(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150763
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ベンディングロール
(51)【国際特許分類】
B21D 5/14 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B21D5/14 G
B21D5/14 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024128924
(22)【出願日】2024-08-05
(62)【分割の表示】P 2021013090の分割
【原出願日】2021-01-29
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】志井 里衣
(72)【発明者】
【氏名】田里 正一
(72)【発明者】
【氏名】中島 大樹
(57)【要約】
【課題】上ロールの交換作業を効率よく安全に行えるベンディングロールを提供する。
【解決手段】上ロール1の両端部をそれぞれ軸受9、10と軸受支持部材21、22を介して回転自在に支持し、上ロール1昇降用の油圧シリンダ7を有する左右の上部フレーム(転倒フレーム3および直立フレーム4)を備えたベンディングロールにおいて、その軸受支持部材21、22を油圧クランプ23で油圧シリンダ7と連結し、上ロール1の交換の際は、油圧クランプ23による軸受支持部材21、22と油圧シリンダ7との連結を解除して、軸受支持部材21、22を上ロール1および軸受9、10とともに上部フレーム3、4に対して脱着するようにした。これにより、従来の直立フレーム側の軸受支持部材に対して軸受を脱着する作業を省略でき、上ロール1をクレーンで吊り上げて移動させる作業も効率よく安全に行うことができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ロールと、
前記上ロールの下方の前後両側において前記上ロールと平行に配された一対の下ロールと、
前記上ロールの左右両側に配された一対の上部フレームと、
前記各下ロールの両端部を支持すると共に前記各上部フレームが取り付けられた下部フレームと、
前記上ロールの両端部に組み付けられた軸受と、
前記各軸受に外嵌される軸受支持部材と、
前記各上部フレームに設けられ、前記上ロールを昇降させる油圧シリンダと、
前記各油圧シリンダに設けられ、前記油圧シリンダと前記軸受支持部材との連結または連結解除を行う油圧クランプと、
を備え、
前記一対の上部フレームのうちの一方は、その下端部を支点として前記上ロールに対して軸方向に離間する方向に転倒させることができるように構成され、
前記油圧クランプによる前記軸受支持部材と前記油圧シリンダとの連結が解除された状態で、前記一方の上部フレームを転倒または直立させると共に、前記上ロールを他方の前記上部フレームに対して軸方向に移動させることにより、前記上ロールを前記各軸受及び前記各軸受支持部材と一体化した状態で前記各上部フレームに対して脱着させることができる、ベンディングロール。
【請求項2】
前記油圧クランプにポテンショメータが取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のベンディングロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上ロールと一対の下ロールの間で金属板を往復移動させながら曲げ成形するベンディングロールに関する。
【背景技術】
【0002】
ベンディングロールは、上ロールとこれに平行な一対の下ロールとの間で金属板を挾持した状態で、各下ロールを回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形する装置である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10は一般的なベンディングロールの概略構造を示す。このベンディングロールは、上ロール1と、上ロール1の下方の前後両側に上ロール1と平行に配された一対の下ロール2と、上ロール1の一端部を支持する左側の上部フレーム3と、上ロール1の他端部を支持する右側の上部フレーム4と、各下ロール2の両端部を支持し、両上部フレーム3、4が取り付けられる下部フレーム5とを備えている。
