(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015074
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】操作エクソソームの組成物及び内腔エクソソームペイロードの搭載方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240125BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240125BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240125BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240125BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240125BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240125BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240125BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240125BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20240125BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20240125BHJP
A61K 47/50 20170101ALI20240125BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N5/071 ZNA
C07K14/705
C12N5/10
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/09 100
A61K9/127
A61K9/50
A61K47/46
A61K47/50
A61K38/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023200466
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2020545049の分割
【原出願日】2018-11-16
(31)【優先権主張番号】62/634,750
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/587,767
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520170759
【氏名又は名称】コディアック バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル イー. マコーネル
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ピー. ドゥーリー
(72)【発明者】
【氏名】レーン エー. ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】ケ シュー
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン ジェイ. ハウデ
(72)【発明者】
【氏名】ソーニャ ハウプト
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ディー. クルマン
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス イー. ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】マデリーン ユーニス
(57)【要約】
【課題】エクソソームの内腔で富化されることが新たに確認されたタンパク質を使用して、治療エクソソームを調製する方法を提供すること。
【解決手段】具体的には、本発明は、エクソソーム中に、治療ペプチドまたはタンパク質を局在化させる方法を提供する。本方法は、高濃度のエクソソームタンパク質、エクソソームタンパク質の改変体もしくは断片、またはエクソソームタンパク質及び治療もしくはカーゴタンパク質の融合タンパク質のうちの1つ以上を含む、内腔操作エクソソームの生成を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月17日に出願された米国仮特許出願第62/587,767号、及び2018年2月23日に出願された米国仮特許出願第62/634,750号の利益を主張し、これらの開示は、あらゆる目的のために全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2018年11月15日に作成された該ASCIIコピーは、41406US_CRF_sequencelisting.txtと名付けられ、サイズが57,837バイトである。
【背景技術】
【0003】
エクソソームは、細胞間情報伝達の重要なメディエーターである。それらは、がん等の多くの疾患の診断及び予後における重要なバイオマーカーでもある。薬物送達ビヒクルとして、エクソソームは、多くの治療分野における新しい処置モダリティとして、従来の薬物送達方法よりも多くの利点を提供する。
【0004】
エクソソームの最も重要な特徴は、内部空間または内腔内に生物学的に活性なペイロードを含有する能力である。エクソソームが、mRNA、miRNA、DNA、タンパク質、炭水化物、及び脂質を含む内因性ペイロードを含有することがよく知られているが、所望の治療ペイロードを特異的に直接搭載する能力は現在制限されている。産生細胞において所望の治療ペイロードを過剰発現させることによりエクソソームに搭載させ得るが、この搭載は多くの場合、細胞エクソソーム処理センターへのペイロードの確率的な局在に起因して、制限された効率のものである。あるいは、精製されたエクソソームでは、例えば、エレクトロポレーションによりex vivoで搭載され得る。これらの方法は、低い効率の問題があり得、またはsiRNA等の小さなペイロードに限定され得る。それ故、高効率であり、はっきりと定義された搭載エクソソームを生成するための好適な方法が、エクソソームベースの技術の治療のための使用及び他の適用をより可能にするのに必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、治療使用のために、エクソソームに搭載する新規方法に関する。具体的には、方法は、エクソソームの内腔から新たに同定されたタンパク質マーカーを使用する。特に、一群のタンパク質(例えば、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1)、及び脳酸可溶性タンパク質1(BASP1))が、エクソソームの内腔で高度に富化されることを確認した。さらに、BASP1のアミノ末端の短い配列が、蛍光タンパク質カーゴ分子の高効率な搭載を導くのに、全長BASP1タンパク質と同程度に十分であることが示された。10アミノ酸未満のこの断片は、操作エクソソーム搭載の分野における重要な進歩を提示し、ex vivoで操作の追加のステップのない、エクソソームの内腔への任意の治療タンパク質カーゴの効率的で再現可能な搭載を可能にする。本明細書に記載の融合タンパク質を使用したエクソソームへの搭載は、これまでに記載されている他の遺伝子工学的方法と比較して大いに高いレベルのカーゴを有する操作エクソソームを産生する。
【0006】
エクソソームから新たに同定されたタンパク質及びペプチド配列が、本発明の種々の実施形態で使用される。例えば、一部の実施形態は、エクソソームタンパク質またはタンパク質断片及び治療関連タンパク質をコンジュゲートすることにより融合タンパク質を生成すること、ならびに、エクソソームの内腔に融合タンパク質を含有するエクソソームを産生することに関する。天然全長タンパク質または治療関連タンパク質の生物学的に活性な断片を、エクソソームで富化されたタンパク質またはタンパク質断片にコンジュゲートすることにより、エクソソームの内腔に輸送することができる。
【0007】
本発明はさらに、より効率的な搭載のための、またはエクソソームの内腔への治療関連タンパク質の搭載のための、内腔操作エクソソームの生成または使用に関する。例えば、エクソソーム内腔は、より高い濃度の天然全長エクソソームタンパク質及び/または内腔中の天然エクソソームタンパク質の断片もしくは改変されたタンパク質を含有するように改変することができる。
【0008】
本発明の一部の実施形態は、そのような内腔操作エクソソームを産生するための産生細胞、または産生細胞を生成する方法に関する。外因性ポリヌクレオチドを、産生細胞から内腔操作エクソソームを産生させるために、一時的または安定的に産生細胞に導入することができる。
【0009】
従って、一態様では、本発明は、標的タンパク質を含むエクソソームを提供し、標的タンパク質の少なくとも一部は、外因性配列から発現され、標的タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体を含む。
【0010】
一部の実施形態では、標的タンパク質は、異なるエクソソーム中の異なる標的タンパク質よりも高い密度で、エクソソーム中に存在し、異なる標的タンパク質は、従来のエクソソームタンパク質またはその多様体を含む。一部の実施形態では、従来のエクソソームタンパク質は、CD9、CD63、CD81、PDGFR、GPIアンカータンパク質、ラクトアドヘリン、LAMP2、LAMP2B、及びそれらの断片からなる群より選択される。
【0011】
一部の実施形態では、エクソソームは、外因性配列を含むように遺伝子改変された細胞から産生され、任意に、細胞は、HEK293細胞である。
【0012】
一部の実施形態では、細胞は、外因性配列を含むプラスミドを含む。
【0013】
一部の実施形態では、外因性配列は、MARCKS、MARCKSL1、またはBASP1をコードするゲノム配列に対して3’または5’に位置するゲノム部位に挿入されている。一部の実施形態では、外因性配列は、MARCKS、MARCKSL1、またはBASP1をコードするゲノム配列に挿入されている。
【0014】
一部の実施形態では、標的タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片、及び治療ペプチドを含む融合タンパク質である。
【0015】
一部の実施形態では、治療ペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、または治療化合物へのリンカーからなる群より選択される。一部の実施形態では、治療化合物は、ヌクレオチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、及び小分子からなる群より選択される。一部の実施形態では、治療ペプチドは、抗体またはその断片もしくは改変体である。一部の実施形態では、治療ペプチドは、酵素、リガンド、受容体、転写因子、またはその断片もしくは改変体である。一部の実施形態では、治療ペプチドは、抗菌ペプチドまたはその断片もしくは改変体である。
【0016】
一部の実施形態では、エクソソームはさらに、第2の標的タンパク質を含み、第2の標的タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片を含む。一部の実施形態では、エクソソームはさらに、第2の標的タンパク質を含み、第2の標的タンパク質は、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、またはその断片を含む
【0017】
一部の実施形態では、標的タンパク質は、(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)(配列番号118)のペプチドを含む。一部の実施形態では、標的タンパク質は、(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)のペプチドを含み、式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspまたはGlu)でもない。一部の実施形態では、標的タンパク質は、(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)のペプチドを含み、式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない。
【0018】
一部の実施形態では、標的タンパク質は、配列番号4~110のいずれか1つのペプチドを含む。一部の実施形態では、標的タンパク質は、MGXKLSKKKのペプチドを含むみ、式中、Xは、任意のアミノ酸である(配列番号116)。一部の実施形態では、標的タンパク質は、配列番号110のペプチドを含む。一部の実施形態では、標的タンパク質は、配列番号13のペプチドを含む。
【0019】
一部の実施形態では、標的タンパク質はさらに、カーゴペプチドを含む。
【0020】
別の態様では、本発明は、エクソソーム及び賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
一部の実施形態では、医薬組成物は、巨大分子を実質的に含まず、巨大分子は、核酸、外因性タンパク質、脂質、炭水化物、代謝産物、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0022】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書で提供されるエクソソームを産生するための細胞の集団を提供する。
【0023】
一部の実施形態では、細胞の集団は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体を含む標的タンパク質をコードする外因性配列を含む。一部の実施形態では、細胞の集団はさらに、第2の標的タンパク質をコードする第2の外因性配列を含み、第2の標的タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体を含む。一部の実施形態では、細胞の集団はさらに、第2の標的タンパク質をコードする第2の外因性配列を含み、第2の標的タンパク質は、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーターまたはその断片を含む。
【0024】
一部の実施形態では、外因性配列は、MARCKS、MARCKSL1、またはBASP1をコードするゲノム配列に挿入されており、外因性配列及びゲノム配列は、標的タンパク質をコードする。一部の実施形態では、外因性配列は、プラスミド中にある。
【0025】
一部の実施形態では、外因性配列は、治療ペプチドをコードする。一部の実施形態では、治療ペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、または治療化合物へのリンカーからなる群より選択される。一部の実施形態では、治療化合物は、ヌクレオチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、及び小分子からなる群より選択される。一部の実施形態では、治療ペプチドは、抗体またはその断片もしくは改変体である。一部の実施形態では、治療ペプチドは、酵素、リガンド、受容体、転写因子、またはその断片もしくは改変体である。一部の実施形態では、治療ペプチドは、抗菌ペプチドまたはその断片もしくは改変体である。
【0026】
一部の実施形態では、外因性配列は、標的化部分をコードする。一部の実施形態では、標的化部分は、器官、組織、または細胞に特異的である。
【0027】
一部の実施形態では、第2の標的タンパク質はさらに、標的化部分を含む。一部の実施形態では、標的化部分は、器官、組織、または細胞に特異的である。
【0028】
一態様では、本発明は、(i)(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)(配列番号118)、(ii)(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)、または、(iii)(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)の配列を含む、エクソソームを改変するためのポリペプチドを提供する。
【0029】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号4~110のいずれかの配列を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号13の配列を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列番号110の配列を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、MGXKLSKKKの配列を含み、式中、Xは、任意のアミノ酸である(配列番号116)。
【0030】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、カーゴペプチドに融合している。一部の実施形態では、ポリペプチドは、カーゴペプチドのN末端に融合している。
【0031】
一態様では、本発明は、本明細書で提供されるポリペプチドをコードするコード配列を含むポリヌクレオチド構築物を提供する。一部の実施形態では、コード配列は、コドン最適化されている。
【0032】
別の態様では、本発明は、操作エクソソームを作製する方法を提供し、該方法は、a.(i)MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体をコードする第1の配列、及び、(ii)カーゴペプチドをコードする第2の配列、を含む融合ポリペプチドをコードする核酸構築物を細胞に導入するステップ、b.細胞に融合ポリペプチドを発現させることが可能な条件下で、細胞を維持するステップ、ならびに、c.該細胞から融合ポリペプチドを含む操作エクソソームを得るステップを含む。
【0033】
一部の実施形態では、第1の配列は、(i)(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)(配列番号118)、(ii)(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)、または、(iii)(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)の配列を含む。
【0034】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号4~110のいずれかの配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号13の配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号110の配列を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、MGXKLSKKKの配列を含み、式中、Xは、任意のアミノ酸である(配列番号116)。
【0035】
一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、異なるエクソソーム中の異なる標的タンパク質よりも高い密度で、操作エクソソームの内腔に存在し、異なる標的タンパク質は、従来のエクソソームタンパク質またはその多様体を含む。一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、異なるエクソソーム中の異なる標的タンパク質の2倍を超える密度で存在する。一部の実施形態では、融合ポリペプチドは、異なるエクソソーム中の異なる標的タンパク質の4倍、16倍、100倍、または10,000倍高い密度で存在する。
【0036】
図は、単に例示を目的として本発明の種々の実施形態を示す。本明細書に例示する構造及び方法の代替実施形態が、本明細書に記載の本発明の原理から逸脱することなく用いられ得ることを、当業者は以下の考察から容易に認識するであろう。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
