(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150738
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】植物材料残渣を含む吸着剤組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/24 20060101AFI20241016BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241016BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B01J20/24 C
B01J20/28 Z
B01D15/00 K
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024126142
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2021524340の分割
【原出願日】2019-11-08
(31)【優先権主張番号】62/757,404
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/821,100
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521190440
【氏名又は名称】エスダブリュエム ホルコ ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フローゼ、ハンク
(72)【発明者】
【氏名】モタ、ホアキン
(72)【発明者】
【氏名】クーリー、ブライアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】植物材料残渣を利用して油流出を浄化する方法、油浄化組成物、及び油浄化組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の浄化用組成物は、植物材料残渣を高密度した後に個別の小片に粉砕することにより製造される。本開示の浄化用組成物は、様々な植物種から製造することができ、特に、亜麻シブなどの農作物副産物から製造することができる。本開示の浄化用組成物は、石油製品などの油性物質を浄化及び/または除去するための浄化製品としての使用に特に適している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油流出を浄化する方法であって、
油性物質に油吸着剤組成物を接触させるステップであって、
前記油吸着剤組成物が、高密度化された植物材料残渣の小片を含み、
前記植物材料残渣が、非繊維性植物材料を含み、
前記高密度化された植物材料残渣の前記小片が、0.2~0.5g/cm3の嵩密度を有する、該ステップを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記高密度化された植物材料残渣は、亜麻シブを含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記高密度化された植物材料残渣は、トウモロコシ茎葉、ヘンプハード、バガス、麦藁、大麦藁、スイッチグラス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の方法であって、
前記高密度化された植物材料残渣の前記小片は、その50%超が、1.27~12.7cm、または1.27~7.62cmの最大寸法を有する、方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の方法であって、
前記油性物質は、石油または石油由来物質を含む、方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の方法であって、
前記油性物質は、液体炭化水素を含む、方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の方法であって、
前記油吸着剤組成物は、ASTM試験F726-17に従って試験した場合に、0.7超、または0.75~1.00の体積に基づくD5平均油吸着比率(cm3/cm3)を有する、方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の方法であって、
前記高密度化された植物材料残渣の前記小片は、0.25~0.4g/cm3の嵩密度を有する、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の方法であって、