【0004】
左側の上部フレーム3は、その下端部が下部フレーム5に回動可能に取り付けられ、成形後の金属板を取り出すときに上ロール1の一端部から離れて軸方向外側へ回動する(転倒する)転倒フレームとなっている。この転倒フレーム3の転倒動作および転倒状態から元の直立状態に戻る復元動作は、下部フレーム5との間に回動可能に接続された転倒フレーム3用の油圧シリンダ6の回動および伸縮によって行われる。一方、右側の上部フレーム4は転倒不能に保持された直立フレームとなっている。また、各上部フレーム(転倒フレーム3および直立フレーム4)の上部には、上ロール1を昇降させる油圧シリンダ7が設けられている。
【0005】
上ロール1は、その他端に直立フレーム4から軸方向外側に延びる延長部1aを有しており、上限位置まで上昇すると延長部1aがその上方に設けられた上ロール保持機構8に当接するようになっている。この上ロール保持機構8は、転倒フレーム3を転倒させたときに、片持ち状態となった上ロール1の延長部1aを上昇不能かつ水平方向に回動不能に保持して、上ロール1の揺動による事故を防止するものである。
【0006】
また、
図11に示すように、上ロール1の両端部に組み付けられた自動調心ころ軸受(以下、単に「軸受」とも称する。)9、10には軸受支持部材11、12が外嵌されており、各軸受支持部材11、12はそれぞれ左右両側の上部フレーム3、4に設けられた油圧シリンダ7のピストンロッド7aの下端部の外周にねじ結合している。これにより、上ロール1は、その両端部をそれぞれ軸受9、10および軸受支持部材11、12を介して上部フレーム3、4に回転自在に支持され、油圧シリンダ7の作動によって昇降するようになっている。
【0007】
ここで、転倒フレーム3側(左側)の軸受9は、一端が閉塞された筒状の軸受ケース9aを外周側に有しており、その軸受ケース9aが軸受支持部材11の内周に着脱可能に嵌め込まれている。また、軸受外輪を軸受ケース9aの内周段差面へ押し当てる軸受押え部材9bが、その押圧側と反対側の端部に形成されたフランジ部を軸受ケース9aの開口側端面に複数の軸受固定ボルト9cで固定されている。
【0008】
一方、直立フレーム4側(右側)の軸受10は、軸受ケースがなく、軸受外輪が直接、軸受支持部材12の内周に着脱可能に嵌め込まれている。そして、軸受外輪を軸受支持部材12の内周段差面へ押し当てる軸受押え部材10aは、その押圧側と反対側の端部に形成されたフランジ部が軸受支持部材12の一端側の端面に複数の軸受固定ボルト10bで固定されている。
【0009】
これにより、転倒フレーム3を転倒させると、転倒フレーム3とともに左側の軸受支持部材11が上ロール1から離れて、上ロール1は左側の軸受9が組み付けられたまま、他端部を直立フレーム4に支持される片持ち状態となり、この状態で成形後の金属板の取り出しが行われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記のようなベンディングロールでは、加工対象である金属板の種類の変化に対応するために、上ロール1を軸径の異なるものに交換することが必要となる場合がある。
【0012】
このような場合の上ロール1の交換作業は、まず、
図11の状態から、転倒フレーム3側(左側)の軸受支持部材11に取り付けられているポテンショメータ(図示省略)と、直立フレーム4側(右側)の軸受押え部材10aを軸受支持部材12に取り付けている軸受固定ボルト10bを取り外す(
図12のステップB1、B2)。次に、
図13に示すように、転倒フレーム3を転倒させて上ロール1を軸受9、10とともに取り外す(
図12のステップB3、B4)。続いて、
図14に示すように、一旦転倒フレーム3を復元させて両側の軸受支持部材11、12を取り外す(
図12のステップB5、B6)。
【0013】
ここまでが各部材の取り外し手順であり、以降は逆の手順で変更後の金属板の種類に応じた仕様の部材を取り付けていく。すなわち、まず、両側の軸受支持部材11、12を取り付けたうえ、転倒フレーム3を転倒させて上ロール1を軸受9、10とともに取り付ける(
