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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024150774
(43)【公開日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20241016BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
F01N3/24 C
F01N3/28 301W
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024130561
(22)【出願日】2024-08-07
(62)【分割の表示】P 2020192649の分割
【原出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】怒田 成勲
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ディーゼルエンジンにおいて、排気後処理装置としてDPFおよびSCRの両方を備える場合でも、メンテナンス性を向上させる技術を提供する。
【解決手段】排気を浄化する排気後処理装置10を備えるディーゼルエンジン1である。排気後処理装置10は、第1ケースおよび第2ケースを有している。第1ケースは、シリンダヘッド3の上方に配置され、第2ケースは、第1ケースよりもエンジン前後方向一方側で、エンジン前後方向と上下方向とに直交するエンジン幅方向に延びるように配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気を浄化する排気後処理装置を備えるディーゼルエンジンであって、
上記排気後処理装置は、第1ケースおよび第2ケースを有しており、
上記第1ケースは、シリンダヘッドの上方に配置され、上記第2ケースは、上記第1ケースよりもエンジン前後方向一方側で、エンジン前後方向と上下方向とに直交するエンジン幅方向に延びるように配置されている、ディーゼルエンジン。
【請求項2】
上記請求項1に記載のディーゼルエンジンにおいて、
上記第1ケースと上記第2ケースとをエンジン本体部に固定するブラケットをさらに備えている、ディーゼルエンジン。
【請求項3】
上記請求項2に記載のディーゼルエンジンにおいて、
上記ブラケットは、上記第2ケースを上記エンジン本体部に固定する第1ブラケット部材と、上記第1ケースにおける当該第2ケースに近い方の端部を当該第1ブラケット部材に固定する第2ブラケット部材と、を有している、ディーゼルエンジン。
【請求項4】
上記請求項3に記載のディーゼルエンジンにおいて、
上記第2ブラケット部材は、上記第1ブラケット部材に取り付けられるベース部と、当該ベース部の端部から立ち上がる、上記第1ケースにおける上記第2ケースに近い方の端部に取り付けられる取付部と、を少なくとも含んでおり、
上記ベース部は、上記取付部のベース部側が上記第1ケース側を向く姿勢、および、上記取付部のベース部側が上記第2ケース側を向く姿勢のどちらの姿勢でも、上記第1ブラケット部材に取り付け可能に構成されており、
上記取付部は、上記第1ケースにおける上記第2ケースに近い方の端部に対して、上記取付部のベース部側および上記取付部のベース部側と反対側のどちらの面でも取り付け可能に構成されている、ディーゼルエンジン。
【請求項5】
上記請求項4に記載のディーゼルエンジンにおいて、
上記ベース部は、当該ベース部に形成された長孔に挿通される締結部材を介して、上記第1ブラケット部材に取り付けられる、ディーゼルエンジン。
【請求項6】
上記請求項3~5のいずれか1つに記載のディーゼルエンジンにおいて、
上記第1ブラケット部材は、上記第2ケースに設けられているフランジ部に固定された取付部材に、直接またはスペーサを介して、取り付けられている、ディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに関し、特に、排気後処理装置を備えるディーゼルエン
ジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディーゼルエンジンにおいては、排気後処理装置として、排気ガス中の粒子状物質を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)や、排気ガス中のNOxを還元反応させるSCR(Selective Catalytic Reduction)を排気通路に設け、エンジンから排出された排気ガスを浄化処理することが広く行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、DPFとSCRとを備え、これらDPFとSCRとを、各々エンジン幅方向に延びるような姿勢で、エンジン前後方向に並べて、エンジンの上側に配置した排気ガス浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-217187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンジンの上部には、インジェクタやバルブ等といった、定期的にメンテナンスを要する部品(以下、「メンテナンス部品」ともいう。)が多数存在している。にもかかわらず、上記特許文献1のもののように、エンジンの上側にDPFおよびSCRを配置してしまうと、メンテナンス部品の点検、修理、交換などを行う際に、一々DPFおよび/またはSCRを取り外さなければならないため、メンテナンスを効率よく行うことが困難になるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ディーゼルエンジンにおいて、排気後処理装置としてDPFおよびSCRの両方を備える場合でも、メンテナンス性を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係るディーゼルエンジンでは、DPFとSCRとを有する排気後処理装置のレイアウトに工夫を凝らすようにしている。