標的タンパク質を含むエクソソームであって、前記標的タンパク質の少なくとも一部が、外因性配列から発現され、前記標的タンパク質が、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体を含む、前記エクソソーム。
(項目2)
前記標的タンパク質が、異なるエクソソーム中の異なる標的タンパク質よりも高い密度で、前記エクソソーム中に存在し、前記異なる標的タンパク質が、従来のエクソソームタンパク質またはその多様体を含む、項目1に記載のエクソソーム。
(項目3)
前記従来のエクソソームタンパク質が、CD9、CD63、CD81、PDGFR、GPIアンカータンパク質、ラクトアドヘリン、LAMP2、LAMP2B、及びそれらの断片からなる群より選択される、項目2に記載のエクソソーム。
(項目4)
前記エクソソームが、前記外因性配列を含むように遺伝的に改変された細胞から産生され、任意に、前記細胞が、HEK293細胞である、項目1~3のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目5)
前記細胞が、前記外因性配列を含むプラスミドを含む、項目4に記載のエクソソーム。
(項目6)
前記細胞が、前記細胞のゲノムに挿入された前記外因性配列を含む、項目4に記載のエクソソーム。
(項目7)
前記外因性配列が、MARCKS、MARCKSL1、またはBASP1をコードするゲノム配列に対して3’または5’に位置するゲノム部位に挿入されている、項目6に記載のエクソソーム。
(項目8)
前記外因性配列が、MARCKS、MARCKSL1、またはBASP1をコードするゲノム配列に挿入されている、項目6に記載のエクソソーム。
(項目9)
前記標的タンパク質が、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片を含む、及び治療ペプチドを含む融合タンパク質である、項目1~8のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目10)
前記治療ペプチドが、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、または治療化合物へのリンカーからなる群より選択される、項目9に記載のエクソソーム。
(項目11)
前記治療化合物が、ヌクレオチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、及び小分子からなる群より選択される、項目9に記載のエクソソーム。
(項目12)
前記治療ペプチドが、抗体またはその断片もしくは改変体である、項目9に記載のエクソソーム。
(項目13)
前記治療ペプチドが、酵素、リガンド、受容体、転写因子、またはその断片もしくは改変体である、項目9に記載のエクソソーム。
(項目14)
前記治療ペプチドが、抗菌ペプチドまたはその断片もしくは改変体である、項目9に記載のエクソソーム。
(項目15)
さらに第2の標的タンパク質を含み、前記第2の標的タンパク質が、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片を含む、項目1~14のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目16)
さらに第2の標的タンパク質を含み、前記第2の標的タンパク質が、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、またはその断片を含む、項目1~14のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目17)
前記標的タンパク質が、(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)(配列番号118)のペプチドを含む、項目1~15のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目18)
前記標的タンパク質が、(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)のペプチドを含む、項目1~15のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目19)
前記標的タンパク質が、(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspまたはGlu)でもない)のペプチドを含む、項目1~15のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目20)
前記標的タンパク質が、配列番号4~110のいずれか1項に記載のペプチドを含む、項目17~19のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目21)
前記標的タンパク質が、MGXKLSKKK(式中、Xは、任意のアミノ酸である)(配列番号116)のペプチドを含む、項目17~19のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目22)
前記標的タンパク質が、配列番号110のペプチドを含む、項目21に記載のエクソソーム。
(項目23)
前記標的タンパク質が、配列番号13のペプチドを含む、項目20に記載のエクソソーム。
(項目24)
前記標的タンパク質がさらに、カーゴペプチドを含む、項目1~23のいずれかに記載のエクソソーム。
(項目25)
項目1~24のいずれかに記載のエクソソーム及び賦形剤を含む、医薬組成物。
(項目26)
巨大分子を実質的に含まず、前記巨大分子が、核酸、外因性タンパク質、脂質、炭水化物、代謝産物、及びそれらの組み合わせから選択される、項目25に記載の医薬組成物。
(項目27)
項目1~24のいずれかに記載のエクソソームを産生するための細胞の集団。
(項目28)
MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体を含む前記標的タンパク質をコードする外因性配列を含む、項目27に記載の細胞の集団。
(項目29)
さらに第2の標的タンパク質をコードする第2の外因性配列を含み、前記第2の標的タンパク質が、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体を含む、項目28に記載の細胞の集団。
(項目30)
さらに第2の標的タンパク質をコードする第2の外因性配列を含み、前記第2の標的タンパク質が、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、またはその断片を含む、項目28に記載の細胞の集団。
(項目31)
前記外因性配列が、MARCKS、MARCKSL1、またはBASP1をコードするゲノム配列に挿入されており、前記外因性配列及び前記ゲノム配列が前記標的タンパク質をコードする、項目27~30のいずれかに記載の細胞の集団。
(項目32)
前記外因性配列が、プラスミド中にある、項目27~30のいずれかに記載の細胞の集団。
(項目33)
前記外因性配列が、治療ペプチドをコードする、項目27~32のいずれかに記載の細胞の集団。
(項目34)
前記治療ペプチドが、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、または治療化合物へのリンカーからなる群より選択される、項目33に記載の細胞の集団。
(項目35)
前記治療化合物が、ヌクレオチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、及び小分子からなる群より選択される、項目33に記載の細胞の集団。
(項目36)
前記治療ペプチドが、抗体またはその断片もしくは改変体である、項目33に記載の細胞の集団。
(項目37)
前記治療ペプチドが、酵素、リガンド、受容体、転写因子、またはその断片もしくは改変体である、項目33に記載の細胞の集団。
(項目38)
前記治療ペプチドが、抗菌ペプチドまたはその断片もしくは改変体である、項目33に記載の細胞の集団。
(項目39)
前記外因性配列が、標的化部分をコードする、項目31に記載の細胞の集団。
(項目40)
前記標的化部分が、器官、組織、または細胞に特異的である、項目39に記載の細胞の集団。
(項目41)
前記第2の標的タンパク質がさらに、標的化部分を含む、項目30に記載の細胞の集団。
(項目42)
前記標的化部分が、器官、組織、または細胞に特異的である、項目41に記載の細胞の集団。
(項目43)
エクソソームを改変するためのポリペプチドであって、(i)(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)(配列番号118)、(ii)(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)、または、(ii)(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)の配列を含む、前記ポリペプチド。
(項目44)
配列番号4~110のいずれかの配列を含む、項目43に記載のポリペプチド。
(項目45)
配列番号13の配列を含む、項目43に記載のポリペプチド。
(項目46)
配列番号110の配列を含む、項目43に記載のポリペプチド。
(項目47)
MGXKLSKKK(式中、Xは、任意のアミノ酸である)(配列番号116)の配列を含む、項目43に記載のポリペプチド。
(項目48)
前記ポリペプチドが、カーゴペプチドに融合している、項目43~47のいずれかに記載のポリペプチド。
(項目49)
前記ポリペプチドが、前記カーゴペプチドのN末端に融合している、項目48に記載のポリペプチド。
(項目50)
項目43~49のいずれかに記載のポリペプチドをコードするコード配列を含む、ポリヌクレオチド構築物。
(項目51)
前記コード配列が、コドン最適化されている、項目50に記載のポリヌクレオチド構築物。
(項目52)
操作エクソソームの作製方法であって、
a.(i)MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体をコードする第1の配列、及び、(ii)カーゴペプチドをコードする第2の配列、を含む融合ポリペプチドをコードする核酸構築物を細胞に導入するステップ、
b.前記細胞に前記融合ポリペプチドを発現させることが可能な条件下に、前記細胞を維持するステップ、ならびに
c.前記細胞から、前記融合ポリペプチドを含む前記操作エクソソームを得るステップ、を含む、前記方法。
(項目53)
前記第1の配列が、(i)(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)(配列番号118)、(ii)(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)、または、(ii)(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)の配列を含む、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記第1の配列が、配列番号4~110のいずれかを含む、項目52~53のいずれかに記載の方法。
(項目55)
前記第1の配列が、配列番号13を含む、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記第1の配列が、配列番号110を含む、項目54に記載の方法。
(項目57)
前記第1の配列が、MGXKLSKKK(式中、Xは、任意のアミノ酸である)(配列番号116)を含む、項目53に記載の方法。
(項目58)
前記融合ポリペプチドが、異なるエクソソーム中の異なる標的タンパク質よりも高い密度で、前記操作エクソソームの前記内腔に存在し、前記異なる標的タンパク質が、従来のエクソソームタンパク質またはその多様体を含む、項目52~57のいずれかに記載の方法。
(項目59)
前記融合ポリペプチドが、前記異なるエクソソーム中の前記異なる標的タンパク質の2倍を超える高い密度で存在する、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記融合ポリペプチドが、前記異なるエクソソーム中の前記異なる標的タンパク質の4倍、16倍、100倍、または10,000倍を超える高い密度で存在する、項目59に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】超遠心分離後の試料含有Optiprep(商標)密度勾配の画像を提供する。括弧でマークされているのは、エクソソームを含む上部画分(「上部」)、細胞破片を含む中間画分(「中間」)、ならびに高密度凝集体及び細胞破片を含有する下部画分(「下部」)である。
【
図2】Optiprep(商標)超遠心分離の上部画分から同定されたタンパク質(Y軸)及び下部画分から同定されたタンパク質(X軸)を示すドットグラフである。点線より上にプロットされたタンパク質は、エクソソームで富化されたタンパク質(MARCKS、MARCHSL1、及びBASP1を含む)を表すが、点線より下のものは、エクソソームに特異的ではないタンパク質を表す。
【
図3】MARCKS(配列番号1)のトリプシンペプチドカバレッジマップを提供する。
【
図4】MARCKSL1(配列番号2)のトリプシンペプチドカバレッジマップを提供する。
【
図5】BASP1(配列番号3)のトリプシンペプチドカバレッジマップを提供する。
【
図6】Aは、HEK293細胞から収集された全細胞溶解物(左)及び精製されたエクソソーム集団(右)のタンパク質ブロッティングの写真を示す。Aに提供されるゲルのウェスタンブロッティングは、MARCKS(B)、MARCKSL1(C)、及びBASP1(D)が、精製エクソソームに局在し、全細胞溶解物中で検出されないか、またはエクソソームと比較して細胞溶解物中で実質的に低いレベルであること示す。
【
図7】アミノ酸1~30を含有するMARCKSの断片、CD81、またはpDisplayに融合しているGFPを含有する精製されたエクソソームの蛍光強度を示す。
【
図8】全長MARCKSL1、アミノ酸1~30を含有するMARCKSL1の断片、CD81、またはpDisplayに融合しているGFPを含有する精製されたエクソソームの蛍光強度を示す。
【
図9】全長BASP1、アミノ酸1~30を含有するBASP1の断片、CD81、またはpDisplayに融合しているGFPを含有する精製されたエクソソームの蛍光強度を示す。
【
図10】エクソソームに搭載するのに十分である最小のBASP1 N末端配列を決定するために使用された融合タンパク質の概略図を示す(それぞれ出現順に配列番号122~134)。融合タンパク質には、「pCB」で提供される番号が割り当てられる。
【
図11】GFPに融合しているBASP1断片を発現するように操作されたエクソソームの蛍光シグナルを測定するナノフローサイトメトリーのグラフを示す。x軸は、
図10に提供されるように、種々の融合タンパク質に割り当てられた番号に従って番号付けされる。
【
図12】染色されたタンパク質ゲルの写真を示し、これは、GFPに融合しているBASP1断片が搭載されたエクソソームへの搭載が等しいことを示す。点線の矢印は、BASP1融合タンパク質の移動位置を示す。レーンは、
図10に提供されるように、種々の融合タンパク質に割り当てられた番号に従って番号付けされる。
【
図13】全タンパク質を標識するクーマシーブルーで染色されたタンパク質ゲルの写真を示す。点線の矢印は、BASP1融合タンパク質の移動位置を示す。レーンは、
図10に提供されるように、種々の融合タンパク質に割り当てられた番号で標識される。
【
図14】FLAG及びGFPに融合しているBASP1断片を含有する精製されたエクソソームの抗FLAGタンパク質ブロットの写真を示す。レーンは、
図10に提供されるように、種々の融合タンパク質に割り当てられた番号に従って番号付けされる。
【
図15】FLAG及びGFPに融合しているBASP1断片を含有する精製されたエクソソームの抗Alixタンパク質ブロットの写真を示し、これにより、タンパク質搭載が等しいことを確認される。レーンは、
図10に示されるタンパク質配列に従って番号付けされる。
【
図16A】FLAGタグ及びGFPに融合しているBASP1断片を含む融合タンパク質の配列(それぞれ出現順に配列番号135~142)を示す。
【
図16B】
図16Aの融合タンパク質の1つを安定的に発現する細胞から精製されたエクソソームの抗FLAGウェスタンブロット結果を示す。
【
図17A】FLAGタグならびにGFPに融合しているBASP1断片(1~30)由来の配列(配列番号4)及びその改変体(1~30-S6D、1~30-S6A、及び1~30-L5Q)(出現順にそれぞれ配列番号143~145)を示す。
【
図17B】
図17Aの融合タンパク質の1つを安定的に発現する細胞から精製されたエクソソームの抗FLAGウェスタンブロット結果を示す。
【
図18】全長MARCKSL1、BASP1、または、MARCKS、MARCKSL1、もしくはBASP1のアミノ酸1~30を安定的に発現する細胞から精製されたエクソソーム試料を含むクーマシー染色タンパク質ゲルの画像を示し、全ては、FALG-GFPに融合している。画像上の黒矢印は、融合タンパク質に対応するバンドを示す。
【
図19】BASP1の最初の28個のアミノ酸(保存領域1)、MARCKSのアミノ酸1~7及び152~173(保存領域2)、ならびに、MARCKSL1のアミノ酸1~7及び87~110(保存領域3)間のタンパク質配列アラインメントを示す。
【
図20A】BASP1のアミノ酸1~30(「BASP1~30」)(配列番号4)ならびにMARCKSのPSDドメインまたはその改変体に融合しているMARCKSのアミノ酸1~3またはその改変体を含む融合タンパク質(「MARCKS-MG-PSD」、「MARCKS-MA-PSD」、「MARCKS-MG-PSD-K6S」、及び「MARCKS-MG-PSD-K6A」)(それぞれ出現順に配列番号146~149)の配列を示す。MARCKS配列に導入されている点変異は、太字である。
【
図20B】
図20Aのアミノ酸配列及びFLAGを含む融合タンパク質を安定的に発現する細胞から精製されたエクソソームの抗FLAGウェスタンブロッティング結果を示す。
【
図21】MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1の機能試験に由来する3つの異なるコンセンサス配列、ならびに、エクソソームの内腔にカーゴを搭載するための配列のそれぞれのアミノ酸要件(配列番号118)を示す。
【
図22A】天然エクソソームまたはBASP1のアミノ酸1~10もしくは1~30に融合しているCas9を安定的に発現する細胞から精製されたエクソソーム、及び漸減量の組み換えCas9の全タンパク質(上)及び抗Cas9ウェスタンブロット(下)を示す。
【
図22B】上の図は、
図22Aのウェスタンブロット結果のCas9デンシトメトリーに由来する標準曲線を示す。下の図は、さらに、標準曲線に基づいて推定された、BASP1の1~30アミノ酸または1~10アミノ酸断片にコンジュゲートされた融合タンパク質として、それぞれの精製されたエクソソームごとに搭載されたCas9の量を提供する。
【
図23A】オボアルブミンに融合しているBASP1 N末端(アミノ酸1~10)融合体(「BASP1(1~10)-OVA」)を発現する構築物で安定的にトランスフェクトされた細胞、または2つの構築物(一方は、オボアルブミンへのBASP1 N末端(アミノ酸1~10)融合体を発現し、他方は、膜貫通タンパク質PTGFRNに融合しているCD40Lを発現する)(「BASP1(1~10)-OVA、3XCD40L-PTGFRN」)で安定的にトランスフェクトされた細胞から精製されたエクソソームのタンパク質ゲル画像を示す。さらに、漸減量の組み換えOVAをロードするタンパク質ゲル搭載の画像を示す。
【
図24A】BASP1のアミノ酸1~10及びFLAGタグに融合しているGFPに対するラクダ科動物ナノボディの配列(配列番号150)を示す。
【
図24B】
図24Aの融合タンパク質(「BASP1(1~10)-ナノボディ」)またはBASP1配列を欠くタンパク質(「ナノボディ」)を安定的に発現する細胞から精製されたエクソソームのタンパク質ゲル及び抗FLAGウェスタンブロット結果を示す。
【