図12のステップB7、B8、B9)。そして、転倒フレーム3を復元させて右側の軸受固定ボルト10bとポテンショメータの取り付けを行う(
図12のステップB10、B11、B12)ことにより、交換作業が完了する。
【0014】
しかしながら、上記の手順による上ロール1の交換作業には次のような問題がある。すなわち、上ロール1の取り外し工程(ステップB4)では、まず、右側の軸受支持部材12に強く嵌め込まれている軸受10を油圧ジャッキで抜き出す作業の負荷が大きい。また、転倒フレーム3の転倒によって片持ち状態となった上ロール1は、その延長部1aが上ロール保持機構8と当接して反力を受けているので、その反力をなくすようにクレーンで斜めに吊り上げて直立フレーム4から抜き出すようにしており、このクレーン操作には経験豊富な作業員の技能が必要となる。また、これらの作業は安全性の点でも改善が望まれる。これは上ロール1の取り付け工程(ステップB9)の作業についても同様である。
【0015】
また、軸受支持部材11、12の脱着(ステップB6、B7)は、軸受支持部材11、12とねじ結合する油圧シリンダ7を回転させて行うことになるので、この作業も作業員に大きな負荷がかかるし、熟練作業員の技能が必要となる。
【0016】
さらに、ステップB1、B12で行われるポテンショメータの脱着を繰り返すとポテンショメータの位置ずれが生じ、ポテンショメータを用いた測定の結果の再現性が低下するおそれもある。
【0017】
なお、上ロール1はメンテナンス等のために同一仕様のものに交換する場合もある。その場合には、ポテンショメータおよび軸受支持部材11、12の脱着は不要となるので、上記の交換手順のうちのステップB1、B5~B8、B12は省略されるが、ステップB4、B9の上ロール1の脱着作業において作業性および安全性の問題があることは変わらない。
【0018】
一方、近年では、上ロール交換の作業性を考慮して、上ロールを軸受支持部材と一体に脱着する構造としたベンディングロール(以下、「上ロール交換仕様機」と称する。)も開発されている。上ロール交換仕様機では、上記の一般的な上ロール交換手順のうちのステップB2、B5~B8、B11が省略されるし、ステップB4、B9に相当する上ロールの脱着工程も、右側の軸受を軸受支持部材に対して抜き出したり嵌め込んだりする作業がなく、上ロールを上ロール保持機構と当接しない状態にして脱着すればよいので、一般的な仕様のものに比べて効率よく作業することができる。
【0019】
しかし、上記のような上ロール交換仕様機でも、軸受支持部材に取り付けられるポテンショメータの脱着の繰り返しによる測定結果の再現性低下の問題は残る。また、一般的な交換手順のステップB2、B11はなくなるが、代わって上部フレームの油圧シリンダと軸受支持部材とを連結する連結金具を脱着する工程が入る。そして、その連結金具が二つ割れのフランジ形であり、その連結用のボルトが上部フレームの前後面間の狭い場所に配置されるため、連結金具の脱着作業は、軸受支持部材を油圧シリンダとねじ結合させている場合に比べれば作業負荷は小さいが、必ずしも作業しやすいものではなく、安全性にも問題がある。
【0020】
そこで、本発明は、上ロールの交換作業を効率よく安全に行えるベンディングロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決するため、本発明によるベンディングロールは、上ロールと、上ロールの下方の前後両側において上ロールと平行に配された一対の下ロールと、上ロールの左右両側に配された一対の上部フレームと、各下ロールの両端部を支持すると共に各上部フレームが取り付けられた下部フレームと、上ロールの両端部に回転自在に組み付けられた軸受と、各軸受に外嵌される軸受支持部材と、各上部フレームに設けられ、上ロールを昇降させる油圧シリンダと、各油圧シリンダに設けられ、油圧シリンダと軸受支持部材との連結または連結解除を行う油圧クランプとを備え、上部フレームのうちの一方は、その下端部を支点として上ロールに対して軸方向に離間する方向に転倒させることができるように構成され、油圧クランプによる軸受支持部材と油圧シリンダとの連結が解除された状態で、一方の上部フレームを転倒または直立させると共に、上ロールを他方の上部フレームに対して軸方向に移動させることにより、上ロールを各軸受及び各軸受支持部材と一体化した状態で各上部フレームに対して脱着させることができるものとしたのである。
