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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015076
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/768 20060101AFI20240125BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01L21/90 S
H01L21/88 T
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200721
(22)【出願日】2023-11-28
(62)【分割の表示】P 2019090804の分割
【原出願日】2019-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】穂積 康彰
(57)【要約】
【課題】電極部分との密着性の高い保護層を備える半導体モジュールを提供する。
【解決手段】半導体モジュールは、半導体装置11と、ニッケル又は銅を含み、半導体装置11上に配置され、当該半導体装置11と電気的に接続する接合層14a、14bと、接合層14a、14b上に配置され、金を含むはんだ部17a、17bと、接合層14a、14bに直接配置され、接合層14a、14bの外周縁を覆う保護層16と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置(11)と、
前記半導体装置上に配置され、ニッケル又は銅を含み、当該半導体装置と電気的に接続する接合層(14a,14b)と、
前記接合層上に配置され、金を含むはんだ部(17a,17b)と、
前記接合層に直接配置され、前記接合層の外周縁を覆う保護層(15,16)と、
を備える半導体モジュール。
【請求項2】
前記はんだ部(17a,17b)の外周端縁は、前記保護層(15,16)の内周端縁と接している請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記はんだ部の外周端縁は、前記保護層の内周端縁より内側に位置している請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記はんだ部の外周端縁と、前記保護層の内周端縁との間には、前記接合層が露出している請求項3に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記接合層の前記保護膜を配置する部分の表面の算術平均粗さは、1μm以上且つ6μm以下である請求項1~4の何れか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記保護層は、ポリイミド又はポリアミドを含む請求項1~5の何れか一項に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
半導体装置上に、ニッケル又は銅を含み、前記半導体装置と電気的に接続する接合層を形成する工程と、
前記接合層上に、前記接合層の外周縁を除いて、金を含む酸化防止層を形成する工程と、
前記接合層の外周縁上に、保護層を形成する工程と、
前記酸化防止層が配置された前記接合層領域と、配線とを、はんだを用いて接合する工程と、
を含む半導体モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記酸化防止層を形成する工程は、
前記接合層上の全面に前記酸化防止層を形成する工程と、
前記接合層の外周縁上の前記酸化防止層を除去する工程と、
を含む請求項7に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記酸化防止層を形成する工程は、
前記酸化防止層の外周端縁を、前記保護層の内周端縁と同じ位置に形成する請求項7または8に記載の半導体モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記酸化防止層の外周端縁を、前記保護層の内周端縁より内側に形成する、
請求項7または8に記載の半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュール及び半導体モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を備えた半導体モジュールが用いられている。半導体モジュールは、半導体装置と、半導体装置を支持する絶縁基板とを備えており、半導体装置の電極には、半導体装置を外部と接続する配線がはんだ接合される。
【0003】