図25】(i)FLAG及び単量体または二量体MCP多様体(1XMCP(V29I)(「815」、配列番号111)、1XMCP(V29I/N55K)(「817」、配列番号112)、2XMCP(V29I)(「819」、配列番号113)、または2XMCP(V29I/N55K))(「821」、配列番号114)に融合しているBASP1(1~30)、ならびに、(ii)3xMS2ヘアピンループを含有するシフェラーゼmRNA(「ルシフェラーゼ-MS2 mRNA」または「811」、配列番号115)、を含有するエクソソームmRNA搭載システムの概略図を示す。
【
図26A】
図25に記載のmRNA搭載構築物(種々のBASP1融合タンパク質(815、817、または819)と組み合わせたルシフェラーゼmRNA(811))を含有するエクソソームのタンパク質ゲルを示す。
【
図27A】
図25に示されるmRNA搭載構築物を含有する細胞(上)またはエクソソーム(下)中のルシフェラーゼmRNAの量のRT-qPCRの結果を示す。
【
図27B】
図27Aの試料から精製されたエクソソーム中のルシフェラーゼmRNAの量を定量する表を示し、これは、ルシフェラーゼmRNAの確率的な搭載からの倍率富化を含む。
【
図28】エクソソーム内腔に固定された貫通タンパク質の外表面提示を可能にする、MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1のN末端断片に融合しているCD40L三量体の概略図を示す。
【
図29A】MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1のN末端断片に融合したCD40L表面発現エクソソームと共にインキュベートされた培養物におけるマウスB細胞活性化の結果を示す。
【
図29B】MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1のN末端断片に融合したCD40L表面発現エクソソームと共にインキュベートされた培養物におけるヒトB細胞活性化の結果を示す。
【
図29C】MARCKS、MARCKSL1、BASP1、または全長PTGFRNのN末端配列に融合した時の、異なるCD40L表面提示エクソソームの相対的効力のチャートを示す。
【
図30】異なる起源の種々の細胞株(HEK293SF:腎臓、HT1080:結合組織、K562:骨髄、MDA-MB-231:乳房、Raji:リンパ芽球、間葉系幹細胞(MSC):骨髄)から精製されたエクソソーム中の内腔タンパク質(MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1)ならびに従来のエクソソームタンパク質(CD81及びCD9)のペプチドスペクトルマッチ(PSM)の数を示す。
【
図31】チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞由来のみのエクソソーム、または、FLAG-GFPに融合しているBASP1もしくはBASP1 N末端断片(1~30または1~8)を過剰発現する細胞からのエクソソームのタンパク質ゲル(左)及び抗FLAGウェスタンブロット(右)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
定義
別途記載のない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解する意味を有する。本明細書で使用される場合、以下の用語は、下記のそれらに帰する意味を有する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「細胞外小胞」または「EV」という用語は、内部空間を囲む膜を含む細胞由来の小胞を指す。細胞外小胞は、それらが由来する細胞より小さな直径を有する全て膜に包まれた小胞を含む。一般に、細胞外小胞は、20nm~1000nmの範囲の直径を有し、細胞外小胞の外表面上に提示され及び/または膜を貫通する種々の巨大分子ペイロードを内部空間内に含み得る。該ペイロードは、核酸、タンパク質、炭水化物、脂質、小分子、及び/またはそれらの組み合わせを含み得る。限定ではなく例として、細胞外小胞は、アポトーシス小体、細胞の断片、直接的または間接的な操作により(例えば、連続的な押し出しまたはアルカリ溶液を用いる処理により)細胞から誘導される小胞、小胞化したオルガネラ、及び生細胞から(例えば、直接的な原形質膜の発芽または後期エンドソームの原形質膜との融合により)産生される小胞を含む。細胞外小胞は、生きているもしくは死んだ生物、外植した組織もしくは器官、及び/または培養した細胞から誘導することができる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「エクソソーム」という用語は、内部空間を囲む膜を含む細胞由来の小さな(20~300nmの直径、より好ましくは、40~200nmの直径)小胞を指し、これは、直接的な原形質膜出芽または後期エンドソームの原形質膜との融合により該細胞から生じる。エクソソームは、細胞外小胞の一種である。エクソソームは、脂質または脂肪酸及びポリペプチドを含み、任意に、ペイロード(例えば、治療薬)、レシーバ(例えば、標的化部分)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、もしくはDNA)、糖(例えば、単糖、多糖、もしくはグリカン)または他の分子を含む。エクソソームは、産生細胞から誘導することができ、そのサイズ、密度、生化学的パラメータ、またはそれらの組み合わせに基づき、産生細胞から単離することができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ナノ小胞」という用語は、内部空間を囲む膜を含む細胞由来の小さな(20~250nmの直径、より好ましくは30~150nmの直径)小胞を指し、これは、直接的または間接的な操作により該細胞から生じ、その結果、該ナノ小胞は、該操作なしには該産生細胞から産生されないであろう。該産生細胞の好適な操作は、限定されないが、連続的な押し出し、アルカリ溶液を用いる処理、超音波処理、またはそれらの組み合わせを含む。ナノ小胞の産生は、一部の場合では、該産生細胞の破壊をもたらし得る。好ましくは、ナノ小胞の集団は、原形質膜からの直接的出芽または後期エンドソームの原形質膜との融合の手段による産生細胞に由来する小胞を実質的に含まない。ナノ小胞は、脂質または脂肪酸及びポリペプチドを含み、任意に、ペイロード(例えば、治療薬)、レシーバ(例えば、標的化部分)、ポリヌクレオチド(例えば、核酸、RNA、もしくはDNA)、糖(例えば、単糖、多糖、もしくはグリカン)または他の分子を含む。ナノ小胞は、一旦該操作に従って産生細胞から生じると、そのサイズ、密度、生化学的パラメータ、またはそれらの組み合わせに基づき、産生細胞から単離されてもよい。
【0042】
本明細書で使用される場合、「内腔操作エクソソーム」という用語は、組成が改変された内部の内腔空間を有するエクソソームを指す。例えば、内腔は、タンパク質、脂質、小分子、炭水化物、等の組成が改変されている。組成は、化学的、物理的、もしくは生物学的方法により、または化学的、物理的、もしくは生物学的方法により以前に改変された細胞から産生されることにより、変化させることができる。具体的には、組成は、遺伝子工学により、または遺伝子工学により以前に改変された細胞から産生されることにより、変化させることができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、タンパク質の「改変体」という用語は、タンパク質の非変異型アミノ酸配列と少なくとも15%同一性を有するタンパク質を指す。タンパク質の改変体は、タンパク質の断片または多様体を含む。タンパク質の改変体はさらに、タンパク質の断片または多様体への化学的または物理的改変体を含み得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、タンパク質の「断片」という用語は、天然に生じるタンパク質と比較して、N末端及び/またはC末端が欠失しているタンパク質を指す。好ましくは、MARCKS、MARCKSL1、またはBASP1の断片は、エクソソームの内腔を特異的に標的とする能力を保持する。このような断片は、「機能性断片」とも称される。断片がその意味において機能性断片であるか否かは、ウェスタンブロット、FACS分析、及び、例えば、GFPのような自家蛍光タンパク質との断片の融合を含む、エクソソームのタンパク質内容物を決定する任意の既知の方法で評価することができる。特定の実施形態では、MARCKS、MARCKSL1、またはBASP1の断片は、天然に存在するMARCKS、MARCKSL1、またはBASP1がエクソソームを特異的に標的とする能力の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%を保持する。特定の実施形態では、MARCKS、MARCKSL1、BASP1の多様体、または、MARCKS、MARCKSL1、もしくはBASP1の断片の能力は、MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1がそれぞれエクソソームの内腔を特異的に標的する能力の少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、または99%である。この能力は、実験セクションで説明されるアッセイ、例えば、蛍光標識された多様体により評価することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、タンパク質の「多様体」という用語は、当該技術分野で既知の方法によるアラインメント時に、別のタンパク質と、特定のアミノ酸配列同一性を共有するタンパク質を指す。タンパク質の多様体は、別のタンパク質における置換、挿入、欠失、フレームシフト、または再編成を含み得る。特定の実施形態では、多様体は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、または、MARCKS、MARCKSL1、もしくはBASP1の断片と少なくとも70%の同一性を有する多様体である。一部の実施形態では、MARCKSの多様体または断片の多様体は、配列番号1に従うMARCKSまたはその機能性断片と、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、または99%配列同一性を共有する。一部の実施形態では、MARCKSL1の多様体または断片の多様体は、配列番号2に従うMARCKSL1またはその機能性断片と、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、または99%配列同一性を共有する。一部の実施形態では、BASP1の多様体または断片の多様体は、配列番号3に従うBASP1またはその機能性断片と、少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、または99%配列同一性を共有する。上記場合のそれぞれでは、多様体または断片の多様体は、エクソソームの内腔を特異的に標的とする能力を保持することが好ましい。
【0046】
比較のための配列のアラインメント法は、当該技術分野で周知である。種々のプログラム及びアラインメントアルゴリズムは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)、Needleman and Wunsch,J.Mol.Bio.48:443(1970)、Pearson and Lipman,Methods in Mol.Biol.24:307-31(1988)、Higgins and Sharp,Gene 73:15 237-44(1988)、Higgins and Sharp,CABIOS 5:151-3(1989)Corpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881-90(1988)、Huang et al.,Comp.Appl.BioSci.8:155-65(1992)、及びPearson et al.,Meth.Mol.Biol.24:307-31(1994)に記載される。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)[Altschul
20 et al.,J.Mol.Biol.215:403-10(1990)Jは、National Center for Biological Information(NBCl,Bethesda,Md.)を含むいくつかの供給源、ならびにインターネット上から入手可能であり、配列解析プログラムblastp、blasm、blastx、tblastn及びtblastxに関連して使用される。BLAST及びプログラムを使用した配列同一性を決定する方法の説明は、NIH(National Institute of Health)下のNCBI(National Center for Biotechnology Information)の公式ウェブサイトでアクセスすることができる。
【0047】
本明細書で提供される任意のタンパク質の列挙は、タンパク質の機能性多様体を包含する。タンパク質の「機能的多様体」という用語は、エクソソームの内腔を特異的に標的とする能力を保持するタンパク質の多様体を指す。特定の実施形態では、MARCKS、MARCKSL1、BASP1の機能的多様体、または、MARCKS、MARCKSL1、もしくはBASP1の断片の能力は、MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1がそれぞれエクソソームの内腔を特異的に標的とする能力の少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、または99%である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「産生細胞」という用語は、エクソソームを生成するために使用される細胞を指す。産生細胞は、in vitroで培養された細胞、またはin
vivoの細胞とし得る。産生細胞は、限定されないが、エクソソームの生成に有効であると知られている細胞、例えば、HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、及び間葉系幹細胞(MSC)を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「標的タンパク質」または「標的ペプチド」という用語は、エクソソームの内腔を標的とし得るタンパク質またはペプチドを指す。標的タンパク質またはペプチドは、エクソソーム内腔を自然に標的とする非変異型タンパク質、または非変異型タンパク質の断片もしくは改変体とし得る。標的タンパク質は、flagタグ、治療ペプチド、標的化部分、あるいは、非変異型タンパク質または非変異型タンパク質の改変体もしくは断片に結合している他のペプチドを含有する融合タンパク質とし得る。標的タンパク質は、ミリストイル化、プレニル化、もしくはパルミトイル化等の改変、またはリンカーにより膜の内部小葉に結合している可溶性タンパク質を含み得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「カーゴタンパク質」または「カーゴペプチド」という用語は、任意のタンパク質もしくはペプチド、またはその断片もしくは改変体を指し、これらは、エクソソームまたは操作エクソソーム中に搭載することができるものを指す。カーゴタンパク質またはペプチドは、エクソソームと接触する標的(例えば、標的細胞)に作用する治療ペプチドまたはタンパク質を含んでもよい。カーゴタンパク質は、カーゴ融合タンパク質がエクソソーム内腔を標的とし得るように、上記のような標的化タンパク質もしくはペプチドまたはその断片もしくは改変体を含む融合タンパク質であってよい。
【0051】
本明細書で使用される場合、「夾雑タンパク質」という用語は、エクソソームと関連しないタンパク質を指す。例えば、夾雑タンパク質は、エクソソームに囲まれておらず且つエクソソームの膜に結合していないかまたは組み込まれていないタンパク質を含む。
【0052】
本明細書で使用される場合、「単離」、「単離された」、及び「単離すること」、または、「精製」、「精製された」、及び「精製すること」、ならびに、「抽出された」及び「抽出すること」は、互換的に使用され、精製の1つ以上のプロセスを受けている所望のEVの調製物の状態(例えば、複数の既知または未知の量及び/または濃度)、例えば、所望のエクソソーム調製物の選択または富化を指す。一部の実施形態では、単離することまたは精製することは、本明細書で使用される場合、産生細胞を含有する試料からエクソソーム(例えば、画分)を取り出す、部分的に取り出すプロセスである。一部の実施形態では、単離されたエクソソーム組成物は、検出可能な望ましくない活性を有さない、またあるいは、望ましくない活性のレベルもしくは量が許容可能なレベルもしくは量以下である。他の実施形態では、単離されたエクソソーム組成物は、許容可能な量及び/または濃度以上の所望のエクソソームの量及び/または濃度を有する。他の実施形態では、単離されたエクソソーム組成物は、その組成物が得られた出発物質(例えば、産生細胞調製物)と比較して富化される。この富化は、出発物質と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、99.9999%、または99.9999%超とし得る。一部の実施形態では、単離されたエクソソーム調製物は、残留生物由来物質を実質的に含まない。一部の実施形態では、単離されたエクソソーム調製物は、任意の夾雑生物質を、100%含まない、99%含まない、98%含まない、97%含まない、96%含まない、95%含まない、94%含まない、93%含まない、92%含まない、91%含まない、または90%含まない。残留生物由来物質は、非生物的物質(化学的な物質を含む)もしくは不要な核酸、タンパク質、脂質、または代謝産物を含み得る。残留生物由来物質を実質的に含まないということは、エクソソーム組成物が、検出可能な産生細胞を含有せず、エクソソームのみが検出可能であることも意味し得る。
【0053】
「賦形剤」または「担体」という用語は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。「薬学的に許容される担体」または「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、ヒトを含む動物における使用に関して米国連邦政府の規制当局によって承認されたまたは米国薬局方において列挙された任意の薬剤、ならびに著しい刺激を対象に引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性及び特性を抑制しない、任意の担体または希釈剤を包含する。医薬組成物の調製において有用であり、一般に安全で、非毒性であり、望ましい賦形剤及び担体を含む。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ペイロード」という用語は、EVと接触している標的(例えば、標的細胞)に作用する治療薬を指す。エクソソーム及び/または産生細胞に導入することができるペイロードは、ヌクレオチド(例えば、検出可能な部分もしくは毒素を含むか、または転写を阻害するヌクレオチド)、核酸(例えば、酵素等のポリペプチドをコードするDNAもしくmRNA分子、またはmiRNA、dsDNA、lncRNA、及びsiRNA等の制御機能を有するRNA分子)、アミノ酸(例えば、検出可能な部分もしくは毒素を含むか、または翻訳を阻害するアミノ酸)、ポリペプチド(例えば、酵素)、脂質、炭水化物、ウイルス及びウイルス粒子(例えば、アデノ随伴ウイルス及びウイルス粒子、レトロウイルス、アデノウイルス等)、ならびに、小分子(例えば、ML-RR S2及び3’-3’cAIMPdFSH等の環状ジヌクレオチドを含む小分子STINGアゴニストを含む小分子薬及び毒素)等の治療薬を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「哺乳動物対象」は、限定されないが、ヒト、家畜(例えば、イヌ、ネコ等)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ等)及び実験動物(例えば、サル、ラット、マウス、ウサギ、モルモット等)を含む全ての哺乳動物を含む。
【0056】
「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、本明細書で互換可能に使用され、診断、処置、または治療が望まれる任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。本明細書に記載の方法は、ヒト治療及び獣医学の両方の用途に適用可能である。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物であり、他の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0057】