【発明の効果】
【0022】
本発明のベンディングロールは、上述したように、上部フレームに設けられた上ロール昇降用の油圧シリンダに、その油圧シリンダと上ロールの軸受支持部材とを連結する油圧クランプを取り付け、上ロールの交換の際には、油圧クランプによる軸受支持部材と油圧シリンダの連結を解除した状態で、転倒フレームを転倒させて、上ロールを軸受および軸受支持部品とともに上部フレームに対して脱着するようにしたものであるから、上ロールの取り外し工程および取り付け工程における作業性、安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態のベンディングロールの要部の縦断正面図
【
図2】
図1の直立フレーム側の軸受支持部材付近を右方向から見た断面図
【
図3】
図1の転倒フレーム側の軸受支持部材付近を左方向から側面図
【
図4】
図1の転倒フレームの転倒途中の状態を示す縦断正面図
【
図5】
図1の上ロールの交換手順を示すフローチャート
【
図6】
図1の上ロールを取り外した状態(下ロール省略)を示す縦断正面図
【
図7】
図1に対応して上ロール交換後の状態を示す要部の縦断正面図
【
図8】
図7の直立フレーム側の軸受支持部材付近を右方向から見た断面図
【
図9】
図7の転倒フレーム側の軸受支持部材付近を左方向から見た側面図
【
図10】一般的なベンディングロールの概略構造を示す正面図
【
図14】
図13に続いて両側の軸受支持部材を取り外した状態を示す縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、
図1乃至
図10に基づき、本発明の実施形態を説明する。このベンディングロールの概略の構造は、前述の
図10に示した従来の一般的なものと同じであり、上ロール1と、上ロールの下方の前後両側に配された一対の下ロール2と、上ロール1の一端部を支持する左側の上部フレーム(転倒フレーム)3と、上ロール1の他端部を支持する右側の上部フレーム(直立フレーム)4と、各下ロール2の両端部を支持し、両上部フレーム3、4が取り付けられる下部フレーム5と、転倒フレーム3の転倒・復元動作を行う油圧シリンダ6と、上ロール1を昇降させるように各上部フレーム3、4に設けられた油圧シリンダ7とを備えている。そして、その上ロール1と各下ロール2の間で金属板(図示省略)を挾持した状態で各下ロール2を回転駆動することにより、金属板を往復移動させながら曲げ成形し、成形後の金属板を取り出すときは、上ロール1を上限位置まで上昇させてその延長部1aを上ロール保持機構8に当接させた状態で、転倒フレーム3を転倒させて作業を行うようになっている。
【0025】
また、
図1に示すように、上ロール1の両端部に自動調心ころ軸受9、10が組み付けられ、その軸受9、10に外嵌された軸受支持部材21、22がそれぞれ左右両側の油圧シリンダ7と連結されており、これによって上ロール1がその両端部をそれぞれ軸受9、10および軸受支持部材21、22を介して上部フレーム3、4に回転自在に支持され、油圧シリンダ7の作動によって昇降するようになっている。そして、左側の軸受9は、軸受ケース9aの開口側端面に軸受押え部材9bのフランジ部が複数の軸受固定ボルト9cで固定されており、右側の軸受10は、軸受支持部材22の一端側の端面に軸受押え部材10aのフランジ部が複数の軸受固定ボルト10bで固定されている。これらの点も、前述の従来のものと同じである。
【0026】
このベンディングロールの従来のものとの相違点は、以下に述べる軸受支持部材21、22と油圧シリンダ7との連結構造にある。すなわち、
図2および
図3にも示すように、このベンディングロールでは、各軸受支持部材21、22が、それぞれ油圧シリンダ7に取り付けられた油圧クランプ23で油圧シリンダ7と連結されている。
【0027】
