより多くの材料を設計することができる。
【発明の概要】
【0007】
上記を考慮して、本開示の目的の1つは、サイズのさらなる縮小を可能にする設計を歯科用スクリューに設けることであった。ただし、スクリューが小さいほど、これらのスクリューの取り扱いは難しくなる。結果として、本開示の別の目的は、そのような小さな歯科用スクリューの取り扱いを改善することになった。さらに、サイズを小さくしたこれらの歯科用スクリューは、特にスクリューを締め付けている最中にトルクを伝達するときに、スクリューまたは歯科用コンポーネントに損傷を与えるリスクに耐える。したがって、固定器具、スクリュー、及び/または歯科用コンポーネント間のトルクの伝達を改善することが、本開示のさらに別の目的となった。本発明者らはまた、これらの歯科用スクリュー、ドライバー、及び歯科用コンポーネントの費用効果の高い製造を心に抱いていた。
【0008】
これらの目的に対処するために、本開示は、歯科用コンポーネントを互いに固定するための歯科用スクリューを提供する。歯科用スクリューには、近位端、遠位端、及び長手方向軸がある。歯科用スクリューは、固定器具を係合するための器具係合インターフェースを含むスクリューヘッドを近位端にさらに含み、かつスクリューヘッドの遠位にスクリューシャンクをさらに含む。スクリューシャンクは、トルク制限部分と、トルク制限部分の遠位に歯科用コンポーネントと係合するためのねじ状部分とを備える。歯科用スクリューは、26Ncmの最小トルクを伝達するように構成され、トルク制限部分は、ねじ状部分への損傷を防ぐために、特に最大引張及びまたは剪断応力において、伝達可能なトルクを所定の最大のトルクに制限するように構成される。
具体的には、本願発明によれば、以下の[1]~[20]の構成が提供される。
[1]歯科用コンポーネント(1、2)を互いに固定するための歯科用スクリュー(10)であって、歯科用スクリュー(10)が、近位端(11)、遠位端(12)、及び長手方向軸(LS)を有し、歯科用スクリュー(10)が、固定器具(30)を係合するための器具係合インターフェース(20)を含むスクリューヘッド(13)を近位端にさらに含み、かつスクリューヘッド(13)の遠位にスクリューシャンク(14)をさらに含み、スクリューシャンク(14)は、トルク制限部分(15)、及びトルク制限部分(15)の遠位に歯科用コンポーネント(1、2)と係合するためのねじ状部分(16)を含み、歯科用スクリューは、26Ncmの最小トルクを伝達するように構成され、トルク制限部分は、ねじ状部分に対する損傷を防ぐために、伝達可能なトルクを最大トルクに制限するように構成されている、歯科用スクリュー(10)。
[2]トルク制限部分(15)がスクリューシャンクに沿って最小の断面係数を有する、[1]に記載の歯科用スクリュー(10)。
[3]トルク制限部分(15)で伝達可能な最大トルクが、38Ncm、36Ncm、34Ncm、または32Ncmである、[1]または[2]に記載の歯科用スクリュー(10)。
[4]トルク制限部分(15)が、300Nから500Nの範囲、好ましくは350Nから450Nの範囲の最大引張力に耐えるように構成される、[1]~[3]のいずれか1項に記載の歯科用スクリュー(10)。
[5]器具係合インターフェース(20)は、各々4つまたは5つの凹状セクション(22)と交互になっている4つまたは5つの凸状及び/または平状セクション(21)のプロファイルを含む長手方向軸(LS)に垂直な断面を有するトルク伝達ゾーン(25b)を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載の歯科用スクリュー(10)。
[6]凸状セクション(21)及び凹状セクション(22)が、最大内径(26)を有する円から長手方向軸(LS)に向かって半径方向に延びる長手方向係合突起(24)を形成し、長手方向係合突起(24)は、好ましくはそれらの近位端に面取り(27)を有する、[5]に記載の歯科用スクリュー(10)。
[7]器具係合インターフェース(20)が、歯科用スクリューの近位端(11)から遠位端(12)に向かう方向に先細りするピックアップゾーン(25a)を含み、好ましくは、ピックアップゾーン(25a)が、トルク伝達ゾーン(25b)に隣接して、トルク伝達ゾーン(25b)の近位に、及び/または少なくとも部分的にトルク伝達ゾーン(25b)に沿って位置される、[1]~[6]のいずれか1項に記載の歯科用スクリュー(10)。
[8]器具係合インターフェース(20)は、歯科用スクリュー(10)のタイプを検証するための検証ゾーン(25c)をさらに含み、検証ゾーン(25c)は、好ましくは、器具係合インターフェースの遠位端に位置される、[1]~[7]のいずれか1項に記載の歯科用スクリュー(10)。
[9]近位端(31)、遠位端(32)、及び長手方向軸(LT)を有する歯科用固定器具(30)であって、歯科用固定器具(30)が、歯科用スクリュー(10)、特に[1]~[8]のいずれか1項に記載の歯科用スクリューを係合するために遠位端にスクリュー係合インターフェース(40)を備え、かつスクリュー係合インターフェースの近位にトルク制限部分(35)を備え、トルク制限部分は、スクリュー係合インターフェースに対する損傷を防ぐために、伝達可能なトルクを最大トルクに制限するように構成されている、歯科用固定器具(30)。
[10]トルク制限部分(35)は、35Ncm以下の最大トルク、好ましくは27.5Ncmから34Ncmの範囲、より好ましくは28Ncmから33Ncmの範囲の最大トルクに耐えるように構成されている、[9]に記載の歯科用固定器具。
[11]スクリュー係合インターフェース(40)は、各々4つまたは5つの凹状セクション(42)と交互になっている4つまたは5つの凸状及び/または平状セクション(41)を含む長手方向軸(LT)に垂直な断面を有するトルク伝達ゾーン(45b)を含み、
凸状及び/または平状セクション(21)及び凹状セクション(22)は、歯科用固定器具に沿って長手方向軸(LT)の周りに係合構造(44)を形成し、係合構造(44)は、好ましくは、長手方向軸(LT)に沿った断面において湾曲したプロファイルを有する、[9]または[10]に記載の歯科用固定器具(30)。
[12]凸状及び/または平状セクション(41)及び凹状セクション(42)は、移行点(43)で接続され、各移行点で、凹状セクションのプロファイルに対する接線と凸状セクションまたは平状セクションに対する接線との間の角度αは、90°から180°または90°から160°の範囲、好ましくは95°から150°の範囲である、[11]に記載の歯科用固定器具(30)。
[13]スクリュー係合インターフェース(40)は、歯科用スクリュー(10)を保持するためのピックアップゾーン(45a)を含み、ピックアップゾーン(45a)は、好ましくは、トルク伝達ゾーン(45b)に隣接して、トルク伝達ゾーン(45b)の近位に、及び/または少なくとも部分的にトルク伝達ゾーン(45b)に沿って配置される、[9]~[12]のいずれか1項に記載の歯科用固定器具(30)。
[14]スクリュー係合インターフェース(40)は、歯科用スクリューを係合するときに歯科用スクリュー(10)のタイプを検証するための検証ゾーン(45c)をさらに含み、検証ゾーン(45c)は、好ましくは、器具係合インターフェースの遠位端に位置される、[9]~[13]のいずれか1項に記載の歯科用固定器具(30)。
[15]歯科用スクリュー(10)、特に[1]から[8]のいずれか1項に記載の歯科用スクリュー(10)と、歯科用固定器具(30)、特に[9]から[14]のいずれか1項に記載の歯科用固定器具(30)とを含む歯科用固定セットであって、
歯科用スクリュー及び歯科用固定器具はそれぞれ、トルク制限部分(15、35)を含み、歯科用スクリューのトルク制限部分(15)は、歯科用固定器具のトルク制限部分(35)により伝達可能な最大トルクよりも高い最大トルクに耐えるように構成されている、歯科用固定セット。
[16]歯科用スクリュー(10)は、器具係合インターフェース(20)を含み、器具係合インターフェース(20)は、凹状セクション(22)と交互になっている凸状及び/または平状セクション(21)を含む断面を有するトルク伝達ゾーン(25b)を含み、
歯科用固定器具(30)は、スクリュー係合インターフェース(40)を含み、スクリュー係合インターフェース(40)は、凹状セクション(42)と交互になっている凸状及び/または平状セクション(41)を含むトルク伝達ゾーン(45b)を含み、
トルクを伝達するための歯科用スクリュー及び歯科用固定器具の係合状態で、歯科用スクリューの凸状及び/または平状セクションの各々の少なくとも中間セクションは、ある距離で器具係合インターフェース(20)の凹状セクション(22)のプロファイルに面している、[15]に記載の歯科用固定セット。