本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」という用語は、エクソソームを含む試料が、質量/体積(m/v)百分率濃度で10%未満の巨大分子を含むことを意味する。一部の画分は、0.001%未満、0.01%未満、0.05%未満、0.1%未満、0.2%未満、0.3%未満、0.4%未満、0.5%未満、0.6%未満、0.7%未満、0.8%未満、0.9%未満、1%未満、2%未満、3%未満、4%未満、5%未満、6%未満、7%未満、8%未満、9%未満、または10%未満(m/v)の巨大分子を含有してもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「巨大分子」という用語は、核酸、外因性タンパク質、脂質、炭水化物、代謝産物、またはそれらの組み合わせを意味する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「従来のエクソソームタンパク質」という用語は、CD9、CD63、CD81、PDGFR、GPIアンカータンパク質、ラクトアドヘリンLAMP2、及びLAMP2B、その断片、またはそれに結合するペプチドを含むがこれらに限定されない、エクソソームにおいて富化すると以前に知られているタンパク質を意味する。誤解を避けるために、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、またはその断片もしくは多様体は、従来のエクソソームタンパク質ではない。
【0060】
他の解釈に関する規定
本明細書に列挙された範囲は、列挙された端点を含む、範囲内の全ての値の略記であると理解される。例えば、1~50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50からなる群の任意の数、数の組み合わせ、または下位範囲を含むと理解される。
【0061】
別途指示のない限り、1つ以上の立体中心を有する化合物への言及は、その各立体異性体、及び立体異性体の全ての組み合わせを意図する。
【0062】
エクソソームタンパク質
本発明の一部の実施形態は、エクソソーム内腔中で高度に富化されたエクソソームタンパク質の同定、使用、及び改変に関する。このようなエクソソームタンパク質は、高度に精製されたエクソソームを、質量分析または当該技術分野で既知の他の方法を用いて、分析することにより同定することができる。
【0063】
タンパク質は、エクソソーム膜上で富化された膜貫通タンパク質、内在性タンパク質、及び末梢タンパク質等の種々の内腔タンパク質または膜タンパク質を含む。具体的には、タンパク質は、限定されないが、(1)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)、(2)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1);及び、(3)脳酸可溶性タンパク質1(BASP1)を含む。
【0064】
本明細書で同定された1つ以上のエクソソームタンパク質は、エクソソームの産生細胞、産生条件、精製方法、または意図される用途に応じて選択的に使用することができる。特定のサイズ範囲、標的化部分、電荷密度、ペイロード等を有する、特定のエクソソームの内腔で富化されたエクソソームタンパク質を、本発明の一部の実施形態では、同定及び使用することができる。一部の実施形態では、治療エクソソームの生成及び単離のために、複数のエクソソームタンパク質を同時にまたはその後に使用することができる。
【0065】
内腔操作エクソソーム
本発明の別の態様は、内腔操作エクソソームの生成及び使用に関する。内腔操作エクソソームは、組成が改変された内部空間を有する。例えば、内腔の組成は、内腔のタンパク質、脂質、またはグリカンの含有量を変更することにより変更することができる。
【0066】
一部の実施形態では、内腔操作エクソソームは、PEG誘導融合及び/または超音波融合等の化学的及び/または物理的方法により生成される。
【0067】
他の実施形態では、内腔操作エクソソームは、遺伝子操作により生成される。遺伝子改変された産生細胞または遺伝子改変された細胞の後代から産生されたエクソソームは、改変された内腔組成を含有し得る。一部の実施形態では、内腔操作エクソソームは、より高いもしくはより低い密度のエクソソームタンパク質を有するか、または、エクソソームタンパク質の改変体もしくは断片を含む。
【0068】
例えば、内腔操作エクソソームは、エクソソームタンパク質またはエクソソームタンパク質の改変体もしくは断片をコードする外因性配列で形質転換された細胞から産生することができる。外因性配列から発現されたタンパク質を含むエクソソームは、改変された内腔タンパク質組成を含み得る。
【0069】
エクソソームタンパク質の種々の改変体または断片は、本発明の実施形態に使用することができる。例えば、エクソソーム内腔をより効果的に標的とするように改変されたタンパク質を使用することができる。エクソソーム内腔への特異的且つ効果的な標的化に必要な最小限の断片を含むように改変されたタンパク質を使用することもできる。
【0070】
治療活性を有する融合タンパク質を使用することもできる。例えば、融合タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその改変体、特に、その断片または多様体、及び治療ペプチドまたはカーゴタンパク質もしくはペプチドを含み得る。一部の実施形態では、融合タンパク質は、BASP1のアミノ末端の断片を含む。
【0071】
治療ペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、または治療化合物へのリンカーからなる群より選択される。治療化合物は、ヌクレオチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、または小分子とし得る。治療ペプチドは、抗体、酵素、リガンド、抗原(例えば、腫瘍抗原、または、細菌、ウイルス、真菌、もしくは原生動物等の感染性因子由来の抗原)、受容体、抗菌ペプチド、転写因子、あるいはその断片または改変体とし得る。融合タンパク質は、エクソソームの内腔に提示することができ、エクソソームに治療活性を提供する。
【0072】
一部の実施形態では、治療ペプチドは、ゲノム編集複合体の構成成分である。一部の実施形態では、該ゲノム編集複合体は、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TALエフェクターヌクレアーゼもしくはTALEN);ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);リコンビナーゼ;CRISPR/Cas9複合体、CRISPR/Cpf1複合体、CRISPR/C2c1、C2c2もしくはC2c3複合体、CRISPR/CasYもしくはCasX複合体、または当該技術分野で既知の他の任意の適切なCRISPR複合体;または、当該技術分野で既知の他の任意の適切なゲノム編集複合体、あるいは、それらの任意の組み合わせである。
【0073】
一部の実施形態では、治療ペプチドは、膜貫通型ペプチドである。本明細書に記載の膜貫通ペプチドは、本明細書に記載の配列のいずれか、またはその任意の断片もしくは多様体への融合タンパク質として発現されてもよい。一部の実施形態では、膜貫通タンパク質は、エクソソームの内腔の内腔配列に融合している第1の端部及びエクソソームの表面上で発現した第2末端を有する。一部の実施形態では、膜貫通タンパク質は、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、またはその断片もしくは多様体を含む。
【0074】
一部の実施形態では、治療ペプチドは、核酸結合タンパク質である。一部の実施形態では、核酸結合タンパク質は、ダイサー、アルゴノートタンパク質、TRBP、MS2バクテリオファージコートタンパク質である。一部の実施形態では、核酸結合タンパク質はさらに、1つ以上のRNAまたはDNA分子を含む。一部の実施形態では、1つ以上のRNAは、miRNA、siRNA、ガイドRNA、lincRNA、mRNA、アンチセンスRNA、dsRNA、またはそれらの組み合わせである。
【0075】
一部の実施形態では、治療ペプチドは、タンパク質-タンパク質相互作用系の一部である。一部の実施形態では、タンパク質-タンパク質相互作用系は、FRB-FKBP相互作用系、例えば、Banaszynski et al.,J Am Chem Soc.2005 Apr 6;127(13):4715-21に記載のようなFRB-FKBP相互作用系を含む。
【0076】
融合タンパク質は、エクソソームの内腔を標的とし、治療活性をエクソソームに提供することができる。
【0077】
一部の実施形態では、標的化部分を有する融合タンパク質を使用する。例えば、融合タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは改変体、及び標的化部分を含み得る。標的化部分は、エクソソームを使用する処置のために、エクソソームを特定の器官、組織、または細胞に標的化するために使用することができる。一部の実施形態では、標的化部分は、抗体またはその抗原結合断片である。抗体及びその抗原結合断片は、全抗体、ポリクローナル、モノクローナル、及び組み換え抗体、その断片を含み、さらに単鎖抗体、ヒト化抗体、マウス抗体、キメラ、マウス-ヒト、マウス-霊長類、霊長類-ヒトモノクローナル抗体、抗イディオタイプ抗体、抗体断片、例えば、scFv、(scFv)2、Fab、Fab’、及びF(ab’)2、F(ab1)2、Fv、dAb、及びFd断片、ダイアボディ、ならびに抗体関連ポリペプチドを含む。抗体及びその抗原結合断片は、所望の生物学的活性または機能を呈する限り、二重特異性抗体及び多特異性抗体も含む。
【0078】
一部の実施形態では、ウイルスタンパク質を含む融合タンパク質が使用される。一部の実施形態では、融合タンパク質は、ウイルスカプシドまたはエンベロープタンパク質を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、エクソソームの内腔に保持されるインタクトなウイルスの組み立てを可能にする。
【0079】
一部の実施形態では、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、配列番号4~109のいずれか、またはその改変体、特に、その断片または多様体、を含む融合タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、配列番号4~109のいずれか、もしくはその改変体、特に、その断片もしくは多様体、を欠く融合タンパク質の発現と比較して、または、従来のエクソソームタンパク質を含む融合タンパク質と比較して、エクソソームにおける融合タンパク質の富化をもたらす。一部の実施形態では、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、配列番号4~109のいずれか、またはその断片もしくは改変体を含む融合タンパク質は、MGXKLSKKK(式中、Xは、アラニンもしくは他のアミノ酸である)(配列番号117)の配列を有するペプチド、または、(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)の配列を有するペプチドを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspまたはGlu)でもない)の配列を有するペプチドを含む。一部の実施形態では、従来のエクソソームタンパク質は、CD9、CD63、CD81、PDGFR、GPIアンカータンパク質、LAMP2、LAMP2B、及びその断片からなるリストから選択される。一部の実施形態では、エクソソーム中にMARCKS、MARCKSL1、BASP1、配列番号4~109のいずれか、またはその断片もしくは改変体を含む融合タンパク質の富化は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、配列番号4~109のいずれか、またはその断片もしくは改変体を欠く融合タンパク質よりも、あるいは、従来のエクソソームタンパク質を含む融合タンパク質と比較して、2倍超、4倍超、8倍超、16倍超、25倍超、50倍超、100倍超、200倍超、500倍超、750倍超、1,000倍超、2,000倍超、5,000倍超、7,500倍超、10,000倍超高い。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれかのタンパク質配列は、エクソソームに融合タンパク質を搭載するのに十分である。
【0080】
一部の実施形態では、外因性配列及び本明細書で新たに同定されたエクソソーム内腔タンパク質を含有する融合タンパク質を含む内腔操作エクソソームは、当該技術分野で既知の従来のエクソソームタンパク質(例えば、CD9、CD63、CD81、PDGFR、GPIアンカータンパク質、ラクトアドヘリンLAMP2、及びLAMP2B、その断片、またはそれに結合するペプチド)にコンジュゲートされた外因性配列を含む同様に操作されたエクソソームよりも高密度の融合タンパク質を有する。一部の実施形態では、本明細書で新たに同定されたエクソソームタンパク質を含有する該融合タンパク質は、従来のエクソソームタンパク質を使用して同様に改変された他のエクソソーム内腔の融合タンパク質の2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度でエクソソーム内腔に存在する。一部の実施形態では、本明細書で新たに同定されたエクソソームタンパク質を含有する該融合タンパク質は、従来のエクソソームタンパク質を使用して同様に改変された他のエクソソーム内腔の融合タンパク質の2~4倍、4~8倍、8~16倍、16~32倍、32~64倍、64~100倍、100~200倍、200~400倍、400~800倍、800~1,000倍、またはそれより高い密度でエクソソーム内腔に存在する。
【0081】
一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD9を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD63を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD81を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、PDGFRを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、GPIアンカータンパク質を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、ラクトアドヘリンを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、LAMP2を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、LAMP2Bを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、従来のタンパク質を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKS、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、従来のエクソソームタンパク質の多様体を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。
【0082】
一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD9を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD63を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD81を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、PDGFRを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、GPIアンカータンパク質を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、ラクトアドヘリンを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、LAMP2を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、LAMP2Bを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、従来のタンパク質を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、従来のエクソソームタンパク質の多様体を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。
【0083】
一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD9を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD63を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD81を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、PDGFRを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、GPIアンカータンパク質を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、ラクトアドヘリンを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、LAMP2を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、LAMP2Bを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、従来のタンパク質を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、BASP1、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、従来のエクソソームタンパク質の多様体を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。
【0084】
一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD9を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD63を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、CD81を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、PDGFRを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、GPIアンカータンパク質を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、ラクトアドヘリンを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、LAMP2を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、LAMP2Bを使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、従来のタンパク質を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。一部の実施形態では、配列番号1~109のいずれか、その多様体、断片、断片の多様体、または改変体を含む融合タンパク質は、従来のエクソソームタンパク質の多様体を使用して同様に改変されたエクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で存在する。
