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特開2024-150725水-グリコール系作動液組成物及びその追加補充添加剤
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  • 特開-水-グリコール系作動液組成物及びその追加補充添加剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150725
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】水-グリコール系作動液組成物及びその追加補充添加剤
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20241016BHJP
   C10M 173/00 20060101ALI20241016BHJP
   C10M 133/08 20060101ALN20241016BHJP
   C10M 129/08 20060101ALN20241016BHJP
   C10M 125/10 20060101ALN20241016BHJP
   C10M 129/40 20060101ALN20241016BHJP
   C10M 129/42 20060101ALN20241016BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20241016BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20241016BHJP
   C10N 30/16 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M173/00
C10M133/08
C10M129/08
C10M125/10
C10M129/40
C10M129/42
C10N10:02
C10N40:08
C10N30:16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024124542
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2020067578の分割
【原出願日】2020-04-03
(71)【出願人】
【識別番号】517436615
【氏名又は名称】シェルルブリカンツジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 弘
(57)【要約】      (修正有)
【課題】気相防錆性に優れた、性能の良い水-グリコール系作動液を提供する。
【解決手段】N,N-ジブチルアミノエタノールを含有することを特徴とし、水を20~60質量%、グリコール類を20~60質量%、脂肪酸潤滑剤を0.6~1.2質量%、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムから選ばれる水酸化アルカリ化合物を0.01~0.06質量%を含有し、JISK2234-1994に規定された測定方法による予備アルカリ度が10~25であり、前記脂肪酸潤滑剤がカプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ダイマー酸、又は、これらのナトリウム塩の少なくともいずれか1つを含む水-グリコール系作動液組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N-ジブチルアミノエタノールを含有することを特徴とし、水を20~60質量%、グリコール類を20~60質量%、脂肪酸潤滑剤を0.6~1.2質量%、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムから選ばれる水酸化アルカリ化合物を0.01~0.06質量%を含有し、JIS K 2234-1994に規定された測定方法による予備アルカリ度が10~25であり、
前記脂肪酸潤滑剤がカプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ダイマー酸、又は、これらのナトリウム塩の少なくともいずれか1つを含む水-グリコール系作動液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水-グリコール系作動液組成物及びその追加補充添加剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作動液は、油圧装置において動力伝達用媒体として使用されているものである。広く用いられているのは石油系作動液であり、普通に使用されている一般作動液は、高精製度のパラフィン系基油などの鉱油系の基油を用いたものが使用されている。
【0003】
しかし、製鉄所の構内などで使用される各種の油圧機器、アルミダイキャスト、押し出し加工機などは、高温でかつ高圧下で使用されるために、火災発生の危険性が高く、そうした火災の危険性を避けるために、このような機器類の油圧作動液には上記の鉱油系の基油を使用したものに替えて、水-グリコール系作動液などが使用されている。
【0004】
このような含水系作動液である水-グリコール系作動液を使用する場合においては、油圧作動が円滑に行われると共に油圧機器の長寿命化を図ることも重要であって、そのためには防錆性が要求される。特に、作動液が接触していない壁面や天井面が錆びないように、揮発性でアルカリ性の防錆剤を配合することが必要とされる。
また、水-グリコール系作動液は優れた性能を有するが、使用中のpHの低下や、酸化によりその性能が低下することから、pH低下抑制や酸化安定性などの性能向上技術として、例えば、水に特定構造のポリオキシアルキレングリコールジエーテル化合物、ポリオキシアルキレングリコールモノエーテル化合物、ポリオキシプロピレングリコールモノエーテル化合物及び脂肪酸塩を含有させる含水系作動液組成物が知られている。(特許文献1)