半導体モジュールは、半導体装置として、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はFWD(Free Wheeling Diode)等を有する。
【0004】
そこで、半導体モジュールは、使用環境を模擬した熱サイクル試験が行われて信頼性の評価が行われている。
【0005】
半導体モジュールにおいて、熱サイクルにより応力が働く部位として、半導体装置を外部と接続する配線がはんだ接合された電極を保護する保護層がある。
【0006】
半導体装置の電極と、電極に接続する配線とは、はんだを用いて接続される。そして、電極の周囲は、保護層で覆われる。保護層は樹脂により形成されており、保護層が接着している電極は金属であるので、両者は熱膨張の程度が異なる。
【0007】
半導体装置の電極は、半導体装置の回路と接続する接合層と、接合層上に配置され、接合層が酸化することを防止する酸化防止層を有する。
【0008】
例えば、接合層は、ニッケルで形成され、酸化防止層は、金で形成され、保護層はポリイミドで形成される。配線とはんだ接合された電極では、酸化防止層の部分は、保護層により覆われる。
【0009】
保護層として用いられるポリイミドは、酸化防止層である金との接着力が弱いので、半導体装置の熱サイクル試験を行うと、酸化防止層と保護層との接着面に応力が働いて、保護層が酸化防止層から剥離し、絶縁性が低下するおそれがあった。
【0010】
そこで、例えば、特許文献1は、保護層であるポリイミドと、電極であるアルミニウム膜との間に、ポリイミドとの接着力の強いアモルファスシリコン膜を介在させて、ポリイミドとアルミニウム膜との接着力を向上することを提案している。
【0011】
また、特許文献2は、保護層であるポリイミドと、電極であるアルミニウム膜との間に、ポリイミドとの接着力の強いヘキサメチルジシラン膜を介在させて、ポリイミドとアルミニウム膜との接着力を向上することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000-277512号公報
【特許文献2】特開2001-189309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1及び2が提案する技術は、半導体装置の電極において、ポリイミドと接着する材料が、アルミニウム以外の場合には、ポリイミドの密着性が低下するおそれがある。
【0014】
本明細書では、電極部分との接合強度の高い保護層を備える半導体モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書に開示する半導体モジュールの一形態によれば、半導体装置と、半導体装置上に配置され、ニッケル又は銅を含み、当該半導体装置と電気的に接続する接合層と、接合層上に配置され、金を含むはんだ部と、接合層に直接配置され、接合層の外周縁を覆う保護層と、を備える。
【0016】
この半導体モジュールでは、はんだ部の外周端縁は、保護層の内周端縁と接していることが好ましい。
【0017】
また、この半導体モジュールでは、はんだ部の外周端縁は、保護層の内周端縁より内側に位置していることが好ましい。
【0018】
特に、この半導体モジュールでは、はんだ部の外周端縁と、保護層の内周端縁との間には、接合層が露出していることが好ましい。
【0019】
また、この半導体モジュールでは、接合層の保護膜を配置する部分の表面の算術平均粗さは、1μm以上且つ6μm以下であることが好ましい。
【0020】
また、この半導体モジュールでは、保護層は、ポリイミド又はポリアミドを含むことが好ましい。
【0021】
また、本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法の一形態によれば、半導体装置上に、ニッケル又は銅を含み、半導体装置と電気的に接続する接合層を形成する工程と、接合層上に、接合層の外周縁を除いて、金を含む酸化防止層を形成する工程と、接合層の外周縁上に、保護層を形成する工程と、酸化防止層が配置された接合層領域と、配線とを、はんだを用いて接合する工程と、を含む。
【0022】
この半導体モジュールの製造方法では、酸化防止層を形成する工程は、接合層上の全面に酸化防止層を形成する工程と、接合層の外周縁上の酸化防止層を除去する工程と、を含むことが好ましい。
【0023】
この半導体モジュールの製造方法では、酸化防止層を形成する工程は、酸化防止層の外周端縁を、保護層の内周端縁と同じ位置に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
上述した本明細書に開示する半導体モジュールによれば、電極部分との接合強度の高い保護層を備える。
【0025】