【0008】
一態様に係るディーゼルエンジンは、排気を浄化する排気後処理装置を備えるディーゼルエンジンである。上記排気後処理装置は、第1ケースおよび第2ケースを有している。上記第1ケースは、シリンダヘッドの上方に配置され、上記第2ケースは、上記第1ケースよりもエンジン前後方向一方側で、エンジン前後方向と上下方向とに直交するエンジン幅方向に延びるように配置されている。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明に係るディーゼルエンジンによれば、排気後処理装置としてDPFおよびSCRの両方を備える場合でも、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るディーゼルエンジンを模式的に示す斜視図である。
図2図1のディーゼルエンジンの要部を模式的に示す平面図である。
図3】ディーゼルエンジンの要部を模式的に示す斜視図である。
図4図3のディーゼルエンジンの要部を模式的に示す平面図である。
図5】ディーゼルエンジンの要部を模式的に示す斜視図である。
図6】ディーゼルエンジンの要部を模式的に示す斜視図である。
図7図1のディーゼルエンジンの要部を模式的に示す、エンジン幅方向右側から見た側面図である。
図8図5のディーゼルエンジンの要部を模式的に示す、エンジン幅方向右側から見た側面図である。
図9図1のディーゼルエンジンにおけるSCRのエンジン幅方向右側の端部を模式的に示す斜視図である。
図10図1のディーゼルエンジンにおけるブラケットを模式的に示す斜視図である。
図11図5のディーゼルエンジンにおけるブラケットを模式的に示す斜視図である。
図12図1のディーゼルエンジンの要部を模式的に示す、エンジン前後方向前側から見た正面図である。
図13図5のディーゼルエンジンの要部を模式的に示す、エンジン前後方向前側から見た正面図である。
図14図1のディーゼルエンジンにおける第1ブラケット部材の取り付け態様を模式的に示す斜視図である。
図15図5のディーゼルエンジンにおける第1ブラケット部材の取り付け態様を模式的に示す斜視図である。
図16】従来のディーゼルエンジンを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、以下では、クランクシャフトCS(図1の破線参照)と平行な方向をエンジン前後方向とし、エンジン前後方向と上下方向とに直交する方向をエンジン幅方向として説明を行う。また、各図における、矢印Fwはエンジン前後方向前側を、矢印Rhはエンジン幅方向右側を、矢印Upは上下方向上側をそれぞれ示している。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るディーゼルエンジン1を模式的に示す斜視図であり、図2は、ディーゼルエンジン1の要部を模式的に示す平面図である。このディーゼルエンジン1は、図1および図2に示すように、シリンダブロック2の上部にシリンダヘッド3が締結されたエンジン本体部1aと、排気マニホールド(図示せず)と、吸気マニホールド(図示せず)と、フライホイールハウジング5に収容されるフライホイール(図示せず)と、冷却ファン7と、EGR装置(図示せず)と、吸気スロットル装置(図示せず)と、ターボ過給機(図示せず)と、排気を浄化する排気後処理装置10と、を備えている。
【0013】
シリンダブロック2には、複数の気筒内でそれぞれ上下往復運動する複数のピストン(図示せず)と、ピストンにコネクティングロッド(図示せず)を介して連結されるクランクシャフト(クランク軸)CSと、が内蔵されている。シリンダブロック2の下部には、ディーゼルエンジン1内を循環して各所を潤滑するオイルを貯留するためのオイルパン4が固定されている。
【0014】
シリンダヘッド3には、エンジン幅方向右側に吸気マニホールドが接続されている一方、エンジン幅方向左側に排気マニホールドが接続されている。つまり、本実施形態のディーゼルエンジン1は、エンジン幅方向左側を排気側とし、エンジン幅方向右側を吸気側として構成されている。なお、シリンダヘッド3の上部には、ヘッドカバー3aが固定されている。
【0015】
エンジン本体部1aのエンジン前後方向後側には、図1に示すように、フライホイールを収容するフライホイールハウジング5が設けられている。一方、エンジン本体部1aのエンジン前後方向前側には、図2に示すように、冷却ファン7が設けられている。冷却ファン7は、クランクシャフトCSから回転動力が伝達されることで回転するようになっている。
【0016】
また、本実施形態のディーゼルエンジン1にはEGR装置が設けられていて、各燃焼室から排気ポートを介して排気マニホールドに排出された排気ガスの一部が、吸気側に還流(再循環)されるようになっている。このように、排気ガスの一部を吸入空気と混合させることにより、燃焼温度を低下させて、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を低減させることが可能となっている。
【0017】
ディーゼルエンジン1の排気側には、ターボ過給機が設けられていて、エアクリーナ(図示せず)にて除塵された新気は、ターボ過給機で圧縮された後、吸気側の吸気スロットル装置を経由して、吸気マニホールドに送られ、還流された排気ガスと吸気マニホールド内で混合された後、各気筒に供給されるようになっている。
【0018】
排気後処理装置(After Treatment Device)(以下、「ATD」ともいう。)10は、DPF(Diesel Particulate Filter)20と、SCR(Selective Catalytic Reduction)30と、DPF20とSCR30とを接続するSCRパイプ40と、SCRパイプ40の上流寄りに設けられたドージングモジュール(尿素噴射装置)50と、を備えている。