[17]歯科用スクリュー(10)のトルク伝達ゾーン(25b)、及び歯科用固定器具(30)のトルク伝達ゾーン(45b)は、互いに係合しているときに回転式の遊び、特に1°から3.5°、好ましくは1.5°から3°の範囲の遊びを有する、[15]または[16]に記載の歯科用固定セット。
[18]歯科用スクリュー(10)及び歯科用固定器具(30)はそれぞれ、摩擦によって互いに係合するように構成されたピックアップゾーン(25a、45a)を備える、[15]~[17]のいずれか1項に記載の歯科用固定セット。
[19]歯科用スクリュー(10)及び歯科用固定器具(30)はそれぞれ、歯科用固定セットが完全に係合したときに、歯科用固定器具(30)のトルク伝達ゾーン(45b)及び歯科用スクリュー(10)のトルク伝達ゾーン(25b)の係合を可能にするように構成された検証ゾーン(25c、45c)を備える、[15]~[18]のいずれか1項に記載の歯科用固定セット。
[20][1]~[8]のいずれか1項に記載の歯科用スクリュー、及び歯科用コンポーネント(1;2)を含む歯科修復支持セットであって、歯科用コンポーネントは、特に、歯科用インプラント(3)、アバットメント(2)、及び/または人工歯である、歯科修復支持セット。
【0009】
スクリューシャンクの一部として実装されたトルク制限部分は、最大のトルク、特に最大引張及び/または剪断応力を超えている場合、スクリューシャンクを破損させる。換言すれば、トルク制限部分の歯科用スクリューの材料は、最大のトルクを超え、器具係合インターフェースを介して加えられるトルクによって引き起こされる剪断力に耐えることができない。ただし、歯科用スクリューは、歯科用コンポーネントを互いにしっかりと固定できるように、26Ncmの最小のトルクを伝達するように構成されている。
【0010】
その結果、トルク制限部分は、歯科用スクリューのねじ状部分、ならびに歯科用スクリューが係合している歯科用コンポーネントのねじ状部分への損傷を防止する。例えば、歯科用コンポーネントは歯科用インプラントであり得、歯科用スクリューがインプラントへの損傷を防ぐようにする。結果として、それはまた、歯科用スクリューのこの構成が、そのような損傷によるインプラントの修正を防ぐことを、患者に利益としてもたらす。
【0011】
概して、歯科用スクリューは、第2の歯科用コンポーネントをこの第1の歯科用コンポーネントに固定するために、第1の歯科用コンポーネントとねじ式で係合している。トルク制限部分での歯科用スクリューの所定の破損の結果に起因して、歯科用スクリューが固定することを意図している第2の歯科用コンポーネントは、容易に取り外すことができる。さらに、破損後に第1の歯科用コンポーネントと係合した状態を維持するシャンクのセクションはまた、プライヤなどの器具を使用して簡単に取り外すことができる。その結果、第1の歯科用コンポーネントは無傷のままであり、置換する必要はない。実際、置換する必要がある部品は歯科用スクリューだけである。
【0012】
トルク制限部分は、好ましくは、スクリューヘッドに隣接して(部分的に)配置され、トルク制限部分の破損後、歯科用コンポーネントと係合するシャンクの大部分が、破損前に歯科用スクリューが係合した歯科用コンポーネント内に留まるようにする。これは、この歯科用コンポーネントから歯科用スクリューの残りのシャンクを簡単に取り除くのを促進する。換言すれば、トルク制限部分は、好ましくは、スクリューの冠(近位)部分にある。
【0013】
トルク制限部分が存在するため、歯科用コンポーネントに損傷を与える可能性のある歯科用スクリューのセクションでの歯科用スクリューの破損のリスクを冒すことなく、歯科用スクリューのサイズを小さくすることがさらに可能である。
【0014】
トルク制限部分で歯科用スクリューを弱体化するために、トルク制限部分は、シャンクに沿って最小の断面係数を有するようにし得る。
【0015】
したがって、トルク制限部分の断面は、トルクに対する抵抗が最小になるように設計されており、したがって、トルク制限部分が伝達するように設計されている最大のトルクを超えるトルクが加えられると、最初に破損する。換言すれば、トルク制限部分の断面係数は、ねじ状部分を含む残りのシャンクの断面係数よりも小さい。断面係数はまた、好ましくは、器具係合インターフェースを介して加えられるトルクを伝達するように設計されたスクリューヘッドの任意の断面よりも小さい。
【0016】
代替的または追加的に、トルク制限部分は、破損を開始するための少なくとも1つのノッチを含み得、異なる材料で作製され得、及び/または異なる材料特性を持つ場合がある。
【0017】
好ましくは、トルク制限部分で伝達可能な最大トルクは、38Ncm、36Ncm、34Ncm、または32Ncmである。歯科用スクリューの設計に選択されたトルクの値を超えるトルクを加えると、トルク制限部分が破損し、したがって歯科用スクリューが破損する。
【0018】
さらに、トルク制限部分は、300Nから500Nの範囲、好ましくは350Nから450Nの範囲の最大引張力に耐えるように構成することができる。
【0019】
トルクを加えると、スクリューの頭部とねじ状部分との間のスクリューシャンクに沿って、すなわち同様にトルク制限部分に沿って作用する引張力が生じる。歯科用スクリューが設計されている最大引張力を超えると、特にトルクが加えられている間、トルク制限部分でスクリューシャンクが破裂し、したがって歯科用スクリューが破損するように構成されている。
【0020】
器具係合インターフェースは、各々4つまたは5つの凹状セクションと交互になっている4つまたは5つの凸状及び/または平状セクションのプロファイルを含む歯科用スクリューの長手方向軸に垂直な断面を有するトルク伝達ゾーンを含むことができる。
【0021】
これらの凹状及び凸状セクションは、歯科用スクリューの長手方向軸の周りに起伏のあるプロファイルを形成する。その結果、器具係合インターフェースを介したトルクの伝達が強化される。これは主に、対応する歯科用固定器具と歯科用スクリューの間で、より半径方向へと伸長する接触面を横切って伝達されるトルクによって引き起こされる。さらに、歯科用スクリューを歯科用コンポーネントに固定するためのトルクの適用中に固定器具及び歯科用スクリューを係合させ続けるために、歯科用スクリューの長手方向軸の方向に力を加える必要はない。
【0022】
さらに、4つまたは5つの凹状セクションと交互になっている4つまたは5つの凸状及び/または平状セクションを有することにより、所定のトルクを伝達するのに十分な厚さの壁を備えた小さなスクリューヘッドの設計が可能になると同時に、スクリューのコンパクトな設計が可能になる。また、直径の小さいドライバーも使用できる。セクション数が多いほど、ドライバーを大きくする必要があり、その結果、スクリューヘッドのサイズが大きくなり、及び/またはスクリューを弱める薄い壁になる。器具係合インターフェースは、好ましくは、くぼみとして形成される。
【0023】
見出されているように、凹状セクションと凸状及び/または平状セクションの数が多いことは、主にスクリューヘッドを弱くするが、一方で凹状及び凸状/平状セクションの数が少ないことは、トルク伝達に関連する有害な影響を示す。
【0024】
好ましくは、凸状及び/または平状セクション及び凹状セクションは、移行点で接続または合流し、各移行点で、凹状セクションのプロファイルに対する接線と凸状セクションに対する接線との間の角度は、90°から180°または90°から160°の範囲、好ましくは95°から150°の範囲である。
【0025】
上記の範囲にある歯科用スクリューの設計用に移行点の角度を実装することが、スムーズで効率的なトルクの伝達をもたらすことが示されている。
【0026】
交互の凹状セクションと凸状及び/または平状セクションとの間の移行点は、器具係合インターフェースのプロファイルに沿った点であり得、2つの交互のセクションが一方から他方に連続的またはスムーズに移行している。この場合、移行点は、勾配の連続的な変化に伴って曲率が符号を変える点を表す。結果として、この移行点の接線は、隣接する凹状セクションまたは隣接する凸状及び/または平状セクションに基づいている場合、同じ勾配を有する。
【0027】
あるいは、移行点はまた、交互のセクションが不連続な様式で一方から他方に移行する点であり得る。この場合、曲率は、勾配の急激な変化に伴って符号またはその方向を変更する。その結果、隣接する凹状及び/または平状セクションに基づいて導出されたこの移行点での接線と比較して、隣接する凸状セクションに基づいて導出されたこの移行点での接線は、異なる勾配を生じる。
【0028】