また、上述した本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法によれば、電極部分との接合強度の高い保護層を備える半導体モジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(A)は、本明細書に開示する半導体モジュールの一実施形態の平面図であり、(B)は、X-X’線断面図である。
図2】接合層を説明する図である。
図3】本明細書に開示する半導体モジュールの変形例を示す図である。
図4】本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法の一実施形態の工程を示す図(その1)である。
図5】本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法の一実施形態の工程を示す図(その2)である。
図6】本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法の一実施形態の工程を示す図(その3)である。
図7】本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法の一実施形態の工程を示す図(その4)である。
図8】本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法の一実施形態の工程を示す図(その5)である。
図9】本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法の一実施形態の工程を示す図(その6)である。
図10】本明細書に開示する半導体モジュールの製造方法の一実施形態の工程を示す図(その7)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本明細書で開示する半導体モジュールの好ましい一実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0028】
図1(A)は、本明細書に開示する半導体モジュールの一実施形態の平面図であり、図1(B)は、X-X’線断面図である。
【0029】
半導体モジュール10は、半導体装置11と、半導体装置11を支持する絶縁基板12を備える。半導体モジュール10は、半導体装置11としてMOSFETを有する。半導体装置11には、半導体装置11を外部と電気的に接続する配線20a、20bがはんだ接合される。また、半導体モジュール10は、図示しない筐体に収容されていてもよい。なお、図1(A)では、配線の記載を省略している。
【0030】
半導体装置11は、装置本体11aと、ソース電極11bと、ゲート電極11cと、ドレイン電極11dを有する。ソース電極11b及びゲート電極11cは、装置本体11aの第1面s1に配置されており、ドレイン電極11dは、装置本体11aの第2面s2に配置される。
【0031】
また、半導体モジュール10は、第1面s1において、ソース電極11b及びゲート電極11cが配置されている以外の部分を覆う第1保護層15を有する。第1保護層15は、電気絶縁性を有し、例えば、ポリイミド又はポリアミドを用いて形成される。
【0032】
絶縁基板12は、半導体装置11を支持すると共に、半導体装置11が発生する熱を放熱する。絶縁基板12は、基板本体12aと、回路基板12bと、金属板12cを有する。
【0033】
基板本体12aは、電気絶縁性及び熱伝導性と共に、半導体装置11を支持する機械的強度を有する。基板本体12aは、例えば、窒化アルミニウム等のセラミックスを用いて形成される。
【0034】
回路基板12bは、はんだ層12dを介して、ドレイン電極11dと電気的に接続すると共に、半導体装置11を絶縁基板12に接合する。なお、回路基板12bは、図示しない配線と、ドレイン電極11dとを電気的に接続する銅板であってもよい。回路基板12bは、図示しない配線を介して半導体装置11の外部と電気的に接続する。
【0035】
金属板12cは、図示しない筐体等に接合されて、半導体モジュール10を筐体に固定すると共に、半導体モジュール10で発生した熱を筐体へ伝導する。金属板12cは、例えば、銅等の熱伝導性の高い金属を用いて形成される。
【0036】
基板本体12aの寸法は、半導体装置11の寸法に応じて適宜決定され得る。例えば、半導体装置11の寸法が縦10mm×横10mm×厚さ1mmの場合、基板本体12aの寸法を、縦30mm×横30mm×厚さ0.5mmとして、金属板12cの寸法を縦25mm×横25mm×厚さ1mmとしてもよい。
【0037】