【0019】
DPF20は、酸化触媒(図示せず)とスートフィルタ(図示せず)とを直列に並べて、DPFケーシング21に収容した構造になっている。このDPF20では、排気導入口(図示せず)からDPFケーシング21に流入した排気ガスがスートフィルタを通過する際に、排気ガスに含まれる粒子状物質(Particulate Matter)がスートフィルタに捕集される。また、排気ガスが酸化触媒を通過する際、排気ガス温度が再生可能温度を超えていれば、酸化触媒の作用によって高温となった酸素により、スートフィルタに堆積した粒子状物質が燃焼除去され、スートフィルタが再生するようになっている。
【0020】
SCR30は、尿素選択触媒還元用のSCR触媒(図示せず)と酸化触媒(図示せず)とを直列に並べて、SCRケーシング31に収容した構造になっている。SCRケーシング31の上流端部は、相対的に長いSCRパイプ40を介して、DPFケーシング21の下流端部と接続されている。SCRパイプ40では、DPF20から流入した排気ガスに、ドージングモジュール50から尿素水が噴射されることでアンモニアガスが発生し、相対的に長い当該SCRパイプ40を通過する間に、排気ガスとアンモニアガスとの混合が促進される。SCR30では、SCRケーシング31に流入した排気ガスおよびアンモニアガスがSCR触媒を通過する際に、排気ガス中の窒素酸化物がアンモニアと化学反応し、窒素と水に還元されるとともに、酸化触媒を通過する際に、アンモニアが低減される。
【0021】
このようにして、DPF20で粒子状物質が除去されるとともに、SCR30で窒素酸化物が低減された排気ガスは、SCRケーシング31の下流端部に設けられたテールパイプ60から排出される。
【0022】
-DPFおよびSCRのレイアウト-
図16は、従来のディーゼルエンジン101の一例を模式的に示す平面図である。従来のディーゼルエンジン101も、図16に示すように、エンジン本体部101aと、フライホイールハウジング105と、冷却ファン107と、排気を浄化する排気後処理装置110と、を備えている点は、本実施形態のディーゼルエンジン1と同様である。
【0023】
もっとも、従来のディーゼルエンジン101では、SCRパイプ140で接続された排気後処理装置110のDPF120とSCR130とを、各々エンジン幅方向に延びるような姿勢で、エンジン前後方向に並べて、エンジン本体部101aの上側に配置している。
【0024】
ところで、エンジン本体部101aの上部には、インジェクタやバルブ等といった、定期的にメンテナンスを要する部品(以下、「メンテナンス部品」ともいう。)が多数存在している。にもかかわらず、従来のディーゼルエンジン101のように、エンジン本体部101aの上側にDPF120およびSCR130を配置すると、図16に示すように、エンジン本体部101aの上部が隠れてしまい、メンテナンス部品の点検、修理、交換などを行う際に、一々DPF120および/またはSCR130を取り外さなければならないため、メンテナンスを効率よく行うことが困難になるという問題がある。
【0025】
そこで、本実施形態のディーゼルエンジン1では、DPF20とSCR30とのレイアウトに工夫を凝らすようにしている。具体的には、本実施形態のディーゼルエンジン1では、図2に示すように、DPF20をエンジン本体部1aの上側(より正確には、ヘッドカバー3aの上側)でエンジン前後方向に延びるように配置する一方、SCR30を、DPF20よりもエンジン前後方向後側(一方側)であるフライホイールハウジング5の上方で、エンジン幅方向に延びるように配置している。なお、SCR30は、フライホイールハウジング5の上方において、DPF20よりも低い位置に配置されているとともに、そのエンジン幅方向における中央部が、平面視でクランクシャフトCSと重なるように配置されている。
【0026】
このように、DPF20がエンジン本体部1aの上側でエンジン前後方向に延びるように配置されている一方、SCR30がDPF20よりもエンジン前後方向後側で、エンジン幅方向に延びるように配置されていることから、図2に示すように、DPF20とSCR30とが平面視で略L字状をなすように配置されることになる。
【0027】
そうして、DPF20とSCR30とが略L字状をなすように配置されることから、エンジン幅方向に延びるDPF120およびSCR130をエンジン前後方向に並べた従来のディーゼルエンジン101に比して、図2に示すように、露出する(DPF20およびSCR30によって覆われない)エンジン本体部1aの上部の面積を大きくすることができる。これにより、DPF20および/またはSCR30を取り外さなくても、メンテナンス部品の点検、修理、交換を効率よく行うことができるので、排気後処理装置10としてDPF20およびSCR30を備える場合でも、メンテナンス性を向上させることができる。
【0028】
-SCRパイプのレイアウト-
DPF20には、エンジン前後方向前側の端部(前端部20a)(SCR30から遠い方の端部)に、粒子状物質を捕集した後の排気ガスを排出する排気出口22(図12参照)が設けられている。また、SCR30には、エンジン幅方向右側の端部(右端部30a)に排気入口32が設けられている一方、エンジン幅方向左側の端部にテールパイプ60が設けられている。そうして、ディーゼルエンジン1では、DPF20の排気出口22とSCR30の排気入口32とは、図1に示すように、SCRパイプ40にて接続されている。
【0029】
ところで、ATD10の最下流であるテールパイプ60は車体側の排気管(図示せず)と接続されるため、テールパイプ60は、車体側のレイアウトに応じて、SCR30における様々な位置に設定される。特に、ディーゼルエンジン1の左右どちらにテールパイプ60を設定するかは、車体目線では非常に重要であり、ディーゼルエンジン1の左右どちらにでもテールパイプ60を設定可能とすることが望ましい。