凸状及び/または平状セクション及び凹状セクションは、最大内径を有する円から、長手方向軸に向かって、半径方向に延びる長手方向係合突起を形成し得る。係合突起は、好ましくは、それらの近位端に面取りを有する。
【0029】
これらの縦方向の係合突起は、固定器具と係合し、この器具からトルクを受けるように構成されている。言い換えれば、それらはトルク伝達ゾーンの少なくとも一部を形成する。係合突起の近位端に面取りが存在する場合、歯科専門家は、固定器具を歯科用スクリューと係合させるのがより簡単である。より具体的には、好ましくは器具係合インターフェースの入口に配置される面取りは、固定器具を係合に導く。
【0030】
器具係合インターフェースは、歯科用スクリューの近位端から遠位端への方向に先細になるピックアップゾーンを含み得る。ピックアップゾーンは、好ましくは、トルク伝達ゾーンに隣接して、トルク伝達ゾーンの近位に、及び/または少なくとも部分的にトルク伝達ゾーンに沿って位置する。
【0031】
ピックアップゾーンの先細りにより、摩擦力を介して歯科用スクリューを歯科用固定器具に保持することができる。言い換えれば、歯科用固定器具をピックアップゾーンに挿入することができる。次に、歯科用固定器具をピックアップゾーンに押し込むために十分な圧力が加えられる。これにより、簡単に元に戻すことができる摩擦嵌合が確立される。この可逆的な摩擦嵌合のために、先細りする角度は、好ましくは、5°から12°、特に6°から9°の範囲、または実質的に7°で選択される。あるいは、それは10°から12°の範囲、または実質的に11°であり得る。
【0032】
特に、ピックアップゾーンがトルク伝達ゾーンに沿って少なくとも部分的に延びる場合、すなわち、トルク伝達ゾーンとピックアップゾーンが少なくとも部分的に重複するか、または同一である場合、先細りの構成は、摩耗の存在下で連続的に効率的なトルク伝達の利点をもたらす。より具体的には、歯科用固定器具及び/または歯科用スクリューの器具係合インターフェースが摩耗しやすいのであれば、歯科用固定器具は先細りするトルク伝達ゾーンにさらに挿入されるだけである。したがって、トルク伝達が行われる構造は摩耗が発生しても基本的に同じままであるため、トルク伝達は本質的には変更されない。
【0033】
一方では、トルク伝達ゾーンとピックアップゾーンが少なくとも部分的に重なっている場合、これにより、スクリューヘッドとそれらの長手方向軸に沿った固定器具のよりコンパクトな設計が可能になる。他方、ピックアップゾーンとトルク伝達ゾーンが重ならない場合、摩耗が減少し得て、2つのゾーンの機能的及び空間的な分離により、歯科用スクリュー及び固定器具のより正確な適合が達成され得る。
【0034】
器具係合インターフェースは、歯科用スクリューのタイプを検証するための検証ゾーンをさらに含み得る。検証ゾーンは、好ましくは、器具係合インターフェースの遠位端に配置される。
【0035】
検証ゾーンに基づいて、歯科専門家は、歯科用スクリューが歯科用固定器具または歯科用コンポーネントで使用するのに適切なスクリューであるかどうかを検証する位置にある。例えば、歯科専門家が固定器具を完全には挿入できない及び/または器具係合インターフェースに係合できない場合、これは、組み立てに不適切なスクリューまたは不適切な歯科用コンポーネントが選択されたことを示す。その結果、そのような検証ゾーンは、それらの構成が互いに補完し合わない場合に、歯科用コンポーネントまたは歯科用スクリューへの損傷を防ぐ。
【0036】
検証ゾーンの代替または追加として、歯科用コンポーネントと歯科用スクリューの適切な組み合わせはまた、これら2つの歯科用コンポーネントを構成することで保証され得て、それらは相互に、正しく配置及び方向付けされた歯科用スクリューを使用してのみ組み立てることができる。これは、本出願人が同様にPCT/EP2018/071797という番号を付けて提出した国際出願の
図5に関連して特に詳細に説明されている。これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
さらに、本開示は、歯科用固定器具を提供する。歯科用固定器具には、近位端、遠位端、及び長手方向軸がある。歯科用固定器具は、歯科用スクリュー、特に上記の歯科用スクリューを係合するため遠位端にスクリュー係合インターフェースを含み、スクリュー係合インターフェースの近位にトルク制限部分を備える。トルク制限部分は、スクリュー係合インターフェースへの損傷を防ぐために、伝達可能なトルクを最大トルクに制限するように構成されている。
【0038】
トルク制限部分を含む歯科用固定器具の利点は、歯科用スクリューに組み込まれたトルク制限部分で達成される上記の利点と同様である。より具体的には、歯科用固定器具によって伝達されるトルクが事前定義された最大トルクを超える場合、トルク制限部分は破損するように構成される。この破損は、歯科用スクリューの損傷を防ぐ。破損後、トルク制限部分で分離された歯科用固定器具の部品を簡単に取り外すことができるため、別の歯科用固定器具を使用して、アセンブリを仕上げる、または歯科用スクリューを取り外して、例えば破損の原因を確認することができる。いずれの場合も、歯科用固定器具のトルク制限部分は、歯科インプラントやアバットメントなどの歯科用コンポーネントのレベルで損傷が発生するのを防ぐ。
【0039】
すでに上で論じたように、トルク制限部分はまた、歯科用スクリューのより小さな設計を可能にする。歯科用スクリュー、または歯科用スクリューに係合または固定される歯科用コンポーネントの損傷または破損を防止するために通常含まれる安全因子を、低減することができる。いずれかの損傷を防止しようとする代わりに、歯科用スクリューの所定の破損によって損傷が制御される。言い換えれば、安全マージンによって得られる安全性は、少なくとも部分的に、制御された破損の安全メカニズムに置き換えられる。
【0040】
トルク制限部分は、35Ncm以下、好ましくは27.5Ncmから34Ncmの範囲、より好ましくは28Ncmから33Ncmの範囲の最大トルクに耐えるように構成することができる。
【0041】
30~34Ncmなどのこれらの範囲のより高い値は、歯科用固定器具の長手方向軸及び歯科用スクリューの長手方向軸が互いに傾斜している間にトルクを伝達することもできる歯科用固定器具に、好ましくは使用される。27.5~29Ncmなど、これらの範囲のより低い値は、トルクの伝達中にそのような傾斜を許容しない歯科用固定器具に十分である。
【0042】
スクリュー係合インターフェースは、4つまたは5つの凹状セクションと交互になっている4つまたは5つの凸状及び/または平状セクションを含む長手方向軸に垂直な断面を有するトルク伝達ゾーンを含むことができる。凸状及び/または平状セクションと凹セクションとは、歯科用固定器具に沿って長手方向軸の周りに係合構造を形成する。
【0043】
トルク伝達ゾーンのそのような構成の利点は、歯科用スクリューの対応するゾーンに関連してすでに議論されている。歯科用固定器具に関しては、歯科用固定器具が、歯科用スクリューと前述の角度の関係でもトルクを伝達するように設計されている場合は、5つの凸状セクション及び/または平状セクションと交互の5つの凹状セクションを使用することが特に有利であることに留意されたい。
【0044】
歯科用固定器具の長手方向軸と歯科用スクリューの長手方向軸との間の角度付きトルク伝達を可能にする歯科用固定器具は、好ましくは、長手方向軸に沿った断面(縦断面)において湾曲したプロファイルを有する。
【0045】
湾曲したプロファイルは、好ましくは、この長手方向の断面における角度にわたって延び、それらの長手方向軸間の相対的な角度が0°から25°の範囲である間に、歯科用固定器具と歯科用スクリューとの間でトルクの伝達が行われる。その結果、湾曲したプロファイルは、少なくとも25°の範囲に及ぶ可能性がある。
【0046】
凹状セクションは、好ましくは、歯科用固定器具の長手方向軸に垂直な断面において、湾曲したプロファイルを有する。さらに、凸状セクションは、湾曲したプロファイル、特に円形のプロファイルを有し得るか、または湾曲と直線(線形)双方があるプロファイルを含み得る。これは、スクリュー係合インターフェースの円周に沿った凸状及び平状セクションに対応する。前述のように、凸状セクションの代わりに平状セクションを使用することも可能である。当業者は、平状セクションが、長手方向軸に垂直な固定器具の断面の直線によって表されることを理解する。
【0047】
好ましくは、凸状及び/または平状セクション及び凹状セクションは、移行点で接続または合流し、各移行点で、凹状セクションのプロファイルに対する接線と凸状セクションに対する接線との間の角度は、90°から180°または90°から160°の範囲、好ましくは95°から150°の範囲である。