前記油吸着剤組成物は、前記高密度化された植物材料残渣を、該組成物の70重量%超、80重量%超、90重量%超、または95重量%超の量で含む、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の方法であって、
前記油性物質に前記油吸着剤組成物を接触させるステップの後に、前記油性物質に接触させた前記油吸着剤組成物を焼却するステップをさらに含む、方法。
【請求項11】
油浄化組成物であって、
高密度化された植物材料残渣の小片を含み、
前記植物材料残渣は、非繊維性植物材料を含み、
前記高密度化された植物材料残渣は、亜麻シブ、トウモロコシ茎葉、ヘンプハード、バガス、麦藁、大麦藁、スイッチグラス、またはそれらの任意の組み合わせを含み、
前記高密度化された植物材料残渣の前記小片は、0.2~0.5g/cm3の嵩密度を有し、
当該油浄化組成物は、ASTM試験F726-17に従って試験した場合に、0.7超の体積に基づくD5平均油吸着比率(cm3/cm3)を有する、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の油浄化組成物であって、
当該油浄化組成物は、亜麻シブを、該組成物の70重量%超、または80重量%超の量で含む、組成物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の油浄化組成物であって、
組成物が、ASTM試験F726-17に従って試験した場合に、0.75~1.00の体積に基づくD5平均油吸着比率(cm3/cm3)を有する、組成物。
【請求項14】
請求項11~13のいずれかに記載の油浄化組成物であって、
前記高密度化された植物材料残渣の前記小片は、その50%超が、1.27~12.7cm、または1.27~7.62cmの最大寸法を有する、成物。
【請求項15】
請求項11~14のいずれかに記載の油浄化組成物であって、
前記高密度化された植物材料残渣の前記小片は、0.25~0.4g/cm3の嵩密度を有する、組成物。
【請求項16】
請求項11~15のいずれかに記載の油浄化組成物であって、
前記高密度化された植物材料残渣の前記小片は、高密度化される前の前記植物材料残渣よりも高い耐発火性を有する、組成物。
【請求項17】
油浄化組成物の製造方法であって、
植物材料残渣を高密度化してブリケットを形成するステップであって、前記植物材料残渣に対して、0.6~1g/cm3の密度を有するブリケットを形成するのに十分な圧力を加える該ステップと、
前記ブリケットを、0.2~0.5g/cm3の嵩密度を有する個別の小片に粉砕するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記植物材料残渣は、0.75~0.95g/cm3の密度を有するブリケットに高密度化される、方法。
【請求項19】
請求項17または18に記載の方法であって、
前記個別の小片は、0.25~0.4g/cm3の嵩密度を有することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれかに記載の方法であって、
前記個別の小片は、その50%超が、1.27~12.7cm、または1.27~7.62cmの最大寸法を有する、方法。
【請求項21】
請求項17~20のいずれかに記載の方法であって、
前記ブリケットは、2つの回転ローラの間に形成された隙間を介して供給されることによって前記個別の小片に粉砕され、
前記2つの回転ローラは、前記ブリケットが供給される隙間を形成するべく互いに1.27~5.08cmの距離を隔てて配置される、方法。
【請求項22】
請求項17~20のいずれかに記載の方法であって、
前記ブリケットは、ローラミルまたはハンマーミルを介して供給されることによって前記個別の小片に粉砕される、方法。
【請求項23】
請求項17~22のいずれかに記載の方法であって、
前記高密度化された植物材料残渣の前記小片は、耐火特性を有し、高密度化される前の植物材料残渣よりも高い耐発火性を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2019年3月20日出願の米国特許仮出願第62/821、100号、及び、2018年11月8日出願の米国特許仮出願第62/757、404号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
大量の植物材料残渣が、農業プロセス及び/または工業プロセスの副産物として毎年発生する。例えば、一実施形態では、植物材料残渣は、農作物の副産物を含み得る。毎年大量に発生する植物材料残渣として、例えば、亜麻シブ、トウモロコシ茎葉、麦藁、大麦藁、スイッチグラス、バガスなどが挙げられる。