【0030】
図3は、ディーゼルエンジン1Aの要部を模式的に示す斜視図であり、図4は、ディーゼルエンジン1Aの要部を模式的に示す平面図である。なお、ディーゼルエンジン1Aは、ディーゼルエンジン1とほぼ同様であり、共通する構成については同じ符号を付している。
【0031】
図3に示すように、ディーゼルエンジン1AのATD10Aでは、SCR30が、ディーゼルエンジン1のSCR30と左右対称に取り付けられている。それ故、SCR30には、エンジン幅方向右側の端部にテールパイプ60が設けられている一方、エンジン幅方向左側の端部に排気入口32が設けられている。そうして、ディーゼルエンジン1Aでは、DPF20の排気出口22とSCR30の排気入口32とは、図1に示すように、SCRパイプ40’にて接続されている。
【0032】
このように、ディーゼルエンジン1では、DPF20の排気出口22とSCR30の排気入口32とがSCRパイプ40にて接続されている一方、ディーゼルエンジン1Aでは、DPF20の排気出口22とSCR30の排気入口32とが、SCRパイプ40と異なるSCRパイプ40’にて接続されている。もっとも、ディーゼルエンジン1とディーゼルエンジン1Aとは、ほぼ同様の構成であるにも関わらず、SCRパイプ40とは全く別のSCRパイプ40’を製造することは不経済である。
【0033】
そこで、本実施形態では、DPF20の排気出口22とSCR30の排気入口とを接続するSCRパイプ40,40’が、エンジン幅方向における中央部に対応する位置で、エンジン前後方向に延びる直線パイプ部42を有するようにしている。
【0034】
より詳しくは、SCRパイプ40とSCRパイプ40’とは共に、DPF20の排気出口22に接続され、エンジン前後方向前側に少し延びてから180度曲がってエンジン前後方向後側に延びる上流側パイプ部41を有している。また、SCRパイプ40とSCRパイプ40’とは共に、上流側パイプ部41の下流端に接続され、エンジン幅方向における中央部に対応する位置で、エンジン前後方向に延びる直線パイプ部42を有している。なお、本実施形態では、上述の如く、SCR30のエンジン幅方向における中央部が、平面視でクランクシャフトCSと重なるように配置されていることから、平面視でクランクシャフトCSと重なるようにエンジン前後方向に延びている直線パイプ部42が、平面視でSCR30と略T字状をなすことになる。
【0035】
SCRパイプ40は、図1および図2に示すように、直線パイプ部42の下流端に接続され、エンジン幅方向右側に曲がって、SCR30の上方でエンジン幅方向右側に延びた後、下方に曲がってSCR30の排気入口32に接続される下流側パイプ部43を有している。
【0036】
これに対して、SCRパイプ40’は、図3および図4に示すように、直線パイプ部42の下流端に接続され、エンジン幅方向左側に曲がって、SCR30の上方でエンジン幅方向左側に延びた後、下方に曲がってSCR30の排気入口32に接続される下流側パイプ部43’を有している。
【0037】
このように、DPF20の排気出口22と直線パイプ部42の上流端とを上流側パイプ部41で繋ぐことで、SCRパイプ40およびSCRパイプ40’のいずれにおいても、DPF20の排気出口22から排出された、粒子状物質を捕集した後の排気ガスを、上流側パイプ部41および直線パイプ部42を介して、SCR30の近傍まで流すことができる。
【0038】
そうして、直線パイプ部42は、平面視でSCR30とT字状をなすように、エンジン幅方向における中央部に対応する位置で、エンジン前後方向に延びていることから、直線パイプ部42の下流端とSCR30との位置関係を常に略同じにすることができる。それ故、SCR30の排気入口32が、SCR30におけるエンジン幅方向の何処に位置していても、下流側パイプ部43,43’の形状や長さを変更するだけで、対応可能となることから、SCR30の形状や規格等の変更に左右されることなく、同じレイアウトの上流側パイプ部41および直線パイプ部42を用いることができる。
【0039】
また、直線パイプ部42の下流端が常にSCR30の中央部の近傍に位置することから、SCR30の排気入口32が、ディーゼルエンジン1のようにSCR30におけるエンジン幅方向右側の端部に位置していても、ディーゼルエンジン1AのようにSCR30におけるエンジン幅方向左側の端部に位置していても、下流側パイプ部43,43’を極端に長くする必要がなくなることから、SCR30の設計自由度を高めつつ、SCRパイプ40の製造コストが上昇するのを抑えることができる。
【0040】
さらに、SCR30をDPF20よりも低い位置に配置することで、例えばDPF20と同じ高さでエンジン前後方向に延びるSCRパイプ40,40’をSCR30の上方まで延ばすことができ、かかる相対的に長いSCRパイプ40,40’を通過する間に、排気ガスとアンモニアガス(尿素)との混合を促進させることができる。
【0041】
-DPFおよびSCRの固定構造-
図5は、ディーゼルエンジン1Bの要部を模式的に示す斜視図であり、図6は、ディーゼルエンジン1Cの要部を模式的に示す斜視図である。なお、ディーゼルエンジン1Bは、ディーゼルエンジン1とほぼ同様であり、また、ディーゼルエンジン1Cは、ディーゼルエンジン1Aとほぼ同様であることから、共通する構成については同じ符号を付している。
【0042】
ディーゼルエンジン1とディーゼルエンジン1Bとの違いは、ディーゼルエンジン1Bの方がディーゼルエンジン1よりも高出力仕様であり、それに伴って、ディーゼルエンジン1BのDPF20’の方が、ディーゼルエンジン1のDPF20よりもエンジン前後方向に長く、且つ、ディーゼルエンジン1BのSCR30’の方が、ディーゼルエンジン1のSCR30よりもエンジン幅方向に長く形成されている点である。同様に、ディーゼルエンジン1Aとディーゼルエンジン1Cとの違いは、ディーゼルエンジン1Cの方がディーゼルエンジン1Aよりも高出力仕様であり、それに伴って、ディーゼルエンジン1CのDPF20’の方が、ディーゼルエンジン1AのDPF20よりもエンジン前後方向に長く、且つ、ディーゼルエンジン1CのSCR30’の方が、ディーゼルエンジン1AのSCR30よりもエンジン幅方向に長く形成されている点である。
