(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150722
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】香味吸引器及び喫煙システム
(51)【国際特許分類】
A24F 40/40 20200101AFI20241016BHJP
A24F 40/465 20200101ALI20241016BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20241016BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F40/465
A24F40/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124191
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2022540421の分割
【原出願日】2021-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】隅井 干城
(57)【要約】 (修正有)
【課題】チャンバに挿入された喫煙物品に対する十分な把持力を確保することができる香味吸引器及び喫煙システムを提供する。
【解決手段】喫煙物品を挿入可能な開口が一端に形成され、喫煙物品を収容する収容部50と、収容部50の軸方向に沿って配置され、収容部50に収容された喫煙物品を加熱する加熱部42と、収容部50に収容された喫煙物品の側面を把持する把持部87と、を有し、収容部50の内側面は、収容部50の軸方向と直交する断面視において、加熱部42と重なる第1領域50Aと、第1領域50A以外の領域であって、収容部50の軸方向に沿って、収容部50の他端と加熱部42の他端側の端部との間に存在する第2領域50Bと、を含み、把持部87は、第2領域50Bに設けられている、香味吸引器、が提供される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
喫煙物品を挿入可能な開口が一端に形成され、前記喫煙物品を収容する収容部と、
前記収容部の軸方向に沿って配置され、前記収容部に収容された前記喫煙物品を加熱する加熱部と、
前記収容部に収容された前記喫煙物品の側面を把持する把持部と、
を有し、
前記収容部の内側面は、
前記収容部の軸方向と直交する断面視において、前記加熱部と重なる第1領域と、
前記第1領域以外の領域であって、前記収容部の軸方向に沿って、前記収容部の他端と前記加熱部の前記他端側の端部との間に存在する第2領域と、
を含み、
前記把持部は、前記第2領域に設けられている、
香味吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載の香味吸引器であって、
前記収容部の中心軸に沿って切断した断面であって、前記把持部を通る断面視において、
(1)式及び(2)式を満たし、
W1≧W2 ・・・ (1)
W3≧W2 ・・・ (2)
前記(1)式及び前記(2)式において、
W1は、前記第1領域の径方向長さであり、
W2は、前記第2領域の径方向長さであり、
W3は、前記第1領域に対応する前記喫煙物品の径方向長さである、
香味吸引器。
【請求項3】
請求項2に記載の香味吸引器であって、
前記把持部は、前記第2領域において、前記収容部の内側に突出する凸部である、
香味吸引器。
【請求項4】
請求項3に記載の香味吸引器であって、
前記収容部の前記他端には、前記収容部の底部を構成する底部材が設けられており、
前記底部材は、前記収容部と一体または別部材として構成されており、
前記凸部は、前記底部近傍に設けられている、
香味吸引器。
【請求項5】
請求項4に記載の香味吸引器であって、
前記凸部は、前記収容部の前記底部から前記一端へ向かって延在している、
香味吸引器。
【請求項6】
請求項5に記載の香味吸引器であって、
前記凸部は、前記収容部の前記一端側の端部近傍に、前記一端に近づくに従い、前記収容部の中心軸から離間するように傾斜する傾斜部を有する、
香味吸引器。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の香味吸引器であって、
前記凸部は、一対の突条部を有する、
香味吸引器。
【請求項8】
請求項7に記載の香味吸引器であって、
前記凸部は、前記収容部の前記他端から離れるに従い、前記収容部の中心軸に向かうように傾斜している、
香味吸引器。
【請求項9】
請求項1~8に記載の香味吸引器であって、
前記把持部は、前記収容部の中心軸を通る断面視において、前記加熱部から前記収容部の軸方向に沿って前記収容部の前記他端部側に離間した位置に設けられている、
香味吸引器。
【請求項10】
請求項1~9に記載の香味吸引器であって、
前記喫煙物品は、香味源が充填された香味源充填部を備えており、
前記把持部は、前記収容部に収容された前記喫煙物品の前記香味源充填部を把持する、
香味吸引器。
【請求項11】
喫煙物品と香味吸引器とからなる喫煙システムであって、
前記香味吸引器は、
前記喫煙物品を挿入可能な開口が一端に形成され、前記喫煙物品を収容する収容部と、
前記収容部の軸方向に沿って配置され、前記収容部に収容された前記喫煙物品を加熱する加熱部と、
前記収容部に収容された前記喫煙物品の側面を把持する把持部と、
を有し、
前記収容部の内側面は、
前記収容部の軸方向と直交する断面視において、前記加熱部と重なる第1領域と、
前記第1領域以外の領域であって、前記収容部の軸方向に沿って、前記収容部の他端と前記加熱部の前記他端側の端部との間に存在する第2領域と、
を含み、
前記把持部は、前記第2領域に設けられている、
喫煙システム。
【請求項12】
請求項11に記載の喫煙システムであって、
前記喫煙物品は、香味源が充填された香味源充填部を備えており、
前記香味吸引器の前記把持部は、前記収容部に収容された前記喫煙物品の前記香味源充填部を把持する、
喫煙システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の喫煙システムであって、
前記喫煙物品は、充填された香味源の内部に導電部材を含み、
前記香味吸引器の前記加熱部は、時間的に変動する磁場を生成し、
前記喫煙物品の前記導電部材は、前記磁場の変動に基づいて、発熱する、
喫煙システム。
【請求項14】
請求項13に記載の喫煙システムであって、
前記導電部材は、前記香味源の内部に離散的に配置された複数の部材を含む、
喫煙システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、香味吸引器及び喫煙システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スティック等の喫煙物品を用いる香味吸引器において、香味吸引器のチャンバに挿入されたスティックを脱落しないよう把持する機構を設けることが知られている。例えば、特許文献1を参照。特許文献1では、チャンバの内部ヒータと鉛直方向に沿って重なる位置に、喫煙物品を把持する突起を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
香味吸引器においてエアロゾルを生成するために、チャンバに挿入された喫煙物品は、加熱要素によって加熱される。この場合、喫煙物品のうち加熱要素の近傍の被加熱領域付近は、加熱によって局所的に痩せ細ることがあり得る。よって、被加熱領域近傍で喫煙物品を把持すると、十分な把持を実行できない場合がある。
【0005】
本開示は、チャンバに挿入された喫煙物品に対する十分な把持力を確保することができる香味吸引器及び喫煙システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、喫煙物品を挿入可能な開口が一端に形成され、前記喫煙物品を収容する収容部と、前記収容部の軸方向に沿って配置され、前記収容部に収容された前記喫煙物品を加熱する加熱部と、前記収容部に収容された前記喫煙物品の側面を把持する把持部と、を有し、前記収容部の内側面は、前記収容部の軸方向と直交する断面視において、前記加熱部と重なる第1領域と、前記第1領域以外の領域であって、前記収容部の軸方向に沿って、前記収容部の他端と前記加熱部の前記他端側の端部との間に存在する第2領域と、を含み、前記把持部は、前記第2領域に設けられている、香味吸引器である。
【0007】
上記第1の態様では、収容部内で喫煙物品を把持する把持部が、収容部の軸方向に沿って加熱部が配置された第1領域とは区別される第2領域に設けられる。よって、上記第1の態様によれば、加熱部と接触しない非加熱領域において喫煙物品を把持することにより、収容部に収容された喫煙物品に対する十分な把持力を確保することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、前記収容部の中心軸に沿って切断した断面であって前記把持部を通る断面視において、(1)式及び(2)式を満たし、