【0003】
例えば、亜麻藁は、植物から繊維を抽出するための商品作物として栽培されている。亜麻繊維は、様々な用途に使用することができる。亜麻藁から亜麻繊維を抽出する場合、残りの非繊維性の植物材料残渣は亜麻シブと呼ばれる。亜麻シブは、亜麻藁の総重量の20~85%を占める。このように、亜麻シブは、亜麻藁加工の主な副産物である。従来、亜麻シブは、動物の寝床を作るのに使用されたり、燃料として燃やされたり、または、土地利用や衛生埋立地での処分によって廃棄されたりしてきた。
【0004】
しかしながら、亜麻シブなどの植物材料副産物のさらなる使用及び用途に対するニーズが存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般的に、本開示は、植物材料残渣から、特に農作物副産物から、新規かつ有用な製品を製造することに関する。本開示によれば、植物材料残渣は、高密度化された後に個別の小片に粉砕される。このようにして製造された本開示の組成物は、物理的特性のユニークな組み合わせを有することが見出された。例えば、本開示の組成物は、油性流出物の浄化に使用するために、油性物質を吸着及び/または吸着するのに好適であることが見出された。
【0006】
例えば、一実施形態では、本開示は、油流出を浄化する方法に関する。本開示の方法は、油性物質に油吸着剤組成物を接触させることを含む。油吸着剤組成物は、例えば、高密度化された植物材料残渣の小片を含む。植物材料残渣は、非繊維性植物材料を含み得る。本開示によれば、高密度化された植物材料残渣の小片は、約0.2~0.5g/cm3、例えば約0.25~0.4g/cm3の嵩密度を有する。
【0007】
高密度化された植物材料残渣の小片は、様々な植物材料を含み得る。例えば、高密度化された植物材料残渣は、亜麻シブ、トウモロコシ茎葉、ヘンプハード、バガス、麦藁、大麦藁、スイッチグラスなどを含み得る。一実施形態では、本開示の油吸着剤組成物は、高密度化された植物材料残渣を、該組成物の約70重量%を超える量、例えば約80重量%を超える量、例えば約90重量%を超える量、または、例えば約95重量%を超える量で含有する。
【0008】
本開示の油吸着剤組成物は、あらゆる種類の油性物質を浄化するために使用することができる。例えば、一実施形態では、本開示の油吸着剤組成物を使用して、石油系製品または石油由来物質を浄化することができる。加えて、本開示の油吸着剤組成物は、様々な種類の液体炭化水素を吸着するために使用することができる。本発明の油吸着剤組成物は、優れた油吸着特性を有する。例えば、油吸着剤組成物は、ASTM試験F726-17に従って試験した場合、約0.7を超える、例えば約0.75~1.00の範囲の、体積に基づくD5平均油吸着比率(cm3/cm3)を示すことができる。
【0009】
本開示はまた、高密度化された植物材料残渣の小片を含む油浄化組成物に関する。植物材料残渣は、例えば、亜麻シブ、トウモロコシ茎葉、ヘンプハード、バガス、麦藁、大麦藁、スイッチグラスなどを含み得る。高密度化された植物材料の小片は、一般的に、約0.7~1g/cm3、例えば約0.75~0.95g/cm3の密度を有し得る。高密度化された植物材料残渣の小片は、約0.2~0.5g/cm3、例えば約0.25~約0.4g/cm3の嵩密度を有し得る。
【0010】
一実施形態では、本開示の油浄化組成物は、亜麻シブから製造される。例えば、本開示の油浄化組成物は、亜麻シブを、該組成物の約70重量%を超える量、例えば約80重量%を超える量、または、例えば約90重量%を超える量で含有する。
【0011】
本開示はまた、上記したような油浄化組成物を製造するための方法に関する。本開示の方法は、植物材料残渣を高密度化してブリケットを形成するステップを含む。例えば、植物材料残渣に対して、約0.6g/cm3を超える密度、例えば約0.7~1g/cm3の範囲の密度を有するブリケットを形成するのに十分な圧力に加える。植物材料残渣に加えられる圧力の大きさは、例えば、約17.24mPa(約2、500psi)超であり、例えば約20.68mPa(約3、000psi)超、または、例えば約24.13mPa(約3、500psi)超である。また、植物材料残渣に加えられる圧力の大きさは、一般的に、約344.74mPa(約50、000psi)未満である。本開示によれば、ブリケットは、その後、個別の小片に粉砕される。個別の小片のサイズは、小片の50%超が、約1.27~12.7cm(約0.5~5インチ)、例えば約1.27~7.62cm(約0.5~3インチ)の最大寸法を有するようなサイズであり得る。