【0048】
歯科用スクリューと同様、上記の範囲にある歯科用固定器具の設計用に移行点の角度を実装することが、スムーズで効率的なトルクの伝達をもたらすことが示されている。
【0049】
90°から110°、特に96°から104°の範囲のより低い角度は、歯科用スクリューの器具係合インターフェースと歯科用固定器具のスクリュー係合インターフェースとの間のトルク伝達を特に増強する。
【0050】
130°から180°の範囲、特に142°から148°の範囲のより大きな角度は、より多くの前述の凹状セクション、及び凸状及び/または平状セクション、特にそれぞれ5つで、有利に組み合わせることができる。これらの範囲の角度は、トルクの効率的な伝達をもたらす。それらはさらに、器具長手方向軸とスクリュー長手方向軸が整列していない、すなわち互いに傾斜している間にトルクを伝達することができるスクリュー係合インターフェースの構成を可能にする。
【0051】
歯科用スクリューのプロファイルの移行点での角度は、好ましくは、歯科用固定器具の移行点での角度と実質的に一致する。
【0052】
交互の凹状セクションと凸状及び/または平状セクションとの間の移行点は、スクリュー係合インターフェースのプロファイルに沿った点である場合があり、2つの交互のセクションが一方から他方に連続的またはスムーズに移行している。この場合、移行点は、勾配の連続的な変化に伴って曲率が符号を変える点を表す。結果として、この移行点の接線は、隣接する凹状セクションまたは隣接する凸状及び/または平状セクションに基づく場合、同じ勾配を有する。
【0053】
あるいは、移行点はまた、交互のセクションが不連続な方法で一方から他方に移行する点であり得る。この場合、曲率は、勾配の急激な変化に伴って符号またはその方向を変更する。その結果、隣接する凹状及び/または平状セクションに基づいて導出されたこの移行点での接線と比較して、隣接する凸状セクションに基づいて導出されたこの移行点での接線は、異なる勾配を生じる。
【0054】
スクリュー係合インターフェースは、歯科用スクリューを保持するためのピックアップゾーンを含み得て、ピックアップゾーンは、好ましくは、トルク伝達ゾーンに隣接して、近位に、及び/または少なくとも部分的に沿って配置される。
【0055】
ピックアップゾーンの存在は、歯科用固定器具に取り付けられている間に歯科用スクリューを取り扱うことができるため、歯科用スクリューの取り扱いを容易にする。これはまた、取り扱い中の歯科用スクリューの汚染を防ぐので、有利である。
【0056】
ピックアップゾーンは、特に、歯科用スクリューと歯科用固定器具の長手方向軸が互いに位置合わせされている間にトルクの伝達のみを行うことができる場合、円錐形を有することができる。
【0057】
あるいは、ピックアップゾーンはまた、歯科用固定器具の湾曲したトルク伝達ゾーンに関連して上記したように、縦断面における湾曲したプロファイルを有し得る。そのようなピックアップゾーンはまた、少なくとも部分的にトルク伝達ゾーンとして機能し得る。
【0058】
いずれにせよ、ピックアップゾーンは、例えば、摩擦を介してピックアップ及び保持機能を確立するために、先細り器具係合インターフェースを有する歯科用スクリューと相互作用することができよう。
【0059】
スクリュー係合インターフェースは、前記歯科用スクリューを係合するとき、歯科用スクリューのタイプを検証するための検証ゾーンをさらに含み得る。検証ゾーンは、好ましくは、器具係合インターフェースの遠位端に配置される。
【0060】
上部から歯科用スクリューに関連して説明したように、検証ゾーンは、歯科用固定器具の適切な使用を検証する目的を有する。例えば、歯科用固定器具が対応する歯科用スクリューと共に使用される場合が挙げられる。したがって、歯科用固定器具の意図しない使用を防ぐことが可能である。
【0061】
さらに、本開示は、歯科用固定セットを提供する。歯科用固定セットは、歯科用スクリュー、特に前述の構成の1つによる歯科用スクリューを含む。歯科用固定セットはまた、歯科用固定器具、特に上記のように構成された歯科用固定器具を含む。歯科用スクリュー及び歯科用固定器具はそれぞれ、トルク制限部分を含み、歯科用スクリューのトルク制限部分は、歯科用固定器具のトルク制限部分により伝達可能な最大のトルクよりも高い最大のトルクに耐えるように構成される。
【0062】
トルクを伝達するために、歯科用固定器具と歯科用スクリューは互いに対応している。より具体的には、スクリューの器具係合インターフェースと歯科用固定器具のスクリュー係合インターフェースは互いに対応している。
【0063】
歯科用固定器具のトルク制限部分と歯科用スクリューのトルク制限部分との間の上記の関係により、歯科用スクリュー及び歯科用固定器具の使用中の破損は、最初に固定器具の側面で発生するように構成される。その結果、歯科用スクリューまたは歯科用コンポーネントの損傷が防止される。歯科用スクリュー(歯科用インプラントなど)と噛み合っている歯科用コンポーネントから離れた場所で破損が発生するように固定セットを設計すると、これらの歯科用コンポーネント、歯科用スクリュー、または歯科用器具のいずれかの置換が容易になる。
【0064】
歯科用固定セットの歯科用スクリューは、器具係合インターフェースを含み得て、この場合、器具係合インターフェースは、凹状セクションと交互になっている凸状及び/または平状セクションを含む断面を有するトルク伝達ゾーンを含み、凸状及び凹状セクションは、好ましくは湾曲したプロファイルを有する。トルクを伝達するため、歯科用スクリュー及び歯科用固定器具の係合状態で、少なくとも歯科用スクリューの各凸状及び/または平状セクションの中間セクションは、ある距離で器具係合インターフェースの凹状セクションのプロファイルに面している。
【0065】
この距離のため、歯科用固定器具の凸状及び/または平状セクションが歯科用スクリューと係合していない。これにより、別段ではむしろ非能率的なプロファイルの一部で、歯科用固定器具から歯科用スクリューへのトルクの伝達が防止される。トルクの伝達はまた、以下でさらに詳細に説明されるように、トルクの伝達に悪影響を与える接触面の配向のために、摩耗の増加を引き起こす可能性がある。言い換えると、このような構成では、トルク伝達は主に、歯科用固定器具のスクリュー係合インターフェース及び歯科用スクリューの器具係合インターフェースの凹状セクションと凸状及び/または平状セクションの間の移行点で発生する。
【0066】
これは、この構成でまた、歯科用固定器具の凸状及び/または平状セクションでの摩耗も減少するに至る。歯科用固定器具の材料として鋼を使用し、好ましくは、歯科用スクリューの材料としてチタンまたはチタン合金を使用することにより、摩耗をさらに減らすことができる。
【0067】
歯科用スクリューのトルク伝達ゾーン及び歯科用固定器具のトルク伝達ゾーンは、互いに係合したときに回転式の遊び、特に1°から3.5°、好ましくは1.5°から3°の範囲の遊びを有する。
【0068】
言い換えれば、歯科用スクリューのトルク伝達ゾーンと歯科用固定器具のトルク伝達ゾーンの断面プロファイルは互いに対応しているが、必ずしも互いに完全に一致している必要はないので、それらはそのような回転式の遊びを設けるように構成される。この回転式の遊びは、トルク伝達の開始を決定するための歯科専門家への触覚フィードバックとして機能する。特に、歯科専門家は、回転中に歯科用固定器具と歯科用スクリューのプロファイルの間に接触が確立され、したがってトルク伝達が開始されるときに、容易に気付くことができる。回転式の遊びはまた、歯科用固定器具の挿入を容易にする。これは、歯科用固定器具が、歯科用固定器具の長手方向軸と歯科用スクリューの長手方向軸が互いに位置合わせされた状態でトルク伝達を許可する(のみ)であるように構成されている場合に、特に当てはまる。
【0069】
歯科用スクリュー及び歯科用固定器具はさらに、摩擦によって互いに係合するように構成されたピックアップゾーンをさらにそれぞれ含み得る。すでに上で説明したように、そのようなピックアップゾーンは、特に歯科専門家が歯科用スクリューを直接把持する必要がないため、歯科用スクリューの取り扱いを容易にし、汚染を防止する。
【0070】
歯科用スクリュー及び歯科用固定器具はさらに、歯科用固定セットが完全に係合したときに、歯科用固定器具のトルク伝達ゾーン及び歯科用スクリューのトルク伝達ゾーンの係合を可能にするように構成された検証ゾーンをさらに各々が備えることができる。
【0071】
言い換えれば、トルクの伝達は、歯科用スクリューと歯科用固定器具の検証ゾーンが完全に係合している場合に真にのみ有効になる。完全な係合がなければ、トルクの伝達は、少なくとも、ほとんど達成できず、好ましくは不可能である。上記のように、これは、組み合わせて使用するために、意図されていない歯科用固定器具、歯科用スクリュー、及び歯科用コンポーネントへの損傷が発生するのを防止する。