W1≧W2 ・・・ (1)
W3≧W2 ・・・ (2)
前記(1)式及び前記(2)式において、W1は、前記第1領域の径方向長さであり、W2は、前記第2領域の径方向長さであり、W3は、前記第1領域に対応する前記喫煙物品の径方向長さである、香味吸引器である。
【0009】
上記第2の態様では、収容部の中心軸に沿って切断した断面であって前記把持部を通る断面視において、把持部が設けられている第2領域の径方向の長さは、把持部が径方向内側に突出しているために、把持部が設けられていない第1領域の径方向の長さよりも小さい。また、同断面視において、把持部が設けられている第2領域の径方向の長さは、把持部によって押圧されていない第1領域における喫煙物品の径方向の長さよりも小さい。よって、上記第2の態様によれば、加熱部と接触しない非加熱領域において収容部の内部空間が径方向内側に圧縮されていることにより、収容部に収容された喫煙物品に対する十分な把持力を確保することができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、上記第2の態様において、前記把持部は、前記第2領域において、前記収容部の内側に突出する凸部である、香味吸引器である。
【0011】
上記第3の態様では、喫煙物品を把持する把持部が、収容部の内側に突出する凸部として構成されている。よって上記第3の態様によれば、収容部に収容された喫煙物品に対して収容部の内側に向かう十分な把持力を発揮することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、前記収容部の前記他端には、前記収容部の底部を構成する底部材が設けられており、前記底部材は、前記収容部と一体または別部材として構成されており、前記凸部は、前記底部近傍に設けられている、香味吸引器である。
【0013】
上記第4の態様では、底部材が設けられて収容部の底部が構成され、喫煙物品を把持する把持部はこの底部近傍に設けられる。よって上記第4の態様によれば、収容部の底部近傍において喫煙物品を安定的に把持できる。また上記第4の態様では、底部材が収容部と一体または別部材として構成されることにより、収容部の構成の自由度が増す。
【0014】
本開示の第5の態様は、上記第4の態様において、前記凸部は、前記収容部の前記底部から前記一端へ向かって延在している、香味吸引器である。
【0015】
上記第5の態様では、喫煙物品を把持する把持部が、収容部の底部から鉛直上方に延在するとともに収容部の内側に向かう凸部として構成されている。よって上記第5の態様によれば、収容部に収容された喫煙物品に対して収容部の底部近傍において内側に向かう十分な把持力を発揮することができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、上記第5の態様において、前記凸部は、前記収容部の前記一端側の端部近傍に、前記一端に近づくに従い、前記収容部の中心軸から離間するように傾斜する傾斜部を有する、香味吸引器である。
【0017】
上記第6の態様では、収容部の底部から鉛直上方に延在するとともに収容部の内側に向かう凸部の先端に、前記収容部の中心軸から離間するように傾斜する傾斜部が設けられている。よって上記第6の態様によれば、収容部に喫煙物品を挿入する際に、凸部が挿入の妨げになることを防止できる。
【0018】
本開示の第7の態様は、上記第3~第6の態様において、前記凸部は、一対の突条部を有する、香味吸引器である。
【0019】
上記第7の態様では、収容部の底部から鉛直上方に延在するとともに収容部の内側に向かう凸部が、一対の突条部を有している。よって上記第7の態様によれば、一対の突条部により喫煙物品の側面を挟み込むことにより、喫煙物品を収容部内で安定して把持できる。
【0020】
本開示の第8の態様は、上記第7の態様において、前記凸部は、前記収容部の前記他端から離れるに従い、前記収容部の中心軸に向かうように傾斜している、香味吸引器である。
【0021】
上記第8の態様では、一対の突条部を含む凸部が、収容部の中心軸に向かうように傾斜している。よって上記第8の態様によれば、一対の突条部は、収容部に挿入された喫煙物品に押圧されて径方向外側に広げられると、その反動で径方向内側に喫煙物品を押圧し、喫煙物品を収容部内で安定して把持できる。
【0022】
本開示の第9の態様は、上記第1~第8の態様において、前記把持部は、前記収容部の中心軸を通る断面視において、前記加熱部から前記収容部の軸方向に沿って前記収容部の前記他端部側に離間した位置に設けられている、香味吸引器である。
【0023】
上記第9の態様では、加熱部の鉛直下方向に把持部が設けられる、よって上記第9の態様によれば、収容部として喫煙物品の加熱効率を向上し得る非円形形状の圧縮チャンバを採用する際に、加熱部が配置される収容部の圧縮された箇所で挿入された喫煙物品を押圧した上で、さらに鉛直下方において把持部により喫煙物品の側面を把持することにより、収容部の内部空間において喫煙物品が固定される。
【0024】
本開示の第10の態様は、上記第1~第9の態様において、前記喫煙物品は、香味源が充填された香味源充填部を備えており、前記把持部は、前記収容部に収容された前記喫煙物品の香味源充填部を把持する、香味吸引器である。
【0025】
上記第10の態様では、把持部が喫煙物品のうち香味源により充填された香味源充填部を把持するので、より密度の小さい他の箇所を把持する場合に比べて保持力が向上する。
【0026】
本開示の第11の態様は、喫煙物品と香味吸引器とからなる喫煙システムであって、前記香味吸引器は、前記喫煙物品を挿入可能な開口が一端に形成され、前記喫煙物品を収容する収容部と、前記収容部の軸方向に沿って配置され、前記収容部に収容された前記喫煙物品を加熱する加熱部と、前記収容部に収容された前記喫煙物品の側面を把持する把持部と、を有し、前記収容部の内側面は、前記収容部の軸方向と直交する断面視において、前記加熱部と重なる第1領域と、前記第1領域以外の領域であって、前記収容部の軸方向に沿って、前記収容部の他端と前記加熱部の前記他端側の端部との間に存在する第2領域と、を含み、前記把持部は、前記第2領域に設けられている、喫煙システムである。
【0027】
上記第11の態様では、収容部内で喫煙物品を把持する把持部が、収容部の軸方向に沿って加熱部が配置された第1領域とは区別される第2領域に設けられる。よって、上記第11の態様によれば、加熱部と接触しない非加熱領域において喫煙物品を把持することにより、収容部に収容された喫煙物品に対する十分な把持力を確保することができる。
【0028】
本開示の第12の態様は、上記第11の態様において、前記喫煙物品は、香味源が充填された香味源充填部を備えており、前記香味吸引器の前記把持部は、前記収容部に収容された前記喫煙物品の前記香味源充填部を把持する、喫煙システムである。
【0029】
上記第12の態様では、喫煙システムにおいて、把持部が喫煙物品のうち香味源により充填された香味源充填部を把持するので、より密度の小さい他の箇所を把持する場合に比べて香味吸引器内での喫煙物品の保持力が向上する。
【0030】
本開示の第13の態様は、上記第11または第12の態様において、前記喫煙物品は、充填された香味源の内部に導電部材を含み、前記香味吸引器の前記加熱部は、時間的に変動する磁場を生成し、前記喫煙物品の前記導電部材は、前記磁場の変動に基づいて、発熱する、喫煙システムである。
【0031】
上記第13の態様では、香味吸引器が生成する変動磁場の影響により、香味吸引器に充填された香味源に内蔵された導電部材が発熱し、香味が生成される。よって第13の態様によれば、喫煙システムにおいて、香味吸引器自体を発熱させることなく、香味を生成することができる。
【0032】
本開示の第14の態様は、上記第13の態様において、前記導電部材は、前記香味源の内部に離散的に配置された複数の部材を含む、喫煙システムである。
【0033】
上記第14の態様では、喫煙物品の香味源には、互いに離間するように配置された複数の導電部材が内蔵されている。よって第14の態様によれば、被加熱部材内蔵型喫煙物品の構成の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1A】第1実施形態に係る香味吸引器の概略正面図である。
【
図1B】第1実施形態に係る香味吸引器の概略上面図である。
【
図1C】第1実施形態に係る香味吸引器の概略底面図である。
【
図3】
図1Bに示した矢視3-3における香味吸引器の断面図である。
【
図4B】
図4Aに示す矢視4B-4Bにおけるチャンバの断面図である。
【