【0085】
一部の実施形態では、本明細書に記載の内腔操作エクソソームは、当該技術分野で既知の内腔操作エクソソームと比較して優れた特徴を示す。例えば、本明細書で提供される新たに同定されたエクソソームタンパク質を使用することにより産生された内腔操作エクソソームは、先行技術のエクソソーム、例えば、従来のエクソソームタンパク質を使用して産生されたものよりも、内腔で高度に富化された改変タンパク質を含有する。さらに、本発明の内腔操作エクソソームは、当該技術分野で既知の内腔操作エクソソームと比較して、より大きいか、より特異的か、または、より制御された生物活性を有し得る。例えば、本明細書に記載のエクソソームタンパク質またはその断片に融合している治療的または生物学的に関連する外因性配列(例えば、BASP1またはその断片)を含む内腔操作エクソソームは、当該技術分野で既知の足場への融合よりも望ましい操作された特性を多く有し得る。当該技術分野で既知の足場タンパク質は、テトラスパニン分子(例えば、CD63、CD81、CD9、及びその他のもの)、リソソーム関連膜タンパク質2(LAMP2及びLAMP2B)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、GPIアンカータンパク質、ラクトアドヘリン及びその断片、ならびに、これらのタンパク質またはその断片のいずれかに対して親和性を有するペプチドを含む。誤解を避けるために、PTGFRN、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、またはその断片もしくは多様体は、従来のエクソソームタンパク質ではない。従来は、内腔操作エクソソームを産生するための外因性タンパク質の過剰発現は、エクソソーム中への外因性タンパク質の確率的またはランダムな配置に依存していた。これは、エクソソームの外因性タンパク質の低レベルで予測不可能な密度をもたらした。このように、本明細書に記載のエクソソームタンパク質及びその断片は、新規エクソソーム組成物及びその作成方法に重要な進歩を提供する。
【0086】
本明細書で提供される融合タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは多様体、及び追加のペプチドを含み得る。追加のペプチドは、エクソソームタンパク質またはその断片もしくは多様体のN末端またはC末端のいずれかに結合することができる。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書で提供される融合タンパク質は、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、またはその断片もしくは多様体、及び2つの追加のペプチドを含む。2つの追加のペプチドの両方が、エクソソームタンパク質またはその断片もしくは多様体のN末端またはC末端のいずれかに結合することができる。一部の実施形態では、2つの追加のペプチドのうちの一方は、エクソソームタンパク質またはその断片もしくは多様体のN末端に結合しており、2つの追加のペプチドのうちの他方は、それらのC末端に結合している。
【0088】
一部の実施形態では、本明細書に記載の内腔操作細胞外小胞を生成する組成物及び方法は、ナノ小胞を含む。
【0089】
内腔操作エクソソームの産生のための産生細胞
本発明のエクソソームは、in vitroで成長させた細胞または対象の体液から産生することができる。エクソソームがin vitro細胞培養から産生される場合、種々の産生細胞、例えば、HEK293細胞を、本発明に使用することができる。本明細書に記載の内腔操作エクソソームの産生に使用することができる追加の細胞型は、間葉系幹細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、及びがん細胞株を含むが、これらに限定されない。
【0090】
産生細胞は、内腔操作エクソソームを産生する1つ以上の外因性配列を含むように遺伝子改変することができる。遺伝子改変産生細胞は、一過性のまたは安定した形質転換により外因性配列を含有し得る。外因性配列は、プラスミドとして形質転換することができる。外因性配列は、標的部位またはランダムな部位において、産生細胞のゲノム配列に安定的に統合することができる。一部の実施形態では、内腔操作エクソソームの産生のための安定した細胞株が生成される。
【0091】
外因性配列は、エクソソームタンパク質をコードする内因性配列の上流(5’末端)または下流(3’末端)内に位置する産生細胞のゲノム配列に挿入することができる。当該技術分野で既知の種々の方法を、産生細胞への外因性配列の導入に使用することができる。例えば、種々の遺伝子編集方法(例えば、相同組み換え、トランスポゾン媒介システム、loxP-Creシステム、CRISPR/Cas9、またはTALENを使用する方法)を使用して改変された細胞は、本発明の範囲内である。
【0092】
外因性配列は、エクソソームタンパク質またはエクソソームタンパク質の改変体または断片をコードする配列を含み得る。エクソソームタンパク質をコードする配列の余分なコピーは、より高い密度のエクソソームタンパク質を有する内腔操作エクソソームを産生するために導入することができる。エクソソームタンパク質の改変体または断片をコードする外因性配列は、エクソソームタンパク質の改変体または断片を含有する内腔操作エクソソームを産生するために導入することができる。親和性タグをコードする外因性配列は、エクソソームタンパク質に結合した親和性タグを含む融合タンパク質を含有する内腔操作エクソソームを産生するために導入することができる。
【0093】
一部の実施形態では、内腔操作エクソソームは、同じまたは同様の産生細胞型から単離された天然エクソソームよりも高い密度のエクソソームタンパク質を有する。一部の実施形態では、該エクソソームタンパク質は、該天然エクソソームの2倍、4倍、8倍、16倍、32倍、64倍、100倍、200倍、400倍、800倍、1,000倍、またはそれより高い密度で該内腔操作エクソソーム上に存在する。一部の実施形態では、該エクソソームタンパク質は、該天然エクソソームの2~4倍、4~8倍、8~16倍、16~32倍、32~64倍、64~100倍、100~200倍、200~400倍、400~800倍、800~1,000倍、またはそれより高い密度で該内腔操作エクソソーム上に存在する。一部の実施形態では、エクソソームタンパク質を含む融合タンパク質は、該天然エクソソーム上の未改変エクソソームタンパク質の2~4倍、4~8倍、8~16倍、16~32倍、32~64倍、64~100倍、100~200倍、200~400倍、400~800倍、800~1,000倍、またはそれより高い密度で該内腔操作エクソソーム上に存在する。一部の実施形態では、エクソソームタンパク質の断片または多様体は、該天然エクソソーム上の未改変エクソソームタンパク質の2~4倍、4~8倍、8~16倍、16~32倍、32~64倍、64~100倍、100~200倍、200~400倍、400~800倍、800~1,000倍、またはそれより高い密度で該内腔操作エクソソーム上に存在する。
【0094】
特定の実施形態では、MARCKS、MARCKSの断片もしくは多様体、またはその改変体は、該天然エクソソーム上の未改変MARCKSの2~4倍、4~8倍、8~16倍、16~32倍、32~64倍、64~100倍、100~200倍、200~400倍、400~800倍、800~1,000倍、またはそれより高い密度で該内腔操作エクソソーム上に存在する。一部の実施形態では、MARCKSL1、MARCKSL1の断片もしくは多様体、またはその改変体は、該天然エクソソーム上の未改変MARCKSL1の2~4倍、4~8倍、8~16倍、16~32倍、32~64倍、64~100倍、100~200倍、200~400倍、400~800倍、800~1,000倍、またはそれより高い密度で該内腔操作エクソソーム上に存在する。一部の実施形態では、BASP1、BASP1の断片もしくは多様体、またはその改変体は、該天然エクソソーム上の未改変BASP1の2~4倍、4~8倍、8~16倍、16~32倍、32~64倍、64~100倍、100~200倍、200~400倍、400~800倍、800~1,000倍、またはそれより高い密度で該内腔操作エクソソーム上に存在する。
【0095】
一部の実施形態では、産生細胞はさらに、追加の外因性配列を含むように改変される。例えば、追加の外因性配列は、内因性遺伝子発現を調節するか、または特定のポリペプチドをペイロードとして含むエクソソームを産生するように含められ得る。一部の実施形態では、産生細胞は、2つの外因性配列を含むように改変され、一方は、エクソソームタンパク質またはエクソソームタンパク質の改変体もしくは断片をコードし、他方は、ペイロードをコードする。
【0096】
より具体的には、内腔操作エクソソームは、限定されないが、(1)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)、(2)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1)、及び、(3)脳酸可溶性タンパク質1(BASP1)を含む1つ以上のエクソソーム内腔タンパク質をコードする配列で形質転換された細胞から産生することができる。本明細書に記載の1つ以上のエクソソーム内腔タンパク質のいずれもが、プラスミド、ゲノムに挿入された外因性配列、または合成メッセンジャーRNA(mRNA)等の他の外因性核酸から発現させることができる。
【0097】
一部の実施形態では、1つ以上のエクソソーム内腔タンパク質は、全長、内因性形態をコードする外因性配列で形質転換された細胞において発現される。一部の実施形態では、このような外因性配列は、配列番号1のMARCKSタンパク質をコードする。一部の実施形態では、このような外因性配列は、配列番号2のMARCKSL1タンパク質をコードする。一部の実施形態では、このような外因性配列は、配列番号3のBASP1タンパク質をコードする。
【0098】
内腔操作エクソソームは、限定されないが、(1)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)、(2)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1)、及び、(3)脳酸可溶性タンパク質1(BASP1)を含む1つ以上のエクソソーム内腔タンパク質の断片をコードする配列で形質転換された細胞から産生することができる。一部の実施形態では、配列は、天然タンパク質のN末端から少なくとも5、10、50、100、200、または300アミノ酸を欠くエクソソーム内腔タンパク質の断片をコードする。一部の実施形態では、配列は、天然タンパク質のC末端から少なくとも5、10、50、100、200、または300アミノ酸を欠くエクソソーム内腔タンパク質の断片をコードする。一部の実施形態では、配列は、天然タンパク質のN末端及びC末端の両方から少なくとも5、10、50、100、200、または300アミノ酸を欠くエクソソーム内腔タンパク質の断片をコードする。一部の実施形態では、配列は、天然タンパク質の1つ以上の機能性または構造ドメインを欠くエクソソーム内腔タンパク質の断片をコードする。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号4~109のペプチドを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号13のペプチドを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列MGXKLSKKK(式中、Xは、アラニンまたは任意のアミノ酸である)(配列番号117)を有するペプチドを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspまたはGlu)でもない)の配列を有するペプチドを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質は、(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり;5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspまたはGlu)でもない)の配列を有するペプチドを含む。
【0099】
一部の実施形態では、内腔操作エクソソームは、1つ以上の異種タンパク質に融合しているエクソソームタンパク質またはその断片もしくは改変体をコードする配列で形質転換された細胞から産生することできる。一部の実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、エクソソームタンパク質またはその改変体、特に、その断片または多様体、のN末端に融合している。一部の実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、エクソソームタンパク質またはその改変体、特に、その断片または多様体、のC末端に融合している。一部の実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、エクソソームタンパク質またはその改変体、特に、その断片または多様体、のN末端及びC末端に融合している。一部の実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、哺乳動物タンパク質である。一部の実施形態では、1つ以上の異種タンパク質は、ヒトタンパク質である。
【0100】
一部の実施形態では、内腔操作エクソソームは、限定されないが、(1)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)、(2)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1)、及び、(3)脳酸可溶性タンパク質1(BASP1)を含む天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と同一かまたは類似の配列のポリペプチドをコードする配列で形質転換された細胞から産生される。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と50%同一である、例えば、配列番号1~3と50%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と60%同一である、例えば、配列番号1~3と60%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と70%同一である、例えば、配列番号1~3と70%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と80%同一である、例えば、配列番号1~3と80%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と90%同一である、例えば、配列番号1~3と90%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と95%同一である、例えば、配列番号1~3と95%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と99%同一である、例えば、配列番号1~3と99%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、天然エクソソーム内腔タンパク質の全長または断片と99.9%同一である、例えば、配列番号1~3と99.9%同一である。
【0101】
一部の実施形態では、細胞から産生された内腔操作エクソソームは、脳酸可溶性タンパク質1(BASP1)の断片と同一かまたは類似の配列のポリペプチドを含む。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の全長または断片と50%同一であり、例えば、配列番号4~109と50%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の全長または断片と60%同一であり、例えば、配列番号4~109と60%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の全長または断片と70%同一であり、例えば、配列番号4~109と70%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の全長または断片と80%同一であり、例えば、配列番号4~109と80%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の全長または断片と90%同一であり、例えば、配列番号4~109と90%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の全長または断片と95%同一であり、例えば、配列番号4~109と95%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の全長または断片と99%同一であり、例えば、配列番号4~109と99%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の全長または断片と99.9%同一であり、例えば、配列番号4~109と99.9%同一である。一部の実施形態では、該ポリペプチドは、BASP1の断片と100%同一であり、例えば、配列番号4~109と100%同一である。
【0102】
エクソソームの特性決定
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法はさらに、各収集画分に含有されるエクソソームを特性決定するステップを含む。一部の実施形態では、エクソソームの内容物を、研究及び特性決定のために抽出することができる。一部の実施形態では、限定されないが、エクソソームは、サイズ、形状、形態、または分子組成、例えば、核酸、タンパク質、代謝産物、及び脂質を含むメトリックにより単離及び特性決定される。
【0103】
エクソソームの内容物の測定
エクソソームは、タンパク質、ペプチド、RNA、DNA、及び脂質を含み得る。全RNAは、酸性フェノール:クロロホルム抽出を使用して抽出することができる。次に、RNAは、全RNAを含有するsmall-RNAを回収するという条件下で、またはmRNA等のより長いRNA種から200ヌクレオチド長未満のsmall RNA種を分離するという条件下で、ガラス繊維フィルターを使用して精製することができる。RNAが少量で溶出されるため、アルコール沈殿ステップは、RNAの単離に必要とされないことがある。
【0104】
エクソソーム組成物は、限定されないが、トランスクリプトミックス、配列決定、プロテオミックス、質量分析、またはHP-LCを含む当該技術分野で既知の方法により評価されてもよい。
【0105】
(RNA及びDNAを含む)単離されたエクソソームに関連するヌクレオチドの組成は、当業者らに周知の様々な技術(例えば、定量的または半定量的RT-PCR、ノーザンブロット分析、溶液ハイブリダイゼーション検出)を使用して測定することができる。特定の実施形態では、少なくとも1つのRNAのレベルは、一連の標的オリゴデオキシヌクレオチドを提供するために、エクソソーム組成物からRNAを逆転写すること、エクソソーム組成物のハイブリダイゼーションプロファイルを提供するために、標的オリゴデオキシヌクレオチドを1つ以上のRNA特異的プローブオリゴヌクレオチド(例えば、RNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイ)にハイブリダイズすること、エクソソーム組成物ハイブリダイゼーションプロファイルを、対照試料から生成されたハイブリダイゼーションプロファイルと比較することにより測定される。対照試料と対比した試験試料中の少なくとも1つのRNAのシグナルの変化は、RNA組成物を示す。
【0106】