【0072】
さらに、本開示は、歯科用スクリュー、特に上記の構成による歯科用スクリュー、及び歯科用コンポーネントを含む歯科修復支持セットであって、歯科用コンポーネントは、特に、歯科用インプラント、アバットメント、及び/または人工歯である、歯科修復支持セットを提供する。
【0073】
この組み合わせでは、歯科用スクリューの設計が小さいため、歯科修復支持セットの強度を高める及び/または歯科修復支持セットのより小さいサイズを可能にする。
【0074】
歯科用スクリューは、支持面を含み得る。支持面は、歯科用コンポーネントの長手方向軸に対して傾斜していてもよい。したがって、歯科用コンポーネントはスクリューシートを含む。スクリューシートは、歯科用スクリューの長手方向軸に対してある角度で傾斜させることができ、その結果、少なくとも事前に固定された状態では、歯科用スクリューの支持面とスクリューシートとの間の接触は、一般に線での接触によって確立される。スクリューシートと支持面が接触している間、スクリューシートの長手方向軸は、支持面の長手方向軸と整列している。
【0075】
少なくとも最初は支持面とスクリューシートとの間に線での接触をもたらす歯科用スクリューの支持面と歯科用コンポーネントのスクリューシートとの間の角度の関係は、この接触が、表面接触よりも予測可能であり固定するプロセスのより良好な予測可能性に至る、という利点がある。その結果、スクリュー内の力の流れを事前に決定するのに役立ち、したがって、破損の予測可能性が向上する。線での接触は、好ましくは、スクリューヘッドの外径またはその近くの位置にある。
【0076】
固定されるとき、歯科用スクリューの支持面と歯科用コンポーネントのスクリューシートとの間の角度の空隙は、少なくとも部分的に閉じることができる。その結果、固定の終了時にトルクの増加が抑制される。歯科専門家は、より簡単に固定の終了を予測できる。その結果、歯科用スクリュー、歯科用固定器具、または歯科用コンポーネントの損傷が発生する可能性が低くなる。
【0077】
スクリューシート及び支持面は、好ましくは、両方とも円錐角のある面として形成される。
【0078】
歯科用スクリューはねじ状部分を含み、歯科用コンポーネントはねじ状穴を含む。固定した状態では、互いに接触しているねじ状部分のねじ状フランクと、ねじ状穴のねじ状フランクは、それぞれプロファイルの半径方向の長さの少なくとも70%に沿って接触している。
【0079】
言い換えれば、固定された状態のスクリューの縦断面のプロファイルにおいて、歯科用スクリューのねじ山の2つのフランクと歯科用コンポーネントとの間の接触を見るとき、2つのねじ山のプロファイルは、それぞれの長さの少なくとも70%の長さに沿って、互いに接触している。より具体的には、歯科用スクリューのねじ状部分の近位フランクは、歯科用スクリューの長手方向軸に対して半径方向に、ねじ状フランクに沿って各々の長さの少なくとも70%に沿って、歯科用コンポーネントのねじ状穴の遠位フランクと接触している。
【0080】
この構成には、歯科用スクリューと歯科用コンポーネントとの間の表面の接触が、メートル法のISOねじ山などの通常のねじ山と比較して強化され、歯科用コンポーネントのねじ状穴の内部に歯科用スクリューを固定するための力の分散がより均一になるという利点がある。それはまた、より少ない回転数で固定するために必要な引張力の蓄積を可能にし、したがって、より迅速な固定を可能にし、より短いねじの設計を可能にする。これにより、歯科用スクリュー及び歯科用コンポーネントのねじ状穴の設計を小さくすることができる。歯科修復サポートセットの強度を高めることができる及び/またはその合計サイズを小さくすることができる。
【0081】
以下の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示している。これらの実施形態は、限定として解釈するべきではなく、単に後続の説明の文脈で本発明の理解を高めるものと理解すべきである。これらの図面において、同一の参照符号は、同一の、あるいは等価な機能及び/または構造を有する特徴を、図面を通して指している。繰り返しているこれらの特徴の説明は、簡潔な説明のために一般的に省略されている。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】歯科用スクリューの長手方向軸に沿った断面図であり、特に、歯科用スクリューの器具係合インターフェースの断面図である。
【
図2】
図1に示されている歯科用スクリューの器具係合インターフェースの平面図である。
【
図3】
図3a及び3bは、
図1及び2に示される歯科用スクリューの長手方向軸に垂直な断面図であり、歯科用固定器具のスクリュー係合インターフェースと係合する器具係合インターフェースを示す。
【
図4】
図3a及び3bに示される歯科用固定器具の部分的な側面図である。
【
図5】固定器具のトルク伝達セクションのレベルでの、
図3及び4に示される歯科用固定器具の長手方向軸に垂直な断面図である。
【
図6】
図6a及び6bは、器具係合インターフェースのレベルで、歯科用スクリューの長手方向軸に沿った、歯科用固定器具と係合している断面図である。
【
図7】別の実施形態による歯科用スクリューの三次元の図である。
【
図8】
図7に示す歯科用スクリューを固定するための別の実施形態による歯科用固定器具の三次元の図である。
【
図9】
図8の歯科用固定器具のスクリュー係合インターフェースの詳細の図である。
【
図10】
図10a及び10bは、スクリュー係合インターフェースの検証ゾーンの機能を示している。
【
図11】歯科用固定器具のスクリュー係合インターフェースの別の実施形態の側面図である。
【
図12】
図11に示す歯科用固定器具のスクリュー係合インターフェースの正面図である。
【
図13】歯科用スクリューと歯科用インプラントとの間のねじ式係合の概略的な断面図である。
【
図14】さらに別の実施形態による、係合している歯科用スクリュー、アバットメント、及びインプラントの長手方向軸に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
図1は、実施形態による、歯科用スクリュー10の長手方向軸LSに沿った断面図である。以下、長手方向軸に沿った断面は、縦断面とも呼ばれる。
図1の歯科用スクリュー10の縦断面は、スクリューヘッド13及びスクリューシャンク14の一部を示している。スクリューヘッド13は、器具係合インターフェース20を備える。
図1に示すように、器具係合インターフェース20は、好ましくは、くぼみとして形成される。
【0084】
トルクを伝達するために、器具係合インターフェース20は、係合構造を備える。この係合構造は、凸状セクション21及び凹状セクション22を含む。凸状セクション21は、凹状セクション22と交互になっている。同数の凸状セクション21及び凹状セクション22が存在する。図示のように、これらのセクションは、器具係合インターフェース20の内周壁に配置され、トルク伝達ゾーン25bを形成する。
【0085】
図2の歯科用スクリューの例示的な実施形態の器具係合インターフェース20は、5つの凸状セクション21及び5つの凹状セクション22を含む。歯科用スクリュー10の長手方向軸LSに垂直な断面(以下、垂直断面とも呼ばれる)に見られるように、凸状断面21及び凹状断面22は、円26から延びる長手方向係合突起24を形成する。この円は、器具係合インターフェース20の最大内径により定められる。以下でさらに説明するように、先細の器具係合インターフェース20の場合、円26の直径は、歯科用スクリュー10の近位端から遠位端に向かって減少する。
【0086】
歯科用スクリュー10のコンパクトでありながら耐久性のある設計を達成するために、器具係合インターフェース20にそれぞれ4つまたは5つの凹状及び凸状セクションを設けることが有利であることが見出された。好ましくは、歯科用固定器具のスクリュー係合インターフェースは、係合される歯科用スクリューの凹状及び凸状セクションの数に対応するいくつかの凹状及び凸状セクションを含む。
【0087】
以下でより詳細に説明するように、各凸状及び凹状セクションの5つのセクションは、効率的かつ角度のあるトルクの適用(すなわち、角度によるトルクの適用)を可能にする固定器具にとって、好ましい。
【0088】
凹状セクション及び凸状セクションのそれぞれの複数の4つのセクションは、トルクの適用中に長手方向軸が整列される歯科用スクリュー及び固定器具の組み合わせにとって特に有利であることが見出された。そのような実施形態では、係合構造の幾何学形状は、非常に正確な係合及び効率的なトルク伝達をもたらす。