半導体モジュール10は、半導体装置11のソース電極11bと配線20aとを電気的に接続する第1電極構造10aと、半導体装置11のゲート電極11cと配線20bとを電気的に接続する第2電極構造10bを備える。ソース電極11bは、外周が保護膜15に覆われており、保護膜15に覆われていない内周部は凹部となっている。ゲート電極11cも同様に、保護膜15に囲まれた凹部内に配置されている。ソース電極11b及びゲート電極11cは外周が保護膜15に覆われていても、覆われていなくても、どちらでも構わない。凹部の輪郭は円形を含めどのような形状でも構わないが、実用上は平面視にて矩形であることが好ましい。以降、凹部の輪郭が平面視にて矩形であるとして説明する。同様に、後述する接合層14a、接合層14bについても、円形を含めどのような形状でも構わないが、実用上は平面視にて矩形であることが好ましいので、以降、矩形であるとして説明する。
【0038】
次に、第1電極構造10aについて、以下に詳述する。第1電極構造10aは、接合層14aと、はんだ部17aを有する。接合層14aは、電気導電性を有し、ソース電極11bを介して、半導体装置11内と電気的に接続する。接合層14aは、平面視で矩形を有し、ソース電極11bの中央付近上に配置される。ソース電極11bは、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いて形成される。
【0039】
ソース電極11bの厚さは、3μm~6μmの範囲にあることが好ましい。ソース電極11bの厚さが3μm以上であることにより、導電体層としての電気的特性及び機械的強度を確保できる。また、ソース電極11bの厚さが6μm以上であると、ソース電極11bが反りを有する場合に、装置本体11aに対して応力を加えるおそれがある。
【0040】
第1電極構造10aの接合層14aは、ソース電極11b上に配置され、ソース電極11bと電気的に接続する。接合層14aは、ソース電極11bとはんだ部17aとがはんだ接合することを介在する。接合層14aは、平面視で矩形を有し、外周が保護膜15に覆われる。接合層14aは、ニッケル、ニッケル合金、銅又は銅合金を用いて形成される。
【0041】
図2に示すように、接合層14aは、外周縁に沿って配置される第1領域14a1と、第1領域14a1の内側に配置される第2領域14a2とを有する。半導体モジュール10では、第1領域14a1と第2領域14a2とは接している。つまり、第1領域14a1は接合層14aの外周縁に沿って配置される領域であり、また、第2領域14a2は第1領域14a1の内側の領域である。
【0042】
第1領域14a1は、後述する保護層16により覆われる領域である。第2領域14a2は、はんだ部17aが配置される領域である。
【0043】
第1領域14a1は、所定の幅を有し、接合層14aの外周縁に沿って配置される。第1領域14a1の幅は、30μm以上であることが、第2保護層16が接合層14aに対して十分な接合強度で接合する観点から好ましい。第1領域14a1の幅の上限値は、接合層14a又ははんだ部17aの寸法により適宜決定され得る。
【0044】
また、第1領域14a1の表面の算術平均粗さは、1μm以上且つ6μm以下であることが、後述する第2保護層16が第1領域14a1の表面の凹凸に嵌合することにより接合層14aと十分な接合強度で接合する観点から好ましい。
【0045】
接合層14aの厚さは、3μm~6μmの範囲にあることが好ましい。接合層14aの厚さが3μm以上であることにより、導電体層としての電気的特性及び機械的強度を確保できる。また、接合層14aの厚さが6μm以上であると、接合層14aが反りを有する場合に、半導体装置11に対して応力を加えるおそれがある。
【0046】
第1電極構造10aのはんだ部17aは、接合層14aの第2領域14a2上に配置されて、接合層14aと電気的に接続する。また、はんだ部17aは、接合層14aと配線20aとを電気的に接続する。はんだ部17aは、金を含むはんだを用いて形成される。また、はんだ部17aは、接合層14aとはんだ付けされる時に、接合層14aを形成する材料が混合した合金となっていてもよい。
【0047】
次に、第2電極構造10bについて、以下に詳述する。第2電極構造10bは、接合層14bと、はんだ部17bを有する。接合層14bは、電気導電性を有し、ゲート電極11cを介して、半導体装置11と電気的に接続する。接合層14bは、平面視で矩形を有し、ゲート電極11cと同じ輪郭を有する。ゲート電極11cは、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いて形成される。上述した第1電極構造10aのソース電極11bに対する厚さの説明は、ゲート電極11cに対しても適宜適用される。
【0048】
第2電極構造10bの接合層14bは、ゲート電極11c上に配置され、ゲート電極11cと電気的に接続する。接合層14bは、ゲート電極11cとはんだ部17bとがはんだ接合することを介在する。接合層14bは、平面視で矩形を有し、ゲート電極11cと同じ輪郭を有する。接合層14bは、ニッケル、ニッケル合金、銅又は銅合金を用いて形成される。