【0043】
もっとも、ディーゼルエンジン1とディーゼルエンジン1Bとは、DPF20,20’およびSCR30,30’の長さが異なることを除けば、ほぼ同様の構成であるにも関わらず、全く異なるDPF20,20’およびSCR30,30’の固定構造を採用することは不経済である。このことは、ディーゼルエンジン1Aとディーゼルエンジン1Cとについても同様である。
【0044】
そこで、本実施形態では、ほぼ同様の固定構造で、DPF20,20’およびSCR30,30’をエンジン本体部1aに対して固定するようにしている。以下、これらを代表して、ディーゼルエンジン1およびディーゼルエンジン1Bにおける、DPF20,20’およびSCR30,30’の固定構造について説明する。
【0045】
図7は、ディーゼルエンジン1の要部を模式的に示す、エンジン幅方向右側から見た側面図であり、図8は、ディーゼルエンジン1Bの要部を模式的に示す、エンジン幅方向右側から見た側面図であり、図9は、ディーゼルエンジン1におけるSCR30のエンジン幅方向右側の端部を模式的に示す斜視図である。なお、図7および図8では、図を見易くするために、SCRパイプ40,40’を図示省略している。
【0046】
ディーゼルエンジン1において、DPF20は、前端部20aとエンジン前後方向後側の端部(後端部)20bとが、シリンダヘッド3に固定されることで、シリンダヘッド3に2点支持されている。また、SCR30は、エンジン幅方向右側の端部(右端部)30aが、フライホイールハウジング5に固定されるとともに、SCRケーシング31のエンジン幅方向左寄りに形成されたフランジ部33が、シリンダヘッド3に固定されることで、エンジン本体部1aに2点支持されている。
【0047】
一方、ディーゼルエンジン1Bにおいても、DPF20’は、エンジン前後方向前側の端部(前端部)20a’とエンジン前後方向後側の端部(後端部)20b’とが、シリンダヘッド3に固定されることで、シリンダヘッド3に2点支持されている。また、SCR30’は、エンジン幅方向右側の端部(右端部)30a’が、フライホイールハウジング5に固定されるとともに、SCRケーシング31’のエンジン幅方向左寄りに形成されたフランジ部33’が、シリンダヘッド3に固定されることで、エンジン本体部1aに2点支持されている。
【0048】
より詳しくは、ディーゼルエンジン1において、DPF20の前端部20aは、図7に示すように、当該前端部20aとシリンダヘッド3の前端部とにボルト締結されるDPFブラケット90を介して、シリンダヘッド3の前端部に固定されている。これと同様に、ディーゼルエンジン1Bにおいても、DPF20’の前端部20a’は、図8に示すように、当該前端部20a’とシリンダヘッド3の前端部とにボルト締結されるDPFブラケット90を介して、シリンダヘッド3の前端部に固定されている。
【0049】
一方、ディーゼルエンジン1において、SCR30の右端部30aは、図7および図9に示すように、当該右端部30aとフライホイールハウジング5の右端部とにボルト締結されるSCRブラケット91を介して、フライホイールハウジング5の右端部に固定されている。これと同様に、ディーゼルエンジン1Bにおいても、SCR30’の右端部30a’は、図8に示すように、当該右端部30a’とフライホイールハウジング5の右端部とにボルト締結されるSCRブラケット91を介して、フライホイールハウジング5の右端部に固定されている。
【0050】
これらに対し、ディーゼルエンジン1において、DPF20の後端部20bと、SCR30のフランジ部33とは、図7に示すように、共通のブラケット70を介して、シリンダヘッド3の後端部に固定されている。
【0051】
このように、DPF20とSCR30とを、共通のブラケット70を介して、シリンダヘッド3に固定することで、別個のブラケットを介してそれぞれシリンダヘッド3に別々に固定する場合に比して、部品点数の減少による軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0052】
のみならず、ディーゼルエンジン1Bにおいても、図8に示すように、DPF20’の後端部20b’と、SCR30’のフランジ部33’とを、ディーゼルエンジン1で用いる共通のブラケット70を介して、シリンダヘッド3の後端部に固定することが可能になっている。つまり、ブラケット70は、長さの異なるDPF20,20’およびSCR30,30’において適用可能に構成されている。以下、かかるブラケット70について、詳細に説明する。
【0053】
ブラケット70は、SCR30,30’をシリンダヘッド3に固定する第1ブラケット部材71と、DPF20,20’の後端部20b,20b’(SCR30,30’に近い方の端部)を第1ブラケット部材71に固定する第2ブラケット部材72と、を有している。つまり、DPF20,20’の後端部20b,20b’は、第2ブラケット部材72と第1ブラケット部材71とを介して、シリンダヘッド3に固定されるようになっている。
【0054】
第1ブラケット部材71は、図7および図8に示すように、その下端部71aが、シリンダヘッド3の後端部にボルト締結されている。また、第1ブラケット部材71には、その上端部に、平坦な取付面71bが形成されている。
【0055】