さらに、マイクロアレイは、既知のRNA配列から生成された遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブから調製することができる。このアレイは、各RNAに対する2つの異なるオリゴヌクレオチドプローブを含有し得、一方は、活性な成熟配列を含有し、他方は、RNAの前駆体(例えば、miRNA及び初期miRNA)に特異的である。アレイは、ヒトオルソログとわずか数塩基異なる1つ以上のマウス配列等の対照も含有し得、これは、ハイブリダイゼーションストリンジェントな条件の対照として機能し得る。両方の種に由来のtRNA及び他のRNA(例えば、rRNA、mRNA)は、マイクロチップ上にプリントすることもでき、これは、特定のハイブリダイゼーションの比較的安定した内部の陽性対照を提供する。非特異的ハイブリダイゼーションの1つ以上の適切な対照も、マイクロチップ上に含まれ得る。この目的のために、配列は、既知のRNAと相同性がないことに基づいて選択される。
【0107】
マイクロアレイは、当該技術分野で既知の技術を使用して作製することができる。例えば、適当な長さ、例えば、40ヌクレオチド、のプローブオリゴヌクレオチドは、C6位で5’-アミン改変し、市販のマイクロアレイシステム、例えば、GeneMachine OmniGrid(商標)100 Microarrayer及びAmersham
CodeLink(商標)を使用して活性化スライド上にプリントする。標的RNAに対応する標識cDNAオリゴマーを、標識プライマーを用いて標的RNAを逆転写することにより調製する。第1の鎖合成の後、RNA/DNAハイブリッドは、RNA鋳型を分解するように変性させる。次に、ハイブリダイゼーション条件下、例えば、6倍のSSPE/30%のホルムアミド、25℃、18時間で、このように調製された標識された標的cDNAをマイクロアレイチップにハイブリダイズし、続いて、0.75倍のTNT中37℃で40分間洗浄する。固定されたプローブDNAが試料中の相補的な標的cDNAを認識するアレイ上の位置で、ハイブリダイゼーションが生じる。標識された標的cDNAは、結合が生じたアレイ上の正確な位置を示し、自動検出及び定量が可能となる。アウトプットは、ハイブリダイゼーション事象のリストからなり、これは、エクソソーム調製物中の特定のcDNA配列の相対存在量、従って、対応する相補的RNAの相対存在量を示す。一実施形態に従い、標識cDNAオリゴマーは、ビオチン標識cDNAであり、ビオチン標識プライマーから調製される。次に、マイクロアレイは、例えば、ストレプトアビジン-Alexa647コンジュゲートを使用したビオチン含有転写産物の直接的検出により処理され、従来のスキャニング法を利用してスキャンされる。アレイ上の各スポットの画像強度は、エクソソーム中の対応するRNAの存在量に比例する。
【0108】
データマイニング作業は、チップの走査、信号収集、画像処理、正規化、統計学的処理、及びデータ比較、ならびに経路分析を含む生物情報学により達成される。このように、マイクロアレイは、高いスループット能で、数百、数千のポリヌクレオチドを同時にプロファイリングすることができる。mRNA発現のマイクロアレイプロファイリング分析は、基礎研究において遺伝子発現研究に有益なデータをうまく提供している。そして、技術はさらに、製薬産業及び臨床診断において実践されている。利用可能になるmiRNAデータの量の増加及び遺伝子制御におけるmiRNAの重要性についての証拠の蓄積に伴い、マイクロアレイは高スループットmiRNA研究に有用な技術となっている。ポリヌクレオチドプローブを利用するmiRNAレベルの分析は同様に、様々な物理的フォーマットにおいて実施することができる。例えば、マイクロタイタープレートの使用または自動操作は、多数の試験試料の処理を容易にするために使用することができる。
【0109】
エクソソームのサイズの測定
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、精製された画分に含まれるエクソソーム及び/またはエクソソームの集団のサイズを測定することを含む。一部の実施形態では、エクソソームサイズは、最長の測定可能な寸法として測定される。一般に、エクソソームの最長の全体寸法は、直径とも称される。
【0110】
エクソソームサイズは、当該技術分野で既知の種々の方法、例えば、ナノ粒子トラッキング解析、多角度光散乱、単一角度光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー、超遠心分析、流動場分離法、レーザー回析、可変抵抗パルスセンシング、または動的光散乱法を使用して測定することができる。
【0111】
エクソソームサイズは、動的光散乱法(DLS)及び/または多角度光散乱検出器(MALS)を使用して測定することができる。エクソソームのサイズを測定するDLS及び/またはMALSを使用する方法は、当業者らに既知であり、ナノ粒子トラッキングアッセイ(NTA、例えば、Malvern Nanosight NS300ナノ粒子トラッキングデバイスを使用する)を含む。特定の実施形態では、エクソソームサイズは、Malvern NanoSight NS300を使用して決定される。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソームは、NTA(例えば、Malvern NanosightNS300を使用する)で測定した約20~1000nmの最長寸法を有する。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソームは、NTA(例えば、Malvern
NanosightNS300を使用する)で測定した約40~1000nmの最長寸法を有する。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの90%が、NTA(例えば、Malvern Nanosight NS300を使用する)で測定した約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの95%が、NTA(例えば、Malvern Nanosight NS300を使用する)で測定した約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの99%が、NTA(例えば、Malvern Nanosight NS300を使用する)で測定した約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの90%が、NTA(例えば、Malvern Nanosight NS300を使用する)で測定した約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの95%が、NTA(例えば、Malvern Nanosight NS300を使用する)で測定した約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの99%が、NTA(例えば、Malvern Nanosight NS300を使用する)で測定した約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。
【0112】
エクソソームサイズは、可変抵抗パルスセンシング(TRPS)を使用して測定することができる。特定の実施形態では、TRPSで測定されたエクソソームサイズは、iZON qNANO Goldを使用して決定される。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソームは、TRPS(例えば、iZON qNano Goldを使用する)で測定された約20~1000nmの最長寸法を有する。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソームは、TRPS(例えば、iZON qNano Gold)で測定された約40~1000nmの最長寸法を有する。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの90%が、TRPS(例えば、iZON qNano
Goldを使用する)で測定された約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの95%が、TRPS(例えば、iZON qNano Goldを使用する)で測定された約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの99%が、TRPS(例えば、iZON qNano Goldを使用する)で測定された約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの90%が、TRPS(例えば、iZON qNano Goldを使用する)で測定された約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの95%が、TRPS(例えば、iZON qNano Goldを使用する)で測定された約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの99%が、TRPS(例えば、iZON qNano Goldを使用する)で測定された約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。
【0113】
エクソソームサイズは、電子顕微鏡を使用して測定することができる。一部の実施形態では、エクソソームサイズを測定するために使用される電子顕微鏡法は、透過型電子顕微鏡法である。特定の実施形態では、エクソソームサイズを測定するために使用される透過型電子顕微鏡は、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWINである。電子顕微鏡を使用してエクソソームサイズを測定する方法は、当業者らに周知であり、任意のこのような方法は、エクソソームサイズを測定するのに適切であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソームは、走査電子顕微鏡(例えば、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWIN走査電子顕微鏡)で測定された約20~1000nmの最長寸法を有する。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソームは、走査電子顕微鏡(例えば、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWIN走査電子顕微鏡)で測定された約40~1000nmの最長寸法を有する。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの90%が、走査電子顕微鏡(例えば、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWIN走査電子顕微鏡)で測定された約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの95%が、走査電子顕微鏡(例えば、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWIN走査電子顕微鏡)で測定された約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの99%が、走査電子顕微鏡(例えば、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWIN走査電子顕微鏡)で測定された約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの90%が、走査電子顕微鏡(例えば、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWIN走査電子顕微鏡)で測定された約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの95%が、走査電子顕微鏡(例えば、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWIN走査電子顕微鏡)で測定された約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。他の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの99%が、走査電子顕微鏡(例えば、Tecnai(商標)G2 Spirit BioTWIN走査電子顕微鏡)で測定された約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。
【0114】
個々のエクソソームのサイズは、ナノフローサイトメトリーで粒子ごとに決定することができる。一部の実施形態では、ナノフローサイトメーターは、Flow NanoAnalyzer(NanoFCM,Inc.;Xiamen、中国)である。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソームは、ナノフローサイトメトリー(例えば、Flow NanoAnalyzerを使用する)で測定して約20~1000nmの最長寸法を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソームは、ナノフローサイトメトリー(例えば、Flow NanoAnalyzerを使用する)で測定して約40~1000nmの最長寸法を有する。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの90%が、ナノフローサイトメトリー(例えば、Flow NanoAnalyzerを使用する)で測定して約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの95%が、ナノフローサイトメトリー(例えば、Flow NanoAnalyzerを使用する)で測定して約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの99%が、ナノフローサイトメトリー(例えば、Flow NanoAnalyzerを使用する)で測定して約20~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの90%が、ナノフローサイトメトリー(例えば、Flow NanoAnalyzerを使用する)で測定して約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの95%が、ナノフローサイトメトリー(例えば、Flow NanoAnalyzerを使用する)で測定して約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載のエクソソーム集団は、該エクソソームの99%が、ナノフローサイトメトリー(例えば、Flow NanoAnalyzerを使用する)で測定して約40~1000nmの最長寸法を有する集団を含む。
【0115】
エクソソームの電荷密度の測定
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、精製された画分に含まれるエクソソーム及び/またはエクソソームの集団の電荷密度を測定することを含む。一部の実施形態では、電荷密度は、電位差滴定、陰イオン交換、陽イオン交換、等電点電気泳動、ゼータ電位、キャピラリー電気泳動、キャピラリーゾーン電気泳動、またはゲル電気泳動で測定される。
【0116】
エクソソームタンパク質の密度の測定
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、エクソソーム表面上のエクソソームタンパク質の密度を測定することを含む。表面密度は、単位面積質量、面積当たりのタンパク質の数、エクソソーム当たりの分子の数または分子の強度、タンパク質のモル量、等として計算または提示することができる。表面密度は、当該技術分野で既知の方法により、例えば、バイオレイヤー干渉法(BLI)、FACS、ウェスタンブロッティング、蛍光(例えば、GFP融合タンパク質)検出、ナノ-フローサイトメトリー、ELISA、alphaLISA、及び/またはタンパク質ゲル上のバンドを測定することによるデンシトメトリーを使用することにより、実験的に測定することができる。
【実施例0117】
以下の実施例は、本発明を作成及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者らに提供するために記載され、本発明者らが自己の発明とみなすものの範囲を限定することを意図するものではなく、それらは、以下の実験が実施された全てまたは唯一の実験であることを表すことを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関し、正確性を確保する取り組みがなされているが、実験的誤差及び偏差を考慮に入れるべきである。別途指示のない限り、部は、重量部であり、分子量は、重量平均分子重量であり、温度は、摂氏温度であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。標準的な略語、例えば、bp:塩基対(複数可)、kb:キロ塩基(複数可)、pl:ピコリットル(複数可)、sまたはsec:秒(複数可)、min:分(複数可)、hまたはhr:時間(複数可)、aa:アミノ酸(複数可)、nt:ヌクレオチド(複数可)等を使用することができる。
【0118】
本発明の実践は、別途指示のない限り、当該分野の技術範囲内で、タンパク質化学、生化学、組み換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法を用いるであろう。このような技術は、文献において十分に説明される。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993);AL.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989);Methods In Enzymology(S.Colowick
and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.);Remington’s Pharmaceutical Sciences,21th
Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,2005);Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(l992)を参照のこと。
【0119】
実施例1:新規エクソソームタンパク質の同定
エクソソームの収集
9日後に、エクソソームをHEK293 SF細胞の高密度懸濁培養物の上清から収集した。上清を濾過し、陰イオン交換クロマトグラフィーにより分画し、塩化ナトリウムの段階勾配で溶出させた。タンパク質濃度が最も高いピーク画分は、エクソソーム及び夾雑細胞構成成分を含有した。ピーク画分を分離し、さらに超遠心分離によりOptiprep(商標)密度勾配で分画した。
【0120】
Optiprep(商標)勾配では、SW 41 Tiローター用の12mLのUltra-Clear(344059)チューブ中の45%のOptiprep(商標)4mL、30%のOptiprep(商標)3mL、22.5%のOptiprep(商標)2mL、17.5%のOptiprep(商標)2mL、及び1mLのPBSを用いて、4段滅菌勾配を調製した。エクソソーム画分を分離するために、エクソソーム画分を、Optiprep(商標)勾配に添加し、4℃で16時間200,000×gで超遠心分離した。超遠心分離により、エクソソームを含有すると知られている上部画分、中密度の細胞デブリを含有する中間画分、ならびに高密度凝集体及び細胞デブリを含有する下部画分がもたらされた(
図1)。次に、エクソソーム層をチューブの上部約3mLから穏やかに収集した。
【0121】
エクソソーム画分を、38.5mLのウルトラクリア(344058)チューブ中で約32mLのPBSに希釈し、133,900×g、4℃で3時間超遠心分離して、精製エクソソームをペレット化した。次に、ペレット化エクソソームを、最小容量のPBS(約200μL)に再懸濁し、4℃で保管した。
【0122】
LC-MS/MS分析のための試料調製