【0089】
図に示される歯科用スクリュー及び固定器具の例示的な実施形態では、凹状セクション22及び凸状セクション21は、湾曲したプロファイルを有する。それにもかかわらず、前述のように、凸状セクション21はまた、平面であり得る。凹状セクション22及び凸状セクション21は、係合構造を形成する。垂直断面における係合構造のプロファイルに沿って、凹状セクション22及び凸状セクション21は、移行点23で接続されている。
図2の実施形態では、凹状セクション22と凸状セクション21との間の移行は連続的である。
【0090】
しかし、代わりに、上記のように、これらのセクション間の移行は、不連続な移行であることがある。係合構造のプロファイルに沿った不連続の移行の例が、固定器具30について
図5に示されている。この場合、固定器具30のスクリュー係合インターフェース40の移行点43は、傾斜の変化に関して不連続である。この不連続性のために、移行点43は、歯科用固定器具30の長手方向軸LTに対して垂直な断面で見られるように、スクリュー係合インターフェース40のプロファイルに沿った角を表す。係合構造44では、プロファイルのこの移行点43は、長手方向の縁をもたらす(
図4を参照)。
【0091】
移行点23において、固定器具30から歯科用スクリュー10へのトルクの伝達が最も効果的である。この移行点23での器具係合インターフェース20のプロファイルへの接線は、半径方向に最も近い方向に延びる。結果として、固定器具によって加えられるトルクは、この点で、器具係合インターフェース20の表面に垂直な最大の力の成分、及びこの表面に平行な最小の力の成分の係合プロファイルに沿って生じる。その結果、この点で、歯科用固定器具と歯科用スクリュー10との間のトルク伝達は非常に効率的であるが、摩耗する量は比較的少ない。したがって、移行点23及びその近くで、固定器具と歯科用スクリュー10との間でトルクを伝達することは、有利である。
【0092】
トルクを歯科用スクリュー10に伝達するための歯科用固定器具30は、係合構造24に対応する係合構造44を備える。
図5は、この器具の長手方向軸LTに対して垂直断面に係合構造44を有するそのような歯科用固定器具30の例示的な実施形態を示す。歯科用固定器具30の係合構造44は、トルク伝達ゾーン45bの一部である(
図4を参照)。歯科用スクリュー10に対応して、係合構造44の断面プロファイルは、凸状セクション41及び凹状セクション42を含む。凸状セクション41及び凹状セクション42は、移行点43で互いに合流または移行する。歯科用スクリュー10のトルク伝達ゾーン25bの移行点23と同様に、移行点43は、移行43の連続点または不連続点であり得る。すでに上で説明したように、
図5に示される歯科用固定器具30の移行点43は、不連続な移行点である。
【0093】
さらに、凹状セクション42は、好ましくは湾曲している。凸状セクション41は湾曲及び/または平坦であってよい。
図5に示される例示的な実施形態では、凸状セクション41は湾曲しており、より具体的には、円形である。
【0094】
上記のように、凸状セクション41に対する接線と凹状セクション42に対する接線との間の移行点43の角度は、好ましくは90°から180°または90°から160°、好ましくは95°から150°の範囲である。この角度が90°に近いものであるほど、移行点43での歯科用固定器具30から歯科用スクリュー10へのトルク伝達が、より効率的になる。90°では、トルクの伝達は基本的に円周方向に行われる。係合構造44(半径方向に延びる)の表面に平行な方向に作用する力の成分は基本的に存在せず、その結果、トルク伝達に起因する当該の表面の摩耗を基本的に防止することができる。例えば、
図8から11に示される歯科用固定器具130、230は、そのような効率的なトルク伝達のために設計されている。
【0095】
図3は、歯科用スクリュー10に挿入された歯科用固定器具30を示している(
図3aを参照)。次に、歯科用固定器具30は、その長手方向軸LTを中心にして回転され、歯科用固定器具30の係合構造44が、歯科用スクリュー10の係合構造24と係合するようになる(
図3bを参照)。上記のように、この回転式の遊びは、歯科専門家に触覚フィードバックをもたらし、固定器具30のスクリュー係合インターフェース40を歯科用スクリュー10の器具係合インターフェース20へ挿入するのを容易にする。
図3aの中間的な位置から
図3bの係合位置までの整列された長手方向軸LT及びLSの周りの器具係合インターフェース20内部でのスクリュー係合インターフェース40の回転は、βの約0.5倍である。上記のように、回転式係合の配向、すなわち、固定するための係合の配向と緩めるための係合の配向との間の回転式の遊びβは、好ましくは1°から3.5°、好ましくは1.5°から3°である。
【0096】
係合すると、トルクは、歯科用固定器具30の凹状セクション42を横切って、歯科用スクリュー10の凸状セクション21に伝達される。これは、
図3bに太い黒線で概略的に示されている。より具体的には、トルクは、係合構造24、44のプロファイルに沿って、移行点23、43と中間の位置、好ましくは中央の位置との間で、固定器具30の凹状セクション42及び歯科用スクリュー10の凸状セクション21に沿って伝達される。換言すれば、固定器具30の凸状セクション41及び歯科用スクリュー10の凸状セクション21の領域において、プロファイルに沿ったトルクの伝達は、本質的に存在しない。これは、係合状態である間に互いに向き合う凸状セクション41と凹状セクション22との間に空隙が存在するためである。その結果、この領域では摩耗は発生しない。さらに、トルクは移行点とその周辺で効率的な方法で施される。トルクの伝達はまた、歯科用スクリュー10の外壁からさらに離れた領域、すなわち、より厚い壁の厚さの領域で起こる。この点と、湾曲した凹状セクション42及び対応する湾曲した凸状セクション21に沿ったトルクの伝達とに起因して、応力の集中が回避される。その結果、これらの特徴により、歯科用スクリューのよりコンパクトな設計も可能になる。
【0097】
図4は、縦断面における歯科用固定器具30の部分的な様相を示している。歯科用固定器具30は、以下でさらに参照される
図6の縦断面にも示されている。
図4に示されるように、スクリュー係合インターフェース40のトルク伝達ゾーン45bは湾曲している。より具体的には、これは、特に少なくとも部分的には、基本的に円形のプロファイルである。さらに、遠位端32において、歯科用固定器具30は、好ましくは、丸い先端33を有する。この幾何学的構成により、トルクを歯科用固定器具30からスクリュー係合インターフェース40を介して歯科用スクリュー10の器具係合インターフェース20に伝達しながら、歯科用固定器具30を傾けることができる。これは、例えば、
図6に示され、歯科用スクリューの長手方向軸LSは、固定器具30の長手方向軸LTに対して傾斜している。さらに、スクリュー係合インターフェース40の上記の湾曲した丸みを帯びた構成は、係合構造24の表面への損傷または引っかき傷を防止するが、これは別段には、歯科用スクリュー10の強度を低下させる可能性がある。歯科用スクリュー10と同様に、トルク伝達ゾーン45bは、以下でさらに詳細に説明されるように、ピックアップゾーン45aとしても機能する。
【0098】
図4の歯科用固定器具はまた、スクリュー係合インターフェース40の近位にトルク制限部分35を含む。好ましくは、シャンク36は、スクリュー係合インターフェース40とトルク制限部分35との間に配置され、歯科用固定器具30は、破損時に歯科用スクリュー10の器具係合インターフェース20の内部で破損しないようにする。これは、器具係合インターフェース20の内側に留まる部分を含んだ歯科用固定器具30の一部を除去するのを容易にする。
【0099】
すでに上で説明したように、トルク制限部分35は、加えられたトルクが所定の最大値を超えると破損するように構成される。好ましくは、トルク制限部分は、35Ncm以下の最大のトルク、好ましくは27.5Ncmから34Ncmの範囲、より好ましくは28Ncmから33Ncmの範囲に耐えるように構成される。
【0100】
図4に示されるように、トルク制限部分35は、この断面での強度が減少するように、断面を減少させて設計され得る。換言すれば、トルク制限部分35は、歯科用固定器具30に沿って最も低いセクションモジュールを有する。その結果、トルク制限部分35は、スクリュー係合インターフェース40及びシャンク36に隣接するウエスト部分の断面係数よりも低い断面係数を有する。
【0101】