図5A】
図4Bに示す矢視5A-5Aにおけるチャンバの断面図である。
【
図5B】
図4Bに示す矢視5B-5Bにおけるチャンバの断面図である。
【
図7】チャンバ内の所望の位置に消費材が配置された状態の
図5Bに示す断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る加熱要素と延出部との相互配置を示す、
図5Bに示した矢視9-9におけるチャンバの断面図である。
【
図10】チャンバを鉛直上方から見た平面図である。
【
図11】第1実施形態の変形例に係る加熱要素と延出部との相互配置を示す、チャンバの断面図である。
【
図12】第2実施形態に係る内部ヒータと延出部との相互配置を示す、チャンバの断面図である。
【
図13】第3実施形態に係るサセプタ部と延出部との相互配置を示す、チャンバの断面図である。
【
図14】第3実施形態の変形例に係る内蔵サセプタと延出部との相互配置を示す、チャンバの断面図である。
【
図15】第4実施形態に係る高周波発生装置と延出部との相互配置を示す、チャンバの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する図面において、同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0036】
図1Aは、第1実施形態に係る香味吸引器100の概略正面図である。
図1Bは、第1実施形態に係る香味吸引器100の概略上面図である。
図1Cは、第1実施形態に係る香味吸引器100の概略底面図である。本明細書で説明する図面においては、説明の便宜のためにX-Y-Z直交座標系を付することがある。この座標系において、Z軸は鉛直上方を向いており、X-Y平面は香味吸引器100を水平方向に切断するように配置されており、Y軸は香味吸引器100の正面から裏面へ延出するように配置されている。Z軸は、後述する霧化部30のチャンバ50に収容される消費材の挿入方向、又は筒状の断熱部の軸方向ということもできる。また、X軸は、軸方向に直交する第1方向ということもでき、Y軸は、軸方向及び第1方向に直交する第2方向ということもできる。さらに、X軸方向を、消費財の挿入方向に直交する面の中の香味吸引器100の長手方向といい、Y軸方向を、消費財の挿入方向に直交する面の中の香味吸引器100の短手方向ということもできる。
【0037】
第1実施形態に係る香味吸引器100は、例えば、エアロゾル源を含んだ香味源を有するスティック型の消費材を加熱することで、香味を含むエアロゾルを生成するように構成される。
【0038】
図1Aから
図1Cに示されるように、香味吸引器100は、アウタハウジング101と、スライドカバー102と、スイッチ部103と、を有する。アウタハウジング101は、香味吸引器100の最外のハウジングを構成し、ユーザの手に収まるようなサイズを有する。ユーザが香味吸引器100を使用する際は、香味吸引器100を手で保持して、エアロゾルを吸引することができる。アウタハウジング101は、複数の部材を組み立てることによって構成されてもよい。アウタハウジング101は、例えばポリカーボネート、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ、あるいはアルミニウム等の金属で形成することができる。
【0039】
アウタハウジング101は、消費材を受け入れるための図示しない開口を有し、スライドカバー102は、この開口を閉じるようにアウタハウジング101にスライド可能に取り付けられる。具体的には、スライドカバー102は、アウタハウジング101の上記開口を閉鎖する閉位置(
図1A及び
図1Bに示す位置)と、上記開口を開放する開位置との間を、アウタハウジング101の外表面に沿って移動可能に構成される。例えば、ユーザがスライドカバー102を手動で操作することにより、スライドカバー102を閉位置と開位置とに移動させることができる。これにより、スライドカバー102、香味吸引器100の内部への消費材のアクセスを許可または制限することができる。
【0040】
スイッチ部103は、香味吸引器100の作動のオンとオフとを切り替えるために使用される。例えば、後述するように、ユーザは、消費材を香味吸引器100に挿入した状態でスイッチ部103を操作することで、加熱装置40に電源21から電力を供給し、消費材を燃焼させずに加熱することができる。なお、スイッチ部103は、アウタハウジング101の外部に設けられるスイッチであってもよいし、アウタハウジング101の内部に位置するスイッチであってもよい。スイッチがアウタハウジング101の内部に位置する場合、アウタハウジング101の表面のスイッチ部103を押下することで、間接的にスイッチが押下される。第1実施形態では、スイッチ部103のスイッチがアウタハウジング101の内部に位置する例を説明する。
【0041】
香味吸引器100はさらに、図示しない端子を有してもよい。端子は、香味吸引器100を例えば外部電源と接続するインターフェースであり得る。香味吸引器100が備える電源が充電式バッテリである場合は、端子に外部電源を接続することで、外部電源から電源に電流を流し、電源を充電することができる。また、端子にデータ送信ケーブルを接続することにより、香味吸引器100の作動に関連するデータを外部装置に送信できるようにしてもよい。
【0042】
次に、第1実施形態に係る香味吸引器100で使用される消費材について説明する。
図2は、消費材110の概略側断面図である。第1実施形態において、香味吸引器100と消費材110とにより喫煙システムが構成され得る。
図2に示す例においては、消費材110は、喫煙可能物111と、筒状部材114と、中空フィルタ部116と、フィルタ部115と、を有する。喫煙可能物111は、第1の巻紙112によって巻装される。筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115は、第1の巻紙112とは異なる第2の巻紙113によって巻装される。第2の巻紙113は、喫煙可能物111を巻装する第1の巻紙112の一部も巻装する。これにより、筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結される。ただし、第2の巻紙113が省略され、第1の巻紙112を用いて筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115と喫煙可能物111とが連結されてもよい。第2の巻紙113のフィルタ部115側の端部近傍の外面には、ユーザの唇が第2の巻紙113からくっつきにくくするためのリップリリース剤117が塗布される。消費材110のリップリリース剤117が塗布される部分は、消費材110の吸口として機能する。消費材110は、本開示の喫煙物品の一例である。喫煙可能物111は、本開示の香味源の一例である。
【0043】
喫煙可能物111は、例えば刻み状、粒状等の形状を有するたばこ等の香味源と、エアロゾル源とを含み得る。また、喫煙可能物111を巻く第1の巻紙112は、通気性を有するシート部材であり得る。筒状部材114は、紙管又は中空フィルタであり得る。
図2に示す例では、消費材110は、喫煙可能物111、筒状部材114、中空フィルタ部116、及びフィルタ部115を備えているが、消費材110の構成はこれに限られない。例えば、中空フィルタ部116が省略され、筒状部材114とフィルタ部115とが互いに隣接配置されてもよい。
【0044】
次に、香味吸引器100の内部構造について説明する。
図3は、
図1Bに示した矢視3-3における香味吸引器100の断面図である。
図3に示すように、香味吸引器100のアウタハウジング101の内側には、インナハウジング10が設けられる。インナハウジング10は、例えば、ポリカーボネート(PC)、ABS(Acrylonitrile-Butadiene-Styrene)樹脂やPEEKまたは複数種類のポリマーを含有するポリマーアロイ等、あるいは、アルミ等の金属で形成され得るが、インナハウジング10の材料は特に限定されない。インナハウジング10の内部空間には、電源部20と、霧化部30と、が設けられる。さらに、インナハウジング10の内部空間には、図示しない回路部が設けられる。
【0045】
回路部は、例えばマイクロプロセッサ等を含み、電源部20から霧化部30への電力の供給を制御することができる。これにより、回路部は、霧化部30による消費材110の加熱を制御することができる。
【0046】
電源部20は、回路部と電気的に接続される電源21を有する。電源21は、例えば、充電式バッテリ又は非充電式のバッテリであり得る。電源21は、回路部を介して、霧化部30と電気的に接続される。これにより、電源21は、消費材110を適切に加熱するように、霧化部30に電力を供給することができる。
【0047】
霧化部30は、