【0012】
ブリケットは、様々な方法及び技術を用いて個別の小片に粉砕することができる。一実施形態では、例えば、ブリケットは、2つの回転ローラ間に形成された隙間を介して供給することができる。2つの回転ローラを互いに対して所定の距離を隔てて配置することによって2つの回転ローラ間に隙間を形成し、この隙間を介してブリケットを供給することができる。2つの回転ローラ間の隙間の距離は、約1.27~5.08cm(約0.5~2インチ)であり得る。しかしながら、別の実施形態では、個別の小片は、ローラミルまたはハンマーミルを介してブリケットを供給することによってブリケットから形成される。
【0013】
粉砕された個別の小片またクランブル(粉砕物)は、様々な利点及び利点を提供する。例えば、このクランブルは、有害な粉塵をほとんど発生させない。また、このクランブルは、他の多くの油または化学物質の浄化製品よりも軽量である。本開示のクランブルは、予想外なことに、とりわけ高密度化される前の植物材料残渣と比べて、より高い耐発火性を有することが見出された。本開示の植物材料粉砕物は、耐発火性を有し、有害な粉塵を発生させず、かつ、他の浄化製品よりも軽量なので、作業者の安全性を高める。油または化学物質の流出を浄化するために個別の破片またはクランブルを使用した後、使用した破片またはクランブルは、埋立地に廃棄する代わりに焼却処分することができる。
【0014】
本発明の他の特徴及び態様は、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
当業者を対象にした本発明の完全かつ実現可能な開示が、添付図面を参照して、本明細書の残りの部分により詳細に説明される。
【0016】
【
図1】様々な油についての試験結果を示すグラフである。
【
図2】様々な油についての試験結果を示すグラフである。
【
図3】様々な油についての試験結果を示すグラフである。
【
図4】様々な油についての試験結果を示すグラフである。
【0017】
本明細書及び図面において繰り返し用いられる参照符号は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すことを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示が例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を限定することを意図するものではないことは、当業者には理解されるであろう。
【0019】
一般的に、本開示は、植物材料残渣から製造された流出物浄化組成物に関する。例えば、流出物浄化組成物は、農作物副産物から製造することができる。本開示によれば、植物材料残渣は、高密度化させた後に、個別の小片に粉砕(分解)される。このプロセスにより、植物材料残渣の吸着特性及び吸収特性は、体積基準で劇的かつ予想外に向上した。本開示の流出物浄化組成物は、あらゆる種類の液体物質を吸収または吸着することができるが、とりわけ、石油系物質または炭化水素液体などの油性物質を吸着するのに好適である。例えば、本開示のプロセスを通じて、植物材料残渣の油吸着特性を、体積基準で100%超、例えば150%超増加させることができる。
【0020】
本開示の植物材料残渣は、優れた油吸性を有することに加えて、予想外なことに、耐発火性を有することが見出された。この固有の性質は、未処理の植物材料残渣が一般的に燃料成分として使用されていることを考えると、驚くべきものであった。本開示の植物材料残渣は、耐発火性を有するので、産業現場で貯蔵するのに非常に安全であり、油及び他の化学物質などの可燃性物質が一般的に存在する場所において大きな利点を提供する。本開示の植物材料残渣は、耐発火性を有することに加えて、有害な粉塵をほとんど発生しないので、作業者の安全にも貢献する。
【0021】
様々な植物材料残渣を、本開示の組成物に組み込むことができる。特定の一実施形態では、例えば、本開示の組成物は、亜麻シブを含有する。亜麻シブは、亜麻藁から繊維成分を抽出した後に残った副産物である。亜麻シブは、亜麻藁からの繊維抽出後に残った全ての材料を含む。
【0022】
亜麻シブに加えて、本開示の組成物に組み込むことができる植物材料残渣としては、トウモロコシ茎葉、ヘンプハード(hemp herd)、バガス、麦藁、大麦藁、スイッチグラス、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。トウモロコシ茎葉とは、一般的に、コンバインで収穫した後に残った残留物または副産物を指す。トウモロコシ茎葉としては、トウモロコシの穂軸、葉肉、茎などが挙げられる。