【0049】
図2に示すように、接合層14bは、外周縁に沿って配置される第1領域14b1と、第1領域14b1の内側に配置される第2領域14b2とを有する。
【0050】
第1領域14b1は、保護層16により覆われる領域である。第2領域14b2は、はんだ部17bが配置される領域である。
【0051】
上述した第1電極構造10aにおける接合層14aの第1領域14a1及び第2領域14a2に対する説明は、第2電極構造10bの第1領域14b1及び第2領域14b2に対して適宜適用される。
【0052】
また、上述した第1電極構造10aの接合層14aに対する厚さの説明は、第2電極構造10bの接合層14bに対しても適宜適用される。
【0053】
第2電極構造10bのはんだ部17bは、接合層14bの第2領域14b2上に配置されて、接合層14bと電気的に接続する。また、はんだ部17bは、接合層14bと配線20bとを電気的に接続する。はんだ部17bは、金を含むはんだを用いて形成される。また、はんだ部17bは、接合層14bとはんだ付けされる時に、接合層14bを形成する材料が混合した合金となっていてもよい。
【0054】
半導体モジュール10は、半導体装置11の第1面s1において、はんだ部17a、17bを除く領域を覆う第2保護層16を備える。
【0055】
第2保護層16は、第1電極構造10aにおける接合層14aの第1領域14a1上に直接配置され、接合層14aの外周縁を覆う。第2保護層16における第2領域14a2側の端縁16aは、第1領域14a1上に配置されており、はんだ部17aの端縁17a1と接している。つまり、第2保護層16の内周端縁とはんだ部17aの外周端縁と接している。図1(A)中にハッチングして示すように、第2保護層16は、第1領域14a1との接合面16a1により第1領域14a1の表面と接合(接着)している。接合面16a1は、はんだ部17aを囲むように環状の形状を有する。
【0056】
また、第2保護層16は、第2電極構造10bにおける接合層14bの第1領域14b1上に直接配置され、接合層14bの外周縁を覆う。第2保護層16における第2領域14b2側の端縁16bは、第1領域14b1上に配置されており、はんだ部17bの端縁17b1と接している。つまり、第2保護層16の内周端縁とはんだ部17bの外周端縁と接している。図1(A)中にハッチングして示すように、第2保護層16は、第1領域14b1との接合面16b1により第1領域14b1の表面と接合(接着)している。接合面16b1は、はんだ部17bを囲むように環状の形状を有する。
【0057】
第2保護層16は、電気絶縁性を有し、例えば、ポリイミド又はポリアミドを用いて形成される。
【0058】
上述した本実施形態の半導体モジュールによれば、第1電極構造及び第2電極構造のそれぞれの接合層と、第2保護層との接合強度が高いので、第2保護層が接合層から剥離することが防止される。これにより、第1電極構造及び第2電極構造が、第2保護層によって保護されると共に、電気絶縁性が確保されるので、半導体モジュールの信頼性が向上する。
【0059】
例えば、半導体モジュール10の温度変化等により半導体装置に反りが生じると、接合層の第1領域の表面と第2保護層との間にせん断応力が働く場合がある。第2保護層は、第1領域との接合面により第1領域の表面と接合(接着)しているので、第2保護層と接合層の第1領域との接合面の単位面積あたりに働くせん断力は小さいので、第2保護層は接合層の第1領域から剥離しにくい。
【0060】
次に、上述した本実施形態の半導体モジュールの変型例を、図3を参照しながら、以下に説明する。
【0061】
図3は、本明細書に開示する半導体モジュールの変形例を示す図である。本変型例の半導体モジュール10は、第1電極構造10aにおいて、第2保護層16における第2領域14a2側の端縁16aと、はんだ部17aの端縁17a1とは離間しており、両端縁の間に接合層14aが露出している。つまり、第2保護層16の内周端縁とはんだ部17aの外周端縁とは離間しており、両端縁の間に接合層14aが露出している。即ち、第1領域14a1と第2領域14a2とは離間している。
この時、接合層14aが露出した領域は、接合層14aが大気中に曝されて酸化されているため、はんだが濡れ拡がらない。
【0062】
半導体モジュール10の製造において、第2保護層16における第2領域14a2側の端縁16aと、はんだ部17aの端縁17a1とを離間するよう配置することは、つまり、第2保護層16の内周端縁とはんだ部17aの外周端縁とを離間するよう配置することで、第2保護層16又/及びはんだ部17aを形成する時の位置の精度に余裕をもたすことができる。これにより、製造工程の時間又はコストを低減できる。