図3に示すように、消費材110の挿入方向(Z軸方向)に延びるチャンバ50と、チャンバ50の一部を囲う加熱装置40と、断熱部32と、略筒状の挿入ガイド部材34と、を有する。チャンバ50は、消費材110を収容するように構成される。加熱装置40は、チャンバ50の外周面に接触し、チャンバ50に収容された消費材110を加熱するように構成される。
図3に示すように、チャンバ50の底部には、底部材36が設けられていてもよい。底部材36は、チャンバ50に挿入された消費材110を位置決めするストッパとして機能し得る。底部材36は、消費材110が当接する面に凹凸を有し、消費材110が当接する面と底部材36との間に空気流路が形成される。なお、底部材36から鉛直上方に向かって一対の延出部87が延在している。チャンバ50、加熱装置40、底部材36、延出部87についての詳細は後述する。チャンバ50は、本開示の収容部の一例である。
【0048】
断熱部32は、全体として略筒状であり、チャンバ50を囲うように配置される。断熱部32は、例えばエアロゲルシートを含み得る。挿入ガイド部材34は、例えば、PEEK、PC、又はABS等の樹脂材料により形成され、閉位置にあるスライドカバー102とチャンバ50との間に設けられる。挿入ガイド部材34は、スライドカバー102が開位置にあるときに、香味吸引器100の外部と連通し、消費材110を挿入ガイド部材34に挿入することで、チャンバ50への消費材110の挿入を案内する。
【0049】
次に、チャンバ50の構造について説明する。
図4Aは、チャンバ50の斜視図である。
図4Bは、
図4Aに示す矢視4B-4Bにおけるチャンバ50の断面図である。
図5Aは、
図4Bに示す矢視5A-5Aにおけるチャンバ50の断面図である。
図5Bは、
図4Bに示す矢視5B-5Bにおけるチャンバ50の断面図である。
図6は、チャンバ50及び加熱装置40の斜視図である。
図4A及び
図4Bに示すように、チャンバ50は、消費材110が挿入される開口52と、消費材110を収容する筒状の側壁部60と、を含む筒状部材であり得る。チャンバ50は、消費材110を加熱するための収容空間68をその内部に有する。チャンバ50の開口52を画定する端部には、フランジ部52aが形成される。チャンバ50は、耐熱性を有し、且つ熱膨張率が小さい材料で形成されることが好ましく、例えば、ステンレス鋼等の金属、PEEK等の樹脂、ガラス、又はセラミック等で形成され得る。これにより、チャンバ50から消費材110へ効果的な加熱が可能になる。
【0050】
図4B及び
図5Bに示すように、側壁部60は、接触部62と、離間部66と、を含む。消費材110がチャンバ50内の所望の位置に配置されたとき、接触部62は、消費材110の一部と接触又は押圧し、離間部66は、消費材110から離間する。なお、本明細書において、「チャンバ50内の所望の位置」とは、消費材110が適切に加熱される位置、ユーザが喫煙するときの消費材110の位置、又は消費材110が後述する底部材36に接触する位置をいう。接触部62は、内面62aと、外面62bとを有する。離間部66は、内面66aと、外面66bとを有する。
図6に示すように、加熱装置40は、接触部62の外面62bに配置される。加熱装置40は、接触部62の外面62bに隙間なく配置されることが好ましい。
【0051】
図4A及び
図5Bに示すように、接触部62の外面62bは平面である。接触部62の外面62bが平面であることにより、
図6に示すように接触部62の外面62bに配置される加熱装置40に帯状の電極48が接続されている場合に、帯状の電極48が撓むことを抑制することができる。
図4B及び
図5Bに示すように、接触部62の内面62aは平面である。また、
図4B及び
図5Bに示すように、接触部62の厚みは均一である。
【0052】
図4A、
図4B、及び
図5Bに示すように、チャンバ50は、接触部62をチャンバ50の周方向に2つ有し、2つの接触部62は、互いに平行になるように対向する。2つの接触部62の内面62a間の少なくとも一部の距離は、チャンバ50に挿入される消費材110の接触部62間に配置される箇所の幅よりも小さいことが好ましい。
【0053】
図5Bに示すように、離間部66の内面66aは、チャンバ50の長手方向(Z軸方向)に直交する面において、全体的に円弧状の断面を有し得る。また、離間部66は、接触部62と周方向において隣接するように配置される。
【0054】
図4Bに示すように、チャンバ50は
図3に示した底部材36が貫通してチャンバ50内部に配置されるように、その底部56に穴56aを有し得る。底部材36は、チャンバ50の底部56の内部に接着剤等により固定され得、消費材110を収容する収容部の底壁部を構成する。底部56に設けられる底部材36は、消費材110の端面の少なくとも一部を露出するように、チャンバ50に挿入された消費材110の一部を支持する。また、底部56は、露出した消費材110の端面が後述する空隙67(
図7参照)と連通するように、消費材110の一部を支持し得る。底部材36は、消費材110が当接する面に凹凸を有し、例えば、PEEK等の樹脂材料、金属、ガラス、又はセラミック等で形成され得るがこれに限定されない。
【0055】
図4A及び
図4Bに示すように、チャンバ50は、開口52と側壁部60との間に筒状の非保持部54を有することが好ましい。消費材110がチャンバ50の所望の位置に位置決めされた状態において、非保持部54と消費材110との間に隙間が形成され得る。また、
図4A及び
図4Bに示すように、チャンバ50は、非保持部54の内面と接触部62の内面62aとを接続するテーパ面58aを備えた第1ガイド部58を有することが好ましい。
【0056】
図6に示すように、加熱装置40は、加熱要素42を有する。加熱要素42は、例えばヒーティングトラックであってもよい。加熱要素42は、チャンバ50の離間部66に接触せず、接触部62を加熱するように配置される。具体的には、加熱要素42は、接触部62の外面にのみ配置される。
図6に示すように、加熱装置40は、加熱要素42に加えて、加熱要素42の少なくとも一面を覆う電気絶縁部材44を有することが好ましい。第1実施形態においては、電気絶縁部材44は加熱要素42の両面を覆う様に配置される。加熱要素42は、本開示の加熱部の一例である。
【0057】
具体的には、
図6に示された帯状の電極48に電力が供給されると、加熱装置40の加熱要素42に電流が流れ、加熱要素42は発熱する。一方、加熱装置40の電気絶縁部材44には、電極48に供給された電力は到達しない。したがって、チャンバ50の周囲を覆う加熱装置40のうち加熱要素42のみが発熱する。また上述の通り、加熱要素42は、チャンバ50の離間部66に接触せず、接触部62の外面にのみ配置されている。以上の構成により、チャンバ50の周囲を覆う加熱装置40は、消費材110の一部を押圧する接触部62のみを直接に加熱する。
【0058】
図7は、チャンバ50内の所望の位置に消費材110が配置された状態の
図5Bに示す断面図である。
図7に示すように、消費材110がチャンバ50内の所望の位置に配置されると、消費材110はチャンバ50の接触部62と接触して押圧され得る。他方、消費材110と離間部66との間には、空隙67が形成される。空隙67は、チャンバ50の開口52と、チャンバ50内に位置づけられた消費材110の端面と底部材36との間の空気流路と連通し得る。これにより、チャンバ50の開口52から流入した空気は、空隙67を通過して、消費材110の内部に流入することができる。言い換えれば、消費材110と離間部66との間に空気流路が形成される。
【0059】
次に、第1実施形態における底部材36の構造について詳細に説明する。
図8は、底部材36の斜視図である。底部材36は、軸部36aと、平板部36bと、を有する。
図3に示したように、軸部36aは、チャンバ50の穴56a(
図4B参照)を通じてチャンバ50の外部に突出する。軸部36aの一端は、平板部36bの一方の面の略中央部と結合する。平板部36bは、
図5Bに示したチャンバ50の断面において、チャンバ50の側壁部60の内面と平面視で略一致する形状を有する。具体的には、平板部36bは、軸部36aが結合される面と反対側の平面部81を有し、この平面部81は、一対の直線状部81aと、一対の直線状部81a間を接続する円弧状部81bとを有する。
【0060】
平板部36bは、チャンバ50の内部に配置され、チャンバ50の底部56の内面に、例えば接着剤により固定され得る。なお、底部材36は、チャンバ50と一体に形成されてもよい。底部材36の平板部36bがチャンバ50の底部56に固定された状態において、平面部81はチャンバ50の開口52を向くように配置される。底部材36はさらに、一対の突条部83を平面部81上に有する。一対の突条部83は、それぞれ、平面部81の直線状部81aと略平行に延び、互いに離間するように配置される。