【0023】
ヘンプハードは、亜麻シブと同様に、ヘンプ(麻)から繊維を抽出した後に残った副産物である。一方、バガスとは、サトウキビ工場で砂糖を抽出した後に残った植物性の残渣や副産物を指す。また、麦藁、大麦藁、スイッチグラスは、農作物の副産物を含む特定の植物の任意の部分を指す。
【0024】
一般的に、本開示に従って流出物浄化組成物を製造するためには、まず、植物材料残渣を高密度化する。例えば、植物材料残渣を、ブリケットを形成するのに十分な高圧に曝すことにより、植物材料残渣を高密度化することができる。植物材料残渣を高密度化した後、高密度化された植物材料残渣を個別の小片に粉砕(分解)する。例えば、一実施形態では、高密度化された植物材料残渣から形成されたブリケットを粉砕装置に供給することにより粉砕し、それより、ブリケットを、油性物質などの液体を吸収及び/または吸着する性能を向上させるサイズ、並びに、取り扱い及び輸送を容易にするサイズを有する小片にすることができる。
【0025】
植物材料残渣を高密度化するために、任意の適切な圧縮装置を使用することができる。一実施形態では、例えば、ブリケッティングプレスを使用することができる。例えば、一実施形態では、亜麻シブなどの植物材料残渣は、ブリケッティングプレス内に設けられた圧縮チャンバに供給される。植物材料残渣は、圧縮チャンバ内で、例えばピストンまたはプランジャを使用して圧縮されてブリケットにされる。高密度化された植物材料残渣は、圧縮された後、ダイを介して供給され、冷却される。
【0026】
高密度化プロセス中に植物材料残渣に加えられる圧力の大きさは、特定の植物材料、及び、所望する結果に応じて異なる。一般的に、植物材料残渣に加えられる圧力の大きさは、約13.79mPa(約2、000psi)超であり、例えば約17.24mPa(約2、500psi)超、例えば約20.68mPa(約3、000psi)超、例えば約24.13mPa(約3、500psi)超、または、例えば約27.58mPa(約4、000psi)超である。他の実施形態では、植物材料残渣に加えられる圧力は、約68.95mPa(約10、000psi)超であり、例えば約103.42mPa(約15、000psi)超、例えば約137.90mPa(約20、000psi)超、または、例えば約172.37mPa(約25、000psi)超である。植物材料残渣に加えられる圧力の大きさは、一般的に、約517.11mPa(75、000psi)未満であり、例えば約344.74mPa(約50、000psi)未満、または、例えば約275.79mPa(約40、000psi)未満である。上記の大きさの圧力を植物材料残渣に加えることにより、細胞分解及び細胞物質の放出を引き起こすことができる。
【0027】
一実施形態では、植物材料残渣の温度は、高密度化中の機械的摩擦に起因して上昇する。例えば、圧縮チャンバ内の温度は、約50°C超であり、例えば約60°C超、例えば約70°C超、例えば約80°C超、例えば約90°C超、または、例えば約100°C超である。また、圧縮チャンバ内の温度は、一般的に、約130°C未満である。一実施形態では、例えば、圧縮チャンバ内の温度は、約105~115°Cの範囲である。上記の温度は、植物材料残渣中の水分を蒸発させる。一般的に、このプロセスに供給される植物材料残渣は、ブリケットを形成するときの高密度化プロセスを容易にするのに十分な量の水分を含有するべきである。ただし、植物材料残渣の水分含有量は、有害な量の蒸気を形成するほど高すぎてはならない。一般的に、植物材料残渣の水分含有量は、約6重量%超であるべきであり、例えば約10重量%超、または、例えば約12重量%超であるべきである。また、植物材料残渣の水分含有量は、一般的に約20重量%未満であるべきであり、例えば約15重量%未満であるべきである。
【0028】
高密度化後のブリケットの寸法は、一般的に重要ではない。したがって、任意の寸法のブリケットを本開示に従って形成することができる。一実施形態では、ブリケットは、ダイから排出された後に円筒形状を有し得る。例示的な目的のみのために、約40mm超、例えば約50mm超、例えば約60mm超、または例えば約70mm超、かつ、一般的に約110mm未満、例えば約100mm未満、例えば約90mm未満、または、例えば約80mm未満の直径を有する円筒形ブリケットを本開示に従って形成することができる。
【0029】
植物材料残渣の密度は、その植物材料の吸着特性を向上させるのに十分な量だけ増加させる。例えば、高密度化された植物材料残渣の密度は、一般的に約0.6g/cm3超であり、例えば約0.7g/cm3超、例えば約0.75g/cm3超、例えば約0.8g/cm3超、または、例えば約0.85g/cm3超である。高密度化された植物材料残渣の密度は、一般的に1g/cm3未満であり、例えば約0.95g/cm3未満である。