【0063】
また、第2電極構造10bにおいて、第2保護層16における第2領域14b2側の端縁16bと、はんだ部17bの端縁17b1とは離間しており、両端縁の間に接合層14bが露出している。つまり第2保護層16の内周端縁とはんだ部17bの外周端縁とを離間するよう配置し、これにより、上述したのと同様の効果が得られる。本変型例のその他の構成は、上述した実施形態と同様である。
【0064】
次に、上述した半導体モジュールの製造方法の好ましい一実施形態を、図4図10を参照しながら、以下に説明する。
【0065】
まず、図4に示すように、ソース電極11b、ゲート電極11c及びドレイン電極11dを備える半導体装置11が準備される。ソース電極11b及びゲート電極11cの材料としては、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることができる。ソース電極11b及びゲート電極11cは、例えば、5μmとしてもよい。図4には、1つの半導体装置11のみが示されているが、半導体装置11は、一枚のウエハに複数の半導体装置11が配置された状態で準備される。以下の工程の説明は、一の半導体装置11に関して行われる、他の半導体装置に対しても同様の処理が行われる。
【0066】
次に、図5に示すように、第1保護層15が、半導体装置11上に形成されて、半導体構造体30が得られる。第1保護層15は、半導体装置11の第1面s1上において、ソース電極11b及びゲート電極11cを露出するように形成される。第1保護層15は、ソース電極11b及びゲート電極11cの外周を覆っても構わない。第1保護層15が、ソース電極11b及びゲート電極11cの外周を覆う場合と覆わない場合は、ソース電極11b及びゲート電極11cの大きさを考慮して適宜選択されて構わない。以降、ソース電極11bの外周が第1保護層15に覆われ、ゲート電極の外周は第1保護層15に覆われていない場合を示す。例えば、第1保護層15は、液状のポリイミド又はポリアミドが、半導体装置11の第1面s1上にソース電極11b及びゲート電極11cを露出するように塗布された後、加熱されて硬化することにより形成される。
【0067】
次に、図6に示すように、ソース電極11b上に接合層14aが形成され、ゲート電極11c上に接合層14bが形成される。接合層14a及び接合層14bは、例えば、無電解めっき等のめっき技術を用いて形成される。接合層14a及び接合層14bは、ニッケル、ニッケル合金、銅又は銅合金を用いて形成されることが好ましい。具体的には、接合層14a及び接合層14bは、無電解めっき技術を用いて、ニッケル-りん膜として形成されてもよい。接合層14a及び接合層14bの厚さは、例えば、5μmとしてもよい。
【0068】
次に、図7に示すように、接合層14a上に酸化防止層18aが形成され、接合層14b上に酸化防止層18bが形成される。酸化防止層18a及び酸化防止層18bは、接合層14a及び接合層14bが酸化することを防止する。酸化防止層18a及び酸化防止層18bは、例えば、無電解めっき等のめっき技術を用いて、金又は金合金の膜として形成される。酸化防止層18a及び酸化防止層18bの厚さは、0.025μm~0.1μmの範囲であることが好ましい。厚さが0.025μmであることにより、接合層14a及び接合層14bが酸化することを防止できる厚さが確保される。また、厚さが0.1μm以下であることにより、材料のコストを抑制すると共に厚さの均一性を確保できる。
【0069】
次に、図8に示すように、接合層14aの第1領域14a1上の酸化防止層18aが取り除かれて、接合層14aの第1領域14a1が露出する。また、接合層14bの第1領域14b1上の酸化防止層18bが取り除かれて、接合層14bの第1領域14b1が露出する。具体的には、半導体装置11の第1面s1上に接合層14aの第1領域14a1及び接合層14bの第1領域14b1のみを露出するように第1マスク(図示せず)が形成されて、第1マスクから露出している接合層14a及び接合層14bの部分が、エッチングされて除去される。エッチングとして、プラズマエッチング等のドライエッチング法又はウエットエッチング法を用いることができる。また、エッチングの代わりに、ブラスト処理を用いて、マスクから露出している接合層14a及び接合層14bの部分が取り除かれてもよい。また、レーザを走査して、接合層14aの第1領域14a1上の酸化防止層18aの部分と、接合層14bの第1領域14b1上の酸化防止層18bの部分を取り除いてもよい。
【0070】