【0061】
図8に示す例では、一対の突条部83は、それぞれ直線状部81a上に配置され、その一部は円弧状部81b上にも配置される。一対の突条部83は、その延在方向の端面83aと、互いに向かい合う側面83bと、上面83cと、を有する。また、第1実施形態では、一対の突条部83の側面83bは平坦であり、側面83b間には直線状の溝部85が形成される。この溝部85は、チャンバ50の収容空間68に向けて開口する。溝部85は、チャンバ50内の所望の位置に配置された消費材110の端面と連通する空気流路を画定する。この空気流路は、チャンバ50と底部材36で構成される収容部の底面に沿って延びる。溝部85は、底部材36の平面部81の中心部を通るように形成されている。
【0062】
さらに
図8に示すように、一対の突条部83の各々の上面83cから、鉛直上方に向かって、一対の延出部87が延在している。延出部87は、チャンバ50において消費材110と接触し押圧する接触部62の内面62aに当接または隣接し、チャンバ50の内部で消費材110の外周を把持する。一対の延出部87は、本開示の把持部及び凸部の一例である。
【0063】
次に、
図9を参照して、第1実施形態におけるチャンバ50の近傍における、加熱装置40の加熱要素42と、延出部87との相互位置関係の詳細を説明する。
【0064】
図9は、加熱要素42と延出部87との相互配置を示す、
図5Bに示した矢視9-9におけるチャンバの断面図である。具体的には、チャンバ50の中心軸C1が
図9のZ軸方向に延在しており、チャンバ50の側面のうち消費材110に接触する接触部62が示されている。上述の通り、加熱装置40の加熱要素42はチャンバ50の接触部62の外面62bに配置されているので、
図9において一対の加熱要素42がチャンバ50の接触部62の径方向外側に示されている。なお、
図4A及び
図4Bに示した通り、加熱要素42のZ軸方向上方にはチャンバ50の第1ガイド部58及び非保持部54が位置している。
【0065】
また、
図9のZ軸方向下方には、チャンバ50の底部を構成する底部材36が示されている。上述の通り、延出部87は接触部62の内面62aからチャンバ50の中心軸C1に対して径方向内側に突出しているので、
図9において一対の延出部87がZ軸方向に延在している。ここで
図9に示すように、延出部87は、加熱要素42とZ軸方向に沿って重なることはない。すなわち、延出部87のZ軸正方向の端部は、加熱要素42のZ軸負方向の端部の高さまで到達しないように構成されている。
【0066】
チャンバ50の内部空間において、加熱要素42が配置されている箇所に対応するZ軸方向に沿った領域を第1領域50Aとし、第1領域50Aとは区別され、第1領域50AのZ軸負方向端面と底部材36とにより画定される領域を第2領域50Bとする。第1領域50Aは、加熱要素42によって直接加熱される箇所である。第1実施形態において、延出部87は第2領域50Bのみに設けられ、第1領域50Aに到達することは無いように構成されている。
【0067】
チャンバ50内の所望の位置に消費材110が配置された状態を考える。この場合、消費材110の先端は、
図8に示された底部材36の一対の突条部83の上面83cに接触し、突条部83の上面83cによって鉛直下方(すなわちZ軸負方向)から支持される。さらに、延出部87が突条部83の上面83cから鉛直上方に向かって延在するとともにチャンバ50の中心軸C1に向かって径方向に厚みを有しているので、消費材110の先端近傍の外側面は延出部87によって径方向内側へ押圧される。すなわち、延出部87によって消費材110が把持され、チャンバ50内部で消費材が安定的に保持される。
【0068】
図9に示されたチャンバ50の内部空間を、以下のように表現することもできる。
図9は、チャンバ50の中心軸C1と、延出部87とを通る、チャンバ50の断面を示している。
図9の断面において、第2領域50Bでは延出部87がチャンバ50の中心軸C1に向かって径方向内側に突出しているので、以下の(1)式が成り立つ。
W1≧W2 ・・・ (1)
ここでW1は、第1領域50Aの径方向の長さであり、W2は、第2領域50Bの径方向長さである。また、チャンバ50内の所望の位置に消費材110が配置された状態において、第2領域50Bでは消費材110が延出部87によりチャンバ50の中心軸C1に向かって径方向内側に押圧されているので、以下の(2)式が成り立つ。
W3≧W2 ・・・ (2)
ここでW3は、図示は省略するが、
図9において消費材110が好適な位置に配置された場合における、第1領域50Aにおける消費材110の径方向の長さである。上記(1)式及び(2)式において、等号は第2領域50Bの延出部87が配置されていない箇所について成り立つ。なおチャンバ50の内部空間または消費材110の径方向の長さとは、チャンバ50の中心軸C1を通る断面視において、中心軸C1に直交する方向の距離をいう。
図9ではY軸に垂直なX-Z平面が示されているので、X軸方向の距離が径方向の長さである。しかしながら、チャンバ50の内部空間の径方向の長さは、X軸方向に限られるものではない。チャンバ50の内部空間の径方向の長さは、チャンバ50の中心軸C1を通る断面の採り方によって、X-Y平面上で適宜定義される。
図10を用いて具体的に説明する。
図10は、チャンバ50をZ軸正方向(つまり、鉛直方向上方)から見た平面図である。破線S1は、
図9に示されたチャンバ50の中心軸C1を通る断面視に対応し、破線S1の長さがこの断面視における径方向の長さである。一方、破線S2のように、離間部66を通る断面視を考えることもでき、この場合破線S2の長さがこの断面視における径方向の長さである。チャンバ50内の所望の位置に配置された消費材110の径方向の長さも、チャンバ50と同様に定義される。
【0069】
消費材110を把持する延出部87は、加熱要素42とZ軸方向に沿って重ならない第2領域50Bに配置されているので、加熱要素42によって直接加熱される箇所とは異なる箇所において、消費材110が把持される。チャンバ50内の所望の位置に配置された消費材110の外側面は、第1領域50Aにおいては加熱要素42による加熱により局所的に痩せる可能性がある。第1実施形態の延出部87は、第1領域50Aとは区別される第2領域50Bにおいて消費材110の外側面を把持するので、加熱要素42による加熱の影響を受けることなく安定的に消費材110を保持することができる。
【0070】
一方、
図2に示した通り、消費材110の先端近傍の部分は第1の巻紙112で巻装されるとともに、喫煙可能物111により充填されている。第1実施形態では、延出部87が消費材110のうち喫煙可能物111により充填された箇所を把持するので、より密度の小さい他の箇所を把持する場合に比べて保持力が向上する。
【0071】
第1実施形態においては、消費材110の外側面を把持する延出部87は、底部材36の一対の突条部83の上面83cから延出するものとして説明した。しかしながら、延出部87の構成はこれに限られるものではない。延出部87は、第1領域50A内に侵入しない限りにおいて、第2領域50Bにおいて適宜配置することができる。一例として、延出部87は、底部材36から離間した位置に設けることもできる。
【0072】
また第1実施形態では、延出部87はチャンバ50の接触部62の内面62に当接または隣接するように設けられるものとして説明した。しかしながら、延出部87の配置はこれに限られるものではない。延出部87は、第1領域50A内に侵入しない限りにおいて、チャンバ50の内周面に適宜配置することができる。一例として、チャンバ50の離間部66の内面66に延出部87を配置することもできる。
【0073】
また第1実施形態では、一対の延出部87が設けられるものとして説明した。しかしながら、延出部87の数は2個に限られるものではなく、消費材110の外側面を十分に把持できる限りにおいて、適宜変更することができる。例えば、単一の延出部を設けることができ、または3個以上の延出部を設けることもできる。さらに、環状の単一の延出部を設けることもできる。
【0074】
[第1実施形態の変形例]
以下、本開示の第1実施形態の変形例について
図11を参照して説明する。第1実施形態の変形例に係る香味吸引器は、第1実施形態に係る香味吸引器100と比較して、消費材110を把持する延出部187の構成のみが、第1実施形態と異なる。なお第1実施形態と同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。延出部187は、本開示の把持部及び凸部の一例である。
【0075】
図11は、第1実施形態の変形例に係る加熱要素42と延出部187との相互配置を示す、チャンバの断面図である。
図11では、チャンバ50の中心軸C1、第1ガイド部58及び非保持部54、底部材36の図示は省略する。また