【0030】
植物材料残渣の初期密度は、一般的に約0.1g/cm3であり得る。したがって、高密度化により、植物材料残渣の密度は、約6倍超、例えば約7倍超、または、例えば約8倍超増加する。
【0031】
本開示によれば、植物材料残渣を高密度化した後、高密度化された植物材料残渣を粉砕して小片にする。このようにして形成された小片は、多量の微粉を発生することなく、物質を吸着または吸収するための表面積を増加させるのに十分な大きさを有することができる。一般的に、小片は、植物材料の取り扱いを容易にするサイズを有するべきである。例えば、一実施形態では、高密度化された植物材料残渣の小片の50%超は、約0.64cm(約0.25インチ)超の最大寸法を有し、例えば約1.27cm(約0.5インチ)超、例えば約1.91cm(約0.75インチ)超、例えば約2.54cm(約1インチ)超、例えば約3.18cm(約1.25)超、例えば約3.81cm(約1.5インチ)超、例えば約4.45cm(約1.75インチ)超、例えば約5.08cm(約2インチ)超、例えば約5.72cm(約2.25インチ)超、例えば約6.35cm(約2.5インチ)超、例えば約6.99cm(約2.75インチ)超、例えば約7.62cm(約3インチ)超、例えば約8.26cm(約3.25インチ)超、例えば約8.89cm(約3.5インチ)超、例えば約9.53cm(約3.75インチ)超、または、例えば約10.16cm(4インチ)超の最大寸法を有する。また、高密度化された植物材料残渣の小片の50%超は、一般的に約50.8cm(約20インチ)未満の最大寸法を有し、例えば約25.4cm(約10インチ)未満、例えば約20.32cm(約8インチ)未満、または、例えば約10.16cm(約4インチ)未満の最大寸法を有する。粒子サイズは、ASTM標準試験ふるい器を使用して求めることができる。例えば、ASTM標準試験ふるい器は、米国テキサス州ウェブスター所在のカスタム・アドバンスド・コネクションズ社(Custom Advanced Connections)などの多数の供給源から市販されている。特に明記しない限り、上記した、小片の50%超の寸法は、試料の総重量に基づくものである。しかしながら、他の実施形態では、小片の粒径及び粒径分布は、体積に基づくものであってもよい。
【0032】
一実施形態では、高密度化された植物材料残渣の小片は、約0.64~50.8cm(約0.25~20インチ)の平均最大寸法を有し、例えば約1.27~38.1cm(約0.5~15インチ)、または、例えば約2.54~10.16cm(約1~4インチ)の平均最大寸法を有する。
【0033】
一般的に、高密度化された植物材料残渣を粉砕して個別の小片を形成するために、任意の適切な方法または技術を使用することができる。例えば、一実施形態では、ローラミルを使用して、高密度化された植物材料残渣を粉砕して個別の小片を形成することができる。別の実施形態では、ハンマーミルを使用して、高密度化された植物材料残渣を粉砕して個別の小片を形成することができる。
【0034】
一実施形態では、高密度化された植物材料残渣またはブリケットは、2つの回転ローラ間に形成された隙間(ニップ)に供給される。例えば、2つの回転ローラは互いに対して所定の距離を隔てて配置されており、このようにして形成された2つの回転ローラ間の隙間に、高密度化された植物材料残渣が供給される。2つの回転ローラ間の隙間の距離は、約1.27cm(0.5インチ)超であり、例えば約1.91cm(約0.75インチ)超、例えば約2.54cm(約1インチ)超、または、例えば約3.18cm(約1.25インチ)超である。また、2つの回転ローラ間の隙間の距離は、一般的に約7.62cm(約3インチ)未満であり、例えば約5.08cm(約2インチ)未満、例えば約4.45cm(約1.75インチ)未満、または、例えば約3.81cm(約1.5インチ)未満である。2つの回転ローラ間に形成された隙間を介してブリケットを供給することによって、ブリケットは所望のサイズを有する小片に粉砕される。このようにして製造された本開示の流出物浄化組成物が所望のサイズ及びサイズ分布を有することを確実にするために、2つの回転ローラ間の隙間の距離、2つの回転ローラの回転速度、及び様々な他のパラメータを変更及び調節することができる。
【0035】