一方、第2ブラケット部材72は、図7および図8に示すように、第1ブラケット部材71の平坦な取付面71bの上側に取り付けられる略矩形状のベース部73と、ベース部73と断面略L字状をなすように、ベース部73の端部から直交して立ち上がる、DPF20,20’の後端部20b,20b’に取り付けられる取付部75と、を有している。なお、第2ブラケット部材72は、断面略L字状をなすベース部73および取付部75を少なくとも有しているのであれば、どのような構成でもよい。
【0056】
図10は、ディーゼルエンジン1におけるブラケット70を模式的に示す斜視図であり、図11は、ディーゼルエンジン1Bにおけるブラケット70を模式的に示す斜視図である。ベース部73は、図7および図10に示すように、L字の内側がSCR30側を向く姿勢(取付部75がエンジン前後方向前側でベース部73がエンジン前後方向後側となる姿勢)、および、図8および図11に示すように、L字の内側がDPF20側を向く姿勢(ベース部73がエンジン前後方向前側で取付部75がエンジン前後方向後側となる姿勢)のどちらの姿勢でも、第1ブラケット部材71にボルト締結により取り付け可能に構成されている。また、取付部75は、DPF20,20’の後端部20b,20b’に対して、図7および図10に示すように、L字の外側面(取付部75におけるベース部73とは反対側の面)、および、図8および図11に示すように、L字の内側面(取付部75におけるベース部73と同じ側の面)のどちらの面でもボルト締結により取り付け可能に構成されている。
【0057】
上述の如く、ディーゼルエンジン1およびディーゼルエンジン1Bでは共に、DPF20,20’の前端部20a,20a’が、DPFブラケット90を介して、シリンダヘッド3の前端部に固定されている。そうして、ディーゼルエンジン1BのDPF20’の方が、ディーゼルエンジン1のDPF20よりもエンジン前後方向に長いことから、図7および図10に示すように、ディーゼルエンジン1におけるDPF20の後端部20bは、エンジン前後方向におけるSCR30の手前で止まるのに対し、ディーゼルエンジン1BにおけるDPF20’の後端部20b’は、図7および図10に示すように、平面視でSCR30’の一部と重なることになる。つまり、ディーゼルエンジン1Bの方がディーゼルエンジン1よりも、DPF20,20’の後端部20b,20b’がSCR30,30’に近付くことになる。
【0058】
それ故、ディーゼルエンジン1では、図7および図10に示すように、L字の内側がSCR30側を向く姿勢で、ベース部73を第1ブラケット部材71の取付面71bにボルト締結にて取り付けるとともに、DPF20の後端部20bに対し、取付部75のL字の外側面をボルト締結にて取り付けることで、相対的に短いDPF20を、第2ブラケット部材72と第1ブラケット部材71とを介して、シリンダヘッド3に固定することができる。
【0059】
これに対し、ディーゼルエンジン1Bでは、図8および図11に示すように、L字の内側がDPF20側を向く姿勢で、ベース部73を第1ブラケット部材71の取付面71bにボルト締結にて取り付けるとともに、DPF20の後端部20bに対し、取付部75のL字の内側面をボルト締結にて取り付けることで、相対的に長いDPF20’を、第2ブラケット部材72と第1ブラケット部材71とを介して、シリンダヘッド3に固定することができる。
【0060】
このように、第2ブラケット部材72は、第1ブラケット部材71に対する取り付け方向を変更することで、長さの異なるDPF20,20’を第1ブラケット部材71に固定することが可能に構成されている。
【0061】
これにより、DPF20,20’の長さが異なる場合でも、第1ブラケット部材71および第2ブラケット部材72の形状等を変更することなく、換言すると、同じブラケット70を用いて、DPF20,20’をシリンダヘッド3に固定することができる。したがって、DPF20,20’の長さが異なる場合でも、その都度、専用のブラケットを製造する必要がないので、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0062】
なお、ベース部73は、当該ベース部73に形成された長孔(図示せず)に挿通されるボルトを介して、第1ブラケット部材71の取付面71bに取り付けられるように構成してもよく、この構成ようにすれば、ベース部73の姿勢を変更することで、取付部75とDPF20,20’の後端部20b,20b’との間隔を大きく調整することができることに加えて、長孔により、取付部75とDPF20,20’の後端部20b,20b’との間隔の微調整が可能となることから、同じブラケット70を用いて、様々な長さのDPF20,20’に対応することができる。
【0063】
図12は、ディーゼルエンジン1の要部を模式的に示す、エンジン前後方向前側から見た正面図であり、図13は、ディーゼルエンジン1Bの要部を模式的に示す、エンジン前後方向前側から見た正面図である。また、図14は、ディーゼルエンジン1における第1ブラケット部材71の取り付け態様を模式的に示す斜視図であり、図15は、ディーゼルエンジン1Bにおける第1ブラケット部材71の取り付け態様を模式的に示す斜視図である。なお、図12および図13では、図を見易くするために、DPFブラケット90を図示省略している。
【0064】
上述の如く、ディーゼルエンジン1およびディーゼルエンジン1Bでは共に、SCR30,30’の右端部30a,30a’が、SCRブラケット91を介して、フライホイールハウジング5の右端部に固定されている。そうして、ディーゼルエンジン1BのSCR30’の方が、ディーゼルエンジン1のSCR30よりもエンジン幅方向に長いことから、図12図13とを見比べれば分かるように、ディーゼルエンジン1におけるSCR30のフランジ部33よりも、ディーゼルエンジン1BにおけるSCR30’のフランジ部33’の方が、エンジン幅方向において第1ブラケット部材71から遠ざかることになる。
【0065】