【0005】
また、この水-グリコール系作動液は、水とグリコールを主成分とする作動液であるが、これを使用した油圧機器では使用中に作動液の水が蒸発する現象が起る。水-グリコール系作動液には、一般的に添加剤として液相又は気相防錆剤などが使用されているが、上記した使用中における水の蒸発に伴って添加剤も一緒に蒸発されてしまい、これによって水-グリコール系作動液の性状が適正域を超えてしまうことが起こる。
【0006】
こうした場合、水-グリコール系作動液の性能を維持する為に追加補充添加剤を添加、補充することによって、作動液の性状を適正域に維持するように管理しながら使用しているのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3233490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなことから、本発明では油圧機器に充填される水-グリコール系作動液の性能を良好にすることと共に、その性能、特に気相防錆性の性能を維持するための追加補充添加剤として効果的なものを得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
水-グリコール系作動液とは、合計100質量%のうち、水を20~60質量%、グリコール類を20~60質量%、脂肪酸系の潤滑剤、水酸化アルカリ化合物、増粘剤、腐食防止剤、消泡剤などを含むものである。本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねていたところ、特定のアルカノールアミン化合物を用いることにより、水-グリコール系作動液の気相防錆性を大幅に改善することができると共に、また、このアルカノールアミン化合物は追加補充添加剤としても効果的に使用可能であることを見出し、こうした知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は下記の一般式
【化1】
(上記一般式中、R及びRは炭素数1~8の炭化水素基であり、Rは炭素数2以上の炭化水素基である。)
で示されるアルカノールアミン化合物を、水-グリコール系作動液に配合するものである。
また、このアルカノールアミン化合物を水-グリコール系作動液組成物における追加補充添加剤とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定のアルカノールアミン化合物を配合して、防錆性に優れた水-グリコール系作動液を得ることができるものである。また油圧機器に使用されている水-グリコール系作動液の水分が蒸発した場合に、このアルカノールアミン化合物を追加補充添加剤として使用すると、水の蒸発と共に低下する水-グリコール系作動液の気相防錆性を、初期の性能まで改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の気相防錆試験の装置の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアルカノールアミン化合物は、
【化2】
の一般式で表される化合物である。
上記R及びRは炭化水素基を示し、その炭素数は1~8であり、好ましくは炭素数が1~4である。最も好ましくは炭素数が3または4である。このRとRの炭素数は同じであっても良いし、異なっていてもよいが、通常、同じであると好ましい。上記Rは炭素数が2以上の炭化水素であり、炭素数が大きくなると化合物の水溶性が低下する傾向にあるので、炭素数が2~4程度のものが好ましい。
【0014】
こうしたアルカノールアミン化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジエチルアミノエタノール、N,N-ジプロピルアミノエタノール、N,N-ジブチルアミノエタノール、N,N-ジペンチルアミノエタノール、N,N-ジヘキシルアミノエタノール、N,N-ジヘプチルアミノエタノール、N,N-ジオクチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノプロパノール、N,N-ジエチルアミノプロパノール、N,N-ジプロピルアミノプロパノール、N,N-ジブチルアミノプロパノール、N,N-ジペンチルアミノプロパノール、N,N-ジヘキシルアミノプロパノール、N,N-ジヘプチルアミノプロパノール、N,N-ジオクチルアミノプロパノール、N,N-ジメチルアミノブタノール、N,N-ジエチルアミノブタノール、N,N-ジプロピルアミノブタノール、N,N-ジブチルアミノブタノール、N,N-ジペンチルアミノブタノール、N,N-ジヘキシルアミノブタノール、N,N-ジヘプチルアミノブタノール、N,N-ジオクチルアミノブタノール、N-ブチル(N-ペンチル)アミノエタノール、N-ブチル(N-ヘキシル)アミノエタノール、N-ブチル(N-ヘプチル)アミノエタノール、N-ブチル(N-ペンチル)アミノプロパノール、N-ブチル(N-ヘキシル)アミノプロパノール、N-ブチル(N-ヘプチル)アミノプロパノールが挙げられる。
こうしたアルカノールアミン化合物は、水-グリコール系作動液のJIS K 2234-1994に規定された予備アルカリ度が10~25、より好ましくは15~23、更に好ましくは18~21になるように配合する。また、こうしたアルカノールアミン化合物の20℃密度は0.86~0.89がよい。密度が0.89を超えるものは揮発性が低下し、予備アルカリ度に対しての気相防錆性が低下するため好ましくない。
【0015】
こうしたアルカノールアミン化合物は、水-グリコール系作動液に配合して使用され、こうした水-グリコール系作動液として特に制限があるものではないが、例えば、次のような組成のものとすると好ましい。