図1に示されるように、長手方向係合突起24の先端を形成する器具係合インターフェース20の凸状セクション21は、それらの近位端、すなわち、器具係合インターフェース20への歯科用固定器具の入口で面取りされている。得られた面取り27は、歯科用固定器具の挿入を容易にする。一方で、それらは、歯科用固定器具30の係合構造44が回転方向で歯科用スクリュー10の係合構造24と正しく位置合わせされていない、歯科用固定器具の最初の挿入を可能にする。他方、歯科用スクリュー10の長手方向軸LSは、最初は、固定器具30の長手方向軸LTに対して、過度に傾斜している場合がある。この場合、面取り27は誘導機能を有する。
【0102】
さらに、
図1の歯科用スクリュー10は、先細りする器具係合インターフェース20を備える。より具体的には、器具係合インターフェース20は、歯科用スクリュー10の近位端11から遠位端に向かう方向に狭くなる。換言すれば、器具係合インターフェース20は、実質的に円錐形を有することができる。先細りする形状に起因して、器具係合インターフェース20は、歯科用スクリューをピックアップ及び保持するためのピックアップゾーン25aを形成する。歯科用スクリューのこの例示的な実施形態では、
図1、2、及び6に示されるように、ピックアップゾーン25a及びトルク伝達ゾーン25bは、互いに重なり合う。
【0103】
ピックアップ機能は、
図6を参照して以下でより詳細に説明される。
図6aに示されるように、固定器具30が長手方向軸LSに沿って器具係合インターフェース20のくぼみに挿入されるとき、固定器具30は摩擦によって歯科用スクリュー10に係合し得る。器具係合インターフェース20は先細になっているので、固定器具30の挿入によって生じる摩擦により、ピックアップ機能が可能になる。より具体的には、歯科用スクリュー10は、固定器具30によって保持することができる。
【0104】
上記のように、先細りする角度は、好ましくは、5°から12°、特に6°から9°の範囲、または実質的に7°で選択され得る。あるいは、それは10°から12°の範囲であり得、または実質的に11°であり得る。これらの値は、歯科用スクリューを安全に保持することを可能にすると同時に、固定器具30と歯科用スクリュー10との間の接続を容易に解除することを可能にする。したがって、これらの角度は、不要な摩耗の発生も防ぐ。
【0105】
ピックアップ機能に加えて、器具係合インターフェース20の先細りはまた、歯科用固定器具30の係合構造と歯科用スクリュー10との間の最適な係合を確実にする。これは、
図6a及び6bに概略的に示されている。
図6aでは、歯科用固定器具30はその初期のサイズを有している、すなわち、それは摩耗を受けていない。結果として、歯科用固定器具30、より具体的にはスクリュー係合インターフェース40間の係合は、歯科用スクリュー10の器具係合インターフェース20の近位側で起こる。
【0106】
好ましくは、歯科用固定器具30は、再利用可能であるように構成され、好ましくは、金属、特に鋼でできている。その結果、この器具の継続的な使用及び再利用中に摩耗が発生する。歯科用固定器具30の係合構造44で発生する摩耗は、この構造のサイズの減少をもたらす。しかし、歯科用スクリュー10の器具係合インターフェース20は先細になっているので、歯科用固定器具30は、単に器具係合インターフェース20にさらに押し込まれる。これにより、同じ質の係合が達成され、トルクの効率的な伝達が保証される。これは、
図6bに示され、摩耗を受けた歯科用固定器具30が、今や歯科用スクリュー10の器具係合インターフェース20をより遠位に係合している。
【0107】
図7は、歯科用スクリュー110の別の実施形態を示している。
図7に示されるように、歯科用スクリュー110は、スクリューヘッド113に直接隣接するトルク制限部分115を備える。当業者は、そのようなトルク制限部分115がまた、
図1に示される歯科用スクリュー10の実施形態において、スクリューシャンク14に沿った同じ位置または異なる位置のいずれかに、スクリューシャンク14に沿って存在し得ることも理解する。
【0108】
歯科用固定器具30に関連して説明されたトルク制限部分35と同様に、トルク制限部分115は、トルクを伝達する歯科用スクリュー110の本体の部分、すなわち、歯科用スクリュー110の固定中に増加する剪断応力及び引張応力を受ける本体の部分に沿って、最小の断面係数を有する。
【0109】
トルク制限部分115は、スクリューシャンク114の一部であり、スクリューシャンク114に沿って配置されている。スクリューシャンク114の端部、すなわち歯科用スクリュー110の遠位端112には、ねじ状部分116がある。ねじ状部分116は、歯科インプラント401またはアバットメント402などの歯科用コンポーネントと係合するためのものである(
図14を参照)。例えば、歯科用スクリュー110を使用して、アバットメント402を歯科用インプラント401に取り付けることができる。
【0110】
すでに上で定義したように、歯科用スクリュー110のトルク制限部分115が耐えて伝達するべき最小トルクは、好ましくは26Ncmである。最大トルク値を超える場合、トルク制限部分115は、トルク制限部分115の遠位にある歯科用スクリュー110のいずれかの部分の破損、特にねじ状部分116の破損を特に防止すべきである。この方法で歯科用スクリューの破損を制御することにより、歯科用スクリュー110と係合している歯科用コンポーネントが無傷のままであることが保証される。これは、インプラントの修正が防止されるため、歯科用コンポーネントが患者の骨組織内部に固定された歯科用インプラントである場合に、特に有利である。
【0111】
図8は、歯科用固定器具130の別の実施形態を示している。歯科用固定器具130の遠位端132にあるスクリュー係合インターフェース140はまた、円周方向係合構造144を形成する凸状セクション141及び凹状セクション142を備える。歯科用固定器具130は、好ましくは、対応する数の凸状及び凹状セクションのある係合構造を備える歯科用スクリュー用に構成される。上記のように、凸状セクションはまた、少なくとも部分的に平面であり得る。
【0112】
それにもかかわらず、歯科用固定器具130は、スクリュー係合インターフェース140に関して、前の図の歯科用固定器具30とは特に異なる。特に、スクリュー係合インターフェースは、5つではなく4つの各凸状及び凹状セクションを含む。
【0113】
図9に移ると、歯科用固定器具130のスクリュー係合インターフェース140はまた、ピックアップゾーン145aがトルク伝達ゾーン145bから分離されているという点で、前の実施形態に対して異なる。より具体的には、トルク伝達ゾーン145bは、ピックアップゾーン145aに隣接して遠位に配置されている。換言すれば、ピックアップゾーン145aは、トルク伝達ゾーン145bと重ならない。ピックアップゾーン145aは、基本的に、摩擦によって歯科用スクリューの対応するピックアップゾーンと係合するよう円錐形を有し、すでに上で説明したように、歯科用スクリューの取り扱いを容易にする。
【0114】
図9の歯科用固定器具130のトルク伝達ゾーン145bは、ピックアップゾーン145aと同様の凹形状を有するが、代わりに、
図11及び12に示され、以下でさらに説明する歯科用固定器具230の別の実施形態に示されるような円筒形を有し得る。
【0115】
ピックアップゾーン145a及びトルク伝達ゾーン145bに加えて、歯科用固定器具130は、その遠位端132に隣接する検証ゾーン145cを備える。一方では、この検証ゾーン145cは、対応する形状を有する検証ゾーンを含まない歯科用スクリュー110bの器具係合インターフェース120bとの係合を防止する機能を有する(
図10bを参照)。さらに、対応する検証ゾーンのない歯科用スクリュー110bはまた、ピックアップゾーン145aの係合を妨げ得る。なぜなら、これらのゾーンに係合をもたらすために、歯科用固定器具130を、この歯科用スクリュー110bの器具係合インターフェースに十分な隔たりで挿入することができないからである。
【0116】
他方、歯科用スクリュー110aが、
図10aの歯科用スクリュー110aなどの対応する検証ゾーンを含む場合、歯科用固定器具130は、このスクリューの器具係合インターフェース120aと係合することができる。
【0117】
図11及び12は、前の実施形態のスクリュー係合インターフェース140と同様のスクリュー係合インターフェース240を備えた歯科用固定器具230のさらに別の実施形態を示している。しかし、前の実施形態とは異なり、歯科用固定器具230は、検証ゾーンを含まない。代わりに、スクリュー係合インターフェース240は、ピックアップゾーン245a及びトルク伝達ゾーン245bを含み得るのみである。
図11に示される歯科用固定器具230の実施形態、及び