エクソソームに特異的なタンパク質を決定するために、Optiprep(商標)勾配の上部画分及び下部画分を、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析により分析した。分析前に、2つの試料の総タンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)アッセイで決定し、この後、各試料をPBS緩衝液で125μg/mLに適切に希釈した。次に、等量のエクソソーム溶解緩衝液(60mMのトリス、400mMのGdmCl、100mMのEDTA、20mMのTCEP、1.0%のトリトンX-100)を含有する別の1.5mLの微量遠心チューブに、50.0μLの各試料を添加し、その後、1.0%のトリトンX-100溶液2.0μLを移した。次に、全ての試料を55℃で60分間インキュベートした。
【0123】
1250μLのエタノールを-20℃で添加することにより、タンパク質の沈殿を実施した。効率を改善するために、試料を激しくボルテックスし、次に、水浴で5分間超音波処理した。室温にて15,000gで5分間遠心分離することにより、沈殿した材料をペレット化した。上清をデカントし、窒素ガスを使用して、ペレット化物質を完全に乾燥させた。ペレットを、30.0μLの消化緩衝液(30mMのトリス、1.0MのGdmCl、100mMのEDTA、50mMのTCEP、pH8.5)に再懸濁し、これはさらに、ジスルフィド結合を還元した。5.0μLのアルキル化溶液(375mMのヨードアセトアミド、50mMのトリス、pH8.5)を添加し、得られた溶液を室温、暗所で少なくとも30分間インキュベートすることにより、遊離システイン残基をアルキル化した。
【0124】
インキュベーション後に、50mMのトリス、pH8.5、30.0μLを使用して、各試料を希釈し、2.0μgのトリプシンを添加することにより、タンパク質分解消化を開始した。全ての試料を混合し、次に、37℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、10%のギ酸5.0μLを添加することにより、トリプシン活性を停止させた。LC-MS/MSによる分析の前に、Pierce C18スピンカラムを使用して、各試料を脱塩した。このプロセスの最後に、各試料を乾燥させ、0.1%のギ酸を含む95:5の水:アセトニトリル75.0μLで再構成し、分析のためにHPLCバイアルに移した。
【0125】
LC-MS/MS分析
試料を、UltiMate 3000 RSCLnano(Thermo Fisher Scientific)低流量クロマトグラフィーシステムに注入し、2.500μL/分の流量のローディング移動相(MPL:95%の水、5%のアセトニトリル、0.1%のギ酸)を使用したAcclaim PepMap 100 C18トラッピングカラム(75μmx2cm、3μm粒径、100Å孔径、Thermo Fisher Scientific)に、トリプシンペプチドをロードした。EASY-Spray LC C18分析用カラム(75μmx25cm、2μmの粒径、100Å孔径、Thermo Fisher Scientific)に、300nL/分の流量の移動相A(MPA:水、0.1%のギ酸)及び移動相B(MPB:アセトニトリル、0.1%のギ酸)の勾配で、ペプチドを溶出させて、分離した。溶出に使用される段階的な勾配は、5%のMPBで開始し、それをローディング中に15分間保持した。次に、パーセンテージMPBを、30分間かけて5~17%に、再度45分間かけて17~25%に、最後に5分間かけて25~40%に増加させた。90%のMPBに5分間かけて増加させ、次に、そこに9分間保持することにより、最も疎水性の高い種を取り出した。方法の合計実行時間は、130分であり、カラムの再平衡化に十分な時間を確保した。キャリーオーバーを最小限にするために、洗浄サイクルを分析サイクルの間に実施した。
【0126】
Q Exactive Basic(Thermo Fisher Scientific)質量分析計を用いて、質量分析を実施した。前駆体イオン質量スペクトルを、70,000の分解能で400~1600Daのm/z範囲にわたって測定した。10の最も強力な前駆体イオンを選択し、27の衝突エネルギーを使用して、HCD細胞中で断片化し、MS/MSスペクトルを、35,000の分解能で200~2000Daのm/z範囲にわたって測定した。2~4の電荷状態を有するイオンを、断片化のために選択し、動的排除時間を30秒に設定した。14の一般的なポリシロキサンを含有する排除リストを利用して、既知の夾雑物質の誤同定を最小限に抑えた。
【0127】
データ処理
最初に、Proteome Discovererソフトウェア(バージョン2.1.1.21、Thermo Fisher Scientific)及び標的デコイPSMバリデーターと組み合わせたSequest HTアルゴリズムを使用して、タンパク質を同定及び定量(標識不含)した。完全Uniprotホモサピエンス(分類9606:127,783エントリー)またはSwiss-Protホモサピエンス(分類9606バージョン2017-05-10:42,153エントリー)参照データベースのいずれか、ならびにE1aタンパク質(7エントリー)を含有するカスタムUniprotデータベースに対して、検索を実施した。以下の検索パラメータ:酵素、トリプシン;最大2の未消化サイト数;6残基の最小ペプチド長;10ppmの前駆体質量許容値;及び0.02Daの断片質量許容値を使用した。検索は、特異的な動的改変(Mの酸化;NまたはQの脱アミド化;S、T、またはYのリン酸化;ペプチド末端Eのピログルタミル化;及びタンパク質N末端のアセチル化)ならびに静的改変(Cのカルバミドメチル化)も含んだ。
【0128】
標的デコイPSMバリデーターでは、Scaffoldソフトウェア(バージョン4.8.2、Proteome Software Inc.)を使用してデータを再度検索したので、最大デルタCnならびに厳密及び緩和の両方の標的偽発見率(FDR)を1に設定した。Scaffoldでは、X!タンデムオープンソースアルゴリズムを使用して、データをさらに検索して99.0%のタンパク質閾値、最小2つのペプチド、及び95%のペプチド閾値を使用してタンパク質を同定した。
【0129】
新規エクソソーム特異的タンパク質の同一性を決定するために、Optiprep(商標)勾配の上部エクソソーム画分に見出されたタンパク質対下部画分中のものについて、全ペプチドスペクトルマッチ(PSM)を比較した。
図2に示されるように、上部画分タンパク質(Y軸)及び下部画分タンパク質(X軸)の間に弱い相関があった。点線より上にプロットされたタンパク質は、エクソソームで富化されたタンパク質を表すが、点線より下のものは、夾雑物が富化されたタンパク質を表す。重要なことに、膜貫通ドメインを欠いた同定された多数のタンパク質があり、これは、(1)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)、(2)ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質様1(MARCKSL1)、及び、(3)脳酸可溶性タンパク質1(BASP1)を含むエクソソーム画分中で非常に富化されていた。
図3~5のトリプシンペプチドカバレッジマップに示されるように、質量分析試験は、MARCKS(
図3)、MARCKSL1(
図4)、及びBASP1(
図5)の広範なカバレッジをもたらした。これらのタンパク質はいずれもが膜貫通ドメインを有すると予測されないので、エクソソームの内腔で可溶性タンパク質として富化されることが示唆される。共に、これらの結果は、操作エクソソームを生成する際のペイロード足場として有用であり得る精製されたエクソソーム集団に富化されている多数の内腔タンパク質があることを示す。
【0130】
実施例2:内腔タンパク質発現の検証
質量分析研究で同定されたエクソソーム特異的タンパク質がエクソソームの内腔で高度に発現されたことを確認するために、全細胞溶解物及びHEK293細胞由来の精製エクソソーム集団で、ウェスタンブロットを実施した。
図6Aに示されるように、細胞溶解物(左)及び精製エクソソーム(右)由来の等量の全タンパク質を、変性ポリアクリルアミドゲルにロードした。MARCKS(
図6B)、MARCKSL1(
図6C)、及びBASP1(
図6D)のウェスタンブロッティングは、細胞溶解物ではなくエクソソーム中で、新規の内腔タンパク質を表すバンドが容易に検出されることを示した。これは、これらのタンパク質がエクソソーム中で高度に富化されており、全エクソソーム溶解物中に視覚的に検出され得ることを示す。これらの内腔タンパク質がエクソソームで高度に発現及び富化されるという実証は、高レベルのこれらの新規タンパク質のいずれかに融合している異種タンパク質を含有する内腔改変エクソソームを生成する機会を提供する。
【0131】
実施例3:新規タンパク質を足場として使用した内腔搭載の検証
内腔の搭載足場としてのMARCKS、MARCKSL1、及び/またはBASP1の有用性を確認するために、タンパク質のそれぞれをGFPのN末端に融合させた。さらに、これらのタンパク質のそれぞれの最初の30アミノ酸をもGFPに融合させて、より短いタンパク質断片が、操作エクソソームへの搭載を引き起こし得るかどうかを決定した。GFPと融合しているCD81(十分に確立されたエクソソームマーカー)またはPDGFR(中程度のエクソソーム搭載効率を有する膜貫通タンパク質)を含有するように操作されたエクソソームを参照標準として使用した。
【0132】
発現構築物のそれぞれを含有する操作HEK293SF細胞を安定的に選択し、200mlの培養液中で高密度に成長させた。上清を収集し、実施例1に記載されるようなOptiprep(商標)密度勾配超遠心分離で精製した。得られたGFP含有エクソソームを、Synergy H1プレートリーダー(BioTek(登録商標))上の96ウェルフォーマットで測定した。
図7に示されるように、GFPと融合しているMARCKSの最初の30アミノ酸(「MARCKS(aa1~30)」)は、CD81-GFP(「CD81」)またはPDGFR-GFP(「pDisplay」)のいずれかのレベルを超えてエクソソームに搭載するには不十分であった。同様に、GFPに融合しているMARCKSL1の最初の30アミノ酸(「MARCKSL1(aa1~30)」)は、CD81-GFP(「CD81」)と比較して、エクソソームへの搭載を増加させるには不十分であったが、全長MARCKSL1-GFP融合体(「MARCKSL1」)はCD81-GFPよりも劇的に高いシグナルをもたらしたが、(
図8)。際立って対照的に、全長BASP1-GFP融合体(「BASP1」)及びGFPに融合しているBASP1の最初の30アミノ酸(「BASP1(aa1~30)」)の両方が、CD81-GFP(「CD81」)またはPDGFR-GFP(「pDisplay」))と比較して、非常に多いGFP搭載をもたらした(
図9)。これらの結果は、BASP1(全長またはN末端)及び全長MARCKSL1は、エクソソームカーゴタンパク質の内腔発現に適する足場であり得ることを示唆する。
【0133】
実施例4:内腔エクソソームペイロードを積載するのに十分な最小タンパク質配列の同定
実施例3の結果は、BASP1のN末端配列がエクソソームの内腔にタンパク質カーゴを搭載するのに十分であることを示唆する。この活性を有する最小のペプチド配列を決定するために、GFPのN末端に融合している様々なBASP1切断部分を生成すること及びエクソソーム中への搭載の程度を測定することにより、操作されたGFP搭載実験を行った。
図10は、この実験で使用された一連の融合タンパク質を示し、これは、BASP1配列の断片及び改変体、ウェスタンブロッティング検出用FLAGタグ、GFPの最初のいくつかのアミノ酸、ならびに領域のそれぞれの間のグリシン/セリンリンカーを示す。
【0134】
BASP1は、ミリストイル化されることが報告されており、エクソソーム内腔への局在化に関与し得る。BASP1搭載におけるミリストイル化の役割を試験するために、予測されたミリストリル化部分におけるグリシンからアラニンへの点変異をさらに、GFP搭載実験で試験した。2位の単一変異(配列pCB692)、3位(pCB693)、または二重変異(pCB694)が、BASP1 1~30(pCB540)と共に含まれ、BASP1の種々のトランケーションを含有する融合タンパク質(pCB683~691)と共に試験された。
【0135】
HEK293SF細胞をトランスフェクトし、ピューロマイシンの存在下で選択して、
図10の配列のそれぞれをコードするプラスミドを安定的に発現させ、エクソソームを実施例1に記載されるように精製した。精製されたエクソソームをナノフローサイトメトリー(Flow NanoAnlyzer、NanoFCM,Inc.)でGFP蛍光について分析し、GFP搭載の程度を決定した。
図11に示されるように、非トランスフェクト細胞(すなわち、GFPを欠く)由来のエクソソームは、非常に低いシグナル(WT EXO)を示した。同様に、BASP1 G2A-GFP(pCB692)またはBASP1 G2A/G3A-GFP(pCB694)を含有するエクソソームは、低いレベルのGFPシグナルを示したが、BASP1 G3A-GFP(pCB693)は、はるかに高いレベルを示し、これは、BASP1の2位のグリシンが、おそらく、ミリストイル化に起因して、エクソソームにBASP1断片を搭載するのに不可欠であることを示す。BASP1切断部分pCB683-689もまた、高レベルのGFPシグナルを示したが、より短い断片pCB690-691は、WT EXOに類似していた。これらの結果は、9アミノ酸断片であるpCB689が、非常に高いレベルでエクソソームの内腔にタンパク質カーゴを入れるのに十分であることを示す。
【0136】
図11に示される結果を確認するために、BASP1断片-GFPエクソソームをタンパク質ブロッティングで分析した。等量のタンパク質を、SDS-PAGE mini-PROTEAN(登録商標)TGX Stain-Free Gel(Bio-Rad、Inc.)に搭載して、全エクソソームタンパク質を測定した(
図12)。BASP1-GFP断片は、約30kDaのタンパク質ゲルのいくつかのレーンで検出可能であった(点線矢印)。この可視化方法は、タンパク質のトリプトファン残基への、ゲル中の蛍光分子の結合に依存するが、BASP1-GFP融合タンパク質のそれぞれには単一のトリプトファン残基しかなく、おそらく、各レーンのBASP1断片の存在量を過小評価している。エクソソームへのBASP1-GFPの搭載の公正な測定を達成するために、エクソソーム試料を含有するタンパク質ゲルをクーマシーブルー(Invitrogen SimplyBlue SafeStain)で染色した(
図13)。染色ゲルのバンドパターンは、BASP1-GFP融合タンパク質(点線矢印)の明確な同定を可能にし、各試料において等量の入力タンパク質を確認した。これは、
図12に示された結果と相関する。
【0137】
抗FLAG抗体(M2モノクローナル抗体、Millipore-Sigma)を用いるウェスタンブロッティングは、pCB540(アミノ酸1~30)及びpCB683~689中のBASP1-GFPの量が等しいことを示した(
図14)。これはさらに、BASP1が内腔エクソソームカーゴを搭載する能力を示す。より短い断片pCB690-691の抗FLAGシグナルは、著しく低減したか、または存在しなかった。BASP1
G2A-GFP(pCB692)またはBASP1 G2A/G3A-GFP(pCB694)も、シグナルを欠いていたが、BASP1 G3A-GFP(pCB693)は、pCB540と同様のレベルで発現された。これらの結果は、
図11のナノフローサイトメトリーのデータと一致し、pCB689がエクソソームにタンパク質カーゴを搭載するのに十分であることを確認する。確立されたエクソソームタンパク質であるAlixに対する抗体を用いるウェスタンブロッティングは、全ての試料で同等のシグナルを示した。これは、BASP1-GFPの過剰発現が内因性エクソソームタンパク質の発現パターンを攪乱しなかったか、または、別様にエクソソームの生合成または組成を攪乱しなかったことを示す(
図15)。共に、これらの結果は、異種タンパク質との融合体として、9アミノ酸タグ(MGGKLSKKK-配列番号13)を発現させ、エクソソームの内腔へのタンパク質の局在化を駆動することができることを示す。さらに、配列の2位がエクソソーム搭載に必要とされるが、配列の3位は省くことができる。従って、配列MGAKLSKKK(配列番号110)、または、より一般には、MGXKLSKKK(配列番号116)は、エクソソーム内腔に目的のタンパク質を搭載するために使用することもできる。
【0138】
上に示されるような、搭載を容易にする12アミノ酸トランケーション及び搭載を容易にすることができない6アミノ酸トランケーションの間の最小のBASP1アミノ酸配列を同定するために、FLAGタグ及びGFPに融合しているBASP1のN末端の個々のトランケーション変異体を生成し、HEK293SF細胞で安定的に発現させた(
図16A)。エクソソームを、上記のように安定した細胞培養物から精製した。7~12アミノ酸のBASP1配列は、エクソソームにGFPを搭載することが可能であるが、最初の6アミノ酸は、そうではなかった(
図16B)。これらのデータは、6位以降に少なくとも1つのリジン残基が、BASP1のN末端がエクソソームの内腔搭載に必要とされることを示す。
【0139】
BASP1の6位のセリンは、種間で且つMARCKS及びMARCKSL1で、高度に保存される。このアミノ酸がエクソソームへのカーゴの搭載に必要かどうかを判定するために、セリン6をアスパラギン酸(S6D、極性荷電置換)またはアラニン(S6A、小さな非極性置換)で置換する点変異体を含むBASP1 1~30-FLAG-GFPまたはBASP1 1~30-FLAG-GFPをコードする発現プラスミドで、HEK293SF細胞を安定的にトランスフェクトした。さらに、5位のリジンをグルタミン酸(L5Q)に変異させて、いくつかの膜関連タンパク質のミリストイル化、パルミトイル化、及び他の膜機能の調節におけるこの位置の潜在的な役割を試験した(Gottlieb-Abraham et al.,Mol.Biol.Cell.2016 Dec 1;27(24):3926-3936)(
図17A)。BASP1 S6Dは、エクソソームへのGFPの搭載を完全に抑制したが、S6Aは、搭載を変更しなかった。BASP1 L5Qは、内腔搭載にも影響せず、これは、6位の負電荷が搭載を阻害するが、5位の極性アミノ酸置換が十分に許容されることを示す(
図17B)。
【0140】
BASP1の最初の30アミノ酸は、上記で同定されたN末端リーダー配列、続いて、リジンリッチアミノ酸を含有する。MARCKS及びMARCKSL1のN末端がBASP1と同様にエクソソームに搭載し得るかどうかを理解するために、HEK293SF細胞を、MARCKS及びMARCKSL1の全長タンパク質またはFLAG-GFPに融合しているアミノ酸1~30で安定的にトランスフェクトした。精製されたエクソソームをSDS PAGE及びクーマシー染色で分析して、搭載の程度を決定した。全長MARCKS及びMARCKSL1は、エクソソームにGFPを搭載することができたが、アミノ酸1~30は、全長タンパク質よりも劣っていた。これは、搭載に必要なMARCKS及びMARCKSL1タンパク質の遠位領域に追加の構造または配列の特徴があることを示唆する(
図18)。MARCKS及びMARCKSL1の配列解析により、BASP1のN末端と潜在的な配列相同性を有する領域が明らかになった。MARCKSのアミノ酸152~173及びMARCKSL1の87~110は、フェニルアラニン及びセリン残基が散在したリジンリッチであり、リン酸化部位ドメイン(PSD)またはエフェクタードメイン(ED)であると予測される(
図19)。PSDドメインにMARCKSのアミノ酸1~3を融合するプラスミド構築物(MG-PSD)で、HEK293SF細胞を安定的にトランスフェクトした。エクソソームの搭載においてこれらの残基の役割を決定するために、予測されたミリストイル化部位(MA-PSD)ならびに6位(K6S及びK6A)で、個々の点変異を生成した(
図20A)。精製されたエクソソームのウェスタンブロット法は、BASP1 1~30の陽性対照と比較して、MG-PSDもMA-PSDもエクソソームに効率的に搭載することができないことを示した。興味深いことに、K6A及びK6S変異は、搭載の改善をもたらした。これは、6位の正電荷がエクソソームカーゴの搭載を妨げること、及び、MARCKSのPSDが内因性N末端配列を機能的に補完し得ることを示唆する(
図20B)。共に、これらの試験は、エクソソームにカーゴを搭載するのに十分ないくつかのモチーフの同定を可能にした(
図21)。
【0141】