合計100質量%のうち、水を20~60質量%、より好ましくは30~50質量%、脂肪酸系の潤滑剤を0.6~1.2質量%、水酸化アルカリ化合物を0.01~0.12質量%、グリコール類を20~60質量%含むものである。
【0016】
上記グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ジヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどがある。
このグリコール類は上記した1種のものを単独で用いても良いし、2種以上のものを混合して使用することができる。好ましくは、プロピレングリコールや、ジプロピレングリコールを用いるとよい。このグリコールは、水-グリコール系作動液の組成物全量に対して、20~60質量%、より好ましくは30~50質量%使用される。
【0017】
上記の脂肪酸系の潤滑剤としては、例えば、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸などがある。
また、これら脂肪酸のナトリウム塩も使用可能であり、カプリン酸ナトリウム、ウンデシル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、トリデシル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ペンタデシル酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、マルガリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、リノール酸ナトリウム、リノレン酸ナトリウムなどがある。
【0018】
また、芳香族脂肪酸、ダイマー酸などがある。なお、ダイマー酸は、植物系油脂を原料とするC18不飽和脂肪酸の二量化によって生成されたC36ジカルボン酸の二塩基酸を主成分とし、一塩基酸、三塩基酸を含有する液状脂肪酸である。
これらの脂肪酸系の潤滑剤である、脂肪酸や脂肪酸のナトリウム塩やダイマー酸は、上記した1種のものを単独で使用してもよいし、2種以上のものを適宜に混合して使用してもよい。
【0019】
上記した水酸化アルカリ化合物としては、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムがあり、これらを各々単独で使用したり、適宜、両者を併用したりする。この水酸化アルカリ化合物は、組成物全量に対して、0.01~0.12質量%、より好ましくは0.04~0.06質量%含有される。
【0020】
更に、耐摩耗剤として特定のリン酸エステル化合物を使用することも出来、このリン酸エステルは下記の構造を有するものである。
【化3】
(式中、R及びRは同じでも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を示し、Rは炭素数1~20の炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を示し、X、X、X及びXは同じでも異なっていてもよく、それぞれ酸素原子または硫黄原子を示す。)
【0021】
また、こうした水-グリコール系作動液には、必要に応じて公知の添加剤、例えば、増粘剤、潤滑剤、金属不活性剤、摩耗防止剤、極圧剤、分散剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、抗乳化剤、消泡剤その他の各種の添加剤を単独で又は数種類を組み合わせて配合するようにしても良い。この場合、水-グリコール系作動液用の添加剤パッケージを用いてもよい。
【0022】
上記したアルカノールアミン化合物は、水-グリコール系作動液が使用されているときに、その追加補充添加剤として使用することができる。例えば、新品の水-グリコール系作動液を使用していると、水の蒸発が起こり、それに伴って添加剤も一緒に蒸発されてしまい気相防錆性が低下するようになる。気相防錆性の目安として、JIS K 2234-1994に規定された、予備アルカリ度を測定することが挙げられ、蒸発に応じて予備アルカリ度が低下する。こうした場合、上記アルカノールアミン化合物を追加補充添加剤として水-グリコール系作動液に添加して初期の予備アルカリ度に戻すようにし、気相防錆性を維持させることによって、長期間安定的に使用し続けることが可能になる。
【0023】
上記アルカノールアミン化合物において、ジメチルエタノールアミンおよびジエチルエタノールアミンは共に劇物指定されているため、取り扱い時には厳格な管理が必要になる。そのため追加補充添加剤として使用する場合、R及びRの炭素数は3または4のものが最も好ましい。こうしたものでは、追加補充添加剤としての取り扱いが簡便となり、現場の作業員によって油圧機器の作動液への補充を安全に行うことが出来る。
【実施例0024】
以下、本発明のアルカノールアミン化合物を配合した水-グリコール系作動液について実施例、比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0025】
なお、上記した「予備アルカリ度」は、JIS K 2234-1994に規定された予備アルカリ度の測定方法を用いて、水-グリコール系作動液中の塩基性成分を測定するものである。この予備アルカリ度は、試料油10ml中に含まれている塩基性成分をpH5.5まで中和するのに必要な0.1N塩酸の量をmlで表す。
【0026】
(実施例1)