図11では、底部材36の図示を省略する。第1実施形態の変形例に係る延出部187は、底部材36の一対の突条部83の上面83cから延出するものとして構成することができる。一方、第1実施形態について述べたように、延出部187を、第1領域50A内に侵入しない限りにおいて、第2領域50Bにおいて適宜配置することができる。
【0076】
図11に示すように、延出部187の全体は、Z軸正方向に向かうにつれて、チャンバ50の中心軸C1に対して径方向内側に向かうように傾斜している。さらに、延出部187のZ軸正方向の端部187Aは、先端に近づくに従ってチャンバ50の中心軸C1に対して径方向外側に離間するように傾斜している。端部187Aは、本開示の傾斜部の一例である。
【0077】
第1実施形態の変形例に係る延出部187は、その全体が径方向内側に向かうように傾斜しているために、挿入された消費材110に押圧されて径方向外側に広げられるとその反動で消費材110を径方向内側に押圧して、より強い把持力を発揮することができる。また延出部187は、先端が径方向外側に離間するように傾斜しているZ軸正方向の端部187Aを備えることにより、消費材110を所望の位置に配置する際に、消費材110と干渉することを回避することができる。すなわち、チャンバ50内に消費材110を挿入する際に妨げとなることを防止できる。
【0078】
なお、第1実施形態の変形例に係る延出部187の2つの特徴、すなわち全体として径方向内側に向かうように傾斜していることと、端部187Aの構成は、互いに組み合わせなければならないものではない。本開示の香味吸引器において、これらのうちの一方のみを採用することも可能である。
【0079】
[第2実施形態:内部ヒータ]
以下、本開示の第2実施形態について
図12を参照して説明する。なお第1実施形態と同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0080】
第2実施形態に係る香味吸引器は、第1実施形態に係る香味吸引器100と比較して、チャンバ250の構成が異なる。すなわち、
図3及び
図6に示すように第1実施形態ではチャンバ50の外周が加熱要素42を含む加熱装置40に覆われていたのに対し、第2実施形態に係るチャンバ250は加熱装置で覆われていない。第2実施形態に係る香味吸引器は、第1実施形態の加熱装置40に代えて、
図12に示すチャンバ250の中心軸の周りに配置された内部ヒータ202と、内部ヒータ20を鉛直下方向から支持するヒータ支持部204を備えている。チャンバ250は、本開示の収容部の一例である。内部ヒータ202は、本開示の加熱部の一例である。
【0081】
チャンバ250内に消費材110が挿入されると、内部ヒータ202は消費材110の内部に入り込む。消費材110がチャンバ250内の所望の位置に配置されたとき、内部ヒータ202は、消費材110において第1の巻紙112で巻装されて喫煙可能物111により充填されている箇所(
図2参照)の内部に位置する。この配置に基づき、第2実施形態に係る香味吸引器は、内部ヒータ202により内部から喫煙可能物111を加熱して、香味を含むエアロゾルを適宜生成することができる。
【0082】
図12は、第1実施形態の
図9及び
図11に相当する、第2実施形態のチャンバ250の断面図である。
図12では、
図11と同様に、チャンバ250の中心軸C1、第1ガイド部58及び非保持部54、底部材36の図示は省略する。ヒータ支持部204は、例えばチャンバ250の底部を構成する底部材36から延出するように構成することができるが、これに限られるものではない。
【0083】
第2実施形態では、内部ヒータ202の配置により、チャンバ250内に2つの領域を定義する。チャンバ250の内部空間において、内部ヒータ202が配置されている箇所に対応するZ軸方向に沿った領域を第1領域250Aとし、第1領域250Aとは区別され、第1領域250AのZ軸負方向端面とチャンバ250の底部とにより画定される領域を第2領域250Bとする。第1領域250Aは、内部ヒータ202によって消費材110の内部が直接加熱される箇所である。
【0084】
第2実施形態の延出部287は、第1実施形態の延出部87と同様に構成されており、チャンバ250内に挿入された消費材110の外側面を把持する。延出部287は第2領域250Bに設けられ、第1領域250Aに到達することは無いように構成されている。延出部287は、本開示の把持部及び凸部の一例である。
【0085】
消費材110を把持する延出部287は、内部ヒータ202とZ軸方向に沿って重ならない第2領域250Bに配置されているので、内部ヒータ202によって内側から直接加熱される箇所とは異なる箇所において、消費材110が把持される。チャンバ250内の所望の位置に配置された消費材110は、第1領域250Aにおいては内部ヒータ202による内部からの加熱により局所的に痩せる可能性がある。第2実施形態の延出部287は、第1領域250Aとは区別される第2領域250Bにおいて消費材110の外側面を把持するので、内部ヒータ202による加熱の影響を受けることなく安定的に消費材110を保持することができる。
【0086】
一方、
図2に示した通り、消費材110の先端近傍の部分は第1の巻紙112で巻装されるとともに、喫煙可能物111により充填されている。第2実施形態では、延出部287が消費材110のうち喫煙可能物111により充填された箇所を把持するので、より密度の小さい他の箇所を把持する場合に比べて保持力が向上する。
【0087】
[第3実施形態:電磁誘導による加熱]
以下、本開示の第3実施形態について
図13を参照して説明する。なお第1実施形態と同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0088】
図13は、第1実施形態の
図9及び
図11に相当する、第3実施形態のチャンバ350の断面図である。
図12では、
図11と同様に、チャンバ350の中心軸C1、第1ガイド部58及び非保持部54、底部材36の図示は省略する。
【0089】
第3実施形態に係る香味吸引器は、第1実施形態に係る香味吸引器100と比較して、チャンバ350の構成が異なる。すなわち、
図3及び
図6に示すように第1実施形態ではチャンバ50の外周が加熱要素42を含む加熱装置40に覆われていたのに対し、第3実施形態に係るチャンバ350は加熱装置で覆われていない。第3実施形態に係る香味吸引器は、第1実施形態の加熱装置40に代えて、
図12に示すチャンバ350の外周に巻き付けて配置された誘導コイル342を備えている。チャンバ350は、本開示の収容部の一例である。
【0090】
第1実施形態に係るチャンバ50は、例えば、ステンレス鋼等の金属、PEEK等の樹脂、ガラス、又はセラミック等で形成され得たが、第3実施形態のチャンバ350は、導電体で構成されたサセプタ部350aと、絶縁体で構成された支持部350bと、を含んでいる。サセプタ部350aは、少なくとも誘導コイル342が巻き付けられた箇所に設けられている。サセプタ部350aは、誘導コイル342に交流電流が流された結果として発熱し、チャンバ350内に挿入された消費材110の外側面を加熱する。支持部350bは、チャンバ350の底部近傍に設けられており、誘導コイル342に交流電流が流れた場合に発熱することがない。サセプタ部350aは、例えばステンレス鋼等の金属で形成することができ、支持部350bは、例えばPEEK等の樹脂、ガラス、又はセラミック等で形成することができる。サセプタ部350a及び誘導コイル342は、本開示の加熱部の一例である。
【0091】
第3実施形態におけるチャンバ350のサセプタ部350aの発熱について説明する。サセプタ部350aの外周に巻き付けられた誘導コイル342に交流電流を流すと、チャンバ350近傍に時間的に変動する磁場が生成される。ファラデーの電磁誘導の法則により磁場の変動が起電力を生じ、レンツの法則により磁場の変動を打ち消すようにコイルに流れる交流電流と逆の向きにサセプタ部350aに渦電流が流れる。渦電流によるジュール熱により、サセプタ部350aは発熱する。この際に、支持部350bは絶縁体で形成されているので、渦電流が発生することは無く、またサセプタ部350aからの熱伝導も妨げられる。
【0092】
第3実施形態では、誘導コイル342の配置により、チャンバ350内に2つの領域を定義する。チャンバ350の内部空間において、誘導コイル342が配置されている箇所に対応するZ軸方向に沿った領域を第1領域350Aとし、第1領域350Aと区別され、第1領域350AのZ軸負方向端面とチャンバ350の底部とにより画定される領域を第2領域350Bとする。第1領域350Aは、サセプタ部350aに発生したジュール熱によって消費材110の外側面が直接加熱される箇所である。
【0093】