一実施形態では、上記のプロセスにより製造された本開示の組成物は、約1.27~5.08cm(約0.5~2インチ)の平均最大寸法を有する粒子であり得る。一実施形態では、植物材料残渣を高密度化した後に小片に粉砕することにより、このようにして製造された本開示の組成物が、吸収特性及び吸着特性が向上した嵩密度を有するようにすることができる。本開示の組成物の嵩密度は、一般的に約0.2g/cm3超であり、例えば約0.25g/cm3超、または、例えば約0.275g/cm3超である。また、本開示の組成物の嵩密度は、一般的に約0.5g/cm3未満であり、例えば約0.4g/cm3未満、例えば約0.35g/cm3未満、または、例えば約0.3g/cm3未満である。一実施形態では、例えば、本開示の組成物の嵩密度は、約0.26~0.29g/cm3であり得る。嵩密度は、EN15103:2009に従って求めることができる。
【0036】
本開示の組成物は、その全体を、植物材料残渣から製造してもよい。また、本開示の組成物は、とりわけ油性物質に対して優れた吸収特性及び吸着特性を有する製品を製造するために、結合剤や他の物質を必要としない。したがって、本開示の組成物は、その約70重量%超の量で植物材料残渣を含有することができ、例えば約80重量%超、例えば約90重量%超の量、例えば約95重量%超の量、または、例えば約98重量%超の量で植物材料残渣を含有することができる。一実施形態では、本開示の組成物は、その全体が植物材料残渣から製造される。
【0037】
しかしながら、所望であれば、様々な他の添加物及び成分を本開示の組成物に組み込むことができる。例えば、一実施形態では、さらなる吸収性材料を本開示の組成物に組み込むことができる。
【0038】
本開示の構成は、様々な使用及び用途を有する。一実施形態では、例えば、本開示の組成物は、様々な種類の化学物質の流出物を吸収または吸着するための浄化組成物として使用することができる。例えば、本開示の組成物は、様々な種類の炭化水素、アンモニア、及び様々な他の化学物質を浄化するために使用することができる。一実施形態では、本開示の組成物は、油性物質を吸収及び/または吸着するために使用される。油性物質は、例えば、植物油、動物油、または石油系油であり得る。例えば、油性物質は、石油または石油由来物質を含み得る。油性物質は、任意の液体炭化水素を含み得る。油性物質を浄化するためには、本開示の組成物を油性物質に接触させるだけで、本開示の組成物が油性物質を吸収及び/または吸着することができる。
【0039】
上述したように、本開示の組成物は、油性物質の浄化に特に好適である。例えば、ASTM試験F726-17に従って試験した場合、本開示の組成物は、約0.7超、例えば約0.75超、例えば約0.8超、または、例えば約0.8超であり、かつ、一般的に約1未満である、体積に基づくD5平均油吸着比率(cm3/cm3)を示すことができる。また、本開示の組成物は、約0.85超、例えば約0.9超、例えば約0.95超、または、例えば約1超であり、かつ、一般的に約1.2未満である、N100油吸着比率(cm3/cm3)を示すことができる。また、本開示の組成物は、約0.85超、例えば約0.9超、例えば約0.95超、例えば約1超、または、例えば約1.1超であり、かつ、一般的に約1.4未満である、N750油吸着比率(cm3/cm3)を示すことができる。また、本開示の組成物は、約0.9超、例えば約0.92超、または例えば約0.94超であり、一般的に約1.2未満である、体積に基づくD7500油吸着比率を示すことができる。
【0040】
上記の油吸着特性は、本開示の組成物を製造するために使用される原料を考えると、劇的かつ予想外のものであった。例えば、植物材料残渣の油吸着特性は、体積基準で約30%超、例えば約50%超、例えば約70%超、例えば約100%超、または、例えば約120%超、さらには例えば約150%超増加させることができる。
【0041】
上記の油吸着特性に加えて、本開示の植物材料残渣は、予想外なことに、耐発火性を有することが見出された。本開示の植物材料残渣は、耐発火性を有するので、使用前に安全に保管することができる。本開示の植物材料残渣の耐火特性は、本開示の組成物を可燃性の液体、ガス及び他の材料の周囲に貯蔵する場合に特に有利である。加えて、本開示の組成物は、有害な粉塵をほとんど発生しない。したがって、本開示の組成物は、火災の危険性または健康上の危険性がないので、安全に貯蔵及び使用することができる。
【0042】
一実施形態では、本開示の植物材料残渣は、石油プラットフォーム上などの産業現場に貯蔵することができる。本開示の植物材料残渣は、石油の流出物やその他の化学物質の流出物を、有害な粉塵を発生させることなく回収するのに使用することができる。石油または化学物質の流出物を吸収または浄化するために使用した後、使用済みの本開示の植物材料残渣は燃やして廃棄することができる。例えば、本開示の植物材料残渣は、焼却処分することができる。そして、所望であれば、燃焼により生成されたエネルギーを使用して、電力を生成したり、または、熱を提供したりすることができる。このようにして、本開示の植物材料残渣は、完全に持続可能であり、埋立地への廃棄に寄与しない。