油圧クランプ23は、油圧シリンダ7のピストンロッド7aの下端面に固定されるシリンダ部材23aと、シリンダ部材23aに一部が昇降可能に収容されるロッド状のピストン部材23bと、ピストン部材23bの下端部の外周にねじ結合される矩形平板状の係合金具(係合部材)23cとからなり、その側面視でピストン部材23bと係合金具23cとがT字状の形態をなすものである。そのシリンダ部材23aにはポテンショメータ(図示省略)が取り付けられている。
【0028】
また、図示は省略するが、シリンダ部材23aは上方にも開口しており、その内部空間が油圧シリンダ7のピストンロッド7aの下端部に形成された油圧室に連通している。そして、そのピストンロッド7aの油圧室にピストン部材23bの大径部が昇降可能に収容されており、油圧室への圧油の給排によってピストン部材23bおよび係合金具23cが昇降するようになっている。
【0029】
一方、軸受支持部材21、22は、それぞれの上部に、軸方向外側に向かって開口し、油圧クランプ23の係合金具23cが入り込む係合穴21a、22aと、係合穴21a、22aに連通するとともに上方および軸方向外側に向かって開口し、油圧クランプ23のピストン部材23bを通す係合溝21b、22bとが設けられている。また、その係合穴21a、22aの奥面が、油圧クランプ23の係合金具23cと軸方向で当接する当接面21c、22cとなっている。
【0030】
上述した連結構造では、油圧クランプ23のピストン部材23bを軸受支持部材21、22の係合溝21b、22bに通し、油圧クランプ23の係合金具23cを軸受支持部材21、22の係合穴21a、22aに挿入してその奥の当接面21c、22cに当接させた状態で、油圧クランプ23を作動させて(締付・開放して)ピストン部材23bおよび係合金具23cを昇降させることにより、軸受支持部材21、22と油圧シリンダ7との連結および連結の解除が行われる。
【0031】
そして、油圧クランプ23による軸受支持部材21、22と油圧シリンダ7との連結が解除された状態で、
図4に示すように転倒フレーム3を転倒させることにより、左側の油圧クランプ23の係合金具23cおよびピストン部材23bが左側の軸受支持部材21の係合穴21aおよび係合溝21bから抜け出すようになっている。また、転倒フレーム3を転倒させたうえで上ロール1を左側へ水平移動させることにより、右側の軸受支持部材22の係合穴22aおよび係合溝22bから、右側の油圧クランプ23の係合金具23cおよびピストン部材23bが抜け出すようになっている(
図6参照)。
【0032】
なお、転倒フレーム3の転倒・復元時に左側の油圧クランプ23が軸受支持部材21に対してスムーズに脱着できるように、その油圧クランプ23のシリンダ部材23aの下面と係合金具23cの上面、および軸受支持部材21の上面と係合穴21aの上下面は、それぞれ一部が曲面で形成されている。一方、右側の軸受支持部材22は油圧クランプ23に対して軸方向と平行に脱着されるので、軸受支持部材22と油圧クランプ23の上下方向で互いに対向する面は、それぞれ平面で形成されている。
【0033】
次に、このベンディングロールにおいて、上ロール1を軸径の小さいものに交換する場合の交換手順について説明する。
【0034】
この場合の上ロール1の交換作業は、まず、上ロール1にクレーンのロープ(図示省略)を仮掛けする(
図5のステップA1)。次に、両側の油圧クランプ23を開放する(ピストン部材23bおよび係合金具23cを10mm程度下降させる)ことにより、各軸受支持部材21、22と油圧シリンダ7との連結を解除するとともに、上ロール1を
図1の状態から下降させて、その延長部1aが上ロール保持機構8と当接しない状態に保持する(
図5のステップA2)。そして、上ロール1を5mm程度吊り上げたうえで、
図6に示すように転倒フレーム3を転倒させ、上ロール1を軸受9、10および軸受支持部材21、22とともに水平移動させて取り外す(
図5のステップA3、A4)。
【0035】
ここまでが各部材の取り外し手順であり、以降は逆の手順で各部材を取り付けていく。すなわち、まず、交換前よりも軸径の小さい上ロール1を、左右の軸受9、10および軸受支持部材21、22と一体に吊った状態で水平移動させて、右側の軸受支持部材22を右側の油圧クランプ23と係合させることにより、上ロール1の取り付けを行う(