第3実施形態の延出部387は、第1実施形態の延出部87と同様に構成されており、チャンバ350内に挿入された消費材110の外側面を把持する。延出部387は第2領域350Bに設けられ、第1領域350Aに到達することは無いように構成されている。延出部387は、本開示の把持部及び凸部の一例である。
【0094】
消費材110を把持する延出部387は、誘導コイル342とZ軸方向に沿って重ならないとともに絶縁体で形成された支持部350bが設けられている、第2領域350Bに配置されているので、サセプタ部350aに発生したジュール熱によって直接加熱される箇所とは異なるとともにサセプタ部350aからの熱伝導が伝わりにくい箇所において、消費材110が把持される。チャンバ350内の所望の位置に配置された消費材110は、第1領域350Aにおいてはサセプタ部350aに発生したジュール熱による外部からの加熱により局所的に痩せる可能性がある。第3実施形態の延出部387は、第1領域350Aとは区別される第2領域350Bにおいて消費材110の外側面を把持するので、サセプタ部350aに発生したジュール熱の影響を受けることなく安定的に消費材110を保持することができる。
【0095】
一方、
図2に示した通り、消費材110の先端近傍の部分は第1の巻紙112で巻装されるとともに、喫煙可能物111により充填されている。第3実施形態では、延出部387が消費材110のうち喫煙可能物111により充填された箇所を把持するので、より密度の小さい他の箇所を把持する場合に比べて保持力が向上する。
【0096】
なお上記においては、チャンバ350が絶縁体で形成された支持部350bを含むものとして説明したが、絶縁体部分は第3実施形態に係るチャンバ350の必須の構成要素ではない。チャンバ350の全体を、サセプタ部350aを含めて導電体で一体成型することも可能である。この場合であっても、誘導コイル342に流した交流電流に起因するジュール熱は、誘導コイル342が巻き付けられているサセプタ部350aのみに発生するため、第2領域350Bはジュール熱によって直接加熱されることは無い。ただし、この構成では、絶縁体で形成された支持部350bを設ける場合に比べて、第1領域350Aから第2領域350Bへの熱伝導は大きくなる。
【0097】
[第3実施形態の変形例:サセプタ内蔵喫煙物品]
以下、本開示の第3実施形態の変形例について
図14を参照して説明する。なお第1実施形態と同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0098】
図14は、第1実施形態の
図9及び
図11に相当する、第3実施形態の変形例のチャンバ355の断面図である。
図14では、
図11と同様に、チャンバ355の中心軸C1、第1ガイド部58及び非保持部54、底部材36の図示は省略する。
【0099】
第3実施形態の変形例に係る香味吸引器は、第3実施形態に係る香味吸引器と比較して、チャンバ355の構成が異なる。すなわち、第3実施形態ではチャンバ350がサセプタ部350aを始めとする導電体を含んでいたのに対し、第3実施形態の変形例に係るチャンバ355は全体が絶縁体で形成されている。チャンバ355は、例えばPEEK等の樹脂、ガラス、又はセラミック等で形成することができる。チャンバ355は、本開示の収容部の一例である。
【0100】
一方、第3実施形態の変形例に係る消費材410は、第1実施形態の消費材110に比べ、
図14に示す導電性の内蔵サセプタ412を含んでいる。第3実施形態の変形例に係る消費材410は、
図2に示された消費材110に対し、喫煙可能物111の内部に導電性の内蔵サセプタ412を設けることにより構成できる。
図14に示すように、内蔵サセプタ412は、消費材410がチャンバ355の所望の位置に配置された場合に、誘導コイル342とZ軸方向に沿って対応する位置に配置されるように設けられている。内蔵サセプタ412及び誘導コイル342は、本開示の加熱部の一例である。消費材410は、本開示の喫煙物品の一例である。内蔵サセプタ412は、本開示の導電部材の一例である。
【0101】
第3実施形態の変形例におけるチャンバ355内に挿入された消費材410の内蔵サセプタ412の発熱について説明する。チャンバ355の所定箇所の外周に巻き付けられた誘導コイル342に交流電流を流すと、チャンバ355近傍に時間的に変動する磁場が生成される。ファラデーの電磁誘導の法則により磁場の変動が起電力を生じ、レンツの法則により磁場の変動を打ち消すようにコイルに流れる交流電流と逆の向きに内蔵サセプタ412に渦電流が流れる。渦電流によるジュール熱により、内蔵サセプタ412は発熱する。
【0102】
第3実施形態の変形例では、チャンバ355の所望の位置に配置された内蔵サセプタ412(または誘導コイル342)の配置により、チャンバ355内に2つの領域を定義する。チャンバ355の内部空間において、内蔵サセプタ412が配置されている箇所に対応するZ軸方向に沿った領域を第1領域355Aとし、第1領域355Aと区別され、第1領域355AのZ軸負方向端面とチャンバ355の底部とにより画定される領域を第2領域355Bとする。第1領域355Aは、内蔵サセプタ412に発生したジュール熱によって消費材410の内部が直接加熱される箇所である。
【0103】
延出部387は、第1実施形態の延出部87と同様に構成されており、チャンバ355内に挿入された消費材410の外側面を把持する。延出部387は第2領域355Bに設けられ、第1領域355Aに到達することは無いように構成されている。延出部387は、本開示の把持部及び凸部の一例である。
【0104】
消費材410を把持する延出部387は、内蔵サセプタ412及び誘導コイル342とZ軸方向に沿って重ならない第2領域355Bに配置されているので、内蔵サセプタ412に発生したジュール熱によって直接加熱される箇所とは異なる箇所において、消費材410が把持される。チャンバ355内の所望の位置に配置された消費材410は、第1領域355Aにおいては内蔵サセプタ412に発生したジュール熱による内部からの加熱により局所的に痩せる可能性がある。第3実施形態の変形例に係る延出部387は、第1領域355Aとは区別される第2領域355Bにおいて消費材410の外側面を把持するので、内蔵サセプタ412に発生したジュール熱の影響を受けることなく安定的に消費材410を保持することができる。
【0105】
一方、第1実施形態の消費材110について
図2に示した通り、消費材410の先端近傍の部分は第1の巻紙112で巻装されるとともに、喫煙可能物111により充填されている。第3実施形態の変形例では、延出部387が消費材410のうち喫煙可能物111により充填された箇所を把持するので、より密度の小さい他の箇所を把持する場合に比べて保持力が向上する。
【0106】
以上においては、消費材410内の所定位置に、単一部材として内蔵サセプタ412が設けられるものとして説明した。しかしながら、消費材410の内蔵サセプタは単一部材に限られるものではなく、導電物質で形成された粒子状または小片状の多数のサセプタを消費材410の所定位置に内蔵してもよい。この場合においても、消費材410の加熱に実質的に寄与する粒子または小片の配置範囲に対応するZ軸方向に沿った領域を第1領域とすることにより、チャンバ355の内部空間に上述の第1領域355A及び第2領域355Bを定義することができる。
【0107】
[第4実施形態:高周波による誘電加熱]
以下、本開示の第4実施形態について
図15を参照して説明する。なお第1実施形態と同一の又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0108】
図15は、第1実施形態の
図9及び
図11に相当する、第4実施形態のチャンバ450の断面図である。
図15では、
図11と同様に、チャンバ450の中心軸C1、第1ガイド部58及び非保持部54、底部材36の図示は省略する。
【0109】
第4実施形態に係る香味吸引器は、第1実施形態に係る香味吸引器100と比較して、チャンバ450の構成が異なる。すなわち、
図3及び
図6に示すように第1実施形態ではチャンバ50の外周が加熱要素42を含む加熱装置40に覆われていたのに対し、第4実施形態に係るチャンバ450は加熱装置で覆われていない。第4実施形態に係る香味吸引器は、第1実施形態の加熱装置40に代えて、
図15に示すチャンバ450の外周に配置された高周波発生装置442を備えている。チャンバ450は、本開示の収容部の一例である。高周波発生装置442は、本開示の加熱部の一例である。
【0110】
また、第4実施形態に係るチャンバ450は、第3実施形態の変形例に係るチャンバ355と同様に、全体が絶縁体で形成されている。チャンバ450は、例えばPEEK等の樹脂、ガラス、又はセラミック等で形成することができる。
【0111】