上述したエッチングの条件、ブラスト処理で用いる粒子の粒径又はレーザの照射条件等を調整することにより、第1領域14a1又は第1領域14b1の表面の算術平均粗さを、1μm以上且つ6μm以下にすることが好ましい。これにより、第2保護層16が、第1領域14a1又は第1領域14b1の表面に形成された凸凹に嵌合して、第2保護層16との接合強度が高まる。
【0071】
次に、図9に示すように、接合層14aの第1領域14a1上に、接合層14aの外周縁を覆うように第2保護層16が形成され、接合層14bの第1領域14b1上に、接合層14bの外周縁を覆うように第2保護層16が形成される。第2保護層16は、接合層14aの第2領域14a2及び接合層14bの第2領域14b2のみが露出するように半導体装置11の第1面s1上に第1保護層15を覆うように形成される。ここで、第2保護層16は、酸化防止層18a及び酸化防止層18b上を覆わないように形成されることが好ましい。第2保護層16が、酸化防止層18a又は酸化防止層18b上を覆うと、後述するはんだ部17a、17bが、接合層14a、14bの第2領域14a2、14b2と接合し難くなるからである。
【0072】
第2保護層16は、例えば、以下のように形成され得る。第1の方法では、第2マスク(図示せず)が、酸化防止層18a及び酸化防止層18b上の第1マスクを覆うように形成される。ここで、第2マスクは、接合層14aの第1領域14a1における第2領域14a2側の一部、及び、接合層14bの第1領域14b1における第2領域14b2の一部の上を覆うように形成される。そして、第2マスクに覆われていない第1マスクが除去される。そして、酸化防止層18aの第2領域14a2及び酸化防止層18bの第2領域14b2が第1マスクにより覆われた状態で、液状のポリイミド又はポリアミドが、スピンコート法を用いて、半導体装置11の第1面s1上に塗布された後、加熱し硬化して形成されてもよい。加熱の条件として、例えば、350℃で1時間とすることができる。そして、第1マスクが酸化防止層18a及び酸化防止層18b上から除去される。
【0073】
第2の方法では、図9の工程で使用された第1マスクが除去された後、感光性のポリイミド又はポリアミドが半導体装置11の第1面s1上に塗布された後パターニングされて、仮硬化した第2保護層16が半導体装置11の第1面s1上に形成される。そして、仮硬化した第2保護層16が、加熱され本硬化して第2保護層16が形成されてもよい。
【0074】
第3の方法では、図9の工程で使用された第1マスクが除去された後、インクジェット法を用いて、液状のポリイミド又はポリアミドが、半導体装置11の第1面s1上の所定の領域に塗布された後、加熱され本硬化して第2保護層16が形成されてもよい。そして、一枚のウエハに形成された複数の半導体構造体30は、個々の半導体構造体30に切断される。
【0075】
次に、図10に示すように、半導体構造体30は、半導体装置11のドレイン電極11dが、はんだ層12dを介在させて、絶縁基板12の回路基板12b上に接合される。
【0076】
次に、図1(A)及び図1(B)に示すように、酸化防止層18aが配置された接合層14aの第2領域14a2と、配線20aとが、はんだを用いて電気的に接合されてはんだ部17aが形成される。酸化防止層18aは、はんだに溶融してはんだ部17aの一部となる。即ち、はんだ部17aは、金を含むことになる。同様に、酸化防止層18bが配置された接合層14bの第2領域14b2と、配線20bとが、はんだを用いて電気的に接合されはんだ部17bが形成される。酸化防止層18bは、はんだに溶融してはんだ部17bの一部となる。上述した工程を経て、半導体モジュール10が得られる。また、接合層14aと配線20aとをはんだ部17aを用いて接合した時に、接合層14aの一部が表面に露出している場合、接合層14aの表面は大気中に曝されて酸化されるため、はんだが濡れ拡がらない。その場合は、はんだ部17aの外周端縁と酸化防止層18aの外周端縁の位置は一致する。表面に露出する接合層14aの一部とは、上述した本実施形態の半導体モジュールの変形例において、はんだ部17aの外周端縁、あるいは酸化防止層18aの外周端縁と保護層16の内周端縁とに挟まれる領域である。
【0077】
上述した本実施形態の半導体モジュールの製造方法によれば、第2保護層16が、接合層14a、14bの第1領域14a1、14b1上に直接形成され、且つ、接合層14a、14bの第2領域14a2、14b2上には形成されないので、接合層14a、14bとの接合強度の高い第2保護層16が形成される。
【0078】
本発明では、上述した実施形態の半導体モジュール及び半導体モジュールの製造方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0079】
例えば、上述した実施形態の半導体モジュールは、半導体装置として、MOSFETを有していたが、半導体装置はこれに限定されるものではない。半導体モジュールは、例えば、半導体装置として、IGBT又はFWD等の半導体装置を有していてもよい。