最も狭いモチーフであるモチーフ1は、(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)(配列番号118)のタンパク質配列を可能にし、各括弧文字または文字のグループは、アミノ酸位置であり、さらに、5位は、正荷電アミノ酸(K/R/H)とすることができず、6位は、負荷電アミノ酸(D/E)とすることができない。モチーフ1のサブモチーフは、タンパク質配列:(M)(G)(G)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(A)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(G/A/S)(K)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(G/A/S)(Q)(L/F/S/Q)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(F)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(S)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(Q)(S/A)(K)(K)、(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(S)(K)(K)、及び(M)(G)(G/A/S)(K/Q)(L/F/S/Q)(A)(K)(K)を含むが、これらに限定されず、5位は、正荷電アミノ酸(K/R/H)とすることができず、6位は、負荷電アミノ酸(D/E)とすることができない。
【0142】
より広いモチーフであるモチーフ2は、(M)(G)(π)(ξ)(Φ/π)(S/A/G/N)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、ξは、(Asn、Gln、Ser、Thr、Asp、Glu、Lys、His、Arg)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspまたはGlu)でもない)として表すことができる。
【0143】
最も広いモチーフであるモチーフ3は、(M)(G)(π)(X)(Φ/π)(π)(+)(+)(式中、各括弧位置は、アミノ酸を表し、πは、(Pro、Gly、Ala、Ser)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、Xは、任意のアミノ酸であり、Φは、(Val、Ile、Leu、Phe、Trp、Tyr、Met)からなる群より選択される任意のアミノ酸であり、(+)は、(Lys、Arg、His)からなる群より選択される任意のアミノ酸であって、5位は(+)ではなく、6位は(+)でも(AspもしくはGlu)でもない)として表すことができる。モチーフ1~3の全ての場合、配列は、合計アミノ酸長が7になるように、1つのアミノ酸だけ切断されてもよい(すなわち、モチーフ1~3で提示された順序のアミノ酸1~7からなる)。モチーフ1、2、または3(またはアミノ酸7を欠くこれらのモチーフ)のいずれに由来する配列のいずれも、全長BASP1またはBASP1の天然トランケーション配列と同程度または同等に、エクソソームにカーゴを搭載するために使用することができる。アミノ酸配列-構造-機能のこの深い分析は、産生細胞により生物学的に発現されたカーゴをエクソソームに向けるための要件に新たな洞察を提供する。
【0144】
実施例5:BASP1のN末端は、多様なクラスのタンパク質を搭載するのに十分である
実施例4の結果は、BASP1のN末端が、産生細胞から内腔に直接搭載されたエクソソームを生成するのに有用な操作足場であり得ることを示唆する。この仮説を試験するために、BASP1のアミノ酸1~30または1~10に融合しているコドン最適化された全長Cas9タンパク質を発現する安定したHEK293SF細胞を生成した(Zetsche B,Volz SE,Zhang F.A split-Cas9 architecture for inducible genome editing and
transcription modulation.Nat Biotechnol.2015 Feb;33(2):139-42に記載されるように)。エクソソームを上記のように細胞培養物から精製し、抗Cas9抗体を使用したSDS-PAGE及びウェスタンブロッティングで分析した(Abcam;カタログ番号ab191468、クローン7A9-3A3)。
図22Aに示されるように、BASP1 1~30及び1~10の両方は、エクソソームにCas9を搭載するのに十分であった。組み換えCas9タンパク質をウェスタンブロットの陽性対照として使用した。ウェスタンブロッティング実験からの種々の量の組み換えCas9及びBASP1-Cas9エクソソームレーンのデンシトメトリー定量及び比較により、エクソソームに、1エクソソーム当たり4~5つのCas9分子が搭載されたことが明らかになった(
図22B)。質量が約160kDaであるこのCas9酵素は、上記のGFP実験と比較してカーゴサイズの大幅な増加を示す。
【0145】
BASP1のN末端への融合として搭載し得るカーゴタンパク質の多様性の追加検証として、オボアルブミンを、BASP1のアミノ酸1~10への融合体として、HEK293SF細胞中で安定的に発現させた(「BASP1(1~10)-OVA」)。第2の選択マーカーを使用して、同じプラスミド及びエクソソーム特異的表面糖タンパク質PTGFRN(「3xCD40L-PTGFRN」)に融合している三量体CD40Lをコードする第2のプラスミドで、別の細胞株を同時トランスフェクトした。エクソソームを2つのトランスフェクトされた細胞培養物から精製し、SDS-PAGE(
図23A)及び抗オボアルブミンウェスタンブロッティング(Abcam;カタログ番号ab17293、クローン6C8)で分析した(
図23B)。対照として、組み換えオボアルブミン(InvivoGen;Catalog番号vac-pova)を別のゲル中で滴定した。オボアルブミンは、単一の構築物としてBASP1のアミノ酸1~10に融合している時、または追加の過剰発現プラスミド(3xCD40L-PTGFRN)と組み合わせた時、エクソソームに堅固に搭載された。この結果は、エクソソームが、内腔カーゴ及び別の転写物からの同時表面カーゴ(例えば、PTGFRN)の両方を用いて、組み合わせて操作することができることを示す。
【0146】
治療エクソソームとの関連で有用であり得る別のクラスのタンパク質は、抗体及び抗体断片である。GFPを標的とする一本鎖ラクダ科動物ナノボディ(Caussinus E,Kanca O,Affolter M.Fluorescent fusion protein knockout mediated by anti-GFP nanobody.Nat Struct Mol Biol.2011 Dec 11;19(1):117-21に記載される)を、BASP1のアミノ酸1~10及びFLAGタグへの融合タンパク質(「BASP1(1~10)-ナノボディ」)またはFLAGタグのみへの融合タンパク質(「ナノボディ」)として、HEK293SF細胞で安定的に発現させた(
図24A)。精製されたエクソソームをSDS-PAGE及び抗FLAGウェスタンブロッティングで分析した。これは、ナノボディをBASP1のN末端に融合させた時、全搭載タンパク質の量が等しいナノボディの実質的な富化があったことを示す(
図24B)。これらの結果は、BASP1のN末端に由来する非常に短いタンパク質配列を使用する産生細胞で、多様なクラスのタンパク質カーゴをエクソソーム中に発現させ、パッケージ化することができることを示す。
【0147】
実施例6:BASP1のN末端を、エクソソームの内腔に核酸を搭載するために使用することができる
核酸、特に、RNA(例えば、mRNA、siRNA、miRNA)は、治療エクソソームの内腔に搭載されるべき治療カーゴの魅力的なクラスである。RNAのエクソソーム搭載は、細胞外環境中での分解からRNAを保護し得、搭載されたエクソソームは、さらなるレベルのエクソソーム操作、例えば、標的化構築物の表面発現、を介して特定の細胞及び/または組織に向けることができる。上で同定されたエクソソームタンパク質(またはタンパク質断片)が、mRNAが搭載されたエクソソームを生成するために使用することができるかどうかを理解するために、組み合わせの操作エクソソームを生成した。
図25で示されるように、BASP1のアミノ酸1~30を、FLAG及びファージタンパク質MCPの多様体の融合体として発現させた。MCPは、MS2と呼ばれるmRNAステムループを認識して、それに結合し、これは、mRNA及び他のRNAとの転写融合体として発現させ、それにより、MCP融合タンパク質及び目的のMS2融合RNA間の物理的会合を駆動することができる。変異解析により、MS2への親和性を増加させるMCPの2つの位置、すなわち29位でのバリンからイソロイシンへの置換(V29I;Lim
& Peabody,RNA.Nucleic Acids Res.1994 Sep 11;22(18):3748-52)及び55位でのアスパラギンからリジンへの置換(N55K;Lim et al.,J Biol Chem.1994 Mar 25;269(12):9006-10)を既に同定した。BASP1 1~30を、単量体または二量体MCP多様体に融合させ、各MCPは、V29Iまたは二重変異V29I/N55Kのいずれかであった。ルシフェラーゼレポーター構築物を、別のプラスミド由来の3つのMS2ステムループへの融合として発現された。ルシフェラーゼ-MS2(番号811)単独か、またはBASP1-MCP多様体(番号815、817、819、もしくは821)のそれぞれと組み合わせた5つの安定したHEK293SF細胞株が生成された(
図25)。追加の対照として、HEK293SF細胞をFLAGタグ付きBASP1 1~27で安定的にトランスフェクトした。エクソソームを単離し、あらゆる外部関連mRNAを除去するためにBenzonase(登録商標)で処理し、上記の方法に従って精製した。精製されたエクソソームをSDS-PAGE(
図26A)及び抗FLAGウェスタンブロッティング(
図26B)で分析した。これは、各エクソソーム調製物における等量の全タンパク質及び同等レベルのBASP1-FLAG融合体を示す。重要なことに、BASP1-MCP融合体は、MCPタンパク質を欠くBASP1 1~27
FLAG融合体と同等のレベルで発現した。これは、MCP単量体または二量体の添加が、エクソソームへのタンパク質のBASP1媒介性搭載を妨げないことを示す。
【0148】
BASP1-MCP及びルシフェラーゼ-MS2 mRNAを安定的に発現する細胞を単離し、全ルシフェラーゼmRNAをRT-qPCRで定量した(FWDプライマー:5’-TGGAGGTGCTCAAAGAGTTG-3’(配列番号119);REVプライマー:5’-TTGGGCGTGCACTTGAT-3’(配列番号120);プローブ:5’-/56-FAM/CAGCTTTCC/ZEN/GGGCATTGGCTTC/3IABkFQ/-3’(配列番号121))。非トランスフェクト細胞は、同等のレベルのルシフェラーゼを発現した811発現細胞の全てよりも低いレベルのルシフェラーゼを発現した(
図27A、上)。安定した細胞株のそれぞれから精製されたエクソソームをさらに、RT-qPCRで分析した。天然エクソソームは検出可能なレベルのルシフェラーゼMS2を有しないが、811のみを発現する細胞は検出可能であるが非常に低いレベルのルシフェラーゼMS2を有していた。重要なことに、BASP1-MCP融合タンパク質のそれぞれは、より大量のルシフェラーゼ-MS2 mRNAを含有した。これは、エクソソームへのmRNAの搭載を促進するMCP及びMS2間の結合の重要性を実証する(
図27A、下)。グループ間の相対mRNAの定量は、811単独でのBASP1-MCP融合物の全てについて30~60倍の富化を示した(
図27B)。二量体MCP
V29I/N55Kを含有したBASP1-MCP構築物821は、MS2 mRNAに対して最大の親和性を有すると予測され、実に、この実験では最大量のルシフェラーゼ-MS2を含有していた。これらの結果は、BASP1断片が、核酸を含む多様なカーゴをエクソソームの内腔に搭載するための堅牢で用途の広い足場タンパク質であることを示す。
【0149】
実施例7:BASP1、MARCKS、及びMARCKSL1は、表面装飾エクソソームを生成するために使用することができる
以前の実験の結果は、MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1の全長及びN末端領域が、内腔に搭載されたエクソソームを生成するために使用することができることを示す。さらにエクソソーム操作のためのこれらのタンパク質の可能性を調査するために、MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1のアミノ酸1~30、またはBASP1のアミノ酸1~10を、ホモ三量体として発現するCD40Lの内因性膜貫通領域に融合させた。リガンドは他の種の同族受容体と交差反応しないので、CD40Lのヒト及びマウス配列の両方に対する構築物を調製した(
図28)。CD40L発現構築物の1つで安定にトランスフェクトされたHEK293SF細胞から、エクソソームを精製し、マウス細胞内またはヒトB細胞内のいずれかでインキュベートした。エクソソーム上の投入CD40Lの量をCD40L ELISAで定量し(ヒトCD40Lの測定の場合、R&D Systems、カタログ番号DCDL40、ロット番号P168248、及びマウスCD40Lの測定の場合、Abcam、カタログ番号ab119517、ロット番号GR3218850-2を使用した)、B細胞マーカーCD19を使用して、B細胞を定量し、CD69に対して陽性のゲーティングされた細胞のパーセンテージにより、B細胞活性化を測定した。種適合培養物中のマウス(
図29A)またはヒト(
図29B)エクソソームCD40Lの用量滴定曲線は、構築物間で、粒子間基準で(以下の左のグラフ及び表)、またはCD40Lモル基準の相互に及び等量の組み換えタンパク質と比較した場合に(以下の右のグラフ及び表)、同等の活性を示した。同等の活性は、同様にCD40L構築物が単量体として発現された時にも観察され、高密度エクソソーム提示足場であるPTGFRNのN末端上に発現された三量体CD40Lよりもほんのわずかに効能が弱かった(例えば、国際特許出願第PCT/US2018/048026号を参照のこと)(
図29C)。これらの結果は、MARCKS、MARCKSL1、及びBASP1が、ヒト及び動物の用途で使用される種々のクラスの操作エクソソームの生成に有用な多様で堅牢な足場であることを示す。
【0150】
実施例8:多様な細胞型が、BASP1、MARCKS、及び/またはMARCKSL1を発現する
起源の異なる組織(HEK293:腎臓、HT1080:結合組織、K562:骨髄、MDA-MB-231:乳房、Raji:リンパ芽球)由来の細胞株を対数増殖期まで成長させ、HEK293細胞(化学的に定義された培地で成長させた)を除いて、エクソソーム枯渇血清が約6日間補充された培地に移し、これを。骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)を3Dマイクロキャリア上で5日間成長させ、無血清培地に3日間補充した。各細胞株の培養物の上清を単離し、上記のOptiprep(商標)密度勾配超遠心分離法を使用して、エクソソームを精製した。精製されたエクソソーム調製物のそれぞれを、上記のようにLC-MS/MSで分析し、ペプチドスペクトルマッチ(PSM)の数をBASP1、MARCKS、及びMARCKSL1、ならびに2つの広く研究されたエクソソームのタンパク質(CD81及びCD9)について定量した。テトラスパニンCD81及びCD9は、最も精製されたエクソソーム集団において検出可能であったが、一部の場合では、内腔エクソソームタンパク質以下であった(例えば、CD9をBASP1またはMARCKSL1と比較)(
図30)。新たに同定された内腔エクソソームマーカーが、異なる組織に由来するいくつかの無関係な細胞株から操作エクソソームを生成するための好適な融合タンパク質であり得ることを、この知見は示している。
【0151】
実施例9:BASP1を過剰発現する非ヒト細胞は、内腔操作エクソソームを産生する
実施例8の結果は、多数のヒト由来細胞が、BASP1及び実施例1で同定された他の新規エクソソームタンパク質を自然に発現することを示す。BASP1を汎用エクソソーム足場タンパク質として使用することができるかどうかを判断するために、FLAGタグ及びGFPに融合している全長BASP1(「BASP1-GFP-FLAG」)を発現するプラスミド、FLAGタグ及びGFPに融合しているBASP1のアミノ酸1~30(「BASP1(1~30)-GFP-FLAG」)を発現するプラスミド、またはFLAGタグ及びGFPに融合しているBASP1のアミノ酸1~8(「BASP1(1~8)-GFP-FLAG」)を発現するプラスミドで、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を安定的にトランスフェクトした。実施例1に記載の方法を使用して、野生型CHO細胞及び3つのBASP1プラスミドのうちの1つでトランスフェクトされたCHO細胞からエクソソームを精製した。
図31A~Bに示されるように、BASP1及びBASP1断片融合タンパク質は、CHO細胞中で効率よく過剰発現され、無染色PAGE(
図31A)及びFLAGに対する抗体を用いるウェスタンブロッティング(
図31B)で検出されるようにエクソソーム中に搭載された。この結果は、CHO細胞等の非ヒト細胞がヒトBASP1断片を過剰発現するエクソソームを産生し得ること、ならびに、この過剰発現が高密度でエクソソームの内腔にカーゴタンパク質を駆動し得ることを示す。この結果は、BASP1が、多くの異なる細胞型及び種から操作エクソソームを生成するための汎用足場タンパク質であることを示す。
【0152】
実施例10:内腔操作エクソソームの生成
内腔操作エクソソームを生成する産生細胞は、エクソソームタンパク質またはエクソソームタンパク質の改変体もしくは断片をコードする外因性配列を導入することにより作成される。エクソソームタンパク質は、上記の実施例4に開示のBASP1断片及びカーゴタンパク質を含む融合タンパク質である。エクソソームタンパク質をコードするプラスミドを、一過的にトランスフェクトして、エクソソーム内腔でエクソソームタンパク質の高レベル発現を誘導する。
【0153】
エクソソームタンパク質、エクソソームタンパク質の改変体もしくは断片をコードするポリヌクレオチド、または治療ペプチド、カーゴペプチド、もしくは標的化部分をコードする外因性配列を、産生細胞に安定的に形質転換して、内腔操作エクソソームをする。治療ペプチド、カーゴペプチド、または標的化部分をコードする外因性配列を、エクソソームタンパク質をコードするゲノム部位に挿入して、エクソソームタンパク質に結合している治療ペプチドまたはカーゴペプチドを含む融合タンパク質を生成する。改変されたエクソソームタンパク質をコードするポリヌクレオチドを、エクソソームタンパク質をコードするゲノム部位にノックインする。
【0154】
産生細胞株は、少なくとも2つのポリヌクレオチドを安定的にトランスフェクトすることにより生成され、それぞれは、エクソソームタンパク質、エクソソームタンパク質の改変体もしくは断片、または外因性ペプチド(例えば、標的化部分、治療ペプチド)をコードする。エクソソームタンパク質をコードするゲノム配列内のまたはその近くの複数のゲノム部位に、2つ以上の外因性配列を挿入して、複数の改変エクソソームタンパク質を含む内腔操作エクソソームを生成する。複数の改変されたエクソソームタンパク質のそれぞれは、エクソソームの内腔を標的とする。
【0155】
参照による組み込み
本出願で引用される、全ての出版物、特許、特許出願、及び他の文書は、それぞれ個々の出版物、特許、特許出願、または他の文書が個別に、あらゆる目的のために参照により組み込まれると示されるように、あらゆる目的で全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
等価物
本開示は、とりわけ、エクソソームにおける外因性タンパク質の富化に使用される改変外因性タンパク質及びペプチドを含有するエクソソームの組成物を提供する。本開示はまた、富化エクソソームを産生する方法(複数可)を提供する。種々の特定の実施形態が例示及び説明されているが、上の明細書は、制限的ではない。本発明(複数可)の趣旨及び範囲から逸脱することなく、種々の変更を行うことができることが理解されるであろう。本明細書の概説の際に、多くの変形形態が当業者らに明らかになるであろう。