そこで、本実施形態では、SCR30,30’のフランジ部33,33’に固定された取付部材77に対して、直接またはスペーサ80を介して、取り付け可能に第1ブラケット部材71を構成している。より詳しくは、ディーゼルエンジン1では、図12および図14に示すように、SCR30のフランジ部33に対し、当該フランジ部33よりも大径の略円弧状の取付部材77をボルト締結し、かかる取付部材77に対して、第1ブラケット部材71を直接にボルト締結にて取り付けるようにしている。これにより、相対的に短いSCR30のフランジ部33を、第1ブラケット部材71と接続して、第1ブラケット部材71を介して、シリンダヘッド3に固定することができる。
【0066】
これに対し、ディーゼルエンジン1Bでは、図13および図15に示すように、SCR30’のフランジ部33’に対し、取付部材77をボルト締結し、かかる取付部材77に対して、第1ブラケット部材71をスペーサ80を介してボルト締結にて取り付けるようにしている。これにより、相対的に長いSCR30’のフランジ部33’を、第1ブラケット部材71と接続して、第1ブラケット部材71を介して、シリンダヘッド3に固定することができる。
【0067】
これにより、SCR30,30’の長さが異なる場合でも、同じブラケット70を用いて、SCR30,30’をシリンダヘッド3に固定することができる。
【0068】
(その他の実施形態) 本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0069】
上記実施形態では、ディーゼルエンジン1,1A,1B,1Cにおける、冷却ファン7側をエンジン前後方向前側とし、フライホイール側をエンジン前後方向後側としたが、ディーゼルエンジン1,1A,1B,1Cの前後方向と、ディーゼルエンジン1,1A,1B,1Cが搭載される作業車両の前後方向とは、必ずしも一致する必要はない。例えば、ディーゼルエンジン1,1A,1B,1Cの前後方向が、作業車両の前後方向と一致するように、ディーゼルエンジン1,1A,1B,1Cを作業車両に搭載してもよいし、また、ディーゼルエンジン1,1A,1B,1Cの前後方向が、作業車両の機体幅方向と一致するように、ディーゼルエンジン1,1A,1B,1Cを作業車両に搭載してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、エンジン幅方向左側を排気側とし、エンジン幅方向右側を吸気側としてシリンダヘッド3を構成したが、これに限らず、エンジン幅方向右側を排気側とし、エンジン幅方向左側を吸気側としてシリンダヘッド3を構成してもよい。
【0071】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0072】
<発明の付記>
具体的には、本発明は、排気を浄化する排気後処理装置を備えるディーゼルエンジンを対象としている。
【0073】
そして、このディーゼルエンジンは、上記排気後処理装置は、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するDPFと、尿素の添加によって排気ガスに含まれる窒素酸化物を還元するSCRと、を有しており、上記DPFは、クランク軸と平行な方向であるエンジン前後方向に延びるように配置されている一方、上記SCRは、当該DPFよりもエンジン前後方向一方側で、エンジン前後方向と上下方向とに直交するエンジン幅方向に延びるように配置されていることを特徴とするものである。
【0074】
この構成によれば、DPFがエンジン前後方向に延びるように配置されている一方、SCRがDPFよりもエンジン前後方向一方側で、エンジン幅方向に延びるように配置されていることから、DPFとSCRとが平面視で略T字状乃至略L字状をなすように配置されることになる。
【0075】
このように、DPFとSCRとが略T字状乃至略L字状をなすように配置されることから、仮にDPFおよびSCRをエンジンの上方に配置した場合でも、同じ方向に延びるDPFおよびSCRを同じ方向に並べる場合に比して、露出する(DPFおよびSCRによって覆われない)エンジンの上部の面積を大きくすることができる。これにより、DPFおよび/またはSCRを取り外さなくても、メンテナンス部品の点検、修理、交換を効率よく行うことができるので、排気後処理装置としてDPFおよびSCRの両方を備える場合でも、メンテナンス性を向上させることができる。
【0076】
また、上記ディーゼルエンジンでは、上記DPFには、エンジン前後方向における上記SCRから遠い方の端部に、粒子状物質を捕集した後の排気ガスを排出する排気出口が設けられており、上記DPFの上記排気出口と上記SCRの排気入口とを接続するSCRパイプが、エンジン幅方向における中央部に対応する位置で、エンジン前後方向に延びる直線パイプ部を有していてもよい。
【0077】
この構成によれば、例えばSCRパイプにおける、直線パイプ部よりも上流側を上流側パイプ部、直線パイプ部よりも下流側を下流側パイプ部とした場合に、DPFの排気出口と直線パイプ部の上流端とを上流側パイプ部で繋ぐことで、DPFの排気出口から排出された、粒子状物質を捕集した後の排気ガスを、上流側パイプ部および直線パイプ部を介して、SCRの近傍まで流すことができる。
【0078】
そうして、直線パイプ部は、エンジン幅方向における中央部に対応する位置で、エンジン前後方向に延びていることから、SCRの排気入口が、SCRにおけるエンジン幅方向の何処に位置していても、下流側パイプ部の形状や長さを変更するだけで、対応可能となるので、SCRの形状や規格等の変更に左右されることなく、同じレイアウトの上流側パイプ部および直線パイプ部を用いることができる。
【0079】
また、直線パイプ部の下流端が常にエンジン幅方向における中央部に位置することから、SCRの排気入口が、SCRにおけるエンジン幅方向の一方側または他方側に位置していても、下流側パイプ部を極端に長くする必要がなくなることから、SCRの設計自由度を高めつつ、SCRパイプの製造コストが上昇するのを抑えることができる。