【0043】
本開示は、以下の実施例を参照することにより、より良く理解できるであろう。
【実施例0044】
以下の実施例は、本開示に従って製造された組成物の油吸着特性を実証するために実施した。
【0045】
下記の試料番号1は、本開示に従って製造した。この試料を製造するために、まず、亜麻シブを高密度化して、密度0.883g/cm3、直径75mmのブリケットを形成した。C.F.NielsenA/S社製のモデル番号BP6500のブリケッティングプレスを使用して、亜麻シブを高密度化した。ブリケットを形成した後、そのブリケットを、互いに対して所定の距離を隔てて配置された2つのローラを有する粉砕装置に供給した。ブリケットは、2つのローラ間に形成された隙間(ニップ)に供給した。2つのローラ間の隙間の距離は、約2.54cm(約1インチ)であった。粉砕装置により、約1.27~5.08cm(約0.5~2インチ)の範囲のサイズを有する粒子が生成された。
【0046】
本開示に従って製造した組成物を、下記の他の9つの試料と比較した。
試料番号2:スターダスト・スピル・プロダクツ社(Stardust Spill Products, LLC)から販売されているSTARDUST吸収剤
試料番号3:亜麻シブ
試料番号4:ニュー・ピッグ・コーポレーション社(New Pig Corporation)から販売されているPIG DRI吸収剤
試料番号5:キャン・ロス・エンバイロンメンタル・サービス社(Can-Ross Environmental Services Ltd)から販売されているENVIRO-DRI吸収剤。
試料番号6:トウモロコシ穂軸の吸収材料
試料番号7:ゲーター・インターナショナル社(Gator International)から販売されているOIL GATOR吸収剤
試料番号8:亜麻繊維
試料番号9:亜麻粉
試料番号10:ウッドマルチ(wood mulch)
【0047】
各試料の嵩密度は下記の通りであった。
【0048】
【0049】
嵩密度は、EN15103:2009「固体バイオ燃料-嵩密度の測定」に従って測定した。
【0050】
各試料の油吸着特性を試験した。油吸着比率は、ASTM試験F726-17に従って測定した。
【0051】
吸着試験の各試料は、実験室内で、温度22±2°C、相対湿度55±5%の条件下で最低24時間調整した。
【0052】
分析は、パラゴン・サイエンティフィック社(Paragon Scientific Ltd)から入手した汎用の粘度参照基準を用いて行った。この粘度参照基準は、ホワイトオイルとポリブテンとからなる油ベースである。
【0053】
【0054】
試料1、3~6、8及び10を、210ミクロン/70メッシュバスケットを使用して分析した。試料2、7及び9は、37ミクロン/400メッシュバスケットを使用して分析した。
【0055】
各吸着剤のレプリカには、最小重量4gを使用した。吸着剤は、ラベル付きメッシュバスケットに入れ、その後、必要な油(最小液層2.5cm)が予め充填された試験セル内に降下させた。15分±20秒後、吸着剤を入れたバスケットを取り出し、ワイヤラック上で30±3秒間排水した(高粘度D7500油の場合には、排水時間は2分±3秒間にした)。次いで、吸着剤を秤量済みの秤量皿に移して試料重量を測定し、測定結果を記録した。全ての試験は、3重に行った。
【0056】
吸着剤の乾燥体積に対する吸着された油の体積比
油吸着比率v=SSV/SOV
式中
SSV=吸着された正味油(Ss)/油密度。
SOV=吸着剤の初期乾燥重量(So)/吸着剤の貯蔵密度。
キュベージ係数=吸着剤の乾燥体積に対する吸着された油の体積比の逆数。
【0057】
様々な油についての試験結果を、下記の表3~12と
図1~4に示す。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
本発明はその趣旨から逸脱しない範囲で様々な変更または変形が可能であることは、当業者であれば理解できるであろう。加えて、様々な実施形態の態様は、その全体またはその一部を相互に交換できることを理解されたい。さらに、当業者であれば、上記の詳細な説明及び実施例は説明のみを目的としており、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲をいかなる意味でも限定することを意図していないことを理解できるであろう。