アルカノールアミン化合物としてN,N-ジブチルアミノエタノールを1.90質量%、グリコールとしてプロピレングリコールを37.73質量%、増粘剤として水溶性ポリマーを16.10質量%、脂肪酸潤滑剤としてダイマー酸とラウリン酸を同量で合計で0.80質量%、水酸化アルカリ化合物として水酸化ナトリウムを0.06質量%、その他添加剤として腐食防止剤や消泡剤などを含むものを1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20である。また40℃動粘度は46mm/s、pHは11であった。
なお、配合したN,N-ジブチルアミノエタノールの分子量は173、20℃密度は0.860、引火点は90℃、沸点は226℃である。
【0027】
(実施例2)
アルカノールアミン化合物としてN,N-ジメチルアミノエタノールを1.00質量%、グリコールを38.63質量%、増粘剤を16.10質量%、同じく脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合したN,N-ジメチルアミノエタノールの分子量は89、20℃密度は0.888、引火点は40℃、沸点は134℃である。
【0028】
(比較例1)
アルカノールアミン化合物としてN-エチルジエタノールアミンを1.40質量%、グリコールを38.23質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合したN-エチルジエタノールアミンの分子量は133、20℃密度は1.07、引火点は124℃、沸点は251℃である。
【0029】
(比較例2)
アルカノールアミン化合物としてN-メチルエタノールアミンを1.00質量%、グリコールを38.63質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合したN-エチルジエタノールアミンの分子量は75、20℃密度は0.940、引火点は73℃、沸点は156℃である。
【0030】
(比較例3)
アルカノールアミン化合物として2-エチルアミノエタノール1.00質量%、グリコールを38.63質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合した2-エチルジアミノエタノールの分子量117、20℃密度は0.918、引火点は77℃、沸点は199℃である。
【0031】
(比較例4)
アルカノールアミン化合物としてモノ-n-ブチルエタノールアミンを1.23質量%、グリコールを38.40質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合したN-モノ-n-ブチルエタノールアミンアミンの分子量は117、20℃密度は0.893、引火点は77℃、沸点は199℃である。
【0032】
(比較例5)
グリコールを39.63質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。アルカノールアミン化合物を配合していないため、JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は9であり、40℃動粘度は46mm/sである。
【0033】
〔試験〕
上記実施例及び比較例について気相防錆性について評価するために以下の試験を行った。
(気相防錆試験)
図1に示すように、JIS K2514-2のタービン油酸化安定度試験に用いる高さ600mm、外径50mmの硬質ガラスの試験管に、実施例又は比較例の水-グリコール系作動液を100g入れ、一般構造用圧延鋼材(SS-400)の80×30×2mmの試験片2枚を、試験管の上部と下部に位置するように吊るした。
試験管の上部開口を冷却器で蓋をし、試験管の底部を50℃の恒温槽に入れ、200時間静置した後、試験片の錆の有無を目視で確認した。
評価基準:試験片の双方に錆が見られない・・・・・・・・・合格
試験片のいずれか又は双方に錆が見られる・・・・不合格
【0034】
(試験結果)
試験の結果を表1に示す。
【0035】
(考察)
表1に示すように、実施例1および実施例2では、予備アルカリ度が20.0になるようにアルカノールアミン化合物を配合したものであり、いずれも気相防錆試験において錆が見られず合格の結果が得られている。
表2に示す比較例5はアルカノールアミン化合物を配合していないもので、予備アルカリ度が9.0と低いものであり、気相防錆試験において錆が見られて不合格になっていることから、好ましくないことが判る。
比較例2~4のものは、予備アルカリ度が20.0になるようにアルカノールアミン化合物を配合しているが、このアルカノールアミン化合物は、本発明におけるジアルキルアミノアルカノールでないことから、気相防錆試験において錆が見られ、不合格になっていて好ましくないことが判る。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-08-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式に記載のアルカノールアミン化合物であって、20℃比重が0.86~0.89である前記アルカノールアミン化合物を含有することを特徴とし、水を20~60質量%、グリコール類を20~60質量%、脂肪酸潤滑剤を0.6~1.2質量%、水酸化カリウム及び/又は水酸化ナトリウムから選ばれる水酸化アルカリ化合物を0.01~0.06質量%を含有し、JIS K 2234-1994に規定された測定方法による予備アルカリ度が10~25である、水-グリコール系作動液組成物。
【化1】
(上記一般式中、R 及びR は炭素数1~8の炭化水素基であり、R は炭素数2以上の炭化水素基である。)
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
すなわち、本発明は下記の一般式
【化1】
(上記一般式中、R及びRは炭素数1~8の炭化水素基であり、Rは炭素数2以上の炭化水素基である。)
で示されるアルカノールアミン化合物であって、20℃比重が0.86~0.89である前記アルカノールアミン化合物を、水-グリコール系作動液に配合するものである。