図5のステップA5)。ここで、軸受9、10には新たに取り付けられる上ロール1の軸径に応じた標準的なものが用いられる一方、軸受支持部材21、22は新たな軸受9、10の外径に応じた内径を有するものが用いられる(
図7乃至
図9参照)。そして、転倒フレーム3を復元させて、左側の油圧クランプ23を左側の軸受支持部材21と係合させせる(
図5のステップA6)。
【0036】
上記の上ロール1の取り付け工程(ステップA5)および転倒フレーム3の復元工程(ステップA6)においては、各油圧クランプ23の係合金具23cを対応する軸受支持部材21、22の係合穴21a、22aの当接面21c、22cに当接させることにより、自動的に上ロール1の軸方向の位置決めが行われれる。このため、上ロール1を位置決めする作業を別途行う必要がなく、効率よく作業することができる。
【0037】
そして、各油圧クランプ23を締め付ける(ピストン部材23bおよび係合金具23cを上昇させる)ことにより、各軸受支持部材21、22と油圧シリンダ7を連結する(
図5のステップA7)。その後、上ロール1からクレーンのロープを取り外して吊り状態を解除する(
図5のステップA8)ことにより、交換作業が完了して
図7乃至
図9に示す状態となる。
【0038】
なお、ここでは上ロール1を軸径の大きいものから小さいものに交換する場合の手順ついて説明したが、逆に軸径の小さいものから大きいものに交換する場合も、その交換手順は同じである。
【0039】
上述した上ロール1の交換手順(軸径の異なるものに交換する場合)によれば、 上ロール1を取り外す際に、従来の右側の軸受支持部材から軸受を抜き出す作業がなく、上ロール1をその延長部1aが上ロール保持機構8と当接しない状態で、軸受9、10および軸受支持部材21、22と一体にクレーンで吊って直立フレーム4から抜き出せばよいので、作業負荷が小さいし、クレーン操作に熟練作業員の技能を必要とせず、従来よりも効率よく安全に作業することができる。同様に、上ロール1の取り付けにおいても、作業性と安全性の向上が図れる。
【0040】
そして、従来の軸受支持部材の脱着工程(およびその前後の転倒フレームの復元・転倒工程)を省略できるので、上ロール1交換作業全体の作業効率を従来よりも大幅に向上させることができる。
【0041】
さらに、油圧クランプ23にポテンショメータが取り付けられているので、従来のポテンショメータの軸受支持部材に対する脱着工程が省略でき、これによっても作業効率の向上が図れるし、ポテンショメータの脱着に起因する測定結果の再現性低下という問題が生じることもない。
【0042】
また、上ロール1を同一種類のものに交換する場合は、従来でもポテンショメータおよび軸受支持部材の脱着は不要となるが、上ロール1の脱着工程において従来よりも作業性および安全性の向上が図れることは、上ロール1を軸径の異なるものに交換する場合と変わらない。
【0043】
そして、従来の上ロール交換仕様機に対しても、ポテンショメータ脱着工程を省略できるし、油圧シリンダと軸受支持部材を連結する連結金具の脱着作業を、より作業しやすく安全な油圧クランプ23の開放・締付作業に置き換えられるので、作業効率および安全性の向上を図ることができる。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0045】
例えば、油圧クランプは、上述した実施形態のものに限らず、ほかの一般的な構造のものを採用することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 上ロール
1a 延長部
2 下ロール
3 上部フレーム(転倒フレーム)
4 上部フレーム(直立フレーム)
5 下部フレーム
6 油圧シリンダ(転倒フレーム転倒・復元用)
7 油圧シリンダ(上ロール昇降用)
7a ピストンロッド
8 上ロール保持機構
9、10 軸受(自動調心ころ軸受)
21、22 軸受支持部材
21a、22a 係合穴
21b、22b 係合溝
21c、22c 当接面
23 油圧クランプ
23a シリンダ部材
23b ピストン部材
23c 係合金具(係合部材)