第4実施形態におけるチャンバ355内に挿入された消費材110の喫煙可能物111の加熱について説明する。高周波発生装置442を作動させると、チャンバ450の内部空間に時間的にする高周波で変動する電場が生成される。電場の振動が誘電体である喫煙可能物111のミクロな格子構造を揺さぶり、ミクロな格子振動により喫煙可能物111は発熱し、適宜エアロゾルが生成される。
【0112】
第4実施形態では、高周波発生装置442の配置により、チャンバ450内に2つの領域を定義する。チャンバ450の内部空間において、高周波発生装置442が配置されている箇所に対応するZ軸方向に沿った領域を第1領域450Aとし、第1領域450Aと区別され、第1領域450AのZ軸負方向端面とチャンバ450の底部とにより画定される領域を第2領域450Bとする。第1領域450Aは、高周波発生装置442の動作により消費材110の喫煙可能物111が直接加熱される箇所である。
【0113】
延出部487は、第1実施形態の延出部87と同様に構成されており、チャンバ450内に挿入された消費材110の外側面を把持する。延出部487は第2領域450Bに設けられ、第1領域450Aに到達することは無いように構成されている。延出部487は、本開示の把持部及び凸部の一例である。
【0114】
消費材110を把持する延出部487は、高周波発生装置442とZ軸方向に沿って重ならない第2領域450Bに配置されているので、高周波発生装置442が生成する振動電場によって直接加熱される箇所とは異なる箇所において、消費材110が把持される。チャンバ450内の所望の位置に配置された消費材110は、第1領域450Aにおいては高周波発生装置442が生成する振動電場による加熱により局所的に痩せる可能性がある。第4実施形態に係る延出部487は、第1領域450Aとは区別される第2領域450Bにおいて消費材110の外側面を把持するので、高周波発生装置442が生成する振動電場による発熱の影響を受けることなく安定的に消費材110を保持することができる。
【0115】
一方、
図2に示した通り、消費材110の先端近傍の部分は第1の巻紙112で巻装されるとともに、喫煙可能物111により充填されている。第4実施形態では、延出部487が消費材110のうち喫煙可能物111により充填された箇所を把持するので、より密度の小さい他の箇所を把持する場合に比べて保持力が向上する。
【0116】
以上に本開示の各実施形態を説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。特に、各実施例及び各変形例を適宜組み合わせることが可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状や材質であっても、本開示の作用・効果を奏する以上、本開示の技術的思想の範囲内である。例えば、本開示の香味吸引器100は、チャンバ50の開口52から流入した空気が消費材110の端面に供給される、いわゆるカウンターフロー式の空気流路を有するが、これに限らず、チャンバ50の底部56からチャンバ50内に空気が供給する、いわゆるボトムフロー式の空気流路を有してもよい。
【符号の説明】
【0117】
10…インナハウジング
20…電源部
21…電源
30…霧化部
32…断熱部
34…挿入ガイド部材
36…底部材
36a…軸部
36b…平板部
40…加熱装置
42…加熱要素
44…電気絶縁部材
48…電極
50…チャンバ
50A…第1領域
50B…第2領域
52…開口
52a…フランジ部
54…非保持部
56…底部
56a…穴
58…第1ガイド部
58a…テーパ面
60…側壁部
62…接触部
62a…内面
62b…外面
66…離間部
66a…内面
66b…外面
67…空隙
68…収容空間
81…平面部
81a…直線状部
81b…円弧状部
83…突条部
83a…端面
83b…側面
83c…上面
85…溝部
87…延出部
100…香味吸引器
101…アウタハウジング
102…スライドカバー
103…スイッチ部
110…消費材
111…喫煙可能物
112…第1の巻紙
113…第2の巻紙
114…筒状部材
115…フィルタ部
116…中空フィルタ部
117…リップリリース剤
187…延出部
187A…端部
202…内部ヒータ
204…ヒータ支持部
250…チャンバ
250A…第1領域
250B…第2領域
287…延出部
342…誘導コイル
350…チャンバ
350A…第1領域
350B…第2領域
350a…サセプタ部
350b…支持部
355…チャンバ
355A…第1領域
355B…第2領域
387…延出部
410…消費材
412…サセプタ部
442…高周波発生装置
450…チャンバ
450A…第1領域
450B…第2領域
487…延出部
C1…中心軸
【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填された香味源の内部に導電部材を含む喫煙物品に用いられる香味吸引器あって、
前記喫煙物品を挿入可能な開口が一端に形成され、前記喫煙物品を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記喫煙物品の側面を把持する把持部と、を有し、
前記収容部の内部空間は、
前記収容部の軸方向と直交する断面視において、前記導電部材と重なる第1領域と、
前記第1領域以外の領域であって、前記収容部の軸方向に沿って、前記収容部の他端と前記導電部材の前記他端側の端部との間に存在する第2領域と、を含み、
前記把持部の、前記喫煙物品の側面と接触する部分は、前記第2領域に設けられ、
前記収容部の中心軸に沿って切断した断面であって、前記把持部を通る断面視において、前記第2領域の径方向の長さは、前記第1領域の径方向の長さよりも小さい、
香味吸引器。
【請求項2】
請求項1に記載の香味吸引器であって、
前記収容部の中心軸に沿って切断した断面であって、前記把持部を通る断面視において、前記第2領域の径方向の長さは、前記第1領域における前記喫煙物品の径方向の長さよりも小さい、
香味吸引器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の香味吸引器であって、
前記収容部と一体に形成された底部材を有し、
前記底部材は、平板部と、前記平板部上に設けられ、前記収容部に収容された前記喫煙物品の先端と当接する複数の凸部を有する、
香味吸引器。
【請求項4】
請求項3に記載の香味吸引器であって、
前記複数の凸部は、前記複数の凸部の間に、前記収容部内の所望の位置に配置された前記喫煙物品の端面と連通する空気流路を画定する、
香味吸引器。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の香味吸引器であって、
少なくとも1つの前記把持部は、前記凸部の上面から前記一端側に向かって延在する、
香味吸引器。
【請求項6】
請求項5に記載の香味吸引器であって、
前記把持部は、前記収容部の前記一端側の端部近傍に、前記一端に近づくに従い、前記収容部の中心軸から離間するように傾斜する傾斜部を有する、
香味吸引器。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記喫煙物品が前記収容部内の所望の位置に配置された場合に、前記喫煙物品と前記収容部との間に空隙が形成され、
前記収容部の前記開口から流入した空気は、前記空隙を通過して前記喫煙物品の内部に流入する、
香味吸引器。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の香味吸引器であって、
前記収容部は、前記開口と、筒状の側壁部と、を有し、
前記側壁部は、
前記収容部に収容された前記喫煙物品の一部と接触又は押圧する接触部と、
前記収容部に収容された前記喫煙物品から離間する離間部と、を含む、
香味吸引器。
【請求項9】
請求項8に記載の香味吸引器であって、
前記収容部は、前記開口と前記側壁部との間に筒状の非保持部を有する、
香味吸引器。
【請求項10】
喫煙物品と香味吸引器とからなる喫煙システムであって、
前記喫煙物品は、充填された香味源の内部に導電部材を含み、
前記香味吸引器は、前記喫煙物品を挿入可能な開口が一端に形成され、前記喫煙物品を収容する収容部と、
前記収容部に収容された前記喫煙物品の側面を把持する把持部と、を有し、
前記収容部の内部空間は、
前記収容部の軸方向と直交する断面視において、前記導電部材と重なる第1領域と、
前記第1領域以外の領域であって、前記収容部の軸方向に沿って、前記収容部の他端と前記導電部材の前記他端側の端部との間に存在する第2領域と、を含み、
前記把持部の、前記喫煙物品の側面と接触する部分は、前記第2領域に設けられ、
前記収容部の中心軸に沿って切断した断面であって、前記把持部を通る断面視において、前記第2領域の径方向の長さは、前記第1領域の径方向の長さよりも小さい、
喫煙システム。