また、このアルカノールアミン化合物を水-グリコール系作動液組成物における追加補充添加剤とするものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
こうしたアルカノールアミン化合物としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジエチルアミノエタノール、N,N-ジプロピルアミノエタノール、N,N-ジブチルアミノエタノール、N,N-ジペンチルアミノエタノール、N,N-ジヘキシルアミノエタノール、N,N-ジヘプチルアミノエタノール、N,N-ジオクチルアミノエタノール、N,N-ジメチルアミノプロパノール、N,N-ジエチルアミノプロパノール、N,N-ジプロピルアミノプロパノール、N,N-ジブチルアミノプロパノール、N,N-ジペンチルアミノプロパノール、N,N-ジヘキシルアミノプロパノール、N,N-ジヘプチルアミノプロパノール、N,N-ジオクチルアミノプロパノール、N,N-ジメチルアミノブタノール、N,N-ジエチルアミノブタノール、N,N-ジプロピルアミノブタノール、N,N-ジブチルアミノブタノール、N,N-ジペンチルアミノブタノール、N,N-ジヘキシルアミノブタノール、N,N-ジヘプチルアミノブタノール、N,N-ジオクチルアミノブタノール、N-ブチル(N-ペンチル)アミノエタノール、N-ブチル(N-ヘキシル)アミノエタノール、N-ブチル(N-ヘプチル)アミノエタノール、N-ブチル(N-ペンチル)アミノプロパノール、N-ブチル(N-ヘキシル)アミノプロパノール、N-ブチル(N-ヘプチル)アミノプロパノールが挙げられる。
こうしたアルカノールアミン化合物は、水-グリコール系作動液のJIS K 2234-1994に規定された予備アルカリ度が10~25、より好ましくは15~23、更に好ましくは18~21になるように配合する。また、こうしたアルカノールアミン化合物の20℃比重は0.86~0.89がよい。比重が0.89を超えるものは揮発性が低下し、予備アルカリ度に対しての気相防錆性が低下するため好ましくない。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
(実施例1)
アルカノールアミン化合物としてN,N-ジブチルアミノエタノールを1.90質量%、グリコールとしてプロピレングリコールを37.73質量%、増粘剤として水溶性ポリマーを16.10質量%、脂肪酸潤滑剤としてダイマー酸とラウリン酸を同量で合計で0.80質量%、水酸化アルカリ化合物として水酸化ナトリウムを0.06質量%、その他添加剤として腐食防止剤や消泡剤などを含むものを1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20である。また40℃動粘度は46mm/s、pHは11であった。
なお、配合したN,N-ジブチルアミノエタノールの分子量は173、20℃比重は0.860、引火点は90℃、沸点は226℃である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
(実施例2)
アルカノールアミン化合物としてN,N-ジメチルアミノエタノールを1.00質量%、グリコールを38.63質量%、増粘剤を16.10質量%、同じく脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合したN,N-ジメチルアミノエタノールの分子量は89、20℃比重は0.888、引火点は40℃、沸点は134℃である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
(比較例1)
アルカノールアミン化合物としてN-エチルジエタノールアミンを1.40質量%、グリコールを38.23質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合したN-エチルジエタノールアミンの分子量は133、20℃比重は1.07、引火点は124℃、沸点は251℃である。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
(比較例2)
アルカノールアミン化合物としてN-メチルエタノールアミンを1.00質量%、グリコールを38.63質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合したN-エチルジエタノールアミンの分子量は75、20℃比重は0.940、引火点は73℃、沸点は156℃である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
(比較例3)
アルカノールアミン化合物として2-エチルアミノエタノール1.00質量%、グリコールを38.63質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合した2-エチルジアミノエタノールの分子量117、20℃比重は0.918、引火点は77℃、沸点は199℃である。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
(比較例4)
アルカノールアミン化合物としてモノ-n-ブチルエタノールアミンを1.23質量%、グリコールを38.40質量%、増粘剤を16.10質量%、脂肪酸潤滑剤を0.80質量%、水酸化アルカリ化合物を0.06質量%、その他添加剤を1.57質量%、水を41.84質量%、を用い、これらを良く混合して水-グリコール系作動液を得た。JIS K 2234-1994により得られる予備アルカリ度は20であり、40℃動粘度は46mm/sである。
なお、配合したN-モノ-n-ブチルエタノールアミンアミンの分子量は117、20℃比重は0.893、引火点は77℃、沸点は199℃である。