図10に示される歯科用固定器具130の実施形態では、トルク伝達ゾーン145b、245bは、ピックアップゾーン145a及び245aに隣接して遠位に配置されるが、当業者は、この順序は当然逆になり得ることを理解する。したがって、ピックアップゾーン145a、245aは、トルク伝達ゾーン145b、245bの遠位に配置することができる。さらに、ピックアップゾーン145a、245a及びトルク伝達ゾーン145b、245bは、互いに隣接している必要があるわけではなく、互いに離間されていてもよい。
【0118】
費用効果の高い製造のために、凹状セクション242は、スクリュー係合インターフェース240を超えて近位方向に機械加工される。結果として、ピックアップゾーン245aは、基本的に、凹状セクションによって中断される円錐形を有する。しかし、これは、ピックアップゾーン245aと対応する歯科用スクリューとの間に、より明確な摩擦をもたらし得るが、機能的には必要ではない。同じことが、前の実施形態の歯科用固定器具にも当てはまる。
【0119】
図12は、遠位端232から見た歯科用固定器具230の正面図を示している。この図に示されているように、スクリュー係合インターフェース240は、4つの凹状セクション242と交互になっている4つの凸状セクション241を備える。前の実施形態に関して既に述べているように、凸状セクション241は、代わりに平状セクションであり得る。この例示的な実施形態では、凸状セクション241は湾曲しており、特に、長手方向の器具軸LTに対して垂直な断面で見られるときに特に円形の形状を有する。
【0120】
図12の例として示されるように、凸状セクションに対する接線と凹状セクションに対する接線との間の角度αは、上で説明されたように、移動のための約90°の最適な角度に、少なくとも近い。言い換えれば、角度αは、上述した、より低い範囲にある。したがって、スクリュー係合インターフェース240のトルク伝達ゾーン245bの構成は、トルクの効率的な伝達をもたらし、継続的な使用及び再利用の間に摩耗する傾向が低い。本開示の歯科用固定器具の摩耗を少なく保つために、少なくともスクリュー係合インターフェース、好ましくは固定器具は、金属、特に鋼でできている。
【0121】
前の図の歯科用固定器具30とは異なり、スクリュー係合インターフェース240は、器具長手方向軸LTと長手方向軸が基本的に整列している場合にのみ、歯科用スクリューの器具係合インターフェースと係合可能である。上記のように、この整列は、歯科用スクリューの器具係合インターフェースへの入口に面取りを設けることによって容易になり得る。
【0122】
図13は、歯科用コンポーネント、特に歯科インプラント301と、歯科用スクリュー310との間のねじ式係合の概略的な断面図である。当然、この構成は、歯科用コンポーネントと歯科用スクリューの任意の組み合わせに適用できる。
【0123】
締め付けた状態では、歯科インプラントのねじ山の遠位フランク303は、歯科用スクリューねじ状部分316の近位フランク318としっかりと接触している。したがって、歯科用スクリュー310を締めて別の歯科用コンポーネントを歯科用インプラント301に固定することによってもたらされる力は、ねじ状フランク303と318との間の接触力として伝達される。
【0124】
本開示の構成において、インプラント301のねじ状穴及び歯科用スクリュー310の外側のねじ山は、
図13に黒い実線として示される歯科用フランクの重なりが、半径方向の各ねじ状フランクの長さの少なくとも70%になるように寸法決定される。半径方向のねじ状フランクの長さは、ねじ山の先端とその根元との間の長さとして定められ、歯科用スクリューのねじ状スクリューシャフト、または歯科用コンポーネントのねじ状穴の長手方向に力を伝達することができる。比較のために、ISO規格に準拠したねじ山などの通常のねじ山は、少なくとも60%重複しているだけである。
【0125】
さらに、この実施形態によるねじ式接続の重なりは、最大で90%、93%、好ましくは96%である。それにもかかわらず、ねじ山の強度を大幅に向上させることができるのは、特に、ISOのねじ山と比較した場合最小の重なり10%の違いである。この結果は、このねじ式接続での圧縮力の伝達がより効果的であるため、歯科用スクリュー310のよりコンパクトな設計を可能にする。
【0126】
図14は、スクリュー長手方向軸LSに沿った長手方向の部分的な断面図を示している。これは、歯科用スクリュー410を介して歯科用インプラント401に固定されているアバットメント402を示している。上記のように、本開示による歯科用スクリューのトルク制限部分は、少なくとも最小量のトルクを伝達するように寸法が決められている。さらに、歯科用スクリューは、最大のトルクの値を超えるトルクの値で、破損の制御のために構成されている。
【0127】
図14の歯科用スクリュー410を歯科用インプラント401に固定するとき、スクリューヘッド113の遠位端にあるスクリューヘッド413の支持面417が、歯科用アバットメント402のスクリューシート404に押し付けられる。支持面417とスクリューシート404との間に確立された接触の結果として、歯科用スクリュー410の器具係合インターフェース420を介して歯科用固定器具(図示せず)から伝達されるトルクの一部が、アバットメント402に伝達される。
【0128】
図14にまた示されているように、スクリューシート404及び支持面417は円錐形である。スクリューシート404の円錐形及び支持面417の円錐形は、互いに異なる円錐角を有する。好ましくは、支持面417の円錐角は、スクリューシート404の円錐角よりも大きい。しかし、円錐角がその逆に寸法決定される構成は、代替的に可能である。支持面417とスクリューシート404の円錐角の差は、
図14にγとして示されている。
【0129】
この角度γにより、支持面417とスクリューシート404との間の接触は、本質的に線での接触によって確立される。これは、一方では、そのような線での接触により、歯科用スクリュー410からアバットメント402に伝達されるトルクが少なくなるので、有利である。一方、ねじ式接続を締めるために伝達され、使用されないトルクは、より正確に決定できる。両方の利点は、歯科用スクリュー410のトルク制限部分のより予測可能な挙動を可能にする。言い換えれば、この構成は、トルク制限部分での歯科用スクリュー410の破損をより対応できるものにし、したがって、歯科用スクリュー410のよりコンパクトな設計に寄与することができる。
【0130】
前述のように、円錐角間の差γによって生じる空隙は、歯科用スクリュー410の固定プロセスの終わりに少なくとも部分的に閉じることができる。空隙のこの閉鎖は、スクリューシート404及び支持面417の変形によって引き起こされ、歯科用スクリュー410のねじ状部分に向かって伝達されるトルクの量を、アバットメント402に伝達されるトルクの量に比べて、さらに減少させる。この伝達比率の変化は、トルクの適用中、減衰効果を与え、歯科用スクリュー410と歯科用インプラント401との間のねじ式接続を固定する端部の最大トルクのより正確な調整を可能にする。したがって、スクリューシート404及び支持面417のこれらの特徴、ならびに歯科用アセンブリにおけるそれらの構成はまた、歯科用スクリュー410のよりコンパクトな設計を可能にする。
【符号の説明】
【0131】
以下に、説明及び図面で使用されている参照記号の下2桁を列挙する。これらの図面で、これらの桁は、同一の、あるいは等価な機能及び/または構造を有する特徴を指している。桁の前側は実施形態を表している。
1 歯科インプラント
2 アバットメント
3 ねじ状穴のフランク
4 スクリューシート
10 歯科用スクリュー
11 近位端
12 遠位端
13 スクリューヘッド
14 スクリューシャンク
15 トルク制限部分
16 ねじ状部分
17 支持面
18 ねじ状部分のフランク
20 器具係合インターフェース
21 凸状セクション
22 凹状セクション
23 移行点
24 歯科用スクリューの係合構造
25a ピックアップゾーン
25b トルク伝達ゾーン
25c 検証ゾーン
26 最大内径の円
27 面取り
30 固定器具
31 近位端
32 遠位端
33 丸い先端
35 トルク制限部分
36 シャンク
40 スクリュー係合インターフェース
41 凸状セクション
42 凹状セクション
44 固定器具の係合構造
45a ピックアップゾーン
45b トルク伝達ゾーン
45c 検証ゾーン
LS スクリューの長手方向軸
LT 固定器具の長手方向軸
α 凸状セクションの接線と凹状セクションの接線との間の移行点での角度
β 歯科用スクリューと固定器具の間の回転式の遊び
γ スクリューシートとスクリューヘッドの支持面との円錐角の違い