【0080】
また、上述した実施形態の半導体モジュールは、半導体装置のソース電極上に、接合層が配置されていたが、ソース電極と接合層との間に、導電体により形成される電極層を配置してもよい。この導電体の材料及び厚さとしては、ソース電極と同様にすることができる。同様に、半導体装置のゲート電極と接合層との間に、導電体により形成される電極層を配置してもよい。この導電体の材料及び厚さとしては、ゲート電極と同様にすることができる。
【0081】
更に、上述した実施形態の半導体モジュールでは、第1電極構造及び第2電極構造を保護する第2保護層は共通していたが、第1電極構造及び第2電極構造を保護する保護層は、別な部材であってもよい。
【0082】
また、上述した実施形態の半導体モジュールの製造方法では、接合層の第1領域上に、接合層の外周縁を覆うように保護層を形成した後、酸化防止層が配置された接合層の第2領域と、配線とを、はんだを用いて電気的に接合していたが、この工程は順番を逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 半導体モジュール
10a 第1電極構造
10b 第2電極構造
11 半導体装置
11a 装置本体
11b ソース電極
11c ゲート電極
11d ドレイン電極
12 絶縁基板
12a 基板本体
12b 回路基板
12c 金属板
12d はんだ層
14a、14b 接合層
15 第1保護層
16 第2保護層
17a、17b はんだ部
18a、18b 酸化防止層
20a、20b 配線
30 基板構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-11-28
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを含んで形成された第1電極及びアルミニウムを含んで形成された第2電極を有する半導体装置と、
前記半導体装置上に配置され裏面が前記第1電極に接続する、ニッケルまたは銅を含んで形成された第1接合層と、
前記半導体装置上に配置され裏面が前記第2電極に接続する、ニッケルまたは銅を含んで形成された第2接合層と、
前記第1電極の側面及び前記第1接合層の側面並びに前記第2電極の側面及び前記第2接合層の側面に接し、且つ、前記第1接合層上の外周縁及び前記第2接合層上の外周縁を覆う保護層と、
前記第1接合層上であって前記保護層の内側に配置された、金を含む第1はんだ部と、
前記第2接合層上であって前記保護層の内側に配置された、金を含む第2はんだ部と、
を備える半導体モジュール
【請求項2】
前記保護層は、前記第1接合層上の外周縁から前記第2接合層上の外周縁にかけて設けられている、請求項1に記載の半導体モジュール
【請求項3】
前記保護層は、前記第1電極の上面外周を覆っている、請求項1または2に記載の半導体モジュール
【請求項4】
前記第1はんだ部の外周端縁及び前記第2はんだ部の外周端縁は、前記保護層の内周端縁と接している、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体モジュール
【請求項5】
前記第1はんだ部の外周端縁及び前記第2はんだ部の外周端縁は、前記保護層の内周端縁より内側に位置している、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体モジュール
【請求項6】
前記保護層は、前記第1電極の側面及び前記第1接合層の側面並びに前記第2電極の側面及び前記第2接合層の側面に接する、ポリイミドまたはポリアミドを含んで形成された第1保護層と、前記第1保護層上に配置され、前記第1接合層の外周縁及び前記第2接合層の外周縁を覆う、ポリイミドまたはポリアミドを含んで形成された第2保護層と、を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体モジュール
【請求項7】
前記半導体装置はトランジスタであり、前記第1電極は、ソース電極であり、前記第2電極は、ゲート電極である、請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体モジュール
【請求項8】
前記第1接合層の外周縁及び前記第2接合層の外周縁は、算術平均粗さが1μm以上且つ6μm以下である表面を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体モジュール
【請求項9】
記第1電極は、平面視で、前記第2電極をコ字状に囲んでいる、請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体モジュール