【0080】
さらに、上記ディーゼルエンジンでは、上記SCRは、上記DPFよりも低い位置に配置されており、上記SCRパイプは、上記直線パイプ部の下流端に接続される下流側パイプ部をさらに有しており、上記下流側パイプ部は、上記直線パイプ部の下流端からエンジン幅方向に曲がって、上記SCRの上方でエンジン幅方向に延び、当該SCRの上記排気入口と接続されていてもよい。
【0081】
この構成によれば、SCRをDPFよりも低い位置に配置することで、例えばDPFと同じ高さでエンジン前後方向に延びるSCRパイプをSCRの上方まで延ばすことができ、かかる相対的に長いSCRパイプを通過する間に、排気ガスとアンモニアガス(尿素)との混合を促進させることができる。
【0082】
また、上記ディーゼルエンジンでは、上記DPFは、シリンダヘッドの上側に配置されている一方、上記SCRは、当該シリンダヘッドよりもエンジン前後方向一方側に配置されており、上記DPFと上記SCRとを上記シリンダヘッドに固定するブラケットをさらに備えていてもよい。
【0083】
この構成によれば、DPFとSCRとを、別個のブラケットを介してそれぞれシリンダヘッドに別々に固定する場合に比して、部品点数の減少による軽量化およびコストダウンを図ることができる。
【0084】
さらに、上記ディーゼルエンジンでは、上記ブラケットは、上記SCRを上記シリンダヘッドに固定する第1ブラケット部材と、上記DPFにおける当該SCRに近い方の端部を当該第1ブラケット部材に固定する第2ブラケット部材と、を有しており、上記第2ブラケット部材は、上記第1ブラケット部材に対する取り付け方向を変更することで、長さの異なる上記DPFを上記第1ブラケット部材に固定することが可能に構成されていてもよい。
【0085】
この構成によれば、第2ブラケット部材が、第1ブラケット部材に対する取り付け方向を変更することで、長さの異なるDPFを第1ブラケット部材に固定することが可能に構成されていることから、DPFの長さが異なる場合でも、第1ブラケット部材および第2ブラケット部材の形状等を変更することなく、換言すると、同じブラケットを用いて、DPFおよびSCRをシリンダヘッドに固定することができる。したがって、DPFの長さが異なる場合でも、その都度、専用のブラケットを製造する必要がないので、製造コストの上昇を抑えることができる。
【0086】
また、上記ディーゼルエンジンでは、上記第2ブラケット部材は、上記第1ブラケット部材に取り付けられるベース部と、当該ベース部の端部から立ち上がる、上記DPFにおける上記SCRに近い方の端部に取り付けられる取付部と、を少なくとも含んでおり、上記ベース部は、上記取付部のベース部側が上記DPF側を向く姿勢、および、上記取付部のベース部側が上記SCR側を向く姿勢のどちらの姿勢でも、上記第1ブラケット部材に取り付け可能に構成されており、上記取付部は、上記DPFにおける上記SCRに近い方の端部に対して、上記取付部のベース部側および上記取付部のベース部側と反対側のどちらの面でも取り付け可能に構成されていてもよい。
【0087】
この構成によれば、例えばDPFの長さが相対的に短い場合(DPFにおけるSCRに近い方の端部がSCRから相対的に遠い場合)には、取付部のベース部側がSCR側を向く姿勢で、ベース部を第1ブラケット部材に取り付けるとともに、DPFにおけるSCRに近い方の端部に対して、取付部のベース部側と反対側で取付部を取り付けることで、第2ブラケットを介して、DPFを第1ブラケット部材に固定することができる。
【0088】
一方、例えばDPFの長さが相対的に長い場合(DPFにおけるSCRに近い方の端部がSCRに相対的に近い場合)には、取付部のベース部側がDPF側を向く姿勢で、ベース部を第1ブラケット部材に取り付けるとともに、DPFにおけるSCRに近い方の端部に対して、取付部のベース部側で取付部を取り付けることで、第2ブラケットを介して、DPFを第1ブラケット部材に固定することができる。
【0089】
さらに、上記ディーゼルエンジンでは、上記ベース部は、当該ベース部に形成された長孔に挿通される締結部材を介して、上記第1ブラケット部材に取り付けられてもよい。
【0090】
この構成によれば、ベース部の姿勢を変更することで、DPFにおけるSCRに近い方の端部と第2ブラケット部材(取付部)との間隔を大きく調整することができることに加えて、長孔により、DPFにおけるSCRに近い方の端部と取付部との間隔の微調整が可能となることから、同じブラケットを用いて、様々な長さのDPFに対応することができる。
【0091】
また、上記ディーゼルエンジンでは、上記第1ブラケット部材は、上記SCRに設けられているフランジ部に固定された取付部材に、直接またはスペーサを介して、取り付けられていてもよい。
【0092】
この構成によれば、SCRの長さが異なる場合でも、同じブラケットを用いて、SCRをシリンダヘッドに固定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明によると、排気後処理装置としてDPFおよびSCRの両方を備える場合でも、メンテナンス性を向上させることができるので、排気後処理装置を備えるディーゼルエンジンに適用して極めて有益である。
【符号の説明】
【0094】
1,1A,1B,1C ディーゼルエンジン
3 シリンダヘッド
10,10A,10B,10C 排気後処理装置
20,20’ DPF
20b,20b’ 後端部
22 排気出口
30,30’ SCR
32 排気入口
33,33’ フランジ部
40,40’ SCRパイプ
42 直線パイプ部
43,43’ 下流側パイプ部
70 ブラケット
71 第1ブラケット部材
72 第2ブラケット部材
73 ベース部
75 取付部
77 取付部材
80 スペーサ
CS クランクシャフト(クランク軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16